説明

吐出検出装置、液体吐出装置及びクリーニング方法

【課題】負圧発生のための複雑な構造を必要とすることなくクリーニング処理を行うことができる吐出検出装置、これを含む液体吐出装置及びそのクリーニング方法を提供すること。
【解決手段】一形態に係る吐出検出装置は、検出器と、電場発生機構とを具備する。前記検出器は、液体を吐出するヘッドに対向して配置されることが可能に設けられ、前記液体の吐出状態を検出する。前記電場発生機構は、前記検出器に設けられ、前記ヘッド内の前記液体に静電気力を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ヘッドから液体を吐出する液体吐出装置、ヘッドからの液体の吐出状態を検出する吐出検出装置及びヘッドのクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インジェット方式によるプリンタでは、乾燥によりインクの粘度が増したり、ゴミ等がヘッドのノズル(吐出孔)に付着したりすることがある。これにより、インクの吐出速度が低下したり、その吐出方向が偏向したり、さらには吐出できなくなる等、吐出異常が生じる場合がある。このような吐出異常により、印画画質の劣化を招くことになる。
【0003】
このような吐出異常の問題を解決するために、特許文献1に記載のインクジェット記録装置は、発光素子及び受光素子を備えた全体キャップを用いて、インク滴の吐出を検出している。具体的には、全体キャップがインクの吐出エレメントに装着される。その全体キャップ内で、発光素子から出射された光を、インク滴が横切るように飛翔することでその光が遮られる。そうすると、受光素子に届く光量が低下し、これにより、吐出口ごとにインクの吐出不良が発生しているか否かが検出される。そして、吐出不良が発生した吐出口付近に、部分キャップのキャップ部が位置する。そのキャップ部で吐出口が覆われ、ポンプの駆動により発生する、キャップ部内の負圧によりインクが吸引され、インクの液路内に混入されていた気泡やゴミが除去される(例えば、特許文献1の第5ページの右欄第42行〜第6ページの左欄第22行、第5図、第6図参照)。
【0004】
特許文献2に記載のインクジェット式記録装置は、記録ヘッドと、ヘッドキャップとを備える。ヘッドキャップは、記録ヘッドに被せられ、負圧による吸引によって、ノズルのクリーニング処理が行われる(例えば、特許文献2の明細書段落[0023]、図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2718724号
【特許文献2】特開第3514235号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2の装置では、負圧によりクリーニング処理が行われるため、その負圧を発生させるためのポンプや管が必要となり、装置の構造が複雑となる。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、負圧発生のための複雑な構造を必要とすることなくクリーニング処理を行うことができる吐出検出装置、これを含む液体吐出装置及びそのクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、一形態に係る吐出検出装置は、検出器と、電場発生機構とを具備する。
前記検出器は、液体を吐出するヘッドに対向して配置されることが可能に設けられ、前記液体の吐出状態を検出する。
前記電場発生機構は、前記検出器に設けられ、前記ヘッド内の前記液体に静電気力を加える。
【0009】
検出器に設けられた電場発生機構によって液体に静電気力が発生し、ヘッドから液体を吸引することができる。これにより、負圧発生のための複雑な構造を必要とすることなくヘッド内の液体に混入した不純物を除去することができる。
【0010】
以下、ヘッド内の液体の混入した不純物を除去する処理を静電吸引クリーニング処理という。
【0011】
例えば、前記検出器は、前記ヘッドから吐出された前記液体を受ける受け部材を有し、前記電場発生機構は、前記受け部材に配置された導体を有してもよい。
【0012】
前記ヘッドは、前記液体をそれぞれ吐出する複数のノズルを有してもよい。その場合、前記検出器は、第1の領域と、第2の領域とを有する。前記第1の領域は、前記ヘッドと前記受け部材との間に設けられた領域であって、前記複数のノズルから吐出される前記液体のうち吐出状態の検出対象となる検出対象液滴が通る領域である。前記第2の領域は、前記ヘッドと前記受け部材との間に設けられた領域であって、前記複数のノズルから吐出される前記液体のうち吐出状態の検出対象以外の非検出対象液滴が通る領域である。また、前記導体は、前記導体と前記ヘッドとの間に電場を形成するものであり、前記第2の領域を含む領域に電場を形成し、前記第1の領域に電場を形成しない位置に配置されている。これにより、検出器により第1の液滴の吐出状態を検出しながら、静電吸引クリーニング処理を実行することができる。静電吸引クリーニング処理を行うことができる。
【0013】
あるいは、前記導体は、前記第1及び前記第2の領域の両方に電場を形成する位置に配置されている。これにより、広い領域で電場を発生することができ、静電吸引クリーニングの処理時間を短縮することができる。
【0014】
前記ヘッドは、所定の方向に配列された、前記液体を吐出する複数のノズルを有してもよい。その場合、前記吐出検出装置は、前記検出器を前記複数のノズルの配列方向に移動させる移動機構をさらに具備する。これにより、検出器を移動させながら吐出状態の検出処理及び静電吸引クリーニング処理を行うことができるので、効率的な処理を行うことができる。
【0015】
一形態に係る液体吐出装置は、ヘッドと、上記の吐出検出装置とを具備する。
【0016】
前記液体吐出装置は、ワイピング部材と、支持ベースと、移動機構とをさらに具備してもよい。前記ワイピング部材は、前記ヘッドに接触してクリーニングを行う。前記支持ベースは、前記吐出検出装置と前記ワイピング部材とを一体的に支持する。前記移動機構は、前記支持ベースを移動させる。支持ベースに支持されたワイピング部材が移動機構により移動することにより、ヘッドのクリーニングが可能となる。また、支持ベースにより、吐出検出装置と前記支持ベースとが一体的に支持されることにより、液体吐出装置がコンパクトになる。
【0017】
一形態に係るクリーニング方法は、液体を吐出するヘッドに対向して配置されることが可能に設けられた検出器により、前記液体の吐出状態を検出することを含む。
そして、前記検出器に設けられた電場発生機構により前記ヘッド内の前記液体に静電気力が加えられる。
【0018】
前記ヘッドは、所定の方向に配列された、前記液体を吐出する複数のノズルを有してもよい。その場合、前記検出器を前記ノズルの配列方向に移動させながら、前記電場発生機構により前記液体に静電気力が加えられる。これにより、検出器を移動させながら吐出状態の検出処理及び静電吸引クリーニング処理を行うことができるので、効率的な処理を行うことができる。
【0019】
前記複数のノズルのうち第1のノズルから前記液体を吐出させることにより、前記検出器により前記第1のノズルの吐出状態が検出されてもよい。その場合、前記検出器により前記第1のノズルによる前記液体の吐出状態を検出しながら、前記電場発生機構が前記液体に静電気力を加えることにより、前記複数のノズルのうち第1のノズルとは異なる第2のノズルから前記液体が吐出される。そして、前記検出器を移動させながら、前記第1のノズルからの前記第1の液滴の吐出と、前記第2のノズルからの前記第2の液滴の吐出とが、前記複数のノズルについて順に繰り返される。これにより、検出器を移動させながら、複数のノズルについて、吐出状態の検出処理及び静電吸引クリーニング処理が順次行われ、効率的な処理を行うことができる。
【0020】
前記検出器により液体の吐出状態を検出した後、前記電場発生機構により前記液体に静電気力が加えられてもよい。
【0021】
あるいは、前記電場発生機構により前記液体に静電気力を加えた後、前記検出器により前記液体の吐出状態が検出されてもよい。前記検出器により液体の吐出状態を検出した後、前記吐出状態が異常であると判定された場合には、前記電場発生機構により前記液体に静電気力が再度加えられてもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上、本技術によれば、負圧発生のための複雑な構造を必要とすることなくクリーニング処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本技術の一実施形態に係る液体吐出装置の構成を示す概略的な側面図である。
【図2】図2は、液体吐出装置のうち、液体吐出ヘッド及びその周辺部の構成を概略的な正面図である。
【図3】図3は、液体吐出ヘッドのノズル(インクの吐出孔)が配置される側の一部を示す平面図である。
【図4】図4は、液体検出ユニットを示す斜視図である。
【図5】図5は、検出ブロックを示す斜視図である。
【図6】図6は、光センサ、開口板等の配置関係を示す斜視図である。
【図7】図7は、検出ブロックのX軸方向で見た断面図である。
【図8】図8は、図7におけるA−A線断面図である。
【図9】図9は、液体検出ユニットをライン型の液体吐出ヘッドの長手方向(X軸方向)に沿って移動させる移動機構を示す斜視図である。
【図10】図10は、検出ブロックにおける検出処理の領域と、それ以外の非検出領域とを説明するための図である
【図11】図11は、先行吐出が行われる非検出領域を説明するための斜視図である。
【図12】図12は、先行吐出処理の一例を説明するための図である。
【図13】図13は、先行吐出処理の一例を説明するための図である。
【図14】図14は、検出処理の一例を説明するための図である。
【図15】図15は、検出ブロックの他の実施形態を示す断面図である。
【図16】図16は、検出処理及び静電吸引クリーニング処理を実現するための電気的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本技術の実施形態を説明する。
【0025】
[液体吐出装置の構成]
【0026】
図1は、本技術の一実施形態に係る液体吐出装置の構成を示す概略的な側面図である。図2は、液体吐出装置のうち、液体吐出ヘッド及びその周辺部の構成を概略的な正面図である。
【0027】
液体吐出装置1は、給紙ユニット100、液体吐出ユニット200、プラテン300、吸引ユニット400及び吐出検出装置としての液体検出ユニット500(図2参照)を備える。
【0028】
給紙ユニット100は、記録シート1000として用いられたカット紙及びロール紙を供給する。給紙ユニット100は、記録シート1000のうちロール紙が装填される給紙トレイ11と、記録シート1000のうちカット紙が装填される手差しトレイ12とを有する。
【0029】
液体吐出ユニット200は、給紙されて搬送される記録シート1000に画像を記録する機能を有する。
【0030】
液体吐出ユニット200は、液体を吐出可能なヘッドとして、液体吐出ヘッド21を有する。この液体吐出ヘッド21は、X軸方向に沿って延びる長い形状を有しており、すなわちライン型ヘッドである。
【0031】
図3は、液体吐出ヘッド21のノズル(インクの吐出孔)が配置される側の一部を示す平面図である。
【0032】
液体吐出ヘッド21は、複数色の異なる液体(インク)をそれぞれ吐出するモジュールヘッド22、22、・・・を有する。1つのモジュールヘッド22は、X軸に沿って延びる長い形状を有している。これらモジュールヘッド22、22、・・・は、X及びY軸方向に沿って配列されている。
【0033】
モジュールヘッド22、22、・・・の下面は、それぞれプラテン300の上面に対向する液体吐出面22a、22a、・・・として形成されている。1つの液体吐出面22a(1つのモジュールヘッド22の下面)には、複数のヘッドチップ23、23、・・・がジグザグに配置されている。1つのヘッドチップ23にはインクを吐出する図示しないノズルが複数設けられている。1つのヘッドチップ23内のこれらのノズルは、X軸方向に沿って一直線状に配列されている。
【0034】
液体吐出ヘッド21には図示しない複数の電気熱変換素子が設けられている。画像情報に基づいて電気熱変換素子が選択的に駆動され、電気熱変換素子の発熱によりインク中に生じた膜沸騰の圧力によって、各ノズルの孔からインクが吐出される。
【0035】
液体吐出ヘッド21は枠状に形成されたヘッドフレーム24に外周側から覆われた状態でこれに保持されている。
【0036】
給紙ユニット100及び液体吐出ユニット200の間には、図1に示すように、給紙ユニット100側から、給紙ローラ13及びこれに対向する給紙ピンチローラ14、搬送ローラ16及びこれに対向するピンチローラ17が配置されている。給紙ピンチローラ14及びピンチローラ17の間には、エッジセンサ15が配置されている。給紙ローラ13及び搬送ローラ16は、図示しない駆動モータによってそれぞれ駆動される。
【0037】
搬送ローラ16には、図示しないエンコーダ及びエンコーダセンサが取り付けられている。エンコーダ及びエンコーダセンサによって記録シート1000の搬送速度が検出され、検出された搬送速度に基づいて、液体吐出ヘッド21から吐出されるインクの吐出タイミングが、その搬送速度に同期するように制御される。
【0038】
液体吐出ユニット200を挟んで搬送ローラ16及びピンチローラ17のセットの反対側には搬送ローラ18及びピンチローラ19のセットが配置されている。搬送ローラ18は、図示しない駆動モータによって駆動される。
【0039】
プラテン300は、液体吐出ユニット200の下方に対向して配置され、記録シート1000を保持する機能を有している。プラテン300の上面は、搬送される記録シート1000を保持する保持面31として形成されている(図2参照)。
【0040】
プラテン300は、図示しない駆動機構によって液体吐出ユニット200の液体吐出面22a、22a、・・・に接離する方向(Z軸方向)へ移動可能になっている。
【0041】
吸引ユニット400は、記録シート1000をプラテン300において吸着するための吸引力を発生する機能を有する。吸引ユニット400は、吸引ファン41及びエア吸引路42を有する。
【0042】
吸引ファン41が回転すると、エア吸引路42を介してプラテン300からエアが吸引され、記録シート1000がプラテン300において吸着されて保持面31により保持される。このとき、記録シート1000は、その搬送に支障がないような吸引力によってプラテン300の保持面31に吸着される。
【0043】
吸引ユニット400は、上記の図示しない駆動機構により、プラテン300と一体となってZ軸方向(上下方向)へ移動可能となっている。
【0044】
液体検出ユニット500は、液体吐出ユニット200のノズルから吐出される液体の吐出状態を検出する機能を主に有する。典型的には、液体検出ユニット500により飛翔する液滴が検出され、液体検出ユニット500に電気的に接続された後述する吐出検出システムにより、液体の吐出が正常であるか異常であるかが判定される。
【0045】
液体の吐出の異常が発生する場合とは、大きく分けて2つの場合がある。1つは、液体吐出面22a、22a、・・・上であって、ノズルの孔の周囲に付着した不純物により、液体の吐出が妨げられる場合である。もう1つは、液体吐出面22a、22a、・・・上ではなく、ノズル内に不純物が溜まっている場合に、液体の吐出が妨げられる場合である。不純物は、増粘により固まった液体材料、塵埃、または気泡等である。
【0046】
液体検出ユニット500は、図2に示すように、液体吐出ヘッド21の液体吐出面22a、22aに対向する位置に配置可能とされる。液体吐出装置1により記録シート1000に印画されているときは、液体検出ユニット500は液体吐出面22a、22a、・・・に対向しない位置である待機位置に待機している(図2参照)。
【0047】
図4は、液体検出ユニット500を示す斜視図である。液体検出ユニット500は、検出器として機能する検出ブロック52と、クリーニングブロック56と、これらを一体的に支持する支持ベース51とを備える。図5は、検出ブロック52を示す斜視図である。
【0048】
支持ベース51は、本体51aと、この本体51aの、Y軸方向における一端部に設けられたスライド軸受51b、51bとを有する。これらスライド軸受51b、51bは、この液体検出ユニット500のスキャン方向であるX軸方向において互いに離れて設けられている。支持ベース51には、スライド軸受51bの下方であって外方に突出されたベルト取付部51cが取り付けられている。本体51aの、Y軸方向における他端部にはスライドローラ51dが回転可能に設けられている。スライドローラ51dの近傍の位置にエンコーダセンサ51eが配置されている。
【0049】
図5に示すように、検出ブロック52は、支持体52aを有する。支持体52aは、液体吐出ヘッド21から吐出された液体を受ける受け部材として機能する。支持体52aは、Y軸方向に沿って延びるベース部52bと、そのY軸方向における両端でこのベース部52bから上方に突出した突出部52c、52cとを有する。ベース部52bは、液体吐出ヘッド21から吐出される液体の受け皿として機能する。突出部52c、52cには、X軸方向で離れて2つずつの挿入貫通孔が設けられている。これらの挿入貫通孔に、2つの光センサ53、54が挿入されて配置されている。
【0050】
支持体52aにおける突出部52c、52cの互いに対向する側面には、開口板52d、52dが取り付けられている。開口板52dの、挿入貫通孔に対向する位置に、透過孔52e、52eがそれぞれ形成されている。
【0051】
図6は、光センサ53、54、開口板52d、52d等の配置関係を示す斜視図である。開口板52d、52dの互いに対向する側面には、汚れ防止板52f、52fがそれぞれ取り付けられている。汚れ防止板52f、52fは、赤外光を透過する材料によって形成されている。汚れ防止板52f、52fが設けられることにより、液体吐出ヘッド21から吐出される液体が滴下されたときに発生する可能性のあるインク液滴のミスト等が、開口板52d、52dに付着して汚れることが防止される。
【0052】
光センサ53、54は透過型のセンサである。光センサ53は、発光器531と、受光器532とを有する。光センサ54は、発光器541と、受光器542とを有する。一方の突出部52cに、光センサ53の発光器531と、光センサ54の受光器542とが取り付けられている。そして、もう一方の突出部52cに、光センサ54の発光器541と、光センサ53の受光器532とが取り付けられている。つまり、発光器531及び541が発する検出光の進む向きが互いに逆となっている。これにより、受光器532が、発光器541からの光を受光することを防止でき、また、受光器542が、発光器531からの光を受光することを防止できる。
【0053】
発光器531、541、受光器532、542として、例えばLED(Light Emitting Diode)が用いられる。LEDに代えてLD(Laser Diode)でもよい。光センサ53、54の検出光として赤外光が用いられるが、可視光などでもよい。
【0054】
液体吐出ヘッド21から吐出される液滴が、発光器531、541から発せられる検出光の光束を通ることで、液体吐出ヘッド21からの液滴が飛翔していることが検出される。
【0055】
X軸方向、すなわち液体検出ユニット500が移動する(スキャンする)方向で、2つの光センサ53、54が設けられることにより、液滴の飛翔の検出処理速度を向上させることができる。
【0056】
検出ブロック52のY軸方向の幅は、液体吐出ヘッド21のY軸方向の幅と実質的に同じか、それより大きく設定されている。
【0057】
図4及び5に示すように、支持体52aのベース部52bには吸収体52gが挿入されて保持されている。吸収体52gは液体吐出ヘッド21から吐出されるインクが滴下されたときに、インクがミストになる前にこのインクを吸収する。吸収体52gが設けられることにより、ミストの存在による検出ブロック52における誤検出の発生が防止され、また、ミストによる液体吐出装置1の内部構造の汚染を防止できる。
【0058】
図4に示すように、クリーニングブロック56は、クリーナ56c(ワイピング部材)と、これを回転可能に保持するクリーナホルダ56bとを有する。クリーナ56cは、液体吐出ヘッド21の液体吐出面22a、22a、・・・に接触し、液体吐出面22a、22a、・・・に付着した塵埃等を除去する機能を有する。液体吐出ユニット200及びプラテン300の間で、後述するように、液体検出ユニット500が移動するときに、クリーナ56cが液体吐出面22a、22a、・・・へ接触する。
【0059】
クリーナ56cによるクリーニング時には、クリーナ56cは回転せず、クリーナ56cの表面のうち一定領域の面が、液体吐出面22a、22a、・・・に接触する。そして、クリーナ56cの一定領域の面が液体吐出面22a、22a、・・・に接触した状態で、後述する移動機構57(図9参照)により、液体検出ユニット500が移動することにより、ワイピングによるクリーニング処理が行われる。
【0060】
そして、次回のクリーニング時までに、クリーナ56cが回転することにより、クリーニング時に、さらに別の一定領域の面が液体吐出面22a、22a、・・・に接触してクリーニング処理が行われる。
【0061】
図7は、検出ブロック52のX軸方向で見た断面図である。図8は、図7におけるA−A線断面図である。
【0062】
支持体52aの下部には、光センサ53、54に電気的に接続された検出回路基板58が配置されている。検出回路基板58は、光センサ53、54等を駆動するLEDドライバ等を有する。
【0063】
支持体52aの凹部52j内に吸収体52gが配置され、この凹部52j内の底面に導体である電極52h、52hが設けられている。電極52h、52hの上部に吸収体52gが配置される。
【0064】
電極52h、52hは、例えば図示しないFPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)を介して直流電源60に接続されている。また、液体吐出ヘッド21の導電性の部分は、共通電位、あるいは接地電位とされる。電極52h、52hは、支持体52aの凹部52jの外側で物理的に導通し、同じ電位となるように設計されている。このような構成により、電極52h、52hと、液体吐出ヘッド21との間に直流の電場が形成される。
【0065】
電極52h、52hに直流電圧が印加されると、電極52h、52hには、例えばマイナス電荷がチャージされる。液体吐出ヘッド21内のノズル内の液体(インク)は導電性を有する。そのため、静電誘導により液体吐出ヘッド21内の液体にプラス電荷がチャージされる。これにより、液体に静電気力が加えられ、液体(液滴)Pがノズルから吸引される作用が起こる。この場合、少なくとも電極52h、52hは、液的Pとの間に電場を発生する電場発生機構として機能する。電極52h、52hに印加される電圧は、-100V〜-2000Vであるが、この範囲に限られない。
【0066】
電極52h、52hの表面には図示しない絶縁シートが貼り付けられている。これにより、電極52h、52hから、吸収体52gに吸収された液体への漏電が防止される。
【0067】
図9は、この液体検出ユニット500をライン型の液体吐出ヘッド21の長手方向(X軸方向)に沿って移動させる移動機構を示す斜視図である。
【0068】
移動機構57は、モータを含む駆動部57aを有する、駆動部57aには、無端ベルト57bが接続されている。無端ベルト57bには、上記したベルト取付部51cを介して液体検出ユニット500が接続されている。液体検出ユニット500のスライド軸受51b、51bには、ガイド軸57cが挿通されている。また、液体検出ユニット500は、ガイドレール57dにスライド可能に接続されている。駆動部57aが無端ベルト57bを駆動することにより、液体検出ユニット500は、ガイド軸57c及びガイドレール57dに沿って移動可能となっている。
【0069】
移動機構は、このようなベルト駆動機構に限られず、ボールネジ駆動機構、あるいはリニアモータ駆動機構、ラックアンドピニオン駆動機構等であってもよい。
【0070】
支持ベース51(図4参照)の下部には、X軸方向に沿って延びる図示しないスケールが設けられている。エンコーダセンサ51eがこのスケールを読み取ることにより、移動機構57を制御するシステムは、液体検出ユニット500のX軸方向での任意の位置を認識する。移動機構57は、液体吐出ヘッド21のX軸方向の幅と実質的に同じか、あるいはそれより長い距離分、液体検出ユニット500を移動させるように構成されている。したがって、後述する吐出検出システムは、液体吐出ヘッド21のすべてのノズルからの液滴の吐出状態を認識することが可能となっている。
【0071】
図10A、Bは、検出ブロック52における検出処理の領域と、それ以外の非検出領域とを説明するための図である。
【0072】
ここで、典型的には、図3で示すように1つのモジュールヘッド22内の、ジグザグに配置された、ヘッドチップ23、23、・・・のうち、X軸方向の一列分のヘッドチップ23、23、・・・の液体の吐出状態は、1つの光センサ53により検出される。また、その1つのモジュールヘッド22内の、ジグザグに配置された、ヘッドチップ23、23、・・・のうち、X軸方向のもう一列分のヘッドチップ23、23、・・・の液体の吐出状態の検出には、もう1つの光センサ54が用いられる。このように、光センサ53、54によって、検出対象となるヘッドチップ23、23、・・・が異なるので、図10Aと図10Bとを分けている。このことは、図11も参照すると分かりやすい。
【0073】
後でも述べるが、本技術では2つの光センサ53、54を使用することが本質ではない。2つの光センサ53、54を設けることに伴って、2つの電極52h、52hを2つに分ける、ということも本技術の本質ではない。
【0074】
図10A、Bに示すように、光センサ54、53により、吐出状態の検出対象となる液滴Pの吐出状態が検出される。すなわち、検出ブロック52は、ヘッドチップ23と支持体52aとの間に設けられた領域であって、この検出対象となる液滴P(検出対象液滴)が通る検出領域(第1の領域)A1を有する。また、検出ブロック52は、ヘッドチップ23と支持体52aとの間に設けられた領域であって、吐出状態の検出対象以外の液滴Pc(非検出対象液滴)が通る非検出領域(第2の領域)A2とを有する。
【0075】
領域A2を通る液滴Pcは、後述する「先行吐出」により吐出される液滴である。本実施形態では、この先行吐出時において、電極52h、52hに電圧が加えられることにより、静電吸引クリーニング処理が行われる。また、本実施形態では、領域A1には電場を形成しないような、支持体52aの位置に電極52h、52hが配置されている。
【0076】
[液体検出ユニットの検出ブロックによる吐出状態の検出及び先行吐出]
【0077】
次に、検出ブロック52による吐出状態の検出処理の例について説明する。検出処理は、検出ブロック52が検出を開始する検出開始端から検出を終了する検出終了端まで移動するときに行われる。ここでの検出ブロック52の移動は、連続的な(滑らかな)移動、及び、ステップ送りの移動のどちらでもよい。
【0078】
この検出処理の際、検出対象となるノズルからの液体の吐出動作に先行して、上記した先行吐出が行われる。先行吐出とは、検出位置から検出終了端側における一定距離の一定領域に存在するノズルからの液体の吐出動作である。
【0079】
先行吐出が行われることにより、吐出異常の状態にあるノズルの状態を回復したり、ノズル内にある液体の乾き(増粘)を防止したりすることができる。
【0080】
また、先行吐出は、液体検出ユニット500の移動方向(X軸方向)に沿った一定領域にあるノズルにより、順次所定のタイミングで行われる。例えば、複数のノズルで吐出が順送りになるように、一定数の隣接する複数のノズルにおいて実質的に同時に液体が吐出される。
【0081】
さらに、先行吐出時には、その先行吐出の対象となるノズルについて電極52h、52hにより、その先行吐出を行うノズルと、電極52h、52hとの間に電場が形成される。これにより、先行吐出時に、その先行吐出を行うノズル内の液体に静電気力が加わり、液体が強制的に吐出される。
【0082】
図11は、先行吐出が行われる非検出領域A2を説明するための斜視図である。上記したように、非検出領域A2は、検出対象となる液滴Pの検出の範囲外であり、例えば、検出光の光路S、Sの間の位置や、光センサ53による検出光の光路Sより移動方向X1における先の位置である。検出対象となる液滴Pを吐出するノズルと、先行吐出の対象となる液滴Pcを吐出するノズルとの距離は、適宜設定可能である。
【0083】
図12〜14は、先行吐出処理及び検出処理の一例を説明するための図である。以下では、例として、4つのモジュールヘッド22、22、・・・(ヘッドA〜D)が配置されている場合の検出処理を示す。ヘッドA〜Dはそれぞれ異なる色のインクを吐出するヘッドである。
【0084】
各モジュールヘッド22は、ヘッドチップ23、23、・・・がジグザグに配列されている。ヘッドチップ23、23、・・・は、検出開始端側から数えて順に奇数番目のチップ(奇数チップ)と偶数番目(偶数チップ)とに区別される。上記したように、例えば偶数チップに存在するノズルに関する液体の吐出状態が光センサ53により検出され、奇数チップに存在するノズルに関する液体の吐出状態が光センサ54により検出される。
【0085】
しかし、偶数チップと奇数チップとを区別せずに、各ヘッドチップ23、23、・・・に存在するノズルに関する液体の吐出状態が、光センサ53、54によって2回連続して検出されてもよい。
【0086】
図13において、各ノズルに、1、2、・・・n、n1、n2、・・・m+n、・・・、という番号が、便宜的に付されている。図13の説明では、説明の簡略化のため、一方の光センサ53(または54でもよい)によって吐出状態が検出される例について説明する。図14も同様である。
【0087】
光センサ53のX1方向への移動開始前においては、検出開始端において光センサ53がノズル1からnピッチ分離れて位置されている(図13A参照)。光センサ53の移動開始時には、同時にノズル1からmまでのmピッチの間に存在するノズルにおいて先行吐出が行われる。
【0088】
光センサ53がノズル1の真下付近に移動すると、ノズル1から液体が吐出され、光センサ53によるノズル1の吐出状態が検出される(図13B参照)。ノズル1の吐出状態が検出されるときには、ノズルnから検出終了端側においてmピッチの間に存在するノズルから先行吐出が行われる。
【0089】
続いて、光センサ53がノズル1の真下付近から1ピッチ分移動し、ノズル2の真下付近に位置する。そして、ノズル2からインクが吐出され、光センサ53によりノズル2の吐出状態が検出される(図13C参照)。ノズル2の吐出状態が検出されるときには、ノズルn1から検出終了端側においてmピッチの間に存在するノズルから先行吐出が行われる。
【0090】
以後、以上のように、光センサ53による液体の吐出状態の検出と、先行吐出(及びこれに伴う静電吸引クリーニング処理)とが、各ノズルについて順に繰り返される(図13D、E参照)。検出終了直前においては、検出対象とされたノズルからnピッチ分離れたノズルを基準として、検出終了端側に存在するの出の数が減じる。したがって、検出対象とされたノズルからnピッチ分離れたノズルを基準として検出終了端側に存在するノズルのみから先行吐出が行われる。
【0091】
光センサ53により最も検出終了端側に位置するノズルの吐出状態が検出され、光センサ53が検出終了端まで移動することにより、ノズルの吐出状態の検出処理が終了する。
【0092】
以上のような1列分のモジュールヘッドのノズルの検出処理及び先行吐出処理が、複数列分のノズルについて行われる。
【0093】
図14は、ヘッドA及びBの各ノズルからX1方向に交互に液体が吐出されており、吐出された液体を1つの光センサ53で検出している例を示している。ここでは、ヘッドAのノズル4及びヘッドBのノズル5から、液体が吐出されていない例を示す。ここでは液体が吐出されなかったときには、光センサ53の検出光の光束内に液体が存在しないため、検出時の出力電圧が上昇する。閾値電圧Qが予め設定され、閾値電圧Qよりも高い出力電圧が測定された場合に、ノズルの吐出異常が検出される。
【0094】
液体吐出装置1の制御システムは、閾値電圧Qよりも高い出力電圧が測定されるか否かと時間(位相)の測定とを併用することにより、吐出異常であることが検出されたノズルを特定することができる。
【0095】
このような方法を採用することにより、検出開始端から検出終了端までの液体検出ユニット500の1回の移動により、実質的に同時に2つのモジュールヘッド22、22各ノズルの吐出状態を検出することができる。したがって、この方法は3つ以上のモジュールヘッド22、22、・・・の各ノズルの吐出状態の検出にも、拡張することができる。
【0096】
上記の検出処理では、図14に示したように閾値電圧Qにより吐出状態を判定するようにしたが、以下のような方法により吐出状態が検出されてもよい。
【0097】
例えば、液体が吐出されてもその吐出状態が異常である場合、液体の飛翔速度は標準速度(吐出状態が正常である場合の液体の飛翔速度)より遅くなることが分かっている。液体の飛翔速度が標準速度より遅い場合、液体が検出光を遮る時間が長くなる。この長さは、出力電圧の信号の時間軸の幅として現れるので、その時間長が予め設定された閾値を超えるか否かにより、吐出状態が正常か異常かを検出することができる。
【0098】
あるいは、吐出状態の検出対象となる1つのノズルから、検出光の光束内に一時に(同時に)複数回の液滴が含まれるように、複数の液滴を連続して吐出する方法もある。この場合、連続した液滴に対応する1つ1つのパルスが合成された波形が光センサ53(または54)の出力電圧として得られる。吐出状態が異常である場合に各液滴の速度が遅いほど、合成された波形のレベル、つまり出力電圧のレベル(絶対値)は大きくなる。したがって、この場合も閾値判定により吐出状態を検出することができる。
【0099】
以上のように、本実施形態では、検出ブロック52に設けられた電極52h、52hによって、先行吐出を行うノズルと電極52h、52hとの間に電場が形成される。これにより、静電吸引クリーニング処理が実行される。つまりそれら先行吐出を行うノズル内の液体に静電気力が発生し、ヘッドから液体を吸引することができる。これにより、負圧発生のための複雑な構造(上記特許文献1、2参照)を必要とすることなく、液体吐出ヘッド21内の液体に混入した不純物を確実に除去することができる。
【0100】
すなわち、本実施形態は、吐出異常を解消する回復動作の信頼性を格段に高め、回復処理を確実に行うことができる。しかも、回復動作で消費されるインク量を最小限に抑えることができる。
【0101】
特に、従来のようにインクを負圧で吸引するためにヘッドにキャップ部材が吸着される、という構造を本技術は採用しておらず、液体吐出ヘッド21に非接触で液体に吸引力を与えることができる。これにより、液体吐出ヘッド21が損傷することを防止できる。
【0102】
また、吐出状態を検出する検出ブロック52に電極52h、52hが設けられることにより、検出ブロック52と、液体の吸引機構とが別体で設けられる場合に比べ、液体吐出装置1がコンパクトになる。
【0103】
本実施形態では、液体の吐出状態を検出しながら、先行吐出による静電吸引クリーニング処理を実行することができ、処理時間を短縮することができる。
【0104】
本実施形態では、移動機構57により液体検出ユニット500を移動させながら吐出状態の検出処理及び静電吸引クリーニング処理を行うことができるので、効率的な処理を行うことができる。これに対し、従来のような負圧吸引の方法では、ヘッドにキャップ部材が接触するため、クリーニング処理を行いながらそのキャップ部材が移動することは不可能であった。
【0105】
ここで、ノズル内の液体は、ノズル内の上記電気熱変換素子が作動して膜沸騰の圧力により吐出される。したがって、典型的には、先行吐出時には、静電吸引による吸引力がこの膜沸騰の圧力に加えられて得られる力によって、液体が吐出される。しかしながら、先行吐出時に、電気熱変換素子が作動せず、膜沸騰の圧力が液体に加えられずに、電極52h、52hの電場による静電気力のみによって液体が吐出されてもよい。これにより、使用電力を削減することができる。
【0106】
[吐出状態の検出処理と静電吸引クリーニング処理のタイミングについて]
【0107】
吐出状態の検出処理と静電吸引クリーニング処理の順序は、基本的には以下の3通りのパターンがある。
1.静電吸引クリーニング処理→吐出状態の検出処理(上記した実施形態に相当)
2.静電吸引クリーニング処理→吐出状態の検出処理→静電吸引クリーニング処理
3.吐出状態の検出処理→静電吸引クリーニング処理
【0108】
パターン2において、2回目の静電吸引クリーニング処理は、吐出状態が異常であると判定されたノズルについて行われてもよい。また、パターン2において、1回目の静電吸引クリーニング処理に代えて、フラッシング処理、つまりノズルの駆動による吐出でもよい。
【0109】
[検出ブロックの他の実施形態]
【0110】
図15は、検出ブロックの他の実施形態を示す断面図である。図16は、検出処理及び静電吸引クリーニング処理を実現するための電気的な構成を示すブロック図である。これ以降の説明では、図1〜10等に示した実施形態に係る、液体吐出装置1、液体検出ユニット500等が含む部材や機能等について同様のものは説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0111】
図15に示すように、本実施形態に係る検出ブロック152に設けられた電極52kは、上記の領域A1及びA2の区別に関わらず、それらの領域の両方に電場を形成するような配置、大きさ等に設定されている。この例では、電極52kは、支持体52aの凹部52jの底面の実質的に全面に設けられている。
【0112】
電極52kと直流電源60との間にはスイッチ67が接続されている。スイッチ67は、CPU30により切り替え可能とされている。CPU30により、スイッチ67がONとされると、電極52kに直流電圧が印加され、電場が形成される。これにより静電吸引クリーニング処理が行われる。
【0113】
液体の吐出状態の検出時には、スイッチ67がOFFとされる。そして、静電吸引クリーニング処理時には、スイッチ67がONとされる。
【0114】
例えば、スイッチ67がOFFの状態で、液体検出ユニット500の移動しながら、各ノズルの吐出状態が検出される。その後、スイッチ67がONとされ、液体検出ユニット500の移動しながら、静電吸引クリーニング処理が行われる。ここでの移動は、連続的な(滑らかな)移動、及び、ステップ送りの移動のどちらでもよい。
【0115】
この場合、後述するように、CPU30は、吐出状態が異常と判定されたノズルを特定し、特定されたノズルについて静電吸引クリーニング処理を行うようにしてもよい。
【0116】
本実施形態では、電極52kは、広い領域で電場を発生することができ、静電吸引クリーニングの処理時間を短縮することができる。
【0117】
図16に示すように、この回路は、ヘッド駆動回路25、LEDドライバ26、電流/電圧変換器27、増幅器28、電圧比較器65、CPU30等を有する。
【0118】
ヘッド駆動回路25は、液体吐出ヘッド21による図示しない吐出機構(上述の電気熱変換素子等)を駆動する。
【0119】
LEDドライバ26は、発光器531、541を駆動して、これらに検出光を発生させる。
【0120】
CPU30は、これらヘッド駆動回路25、LEDドライバ26、上記した移動機構57の駆動部57a、あるいは、液体吐出装置1内のその他のシステムに制御信号を出力する。特に、CPU30は、液体の吐出状態の検出処理及び静電吸引クリーニング処理のための制御信号を、ヘッド駆動回路25及びスイッチ67に送る。
【0121】
電流/電圧変換器27は、受光器532、542で検知された電流を電圧に変換する。増幅器28は、この電圧の信号を増幅する。
【0122】
電圧比較器65は、増幅器28により得られた電圧信号を、上記した閾値電圧Qと比較し、比較により得られる信号を出力する。
【0123】
CPU30には、電圧比較器65により得られた信号が入力される。CPU30は、その信号に基づいて、例えばヘッド駆動回路25を制御する。この場合、CPU30は、吐出状態が異常と判定されたノズルを特定し、特定されたノズルについて、静電吸引クリーニング処理、あるいはフラッシング処理等を行う。あるいは、CPU30は、異常と判定されたノズルの今後の使用を規制したりもする。
【0124】
なお、上記図7、8で示した検出ブロック52の電気的構成も、図16で示した構成と実質的に同様の構成を採ることができる。
【0125】
[クリーニングブロックによるワイピング処理]
【0126】
クリーニングブロック56のクリーナ56cを用いたワイピング処理のタイミングは、いつでもよい。典型的には、上記検出処理及び静電吸引クリーニング処理の前にワイピングが行われる。検出処理及び静電吸引クリーニング処理の前とは、以下の2つの形態がある。
【0127】
1つは、例えば液体検出ユニット500の少なくとも1回の、液体吐出ヘッド21の長さ分の移動によるワイピング処理が終了した後、上記した検出処理及び静電吸引クリーニング処理を行う、という形態である。
【0128】
もう1つは、例えば液体検出ユニット500の少なくとも1回の、液体吐出ヘッド21の長さ分の移動時に、ワイピング処理、上記した検出処理及び静電吸引クリーニング処理の3つの処理を行う、という形態である。この場合、クリーニングブロック56が先頭になって移動する。
【0129】
[その他の実施形態]
【0130】
本技術は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が実現される。
【0131】
電場発生機構の電極52の配置、形状及びサイズ等は、上記各実施形態を実現できるような位置であれば、適宜変更可能である。例えば、電極は、液体吐出ヘッド21との間で支持体52aを挟む位置、つまり支持体52aの下面側に配置されていてもよい。
【0132】
図7〜13で示した実施形態において、先行吐出時に静電吸引クリーニング処理が行われる形態について説明した。しかし、これは先行吐出時に限られない。つまり、静電吸引クリーニング処理に引き続いて検出処理が行われなくてもよく、印画時以外の適時に、静電吸引クリーニング処理が単独で行われてもよい。
【0133】
上記実施形態では、検出ブロック52とクリーニングブロック56とが一体的に設けられていた。しかし、これらは別体であってもよい。
【0134】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)液体を吐出するヘッドに対向して配置されることが可能に設けられ、前記液体の吐出状態を検出する検出器と、
前記検出器に設けられ、前記ヘッド内の前記液体に静電気力を加える電場発生機構と
を具備する吐出検出装置。
(2)(1)に記載の吐出検出装置であって、
前記検出器は、前記ヘッドから吐出された前記液体を受ける受け部材を有し、
前記電場発生機構は、前記受け部材に配置された導体を有する
吐出検出装置。
(3)(2)に記載の吐出検出装置であって、
前記ヘッドは、前記液体をそれぞれ吐出する複数のノズルを有し、
前記検出器は、
前記ヘッドと前記受け部材との間に設けられた領域であって、前記複数のノズルから吐出される前記液体のうち吐出状態の検出対象となる検出対象液滴が通る領域である第1の領域と、
前記ヘッドと前記受け部材との間に設けられた領域であって、前記複数のノズルから吐出される前記液体のうち吐出状態の検出対象以外の非検出対象液滴が通る領域である第2の領域とを有し、
前記導体は、前記導体と前記ヘッドとの間に電場を形成するものであり、前記第2の領域を含む領域に電場を形成し、前記第1の領域に電場を形成しない位置に配置されている
吐出検出装置。
(4)(2)に記載の吐出検出装置であって、
前記ヘッドは、前記液体をそれぞれ吐出する複数のノズルを有し、
前記検出器は、
前記ヘッドと前記受け部材との間に設けられた領域であって、前記複数のノズルから吐出される前記液体のうち吐出状態の検出対象となる検出対象液滴が通る領域である第1の領域と、
前記ヘッドと前記受け部材との間に設けられた領域であって、前記複数のノズルから吐出される前記液体のうち吐出状態の検出対象以外の非検出対象液滴が通る領域である第2の領域とを有し、
前記導体は、前記第1及び前記第2の領域の両方に電場を形成する位置に配置されている
吐出検出装置。
(5)(1)または(2)に記載の吐出検出装置であって、
前記ヘッドは、所定の方向に配列された、前記液体を吐出する複数のノズルを有し、
前記吐出検出装置は、前記検出器を前記複数のノズルの配列方向に移動させる移動機構をさらに具備する吐出検出装置。
(6)液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドに対向して配置されることが可能に設けられ、前記液体の吐出状態を検出する検出器と、前記検出器に設けられ、前記液体に静電気力を加える電場発生機構とを有する吐出検出装置と
を具備する液体吐出装置。
(7)(6)に記載の液体吐出装置であって、
前記ヘッドに接触してクリーニングを行うワイピング部材と、
前記吐出検出装置と前記ワイピング部材とを一体的に支持する支持ベースと、
前記支持ベースを移動させる移動機構と
をさらに具備する液体吐出装置。
(8)液体を吐出するヘッドに対向して配置されることが可能に設けられた検出器により、前記液体の吐出状態を検出し、
前記検出器に設けられた電場発生機構により前記ヘッド内の前記液体に静電気力を加える
クリーニング方法。
(9)(8)に記載のクリーニング方法であって、
前記ヘッドは、所定の方向に配列された、前記液体を吐出する複数のノズルを有し、
前記検出器を前記ノズルの配列方向に移動させながら、前記電場発生機構により前記液体に静電気力を加える
クリーニング方法。
(10)(9)に記載のクリーニング方法であって、
前記複数のノズルのうち第1のノズルから前記液体を吐出させることにより、前記検出器により前記第1のノズルの吐出状態を検出し、
前記検出器により前記第1のノズルによる前記液体の吐出状態を検出しながら、前記電場発生機構が前記液体に静電気力を加えることにより、前記複数のノズルのうち第1のノズルとは異なる第2のノズルから前記液体を吐出させ、
前記検出器を移動させながら、前記第1のノズルからの前記第1の液滴の吐出と、前記第2のノズルからの前記第2の液滴の吐出とを、前記複数のノズルについて順に繰り返す
クリーニング方法。
(11)(8)から(10)のうちいずれか1つに記載のクリーニング方法であって、
前記検出器により液体の吐出状態を検出した後、前記電場発生機構により前記液体に静電気力を加える
クリーニング方法。
(12)(8)から(10)のうちいずれか1つに記載のクリーニング方法であって、
前記電場発生機構により前記液体に静電気力を加えた後、前記検出器により前記液体の吐出状態を検出する
クリーニング方法。
(13)(12)に記載のクリーニング方法であって、
前記検出器により液体の吐出状態を検出した後、前記吐出状態が異常であると判定された場合、前記電場発生機構により前記液体に静電気力を再度加える
クリーニング方法。
【符号の説明】
【0135】
P、Pc…液滴
A1…検出領域
A2…非検出領域
21…液体吐出ヘッド
22…モジュールヘッド
51…支持ベース
52、152…検出ブロック
52a…支持体
52h、52k…電極
53、54…光センサ
56…クリーニングブロック
56c…クリーナ
57…移動機構
500…液体検出ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するヘッドに対向して配置されることが可能に設けられ、前記液体の吐出状態を検出する検出器と、
前記検出器に設けられ、前記ヘッド内の前記液体に静電気力を加える電場発生機構と
を具備する吐出検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吐出検出装置であって、
前記検出器は、前記ヘッドから吐出された前記液体を受ける受け部材を有し、
前記電場発生機構は、前記受け部材に配置された導体を有する
吐出検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の吐出検出装置であって、
前記ヘッドは、前記液体をそれぞれ吐出する複数のノズルを有し、
前記検出器は、
前記ヘッドと前記受け部材との間に設けられた領域であって、前記複数のノズルから吐出される前記液体のうち吐出状態の検出対象となる検出対象液滴が通る領域である第1の領域と、
前記ヘッドと前記受け部材との間に設けられた領域であって、前記複数のノズルから吐出される前記液体のうち吐出状態の検出対象以外の非検出対象液滴が通る領域である第2の領域とを有し、
前記導体は、前記導体と前記ヘッドとの間に電場を形成するものであり、前記第2の領域を含む領域に電場を形成し、前記第1の領域に電場を形成しない位置に配置されている
吐出検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の吐出検出装置であって、
前記ヘッドは、前記液体をそれぞれ吐出する複数のノズルを有し、
前記検出器は、
前記ヘッドと前記受け部材との間に設けられた領域であって、前記複数のノズルから吐出される前記液体のうち吐出状態の検出対象となる検出対象液滴が通る領域である第1の領域と、
前記ヘッドと前記受け部材との間に設けられた領域であって、前記複数のノズルから吐出される前記液体のうち吐出状態の検出対象以外の非検出対象液滴が通る領域である第2の領域とを有し、
前記導体は、前記第1及び前記第2の領域の両方に電場を形成する位置に配置されている
吐出検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の吐出検出装置であって、
前記ヘッドは、所定の方向に配列された、前記液体を吐出する複数のノズルを有し、
前記吐出検出装置は、前記検出器を前記複数のノズルの配列方向に移動させる移動機構をさらに具備する吐出検出装置。
【請求項6】
液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドに対向して配置されることが可能に設けられ、前記液体の吐出状態を検出する検出器と、前記検出器に設けられ、前記液体に静電気力を加える電場発生機構とを有する吐出検出装置と
を具備する液体吐出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液体吐出装置であって、
前記ヘッドに接触してクリーニングを行うワイピング部材と、
前記吐出検出装置と前記ワイピング部材とを一体的に支持する支持ベースと、
前記支持ベースを移動させる移動機構と
をさらに具備する液体吐出装置。
【請求項8】
液体を吐出するヘッドに対向して配置されることが可能に設けられた検出器により、前記液体の吐出状態を検出し、
前記検出器に設けられた電場発生機構により前記ヘッド内の前記液体に静電気力を加える
クリーニング方法。
【請求項9】
請求項8に記載のクリーニング方法であって、
前記ヘッドは、所定の方向に配列された、前記液体を吐出する複数のノズルを有し、
前記検出器を前記ノズルの配列方向に移動させながら、前記電場発生機構により前記液体に静電気力を加える
クリーニング方法。
【請求項10】
請求項9に記載のクリーニング方法であって、
前記複数のノズルのうち第1のノズルから前記液体を吐出させることにより、前記検出器により前記第1のノズルの吐出状態を検出し、
前記検出器により前記第1のノズルによる前記液体の吐出状態を検出しながら、前記電場発生機構が前記液体に静電気力を加えることにより、前記複数のノズルのうち第1のノズルとは異なる第2のノズルから前記液体を吐出させ、
前記検出器を移動させながら、前記第1のノズルからの前記第1の液滴の吐出と、前記第2のノズルからの前記第2の液滴の吐出とを、前記複数のノズルについて順に繰り返す
クリーニング方法。
【請求項11】
請求項8に記載のクリーニング方法であって、
前記検出器により液体の吐出状態を検出した後、前記電場発生機構により前記液体に静電気力を加える
クリーニング方法。
【請求項12】
請求項8に記載のクリーニング方法であって、
前記電場発生機構により前記液体に静電気力を加えた後、前記検出器により前記液体の吐出状態を検出する
クリーニング方法。
【請求項13】
請求項12に記載のクリーニング方法であって、
前記検出器により液体の吐出状態を検出した後、前記吐出状態が異常であると判定された場合、前記電場発生機構により前記液体に静電気力を再度加える
クリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−179796(P2012−179796A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43926(P2011−43926)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】