説明

向上した品質の多スペクトル硫化亜鉛

【課題】無色透明硫化亜鉛の変色を生じさせそしてその性能を低下させる不純物を実質的に含まない向上した品質の多スペクトル無色透明硫化亜鉛を得る。
【解決手段】硫化亜鉛を保持するチャックをコーティングし、かつ硫化亜鉛をコーティングされていない粒子で機械加工することにより、金属汚染物質が低減された低散乱無色透明硫化亜鉛が製造される。不活性ホイルは酸クリーニング方法でクリーニングされ、また硫化亜鉛もクリーニングする。硫化亜鉛は不活性化ホイルに包まれ、次いでHIPプロセスによって処理されて、低散乱無色透明硫化亜鉛を提供する。この低散乱無色透明硫化亜鉛は窓およびドームのような物品に使用されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は向上した品質の多スペクトル無色透明硫化亜鉛に関する。より具体的には、本発明は、無色透明硫化亜鉛の変色を生じさせそしてその性能を低下させる不純物を実質的に含まない向上した品質の多スペクトル無色透明硫化亜鉛に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化亜鉛は可視から赤外領域における比較的長い電磁波長まで本来的に透明な材料である。これら特性は、赤外検出器およびミサイルドームにおけるような赤外透過能力を必要とする用途におけるその使用に貢献する。硫化亜鉛物品は典型的には化学蒸着(CVD)または粉体の高温加圧技術によって生じさせられる。これらの技術は、電磁スペクトルの可視または近赤外領域において概して不透明でかつ機能的に透明でない形態を生じさせる。熱間等方圧加圧(Hot isostatic pressing;HIP)、高圧および高温処理は、装甲車両および航空機窓におけるような、硫化亜鉛が多スペクトル能力を必要とする用途において使用されうるように充分に、可視および近紫外領域における硫化亜鉛の透明性を向上させることが認められてきた。一般的に、この機能的に透明な硫化亜鉛は以下のように製造される:化学蒸着チャンバー内での亜鉛気体と硫化水素ガスとの反応によって硫化亜鉛が生じさせられる。このプロセスは比較的大きなシートを生じさせ、次いでこのシートはより小さな部分にスライスされ、表面を滑らかにするように機械加工される。次いで、この硫化亜鉛は金属ホイルに包まれ、次いで熱間等方圧加圧すなわちHIPプロセスにかけられ、このプロセスはその材料を機能的に透明または無色透明(water−clear)にする。無色透明の硫化亜鉛が磨かれた後で、白色蛍光灯の下で検査される。場合によっては、変色した材料が観察される。変色は金属汚染物質によって引き起こされると考えられる。よって、HIPの前には、金属ホイルおよび硫化亜鉛は、望ましくは、いかなる金属汚染物質も含まない。
【0003】
硫化亜鉛を清浄化するための従来の方法は、アルコール、アセトンおよび様々な界面活性剤をベースにした有機クリーニング剤を使用する。このクリーナーは有機汚染物質を除去しうるが、機械加工および取り扱い中に硫化亜鉛に埋め込まれるかまたは表面に強力に付着させられる金属汚染物質を完全に除去するには適していない。硫化亜鉛の比較的柔らかな表面のせいで、機械加工用マークが典型的には硫化亜鉛に生じさせられる。このようなマークは硫化亜鉛に入り込む場合がある。このようなマークは従来の方法によって取り除かれることができず、かつ変色マークを生じさせうる。一例はブランチャードチャック(Blanchard chuck)により生じさせられる円形マークである。硫化亜鉛がブラーチャードチャック上に直接載せられ、そしてこの硫化亜鉛が機械加工される場合には、この機械加工プロセスの圧力がこれらマークを生じさせうる。硫化亜鉛が長期間このチャック上に残され、そして乾燥する場合に、これらマークの強さは増大する。この生成プロセス中に使用されるグラインディングホイールもニッケルおよび銅のような汚染物質を導入しうる。多くのグラインディングホイールは、ホイールベースの組成物中に、またはダイヤモンドもしくは立方晶窒化ホウ素研磨粒子のためのコーティングもしくはバインダー中にニッケルおよび銅を使用する。硫化亜鉛を生じさせる際に、このグラインディングホイールは小粒子を落とし、この小粒子が埋め込まれて、硫化亜鉛に存在しうる端部または内側クラック上の機械表面を粗くする。これら粒子は粗い領域の低位置というその場所のせいで清浄化するのが困難である。
【0004】
さらに、外来の金属はその製造中に金属ホイルも汚染する場合がある。この汚染物質除去の失敗は変色した硫化亜鉛を生じさせる。例えば、ニッケルおよび銅は黄色の材料を生じさせ、クロムおよびコバルトは緑色の材料を生じさせ、並びにパラジウムは赤褐色の材料を生じさせる。高濃度では、例えば銅濃度が100ppmを超える場合には、銅のような金属は非常に暗い材料を生じさせうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
変色した材料は劣った性能を有し、そして無色透明硫化亜鉛の像形成品質を低下させる。変色した材料は光学的吸収を増大させる場合があり、かつ紫外(UV)から可視領域において無色透明硫化亜鉛の透過率を低下させる場合がある。変色した材料は、前方散乱および屈折率不均一性も増大させる場合があり、これは無色透明硫化亜鉛を通る像の品質に影響を及ぼしうる。変色した材料は劣った材料外観も有する。よって、金属汚染物質を実質的に含まない無色透明硫化亜鉛についての必要性、およびこの無色透明硫化亜鉛を製造する方法についての必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの形態においては、方法は、創成チャック(generating chuck)をコーティングし、被覆しまたはそれらの組み合わせを行い;コーティングされた、または被覆された、またはこれらの組み合わせの創成チャックに硫化亜鉛を配置し;並びに、硫化亜鉛基体を創成する;ことを含む。
【0007】
別の形態においては、方法は、創成チャックをコーティングし、被覆しまたはそれらの組み合わせを行い;コーティングされた、被覆された、またはこれらの組み合わせが行われた創成チャックに硫化亜鉛基体を配置し;コーティングされていない研磨剤粒子で硫化亜鉛基体を創成し;硫化亜鉛基体から金属汚染物質を除去し;硫酸、硝酸、またはこの組み合わせでマイクロエッチングおよびクリーニングすることによって、白金ホイルから金属汚染物質を除去し;クリーニングされた硫化亜鉛基体をクリーニングされた白金ホイルに包み;並びに、クリーニングされた白金ホイルに包まれたクリーニングされた硫化亜鉛基体をHIPプロセスによって処理することを含む。
【発明の効果】
【0008】
本方法は硫化亜鉛基体上の機械加工マークの形成を妨げる創成チャックを提供する。さらに、本方法は、観察可能な変色した材料がないように、またはその意図される用途のためのその無色透明硫化亜鉛の性能を有意に悪化させない水準まで変色が低減されるような、実質的に金属汚染物質を含まない機能的に透明なまたは無色透明な硫化亜鉛を提供する。無色透明な硫化亜鉛は可視領域において高い透過率を有し、より良好な像品質を導く低い前方散乱を有し、境界のぼやけをより少なくし、並びにより高い屈折率均一性を有し、多くの従来の無色透明硫化亜鉛材料よりも向上した像品質をもたらす。この無色透明の硫化亜鉛は窓、ドーム、レンズおよびビームスプリッタのような様々な光学物品を生じさせるように使用されうる。この物品は航空機、装甲車両、赤外線(IR)カメラおよび科学機器、例えば、分光光度計において使用されうる。無色透明の硫化亜鉛の一般的な用途の1つは、可視光およびIR領域においていくつかの波長帯のための単一の開口部またはビーム経路を必要とする多スペクトル用途についてである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書を通して使用される場合、文脈が他に示さない限りは、以下の略語は以下の意味を有するものとする:℃=摂氏度;μm=ミクロン=マイクロメートル;m=メートル;cm=センチメートル;nm=ナノメートル;mM=ミリモーラー;mN=ミリニュートン;CVD=化学蒸着;PVD=物理蒸着;MOCVD(metalorganic chemical vapor deposition)=有機金属化学気相成長法;sccm=標準立方センチメートル/分;L=リットル;Hz=ヘルツ;kHz=キロヘルツ;GHz=ギガヘルツ;1気圧=760torr;1気圧=1.01325×10ダイン/cm;psi=ポンド/平方インチ;1気圧=14.7psi;Ksi=キロポンド/平方インチ;A=アンペア;mA=ミリアンペア;W=ワット;kW=キロワット;eV=電子ボルト;AC=交流;DC=直流;psi=ポンド/平方インチ;slpm=標準リットル/分;Å=オングストローム;IR=赤外線;およびUV=紫外線。用語「チャック(chuck)」は加工対象物(workpiece)を保持するための道具を意味する。用語「創成(generating)」および「機械加工(machining)」は本明細書を通して交換可能に使用される。用語「非反応性金属」とは、硫化亜鉛と反応せず、またはその中に拡散して変色を生じさせない金属を意味する。
【0010】
全てのパーセンテージは他に示されない限りは重量基準である。全ての数値範囲は包括的であり、その数値範囲が合計で100%になることに制約されることが論理的である場合以外は任意に組み合わせ可能である。
【0011】
硫化亜鉛の堆積物は従来のCVDまたはPVD炉内で生産されうる。この炉は典型的には、垂直配向水冷式ステンレス鋼真空チャンバーハウジング内に入れられる。グラファイトレトルトは溶融した亜鉛を収容し、そして堆積チャンバーの底に抵抗または放射加熱エレメントのような加熱手段を提供する。中空マンドレルは、典型的にはグラファイトからなり、亜鉛レトルトの上方に垂直に配置され、その内部は前記レトルトと流体連通している。典型的には、このマンドレルは矩形の形状であり、または管の形状であり得る。マンドレルを加熱することができル第2の加熱エレメント、例えば抵抗ヒーターはマンドレルの外側周囲に提供される。ガスインジェクタは硫化水素および不活性ガス、例えばアルゴンもしくは窒素をマンドレルの内側の下部に提供する。炉のハウジングの頂部のガス排気管は、微粒子を除去するためにろ過システムに操作可能に接続され、次いで真空ポンプのような真空源に接続され、そして最終的に未反応の硫化水素および他の毒性生成物を除去するためのスクラバーに接続される。マンドレル温度はその外側表面でマンドレルに触れている熱電対によって測定される。レトルト内の亜鉛温度は、一方は溶融亜鉛のレベルより上およびその付近でレトルト壁の上部に触れており、もう一方は溶融した亜鉛のレベルより下のレトルト壁の下部まで伸ばされている2つの熱電対の温度測定値を平均化することによって測定される。このような炉は米国特許第6,221,482号および第6,083,561号に開示されている。
【0012】
操作においては、元素亜鉛は亜鉛レトルト内で575℃より高い温度で気化される。硫化水素およびキャリアガスがインジェクタからマンドレルに入ると、気化した亜鉛は硫化水素およびキャリアガスと混合される。この混合ガスはマンドレルの内側を通って流れるようにされ、そこでそれらがマンドレルの加熱された内側表面と接触して、亜鉛と硫化水素との反応を引き起こし、マンドレルの内側表面上で硫化亜鉛を形成する。キャリアガスおよび気体状のまたは同伴された反応生成物はこのチャンバーからガス排出管を通して取り出され、次いでろ過およびスクラビングシステムによって処理される。一旦開始されたら、所望の厚さの硫化亜鉛がマンドレル上に堆積されるまで、このプロセスは続けられる。典型的な堆積は15時間より長く、1100時間までかかる場合がある。より典型的には、堆積は100時間〜600時間である。典型的には、当初マンドレル温度は690℃以上であり、そして徐々に下げられまたは勾配を付けて少なくとも10℃下げられて、その操作の5〜20時間の期間、より典型的には8〜15時間にわたって、680℃未満、典型的には660℃〜680℃の範囲内のマンドレル温度を目標にし、次いで、その操作の残りの間その目標のマンドレル温度を維持する。
【0013】
堆積領域に供給されるガス混合物中の亜鉛気体濃度の当初増加の後で、化学量論的に過剰な亜鉛が堆積領域において維持される。亜鉛気体濃度の当初増加の後で、0.8未満、典型的には0.6〜0.8の硫化水素の対亜鉛モル比が提供される。当初増加の際に、亜鉛気体の流れが各操作の開始時に最小値で開始され、そしてこの操作の当初の10〜90時間にわたって、典型的には当初の30〜60時間にわたって、ゆっくりと増加させられまたは目標または維持される流量まで増加させられる。一般的に、これは亜鉛レトルト温度をゆっくりと上げつつ、硫化水素およびキャリアガス流量を当初に設定し次いで維持することにより達成される。亜鉛レトルト温度は典型的にはマンドレル温度よりも少なくとも10℃低く、より典型的には15℃低く、最も典型的には20℃低く維持される。一般的には、炉圧力は60torr未満、典型的には30〜40torrの炉絶体圧力である。所望の厚さが達成されたら、ガスインジェクタを通るガスフローは停止され、第1の加熱エレメントは弱められ、第2の加熱エレメントは停止させられ、チャンバーハウジングは開放され、マンドレルは取り外される。マンドレルの内壁上に堆積した硫化亜鉛は、次いで、そこから取り外され、所望のサイズのシートに切り出される。機械式切断ツールまたは水ジェット切断ツールのような従来の切断ツールが使用されうる。
【0014】
硫化亜鉛シートはマンドレル面からのグラファイトのような汚染物質を除去するように機械加工され、かつ堆積面を滑らかにするように創成されまたは機械加工される。機械加工は様々な従来の装置を用いて行われうる。このプロセスには、これに限定されないが、グラインディング、ラップ処理およびホーニング(honing)が挙げられる。このような装置は典型的には加工対象物を保持するためのチャックを含む。創成の際の活発な動作の際に、および硫化亜鉛をチャックに固定するための張力によって、引き起こされる機械加工マークから硫化亜鉛を保護するために1以上のコーティングがチャックに配置される。創成の際の硫化亜鉛とチャックとの間の遊びが硫化亜鉛に機械加工マークを生じさせうる。このようなマークは硫化亜鉛基体の比較的柔らかな表面に侵入することができ、金属汚染物質のための避難先を作り出す場合がある。1以上のコーティングがチャックに適用されることができ、または別の方法では、硫化亜鉛を汚染せずかつ同時にそれを汚染から保護する材料でチャックは被覆されうる。硫化亜鉛を汚染から保護するために、コーティングと被覆の組み合わせも使用されうる。このコーティングには、これに限定されないが、セラミック材料および非反応性金属が挙げられる。被覆材料には、これに限定されないが、ポリウレタン含浸ポリエステルパッドが挙げられる。
【0015】
ポリウレタン含浸ポリエステルパッドは、34mN/m以上、または例えば37mN/m以上、または例えば40mN/m以上の表面張力を提供するのに充分に親水性である。典型的には、このようなパッドは34mN/m〜40mN/mの表面張力を有する。パッドは厚さ0.2cm〜3cmの範囲であり得る。このようなポリウレタンおよびポリエステルは1〜200メガパスカルのモジュラス、および25%〜100%、典型的には50%〜500%、より典型的には100%〜350%の範囲の破断点伸びを有する。このようなパッドは10%〜50%、または例えば10%〜40%、または例えば20%〜30%の多孔度を有する。典型的にはこのようなパッドは開放孔構造を有する。開放孔構造は互いにつながって相互接続ネットワークを形成している孔を含む。さらに、このようなパッドは0.3g/cm〜1.5g/cm、または例えば0.5g/cm〜1.4g/cm、または例えば0.8g/cm〜1.2g/cmの密度を有する。このようなパッドは当該技術分野において周知であり、かつこのようなパッドを製造する方法の一つが米国特許第7,517,488号に開示されている。市販のパッドの例は、ロームアンドハースエレクトロニックマテリアルズLLCから入手可能なスバ(SUBA(商標))IVポリッシングパッドである。
【0016】
セラミックには、これに限定されないが、窒化物および酸化物が挙げられる。適切な窒化物の例は、窒化アルミニウム、窒化ホウ素および窒化チタンである。適切な酸化物の例には、これに限定されないが、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムアルミニウム(スピネル)が挙げられる。セラミック材料についてのコーティング厚さは0.1μm〜10mm、または例えば5μm〜5mm、または例えば10μm〜3mmの範囲であり得る。このようなセラミックは、これに限定されないが、熱スプレイ、CVD、MOCVDおよびPVD、例えば、これに限定されないが、スパッタリング、電子ビーム蒸発、イオンアシスト堆積およびマイクロ波アシストマグネトロンスパッタリングなどをはじめとする1以上の方法を用いてチャックをコーティングするために適用されうる。このような方法は、基体をセラミック材料でコーティングするための技術分野において周知である。
【0017】
非反応性金属には、これに限定されないが、金、白金、タンタル、タングステン、ロジウムおよびモリブデンが挙げられる。非反応性金属のコーティング厚さは10nm〜1mm、または例えば100nm〜500μmである。このような非反応性金属は、チャックをコーティングするために、上述のセラミックを堆積するために使用される方法の1以上を用いて適用されうる。
【0018】
概して、CVDコーティングを堆積させるために従来の反応物質が使用されうる。堆積温度および圧力はコーティングの種類に応じて変化する。従来の堆積チャンバーが使用されうる。CVDは、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素およびこれらの混合物のような不活性雰囲気中で行われる。堆積の際のこのような不活性ガスの流量は従来通りである。所望の堆積速度を得るために、堆積の際に、従来の反応物質流量が使用されることができ、かつ変更されることができる。わずかな実験が必要とされるだけでよい。典型的には、炉温度は100℃〜1500℃の範囲であり得る。炉圧力は20torr〜760torrの範囲であり得る。コーティング堆積速度は0.01μm/分〜5μm/分の範囲であり得る。
【0019】
ソース材料が気化される方法によって区別される多くの様々なPVD技術が存在する。このような方法は当該技術分野において周知である。固体材料を気体プラズマに変換するために典型的に使用される物理蒸着技術は:(a)抵抗もしくは誘導加熱;(b)電子ビームもしくはイオン衝撃;および(c)電気アークもしくは陰極アーク蒸着である。
【0020】
抵抗および誘導加熱技術においては、固体材料は外部熱源によって、または高レベルの電流をその固体材料に通すことによってその融点にされる。固体材料またはその一部分は、まず、溶融液体状態まで溶融し、次いで、ガス状態まで気化して、プラズマを形成する。
【0021】
電子ビームおよびイオン衝撃技術においては、電子またはイオンの高エネルギービームを固体材料に衝突させることにより、材料の溶融プールが作り出される。この固体材料は「ターゲット」と称され、プラズマのコア内でターゲットソース材料から原子、イオン、分子、イオン化分子および分子塊を離れさせるのに充分な運動エネルギーを、そのターゲットに向かう電子またはイオンがそのターゲット材料に与える。一般的には、電子ビーム、イオンビームまたは電気アークによって電磁ビームが生じさせられるばあいには、堆積されるべき材料に電流が流れる。電流は5mA〜100mAの範囲であり得る。電磁ビームによって運ばれるエネルギーは電力密度によって定義されることができ、これはセラミックまたは金属の平均表面電力である。平均電力密度は、このビームが向けられる表面上の点で1000W/cm〜5000W/cmの範囲であり得る。電磁ビームのピーク電力密度は5000W/cm〜10,000W/cmであり得る。ピーク電力密度は所定の電力設定においてビームがその最大焦点(すなわち、最も小さなスポットサイズ)であるプロセス設定として定義されうる。電磁ビームの滞留時間は0.1ミリ秒〜5ミリ秒の範囲であり得る。
【0022】
電気アーク物理蒸着においては、電気アークは、カソードとして機能するように電気的にバイアスがかけられている固体材料と、このカソードから間を開けて離れているアノードとの間で飛ばされそして維持される。アーク開始トリガーエレメントはカソードの近傍に配置され、このカソードに対して正にバイアスされる。トリガーエレメントは、カソード材料の表面に関連して、このトリガーとカソードとを通る電流フロー経路を確立するのを一瞬に可能にする。このトリガーエレメントがカソードとのかかわりから除かれると、電気アークが飛ばされ、その後このアークがカソードとチャンバーのアノードとの間で維持される。電気アークは30〜数百アンペアの範囲の高レベルの電流を運び、固体材料を気化させるためのエネルギーを提供する。このアーク終点は、アークがカソードに触れ、そしてカソードスポットと称されるカソードの表面上で目に見える。アークに存在する電流に応じて、一度に、このようなカソードスポットの1以上がカソード表面上に存在することができる。このカソードスポットは固体材料の表面にわたってランダムに動き、固体材料を瞬時にプラズマまで気化させる。このプラズマは原子、分子、イオン、および分子の塊を含んでおり、並びにイオン帯電したおよび中性の粒子の双方を含んでいる。
【0023】
スパッタリング方法においては、コーティングチャンバー、またはスパッタリングドラムコーターの内側に向いておりコーティングされる面を有する反応性スパッタリングドラムコーター内に基体が搭載される。スパッタリングドラムコーターの一つの種類の例はマイクロダイン(MicroDyn(商標))反応性スパッタリングドラムコーター(カリフォルニア州、サンタロサのデポジションサイエンシーズインコーポレーティドから入手可能)である。チャンバーは八角形の形状であり得る。この八角形の各面は処理領域を支持する。この処理領域は以下の一つを備えている:DCマグネトロン、ACマグネトロンペア、マイクロ波プラズマアプリケータまたはヒーター。中−周波数パルスDC出力はDCマグネトロンに電力を供給する。中−周波数AC出力はACマグネトロンに電力を供給する。ACマグネトロンは、アノードからカソードへの材料の移動によって引き起こされるアノードでの損失を最小限にすることができ、典型的にはより高品質のコーティングを提供する。
【0024】
マイクロ波アシストマグネトロンスパッタリングにおいては、2以上のスパッタリングソースおよび2以上のマイクロ波プラズマソースが同時に使用され、コーティング材料堆積速度を高めることができる。典型的には、2つのスパッタリングソースおよび2つのマイクロ波プラズマソースが同時に使用される。マグネトロンスパッタリングにおいては、アルミニウムもしくはチタンのような金属電極がターゲットとして使用される。電極はコーティングのための金属のソースを提供し、かつ典型的には99%〜99.99%の純度である。チャック基体からのターゲット距離は8cm〜20cmの範囲であり得る。この方法は130,000cm以上の広い堆積領域を可能にする。マイクロ波駆動プラズマは酸素または窒素の二原子分子を解離させる。コーティングチャンバーは堆積の前に、10−5Torr〜10−6Torrの圧力までポンプ減圧されうる。二原子酸素もしくは窒素および不活性ガス、例えば、アルゴン、ネオンもしくはクリプトンがコーティングチャンバーに導入される。二原子酸素および窒素の流量は20sccm〜80sccmの範囲であり得る。不活性ガスの流量は30sccm〜150sccmの範囲であり得る。チャンバー内の全圧力は2×10−3Torr〜7×10−3Torrの範囲でありうる。二原子酸素または窒素分圧は1×10−4Torr〜20×10−4Torrの範囲でありうる。マイクロ波源は不活性ガスと二原子酸素または窒素との混合物をイオン化して、このマイクロ波源の近くにプラズマを作り出す。マイクロ波出力は1kW〜5kWの範囲であり得る。周波数は1GHz〜5GHzの範囲であり得る。解離エネルギーは1eV〜20eVの範囲であり、金属と酸素または窒素との間の結合形成をサポートする。この解離によって作り出される一原子物質に付与されるエネルギーは基体上で成長している薄膜に移される。基体が搭載されるドラムは、コーティング堆積速度に応じて0.75〜3回転数/秒の速度で回転させられる。対応する堆積速度での適切な回転速度を決定するにはわずかな実験が必要とされるだけでよい。この方法はこれら2つの工程が実質的に同時に行われて化学量論量の金属酸化物または金属窒化物コーティングを提供するものである。DCもしくはACパルス電力は3kW〜9kWの範囲である。周波数は20kHz〜50kHzの範囲であり得る。堆積中に、ターゲットプラズマを安定化させかつコーティング酸素もしくは窒素消費を増大させるために、マイクロ波プラズマは継続される。チャック基体は40℃〜200℃の温度に維持される。堆積時間は20時間〜90時間の範囲である。
【0025】
典型的には、表面は、コーティングされていない研磨剤粒子を使用する樹脂結合ホイールを用いて創成される。このような樹脂には、これに限定されないが、エポキシ、アクリルおよびフェノール樹脂が挙げられる。このような樹脂は当該技術分野において周知である。コーティングされていない研磨剤粒子には、これに限定されないが、ダイヤモンド、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化ケイ素、炭化タングステンおよび炭化ホウ素が挙げられる。このようなコーティングされていない研磨剤粒子は9以上のモース硬度を有する。この材料の組み合わせも使用されうる。研磨剤はグラインディングホイールの樹脂に結合された粒子または粒子形態でありうる。ホイールの表面速度は少なくとも1000m/分、または例えば、2000m/分〜10,000m/分である。圧力は、10psi〜100psi、または例えば20psi〜80psiでチャック基体に適用されうる。
【0026】
チャックをコーティングすること、およびコーティングされていない研磨剤粒子を使用して硫化亜鉛を創成することは硫化亜鉛上での汚染物質の数を低減させる:しかし、硫化亜鉛シートは依然としてその表面上に、ニッケル、銅、クロム、コバルトおよびパラジウムのような金属粒子を有する場合がある。金属粒子は典型的には粗いスポット上に存在し、かつ硫化亜鉛におけるクラックまたは他の欠陥の内側に入り込む場合がある。この汚染は変色した材料として観察可能である。硫化亜鉛は金属汚染物質を低減もしくはその全てを実質的に除去するようにクリーニングされる。0.3μm〜1μmの波長、または例えば、0.4μm〜0.8μmの波長での透過率の観察可能な劣化を有さず、ヘリウム/ネオンレーザーを用いた0.6328μm波長での入射ビームの方向から3度の半円錐角において測定して3%/cm以下の前方散乱を有し、並びに15ppm以下、または例えば10ppm以下の屈折率均一性を有する、機能的に透明なまたは低い散乱の最終的な無色透明硫化亜鉛を提供する方法でクリーニングがなされる。好ましくは屈折率均一性は5ppm以下、最も好ましくは1ppm以下である。屈折率均一性は屈折率あたりの屈折率の変化であり、当該技術分野において充分に理解されている。この方法には、これに限定されないが、超音波アルカリ洗浄、無機酸洗浄、有機酸洗浄、シアニド洗浄、硫黄含有化合物洗浄およびアミン洗浄が挙げられる。この方法は硫化亜鉛から少なくとも金属汚染物質をクリーニングするために、個々にもしくは組み合わせて使用されうる。
【0027】
超音波アルカリ洗浄に使用されうるアルカリ化合物には、これに限定されないが、アルカリ金属塩基、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、苛性アルカリまたはその混合物が挙げられる。7を超えて14まで、または例えば8〜13、または例えば9〜12のpH範囲を提供するのに充分な量でアルカリ化合物を含む水溶液が調製される。典型的には、pHは7.5〜11,または例えば、8〜10の範囲である。アルカリ溶液は超音波クリーナーに入れられ、次いで、硫化亜鉛がこのアルカリ溶液に浸漬される。従来の超音波クリーナーが使用されることができ、市販されている。超音波クリーナーの例には、クレストコーポレーション(Crest Corporation)から入手可能な様々な超音波装置、およびコネチカット州ワリンフォードのソニコアインコーポレーティド(Sonicor Inc.)から入手可能なソニコア(SONICOR(商標))SC超音波クリーナーが挙げられる。硫化亜鉛をアルカリ溶液中に浸漬する前に、硫化亜鉛は場合によっては、機械加工後に硫化亜鉛上に残っているスラッジを除去するために、水ですすがれ、またはイリノイ州ブロードビューのバイオテック(BIOTEK)コーポレーションから入手可能なシュアワイプス(SURE WIPES(商標))のようなサニタリーワイプでぬぐわれることができる。クリーニングは10kHz〜100kHz、または例えば、20kHz〜50kHzで行われる。クリーニング時間は1分〜20分、または例えば、5分〜15分の範囲でありうる。クリーニング後、硫化亜鉛は水ですすがれ、サニタリーワイプできれいに拭われるかまたは空気乾燥される。使用されうる市販のアルカリクリーナーには、これに限定されないが、ソニコア(商標)205溶液(過酷な苛性アルカリを使用する炭素および錆び除去剤)、ソニコア(商標)202(非苛性アルカリを用いる緩衝化合物)およびソニコア(商標)106(光学クリーナー、穏やかなアルカリ)、ソニコア(商標)106(宝飾品クリーナー、アンモニア化された特別目的クリーナー)およびソニコア(商標)116(ソニックストリップ(SONIC STRIP(商標))過酷なアルカリ)が挙げられる。市販の製品はそのままで使用されることができ、またはそれらは所望のpHを提供するように水で希釈されうる。典型的な希釈は水を用いるものであり、かつ市販のクリーナー1体積部:水10体積部、または例えば、クリーナー1体積部:水3体積部の範囲であり得る。所望のpHおよびクリーニング性能を達成するための市販のクリーナーを用いた具体的な希釈を決定するためにはわずかな実験が行われるだけでよい。
【0028】
硫化亜鉛は無機酸でクリーニングされることができ、この無機酸には、これに限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸およびこれらの混合物が挙げられる。典型的には、この酸は塩酸、硫酸、硝酸およびこれらの混合物である。より典型的には、この酸は硫酸、硝酸およびこれらの混合物である。2種以上の酸が混合される場合には、これらは金属汚染物質の実質的に全てを除去できる量で混合される。無機酸混合物の最適なクリーニング性能を達成するためにわずかな実験が行われるだけでよい。無機酸の1種以上の水溶液は、1mM〜50mM、または例えば、5mM〜10mMの無機酸の濃度を有して製造される。一般的には、無機酸溶液のpHは1〜4、または例えば、3〜4である。無機酸水溶液は硫化亜鉛の表面に適用されるか、または硫化亜鉛がその酸水溶液中に1分間〜30分間、または例えば、5分間〜20分間浸漬される。典型的には、硫化亜鉛は酸水溶液で5分間〜15分間処理される。温度は室温〜50℃、または例えば、25℃〜35℃の範囲であり得る。無機酸処理された硫化亜鉛は、次いで、乾燥させられ、次いで高純度、例えば、90%以上のアセトンで室温ですすがれる。すすぎは1分間〜2分間行われうる。
【0029】
硫化亜鉛は有機酸でクリーニングされることができ、この有機酸には、これに限定されないが、カルボン酸およびその塩が挙げられる。カルボン酸には、モノカルボン酸およびポリカルボン酸が挙げられる。このカルボン酸およびその塩の混合物も使用されうる。モノカルボン酸には、これに限定されないが、酢酸、乳酸、およびグルコン酸、並びにこれらの塩が挙げられる。ポリカルボン酸には、これに限定されないが、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸およびグルタミン酸、並びにこれらの塩が挙げられる。1種以上の酸無水物も含まれうる。典型的には、有機酸は酢酸、シュウ酸、クエン酸、これらの塩およびこれらの混合物である。より典型的には、この酸は酢酸、シュウ酸、これらの塩およびこれらの混合物である。最も典型的には、この酸は酢酸およびシュウ酸およびこれらの混合物である。2種以上の有機酸またはその塩または無水物が混合される場合には、それらは金属汚染物質の実質的に全ての除去を可能にする量で混合される。有機酸混合物の最適なクリーニング性能を達成するためにはわずかな実験が行われるだけでよい。有機酸、その塩および無水物の1種以上の水溶液は、1%〜50%、または例えば、5%〜30%、または例えば、10%〜20%の有機酸、その塩または無水物の濃度を有して製造される。一般的には、有機酸溶液は7未満、または例えば、1〜6、または例えば、2〜4のpHを有する。
【0030】
有機酸水溶液は硫化亜鉛の表面に適用されるか、または硫化亜鉛はこの酸水溶液中に1分間〜60分間、または例えば、5分間〜30分間浸漬される。典型的には、硫化亜鉛は10分間〜20分間、この酸水溶液で処理される。温度は室温〜50℃、または例えば、25℃〜35℃の範囲であり得る。有機酸処理された硫化亜鉛は、次いで、水ですすがれ、乾燥させられ、次いで高純度アセトンで室温ですすがれるか;あるいは、それはメチルアルコールまたはイソプロピルアルコールのようなアルコールで最初にすすがれることができ、次いでアセトンですすがれうる。すすぎ時間は無機酸でのクリーニングの場合に上述したのと同じである。
【0031】
硫化亜鉛はシアニド、シアナートまたはこの混合物でクリーニングされうる。アルカリ水溶液はアルカリ金属塩、例えば、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、シアン酸ナトリウム、シアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウムまたはこれらの混合物から製造される。シアニドおよびシアナートの濃度は5%〜20%、または例えば、10%〜15%の範囲であり得る。この溶液のpHは8以上、または例えば、9〜14、または例えば、10〜12の範囲であり得る。この溶液のpHは充分な量の塩基の添加により維持されうる。この塩基には、これに限定されないが、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩またはこれらの混合物が挙げられる。このアルカリ水溶液が硫化亜鉛に適用されるかまたは硫化亜鉛がこの溶液に浸漬される。硫化亜鉛はこのアルカリ水溶液で5分間〜25分間、または例えば、10分間〜20分間処理される。この溶液の温度は室温〜50℃、または例えば、25℃〜40℃の範囲であり得る。シアニドまたはシアナート処理された硫化亜鉛は、次いで水ですすがれ、乾燥され、次いで高純度アセトンで室温ですすがれ;あるいは、それはメチルアルコールまたはイソプロピルアルコールのようなアルコールで最初にすすがれ、次いでアセトンですすがれうる。
【0032】
アルカリ水溶液中の硫黄またはチオ化合物を用いて、硫化亜鉛から金属汚染物質が除去されうる。この硫黄またはチオ化合物には、これに限定されないが、スルファート、メルカプト化合物、チオ尿素およびその誘導体が挙げられる。この化合物の混合物も使用されうる。スルファートには、これに限定されないが、硫酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、過硫酸カリウムおよびチオ硫酸カリウムが挙げられる。メルカプト化合物には、これに限定されないが、2−メルカプト安息香酸、メルカプト乳酸、メルカプト酢酸、メルカプトコハク酸、メルカプトフェノールおよび2−メルカプトベンゾオキサゾールが挙げられる。チオ尿素誘導体には、これに限定されないが、ジメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、N,N’−ジイソプロピルチオ尿素、アセチルチオ尿素、アリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3−ジフェニルチオ尿素およびチオ尿素ジオキシドが挙げられる。アルカリ水溶液中の1種以上のチオ化合物の濃度は5%〜20%、または例えば、10%〜15%の範囲であり得る。この溶液のpHは8以上、または例えば、9〜14、または例えば、10〜12の範囲であり得る。この溶液のpHは充分な量の塩基の添加によって維持されうる。この塩基には、これに限定されないが、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩またはこれらの混合物が挙げられる。このアルカリチオ化合物水溶液は硫化亜鉛に適用されるか、または硫化亜鉛がこの溶液に浸漬される。硫化亜鉛はこのアルカリ水溶液で5分間〜25分間、または例えば、10分間〜20分間処理される。この溶液の温度は室温〜50℃、または例えば、25℃〜40℃の範囲であり得る。クリーニングされた硫化亜鉛は、次いで水ですすがれ、乾燥され、次いで高純度アセトンで室温ですすがれ;あるいは、それはメチルアルコールまたはイソプロピルアルコールのようなアルコールで最初にすすがれ、次いでアセトンですすがれうる。
【0033】
硫化亜鉛から、その金属汚染物質が塩基性アミン水溶液で除去されうる。使用されうるアミンには、これに限定されないが、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、有機アミンおよび第四級アンモニウム化合物が挙げられうる。第一級アミンには、これに限定されないが、アンモニア、ブチルアミン、モノエタノールアミンおよびオクチルアミンが挙げられる。第二級アミンには、これに限定されないが、エチレンジアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミンおよびジエタノールアミンが挙げられる。第三級アミンには、これに限定されないが、トリエタノールアミンが挙げられる。アミンには、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびジエチレントリアミン五酢酸も挙げられる。この水溶液中の1種以上のアミンの濃度は1%〜20%、または例えば、5%〜10%の範囲であり得る。硫化亜鉛はこのアミン水溶液で5分間〜25分間、または例えば、10分間〜20分間処理される。この溶液の温度は室温〜50℃、または例えば、25℃〜40℃の範囲であり得る。クリーニングされた硫化亜鉛は、次いで水ですすがれ、乾燥され、次いで高純度アセトンで室温ですすがれ;あるいは、それはメチルアルコールまたはイソプロピルアルコールのようなアルコールで最初にすすがれ、次いでアセトンですすがれうる。
【0034】
硫化亜鉛が創成されかつ少なくとも金属汚染物質を除去するためにクリーニングされた後で、それは白金ホイルのようなあらかじめクリーニングされたホイルに包まれる。白金ホイルはまず白金溶融物を99%以上の必要とされる純度レベルまで精製し、この溶融物を固化して小さな厚いインゴットにし、次いでそのインゴットを多工程プロセスにおいてローラーにかけて薄い白金ホイルにすることにより製造される。このプロセスは当該技術分野において周知である。ホイルをドローし、切断するプロセスの際に、金属汚染物質が白金表面上におよびホイルの端に沿って組み込まれることとなりうる。白金ホイルから金属汚染物質の実質的に全てを除去するために、この白金ホイルは酸洗浄を用いてクリーニングされうる。
【0035】
白金ホイルは硫酸または硝酸の溶液でエッチングおよびクリーニングされうる。まず、このホイルは1種以上の界面活性剤を含む水溶液でクリーニングされる。界面活性剤には、非イオン性、カチオン性、アニオン性および両性界面活性剤が挙げられる。当該技術分野において周知の従来の界面活性剤が使用されうる。典型的には、界面活性剤は非イオン性物質、例えば、アルキルフェノキシポリエトキシエタノール、および複数のオキシエチレン基を含む水溶性有機化合物、例えば、20〜150の繰り返し単位を有するポリオキシエチレンポリマーである。ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックコポリマーも含まれる。典型的には、界面活性剤配合物は低発泡性である。市販の酸性低発泡性界面活性剤配合物の例は、マサチューセッツ州、マルボロのロームアンドハースエレクトロニックマテリアルズLLCから入手可能なロナクリーン(RONACLEAN(商標))PC590である。界面活性剤は5%〜40%、または例えば、10%〜30%、または例えば、15%〜25%の量で水溶液中に含まれる。1分間〜15分間、または例えば、5分間〜10分間にわたって、白金ホイルは界面活性剤溶液ですすがれるか、またはそれはその溶液中に浸漬される。界面活性剤クリーニングは室温〜50℃、または例えば、25℃〜45℃の温度で行われる。この界面活性剤クリーナーはこのホイルから酸化物並びに有機汚染物質を除去する。白金ホイルは、次いで、界面活性剤溶液で残る残留物を除去するために水ですすがれる。すすぎは典型的には60秒間〜2分間室温で行われる。
【0036】
次いで、硫酸並びに1種以上の酸化剤を含むエッチング溶液でこのホイルは処理される。硫酸はエッチング溶液中に、溶液の0.5%〜20%、または例えば、5%〜15%の量で含まれる。酸化剤には、これに限定されないが、過マンガン酸ナトリウムもしくはカリウム、および過酸化水素が挙げられる。これらはエッチング溶液中に、溶液の0.5%〜10%、または例えば、5%〜10%の量で含まれる。市販のエッチング浴はロームアンドハースエレクトロニックマテリアルズLLCから入手可能なプレポジット(PREPOSIT(商標))ETCH748溶液である。所望の濃度範囲の硫酸を提供する量で、硫酸はプレポジット(商標)ETCH748溶液と混合される。エッチングは1〜10分間、または例えば、2〜5分間行われる。エッチング温度は室温〜30℃の範囲であり得る。エッチングされたホイルは、次いで、室温で水ですすがれる。すすぎは、典型的には、1分間〜3分間でありうる。次いで、このホイルは圧縮空気などを用いて乾燥させられる。
【0037】
白金ホイルは硝酸の水溶液でエッチングおよびクリーニングされうる。理論に拘束されるものではないが、硝酸は金属汚染物質と反応して、水溶性であってかつ水すすぎで除去されうる硝酸塩を形成することができると考えられる。硝酸は5%〜50%、または例えば、10%〜40%、または例えば、15%〜30%の濃度である。白金ホイルは、このホイルにこの溶液を適用することにより、またはこのホイルをこの硝酸溶液中に浸漬することにより、硝酸溶液で処理される。このホイルは硝酸溶液で1〜15分間、または例えば、5〜10分間処理される。次いで、このホイルは、水溶性硝酸塩を除去するのに充分な時間にわたって、水ですすがれる。すすぎは1分間〜4分間、または例えば、2〜3分間であり得る。
【0038】
白金ホイルはエッチングおよび硝酸クリーニングの組み合わせを用いて清浄化されうる。不活性白金ホイルを処理するために両方の方法が使用される場合には、エッチングおよび硝酸クリーニングのパラメータを変えるためにわずかな実験が行われるだけでよい。
【0039】
クリーニングされた白金ホイルに包まれたクリーニングされた硫化亜鉛は、次いでHIPプロセスによって処理される。このHIPプロセスは、この包まれた硫化亜鉛を従来のHIP炉内のグラファイトるつぼ内に配置することを伴う。この炉はまず脱気され、次いでアルゴンのような不活性ガスで加圧される。加熱が開始され、温度がその設定点まで上げられて、そこでその温度および圧力を一定にし、所望の長い処理時間の間維持される。この包まれた硫化亜鉛は典型的には700℃より高い、典型的には900℃〜1000℃の温度で、5,000psi〜30,000psi、典型的には15,000psi〜30,000psiの平衡(isostatic)圧力に、150時間まで、典型的には70〜100時間の長時間の間かけられる。所望の処理時間の完了時に、加熱は停止させられ、包まれた硫化亜鉛は冷却される。冷却は50℃/時間未満、典型的には31℃/時間未満に冷却速度を制御することにより行われる。温度が500℃未満に下がった後で、HIP炉における圧力は開放される。最終生成物は、少なくとも金属汚染物質を実質的に含まない機能的に透明または低散乱無色透明の硫化亜鉛である。金属汚染物質を実質的に含まないとは、典型的には100ppm未満、または例えば、10ppm未満、または例えば、1ppm未満しか検出可能な金属汚染物質が存在しないことを意味する。この低散乱無色透明硫化亜鉛は、精密に成形された光学部品まで、最終成形、ラップ処理および研磨を行うことが可能である。
【0040】
ラップ処理(lapping)および研磨は従来の装置および方法、例えば、様々なラップ処理装置および研磨パッドを用いて行われうる。ラッピングプレートが使用される場合には、このプレートは300m/分〜3000m/分、または例えば、600m/分〜2500m/分の表面速度で回転する。ラップ処理および研磨は1psi〜15psiの圧力で、1時間〜10時間行われる。
【0041】
ラップ処理および研磨はスラリー、ペーストおよび乾燥粒子を用いて行われうるが、ただしその成分はクリーニングされた低散乱無色透明硫化亜鉛を汚染するであろう材料を含まない。様々な種類およびサイズのコーティングされていない粒子が使用されうる。コーティングされていない粒子には、これに限定されないが、ダイヤモンド、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、窒化炭素およびこれらの混合物が挙げられる。粒子サイズは0.005μm〜30μmの範囲であり得る。ダイヤモンドペーストが使用される場合には、コーティングされていないダイヤモンド粒子サイズは2μm以下、典型的には1μm以下の範囲でありうる。このような研磨剤粒子はスラリーの1重量%〜30重量%を構成することができる。キレート化剤、緩衝剤および界面活性剤のような従来の添加剤が従来の量でスラリー中に含まれうる。ラップ処理および研磨は所望の表面滑らかさを達成するために、粒子サイズを変えた複数工程で行われうる。典型的には、低応力無色透明硫化亜鉛は、120/80〜10/5、より典型的には80/50〜60/40のスクラッチ/ディグ(scratch/dig)比までラップ処理および研磨される。
【0042】
機能的透明または低散乱無色透明の硫化亜鉛は、観察可能な変色した材料が存在しないように、またはその意図される用途のための硫化亜鉛の性能を有意に悪化させないレベルまで変色が低減されるように、金属汚染物質を実質的に含まない。低散乱無色透明硫化亜鉛は可視領域において高い透過率を有し、より良好な像品質をもたらす632.8nmで3%/cm未満の、または例えば、1%/cm〜3%/cmの低い前方散乱を有し、境界のぼやけをより少なくし、並びに15ppm以下、または例えば、0.5ppm〜15ppmの高い屈折率均一性を有し、従来の無色透明硫化亜鉛よりも向上した像品質をもたらす。低散乱無色透明硫化亜鉛は、0.35μm〜12μm範囲の波長範囲で伝達するための多スペクトル(multispectral)材料として使用されうる。低散乱無色透明硫化亜鉛は窓、ドーム、レンズおよびビームスプリッタのような様々な光学物品を製造するために使用されうる。このような物品は航空機、装甲車両、IRカメラおよび科学機器、例えば、分光光度計に使用されうる。低散乱無色透明硫化亜鉛は、可視光およびIR領域においていくつかの波長帯のための単一の開口部またはビーム経路を必要とする多スペクトル用途についても使用されうる。
【0043】
以下の実施例は本発明を例示するために含まれるが、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0044】
実施例1
カリフォルニア州ロサンゼルスのナショナルダイヤモンドラボラトリーからの0.16cmのコーティングされていないダイヤモンド深さ、平均のコーティングされていないダイヤモンドグリッドサイズ240および濃度100(72カラット/in)の樹脂結合ホイールを有するブランチャードグラインダーにおいて硫化亜鉛プレートを創成する(機械加工する)ことにより、25cm×25cm×1cmの寸法を有する化学蒸着硫化亜鉛の5枚のプレートが準備される。研磨パッドは硫化亜鉛プレートとブランチャードグラインダーのチャックとの間に配置される。この研磨パッドは、20%〜30%の多孔度および1.2g/cmの密度を有するポリウレタン含浸ポリエステルパッドである。機械加工は20kHzの速度で5分間行われる。次いで、この硫化亜鉛プレートはソニコア(商標)SC超音波クリーナーにおいて、水で15:1(体積)に希釈されたソニコア(商標)205過酷な苛性アルカリ溶液を用いてクリーニングされる。このクリーニング液は室温に維持される。この硫化亜鉛プレートは超音波クリーナーから取り出され、シュアワイプス(商標)で拭い乾かされる。
【0045】
36cm×30cm×0.002cmの寸法を有する99.99%純度の白金ホイルシート10枚が、そのシートを20%ロナクリーン(商標)PC590低発泡性界面活性剤溶液中に5分間浸漬することによりクリーニングされる。この溶液温度は42℃に設定される。この界面活性剤溶液は酸化物並びに有機汚染物質をこの白金ホイルから除去する。次いで、各白金ホイルシートはクリーニング溶液から取り出され、脱イオン水で1分間すすがれる。次いで、各白金ホイルは6g/Lの硫酸を含むプレポジット(商標)ETCH748溶液のエッチング水溶液中に25℃で浸漬される。このホイルは8分間この溶液中に置いておかれる。エッチングが終わった後で、ホイルはこのエッチング溶液から取り出され、脱イオン水で2分間室温ですすがれる。このホイルは圧縮空気で乾燥させられる。
【0046】
5枚の硫化亜鉛プレートは10枚のクリーニングされた白金シートに包まれる(各硫化亜鉛プレートに対して2枚の白金シート)。包まれた硫化亜鉛プレートはグラファイトるつぼ内に配置される。この包まれた硫化亜鉛を収容しているこのるつぼは、低散乱無色透明硫化亜鉛を提供するために、従来のHIP炉内で1000℃の温度で、15Ksiの圧力で、90時間の間、アルゴン環境下でHIP処理される。HIP処理後に、るつぼは、30℃/時間〜60℃/時間の割合でゆっくりと冷却される。包まれた低散乱無色透明硫化亜鉛プレートが室温まで冷却されたときに、それらは炉から取り出され、プレートは包みから出される。次いで、それらはスクラッチ/ディグ=120/80の評価ポリッシュまで創成され、ラップ処理されおよび研磨される。少なくとも9のモース硬度を有するダイヤモンド研磨剤を伴うブランチャードグラインダーが使用される。硫化亜鉛プレートはブランチャードグラインダーのチャック内で研磨パッド上に配置される。ホイールの表面速度は1000m/分である。コーティングされていないダイヤモンド研磨剤は20psi〜30psiの圧力で適用される。次いで、プレートはペロンパッド(Pellon Pad(商標))ラップ処理パッドを用い、0.5μm〜2μmの粒子サイズのコーティングされていないダイヤモンドペーストを用いてラップ処理される。ラップ処理は1200m/分の表面速度で2時間にわたって行われる。次いで、このプレートは0.5μm〜2μmの粒子サイズを有するコーティングされていないダイヤモンドペーストを用いて3時間にわたって研磨される。
【0047】
次いで、標準の光ファイバー/蛍光白色光を用いてこの低散乱無色透明硫化亜鉛プレートが検査される。変色のない材料がプレートにおいて観察されることが予想される。
【0048】
ウォータージェットを用いて、各プレートから、この低散乱無色透明硫化亜鉛の直径2cmのサンプルが切り出される。このサンプルは上述のように創成されおよびラップ処理され、次いでスクラッチ/ディグ比80/50まで研磨される。研磨は、0.25μm〜1μmのサイズ範囲を有する、コーティングされていない粒子のダイヤモンドペーストを用いて4時間にわたって行われる。これらサンプルは島津UV3101PC分光光度計において0.3μm〜2.5μmの波長範囲で透過率について測定される。0.34μm〜1μmの可視および近赤外領域において透過率の悪化がないことが予想される。波長632.8nmの入射レーザービームの周り3度の半円錐角内の前方散乱を測定するように設計された、ザダウケミカルカンパニーのエンジニアによって組み立てられた散乱計が次いで使用されて、0.6328μmでの前方散乱を測定する。各サンプルについての結果は3%/cm未満であると予想される。
【0049】
1つのプレートは、632.8nmの1/8のピークツーバレー(peak to valley)形状プレート平坦性および40/20のスクラッチ/ディグまでさらに研磨される。研磨は0.5μm〜2μmの粒子サイズを有するダイヤモンドペーストを用いて3時間にわたって行われる。次いで、ザイゴ(Zygo)干渉計(interferometer)で透過率および反射率における波面誤差について測定される。これら測定から、屈折率均一性は5ppm未満であると決定されると予想される。
【0050】
実施例2
従来のCVDチャンバーのレトルト内に、固体としての塩化マグネシウムが入れられる。気体のマグネシウム金属元素を生じさせるために、このレトルトは950℃に加熱される。蒸気圧は8〜10Torrの範囲である。
固体としてのAlClがCVDチャンバーのレトルトに入れられる。このレトルトは700℃の温度に加熱される。AlClの蒸気圧は5Torr〜6Torrの範囲である。
CVDチャンバーの外側のソースから元素酸素が提供され、従来の装置を用いて炉内にポンプ移送される。
【0051】
チャックが配置される堆積領域にレトルトから反応物質を移送するために、不活性アルゴンガスがCVDチャンバー内にポンプ移送される。チャンバーの一方の側においては、スピネル前駆体および酸素源が別々のインジェクタから堆積領域に導入される。排気口側には、薬剤のフローをチャックに向けるようにバッフルプレートが提供される。アルゴンの流量は90slpm〜100slpmであり、アルミニウムおよびマグネシウムの流量は2slpm〜4slpmであり、並びに酸素の流量は3slpm〜4slpmである。1100℃〜1200℃の温度範囲でスピネルはチャック上に堆積される。堆積速度は平均5μm/分である。堆積は1mm厚さのスピネルコートがチャック上に堆積されるまで続けられる。
【0052】
25cm×25cm×1cmの寸法を有するCVD硫化亜鉛の5枚のプレートが1つづつ、チャック内に配置され、そして230の平均グリットサイズを有する立方晶ホウ素粒子を有するポリウレタン樹脂結合ホイールを使用してブランチャードグラインダーを用いて機械加工される。機械加工は15kHzの速度で10分間行われる。機械加工の後で、このチャックによって生じた何らかの圧力マークについて硫化亜鉛シートは検査される。マークは認められないと予想される。
【0053】
次いで、硫化亜鉛シートは実施例1に記載されるような超音波浴においてクリーニングされる。実施例1に記載されるように、10枚の白金ホイルシートが得られる。次いで、各ホイルは20%硝酸水溶液中に10分間、42℃で浸漬される。このホイルシートはこの酸溶液から取り出され、脱イオン水で2分間すすがれ、次いで圧縮空気で乾燥させられる。
【0054】
この5枚の硫化亜鉛プレートは10枚のクリーニングされた白金ホイルシートに完全に包まれ(各プレートに対して2枚のシート)、次いでグラファイトるつぼ内に配置される。次いで、この包まれた硫化亜鉛を収容しているこのるつぼは、従来のHIP炉内に配置される。低散乱無色透明硫化亜鉛を提供するために、この包まれた硫化亜鉛を収容しているこのるつぼは1000℃の温度で、20Ksiの圧力で、50時間の間、アルゴン環境下でHIP処理される。HIP処理後に、るつぼは、30℃/時間〜60℃/時間の割合でゆっくりと冷却される。包まれた低散乱無色透明硫化亜鉛プレートが室温まで冷却されたときに、それらは炉から取り出され、プレートは包みから出される。次いで、実施例1に記載されるように、それらはスクラッチ/ディグ=120/80の評価ポリッシュまで創成され、ラップ処理されおよび研磨される。
【0055】
次いで、標準の光ファイバー/蛍光白色光を用いてこの低散乱無色透明硫化亜鉛プレートが検査される。変色のない材料がプレートにおいて観察されることが予想される。
【0056】
各プレートから直径2cmのサンプルが準備され、スクラッチ/ディグ比80/50まで研磨される。切断および研磨は実施例1に記載されるのと同じプロセスによって行われる。これらサンプルは島津UV3101PC分光光度計において透過率について測定される。0.34μm〜1μmの可視および近赤外領域において透過率の悪化がないことが予想される。次いで、散乱計が使用されて、0.6328μmでの前方散乱を測定する。各サンプルについての結果は3%/cm未満であると予想される。
【0057】
1つのプレートは、632.8nmで1/8波の形状および40/20のスクラッチ/ディグまでさらに研磨される。研磨は実施例1に記載されるように行われる。次いで、ザイゴ干渉計で透過率および反射率における波面誤差について測定される。これら測定から、屈折率均一性は1ppm未満であると決定されると予想される。
【0058】
実施例3
チャックは97%アセトンでまずクリーニングされ、次いで70%メチルアルコールでクリーニングされ、次いでマイクロダイン(MicroDyn(商標))反応性スパッタリングドラムコーターに搭載される。このチャック上に、堆積速度200Å/分でアルミナを堆積させるために、2つのスパッタリングソースおよび2つのマイクロ波プラズマ源が同時に使用される。ターゲット材料は99.99%純度のアルミニウムであり、それはこのチャックから12cmの距離にある。このチャックが搭載されるドラムは1回転/秒の速度で回転させられる。このコーティングチャンバーは堆積前に、10−6Torrの圧力までポンプ減圧される。二原子酸素とアルゴンとの混合物がこの堆積チャンバー内に導入される。二原子酸素およびアルゴンの流量は、それぞれ、50sccmおよび100sccmである。チャンバー内の全圧力は0.004Torrである。マイクロ波出力は3kWで周波数2.54GHzである。マイクロ波はこのマイクロ波源の近くでプラズマを発生させる。
【0059】
コーティングの前に、チャックは5分間にわたってマイクロ波プラズマに曝される。次いで、堆積プロセスを開始するために、DCマグネトロンが始動される。DCパルス出力範囲は6kWであり、かつ周波数は40kHzである。堆積中に、ターゲットプラズマを安定化させかつコーティング酸素消費を増大させるために、マイクロ波プラズマは継続される。アルミナコーティング堆積は25時間にわたって行われる。このチャック上のアルミナコーティングは30μmの厚さである。
【0060】
25cm×25cm×1cmの寸法を有するCVD硫化亜鉛の5枚のプレートが1つづつ、チャック内に配置され、そして240の平均グリットサイズを有するコーティングされていないダイヤモンド粒子を有するポリウレタン樹脂結合ホイールを使用してブランチャードグラインダーを用いて機械加工される。機械加工は20kHzの速度で5分間行われる。機械加工の後で、このチャックによって生じた何らかの圧力マークについて硫化亜鉛シートは検査された。マークは認められないと予想される。
【0061】
硫化亜鉛プレートが硫酸の水溶液でクリーニングされることを除いて、実施例1に記載されるクリーニング方法が繰り返される。各プレートは硫酸の1mM水溶液中に5分間浸漬される。この硫酸溶液はクリーニング中室温に維持される。これらプレートは取り出され、脱イオン水で2分間すすがれる。次いで、これらプレートはシュアワイプス(商標)で拭われて乾燥させられる。次いで、それらは高純度のアセトンで1分間にわたってすすがれ、室温で空気乾燥させられる。
【0062】
次いで、硫化亜鉛プレートはクリーニングされた白金ホイルに完全に包まれ、HIP処理される。HIP処理後に、硫化亜鉛プレートはスクラッチ/ディグ=120/80の評価ポリッシュまで創成され、ラップ処理されおよび研磨される。これらプレートは、標準の光ファイバー/蛍光白色光を用いて検査される。変色のない材料がプレートにおいて観察されることが予想される。
【0063】
各プレートから直径2cmのサンプルが準備され、スクラッチ/ディグ比80/50まで研磨される。これらサンプルは島津UV3101PC分光光度計において透過率について測定される。0.34μm〜1μmの可視および近赤外領域において透過率の悪化がないことが予想される。次いで、散乱計が使用されて、0.6328μmでの前方散乱を測定する。各サンプルについての結果は3%/cm未満であると予想される。
【0064】
1つのプレートは、632.8nmで1/8波の形状および40/20のスクラッチ/ディグまでさらに研磨される。次いで、ザイゴ干渉計で透過率および反射率における波面誤差について測定される。これら測定から、屈折率均一性は10ppm未満であると決定されると予想される。
【0065】
実施例4
研磨パッドが、40%〜50%の多孔度および0.3g/cmの密度を有するポリウレタン含浸ポリエステルパッドであること以外は、実施例1に記載される方法が繰り返される。硫化亜鉛プレートは酢酸の水溶液でクリーニングされる。10%酢酸水溶液は、氷酢酸(テキサス州ラポルテのリオンデルバーゼルアセチルズ(LyondellBasell Acetyls)から市販)のストック溶液から調製される。各プレートは、pH2〜3を有する酢酸の10%水溶液中に15分間浸漬される。クリーニングの際に、この酢酸溶液は室温に維持される。クリーニング後、プレートは取り出され、脱イオン水で2分間すすがれる。次いで、プレートはシュアワイプス(商標)で拭って乾燥させられる。次いで、これらは高グレードのアセトンで1分間すすがれ、室温で空気乾燥される。
【0066】
次いで、この硫化亜鉛プレートは、クリーニングされた白金ホイルに完全に包まれ、HIP処理される。HIP処理後に、低散乱無色透明硫化亜鉛プレートはスクラッチ/ディグ=120/80の評価ポリッシュまで創成され、ラップ処理されおよび研磨される。標準の光ファイバー/蛍光白色光を用いてこのプレートが検査される。変色のない材料がプレートにおいて観察されることが予想される。
【0067】
各プレートから直径2cmのサンプルが準備され、スクラッチ/ディグ比80/50まで研磨される。これらサンプルは島津UV3101PC分光光度計において透過率について測定される。0.34μm〜1μmの可視および近赤外領域において透過率の悪化がないことが予想される。次いで、散乱計が使用されて、0.6328μmでの前方散乱を測定する。各サンプルについての結果は3%/cm未満であると予想される。
【0068】
1つのプレートは、632.8nmで1/8波の形状および40/20のスクラッチ/ディグまでさらに研磨される。次いで、干渉計で透過率および反射率における波面誤差について測定される。これら測定から、屈折率均一性は5ppm未満であると決定されると予想される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)創成チャックをコーティングし、被覆しまたはそれらの組み合わせを行い;
b)コーティングされた、被覆された、またはこれらの組み合わせが行われた創成チャックに硫化亜鉛基体を配置し;並びに、
c)コーティングされた、被覆された、またはこれらの組み合わせが行われた創成チャックにおいて硫化亜鉛基体を創成する;
ことを含む方法。
【請求項2】
コーティングされていない研磨剤粒子を用いて硫化亜鉛基体が創成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティングされていない粒子がダイヤモンド、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化ケイ素、炭化タングステンおよび炭化ホウ素から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
創成チャックがポリウレタン含浸ポリエステルパッドで被覆される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
創成チャックが1種以上のセラミック材料でコーティングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
1種以上のセラミック材料が窒化物および酸化物から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
創成チャックが、スパッタリング、化学蒸着、物理蒸着、有機金属化学気相成長法、およびマイクロ波アシストマグネトロンスパッタリング法から選択される1以上の方法によって1種以上のセラミック材料でコーティングされる請求項5に記載の方法。
【請求項8】
創成チャックが1種以上の非反応性金属でコーティングされる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
創成チャックが、スパッタリング、化学蒸着、物理蒸着、有機金属化学気相成長法、およびマイクロ波アシストマグネトロンスパッタリング法から選択される1以上の方法によって1種以上の非反応性金属でコーティングされる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
a)創成チャックをコーティングし、被覆しまたはそれらの組み合わせを行い;
b)コーティングされた、被覆された、またはこれらの組み合わせが行われた創成チャックに硫化亜鉛基体を配置し;
c)コーティングされた、被覆された、またはこれらの組み合わせが行われた創成チャックにおいて、コーティングされていない研磨剤粒子を用いて、硫化亜鉛基体を創成し;
d)前記硫化亜鉛基体から金属汚染物質を除去し;
e)硫酸、硝酸またはこの組み合わせでのマイクロエッチングおよびクリーニングによって、白金ホイルから金属汚染物質を除去し;
f)クリーニングされた硫化亜鉛基体をクリーニングされた白金ホイルに包み;並びに、
g)クリーニングされた白金ホイルに包まれたクリーニングされた硫化亜鉛基体をHIPプロセスによって処理する;
ことを含む方法。

【公開番号】特開2012−240192(P2012−240192A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−91473(P2012−91473)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】