説明

含フッ素重合体の製造方法

【課題】 従来のバッチ反応釜では耐圧釜を用い、重合には数時間〜数十時間必要であった含フッ素重合体を、マイクロリアクターを利用して短い滞留時間で高い生産効率で製造する含フッ素重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 内部に微小管状流路が形成された伝熱性反応容器の該微小管状流路内に、含フッ素ビニル単量体、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体を、含フッ素ビニル単量体が液である状態を保ちながら、液密状態で、且つ、連続的に流通させることができるように、含フッ素ビニル単量体の飽和蒸気圧曲線で予想される圧力以上に該流路の温度と圧力をコントロールしながら、該流路の温度と圧力をコントロールしながら重合反応を行うことを特徴とする含フッ素重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は含フッ素重合体の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明はマイクロリアクターを用いた含フッ素重合体を短時間で効率よく円滑に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油エネルギーの高騰から化学製品の製造方法の抜本的な見直しが迫られてきている。その中で、マイクロリアクターに対する関心が高まってきている。マイクロリアクターは狭い空間で反応を行う装置であり大掛かりな装置の導入も不必要で、投資コスト、製造コストの削減も期待される。また、マイクロリアクターは狭い空間で反応を行うため単位体積あたりの比表面積が大きく、このため反応温度の制御が容易であるという特長を有する。ラジカル重合についても本特長を活かしたマイクロリアクターの利用検討がいくつかなされており、分子量分布の狭いラジカル重合体の製造方法として開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。しかしながら、これらラジカル重合について記した先行文献においてはフッ素モノマーであるクロロトリフルオロエチレンのような液化ガスの取り扱いに関しては何ら記載が無かった。溶剤系フッ素樹脂調製に用いられるフッ素モノマーであるクロロトリフルオロエチレンは液化ガスであるためバッチ反応釜で調製を行う場合は耐圧釜を用いる必要があった。また、重合には数時間〜数十時間必要であった。(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)このため、調製される重合品はクロロトリフルオロエチレンの分解により、酸価が高くなったり、黄色に変化したりする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2005/010055号公報
【特許文献2】特開2006−199767号公報
【特許文献3】特開平4−222848号公報
【特許文献4】特開平9−176245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来のバッチ反応釜では耐圧釜を用い、重合には数時間〜数十時間必要であった含フッ素重合体を、マイクロリアクターを利用して短い滞留時間で高い生産効率で製造する含フッ素重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、内部に微小管状流路が形成された伝熱性反応容器の該微小管状流路内に、含フッ素ビニル単量体、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体を、含フッ素ビニル単量体が液である状態を保ちながら、液密状態で、且つ、連続的に流通させることができるように、該流路の温度と圧力をコントロールしながら重合反応を行うことにより特に生産効率が高くかつ優れた特性を有する含フッ素重合体を製造することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、内部に微小管状流路が形成された伝熱性反応容器の該微小管状流路内に、含フッ素ビニル単量体、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体を、含フッ素ビニル単量体が液である状態を保ちながら、液密状態で、且つ、連続的に流通させることができるように、含フッ素ビニル単量体の飽和蒸気圧曲線で予想される圧力以上に該流路の温度と圧力をコントロールしながら、該流路の温度と圧力をコントロールしながら重合反応を行うことを特徴とする含フッ素重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
従来のバッチ反応釜では耐圧釜を用い、重合には数時間〜数十時間必要であったのを、本発明によれば、生産効率が高くかつ優れた特性を有する含フッ素重合体を製造することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の製造方法に用いる化学反応デバイスの継手部を含めた概略図全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の製造方法に用いる化学反応デバイスの継手部を含めた概略図全体構成を示す水平断面図である。
【図3】図2における2種類のプレート構造を示す分解斜視図である。
【図4】実施例及び比較例で用いた製造装置を模式的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次いで、本発明を実施するにあたり、必要な事項を具体的に述べる。
【0010】
本発明は、内部に微小管状流路が形成された伝熱性反応容器の該微小管状流路内に、含フッ素ビニル単量体、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体を、含フッ素ビニル単量体が液である状態を保ちながら、液密状態で、且つ、連続的に流通させることができるように、該流路の温度と圧力をコントロールしながら重合反応を行うことを特徴とする含フッ素共重合体の製造方法である。
【0011】
本発明において含フッ素重合体は、内部に微小管状流路が形成された伝熱性反応容器の該微小管状流路内に、フルオロオレフィン、フルオロオレフィンと共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体を、フルオロオレフィンが液である状態を保ちながら、液密状態で、且つ、連続的に流通させることができるように、該流路の温度と圧力をコントロールしながら重合反応を行うことにより製造される。
本発明において使用される、上記含フッ素ビニル単量体としては、例えば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンまたはトリフルオロメチル・トリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチル・トリフルオロビニルエーテルもしくはヘプタフルオロプロピル・トリフルオロビニルエーテル等のパーフルオロアルキル・パーフルオロビニルエーテルなどであり、とりわけ、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)またはヘキサフルオロプロピレンの使用が好ましい。
【0012】
これらの含フッ素ビニル単量体は単独でも2種以上の併用であってもよい。該含フッ素ビニル単量体の比率は、15〜70重量%となるように、好ましくは、30〜60重量%となるように管理されるべきである。含フッ素ビニル単量体の比率が15重量%以下では、どうしても、充分なる耐候性が得られなくなるし、一方、この比率が70重量%を超えると、共重合させて得られる含フッ素共重合体の溶剤溶解性が低下する場合がある。
【0013】
該含フッ素ビニル単量体と共重合可能な単量体としては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルエチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、nーオクチルビニルエーテル、2ーエチルヘキシルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテルまたはフェニルエチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルもしくは置換アルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルもしくはメチルシクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル類;または2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4ーヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2ーヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類などであるし、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、C9の分岐脂肪族カルボン酸ビニル、C10の分岐脂肪族カルボン酸ビニル、C11の分岐脂肪族カルボン酸ビニルもしくはステアリン酸ビニル等の脂肪族カルボン酸ビニル類;シクロヘキシルカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルもしくはp−tert−ブチル安息香酸ビニル等の環状構造を有するカルボン酸ビニルエステル類;エチレン、プロピレンもしくはブテン−1等のα−オレフィン類;塩化ビニルもしくは塩化ビニリデン等のフルオロオレフィンを除く各種ハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンもしくはビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートもしくはシクロヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;またはメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートもしくはシクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸エステル類などが挙げられる。
【0014】
さらに、紫外線吸収性を有する単量体としては、たとえば、4−アクリロキシ−ベンゾフェノン、4−メタクリロキシ−ベンゾフェノン、4’−エチル−4−メタクリロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アクリロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロキシエトキシ)−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−エチル−2−メタクリロキシエトキシ)−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4’−エチル−4−(2−メチル−2−アクリロキシエトキシ)−ベンゾフェノン、6’−ヒドロキシ−4−メタクリロキシ−ベンゾフェノン、6’−ヒドロキシ−4−(4−アクリロキシブトキシ)−ベンゾフェノン、6’−ヒドロキシ−4−(2−エチル−3−アクリロキシプロポキシ)−ベンゾフェノンまたは6’−ヒドロキシ−3−メチル−4−(3−ヒドロキシ−4−メタクリロキシブトキシ)−ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0015】
一方、これらの紫外線吸収性を有する単量体と共重合可能なビニル単量体として、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、プロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートもしくはn−オクチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;またはクロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸プロピルもしくはクロトン酸n−ブチル等のクロトン酸エステル類などでり、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、C9の分岐脂肪族カルボン酸ビニル、C10の分岐脂肪族カルボン酸ビニル、C11の分岐脂肪族カルボン酸ビニルもしくはステアリン酸ビニル等の脂肪族カルボン酸ビニル類;シクロヘキシルカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル等の環状構造を有するカルボン酸ビニルエステル類;エチレン、プロピレンもしくはブテン−1等のα−オレフィン類;塩化ビニルもしくは塩化ビニリデン等の、フルオロオレフィンを除く各種ハロゲン化オレフィン類;またはスチレン、α−メチルスチレンもしくはビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物などが挙げられる。
【0016】
上記されたような各種の共重合可能な単量体のほかにも、必要に応じて、シリル基を含有する単量体類、アミノ基を含有する単量体類、あるいは、酸基を含有する単量体などのような各種の反応性極性基含有単量体類の使用が可能である。このような単量体としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシエチルシリルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、メチルジエトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランもしくはγ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等の加水分解性シリル基を含有する単量体があるし、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはN−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のミノ基含有アミド系不飽和単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレートもしくはピペリジニルエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有単量体;または(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸もしくはフマル酸等のカルボキシル基含有単量体などが挙げられる。
【0017】
これらの共重合可能な単量体のうち、重合収率を高めるという点からは、(置換)アルキルビニルエーテル類、シクロアルキルビニルエーテル類またはヒドロキシアルキルビニルエーテル類の少なくとも1種を使用することが特に望ましい。
【0018】
前記した各単量体成分は、ラジカル重合開始剤の存在下で重合される。その際に用いられる上記ラジカル重合開始剤としては、アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシオクトエート、tert−ブチルパーオキシアセテートもしくはtert−ブチルパーオキシピバレート等のパーオキサイド類;またはアゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’アゾビス(2−メチルプロピオネート)もしくはアゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物などが特に代表的なものである。
【0019】
また、重合時に用いられる溶剤としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、オクタンもしくはミネラルスピリット等の炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルもしくはエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル系;またはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンもしくはシクロヘキサノン等のケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドもしくはN−メチルピロリドン等のアミド系などをはじめ、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールもしくはエチレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール系溶剤などが、あるいは、これらの混合物などが特に代表的なものである。
【0020】
かくして調製された含フッ素共重合体のうち水酸基を有するものは、種々の方法で、硬化剤を用いて被膜を形成させることができるのは、勿論である。このような硬化剤としては、種々のものが、いずれも使用可能であり、具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−(ないしは2,6−)ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)もしくは1,3−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート類;4−イソシアナートメチルオクタメチレンジイソシアネート等のトリイソシアネート類;または上掲のジイソシアネート類とエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンもしくは水酸基含有ポリエステル等のポリヒドロキシ化合物とを反応させて得られるポリイソシアネート樹脂類(イソシアネ−トプレポリマ−類)などをはじめ、さらには、上掲のジイソシアネート類と水を反応して得られる、ビュレット結合を有するポリイソシアネート樹脂類;または上掲のジイソシアネート類を環化重合させて得られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート樹脂類;あるいは、メチルエーテル化メチロルメラミン、n−ブチルエーテル化メチロールメラミン、n−ブチルエーテル化ベンゾグアナミン等のアミノ樹脂類などが特に代表的なものであり、そして更に、前記各種のポリイソシアネート類またはポリイソシアネート樹脂類を、アルコール、フェノール、メチルエチルケトオキシムもしくはε−カプロラクタム等の活性水素を有する化合物でブロックして得られるブロックイソシアネート類;またはテトラブトキシエタン、トリブトキシアルミニウムもしくはテトラブトキシジルコニウム等の多価金属アルコキシド類;上掲の多価金属アルコキシドをアセチルアセトンもしくはアセト酢酸エチル等のキレート化剤と反応して得られる多価金属キレート化合物;あるいは、無水トリメリット酸もしくは無水ピロメリット酸等のポリカルボン酸無水物などが特に代表的なものである。そして、このような硬化剤を配合する場合における、その配合量としては、含フッ素共重合体溶液の固形分100重量部に対して、硬化剤成分の1〜100重量部となる範囲内が適切である。硬化剤の量が少ないと、どうしても、充分に硬化した塗膜が得られなくなるし、逆に、硬化剤の量が多すぎると、どうしても、得られる塗膜が脆くなるようになるので、いずれの場合も好ましくない。
【0021】
かくして得られる含フッ素樹脂組成物は、そのまま、クリヤー塗膜として使用することが最も有効であるが、必要に応じて、着色剤を加えて使用することもできるし、さらに必要に応じて、各種の樹脂類や溶剤類をはじめ、流動調整剤、色分かれ防止剤、酸価防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤またはシランカップリング剤などの、種々の各種添化剤を加えることができるのは、無論である。
【0022】
このような着色剤としては、染料、有機顔料、無機顔料または金属顔料などが挙げられる。また、樹脂類としては、アクリル樹脂、含フッ素ビニル樹脂、ニトロセルロースもしくはセルロースアセテートブチレート等の繊維素系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、オイルフリーアルキド樹脂、アルキド樹脂またはエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、自動車上塗り用として、2コートメタリック塗膜形成のためのクリヤー塗料として使用できるし、さらに、自動車補修用、一般建材用、建築外装用、スレート用、瓦用、金属用またはプラスチック用の被覆剤としても使用できる。塗装方法としては、エアースプレー、エアレススプレー、静電スプレー、シャワーコート、ディップ塗装、ハケ刷またはロール塗装などの、従来から一般に行われている方法がそのまま採用できる。また、硬化条件も、前掲の硬化剤などを選択することにより、常温乾燥、130〜150℃で20〜30分間の低温焼付け、或いは、200〜230℃で30〜200秒間の高温短時間焼付けまでの、各種の条件が採用できる。
【0024】
本発明におけるフッ素樹脂は内部に微小管状流路が形成された伝熱性反応容器の該微小管状流路内に、含フッ素ビニル単量体、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体を、含フッ素ビニル単量体が液である状態を保ちながら、液密状態で、且つ、連続的に流通させることができるように、該流路の温度と圧力をコントロールしながら重合反応を行うことにより製造することができる。
本発明の製造方法で用いる流路としては単なる管やパイプ形状のものを反応流路として用いても構わない。また、少なくとも2つの部材を組み合わせて、部材間に形成された空間を反応流路とすることもできる。
含フッ素ビニル単量体が該流路内で液である状態を保ちながら、液密状態で、且つ、連続的に流通させることができるように、該流路の温度と圧力をコントロールしながら重合反応を行うことが好ましく、このことから、含フッ素ビニル単量体の飽和蒸気圧曲線で予想される圧力以上に該流路の温度と圧力をコントロールしながら重合反応を行うことが好ましい。
【0025】
特に、含フッ素ビニル単量体がクロロトリフルオロエチレンであり場合には、その飽和蒸気圧曲線
LOG(P/7500.62)=6.5805−(747.49/(224.59+T))、Pは圧力(MPa)、Tは温度(℃)
で予想される圧力以上に該流路の温度と圧力をコントロールしながら重合反応を行うことが好ましい。
【0026】
このとき、重合温度条件としては使用するラジカル開始剤の種類にもよるが、40℃〜120℃が好ましく、50℃〜100℃がより好ましい。40℃より低いと重合反応が進みにくく、また、120℃より高いと得られるフッ素重合体が着色をおこしたり、ゲル化をおこしたりする場合がある。生産効率が高くかつ優れた特性を有する含フッ素重合体を得るためには40℃〜120℃が好ましい。
【0027】
本発明における、好ましい含フッ素樹脂の製造方法としては、液状態にある含フッ素ビニル単量体と、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体を、マイクロミキサーで混合した後、含フッ素ビニル単量体、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する混合流体を、内部に微小管状流路が形成された伝熱性反応容器の該微小管状流路内に、液密状態で、且つ、連続的に流通させることができるように、該流路の温度と圧力をコントロールしながら重合反応を行うことが好ましい。
【0028】
このためのマイクロミキサーとしては市販されているマイクロミキサーを用いることが可能であり、例えばインターディジタルチャンネル構造体を備えるマイクロリアクター、インスティチュート・フュール・マイクロテクニック・マインツ(IMM)社製シングルミキサーおよびキャタピラーミキサー;ミクログラス社製ミクログラスリアクター;CPCシステムス社製サイトス;山武社製YM−1、YM−2型ミキサー;島津GLC社製ミキシングティーおよびティー(T字コネクタ);マイクロ化学技研社製IMTチップリアクター;東レエンジニアリング開発品マイクロ・ハイ・ミキサー等が挙げられ、いずれも本発明で使用することができる。
【0029】
さらに、好ましい形態のマイクロミキサーシステムとして、ラジカル重合体が通る流路もつプロセスプレートと重合開始剤が通る流路をもつプロセスプレートを上下に積層し、流路出口で該2流体を合一させるマイクロミキサーと、合流後の流体が通る流路をもつマイクロミキサーを組み合わせることが好ましい。
【0030】
上記の形成方法で説明した反応流路は、少なくとも2つの部材を組み合わせて、部材間に形成された空間を反応流路とするものであるが、それ以外にも単なる管やパイプ形状のものを反応流路として用いても構わない。流路を流す流速としては、含フッ素ビニル単量体、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体を含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体の反応容器内でのレイノルズ数を2〜300で連続的にコントロールすることにより、前記含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体の混合性が乱流効果によりさらに高められることにより、さらに効率良く製造することができる。
【0031】
ここで、該流体の流路内の移動をレイノルズ数2より大きい値でコントロールすることにより含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体の混合性が著しく低下せず、その結果、短時間に反応が起こらずに生産効率が悪くなるといった不具合が防止でき、滞留時間が長くならないで反応が終了することから好ましい。また、レイノルズ数300以上にコントロールすることは装置上困難である。
【0032】
尚、本発明でいうレイノルズ数とは下記の式(1)に従って計算されるものである。
【0033】
レイノルズ数=(D×u×ρ)/μ・・・式(1)
ここで、D(流路の内径)、u(平均流速)、ρ(流体密度)、μ(流体粘度)である。
【0034】
本発明の製造方法で用いる反応装置としては、流路が伝熱性反応容器に設置された反応装置が好ましく、前記流路としては、微小管状であるものが加熱の迅速な制御が可能なことから好ましい。微小管状流路としては、流体断面積が0.1〜4.0mmとなる空隙サイズを有する流路が、重合反応温度を制御する上で好ましい。なお、本発明において「断面」とは、流路中の流れ方向に対して垂直方向の断面を意味し、「断面積」はその断面を意味する。
【0035】
流路の、断面形状は、正方形、長方形を含む矩形、台形や平行四辺形、三角形、五角形などを含む多角形状(これらの角が丸められた形状、アスペクト比の高い、すなわちスリット形状を含む)、星形状、半円、楕円状を含む円状などであってもよい。流路の断面形状は一定である必要はない。
【0036】
前記反応流路の形成方法は特に限定されるものではないが、一般的には、表面に溝を有する部材(X)の、溝を有する面に他の部材(Y)が積層、接合等により固着され、部材(X)と部材(Y)との間に空間として形成される。
【0037】
前記流路には、さらに熱交換機能が設けられても良い。その場合には、例えば、部材(X)表面に温調流体が流れるための溝を設け、該温調流体が流れる為の溝を設けた面に他の部材を接着ないし積層するなどの方法により固着すればよい。一般的には、表面に溝を有する部材(X)と温調流体が流れるための溝を設けた部材(Y)とが、溝を設けた面と、他の部材の溝を設けた面と逆側の面とを固着することによって流路を形成し、これら部材(X)と部材(Y)とを複数交互に固着すればよい。
【0038】
この際、部材表面に形成された溝は、その周辺部より低い、いわゆる溝として形成されていても良いし、部材表面に立つ壁の間として形成されていても良い。部材の表面に溝を設ける方法は任意であり、例えば、射出成型、溶剤キャスト法、溶融レプリカ法、切削、エッチング、フォトリソグラフィー(エネルギー線リソグラフィーを含む)、レーザーアブレーションなどの方法を利用できる。
【0039】
部材中の流路のレイアウトは、用途目的に応じて直線、分岐、櫛型、曲線、渦巻き、ジグザグ、その他任意の配置の形をしていてもよい。
【0040】
流路は、その他、例えば、混合場、抽出場、分離場、流量測定部、検出部、貯液槽、膜分離機構、デバイス内外への接続口、絡路、クロマトグラフィーや電気泳動の展開路、バルブ構造の一部(弁の周囲部分)、加圧機構、減圧機構などと接続していてもよい。
【0041】
部材の外形は、特に限定する必要はなく、用途目的に応じた形状を採りうる。部材の形状としては、例えば、プレート状、シート状(フィルム状、リボン状などを含む。)、塗膜状、棒状、チューブ状、その他複雑な形状の成型物などであってよい。厚みなどの外形的寸法は一定であることが好ましい。部材の素材は任意であり、例えば、重合体、ガラス、セラミック、金属、半導体などであって良い。
【0042】
上記のように、本発明の製造方法で用いる反応装置としては、流路が伝熱性反応容器に設置された反応装置が好ましく、オイルバスや水浴等に浸漬されたチューブであっても良い。さらに、流路が形成された伝熱性反応容器からなる反応装置として、表面に複数の溝部が形成された伝熱性プレート状構造体を積層してなる構造を有する反応装置を用いることができる。
【0043】
このような反応装置としては、例えば、化学反応用デバイスとして用いられる部材中に前記流路(以下、単に「微小流路」ということがある)が設けられた装置等が挙げられる。
【0044】
以下、本発明で用いる好ましい形態の流路が設けられてなる化学反応用デバイス1の概略構成例を図1に記載する。
【0045】
前記化学反応用デバイス1は、例えば前記図1において同一の長方形板状からなる第1プレート(前記図1中の2)と第2プレート(前記図1中の3)とが複数交互に積層されて構成されている。各1枚の第1プレートには流路(以下、反応流路という)が設けられている(以下、反応流路が設けられたプレートをプロセスプレートという)。また第2プレートには温調流体用の流路(以下、温調流路という)が設けられている(以下、温調流路が設けられたプレートを温調プレートという)。そして、図2に示すようにそれらの供給口および排出口が、化学反応用デバイス1の端面1b、1c、側面1d、1eの各領域に分散して配置され、それら領域に、含フッ素ビニル単量体、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体と、温調流体を流すためのコネクタ30とジョイント部31とからなる継手部32がそれぞれ連結されている。
【0046】
これらの継手部を介して、含フッ素ビニル単量体、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体が端面1bから供給されて、端面1cに排出され、温調流体が側面1eから供給されて側面1dに排出されるようになっている。
【0047】
化学反応用デバイス1の平面視形状は図示のような長方形とは限定されず、正方形状、または端面1b、1c間よりも側面1d、1e間が長い長方形状としてもよいが、以下では簡単のために図示形状に即して、端面1bから端面1cに向かう方向を、化学反応用デバイス1のプロセスプレートと温調プレートの長手方向と称し、側面1dから側面1eに向かう方向を化学反応用デバイス1のプロセスプレートと温調プレートの短手方向と称することにする。
【0048】
プロセスプレートは、図3に示すように、一方の面2aに断面凹溝形状の流路4をプロセスプレートの長手方向に貫通して延し、短手方向に所定間隔pで複数本配列したものである。流路4の長さをLとする。断面形状は、幅w、深さdとする。
【0049】
流路4の断面形状は、含フッ素ビニル単量体、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体の種類、流量や流路長さLに応じて適宜設定することができるが、断面内の温度分布の均一性を確保するために、幅w、深さdは、それぞれ0.1〜500〔mm〕、0.1〜5〔mm〕の範囲に設定している。なお、幅、深さの記載は図面を参照した場合であって、この値は熱伝面に対して広い値となる様に適宜解釈しうる。特に限定されるものではないが、プレート当たり、例えば1〜1000本、好ましくは10〜100本である。
【0050】
前記、含フッ素ビニル単量体、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体は各流路4内に流され、図1ないし図3に矢印で示すように、一方の端面2b側から供給されて他方の端面2c側へ排出される。
【0051】
温調プレートは、図1に示すように、一方の面3aに断面凹溝形状の温調流路6が所定の間隔だけ離れて設けられている。温調流路6の断面積は、反応流路に対して熱を伝えることができれば特に限定されるものではないが概ね1×10−2〜2.5×10(mm)の範囲である。更に好ましくは0.32〜4.0(mm)である。温調流路6の本数は、熱交換効率を考慮して適宜の本数を採用することができ、特に限定されるものではないが、プレート当たり、例えば1〜1000本、好ましくは10〜100本である。
【0052】
温調流路6は、図1及び図3に示す様に、温調プレートの長手方向に沿って複数本配列された主流路6aと、主流路6aの上流側及び下流側端部でそれぞれ流路4と略直交に配置されて各主流路6aに連通する供給側流路6bおよび排出側流路6cとを備えていてもよい。図1及び図3では供給側流路6bと排出側流路6cは2回直角に屈曲して温調プレートの側面3d、3eからそれぞれ外部に開口している。温調流路6の各流路の本数は、温調流路6の主流路6a部分のみが複数本配列され、供給側流路6bおよび排出側流路6cはそれぞれ1本で構成されている。
【0053】
なお、温調流路6の各主流路6aは、流路4に対して、温調プレートの短手方向において、流路4が分布する範囲を積層方向に重なる範囲に設けられる。
【0054】
そして、好ましくは各主流路6aが、隣り合う2本の流路4、4間に位置するように積層方向に配列し、さらに好ましくは、各主流路6aが各流路4に積層方向に重なるように配列する。
【0055】
各複数のプロセスプレート、温調プレートは、プロセスプレート、温調プレートを同一方向に交互に重ねて積層され、互いに固着、積層されている。
【0056】
そのため、化学反応用デバイス1の形態において、各流路4、温調流路6は、凹溝の開口面が上に積層されるプレートの下面により覆われ、両端が開口する長方形断面のトンネル形状とされる。
【0057】
このような各プロセスプレート、温調プレートは、適宜の金属材料を用いることができるが、例えばステンレス鋼板にエッチング加工を施すことにより流路4、温調流路6などを形成し、流路面を電解研磨仕上げするなどして製作することができる。
【0058】
本発明における含フッ素重合体は例えば図4に記載される製造装置を用い製造することができる。図4において40、50、60は流路が設けられてなる化学反応デバイスを示している。
【0059】
化学反応デバイスは図1に示す構造であり、構造としては、プロセスプレートと温調プレートと交互に積層している。プロセスプレートには流路4が形成されおり、また、温調プレートには温調流路6が形成されている。
【0060】
流路の本数やプレート枚数を変更することが可能であり化学反応デバイス40はドライエッチング加工により反応流路4が21本形成されたプロセスプレート20枚と同じくエッチング加工により温調流路6が21本形成された温調プレート21枚が交互に積層された化学デバイスとして例示される。プロセスプレート2と温調プレート3の材質はSUS304であり、板厚は1mmである。反応流路4と温調流路6の断面寸法はともに幅1.2mm×深さ0.5mmである。
【0061】
また、化学反応デバイス50はドライエッチング加工により反応流路4が5本形成されたプロセスプレート2枚と同じくエッチング加工により温調流路6が5本形成された温調プレート3枚が交互に積層されている。プロセスプレート2と温調プレート3の材質はSUS304であり、板厚は1mmである。反応流路4と温調流路6の断面寸法はともに幅1.2mm×深さ0.5mmである。
【0062】
また、化学反応デバイス60はドライエッチング加工により反応流路4が5本形成されたプロセスプレート4枚と同じくエッチング加工により温調流路6が5本形成された温調プレート5枚が交互に積層されている。プロセスプレート2と温調プレート3の材質はSUS304であり、板厚は1mmである。反応流路4と温調流路6の断面寸法はともに幅1.2mm×深さ0.5mmである。
図4において、含フッ素ビニル単量体(61)を液状態で圧入することが可能なタンク62(第1のタンク)の流出口とプランジャーポンプ65の流入口とが、液状態にある含フッ素ビニル単量体が通る配管を介して接続されており、また、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体を入れるタンク64(第1のタンク)の流出口とプランジャーポンプ66の流入口とが、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体(63)が通る配管を介して接続されている。プランジャーポンプ65の流出口及びプランジャーポンプ66の流出口からは、それぞれプランジャーポンプ65またはプランジャーポンプ66を通してマイクロミキサー67の流入口に接続されている。
【0063】
このマイクロミキサー67で含フッ素ビニル単量体(61)と含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体(63)とが混合され、含フッ素ビニル単量体、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体が形成される。この流体はミキサー67の流出口に接続された配管を通して、化学反応用デバイス40、又は50、又は60の流入口1bへと移動する。 化学反応用デバイス40、又は50、又は60には温調装置68が接続されている。そして、化学反応用デバイス40、又は50、又は60中の微小流路を移動していくことによりラジカル重合性単量体が重合反応する。化学反応用デバイス40、又は50、又は60中の微小流路を移動し化学反応用デバイス40、又は50、又は60の流出口1cと到達する。その後、流出口に接続された配管を通して冷却用熱交換器69の流入口へと移動する。
【0064】
冷却用熱交換器69の流入口へと移動した重合反応物を含有する流体は冷却用熱交換器69中を移動しながら冷却され、冷却用熱交換器69の流出口へと到達する。流出口に接続された配管を通して冷却用熱交換器69から流体βは排出され、排圧弁71を通して受け容器72へと排出される。
【実施例】
【0065】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に述べる。例中、%、重量は特に断りがない限り重量基準である。
<本実施例で使用した化学反応用デバイス>
本実施例では図1に示す構造の化学反応デバイスを用いた。構造としては、プロセスプレート2と温調プレート3とを交互に積層した。プロセスプレートには流路4が形成されおり、また、温調プレートには温調流路6が形成されている。
【0066】
化学反応デバイスはドライエッチング加工により反応流路4が21本形成されたプロセスプレート6枚と同じくエッチング加工により温調流路6が21本形成された温調プレート7枚が交互に積層されている。プロセスプレート2と温調プレート3の材質はSUS304であり、板厚は1mmである。反応流路4と温調流路6の断面寸法はともに幅1.2mm×深さ0.5mmである。
<分子量の測定方法>
分子量の測定は東ソー株式会社製のGPC装置HLC−8220GPCを用い行った。重合液をTHFに溶解し、4mg/mlの濃度に調整し測定を行った。
<酸価の測定方法>
酸価の測定は得られた重合液をJIS K 0070に準じて測定した。
【0067】
(実施例1)
CTFEと、CTFEと共重合可能である単量体原料、ラジカル重合開始剤、溶剤の混合液を分けて送液を行った。CTFEは滴下層に圧入し、滴下層の出口に、逆止弁、質量流量計、圧力計、減圧弁、圧力計、ニードル弁を介し2.17mmのチューブへ接続を行った。川上の圧力計でCTFE滴下層内の圧力を制御し、減圧弁を介し接続した川下の圧力計で圧をコントロールしながらニードル弁を調節し、CTFEを液のまま送れるようにした。CTFEと共重合可能である単量体原料、ラジカル重合開始剤、溶剤の混合液は出口に逆止弁、質量流量計を介し2.17mmのチューブへ接続したプランジャーポンプを用い送れるようにした。それぞれのチューブを同じく内径2.17mmのT−コネクターで接続した後、さらに図7に示す流路断面積が縮小された流路を介し、2.17mm×30mのチューブに接続した。2.17mm×30mチューブは恒温槽に浸しており、加温できるようにした。最後に、背圧弁を接続し、吐出された反応混合物を受け容器にて受け取ることができるようにした。
CTFEの川上圧力を4.5MPa、川下圧力を3.5MPaにコントロールしCTFEの1.6g/minの流速で送液を行った。プランジャーポンプからはモノマーとして、エチルビニルエーテル/4−ヒドロキシブチルビニルエーテル/4−t−ブチル安息香酸ビニル、開始剤としてP−PV、溶剤としてエチルベンゼンの混合液を3.4g/minの流速で送液を行なった。恒温層の温度は98℃に設定した。蒸気圧曲線から計算される飽和蒸気圧は2.65MPaである。
送液開始から40分後、出口から得られる流体の重量はほぼ5g/minとなっており想定どおりの流速で液が送液されていることが確認された。流速から計算される滞留時間は約23分である。
2.17mm×30mの入口圧力は送液開始から40分後に3.0MPaとなりその後ほぼその圧力で変動がなかった。また、出口圧力は2.5MPaで殆ど変動がなかった。
出口から泡を含んだ粘調で透明な樹脂溶液が得られた。得られた溶液の固形分から反応率94%、酸価0.72、重量平均分子量24,700と滞留時間23分で90%以上の反応率の樹脂溶液が得られ、透明で酸価値が小さいものであった。
【0068】
(実施例2)
CTFEと、CTFEと共重合可能である単量体原料、ラジカル重合開始剤、溶剤の混合液を分けて送液を行った。
CTFEは滴下層に圧入し、滴下層の出口に、逆止弁、質量流量計、圧力計、減圧弁、圧力計、ニードル弁を介し2.17mmのチューブへ接続を行った。川上の圧力計でCTFE滴下層内の圧力を制御し、減圧弁を介し接続した川下の圧力計で圧をコントロールしながらニードル弁を調節し、CTFEを液のまま送れるようにした。
CTFEの川上圧力を4.5MPa、川下圧力を3.5MPaにコントロールしCTFEの3.2g/minの流速で送液を行った。プランジャーポンプからはモノマーとして、エチルビニルエーテル/4−ヒドロキシブチルビニルエーテル/4−t−ブチル安息香酸ビニル、開始剤としてP−PV、溶剤としてエチルベンゼンの混合液を6.8g/minの流速で送液を行なった。恒温層の温度は98℃に設定した。蒸気圧曲線から計算される飽和蒸気圧は2.65MPaである。
送液開始から25分後、出口から得られる流体の重量はほぼ10g/minとなっており想定どおりの流速で液が送液されていることが確認された。流速から計算される滞留時間は約11.5分である。
2.17mm×30mの入口圧力は送液開始から40分後に2.7MPaとなりその後ほぼその圧力で変動がなかった。また、出口圧力は2.2MPaで殆ど変動がなかった。
出口から泡を含んで粘調で透明な樹脂溶液が得られた。得られた溶液の固形分から反応率91%、酸価1.1、重量平均分子量24,500と滞留時間11.5分で90%以上の反応率の樹脂溶液が得られ、透明で酸価値が小さいものであった。
【0069】
比較例1
実施例2と同一の条件で単量体原料、ラジカル重合開始剤、溶剤の混合液を分けて送液を行い、反応経過50分から、背圧弁を調整し、圧力を2.2MPaから1.5MPaに下げ、CTFEをガス化させた。その際、入口圧力も2.7MPaから2.2MPaに低下した。なお、CTFEがガス化したことは、出口からの泡の量が急に多くなったことから確認した。
出口から得られる樹脂溶液はやや黄色く変色しており、反応率76%、酸価値1.8、重量平均分子量14,960であった。反応が充分に進まず、酸価値が高く、黄色く着色していることがわかった。
【0070】
比較例2
窒素で充分に置換された1リットルのステンレス製オートクレーブに、第2表に示されるような含フッ素ビニル単量体以外の単量体類と、溶剤と、さらに重合開始剤として、単量体総量に対して2%のtert−ブチルパーオキシピバレートと、0.5%のtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートとを仕込んだ。次いで、実施例3および4に対しては、重合時におけるゲル化防止剤として、単量体総量に対して1%のビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートを仕込んだ。しかるのち、液化採取した含フッ素ビニル単量体を圧入し、攪拌しながら、70℃に15時間保持して重合反応を行わせてから、80℃に昇温し、同温度に4時間保持して反応を続行せしめて、目的とする含フッ素共重合体の溶液を得た。得られた樹脂溶液はやや黄色く変色しており、反応率96%、酸化値1.5、重量平均分子量11,175であった。酸化値が高く、黄色く着色していることがわかった。
【符号の説明】
【0071】
α・・・・・ラジカル重合開始剤とラジカル重合性単量体とを含有する流体とを含有する流体
β・・・・・ラジカル重合開始剤とラジカル重合性単量体とを含有する流体の反応物を含有する流体
γ・・・・・温調流体
1・・・・・化学反応用デバイス
1b・・・・化学反応用デバイスの端面
1c・・・・化学反応用デバイスの端面
1d・・・・化学反応用デバイスの側面
1e・・・・化学反応用デバイスの側面
2・・・・・第1プレート(プロセスプレート)
2a・・・・第1プレートの面
2b・・・・第1プレートの端面
2c・・・・第1プレートの端面
2d・・・・第1プレートの側面
2e・・・・第1プレートの側面
3・・・・・第2プレート(温調プレート)
3a・・・・第2プレートの面
3b・・・・第2プレートの端面
3c・・・・第2プレートの端面
3d・・・・第2プレートの側面
3e・・・・第2プレートの側面
4・・・・・断面凹溝形状の流路
6・・・・・断面凹溝形状の温調流路
6a・・・・断面凹溝形状の主流路
6b・・・・断面凹溝形状の供給側流路
6c・・・・断面凹溝形状の排出側流路
p0・・・・所定間隔
w0・・・・・幅
d0・・・・・深さ
L・・・・・・流路長さ
30・・・・・コネクタ
31・・・・・ジョイント部
32・・・・・継手部
40・・・・・化学反応デバイス
50・・・・・化学反応デバイス
60・・・・・化学反応デバイス
80・・・・・製造装置
61・・・・・化合物(A)
62・・・・・第1のタンク
63・・・・・化合物(B)
64・・・・・第2のタンク
65・・・・・プランジャーポンプ
66・・・・・プランジャーポンプ
67・・・・・ミキサー
68・・・・・温調装置
69・・・・・冷却用熱交換器
70・・・・・温調装置
71・・・・・排圧弁
72・・・・・受け容器
80・・・・・実施例及び比較例で用いた樹脂の製造装置を模式的に示す概略構成図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に微小管状流路が形成された伝熱性反応容器の該微小管状流路内に、含フッ素ビニル単量体、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体を、含フッ素ビニル単量体が液である状態を保ちながら、液密状態で、且つ、連続的に流通させることができるように、該流路の温度と圧力をコントロールしながら重合反応を行うことを特徴とする含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項2】
内部に微小管状流路が形成された伝熱性反応容器の該微小管状流路内に、含フッ素ビニル単量体が液である状態を保ちながら、液密状態で、且つ、連続的に流通させることができるように、含フッ素ビニル単量体の飽和蒸気圧曲線で予想される圧力以上に該流路の温度と圧力をコントロールしながら重合反応を行うことを特徴とする請求項1記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項3】
含フッ素ビニル単量体がクロロトリフルオロエチレンであり、その飽和蒸気圧曲線がLOG(P/7500.62)=6.5805−(747.49/(224.59+T))、Pは圧力(MPa)、Tは温度(℃)であることを特徴とする請求項1または2記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項4】
重合反応を、流路が伝熱性反応容器に設置された反応装置を用いて行う請求項1〜3のいずれか1つに記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記伝熱性反応容器が、表面に複数の溝部が形成された伝熱性プレート状構造体を積層してなる構造を有するものである請求項1〜4のいずれか1つに記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記伝熱性反応容器に設置された反応装置中の流路が、液密状態で流通する流体断面積が0.1〜4.0mmとなる空隙サイズを有するものである請求項1〜5のいずれか1つに記載の含フッ素共重合体の製造方法
【請求項7】
液状態にある含フッ素ビニル単量体と、含フッ素ビニル単量体と共重合可能である単量体、ラジカル重合開始剤とを含有する流体を、2液が流路出口で混合可能な構造を有する内部に微小管状流路が形成されたマイクロミキサーを用い混合した後、重合反応を行うことを特徴とする請求項1記載の含フッ素共重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246388(P2012−246388A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119082(P2011−119082)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】