説明

向上した耐ブロッキング性を有する水性コポリマー分散体

【課題】水性ヒドロキシ官能性二次コポリマー分散体、ならびに、それから製造でき、迅速乾燥および向上した耐ブロッキング性を示すと共に、効果的な木目繊細化を維持する水性(2K)ポリウレタンワニスを提供する。
【解決手段】(M1) アクリル酸および/またはメタクリル酸の脂環式エステル、および(M2) 脂肪族カルボン酸のビニルエステルを含んで成るラジカル重合性モノマー(M)の混合物から合成されるコポリマー(P)を含んで成る水性二次コポリマー分散体、並びにこの水性二次コポリマー分散体およびイソシアネート基含有架橋剤(X)に基づく結合剤を含んで成る水性二成分ポリウレタン被覆剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規水性二次コポリマー分散体、その製造法、および、特に木材用の、高級被覆剤の製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
EP-A 358979は、ヒドロキシ官能性コポリマーの水性分散体、特に、二次分散体として知られている種類の該分散体を開示し、該分散体は、水性二成分(2K)ポリウレタンワニス用に特に好適なポリオール成分として定着している。二次コポリマー分散体に基づくワニスは、木材の特に優れた木目繊細化(grain attenuation)を特徴とするので、これらの生成物は、木材被覆分野に特に適していることが分かっている。その反面、室温乾燥のみを許容する適用分野、例えば、ウッドブロックフローリングのワニス塗布において、結合剤として使用される二次コポリマー分散体に基づく水性(2K)ポリウレタンワニスは、ワニスがその完全耐荷重能力に達するまでにあまりに長い時間を要する。耐荷重能力に重要なパラメータは、乾燥時間、および長時間荷重(そのような荷重は、例えば、重い家具によって生じる)への充分な耐性(耐ブロッキング性として知られている)が得られるまでの時間、を包含すると考えられる。
【0003】
EP-A 358979、DE-A 4226270およびEP-A 1024184は、二次ビニルポリマー分散体およびポリイソシアネート架橋剤に基づく、高レベルの特性を有している水性(2K)ポリウレタンワニスについて記載している。この場合、ビニルポリマーが、ポリイソシアネート用の乳化剤として作用し、それによって、好ましくないイソシアネート−水反応を防止する。しかし、これらの系の不利な点は、それらの不充分な乾燥速度であり、これは、ウッドブロックフローリングのワニス塗布の分野への適用に極めて重大である。
【0004】
DE-A 4439669は、水希釈性ポリアクリレート樹脂およびポリイソシアネートに基づく水性二成分ポリウレタン被覆剤を記載し、該被覆剤は、下塗り皮膜上のクリアコートとして適用され、指触乾燥(dust-dry)および不粘着状態の迅速到達、および迅速大量乾燥(volume drying)を特徴とする。それに記載されている被覆剤は、特に、車体のOEM仕上げまたは再仕上げに使用される。これらの系の不利な点は、それらの不充分な耐ブロッキング性であり、それによって木材被覆分野におけるそれらの使用が除外される。
【0005】
従って、木材ワニス塗布分野のために、優れたフィルム光学的特性、硬度並びに化学的および機械的耐性を有する(2K)ポリウレタンワニスに加工することができ、それと同時に、充分な乾燥速度および耐ブロッキング性を有する、好適な被覆剤が引き続き必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、水性ヒドロキシ官能性二次コポリマー分散体、ならびに、それから製造でき、迅速乾燥および向上した耐ブロッキング性を示すと共に、効果的な木目繊細化を維持する水性(2K)ポリウレタンワニスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
意外にも、脂環式アルコールのアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルのモノマーだけでなく、脂肪族ビニルエステルのモノマーの構造単位を含有する、ヒドロキシ官能性コポリマー(P)に基づく水性二次分散体が、先行技術の不利な点を解決することが見出された。得られる被覆剤は、極めて有効な木目繊細化と、迅速乾燥および早期耐ブロッキング性とを合わせ持っている。
【0008】
従って、本発明は、
(M1) アクリル酸および/またはメタクリル酸の脂環式エステル、および
(M2) 脂肪族カルボン酸のビニルエステル
を含んで成るラジカル重合性モノマー(M)の混合物から合成されるコポリマー(P)を含んで成る、水性二次コポリマー分散体を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書および請求の範囲に使用されているように(実施例に使用されているものを含む)、かつ、他に規定されない限り、全ての数値は、「約」という語が特に記載されていない場合でも前置されているものとして理解される。さらに、本明細書に示されているどのような数値範囲も、それに含まれるあらゆる部分範囲を包含するものとする。
【0010】
本発明の水性二次分散体の基剤であるコポリマー(P)は、多段階法においてラジカル開始剤(I)を使用して、オレフィン性不飽和モノマー(M1)〜(M6)のラジカル重合によって調製される。コポリマー(P)の調製に好適なモノマーは、モノマー(M1)および(M2)に加えて、
(M3) ヒドロキシ官能性ラジカル重合性モノマー;
(M4) カルボキシル官能性ラジカル重合性モノマー;
(M5) アルコール成分中にC1〜C18炭化水素基を有するヒドロキシル-およびカルボキシル-不含(メタ)アクリル酸エステル、および/またはビニル芳香族化合物;および
(M6) (M1)〜(M5)と異なる任意の付加的モノマー
を包含する。
【0011】
好ましくは、コポリマー(P)は、
(M1) 10〜30wt%、好ましくは12.5〜20wt%の、アクリル酸および/またはメタクリル酸の脂環式エステルまたはそれらの混合物;
(M2) 7.5〜40wt%、好ましくは10〜30wt%の、脂肪族カルボン酸のビニルエステル;
(M3) 14〜36wt%、好ましくは15〜30wt%の、ヒドロキシ官能性ラジカル重合性モノマー;
(M4) 1〜4.5wt%、好ましくは2〜3.5wt%の、カルボキシル官能性ラジカル重合性モノマー;
(M5) 18〜62wt%、好ましくは20〜50wt%の、アルコール成分中にC1〜C18炭化水素基を有するヒドロキシル-およびカルボキシル-不含(メタ)アクリル酸エステル、および/またはビニル芳香族化合物;
(M6) 0〜40wt%の、(M1)〜(M5)と異なる付加的モノマー
を含む群から選択されるモノマー(M)から合成され、コポリマー(P)は、22.5〜50wt%、好ましくは22.5〜35wt%のモノマー単位(M1)および(M2)を含有し、成分(M1)〜(M6)の合計は100wt%である。
【0012】
本発明の目的にとって、アクリル酸またはメタクリル酸は、(メタ)アクリル酸とも定義される。
【0013】
好適なモノマー(M1)は、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルキル基で環置換されたシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートであり、好ましくは、イソボルニルアクリレートおよび/またはイソボルニルメタクリレート、特に好ましくはイソボルニルメタクリレートである。イソボルニルアクリレートおよびイソボルニルメタクリレートおよび他のモノマー(M1)を含んで成る混合物を使用することもできる。イソボルニルアクリレートおよびイソボルニルメタクリレート以外のモノマー(M1)は、(M1)〜(M5)の合計に基づいて10wt%未満の量で任意に使用しうる。
【0014】
好適なモノマー(M2)は、ビニルアルコールと、直鎖または分岐鎖脂肪族カルボン酸とのエステル化生成物、例えば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニル2-エチルヘキサノエート、ビニルオクタノエート、ビニルデカノエート、ビニルドデカノエート(ビニルラウレート)またはビニルステアレートである。好ましいのは一般式(I):
【化1】

[式中、R1およびR2は、飽和アルキル基であり、合計で6、7または8個の炭素原子を含有する。]
で示される分岐鎖脂肪族カルボン酸のビニルエステルであり、化合物VeoVaTM 9、10及び11に対応する。
【0015】
モノマー(M2)として、VeoVaTM Monomer 9、10及び11(Hexion Specialty Chemicals B.V., Rotterdam, NL)として市販されているビニルモノマーを使用するのが好ましく、VeoVaTM Monomer 9が特に好ましい。
【0016】
前記のモノマーは、それらのホモポリマーのガラス転移温度の点で異なっている:
モノマー T[℃]
VeoVaTM 9 +70
VeoVaTM 10 −3
VeoVaTM 11 −40
【0017】
好適なヒドロキシル官能性モノマー(M3)は、エチレン性不飽和ヒドロキシル含有モノマー、例えば、不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、好ましくは、ヒドロキシアルキル基に2〜12個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを包含する。特に好ましい化合物の例は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、異性体ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-、3-および4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、および異性体ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0018】
好適なカルボキシル官能性ラジカル重合性モノマー(M4)は、カルボン酸または無水カルボン酸基を含有するオレフィン性不飽和モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸または二塩基酸または酸無水物のモノアルキルエステル、例えば、マレイン酸モノアルキルエステルである。アクリル酸および/またはメタクリル酸が好ましい。
【0019】
使用されるヒドロキシル-およびカルボキシル-不含モノマー(M5)は、エステル基のアルコール成分に1〜18個の炭素原子を有するアクリレートおよびメタクリレートである。アルコール成分は、好ましくは脂肪族であり、直鎖または分岐鎖であってよい。
【0020】
成分(M5)の好適なモノマーの例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、異性体ペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシルおよびオクタデシル(メタ)アクリレートである。特に好適なビニル芳香族化合物は、スチレン、任意に置換されたスチレンおよびビニルトルエンである。好ましいモノマー(M5)は、メチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル(メタ)アクリレートならびに2-エチルヘキシルアクリレート、およびスチレンである。
【0021】
好適なモノマー(M6)は、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルエーテル、メタクリロニトリルまたはビニルアセテートである。加えて、ノニオン親水基として好適な、分子量200〜3000g/mol、好ましくは350〜1000g/molの一官能価ポリアルキレンオキシド、またはエステル化(メタ)アクリル酸を、比例的に使用することもできる。
【0022】
適当なアルキレンオキシドは、好ましくは、エチレンオキシド、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物を包含する。しかし、好ましくは、コポリマーの親水性化は、イオン基手段モノマー(M4)(ionic groups means monomers (M4))によって行う。
【0023】
合成成分(M1)〜(M6)の割合は、コポリマー(P)が、35〜200mg KOH/g固形分、好ましくは50〜125mg KOH/g固形分のOH価、および10〜50mg KOH/g固形分、好ましくは15~30mg KOH/g固形分の酸価を有するように選択される。
【0024】
コポリマー(P)の調製は、基本的に、有機相において常套のラジカル重合法によって行うことができる。コポリマー(P)は、好ましくは、EP-A 0947557(3頁2行〜4頁15行)またはEP-A 1024184(2頁53行〜4頁9行)に記載されている種類の多段階法によって調製される。この方法において、先ず、酸基を有さないかまたは低酸基分を有する疎水性モノマー混合物(MI)を計量供給し、次に、重合における遅い時点で、酸基を有する付加的親水性モノマー混合物(MII)を計量供給するが、該付加的親水性モノマー混合物(MII)は、タイプ(M1)および(M2)のモノマーを含有しない。
【0025】
従って、本発明は、本発明の水性二次コポリマー分散体の製造法も提供し、該方法は、下記を特徴とする:第一工程において、モノマー(M1)16.5〜33.5wt%、(M2)12.5〜44.5wt%、(M3)10〜35wt%、(M4)0〜2.5wt%、(M5)10〜61wt%、および(M6)0〜40wt%を含有する疎水性モノマー混合物M(I)を重合させ、次に、第二工程において、得られたポリマーを、モノマー(M3)20〜60wt%、(M4)10〜45wt%、(M5)30〜70wt%、および(M6)0〜40wt%を含有する親水性モノマー混合物M(II)と混合し、成分を反応させてコポリマー(P)を得、得られた酸基含有コポリマー(P)を水性相に移し、カルボキシル基の少なくとも40mol%を、分散前または分散中に中和する。
【0026】
本発明の方法の他の態様において、第一工程において、30〜70wt%の1つまたはそれ以上のモノマー(M2)および70〜30wt%の有機溶剤から成る混合物(V)を、反応器に装填し、次に、第二工程において、モノマー(M1)22.5〜36.5wt%、(M2)0〜33.5wt%、(M3)10〜35wt%、(M4)0〜2.5wt%、(M5)10〜67.5wt%、および(M6)0〜40wt%を含有する疎水性モノマー混合物M(I)を重合させ、次に、さらなる工程において、得られたポリマーを、モノマー(M3)20〜60wt%、(M4)10〜45wt%、(M5)30〜70wt%、および(M6)0〜40wt%を含有する親水性モノマー混合物M(II)と混合し、成分を反応させてコポリマー(P)を得、得られた酸基含有コポリマー(P)を水性相に移し、カルボキシル基の少なくとも25mol%を、分散前または分散中に中和する。
【0027】
共重合は、一般に40〜180℃、好ましくは80〜160℃で行われる。重合反応に好適な開始剤(I)は、有機過酸化物、例えばジ-tert-ブチルペルオキシド(例えば、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)、およびアゾ化合物である。使用される開始剤の量は、所望される分子量に依存する。作業信頼性およびより高い取扱容易性のために、予め特定されている種類の好適な有機溶剤中の溶液の形態で、過酸化物開始剤を使用することもできる。
【0028】
本発明の方法における開始剤(I)の添加の速度は、モノマー供給(M)の終了まで持続するように調節され、工程1および2における溶剤の量は、12wt%未満の有機溶剤含有量になるように選択される。
【0029】
成分の量は、 (V):(M)の質量比1:9〜3:7、および(MI):(MII)の質量比9:1〜6:4、特に好ましくは、(V):(M)の質量比1.2:8.8〜2:8、および(MI):(MII)の質量比8.5:11.5〜7:3になるように計算するのが好ましい。
【0030】
ラジカル重合は、反応器に装填された溶剤または溶剤/水混合物の存在下で行うことができる。好適な有機溶剤は、塗料技術において既知の溶剤を包含し、好ましい溶剤は、水性分散体において共溶剤として一般に使用される溶剤、例えば、アルコール、エーテル、エーテル基含有アルコール、エステル、ケトンまたは非極性炭化水素、またはこれらの溶剤の混合物である。溶剤は、生成した分散体におけるそれらのレベルが0〜12wt%、好ましくは2〜8wt%になる量で使用される。
【0031】
さらに、EP-A 1024184の方法によって、疎水性コポリマーを初期装填材料として使用して、コポリマーを製造することも好ましい。
【0032】
従って、好ましい方法は、
A) 酸価<10mg KOH/g、OH含量0.5%〜7%(各場合に、100%形態の樹脂に基づく)、数平均分子量Mn1500ダルトン〜20000ダルトンを有し、有機溶剤中の溶液であってもよい、ヒドロキシ官能性疎水性コポリマーを、反応器に装填する工程;
B) 有機溶剤中の溶液であってもよいラジカル開始剤を、使用される開始剤Bの合計量の5%〜40%の量で、該反応器に事前供給する工程;
C) 疎水性OH含有モノマー混合物を、この反応器中またはこの反応混合物中で重合させる工程;
D) OH基および酸基を含有する親水性モノマー混合物を、この反応器中またはこの混合物中で重合させ、導入された全ての酸基の少なくとも60%がコポリマーPに導入される工程;
を含んで成るコポリマー(P)の製造法であって、
コポリマーPが、平均分子量Mn3000〜7000、平均分子量Mw10000ダルトン〜25000ダルトンおよび分子量分布Mw/Mn2.5〜4.0を有し、かつ、ヒドロキシル基分1%〜8%を有し、100%形態におけるコポリマーPの酸価が12〜30mg KOH/gである;
ことを特徴とする製造法である。
【0033】
多段階重合法の代わりに、本発明の方法を連続的に行うこともでき(勾配(gradient)重合)、即ち、モノマー混合物を、親水性(酸官能性)モノマー部分が供給の終点に向かって初期より高くなるように、変化する組成で添加する。
【0034】
コポリマー(P)の数平均分子量Mnは、操作パラメータ、例えば、モノマー/開始剤モル比、反応時間または温度の特定の選択によって調節でき、一般に500ダルトン〜30000ダルトン、好ましくは1000ダルトン〜15000ダルトン、より好ましくは1500ダルトン〜10000ダルトンである。100%形態におけるコポリマー(P)のヒドロキシル基分は、好ましくは1〜5wt%、好ましくは1.5〜4.5w%、特に好ましくは1.75〜3.5wt%である。
【0035】
水へのコポリマー(P)の分散前、分散中または分散後に、存在する酸基を、好適な中和剤の添加によって、それらの塩の形態に少なくとも部分的に変換する。好適な中和剤は、有機アミンまたは水溶性無機塩基、例えば、可溶性金属水酸化物、金属炭酸塩、または金属炭酸水素塩、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。
【0036】
好適なアミンの例は、N-メチルモルホリン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ブタノールアミン、モルホリン、2-アミノメチル-2-メチルプロパノールまたはイソホロンジアミンである。混合物において、比例的に、アンモニアを使用することもできる。特に好ましくは、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミンおよびエチルジイソプロピルアミンである。
【0037】
中和剤は、(酸基の)理論中和度が合計で40%〜150%、好ましくは60%〜120%になる量で添加される。この場合、中和度は、添加した中和成分の塩基性基対コポリマーの酸官能基の比である。本発明の水性コポリマー分散体のpHは6〜10、好ましくは6.5〜9である。
【0038】
本発明のコポリマー分散体は、好適な架橋剤(X)と組み合わせて、水性二成分(2K)ポリウレタン被覆剤用の結合剤として特に好適である。
【0039】
本発明は、本発明の水性二次分散体およびイソシアネート基含有架橋剤(X)に基づく結合剤を含んで成る水性二成分ポリウレタン被覆剤も提供する。
【0040】
使用される架橋剤(X)は、好ましくはポリイソシアネートである。そのようなポリイソシアネートは1分子につき2個またはそれ以上のNCO基を有し、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、ビス(4-イソシアナトシクロヘキサン)メタン、1,3-ジイソシアナトベンゼン、トリイソシアナトノナンまたは異性体2,4-および2,6-TDIに基づき、さらにウレタン、イソシアヌレートおよび/またはビウレット基を含有してもよい。所望により、ポリイソシアネートはブロックされていてもよい。
【0041】
脂肪族または脂環式イソシアネートに基づく前記種類の低粘度ポリイソシアネートを使用するのが特に好ましい。所望により、これらを親水性化してもよい。
【0042】
架橋剤として使用されるポリイソシアネートは、23℃における粘度10〜5000mPasを一般に有し、所望であれば、粘度を調節するために、少量の不活性溶剤とブレンドして使用してもよい。
【0043】
本発明のコポリマーは一般に、付加的乳化剤を使用せずに、疎水性架橋剤樹脂をも分散させうるほど充分に親水性である。しかし、これは、外部乳化剤の使用を排除するものではない。
【0044】
水溶性または水分散性ポリイソシアネートは、例えば、カルボキシレート、スルホネートおよび/またはポリエチレンオキシド基および/またはポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド基の改質によって得られる。ポリイソシアネートは、例えば、化学量論量未満の一価親水性ポリエーテルアルコールとの反応によって親水性にすることができる。この種類の親水性化ポリイソシアネートの製造は、例えば、EP-A 0540985(3頁55行〜4頁5行)に記載されている。EP-A 959087(3頁39〜51行)に記載されているアロファネート基含有ポリイソシアネートも極めて好適であり、それは、アロファネート化条件下に、低モノマー含有量ポリイソシアネートとポリエチレンオキシドポリエーテルアルコールとを反応させることによって調製される。DE-A 10007821(2頁66行〜3頁5行)に記載されている水分散性ポリイソシアネート混合物も好適であり、それはトリイソシアナトノナンに基づく。特に好適であり、かつ好ましいのは、例えば、DE-A 10024624(頁31, 行13〜33)に記載されている種類の、イオン基、特にスルホネート基で親水性化されたポリイソシアネートである。
【0045】
当然、種々の架橋剤樹脂の混合物を使用することも基本的に可能である。
【0046】
結合剤成分のヒドロキシル基対架橋剤(X)のイソシアネート基の比は、一般に3:1〜1:5、好ましくは2:1〜1:3、特に好ましくは1:1〜1:2である。
【0047】
本発明の水性二次分散体を含んで成る被覆剤は、所望の基体、例えば、木材、金属、プラスチック、紙、皮革、繊維製品、フェルト、ガラスまたは鉱物基体、ならびに、既に被覆されている基体に適用することができる。1つの特に好ましい適用は、吸収性基体、例えば木材または連続気泡鉱物基体において、被膜を形成するための水性被覆剤の使用である。好ましい基体は木材である。
【0048】
さらに本発明は、本発明の水性二次分散体を含んで成る被覆剤で被覆された木材物品も提供する。
【0049】
前記被覆剤は、それ自体で、または被覆技術において既知の付加的助剤および補助剤、例えば、充填剤および顔料と組み合わせて、使用することができる。
【0050】
本発明の二次分散体を含んで成る被覆剤は、既知の方法、例えば、塗布、流延、ナイフ塗布、射出、噴霧、スピンコーティング、ロール塗布または浸漬被覆によって適用できる。
【実施例】
【0051】
化学物質
BayhydurTM XP 2487/1(Bayer Material Science AG, Leverkusen)
BykTM 024(Byk Chemie, Wesel)
DowanolTM PnB(Dow Deutschland, Schwalbach/Taunus)
DowanolTM PMA(Dow Deutschland, Schwalbach/Taunus)
PeroxanTM DB(PERGAN, Bocholt)
VeoVaTM 9(Hexion Specialty Chemicals B.V., Rotterdam, NL)
【0052】
試験明細
乾燥時間: 塗布ナイフを使用して、表3の2K透明ワニスを、ガラス板に湿潤皮膜厚さ240μmで塗布する。被覆されたガラス板を、水平位置において、25℃および55%相対湿度で保存する。ワニス皮膜を(人差し)指で押すことによって、不粘着時間を試験する。不粘着時間は、指が永久可視圧痕を残さなくなった時点を意味する。
【0053】
ブロッキング: 表3の2K透明ワニスを、噴霧(低圧適用)によって、寸法6cm x 6cmの合板プラックに塗布する。25℃および55%相対湿度における15分間の蒸発分離(flashing-off)後、ワニスを40℃で3時間硬化させる。次に、ワニス被覆木製プラックを、2つずつ、ワニス皮膜が相互に向き合うように配置し、60℃で1時間にわたって3.6kgの分銅荷重下に保存する。室温に冷却後、2つのワニス皮膜の分離性を試験する。
【0054】
評価: 0=ワニス被膜のワニス表面の完全結合(合一);5=ブロッキング無し
【0055】
製造法の説明(表記載のパート)
撹拌機、還流冷却器、温度測定器およびモノマー供給装置(滴下漏斗)を取り付けた10リットルの反応器に、パートIを装填し、窒素の緩流で1時間ガスシールした。次に、この初期装填材料を、撹拌しながら148℃に加熱した。その温度に達した後、20分間にわたってパートIIと混合した。その後直ぐに、並行して、パートIIIおよびIVを4.5時間にわたって計量供給し、その間、温度が153℃を超えないよう場合により冷却した。添加終了後、バッチを148℃に0.5時間維持した。次に、パートVおよびVIを1.5時間にわたって計量供給した。次に、バッチを148℃に1時間維持し、続いて、100℃に冷却し、パートVIIと混合した。さらに0.5時間にわたって均質化した後、60℃の水(パートVIII)を使用して、0.5時間にわたって分散を行い、次に、80℃で2時間撹拌し、フィルターに通して吐出した。
【表1】

【表2】

【表3】

【0056】
実施例9
A. 初期段階
撹拌機、還流冷却器、温度測定器およびモノマー供給装置(滴下漏斗)を取り付けた10リットルの反応器に、パートIを装填し、窒素の緩流で1時間ガスシールした。次に、そのバッチを、撹拌しながら148℃に加熱した。その温度に達した後、パートIIを20分間にわたって添加した。その後直ぐに、並行して、パートIIIおよびIVを4.5時間にわたって計量供給し、その間、温度が153℃を超えないよう場合により冷却した。添加終了後、バッチを148℃に1時間維持した。冷却して、68.5±1wt%の固形分を有する高粘性樹脂を得る。
【0057】
【表4】

【0058】
B. コポリマー分散
撹拌機、還流冷却器、温度測定器およびモノマー供給装置(滴下漏斗)を取り付けた30リットルの反応器に、パートIを装填し、窒素の緩流で1時間ガスシールした。次に、そのバッチを、撹拌しながら148℃に加熱した。その温度に達した後、パートIIを20分間にわたって添加した。その後直ぐに、並行して、パートIIIおよびIVを4.5時間にわたって計量供給し、その間、温度が153℃を超えないよう場合により冷却した。添加終了後、バッチを148℃に0.5時間維持した。次に、パートVおよびVIを1.5時間にわたって計量供給した。次に、バッチを148℃に1時間維持し、続いて、100℃に冷却し、パートVIIを添加した。さらに0.5時間にわたって均質化した後、60℃の水(パートVIII)を使用して、0.5時間にわたって分散を行い、次に、80℃で2時間撹拌し、フィルターに通して吐出した。
【0059】
得られた分散体は、固形分39.6wt%、平均粒度105nm、溶剤含有量3.2wt%、固形分に基づくヒドロキシル価99mg KOH/g、および固形分に基づく酸価25mg KOH/gを有していた。
【0060】
【表5】

【0061】
本発明を、例示目的で、先に詳しく記載したが、そのような記載は単に例示目的にすぎず、請求の範囲によって限定される以外は、本発明の意図および範囲を逸脱せずに当業者によってそれに変更を加えうるもの理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(M1) アクリル酸および/またはメタクリル酸の脂環式エステル、および
(M2) 脂肪族カルボン酸のビニルエステル
を含んで成るラジカル重合性モノマー(M)の混合物から合成されるコポリマー(P)を含んで成る、水性二次コポリマー分散体。
【請求項2】
コポリマー(P)が、
(M1) 10〜30wt%の、アクリル酸および/またはメタクリル酸の脂環式エステルまたはそれらの混合物;
(M2) 7.5〜40wt%の、脂肪族カルボン酸のビニルエステル;
(M3) 14〜36wt%の、ヒドロキシ官能性ラジカル重合性モノマー;
(M4) 1〜4.5wt%の、カルボキシル官能性ラジカル重合性モノマー;
(M5) 18〜62wt%の、アルコール成分中にC1〜C18炭化水素基を有するヒドロキシル−およびカルボキシル−不含(メタ)アクリル酸エステル、および/またはビニル芳香族化合物;
(M6) 0〜40wt%の、(M1)〜(M5)と異なる付加的モノマー
を含む群から選択されるモノマー(M)から合成され、コポリマー(P)は、合計で22.5〜50wt%のモノマー単位(M1)および(M2)を含有し、成分(M1)〜(M6)の合計は100wt%である請求項1に記載の水性二次コポリマー分散体。
【請求項3】
(M2)が、一般式(I):
【化1】

[式中、R1およびR2は、合計で6、7または8個の炭素原子を含有する飽和アルキル基である。]
で示される分岐鎖脂肪族カルボン酸のビニルエステルである請求項1に記載の水性二次コポリマー分散体。
【請求項4】
コポリマー(P)が、OH価35〜200mg KOH/g固形分、および酸価10〜50mg KOH/g固形分を有する請求項1に記載の水性二次コポリマー分散体。
【請求項5】
請求項1に記載の水性二次コポリマー分散体を製造する方法であって、第一工程において、モノマー(M1)16.5〜33.5wt%、(M2)12.5〜44.5wt%、(M3)10〜35wt%、(M4)0〜2.5wt%、(M5)10〜61wt%、および(M6)0〜40wt%を含有する疎水性モノマー混合物M(I)を重合させ、次に、第二工程において、得られたポリマーを、モノマー(M3)20〜60wt%、(M4)10〜45wt%、(M5)30〜70wt%、および(M6)0〜40wt%を含有する親水性モノマー混合物M(II)と混合し、成分を反応させてコポリマー(P)を得、得られた酸基含有コポリマー(P)を水性相に移し、カルボキシル基の少なくとも40mol%を、分散前または分散中に中和する工程を含んで成る方法。
【請求項6】
請求項1に記載の水性二次コポリマー分散体を製造する方法であって、第一工程において、30〜70wt%の1つまたはそれ以上のモノマー(M2)および70〜30wt%の有機溶剤から成る混合物(V)を、反応器に装填し、次に、第二工程において、モノマー(M1)22.5〜36.5wt%、(M2)0〜33.5wt%、(M3)10〜35wt%、(M4)0〜2.5wt%、(M5)10〜67.5wt%、および(M6)0〜40wt%を含有する疎水性モノマー混合物M(I)を重合させ、次に、さらなる工程において、得られたポリマーを、モノマー(M3)20〜60wt%、(M4)10〜45wt%、(M5)30〜70wt%、および(M6)0〜40wt%を含有する親水性モノマー混合物M(II)と混合し、成分を反応させてコポリマー(P)を得、得られた酸基含有コポリマー(P)を水性相に移し、カルボキシル基の少なくとも25mol%を、分散前または分散中に中和する工程を含んで成る方法。
【請求項7】
請求項1に記載の水性二次コポリマー分散体および架橋剤(X)に基づく結合剤を含んで成る水性二成分ポリウレタン被覆剤。
【請求項8】
請求項1に記載の水性二次コポリマー分散体およびイソシアネート基含有架橋剤(X)に基づく結合剤を含んで成る水性二成分ポリウレタン被覆剤。
【請求項9】
架橋剤(X)がポリイソシアネートである請求項8に記載の水性二成分ポリウレタン被覆剤。
【請求項10】
請求項1に記載の水性二次コポリマー分散体を含んで成る被覆剤で被覆された木材物品。

【公開番号】特開2007−321148(P2007−321148A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−141683(P2007−141683)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】