説明

含窒素化合物の製造方法

【課題】脂肪酸アミドを温和な条件で水素化還元し、副生成物の少ない高純度の脂肪族3級アミン及び該アミンから得られるアミン誘導体を、生産性よく経済的に製造する方法を提供する。
【解決手段】(a)アミド化合物を水素雰囲気下で還元する工程、及び(b)得られた反応生成物に、更に炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミンを導入して処理する工程、を有し、銅と周期表(長周期型)2族、3族、7族及び12族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む触媒の存在下、第3級アミンを製造する第3級アミンの製造方法、及び上記製造方法により得られる3級アミンと過酸化水素とを反応させるアミンオキシドの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含窒素化合物の製造方法、特に、脂肪酸アミドから高純度の脂肪族3級アミン及びアミン誘導体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族3級アミンは、家庭用や工業用分野における重要な中間体であって、例えば繊維柔軟仕上げ剤、帯電防止剤、ガソリン添加剤、シャンプー、リンス、殺菌剤、洗浄剤など、幅広い用途に用いられている。
脂肪族3級アミンの製造方法として、安価で再生可能な脂肪酸から得られるアミドを原料とする、アミド還元法が知られている。このアミド還元法として、これまでコバルト系触媒、貴金属系触媒などを用いる方法が知られているが、これらの方法は、いずれも溶媒を使用するため、生産性に劣るという問題がある。
また、銅−クロム系触媒を用いる方法も知られており、例えば、特許文献1では、銅−クロム−マンガン触媒をバッチ式応器で用いて、1−10MPaの反応圧力で原料アミドに対して水素とジメチルアミンを流通して行う3級アミンの製造方法が開示されている。特許文献2では、銅−クロムなどの水素化触媒を固定床反応器で用い、水素と任意のアミン源が存在する雰囲気下で圧力0.2−5MPaで行うアミンの製造方法が開示されている。しかしながら、これらの触媒は、廃処理時における安全性など取扱いに充分な注意が必要で、脱クロム触媒の開発が望まれている。また、水素とアミン源(ジメチルアミン)の混合ガスを流通させてアミド化合物を還元する方法では、特許文献1においては、目的とする3級アミン選択性の点、あるいは特許文献2においては、原料アミドに対して大過剰の水素流通が必要な点で、いずれも改善の余地がある。
クロムを含有しない銅系触媒として、銅―亜鉛、銅―亜鉛―ルテニウム又は銅―ニッケル―ルテニウム触媒を用いて、アミド化合物を水素雰囲気下で還元する3級アミンの製造法(特許文献3参照)が開示されているが、この方法は、アルコールなどの副生成物が多く、未だ十分なものではなかった。
【0003】
【特許文献1】特表平3−500300号公報
【特許文献2】米国特許公開2006−287556号公報
【特許文献3】特開2001−302596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、クロムを含有しない銅系触媒を用いて、脂肪酸アミドを温和な条件で水素化還元し、副生成物の少ない高純度の脂肪族3級アミン、及びこれを用いたアミンオキシド等のアミン誘導体を、生産性よく経済的に製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)一般式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数5〜23の直鎖状又は分岐の脂肪族炭化水素基、R2及びR3は各々炭素数1〜6の直鎖状又は分岐のアルキル基を示し、これらは同一又は異なっていてもよい。)
で表されるアミド化合物を水素雰囲気下で還元する工程、及び
(b)工程(1)で得られた反応生成物に、更に炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するジアルキルアミンを導入して処理する工程、
を有し、銅と周期表(長周期型)2族、3族、7族及び12族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む触媒の存在下、一般式(2)
【化2】

(式中、R1 、R2及びR3はいずれも前記と同じ意味を示す。)
で表される第3級アミンの製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の方法によれば、脂肪酸アミドを温和な条件で水素化還元した後に、ジアルキルアミンで処理することで水素使用量の低減が可能となり、更に副生成物の少ない高純度の脂肪族3級アミン、及びこれを用いたアミンオキサイド等のアミン誘導体を生産性よく経済的に製造することができる。またクロムを含有しない触媒を使用するため、使用済み触媒の廃処理における安全性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の第3級アミンの製造方法においては、(a)上記一般式(1)で表されるアミド化合物を水素雰囲気下で還元する工程、及び(b)工程(a)で得られた反応生成物に、更に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐のアルキル基を有するジアルキルアミンを導入して処理する工程、を有し、銅と周期表(長周期型)2族、3族、7族及び12族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む触媒の存在下、前記一般式(2)で表される第3級アミンを製造する。
前記一般式(1)及び(2)の各々において、R1は炭素数5〜23の直鎖状又は分岐を有する脂肪族炭化水素基を示す。なお、分岐を有する脂肪族炭化水素基には脂環式基も包含する。上記脂肪族炭化水素基は、飽和及び不飽和のいずれも包含することができる。
【0008】
このR1としては、第3級アミンの有用性の点から、炭素数が5〜21、更には炭素数が7〜21の直鎖状若しくは分岐を有するアルキル基又はアルケニル基が好ましい。第3級アミンとして、具体的には、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、各種ノナデシル基、各種エイコサニル基、各種ヘンエイコサニル基、各種トリコサニル基、各種ヘプテニル基、各種オクテニル基、各種ノネニル基、各種デセニル基、各種ウンデセニル基、各種ドデセニル基、各種トリデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ペンタデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種オクタデセニル基、各種ノナデセニル基、各種イコセニル基、各種ヘンエイコセニル基、各種ベヘニル基などを挙げることができ、好ましくは、各種ヘプチル基、各種ノニル基、各種ウンデシル基、各種トリデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘプタデシル基、各種ノナデシル基、各種ヘンエイコサニル基、各種ヘプテニル基、各種ノネニル基、各種ウンデセニル基、各種トリデセニル基、各種ペンタデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種ノナデセニル基、各種ヘンエイコセニル基である。ここで、「各種」とは上記直鎖状若しくは分岐を有するものをいずれも含むことを示す。
【0009】
前記一般式(1)及び(2)の各々において、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐を有するアルキル基を示す。なお、分岐を有するアルキル基には、シクロアルキル基も包含する。このR2及びR3の各々としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができるが、これらの中で、第3級アミンの有用性の点から、メチル基、エチル基又は、プロピル基が好ましい。前記R2及びR3は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0010】
前記一般式(1)で表されるアミド化合物としては、例えば、N,N−ジメチルカプリルアミド、N,N−ジメチル2−エチルヘキサンアミド、N,N−ジメチルカプリンアミド、N,N−ジメチルラウロイルアミド、N,N−ジメチルミリストイルアミド、N,N−ジメチルパルミトイルアミド、N,N−ジメチルステアロイルアミド、N,N−ジメチルイソステアロイルアミド、N,N−ジメチルオレイルアミド、N,N−ジメチルベヘニルアミドなどのN,N−ジメチル脂肪酸アミド、これらの脂肪酸アミドのN,N−ジメチルをN,N−ジエチル、N,N−ジプロピル、N−エチル−N−メチル、N−メチル−N−プロピル又はN−エチル−N−プロピルに置き換えた化合物などを挙げることができる。
【0011】
一方、前記一般式(2)で表される第3級アミンとしては、前記一般式(1)で例示したアミド化合物に対応する化合物として、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチル2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N,N−ジメチルミリスチルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルイソステアリルアミン、N,N−ジメチルオレイルアミン、N,N−ジメチルベヘニルアミンなどのN,N−ジメチル脂肪族アミン、これらの脂肪族アミンのN,N−ジメチルをN,N−ジエチル、N,N−ジプロピル、N−メチル−N−プロピル、N−エチル−N−メチル、N−メチル−N−プロピル又はN−エチル−N−プロピルに置き換えた化合物などを挙げることができる。
【0012】
本発明に用いられる触媒は、(A)銅と、(B)周期表(長周期型)2族、3族、7族及び12族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む触媒である。又、触媒活性の観点から、好ましくはこれに(C)白金族元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素を含むことができる。
前記(B)成分である周期表2族、3族、7族及び12族に属する元素としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、マンガン、レニウム、亜鉛、又はカドミウムなどが挙げられるが、工程(a)と工程(b)のいずれの反応にも充足する触媒の活性、選択性の点から、マグネシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、亜鉛及びイットリウムから選ばれる少なくとも一種が好ましく、より好ましくは、マグネシウム、亜鉛及びバリウムから選ばれる少なくとも一種である。
【0013】
(B)成分は(A)成分と、場合によっては(C)成分との間の相互作用によって、本発明に適合する触媒性能が発揮される形態であればよく、例えば担持触媒の場合において、(B)成分は担体表面上に支持させた形態、及び/又は担体中に含有させた形態等を選択することができる。また、前記(C)成分である白金族元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素としては、触媒の活性の点から、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金の中から選ばれる少なくとも1種の元素が好ましく、ルテニウム、ロジウム、パラジウム及び白金の中から選ばれる少なくとも1種の元素がより好ましい。
当該触媒の好ましい形態としては、工程(a)と工程(b)のいずれの反応にも充足する活性、選択性の点から、Cu−Mg系触媒、Cu−Zn系触媒、Cu−Ba系触媒、Cu−Mn系触媒、Cu−Ca系触媒、Cu−Y系触媒、Cu−Mn−Ru系触媒、Cu−Zn−Ru系触媒、Cu−Mg−Pd系触媒、Cu−Mg−Rh系触媒、Cu−Ca−Pt触媒等を挙げることができる。
【0014】
当該触媒において、(A)成分の銅の含有量は、工程(a)と工程(b)のいずれの反応にも充足する活性、選択性の点から、好ましくは5〜70質量%、より好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは15〜55質量%である。(A)成分に対する(B)成分の割合は、触媒活性の観点から、(B)成分/(A)成分質量比で0.001〜20であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5であり、更に好ましくは0.05〜2である。また、(C)成分を含む場合は、(A)成分に対する(C)成分の割合は、触媒活性の観点から、(C)成分/(A)成分質量比で0.0001〜0.1であることが好ましく、0.0005〜0.05であることがより好ましく、0.001〜0.01であることが更に好ましい。
このような複合金属系触媒を用いることにより、本発明は単体金属では予測し得ない経済的触媒性能を達成することができる。
【0015】
上記各金属の含有量は、白金族元素を除く各元素については、波長分散型蛍光X線装置を用いて定量することができる。具体的には、各元素を含む試料0.1gに四ホウ酸リチウム5g及び剥離剤(LiCO3:LiBr:LiNO3=5:1:5)を加えて、1050℃でアルカリ溶融し、ガラスビードを作成する。これを波長分散型蛍光X線装置(理学電機製ZSX100e)を使用して評価する。得られたX線強度を高純度の各元素試料を目的濃度に合わせて混合したものから得た検量線に照合して各金属の含有量を求める。
また、白金族元素については、硬質ガラス試験管に試料0.5gとその数十倍量の硫酸水素アンモニウムを入れて加熱分解した後、分解物を水で加温溶解し、溶液中の元素をICP発光分析法により測定する。
【0016】
当該触媒においては、前記の複合金属は担体に担持して用いることができる。担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、活性炭、ゼオライト、珪藻土、及び/又はマグネシウム含有金属酸化物(例えば、マグネシア、マグネシア−アルミナ、マグネシア−シリカ、ハイドロタルサイト等)などを挙げることができ、工程(a)と工程(b)のいずれの反応にも充足する活性、選択性の点から、好ましくは、シリカ、アルミナ、ゼオライト、珪藻土、マグネシウム含有金属酸化物であり、より好ましくは、ゼオライト、シリカ、アルミナ、マグネシウム含有金属酸化物である。これらの担体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。担持方法については特に制限はなく、従来公知の方法、例えば含浸法、沈殿法、イオン交換法、共沈法、混練法などを、担体の種類に応じて適宣選択することができる。
【0017】
本発明における上記触媒は、例えば以下のようにして調製することができる。
前記各金属の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物、アンミン錯体などを含有する水溶液と、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤、さらに必要により担体とを混合して沈殿物を得、この沈殿物をろ過、遠心分離などの方法で固液分離をする。次いで、得られた固形分をイオン交換水で洗浄後、乾燥させ、好ましくは300〜1000℃、より好ましくは400〜800℃の温度で焼成処理することにより、金属酸化物として得ることができる。
【0018】
本発明の第3級アミンの製造方法は、前記のようにして調製された触媒の存在下に、(a)一般式(1)で表されるアミド化合物を水素雰囲気下で還元する工程、及び(b)工程(a)で得られた反応生成物に、更に炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するジアルキルアミンを導入して処理する工程、を有する。以下、工程(a)及び(b)について説明する。
【0019】
工程(a)
工程(a)においては、前記のようにして調製された触媒の存在下に、一般式(1)で表されるアミドを水素化還元する。
この水素化還元反応は、水素雰囲気下、常圧又は水素加圧下で、また水素流通下、常圧又は加圧下でも実施することができる。反応形式は、連続式、回分式のいずれであってもよく、回分式の場合、触媒の使用量は、反応性、選択性及び製造コスト低減などの観点から、一般式(1)のアミド化合物に対して、0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは、1〜10質量%、特に好ましくは、3〜10質量%である。本発明に使用する触媒は、製造コスト低減の点から、工程(b)の反応終了後、回収再使用することができる。
【0020】
反応温度は、反応速度及び副生成物の抑制などの観点から、通常140〜300℃程度、好ましくは160〜280℃、更に好ましくは180℃〜270℃である。また、水素の流通量は、反応性、副生成物抑制及び生成水除去などの点から、前記一般式(1)で表わされるアミド化合物に対し、毎時0.1〜15倍モル量であることが好ましく、毎時0.3〜10倍モル量であることがより好ましく、更に好ましくは毎時0.5〜5倍モル量である。反応圧力は、反応速度及び設備負荷の抑制などの観点から、通常常圧乃至25MPaG(単位中Gはゲージ圧である事を示す)程度、好ましくは0.1〜10MPaG、より好ましくは0.1〜5MPaGである。
上記反応は、反応を促進させる観点から、反応により生成する反応生成水を除去しながら行うことが好ましい。生成水を除去する方法としては、上記の水素流通あるいは水素/不活性ガス混合流通による反応系外への追い出し、共沸法等、通常脱水処理に用いられる方法がいずれも使用できる。このようにして、前記一般式(1)で表されるアミドを温和な条件で水素化還元し、後述の工程(b)を経ることにより、副生成物少ない高純度の前記一般式(2)で表される3級アミンを生産性よく、経済的に製造することができる。
【0021】
工程(b)
工程(b)においては、上記工程(a)で得られた反応生成物に、更に炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を持つジアルキルアミンを導入して処理する。上記工程(a)においては、目的物の第3級アミンとともにアルコールが副生する。このアルコールは目的物の第3級アミンと沸点が近いことから、蒸留等による分離が困難である。従って、本発明の工程(b)においては、第3級アミンを更に高純度化するために、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するジアルキルアミンを導入して副生物のアルコールをジアルキル第3級アミンに転化する。工程(a)から工程(b)への移行は、生産性、副生成物抑制などの観点から、工程(a)で原料のアミド化合物がガスクロマトグラフィー測定で5質量%以下となる時点で実施するのが好ましく、1質量%以下で実施するのがより好ましい。
【0022】
工程(b)において使用するジアルキルアミンが有する炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、前記一般式(1)又は(2)におけるR2及びR3の各々として挙げられたものがいずれも挙げられ、第3級アミンの有用性の点から、好ましくはメチル基、エチル基である。
この工程(b)の処理は、水素雰囲気下、常圧又は水素加圧下で、また水素流通下、常圧又は加圧下でも実施することができる。また、ジアルキルアミンの流通量は、反応性及び副生成物抑制の点から、原料のアミド化合物に対して、毎時0.001〜1倍モルであることが好ましく、より好ましくは毎時0.005〜0.5倍モル、更に好ましくは毎時0.01〜0.3倍モルである。
【0023】
処理温度は、反応性及び副生成物抑制の観点から、140〜270℃が好ましく、より好ましくは160〜260℃、更に好ましくは180℃〜250℃である。また、水素の流通量は、反応性、副生成物抑制及び生成水除去などの点から、アミド化合物に対し、毎時0.1〜15倍モル量であることが好ましく、より好ましくは毎時0.3〜10倍モル量、更に好ましくは毎時0.5〜5倍モル量である。処理圧力は、反応速度及び設備負荷の抑制などの観点から、常圧乃至15MPaGであることが好ましく、より好ましくは常圧乃至5MPaG、更に好ましくは常圧乃至3MPaGである。
【0024】
上記のような工程(b)を設けることにより、工程(a)とは異なる好ましい反応条件を選定することが可能なため、工程(a)において脂肪酸アミドを温和な条件で水素化還元して、得られた第3級アミンを更に高純度化することができる。この結果、副生成物の少ない高純度の脂肪族3級アミンを、生産性よく経済的に製造することができる。
【0025】
本発明は、また、上記第3級アミンの製造方法により得られた第3級アミンを用いたアミン誘導体の製造方法、特にアミンオキシドの製造方法を提供する。
上記アミンオキシドの製造においては、上記第3級アミンの製造方法で得られた第3級アミンを原料として、これと過酸化水素とを反応させる。
本発明において、第3級アミンと反応させる過酸化水素としては、20〜90質量%の水溶液が工業的に入手可能であり、このいずれの濃度のものも本発明で使用できるが、安全性又は入手の容易性の点から、35〜65質量%のものが好ましい。過酸化水素の使用量は、未反応アミンの残留を抑制する観点から、第3級アミン1モルに対して、好ましくは0.9〜1.2倍モル、より好ましくは0.95〜1.1倍モル、さらに好ましくは 1.0〜1.05倍モルである。
【0026】
第3級アミンと過酸化水素との反応の際の反応温度は、過酸化物の分解を抑制する観点から、好ましくは20〜100℃、より好ましくは30〜95℃、更に好ましくは40〜90℃の範囲である。該反応においては、反応を促進させるために公知の触媒を使用することができ、例えば、二酸化炭素、重炭酸ナトリウムとピロリン酸ナトリウムの混合物、クエン酸や酒石酸又はその塩、及び燐タングステン酸又はその塩などを用いることができる。
また、上記反応においては溶媒を使用することができ、溶媒としては、一般に水が用いられるが、アミンオキサイド水溶液の粘度を調節するため、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水溶性溶媒を併用することもできる。
【0027】
本発明の第3級アミンの製造方法によれば、高い反応性で第3級アミンを得ることができ、この第3級アミンを原料とすることで、低い製造コストでアミンオキシドを得ることができる。本発明の第3級アミンの製造方法により得られる第3級アミンは、アミンオキシド等のアミン誘導体の製造に好適に用いられ、アミンオキシドは、各種洗浄剤に補助活性剤として使用されており、例えば、食器用洗浄剤、シャンプー、衣料用洗浄剤など、幅広い用途に好適に使用される。
本発明の第3級アミンを使用するアミンオキシド以外のアミン誘導体としては、例えば、ベンザルコニウム塩化物、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニオ酢酸塩等が挙げられ、これらの製造方法としては、公知の方法がいずれも使用できる。
【実施例】
【0028】
調製例1
セパラブルフラスコに硝酸銅三水和物100g、硝酸マグネシウム六水和物69gを仕込み、2Lのイオン交換水に溶解した後、攪拌しながら50℃まで昇温した。その溶液にMg4.5Al12(OH)13CO3・3.5H2Oで表わされる合成ハイドロタルサイト(協和化学工業製キョーワード1000)33gを加えて90℃まで昇温した。炭酸ナトリウム水を滴下して溶液のpHを7にした後、1時間熟成した。得られた懸濁溶液を冷却して濾過及び水洗を行い、110℃で一昼夜乾燥した後、600℃で空気流通下、1時間焼成した。得られた金属酸化物は各金属の質量比が、マグネシウム/銅で0.43であり、触媒中の銅含有量が37質量%であった。
【0029】
調製例2
調製例1において、硝酸マグネシウム六水和物を34.5g仕込んだ以外は調製例1と同様の操作を行った。得られた金属酸化物は各金属の質量比が、マグネシウム/銅で0.30であり、触媒中の銅含有量が37質量%であった。
【0030】
調製例3
調製例1において、硝酸マグネシウム六水和物69gに代えて塩化白金酸六水和物0.17gを用い、450℃で空気流通下、3時間焼成した以外は調製例1と同様の操作を行い、各金属の質量比が、マグネシウム/銅で0.18、白金/銅で0.0024であり、触媒中の銅含有量が40質量%である担持銅−白金触媒を得た。
【0031】
調製例4
調製例1において、合成ハイドロタルサイト33gに代えて酸化マグネシウム(キシダ化学(株)製)33g、及び硝酸マグネシウム六水和物69gに代えて硝酸バリウム12.4gを用いた以外は調製例1と同様の操作を行った。得られた金属酸化物は各金属の質量比が、(マグネシウム+バリウム)/銅で1.01であり、触媒中の銅含有量が36質量%の担持銅−バリウム触媒を得た。
【0032】
調製例5
セパラブルフラスコに硝酸銅三水和物100g、硝酸マンガン六水和物34gを仕込み、2Lのイオン交換水に溶解した後、攪拌しながら昇温した。50℃で合成ゼオライト(東ソー(株)製「ゼオラムF9」)33gを仕込んで90℃まで昇温した。炭酸ナトリウム水溶液を1時間で滴下して溶液pHを7にした後、1時間熟成した。得られた懸濁溶液を冷却して濾過、水洗を行い、110℃にて一昼夜乾燥した後、600℃で空気流通下、1時間焼成した。得られた金属酸化物は各金属の質量比が、マンガン/銅で0.25であり、銅含有量が35質量%の担持銅−マンガン触媒であった。
【0033】
調製例6
調製例5において、硝酸マンガン六水和物34gに代えて硝酸亜鉛30gを用い、更に塩化ルテニウム0.15gを加えた以外は調製例6と同様の操作を行った。得られた金属酸化物は各金属の質量比が、亜鉛/銅で0.25、及びルテニウム/銅で0.0025であり、触媒中の銅含有量が36質量%である担持銅−亜鉛-ルテニウム触媒を得た。
【0034】
調製例7
調製例6において、塩化ルテニウムを加えないこと以外は、調製例5と同様の操作で行い、各金属の質量比が、亜鉛/銅で0.25であり、触媒中の銅含有量が36質量%である担持銅−亜鉛触媒を得た。
【0035】
調製例8
調製例1において、硝酸マグネシウム六水和物69gに代えて硝酸イットリウム六水和物0.17gを用い、600℃で空気流通下、1時間焼成した以外は調製例1と同様の操作を行い、各金属の質量比が、(マグネシウム+イットリウム)/銅で0.43であり、触媒中の銅含有量が35質量%である担持銅−イットリウム触媒を得た。
【0036】
調製例9
セパラブルフラスコに硝酸銅三水和物100g、硝酸カルシウム四水和物10gを仕込み、2Lのイオン交換水に溶解した後、攪拌しながら昇温した。50℃で合成ゼオライト(東ソー(株)製「A−4」)33gを仕込んで90℃まで昇温した。炭酸ナトリウム水溶液を1時間で滴下して溶液pHを7にした後、1時間熟成した。得られた懸濁溶液を冷却して濾過、水洗を行い、110℃にて一昼夜乾燥した後、600℃で空気流通下、1時間焼成した。得られた金属酸化物は各金属の質量比が、カルシウム/銅で0.06であり、銅含有量が39質量%であった。
【0037】
実施例1
回転式オートクレーブに、N,N−ジメチルラウロイルアミド300g、調製例1で調製した触媒5質量%(対原料アミド化合物)を仕込み、窒素置換後、水素を導入し1.5MPaGまで昇圧した。その後1.5MPaGの圧力を維持しながら、40L/h(毎時1.4倍モル対原料アミド化合物)の速度で水素を反応系内に導入した。その後230℃まで昇温し、水素還元反応をガスクロマトグラフィーで原料アミド化合物が検出しなくなるまで行った。その時の反応速度を表1に示す。なお、反応速度は、反応開始から6時間までに反応したアミド量をガスクロマトグラフィーで測定して、この値の原料アミド量に対する1時間当りの割合[1時間当りの反応アミド量(モル)/原料アミド量(kg)]から算出した(以下の例において同様)。次いで、反応温度、圧力及び水素の導入速度はそのまま維持しつつ、加えてジメチルアミンを2〜1L/h(毎時0.07〜0.03倍モル対原料アミド化合物)の速度で導入して2時間処理を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。その結果を表1に示す。
【0038】
実施例2
実施例1において、調製例1の触媒に代えて調製例2の触媒を用いて、反応温度を250℃とした以外は実施例1と同様の操作で水素還元反応を行った。反応9時間で原料アミド化合物がガスクロマトグラフィーで検出限界以下になった。その時の反応速度を表1に示す。次いで、反応温度、圧力は、及び水素の導入速度はそのまま維持しつつ、加えてジメチルアミンを1〜0.4L/h(毎時0.03〜0.01倍モル対原料アミド化合物)の速度で導入して1時間処理を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。その結果を表1に示す。
【0039】
実施例3
実施例2において、触媒量5質量%を3質量%(対原料アミド化合物)に変更した以外は実施例2と同様の操作で原料アミド化合物がガスクロマトグラフィーで検出限界以下になるまで水素還元反応を行った。その時の反応速度を表1に示す。次いで、反応温度、圧力は、及び水素の導入速度はそのまま維持しつつ、加えてジメチルアミンを2〜1L/h(毎時0.07〜0.03倍モル対原料アミド化合物)の速度で導入して3時間処理を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。その結果を表1に示す。
【0040】
実施例4
実施例1において、調製例1の触媒に代えて調製例3の触媒を用いて、反応温度250℃、1.5MPaGの圧力を維持した以外は実施例1と同様の操作で原料アミド化合物がガスクロマトグラフィーで検出限界以下になるまで水素還元反応を行った。その時の反応速度を表1に示す。次いで、反応温度を220℃とし、圧力を常圧に変更した後、水素の導入速度はそのまま維持しつつ、加えてジメチルアミンを3〜2L/h(毎時0.10〜0.07倍モル対原料アミド化合物)の速度で導入して2時間処理を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。その結果を表1に示す。
【0041】
実施例5
実施例4において、調製例3の触媒の代わりに調製例4の触媒を用いた以外は実施例4と同様の操作で原料アミド化合物がガスクロマトグラフィーで検出限界以下になるまで水素還元反応を行った。その時の反応速度を表1に示す。次いで、圧力を0.5MPaGに変更した後、反応温度と水素の導入速度はそのまま維持しつつ、加えてジメチルアミンを2〜1L/h(毎時0.07〜0.03倍モル対原料アミド化合物)の速度で導入して3時間処理を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
実施例6
実施例1において、調製例1の触媒に代えて調製例5の触媒を用いて、反応温度230℃、5.0MPaGの圧力を維持した以外は実施例1と同様の操作で原料アミド化合物がガスクロマトグラフィーで検出限界以下になるまで水素還元反応を行った。その時の反応速度を表1に示す。次いで、圧力を3.0MPaGに変更した後、反応温度と水素の導入速度はそのまま維持しつつ、加えてジメチルアミンを3〜2L/h(毎時0.1〜0.07倍モル対原料アミド化合物)の速度で導入して3時間処理を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。その結果を表1に示す。
【0043】
実施例7
実施例1において、調製例1の触媒に代えて調製例6の触媒を用いて、反応温度250℃、0.5MPaGの圧力を維持した以外は実施例1と同様に原料アミド化合物がガスクロマトグラフィーで検出限界以下になるまで水素還元反応を行った。その時の反応速度を表1に示す。次いで、反応温度を220℃とし、圧力を常圧に変更した後、水素の導入速度はそのまま維持しつつ、加えてジメチルアミンを3〜2L/h(毎時0.10〜0.07倍モル対原料アミド化合物)の速度で導入して1時間処理を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。その結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例8
実施例1において、調製例1の触媒に代えて調製例7の触媒を用いて、水素を70L/h(毎時2.4倍モル対原料アミド化合物)の速度で導入した以外は実施例1と同様に原料アミド化合物がガスクロマトグラフィーで検出限界以下になるまで水素還元反応を行った。その時の反応速度を表2に示す。次いで、反応温度を180℃とし、圧力を0.2MPaGに変更した後、水素の導入速度はそのまま維持しつつ、加えてジメチルアミンを2〜1L/h(毎時0.07〜0.03倍モル対原料アミド化合物)の速度で導入して2時間処理を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。その結果を表2に示す。
【0046】
比較例1
回転式オートクレーブに、N,N−ジメチルラウロイルアミド300g、調製例7の触媒5質量%(対原料アミド化合物)を仕込み、窒素置換後、水素を導入し圧力1.5MPaGまで昇圧した。その後1.5MPaGの圧力を維持しながら、水素を70L/h(毎時2.4倍モル対原料アミド化合物)の速度で、及びジメチルアミンを2〜1L/h(毎時0.07〜0.03倍モル対原料アミド化合物)の速度で反応系内に導入し、反応を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。その結果と反応速度を表2に示す。なお、反応生成物の組成はジメチルラウリルアミドが検出限界以下であった。
【0047】
【表2】

【0048】
実施例9
実施例4において、調製例3の触媒の代わりに調製例8の触媒を用いた以外は実施例4と同様の操作で原料アミド化合物がガスクロマトグラフィーで検出限界以下になるまで水素還元反応を行った。その時の反応速度を表3に示す。次いで、圧力を0.2MPaGに変更した後、反応温度と水素の導入速度はそのまま維持しつつ、加えてジメチルアミンを3〜2L/h(毎時0.10〜0.07倍モル対原料アミド化合物)の速度で導入して3時間処理を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。その結果を表3に示す。
【0049】
実施例10
実施例4において、調製例3の触媒の代わりに市販のCu―Zn触媒(N.E.CHEMCAT社製Cu0890p)を用いた以外は実施例4と同様の操作で原料アミド化合物がガスクロマトグラフィーで検出限界以下になるまで水素還元反応を行った。その時の反応速度を表3に示す。次いで、圧力を常圧に変更した後、反応温度と水素の導入速度はそのまま維持しつつ、加えてジメチルアミンを9〜8L/h(毎時0.30〜0.27倍モル対原料アミド化合物)の速度で導入して3時間処理を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。その結果を表3に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
実施例11
実施例4において、N,N−ジメチルラウロイルアミド300gの代わりにN,N−ジメチルステアロイルアミド300g、及び調製例3の触媒の代わりに調製例9の触媒を用いた以外は実施例4と同様の操作で原料アミド化合物がガスクロマトグラフィーで検出限界以下になるまで水素還元反応を行った。その時に得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。反応生成物はジメチルステアロイルアミドが検出限界以下であり、ジメチルステアリルアミン83.1%、ジステアリルメチルアミン、5.5%、ステアリルアルコール8.8%であった。また、その時の反応速度は39.5[×10-2mol/(kg・h)]であった。次いで、圧力を0.2MPaGに変更した後、反応温度と水素の導入速度はそのまま維持しつつ、加えてジメチルアミンを2〜1L/h(毎時0.07〜0.03倍モル対原料アミド化合物)の速度で導入して2時間処理を行った。得られた反応生成物の組成はジメチルステアリルアミン90.4%、ジステアリルメチルアミン、5.6%、ステアリルアルコール0.8%であった。
【0052】
比較例2
比較例1において、調製例7の触媒に代えて市販のCu−Cr触媒(N.E.CHEMCAT社製Cu1800p)を用いて、水素を40L/h(毎時1.4倍モル対原料アミド化合物)の速度で導入した以外は比較例1と同様の操作で反応を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。反応生成物の組成はジメチルラウリルアミドが検出限界以下であり、ジメチルラウリルアミン82.9%、ジラウリルメチルアミン、12.4%、ラウリルアルコール0.6%であった。また、その時の反応速度は36.4[×10-2mol/(kg・h)]であった。
【0053】
比較例3
実施例10において、市販Cu−Zn触媒に代えて市販のCu−Cr触媒(N.E.CHEMCAT社製Cu1800p)を用いた以外は実施例10と同様の操作に原料アミド化合物がガスクロマトグラフィーで検出限界以下になるまで水素還元反応を行った。その時に得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。反応生成物はジメチルラウリルアミドが検出限界以下であり、ジメチルラウリルアミン79.8%、ジラウリルメチルアミン、9.4%、ラウリルアルコール5.3%であった。また、その時の反応速度は45.1[×10-2mol/(kg・h)]であった。次いで、圧力を常圧に変更した後、反応温度と水素の導入速度はそのまま維持しつつ、加えてジメチルアミンを9〜8L/h(毎時0.30〜0.27倍モル対原料アミド化合物)の速度で導入して1時間処理を行った。得られた反応生成物の組成はジメチルラウリルアミン84.4%、ジラウリルメチルアミン、9.6%、ラウリルアルコール0.8%であった。
【0054】
実施例12
実施例1で得られた反応生成物を蒸留による精製分離操作を行い、ラウリルジメチルアミンを得た(ガスクロマトグラフィー分析よる純度:99.9%)。得られたラウリルジメチルアミン(重量平均分子量:215.7)259gとイオン交換水440gを、温度計、攪拌器、冷却管、滴下ロートを備えた1リットルの4つ口フラスコに仕込み、90℃まで昇温した。その後、45%過酸化水素水溶液92gを1時間かけて滴下した。更に、90℃で8時間攪拌を行い、約35%のラウリルジメチルアミンオキシド含有物を得た。色相及び匂いについて、製造直後及び60℃で保存した際の値を評価した結果を表4に示す。
【0055】
実施例13
実施例1で得られた反応生成物に代えて、実施例3で得られた反応生成物を用いた以外は、実施例12と同様にしてラウリルジメチルアミンオキシド含有物を得た。色相及び匂いについて、製造直後及び60℃で保存した際の値を評価した結果を表4に示す。
【0056】
比較例4
実施例1で得られた反応生成物に代えて、比較例3で得られた反応物を使用した以外は、実施例12と同様にして目的とするラウリルジメチルアミンオキシド含有物を得た。色相及び匂いについて、製造直後及び60℃で保存した際の値を評価した結果を表4に示す。
【0057】
なお、色相及び匂いは以下の方法で評価した。
(色相評価)
試料を測定専用のガラス容器に入れ、色調計(Lovibond Tintometer PFX995)を用いて測定した。
(匂い評価)
専門パネラーにより官能評価を行い、◎、○、△、×の4段階で評価した。
評価基準
◎:良好
〇:やや良好
△:少し劣る
×:劣る
【0058】
【表4】

【0059】
なお、上記実施例等における、金属原子含有量は、前述のICP発光分析により、JobinYbon製JY238で測定した。
また、ガスクロマトグラフィーによる組成分析は、下記装置を用いて行った。
・ガスクロマトグラフ装置:HEWLETT PACKARD Series 6890 ・カラム:J & W製DB−17(内径×長さ×フィルム厚さ:15m×0.25mm×0.5μm)
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の第3級アミンの製造方法は、副生成物の少ない高純度の脂肪族3級アミンを製造するものであり、本発明の方法により得られた脂肪族3級アミンは、家庭用や工業用分野における重要な中間体であって、例えば繊維柔軟仕上げ剤、帯電防止剤、ガソリン添加剤、シャンプー、リンス、殺菌剤、洗浄剤など、幅広い用途に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数5〜23の直鎖状又は分岐の脂肪族炭化水素基、R2及びR3は各々炭素数1〜6の直鎖状又は分岐のアルキル基を示し、これらは同一又は異なっていてもよい。)
で表されるアミド化合物を水素雰囲気下で還元する工程、及び
(b)工程(a)で得られた反応生成物に、更に炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するジアルキルアミンを導入して処理する工程、
を有し、銅と周期表(長周期型)2族、3族、7族及び12族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む触媒の存在下、一般式(2)
【化2】

(式中、R1 、R2及びR3はいずれも前記と同じ意味を示す。)
で表される第3級アミンの製造方法。
【請求項2】
周期表2族、3族、7族及び12族に属する元素が、マグネシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、亜鉛及びイットリウムの中から選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の第3級アミンの製造方法。
【請求項3】
触媒中の銅の含有量が、銅金属として5〜70質量%である、請求項1又は2に記載の第3級アミンの製造方法。
【請求項4】
銅に対する、周期表2族、3族、7族及び12族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素の含有割合(周期表2族、3族、7族及び12族に属する元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素の含有量/銅の含有量)が質量比で0.01〜20である、請求項1〜3のいずれかに記載の第3級アミンの製造方法。
【請求項5】
工程(a)及び(b)において、一般式(1)で表わされるアミド化合物に対して、水素を毎時0.1〜15倍モル量で流通させる、請求項1〜4のいずれかに記載の第3級アミンの製造方法
【請求項6】
工程(b)において、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐のアルキル基を有するジアルキルアミンを、一般式(1)で表わされるアミド化合物に対して毎時0.001〜1倍モル量で導入する、請求項1〜5のいずれかに記載の第3級アミンの製造方法。
【請求項7】
触媒の使用量が、一般式(1)で表わされるアミド化合物に対して0.01〜20質量%である、請求項1〜6のいずれかに記載の第3級アミンの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法により得られた3級アミンと過酸化水素とを反応させる、アミンオキシドの製造方法。

【公開番号】特開2009−40732(P2009−40732A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208408(P2007−208408)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】