説明

含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物、それよりなる積層体、及びその積層体からなるホース

【課題】 含フッ素重合体との加硫接着性に優れたクロロスルホン化ポリオレフィン組成物、積層体及びその積層体からなるホースを提供する。
【解決手段】 硫黄含有量が0.05〜0.45重量%であるクロロスルホン化ポリオレフィン100重量部に対して、メルカプトトリアジン化合物を0.2〜5重量部、オニウム塩及び/又はジアザビシクロ環を有する第3級アミン塩を0.3〜10重量部含有する、含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素重合体との加硫接着性に優れる積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物、その組成物と含フッ素重合体との積層体、及びその積層体からなるホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料系ホースの分野では、耐燃料油性,耐燃料油透過性及び耐熱性,耐寒性,耐候性,耐オゾン性が要求されることから、ニトリルゴム等の耐油性に優れたゴムとクロロスルホン化ポリエチレン等の耐熱性,耐寒性,耐候性,耐オゾン性に優れたゴムの積層体が主に適用されてきた。
【0003】
しかしながら、昨今の地球環境保護の観点から大気中に放出される炭化水素の量を低減する動きがあり、燃料系ホースに要求される耐燃料油透過性はいっそう厳しいものとなりつつある。
【0004】
このような状況の中で、燃料系ホースの素材として耐燃料油性及び耐燃料油透過性に極めて優れる含フッ素重合体を適用する動きがあるが、従来のゴム材料に比べて高価格であることから、含フッ素重合体を薄層化し、他種ゴムとの積層体とすることで低コスト化を図る試みが行われている。
【0005】
特に、含フッ素重合体の中で非エラストマー系含フッ素重合体は、エラストマー系含フッ素重合体に比べて耐燃料油性及び耐燃料油透過性に優れることから、燃料系ホースの含フッ素重合体層を薄くすることが可能であり、低コスト化の面からも非エラストマー系含フッ素重合体の適用が注目されている。
【0006】
一方、積層化された燃料系ホースの重要な要求特性として、各層間の接着性が挙げられる。各層間の接着強度が不十分である場合、使用中に層間剥離の危険性が生じ、燃料系ホースとして重大な欠陥となる。特に非エラストマー系含フッ素重合体に関しては、エラストマー系含フッ素重合体のように各種の補強剤や加硫剤等の配合剤を必要としないことから、各層間の接着性は劣ったものとなる。そのため、層状に成形した非エラストマー系含フッ素ポリマーの表面を、金属ナトリウム錯体等によるエッチング処理、スパッタリングによる凹凸処理、或いは減圧プラズマ処理等の処理を施すことによって層状に成形した他種ゴムとの接着強度の向上を図っている。
【0007】
含フッ素重合体と積層化されるゴム種については、耐燃料油性や耐燃料油透過性に優れることは当然であるが、外層に用いられるゴム種は耐熱性、耐候性及び耐オゾン性等も要求され、さらにホースの製造コスト削減のためには、適用するゴムが低価格であることが望ましい。これらの要求物性を満たし、比較的低価格であるゴム種としてクロロスルホン化ポリオレフィンが挙げられる。
【0008】
クロロスルホン化ポリオレフィンと含フッ素重合体の積層体に関し特許文献が報告されている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】特表2001−526972号公報
【特許文献2】特表平09−505006公報 特許文献1には、フッ化ビニリデン含有フルオロポリマーを含む第1の層の硬化性エラストマーを含む第2の層への接着を増大する方法について述べられている。しかしながら、特許請求の範囲に硬化性エラストマーとしてクロロスルホン化ポリエチレンが規定されているが、発明の詳細な説明中に具体的な例示がなく、更に実施例の記載もない。
【0010】
特許文献2には、低膨潤エラストマー、非エラストマー系フルオロポリマーおよびエラストマーの積層体について述べられている。しかしながら、特許文献2は上述したような表面処理(密着性を促進するために処理)された非エラストマー系フルオロポリマーの使用が必要である。ところが、上述の表面処理はホース製造工程を煩雑にし、ホース製品のコスト上昇を招くこととなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような課題を鑑みなされたものであり、含フッ素重合体との加硫接着性に優れた積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物、その組成物と含フッ素重合体との積層体、及びその積層体からなるホースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記した課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のクロロスルホン化ポリオレフィンに特定の加硫系を適用することによって上記課題が解決し得ることを見出し本発明に至ったものである。すなわち、本発明は、硫黄含有量が0.05〜0.45重量%であるクロロスルホン化ポリオレフィン100重量部に対して、メルカプトトリアジン化合物を0.2〜5重量部、オニウム塩及び/又はジアザビシクロ環を有する第3級アミン塩を0.3〜10重量部含有することを特徴とする含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物、その組成物と含フッ素重合体との積層体、及びその積層体からなるホースに関するものである。
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物で用いられるクロロスルホン化ポリオレフィンは、ポリオレフィンを塩素化及びクロロスルホン化したものである。ポリオレフィンは特に限定するものではなく、例えば、ポリエチレンや、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン等のエチレン−α−オレフィン共重合体、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン等が挙げられる。また、これらのポリオレフィンは単独、若しくは2種類以上のブレンド体であっても何等の問題なく使用可能である。なお、適当な加硫物性及び加工性を得るためにはポリエチレンや、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン等のエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0015】
本発明で用いられるクロロスルホン化ポリオレフィンの硫黄含有量は0.05〜0.45重量%である。0.05重量%未満であればクロロスルホン化ポリオレフィンとはいえず、0.45重量%を超えるものについては配合剤の混練中にゲル化が進行し成形加工が不可能となる。配合物の流れ性を考えた場合、0.05〜0.40重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.35重量%である。
【0016】
本発明で用いられるクロロスルホン化ポリオレフィン中の塩素含有量は特に制限するものではないが、含フッ素重合体との加硫接着性を維持するために、15〜50重量%が好ましく、加硫接着性と所望する耐燃料油性、耐熱性、耐候性および加硫物性のバランスを向上させるために、30〜45重量%がさらに好ましい。
【0017】
本発明で用いられるクロロスルホン化ポリオレフィンのムーニー粘度(ML(1+4)100℃)については特に制限するものではないが、加工性及び物性のバランスを考慮した場合10〜150の範囲であることが望ましい。
【0018】
本発明の含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物は、クロロスルホン化ポリオレフィン100重量部に対して、メルカプトトリアジン化合物を0.2〜5重量部、オニウム塩及び/又はジアザビシクロ環を有する第3級アミン塩を0.3〜10重量部含有するものである。
【0019】
本発明で用いられるメルカプトトリアジン化合物は、加硫剤として使用されるものであり、分子内のメルカプト基が2個以上あるものである。例えば、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、6−ジブチルアミノ−2,4−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、6−アニリノ−2,4−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。メルカプトトリアジン化合物の配合量は、クロロスルホン化ポリオレフィン100重量部に対して0.2〜5重量部である。配合量が0.2重量部未満の場合は、加硫物が得られず、一方、5重量部を超えると加硫物の柔軟性が損なわれる。好適な加硫接着性及び加硫物性等を得るためには0.5〜4重量部が好ましい。
【0020】
本発明で用いられるオニウム塩及び/又はジアザビシクロ環を有する第3級アミン塩は、メルカプトトリアジン化合物の効果をより促進するための加硫促進剤として使用されるものである。
【0021】
本発明で用いられるオニウム塩としては、基準結合数より1だけ大きい結合数を有する元素からなる塩であれば特に制限するものではない。オニウム塩としては、例えば、有機アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0022】
本発明で用いられる有機アンモニウム塩は、特に制限するものではなく、例えば、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化トリメチルフェニルアンモニウム、臭化トリメチルベンジルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0023】
本発明で用いられる有機ホスホニウム塩は、特に制限するものではなく、例えば、塩化テトラブチルホスホニウム、臭化テトラブチルホスホニウム、臭化メチルトリフェニルホスホニウム、臭化エチルトリフェニルホスホニウム、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム、臭化4−ブトキシベンジルトリフェニルホスホニウム、塩化アリルトリブチルホスホニウム、臭化2−プロピニルトリフェニルホスホニウム、塩化メトキシプロピルトリブチルホスホニウム、テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらのうち、入手の容易な、テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾール、塩化アリルトリブチルホスホニウムが好適に使用される。
【0024】
これらの有機アンモニウム塩,有機ホスホニウム塩は、単独又は2種類以上の併用も可能である。
【0025】
本発明で用いられるジアザビシクロ環を含む第3級アミン塩は、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5及び6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロ環を含む第3級アミンと炭酸,フェノール類,カルボン酸を含む化合物等の酸性成分からなる塩等が挙げられる。これらのうち、入手の容易さから好ましいのは1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のフェノール類,カルボン酸を含む化合物等の酸性分からなる塩が挙げられる。
【0026】
これらのオニウム塩,ジアザビシクロ環を含む第3級アミン塩は、単独又は2種類以上の併用も可能である。オニウム塩,ジアザビシクロ環を含む第3級アミン塩の配合量は、十分な加硫接着強度、耐熱性、耐オゾン性、圧縮永久歪性を考慮すると、クロロスルホン化ポリオレフィン100重量部に対して0.3〜10重量部である。配合量が0.3重量部未満の場合は、加硫物が得られず、一方、10重量部を超えると加硫物の柔軟性が損なわれる。好適な加硫物性を得るためには、0.5〜7重量部が好ましく、更に好ましくは1〜5重量部である。
【0027】
本発明では、酢酸ナトリウムの3水和物を配合することが加硫接着性向上のために好ましい。酢酸ナトリウムの3水和物の添加量は、十分な接着力、加工性、柔軟性等を考慮するとクロロスルホン化ポリオレフィン100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、好適な加硫接着向上効果を得るためには0.5〜15重量部がさらに好ましい。
【0028】
本発明の含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物には、他に受酸剤、補強剤、充填剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤等が必要に応じて加えられる。受酸剤としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、一酸化鉛や四三酸化鉛等の酸化鉛化合物、三塩基性マレイン酸鉛や二塩基性フタル酸鉛等の有機酸鉛化合物、ハイドロタルサイト類等が挙げられる。補強剤、充填剤としては、例えば、カーボンブラック、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、クレー、タルク等が挙げられる。加工助剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、ポリエチレングリコール、金属石鹸等が使用される。軟化剤、可塑剤としては、例えば、各種オイル、エステル類、塩化パラフィン等が使用される。老化防止剤としては、例えば、フェノール系老化防止剤等が使用できる。
【0029】
本発明にいう含フッ素重合体とは、フッ素原子を有する重合体であり、これには、エラストマー系含フッ素重合体、非エラストマー系含フッ素重合体等がある。エラストマー系含フッ素重合体とは、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体、三フッ化塩化エチレン−フッ化ビニリデン共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。また、非エラストマー系含フッ素重合体とは、例えば、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、三フッ化塩化エチレン重合体、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、フッ化ビニル重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(例えば、DYNEON社製、THV(商品名))等が挙げられる。これらのなかでは、薄層化が可能であり、低コスト化の面からも非エラストマー系含フッ素重合体が好ましい。
【0030】
含フッ素重合体のうち、当該クロロスルホン化ポリオレフィン組成物との強固な加硫接着性を達成するために、さらには、金属ナトリウム錯体等によるエッチング処理、スパッタリングによる凹凸処理、又は減圧プラズマ処理等の表面処理を施すことなしに、当該クロロスルホン化ポリオレフィン組成物との強固な加硫接着性を達成するためには、フッ化ビニリデン構造を有するものが好ましい。フッ化ビニリデン構造を有するものとしては、例えば、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(例えば、DYNEON社製、THV(商品名))等が挙げられる。これらのうち、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(例えば、DYNEON社製、THV(商品名))が好ましい。
【0031】
また、これらの含フッ素重合体には、必要に応じて受酸剤、補強剤、充填剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等の配合剤を添加することも可能である。
【0032】
本発明における積層体は、本発明のクロロスルホン化ポリオレフィン組成物と含フッ素重合体からなる積層体であり、フィルム状、シート状、ホース状、チューブ状等のものが挙げられる。本発明の積層体は、例えば、本発明のクロロスルホン化ポリオレフィン組成物をプレス成形等によりフィルムやシート等にしたものと、含フッ素重合体をプレス成形等によりフィルムやシート等にしたものとを重ね合わせて、プレス加硫、スチーム加硫、電子線加硫等の通常の加硫方法によって加硫することで得られる。また、本発明のクロロスルホン化ポリオレフィン組成物と含フッ素重合体を押し出し装置により筒状に積層したものをプレス加硫、スチーム加硫、電子線加硫等の通常の加硫方法によって加硫することによっても得られる。さらに、シートやフィルムにしたクロロスルホン化ポリオレフィン組成物と、フィルムやシート状にした含フッ素重合体を円筒状に巻き付け積層したものをプレス加硫、スチーム加硫、電子線加硫等の通常の加硫方法によって加硫することによっても得られる。
【0033】
本発明の積層体は、更に補強繊維を重ね合わせた構造とすることも可能である。
【0034】
このようにして得られた積層体は、ホース、シート等として使用される。特に、自動車用燃料系ホース等として好適である。
【発明の効果】
【0035】
以上のように本発明により、含フッ素重合体との加硫接着性に優れたクロロスルホン化ポリオレフィン組成物が得られるのは明らかであり、自動車用燃料系ホース等に好ましく適用できる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0037】
なお、これらの実施例で用いた値、及び試験結果は以下の測定法に準拠したものである。
<接着性試験>
エラストマー組成物と含フッ素重合体よりなる積層体の接着性試験は、未加硫エラストマーを厚さ2mmに成形したものと非エラストマー系含フッ素重合体を厚さ0.5mmに成形したものとを密着させ、所定の条件にて加硫接着し、23℃で24時間放置した。その後、幅1インチ、長さ150mmの短冊状に打ち抜き、接着性試験の試験片を作成した。剥離強度は、得られた試験片を、引張り試験機を用い、50mm/minの剥離速度で剥離することによって測定した。
<加硫物の硬さ>
表1の配合処方に従い混練した後、所定の温度時間でスチーム加硫した。この試料を,JIS K6253(1997年度版)に従い測定した。
<加硫物の引張り物性>
表1の配合処方に従い混練した後、所定の温度時間でスチーム加硫した。この試料を、JIS K6251(1993年度版)に従いダンベル状3号型の試験片を用い、引張り速度500mm/分にて評価した(破断強度,破断伸び,100%応力)。
【0038】
実施例1
クロロスルホン化ポリオレフィンとしてクロロスルホン化ポリエチレン1を用い、表1に示した配合処方に従って8インチオープンロールにより混練し、未加硫コンパウンドシートを厚さ2mmに成形した。この未加硫コンパウンドシート及び非エラストマー系含フッ素重合体としてテトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(DYNEON社製、THV−500G)を厚さ0.5mmに成形したものをクロロスルホン化ポリオレフィン未加硫シートと密着させた積層シートを、スチーム加硫釜を用い160℃で40分間処理することにより、加硫物性評価及び加硫接着試験を行った。その結果、十分な加硫物性が得られ、接着強度5.0kg/inch,剥離状態がゴム破壊を示し、優れた加硫接着性を示した。試験結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

実施例2
クロロスルホン化ポリオレフィンとしてクロロスルホン化ポリエチレン2を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて160℃で40分間処理することにより、加硫物性評価及び加硫接着試験を行った。その結果、十分な加硫物性が得られ、接着強度4.1kg/inch,剥離状態がゴム破壊を示し、優れた加硫接着性を示した。試験結果を表1に示す。
【0040】
実施例3
DBUのフェノール塩2.5重量部の代わりに、ジアザビシクロ環を有する第3級アミン塩としてDBUのぎ酸塩を2重量部添加した以外は、実施例1と同様の方法にて160℃で40分間処理することにより、加硫物性評価及び加硫接着試験を行った。その結果、十分な加硫物性が得られ、接着強度5.8kg/inch,剥離状態がゴム破壊を示し、優れた加硫接着性を示した。試験結果を表1に示す。
【0041】
実施例4
DBUのフェノール塩2.5重量部の代わりに、オニウム塩(有機ホスホニウム塩)としてZeonetPB(商品名)を2重量部添加した以外は、実施例1と同様の方法にて160℃で40分間処理することにより、加硫物性評価及び加硫接着試験を行った。その結果、十分な加硫物性が得られ、接着強度4.6kg/inch,剥離状態がゴム破壊を示し、優れた加硫接着性を示した。試験結果を表1に示す。
【0042】
実施例5
DBUのフェノール塩2.5重量部の代わりに、ジアザビシクロ環を有する第3級アミン塩としてDBUのフェノール塩を1.5重量部、オニウム塩(有機ホスホニウム塩)としてZeonetPB(商品名)を1重量部添加した以外は、実施例1と同様の方法にて160℃で40分間処理することにより、加硫物性評価及び加硫接着試験を行った。その結果、十分な加硫物性が得られ、接着強度5.2kg/inch,剥離状態がゴム破壊を示し、優れた加硫接着性を示した。試験結果を表1に示す。
【0043】
実施例6
実施例1の塩素化ポリオレフィン組成物からなる層(3mm厚みの未加硫コンパウンドシート)と、以下の配合のフッ素ゴム組成物からなる層(3mm厚みの未加硫コンパウンドシート)を密着させ、プレス加硫装置を用い、160℃で40分間処理することにより加硫接着し、積層体を得た。実施例1と同様の方法にて接着性試験を行った。その結果、加硫接着強度は9.5kg/inch,剥離状態がゴム破壊を示し、優れた加硫接着性を示した。試験結果を表1に示す。
【0044】
フッ素ゴム(*1) : 100重量部
酸化マグネシウム : 5重量部
水酸化カルシウム : 2.6重量部
カーボンMT : 20重量部
Zisnet DB(*2) : 2重量部
ダイナマー FX−5166 : 5重量部
(*1)テクノフロン TN50S (日本ゼオン社製)
(*2)6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−
ジチオール(日本ゼオン社製)
実施例7
実施例2の塩素化ポリオレフィン組成物からなる層(3mm厚みの未加硫コンパウンドシート)と、実施例6記載のフッ素ゴム組成物からなる層(3mm厚みの未加硫コンパウンドシート)を密着させ、プレス加硫装置を用い、160℃で40分間処理することにより加硫接着し、積層体を得た。実施例1と同様の方法にて接着性試験を行った。その結果、加硫接着強度は8.8kg/inch,剥離状態がゴム破壊を示し、優れた加硫接着性を示した。試験結果を表1に示す。
【0045】
比較例1
クロロスルホン化ポリオレフィンとしてクロロスルホン化ポリエチレン3を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて160℃で40分間処理することにより、加硫物性評価及び加硫接着試験を行った。その結果、十分な加硫物性が得られたが、接着強度1.7kg/inch,剥離状態が界面剥離であり、加硫接着性は非常に劣ったものであった。試験結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

比較例2
DBUのフェノール塩を添加しない以外は、実施例1と同様の方法にて160℃で40分間処理することにより、加硫物性評価及び加硫接着試験を行った。その結果、加硫物が得られず、接着強度0kg/inch,剥離状態が界面剥離であり、加硫接着性を示さなかった。試験結果を表2に示す。
【0047】
比較例3
DBUのフェノール塩の添加量を2.5重量部から15重量部に代えた以外は実施例1と同様な方法で8インチオープンロールにより混練した。その結果混錬中にゲル化が進行し2mm厚のシートに成形することができなかった。そのため加硫物性評価及び加硫接着性評価はできなかった。
【0048】
比較例4
メルカプトトリアジン化合物としてのノクセラーTCA(商品名)を添加しない以外は、実施例1と同様の方法にて160℃で40分間処理することにより、加硫物性評価及び加硫接着試験を行った。その結果、加硫物が得られず、接着強度0kg/inch,剥離状態が界面剥離であり、加硫接着性を示さなかった。試験結果を表2に示す。
【0049】
比較例5
メルカプトトリアジン化合物としてノクセラーTCA(商品名)の添加量を2重量部から10重量部に代えた以外は実施例1と同様な方法で160℃で40分間処理することにより、加硫物性評価及び加硫接着試験を行った。その結果、十分な加硫物性が得られたが、接着強度0kg/inch,剥離状態が界面剥離であり、加硫接着性は非常に劣ったものであった。試験結果を表2に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄含有量が0.05〜0.45重量%であるクロロスルホン化ポリオレフィン100重量部に対して、メルカプトトリアジン化合物を0.2〜5重量部、オニウム塩及び/又はジアザビシクロ環を有する第3級アミン塩を0.3〜10重量部含有することを特徴とする、含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物。
【請求項2】
クロロスルホン化ポリオレフィンが、クロロスルホン化ポリエチレン及び/又はクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1記載の含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物。
【請求項3】
クロロスルホン化ポリオレフィンの塩素含有量が、15〜50重量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物。
【請求項4】
メルカプトトリアジン化合物が、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジンであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物。
【請求項5】
オニウム塩が、有機アンモニウム塩及び/又は有機ホスホニウム塩であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載の含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物。
【請求項6】
有機ホスホニウム塩が、テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾール及び/又は塩化アリルトリブチルホスホニウムであることを特徴とする請求項5に記載の含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物。
【請求項7】
ジアザビシクロ環を有する第3級アミン塩が、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のフェノール類との塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のカルボン酸を含む化合物との塩であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかの項に記載の含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかの項に記載の含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物に、さらに、酢酸ナトリウムの3水和物が0.1〜30重量部含まれていることを特徴とする含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかの項に記載の含フッ素重合体との積層体用クロロスルホン化ポリオレフィン組成物と含フッ素重合体とを重ね合わせ、加硫して得られることを特徴とする含フッ素重合体とクロロスルホン化ポリオレフィン組成物からなる積層体。
【請求項10】
含フッ素重合体が、フッ化ビニリデン構造を含むことを特徴とする請求項9記載の含フッ素重合体とクロロスルホン化ポリオレフィン組成物からなる積層体。
【請求項11】
請求項9又は請求項10記載の含フッ素重合体とクロロスルホン化ポリオレフィン組成物からなる積層体からなることを特徴とするホース。

【公開番号】特開2006−21363(P2006−21363A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199810(P2004−199810)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】