説明

含フッ素化合物、含フッ素界面活性剤およびその組成物

【課題】PFOS・PFOA問題の要因となる鎖長8以上のパーフルオロアルキル基を有さず環境負荷の低いフッ素系材料を用いるにも関わらず、優れたぬれ性、レベリング性を与えることが出来る含フッ素化合物、含フッ素界面活性剤およびその組成物、水性樹脂エマルジョン、およびフロアポリッシュ組成物の提供。
【解決手段】下式(1)で表される含フッ素化合物。
Rf−C2p−CH(OH)−C2q−S−C2r−(O)n−SOM (1)
式中の記号は以下の意味を示す。
Rf:炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基。
p、qおよびr:相互に独立して、1〜6の整数。
M:陽イオン性の原子または原子団。
n:0または1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素化合物、含フッ素界面活性剤およびその組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は組成物として配合することにより、界面に集まることで表面張力を低下させ、これにより、その組成物の塗り広げ易さ、浸透性を向上させることができる。
従来、フッ素系界面活性剤の表面張力低下能力は、対応構造の炭化水素系界面活性剤あるいはシリコーン系界面活性剤よりも優れていることが知られている。このため、フッ素系界面活性剤は、広範な分野で使用されてきた(特許文献1〜3等参照)。
【0003】
フッ素系界面活性剤としてはパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、パーフルオロオクタン酸(PFOA)またはそれらをベースとしたフッ素系界面活性剤が広く使用されている。PFOSはパーフルオロアルキル基にスルホニル基が直結した構造であり、PFOAはパーフルオロアルキル基にカルボキシ基が直結した構造である。従来はその性能の高さから、鎖長が8以上のパーフルオロアルキル基を有するものが好んで使用されている。
【0004】
しかし、PFOSおよびPFOAは極めて分解されにくく、また生物蓄積性も高いことから、近年は地球規模での環境汚染が懸念されている。このPFOS・PFOA問題では、鎖長が8以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物が問題とされ、各国で法規制や各企業で自主規制の動きがあり、鎖長が8以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物の入手及び使用が困難になりつつある。
【0005】
PFOS・PFOA問題の解決方法としては、フッ素系界面活性剤として鎖長が8よりも短いパーフルオロアルキル基を有する化合物を用いる方法が挙げられる。しかし、鎖長が8以上のパーフルオロアルキル基が好んで使われていた理由はレベリング性、ぬれ性向上の能力が高いためであり、パーフルオロアルキル基の鎖長が短いと著しくぬれ性、レベリング性が低くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−310789号公報
【特許文献2】特開2002−90937号公報
【特許文献3】特開平07−173034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、PFOS・PFOA問題の要因となる鎖長8以上のパーフルオロアルキル基を有さず環境負荷の低いフッ素系材料を用いるにも関わらず、とくにエマルジョンに対して高い優れたレベリング性、ぬれ性向上の能力を示す含フッ素化合物、含フッ素界面活性剤およびその組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下式(1)で表される含フッ素化合物を提供する。
Rf−C2p−CH(OH)−C2q−S−C2r−(O)n−SOM (1)
式中の記号は以下の意味を示す。
Rf:炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基。
p、qおよびr:相互に独立して、1〜6の整数。
M:陽イオン性の原子または原子団。
n:0または1。
【0009】
また、本発明は、前記式(1)で表される化合物からなる含フッ素界面活性剤を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記含フッ素界面活性剤と、水系媒体とを含有する界面活性剤組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記含フッ素界面活性剤を含有する樹脂エマルジョンを提供する。
【0012】
また、本発明は、前記含フッ素界面活性剤を含有するフロアポリッシュ組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低い濃度においても十分なぬれ性、レベリング性を特に樹脂エマルジョンに与えることが出来る新規含フッ素化合物が提供される。また、本発明の含フッ素界面活性剤および界面活性剤組成物も、各種液体に添加することにより、該液体のレベリング性を向上させることができる。また、本発明の樹脂エマルジョンはレベリング性が良好である。また、本発明のフロアポリッシュ組成物は、レベリング性に優れ、床等の被処理物が優れた外観を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)とも記す。他の式で示される化合物についても同様に記す。また、本明細書において%で表示されるものは、特にことわりの無い限り質量%を表す。
【0015】
本発明の化合物(1)において、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である。パーフルオロアルキル基は直鎖状でも分岐状でも構わないが直鎖状が好ましい。合成の容易さや表面張力低下能力が良好であることから、Rfとしては、炭素数4〜6の直鎖のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数4または6の直鎖のパーフルオロアルキル基がより好ましく、炭素数6の直鎖のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0016】
本発明の化合物(1)において、p、qおよびrは1〜6の整数である。p、qおよびrの炭素数で決定する各アルキレン基は直鎖状でも分岐状でも構わないが直鎖状が好ましい。中でも、炭素数1〜3の直鎖のアルキレン基が好ましく、とりわけpおよびqは1、すなわち−C2p−および−C2q−はメチレン、rは2〜3、すなわち−C2r−はエチレンまたはプロピレンが好ましい。
【0017】
本発明の化合物(1)において、Mは陽イオン性の原子もしくは原子団である。これらの原子および原子団としては、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属または含窒素塩基性基が挙げられる。合成の反応後に副生成物が少ないことや、溶媒への溶解のしやすさから、Mとしてはアルカリ金属と三級アミンが好ましく、Na、K、Liおよびトリエチルアミンが特に好ましい。
【0018】
本発明の化合物(1)において、nは0または1である。化合物(1)の、熱やアルカリに対する安定性などを考慮するとnは0が好ましい。
【0019】
本発明の化合物(1)として特に好ましいものは以下のとおりである。
13−CHCH(OH)CHS(CHSOLi
13−CHCH(OH)CHS(CHSONa
13−CHCH(OH)CHS(CHSO
13−CHCH(OH)CHS(CHSOH (C)
−CHCH(OH)CHS(CHSOLi
−CHCH(OH)CHS(CHSONa
−CHCH(OH)CHS(CHSO
−CHCH(OH)CHS(CHSOH(C)
【0020】
13−CHCH(OH)CHS(CHOSOLi
13−CHCH(OH)CHS(CHOSONa
13−CHCH(OH)CHS(CHOSO
13−CHCH(OH)CHS(CHOSOH(C)
−CHCH(OH)CHS(CHOSOLi
−CHCH(OH)CHS(CHOSONa
−CHCH(OH)CHS(CHOSO
−CHCH(OH)CHS(CHOSOH(C)
(式中のmは2〜3の整数である)
【0021】
本発明の化合物(1)は、特にその製法について限定されるものではなく、目的に応じて公知の有機化学反応、公知の設備を適用して製造することができる。
【0022】
本発明の化合物(1)の製造例としては、nが0である場合は、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を有するRfエポキシド(2)を塩基性下でメルカプトアルキルスルホン酸(3)と反応させることが挙げられる。メルカプトアルキルスルホン酸(3)としては入手が容易であることから2-メルカプトエタンスルホン酸、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸が好ましい。また、メルカプトアルキルスルホン酸の代わりに、メルカプトアルキルスルホン酸のアルキル金属塩を用いてもよい。
【化1】

(2)
HS−C2r−SOM (3)
式中の記号は、前記と同じ意味を示す。
【0023】
本発明の化合物(1)の製造例としては、nが1である場合は、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を有するRfエポキシド(2)を塩基性下でメルカプトアルキル硫酸エステル(3)と反応させ合成することが挙げられる。また、メルカプトアルキル硫酸エステルの代わりに、メルカプトアルキル硫酸エステルのアルキル金属塩を用いても良い。
HS−C2r−O−SOM (4)
式中の記号は、前記と同じ意味を示す。
【0024】
反応溶媒について特に制限はされないが、溶解性や作業性、コストの面から、水、アルコール系の溶媒の使用が好ましく、特に水、メタノール、エタノール、プロピルアルコールの単独または、2種以上の混合が好ましい。
【0025】
反応の温度については特に制限されないが、0℃〜150℃が好ましく、温度が低いと反応が遅く、温度が高いと副生成物も発生しやすいことから特に50℃〜100℃が好ましい。圧力についても特に制限はなく、大気圧〜1MPaが好ましく、取り扱いの面で特に大気圧が好ましい。
【0026】
反応は前記のとおり塩基性条件下で行われる。塩基としては特に限定されないが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。また、本発明の化合物(1)のMは、合成後に置き換えてもよいが、工程数を少なくすることを考えると、前記アルカリ金属水酸化物等を用いて、塩基に含まれる原子等をそのまま用いることが好ましい
【0027】
本発明の含フッ素界面活性剤は、化合物(1)が1種だけからなるものでもよく、化合物(1)が2種以上からなるものでもよい。具体的には、rが2のものと3のものという組み合わせのように、アルキル部分の鎖長が異なるものの組み合わせが挙げられる。
【0028】
本発明の界面活性剤組成物は、前記本発明の含フッ素界面活性剤と水系媒体のみからなるものでもよく、他の界面活性剤を含有するものでもよい。他の界面活性剤として、フッ素系、シリコーン系あるいは炭化水素系の界面活性剤と併用することができる。その含有比率は目的に応じて適宜設定されうる。
また、本発明の界面活性剤組成物は、化合物(1)を1種だけ含むものであってもよく、2種以上含むものであってもよい。
【0029】
本発明の界面活性剤組成物に用いる水系媒体は、水、水溶性有機溶媒、または水と水溶性有機溶媒を混合したものが挙げられる。水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ターシャリーブタノールといったアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、といったエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−メチルピロリドン等の極性溶媒、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、テトラフルオロプロピルアルコール等の含フッ素溶媒が挙げられる。
【0030】
本発明の界面活性剤組成物中の本発明の含フッ素界面活性剤濃度は、特に限定しないが、10〜70質量%が好ましく、15〜60質量%が特に好ましい。
この範囲であると、本発明の界面活性剤組成物中の溶媒の量が少ないため、適正な量を添加しやすいとともに、輸送時の含フッ素界面活性剤質量当たりの費用が安くなる。
また、この範囲であると、粘度も高くなり過ぎずハンドリング性が良好であり、保管時に析出しにくい。
【0031】
本発明の含フッ素界面活性剤および界面活性剤組成物は、各種液体に添加することにより、該液体のレベリング性を向上させることが出来る。添加量としては、目的、使用条件により適宜設定されるものであるが、実際に使用される状態で化合物(1)を0.0001〜5質量%の量で含むことが好ましい。この濃度は、0.005〜1質量%であることがより好ましい。この範囲内であると、レベリング性を十分に発揮するとともに、主剤の機能性を打ち消しにくい。化合物(1)を2種以上含む場合は、その合計量が前記範囲内であることが好ましい。添加した液体にレベリング性、浸透性、起泡性、洗浄性、乳化性等の機能を付与できる。
また、本発明の界面活性剤組成物は、低濃度でも充分なレベリング性、ぬれ性を発揮できるため、各種用途に好適に用いることができる。本発明の界面活性剤組成物は、ワックス等樹脂エマルジョンのレベリング剤、発泡助剤、洗浄剤、乳化剤、防錆剤、ラテックス安定剤、顔料分散剤、インク・塗料・レジスト等の濡れ性・浸透性改良、硬化性樹脂への撥水撥油性付与、防汚剤、浮遊選鉱剤、平滑剤、脱墨剤などにおいてその効果を発揮するものであり、洗浄、グラビア印刷など、幅広い用途に用いることもできる。
【0032】
本発明の樹脂エマルジョンは、水性樹脂エマルジョンであることが好ましい。また、該水性エマルジョン中に、化合物(1)を0.1質量%以下含むのが好ましく、0.005〜0.05%質量%の範囲がより好ましく、0.008〜0.05質量%の範囲が特に好ましい。前記含有量が0.005質量%以上であれば、レベリング性が発現しやすい。前記含有量が0.1質量%以下であれば、他の構成成分の発現する機能に悪影響を与えにくい。
【0033】
本発明の樹脂エマルジョンに使用される樹脂は水性樹脂エマルジョンに通常用いられる樹脂であれば特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル系、スチレン系、ウレタン系の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独の重合体であってもよく、アクリル−スチレン共重合体等の複数種の組み合わせによる共重合体であってもよい。
【0034】
市販の樹脂エマルジョンとしては、例えば、デュラプラス2、プライマルE−2409、プライマルB−924、デュラプラス3L0、プライマルJP−308(いずれもロームアンドハース社製)、AE−610H、AE−945H、AE−981H(いずれもJSR社製)が挙げられる。
【0035】
また、樹脂としては、アルカリ可溶性樹脂を使用してもよい。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、プライマルB−644、プライマル1531B(いずれもロームアンドハース社製)が挙げられる。
【0036】
本発明のフロアポリッシュ組成物は、前述の本発明の含フッ素界面活性剤を含有する組成物である。
【0037】
本発明のフロアポリッシュ組成物は、樹脂として、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、または、アクリル−スチレン樹脂等の前記樹脂を組み合わせた樹脂が含有されていることが好ましい。また、樹脂として前記樹脂とアルカリ可溶性樹脂が含有され、さらにポリオレフィンワックスが含有されていることがより好ましい。
ポリオレフィンワックスとしては、例えば、ハイテックE−4B、ハイテックE−8000(いずれも東邦化学工業社製)が挙げられる。
なお、本発明のフロアポリッシュ組成物は、前記市販の樹脂エマルジョンに、本発明の含フッ素界面活性剤を添加してもよい。
以下、アクリル樹脂等とアルカリ可溶性樹脂を含む樹脂およびポリオレフィンワックスを合わせて便宜上「成分(P)」という。
【0038】
本発明のフロアポリッシュ組成物(100質量%)中の成分(P)の含有量は、5〜40質量%が好ましく、10〜35質量%がより好ましい。成分(P)の含有量が5質量%以上であれば、耐水性、光沢度といったフロアポリッシュ組成物に求められる機能を発現しやすい。成分(P)の含有量が40質量%以下であれば、床等への塗布が容易になる。
なお、成分(P)の含有量は、固形分を意味する。
【0039】
また、本発明のフロアポリッシュ組成物は、可塑剤、レベリング助剤、防腐剤、消泡剤を含有することが好ましい。
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、2,2,4−トリブチル、1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール モノイソブチレートが挙げられる。中でも、フタル酸系以外のものが好ましい。
レベリング助剤としては、例えば、トリブトキシエチルフォスフェートが挙げられる。
防腐剤としては、例えば、ケーソンCG(ロームアンドハース社製)が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、FS−アンチフォーム013A、FS−アンチフォーム1277(いずれも東レダウコーニング社製)、SE−21、SE−39(旭化成ワッカーシリコーン社製)が挙げられる。
その他、紫外線吸収剤、色素、香料、殺ダニ剤、pH調整剤等が含有されていてもよい。
【0040】
本発明のフロアポリッシュ組成物は、レベリングが向上することから、化合物(1)を0.1質量%以下含むのが好ましく、0.005〜0.05質量%の範囲がより好ましく、0.008〜0.05質量%の範囲が特に好ましい。前記含有量が0.005質量%以上であれば、レベリング性が発現しやすい。前記含有量が0.1質量%以下であれば、他の構成成分の発現する機能に悪影響を与えにくい。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。なお、実施例および比較例中の各化合物の構造を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
[実施例1]化合物(1−1)合成
ガラス製100mlフラスコに、水酸化ナトリウム0.08g、2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(Aldrich社製)8.38g、イオン交換水17.5g、イソプロピルアルコール16.8gを仕込み50℃まで昇温した。そこに化合物(2−1)(ガスクロマトグラフ純度98.1%)を19.2gを二時間かけて滴下後そのままの温度で2時間熟成させ、化合物(1−1)を含む水・イソプロピルアルコール溶液を得た。2時間後のガスクロマトグラフにおける化合物(2−1)の消失率は99.5%であった。生成物の確認のため溶液の一部を110℃で2時間乾燥させて固形物を得、NMR測定を行った。ガスクロマトグラフ分析およびNMRスペクトルデータより、未反応の原料はほとんどなく、大半が目的物である化合物(1−1)になっていることが推定される。
H−NMR(300MHz、溶媒:CDOD、標準物質:ヘキサメチルジシロキサン)、σ(ppm):2.1〜2.6(2H) 2.6〜2.8(2H) 2.9〜3.0(2H) 3.0〜3.1(2H) 4.1〜4.2(1H)
13C−NMR(300MHz、溶媒:CDOD、標準物質:ヘキサメチルジシロキサン)、σ(ppm):28.1 37.2(t) 40.2 52.9 65.6
19F−NMR(300MHz、溶媒:CDOD、標準物質:トリクロロフルオロメタン)、σ(ppm):−80.8(3F) −112.0(2F) −121.2(2F) −122.3(2F) −123.1(2F) −125.8(2F)
【0044】
[実施例2]化合物(1−2)合成
ガラス製100mlフラスコに、水酸化ナトリウム0.08g、3−メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム(Aldrich社製)7.12g、イオン交換水14.2g、イソプロピルアルコール14.2gを仕込み50℃まで昇温した。そこに化合物(2−1(ガスクロマトグラフ純度98.1%)13.8gを二時間かけて滴下後そのままの温度で1時間熟成させ、化合物(1−2)を含む水・イソプロピルアルコール溶液を得た。1時間後のガスクロマトグラフにおける化合物(2−1)の消失率は97.1%であった。生成物の確認のため溶液の一部を110℃で2時間乾燥させて固形物を得、NMR測定を行った。ガスクロマトグラフ分析およびNMRスペクトルデータより、未反応の原料はほとんどなく、大半が目的物である化合物(1−2)になっていることが推定される。
H−NMR(300MHz、溶媒:CDOD、標準物質:ヘキサメチルジシロキサン)、σ(ppm):
13C−NMR(300MHz、溶媒:CDOD、標準物質:ヘキサメチルジシロキサン)、σ(ppm):25.6 32.1 37.3(t) 39.8 51.2 65.7
19F−NMR(300MHz、溶媒:CDOD、標準物質:トリクロロフルオロメタン)、σ(ppm):−80.7(3F) −112.8(2F) −121.2(2F) −122.3(2F) −123.1(2F) −125.8(2F)
【0045】
比較化合物(A)合成
実施例1の水酸化ナトリウム0.08gを25%アンモニア水3.89gに、2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム8.38gを3-メルカプトプロピオン酸5.51gに変え、熟成時間を2時間から15時間に変えた以外は同様に合成を行い、比較化合物(A)を得た。
【0046】
化合物(1−1)、化合物(1−2)および、比較化合物(A)を、それぞれ水に溶かして所定の濃度に調整した水溶液について、自動表面張力計CBVP−A3型(協和界面化学製)を用いて、ウィルヘルミー法にて25℃における静的表面張力を測定した。測定結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
化合物(1−1)、化合物(1−2)および、比較化合物(A)を用いて水性樹脂エマルジョンを用いたフロアポリッシュ組成物を調製し、レベリング性を評価した。評価結果を表3に示した。
[実施例3、4]
表3に示す組成で各成分を混合してフロアポリッシュ組成物を調製した。ただし、化合物(1−1)及び(1−2)については、それぞれ濃度1質量%の水溶液を調製した後、表3に示す量を満たすように混合した。なお、表3中の各成分の量の単位は「質量部」である。
[比較例1、2]
表3に示す組成に変更した以外は、実施例3、4と同様にしてフロアポリッシュ組成物を調製した。
表3で使用した、上記以外の成分は以下のとおりである。
[水系媒体中の水溶性有機溶媒]
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(和光純薬工業社製)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業社製)
[樹脂]
プライマル1531B(商品名、アクリル樹脂エマルジョン、固形分38質量%、ロームアンドハース社製)
デュラプラス2(商品名、アクリル樹脂エマルジョン、固形分38質量%、ロームアンドハース社製)
[その他の成分]
ワックス:ハイテックE−4000(商品名、ポリエチレンワックス、固形分40質量%、東邦化学工業社製)
可塑剤:テキサノール(商品名、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、イーストマンケミカル社製)
助剤(レベリング助剤):トリブトキシエチルフォスフェート(大八化学工業社製)
【0049】
本実施例におけるフロアポリッシュ組成物のレベリング性の評価方法を以下に示す。
[レベリング性の評価]
JIS K−3920に準じてレベリング性試験を行った。なお、塗布用具は絵筆を使用し、床タイルにはホモジニアスビニル床タイル(商品名「MS−5608」、東リ社製)を使用した。また、試験は5℃、湿度60%の条件下で行った。性能評価は下記基準で行った。なお、レベリング性が良好であるフロアポリッシュ組成物は、平滑性が良好で、塗布した床タイルが優れた外観を有する。
◎:塗りスジおよびムラが全く見られなかった。
○:塗りスジおよびムラのどちらかもしくは両方がわずかに確認された。
△:塗りスジおよびムラのどちらかもしくは両方がはっきりと確認された。
なお、比較例2はブランクである。乾燥後に著しいムラが残り、塗膜の凹凸および濡れていない部分が目視ではっきり確認できる状態であった。
【0050】
【表3】

【0051】
表2および表3より、本発明の化合物(1−1)及び(1−2)は類似の構造を持つ化合物(A)と比べて、水溶液の表面張力低下能力が劣るにもかかわらず、意外にも樹脂エマルジョンに添加した際に際立って高いレベリング性を発現できることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で表される含フッ素化合物。
Rf−C2p−CH(OH)−C2q−S−C2r−(O)n−SOM (1)
式中の記号は以下の意味を示す。
Rf:炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基。
p、qおよびr:相互に独立して、1〜6の整数。
M:陽イオン性の原子または原子団。
n:0または1。
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物からなる含フッ素界面活性剤。
【請求項3】
請求項2に記載の含フッ素界面活性剤と、水系媒体とを含有する界面活性剤組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の含フッ素界面活性剤を含有する樹脂エマルジョン。
【請求項5】
請求項2に記載の含フッ素界面活性剤を含有するフロアポリッシュ組成物。

【公開番号】特開2011−144122(P2011−144122A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4954(P2010−4954)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000108030)AGCセイミケミカル株式会社 (130)
【Fターム(参考)】