説明

含フッ素重合性樹脂、活性エネルギー線硬化型塗料組成物及びその硬化物

【課題】塗膜表面に優れた防汚性及び滑り性を付与することができ、フッ素系界面活性剤又はフッ素系表面改質剤として用いることができる含フッ素重合性樹脂、それを用いた活性エネルギー線硬化型組成物及びその硬化物を提供する。
【解決手段】平均分子量が2,500〜10,000であるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有し、その両末端にラジカル重合性不飽和基を有する化合物(A)と、反応性基(b)を有するラジカル重合性不飽和単量体(B)とを必須の単量体成分として共重合させて得られる重合体に、前記官能基(b)と反応性を有する官能基(c)とラジカル重合性不飽和基とを有する化合物(C)を反応させて得られる含フッ素重合性樹脂を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化塗膜表面に優れた防汚性及び滑り性を付与することができ、フッ素系界面活性剤、フッ素系表面改質剤として用いることができる含フッ素重合性樹脂に関する。また、該含フッ素重合性樹脂を用いた活性エネルギー線硬化型塗料組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報表示装置として、フラットパネルディスプレイ(FPD)である液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等が、家庭用テレビ、ノートパソコン、タブレット型コンピュータ、電子書籍端末、携帯電話、自動車用カーナビゲーション、各種装置の操作パネル等に応用されている。しかしながら、これらのFPDは、その表示表面に指紋等の汚れが付着して、表示が見づらくなるという問題があった。特に、肌に触れる頻度が高い携帯電話の表示画面や、自動車用カーナビゲーション、各種装置の操作パネル等の表示装置そのものを操作パネルとしたタッチパネルでは、指紋等の汚れの付着防止、すなわち防汚性が必要となっている。
【0003】
また、タブレット型コンピュータをはじめとする電子端末では、表示画面がタッチパネルとなっており、表示画面上で指をスライドさせて操作するのが一般的となっており、表示画面上で指が滑りやすい滑り性も必要となっている。
【0004】
上記のような、防汚性や滑り性を付与する方法として、フッ素系界面活性剤を含有するコーティング組成物を画面の最表面にコーティングし塗膜を形成する方法が提案されている。しかしながら、フッ素系界面活性剤を単にコーティング組成物に添加しただけでは、経時的に塗膜からフッ素系界面活性剤が脱落し、初期の防汚性及び滑り性が維持できない問題があった。
【0005】
そこで、このような経時的な防汚性及び滑り性の低下を防止するために、フッ素化アルキル基を有するモノアクリレートを、活性水素を有するアクリル系単量体と共重合させ、次いで、得られた重合体にイソシアネート基を有するアクリル系単量体を反応させて得られる不飽和基を有する重合型フッ素系界面活性剤が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この重合型フッ素系界面活性剤は、経時的な防汚性及び滑り性の低下は防止できるが、初期の防汚性及び滑り性が十分でない問題があった。
【0006】
また、上記の重合型含フッ素界面活性剤と同様に、比較的低分子量の(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有し、その両末端にジ(メタ)アクリロイル基を有する化合物を原料として製造したポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖、及び不飽和基を有する重合型含フッ素界面活性剤が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。前記ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有する含フッ素界面活性剤は、特許文献1記載のものより、防汚性及び滑り性は向上するが、より高いレベルでの防汚性及び滑り性の要求を満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−246696号公報
【特許文献2】国際公開WO2009/133770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、塗膜表面に優れた防汚性及び滑り性を付与することができ、フッ素系界面活性剤又はフッ素系表面改質剤として用いることができる含フッ素重合性樹脂を提供することである。また、塗布、硬化させた後に塗膜表面からの前記フッ素系界面活性剤又はその分解物の揮発や脱離を防止することでき、防汚性及び滑り性の表面性能の安定性を向上することのできる活性エネルギー線硬化型塗料組成物及びその硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の分子量を有するポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とその両末端にラジカル重合性不飽和基とを有する化合物と、重合性不飽和基の導入が可能な反応性基を有するラジカル重合性不飽和単量体とを共重合させた後、前記反応性基に重合性不飽和基を導入した含フッ素重合性樹脂をフッ素系界面活性剤又はフッ素系表面改質剤として用いることにより、塗膜の表面に優れた防汚性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、平均分子量が2,500〜10,000であるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有し、その両末端にラジカル重合性不飽和基を有する化合物(A)と、反応性基(b)を有するラジカル重合性不飽和単量体(B)とを必須の単量体成分として共重合させて得られる重合体(P)に、前記反応性基(b)と反応性を有する官能基(c)とラジカル重合性不飽和基とを有する化合物(C)を反応させて得られる含フッ素重合性樹脂であって、
前記単量体(B)が水酸基、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの反応性基を有するラジカル重合性不飽和単量体、又はラジカル重合性不飽和基を有するカルボン酸ハロゲン化物もしくはカルボン酸無水物であり、
前記化合物(C)が、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基及びラジカル重合性不飽和基を有する化合物、又はラジカル重合性不飽和基を有するカルボン酸ハロゲン化物もしくはカルボン酸無水物であることを特徴とする含フッ素重合性樹脂及び該樹脂の硬化物に関する。
【0011】
また、本発明は、前記含フッ素重合性樹脂を配合した活性エネルギー線硬化型組成物、及び該組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させてなる硬化物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の含フッ素重合性樹脂は、単独で基材に塗布して硬化塗膜とすることで基材表面に防汚性及び滑り性を付与することができる。また、前記含フッ素重合性樹脂を含フッ素界面活性剤として配合した活性エネルギー線硬化型組成物は、基材に塗布した際に、フッ素原子特有の表面自由エネルギーを最小にさせようとする作用が働き、該含フッ素重合性樹脂が塗膜表面に偏析し、塗膜表面のみに防汚性及び滑り性を付与する表面改質が可能である。さらに、前記含フッ素重合性樹脂は、活性エネルギー線硬化型組成物中の他の重合性を有する成分と重合することができるため、硬化塗膜中に本発明の含フッ素重合性樹脂がより強固に固定化されるので、熱処理、洗浄などを施しても硬化塗膜表面から含フッ素重合性樹脂、又はその分解物の揮発や脱離を抑制することができる。さらに、本発明の含フッ素重合性樹脂を用いた硬化塗膜は、硬化塗膜の表面に付着した汚れを何回も繰り返し拭き取って塗膜表面を摩耗させても、優れた防汚性を維持することができる。
【0013】
したがって、本発明の含フッ素重合性樹脂を用いた硬化塗膜は、その表面が優れた防汚性、滑り性及び防汚持続性を有しているため、フラットパネルディスプレイ(FPD)である液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等が、家庭用テレビ、ノートパソコン、タブレット型コンピュータ、電子書籍端末、携帯電話、自動車用カーナビゲーション、各種装置の操作パネル等の表示装置の最表面に形成することで、表示画面に直接指で触れて操作する際に指紋等の汚れを防止する優れた防汚性や良好な汚れ拭き取り性、表示画面上で指を滑らせて操作する際に良好な操作性を発揮する滑り性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1で得られた含フッ素重合性樹脂(1)のIRスペクトルのチャート図である。
【図2】図2は、実施例1で得られた含フッ素重合性樹脂(1)のGPCのチャート図である。
【図3】図3は、実施例2で得られた含フッ素重合性樹脂(2)のIRスペクトルのチャート図である。
【図4】図4は、実施例2で得られた含フッ素重合性樹脂(2)のGPCのチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の含フッ素重合性樹脂は、平均分子量が2,500〜10,000であるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有し、その両末端に重合性不飽和基を有する化合物(A)と、反応性基(b)を有する重合性不飽和単量体(B)とを必須の単量体成分として共重合させて得られる重合体(P)に、前記官能基(b)と反応性を有する官能基(c)と重合性不飽和基とを有する化合物(C)を反応させて得られる重合性不飽和基を有する重合性樹脂である。
【0016】
また、前記ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖としては、炭素原子数1〜3の2価フッ化炭素基と酸素原子が交互に連結した構造を有するものが挙げられる。炭素原子数1〜3の2価フッ化炭素基は、1種類であっても良いし複数種の混合であっても良く、具体的には、下記構造式(a1)で表されるものが挙げられる。
【0017】
【化1】

(上記構造式(a)中、Xは下記構造式(a1−1)〜(a1−5)であり、構造式(a1)中の全てのXが同一構造のものであってもよいし、また、複数の構造がランダムに又はブロック状に存在していてもよい。また、nは繰り返し単位数を表す整数である。)
【0018】
【化2】

【0019】
これらの中でも特に塗膜表面の汚れの拭き取り性が良好となって防汚性に優れた塗膜が得られる点から前記構造式(a1−1)で表されるパーフルオロメチレン構造と、前記構造式(a1−2)で表されるパーフルオロエチレン構造とが共存するものがとりわけ好ましい。ここで、前記構造式(a1−1)で表されるパーフルオロメチレン構造と、前記構造式(a1−2)で表されるパーフルオロエチレン構造との存在比率は、モル比率[構造(a1−1)/構造(a1−2)]が1/10〜10/1となる割合であることが防汚性の点から好ましく、また、前記構造式(a1)中のnの値は30〜80の範囲であること、特に35〜60の範囲が好ましい。
【0020】
前記化合物(A)の原料となる両末端に重合性不飽和基を導入する前の化合物としては、例えば、以下の一般式(a2−1)〜(a2−6)等が挙げられる。なお、下記の各構造式中における「−PFPE−」は、上記のポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を表す。
【0021】
【化3】

【0022】
本発明で用いる前記化合物(A)は、上記一般式中の「−PFPE−」で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖部分(鎖中の両末端でフッ素原子を有する炭素原子までをここでいうポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とする。)の平均分子量が2,500〜10,000の範囲のものであるが、より高い防汚性及び滑り性と、活性エネルギー線硬化型組成物中のベース樹脂との相溶性を良好とするためには、2,800〜5,000の範囲のものが好ましく、3,000〜4,500の範囲のものがより好ましい。
【0023】
なお、上記ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖部分の平均分子量の測定方法としては、例えば、下記一般式(a2−1−1)で表される化合物の場合、19F−NMRを測定し、水酸基とメチレンを介して隣接しているCF部分の化学シフト、パーフルオロメチレン基(−CF−)の化学シフト、パーフルオロエチレン基(−CFCF−)の化学シフト等の積分比を求めた後、水酸基とメチレンを介して隣接しているCF部分の化学シフトの積分比を4とすることで、他のパーフルオロメチレン基、パーフルオロエチレン基等の数をそれぞれの積分比から求めることができる。
【0024】
【化4】

(式中、p及びqはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。)
【0025】
前記化合物(A)の鎖の両末端に有するラジカル重合性不飽和基は、例えば、下記構造式U−1〜U−5で示されるラジカル重合性不飽和基を有するものが挙げられる。
【0026】
【化5】

【0027】
これらのラジカル重合性不飽和基の中でも特に化合物(A)自体の入手や製造の容易さ、あるいは、後述するラジカル重合性不飽和単量体(B)との反応性に優れる点から、構造式U−1で表されるアクリロイルオキシ基、構造式U−2で表されるメタクリロイルオキシ基が好ましい。また、耐薬品性が向上することから、構造式U−2で表されるメタクリロイルオキシ基、構造式U−5で表されるスチリルメトキシ基が好ましい。
【0028】
前記化合物(A)のなかで、前記したアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するものとしては、下記構造式(A−1)〜(A−13)で表されるものが挙げられる。なお、下記の各構造式中における「−PFPE−」は、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を示す。
【0029】
【化6】

【0030】
これらの中でも特に化合物(A)自体の工業的製造が容易であり、また、重合体(P)を製造する際の重合反応も容易である点から、前記構造式(A−1)、(A−2)、(A−5)、(A−6)で表されるものが好ましい。また、耐薬品性が向上することから、前記構造式(A−2)、(A−4)、(A−12)、(A−13)が好ましい。
【0031】
上記化合物(A)を製造するには、例えば、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端に水酸基を1つずつ有する化合物に対して、(メタ)アクリル酸クロライドを脱塩酸反応させて得る方法、(メタ)アクリル酸を脱水反応させて得る方法、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートをウレタン化反応させて得る方法、無水イタコン酸をエステル化反応させて得る方法、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にカルボキシル基を1つずつ有する化合物に対して、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルをエステル化反応させて得る方法、グリシジルメタクリレートをエステル化反応させて得る方法、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にイソシアネート基を1つずつ有する化合物に対して、2−ヒドロキシエチルアクリルアミドを反応させる方法が挙げられる。これらのなかでも、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端に水酸基を1つずつ有する化合物に対して、(メタ)アクリル酸クロライドを脱塩酸反応させて得る方法と、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートをウレタン化反応させて得る方法が合成上得られやすい点で特に好ましい。
【0032】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいう。
【0033】
前記重合性不飽和単量体(B)は、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの反応性基を有するラジカル重合性不飽和単量体、又はラジカル重合性不飽和基を有するカルボン酸ハロゲン化物もしくはカルボン酸無水物である。また、前記重合性不飽和単量体(B)が有するラジカル重合性不飽和基ラジカル重合性を有する炭素−炭素不飽和二重結合が好ましく、より具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が挙げられ、重合が容易な点から(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0034】
前記重合性不飽和単量体(B)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、末端水酸基含有ラクトン変性(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基含有不飽和単量体;グリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和単量体;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体;(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイド等のラジカル重合性不飽和基を有するカルボン酸ハロゲン化物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和二重結合を有する酸無水物などが挙げられる。
【0035】
前記重合体(P)を製造する際、前記化合物(A)及び単量体(B)の他に、これらと共重合し得るその他の重合性不飽和単量体を用いても構わない。このようなその他のラジカル重合性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸エステル類;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエーテル鎖を有する(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類などが挙げられる。
【0036】
前記重合体(P)を製造する方法は、前記化合物(A)及び前記単量体(B)、さらに必要に応じてその他の重合性不飽和単量体を有機溶剤中にてラジカル重合開始剤の存在下で共重合させる方法が挙げられる。ここで用いる有機溶媒としては、例えば、フッ素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの有機溶剤の具体例としては、例えば、メタキシレンヘキサフルオライド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これら有機溶媒の選択は、沸点、原料又は重合体との相溶性、重合性を考慮して適宜選択することができる。また、これらの有機溶剤の中でも、前記化合物(A)、前記単量体(B)等の原料及び生成する重合体(P)の溶解性が良好であり、沸点が比較的高いことから重合反応の進行も促進できることから、メタキシレンヘキサフルオライドがより好ましい。なお、これらの有機溶剤は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0037】
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化t−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化2−クロロベンゾイル、過酸化3−クロロベンゾイル、過酸化4−クロロベンゾイル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化4−ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸t−ブチル、t−ブチルヒドロペルオキシド、過ギ酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル、過安息香酸t−ブチル、過2-エチルヘキサン酸t−ブチル、過フェニル酢酸t−ブチル、過4−メトキシ酢酸t−ブチル等の過酸化物;2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスプロパン、1,1’−アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)硝酸塩、2,2’−アゾビスイソブタン、2,2’−アゾビスイソブチルアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオン酸メチル、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスブタン、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2−(4−メチルフェニルアゾ)−2−メチルマロノジニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸、3,5−ジヒドロキシメチルフェニルアゾ−2−メチルマロノジニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’−アゾビス−1−フェニルエタン、1,1’−アゾビスクメン、4−ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フエニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4−ニトロトリフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1’−アゾビス−1,2−ジフェニルエタン等のアゾ化合物が挙げられる。さらに必要に応じてラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノ−ル、チオグリセロール、エチルチオグリコ−ル酸、オクチルチオグリコ−ル酸等の連鎖移動剤を使用することもできる。
【0038】
上記のようにして得られる重合体(P)に、重合体(P)の原料として用いた前記単量体(B)が有する反応性基(b)に対して反応性を有する官能基(c)及びラジカル重合性不飽和基を有する化合物(C)を反応させることにより、本発明の含フッ素重合性樹脂が得られる。
【0039】
前記化合物(C)は、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基及びラジカル重合性不飽和基を有する化合物、又はラジカル重合性不飽和基を有するカルボン酸ハロゲン化物もしくはカルボン酸無水物である。
【0040】
前記単量体(B)と化合物(C)の組み合わせとしては、単量体(B)が水酸基を有する単量体の場合、化合物(C)はイソシアネート基、カルボキシル基、エポキシ基及びラジカル重合性不飽和基を有する化合物、又はラジカル重合性不飽和基を有するカルボン酸ハロゲン化物もしくはカルボン酸無水物であり、単量体(B)がイソシアネート基を有する単量体の場合、化合物(C)は水酸基及びラジカル重合性不飽和基を有する化合物であり、単量体(B)がエポキシ基を有する単量体の場合、化合物(C)は水酸基、カルボキシル基及びラジカル重合性不飽和基を有する化合物、又はラジカル重合性不飽和基を有するカルボン酸無水物であり、単量体(B)がカルボキシル基を有する単量体の場合、化合物(C)は水酸基、エポキシ基及びラジカル重合性不飽和基を有する化合物である。これらは、複数の種類を組み合わせても構わない。
【0041】
前記化合物(C)の具体的としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、末端水酸基含有ラクトン変性(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基含有不飽和単量体;グリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和単量体;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体;(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイド等のラジカル重合性不飽和基を有するカルボン酸ハロゲン化物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和二重結合を有する酸無水物などが挙げられる。また、複数のラジカル重合性不飽和基を有するものとして、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を用いることもできる。
【0042】
これらの化合物(C)の中でも、本発明の含フッ素重合性樹脂を単独又は活性エネルギー線硬化型組成物への添加剤として用いた場合の硬化性が高いことから、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アクリル酸が好ましい。
【0043】
前記重合体(P)に、前記反応性基(b)に対して反応性を有する官能基(c)及びラジカル重合性不飽和基を含有する化合物(C)を反応させる方法は、化合物(C)中のラジカル重合性不飽和基が重合しない条件で行えば良く、例えば、温度条件を30〜120℃の範囲に調節して反応させることが好ましい。この反応は触媒や重合禁止剤の存在下、必要により有機溶剤の存在下に行うことが好ましい。
【0044】
例えば、前記単量体(B)が水酸基を有する単量体であって、前記化合物(C)がイソシアネート基及びラジカル重合性不飽和基を有する化合物である場合、又は、前記単量体(B)がイソシアネート基を有する単量体であって、前記化合物(C)が水酸基及びラジカル重合性不飽和基を有する化合物である場合、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等を使用し、ウレタン化反応触媒としてジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛等を使用し、反応温度は、20〜150℃の範囲、特に40〜120℃の範囲で反応させる方法が好ましい。また、前記単量体(B)がエポキシ基を有する単量体であって、前記化合物(C)がカルボキシル基及びラジカル重合性不飽和基を有する化合物である場合、又は、前記単量体(B)がカルボキシル基を有する単量体であって、前記化合物(C)がエポキシ基及びラジカル重合性不飽和基を有する化合物である場合、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等を使用し、エステル化反応触媒としてトリエチルアミン等の第3級アミン類、塩化テトラメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム類、トリフェニルホスフィン等の第3級ホスフィン類、塩化テトラブチルホスホニウム等の第4級ホスホニウム類等を使用し、反応温度80〜130℃、特に100〜120℃で反応させることが好ましい。
【0045】
上記反応で用いられる有機溶媒としては、例えば、フッ素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの有機溶剤の具体例としては、例えば、メタキシレンヘキサフルオライド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これら有機溶媒の選択は、沸点、原料又は重合体との相溶性、重合性を考慮して適宜選択することができる。また、これらの有機溶剤の中でも、前記重合体(P)及び前記化合物(C)の溶解性が良好なことから、メタキシレンヘキサフルオライドがより好ましい。なお、これらの有機溶剤は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0046】
上記のようにして得られる本発明の含フッ素重合性樹脂は、製造時のゲル化を防止でき、硬化塗膜に優れた防汚性を付与できることから、その数平均分子量(Mn)が1,000〜20,000の範囲であることが好ましく、1,500〜10,000の範囲であることがより好ましい。また、重量平均分子量(Mw)が1,000〜20,000の範囲であることが好ましく、2,000〜10,000の範囲であることが好ましい。なお、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、上記のGPC測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、ここでの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、上記の重合操作において、生成した前記単量体(B)のホモポリマー等の副生成物も含んだ状態で測定したものである。
【0047】
ここで、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)はGPC測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
【0048】
[GPCの測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ELSD(オルテック製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0049】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
【0050】
また、本発明の含フッ素重合性樹脂中のフッ素含有率は、防汚性と他の成分との相溶性との両立を図ることができることから、2〜50質量%の範囲が好ましく、5〜40質量%の範囲がより好ましく、10〜35質量%の範囲がさらに好ましい。なお、本発明の含フッ素ラジカル重合性共重合体中のフッ素含有率は、用いた原料の合計量に対するフッ素原子の質量比率から算出した値である。
【0051】
さらに、本発明の含フッ素重合性樹脂中のラジカル重合性不飽和基の含有量は、ラジカル重合性不飽和基当量が250〜500g/eq.となる割合であることが、硬化塗膜の防汚性に優れる点から好ましく、とりわけ300〜400g/eq.の範囲であることが特に好ましい。
【0052】
本発明の含フッ素重合性樹脂は、それ自体を活性エネルギー線硬化型組成物の主剤として用いることができるが、極めて優れた表面改質性能を有しているため、活性エネルギー線硬化型組成物に添加するフッ素系界面活性剤又はフッ素系表面改質剤として用いることで、硬化塗膜に優れた防汚性及び滑り性を付与できる。
【0053】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、本発明の含フッ素重合性樹脂を配合したものであるが、その主成分しては、活性エネルギー線硬化型樹脂(D)又は活性エネルギー線硬化性単量体(E)を含有する。なお、本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物において、活性エネルギー線硬化型樹脂(D)と活性エネルギー線硬化性単量体(E)とは、それぞれ単独で用いてもよいが、併用しても構わない。また、本発明の含フッ素重合性樹脂は、当該活性エネルギー線硬化型組成物において、フッ素系界面活性剤又はフッ素系表面改質剤として用いることが好ましい。
【0054】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂(D)は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、アクリル(メタ)アクリレート樹脂、マレイミド基含有樹脂等が挙げられるが、本発明では、特に透明性や低収縮性等の点からウレタン(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
【0055】
ここで用いるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、脂肪族ポリイソシアネート化合物又は芳香族ポリイソシアネート化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるウレタン結合と(メタ)アクリロイル基とを有する樹脂が挙げられる。
【0056】
前記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられ、また、芳香族ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0057】
一方、ヒドロキシ基含有アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の3価のアルコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、あるいは、これらのアルコール性水酸基の一部をε−カプロラクトンで変性した水酸基含有モノ及びジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の1官能の水酸基と3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、あるいは、該化合物をさらにε−カプロラクトンで変性した水酸基含有多官能(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン−ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等のブロック構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のランダム構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0058】
上記した脂肪族ポリイソシアネート化合物又は芳香族ポリイソシアネート化合物とヒドロキシ基含有アクリレート化合物との反応は、ウレタン化触媒の存在下、常法により行うことができる。ここで使用し得るウレタン化触媒は、具体的には、ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどのアミン類、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィンなどのホフィン類、ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫などの有機錫化合物、オクチル酸亜鉛などの有機金属化合物が挙げられる。
【0059】
これらのウレタンアクリレート樹脂の中でも特に脂肪族ポリイソシアネート化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるものが硬化塗膜の透明性に優れ、かつ、活性エネルギー線に対する感度が良好で硬化性に優れる点から好ましい。
【0060】
次に、不飽和ポリエステル樹脂は、α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物、芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物、及び、グリコール類の重縮合によって得られる硬化性樹脂であり、α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸、及びこれらのエステル等が挙げられる。芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸及びこれらのエステル等が挙げられる。脂肪族あるいは脂環族飽和二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びこれらのエステル等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、エチレングリコールカーボネート、2,2−ジ−(4−ヒドロキシプロポキシジフェニル)プロパン等が挙げられ、その他にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の酸化物も同様に使用できる。
【0061】
次に、エポキシビニルエステル樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものが挙げられる。
【0062】
また、マレイミド基含有樹脂としては、N−ヒドロキシエチルマレイミドとイソホロンジイソシアネートとをウレタン化して得られる2官能マレイミドウレタン化合物、マレイミド酢酸とポリテトラメチレングリコールとをエステル化して得られる2官能マレイミドエステル化合物、マレイミドカプロン酸とペンタエリスリトールのテトラエチレンオキサイド付加物とをエステル化して得られる4官能マレイミドエステル化合物、マレイミド酢酸と多価アルコール化合物とをエステル化して得られる多官能マレイミドエステル化合物等が挙げられる。これらの活性エネルギー線硬化型樹脂(F)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0063】
前記活性エネルギー線硬化性単量体(E)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150〜1000の範囲にあるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150〜1000の範囲にあるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールペンタ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族アルキル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングルリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、2−マレイミドエチル−エチルカーボネート、2−マレイミドエチル−プロピルカーボネート、N−エチル−(2−マレイミドエチル)カーバメート、N,N−ヘキサメチレンビスマレイミド、ポリプロピレングリコール−ビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、ビス(2−マレイミドエチル)カーボネート、1,4−ジマレイミドシクロヘキサン等のマレイミド類などが挙げられる。
【0064】
これらのなかでも特に硬化塗膜の硬度に優れる点からトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートが好ましい。これらの活性エネルギー線硬化性単量体(E)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0065】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物において、本発明の含フッ素重合性樹脂を含フッ素界面活性剤又はフッ素系表面改質剤として使用する場合、防汚性及び滑り性を十分なものとなることから、その使用量は、前記活性エネルギー線硬化型樹脂(D)及び活性エネルギー線硬化性単量体(E)の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲であることが好ましく、0.1〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
【0066】
本発明の含フッ素重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化型組成物は、基材に塗布後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線をいう。活性エネルギー線として紫外線を照射して硬化塗膜とする場合には、該含フッ素重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化型組成物中に光重合開始剤(F)を添加し、硬化性を向上することが好ましい。また、必要であればさらに光増感剤を添加して、硬化性を向上することもできる。一方、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を用いなくても速やかに硬化するので、特に光重合開始剤(F)や光増感剤を添加する必要はない。
【0067】
前記光重合開始剤(F)としては、分子内開裂型光重合開始剤及び水素引き抜き型光重合開始剤が挙げられる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が挙げられる。
【0068】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。
【0069】
上記の光重合開始剤(F)の中でも、活性エネルギー線硬化型塗料組成物中の前記活性エネルギー線硬化性樹脂(D)及び活性エネルギー線硬化性単量体(E)との相溶性に優れる点から、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及びベンゾフェノンが好ましく、特に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。これらの光重合開始剤(F)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0070】
また、前記光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン類、o−トリルチオ尿素等の尿素類、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0071】
これらの光重合開始剤及び光増感剤の使用量は、活性エネルギー線硬化型組成物中の不揮発成分100質量部に対し、各々0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.3〜7質量部がさらに好ましい。
【0072】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、用途、特性等の目的に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、粘度や屈折率の調整、あるいは、塗膜の色調の調整やその他の塗料性状や塗膜物性の調整を目的に各種の配合材料、例えば、各種有機溶剤、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油樹脂、フッ素樹脂等の各種樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、カーボン、酸化チタン、アルミナ、銅、シリカ微粒子等の各種の有機又は無機粒子、重合開始剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、防錆剤、スリップ剤、ワックス、艶調整剤、離型剤、相溶化剤、導電調整剤、顔料、染料、分散剤、分散安定剤、シリコーン系、炭化水素系界面活性剤等を併用することができる。
【0073】
上記の各配合成分中、有機溶媒は、本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物の溶液粘度を適宜調整する上で有用であり、特に薄膜コーティングを行うためには、膜厚を調整することが容易となる。ここで使用できる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0074】
ここで有機溶媒の使用量は、用途や目的とする膜厚や粘度によって異なるが、硬化成分の全質量に対して、質量基準で、0.5〜4倍量の範囲であることが好ましい。
【0075】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、上記の通り、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線であるが、具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、又は走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
【0076】
これらの中でも特に紫外線であることが好ましく、酸素等による硬化阻害を避けるため、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で、紫外線を照射することが好ましい。また、必要に応じて熱をエネルギー源として併用し、紫外線にて硬化した後、熱処理を行ってもよい。
【0077】
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物の塗工方法は用途により異なるが、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、キスコーター、シャワーコーター、ホイーラーコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー、アプリケーター、バーコーター等を用いた塗布方法、あるいは各種金型を用いた成形方法等が挙げられる。
【0078】
本発明の含フッ素重合性樹脂の硬化塗膜は、優れた防汚性(撥インク性、耐指紋性等)、耐擦傷性等を有するため、物品の表面に塗布・硬化することで、物品の表面に防汚性及び滑り性を付与することができる。また、本発明の含フッ素重合性樹脂は、塗材にフッ素系界面活性剤又はフッ素系表面改質剤として添加することで、その塗材にレベリング性を付与することもできるため、本発明の活性エネルギー線硬化料組成物は、高いレベリング性を有する。
【0079】
本発明の含フッ素重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化型組成物を用いて、その表面に防汚性及び滑り性を付与できる物品としては、TACフィルム等の液晶ディスプレイ(LCD)の偏光板用フィルム;プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ等の各種ディスプレイ画面;タッチパネル;携帯電話筐体又は携帯電話の画面;CD、DVD、ブルーレイディスク等の光学記録媒体;インサートモールド(IMD、IMF)用転写フィルム;コピー機、プリンター等のOA機器用ゴムローラー;コピー機、スキャナー等のOA機器の読み取り部のガラス面;カメラ、ビデオカメラ、メガネ等の光学レンズ;腕時計等の時計の風防、ガラス面;自動車、鉄道車輌等の各種車輌のウインドウ;化粧板等の各種建材;住宅の窓ガラス;家具等の木工材料、人工・合成皮革、家電の筐体等の各種プラスチック成形品、FRP浴槽などが挙げられる。これらの物品表面に本発明の含フッ素重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化型組成物を塗布し、紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化塗膜を形成することで、物品表面に防汚性及び滑り性を付与することができる。また、本発明の含フッ素重合性樹脂を各物品に適した各種塗料に添加し、塗布・乾燥することで、物品表面に防汚性及び滑り性を付与することも可能である。
【0080】
また、本発明の含フッ素重合性樹脂を活性エネルギー線硬化型組成物に添加した塗材は、レベリング性を向上するとともに、塗膜表面に防汚性(撥インク性)及び滑り性(耐スクラッチ性)を付与できる。このような塗材としては、TACフィルム等のLCDの偏光板用フィルムのハードコート材、アンチグレア(AG:防眩)コート材又は反射防止(LR)コート材;プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ等の各種ディスプレイ画面用ハードコート材;タッチパネル用ハードコート材;液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CCD、CMOS等の撮像素子などに用いられるカラーフィルター(以下、「CF」という。)に使用されるRGBの各画素を形成するためのカラーレジスト、印刷インク、インクジェットインク又は塗料;CFのブラックマトリックス用のブラックレジスト、印刷インク、インクジェットインク又は塗料;プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ等の画素隔壁用樹脂組成物;携帯電話筐体用塗料又はハードコート材;携帯電話の画面用ハードコート材;CD、DVD、ブルーレイディスク等の光学記録媒体用ハードコート材;インサートモールド(IMD、IMF)用転写フィルム用ハードコート材;コピー機、プリンター等のOA機器用ゴムローラー用コート材;コピー機、スキャナー等のOA機器の読み取り部のガラス用コート材;カメラ、ビデオカメラ、メガネ等の光学レンズ用コート材;腕時計等の時計の風防、ガラス用コート材;自動車、鉄道車輌等の各種車輌のウインドウ用コート材;化粧板等の各種建材用印刷インキ又は塗料;住宅の窓ガラス用コート材;家具等の木工用塗料;人工・合成皮革用コート材;家電の筐体等の各種プラスチック成形品用塗料又はコート材;FRP浴槽用塗料又はコート材などが挙げられる。
【0081】
さらに、本発明の含フッ素重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化型組成物を用いて、その表面に防汚性及び滑り性を付与できる物品としては、LCDのバックライト部材であるプリズムシート又は拡散シート等が挙げられる。また、プリズムシート又は拡散シート用コート材に本発明の含フッ素重合性樹脂を添加することで、該コート材のレベリング性を向上するとともに、コート材の塗膜に耐擦傷性(耐スクラッチ性)及び防汚性を付与することができる。
【0082】
また、本発明の含フッ素重合性樹脂の硬化塗膜は低屈折率であるため、LCD等の各種ディスプレイ表面への蛍光灯等の映り込みを防止する反射防止層中の低屈折率層用塗材としても用いることができる。また、反射防止層用の塗材、特に反射防止層中の低屈折率層用塗材に本発明の含フッ素重合性樹脂を添加することで、塗膜の低屈折率を維持しつつ、塗膜表面に防汚性を付与することもできる。
【0083】
さらに、本発明の含フッ素重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化型組成物を用いることができるその他の用途として、光ファイバクラッド材、導波路、液晶パネルの封止材、各種光学用シール材、光学用接着剤等が挙げられる。
【0084】
特に、LCD用偏光板の保護フィルム用コート材用途のうち、アンチグレアコート材として本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を用いる場合、上記した各組成のうち、シリカ微粒子、アクリル樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子等の無機又は有機微粒子を、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の硬化成分の全質量の0.1〜0.5倍量となる割合で配合することで防眩性に優れたものとなるため好ましい。
【0085】
また、本発明の含フッ素重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化型組成物を、LCD用偏光板の保護フィルム用アンチグレアコート材に用いる場合、塗材を硬化させる前に凹凸の表面形状の金型に接触させた後、金型と反対側から活性エネルギー線を照射して硬化し、塗膜の表面をエンボス加工して防眩性を付与する転写法にも適用できる。また、塗材を硬化させる前に鏡面を有する金型又はフィルムに接触させた後、金型又はフィルムと反対側から活性エネルギー線を照射して硬化し、塗膜の表面を鏡面とする転写法にも適用できる。
【実施例】
【0086】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。
【0087】
[IRスペクトル測定方法]
株式会社島津製作所製「IRPrestige−21」の測定装置を用いて、試料溶液をKBr板に少量滴下して溶剤を乾燥後、測定を行った。
【0088】
[GPCの測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ELSD(オルテック製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0089】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
【0090】
(合成例1)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、下記式(a2−1−1)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有し、その両末端に水酸基を有する化合物20質量部、溶媒としてメタキシレンヘキサフルオライド10質量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.02質量部及び中和剤としてトリエチルアミン1.5質量部を仕込み、空気気流下にて攪拌を開始し、フラスコ内を10℃に保ちながらメタクリル酸クロライド1.3質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、10℃で1時間攪拌し、昇温して30℃で1時間攪拌して、さらに50℃に昇温して10時間撹拌した後、ガスクロマトグラフィー測定にてメタクリル酸クロライドの消失を確認し反応を終了した。次いで、溶媒としてメタキシレンヘキサフルオライド70質量部を追加した後、イオン交換水80質量部を混合して攪拌してから静置し水層を分離させて取り除く方法による洗浄を3回繰り返した。次いで、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.02質量部を添加し、脱水剤として硫酸マグネシウム8質量部を添加して1日間静置することで完全に脱水した後、脱水剤を濾別した。
【0091】
【化7】

(式中、pは平均17、qは平均19であり、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖部分の平均分子量は3,442である。なお、オキシパーフルオロメチレン単位とオキシパーフルオロエチレン単位との結合はランダムである。以下同じ。)
【0092】
次いで、減圧下で溶媒を留去することによって、下記式(A−2−1)で表される化合物(以下、「化合物(A−2−1)と略記する。)を得た。
【0093】
【化8】

【0094】
(合成例2)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、上記式(a2−1−1)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有し、その両末端に水酸基を有する化合物20質量部及び重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.006質量部を仕込み、空気気流下にて攪拌を開始し、フラスコ内を60℃に保ちながら2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート1.5質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌し、昇温して80℃で4時間撹拌した後、ガスクロマトグラフィー測定にて2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートの消失を確認し反応を終了することにより、下記式(A−6−1)で表される化合物(以下、「化合物(A−6−1)と略記する。)を得た。
【0095】
【化9】

【0096】
(合成例3)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、下記式(a2’)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有し、その両末端に水酸基を有する化合物20質量部、溶媒としてジイソプロピルエーテル20質量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.02質量部及び中和剤としてトリエチルアミン3.1質量部を仕込み、空気気流下にて攪拌を開始し、フラスコ内を10℃に保ちながらアクリル酸クロライド2.7質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、10℃で1時間攪拌し、昇温して30℃で1時間攪拌して、さらに50℃に昇温して10時間撹拌した後、ガスクロマトグラフィー測定にてアクリル酸クロライドの消失を確認し反応を終了した。次いで、溶媒としてジイソプロピルエーテル70質量部を追加した後、イオン交換水80質量部を混合して攪拌してから静置し水層を分離させて取り除く方法による洗浄を3回繰り返した。次いで、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.02質量部を添加し、脱水剤として硫酸マグネシウム8質量部を添加して1日間静置することで完全に脱水した後、脱水剤を濾別した。
【0097】
【化10】

(式中、rは平均5、sは平均8であり、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖部分の平均分子量は1,374である。なお、パーフルオロメチレン構造とパーフルオロエチレン構造との結合はランダムである。以下同じ。)
【0098】
次いで、減圧下で溶媒を留去することによって、下記式(A’)で表される化合物(以下、「化合物(A’)」と略記する。)を得た。
【0099】
【化11】

【0100】
(実施例1)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメタキシレンヘキサフルオライド146.1質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら105℃に昇温した。次いで、合成例1で得られた化合物(A−2−1)83.5質量部と、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、「HEMA」と略記する。)160質量部と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート36.5質量部をメタキシレンヘキサフルオライド306.2質量部に溶解した重合開始剤溶液との3種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を105℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、105℃で5時間攪拌した。
【0101】
次いで、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.17質量部、ウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.13質量部を仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「AOI」と略記する。)169.9質量部を1時間で滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌し、さらに80℃に昇温して4時間攪拌した後、IRスペクトル測定でイソシアネート基由来の2360cm−1付近の吸収ピークの消失を確認した。次いで、メタキシレンヘキサフルオライドを加えて、含フッ素重合性樹脂(1)を50質量%含有するメタキシレンヘキサフルオライドを得た。得られた含フッ素重合性樹脂(1)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量1,200、重量平均分子量6,300であった。また、フッ素含有率は12質量%であった。なお、含フッ素重合性樹脂(1)のIRスペクトルのチャート図を図1に、GPCのチャート図を図2に示す。
【0102】
(実施例2)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメタキシレンヘキサフルオライド146.1質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら105℃に昇温した。次いで、合成例2で得られた化合物(A−6−1)83.5質量部と、HEMA 160質量部と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート36.5質量部をメタキシレンヘキサフルオライド306.2質量部に溶解した重合開始剤溶液との3種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を105℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、105℃で5時間攪拌した。
【0103】
次いで、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.17質量部、ウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.13質量部を仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、AOI 169.9質量部を1時間で滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌し、さらに80℃に昇温して4時間攪拌した後、IRスペクトル測定でイソシアネート基由来の2360cm−1付近の吸収ピークの消失を確認した。次いで、メタキシレンヘキサフルオライドを加えて、含フッ素重合性樹脂(2)を50質量%含有するメタキシレンヘキサフルオライドを得た。得られた含フッ素重合性樹脂(2)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量1,300、重量平均分子量2,800であった。また、フッ素含有率は12質量%であった。なお、含フッ素重合性樹脂(2)のIRスペクトルのチャート図を図1に、GPCのチャート図を図2に示す。
【0104】
(比較例1)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン69質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら105℃に昇温した。次いで、下記式(Y)で表されるフッ素化アルキル基含有アクリレート40質量部及びHEMA 28.8質量部をメチルイソブチルケトン69質量部に溶解したモノマー溶液137.8質量部と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート3.4質量部をメチルイソブチルケトン22.5質量部に溶解した重合開始剤溶液25.9質量部との2種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を105℃に保ちながら同時に3時間かけて滴下した。滴下終了後、105℃で10時間攪拌し、重合体を得た。
【0105】
【化12】

【0106】
次いで、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.1質量部、ウレタン化触媒としてジブチル錫ジラウレート0.05質量部を仕込み、空気気流下で60℃を保ちながらAOI 31.2質量部を1時間で滴下した。滴下終了後、60℃で1時間攪拌した後、80℃に昇温して10時間攪拌することにより、IRスペクトル測定でイソシアネート基由来の2360cm−1付近の吸収ピークの消失を確認した。次いで、溶媒の一部を減圧留去し、含フッ素重合性樹脂(3)を50質量%含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。含フッ素重合性樹脂(3)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量3,000、重量平均分子量7,000であった。また、フッ素含有率は20質量%であった。
【0107】
(比較例2)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン63質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら105℃に昇温した。次いで、合成例3で得られた化合物(A’)21.5質量部と、HEMA 41.3質量部と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート9.4質量部をメチルイソブチルケトン126質量部に溶解した重合開始剤溶液135.4質量部との3種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を105℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、105℃で10時間攪拌した後、減圧下で溶媒の一部を留去することによって、重合体を得た。
【0108】
次いで、メチルエチルケトン74.7質量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.1質量部、ウレタン化触媒としてジブチル錫ジラウレート0.06質量部を仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、AOI 44.8質量部を1時間で滴下した。滴下終了後、60℃で1時間攪拌した後、80℃に昇温して10時間攪拌することにより、IRスペクトル測定でイソシアネート基由来の2360cm−1付近の吸収ピークの消失を確認して、含フッ素重合性樹脂(4)を50質量%含有するメチルエチルケトン溶液を得た。得られた含フッ素重合性樹脂(4)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量2,400、重量平均分子量7,100であった。また、フッ素含有率は11質量%であった。
【0109】
[評価用活性エネルギー線硬化型組成物のベース組成物の調製]
5官能無黄変型ウレタンアクリレート50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート50質量部、酢酸ブチル25質量部、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)5質量部、溶剤としてトルエン54質量部、2−プロパノール28質量部、酢酸エチル28質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル28質量部を均一に混合して、評価用活性エネルギー線硬化型組成物のベース組成物268質量部を得た。
【0110】
(実施例3,4、比較例3〜5)
上記で得られたベース組成物268質量部に、含フッ素界面活性剤として実施例1,2及び比較例1,2で得られた含フッ素重合性樹脂(1)〜(4)の50質量%溶液をそれぞれ2質量部(樹脂分として1質量部)を加えて均一に混合して、活性エネルギー線硬化型組成物を得た。次いで、この活性エネルギー線硬化型組成物をバーコーターNo.13を用いて、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布した後、60℃の乾燥機に5分間入れて溶剤を揮発させた。次に、乾燥した塗膜に紫外線硬化装置(窒素雰囲気下(酸素濃度1容量%以下)、高圧水銀灯、紫外線照射量2kJ/m)で紫外線(UV)を照射して硬化させ、実施例3,4及び比較例3,4として塗工フィルムを作製した。また、何も添加せずに活性エネルギー線硬化型組成物のベース組成物のみについても同様に塗工フィルムを作製して比較例5とした。
【0111】
(防汚性の評価)
上記で得られた塗工フィルムの塗工表面の防汚性を、下記の水及びn−ドデカンの接触角、汚れ付着防止性及び汚れ拭き取り容易性から評価した。
【0112】
[水及びn−ドデカンの接触角の測定]
塗工フィルムの塗工表面について、接触角測定装置(協和界面科学株式会社製「MODEL CA−W150」)を用いて、水及びn−ドデカンの接触角を測定した。
【0113】
[摩耗処理後の防汚性の評価]
防汚持続性の評価として、塗膜表面を磨耗処理した塗工フィルムについて、水及びn−ドデカンの接触角の測定を上記と同様に行った。なお、磨耗処理は、往復磨耗試験機(新東科学株式会社製「HEIDON トライボギア TYPE:30S」)を用いて、治具に不織布(旭化成せんい株式会社製「ベンコットS」)を取り付けて1.72N/cmの荷重にて、5000回の往復磨耗することにより行った。
【0114】
[汚れ付着防止性の評価]
塗工フィルムの塗工表面に、フェルトペン(寺西化学工業株式会社製マジックインキ大型黒色)で線を描き、その黒色インクの付着状態を目視で観察することで汚れ付着防止性の評価を行った。なお、評価基準は下記の通りである。
AA:防汚性が最も良好で、インクが玉状にはじくもの。
A:インクが玉状にはじかず、線状のはじきが生じるもの(線幅がフェルトペンのペン先の幅の50%未満)。
B:インクの線状のはじきが生じ、線幅がフェルトペンのペン先の幅の50%以上100%未満であったもの。
C:インクがまったくはじかずに表面にきれいに描けてしまうもの。
【0115】
[汚れ拭き取り容易性の評価]
上記の汚れ付着防止性の試験後、付着したインクを荷重500gにてティッシュペーパーですべて拭き取るのに要した拭き取り回数を測定し、その結果から下記の基準にしたがって汚れ拭き取り容易性を評価した。
AA:1回の拭き取りで完全にインキを除去できたもの。
A:2〜5回の拭き取りで完全にインキを除去できたもの。
B:6〜10回の拭き取りで完全にインキを除去できたもの。
C:10回の拭き取り操作で完全にインキを除去できなかったもの。
【0116】
(滑り性の評価)
表面性測定機(新東科学株式会社製「HEIDON−14D」を用いて、サンプル台にサンプルを固定して水平を確認後、サンプル上にプローブをセットし、100g荷重にて任意の距離を摩擦させた。得られたチャートの安定した部分をサンプリングして、動摩擦係数を算出した。
【0117】
上記の測定及び評価結果を表1に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
本発明の含フッ素重合性樹脂である実施例1及び2で得られた含フッ素硬化性樹脂(1)及び(2)を添加した実施例3及び4の活性エネルギー線硬化型塗料組成物の硬化塗膜は、水及びn−ドデカンの接触角が高いことがわかった。この水及びn−ドデカンの接触角は摩耗処理後も大きく低下することはなく、防汚持続性が高いこともわかった。また、汚れ付着防止性が高く、汚れ拭き取り容易性も高いことがわかった。さらに、動摩擦係数も低く滑り性に優れていることがわかった。
【0120】
一方、比較例1で製造したポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の代わりにパーフルオロアルキル基を導入した含フッ素硬化性樹脂(3)を用いた比較例3は、水の接触角が100°未満で撥水性能が不十分であり、摩耗処理後は水の接触角、n−ドデカンの接触角ともに大きく低下することがわかった。また、比較的良好な汚れ付着防止性を有していたが、汚れ拭き取り容易性は不十分で、動摩擦係数が高く滑り性も不十分であることがわかった。
【0121】
比較例2で製造した本発明の含フッ素重合性樹脂で用いたものより低分子量のポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にアクリロイル基を有する化合物を原料とした含フッ素硬化性樹脂(4)を用いた比較例4は、水及びn−ドデカンの接触角は高かったが、摩耗処理後は水の接触角、n−ドデカンの接触角ともに大きく低下することかがわかった。また、汚れ付着防止性は良好であったが、汚れ拭き取り容易性はやや低く、動摩擦係数もやや高く滑り性は満足できるものではなかった。
【0122】
添加剤を加えなかった比較例5は、水及びn−ドデカンの接触角が低く、汚れ付着防止性、汚れ拭き取り容易性及び滑り性に劣っていることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均分子量が2,500〜10,000であるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有し、その両末端にラジカル重合性不飽和基を有する化合物(A)と、反応性基(b)を有するラジカル重合性不飽和単量体(B)とを必須の単量体成分として共重合させて得られる重合体(P)に、前記反応性基(b)と反応性を有する官能基(c)とラジカル重合性不飽和基とを有する化合物(C)を反応させて得られる含フッ素重合性樹脂であって、
前記単量体(B)が水酸基、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの反応性基を有するラジカル重合性不飽和単量体、又はラジカル重合性不飽和基を有するカルボン酸ハロゲン化物もしくはカルボン酸無水物であり、
前記化合物(C)が、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基及びラジカル重合性不飽和基を有する化合物、又はラジカル重合性不飽和基を有するカルボン酸ハロゲン化物もしくはカルボン酸無水物であることを特徴とする含フッ素重合性樹脂。
【請求項2】
前記ラジカル重合性単量体(B)が有する反応性官能基(b)が水酸基であり、かつ、前記化合物(C)が有する官能基(c)がイソシアネート基である請求項1記載の含フッ素重合性樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2記載の含フッ素重合性樹脂を、基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項4】
請求項1又は2記載の含フッ素重合性樹脂、及び、活性エネルギー線硬化型樹脂(D)又は活性エネルギー線硬化性単量体(E)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
請求項4記載の活性エネルギー線硬化型組成物を、基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
フッ素系溶剤中で前記重合体(P)を製造することを特徴とする請求項1又は2記載の含フッ素重合性樹脂の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−72296(P2012−72296A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218775(P2010−218775)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】