説明

含窒素化合物の製造方法

【課題】脂肪酸アミドを温和な条件で水素化還元し、副生成物の少ない高純度の脂肪族3級アミン及び該アミンから得られるアミン誘導体を、生産性よく経済的に有利に製造する方法を提供する。
【解決手段】銅と、周期表2族、3族、及び7族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素を含む触媒の存在下、特定の脂肪族アミドを水素化還元して、脂肪族3級アミンを製造する方法、その触媒、及び上記製造方法により得られる3級アミンと過酸化水素とを反応させるアミンオキシドの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含窒素化合物の製造方法、特に、脂肪酸アミドから高純度の脂肪族3級アミン及びアミン誘導体を、経済的に有利に製造する方法、及びこの方法に用いられる3級アミン製造用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族3級アミンは、家庭用や工業用分野における重要な中間体であって、例えば繊維柔軟仕上げ剤、帯電防止剤、ガソリン添加剤、シャンプー、リンス、殺菌剤、洗浄剤など、幅広い用途に用いられている。
脂肪族3級アミンの製造方法として、安価で再生可能な脂肪酸から得られるアミドを原料とする、アミド還元法が知られている。このアミド還元法として、これまでコバルト系触媒、貴金属系触媒などを用いる方法が知られているが、これらの方法は、いずれも溶媒を使用するため、生産性に劣るという問題がある。
また、特許文献1には、銅−クロム触媒を用いる方法が開示されているが、この方法は反応圧力が高く、設備負荷が大きい。また、特許文献2では、銅−クロム触媒にゼオライトを物理添加することにより、脱水効率を高め、反応性の改善を試みており、特許文献3には、マンガンを銅−クロム系触媒に添加することにより、耐久性を向上させることが開示されているが、いずれにおいても依然として反応圧力が高い。また、銅−クロム系触媒は活性が高く、これまで汎用されてきたが、クロムの毒性から、使用することは好ましくない。クロムを含有しない銅系触媒として、特許文献4に銅―亜鉛、銅―亜鉛―ルテニウム又は銅―ニッケル―ルテニウム触媒が開示されているが反応選択性が不十分である。
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許公開第1493839号公報
【特許文献2】米国特許第4448998号明細書
【特許文献3】米国特許第5075505号明細書
【特許文献4】特開2001−302596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、脂肪酸アミドを温和な条件で水素化還元し、副生成物の少ない高純度の脂肪族3級アミン及びこれを用いたアミンオキシド等のアミン誘導体を、生産性よく経済的に有利に製造する方法、及び3級アミン製造用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、触媒として、銅と、周期表2族、3族及び7族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素を含む触媒を用いることにより、前記目的を達成し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)銅と、周期表(長周期型)2族、3族及び7族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素を含む触媒の存在下、一般式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R1は炭素数1〜23の直鎖状若しくは分岐を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐を有するアルキル基を示す。)
で表されるアミドを水素化還元する、一般式(2)
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R1、R2及びR3は、前記と同じである。)
で表される3級アミンの製造方法、
(2)上記(1)に記載の3級アミンの方法に用いられる、上記(1)に記載の触媒、及び
(3)上記(1)に記載の製造方法により得られた3級アミンと過酸化水素とを反応させる、アミンオキシドの製造方法、
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、脂肪酸アミドを温和な条件で水素化還元し、副生成物の少ない高純度の脂肪族3級アミン及びこれを用いたアミンオキサイド等のアミン誘導体を、生産性よく経済的に有利に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の3級アミンの製造方法においては、触媒の存在下、一般式(1)
【化3】

で表されるアミドを水素化還元して、一般式(2)
【0012】
【化4】

【0013】
で表される3級アミンを製造する。
前記一般式(1)及び(2)の各々において、R1は炭素数1〜23の直鎖状若しくは分岐を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を示す。なお、分岐を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基には脂環式基も包含する。このR1としては、3級アミンの有用性の点から、炭素数が7〜23の直鎖状若しくは分岐を有するアルキル基又はアルケニル基が好ましく、例えば各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、各種ノナデシル基、各種エイコサニル基、各種ヘンエイコサニル基、各種トリコサニル基、各種ヘプテニル基、各種オクテニル基、各種ノネニル基、各種デセニル基、各種ウンデセニル基、各種ドデセニル基、各種トリデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ペンタデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種オクタデセニル基、各種ノナデセニル基、各種イコセニル基、各種ヘンエイコセニル基及び各種ベヘニル基などを挙げることができ、好ましくは、各種ヘプチル基、各種ノニル基、各種ウンデシル基、各種トリデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘプタデシル基、各種ノナデシル基、各種ヘンエイコサニル基、各種ヘプテニル基、各種ノネニル基、各種ウンデセニル基、各種トリデセニル基、各種ペンタデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種ノナデセニル基、各種ヘンエイコセニル基である。ここで、「各種」とは上記直鎖状若しくは分岐を有するものをいずれも含むことを示す。
【0014】
前記一般式(1)及び(2)の各々において、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐を有するアルキル基を示す。なお、分岐を有するアルキル基には、シクロアルキル基も包含する。このR2及びR3の各々としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができるが、これらの中で、3級アミンの有用性の点から、メチル基、エチル基又は、プロピル基が好ましい。前記R2及びR3は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0015】
前記一般式(1)で表されるアミドとしては、例えば、N,N−ジメチルカプリルアミド、N,N−ジメチル2−エチルヘキサンアミド、N,N−ジメチルカプリンアミド、N,N−ジメチルラウロイルアミド、N,N−ジメチルミリストイルアミド、N,N−ジメチルパルミトイルアミド、N,N−ジメチルステアロイルアミド、N,N−ジメチルイソステアロイルアミド、N,N−ジメチルオレイルアミド、N,N−ジメチルベヘニルアミドなどのN,N−ジメチル脂肪酸アミド、これらの脂肪酸アミドのN,N−ジメチルをN,N−ジエチル、N,N−ジプロピル、N−エチル−N−メチル、N−メチル−N−プロピル又はN−エチル−N−プロピルに置き換えた化合物などを挙げることができる。
【0016】
一方、前記一般式(2)で表される3級アミンとしては、前記一般式(1)で例示したアミドに対応する化合物として、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチル2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N,N−ジメチルミリスチルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルイソステアリルアミン、N,N−ジメチルオレイルアミン、N,N−ジメチルベヘニルアミンなどのN,N−ジメチル脂肪族アミン、これらの脂肪族アミンのN,N−ジメチルをN,N−ジエチル、N,N−ジプロピル、N−メチル−N−プロピル、N−エチル−N−メチル、N−メチル−N−プロピル又はN−エチル−N−プロピルに置き換えた化合物などを挙げることができる。
【0017】
本発明に用いられる触媒は、(a)銅と、(b)周期表(長周期型)2族、3族及び7族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素を含む触媒であり、好ましくはこれに(c)周期表8〜10族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素を含む触媒である。
前記(b)成分である周期表2族、3族及び7族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素としては、触媒の活性、選択性の点から、カルシウム、バリウム、マンガン及びランタンの中から選ばれる少なくとも1種の元素が好ましい。また、好ましく用いられる前記(c)成分である周期表8〜10族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素としては、触媒の活性、選択性の点から、白金族元素、すなわちルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金の中から選ばれる少なくとも1種の元素が好ましく、ルテニウム、ロジウム、及びパラジウムの中から選ばれる少なくとも1種の元素がより好ましい。
【0018】
当該触媒の好ましい形態としては、例えばCu−Ca系触媒、Cu−Ba系触媒、Cu−Mn系触媒、Cu−Mn−Ru系触媒、Cu−La−Ru系触媒、Cu−La−Pd系触媒を挙げることができる。
当該触媒において、(a)に対する(b)成分の割合は、触媒活性の観点から、(b)/(a)質量比で0.05〜10であることが好ましく、0.05〜5であることがより好ましい。また、(a)に対する(c)成分の割合は、触媒活性の観点から、(c)/(a)質量比で0.0001〜0.1であることが好ましく、0.0005〜0.05であることがより好ましい。
このような複合金属系触媒を用いることにより、単体金属では想像し得ない経済的触媒性能を達成することができる。
【0019】
上記各金属の含有量は、白金族元素を除く各元素については、波長分散型蛍光X線装置を用いて定量することができる。具体的には、各元素を含む試料0.1gに四ホウ酸リチウム5g及び剥離剤(LiCO3:LiBr:LiNO3=5:1:5)を加えて、1050℃でアルカリ溶融し、ガラスビードを作成する。これを波長分散型蛍光X線装置(理学電機製ZSX100e)を使用して評価する。得られたX線強度を高純度の各元素試料を目的濃度に合わせて混合したものから得た検量線に照合して各金属の含有量を求める。
また、白金族元素については、硬質ガラス試験管に試料0.5gとその数十倍量の硫酸水素アンモニウムを入れて加熱分解した後、分解物を水で加温溶解し、溶液中の元素をICP発光分析法により測定する。
【0020】
当該触媒においては、前記の複合金属は担体に担持して用いることができる。担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、活性炭、ゼオライト、珪藻土などを挙げることができるがこのかぎりではない。これらの担体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。担持方法については特に制限はなく、従来公知の方法、例えば含浸法、沈殿法、イオン交換法などを、担体の種類に応じて適宣選択することができる。担持量は、金属酸化物として、担体に対し、好ましくは5〜70質量%程度、より好ましくは10〜60質量%である。
【0021】
当該触媒は、例えば以下のようにして調製することができる。
前記各金属の硝酸塩、硫酸塩、塩化物などを含有する水溶液と、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤、さらに必要により担体とを混合して沈殿物を得、この沈殿物をろ過、遠心分離などの方法で固液分離をする。次いで、得られた固形分をイオン交換水で洗浄後、乾燥させ、好ましくは300〜1000℃程度の温度で焼成処理することにより、金属酸化物として得ることができる。
【0022】
本発明の3級アミンの製造方法においては、前記のようにして調製された触媒の存在下に、前記一般式(1)で表されるアミドを水素化還元する。
この水素化還元反応は、水素雰囲気下、常圧又は水素加圧下で、また水素流通下、常圧又は加圧下でも実施することができる。反応形式は、連続式、回分式のいずれであってもよく、回分式の場合、触媒の添加量は、反応性、副生成物の抑制性及び経済性などの観点から、原料のアミドに対して、通常0.05〜20質量%程度、好ましくは0.1〜10質量%である。反応温度は、反応速度及び副生成物の抑制などの観点から、通常140〜300℃程度、好ましくは160〜270℃である。また、反応圧力は、反応速度及び設備負荷の抑制などの観点から、通常常圧乃至25MPa程度、好ましくは0.1〜5.0MPa、より好ましくは0.1〜3.0MPaである。
【0023】
このようにして、前記一般式(1)で表されるアミドを温和な条件で水素化還元することにより、副生成物少ない高純度の前記一般式(2)で表される3級アミンを生産性よく、経済的に有利に製造することができる。
本発明は、前述した本発明の3級アミンの製造方法に用いられる3級アミン製造用触媒をも提供する。該触媒の詳細については、前述の通りである。
【0024】
本発明は、また、上記3級アミンの製造方法により得られた3級アミンを用いたアミン誘導体の製造方法、特にアミンオキシドの製造方法を提供する。
上記アミンオキシドの製造においては、上記3級アミンの製造方法で得られた3級アミンを原料として、これと過酸化水素とを反応させる。
本発明において、3級アミンと反応させる過酸化水素としては、20〜90質量%の水溶液が工業的に入手可能であり、このいずれの濃度のものも本発明で使用できるが、安全性又は入手の容易性の点から、35〜65質量%のものが好ましい。過酸化水素の使用量は、未反応アミンの残留を抑制する観点から、3級アミン1モルに対して、好ましくは0.9〜1.2倍モル、より好ましくは0.95〜1.1倍モル、さらに好ましくは 1.0〜1.05倍モルである。
【0025】
3級アミンと過酸化水素との反応の際の反応温度は、過酸化物の分解を抑制する観点から、好ましくは20〜100℃、より好ましくは30〜95℃、更に好ましくは40〜90℃の範囲である。該反応においては、反応を促進させるために公知の触媒を使用することができ、例えば、二酸化炭素、重炭酸ナトリウムとピロリン酸ナトリウムの混合物、クエン酸や酒石酸又はその塩、及び燐タングステン酸又はその塩などを用いることができる。
また、上記反応においては溶媒を使用することができ、溶媒としては、一般に水が用いられるが、アミンオキサイド水溶液の粘度を調節するため、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水溶性溶媒を併用することもできる。
【0026】
本発明の3級アミンの製造方法によれば、高い反応性で3級アミンを得ることができ、この3級アミンを原料とすることで、低い製造コストでアミンオキシドを得ることができる。本発明の3級アミンの製造方法により得られる3級アミンは、アミンオキシド等のアミン誘導体の製造に好適に用いられ、アミンオキシドは、各種洗浄剤に補助活性剤として使用されており、例えば、食器用洗浄剤、シャンプー、衣料用洗浄剤など、幅広い用途に好適に使用される。
本発明の3級アミンを使用するアミンオキシド以外のアミン誘導体としては、例えば、ベンザルコニウム塩化物、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニオ酢酸塩等が挙げられ、これらの製造方法としては、公知の方法がいずれも使用できる。
【実施例】
【0027】
調製例1
セパラブルフラスコに硝酸銅三水和物100gと硝酸カルシウム四水和物39gを仕込み2000mlの水に溶解した後、攪拌しながら昇温した。50℃で合成ゼオライト[東ソー(株)製「ゼオラムF9」]31gを仕込み、90℃で10質量%Na2CO3水溶液584g(金属塩と等モルのNa2CO3)を1時間で滴下した後、さらに1時間攪拌した。その後、沈殿物を濾過、水洗し、110℃にて一昼夜乾燥したのち、600℃で空気下、1時間焼成して銅系触媒を得た。得られた銅系触媒における金属酸化物は各金属原子の質量比Cu:Ca=4:1で、担体に対する担持量(酸化銅と担体の総和に対する酸化銅の比率)が50質量%であった。
【0028】
調製例2及び3
硝酸カルシウムを、硝酸バリウム又は硝酸マンガンに代えた以外は、調製例1と同様にして表1に示す金属比の銅系触媒を得た。
【0029】
調製例4及び5
合成ゼオライトを、アルミナ[水澤化学工業(株)製「MGA」]、又はジルコニア粉末[第一稀元素化学工業(株)製「RC-100」]に代えた以外は、調製例2と同様にして表1に示す金属比の銅系触媒を得た。
【0030】
調製例6
セパラブルフラスコに硝酸銅三水和物100gと硝酸マンガン六水和物34g及び塩化ルテニウム0.54gを仕込み2000mlの水に溶解した後、攪拌しながら昇温した。50℃で合成ゼオライト[東ソー(株)製「ゼオラムF9」]31gを仕込み、90℃で10質量%Na2CO3水溶液549g(金属塩と等モルのNa2CO3)を1時間で滴下し後、さらに1時間攪拌した。その後、沈殿物を濾過・水洗し、110℃にて一昼夜乾燥したのち、500℃で空気下、1時間焼成して銅系触媒を得た。得られた銅系触媒における金属酸化物は各金属原子の質量比Cu:Mn:Ru=4:1:0.01で、担体に対する担持量(酸化銅と担体の総和に対する酸化銅の比率)が50質量%であった。
【0031】
調製例7及び8
調製例7では硝酸マンガン六水和物34gを硝酸ランタン六水和物20gに代え、調製例8では硝酸マンガン六水和物34gを17g、塩化ルテニウム0.54gを塩化パラジウム0.44gに代えた以外は、調製例6と同様にして、表1に示す金属比の銅系触媒を得た。
【0032】
比較調製例1
硝酸銅三水和物100gと硝酸カルシウム四水和物39gに代えて、硝酸銅三水和物100gと硝酸亜鉛30gを用いた以外は、調製例1と同様にして表1に示す金属比のCu−Zn触媒を得た。
比較調製例2
硝酸マンガン六水和物34gに代えて、硝酸ニッケル34gを用いた以外は、調製例6と同様にして、表1に示す金属比のCu−Ni−Ru触媒を得た。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例1
回転式オートクレープに、N,N−ジメチルラウロイルアミド300g、及び調製例1で得た触媒5質量%(対原料アミド)を仕込み、窒素置換後、水素を導入し0.5MPaまで昇圧した。その後,0.5MPaの圧力を維持しながら、40L/h(毎時、1.35倍モル対原料アミド)の速度で水素を反応系内に導入した。その後、250℃まで昇温して、反応させ原料のアミドが1%まで減少した際の反応物をサンプリングし、触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。反応終了物の組成を表2に示す。
【0035】
実施例2〜8及び比較例1、2
調製例1で得た触媒5質量%(対原料アミド)に代えて、表2に示す触媒をそれぞれ5質量%(対原料アミド)用いた以外は、実施例1と同様に反応を行った。反応終了物の組成を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
実施例9
回転式オートクレープに、N,N−ジメチルラウロイルアミド300g、及び調製例1で得た触媒5質量%(対原料アミド)を仕込んだ。反応圧力5MPaを維持しながら、40L/h(毎時、1.35倍モル対原料アミド)の速度で水素を反応系内に導入し、表3に示す反応温度で反応させ原料のアミドが1%まで減少した際の反応物をサンプリングし、触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。反応終了物の組成を表3に示す。
【0038】
実施例10〜12及び比較例3
調製例1で得た触媒5質量%(対原料アミド)に代えて、表3に示す触媒5質量%(対原料アミド)を用いた以外は、実施例9と同様に反応を行った。反応終了物の組成を表3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
実施例13
回転式オートクレープに、N,N−ジメチルラウロイルアミド300g、及び調製例2で得た触媒5質量%(対原料アミド)を仕込み、表4に示すそれぞれの反応圧力を維持しながら、40L/h(毎時、1.35倍モル対原料アミド)の速度で水素を反応系内に導入し、250℃で反応させ原料のアミドが1%まで減少した際の反応物をサンプリングし、触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。反応終了物の組成を表4に示す。
【0041】
比較例4
調製例2で得た触媒5質量%(対原料アミド)に代えて、比較調製例1で得た触媒5質量%(対原料アミド)を用いた以外は、実施例13と同様に反応を行った。反応終了物の組成を表4に示す。
【0042】
【表4】

【0043】
実施例14
回転式オートクレープに、N,N−ジメチルステアリルアミド300g、及び調製例1で得た触媒5質量%(対原料アミド)を仕込み、窒素置換後、水素を導入し1.5MPaまで昇圧した。その後、1.5MPaの圧力を維持しながら、40L/h(毎時、1.35倍モル対原料アミド)の速度で水素を反応系内に導入した。その後、250℃まで昇温して、反応させ原料のアミドが1%まで減少した際の反応物をサンプリングし、触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。得られた反応終了物はN,N−ジメチルステアリルアミンが70.0質量%、N,N−ジステアリルメチルアミンが7.0質量%、ステアリルアルコールが5.6質量%であった。
【0044】
実施例15
実施例1で得られた反応生成物を蒸留により精製分離操作を行い、ラウリルジメチルアミンを得た(ガスクロマトグラフィー分析よる純度:99.9%)。得られたラウリルジメチルアミン(重量平均分子量:215.7)258.8gとイオン交換水439.8gを、温度計、攪拌器、冷却管、滴下ロートを備えた1リットルの4つ口フラスコに仕込み、90℃まで昇温した。その後、45%過酸化水素水溶液91.9gを1時間かけて滴下した。更に、90℃で8時間攪拌を行い、約35%のラウリルジメチルアミンオキシド含有物を得た。色相及び匂いについて、製造直後及び60℃で保存した際の値を評価した結果を表5に示す。
【0045】
実施例16及び17
実施例1で得られた反応生成物に代えて、実施例4及び8の各々で得られた反応生成物を用いた以外は、実施例15と同様にしてラウリルジメチルアミンオキシド含有物を得た。色相及び匂いについて、製造直後及び60℃で保存した際の値を評価した結果を表5に示す。
【0046】
比較例5
実施例1で得られた反応生成物に代えて、比較例1で得られた反応物を使用した以外は、実施例15と同様にして目的とするラウリルジメチルアミンオキシド含有物を得た。色相及び匂いについて、製造直後及び60℃で保存した際の値を評価した結果を表5に示す。
【0047】
なお、色相及び匂いは以下の方法で評価した。
(色相評価)
試料を測定専用のガラス容器に入れ、色調計(Lovibond Tintometer PFX995)を用いて測定した。
(匂い評価)
専門パネラーにより官能評価を行い、◎、○、△、×の4段階で評価した。
評価基準
◎:良好
〇:やや良好
△:少し劣る
×:劣る
【0048】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の3級アミンの製造方法は、副生成物の少ない高純度の脂肪族3級アミンを製造するものであり、本発明の方法により得られた脂肪族3級アミンは、家庭用や工業用分野における重要な中間体であって、例えば繊維柔軟仕上げ剤、帯電防止剤、ガソリン添加剤、シャンプー、リンス、殺菌剤、洗浄剤など、幅広い用途に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅と、周期表(長周期型)2族、3族及び7族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素を含む触媒の存在下、一般式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜23の直鎖状若しくは分岐を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐を有するアルキル基を示す。)
で表されるアミドを水素化還元する、一般式(2)
【化2】

(式中、R1、R2及びR3は、前記と同じである。)
で表される3級アミンの製造方法。
【請求項2】
周期表2族、3族及び7族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素が、カルシウム、バリウム、マンガン及びランタンの中から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の3級アミンの製造方法。
【請求項3】
触媒が、さらに周期表8〜10族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素を含む請求項1又は2に記載の3級アミンの製造方法。
【請求項4】
周期表8〜10族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素が、白金族元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素である請求項3に記載の3級アミンの製造方法。
【請求項5】
銅に対する、周期表2族、3族及び7族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素の含有割合(周期表2族、3族及び7族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素/銅)が質量比で0.05〜10である請求項1〜4のいずれかに記載の3級アミンの製造方法。
【請求項6】
触媒の使用量が、一般式(1)で表わされるアミドに対して0.05〜20質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の3級アミンの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の3級アミンの製造方法に用いられる、該いずれかの請求項に記載の触媒。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られた3級アミンと過酸化水素とを反応させる、アミンオキシドの製造方法。

【公開番号】特開2007−269788(P2007−269788A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57076(P2007−57076)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】