説明

吐出量測定方法、液滴吐出方法、カラーフィルターの製造方法、および液滴吐出装置

【課題】描画状態における液滴吐出ヘッドからの液状体の吐出量をより高精度に設定可能とする吐出量測定方法を提供する。
【解決手段】複数の液滴吐出ヘッド5から各々吐出される液状体Lの吐出量をそれぞれ測定する吐出量測定方法であって、液滴吐出ヘッド5を予備加熱する予備加熱工程と、予備加熱された液滴吐出ヘッド5から液状体Lを吐出する予備吐出工程と、予備吐出工程の後に、改めて液滴吐出ヘッド5から吐出された液状体Lの重量を測定する重量測定工程と、を備え、予備加熱工程の開始から予備吐出工程における液状体Lの吐出までの所要時間に基づいて、相対的に所要時間が長い液滴吐出ヘッド5ほど予備吐出工程における液状体Lの吐出量を多くすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出量測定方法、液滴吐出方法、カラーフィルターの製造方法、および液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液滴吐出法を用いた成膜技術が注目されている。液滴吐出法は、用いる液滴吐出ヘッドの解像度に応じて微少な液状体を所望の位置に塗布することが可能であることから、微細なパターンの形成や、所望の膜厚を備えた薄膜の形成が容易であるという特長を有する。この特長を利用し、例えば微細な色の塗り分けが必要なカラーフィルターの製造に利用されている。
【0003】
上述の液滴吐出法に用いる液滴吐出ヘッドは、ノズルを介して液状体を吐出する駆動素子を内部に備えており、液滴吐出ヘッドからの液状体の吐出量は、当該駆動素子に印加する駆動電圧(吐出電圧)に依存して変更することが可能である。
【0004】
しかしながら、液滴吐出ヘッドによる液状体の吐出特性(吐出量)には、成形誤差等に起因して、わずかながらも吐出ノズル間でバラつきが存在する。そのため、この吐出量バラつきに起因して走査方向に直交する方向(副走査方向)に液状体の配置量にバラつきが生じ、形成する薄膜に筋状の濃淡ムラを発生させることがある。このような筋状の濃淡ムラは視認されやすく、前述したカラーフィルターの製造においては、カラーフィルターを介して表示される画像の画質を低下させる原因となる。
【0005】
そこで、従来の液滴吐出装置においては、カラーフィルターの製造に用いる各液滴吐出ヘッドについて、描画前に各液滴吐出ヘッドからの吐出量を測定し、液滴吐出ヘッドからの液状体の吐出量が所望量となるように、吐出を制御する吐出電圧の調整(キャリブレーション)を行い、吐出量のバラつきを解消する検討がなされてきた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−75767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、液状体は温度によって粘度が変化するため、上述したキャリブレーションにより求めた吐出電圧を用いても、液滴吐出ヘッドの温度に応じて粘度が変化すると所望の吐出量とならないという課題がある。
【0008】
すなわち、描画状態(基板に液状体を吐出している状態)では、液滴吐出ヘッドが駆動すると、駆動熱によって液滴吐出ヘッドの温度が高くなる。すると、液滴吐出ヘッド内の液状体の粘度が低くなるために液状体の吐出量が増大する。逆に、待機状態(液状体を吐出していない状態)では、液滴吐出ヘッドが駆動しないために駆動熱が生じず、液滴吐出ヘッドの温度が低くなる。すると、液状体の粘度が高くなるために液状体の吐出量が減少する。
【0009】
このため、液滴吐出装置において基板に対して予め定められた所望量の液状体を吐出するためには、描画状態の液滴吐出ヘッドにおける液状体の吐出量を正確に設定する必要がある。
【0010】
このような必要に応じるためには、駆動信号の調節を行う際に液滴吐出ヘッドの状態を擬似的に描画状態とし、この状態で駆動信号の調節を行えば良い。このため、待機状態において液滴吐出ヘッドを予備加熱し、液滴吐出ヘッドの温度を描画状態に近づけて駆動信号の調節を行う方法が提案されている。
【0011】
このような方法によれば、液滴吐出ヘッドが予備加熱されて描画状態と近い状態で駆動信号の設定が行われるため、描画状態における液滴吐出ヘッドの液状体の吐出量を所望量に合わせることが可能となる。
【0012】
しかしながら、近年は、製品の高品質化に伴い、液状体の吐出量をより厳格に設定することが求められている。その場合、実際の描画工程に用いる液滴吐出ヘッドを想定すると、次のような課題が生じる。
【0013】
すなわち、実際の描画工程においては、複数の液滴吐出ヘッドを用いて描画を行うため、上述のキャリブレーションを各液滴吐出ヘッドについて行う必要が生じる。その際、描画工程に用いる液滴吐出ヘッドの総数に対して、吐出量測定で用いる重量測定装置(電子天秤)の個数が少ない場合には、ある液滴吐出ヘッドについて吐出量を測定している時に他の液滴吐出ヘッドは予備加熱しながら待機する必要がある。
【0014】
すると、予備加熱を始めてから吐出量を測定するまでの時間が液滴吐出ヘッド毎に異なることから、液状体がヘッド内に滞留する時間が異なり液状体の温度が変化する。上述のように、液状体の温度変化は液状体の粘度変化を引き起こすため、結果として、吐出量測定を正しく実施することができないおそれが生じる。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、描画状態における液滴吐出ヘッドからの液状体の吐出量をより高精度に設定可能とする吐出量測定方法を提供することを目的とする。また、このような吐出量測定方法を採用することにより吐出量をより高精度に設定することを可能とする液滴吐出方法、このような液滴吐出方法を用いたカラーフィルターの製造方法を提供することを、あわせて目的とする。また、このような液滴吐出方法を実現する液滴吐出装置を提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明の吐出量測定方法は、複数の液滴吐出ヘッドから各々吐出される液状体の吐出量をそれぞれ測定する吐出量測定方法であって、前記液滴吐出ヘッドを予備加熱する予備加熱工程と、予備加熱された前記液滴吐出ヘッドから前記液状体を吐出する予備吐出工程と、前記予備吐出工程の後に、改めて前記液滴吐出ヘッドから吐出される前記液状体の重量を測定する重量測定工程と、を備え、前記予備加熱工程の開始から前記予備吐出工程における液状体の吐出までの所要時間に基づいて、相対的に前記所要時間が長い前記液滴吐出ヘッドほど前記予備吐出工程における前記液状体の吐出量を多くすることを特徴とする。
【0017】
この方法によれば、複数の液滴吐出ヘッドについて液状体の吐出までの所要時間に差が生じ、液滴吐出ヘッドに貯留される液状体の温度に差が生じる場合であっても、所要時間の差に応じて液状体の排出量に差が設けられているため、液状体の排出後に新たに供給される液状体によって、液状体の温度が均一化される。したがって、温度によって変動する液状体の粘度が均一化された状態で液状体の重量測定を行うことができ、高精度に吐出量測定を行うことができる。
【0018】
本発明においては、前記予備吐出工程では、前記液滴吐出ヘッド内部の液状体の温度を計測し、この計測結果に基づいて、予備吐出する前記液状体の吐出量を変化させることが望ましい。
この方法によれば、計測結果に基づいて液状体の温度差による粘度差を考慮した精緻な制御が可能となり、より高精度に液状体の吐出量を設定することができる。
【0019】
また、本発明の液滴吐出方法は、ノズルを介して液状体の吐出を行う駆動素子を有する液滴吐出ヘッドを複数用いる液滴吐出方法であって、上述の吐出量測定方法を用い、複数の前記液滴吐出ヘッドの各々について、所定の駆動信号を前記駆動素子に印加する際の前記液状体の吐出量を測定する吐出量測定工程と、前記吐出量測定工程の測定結果に基づいて、前記駆動信号を調節する駆動信号調節工程と、を備えることを特徴とする。
この方法によれば、各液滴吐出ヘッドに貯留される液状体の粘度が均一化された状態で液状体の重量測定を行い、高精度に吐出量測定を行った結果に基づいて所望の吐出量となるように駆動信号を調整することができるため、描画状態における液滴吐出ヘッドからの液状体の吐出量をより高精度に設定することが可能となる。
【0020】
また、本発明のカラーフィルターの製造方法は、基材と前記基材上に予め設定された画素領域に設けられた着色層とを備えるカラーフィルターの製造方法であって、上述の液滴吐出方法を用いて、前記画素領域に前記着色層の形成材料を含む液状体を配置することを特徴とする。
この方法によれば、スジムラが無く優れた品質のカラーフィルターを形成することができる。
【0021】
また、本発明の液滴吐出装置は、ノズルを介して液状体の吐出を行う駆動素子を有する液滴吐出ヘッドを複数備える液滴吐出装置であって、複数の前記液滴吐出ヘッドの各々を予備加熱する予備加熱手段と、予備加熱された前記複数の液滴吐出ヘッドのうち一部の前記液滴吐出ヘッドから吐出される前記液状体の重量を測定する重量測定手段と、前記重量測定手段を用いた前記液状体の重量測定に先だって、前記液滴吐出ヘッドにおいて予備加熱された前記液状体のうち少なくとも一部を前記液滴吐出ヘッドから排出させると共に、前記重量測定手段の測定結果に応じて前記駆動素子に印加する駆動信号を調節する制御手段と、を備え、前記制御手段は、予備加熱開始から、予備加熱された前記液状体のうち少なくとも一部を前記液滴吐出ヘッドから排出させるまで、の所要時間に基づいて、相対的に前記所要時間が長い前記液滴吐出ヘッドほど予備加熱された前記液状体を多く排出させることを特徴とする。
【0022】
実際の描画状態を考えると、頻繁に液滴吐出ヘッドから液状体が吐出されることによって液滴吐出ヘッド内部には、加熱されていない新たな液状体が外部から連続的に供給される状態とされている。つまり、予備加熱直後の液滴吐出ヘッドと、実際の描画状態の液滴吐出ヘッドとを比較すると、内部に存在する液状体が、予備加熱によって加熱されたものであるか外部から供給された加熱されていないものであるかが大きく異なる。
【0023】
そして、上記構成を採用する本発明によれば、予備加熱によって加熱された液滴吐出ヘッドから、予備加熱によって加熱された液状体が液滴吐出ヘッド内部から吐出されるため、予備加熱によって加熱された液状体が液滴吐出ヘッド内部から排出されることとなり、これによって液滴吐出ヘッドは実際の描画状態により近づくこととなる。
【0024】
また、予備加熱開始から液状体の排出までの所要時間が、複数の液滴吐出ヘッドにおいて異なり、液滴吐出ヘッドに貯留される液状体の温度に差が生じる場合であっても、所要時間の差に応じて液状体の排出量に差が設けられているため、液状体の排出後に新たに供給される液状体によって、液状体の温度が均一化され、液状体の粘度が均一化される。
【0025】
したがって、予備加熱によって加熱された液状体の粘度が均一化された後に、液状体の重量測定、及び駆動信号の設定を行うことによって、駆動信号は、より液滴吐出ヘッドが描画状態に近づいた状態で調節されることとなり、液状体の吐出量をより高精度に設定することを可能とする液滴吐出装置を提供することができる。
【0026】
本発明においては、前記制御手段は、前記所要時間を計測する計時手段を有し、前記計時手段の計測結果に基づいて、前記液状体の排出量を制御することが望ましい。
この構成によれば、例えば液滴吐出ヘッドにおける重量測定を一定時間として定めることが出来ない場合であっても、所要時間を実測して排出量を制御することができるため、高精度な吐出量の制御が可能となる。
【0027】
本発明においては、前記液滴吐出ヘッド内部の液状体の温度を計測する温度計測手段を備え、前記制御手段は、前記温度計測手段の計測結果に基づいて、前記液状体の排出量を制御することが望ましい。
この構成によれば、計測結果に基づいて液状体の温度差による粘度差を考慮した精緻な制御が可能となり、より高精度に液状体の吐出量を設定することが可能な液滴吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の液滴吐出方法を適用する液滴吐出装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態の液滴吐出方法で用いる液滴吐出ヘッドの概略構成図である。
【図3】本実施形態の液滴吐出装置のキャリッジおよび吐出量測定装置の説明図である。
【図4】本実施形態の液滴吐出装置の制御手段を説明する説明図である。
【図5】本実施形態の液滴吐出方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1〜図5を参照しながら、本発明の実施形態に係る吐出量測定方法、液滴吐出方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0030】
図1は、本実施形態の吐出量測定方法、液滴吐出方法が適用される液滴吐出装置IJの概略構成図である。液滴吐出装置IJは、例えばインクジェット方式によりカラーフィルター基板(基材)の所定領域上にカラーフィルター材料(液状体)の液滴を吐出してカラーフィルターを形成する装置であり、本実施形態の液滴吐出方法を行うものでもある。
【0031】
図に示すように、液滴吐出装置IJは、装置架台1、ワークステージ2、ステージ移動装置3、キャリッジ4、液滴吐出ヘッド5、キャリッジ移動装置6、チューブ7、第1タンク8、第2タンク9、第3タンク10、吐出量測定装置11及び制御装置(制御手段)12を備えている。
【0032】
図1ではXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がワークステージ2に対して平行となるよう設定され、Z軸がワークステージ2に対して直交する方向に設定されている。図1中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。
【0033】
装置架台1は、ワークステージ2及びステージ移動装置3の支持台である。ワークステージ2は、装置架台1上においてステージ移動装置3によってX軸方向に移動可能に設置されており、上流側の搬送装置(図示せず)から搬送されるカラーフィルター基板(基材)Pを、真空吸着機構によりXY平面上に保持する。ステージ移動装置3は、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備え、制御装置12から入力される、ワークステージ2のX座標を示すステージ位置制御信号に基づいて、ワークステージ2をX軸方向に移動させる。
【0034】
キャリッジ4は、複数の液滴吐出ヘッド5を保持するものであり、キャリッジ移動装置6によってY軸方向及びZ軸方向に移動可能に設けられている。キャリッジ4に設けられた各液滴吐出ヘッド5は、チューブ7を介して、第1タンク8からR(赤)用のカラーフィルター材料の供給を受け、第2タンク9からG(緑)用のカラーフィルター材料の供給を受け、第3タンク10からB(青)用のカラーフィルター材料の供給を受けるようになっている。
【0035】
キャリッジ移動装置6は、装置架台1を跨ぐ橋梁構造をしており、Y軸方向及びZ軸方向に対してボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備え、制御装置12から入力される、キャリッジ4のY座標及びZ座標を示すキャリッジ位置制御信号に基づいて、キャリッジ4をY軸方向及びZ軸方向に移動させる。
【0036】
チューブ7は、第1タンク8、第2タンク9及び第3タンク10と、キャリッジ4(液滴吐出ヘッド5)とを連結するカラーフィルター材料の供給用チューブである。第1タンク8は、R(赤)用の液状のカラーフィルター材料(液状体)を貯留すると共に、チューブ7を介して液滴吐出ヘッド5にカラーフィルター材料を供給する。同様に、第2タンク9は、G(緑)用のカラーフィルター材料を貯留すると共に、チューブ7を介して液滴吐出ヘッド5にカラーフィルター材料を供給する。また、第3タンク10は、B(青)用のカラーフィルター材料を貯留すると共に、チューブ7を介して液滴吐出ヘッド5にカラーフィルター材料を供給する。
【0037】
吐出量測定装置11は、装置架台1上のキャリッジ4の移動範囲に設置されており、液滴吐出ヘッド5から吐出されたカラーフィルター材料を受けると共に、吐出された液状体の重量を吐出量として測定するものである。そして、吐出量測定装置11は、測定結果を制御装置12に出力する。
【0038】
制御装置12は、液滴吐出ヘッド5による液滴吐出動作、ワークステージ2の移動によるカラーフィルター基板Pの位置決め動作、キャリッジ4の移動による液滴吐出ヘッド5の位置決め動作の同期制御を行うことにより、カラーフィルター基板P上の所定の位置にカラーフィルター材料の液滴を吐出する。
【0039】
また、後に詳説するが、本実施形態において制御装置12は、予備加熱によって加熱されたカラーフィルター材料を液滴吐出ヘッド5から吐出させると共に、吐出量測定装置11から入力される測定結果を示す信号に応じて液滴吐出ヘッド5が備える圧電体素子に印加する駆動信号の調節を行う。
【0040】
図2は、液滴吐出ヘッド5の概略構成図である。図2(a)は液滴吐出ヘッド5をワークステージ2側から見た平面図、図2(b)は液滴吐出ヘッド5の部分斜視図、図2(c)は液滴吐出ヘッド5の1ノズル分の部分断面図である。
【0041】
図2(a)に示すように、液滴吐出ヘッド5は、Y軸方向に配列された複数(例えば180個)のノズルNを備えており、複数のノズルNによってノズル列NAが形成されている。各ノズルNからはカラーフィルター材料を含む液状体が吐出される。
【0042】
ここで、図2(a)では1列分のノズルを示したが、液滴吐出ヘッド5に設けるノズル数及びノズル列数は任意に変更可能であり、Y軸方向に配列した1列分ノズルをX軸方向に複数列設けても良い。また、キャリッジ4内に配置する液滴吐出ヘッド5の数も任意に変更可能である。更に、キャリッジ4をサブキャリッジ単位で複数設ける構成としても構わない。
【0043】
本実施形態の液滴吐出装置IJにおいては、液滴吐出ヘッド5の側壁に対して温度計測センサー13が設置されている。この温度計測センサー13は、設置される液滴吐出ヘッド5の側壁温度を計測することによって間接的に液滴吐出ヘッド5内部のカラーフィルター材料の温度を計測するものである。そして、温度計測センサー13は、計測結果を制御装置12に出力する。
【0044】
また、図2(b)に示すように、液滴吐出ヘッド5は、図1に示すチューブ7と連結される材料供給孔20aが設けられた振動板20と、ノズルNが設けられたノズルプレート21と、振動板20とノズルプレート21との間に設けられた液溜まり22と、複数の隔壁23と、複数のキャビティー24とを備えている。振動板20上には、各ノズルNにそれぞれ対応して圧電体素子(駆動素子、予備加熱手段)PZが配置されている。圧電体素子PZは、例えばピエゾ素子である。
【0045】
リザーバー22には、材料供給孔20aを介して供給される液状のカラーフィルター材料(液状体)が充填されるようになっている。キャビティー24は、振動板20と、ノズルプレート21と、1対の隔壁23とによって囲まれるようにして形成されおり、各ノズルNに1対1に対応して設けられている。また、各キャビティー24には、一対の隔壁23の間に設けられた供給口24aを介して、リザーバー22からカラーフィルター材料が導入されるようになっている。
【0046】
また、図2(c)に示すように、圧電体素子PZは、圧電材料25を一対の電極26で挟持したものであり、一対の電極26に駆動信号を印加すると圧電材料25が収縮するよう構成されたものである。そして、このような圧電体素子PZが配置されている振動板20は、圧電体素子PZと一体になって同時に外側(キャビティー24の反対側)へ撓曲するようになっており、これによってキャビティー24の容積が増大するようになっている。
【0047】
したがって、キャビティー24内に増大した容積分に相当するカラーフィルター材料が、液溜まり22から供給口24aを介して流入する。また、このような状態から圧電体素子PZへの駆動信号の印加を停止すると、圧電体素子PZと振動板20はともに元の形状に戻り、キャビティー24も元の容積に戻ることから、キャビティー24内のカラーフィルター材料の圧力が上昇し、ノズルNからカラーフィルター基板Pに向けてカラーフィルター材料の液滴(液状体L)が吐出される。
【0048】
また、液滴吐出を行っていない待機状態において、圧電体素子PZに対してノズルNからカラーフィルター材料を吐出させない程度の微小な圧力変動となるような駆動信号を供給すると、圧電体素子PZが微振動し、この圧電体素子PZの駆動により圧電体素子PZを発熱させることができる。この駆動熱を利用することにより、圧電体素子PZは、液滴吐出ヘッド5を予備加熱する本発明の予備加熱手段として機能する。予備加熱が成されることにより、液滴吐出ヘッド5の温度、すなわちヘッド内の液状体の温度を描画状態に近づけることができる。
【0049】
図3は、キャリッジ4および吐出量測定装置11の説明図である。図3(a)は、キャリッジ4および吐出量測定装置11の概略構成図であり、図3(b)は、キャリッジ4が有する複数の液滴吐出ヘッド5からの予備吐出量を示すグラフである。
【0050】
図3(a)に示すように、キャリッジ4は、キャリッジ本体4Aに設けられた複数(図では5つ)の液滴吐出ヘッド5を有している。各液滴吐出ヘッド5は、図示略の複数のノズルを備えており、図1の制御装置12から入力される描画データや駆動制御信号に基づいて、カラーフィルター材料を含有する液状体Lを吐出する。
【0051】
また、吐出量測定装置11は、液滴の吐出量を測定するのに先だって、液滴吐出ヘッド5内に貯留されている液状体Lを廃棄する予備吐出部111と、液滴吐出ヘッド5から吐出される液状体Lの吐出量を測定する電子天秤(重量測定手段)112と、を有している。
【0052】
本実施形態の液滴吐出ヘッド5では、まず、描画を行う前に全ての液滴吐出ヘッド5に対して予備加熱が成され、予備加熱が成された液滴吐出ヘッド5について、吐出量測定装置11を用いて液滴吐出ヘッド5a〜5eの順に吐出量を測定する。そして、測定された吐出量を用いて、図2に示す圧電体素子PZに印加する駆動信号を調整し、各液滴吐出ヘッド5からの吐出量を揃え、差異をなくす(キャリブレーション)構成となっている。
【0053】
この際、吐出量を測定する際には、まず予備吐出部111で液滴吐出ヘッド5内の液状体を一部廃棄(予備吐出)するが、吐出量を測定する液滴吐出ヘッド5の数に対して電子天秤112の数が少ない場合には、全ての液滴吐出ヘッド5からの吐出量を一度に測定はできない。そのため、ある液滴吐出ヘッド5(例えば図中5a)からの吐出量を測定している間に、他の液滴吐出ヘッド5(例えば図中5e)は待機状態となる。
【0054】
すると、予備加熱開始から吐出量測定のための予備吐出を行うまでの所要時間(待機時間)が、液滴吐出ヘッド5間で異なってしまう。この場合、待機時間が長い液滴吐出ヘッド5内の液状体Lは、待機時間が短い液滴吐出ヘッド5内の液状体Lと比べて、相対的に長時間に渡って加熱されることとなる。その結果、液滴吐出ヘッド5間で液状体の温度が異なることで液状体の粘度が異なってしまい、駆動信号に対する吐出量が異なるためキャリブレーションが正しく行われない。そのため、本実施形態の液滴吐出装置IJでは、待機時間に応じて、予備吐出量を異ならせる構成を採用している。
【0055】
すなわち、図3(b)に示すように、待機時間が短い液滴吐出ヘッド5aは予備吐出量が少なく、液滴吐出ヘッド5b,5c,5d,5eの順に予備吐出量が多くなるように制御する。
【0056】
このように予備吐出を行うと、吐出された液状体を補って図1の第1から第3の各タンク7〜9から新たな液状体が供給される。供給される液状体は予備加熱されていないため、液滴吐出ヘッド5内に貯留されている液状体と混ざり合うことでヘッド内の液状体を冷やす。また、待機時間に応じてタンクからの液状体の供給量が異なるため、待機時間が長い(加熱時間が長い)液滴吐出ヘッド5ほど多くの液状体がタンクから供給され、ヘッド内の液状体がよく冷却されることとなる。
【0057】
したがって、複数の液滴吐出ヘッド5のそれぞれについて、吐出量を測定する際の液状体の温度を揃えることができ、吐出量をより高精度に測定することができる。
【0058】
次に、図4,5を参照して、図3で示した吐出量制御を実現するための制御装置12の構成、および制御方法について説明する。まず、図4に示すように、制御装置12は、液滴吐出ヘッド5の外部に設置される制御コンピューター50と、液滴吐出ヘッド5に設置される駆動回路部60とを備えている。
【0059】
制御コンピューター50は、例えばCPU(中央処理装置)から構成される演算制御部52及び駆動信号生成部54、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の内部記憶装置、ハードディスク、CD−ROM等の外部記憶装置から構成される記憶部56、液晶表示装置又はCRT(Cathode Ray Tube)等の表示装置やプリンタによって構成される出力部57、マウスやキーボードから構成される入力部58、演算制御部52において動作制御を行うタイミングを計る計時部(計時手段)59を備える。このような制御コンピューター50は、ROM又はハードディスクに記憶されたプログラムに従って、液滴吐出装置IJの動作を制御する制御信号を出力する。
【0060】
演算制御部52は、外部から入力された制御信号及び記憶部56に予め記憶された制御プログラムに基づいて、液滴吐出ヘッド5に設けられる複数の圧電体素子PZを駆動させる各種駆動信号を生成するための駆動信号生成用データを駆動信号生成部54に出力する。
【0061】
また、演算制御部52は、上述の制御信号及び制御プログラムに基づいて、選択データを生成して駆動回路部60に設けられた切替信号生成部62に出力する。この選択データは、駆動信号の印加対象となる圧電体素子PZを指定するためのノズル選択データと圧電体素子PZに印加する駆動信号を指定するための波形選択データとからなる。
【0062】
合わせて、演算制御部52は、入力された制御信号及び内部に予め記憶された制御プログラムに基づいて、図1に示すワークステージ2、ステージ移動装置3及びキャリッジ移動装置6の動作を制御する。
【0063】
駆動信号生成部54は、上記の駆動信号生成用データに基づいて所定形状の各種駆動信号を生成し、駆動回路部60の圧電体素子PZ毎に設けられた複数のスイッチ回路64にそれぞれ出力する。駆動信号生成部54が生成する駆動信号には、例えば、吐出用駆動信号、及び微振動用駆動信号がある。
【0064】
吐出用駆動信号は、各ノズルNからカラーフィルター材料を吐出させるための駆動信号である。また、微振動用駆動信号は、ノズルNからカラーフィルター材料を吐出させない程度の微小な圧力変動となるように圧電体素子PZを振動させることによって、液滴吐出ヘッド5内を加熱するための駆動信号である。そして、本実施形態において圧電体素子PZは、微振動用駆動信号を印加されることによって、液滴吐出ヘッド5を予備加熱する本発明の予備加熱手段として機能する。
【0065】
記憶部56は、上述の制御プログラムを記憶するとともに、予備加熱開始から吐出量測定のための予備吐出を行うまでの所要時間(待機時間)に対する、吐出量測定のために予備吐出すべき予備吐出量(排出量)の関係を、関係式やテーブルの形で記憶している。
【0066】
計時部59は、順に予備吐出をする各液滴吐出ヘッド5において、加熱開始からの所要時間を計測する。例えば、演算制御部52がキャリッジ移動装置6に対してキャリッジ移動装置6を駆動させる信号を供給した時間を計測することで、液滴吐出ヘッド5が加熱開始から予備吐出のために移動するまでの経過時間を求めることとすることができる。
【0067】
駆動回路部60は、液滴吐出ヘッド5内に設けられており、切替信号生成部62及びスイッチ回路64を含んで構成されている。切替信号生成部62は、演算制御部52から出力される選択データに基づいて各圧電体素子PZへの駆動信号の導通/非導通を指示する切替信号を生成し、スイッチ回路64に出力する。スイッチ回路64は、各圧電体素子PZにそれぞれ設けられており、切替信号によって指定された駆動信号を圧電体素子PZに出力する。
【0068】
次に、図5のフローチャートを参照し、本実施形態の液滴吐出装置IJを用いた液滴吐出方法を説明する。以下の説明では、理解を容易にするために、具体的な製造例としてカラーフィルターを製造する方法について説明する。また、必要に応じ、図4で用いた制御装置12の各構成を示す符号を用いて説明する。
【0069】
まず、制御装置12は、液滴吐出ヘッド5から基板Pに対してカラーフィルター材料(液状体)を吐出しない待機状態において、液滴吐出ヘッド5を予備加熱する予備加熱工程を行う(ステップS1、吐出量測定工程)。
【0070】
この予備加熱工程は、待機状態で温度が低い状態の液滴吐出ヘッド5を加熱することによって、液滴吐出ヘッド5の温度を描画状態(液滴吐出ヘッド5から基板Pに対して液状体を吐出する状態)に近づける工程である。具体的には、制御装置12は、駆動信号生成部54において微振動用駆動信号を生成し、全ての圧電体素子PZに対して微振動用駆動信号を印加する。この結果、圧電体素子PZが微振動し、これによって発生した熱によって液滴吐出ヘッド5が加熱される。また、計時部59では、予備加熱開始からの経過時間を測定する。
【0071】
次に、制御装置12は、吐出量を測定する液滴吐出ヘッドを選択する吐出ヘッド選択工程を行う(ステップS2)。
【0072】
複数の液滴吐出ヘッドが、所定の配列軸に沿って設けられている場合には、制御が容易であるため配列順に吐出量測定を行うこととし、直前に吐出量測定を行った液滴吐出ヘッドに続いて並ぶ液滴吐出ヘッドを選択する。
【0073】
必要に応じて、演算制御部52は、入力された制御信号や内部に予め記憶された制御プログラムに基づいて、図3に示すキャリッジ4を移動させ、液滴吐出ヘッド5を予備吐出部111上に移動させる。
【0074】
次に、制御装置12は、選択された液滴吐出ヘッド内の加熱された液状体を、液滴吐出ヘッド5の内部から吐出する予備吐出工程(ステップS3、吐出量測定工程)を行う。
【0075】
この予備吐出工程は、予備加熱工程の際に液滴吐出ヘッド5の内部に存在して予備加熱工程によって液滴吐出ヘッド5と共に加熱された液状体を液滴吐出ヘッド5から排出することによって、液滴吐出ヘッド5の内部に加熱されていない液状体を導入する工程である。
【0076】
実際の描画状態を考えると、頻繁に液滴吐出ヘッド5から液状体が吐出されることによって液滴吐出ヘッド5内部には、加熱されていない新たな液状体が外部から連続的に供給されて液状体の入れ替えが行われており、液状体の温度が平衡状態となっているとされている。つまり、予備加熱直後の液滴吐出ヘッド5と、実際の描画状態の液滴吐出ヘッド5とを比較すると、内部に存在する液状体が、予備加熱によって加熱されたものであるか、外部から供給された加熱されていないものと入れ替えが行われているかが大きく異なる。
【0077】
このような液滴吐出ヘッドにおいて、予備吐出工程を行うことによって、予備加熱によって加熱された液状体が液滴吐出ヘッド5内部から排出されることとなり、予備加熱されていない液状体が液滴吐出ヘッド内に供給される。これによって液滴吐出ヘッド5は実際の描画状態により近づくこととなる。
【0078】
その際、演算制御部52では、計時部59で測定された予備加熱開始からの経過時間を待機時間として採用し、記憶部56に記憶された待機時間に対する予備吐出量の関係を示す関係式やテーブルに基づいて、待機時間に応じて予備吐出量を決定し予備吐出部111に吐出する。
【0079】
複数の液滴吐出ヘッド間では、待機時間に応じて予備加熱の時間が異なるため、待機時間が長い液滴吐出ヘッドほど内部に貯留される液状体が長時間加熱されている。そこで、本実施形態の液滴吐出方法では、待機時間が長い液滴吐出ヘッドほど予備吐出量を多く制御することで、重量測定時の液状体の温度が液滴吐出ヘッド全体として均一になるようにしている。
【0080】
なお、液滴吐出装置では、待機状態の液滴吐出ヘッドにおけるノズル詰まりを防止するために、待機状態において吐出を行うことがあるが、この詰まり防止のための吐出量は通常ごく微量であるため、液滴吐出ヘッドの温度にはほぼ影響を与えない。そのため液滴吐出ヘッドの温度に対しては、予備加熱開始からの経過時間が支配的に働くこととなる。
【0081】
また、この予備吐出工程では、上述の記憶部56に記憶された待機時間に対する予備吐出量の関係に加えて、液滴吐出ヘッドの温度の実測値を用いて液滴吐出ヘッド5内部における液状体の温度を推測し、液状体の温度に応じた粘度を考慮して予備吐出量を補正することとしても良い。
【0082】
次に、制御装置12は、液滴吐出ヘッド5から吐出された液状体の重量を測定する重量測定工程(ステップS4、吐出量測定工程)を行う。
【0083】
この重量測定工程は、予備吐出工程後において、液滴吐出ヘッド5の全ノズルあるいは予め定められたグループに属するノズルから吐出された液状体の重量を測定する工程である。具体的には、制御装置12は、所定の吐出用駆動信号(所定の駆動信号)を圧電体素子PZに印加して液滴吐出ヘッド5から電子天秤112に対して液状体を吐出させ、この結果、電子天秤112から入力される測定結果から液滴吐出ヘッド5から吐出された液状体の重量を取得する。
【0084】
次に、制御装置12は、全ての液滴吐出ヘッドについて吐出量を測定したかどうかを判断する(ステップS5)。吐出量測定が終了していない液滴吐出ヘッドがある場合には、吐出ヘッド選択工程(ステップS2)に戻り、全ての液滴吐出ヘッドについて吐出量を測定するまでステップS2からステップS4を繰り返す。また、全ての液滴吐出ヘッドについて吐出量の測定が終了した場合、次の工程に進む。
【0085】
次に、制御装置12は、重量測定工程の測定結果に応じて圧電体素子PZに印加する駆動信号を調節する駆動信号調節工程(ステップS6)を行う。
【0086】
この駆動信号調節工程は、描画状態において液滴吐出ヘッド5から予め定められた所望量の液状体が吐出されるように駆動信号を調節する工程である。具体的には、制御装置12は、重量測定工程において所定の吐出用駆動信号を圧電体素子PZに印加した場合に吐出されるべき重量予測値(所望の吐出量)と、重量測定工程にて取得した重量とを比較する。そして、その差分から吐出用駆動信号の調節量を算出し、この算出結果を吐出用駆動信号に反映させることによって、駆動信号の調節を行う。
【0087】
なお、重量測定工程において、液滴吐出ヘッド5が備える圧電体素子PZを複数グループに分けて重量測定を行う場合には、グループごとに駆動信号調節工程が行われる。
【0088】
次に、制御装置12は、基板Pに液状体を吐出してカラーフィルターを形成する描画工程(ステップS7)を行う。
【0089】
具体的には、制御装置12は、キャリッジ4を移動させながら、液滴吐出ヘッド5から基板P上に液状体を吐出する。これによって基板P上に液状体が配置されてカラーフィルターが製造される。ここで、本実施形態の描画工程においては、駆動信号調節工程において調節された吐出用駆動信号を用いて液状体が液滴吐出ヘッド5から吐出される。したがって、基板Pへの液状体の吐出量が所望量となる。
【0090】
なお、制御装置12は、描画工程の後、あるいは描画工程において、所定時間の経過あるいは吐出トラブルを検出した場合には、再度、予備加熱工程に戻り、駆動信号を再調節する。
以上のようにして、本実施形態の液滴吐出方法を実施する。
【0091】
以上のような吐出量測定方法によれば、複数の液滴吐出ヘッド間で待機時間が異なっても精度良く吐出量を測定することが可能となる。
【0092】
また、以上のような液滴吐出方法によれば、描画状態における液滴吐出ヘッドからの液状体の吐出量をより高精度に設定することが可能となる。
【0093】
また、以上のようなカラーフィルター製造方法によれば、各液滴吐出ヘッドからのカラーフィルター材料の吐出量を高精度に制御することができるため、スジムラのない高品質なカラーフィルターを製造することが可能となる。
【0094】
また、以上のような液滴吐出装置によれば、液状体の吐出量をより高精度に設定することを可能とする液滴吐出装置を提供することができる。
【0095】
なお、本実施形態においては、5つの液滴吐出ヘッドを有する1つのキャリッジについて説明したが、同様の考えを用いることで、複数のキャリッジに渡って液滴吐出ヘッドの待機時間が異なる場合にも適応することができる。
【0096】
また、本実施形態においては、複数の液滴吐出ヘッドの吐出量を1つの電子天秤112を用いて測定する場合について説明したが、複数の電子天秤を用いて同時に複数の吐出量を測定可能な場合であっても、液滴吐出ヘッド間に相対的な待機時間の差があるならば、同様の考えに基づいて予備吐出量を異ならせ、液滴吐出ヘッド内に貯留される液状体の粘度を揃えることができる。
【0097】
また、本実施形態においては、圧電体素子PZを微振動させることによって液滴吐出ヘッド5を予備加熱する構成について説明したが、これに限らず、例えばヒータ等を用いて液滴吐出ヘッド5を予備加熱しても良い。
【0098】
また、本実施形態においては、全ての液滴吐出ヘッドからの吐出量を測定した後に駆動信号を調節することとしたが、各液滴吐出ヘッドについて逐次駆動信号を調整することとしても構わない。
【0099】
また、本実施形態においては、計時部59がキャリッジ移動装置6を駆動させる信号を供給した時間を計測することで、液滴吐出ヘッドの待機時間を計測する例を示したが、これに限らない。
【0100】
例えば、駆動信号生成部54からスイッチ回路64に信号を供給すると同時に、駆動信号生成部54から計時部59に信号が入力されるようになっており、信号が入力されるタイミングを測定することで、直前に予備吐出を行った液滴吐出ヘッド5の予備吐出からの経過時間を計測し、この経過時間を累積して待機時間として算出することとしても良い。
【0101】
また、本実施形態においては、計時部59を有することとしたが、計時部59がない構成とすることも可能である。
【0102】
例えば、均等間隔に複数の液滴吐出ヘッドが配列している場合、各液滴吐出ヘッドにおける重量測定に要する時間や、重量測定のための液滴吐出ヘッドの切り替えに要する時間などは容易に推測できる。そのため、各液滴吐出ヘッドにおける排出量に予め差を設けて設定しておくことで、液滴吐出ヘッド内の液状体の温度差を小さくしすることができ、高精度な駆動信号の調整が可能となる。
【0103】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0104】
例えば、本実施形態ではカラーフィルターの製造方法を例として挙げ、本発明の液滴吐出方法について説明したが、これに限らず、液晶材料や有機EL材料等の他の機能液を液状体として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0105】
5…液滴吐出ヘッド、112…電子天秤(重量測定手段)、12…制御装置(制御手段)、13…温度計測手段、59…計時部(計時手段)、IJ…液滴吐出装置、L…液状体、N…ノズル、PZ…圧電体素子(駆動素子、予備加熱手段)、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液滴吐出ヘッドから各々吐出される液状体の吐出量をそれぞれ測定する吐出量測定方法であって、
前記液滴吐出ヘッドを予備加熱する予備加熱工程と、
予備加熱された前記液滴吐出ヘッドから前記液状体を吐出する予備吐出工程と、
前記予備吐出工程の後に、改めて前記液滴吐出ヘッドから吐出される前記液状体の重量を測定する重量測定工程と、を備え、
前記予備加熱工程の開始から前記予備吐出工程における液状体の吐出までの所要時間に基づいて、相対的に前記所要時間が長い前記液滴吐出ヘッドほど前記予備吐出工程における前記液状体の吐出量を多くすることを特徴とする吐出量測定方法。
【請求項2】
前記予備吐出工程では、前記液滴吐出ヘッド内部の液状体の温度を計測し、この計測結果に基づいて、予備吐出する前記液状体の吐出量を変化させることを特徴とする請求項1に記載の吐出量測定方法。
【請求項3】
ノズルを介して液状体の吐出を行う駆動素子を有する液滴吐出ヘッドを複数用いる液滴吐出方法であって、
請求項1または2に記載された吐出量測定方法を用い、複数の前記液滴吐出ヘッドの各々について、所定の駆動信号を前記駆動素子に印加する際の前記液状体の吐出量を測定する吐出量測定工程と、
前記吐出量測定工程の測定結果に基づいて、前記駆動信号を調節する駆動信号調節工程と、を備えることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項4】
基材と前記基材上に予め設定された画素領域に設けられた着色層とを備えるカラーフィルターの製造方法であって、
請求項3に記載の液滴吐出方法を用いて、前記画素領域に前記着色層の形成材料を含む液状体を配置することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【請求項5】
ノズルを介して液状体の吐出を行う駆動素子を有する液滴吐出ヘッドを複数備える液滴吐出装置であって、
複数の前記液滴吐出ヘッドの各々を予備加熱する予備加熱手段と、
予備加熱された前記複数の液滴吐出ヘッドのうち一部の前記液滴吐出ヘッドから吐出される前記液状体の重量を測定する重量測定手段と、
前記重量測定手段を用いた前記液状体の重量測定に先だって、前記液滴吐出ヘッドにおいて予備加熱された前記液状体のうち少なくとも一部を前記液滴吐出ヘッドから排出させると共に、前記重量測定手段の測定結果に応じて前記駆動素子に印加する駆動信号を調節する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、予備加熱開始から、予備加熱された前記液状体のうち少なくとも一部を前記液滴吐出ヘッドから排出させるまで、の所要時間に基づいて、相対的に前記所要時間が長い前記液滴吐出ヘッドほど予備加熱された前記液状体を多く排出させることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記所要時間を計測する計時手段を有し、
前記計時手段の計測結果に基づいて、前記液状体の排出量を制御することを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記液滴吐出ヘッド内部の液状体の温度を計測する温度計測手段を備え、
前記制御手段は、前記温度計測手段の計測結果に基づいて、前記液状体の排出量を制御することを特徴とする請求項5または6に記載の液滴吐出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−247077(P2010−247077A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99652(P2009−99652)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】