説明

含フッ素重合体及びその製造方法、樹脂組成物並びに光ファイバー

【課題】高Tg及び高い透明性を有し、吸湿性が低い、新規含フッ素重合体及びその製造方法、該重合体を含む樹脂組成物並びに光ファイバーを提供する。
【解決手段】式(a)で表わされる化合物と式(b)で表わされる化合物とを重合させて得られる式(1a)で表わされる含フッ素重合体、該重合体を含む樹脂組成物並びに重合体を含む樹脂組成物からなる光ファイバー。


(式中、Rは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素重合体及びその製造方法、樹脂組成物並びに光ファイバーに関し、より詳細には、光ファイバーなどの光学製品に最適に利用できる新規含フッ素重合体及びその製造方法、該重合体を含む樹脂組成物並びに光ファイバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略すことがある)などのメタクリル系樹脂を主成分とした光学用プラスチックが知られている。このようなPMMA樹脂組成物は、軽量で、加工性がよく、低コストで製造可能であるという種々の長所を有する。
しかし、PMMAのガラス転移温度(Tg)が105℃程度であるため、例えば、自動車のエンジンルーム内などの120℃程度が必要、つまり、高い耐熱性が必要とされる環境ではPMMAは使用できない。
また、PMMAを用いた光ファイバーでは、高速通信性能を付与する目的で、ドーパントと呼ばれる高屈折率低分子を添加して、屈折率分布型(GI型)光ファイバーとすることがあるが、このような高屈折率低分子を添加することにより、PMMAのTgがさらに低下する。従って、100℃程度のTgが要求される各種センサー、家電製品内部でのリンク用途などへも使用できない。
【0003】
このようなことから、PMMA系GI型光ファイバーは、耐熱性の観点からは、住宅内高速ネットワーク用途としては使用することができるかもしれない。
しかし、このような用途では、光源の種類、光源の素材自体の耐熱性、使用環境温度での寿命等を考慮して、光源波長が660〜680nm程度に限られるが、この波長領域は、長波長になるにつれて、伝送損失がおよそ200〜330dB/km(特許文献1参照)と、損失が急峻に大きくなる波長領域である。従って、吸湿による損失悪化を考慮すると、PMMA系GI型光ファイバーは、宅内用途として要求される通信距離30m以上、とりわけ50m以上では、使用することができない。
【0004】
それに対して、高Tgのポリマーを構成するモノマーとの共重合体、透明性に優れるポリマーを構成するモノマー、例えば、分子中の水素原子がフッ素や重水素に置換されたモノマーとの共重合体を用いることが提案されている。
例えば、N置換イソプロピルマレイミド(以下「iPrMID」と略す)とメチルメタクリレート(以下「MMA」と略す場合がある)との共重合体をコア部材とした光ファイバーでは、660nmの波長で伝送損失が300dB/km以下であり、透明性を有し、かつ、125℃の雰囲気で1000時間さらしても、透過光量の低下がほとんど認められないことが報告されている(非特許文献1参照)。
但し、PMMAを主成分とし、N置換イソプロピルマレイミドが数十重量パーセント添加されたドーパント添加型のGI型光ファイバーとした場合、Tgが100℃以下となることが予測される。
【0005】
また、フッ素含有スチレン誘導体とアルキルメタクリレート誘導体との共重合体をコア材とした光ファイバーが、650〜660nmの波長域で50〜100dB/kmの低伝送損失が得られると報告されている(特許文献2参照)。
但し、両モノマーの水素原子置換割合、共重合組成比に関する具体的な記述がないが、その損失値からフッ素含有スチレン誘導体が主成分であるか又はアルキルメタクリレート誘導体の水素原子が重水素又はフッ素に置換されている割合が高いことが容易に推測される。
【0006】
このような状況下、高Tg及び高い透明性を有し、吸湿性が改善されたPMMAを主成分とする光ファイバー用の素材が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3332922号
【特許文献2】特開昭62−113111号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】S. Taneichi, et al., POF‘94 Conference Proceedings, 106(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、高Tg及び高い透明性を有し、吸湿性が低い、新規含フッ素重合体及びその製造方法、該重合体を含む樹脂組成物並びに光ファイバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の含フッ素重合体は、式(1a)で表されることを特徴とする。

(式中、Rは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を表す。)
このような含フッ素重合体では、式(1a)で表される含フッ素重合体が、式(1)で表される重合体であることが好ましい。

【0011】
また、本発明の含フッ素重合体の製造方法は、式(a)で表わされる化合物と式(b)で表わされる化合物とを重合させることを特徴とする。

(式中、Rは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を表す。)
【0012】
本発明の樹脂組成物は、式(1a)で表される含フッ素重合体と、該含フッ素重合体と屈折率の異なる化合物とを含有することを特徴とする。
また、本発明の光ファイバーは、上記樹脂組成物を用いて成形されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は新規な含フッ素重合体であり、優れた透明性、耐熱性、疎水性を有する光学素材が得られる。従って、この新規含フッ素重合体を含む樹脂組成物を用いることにより、優れた特性を有する光ファイバーを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の含フッ素重合体(破線)及び比較例としてのPMMA(実線)の吸水率の経時変化を示すグラフである。
【図2】本発明の含フッ素重合体の透過率の波長依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の含フッ素重合体は、式(1a)で表される。

(式中、Rは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を表す。)
【0016】
Rのフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、フルオロプロピル、ジフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピル、フルオロブチル、ジフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル、2−トリフルオロメチル−テトラフルオロプロピル、フルオロペンチル、フルオロヘキシル等の直鎖又は分岐のアルキル基に、フッ素原子が1以上置換されたフルオロアルキル基が挙げられる。なかでも、窒素原子に結合する炭素原子においては、フッ素原子が置換されておらず、この炭素原子以外の炭素原子に結合する水素原子の1以上(好ましくは全て)がフッ素原子で置換されているものが好ましい。つまり、−CH2xyで表されるフルオロアルキル基であって、x=1〜5、y=5〜11、y≦2x+1(好ましくは、y=2x+1)の関係式を満たすフルオロアルキル基が好ましい。なお、フルオロアルキル基に含まれる水素原子は重水素原子であってもよい。
フルオロフェニル基としては、フェニル基を構成する炭素原子に結合する水素原子の1以上(好ましくは全て)がフッ素原子又は重水素原子(好ましくはフッ素原子)で置換されているものが好ましい。つまり、以下の構造式で示されるフルオロフェニル基が好ましく、以下の構造式においてz+w=5である基がより好ましく、z=5である基がさらに好ましい。

(式中、H*は水素原子又は重水素原子を表し、z=0〜5、w=0〜5、z+w=5を表す。)
【0017】
なかでも、Rは、フルオロフェニル基であることが好ましく、さらに、フェニル基を構成する炭素原子に結合する水素原子の全てがフッ素原子で置換された、以下の式(1)で表される重合体であることがより好ましい。

【0018】
式(1a)で表される含フッ素重合体は、以下のように、式(a)で表される化合物と式(b)で表される化合物とを重合させることにより製造することができる。

(式中、Rは上記と同義である。)
【0019】
この場合の重合方法は、当該分野で公知の方法、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合等の方法が挙げられる。なかでも、異物、不純物の混入を防ぐという観点から、塊状重合法が好ましい。
具体的には、式(a)で表わされる化合物と式(b)で表わされる化合物とを、狙いの耐熱性(Tg)が得られるように、任意の割合で混合/投入し、−10〜150℃程度の温度範囲で、10〜60時間程度の反応時間で重合させることが適している。例えば、耐熱性(Tg)として140程度を得るために、式(a)で表される化合物と式(b)で表される化合物とを、10:90(モル比)程度から略等モル比(好ましくは、略等モル比)程度で混合/投入することが例示される。式(a)で表わされる化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、式(1)で表わされる含フッ素重合体は、通常、PFPMI(パーフルオロフェニルマレイミド)とMMA(メチルメタクリレート)とを重合させることにより製造することができる。
【0020】
式(1a)で表されるフッ素重合体及び式(1)で表される含フッ素重合体は、上述した原料化合物、例えば、式(1)の場合には、PFPMI及びMMA以外に、他のモノマー成分を用いないことが好ましいが、得られる重合体の特性を損なわない範囲で、さらに重合性モノマー等を含有していてもよい。この場合の他の重合性モノマーの含有量は、例えば、重合体を構成する全モノマーに対して、10モル%程度以下とすることが好ましい。
【0021】
重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系化合物として、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ペンタフルオロフェニル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ヘキサフルオロイソプロピル、フルオロアクリル酸ヘキサフルオロイソプロピル等;スチレン系化合物として、α−メチルスチレン、フルオロスチレン、ペンタフルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等;ビニルエステル類として、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等;マレイミド類として、マレイミド、N−メチルマレイミド、N―n−ブチルマレイミド、N―tert−ブチルマレイミド、N―イソプロピルマレイミド、N−フェニルマレイミド等;その他、フマル酸ジシクロヘキシル、アクリロニトリル、9−ビニルカルバゾール、メタクリル酸無水物等;及びこれらモノマーのC−H結合の水素原子が重水素原子又はフッ素原子で置換されたもの等が例示される。
なかでも、重合性モノマーは、その単独重合体の屈折率がPFPMIの単独重合体に近いものが好ましく、例えば、メタクリル酸テトラフルオロフェニル、メタクリル酸ペンタフルオロフェニル、ペンタフルオロスチレンなどがより好ましい。
【0022】
なお、重合体を製造する際、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤等の添加剤を使用することが好ましい。
重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤が挙げられる。例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n−ブチル4,4,ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレートなどのパーオキサイド系化合物;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'―アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2'−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2'−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2'−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3'−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3'−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3'−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3'−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−t−ブチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤を用いる場合には、重合で用いる全モノマー成分100重量部に対して0.01〜2重量部程度が挙げられる。
【0023】
連鎖移動剤としては、特に限定されることなく、公知のものを用いることができる。例えば、アルキルメルカプタン類(n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)等が挙げられる。なかでも、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタンが好適に用いられる。
また、C−H結合の水素原子が重水素原子又はフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いてもよい。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
連鎖移動剤は、通常、成形上及び物性上、重合体を適当な分子量に調整するために用いられる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)「高分子合成の実験法」(大津隆行、木下雅悦共著、化学同人、昭和47年刊)等を参考にして、実験によって求めることができる。よって、連鎖移動定数を考慮して、さらに含有させる重合性モノマー等の種類等に応じて、適宜、その種類及び添加量を調整することが好ましい。例えば、全モノマー成分100重量部に対して0.01〜4重量部程度が挙げられる。
【0025】
式(1a)で表されるフッ素重合体及び式(1)で表される含フッ素重合体では、m及びnの値は、重合する際の開始剤量、連鎖移動剤量を調整することによって、適宜調整することができる。
式(1a)で表されるフッ素重合体及び式(1)で表される含フッ素重合体の分子量は、その使用目的によって適宜調整することができるが、例えば、光学用途に使用する場合には、重量平均分子量は、5万〜50万程度が挙げられる。なお、重量平均分子量は、実施例に示したように、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたポリスチレン換算の値を指す。
【0026】
式(1a)で表される含フッ素重合体及び式(1)で表わされる含フッ素重合体は、種々の用途、特に光学用途に使用するために、樹脂組成物とすることができる。
このような樹脂組成物には、透明性、耐熱性等の性能を損なわない範囲で、必要に応じて、例えば、屈折率調節剤、熱安定化助剤、加工助剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤等の添加剤の1以上を組み合わせることができる。また、樹脂組成物の透明性、耐熱性等の性能を損なわない範囲で、上述した他のモノマー又は他の重合体を樹脂組成物に含有させてもよい。特に、樹脂組成物は、光学用途に用いるために、式(1a)で表される含フッ素重合体及び式(1)で表わされる含フッ素重合体と、この含フッ素重合体と屈折率の異なる化合物、つまり、屈折率調節剤とを含有することが好ましい。
【0027】
屈折率調節剤としては、ジフェニルスルホン及びジフェニルスルホン誘導体(例えば、4,4'−ジクロロジフェニルスルホン、3,3',4,4'−テトラクロロジフェニルスルホン等の塩化ジフェニルスルホン)、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホキシド、ジベンゾチオフェン、ジチアン誘導体等の硫黄化合物;トリフェニルホスフェート、リン酸トリクレジル等のリン酸化合物;安息香酸ベンジル;フタル酸ベンジルn−ブチル;フタル酸ジフェニル;ビフェニル;ジフェニルメタン;トリス−2−エチルヘキシルホスフェート等が挙げられる。
屈折率調節剤は、樹脂組成物の用途等によって、意図する屈折率、用いる屈折率調節剤の種類等によって適宜調整することができ、例えば、重合体100重量部に対して0.1〜25重量部程度とすることができ、これによって、樹脂組成物の屈折率を好適な値に調節することができる。
【0028】
熱安定化助剤及び加工助剤としては、特に限定されず、公知の剤のいずれをも使用することができる。
耐熱向上剤としては、例えば、α−メチルスチレン系、N−フェニルマレイミド系等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、上述した式(1)で表される含フッ素重合体に対して混合してもよいし、含フッ素重合体を構成するモノマーと混合して使用してもよい。混合する方法としては、例えば、ホットブレンド法、コールドブレンド法、溶液混合法等が挙げられる。
【0029】
一般に、共重合体では、重合の初期と後期とで、重合体に含まれるモノマーの成分比が変化する。そのため、各モノマー成分の屈折率が等しくない場合には、得られた重合体は、屈折率の異なる高分子鎖の混合物となり、光を散乱し、透明性に劣るものとなる。
一方、本発明の含フッ素重合体では、PFPMIの単独重合体とMMAの単独重合体との屈折率が、532nmの光源波長において1.4989及び1.4953と非常に近いため、生成する共重合体は、重合の初期と後期とで、ほとんど均一な屈折率を有する。よって、光を散乱することなく、ハロゲン含有により炭素−水素結合が極めて少なく透明性に優れたものとなる。
【0030】
本発明の光ファイバーは、上述した、式(1)で表される含フッ素重合体を含有した樹脂組成物によって形成される。光ファイバーは、通常、コア部及びクラッド部によって構成されており、上述した樹脂組成物は、そのままあるいは他のモノマー又は他の樹脂を含有させるか、上述した添加剤を任意の量で添加することにより、コア部又はクラッド部又はそれらの双方を構成することができる。
【0031】
光ファイバーは、通常、マルチモード光ファイバーと、シングルモード光ファイバーとに分類され、さらにマルチモード光ファイバーは、ステップインデックス(SI)型と屈折率分布を有するグレーデッドインデックス(GI)型とに分類されるが、本発明の光ファイバーは、これらのうちのいずれでもよい。
【0032】
本発明の光ファイバーを製造する方法としては、当該分野で公知の方法を利用することができる。例えば、1層又は2層以上のコア部の外周に1層又は2層以上のクラッド部を形成するために、界面ゲル重合法、回転重合、溶融押出ドーパント拡散法、複合溶融紡糸及びロッドインチューブ法等を利用することができる。また、予めプリフォームを形成し、延伸、線引き等を行ってもよいが、上述した方法によって、直接ファイバーを形成してもよい。
【0033】
具体的には、中空状のクラッド部を作製し、このクラッド部の中空部にコア部を作製する方法が挙げられる。
この場合、コア部を構成するモノマーをクラッド部の中空部に導入し、クラッド部を回転させながら重合体を重合して、クラッド部より高い屈折率を有するコア部を形成する。この操作を1回のみ行って、1層のコア部を形成してもよいし、この操作を繰り返すことにより、複数層からなるコア部を形成してもよい。
【0034】
用いる重合容器は、ガラス、プラスチック又は金属性の円筒管形状の容器(チューブ)で、回転による遠心力などの外力に耐え得る機械的強度及び加熱重合時の耐熱性を有するものが利用できる。
重合時の重合容器の回転速度は、500〜3000rpm程度が例示される。
通常、モノマーをフィルターにより濾過して、モノマー中に含まれる塵埃を除去してから、重合容器内に導入することが好ましい。
さらに、2台以上の溶融押出機と2層以上の多層ダイ及び多層用紡糸ノズルを用いて、コア部及びクラッド部を形成する方法であってもよい。
【0035】
上述した方法等によって光ファイバーのプリフォームを形成した場合、このプリフォームを溶融延伸することにより、プラスチック光ファイバーを作製することができる。延伸は、例えば、プリフォームを、加熱炉等の内部を通過させることによって加熱し、溶融させた後、延伸紡糸する方法が例示される。加熱温度は、プリフォームの材質等に応じて適宜決定することができる。延伸条件(延伸温度等)は、得られたプリフォームの径、所望の光ファイバーの径及び用いた材料等を考慮して、適宜調整することができる。
【0036】
本発明の光ファイバーは、そのままの形態で適用することができる。また、上述したように、その外周を1つ又は複数の樹脂層、繊維層、金属線等の被覆材で被覆することにより及び/又は複数のファイバーを束ねることにより、光ファイバーケーブル等の種々の用途に適用することができる。
【0037】
本発明の樹脂組成物を利用することができる光学用途としては、光導波路等の光伝導性素子類;スチールカメラ用、ビデオカメラ用、望遠鏡用、眼鏡用、プラスチックコンタクトレンズ用、太陽光集光用等のレンズ類、凹面鏡;ポリゴン等の鏡類;ペンタプリズム類等のプリズム類;等の光学部材等が挙げられる。
したがって、このような樹脂組成物は、当該分野で公知の方法によって、シート状、レンズ状、マス状、ファイバー状等の種々の形状に成形することが好ましい。
【0038】
以下、本発明の含フッ素重合体等の実施例を詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
実施例1〜4
環流冷却器、滴下漏斗を備えた三つ口フラスコに、1,4−ジオキサン140mlと無水マレイン酸26.8g(0.273モル)とを入れ、2,3,4,5,6−ペンタフルオロアニリン50.0g(0.273モル)を溶解した、1,4−ジオキサン溶液90mlを滴下漏斗より滴下し、常温下において攪拌した。得られた混合反応溶液を72時間還流させ反応を終了させた。蒸留により130mlの1,4−ジオキサンを取り除き、当量のキシレンを加え、さらに3時間還流した。その後、溶媒の2/3を蒸留によって除去し、常温まで徐冷した。沈殿物を濾別し、これを酢酸250mlに溶解し、窒素バブリングを行いながら30分攪拌した。さらに窒素気流下において15時間還流した。得られた反応溶液を氷水に注ぎ、生成物を得た。エタノール/トリエチルアミン系により再結晶を行い、N−ペンタフルオロフェニルマレイミド(PFPMI)を得た。融点は約100℃であった。
【0039】
上記で得られたPFPMIと、別に減圧蒸留により精製したメチルメタクリレート(MMA)とを種々の割合で混合し、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え、60〜80℃にて24時間重合した。生成物をテトラヒドロフラン/メタノール系で再沈殿し、60℃の真空オーブンで乾燥させることにより、精製された、式(1)で表わされる含フッ素重合体を得た。
【0040】
実施例5〜7
上記と同様の合成手順にて、N−2,3,4テトラフルオロフェニルマレイミド(PTPMI)を得た。PTPMIとMMAとを種々の割合で混合し、上記同様の条件にて重合及び精製を行い、PTPMI−MMA共重合体を得た。
【0041】
比較例
減圧蒸留により精製したメチルメタクリレート(MMA)に、開始剤としてAIBNを加え、60〜80℃にて24時間重合した。生成物をテトラヒドロフラン/メタノール系で再沈殿し、60℃の真空オーブンで乾燥させることにより、精製されたポリメチルメタクリレート(PMMA)を得た。
【0042】
特性評価
実施例及び比較例で得られた重合体の特性を以下の方法で測定した。その結果を、表1、図1及び図2に示す。
数平均分子量:ゲル浸透クロマトグラフィー(Waters510)を使用して測定した。溶出溶媒として液体クロマト用THFを使用した。標準物質として市販の分子量既知のポリスチレンを使用した。
ガラス転移温度(Tg):示差熱分析装置(TA Instrument、5100system)を使用して測定した。測定は昇温速度10℃/minで、窒素気流下で行った。
熱分解温度(Td):示差熱/熱重量同時分析装置(TA Instrument、5100system)を使用して測定した。測定は昇温速度10℃/minで、窒素気流下で行った。
屈折率:532nmの波長光により、アッベの屈折計を使用して測定した。測定に使用した試料は、後述するキャストフィルムである。
【0043】
吸水率測定:30×15×2mmの重合体サンプル(PFPMI−MMA共重合体、PFPMI割合:9.8mol%)を60℃の蒸留水に浸漬し、経時的な重量変化を調べた。比較例として同じ形状のPMMAを用いて、同様に評価した。 透過率測定:テトラヒドロフランを用いて、重合体(PFPMI−MMA共重合体、PFPMI割合:10mol%)のキャストフィルム(厚さ540μm)を作製し、可視紫外分光光度計(Perkin Elmer社製、Lambda800)を使用して、波長300〜900nmの範囲で透過率を測定した。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の含フッ素重合体は、透明性に優れた重合体であり、種々の用途、例えば、高速通信を意図する光ファイバーのコア材の構成要素として有用である。さらに、形状を変化させることにより、光導波路等の光導性素子類、スチールカメラ用、ビデオカメラ用、望遠鏡用、眼鏡用、プラスチックコンタクトレンズ用、太陽光集光用等のレンズ類、凹面鏡、ポリゴン等の鏡類、ペンタプリズム類等のプリズム類等の光学部材として応用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1a)で表される含フッ素重合体。

(式中、Rは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を表す。)
【請求項2】
式(1a)で表される含フッ素重合体が、式(1)で表される重合体である請求項1に記載の含フッ素重合体。

【請求項3】
式(a)で表わされる化合物と式(b)で表わされる化合物とを重合させることを特徴とする式(1a)で表わされる含フッ素重合体の製造方法。

(式中、Rは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を表す。)
【請求項4】
式(1a)で表される含フッ素重合体と、該含フッ素重合体と屈折率の異なる化合物とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4の樹脂組成物を用いて成形された光ファイバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−23688(P2013−23688A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177888(P2011−177888)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】