説明

吐出器

【課題】液体の粘度が高くても適正な泡質を確保することを目的とする。
【解決手段】上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステム5を有するポンプ3と、ステム5の上端に設けられた押下ヘッド4と、を備え、ポンプ3によって移送された液体及び空気からなる泡を、押下ヘッドに形成されたノズル孔37から吐出する吐出器1であって、ポンプ3に、ステム5に連係して摺動する液用ピストン7が内部に収容された液用シリンダ6と、ステム5に連係して摺動する空気用ピストン9が内部に収容された空気用シリンダ8と、が備えられ、押下ヘッド4に、ステム5の上端からノズル孔37まで延在し、液用シリンダ6内からステム5内を通って移送された液体が流通する流通路13が形成され、流通路13の内側に、空気用シリンダ8から空気通路14を通って移送された空気を噴射する噴射口47が配設され、噴射口47に、空気が通過可能な多孔質体48が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、吐出器として、容器本体内に収容された液体を泡状にして吐出するフォーマポンプ式の吐出器がある。
この種の吐出器として、例えば下記特許文献1に示されているような、容器本体の口部に装着可能なキャップにポンプが取り付けられ、キャップの天壁部から突出したポンプのステムの上端に、ノズル孔が形成された押下ヘッドが取り付けられた構成が知られている。上記したポンプには、内部に液用ピストンが収容された液用シリンダと、内部に空気用ピストンが収容された空気用シリンダと、が備えられている。また、上記したステムの下端部は、液用シリンダに連通可能とされており、また、ステムの上端部には、液用シリンダから移送された液体と空気用シリンダから移送された空気とを混合させる気液混合室が形成されていると共に、その気液混合室で混合された気液混合体を通過させて発泡させる発泡部材が取り付けられている。
【0003】
上記した構成の吐出器によれば、押下ヘッドを押し下げることにより、押下ヘッドとともにステムが押し下げられ、このステムの押し下げ動作に連係して液用ピストン及び空気用ピストンがそれぞれ摺動する。そして、液用ピストンによって液用シリンダから圧送された液体と空気用ピストンによって空気用シリンダから圧送された空気とが気液混合室で混合され、この気液混合体が発泡部材を通過することで発泡されて泡状になり、この泡が押圧ヘッド内の流通路を通ってノズル孔から吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−121889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の吐出器では、気液混合室で液体と空気とを混合させ、その後、その気液混合体を発泡部材で発泡させて泡状にするため、適正な泡質を確保するために粘度の低い液体を使用する必要がある。すなわち、粘度の高い液体では、気液混合室において空気と十分に混合されないおそれがあるため、その気液混合体を発泡部材に通過させても適正な泡質にならない場合がある。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、粘度の高い液体を使用した場合であっても適正な泡質を確保することができる吐出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吐出器は、上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムを有するポンプと、該ステムの上端に設けられた押下ヘッドと、を備え、前記ポンプによって移送された液体及び空気からなる泡を、前記押下ヘッドに形成されたノズル孔から吐出する吐出器であって、前記ポンプには、前記ステムに連係して摺動する液用ピストンが内部に収容された液用シリンダと、前記ステムに連係して摺動する空気用ピストンが内部に収容された空気用シリンダと、が備えられ、前記押下ヘッドには、前記ステムの上端から前記ノズル孔まで延在し、前記液用シリンダ内から前記ステム内を通って移送された液体が流通する流通路が形成され、該流通路の内側には、前記空気用シリンダから空気通路を通って移送された空気を噴射する噴射口が配設され、該噴射口には、前記空気が通過可能な多孔質体が設けられていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、押下ヘッドを押し下げることにより、押下ヘッドとともにステムが押し下げられ、このステムの押し下げ動作に連係して液用ピストンが液用シリンダの内周面に沿って摺動すると共に空気用ピストンが空気用シリンダの内周面に沿って摺動する。液用ピストンによって液用シリンダから圧送された液体は、ステム内を通って流通路内に流入し、流通路内を流通する。一方、空気用ピストンによって空気用シリンダから圧送された空気は、空気通路を通って噴射口に至り、多孔質体を通過して多数に分散された状態で流通路内に噴射される。これにより、流通路内を流通する液体に多数の空気流が吹き付けられるので、液体が泡状に発泡される。そして、その泡は流通路を通ってノズル孔から吐出される。
【0009】
また、本発明に係る吐出器は、前記流通路の内側に、前記ステムの内側に連通された外筒部と、該外筒部の内側に配設された内筒部と、を備える流路部材が嵌合されており、前記内筒部の一端が前記空気通路に連通され、前記内筒部の他端に前記噴射口が形成されて前記多孔質体が設けられていることが好ましい。
【0010】
これにより、ステム内を流通する液体は、ステムの上端から外筒部の内側に流入する。一方、空気通路内を流通する空気は、内筒部の一端から内筒部の内側に流入し、内筒部の他端の噴射口から多孔質体を通過して噴射される。このとき、液体が流通する流路の中心部分に噴射口が配設されるので、流通する液体の中心部分から多数の空気流が噴射され、液体に均等に空気が吹き付けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る吐出器によれば、流通路内を流通する液体に多数の空気流を吹き付けて発泡させるので、粘度の高い液体を使用した場合であっても十分に発泡させることができ、適正な泡質の泡をノズル孔から吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための吐出器の半断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための吐出器の使用状態を表した半断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための吐出器の使用状態を表した半断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を説明するための押下ヘッドの断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を説明するためのポンプの半断面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態を説明するためのポンプの半断面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態を説明するためのポンプの半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る吐出器の実施の形態について、図面に基いて説明する。
なお、本実施の形態では、吐出器1からみて押下ヘッド4側(図1における上側)を上方とし、その反対側(図1における下側)を下方とする。また、図1に示す符号Oは、吐出器1の中心軸線を示しており、以下、単に軸線Oと記す。また、この軸線O方向を、以下、単に「軸方向」と記し、軸線Oに直交する方向(押下ヘッド4の径方向)を、以下、単に「径方向」と記し、軸線O回りの方向を、以下、単に「周方向」と記す。
【0014】
図1に示すように、吐出器1は、図示せぬ容器の口部に取り付けられて容器内の液体を泡状にして吐出するフォーマポンプ式の吐出器である。吐出器1の概略構成としては、キャップ2と、ポンプ3と、押下ヘッド4と、を備えている。
【0015】
[キャップ]
キャップ2は、図示せぬ容器口部に装着(螺着)されるキャップ体である。このキャップ2は、軸線Oに対して垂直に配設された円環状の天壁部20と、天壁部20の外縁から垂下された筒状の周壁部21と、天壁部20の内縁に立設されたガイド筒部22と、を備えている。天壁部20の下面には、ポンプ3を嵌合させるための嵌合部23が設けられている。この嵌合部23は、周壁部21の内側に配設された二重筒構造の筒部であり、天壁部20の下面に垂設されている。周壁部21の内周面には、図示せぬ容器口部に螺着させるための雌ねじ24が形成されている。ガイド筒部22は、二重筒構造の筒部であり、天壁部20の内縁に立設された外筒部25と、外筒部25の上端から径方向内側に突出して外筒部25の全周に亘って形成された円環状の上壁部26と、上壁部26の内縁から垂下された内筒部27と、を備えている。内筒部27は、天壁部20の下方まで延設されており、内筒部27の内周面には、軸方向に延在する凸リブ28が周方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0016】
[ポンプ]
ポンプ3は、図示せぬ容器内から供給された液体を移送すると共に外部から供給された空気を移送するポンプである。このポンプ3の概略構成としては、ステム5と、液用シリンダ6と、液用ピストン7と、空気用シリンダ8と、空気用ピストン9と、コイルスプリング10と、弁部材11と、液吐出弁12と、を備えている。
【0017】
ステム5は、軸線Oを中心軸にして軸方向に延設された筒部である。このステム5は、上方付勢状態で下方移動可能にキャップ2の天壁部20(ガイド筒部22)の内側に挿通されており、ステム5の上部は、キャップ2のガイド筒部22の内側から上方に突出されている。ステム5の軸方向中間部の外周面には、径方向外側に突出したフランジ部50が全周に亘って形成されている。また、このフランジ部50よりも上方のステム5の外周面には、フランジ部50の上面から軸方向に沿って上方に延びた凸リブ51が周方向に間隔をおいて複数配設されている。また、ステム5の上部の内側には、軸方向に延在する筒状の弁座52が形成されており、この弁座52の下端部は、ステム5の内周面に全周に亘って連結されている。また、弁座52の上端面は、下方に行くに従い漸次縮径されたテーパー面となっている。また、ステム5の内周面には、弁座52の下面から軸方向に沿って下方に延在する縦リブ53が突設されている。この縦リブ53は、周方向に間隔をあけて複数配設されている。
【0018】
液用シリンダ6は、内部に液用ピストン7が収容された略円筒状の筒部であり、空気用シリンダ8は、内部に空気用ピストン9が収容された略円筒状の筒部である。これら液用シリンダ6および空気用シリンダ8は、それぞれ軸線Oを中心軸にして軸方向に延設されており、空気用シリンダ8の下方に液用シリンダ6が配設されている。また、液用シリンダ6及び空気用シリンダ8は一体に形成されており、大径の空気用シリンダ8の下端に小径の液用シリンダ6の上端が連設され、空気用シリンダ8の内部と液用シリンダ6の内部とが連通されている。
【0019】
液用シリンダ6の下端部には、小径の縮径部60が形成されており、その縮径部60内周面には軸方向に延びた縦リブ63が周方向に間隔をあけて複数突設されている。この縮径部60の下端部は、下方に向かって漸次縮径されたテーパー形状となっている。また、液用シリンダ6の下端には、軸線Oを中心軸にして軸方向に延設された接続筒61が連設されており、この接続筒61には、図示せぬ容器内の液体を吸引するためのチューブ62が接続されている。このチューブ62を介して、液用シリンダ6の内部が図示せぬ容器内と連通されている。
【0020】
空気用シリンダ8の上端部には、径方向外側に突出したフランジ部80が全周に亘って形成されている。このフランジ部80の上面には、上記したキャップ2の嵌合部23に嵌合される嵌合部81が立設されており、これらの嵌合部23,81が嵌合されることで、空気用シリンダ8がキャップ2の天壁部20に取り付けられて天壁部20から垂下されている。
【0021】
液用ピストン7は、液用シリンダ6の内側に収容されて液用シリンダ6の内周面に沿って軸方向に摺動可能な筒状の部材であり、ステム5の下端部に装着されている。詳しく説明すると、液用ピストン7は、上部がステム5内に液密状態で嵌合された嵌合筒部70と、液用シリンダ6内に摺動可能に嵌合された摺動筒部71と、を備えている。嵌合筒部70の下端部は、摺動筒部71の内側に挿入されて摺動筒部71の中間部の内周面に連結されている。摺動筒部71は、上端側および下端側に向かうに従いそれぞれ漸次拡径された筒部であり、摺動筒部71の上端部外周面と下端部外周面とは、液用シリンダ6の内周面に全周に亘ってそれぞれ摺接されている。これにより、液用シリンダ6内において液用ピストン7が液密状態で軸方向に摺動可能とされている。また、嵌合筒部70は、上部が小径で下部が大径の多段状の筒部となっており、嵌合筒部70の軸方向中間部に段差部72が形成されている。また、嵌合筒部70の上端部の内周面は縮径されており、後述する弁部材11の上部弁部11aによって開閉される弁座となっている。
【0022】
空気用ピストン9は、空気用シリンダ8の内側に収容されて空気用シリンダ8の内周面に沿って軸方向に摺動可能な筒状の部材であり、ステム5の上部に外装されている。詳しく説明すると、空気用ピストン9は、円環状の隔壁部90と、隔壁部90の内縁に配設されて内側にステム5の上部が摺動可能に嵌合された嵌合筒部91と、隔壁部90の外縁に設けられて空気用シリンダ8内に摺動可能に嵌合された摺動筒部92と、を備えている。
【0023】
隔壁部90には、空気用シリンダ8内に空気を流入させるための貫通孔93が形成されており、隔壁部90の下面には、その貫通孔93を開閉する弁体94が設けられている。弁体94は、隔壁部90の下面に沿って配置された弾性変形可能な板バネ状の部材であり、隔壁部90の下面に密接されて貫通孔93の下端面を閉塞している。
嵌合筒部91の内側は、ステム5のフランジ部50よりも上方の部分が挿入されており、嵌合筒部91の内周面には、ステム5の凸リブ51が摺接されている。また、嵌合筒部91の下端面は、ステム5のフランジ部50の上面に当接されている。
摺動筒部92は、上端側および下端側に向かうに従いそれぞれ漸次拡径された筒部であり、摺動筒部92の上端部外周面と下端部外周面とは、空気用シリンダ8の内周面に全周に亘ってそれぞれ摺接されている。これにより、空気用シリンダ8内において空気用ピストン9が気密状態で軸方向に摺動可能とされている。
【0024】
コイルスプリング10は、液用ピストン7を上方に付勢する付勢部材であり、軸線Oに沿って延設されている。コイルスプリング10は、上部が液用ピストン7の嵌合筒部70の下部の内側に配置されるとともに、下部が液用シリンダ6の縮径部60の内側に配置されており、液用ピストン7の段差部72と液用シリンダ6の縦リブ63との間に介装されている。
【0025】
弁部材11は、液用シリンダ6及び液用ピストン7の内側に配置された棒状の部材であり、コイルスプリング10の内側に挿通されている。弁部材11の上端部には、液用ピストン7の上端部に着座および離反可能な中空逆円錐状の上部弁部11aが形成されている。弁部材11の下端部には、液用シリンダ6の縮径部60のテーパー状の下端部に着座および離反可能な下部弁部11bが形成されている。
【0026】
液吐出弁12は、ステム5内の液体の流通を規制する弁体であり、球体状の部材である。この液吐出弁12は、上記したステム5の弁座52の上端面に着座及び離間可能に載置されている。
【0027】
[押下ヘッド]
押下ヘッド4は、使用者によって押し下げ操作される部材であり、ステム5の上端に取り付けられている。この押下ヘッド4には、ステム5の上部の外側に嵌合されたヘッド本体30と、ヘッド本体30の内側に嵌合されていると共にステム5の上端部に連結された流路部材40と、が備えられている。
【0028】
ヘッド本体30は、軸線Oに沿って延在する円筒形状の周壁部31と、周壁部31の上端を閉塞する天壁部32と、周壁部31の上端部から突設されて周壁部31の内側に連通された筒状のノズル部33と、を備えている。
【0029】
周壁部31の下端部は、キャップ2のガイド筒部22の内側に隙間をあけて挿入されている。また、周壁部31の下端部には、内径が拡径されていると共に上記した空気用ピストン9の嵌合筒部91の上端部が摺動可能に嵌合された嵌合部34が形成されている。この嵌合部34の内周面には、空気用ピストン9の嵌合筒部91の上端部の外周面が全周に亘って摺接されており、これにより、嵌合部34内の気密状態が保持されている。また、周壁部31の内周面には、嵌合部34の上端から軸方向上側に向けて延在した凹溝35が形成されている。
【0030】
ノズル部33は、周壁部31の外周面から斜め上方に向けて延設されており、ノズル部33の先端には、泡を吐出させるノズル孔37が形成されている。
天壁部32は、ノズル部33の上面に沿って傾斜されており、この天壁部32の上面には、使用者が指等で押圧する押圧面36が形成されている。
【0031】
流路部材40は、周壁部31の内側に嵌合された二重筒構造の部材であり、その概略構成としては、ステム5の上端部の内側に嵌合された嵌合筒部41と、その嵌合筒部41を介してステム5の内側に連通された外筒部42と、外筒部42の内側に配設された内筒部43と、を備えている。
【0032】
嵌合筒部41の内周面には、液吐出弁12の浮き上がりを規制する凸リブ44が突設されている。外筒部42は、嵌合筒部41の上端に連設されており、周壁部31の内側に嵌合されている。内筒部43の下端は、径方向に延在する横筒45に連通されており、この横筒45を介して上記した周壁部31の凹溝35内に連通されている。内筒部43の上端部には、空気用シリンダ8から後述する空気通路14を通って移送された空気を噴射する噴射口47が形成された装着筒部46が装着されており、その噴射口47の内側には、空気が通過可能な複数の孔を有する多孔質体48が嵌合されている。この多孔質体48は、噴射口47から突出されており、先端面だけでなく外周面にも多孔質面が形成された構成となっている。なお、噴射口47は、ノズル部33内に向けて開口されており、多孔質体48は、ノズル部33の中心部分に配設されている。また、多孔質体48としては、例えば焼結体や含浸材、メッシュ、スポンジ等を用いることが可能である。
【0033】
上記した構成の押下ヘッド4には、ステム5の上端からノズル孔37まで延在し、液用シリンダ6内からステム5内を通って移送された液体が流通する流通路13が形成されている。すなわち、流通路13は、外筒部42内、ヘッド本体30の周壁部31内、及びノズル部33内によって形成されており、この流通路13は、流路部材40の嵌合筒部41を介してステム5内に連通されている。
【0034】
また、空気用シリンダ8内の空気を噴射口47に移送する空気通路14は、ステム5の凸リブ51間の隙間、ヘッド本体30の嵌合部34内、及びヘッド本体30の凹溝35によって形成されており、この空気通路14は、横筒45を介して内筒部43内に連通されている。
【0035】
次に、上記した構成の吐出器1の作用について説明する。
【0036】
図1に示すように、使用前の吐出器1は、コイルスプリング10の付勢力により液用ピストン7が押し上げられており、これにより、液用ピストン7の上端に弁部材11の上部弁部11aが着座されて液用シリンダ6の上端開口部が閉じられている。また、液用ピストン7が押し上げられることで、液用ピストン7の嵌合筒部70に連結されたステム5が押し上げられると共に、ステム5を介して押下ヘッド4が押し上げられている。このとき、空気用ピストン9も空気用シリンダ8内における上側の位置に配置され、空気用ピストン9の嵌合筒部91の下端はステム5のフランジ部50の上面に当接されており、空気通路14の流入部が閉塞されている。また、空気用ピストン9の弁体94は、隔壁部90の下面に密接され、隔壁部90に形成された貫通孔93が閉塞されており、空気用シリンダ8が密閉されている。
【0037】
上記した構成の吐出器1を使用する際は、ノズル孔37を吐出方向に向け、指等で押下ヘッド4の押圧面36を押圧し、押下ヘッド4を押し下げる。押下ヘッド4が押し下げられると、押下ヘッド4に嵌合されたステム5とステム5に嵌合された液用ピストン7とが一体的に押し下げられる。押下ヘッド4の押し下げ当初は、図2に示すように、空気用ピストン9は動かず、空気用ピストン9の嵌合筒部91の上端がヘッド本体30の嵌合部34の内周面上端に当接するところまで、ステム5及び液用ピストン7が押し下げられる。このようにステム5が押し下げられると、ステム5のフランジ部50の上面と空気用ピストン9の嵌合筒部91の下端面との間に隙間が形成される。これにより、ステム5の隣り合う凸リブ51間の空間の下端が空気用シリンダ8内に連通され、空気通路14の流入部が開放され、この空気通路14を介して空気用シリンダ8の内部が流路部材40の横筒45内に連通され、空気用シリンダ8の内部と噴射口47とが連通される。
【0038】
さらにこの際、弁部材11の上部弁部11aが液用ピストン7の上端部内に嵌合されているので、液用ピストン7が押し下げられることによって、液用ピストン7と共に弁部材11が下降し、弁部材11の下部弁部11bが液用シリンダ6の縮径部60の下端開口部に着座されて液用シリンダ6の下端開口部が閉じられる。
【0039】
続いて、図3に示すように、押下ヘッド4をさらに押し下げると、押下ヘッド4と共にステム5及び液用ピストン7が押し下げられ、液用ピストン7が、コイルスプリング10を圧縮変形させつつ、液用シリンダ6の内周面に沿って下方に摺動する。これにより、液用ピストン7の上端から弁部材11の上部弁部11aが離間されて液用ピストン7の上端が開放されると共に、上部弁部11aがステム5内に嵌合され、上部弁部11aの外周面がステム5内の縦リブ53に摺接される。これにより、液用シリンダ6の内部とステム5の内部とが液用ピストン7を介して連通される。また、液用シリンダ6の縮径部60の下端開口部が弁部材11の下部弁部11bで閉塞されている。したがって、液用ピストン7によって圧縮された液用シリンダ6内の液体は、液用ピストン7の上端開口部からステム5内に流入し、さらに、隣り合う縦リブ53間を通って弁部材11の上部弁部11aの上方に流通する。このとき、液圧によって液吐出弁12がステム5の弁座52から浮き上がって離間されて弁座52が開放されるので、ステム5内を流通する液体は、ステム5の弁座52内を通って流通路13内に流入する。すなわち、ステム5内を流通する液体は、ステム5の弁座52内を通って流路部材40の嵌合筒部41内に流入し、嵌合筒部41内から流路部材40の外筒部42内に流入し、さらに、外筒部42の上端からヘッド本体30の周壁部31内を通ってノズル部33内を流通する。
【0040】
一方、図3に示すように押下ヘッド4が押し下げられると、押下ヘッド4のヘッド本体30の周壁部31が空気用ピストン9の嵌合筒部91の上端部に係止され、押下ヘッド4と共に空気用ピストン9が押し下げられ、空気用ピストン9が空気用シリンダ8の内周面に沿って下方に摺動する。このとき、空気用ピストン9の弁体94は、隔壁部90の下面に密接されたままの状態であり、隔壁部90に形成された貫通孔93が閉塞されている。これにより、空気用ピストン9よりも下方の空気用シリンダ8内(下室)の空気が圧縮され、この空気が、上記したステム5のフランジ部50の上面と空気用ピストン9の嵌合筒部91の下端面との間から空気通路14内に流入し、空気通路14から流路部材40の横筒45内に移送される。すなわち、上記した空気は、ステム5のフランジ部50の上面と空気用ピストン9の嵌合筒部91の下端面との間からステム5の凸リブ51間に流入し、凸リブ51間から嵌合部34内を経由してヘッド本体30の凹溝35内に流入し、その凹溝35から横筒45内に流入する。横筒45内に流入した空気は、横筒45内から内筒部43内を通って装着筒部46内に流入し、噴射口47からノズル部33内に向けて噴射される。このとき、噴射口47から噴射される空気は、多孔質体48内を通過して噴射されるので、シャワー状に多数に分散された状態で噴射される。
【0041】
またこのとき、上述したようにノズル部33内には液体が流通しているので、噴射口47から多数に分散された状態で噴射される空気は、ノズル部33内を流通する液体に向けて噴射される。これにより、ノズル部33内を流通する液体に多数の空気流が吹き付けられ、液体が泡状に発泡される。そして、その泡はノズル孔37から外部に吐出される。このとき、ノズル部33の中心部分に噴射口47が配設されており、流通する液体の中心部分から多数の空気流が噴射されるので、ノズル部33内を流通する液体に均等に空気が吹き付けられる。
【0042】
その後、押下ヘッド4の押し下げを解除すると、吐出器1は、コイルスプリング10の弾性復元力により押し下げ前の状態に戻り、泡の吐出が停止される。
具体的に説明すると、コイルスプリング10の弾性復元力により液用ピストン7が押し上げられ、液用ピストン7が液用シリンダ6の内周面に沿って上方に摺動する。これにより、液用ピストン7の上端内周面に弁部材11の上部弁部11aが着座されて液用ピストン7の上端が閉塞され、液用シリンダ6からステム5内への液体の流通が遮断される。また、液用シリンダ6の縮径部60の下端開口部から弁部材11の下部弁部11bが離間されて液用シリンダ6の下端開口部が開放され、液用シリンダ6内と図示せぬ容器内とがチューブ62を介して連通される。そして、液用ピストン7の上昇により液用シリンダ6内が減圧されることで、図示せぬ容器内の液体がチューブ62内を通って液用シリンダ6の縮径部60の下端開口部から液用シリンダ6内に流入する。
【0043】
また、上昇する液用ピストン7とともにステム5及び押下ヘッド4は一体的に上昇する。ステム5が上昇することにより、空気用ピストン9の嵌合筒部91の下端面にステム5のフランジ部50の上面が当接され、空気通路14の流入部が閉塞され、噴射口47への空気の移送が停止される。また、ステム5のフランジ部50が空気用ピストン9の嵌合筒部91の下端を上向きに押圧することで、空気用ピストン9が押し上げられ、空気用ピストン9が空気用シリンダ8の内周面に沿って上方に摺動する。これにより、空気用ピストン9よりも下方の空気用シリンダ8内(下室)の内圧が負圧状態となり、空気用ピストン9の弁体94が下方に弾性変形し、隔壁部90に形成された貫通孔93が開放され、この貫通孔93から空気用シリンダ8内(下室)に外気が流入する。
【0044】
上記した吐出器1によれば、流通路13(ノズル部33)内を流通する液体に多数の空気流を吹き付けて発泡させるので、粘度の高い液体を使用した場合であっても十分に発泡させることができ、適正な泡質の泡をノズル孔37から吐出させることができる。
【0045】
また、上記した吐出器1によれば、噴射口47が形成された内筒部43を有する流路部材40が備えられていることで、噴射口47が流通路13(ノズル部33)の中心位置に配設され、ノズル部33内を流通する液体に均等に空気が吹き付けられるので、液体の一部が発泡されずに吐出されることを抑制することができ、適正な泡質の泡を吐出させることができる。
また、上記した噴射口47には、多孔質体48が突出された状態で設けられており、多孔質体48の先端面及び外周面に多孔質面が形成されているので、噴射口47の先端側に向けて空気が噴射されると共に、噴射口47の径方向外側に向けて空気が噴射される。これにより、流通路13内を流通する液体に満遍なく空気を吹き付けることができる。
【0046】
以上、本発明に係る吐出器の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、噴射口47がノズル部33内に配設されているが、本発明は、図4に示すように、押下ヘッド4の周壁部31(縦筒部)内に噴射口147が配設されていてもよい。詳しく説明すると、流路部材40の内筒部143の上端が外筒部42よりも低い位置に形成されており、この内筒部143の上端(噴射口147)に多孔質体48が嵌合されている。これにより、ノズル部133を小径にすることができると共に、多孔質体48が外気に晒されにくくなり、多孔質体48の目詰まりを抑制することができる。
【0047】
また、上記した実施の形態では、空気用ピストン9の隔壁部90に板バネ状の弁体94が設けられているが、本発明は、他の弁体を用いることも可能である。
例えば、図5に示すように、空気用ピストン9の隔壁部90の下方に配設されていると共に摺動筒部92の内側に嵌合される外筒部194aと、その外筒部194aの内周面の上端部から下方に向かって漸次縮径されたテーパー状の内筒部194bと、を備える弁体194を用いることも可能である。上記した内筒部194bの内周面の下部は、嵌合筒部91の外周面に密接されており、これにより、空気用シリンダ8が気密状態で密閉されている。そして、空気用シリンダ8内が負圧になると、内筒部194bの下部が拡径されて内筒部194bが嵌合筒部91の外周面から離間し、空気用シリンダ8は隔壁部90の貫通孔93を介して開放される。
また、図6に示すように、空気用ピストン9の隔壁部90の下方に配設されていると共に嵌合筒部91の内側に嵌合される内筒部294aと、その内筒部294aの外周面の上端部から下方に向かって漸次拡径されて摺動筒部92の内周面に密接されたテーパー状の外筒部294bと、を備える弁体294を用いることも可能である。
さらに、空気用ピストン9の隔壁部90の下方に、嵌合筒部91の外周面と摺動筒部92の内周面との間に嵌め込まれる円環板状の可動メンブラン(弁体)を配設してもよく、これにより、空気用シリンダ8内が正圧になると、可動メンブランが隔壁部90の下面に当接して貫通孔93を閉塞し、反対に空気用シリンダ8内が負圧になると、可動メンブランが下降して隔壁部90の下面から離間し、貫通孔93が開放される。
【0048】
また、上記した実施の形態では、ステム5に外装される嵌合筒部91と空気用シリンダ8内に摺動可能に嵌合された摺動筒部92とを一体に形成した空気用ピストン9が用いられているが、本発明は、嵌合筒部91と摺動筒部92とを別部品にした構成にすることも可能である。
例えば、図7に示すように、ステム5のフランジ部50の上方には、内側にステム5が挿通された嵌合筒部材391が配設されており、この嵌合筒部材391の下端面がステム5のフランジ部50の上面に当接されている。また、この嵌合筒部材391の外周面には、周方向に延在する凹溝391aが形成されていると共に、その凹溝391aの上方には径方向外側に突出したフランジ部391bが全周に亘って形成されている。一方、空気用ピストン309は、空気用シリンダ8の内側に摺動可能に嵌合された摺動筒部392と、摺動筒部392の内側に配設された内筒部393と、を備えている。内筒部393の下端部は、摺動筒部392の軸方向中間部に全周に亘って連結されている。また、内筒部393の内周面の下端部には、径方向内側に突出された凸部394が周方向に間隔をあけて配設されており、この凸部394は、上記した嵌合筒部材391の凹溝391aの下端面に当接されている。そして、空気用シリンダ8は、隣り合う凸部394間、及び、内筒部393の内周面と嵌合筒部材391の外周面との間を介して開放されている。
【0049】
上記した構成の吐出器1では、押下ヘッド4の押し下げ当初は、嵌合筒部材391及び空気用ピストン309は動かず、嵌合筒部材391の上端がヘッド本体30の嵌合部34の内周面上端に当接するところまで、ステム5が押し下げられる。これにより、ステム5のフランジ部50の上面と嵌合筒部材391の下端面との間に隙間が形成され、空気通路14の流入部が開放される。続いて、押下ヘッド4をさらに押し下げると、ヘッド本体30の周壁部31が嵌合筒部材391の上端部に係止され、押下ヘッド4と共に嵌合筒部材391が押し下げられる。このとき、空気用ピストン309は動かない。そして、内筒部393の上端面が嵌合筒部材391のフランジ部391bの下面に当接することで、空気用シリンダ8内が気密状態で密閉されると共に、空気用ピストン309が嵌合筒部材391のフランジ部391bによって押圧されて空気用シリンダ8の内周面に沿って下方に摺動する。これにより、空気用シリンダ8内の空気が空気通路14を通って噴射口47に移送される。
【0050】
また、上記した実施の形態では、押下ヘッド4が、ヘッド本体30内に流路部材40が嵌合された構成からなり、この流路部材40に噴射口47が形成されていると共に多孔質体48が装着されているが、本発明は、上記した流路部材40を省略することも可能である。例えば、ヘッド本体30の周壁部31の内周面に噴射口を形成し、その噴射口に多孔質体を設けることも可能である。
また、上記した実施の形態では、噴射口47から多孔質体48を突出させて設けられているが、本発明は、例えばメッシュシート等の平面的な多孔質体が噴射口47を閉塞するように配設されていてもよい。
【0051】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 吐出器
3 ポンプ
4 押下ヘッド
5 ステム
6 液用シリンダ
7 液用ピストン
8 空気用シリンダ
9 空気用ピストン
13 流通路
14 空気通路
37 ノズル孔
40 流路部材
42 外筒部
43 内筒部
47 噴射口
48 多孔質体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムを有するポンプと、該ステムの上端に設けられた押下ヘッドと、を備え、
前記ポンプによって移送された液体及び空気からなる泡を、前記押下ヘッドに形成されたノズル孔から吐出する吐出器であって、
前記ポンプには、前記ステムに連係して摺動する液用ピストンが内部に収容された液用シリンダと、前記ステムに連係して摺動する空気用ピストンが内部に収容された空気用シリンダと、が備えられ、
前記押下ヘッドには、前記ステムの上端から前記ノズル孔まで延在し、前記液用シリンダ内から前記ステム内を通って移送された液体が流通する流通路が形成され、
該流通路の内側には、前記空気用シリンダから空気通路を通って移送された空気を噴射する噴射口が配設され、
該噴射口には、前記空気が通過可能な多孔質体が設けられていることを特徴とする吐出器。
【請求項2】
請求項1に記載の吐出器において、
前記流通路の内側には、前記ステムの内側に連通された外筒部と、該外筒部の内側に配設された内筒部と、を備える流路部材が嵌合されており、
前記内筒部の一端が前記空気通路に連通され、前記内筒部の他端に前記噴射口が形成されて前記多孔質体が設けられていることを特徴とする吐出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−173726(P2010−173726A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20823(P2009−20823)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】