説明

含フッ素1,3−ジオキソラン化合物の製造方法、含フッ素1,3−ジオキソラン化合物、含フッ素1,3−ジオキソラン化合物の含フッ素ポリマー、及び該ポリマーを用いた光学材料又は電気材料

有用で新規な含フッ素化合物の製造方法、該製造方法により得られる含フッ素化合物、含フッ素化合物の含フッ素ポリマー、及び含フッ素ポリマーを用いた光学材料又は電気材料を提供すること。下記式(1)で表される化合物の1種以上と、下記式(2)で表される化合物の1種以上とを反応させた後、フッ素ガス雰囲気下で、フッ素系溶液中において下記式(3)で表される含フッ素化合物を製造する方法。類似して、下記式(1)と下記式(2)’との反応によって得られる化合物のフッ素化によって下記式(4)で表される含フッ素化合物。下記式(3)及び下記式(4)で表される化合物の重合によって得られるフッ素化ポリマーは、光学材料又は電気材料として有用である。R1,R2,R3,R4,Rff1,Rff2,Rff3,Rff4,X,Y,Z及びnは、各々明細書に定義されたものである。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素化合物の製造方法、該製造方法により得られる含フッ素化合物、含フッ素化合物より得られる含フッ素ポリマー、及び該ポリマーを用いた光学材料又は電気材料に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素ポリマーは、プラスチック光ファイバーや露光部材などの光学部材として、あるいは表面改質剤等として使用され、幅広い分野で利用される有用な物質である。しかし、含フッ素ポリマーの合成工程は複雑であり、かつコストが高い。
含フッ素ポリマーは、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物を重合することにより得られる。当該含フッ素化合物の一つとして、1,3−ジオキソラン誘導体等が開示されている(例えば、特許文献1〜2、及び非特許文献1〜2参照。)。
【0003】
しかし、従来から知られている1,3−ジオキソラン誘導体は、下記式(A)で表される化合物(例えば、特許文献3参照。)や、式(B)で表される化合物(例えば、特許文献4参照。)等の構造に限定され、ジオキソランの5員環上の特定位置に、特定の置換基しか配することができなかった。
【0004】
【化1】

【0005】
式(B)中、Rf1'及びRf2'は、各々独立に、炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基である。
【0006】
これらの構造的な制限は、合成方法に起因するものである。例えば上記式(A)を合成する従来の方法では、1,3−オキソラン環には1つの含フッ素基しか配置させることができず、かつ導入できる含フッ素基は、トリフルオロアルキル基のみである。また、上記式(B)を合成する従来の方法では、1,3−オキソラン環に導入できるポリフルオロアルキル基は、4,5−の位置に1づつ、合計2つに必ず限定されていた。さらに、式(B)の含フッ素化合物を合成するための原料は、下記式(C)であり、この化合物を合成することは、困難であった。
【0007】
【化2】

【特許文献1】米国特許第3,308,107号明細書
【特許文献2】米国特許第3,450,716号明細書
【特許文献3】米国特許第3,978,030号明細書
【特許文献4】特開平5−339255号公報
【非特許文献1】Izvestiya A Kademii Nank SSSR, Seriya Khimicheskaya著「VIBRATIONAL SPECTROSCOPY」、1988年2月、p.392-395
【非特許文献2】Yuminovら著「VIBRATIONAL SPECTROSCOPY」、1989年4月、pp.938
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、有用で新規な含フッ素化合物の製造方法、該製造方法により得られる含フッ素化合物、含フッ素化合物の含フッ素ポリマー、及び含フッ素ポリマーを用いた光学材料又は電気材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、下記の合成方法を見出し、有用で新規な含フッ素化合物を得ることに成功した。すなわち、本発明は以下に示す通りである。
本発明の第1の態様は、下記式(1)で表される化合物の1種以上と、下記式(2)で表される化合物の1種以上とを反応させ得られた化合物を、フッ素ガス雰囲気下で、フッ素系溶液中においてフッ素化する工程を有する下記式(3)で表される含フッ素化合物の製造方法である。
【0010】
【化3】

【0011】
式(1)中、Xは水素原子又はフッ素原子を表し、Yは炭素数1〜7のアルキル基又は炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基を表す。式(2)中、Zは水酸基、塩素原子、又は臭素原子を表し、R1〜R4は各々独立に、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又は炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基を表す。
【0012】
【化4】

【0013】
式(3)中、Rff1〜Rff4は各々独立に、フッ素原子又は炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基を表す。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記フッ素ガス雰囲気が、窒素ガスとフッ素ガスとの混合雰囲気であって、フッ素ガスに対する窒素ガスの比率が、2以上4以下である下記式(3)で表される含フッ素化合物の製造方法である。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1の態様の前記フッ素化する工程において、反応温度を0℃〜5℃に保ち、充分に攪拌を行う下記式(3)で表される含フッ素化合物の製造方法である。
【0016】
本発明の第4の態様は、下記一般式(4)で表される含フッ素化合物である。
【0017】
【化5】

【0018】
式(4)中、Rff1及びRff2は各々独立に、フッ素原子又は炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基を表す。nは、1〜4の整数を表す。
【0019】
本発明の第5の態様は、第4の態様における含フッ素化合物の重合により得られる含フッ素ポリマーである。
【0020】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の含フッ素ポリマーを含む光学部材又は電気部材である。
【0021】
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載の含フッ素ポリマーを含む光学部材が、光導波路、光学レンズ、プリズム、フォトマスク、光ファイバーである。
本発明の第8の態様は、下記式(5)で表される化合物である。
【0022】
【化6】

【0023】
式(5)中、Xは水素原子又はフッ素原子を表す。Yは水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又は炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基を表す。R1〜R4は各々独立に、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又は炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基を表す。
【0024】
本発明の第9の態様は、下記式(6)で表される化合物である。
【0025】
【化7】

【0026】
式(6)中、Xは水素原子又はフッ素原子を表す。Yは水素原子、又は炭素数1〜7のアルキル基、又は炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基を表す。R3〜R4は各々独立に、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又は炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基を表す。nは、1〜4の整数を表す。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、有用で新規な含フッ素化合物の製造方法、該製造方法により得られる含フッ素化合物、含フッ素化合物の含フッ素ポリマー、及び含フッ素ポリマーを用いた光学材料又は電気材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
1.含フッ素化合物の製造方法
本発明の1,3−ジオキソラン誘導体である含フッ素化合物の製造方法について説明する。
本発明の製造方法では、下記式(1)と下記式(2)とを用いて得られた化合物を、フッ素ガス雰囲気下で、フッ素系溶液中においてフッ素化し、下記式(3)の1,3−ジオキソラン誘導体含フッ素化合物を製造する。
【0029】
【化8】

【0030】
式(1)中、Xは水素原子又はフッ素原子を表す。入手の容易さから、好ましくは、Xは水素原子である。Yは炭素数1〜7のアルキル基又は炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基を表す。Yがアルキル基の場合、好ましい炭素数は1〜3である。Yがポリフルオロアルキル基の場合、好ましくは炭素数1〜3のポリフルオロアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基である。Yとして特に好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基である。
【0031】
式(2)中、Zは水酸基、塩素原子、又は臭素原子を表す。
式(2)中、R1〜R4は各々独立に、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又は炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基を表す。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを反応させた後、生成物を構成する水素は全てフッ素化される。それゆえ、R1〜R4は、水素原子やアルキル基であっても、又はポリフルオロアルキル基であってもよいが、コスト面からR1〜R4は各々独立に、水素原子又は炭素数1〜7のアルキル基であることが好ましい。より好ましくは、R1〜R4は各々独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。R1とR2とが互いに結合して、環を形成していても良い。
【0032】
式(3)中、Rff1〜Rff4は各々独立に、フッ素原子又は炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基を表す。好ましくは、Rff1〜Rff4は各々独立に、フッ素原子又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基である。Rff1とRff4とが互いに結合して、環を形成していても良い。
これら化合物の反応スキームを以下に例示するが、これに限定されない。
【0033】
【化9】

【0034】
本発明の製造工程を大きく区分すると、少なくとも以下の4つの工程を含むことが好ましい。
(1) 下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物とを、脱水反応させる工程。
(2)フッ素系溶液中でフッ素化する工程。
(3)塩基により、カルボン酸塩を生成させる工程。
(4)加熱し、脱炭酸分解させる工程。
以下、(1)〜(4)の4つの工程について、説明する。
【0035】
(1)の工程:
式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物とは、等モルずつで反応させることが好ましい。ここで、式(1)で表される化合物は、1種類のみであっても2種以上の併用であってもよい。式(2)で表される化合物も、1種類のみであっても2種以上の併用であってもよい。
更に、上記反応は発熱反応であるため、冷却しながらそれぞれを反応させることが好ましい。その他の反応条件については特に制限は無く、次の(2)の工程の前に、蒸留等の精製工程を加えることも好ましい。
【0036】
(2)の工程:
(1)で生成した化合物の水素原子を全てフッ素原子で置換する工程である。その方法としては、フッ素系溶液中で直接フッ素化することが好ましい。このような直接フッ素化については、Synthetic Fluorine Chemistry, Eds by G.A.Olah,R.D.Chambers and G.K.S.Prakash, J.Wiley and Sons. Inc. New York(1992)のR.J.Lagow,T.R.Bierschenk,T.J.Juhlke and H.kawa, 第5章のポリエステル合成方法等を参照できる。
フッ素系溶液としては特に制限はないが、例えば、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン、ポリフルオロベンゼン等が好ましく、具体的には、Fluorinert FC‐75、FC‐77、FC‐88(3M社製)等を挙げることができる。フッ素系溶液は、(1)の工程で得られた化合物に対して、2倍〜10倍(質量比)程度、用いることが好ましい。より好ましくは、3倍〜4倍である。
【0037】
フッ素化は、窒素ガスで希釈されたフッ素ガス流下で行う。その希釈率の好ましい範囲は、フッ素ガスに対して窒素ガスは2倍〜6倍(容積比)の場合であり、より好ましくは、2倍〜4倍である。
【0038】
(1)の工程で得られた化合物を、フッ素溶媒に溶解する(前記溶媒に対する前記化合物の質量比は、0.4〜0.5である。)。F2/N2ガス雰囲気下で、フッ素系溶媒に滴下される。滴下速度は、0.3ml/分以上20ml/分以下が好ましく、0.5ml/分以上10ml/分以下がより好ましい。
【0039】
(2)のフッ素化の工程では、温度調節しながら行う。反応温度は、5℃以下とし、好ましくは、0℃以上5℃以下である。(2)のフッ素化の工程では、フッ素系溶液を充分に攪拌しながら行うことが好ましい。
【0040】
(3)の工程:
(2)の工程で得られたフッ素化合物を、塩基によりカルボン酸塩を生成させる。塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム等が好ましく、水酸化カリウムがより好ましい。
【0041】
(4)の工程:
得られたカルボン酸塩を加熱し、脱炭酸させる。加熱温度は、250℃〜320℃が好ましく、270℃〜290℃がより好ましい。
【0042】
本発明の製造方法では、上記(1)〜(4)の工程以外の工程を加えて、製造することもできる。
【0043】
2.含フッ素ポリマーの製造方法
上記の含フッ素化合物は、常法によってラジカル重合し、含フッ素ポリマーを製造できる。ラジカル触媒としては、過酸化物を用いることが好ましいが、フッ素化合物のフッ素原子が水素原子に置換しないように、パーフルオロ過酸化物を用いる。
【0044】
3.含フッ素化合物
本発明の製造方法では、1,3−ジオキソラン環の任意の位置で、水素原子をポリフルオロ基又はフッ素原子に置換することができ、式(3)で表されるパーフルオロ−2−メチレン−1,3−ジオキソランを得ることができる。
【0045】
【化10】

【0046】
式(3)中、Rff1〜Rff4は各々独立に、フッ素原子又は炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基を表す。好ましくは、Rff1〜Rff4は各々独立に、フッ素原子又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表す
【0047】
式(3)で表される化合物は、過酸化物を用いて容易に重合させることができる。また、この化合物は5員環であり、安定した物質である。6員環の場合には、重合の際に開環しやすくなるため、得られるポリマーは混合物となる。この場合、耐熱性などの物理的性質が低下しやすい。
【0048】
更に、下記式(4)で表される化合物は、新規な化合物である。
【0049】
【化11】

【0050】
ff1及びRff2は各々独立に、フッ素原子又は炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基を表す。nは、1〜4の整数を表し、好ましくは、1〜2の整数を表す。
【0051】
4.含フッ素ポリマーの製造方法
上記の含フッ素化合物は、常法によってラジカル重合し、含フッ素ポリマーを製造できる。ラジカル触媒としては、過酸化物を用いることが好ましいが、フッ素化合物のフッ素原子が水素原子に置換しないように、パーフルオロ過酸化物を用いる。
【0052】
5.含フッ素ポリマーの用途
式(4)で表される化合物を重合して得られるポリマーは、光学部材、電気部材に用いることができる。このポリマーは、ガラス転移温度が高く、非晶質である。それゆえ、そのようなポリマーは、プラスチック光ファイバー、光導波路用材料、光学レンズ、プリズム、フォトマスク等に好適に用いることができ、特にプラスチック光ファイバー、光導波路用材料、光学レンズに好適である。
【実施例】
【0053】
[実施例1]
<パーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランの合成>
2−カルボメチル−2−トリフルオロメチル−4−メチル−1,3−ジオキソランの合成:
水冷冷却器を備えた3L三口フラスコ、温度計、マグネチックスターラー、及び等圧滴下漏斗を準備し、2−クロロ−1−プロパノールと1−クロロ−2−プロパノールとの混合物を139.4g(計1.4モル)をフラスコに投入した。フラスコは0℃に冷やし、その中にトリフルオロピルビン酸メチルをゆっくりと加え、さらに2時間攪拌した。そこに100mlのDMSOと194gの炭酸カリウムを1時間かけて加えた後、さらに続けて8時間攪拌し、反応混合物を得た。この生成した反応混合物を1Lの水とを混合し、その水相をわけ、これを更にジクロロメチレンで抽出後、このジクロロメチレン溶液を有機反応混合物相と混合し、その溶液を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を除去した後、245.5gの粗製物が得られた。この粗製物を減圧下(12Torr)で分留し、2−カルボメチル−2−トリフルオロメチル−4−メチル−1,3−ジオキソランの精製物を230.9g得た。精製物の沸点は、77〜78℃で、収率は77%であった。
HNMR(ppm):4.2−4.6,3.8−3.6(CHCH2,muliplet,3H),3.85−3.88(COOCH3,multiplet,3H),1.36−1.43(CCH3,multiplet,3H)
19FNMR(ppm):−81.3(CF3,s,3F)
【0054】
2−カルボメチル−2−トリフルオロメチル−4−メチル−1,3−ジオキソランのフッ素化:
10Lの攪拌反応槽に4Lの1,1,2−トリクロロトリフルオロエタンを注入した。攪拌反応槽で、窒素を1340cc/minの流速で流し、フッ素を580cc/minの流速で流し、窒素/フッ素の雰囲気下とした。5分後、先に準備した2−カルボメチル−2−トリフルオロメチル−4−メチル−1,3−ジオキソランの290gを750mlの1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン溶液に溶かし、この溶液を反応槽に0.5ml/分の速度で加えた。反応槽は0℃に冷却した。全てのジオキソランを24時間で加えた後、フッ素ガス流を止めた。窒素ガスをパージした後、水酸化カリウム水溶液が弱アルカリ性になるまで加えた。
減圧下で揮発物質を除去した後、反応槽の周囲を冷却し、その後48時間70℃の減圧下で乾燥して、固体の反応生成物を得た。固形の反応生成物は、500mlの水に溶解させ、過剰の塩酸を添加して、有機相と水相とに分離させた。有機相を分離して減圧下で蒸留し、パーフルオロ−2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−カルボン酸を得た。主蒸留物の沸点は103℃−106℃/100mmHgであった。フッ素化の収率は、85%であった。
【0055】
パーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランの合成:
上記蒸留物を水酸化カリウム水溶液で中和し、パーフルオロ−2,4−ジメチル−2−カルボン酸カリウム−1,3−ジオキソランを得た。このカリウム塩を1日間70℃で真空乾燥した。250℃〜280℃で、かつ窒素又はアルゴン雰囲気下で、塩を分解した。−78℃に冷やした冷却トラップで凝縮させ、収率82%でパーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランを得た。生成物の沸点は45℃/760mmHgであった。19FNMRとGC−MSを用いて生成物を同定した。
【0056】
19FNMR:−84ppm(3F,CF3),−129ppm(2F,=CF2);
GC−MS:m/e244(Molecular ion)225,197,169,150,131,100,75,50.
【0057】
下記に実施例1の合成スキームの概略を示す。
【0058】
【化12】

【0059】
[実施例2]
<パーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランのポリマー化>
実施例1で得られたパーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランの100gとパーフルオロベンゾイルパーオキサイドの1gをガラスチューブにいれ、これを2サイクルの冷凍/解凍真空機で脱気した後、アルゴンを再充填し、50℃で数時間加熱した。内容物は固体となったが、さらに70℃で一晩70℃加熱すると、100gの透明な棒状物が得られた。
透明な棒状物をFluorinert FC-75(住友スリーエム社製)に溶かし、この溶液をガラス板に注ぎ、ポリマーの薄膜を得た。ガラス転移温度は、117℃で、完全な非晶質であった。透明棒状物をヘキサフルオロベンゼンに溶かし、これにクロロホルムを加え沈殿させることで、生成物を精製させた。Tgは133℃まで上昇した。
様々な波長での屈折率を図1Aに示し、ポリマーの材料分散性を図2に示した。このような屈折率から、得られたポリマーは、光ファイバー、光導波路、フォトマスク好適な材料であった。
【0060】
[実施例3]
<パーフルオロ−4,5−ジメチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランの合成>
2,4,5−トリメチル−2−カルボキシメチル−1,3−ジオキソランの合成:
2.0molの2,3−ブタンジオールと、2.0molのピルビン酸メチルと、10gのカチオン交換樹脂(H型)と、1Lの無水ベンゼンとの反応混合物を、ディーンスタークトラップを備えるフラスコに水が生じなくなるまで還流し、2,4,5−トリメチル−2−カルボキシメチル−1,3−ジオキソランを得た。収率は75%で、生成物の沸点は45℃/1.0mmHgであった。
【0061】
1HNMR:1.3ppm(6H,−CH3)、1.56ppm(3H,−CH3),3.77ppm(3H,OCH3),3.5−4.4ppm(m,2H,−OCH−)
【0062】
パーフルオロ−2,4,5−トリメチル−2−カルボン酸−1,3−ジオキソランの合成:
得られた2,4,5−トリメチル−2−カルボキシメチル−1,3−ジオキソランの500gを実施例1と同様の方法で、窒素で希釈したフッ素ガス流下で、Fluorinert FC-75(商品名)中においてフッ素化した。反応が終了した後、窒素ガスを30分間パージした。得られた混合物を水酸化カリウム水溶液で処理し、有機相と弱アルカリ性の水相とを形成させた。その後、減圧下で水相の水を除去し、固体物を得た。得られた固体物は濃塩酸で酸性化させて、蒸留し、パーフルオロ−2,4,5−トリメチル−2−カルボン酸−1,3−ジオキソランを得た。収率は85%、沸点は61℃/2.5mmHgであった。
【0063】
パーフルオロ−4,5−ジメチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランの合成:
上記蒸留物を水酸化カリウム水溶液で中和し、パーフルオロ−2,4,5−トリメチル−2−カルボン酸カリウム−1,3−ジオキソランを得た。このカリウム塩を1日間、70℃で真空乾燥した。さらに窒素又はアルゴン雰囲気下で250℃〜280℃で加熱し、塩を分解した。分解生成物を−78℃の冷却トラップで凝縮し、収率78%でパーフルオロ−4,5−ジメチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランを得た。生成物の沸点は60℃であった。19FNMRとGC−MSを用いて生成物を確認した。
【0064】
19FNMR:−80ppm(6F,CF3),−129ppm(2F,=CF2);
GC−MS:m/e294(Molecular ion).
【0065】
下記に実施例3の合成スキームの概略を示す。
【0066】
【化13】

【0067】
[実施例4]
<パーフルオロ−4,5−ジメチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランのポリマー化>
ガラスチューブ内に、実施例3得られたパーフルオロ−4,5−ジメチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランの10gとパーフロロベンゾイルパーオキサイドの80mgを封入し、ガラスチューブは、3サイクルの冷凍/解凍真空機で脱気してアルゴンを再充填した。チューブを封止し、1日間50℃で加熱した。内容物は固体となり、さらにチューブを4日間70℃で加熱し、10gの透明棒状物を得た。
透明棒状物の一部をヘキサフルオロベンゼン溶液に溶解し、クロロホルムを加えて沈殿させることで精製した。収率は98%以上であった。溶液重合の場合、開始剤としてパーフルオロベンゾイルパーオキサイドを用い、Fluorinert FC-75(商品名)中でモノマーの溶液重合が行われた。
得られたポリマーの19FNMRは、−80ppm(6F,CF3),−100〜−120ppm(2F,主鎖),124ppm(2F,−OCF)であった。図1のBに得られたポリマーの屈折率を示し、図3に200〜2000nmでの光伝導性を示した。このような屈折率と光伝導性から、得られたポリマーは、光ファイバー、光導波路、フォトマスクに好適な材料であった。
【0068】
[実施例5]
<パーフルオロ−4,5−シクロテトラメチレン−2−メチレン−1,3−ジオキソランの合成>
2−メチル−2−メトキシカルボキシル−4,5−シクロテトラメチレン−1,3−ジオキソランの合成:
100g(1mol)の1,2−シクロヘキサンジオールと、204g(2mol)のピルビン酸メチルと、1.5Lの無水ベンゼンと、10gのカチオン交換樹脂(H型)との反応混合物を、ディーンスタークトラップを備えるフラスコに水が生じなくなるまで還流した。カチオン交換樹脂は、濾過して除去した。生成物を65℃/5mmHgで蒸留し、2−メチル−2−メトキシカルボキシル−4,5−シクロテトラメチレン−1,3−ジオキソランを得た。収率は50〜60%であった。
【0069】
2−メチル−2−メトキシカルボキシル−4,5−シクロテトラメチレン−1,3−ジオキソランのフッ素化:
得られた2−メチル−2−メトキシカルボキシル−4,5−シクロテトラメチレン−1,3−ジオキソランを実施例1と同様の方法で、F2/N2流下で、フッ素溶媒Fluorinert FC−75中においてフッ素化した。反応が終了した後、溶媒と副生したフッ化水素を除去し、水酸化カリウムを処理することで、パーフルオロ−2−メチル−2−カルボン酸カリウム−4,5−シクロテトラメチレン−1,3−ジオキソランを得た。このカリウム塩を減圧下60℃で加熱して乾燥した。収率は75%であった。乾燥したカリウム塩を、窒素雰囲気下の250℃で分解した。−78℃の冷却トラップで凝縮し、収率85%でパーフルオロ−4,5−シクロテトラメチレン−2−メチレン−1,3−ジオキソランを得た。生成物の沸点は60℃であった。19FNMRとGC−MSを用いて生成物を同定した。
【0070】
19FNMR:−137ppm(2F,=CF2),126〜134ppm(8F,CF2),−125ppm(2F,OCF);
GC−MS:m/e360(Molecular ion).
【0071】
下記に実施例5の合成スキームの概略を示す。
【0072】
【化14】

【0073】
[実施例6]
<パーフルオロ−4,5−シクロテトラメチレン−2−メチレン−1,3−ジオキソランのポリマー化>
実施例5得られたパーフルオロ−4,5−シクロテトラメチレン−2−メチレン−1,3−ジオキソランの10gとパーフロロベンゾイルパーオキサイドの80mgを封入したガラスチューブを、2サイクルの冷凍/解凍真空機で脱気し、更にアルゴンを再充填した後、チューブを閉じ、12時間50℃で加熱した。内容物は固体となり、さらにチューブを一晩70℃で加熱したところ、10gの透明棒状物が得られた。
得られたポリマーは、完全に非晶質で、透明であった。ポリマーの屈折率は、1.3160(632.8nm)、1.3100(1544nm)であった。ガラス転移温度は、約160℃であった。
【0074】
19FNMR:−120〜140ppm(8F,CF2),−100〜−118ppm(2F,主鎖),120ppm(2F,−OCF)。このような高いガラス転移温度から、得られたポリマーは熱による変形が少なく、電気部材、光ファイバー、光導波路等に好適な材料となった。
【0075】
[実施例7]
<パーフルオロ−4,5−シクロトリメチレン−2−メチレン−1,3−ジオキソランの合成>
2−メチル−2−メトキシカルボキシル−4,5−シクロトリメチレン−1,3−ジオキソランの合成:
102g(1mol)の1,2−シクロペンタンジオールと、204g(2mol)のピルビン酸メチルと、1.5Lの無水ベンゼンと、10gのカチオン交換樹脂(H型)との反応混合物を、水が生じなくなるまで還流した。カチオン交換樹脂を濾過して除去した後、生成物を67℃/20mmHgで蒸留し、2−メチル−2−メトキシカルボキシル−4,5−シクロトリメチレン−1,3−ジオキソランを得た。収率は60〜70%であった。
【0076】
2−メチル−2−メトキシカルボキシル−4,5−シクロトリメチレン−1,3−ジオキソランのフッ素化:
得られた2−メチル−2−メトキシカルボキシル−4,5−シクロトリメチレン−1,3−ジオキソランを実施例1と同様の方法で、F2/N2流下で、フッ素溶媒Fluorinert FC−75中においてフッ素化した。反応生成物を水酸化カリウムで処理することで、パーフルオロ−2−メチル−2−カルボン酸カリウム−4,5−シクロトリメチレン−1,3−ジオキソランを得た。このカリウム塩を減圧下60℃で加熱して乾燥した。収率は82%であった。乾燥したカリウム塩を、アルゴン流下、260℃で分解した。粗生物を85℃で蒸留し、収率79%でパーフルオロ−4,5−シクロトリメチレン−2−メチレン−1,3−ジオキソランを得た。
【0077】
下記に実施例7の合成スキームの概略を示す。
【0078】
【化15】

【0079】
[実施例8]
<パーフルオロ−4,5−シクロトリメチレン−2−メチレン−1,3−ジオキソランのポリマー化>
実施例5得られたパーフルオロ−4,5−シクロトリメチレン−2−メチレン−1,3−ジオキソランの20gとパーフロロベンゾイルパーオキサイドの150mgをガラスチューブに詰めた。以下、実施例2と同様の方法でポリマー化を行った。ポリマーは、透明で非晶質であった。ポリマーのガラス転移温度は、150℃であった。
このように透明が高く非晶質であり、かつガラス転移温度が高いことから、得られたポリマーは、光学部材、電気部材等、広範な用途に利用し得る優れた材料となった。特に、光ファイバー、光導波路の用途に適した材料であった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施例1及び実施例4で合成されたポリマーの屈折率を示す図である。
【図2】実施例1で合成されたポリマーの材料分散性を示す図である。
【図3】実施例4で合成されたポリマーの光導電性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物の1種以上と、下記式(2)で表される化合物の1種以上とを反応させ得られた化合物を、フッ素ガス雰囲気下で、フッ素系溶液中においてフッ素化する工程を有する下記式(3)で表される含フッ素化合物の製造方法。
【化1】

(式(1)中、Xは水素原子又はフッ素原子を表し、Yは炭素数1〜7のアルキル基又は炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基を表す。式(2)中、Zは水酸基、塩素原子、又は臭素原子を表し、R1〜R4は各々独立に、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又は炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基を表す。)
【化2】

(式(3)中、Rff1〜Rff4は各々独立に、フッ素原子又は炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記フッ素ガス雰囲気が、窒素ガスとフッ素ガスとの混合雰囲気であって、フッ素ガスに対する窒素ガスの比率が、2以上4以下であるクレーム1に記載の前記式(3)で表される含フッ素化合物の製造方法。
【請求項3】
前記フッ素化する工程において、反応温度を0℃〜5℃に保ち、充分攪拌を行うクレーム1に記載の前記式(3)で表される含フッ素化合物の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(4)で表される含フッ素化合物。
【化3】

(式(4)中、Rff1及びRff2は各々独立に、フッ素原子又は炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基を表す。nは、1〜4の整数を表す。)
【請求項5】
請求項4に記載の含フッ素化合物の重合により得られる含フッ素ポリマー。
【請求項6】
請求項5に記載の含フッ素ポリマーを含む光学部材又は電気部材。
【請求項7】
請求項6に記載の光学部材が、光導波路、光学レンズ、プリズム、フォトマスク、又は光ファイバーであるクレーム6に記載の光学部材又は電気部材。
【請求項8】
下記式(5)で表される化合物。
【化4】

(式(5)中、Xは水素原子又はフッ素原子を表す。Yは水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又は炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基を表す。R1〜R4は各々独立に、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又は炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基を表す。)
【請求項9】
下記式(6)で表される化合物。
【化5】

(式(6)中、Xは水素原子又はフッ素原子を表す。Yは水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又は炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基を表す。R3又はR4は各々独立に、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又は炭素数1〜7のポリフルオロアルキル基を表す。nは、1〜4の整数を表す。)


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−504125(P2007−504125A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524536(P2006−524536)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012866
【国際公開番号】WO2005/021526
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(504230039)
【住所又は居所原語表記】3 Horizon Road,Fort Lee,New Jersey 07024−6705 U.S.A.
【出願人】(591061046)
【Fターム(参考)】