説明

吸収剤及び流体流、特に排ガスからの酸性ガスの除去のための方法

一般式(I)のオリゴアミン(A)及び一般式(II)のピペラジン誘導体(B)を含有し、オリゴアミン(A)対ピペラジン誘導体(B)の質量比が0.2〜25である、酸性ガスのための吸収剤、並びに、ガス流と、0.05〜10MPa absの圧力で、20〜80℃の温度に温度処理された、前述の吸収剤の水溶液との接触により、ガス流から酸性ガスを除去するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、オリゴアミン(A)及びピペラジン誘導体(B)を含有し、オリゴアミン(A)対ピペラジン誘導体(B)の質量比が0.2〜25である、酸性ガスのための吸収剤に関する。さらに本発明は、ガス流と、0.05〜10MPa absの圧力で、20〜80℃の温度に温度処理された、前述の吸収剤の水溶液との接触により、ガス流から酸性ガスを除去するための方法に関する。
【0002】
流体流、例えば天然ガス、精油所ガス(Raffinieregas)、合成ガスから、酸性ガス、例えばCO2、H2S、SO2、COS、CS2、HCN又はメルカプタンを除去することは様々の理由から重要である。二酸化炭素は例えば天然ガスから除去されなくてはならず、というもの高い二酸化炭素濃度がガスの燃焼価を減少させるからである。さらに、二酸化炭素は、流体流中にしばしば連行される湿分と結びついて、導管及びアーマチャーでの腐食を生じることがある。その上、天然ガス中の硫黄化合物の含量も適当な後処理処置によって減少させられなくてはならない、それというのも、硫黄化合物は、天然ガスからしばしば連行される水の中で、腐食作用を有する酸を形成するからである。それゆえ、天然ガスをパイプラインで輸送するために、硫黄含有不純物の所定の限界値が遵守されなければならない。さらに、数々の硫黄化合物が既に低濃度で不快な臭気があり、特に二酸化硫黄は毒性である。
【0003】
燃焼排気ガス又は排ガスからの二酸化炭素の除去は所望されており、特にいわゆる温室効果の主原因とみなされる二酸化炭素の排出を減らすために所望されている。排ガスは通常は10〜500hPaの二酸化炭素−分圧を示す。通常はこれらは雰囲気圧力付近の圧力で生じる。二酸化炭素の効果的な除去を達成するために、吸収剤は高い二酸化炭素親和性を有していなければならない。他方ではこの高い二酸化炭素親和性は、吸収剤の再生の際に二酸化炭素が通常は完全には追い出されず、かつ、この再生された吸収剤が二酸化炭素−残留負荷を示すことの原因となる。循環能力として吸収剤の最大の負荷力とこの再生された吸収剤の残留負荷の間の差異のみが提供される。
【0004】
例えば合成ガス、天然ガス又はバイオガスからの実際に酸性ガスの除去のために特に信頼されている吸収剤はUS 4,336,233に記載されている。これはメチルジエタノールアミン(MDEA)及びピペラジンからの水溶液であり、吸収速度を向上させるための活性化剤としてである。この記載の吸収剤は1.5〜4.5Mol/Lメチルジエタノールアミン及び0.05〜0.8Mol/Lピペラジンを含有する。
【0005】
EP-A 0 879 631は、燃焼ガスを雰囲気圧力でアミン水溶液と接触させることによる燃焼ガスからの二酸化炭素の除去のための方法を記載する。このアミン溶液はそれぞれ10〜45質量%の濃度で第二級及び第三級アミンを含有する。
【0006】
US 6,165,433は、水、5〜35質量%の迅速アミン及び5〜50質量%の遅延アミンを含有する吸収剤の使用下での、二酸化炭素分圧が10psia(689hPa)以下であるガス流からの二酸化炭素除去に関する。迅速アミンはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン及びジイソプロパノールアミンである。遅延アミンはメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び立体障害されたアミン、例えば2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールである。
【0007】
WO 2005/087,350は、第三級脂肪族アミン及び活性化剤、例えば3−メチルアミノプロピルアミンを含有する液状吸収剤を用いた排ガスからの二酸化炭素の除去方法を開示する。この第三級脂肪族アミンはプロトン化反応の反応エンタルピーΔRHを示すものであり、これはメチルジエタノールアミンのそれよりも大きい。この吸収剤は第三級脂肪族アミン20〜60質量%及び活性化剤1〜10質量%を含有する。
【0008】
しばしばアルカノールアミンは排ガスからの二酸化炭素の除去のために使用される。
【0009】
WO 02/007,862は、流体流からの酸性ガスの除去のための方法及び吸収剤を記載する。この吸収剤は第三級脂肪族アルカノールアミン及び活性化剤、例えば3−メチルアミノプロピルアミンを含有する。低い二酸化炭素分圧を用いた流体流の処理は言及されていない。
【0010】
WO 2007/144,372は、第三級脂肪族アルカノールアミン及びより詳細には特定されていないN−アルキル−ジアミンの水溶液との接触による排ガスからの二酸化炭素の除去方法を記載する。好ましい第三級脂肪族アルカノールアミンとしてはメチルジエタノールアミン、メチルジイソプロピルアミン及びブチル−ジエタノールアミンが挙げられている。好ましい活性化剤として特に3−メチルアミノプロピルアミンが挙げられている。
【0011】
特に、排ガスからの二酸化炭素の除去のための大工業的な方法においては好ましくは吸収剤としてモノエタノールアミン(MEA)が使用される。したがって、例えばFluor CorporationのSatish Reddy et al.は2003年5月5〜8日に開催されたSecond National Conference on Carbon Sequestration des National Energy Technology Laboratory / Department of Energy, Alexandria, VA, U.S.A.のための要約において、「Fluor's Econamine FG PlusSM Technology - An enhanced amine-based CO2 capture process」との表題で、モノエタノールアミン及び秘密の阻害剤を含有する吸収剤を用いた排ガスからの二酸化炭素の除去を記載する。後者はモノエタノールアミンの変性を酸素の存在により抑え、かつ、同時にこの設備を腐食から保護する。この方法は刊行時に既に23の市販の稼働設備中で使用されている。
【0012】
モノエタノールアミンを基礎とする技術はアミンと二酸化炭素との間での高い反応性により優れている。しかしこの高い反応性は不利なことに、再生のための高い吸収エンタルピー及び高いエネルギー要求を伴う。他のアルカノールアミン、例えばジエタノールアミン又はメチルジエタノールアミンは再生のためのより低いエネルギー要求を示し、二酸化炭素とアミンとの間でのそのより遅い反応キネティックのためにこの分離目的のために限定的にだけ適する。
【0013】
WO 99/004,885は、20〜60質量%の濃度を有するより詳細には特定されてないオリゴアミンの水溶液であって、好ましくはアルカリ金属化合物又は脂肪族の又は脂環式のモノ−又はジアミンを活性化剤として含有する水溶液との接触による、ガス流からの酸性ガスの除去を教示する。活性化剤としては名前を挙げて水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トリエチレンジアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−エチル−シクロヘキシルアミン及びN,N−ジメチル−シクロヘキシルアミンが挙げられている。活性化剤としての水酸化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムの使用に関する欠点は、再生の際の顕著に高められたエネルギー要求である。トリエチレンジアミンの使用に関する欠点は、その遅延した反応キネティックであり、これは、吸収の際により長い滞留時間又はより大きな交換表面を招く。ジシクロヘキシルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン及びN,N−ジメチル−シクロヘキシルアミンの使用に関する欠点は、水とのその限られた混合性であり、これは活性化剤含量の適合における柔軟性を限定する。
【0014】
本発明の課題は、技術水準の上述の欠点をもはや示さないか又は減少した程度で有し、かつ、特にこの公知の方法に対してモノエタノールアミンの使用下でより高い循環能力及びより少ない再生要求を可能にし、かつ同時に十分に迅速な、二酸化炭素とアミンとの間の反応キネティックを有する、酸性ガスのための吸収剤及び流体流からの酸性ガスの除去方法を見出すことであった。
【0015】
これに応じて、(A)一般式(I)
【化1】

[式中、
1は水素又はC1〜C3−アルキル、
2は水素又はC1〜C3−アルキル、
nは2〜6、及び
pは1〜3である]
のオリゴアミン、及び
(B)一般式(II)
【化2】

[式中、
aは水素、C1〜C3−アルキル、−CH2CH2OH又は−(CH2mNH2(式中mは1〜3)、
bは水素、C1〜C3−アルキル又は−(CH2nNH2(式中nは1〜3)、
cは水素、C1〜C3−アルキル又は−(CH2oNH2(式中oは1〜3)、
dは水素、C1〜C3−アルキル又は−(CH2pNH2(式中pは1〜3)、及び
eは水素、C1〜C3−アルキル又は−(CH2qNH2(式中qは1〜3)である]
のピペラジン誘導体を含有し、
その際オリゴアミン(A)対ピペラジン誘導体(B)の質量比
m[オリゴアミン(A)]/m[ピペラジン誘導体(B)]
は0.2〜25である、酸性ガスのための吸収剤が見出された。
【0016】
適したオリゴアミン(A)の例としてジエチレントリアミン、ビス(3−メチルアミノ−プロピル)−メチルアミン、ジメチルジプロピレントリアミン、ジプロピレントリアミン、N,N′,N″−トリメチル−ビス(ヘキサメチレン)−トリアミン及びビス(3−ジメチルアミノ−プロピル)−アミンが挙げられる。好ましくは一般式(I)[式中、R1は水素又はメチル、R2は水素又はメチル、nは2又は3、pは1である]のオリゴアミン(A)である。特に好ましくはジエチレントリアミン、ビス(3−メチルアミノ−プロピル)−メチルアミン、ジメチルジプロピレントリアミン、ジプロピレントリアミン、及びビス(3−ジメチルアミノ−プロピル)−アミン、特にビス(3−ジメチルアミノ−プロピル)−アミン(R1がメチル、R2が水素、nが3、かつpが1である)が挙げられる。
【0017】
好ましくは一般式(II)
[式中、
aは水素、メチル、エチル、−CH2CH2OH又は−CH2CH2NH2
bは水素又はメチル、
cは水素又はメチル、
dは水素又はメチル、及び
eは水素又はメチルである]
のピペラジン誘導体(B)である。
【0018】
特に好ましいピペラジン誘導体(B)としてピペラジン、N−ヒドロキシエチル−ピペラジン、N−アミノエチル−ピペラジン、2−メチル−ピペラジン及び2,5−ジメチルピペラジンが挙げられる。特にとりわけ好ましくはピペラジン(Ra〜Reが水素である)である。
【0019】
オリゴアミン(A)対ピペラジン誘導体(B)の質量比
m[オリゴアミン(A)]/m[ピペラジン誘導体(B)]
は本発明による吸収剤では0.2〜25、好ましくは0.2〜4、特に好ましくは0.3〜2である。
【0020】
吸収剤の全量に対するオリゴアミン(A)+ピペラジン誘導体(B)に関する濃度は特に有利には10〜60質量%、とりわけ20〜50質量%である。
【0021】
吸収剤の全量に対するオリゴアミン(A)の濃度は、好ましくは1〜20質量%、特に好ましくは1〜18質量%、とりわけ特に好ましくは10〜18質量%である。
【0022】
特に有利には、この吸収剤は更に水を含有し、その際オリゴアミン(A)+ピペラジン誘導体(B)の合計対水の質量比
{m[オリゴアミン(A)]+m[ピペラジン誘導体(B)]}/m[水]
が好ましくは0.11〜1.5、特に好ましくは0.25〜1である。
【0023】
吸収剤はこの上にまた更に物理的溶媒を含有できる。物理的溶媒とは、酸性ガスと比較的弱い相互作用のみをする溶媒が理解される。適しておりかつ実際に慣用の物理的吸収剤の例は例えばシクロテトラメチレンスルホン(スルホラン)及びその誘導体、脂肪族酸アミド(例えばアセチルモルホリン、N−ホルミルモルホリン)、N−アルキル化ピロリドン及びピペリドン(例えばN−メチルピロリドン)、プロピレンカーボナート、メタノール又はポリエチレングリコールのジアルキルエーテルである。
【0024】
さらに、液状吸収剤として、
(A)一般式(I)
【化3】

[式中、
1は水素又はC1〜C3−アルキル、
2は水素又はC1〜C3−アルキル、
nは2〜6、及び
pは1〜3である]
のオリゴアミン、
(B)一般式(II)
【化4】

[式中、
aは水素、C1〜C3−アルキル、−CH2CH2OH又は−(CH2mNH2(式中mは1〜3)、
bは水素、C1〜C3−アルキル又は−(CH2nNH2(式中nは1〜3)、
cは水素、C1〜C3−アルキル又は−(CH2oNH2(式中oは1〜3)、
dは水素、C1〜C3−アルキル又は−(CH2pNH2(式中pは1〜3)、及び
eは水素、C1〜C3−アルキル又は−(CH2qNH2(式中qは1〜3)である]
のピペラジン誘導体、及び
(C)水
を含有し、その際オリゴアミン(A)対ピペラジン誘導体(B)の質量比
m[オリゴアミン(A)]/m[ピペラジン誘導体(B)]
は0.2〜25であり、かつ、オリゴアミン(A)+ピペラジン誘導体(B)の合計対水の質量比
{m[オリゴアミン(A)]+m[ピペラジン誘導体(B)]}/m[水]
が0.11〜1.5である
吸収剤を使用することを特徴とする、ガス流を、0.05〜10MPa absの圧力で温度20〜80℃に温度処理された液状吸収剤との接触によりガス流から酸性ガスを除去するための方法が見出された。
【0025】
好ましくは本発明による方法では吸収剤の説明で挙げた好ましい吸収剤が使用される。
【0026】
酸性ガスの吸収はこの場合に、清浄にすべきガス流と液状吸収剤を適した装置中で接触させることにより行われる。適した装置は、例えば不規則充填体塔、規則充填体塔又は段塔として構成されていることができる、少なくとも1の洗浄塔、及び/又は他の吸収器、例えばメンブランコンタクター、半径流洗浄機、ジェット洗浄機、ベンチュリ洗浄機又は回転−噴霧洗浄機を含む。しかし、吸収剤を用いたガス流の処理は、有利には洗浄塔内で行なわれる。これは特に有利には向流で運転される。その際、ガス流は、一般的に塔の下側領域に供給され、吸収剤は、塔の上側領域に供給される。
【0027】
この接触は本発明による方法の際に0.05〜10MPa absの圧力で行われる。
【0028】
この液状吸収剤はこの場合に20〜80℃の温度、特にこの下限に関して30℃以上の温度、そしてこの上限に関して60℃以下の温度で温度処理されている。このガスは分離装置中への進入の際に一般的には20〜80℃、好ましくは30〜60℃の温度を有する。
【0029】
有利な一実施態様において酸性ガスの除去を、向流で運転する洗浄塔中で、洗浄塔の内部に存在する活性炭の存在下で実施し、この洗浄塔では内部に不連続的液相が形成される。使用すべき洗浄塔は加えて、通常使用される内部構造物、例えば不規則充填体又は規則充填体を含有する。この活性炭は好ましくは90質量%を超える炭素含量及び300〜2000m2/gのBET表面積を示す。その濃度は一般的には洗浄塔の体積m3あたり1〜2000g活性炭である。活性炭は様々な手法で供給されることができる。好ましい一実施態様において、これは液状吸収剤中に懸濁される。この場合にその粒径は好ましくは0.1〜1000μm、特に好ましくは0.1〜50μmの範囲内にある。液状吸収剤に対してこの懸濁された活性炭の濃度は好ましくは1m3あたり0.01〜20kg、特に好ましくは1m3あたり1〜10kgである。他の好ましい一実施態様において、これは洗浄塔の内部で場所的に固定された形で設置される。この場合に活性炭は例えば固く設置された液体−及びガス透過性ポケット(活性炭ペレットの形にあるようなもの)中に又は活性炭でコーティングされた規則充填体又は不規則充填体中に固定して洗浄塔中にある。洗浄塔の体積に対してこの固定された活性炭の濃度は好ましくは1m3あたり1g〜2kg、特に好ましくは1m3あたり100g〜1kgである。活性炭の存在によりこの液状吸収剤の吸収速度は高められ、これは更により効率的な方法実施を生じる。水性アルカリ性吸収剤中での酸性ガスの吸収における活性炭の使用についての更なる詳細は番号EP-Az. 09 154 427.0を有するEP優先権書面に記載されている。
【0030】
酸性ガス成分が負荷された吸収剤から酸性ガスが再生工程において放出されることができ、その際、再生された吸収剤が得られる。再生工程において、吸収剤の負荷は減少され、かつこの得られる再生された吸収剤は好ましくは引き続き吸収工程に返送される。
【0031】
一般的にはこの負荷された吸収剤を(例えば70〜110℃への)加熱により、放圧(Entspannung)により、及び/又は不活性流体を用いたストリッピングにより、又はこの上述の処置の2又は全部で3の組み合わせにより、再生する。不活性流体とは、吸収剤とも酸性ガスとも化学反応せず、かつ、吸収剤中に溶解しないか又は最高でわずかにしか溶解しないガスを理解すべきである。適した不活性流体としては例えば窒素、水蒸気又は空気が挙げられる。
【0032】
通常は、この負荷された吸収剤は再生のために加熱され、かつ放出された酸性ガスは例えば脱着塔内で分離される。再生された吸収剤が再び吸収器中に導入される前に、それは適した吸収温度へと冷却される。高温で再生された吸収剤中に含まれるエネルギーを利用するために、この吸収器からの負荷された吸収剤は、高温で再生された吸収剤との熱交換によって予熱することが有利である。熱交換によって、負荷された吸収剤はより高い温度にもたらされ、そうして再生工程においてより僅かな使用エネルギーが必要となる。熱交換によって、場合により負荷された吸収剤の部分的な再生も既に酸性ガスの放出下に行うことができる。この得られるガス−液状−混合相流はこの場合に次いで相分離容器中に導通され、ここから酸性ガスが取り出される。この液相は吸収剤の完全な再生のために脱着塔中に導通される。
【0033】
酸性ガスが除去されることができるガス流として根本的に全ての天然の及び合成の、酸素含有及び酸素不含のガス流を使用することができ、これは例えば天然ガス、精油所ガス、合成ガス、バイオガス又は排ガスである。本発明による方法は天然ガスの使用の際に好ましくは3〜10MPa absの圧力で、精油所ガスの使用の際に好ましくは0.05〜10MPa absの圧力で、合成ガスの使用の際に好ましくは1.5〜6MPa absの圧力で、かつバイオガス又は排ガスの使用の際に好ましくは0.05〜0.5MPa absの圧力で行われる。
【0034】
特にとりわけ好ましくは本発明による方法では酸素含有ガス流からの二酸化炭素の除去である。これは好ましくは0.1〜21Vol.−%の酸素を含有する。好ましい、酸素含有ガス流としては特に以下のものが挙げられる
・燃焼ガス又は排ガス(煙道ガス)、これは有機物質の燃焼により得られる;
・有機物質(有機廃棄物を含む)のコンポスト化又は貯蔵からのガス、及び
・有機物質の細菌分解からのガス。
【0035】
酸性ガスとしては、精製すべきガス流中で当該条件下でガス状であり、かつ、水溶液中でpH値<7を示す化合物が理解される。典型的な酸性ガスは例えば二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)、二酸化硫黄(SO2)、炭素酸化物硫化物(COS)、二硫化炭素(CS2)、シアン水素(HCN)及びメルカプタン(RSH)である。本発明による方法により好ましくは二酸化炭素及び硫化水素が、特に好ましくは二酸化炭素が除去される。したがって、この二酸化炭素濃度は好ましくは使用されたガス流において好ましくは0.1〜50Vol.−%である。
【0036】
一般的にはこの好ましいガス流は100mg/Nm3未満の二酸化硫黄を、好ましくは50mg/Nm3未満の二酸化硫黄を含有する。更にこの好ましいガス流は一般的に100mg/Nm3未満の酸化窒素を、好ましくは50mg/Nm3未満の酸化窒素を含有する。
【0037】
以下においては例示的に、限定することなく、本発明による方法を適用した排ガスからの二酸化炭素−除去の際の可能な振る舞いを記載する。本発明による二酸化炭素の吸収の前に、排ガスを冷却しかつ湿潤する(急冷)するために、排ガスを好ましくはまず水性液体で、特に水で洗浄する。この洗浄では、ダストまたはガス状の不純物、例えば二酸化硫黄も除去できる。
【0038】
引き続きこの前処理された排ガスを実際の二酸化炭素−除去に供給する。図1はこのために、本発明による方法の実施のために適した設備の図式を示す。前記式では次のものが意味される:
1=排ガス
2=二酸化炭素が少なくなった排ガス
3=分離された二酸化炭素
A=吸収塔
B=水洗浄
C=吸収
D=冷却器
E=冷却器
F=ポンプ
G=ポンプ
H=脱着塔
I=熱交換器
J=蒸発器(リボイラー)
K=凝縮器。
【0039】
図1によれば排ガス1は吸収塔Aの下側部分中に導通され、かつ吸収剤と向流で接触される。この二酸化炭素が少なくなった排ガスを吸収塔の上側部分中で更に水で洗浄し、頭頂部を介して流2としてこの塔から導く。この二酸化炭素で負荷した吸収剤を吸収塔Aの底部で取り出し、かつポンプG及び熱交換器Iを介して脱着塔H中に通じさせる。脱着塔の下側部分でこの負荷された吸収剤を蒸発器Jを介して加熱する。この温度上昇によりこの吸着された二酸化炭素の一部が再度気相中に移行する。これを脱着塔Hの頭頂部で搬出し、凝縮器K中で冷却する。この凝縮した吸収剤をこの頭頂部を介して再度返送する。この気体状二酸化炭素を流3として取り出す。この再生した吸収剤をポンプF及び冷却器Eを介して再度吸収塔Aに返送する。
【0040】
本発明による吸収剤は意外なことに極めて調和した特性を、驚くべきことに極めて高い吸収速度に関して、及び、驚くべきことに極めて低い再生のためのエネルギー要求に関して示す。したがって、この高い吸収速度のために、より小さい吸収塔の使用が可能になり、というのもより少ない交換表面又はより短い滞留時間が絶対的に十分であるからである。同様に、この蒸発器(リボイラー)も脱着塔のためにより小さく設計させることができ、というのも吸収剤の再生のためにより少ないエネルギーが必要となるからである。この高い吸収速度によりこの本発明による吸収剤により高い循環能力も達成されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明による方法の実施のために適した設備の図示を示す図である。
【図2】図2は、図示した要素を有する二重撹拌セルの図示を示す図である。
【0042】
実施例
実施例1:本発明による及び本発明によらない吸収剤での相対的な循環能力及び再生のための相対的な蒸発量要求
二酸化炭素−循環能力及び再生要求の測定のために、様々な、二酸化炭素で負荷した吸収剤を用いた実験室試験を実施した。比較の基礎として、水中の30質量%のモノエタノールアミン(MEA)を使用した。本発明による吸収剤は15質量%のビス(3−ジメチルアミノ−プロピル)−アミン(ビスDMAPA)及び15質量%のピペラジンを含有する。
【0043】
相対的な循環能力の算出及び吸収剤の再生のための相対的な蒸気量要求の見積もりのために、吸収剤中の二酸化炭素の平衡負荷を40(吸収器底部のために)及び120℃(脱着器底部のために)で二酸化炭素−分圧に依存して測定した。この測定を全ての表1中に列記する系について実施した。この平衡負荷の測定のために約100cm3の体積を有するガラス圧力容器を使用した。この中に定義された量の吸収剤を装入し、この容器を排気し、一定の温度で二酸化炭素を段階的に定義されたガス体積を介して計量供給した。この液相中に溶解された量の二酸化炭素をガス室校正(Gasraumkorrektur)を考慮してこの上にある気相を通じて算出した。
【0044】
吸収剤の循環能力を見積もるために、次のような想定をした:
1.吸収器に1barの全圧で130hPaの二酸化炭素−分圧(雰囲気圧力での排ガス中での約13Vol.−%二酸化炭素に相当)を有する二酸化炭素含有排気を装入した。
2.吸収器底部は、40℃の温度が支配している。
3.再生の場合、脱着器底部中では120℃の温度が支配している。
4.吸収器底部では平衡状態が達成される。したがって二酸化炭素−平衡分圧は130hPaの供給ガス分圧と同じである。
5.脱着の場合、100hPaの二酸化炭素−分圧が吸着器底部中に支配している。
6.脱着の場合に平衡状態が達成される。
【0045】
吸収剤の能力を、40℃の平衡曲線と13kPaの一定の供給ガス−二酸化炭素−分圧の線との交点での負荷(Nm3二酸化炭素/t吸収剤で)から(平衡における吸収器底部での負荷された溶液)、及び、120℃の平衡曲線と100hPaの一定の分圧の線との交点での負荷(平衡における脱着器底部での再生された溶液)から算出した。両者の負荷の差異は、それぞれの溶媒の循環能力である。大きな能力とは、より少ない溶媒を循環させなければならず、したがって機器、例えばポンプ、熱交換器、しかも導管もより小型に寸法決定することができることを意味する。更にこの運行量(Umlaufmenge)は再生に必要なエネルギーにも影響を及ぼす。
【0046】
吸収剤の適用特性のための更なる1つの基準は、脱着器のマッケーブ−シーレ線図中の作業直線の上昇である。脱着器の底部中での挙動についてこの作業直線は通常平衡線に極めて近く、したがって平衡曲線の上昇は作業直線の上昇に近似的に同一視されうる。一定の液体負荷の場合には、吸収剤の再生のために平衡曲線の大きな上昇と共により少ないストリッピング蒸気量が必要とされる。ストリッピング蒸気の発生のためのエネルギー要求量は、本質的に二酸化炭素−吸収プロセスの全エネルギー要求量に貢献する。
【0047】
適切には上昇の相関的な値が定められ、それというのもこの値は、吸収剤1kg当たりに必要とされる蒸気量に直接に比例するからである。この相関的な値を吸収剤の能力で除する場合には、吸収された二酸化炭素量につき必要とされる蒸気量についての相対的な証言を直接に可能にする比較値を得ることができる。
【0048】
表1には本発明による吸収剤のために相対的な循環能力及び相対的な蒸気必要量の値がMEAを標準として示されている。30質量%のMEAに比較してこの相対的な循環能力は15質量%ビスDMAPA+15質量%ピペラジンの使用の際に128%に上昇する。この相対的な蒸気量要求は顕著に68%に減少し、これは大工業的適用においては巨大な節約可能性を示す。
【0049】
実施例2:本発明による及び本発明によらない吸収剤での相対的な吸収速度
ガス流から吸収剤中への二酸化炭素の物質輸送速度の測定のために測定を二重撹拌セル(Doppelruehrzell)中で実施した。この物質輸送速度は反応性吸収の際に物理的な物質輸送からもまた同様に吸収剤と二酸化炭素との間での反応キネティックからも構成される。この両者の影響の大きさはこの二重撹拌セル中で概略的なパラメーターとして測定されることができる。比較の基礎として水中の31.2質量%のモノエタノールアミン(MEA)並びに水中の30質量%のビス(3−ジメチルアミノ−プロピル)−アミン(ビスDMAPA)が用いられた。本発明による吸収剤は15〜28.6質量%のビスDMAPA及び1.4〜15質量%のピペラジンを含有した。
【0050】
図2は、以下の要素を有する二重撹拌セルの図示を示す:
A=二酸化炭素−貯蔵容器
B=二重撹拌セル
C=サーモスタット装置
D=計量供給弁
E=圧力測定機。
【0051】
この二重撹拌セルは内径85mm及び体積509mLを有した。このセルを試験の間50℃に恒温処理した。この気相及び液相の混合のためにこのセルは図示によれば2個の撹拌機を備えている。この試験開始前にこの二重撹拌セルを排気した。定義された体積の脱気された吸収剤を二重撹拌セル中に輸送し、50℃に恒温処理した。負荷されていない吸収剤の加熱の間に既に撹拌機がスイッチが入れられる。この撹拌機回転数は、平らな相界面が液相と気相の間で調整されるように選択された。この相界面での波形成は回避すべきであり、というのもこれにより定義された相界面が存在しなくなるためである。この所望の試験温度に達した後に、制御弁を介して二酸化炭素を反応器中に導入した。この体積流を、この二重撹拌セル中にこの試験の間に一定の圧力50hPa abs(二酸化炭素−分圧に相当)が支配するように制御した。増加する試験期間と共に二酸化炭素に関するこの体積流は減少し、というのは吸収剤が時間と共に飽和され、したがって吸収速度が減少したからである。この二重撹拌セル中を貫流する二酸化炭素に関する体積流を全試験期間にわたり記録した。この試験終了は、二酸化炭素がもはや二重撹拌セル中に貫流しなくなると直ぐに達成された。この吸収剤は試験終了時にほぼ平衡状態にあった。
【0052】
試験の評価のために吸収速度をmol CO2/(m3吸収剤・分)で吸収剤の負荷に依存して測定した。吸収速度を記録した二酸化炭素に関する体積流から、そして吸収剤に関して充填された体積から算出した。この負荷を、二重撹拌セルに供給された二酸化炭素の集積量から、そして、吸収剤に関する充填された質量から測定した。
【0053】
表2には、ビスDMAPAに対して標準化して10及び20Nm3 CO2/tを有する負荷での様々な吸収剤の相対的な吸収速度が示されている。
【0054】
30質量%のビスDMAPAと比較してこの相対的な吸収速度は10Nm3 CO2/t 吸収剤の負荷の際に15質量%のビスDMAPA+15質量%のピペラジンの使用の際に269%に上昇する。20Nm3 CO2/t 吸収剤の負荷の際にはこの相対的な吸収速度は前述のアミン混合物で366%に上昇する。1.4質量%のピペラジン及び28.6質量%のビスDMAPAのみを有するアミン混合物自体でこの相対的な吸収速度は145%(10Nm3 CO2/t 吸収剤)又は182%(20Nm3 CO2/t 吸収剤)である。ビスDMAPA/ピペラジン−混合物中での二酸化炭素−吸収速度はしたがって、水溶液中での30質量%のアミンの同じ全濃度において純粋なビスDMAPAの使用の際に比較して3倍よりもより高い。
【0055】
これに応じて31.2質量%のMEAの水溶液は1tの吸収剤につき10Nm3 CO2の負荷の場合に378%の最高の相対的な吸収速度を、そして、1tの吸収剤につき20Nm3 CO2の負荷の場合に541%の最高の相対的な吸収速度を示す。しかしながらここでは、図1によれば水中の純粋なMEA溶液の使用はビスDMAPA/ピペラジン混合物に対して本質的により高いエネルギー要求(蒸発量)が再生のために示すことを考慮すべきである。
【0056】
したがってMEA水溶液は確かに極めて高い吸収速度を有するだろうが、しかしながら同様に極めて高いエネルギー要求も再生の際に示すだろう。反対にビスDMAPA水溶液は不十分に低い吸収速度だけ示し、これは工業的な変換の際に本質的により大きい吸収塔を必要とするものである。実施例1及び2は、相応する混合物の使用により意外なことに、高い吸収速度を示しまた同様に再生のために極めて低いエネルギー要求も必要とする、極めて調和のとれた吸収剤が得られることを裏付ける。
【0057】
加えて、試験においてはこの効果も活性炭の添加により検査した。このために15質量%のビスDMAPA及び15質量%のピペラジンからの混合物を付加的に0.1質量%の活性炭(Norit SA Super、BET表面積1150m2/g)と混合し、他の実施例と同様にこの相対的な吸収速度を算出した。活性炭なしの15質量%のビスDMAPA及び15質量%のピペラジンからの混合物に対してこの相対的な吸収速度は0.1質量%だけの活性炭の存在の際に10Nm3 CO2/t 吸収剤の負荷の際に269%から396%に、そして20Nm3 CO2/t 吸収剤の負荷の際に366%から636%に上昇する。この結果はしたがって、活性炭の存在による相対的な吸収速度の、更なる、顕著な上昇を示す。
【0058】
表1:MEAに対して標準化した相対的な循環能力及び蒸気量要求
【表1】

【0059】
表2:ビスDMAPAに対して標準化した10及び20Nm3 CO2/tを有する負荷の際の様々な吸収剤の相対的な吸収速度
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(I)
【化1】

[式中、
1は水素又はC1〜C3−アルキル、
2は水素又はC1〜C3−アルキル、
nは2〜6、及び
pは1〜3である]
のオリゴアミン、及び
(B)一般式(II)
【化2】

[式中、
aは水素、C1〜C3−アルキル、−CH2CH2OH又は−(CH2mNH2(式中mは1〜3)、
bは水素、C1〜C3−アルキル又は−(CH2nNH2(式中nは1〜3)、
cは水素、C1〜C3−アルキル又は−(CH2oNH2(式中oは1〜3)、
dは水素、C1〜C3−アルキル又は−(CH2pNH2(式中pは1〜3)、及び
eは水素、C1〜C3−アルキル又は−(CH2qNH2(式中qは1〜3)である]
のピペラジン誘導体
を含有し、
その際オリゴアミン(A)対ピペラジン誘導体(B)の質量比
m[オリゴアミン(A)]/m[ピペラジン誘導体(B)]
は0.2〜25である、酸性ガスのための吸収剤。
【請求項2】
オリゴアミン(A)対ピペラジン誘導体(B)の質量比
m[オリゴアミン(A)]/m[ピペラジン誘導体(B)]
は0.2〜4である、請求項1記載の酸性ガスのための吸収剤。
【請求項3】
オリゴアミン(A)+ピペラジン誘導体(B)に関する濃度が吸収剤の全量に対して10〜60質量%である請求項1又は2記載の酸性ガスのための吸収剤。
【請求項4】
オリゴアミン(A)に関する濃度が吸収剤の全量に対して1〜20質量%である請求項1から3までのいずれか1項記載の酸性ガスのための吸収剤。
【請求項5】
オリゴアミン(A)がビス(3−ジメチルアミノ−プロピル)−アミンである請求項1から4までのいずれか1項記載の酸性ガスのための吸収剤。
【請求項6】
ピペラジン誘導体(B)がピペラジンである請求項1から5までのいずれか1項記載の酸性ガスのための吸収剤。
【請求項7】
水を含有し、その際オリゴアミン(A)+ピペラジン誘導体(B)の合計対水の質量比
{m[オリゴアミン(A)]+m[ピペラジン誘導体(B)]}/m[水]
が0.11〜1.5である請求項1から6までのいずれか1項記載の酸性ガスのための吸収剤。
【請求項8】
ガス流と0.05〜10MPa absの圧力で、温度20〜80℃に温度処理された液状吸収剤との接触によりガス流から酸性ガスを除去するための方法において、液状吸収剤として請求項7記載の酸性ガスのための吸収剤を使用することを特徴とする方法。
【請求項9】
酸性ガスの除去を、内部で不連続的液相が形成される、向流で運転する洗浄塔中で、洗浄塔の内部に存在する活性炭の存在下で実施することを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
バイオガス又は排ガスを使用し、かつ、0.05〜0.5MPa absの圧力でこの方法を実施することを特徴とする請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
ガス流が0.1〜21Vol.−%の酸素を含有することを特徴とする請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
酸性ガスが二酸化炭素を含有し、ガス流中この二酸化炭素濃度が0.1〜50Vol.−%であることを特徴とする請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
ガス流との接触後に二酸化炭素で負荷された吸収剤を、加熱により、放圧により、不活性流体を用いたストリッピングにより、又は、この上述の処置の2又は全部で3つからなる組み合わせにより、再生することを特徴とする請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−525423(P2011−525423A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515287(P2011−515287)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057101
【国際公開番号】WO2009/156273
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】