説明

吐出方法

【課題】吐出量を精度良く制御できる吐出方法を提供すること。
【解決手段】液滴吐出ヘッドのノズルから、機能液を液滴にしてワークに吐出する吐出方法に係る。ノズルから液滴を予備吐出領域に吐出して、ノズルを加熱するステップS6の予備吐出工程と、ノズルから液滴を吐出量測定部に吐出するステップS8の計測用吐出工程と、吐出量測定部が、液滴吐出ヘッドから吐出された機能液の吐出量を計測するステップS7及びステップS9の計測工程と、ノズルから吐出する液滴の吐出量を調整するステップS10の吐出量調整工程と、ノズルから液滴をワークに吐出するステップS11の描画工程とを有し、ステップS6の予備吐出工程では、ステップS11の描画工程におけるノズルの温度である描画ノズル温度と略同じノズル温度になるまで、液滴を吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置を用いて吐出する吐出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに対して液滴を吐出する方法として、インクジェット式の液滴吐出装置を用いて吐出する方法が知られている。液滴吐出装置は、基板等のワークを載置してワークを一方向に移動させるテーブルと、テーブルの上方位置において、テーブルの移動方向と直交する方向に配置されるガイドレールに沿って移動するキャリッジとを備えている。キャリッジはインクジェットヘッド(以下、液滴吐出ヘッドと称す)を配置し、ワークに対して液滴を吐出して、塗布していた。
【0003】
ワークに対して、液滴にして吐出して塗布する機能液は、各種の材料が用いられている。機能液は、温度により粘度の変わる物が多く、粘度が変わることにより流体抵抗が変化する。流体抵抗が変わることにより、液滴吐出ヘッド内の流路を流れる機能液の流速が変化する。機能液の流速が変化することにより、1ドットあたりの吐出量が変動し、所望する量の機能液を塗布することが困難であった。
【0004】
この課題を解決するために、特許文献1において、1ドットあたりの吐出量を制御する方法が開示されている。これによれば、液滴吐出ヘッドのキャビティを加圧する圧電素子を駆動する駆動波形と、駆動電圧と、吐出する液体の温度を制御するものであった。また、液体の温度を制御するために、液滴吐出ヘッド、供給パイプ、タンクにヒータを設置していた。
【0005】
【特許文献1】特開2003−26679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液滴吐出ヘッドのキャビティを加圧するとき、圧電素子の動作に加えられるエネルギの一部は、熱に変換し、液滴吐出ヘッドの温度を上昇させる要因となっている。また、圧電素子が駆動されていないとき、圧電素子は発熱せず、液滴吐出ヘッドは放熱するため、温度が変動する要因となっている。液滴吐出ヘッド、供給パイプ、タンクにヒータを用いて加熱する方法は、装置を暖め、短い時間で液温を所定の温度にするのに有効であった。一方、液滴吐出ヘッドの動作による温度変動を、ヒータ加熱で一定の温度にする方法では、液温の変動に追従した制御を為し得ない場合があった。
【0007】
描画するときに、吐出量は温度の影響を受けることから、描画時前におけるヘッド温度は、描画時と同じヘッド温度にする必要がある。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、吐出量を精度良く制御できる吐出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の吐出方法は、ノズルから機能液を吐出する吐出方法であって、ノズルから機能液を予備吐出領域に吐出する予備吐出工程と、ノズルから機能液をワークに吐出する吐出工程を有し、予備吐出工程では、ノズルが吐出工程における温度と略同じ温度になるまで、機能液を吐出することを特徴とする。
【0010】
この吐出方法によれば、ノズルから、機能液を液滴にしてワークに吐出して、描画する。この吐出方法は、予備吐出工程と、吐出工程とを有している。
【0011】
予備吐出工程では、ノズルから液滴を予備吐出領域に吐出する。このとき、吐出工程におけるノズルの温度である描画ノズル温度と略同じノズル温度になるまで、液滴を吐出する。吐出工程では、ノズルの温度が描画ノズル温度と略同じノズル温度となっている状態にて、ノズルから液滴をワークに吐出する。
【0012】
機能液は、温度が変わると粘性が変わる為、液滴吐出ヘッド内で、機能液に圧力が加わり、ノズル等の流路を通過するとき、流体抵抗が変化して、ノズルから吐出される機能液の吐出量が変化する。
【0013】
予備吐出工程において、ノズルは、描画ノズル温度となっている。吐出工程では、描画ノズル温度のノズルから液滴を吐出する。その結果、吐出するときにおける、吐出量の変動を少なくして、吐出することができる。
【0014】
本発明の吐出方法は、ノズルから吐出する機能液の吐出量を調整する吐出量調整工程をさらに含むことを特徴とする。
【0015】
この吐出方法によれば、吐出量調整工程を含んでいる。吐出量調整工程では、ノズルから吐出する液滴の吐出量を調整する。従って、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0016】
本発明の吐出方法は、ノズルが前記機能液を吐出して、吐出工程における温度に達するまでの吐出回数を計測する予備計測工程を有し、予備吐出工程では、吐出回数の機能液を吐出することを特徴とする。
【0017】
この吐出方法によれば、予備計測工程を有している。予備計測工程では、ノズルが液滴を吐出して、描画ノズル温度に達するまでの吐出回数を計測する。そして、予備吐出工程では、描画ノズル温度に達するまでの吐出回数の液滴を吐出する。従って、ノズル温度が、長時間吐出しないときのノズル温度になっているときであっても、予備吐出工程では、吐出工程における描画ノズル温度にすることができる。
【0018】
本発明の吐出方法は、予備吐出工程では、吐出工程における、機能液の吐出と吐出停止との吐出パターンと、略同じ吐出パターンを用いて吐出することを特徴とする。
【0019】
この吐出方法によれば、予備吐出工程において、ノズルから液滴を吐出するとき、吐出と吐出停止との吐出パターンは、吐出工程における、吐出パターンと、略同じ吐出パターンを用いて吐出している。
【0020】
予備吐出工程と、吐出工程とで、略同じ吐出パターンで吐出する為、液滴吐出ヘッドは、略同じ温度分布となる。従って、吐出工程と同じ温度分布の液滴吐出ヘッドにおけるノズルから液滴が吐出される。その結果、吐出工程おける吐出量の変動が少なく吐出することができる。
【0021】
本発明の吐出方法は、吐出工程における、機能液の吐出時間と吐出停止時間との比率と、略同じ比率で形成されている、機能液の吐出と吐出停止との予備吐出パターンを形成する予備吐出パターン形成工程を備え、予備吐出工程では、予備吐出パターンを用いて、吐出することを特徴とする。
【0022】
この吐出方法によれば、予備吐出パターン形成工程を備えている。予備吐出パターン形成工程では、吐出工程における、液滴の吐出時間と吐出停止時間との比率と、略同じ比率である予備吐出パターンを形成する。そして、予備吐出工程では、予備吐出パターンを用いて、吐出する。
【0023】
予備吐出パターン形成工程では、予備吐出で、ノズルの温度が描画ノズル温度となるのにかかる吐出回数に相当する吐出回数の予備吐出パターンを形成することができる。吐出工程において、液滴を吐出して描画するときの吐出回数が多い場合には、予備吐出工程で、吐出工程における吐出パターンを用いて吐出するとき、予備吐出で吐出する吐出回数が多過ぎる場合がある。予備吐出パターンでは、予備吐出に適した吐出回数を設定することができる。従って、吐出工程における吐出回数が、予備吐出で、ノズルの温度が描画ノズル温度となるのにかかる吐出回数より多いとき、予備吐出工程で、描画吐出パターンを用いる場合に比べて、予備吐出パターンを用いる方が、少ない吐出回数で、ノズルの温度を描画ノズル温度とすることができる。その結果、予備吐出に掛かる吐出回数を最適に設定できる為、省資源に予備吐出することができる。
【0024】
本発明の吐出方法では、予備吐出工程は、ノズルの温度を計測するノズル温度計測工程と、ノズル温度計測工程で計測するノズルの温度により、ノズルから機能液を吐出するか否かの判断をする温度判断工程とを有し、予備吐出工程は、ノズル温度計測工程と、温度判断工程とを繰り返しながら、ノズルの温度が所定の温度に達するように機能液の吐出を行うことを特徴とする。
【0025】
この吐出方法によれば、ノズル温度計測工程と、温度判断工程とを備えている。ノズル温度計測工程では、前記液滴吐出ヘッドのノズル温度を計測する。温度判断工程では、ノズル温度計測工程で計測するノズル温度が所定の温度に達しているかを判断する。温度判断工程で、ノズル温度が所定の温度に達していないとき、ノズルから液滴を吐出する。そして、ノズル温度計測工程と、温度判断工程と、吐出とを繰り返して、ノズル温度が、所定の温度に達するようにする。
【0026】
ノズル温度を計測して、ノズル温度が所定の温度より低いときに、ノズルから液滴を吐出して、ノズル温度を上昇させている。ノズル温度が所定の温度に達するまで、これを繰り返している為、ノズル温度を、確実に所定の温度にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施例について図面に従って説明する。
尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0028】
(第1の実施形態)
本実施形態では、液滴吐出装置と、この液滴吐出装置を用いて液滴を吐出して描画する、本発明の特徴的な吐出方法の例について図1〜図7に従って説明する。
【0029】
(液滴吐出装置)
最初に、ワークに液滴を吐出して塗布する液滴吐出装置1について図1〜図3に従って説明する。液滴吐出装置に関しては様々な種類の装置があるが、インクジェット法を用いた装置が好ましい。インクジェット法は微小な液滴の吐出が可能であるため、微細加工に適している。
【0030】
図1は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。液滴吐出装置1により、機能液が吐出され塗布される。図1に示すように、液滴吐出装置1には、直方体形状に形成される基台2が備えられている。本実施形態では、この基台2の長手方向をY方向とし、同Y方向と直交する方向をX方向とする。
【0031】
基台2の上面2aには、Y方向に延在する一対の案内レール3a,3bが同Y方向全幅にわたり凸設されている。その基台2の上側には、一対の案内レール3a,3bに対応する図示しない直動機構を備えた走査手段を構成するステージ4が取付けられている。そのステージ4の直動機構は、例えば案内レール3a,3bに沿ってY方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを備えたネジ式直動機構であって、その駆動軸が、所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転するY軸モータ(図示しない)に連結されている。そして、所定のステップ数に相対する駆動信号がY軸モータに入力されると、Y軸モータが正転又は逆転して、ステージ4が同ステップ数に相当する分だけ、Y軸方向に沿って所定の速度で往動又は、復動する(Y方向に走査する)ようになっている。
【0032】
さらに、基台2の上面2aには、案内レール3a,3bと平行に主走査位置検出装置5が配置され、ステージ4の位置が計測できるようになっている。
【0033】
基台2において、案内レール3aと主走査位置検出装置5との間、及び案内レール3bと主走査位置検出装置5との間には、通気孔6が形成されている。そして、液滴吐出装置1の上部の空気が、通気孔6を通過して、床の方向(図中下方向)に流動するようになっている。
【0034】
そのステージ4の上面には、載置面7が形成され、その載置面7には、図示しない吸引式の基板チャック機構が設けられている。そして、載置面7にワークとしての基板8を載置すると、基板チャック機構によって、その基板8が載置面7の所定位置に位置決め固定されるようになっている。
【0035】
基台2のX方向両側には、一対の支持台9a,9bが立設され、その一対の支持台9a,9bには、X方向に延びる案内部材10が架設されている。
【0036】
案内部材10の上側には、吐出する機能液を供給可能に収容する収容タンク11が配設されている。一方、その案内部材10の下側には、X方向に延びる案内レール12がX方向全幅にわたり凸設されている。
【0037】
案内レール12に沿って移動可能に配置されるテーブルとしてのキャリッジ13は、略直方体形状に形成されている。そのキャリッジ13の直動機構は、例えば案内レール12に沿ってX方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを備えたネジ式直動機構であって、その駆動軸が、所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転するX軸モータ(図示しない)に連結されている。そして、所定のステップ数に相当する駆動信号をX軸モータに入力すると、X軸モータが正転又は逆転して、キャリッジ13が同ステップ数に相当する分だけX方向に沿って往動又は復動する(X方向に走査する)。案内部材10とキャリッジ13との間には、副走査位置検出装置14が配置され、キャリッジ13の位置が計測できるようになっている。そして、キャリッジ13の下面(ステージ4側の面)には、液滴吐出ヘッド15が凸設されている。
【0038】
基台2の上側であって、ステージ4の片側の一方(図中右側)には、クリーニングユニット16が配置されている。クリーニングユニット16は、保守ステージ17と、保守ステージ17の上に配置されている、予備吐出領域としてのフラッシングユニット18、キャッピングユニット19、ワイピングユニット20、吐出量測定部としての重量測定装置21等により構成されている。
【0039】
保守ステージ17は、案内レール3a,3b上に位置し、ステージ4と同様の直動機構を備えている。主走査位置検出装置5を用いて位置を検出し、直動機構で移動することにより、所望の場所に移動し、停止することが可能となっている。
【0040】
フラッシングユニット18は、液滴吐出ヘッド15内の流路を洗浄するとき、液滴吐出ヘッド15から吐出される液滴を受ける装置である。液滴吐出ヘッド15内に固形物が混入した場合に、固形物を液滴吐出ヘッド15から排除するため、液滴吐出ヘッド15から液滴を吐出して洗浄する。この液滴を受ける機能をフラッシングユニット18が行う。
【0041】
キャッピングユニット19は、液滴吐出ヘッド15に蓋をする装置である。液滴吐出ヘッド15から吐出する液滴は、揮発性を有する場合があり、液滴吐出ヘッド15に内在する機能液の溶媒がノズルから揮発すると、機能液の粘度が変わり、ノズルが目詰まりすることがある。キャッピングユニット19は、液滴吐出ヘッド15に蓋をすることで、ノズルが目詰まりすることを防止するようになっている。
【0042】
ワイピングユニット20は、液滴吐出ヘッド15のノズルが配置されているノズルプレートを拭く装置である。ノズルプレートは、液滴吐出ヘッド15において、基板8と対向する側の面に配置されている部材である。ノズルプレートに液滴が付着しているとき、ノズルプレートに付着している液滴と基板8とが接触して、基板8において、予定外の場所に液滴が付着してしまうことがある。ワイピングユニット20は、ノズルプレートを拭くことにより、基板8において、予定外の場所に液滴が付着してしまうことを防止している。
【0043】
重量測定装置21には、電子天秤が設置され、電子天秤には、受け皿が配置されている。液滴が、液滴吐出ヘッド15から受け皿に吐出され、電子天秤が液滴の重量を測定するようになっている。受け皿は、スポンジ状の吸収体を備え、吐出される液滴が、跳ねて、受け皿の外に出ないようになっている。電子天秤は、液滴吐出ヘッド15が液滴を吐出する前後で、受け皿の重量を測定する。吐出前後の受け皿の重量の差分を演算して、吐出する液滴の重量を測定する。
【0044】
保守ステージ17が、案内レール3a,3bに沿って移動することにより、液滴吐出ヘッド15と対向する場所に、フラッシングユニット18、キャッピングユニット19、ワイピングユニット20、重量測定装置21のいずれか一つの装置が配置されるようになっている。
【0045】
キャリッジ13が、案内レール12に沿って、X方向に移動することにより、液滴吐出ヘッド15は、クリーニングユニット16、又は、基板8と対向する場所に移動し、液滴を吐出するようになっている。
【0046】
液滴吐出装置1は、四隅に支柱22を備え、上部(図中上側)に、空気制御装置23を備えている。空気制御装置23は、ファン、フィルタ、冷暖房装置、湿度調整装置などを備えている。ファン(送風機)は、工場内の空気を取り込んで、フィルタを通過することにより、空気内の塵、埃を除去し、清浄化された空気を供給する。
【0047】
冷暖房装置は、液滴吐出装置1の雰囲気温度を所定の温度範囲に保持するように、供給する空気の温度を制御する装置である。湿度調整装置は、液滴吐出装置1の雰囲気湿度を所定の湿度範囲に保持するように、空気を除湿、又は加湿して供給する空気の湿度を制御する装置である。
【0048】
4本の支柱22の間には、シート24が配置され、空気の流れを遮断するようになっている。空気制御装置23から供給される空気は、空気制御装置23から床25に向かって(図中上から下へ向かう方向)流れ、シート24に囲まれる空間内の塵や埃は、床25に向かって流動する。それにより、基板8に塵や埃が付着しにくいようになっている。
【0049】
図2(a)は、液滴吐出ヘッド15の模式平面図である。図2(a)に示すように、キャリッジ13には、液滴吐出ヘッド15が配置され、液滴吐出ヘッド15の表面には、ノズルプレート30が配置されている。ノズルプレート30には、ノズル31が複数、配置されている。ノズル31の数は、吐出するパターンと基板8の大きさに合わせて設定すればよく、本実施形態においては、例えば、30個に設定されている。
【0050】
液滴吐出ヘッド15に配列して形成されているノズル31のうち、図中左端のノズル31を、左から順にノズル31a,31b,31c,31dとする。又、図中、中央の、ノズル31を、左から順にノズル31e,31f,31gとし、図中右端のノズル31を、左から順に、ノズル31h,31i,31j,31kとする。ノズル31a〜ノズル31kは総てノズル31である。
【0051】
図2(b)は、液滴吐出ヘッド15の構造を説明するための要部模式断面図である。図2(b)に示すように、液滴吐出ヘッド15は、ノズルプレート30を備え、ノズルプレート30には、ノズル31が形成されている。ノズルプレート30の上側であってノズル31と相対する位置には、ノズル31と連通するキャビティ32が形成されている。そして、液滴吐出ヘッド15のキャビティ32には、収容タンク11に貯留されている機能液33が供給される。
【0052】
キャビティ32の上側には、上下方向(Z方向)に振動して、キャビティ32内の容積を拡大縮小する振動板34と、上下方向に伸縮して振動板34を振動させる圧電素子35が配設されている。圧電素子35が上下方向に伸縮して振動板34を加圧して振動し、振動板34がキャビティ32内の容積を拡大縮小してキャビティ32を加圧する。それにより、キャビティ32内の圧力が変動し、キャビティ32内に供給された機能液33は、ノズル31を通って吐出されるようになっている。
【0053】
そして、液滴吐出ヘッド15が圧電素子35を制御駆動するためのノズル駆動信号を受けると、圧電素子35が伸張して、振動板34がキャビティ32内の容積を縮小する。その結果、液滴吐出ヘッド15のノズル31からは、縮小した容積分の機能液33が液滴36として吐出される。ノズル31から液滴36を吐出するとき、液滴36を吐出する為に、液滴吐出ヘッド15に加えられるエネルギの一部が、熱に変換される。そして、液滴36を吐出するノズル31の周辺は加熱されて、温度が上昇する。
【0054】
液滴吐出ヘッド15は、総てのノズル31から液滴36を吐出する場合もあるが、一部のノズル31からは、液滴36を吐出しない場合がある。描画する予定のパターン形状に合わせて、各ノズル31が吐出する場所を設計する。このとき、総てのノズル31を用いて吐出する場合に比べて、一部のノズル31を用いて吐出する方が、各ノズル31が吐出する場所の設計をし易い場合には、一部のノズル31を用いて吐出する。例えば、本実施形態において、両端側に位置するノズル31a,31b,31j,31kからは液滴36を吐出しない。その他の理由により、一部のノズル31を用いて吐出しても良い。
【0055】
図3は、液滴吐出装置の電気制御ブロック図である。図3において、液滴吐出装置1はプロセッサとして各種の演算処理を行うCPU(演算処理装置)40と、各種情報を記憶するメモリ41とを有する。
【0056】
主走査駆動装置42、副走査駆動装置43、主走査位置検出装置5、副走査位置検出装置14、液滴吐出ヘッド15を駆動するヘッド駆動回路44は、入出力インターフェース(I/F)45およびデータバス46を介してCPU40に接続されている。さらに、入力装置47、ディスプレイ装置48、図1に示す重量測定装置21を構成する電子天秤49、フラッシングユニット18、キャッピングユニット19、ワイピングユニット20も入出力インターフェース(I/F)45およびデータバス46を介してCPU40に接続されている。同じく、クリーニングユニット16において、1つのユニットを選択するクリーニング選択装置50も入出力インターフェース(I/F)45およびデータバス46を介してCPU40に接続されている。
【0057】
主走査駆動装置42は、ステージ4の移動を制御する装置であり、副走査駆動装置43は、キャリッジ13の移動を制御する装置である。主走査位置検出装置5が、ステージ4の位置を認識し、主走査駆動装置42が、ステージ4の移動を制御することにより、ステージ4を所望の位置に移動及び停止することが可能になっている。同じく、副走査位置検出装置14が、キャリッジ13の位置を認識し、副走査駆動装置43が、キャリッジ13の移動を制御することにより、キャリッジ13を所望の位置に移動及び停止することが可能になっている。
【0058】
入力装置47は、液滴36を吐出する各種加工条件を入力する装置であり、例えば、基板8に液滴36を吐出する座標を図示しない外部装置から受信し、入力する装置である。ディスプレイ装置48は、加工条件や、作業状況を表示する装置であり、操作者は、ディスプレイ装置48に表示される情報を基に、入力装置47を用いて操作を行う。
【0059】
電子天秤49は、液滴吐出ヘッド15が吐出する液滴36と、液滴36を受ける受け皿との重量を測定する装置である。液滴36が吐出される前後の受け皿の重量を測定して、測定値をCPU40に送信する。図1に示す重量測定装置21は、受け皿と電子天秤49などから構成されている。
【0060】
クリーニング選択装置50は、フラッシングユニット18、キャッピングユニット19、ワイピングユニット20、重量測定装置21から1つの装置を選択して、液滴吐出ヘッド15と対向する場所に位置するように、保守ステージ17を移動する装置である。
【0061】
メモリ41は、RAM、ROM等といった半導体メモリや、ハードディスク、CD−ROMといった外部記憶装置を含む概念である。機能的には、液滴吐出装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト51を記憶する記憶領域が設定される。さらに、基板8内における吐出位置の座標データである吐出位置データ52を記憶するための記憶領域も設定される。他にも、液滴吐出ヘッド15の暖機駆動において、吐出するノズル31の場所と吐出回数データなどの暖機駆動データ53が設定される。さらに、基板8を主走査方向(Y方向)へ移動する主走査移動量と、キャリッジ13を副走査方向(X方向)へ移動する副走査移動量とを記憶するための記憶領域や、CPU40のためのワークエリアやテンポラリファイル等として機能する記憶領域やその他各種の記憶領域が設定される。
【0062】
CPU40は、メモリ41内に記憶されたプログラムソフト51に従って、基板8における表面の所定位置に機能液を液滴36吐出するための制御を行うものである。具体的な機能実現部として、電子天秤49を用いた重量測定を実現するための演算を行う重量測定演算部54を有する。さらに、液滴吐出ヘッド15を洗浄するタイミングを演算する洗浄演算部55や、液滴吐出ヘッド15を暖機駆動するときに、暖機駆動して吐出するノズル31の選択や、吐出回数の計数を行う暖機吐出演算部56を有する。他に、液滴吐出ヘッド15によって液滴36を吐出するための演算を行う吐出演算部57などを有する。
【0063】
吐出演算部57を詳しく分割すれば、液滴吐出ヘッド15を液滴吐出のための初期位置へセットするための吐出開始位置演算部58を有する。さらに、吐出演算部57は、基板8を主走査方向(Y方向)へ所定の速度で走査移動させるための制御を演算する主走査制御演算部59を有する。加えて、吐出演算部57は、液滴吐出ヘッド15を副走査方向(X方向)へ所定の副走査量で移動させるための制御を演算する副走査制御演算部60を有する。さらに、吐出演算部57は液滴吐出ヘッド15内に複数あるノズルのうち、どのノズルを作動させて機能液を吐出するかを制御するための演算を行うノズル吐出制御演算部61等といった各種の機能演算部を有する。
【0064】
(吐出方法)
次に、上述した液滴吐出装置1を使って、基板8に描画する吐出方法について図4〜図7にて説明する。図4は、液滴吐出ヘッドの暖機に必要な吐出回数を計測する製造工程を示すフローチャートであり、図5は、基板に描画する製造工程を示すフローチャートである。図6及び図7は、液滴吐出装置を使った吐出方法を説明する図である。
【0065】
図4のフローチャートを用いて、液滴吐出ヘッドの暖機に必要な吐出回数を計測する製造工程のステップを説明する。ステップS1は、ノズル温度計測工程に相当し、各ノズル付近の温度(以下、ノズル温度と称す)を計測する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は、ノズル温度の変動幅は閾値以下か、を判断する温度判断工程に相当し、ステップS1で計測するノズル温度の変動幅と閾値と比較し、ノズル温度の変動幅が小さいかを判断する工程である。ノズル温度の変動幅が閾値より大きいとき(NOのとき)、ステップS3に移行する。ステップS2において、ノズル温度の変動幅が閾値以下のとき(YESのとき)、ステップS4に移行する。
【0066】
ステップS3は、暖機吐出工程に相当し、ノズルから液滴を吐出する工程である。次にステップS1に移行する。尚、ステップS1〜ステップS3を複数回実施しないと、ステップS2において、ノズル温度の変動幅を示すデータが採れないことから、所定の回数、ステップS1〜ステップS3を反復する。本実施形態において、所定の回数は、例えば、10回を採用している。その間、ステップS2では、判断をせず、ステップS2の次に、ステップS3へ移行する。ステップS4は、吐出回数設定工程に相当し、ステップS3で吐出した吐出回数をメモリの暖機駆動データに格納する工程である。ステップS1〜ステップS4を合わせてステップS5とする。ステップS5は、予備計測工程に相当し、暖機吐出して、ノズル温度の変動幅が閾値より小さくなる吐出回数を計測する工程である。以上で液滴吐出ヘッドの暖機に必要な吐出回数を計測する製造工程を終了する。
【0067】
続いて、図5のフローチャートを用いて、基板に描画する吐出方法に相当する製造工程のステップを説明する。図5において、ステップS6〜ステップS11まで、同一の液滴吐出装置によって製造するステップである。ステップS6は、予備吐出工程に相当し、ノズルから液滴を電子天秤の受け皿に吐出し、液滴吐出ヘッドを暖機駆動する工程である。次にステップS7に移行する。ステップS7は、第1計測工程工程に相当し、電子天秤の受け皿の重量を計測する工程である。次にステップS8に移行する。ステップS8は、計測用吐出工程に相当し、ノズルから電子天秤の受け皿へ所定の回数の吐出を行う工程である。次にステップS9に移行する。ステップS9は、第2計測工程に相当し、電子天秤の受け皿の重量を計測する。そして、ステップ7にて計測する受け皿の重量とステップS8にて吐出する吐出回数とを用いて、1回当りの吐出量を推定する工程である。ステップS7とステップS8とから計測工程が構成される。次にステップS10に移行する。ステップS10は、吐出量調整工程に相当し、1回当りの吐出量を調整する工程である。次にステップS11に移行する。ステップS11は、吐出工程としての描画工程に相当し、基板に液滴を吐出して描画する工程である。以上で、基板に描画する製造工程を終了する。
【0068】
次に、図6を用いて、図4に示したステップと対応させて、液滴吐出ヘッドの暖機に必要な吐出回数を計測する製造方法を詳細に説明する。
図6(a)及び図6(b)は、ステップS1〜ステップS4に対応する図である。図6(a)に示すように、ステップS1において、赤外線放射温度計62を用いて、ノズル温度を計測する。電子天秤49の横には、エリアセンサを備えた赤外線カメラ63が配置され、赤外線カメラ63は、配列されているノズル31を撮像可能となっている。赤外線カメラ63には、温度分析装置64が電気的に接続され、赤外線カメラ63及び温度分析装置64などにより赤外線放射温度計62が構成されている。赤外線カメラ63は、ノズルプレート30が発光する赤外線を受光し、電気信号に変換して、温度分析装置64に出力する。温度分析装置64は、赤外線カメラ63が受光する光エネルギを温度に変換する。従って、ノズルプレート30の各ノズル31の周囲における温度をノズル温度として計測可能となっている。
【0069】
続いて、ステップS2において、ノズル温度の変動幅と閾値とを比較する。ただし、最初は、ノズル温度のデータの集団が少ない為、ステップS1とステップS3とを10回程繰り返す。その後、ステップS1の次にステップS2を行う。
【0070】
ステップS3において、ノズル31から液滴36を電子天秤49に向けて、吐出する。電子天秤49の上には予備吐出領域としての受け皿65が配置され、受け皿65の中には、スポンジ状の受容体66が格納されている。ノズル31から吐出される液滴36が受容体66に着弾するとき、液滴36は、受容体66に吸収され、液滴36の一部が受け皿65の外へ飛び出さないようになっている。また、液滴36が揮発性のある液体を含んでいるとき、液滴36が、受容体66に染み込むことにより、液滴36が外気と接触しにくくなり、揮発しにくくなっている。1回のステップで吐出する吐出回数は、赤外線放射温度計62の応答性を鑑みて設定するのが好ましく、本実施形態では、例えば、10回を採用している。従って、ステップS1とステップS3を10回繰り返すとき、ノズル31から100回吐出することとなる。
【0071】
図6(b)は、連続して吐出するときの吐出回数とノズル温度との関係を示す模式図である。図において、横軸は、1つのノズル31が吐出する吐出回数67を示し、縦軸は、ノズル温度68を示す。ノズル31から液滴36を連続して吐出するときにおける、吐出回数67に対するノズル温度68の推移をノズル温度曲線69に示す。ノズル温度曲線69において、吐出を開始するときの吐出開始点69aにおけるノズル温度曲線69は、吐出回数67の増加に伴いノズル温度68が上昇する。温度上昇域69bの間では、吐出回数67の増加に伴いノズル温度68が上昇する。
【0072】
そして、吐出回数67が増加しても、ノズル温度68が上昇しない温度平衡域69dになる。温度平衡域69dでは、ノズル31の近くにおいて、液滴吐出ヘッド15が放熱する熱エネルギと、吐出により発生する熱エネルギとが等しい平衡状態となる。ノズル温度68が上昇すると、ノズル温度68と、液滴吐出ヘッド15の周辺を取り囲む気体(以下、周辺気体と称す)との温度差が大きくなる。ノズル温度68と周辺気体の温度との差が大きい程、液滴吐出ヘッド15から放熱する熱エネルギが大きくなる。従って、ノズル温度68が上昇せずに、あるノズル温度68で安定する。この温度を描画ノズル温度としての平衡ノズル温度70とする。
【0073】
温度上昇域69bから温度平衡域69dへ移行する点を温度平衡点69cとする。ステップS2では、ノズル温度68の変動を閾値と比較して、ノズル温度68の変動が小さくなる温度平衡点69cを検出する。ステップS4では、温度平衡点69cにおける吐出回数67である暖機吐出回数としての平衡吐出回数71を暖機駆動データ53に格納する。
【0074】
次に、図7を用いて、図5に示したステップと対応させて、基板に描画する吐出方法に相当する製造方法を詳細に説明する。
図7(a)及び図7(b)は、ステップS6〜ステップS9に対応する図である。図7(a)に示すように、ステップS6〜ステップS9の間、ノズル31から液滴36を、電子天秤49の受け皿65に吐出する。このとき、配列されたノズル31のうち、両端に位置するノズル31a,31b,31j、31kからは、液滴36を吐出しない。
【0075】
受け皿65の下には、電子天秤49が配置されていることから、電子天秤49は、受け皿65の重量と、吐出される液滴36の重量とを合わせた重量を、計測可能となっている。
【0076】
図7(b)は、連続して吐出するときの吐出回数と受け皿の重量との関係を示す模式図である。図において、横軸は、ノズル31が吐出する吐出回数72を示し、縦軸は、受け皿重量73を示す。この受け皿重量73は、受け皿65の重量と、受け皿65に吐出される液滴36の重量とを加えた重量を示し、電子天秤49により計測される重量である。ノズル31から液滴36を連続して吐出するときにおける、吐出回数72に対する受け皿重量73の推移を受け皿重量曲線74に示す。
【0077】
ステップS6にて予備吐出を開始する。予備吐出は、液滴吐出ヘッド15のノズル温度68を上げる暖機駆動のための吐出である。受け皿重量曲線74において、吐出を開始する場所を吐出開始点74aとする。このステップでは、予め設定した予備吐出回数75の吐出を行う。この予備吐出回数75は、図6(b)に示す平衡吐出回数71以上の吐出回数の吐出に設定されている。従って、このステップが終了するとき、ノズル温度68は、平衡ノズル温度70となっている。
【0078】
続いて、ステップS7において、受け皿65の重量を計測し、この重量を第1重量76とする。CPU40は、第1重量76をメモリ41に格納する。第1重量76には、受け皿65自体の重量及び、吐出された液滴36の重量などの重量が含まれている。受け皿重量曲線74において、このステップの場所を第1測定点74bとする。
【0079】
次に、ステップS8において、予め設定されている回数の吐出を行う。この回数を計測吐出回数77とする。計測吐出回数77は、吐出される液滴36の平均重量が、統計的に計測可能な回数であれば良く、本実施形態では、例えば、両端に位置するノズル31a,31b,31j、31kを除く各ノズル31から、100回の吐出を行っている。
【0080】
このステップでは、ノズル温度68が、平衡ノズル温度70で安定している状態において、吐出する。ノズル温度68が安定することにより、吐出する液滴36の重量の変動が小さくなる。従って、このステップでは、受け皿重量曲線74が略直線となっている。
【0081】
続いて、ステップS9において、受け皿65の重量を計測し、この重量を第2重量78とする。CPU40は、第2重量78をメモリ41に格納する。第2重量78には、第1重量76に加えて、ステップS8にて受け皿65に吐出された液滴36の重量が含まれている。受け皿重量曲線74において、このステップの場所を第2測定点74cとする。
【0082】
第1測定点74bと第2測定点74cとの間で、吐出された吐出回数が計測吐出回数77である。又、第1測定点74bと第2測定点74cとの間で、吐出された液滴36における重量の合計は、第2重量78から第1重量76を引いた値となり、この値を計測吐出液重量79とする。このとき、1回の吐出における平均吐出重量は、計測吐出液重量79を計測吐出回数77で割算して求めることができる。1個のノズル31が吐出する液滴36の重量であるノズル当りの平均吐出量は、平均吐出重量を、吐出したノズル31数で割算して求めることができる。重量測定演算部54は、メモリ41から、計測吐出回数77、第1重量76、第2重量78を取得し、ノズル当りの平均吐出量を演算する。
【0083】
ステップS10において、吐出する液滴36の重量を調整する。ヘッド駆動回路44が液滴吐出ヘッド15を駆動するとき、圧電素子35に駆動電圧波形を印加して駆動する。このとき、駆動電圧波形の最大電圧と最小電圧との電圧差である駆動電圧が大きい方が、小さいときと比べて、吐出する液滴36の重量が大きくなるようになっている。また、メモリ41には、駆動電圧の増分と、吐出する液滴36の重量の増分との関係である電圧吐出量相関表のデータが記憶されている。
【0084】
まず、ノズル吐出制御演算部61は、調整の目標とする液滴36の吐出量である目標吐出量と、ノズル当りの平均吐出量とを比較する。そして、平均吐出量が目標吐出量より大きいときには、駆動電圧を小さくし、平均吐出量が目標重量より小さいときには、駆動電圧を大きくする。ノズル吐出制御演算部61は、駆動電圧を調整するときの電圧を、電圧吐出量相関表を参照して、演算する。そして、演算した駆動電圧をメモリ41に格納する。
【0085】
図7(c)は、ステップS11に対応する図である。図7(c)に示すように、液滴吐出装置1は、ステージ4とキャリッジ13とを相対移動する。そして、液滴吐出ヘッド15を、基板8において機能液33を塗布する場所と対向する場所に移動する。次に、ノズル31から液滴36を吐出して描画する。
【0086】
このとき、ノズル吐出制御演算部61は、ステップS10にて演算し、メモリ41に格納した駆動電圧の駆動電圧波形を圧電素子35に印加して、吐出する。ノズル31から基板8に吐出するとき、ノズル31から高い頻度で液滴36を吐出することから、描画時のノズル温度68である描画ノズル温度は、略平衡ノズル温度70と同じ温度となる。従って、描画工程においては、目標吐出量の液滴36を吐出して描画することが可能となっている。そして、基板8に描画し終えたところで、描画の製造工程を終了する。
【0087】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、ステップS6では、ノズル31から液滴36を受け皿65に吐出して、ノズル31を加熱する。このとき、ステップS11におけるノズルの温度68である描画ノズル温度と略同じノズル温度68である平衡ノズル温度70になるまで、液滴36を吐出する。ステップS8では、ノズル31から液滴36を受け皿65に吐出する。ステップS7及びステップS9では、電子天秤49が、ノズル31から吐出された液滴36の重量を計測する。ステップS10で吐出する液滴36を調整して、ステップS11では、ノズル31から液滴36を基板8に吐出している。
【0088】
機能液33は、温度が変わると粘性が変わる為、液滴吐出ヘッド15内で、機能液33に圧力が加わり、ノズル31等の流路を通過するとき、流体抵抗が変化して、ノズル31から吐出される液滴36の吐出量が変化する。
【0089】
ステップS6において、ノズル31は、描画ノズル温度と略同じ温度の平衡ノズル温度70まで加熱される。ステップS8では、平衡ノズル温度70のノズル31から液滴36を吐出する。従って、ステップS7及びステップS9では、平衡ノズル温度70のノズル31における吐出量を計測することができる。その結果、吐出量を精度良く計測して描画することができる。
【0090】
(2)本実施形態によれば、ステップS9において、ノズル31から吐出される液滴36における、ノズル当りの平均吐出量を精度良く測定する。ステップS10では、その測定したノズル当りの平均吐出量に基づき、ノズル31から吐出する液滴36の吐出量を調整する。精度良く測定されるノズル当りの平均吐出量に基づいて調整する為、吐出量を精度良く制御して描画することができる。
【0091】
(3)本実施形態によれば、ステップ5において、ノズル31が液滴36を吐出して、ノズル31から長時間吐出しないときのノズル温度68から、平衡ノズル温度70に達するまでの吐出回数である平衡吐出回数71を計測する。そして、平衡吐出回数71から予備吐出回数75を設定する。ステップS6では、予備吐出回数75の液滴36を吐出する。従って、ノズル温度68が、長時間吐出しないときのノズル温度68になっているときであっても、ステップS6では、平衡ノズル温度70にすることができる。
【0092】
(4)本実施形態によれば、液滴吐出ヘッド15は複数のノズル31を備えている。ステップS6では、ステップS11において液滴36を吐出するノズル31から、液滴36を吐出する。つまり、ステップS11では、液滴吐出ヘッド15が備える、総てのノズル31のうち、ノズル31a,31b,31j,31kからは、液滴36を吐出しない。このとき、ステップS6でも、総てのノズル31のうち、ノズル31a,31b,31j,31kからは、液滴36を吐出していない。
【0093】
ステップS11で液滴36を吐出しないノズル31の吐出量を測る必要がないことから、ステップS6にて、ノズル31を加熱する必要がない。ステップS6で、総てのノズル31から液滴36を吐出する場合に比べて、吐出する必要のないノズル31からは、吐出しない方が、液滴36が無駄に消費されない為、省資源な吐出方法とすることができる。
【0094】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した吐出方法の一実施形態について図2、図4〜図5及び図8を用いて説明する。
この実施形態が第1の実施形態と異なるところは、液滴吐出ヘッドの圧電素子を駆動する駆動波形が異なる点にある。
【0095】
つまり、第1の実施形態では、図4に示すステップS3、図5に示すステップS6及びステップS8において、ノズル31から連続して液滴36を吐出する駆動波形を圧電素子35に印加して駆動していた。
【0096】
本実施形態においては、ステップS11において、基板8に描画するときに、圧電素子35に印加する駆動波形のパターンと同等のパターンを用いて、ステップS3、ステップS6及びステップS8において、圧電素子35を駆動し、ノズル31から液滴36を吐出する。
【0097】
図8は、圧電素子を駆動する駆動波形のパターンを説明する図である。図8(a)は、図2左側に示すノズル31dから液滴36を吐出するときに、圧電素子35を駆動する駆動波形のパターンの一部を示す図である。同様に、図8(b)は、図2中央に示すノズル31fから液滴36を吐出するときに、圧電素子35を駆動する駆動波形のパターンの一部を示す図である。又、図8(c)は、図2右側に示すノズル31iから液滴36を吐出するときに、圧電素子35を駆動する駆動波形のパターンの一部を示す図である。
【0098】
図8(a)、図8(b)、図8(c)ともに、図5に示すステップS11において、基板8に描画するときに、圧電素子35に印加する駆動波形のパターンである描画時波形パターンを示す。図8(a)、図8(b)、図8(c)において、横軸は時間の経過82を示し、縦軸には駆動電圧83を示す。図8(a)、図8(b)、図8(c)に示す様に、駆動波形パターン84には、駆動電圧が等間隔に印加される場所と印加されない場所がある。描画区間85では、描画するパターンに合わせて、パルス84aが形成されている。従って、パルス84aの有無は、描画するパターンによって設計される。ノズル31d,31f,31iは、各々別の場所を通過することから、駆動波形パターン84は、各々別のパターンとなっている。
【0099】
パルス84aが形成されている場所では、液滴36が吐出され、パルス84aが形成されていない場所では、吐出が停止される。従って、駆動波形パターン84は、ノズル31から液滴36を吐出する吐出と吐出停止との吐出パターンと同じ形態となる。
【0100】
描画停止区間86では、パルス84aが形成されない区間である。この区間では、ノズル31と対向する場所が基板8に吐出する場所から外れた場所となり、吐出を停止する。そして、ステージ4の進行方向をかえて、ステージ4を移動し、ノズル31と対向する場所が基板8に吐出する場所となるとき、再度、吐出を再開し、描画区間85となる。
【0101】
ステップS3にて、暖機吐出をするとき、描画時波形パターンを用いて、液滴36を吐出する。そして、平衡吐出回数71を計測する。ステップS4では、平衡吐出回数71を参照して、予備吐出回数75を設定する。従って、予備吐出回数75は、描画時波形パターンを用いて液滴36を吐出するときの吐出回数となる。
【0102】
ステップS6では、描画時波形パターンを用いて、予備吐出回数75の吐出を行う。このとき、ノズル温度68は、略平衡ノズル温度70となる。ステップS8では、描画時波形パターンを用いて、計測用吐出を行う。従って、ステップS9では、描画時波形パターンを用いる場合の、ノズル当りの平均吐出量を算出することができる。ステップS10では、このノズル当りの平均吐出量を用いて、吐出量を調整し、ステップS11では、調整された駆動電圧の駆動波形パターンを用いて、液滴36を吐出し、描画する。
【0103】
上述したように、本実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(3)に加え、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、ステップS6とステップS8とにおいて、ノズル31から液滴36を吐出するとき、圧電素子35を駆動する駆動パターンに描画時波形パターンを用いている。
【0104】
ステップS6及びステップS8と、ステップS11とで、略同じ吐出パターンで吐出する為、液滴吐出ヘッド15は、略同じ温度分布となる。従って、ステップS8では、ステップS11と略同じ温度分布の液滴吐出ヘッド15におけるノズル31から液滴36が吐出される。そして、ステップS7及びステップS9では、ステップS11と同じ温度分布の液滴吐出ヘッド15における吐出量を測定することができる。その結果、ステップS11の描画工程における吐出量を精度良く測定することができる。
【0105】
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化した吐出方法の一実施形態について図2、図4〜図5及び図9〜図10を用いて説明する。
この実施形態が第2の実施形態と異なるところは、描画時波形パターンに換えて、暖機駆動波形パターンを用いて圧電素子13を駆動する点にある。
【0106】
つまり、第2の実施形態では、描画するときに、圧電素子35を駆動する駆動波形パターンである描画時波形パターンを用いて、予備吐出と計測用吐出を行っている。本実施形態においては、描画時波形パターンを参照して、暖機駆動波形パターンを形成し、予備吐出と計測用吐出を行う。
【0107】
図9は、暖機駆動波形パターンを形成する製造工程のフローチャートである。図9のフローチャートを用いて、暖機駆動波形パターンを形成する製造工程のステップを説明する。まず、ステップS12は、ノズル毎の吐出回数計数工程に相当し、各ノズルにおける吐出回数を計数する工程である。次にステップS13に移行する。ステップS13は、吐出時間演算工程に相当し、描画に要する吐出時間を演算する工程である。次にステップS14に移行する。ステップS14は、ノズル毎の吐出周波数演算工程に相当し、単位時間当りの吐出回数を演算する工程である。次にステップS15に移行する。ステップS15は、吐出パターン設定工程に相当し、暖機駆動波形パターンを形成する工程である。ステップS12〜ステップS15をまとめてステップS16とする。ステップS16は、予備吐出パターン形成工程に相当する。以上の工程により、暖機駆動波形パターンが完成する。
【0108】
次に、図10を用いて、図9に示したステップと対応させて、暖機駆動波形パターンを形成する製造方法を詳細に説明する。波形パターンは、長いパターンを取り扱うが、説明を簡略化する為、図中の波形パターンに限定して説明する。
【0109】
図10は、圧電素子を駆動する駆動波形のパターンを説明する図であり、図10(a)及び図10(b)は、描画時における駆動波形パターンの一例を示す。図10(a)及び図10(b)において、横軸は時間の経過82を示し、縦軸には駆動電圧83を示す。ステップS12では、描画時における吐出回数を計数する。基板8に描画するときに、各ノズル31が吐出する吐出回数を計数する。例えば、図10(a)の第1描画時波形パターン87は、40個のパルス波形が形成されていることから、吐出回数は、40個とする。同様に、図10(b)の第2描画時波形パターン88には、42個のパルス波形が形成されていることから、吐出回数は、42個とする。
【0110】
ステップS13では、吐出時間を演算する。基板8に描画するときに、要する時間を演算する。例えば、図10(a)及び図10(b)では、50パルス分の時間の第1描画時波形パターン87又は、第2描画時波形パターン88が描かれている。説明を簡略化するため、吐出時間を50秒とする。
【0111】
ステップS14では、単位時間当りの吐出回数を演算する。第1描画時波形パターン87は、50秒の間に、40パルス形成されていることから、単位時間当りの吐出回数は、40/50(パルス/秒)とする。これは、0.8(パルス/秒)と同じである。同様に、第2描画時波形パターン88は、50秒の間に、42パルス形成されていることから、42/50(パルス/秒)とする。これは、0.82(パルス/秒)と同じである。
【0112】
ステップS15では、ステップS14で演算した時間当りの吐出回数から、暖機駆動波形パターンを形成する。第1描画時波形パターン87は、0.8(パルス/秒)であることから、5秒間に4パルスの吐出回数となっている。図10(c)に示す第1暖機駆動波形パターン89は、図10(a)に示す第1描画時波形パターン87の単位時間当りの吐出回数を基に形成した波形である。第1暖機駆動波形パターン89は、5パルス分の時間に、4パルス形成していることから、単位時間当りの吐出回数は、0.8(パルス/秒)となっている。
【0113】
同様に、第2描画時波形パターン88は、図10(b)に示す第2描画時波形パターン88の単位時間当りの吐出回数を基に形成した波形である。第2描画時波形パターン88の単位時間当りの吐出回数は、0.82(パルス/秒)であることから、6秒間に約5パルスの吐出回数となっている。図10(d)に示す第2暖機駆動波形パターン90は、6パルス分の時間に、5パルス形成していることから、単位時間当りの吐出回数は、0.83(パルス/秒)となっている。
【0114】
この様に、ステップS15では、所定の時間内に含まれるパルス数を調整して、同一パターンを反復する暖機駆動波形パターンを形成する。暖機駆動波形パターンは、暖機駆動するときに、圧電素子35を駆動する駆動波形のパターンである。この暖機駆動波形パターンを用いて、圧電素子35を駆動し、ノズル31から液滴36を吐出する。
【0115】
パルス89a,90aが形成されている場所では、液滴36が吐出され、パルス89a,90aが形成されていない場所では、吐出が停止される。従って、第1暖機駆動波形パターン89及び第2暖機駆動波形パターン90は、ノズル31から液滴36を吐出する吐出と吐出停止との吐出パターンと同じ形態となる。この吐出パターンを予備吐出パターンとする。図5に示すステップS6において、この予備吐出パターンを用いて予備吐出を行う。又、ステップS8において、この予備吐出パターンを用いて計測用吐出を行い、ノズル当りの平均吐出量を算出する。
【0116】
上述したように、本実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(3)に加え、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、この吐出方法は、ステップS16の予備吐出パターン形成工程を備えている。予備吐出パターン形成工程では、描画工程における、液滴36の吐出時間と吐出停止時間との比率と、略同じ比率である予備吐出パターンを形成する。そして、予備吐出工程では、予備吐出パターンを用いて、吐出している。
【0117】
従って、総てのノズルから液滴36を吐出する場合に比べて、予備吐出パターンを用いて吐出する方が、液滴吐出ヘッド15におけるノズル31の温度分布は、描画時のノズル温度68に近い温度分布とすることができる。その結果、描画時に近い温度分布の液滴吐出ヘッド15における吐出量を測定することができる。その結果、ステップS11の描画工程おける吐出量を精度良く測定するができる。
【0118】
(2)本実施形態によれば、ステップS16の予備吐出パターン形成工程では、平衡吐出回数71に相当する回数の吐出を行う予備吐出パターンを形成している。ステップS11の描画工程において、液滴36を吐出して描画する吐出回数が多くかかるとき、予備吐出工程で、描画工程における吐出パターンを用いて吐出するとき、予備吐出で吐出する液滴36を多く消費する。予備吐出パターンは、予備吐出に適した吐出回数の吐出をするように設定することができる。従って、予備吐出に掛かる吐出回数を最適に設定できる為、省資源に予備吐出することができる。
【0119】
(第4の実施形態)
次に、本発明を具体化した吐出方法の一実施形態について図11〜図13を用いて説明する。
この実施形態が第1の実施形態と異なるところは、液滴吐出ヘッドに温度センサが内蔵されている点にある。
【0120】
図11は、液滴吐出ヘッドの要部模式断面図である。すなわち、本実施形態では、図11に示すように、液滴吐出ヘッド94が構成されている。液滴吐出ヘッド94は、ノズルプレート30を備えている。ノズルプレート30には、ノズル31が形成されている。ノズルプレート30の上側であってノズル31と相対する位置には、ノズル31と連通するキャビティ32が形成されている。そして、ノズルプレート30及びキャビティ32内の機能液33と接するように温度センサ95が形成されている。温度センサ95は、ノズル温度が計測できれば良く、本実施形態では、例えば、サーミスタを採用している。
【0121】
温度センサ95は、ノズルプレート30及びキャビティ32内の機能液33と接していることから、ノズルプレート30及びキャビティ32内の機能液33の温度を検出可能となっている。このノズルプレート30及び機能液33は、ノズル31付近に位置することから、温度センサ95は、ノズル31付近の温度を検出できる様になっている。
【0122】
液滴吐出ヘッド94は、複数のノズル31を備え、1個のノズル31と対応して、1個の温度センサ95が、配置されている。そして、各ノズル31付近の温度を検出可能となっており、配列されている総てのノズル31における、ノズル温度の分布が検出される。
【0123】
図12は、液滴吐出装置の電気制御ブロック図である。液滴吐出装置96は、液滴吐出ヘッド94を1個備え、この液滴吐出ヘッド94は、ノズル31を30個備えている。そして、温度センサ95は、各ノズル31に、1個配置されている。つまり、ノズル31が30個配置されていることから、温度センサ95も30個配置されている。
【0124】
温度センサ95は、ノズル温度検出装置97と接続されている。又、ノズル温度検出装置97は、入出力インターフェース(I/F)45及びデータバス46を介してCPU40と接続されている。温度センサ95及び、ノズル温度検出装置97などから、温度測定部が構成されている。
【0125】
温度センサ95は、ノズル31付近の温度に対応する電圧信号をノズル温度検出装置97に出力する。ノズル温度検出装置97は、電圧信号を入力して、温度に対応するデジタル信号に変換し、CPU40に出力する。ノズル温度検出装置97には、各ノズル31付近に配置されている温度センサ95の電圧信号が入力される。ノズル温度検出装置97は、各ノズル31付近の温度に対応するデジタル信号を、CPU40に出力する。従って、CPU40は、各ノズル31のノズル温度を認識可能となっている。
【0126】
図13は、液滴吐出ヘッドから予備吐出して描画する製造工程を示すフローチャートである。
図13において、ステップS21は、ノズル温度計測工程に相当し、ノズル温度検出装置を用いて、各ノズルのノズル温度を検出する工程である。次にステップS22に移行する。ステップS22は、温度判断工程に相当し、ノズル温度が暖機基準値より低いノズルがあるかを、暖機吐出演算部が判断する工程である。そして、ノズル温度が、暖機基準値より低いノズルがあるとき、(YESのとき)、ステップS23に移行する。ステップS22において、ノズル温度が、暖機基準値より低いノズルがないとき、(NOのとき)、ステップS24に移行する。
【0127】
ステップS23は、暖機吐出工程に相当し、電子天秤の受け皿に吐出する工程である。次にステップS21に移行する。ステップS21〜ステップS23をまとめてステップS30とする。ステップS30は、予備吐出工程に相当し、総てのノズル温度が設定値より高くなるまで、予備吐出を行う工程である。次にステップS24に移行する。
【0128】
ステップS24〜ステップS28は、図5に示すステップS7〜ステップS11と同じであり、説明を省略する。
【0129】
次に、図12を用いて、図13に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。
ステップS21では、図12に示す温度センサ95が各液滴吐出ヘッド94のノズル温度を検出し、電圧信号に変換して、ノズル温度検出装置97に出力する。ノズル温度検出装置97は、ノズル温度を示す電圧信号をデジタル信号に変換して、CPU40に出力する。CPU40は、ノズル温度を示すデジタル信号を受信して、各ノズル31のノズル温度を認識する。
【0130】
ステップS22では、暖機吐出演算部56が暖機駆動データ98から、ノズル温度の暖機基準値を読み取る。ノズル温度の暖機基準値は、予め吐出実験により、定められた値であり、所定の時間の間、連続吐出するときのノズル温度が設定され、暖機駆動データ98に格納されている。この暖機基準値は、第1の実施形態における平衡ノズル温度70に相当する。暖機吐出演算部56は、ノズル温度の暖機基準値と各ノズル31のノズル温度とを比較し、ノズル温度がノズル温度の暖機基準値より低いノズル31を抽出する。
【0131】
ステップS23では、CPU40が、ヘッド駆動回路44へ吐出の指示信号を出力する。このとき、CPU40は、ステップS22で抽出したノズル31から吐出する指示信号を出力する。ヘッド駆動回路44は、指示信号を入力し、液滴吐出ヘッド94を駆動する。そして、液滴吐出ヘッド94は、ステップS22で抽出されたノズル31から、所定の回数分の液滴36を吐出する。つまり、液滴吐出ヘッド15は、ノズル温度がノズル温度の基準値より低いノズル31から、所定の回数分の液滴36を吐出する。
【0132】
ステップS30では、ステップS21〜ステップS23を繰り返すことにより、各ノズル31の温度が上昇する。そして、総てのノズル31のノズル温度が、暖機基準値より高くなる。そのとき、ステップS22からステップS24へ移行する。
【0133】
ステップS24〜ステップS27において、吐出量の測定と調整を行い、ステップS28にて、基板8に吐出して描画する。以上の工程により、描画の製造工程を終了する。
【0134】
上述したように、本実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)に加え、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、ステップS21のノズル温度計測工程と、ステップS22の温度判断工程と、ステップS23の暖機吐出工程とを備えている。ノズル温度計測工程では、液滴吐出ヘッド94のノズル温度を計測する。温度判断工程では、ノズル温度計測工程で計測するノズル温度が所定の温度に達しているかを判断する。暖機吐出工程では、温度判断工程で、ノズル温度が所定の温度に達していないとき、ノズル31から液滴36を吐出する。そして、ノズル温度計測工程と、温度判断工程と、暖機吐出工程とを繰り返して、ノズル温度が、所定の温度に達するようにする。
【0135】
ノズル温度を計測して、ノズル温度が所定の温度より低いときに、ノズル31から液滴36を吐出して、ノズル温度を上昇させている。ノズル温度が所定の温度に達するまで、これを繰り返している為、ノズル温度を、確実に所定の温度に達することができる。
【0136】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態において、ノズル31の温度を測定する温度計に、赤外線カメラ63を用いたが、他の温度計を用いても良い。ノズル31の温度を検出可能であれば良い。他に、例えば、熱電対、白金測温抵抗体、水晶振動子等を、サーミスタを温度センサとして使用することができる。ノズル温度に対して感度の良いセンサを用いることにより、精度良く温度を検出することができる。
【0137】
(変形例2)
前記第4の実施形態において、温度センサ95にサーミスタを採用しているが、ノズル31の温度を検出可能であれば良い。他に、例えば、熱電対、白金測温抵抗体、水晶振動子等を、温度センサ95として使用することができる。機能液33の温度に対して感度の良いセンサを用いることにより、精度良く温度を検出することができる。
【0138】
(変形例3)
前記第1の実施形態において、ノズル31から吐出する液滴36の重量を測定して、吐出量を推定したが、吐出量の体積を測定して、吐出量を測定しても良い。例えば、断面積が一定の管に吐出する液滴36を溜めて、管内における液体の長さを測定することにより体積を計測し、吐出量を推定しても良い。揮発性の高い液体の場合に、揮発しにくい状態で計測することができる。
【0139】
(変形例4)
前記第1の実施形態において、受け皿65を予備吐出領域に設定したが、これに限らず、他の場所を予備吐出領域としても良い。例えば、フラッシングユニット18、基台2上で、基板8が配置されていない場所、基板8上で、予備吐出が可能な場所などが挙げられる。いずれの場合でも、予備吐出し易い場所に設定することにより、設計し易い液滴吐出装置とすることができる。
【0140】
(変形例5)
前記第1の実施形態において、ステップS10で吐出量を調整したあと、ステップS11にて、描画している。ステップS10にて、調整したあと、ステップS6〜ステップS10を繰返し、ステップS10にて、調整する必要がないとき、ステップS11に移行して、描画しても良い。ステップS10における調整結果を、ステップS7〜ステップS9にて計測し、確認することにより、さらに、精度の良い吐出量にて描画することができる。
【0141】
(変形例6)
第4の実施形態において、総てのノズル31において、1個のノズル31と対応して1個の温度センサ76を配置したが、複数のノズル31に対して1つの温度センサ76を配置しても良い。つまり、例えば、2つのノズル31に対して1つの温度センサ76を配置しても良い。温度センサ76の数が少なくとも、温度分布を認識可能となる場合には、ノズル31の数に対して、温度センサ76の数を減らしても良い。部品の数が減ることから、生産性良く液滴吐出装置96を製造することができる。
【0142】
(変形例7)
第1の実施形態では、両端を除いたノズル31から液滴36を吐出して、吐出量を調整したが、ノズル31毎に吐出して吐出量を計測し、調整しても良い。ノズル31毎に吐出量が調整されることから、さらに、精度の良い吐出量にて描画することができる。
【0143】
(変形例8)
前記第1の実施形態〜第4の実施形態では、コンピュータのメモリ41内に動作手順に沿ったプログラムを記憶し、プログラムにより液滴吐出装置1、96の制御を行ったが、これに限らず、電気回路にて構成される制御装置にて制御しても良い。周辺機器が手順通りに制御されれば良い。
【0144】
(変形例9)
前記第4の実施形態において、温度センサ95は、ノズルプレート30の温度を検出しているが、これに限らず、振動板34、キャビティ32の温度を検出しても良い。また、直接キャビティ32内の機能液33の温度を検出しても良い。温度センサ95が温度に反応する部分を配置する場所を、振動板34、キャビティ32、キャビティ32内の機能液33に接触する場所に配置することが可能であり、液滴吐出ヘッド90の温度を計測することが可能となる。液滴吐出ヘッド94の形状に合わせて、温度センサ95を配置し易い設計とすることができる。
【0145】
(変形例10)
前記第1の実施形態〜第4の実施形態では、基板8に液滴36を吐出して描画したが、基板8以外の物でもよい。例えば、円筒、球体、紡錘状の構造物、直方体などの描画に応用することができる。いずれの場合においても、精度の良い吐出量にて描画することができる。
【0146】
(変形例11)
前記第1の実施形態では、ステップS6の予備吐出工程前において、ノズル31の温度が、ステップS11における描画工程の温度より低い状態の動作を説明している。ステップS6の予備吐出工程前において、ノズル31の温度が、ステップS11における描画工程の温度より高い状態でも同じ動作にて、行うことができる。ノズル31から機能液33を液滴36にして吐出するとき、ノズル31の温度は、収容タンク11に収納されている機能液33の温度に近くすることができる。従って、ノズル31の温度が、高い場合にも同様な工程により、ノズル31の温度をステップS11における描画工程の温度に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】第1の実施形態に係る液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図。
【図2】(a)は、液滴吐出ヘッドの模式平面図、(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を説明するための要部模式断面図。
【図3】液滴吐出装置の電気制御ブロック図。
【図4】液滴吐出ヘッドの暖機に必要な吐出回数を計測する製造工程を示すフローチャート。
【図5】基板に描画する製造工程を示すフローチャート。
【図6】吐出方法を説明する図。
【図7】吐出方法を説明する図。
【図8】第2の実施形態に係る圧電素子を駆動する駆動波形のパターンを説明する図。
【図9】第3の実施形態に係る暖機駆動波形パターンを形成する製造工程のフローチャート。
【図10】圧電素子を駆動する駆動波形のパターンを説明する図。
【図11】第4の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの要部模式断面図。
【図12】液滴吐出装置の電気制御ブロック図。
【図13】液滴吐出ヘッドから予備吐出して描画する製造工程を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0148】
1,96…液滴吐出装置、8…ワークとしての基板、15,94…液滴吐出ヘッド、21…吐出量測定部としての重量測定装置、31,31a,31d,31e,31f,31h,31j,31k…ノズル、33…機能液、36…液滴、65…予備吐出領域としての受け皿、70…描画ノズル温度としての平衡ノズル温度、71…暖機吐出回数としての平衡吐出回数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから機能液を吐出する吐出方法であって、
前記ノズルから前記機能液を予備吐出領域に吐出する予備吐出工程と、
前記ノズルから前記機能液をワークに吐出する吐出工程を有し、
前記予備吐出工程では、前記ノズルが前記吐出工程における温度と略同じ温度になるまで、前記機能液を吐出することを特徴とする吐出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の吐出方法であって、
前記ノズルから吐出する前記機能液の前記吐出量を調整する吐出量調整工程をさらに含むことを特徴とする吐出方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吐出方法であって、
前記ノズルが前記機能液を吐出して、前記吐出工程における温度に達するまでの吐出回数を計測する予備計測工程を有し、
前記予備吐出工程では、前記吐出回数の前記機能液を吐出することを特徴とする吐出方法。
【請求項4】
請求項1に記載の吐出方法であって、
前記予備吐出工程では、前記吐出工程における、前記機能液の吐出と吐出停止との吐出パターンと、略同じ吐出パターンを用いて吐出することを特徴とする吐出方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の吐出方法であって、
前記吐出工程における、前記機能液の吐出時間と吐出停止時間との比率と、略同じ比率で形成されている、前記機能液の吐出と吐出停止との予備吐出パターンを形成する予備吐出パターン形成工程を備え、
前記予備吐出工程では、前記予備吐出パターンを用いて、吐出することを特徴とする吐出方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の吐出方法であって、
前記予備吐出工程は、前記ノズルの温度を計測するノズル温度計測工程と、
前記ノズル温度計測工程で計測する前記ノズルの温度により、前記ノズルから前記機能液を吐出するか否かの判断をする温度判断工程とを有し、
前記予備吐出工程は、前記ノズル温度計測工程と、前記温度判断工程とを繰り返しながら、前記ノズルの温度が所定の温度に達するように前記機能液の吐出を行うことを特徴とする吐出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−132398(P2008−132398A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318110(P2006−318110)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】