説明

含フッ素エラストマー

【課題】シアノ基を架橋性基とする含フッ素エラストマーにおいて、これをプラズマ照射条件下で使用され、また300℃といった高温条件下で使用された場合にあっても、プラズマ照射による重量減少を抑制し、また300℃以上といった高温条件下においてもすぐれた耐熱性を示す含フッ素エラストマーを提供する。
【解決手段】(A)テトラフルオロエチレン72.8〜74.0モル%、(B)パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)26.8〜24.0モル%および(C)パーフルオロ不飽和ニトリル化合物0.2〜3.0モル%よりなる共重合組成を有し、ムーニー粘度ML1+10(121℃)が70〜115である含フッ素エラストマー。かかる含フッ素エラストマーは、それの100重量部当り0.2〜5重量部のビスアミドキシム化合物を加硫剤として配合し、含フッ素エラストマー組成物を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素エラストマーに関する。さらに詳しくは、プラズマ照射用途などに用いられる含フッ素エラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置用シールは、半導体の基板であるシリコンウェハー等の表面にエッチング加工あるいは薄膜を形成させるなどの処理をするための加工室等に用いられるシールとして適用されるものであり、耐熱性、低ガス透過性、低発塵性(シールからの塵の発生が少ないこと)などが要求される。シリコンウェハーエッチング処理時などには、酸素あるいはCF4雰囲気下などでプラズマ照射されるため、酸素あるいはハロゲンなどのガスが励起された状態となり、その結果半導体製造装置用シールは劣化し易く、またその表面が脆くなり、劣化物や脆化物が飛散して、シリコンウェハー上に付着するなどの不具合がみられる。
【0003】
ところで、半導体製造装置においては、300℃といった高温での使用要求に対して耐熱性にすぐれたシアノ基含有パーフルオロエラストマーなどが使用されている。一方、耐プラズマ性向上のために、シリカ、硫酸バリウム、アルミナ、珪酸アルミニウム等の無機充填剤を添加することが行われており、これら無機充填剤の添加はプラズマ照射環境下での重量減少の抑制に効果が認められるものの、チタン、バリウム、アルミニウムといった元素自体の存在が半導体業界では嫌われていることもあり、シリカのみあるいは全く無機充填剤を用いない材料であることが好ましい。
【0004】
また、ゲートバルブ用途に使用される場合には、金属との粘着性が強いとそれによる不具合が発生することがあるので、低粘着性であることも求められている。
【0005】
前述の如く、半導体製造装置の高温使用環境において、すぐれた耐熱性を示すシアノ基含有パーフルオロエラストマー(含フッ素エラストマー)およびその加硫剤としては、以下に記載されるようなものが従来提案されている。
【0006】
含フッ素エラストマーとしては、(A)テトラフルオロエチレンを53〜79.8モル%、好ましくは64.4〜72.6モル%、さらに好ましくは69.3モル%、(B)パーフルオロ(メチルビニルエーテル)20〜45モル%、好ましくは27〜35モル%、さらに好ましくは30モル%および(C)一般式
CF2=CF〔OCF2CF(CF3)〕xO(CF2)nCN
n:1〜4
x:1〜2
で表わされるパーフルオロ不飽和ニトリル化合物0.2〜2モル%、好ましくは0.4〜1.0モル%、さらに好ましくは0.7モル%の共重合組成を有するものが知られており、この含フッ素エラストマーはビスアミノフェノールまたは芳香族テトラミンによって硬化されるとされている。
【特許文献1】特公平2−59177号公報
【0007】
この種の含フッ素エラストマーはまた、一般式
HON=C(NH2)-(CF2)n-C(NH2)=NOH
n:1〜10
で表わされるビスアミドキシム化合物を加硫剤として加硫されることが、本出願人によって提案されている。この場合に用いられる含フッ素エラストマーとしては、(A)テトラフルオロエチレン45〜75モル%、(B)パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)54.8〜20モル%および(C)パーフルオロ不飽和ニトリル化合物0.2〜5モル%よりなる共重合組成を有するものが用いられるとされており、各実施例では(A):(B):(C)モル比がそれぞれ63.5:34.9:1.6または68.8:30.0:1.2の共重合組成を有するものが含フッ素エラストマーとして用いられている。
【特許文献2】特許第3082626号公報
【0008】
さらに、この種の含フッ素エラストマーを用い、ビスアミドラゾン化合物を加硫剤として用いて加硫することも、本出願人によって提案されている。ここで用いられる含フッ素エラストマーとしては、(A)テトラフルオロエチレン45〜75モル%、(B)パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)50〜25モル%および(C)パーフルオロ不飽和ニトリル化合物0.1〜5モル%よりなる共重合組成を有するものが用いられており、実施例では(A):(B):(C)モル比が57.3:39.6:2.8の共重合組成を有するものが用いられている。
【特許文献3】特開平8−119926号公報
【0009】
前記特許文献2に記載されている含フッ素エラストマーは、加硫剤としてのビスアミドキシム化合物と加硫反応するシアノ基を有しており、加硫剤をそこに配合した含フッ素エラストマー組成物は、ロール混練性などの加工性においても問題がなく、また耐熱性および耐溶剤性の点においても満足される加硫成形品を与え得るとされ、275℃または300℃、70時間という条件下での圧縮永久歪値が測定されているが、300℃での圧縮永久歪値からみて、半導体製造装置で用いられる300℃といった高温での使用に十分耐え得る耐熱性を有しているとはいえない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、シアノ基を架橋性基とする含フッ素エラストマーにおいて、これをプラズマ照射条件下で使用され、また300℃といった高温条件下で使用された場合にあっても、プラズマ照射による重量減少を抑制し、また300℃以上といった高温条件下においてもすぐれた耐熱性を示す含フッ素エラストマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる本発明の目的は、(A)テトラフルオロエチレン72.8〜74.0モル%、(B)パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)26.8〜24.0モル%および(C)パーフルオロ不飽和ニトリル化合物0.2〜3.0モル%よりなる共重合組成を有し、ムーニー粘度ML1+10(121℃)が70〜115である含フッ素エラストマーによって達成される。かかる含フッ素エラストマーは、それの100重量部当り0.2〜5重量部のビスアミドキシム化合物を加硫剤として配合し、含フッ素エラストマー組成物を形成させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る含フッ素エラストマーは、ビスアミドキシム化合物を加硫剤として加硫成形することにより、有効な半導体製造装置用シール材を形成させることができる。得られたシール材は、カーボンブラック、シリカ等の無機充填剤を含有していなくともすぐれた耐熱性を示し、300℃以上、具体的には300℃および315℃での圧縮永久歪値によって示されるような高温耐熱性を示している。このため、Oリング等のシール材は、300℃以上での高温条件下においても、良好なシール性を保持し得る。
【0013】
また、無機充填剤を含有していないため、プラズマ照射条件下で使用されても、金属元素を含む微粒子の発生がなく、またそれによる重量減少も抑制されるので、半導体製造装置用途に好適に用いられる。さらに、ステンレス鋼板、アルミニウム板等の金属板、シリカガラス板、シリコン板等に対する非粘着性にすぐれているので、半導体形成用基板を真空系内で予備室から加工室に出し入れするゲート部分のバルブであり、プラズマ照射される領域へ付設されるゲートバルブ用途に使用された場合などには、このシール材が接する金属に対して低粘着性であるという効果も奏せられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る含フッ素エラストマーは、(A)テトラフルオロエチレン72.8〜74.0モル%、(B)パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)26.8〜24.0モル%および(C)パーフルオロ不飽和ニトリル化合物0.2〜3.0モル%よりなる共重合組成を有している。その共重合割合は、前記特許文献1〜3の共重合割合に関する一般的な記載には含まれるものの、好ましい共重合割合範囲、さらに好ましい共重合割合にも記載されていない範囲に設定されている。
【0015】
(A)成分のテトラフルオロエチレンの共重合割合は、72.8〜74.0モル%と前記特許文献1〜3の上限値に近く、特に特許文献1の好ましい範囲の上限値よりもさらに高く設定されており、この共重合割合がこれよりも低いと、耐熱性の面で劣り、またシリコン、金属、シリカガラス等への粘着性が強くなり、一方これよりも高い共重合割合では、エラストマーというよりは樹脂的挙動を示すため、シール性能が悪化し、また加工性に劣るようになる。
【0016】
また、(B)成分のパーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)の共重合割合は、26.8〜24.0モル%と、前記特許文献1の好ましい範囲より低く、同文献のさらに好ましい共重合割合、さらには特許文献2、3の実施例で用いられた共重合割合である30モル%以上よりも低く設定されている。この共重合割合がこれよりも低いと、相対的にテトラフルオロエチレンの共重合割合が増加することもあって、300℃、315℃の圧縮永久歪値によって示されるように、共重合体が樹脂に近い状態となり、シール性能の低下が著しくなる。一方、これよりも共重合割合が高いと、特に粘着性が著しく悪化するようになる。
【0017】
(B)成分共単量体のパーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)としては、一般にはパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等が用いられる。また、パーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)としては、例えば次のようなものが用いられ、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCnF2n+1 (n:1〜5)
CF2=CFO(CF2)3OCnF2n+1 (n:1〜5)
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mCnF2n+1 (n:1〜5、m:1〜3)
CF2=CFO(CF2)2OCnF2n+1 (n:1〜5)
これらの中で、特にCnF2n+1基がCF3基であるものが好んで用いられる。
【0018】
また、架橋サイト単量体としての(C)成分共単量体のパーフルオロ不飽和ニトリル化合物としては、次のようなものが用いられる。
CF2=CFO(CF2)nOCF(CF3)CN (n:2〜5)
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]nO(CF2)mCN (n:1〜2、m:1〜6)
CF2=CFO(CF2)nCN (n:1〜8)
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]nOCF2CF(CF3)CN (n:1〜2)
CF2=CFO(CF2)n(p-C6H4)CN (n:1〜6)
【0019】
なお、(C)成分のパーフルオロ不飽和ニトリル化合物の共重合量は、架橋性基として必要な0.2〜3.0モル%、好ましくは0.5〜2.0モル%とされる。
【0020】
これら各単量体を用いての共重合反応は、一般にステンレス鋼製オートクレーブ中に水、パーフルオロオクタン酸アンモニウム等の含フッ素系乳化剤およびリン酸二水素カリウム等の緩衝剤を仕込んだ後、テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)およびパーフルオロ不飽和ニトリル化合物を順次仕込み、約50〜80℃に昇温させた後、過硫酸アンモニウム等のラジカル発生剤および亜硫酸ナトリウム等の還元剤を添加することにより行われる。反応圧力は、約0.75〜0.85MPa程度に保たれることが好ましく、このため反応の進行と共に低下する反応容器内圧力を上げるため、これら3種の単量体混合物を追加分添しながら反応を行うことが好ましい。
【0021】
以上の成分を必須成分とする3元共重合体中には、共重合反応を阻害せずかつ加硫物性を損なわない程度(約20モル%以下)の他のフッ素化オレフィンや各種ビニル化合物などを共重合させることもできる。フッ素化オレフィンとしては、例えばフッ化ビニリデン、モノフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレン、クロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン等が用いられ、またビニル化合物としては、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、トリフルオロスチレン等が用いられる。
【0022】
かかる3元共重合体よりなる含フッ素エラストマーには、前記特許文献2に記載される如き、一般式
HON=C(NH2)-(CF2)n-C(NH2)=NOH
n:1〜10
で表わされるビスアミドキシム化合物が加硫剤として、含フッ素エラストマー100重量部当り0.2〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部の割合で添加して用いられる。
【0023】
ビスアミドキシム化合物を加硫剤として配合した含フッ素エラストマー組成物の調製は、2本ロール等を用いて約30〜60℃で混練することにより行われ、それの架橋は、約100〜250℃で約1〜120分間加熱することによって行われる。二次加硫を行う場合には、窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気中約150〜280℃で行われ、下記実施例に記載される如く、段階的な昇温でオーブン加硫が行われることが好ましい。
【実施例】
【0024】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0025】
参考例1
内容積100Lのステンレス鋼製オートクレーブ中に水に、蒸留水55kg、パーフルオロオクタン酸アンモニウム1800gおよびリン酸二水素カリウム782gを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素で置換し、次いで減圧した。そこに、
テトラフルオロエチレン〔TFE〕 1.5kg
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔FMVE〕 1.1kg
パーフルオロ(3,7-ジオキサ-8-シアノ-1-ノネン)〔CEPVE〕 130g
を順次仕込み、60℃に昇温させた後、過硫酸アンモニウム70gおよび亜硫酸ナトリウム12gを5Lの水溶液として添加し、重合反応を開始させた。
【0026】
重合反応中、TFEを1.4kg/hr、FMVEを1.0kg/hr、CEPVEを52g/hrの分添速度でそれぞれ添加し、その間のオートクレーブの圧力を0.78〜0.83MPaに保った。重合反応開始時から7時間後に分添を停止し、そのままの状態をさらに1時間保った。オートクレーブを冷却し、残ガスをパージして、固形分濃度26重量%の水性ラテックスを76kg得た。得られた水性ラテックスを5重量%塩化マグネシウム水溶液80Lとエタノール80Lと混合液中に加えて凝析させた後水洗し、80℃で70時間の乾燥を行って、白色のゴム状3元共重合体Aを17.6kg(収率89%)得た。
【0027】
このゴム状3元共重合体は、ムーニー粘度ML1+10(121℃)が88で、赤外吸収スペクトルおよびNMR分析から、次のような組成であることが確認された。
TFE 73.5モル%
FMVE 24.9モル%
CEPVE 1.6モル%
【0028】
参考例2
内容積100Lのステンレス鋼製オートクレーブ中に水に、蒸留水51kg、パーフルオロオクタン酸アンモニウム900gおよびリン酸二水素カリウム782gを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素で置換し、次いで減圧した。そこに、
テトラフルオロエチレン〔TFE〕 1.6kg
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔FMVE〕 1.1kg
パーフルオロ(3-オキサ-8-シアノ-1-オクテン)〔CPeVE〕 100g
を順次仕込み、60℃に昇温させた後、過硫酸アンモニウム70gおよび亜硫酸ナトリウム12gを5Lの水溶液として添加し、重合反応を開始させた。
【0029】
重合反応中、TFEを1.4kg/hr、FMVEを0.9kg/hr、CPeVEを40g/hrの分添速度でそれぞれ添加し、その間のオートクレーブの圧力を0.78〜0.83MPaに保った。重合反応開始時から7時間後に分添を停止し、そのままの状態をさらに1時間保った。オートクレーブを冷却し、残ガスをパージして、固形分濃度27重量%の水性ラテックスを74kg得た。得られた水性ラテックスを5重量%塩化マグネシウム水溶液80Lとエタノール80Lと混合液中に加えて凝析させた後水洗し、80℃で70時間の乾燥を行って、白色のゴム状3元共重合体Bを17.0kg(収率89%)得た。
【0030】
このゴム状3元共重合体は、ムーニー粘度ML1+10(121℃)が89で、赤外吸収スペクトルおよびNMR分析から、次のような組成であることが確認された。
TFE 73.9モル%
FMVE 24.8モル%
CPeVE 1.3モル%
【0031】
実施例1
テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(メチルビニルエーテル)-パーフルオロ(3,7-ジオキサ-8-シアノ-1-ノネン)〔モル比73.5:24.9:1.6〕3元共重合体〔共重合体A〕100重量部に、ビスアミドキシム化合物(n=4)0.7重量部を加え、2本ロールミル上で40〜45℃の温度で混練した。混練物を180℃、30分間プレス加硫(一次加硫)した後、次の条件下でのオーブン加硫(二次加硫)を窒素ガス雰囲気下で行った。
90℃で4時間
90℃から204℃迄6時間かけて昇温
204℃で18時間
204℃から288℃迄6時間かけて昇温
288℃で18時間
【0032】
実施例2
実施例1において、共重合体Aの代わりに、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(メチルビニルエーテル)-パーフルオロ(3-オキサ-8-シアノ-1-オクテン) [モル比 73.9:24.8:1.3]3元共重合体(共重合体B)が用いられた。
【0033】
実施例3
実施例1において、共重合体Aの代わりに、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(エチルビニルエーテル)-パーフルオロ(3,7-ジオキサ-8-シアノ-1-ノネン) [モル比 73.2:25.8:1.0]3元共重合体(共重合体C;ムーニー粘度ML1+10(121℃)84)が用いられた。
【0034】
実施例4
実施例1において、共重合体Aの代わりに、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(メトキシエチルビニルエーテル)-パーフルオロ(3,7-ジオキサ-8-シアノ-1-ノネン) [モル比 73.3:25.1:1.6]3元共重合体(共重合体D;ムーニー粘度ML1+10(121℃)88)が用いられた。
【0035】
得られた3元共重合体について、次の各項目の測定を行った。
常態物性:DIN53505(硬度)
DIN53503(引張試験)
圧縮永久歪:ASTM Method B;P-24 Oリングについて、300℃または315℃、70時間 の条件下で測定
プラズマ照射試験(重量減少率):アルバック社製RBH3030使用
O2プラズマ
RF出力 1500W
照射時間 6時間
真空度0.1 Torr
粘着性試験:P24 Oリングを2枚の5cm角ステンレス板(SUS板)、アルミニウム板、シ リカガラス板またはシリコン板で挟み込み、15%圧縮した状態で80℃ に15時間加熱後、30分間室温条件下に冷却したものについて、これら 2枚の板を速さ100mm/分の速度で引っ張ったときの最大荷重を測定
【0036】
比較例1
実施例1において、共重合体Aの代りに、共重合単量体モル比68.5:29.9:1.6の3元共重合体(共重合体E;ムーニー粘度ML1+10(121℃)82)が用いられ、同様の加硫および測定が行われた。
【0037】
比較例2
実施例1において、共重合体Aの代りに、共重合単量体モル比77.5:21.1:1.4の3元共重合体(共重合体F;ムーニー粘度ML1+10(121℃)91)が用いられ、同様の加硫および測定が行われた。
【0038】
比較例3
実施例2において、共重合体Aの代りに、共重合単量体モル比69.9:28.8:1.3の3元共重合体(共重合体G;ムーニー粘度ML1+10(121℃)85)が用いられ、同様の加硫および測定が行われた。
【0039】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表に示される。

実施例 比較例
測定項目
硬度(ショアーA) 83 85 82 80 69 88 71
引張試験
100%モジュラス(MPa) 7.1 7.7 6.4 6.5 2.4 9.2 2.6
破断強度 (MPa) 18.3 18.5 18.7 17.2 21.8 19.3 20.8
破断時伸び (%) 200 200 210 180 240 140 240
圧縮永久歪
300℃、70hrs (%) 20 19 21 21 18 46 19
315℃、70hrs (%) 26 30 34 28 60 68 55
プラズマ試験
重量減少率 (%) 40 39 40 42 48 35 52
粘着性試験
SUS板 (N) 92 95 97 94 127 88 130
Al板 (N) 101 98 99 105 107 101 118
シリカガラス板 (N) 62 60 65 61 91 55 90
シリコン板 (N) 32 35 38 36 62 30 80

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)テトラフルオロエチレン72.8〜74.0モル%、(B)パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)26.8〜24.0モル%および(C)パーフルオロ不飽和ニトリル化合物0.2〜3.0モル%よりなる共重合組成を有し、ムーニー粘度ML1+10(121℃)が70〜115である含フッ素エラストマー。
【請求項2】
請求項1記載の含フッ素エラストマー100重量部当り0.2〜5重量部のビスアミドキシム化合物を配合してなる含フッ素エラストマー組成物。
【請求項3】
請求項2記載の含フッ素エラストマー組成物を加硫成形して得られたシール材。
【請求項4】
プラズマ照射用途に用いられる請求項3記載のシール材。
【請求項5】
半導体製造装置用として用いられる請求項4記載のシール材。
【請求項6】
シリコンウェハーの表面処理加工室用として用いられる請求項5記載のシール材。
【請求項7】
無機充填剤を含有していない請求項4、5または6記載のシール材。
【請求項8】
ゲートバルブ用途に用いられる請求項4記載のシール材。

【公開番号】特開2009−161662(P2009−161662A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−997(P2008−997)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】