吸収塔及びそれを用いた生物脱臭装置
【課題】 スポンジ材の形状を長期間保持可能で、多孔質材としてその利点を活かして臭気物質等の吸収効率長期間維持可能な吸収塔及び生物脱臭装置を提供する。
【解決手段】 吸収塔は、気液接触層と、気液接触層に液体を供給する液体供給装置と、気液接触層にガスを供給するガス供給部とを有し、気液接触層においてガスに含まれる所定成分を液体に吸収させる。気液接触層は、立位で並列する複数の平板状又はシート状の多孔質材と、多孔質材と交互に当接配置されて多孔質体を挟持する複数の差込部材とを有し、差込部材は、凹凸した表面形状を有し、凹凸によって多孔質材との間にガスが通過可能な間隙を形成する。生物脱臭装置は、吸収塔を有し、その気液接触層は臭気物質を分解可能な微生物を保持し、液体は水であり、ガスに含まれる臭気物質を水に吸収して微生物を用いて分解する。
【解決手段】 吸収塔は、気液接触層と、気液接触層に液体を供給する液体供給装置と、気液接触層にガスを供給するガス供給部とを有し、気液接触層においてガスに含まれる所定成分を液体に吸収させる。気液接触層は、立位で並列する複数の平板状又はシート状の多孔質材と、多孔質材と交互に当接配置されて多孔質体を挟持する複数の差込部材とを有し、差込部材は、凹凸した表面形状を有し、凹凸によって多孔質材との間にガスが通過可能な間隙を形成する。生物脱臭装置は、吸収塔を有し、その気液接触層は臭気物質を分解可能な微生物を保持し、液体は水であり、ガスに含まれる臭気物質を水に吸収して微生物を用いて分解する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質体を用いて気体中の物質を気液接触によって液体に吸収する吸収塔、及び、吸収塔の多孔質体に微生物を担持して気体中の悪臭物質を微生物の作用によって除去する生物脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状又は片状の充填材や多孔質体を用いて気液接触により気体中に含まれる物質を吸収する吸収塔は様々な用途に用いられ、その代表的なものに脱臭装置がある。中でも、生物脱臭装置は、臭気物質を分解可能な微生物を担持した充填材に水を通過させると共に、気相中の臭気物質を水に溶解させて微生物による分解を進行させるので、化学薬剤を殆ど使用する必要がなく、低コストであるため、広く普及している(例えば、下記非特許文献1)。生物脱臭装置の性能を決める要素には、臭気物質の吸収効率及びその微生物による分解効率があり、臭気物質の吸収効率は、充填材の表面積、特に濡れ面積に大きく支配される。従って、吸収効率を上げるためには、比表面積が大きい親水性の充填材を使用することが望ましい。又、微生物が充填材表面に繁殖することを考慮すると、微生物による分解効率の点からも比表面積が大きい充填材の使用が好ましい。しかし、比表面積が大きい充填材として、細かい粒子の充填材を堆積させて用いた場合、通気性が悪く、微生物の繁殖による目詰まりも生じ易い。このため、生物脱臭装置では、目詰まり防止及び通気性確保のためにある程度以上の大きさ(具体的には5cm程度以上)の充填材が用いられ、吸収効率及び分解効率はある程度犠牲にせざるを得ない。その結果、生物脱臭装置は、コストは安くても、吸収効率及び分解効率の低さを補うために広い敷地を要するという評価がされてきた。
【0003】
このような欠点を克服する手段として、下記特許文献1では、多孔質のスポンジを吸収塔の充填材として用いた生物脱臭装置を開示している。この文献では、スポンジの充填形態について開示されていない。下記特許文献2では、圧縮強度の大きい粒状充填材と吸水性充填材とを混合して充填する生物脱臭装置が記載され、ポリプロピレン粒状体と親水性ポリウレタンフォームとの混合充填を例示する。
【0004】
一方、廃水処理の分野においては、スポンジを利用した処理技術の開発が進められており、スポンジシートを折り曲げて、屈曲部を丸棒及び支持板で支持した廃水処理装置(下記特許文献3)や、スポンジ塊をシートや線材で繋いて吊り下げて汚水の濾過に使用する散水濾床装置(下記特許文献4,5)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−91934号公報
【特許文献2】特許第3922920号
【特許文献3】特許第2620300号
【特許文献4】特許第3443725号
【特許文献5】特許第3586745号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】建設省都市局下水道部監修、「下水道施設計画・設計指針と解説」(1994年版)、社団法人日本下水道協会発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的には、スポンジを吸収塔の充填材として使用する場合、キューブ状のスポンジ塊を積み上げて使用する。この場合、ある程度の大きさのキューブを用いることによって目詰まりを防止しつつ通気性を確保できるように構成することは可能であるので、多孔質による比表面積の大きさを活用して生物脱臭装置の効率を改善することが期待できる。しかし、実際には、例えば上記特許文献1の生物脱臭装置等においてキューブ状スポンジを積み上げて長く使用すると、吸水及び微生物の繁殖による重みによって下層のスポンジが押し潰され、スポンジ層の高さが低くなり(所謂、沈み込み)、その結果、通気が困難になる。この点に関し、上記特許文献2の生物脱臭装置では沈み込みは抑制されるが、圧縮強度を有する充填材によって却って吸水性充填材の占める容積が制限されるために、期待されるほどの効率向上は困難である。
【0008】
又、特許文献3の構成では、スポンジの重量増加による負荷が局所に集中するため、沈み込みの抑制は充分でなく、長期的な強度の問題は解消されない。特許文献4,5の構成では、製作工程が非常に煩雑で手間がかかるため、実施には経済的困難等が伴い、実用に不向きである。
【0009】
本発明の課題は、上述の問題を解決し、スポンジ材の利点を活かしつつ、長期使用に伴う潰れを抑制して吸収効率の低下を防止可能な吸収塔を実用に供し易い構成で提供することである。
【0010】
又、本発明の課題は、スポンジ材の利点を活かしつつ、長期使用に伴う潰れを抑制して吸収効率及び微生物による臭気物質の分解効率の低下を防止可能な生物脱臭装置を実用に供し易い構成で提供することである。
【0011】
更に、本発明の課題は、軽量化や使用条件に応じた設計変更に対応し易い構成を有する吸収塔及びそれを用いた生物脱臭装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、板状のスポンジ材と、スポンジ材を挟持する差込部材とを用いることによって、スポンジ材の潰れを抑制して吸収効率の低下を防止可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の一態様によれば、吸収塔は、気液接触層と、前記気液接触層に液体を供給する液体供給装置と、前記気液接触層にガスを供給するガス供給部とを有し、前記気液接触層における前記液体と前記ガスとの接触によって前記ガスに含まれる所定成分を前記液体に吸収させる吸収塔であって、前記気液接触層は、立位で並列する複数の平板状又はシート状の多孔質材と、前記複数の多孔質材と交互に当接配置されて前記多孔質材を挟持する複数の差込部材とを有し、前記差込部材は、凹凸した表面形状を有し、前記凹凸によって前記多孔質材との間に前記ガスが通過可能な間隙を形成することを要旨とする。
【0014】
前記多孔質材は、孔径500μm〜3mmの連続気孔を有し、空孔率が90容積%以上のスポンジ材を用いることができる。前記差込部材は剛性素材製で保形性を有する。
【0015】
又、本発明の一態様によれば、生物脱臭装置は、上記吸収塔を有し、前記気液接触層は、臭気物質を分解可能な微生物を保持し、前記液体は水であり、前記所定成分としてガスに含まれる臭気物質を水に吸収して前記微生物を用いて分解する。
【0016】
上記生物脱臭装置において、前記多孔質材として、ポリウレタンエーテルフォーム製のスポンジ材を使用でき、前記微生物には、硫黄酸化細菌又はアンモニア酸化細菌を使用できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、実用に供し易い構成を用いて、スポンジ材の長期使用に伴う潰れを抑制して吸収効率の低下を防止可能な吸収塔が提供可能であり、これを用いて微生物を担持させることにより、スポンジ材の利点を活かして臭気物質の吸収効率及び微生物による分解効率を長期間維持可能な生物脱臭装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における差込部材及びスポンジ材の例を説明するための説明図。
【図2】本発明に係る吸収塔の第1の実施形態を示す上面図(a)、鉛直方向断面図(b)、(b)におけるA−A線断面図(c)、(b)におけるB−B線断面図(d)。
【図3】本発明に係る吸収塔の第2の実施形態を示す鉛直方向断面図。
【図4】本発明に係る吸収塔の第3の実施形態を示す上面図(a)、鉛直方向断面図(b)、(b)におけるA−A線断面図(c)、(b)におけるB−B線断面図(d)。
【図5】本発明に係る吸収塔の第4の実施形態を示す鉛直方向断面図。
【図6】本発明に係る吸収塔の第5の実施形態を示す上面図(a)、鉛直方向断面図(b)、(b)におけるA−A線断面図(c)、(b)におけるB−B線断面図(d)。
【図7】本発明に係る吸収塔の第6の実施形態を示す鉛直方向断面図。
【図8】本発明に係る吸収塔の第7の実施形態を示す鉛直方向断面図。
【図9】本発明に係る吸収塔の第8の実施形態を示す鉛直方向断面図。
【図10】図9の吸収塔を構成する各部の要素を示し、(a)〜(c)は側面図、(d)は下面図、(e)は(b)におけるA−A線断面図、(f)は(b)におけるB−B線断面図。
【図11】図9の吸収塔の構成要素を示し、(a)は主要構造の側面図、(b)は架台の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ガス中の物質を液体に吸収させる気液接触を行うために多孔質体を用いる場合、ガスの通過を容易にするためには、ある程度以上の大きさの気孔を有する必要があるので、吸収塔での使用に適する多孔質体は、柔軟で弾性変形し易いスポンジ状となる。スポンジは、保水によって重くなり、又、微生物を繁殖させて担持した場合には微生物の重量が増加するので、吸収塔に使用されるスポンジ材は、時間の経過に伴って重量が増加する。これにより、荷重が大きくなる下部ほどスポンジは潰れ易くなり、材料疲労等に伴ってスポンジの潰れ及び目詰まりが進行するため、長期使用は困難になる。
【0020】
本発明においては、平板状又はシート状の多孔質材と剛性素材製の保形性差込部材とを使用し、複数の多孔質材間に複数の差込部材を介在させて立位の多孔質材を差込部材によって挟持する。具体的には、鉛直方向に立設する複数の平板状又はシート状の多孔質材と複数の板状差込部材とを交互に並列配置して互いに当接させることによって多孔質材を差込部材で挟持し、これらを一体として気液接触層を構成する。差込部材は、凹凸した表面形状を有し、凸部において多孔質材と当接し、凹部において多孔質材との間にガスが通過可能な間隙が形成される。差込部材によって挟持される多孔質材は、差込部材の凸部によって支持されるため、含水及び微生物の繁殖による重量増加に対する耐久性が得られるので、多孔質材としてスポンジ素材を用いても、潰れ・沈み込み等の形状変化が抑制される。差込部材の凹部における間隙によってガスの流通及び気液接触が促進される。
【0021】
以下、本発明に係る吸収塔及び生物脱臭装置について詳細に記載する。
【0022】
本発明の吸収塔及び生物脱臭装置は、気液接触するための多孔質体として複数の板状又はシート状の多孔質材を使用し、空孔率が高いスポンジ材が好適に用いられる。複数の差込部材を用いて複数のスポンジ材を挟持して一体化することによって吸収塔の気液接触層を形成する。
【0023】
気液接触層を構成する多孔質材は、優れた通液性及び通気性を発揮するために、具体的には、液相に対する親和性及び耐性を有し、孔径500μm〜3mm程度の連続気孔を有するスポンジ材が好ましい。好適な接触効率を得るために、空孔率が90容積%程度以上の発泡材が好適に使用され、空孔率の高さによって柔質で弾性を示す素材となる。但し、自重に耐える保形性を保持するためには、空孔率は概して97容積%程度が上限となる。多孔質材には様々な天然又は合成発泡材があり、吸収塔や生物脱臭装置に用いる多孔質材は、成形が容易で軽量であることが望ましいことから、発泡プラスチックによるスポンジ材が適しており、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリウレタン、ポリエステル等のプラスチックの発泡材が挙げられる。液相として水を使用する吸収塔においては、親水性を有する多孔質材が用いられ、生物脱臭装置においては、更に、微生物を担持・繁殖可能な素材で構成された多孔質材であることが要点となる。従って、親水性ポリウレタン、メラミン、ポリエステル等の発泡材の使用が好ましく、加水分解による劣化等を考慮すると、ポリウレタンエーテルフォームが最適である。
【0024】
立設したスポンジ材の側面を差込部材によって挟持してスポンジ材の潰れを好適に抑制するためには、スポンジ材は、厚さが10〜50mm程度の平板状又はシート状であることが好ましく、立設状態での多孔質材の高さは50〜300cm程度が好ましい。スポンジ材が過度に厚いと、厚みの中央部における窪みが生じ易くなる。スポンジ材が高過ぎると、スポンジ最下部において荷重が差込部材の支持を上回って潰れが起こり易くなる。
【0025】
差込部材は、保形性(強度)を有する剛質素材を用いて、表面が凹凸した形状に形成され、その強度は、含水したスポンジ材の重量負荷によって変形しない耐久性を備えていればよい。差込部材は軽量で薄形に成形できることが望ましく、その好ましい素材としては、例えば、塩化ビニル、FRP、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS等のポリマー樹脂類や、ステンレス鋼、アルミニウム等の腐食し難い金属材などが挙げられるが、これらに限定されず、水に対する耐久性、耐腐食性を有する硬質素材から好適なものを適宜選択して使用してよい。
【0026】
差込部材の形状は、差込部材の主体部分が真直であるか屈曲するかによって2つに分類することができ、第1は、薄い平板を湾曲又は屈折させた屈曲板状、つまり、主体部が屈曲した形状であり、第2は、平板表面に突起を設けた直板状、つまり、主体部が真直ぐに伸びた形状である。図1の(a)は、平板を所定周期で波形に湾曲させた差込部材1aを、図1の(b)は、所定周期で蛇腹形に屈折させた差込部材1bを、図1の(c)は、平板表面に所定間隔で複数の突起pを設けた(或いは窪みを形成した)差込部材1cを例示する。差込部材1cを鉛直に立設すると、突起pは、水平断面が長方形の四角棒状突起であって鉛直方向に伸長し、隣接する突起との間に鉛直方向に伸長する溝が構成され、溝の水平断面は長方形である。差込部材1a〜1cの何れも表面形状が規則的に凹凸するので、スポンジ材3と差込部材1a〜1cとを交互に並列させると、差込部材1a〜1cの凸部においてスポンジ材3と当接して、スポンジ材間の平板状空間を差込部材が占めて互いに平行に配置される。
【0027】
気液接触層における気液接触効率を高めるためには、スポンジ材間に差込部材が占める空間をできる限り小さく構成することが望ましく、実用的にはこの空間の幅(スポンジ材間の距離)を10mm程度以下、好ましくは3〜7mm程度に薄く構成するとよい。差込部材1a〜cの凹部においてスポンジ材3との間に間隙が形成され、鉛直方向の通気が可能である。この通気用の間隙は、過剰に広いと、ガスや水の逃げ道となって気液接触効率を低下させる恐れがあるので、突起p間の溝の幅及び深さ(通気幅)が0.25〜2.5cm程度となるように構成することが好ましい。凹部の断面形状は、正方形、長方形、台形等の矩形や三角形を含む多角形、半円、半楕円、波形などの様々な形状から適宜選択してよい。図1(c)の棒状突起Pを角柱状突起に変更して突起間の溝の形状を碁盤目等の各種網目状としても良い。
【0028】
差込部材の凸部が規則的に位置することによって、スポンジ材は、差込部材の凸部によって全体として均等にバランス良く支持される。スポンジ材を強固に挟持するには、差込部材とスポンジ材との接触面積が多いことが好ましく、この点では、差込部材の凸部が平面でスポンジ材と当接する図1(c)の差込部材1cが最適である。曲面でスポンジ材と当接する場合は、スポンジ材が僅かに弾性変形する程度に押圧することによって接触面積が増え、又、スポンジ材の歪みの局所集中を抑制できるので、これらを考慮すると、図1(a)のような湾曲面で接触する差込部材1aは好適である。尚、図1(a)では、差込部材1aの湾曲が互いに並行するように配置されているが、スポンジ材を中心として両側の差込部材の湾曲が面対称になるように向きを変更すると、スポンジ材は対称に挟持されるので、支持の確度及び密接性が得られ易い。
【0029】
スポンジ材の数をnとした時、差込部材の数がn±1の範囲内であると、これらを交互に配置でき、n+1である時にはスポンジ材の両末端が差込部材で挟持され、n−1である時には図1のように末端がスポンジ材の配列となり、この場合の両端のスポンジ材は、片面を吸収塔の側壁内面によって挟持することができる。差込部材の一部を、例えば、凹凸のない平板状差込部材によって代替することも可能である。部分的にスポンジ材間の差込部材を欠いた配列(差込部材の数<n−1)であっても利用は可能であるが、差込部材を欠いた部分はスポンジの潰れ抑止効果がないので、スポンジ材及び差込部材が交互に位置することが望ましい。差込部材は、厚さ方向に貫通する細孔を設けて、差込部材を介した両側間の通気が可能なように構成しても良い。この場合は、差込部材の強度が不足しないように細孔の寸法、数及び分布に留意すると良い。
【0030】
上述のように交互に立設配置した複数の差込部材と複数のスポンジ材とを一組のユニットとして、吸収塔又は生物脱臭装置の気液接触層を構成する。差込部材の高さは、スポンジ材と実質的に同等であることが好ましく、スポンジ材より差込部材の高さが高い場合は、気液接触を阻害するガスの逃げ道とならないように留意し、差を20cm程度以下とすることが望ましい。差込部材及びスポンジ材を一組のユニットに拘束するための拘持具を使用しても良いが、吸収塔又は生物脱臭装置の気液接触層としての空間に差込部材及びスポンジ材を纏めて装着した時にこれらが装置内壁面に密接した状態で嵌合固定されるように吸収塔の内部構造を設計することによって、拘持具を用いずに差込部材及びスポンジ材を密接固定することができる。立設配置した差込部材及びスポンジ材は、スポンジ材が僅かに弾性変形する程度に水平方向に押圧すると、差込部材の凸部とスポンジ材との密接性が高まり、スポンジ材の弾性反発によって差込部材による挟持が強固になる。従って、吸収塔又は生物脱臭装置の気液接触層を構成する空間の幅を、スポンジ材の幅及び差込部材が占有する平板状空間の幅(スポンジ材間の距離)の合計量より若干小さく設定すると、スポンジ材及び差込部材を吸収塔又は生物脱臭装置に装着した時にこれらが互いに圧接されて強固に挟持され、使用時の重量負荷によるスポンジ材の潰れを好適に抑制できるので好ましい。
【0031】
上記構成において、立設されるスポンジ材及び差込部材を水平方向に貫通する支持棒を設けると、差込部材に横架される支持棒によってスポンジ材が垂下保持され、荷重がスポンジ材の最下部に集中して潰れるのを防止できるので、スポンジ材の厚さ及び高さを増大させることが可能である。従って、上述の適正範囲より厚い又は高いスポンジ材を使用する場合には、支持棒を設けることによって対処できる。支持棒がスポンジ材の上部を貫通するように構成すると好適である。支持棒は、差込部材と同様に、剛性及び耐水性を有する素材で製造すると良く、例えば、各種プラスチックやステンレス鋼等の耐蝕性金属、セラミックス等が挙げられる。支持棒によって支持されるスポンジ材の荷重が支持面においてなるべく均等に分散することが好ましいので、例えば、断面が円形又は楕円形の支持棒を使用し、これに対応する貫通孔をスポンジ材及び差込部材に設けるとよい。支持棒の太さは5〜25mm程度が好ましく、20〜80cm程度の間隔で垂直にスポンジ材及び差込部材を貫通するように平行に配置すると好適である。或いは、スポンジ材と差込部材とを局所的に接着剤で接合することによって支持棒の代わりとすることも可能である。
【0032】
以下に、上述のスポンジ材及び差込部材のユニットを気液接触層(微生物担持層)として使用する吸収塔の実施形態について説明する。以下の記載においては、吸収塔を生物脱臭装置として用いる実施形態として説明し、液相として水を用い、臭気物質を分解する微生物をスポンジ材に担持させて、臭気物質を特定物質として吸収して微生物によって分解するが、スポンジ材に微生物を担持させずに、使用する液相及びスポンジ材の素材を、ガス中の所定成分の吸収に適した液体及びこれに耐性を有する素材に変更すれば、吸収塔として汎用可能な使用形態となる。
【0033】
図2は、吸収塔の第1の実施形態を示し、吸収塔10は、上述のような差込部材1及びスポンジ材3からなる2組の多孔質ユニット5A,5Bを気液接触層として有する。図2の(a)は、吸収塔10の上面図、(b)は鉛直方向断面図、(c)は、(b)におけるA−A線断面図、(d)は、(b)におけるB−B線断面図である。この実施形態では、差込部材1として、図1(a)の差込部材1aを使用しているが、これに限定されず、必要に応じて他の差込部材に変更して良い。
【0034】
吸収塔10は、内部に気液接触層及び循環水貯留槽を構成するための箱形の本体槽11と、水Wを循環させるためのポンプ13、循環ライン15及びディストリビュータ17を有し、ポリ塩化ビニル製の差込部材1及びポリウレタンエーテルフォーム製のスポンジ材3からなる2組の多孔質ユニット5A,5Bを上下に配置して本体槽11内に装着することによって縦型配置の二段式気液接触層が構成される。ディストリビュータ17は、下方に向けて水を散布するための多数の穴が設けられた管を用いて構成され、多孔質ユニット5Aの上方に水平に配置され、スポンジ材3の上面全体に散水できるように、必要に応じて管を分岐させて多孔質ユニット5Aの上方全体に張り巡らせることにより局所散水を防止する。本体槽11の底部は、水Wが貯留されて循環水貯留槽を構成する。本体槽11の外に付設されるポンプ13を駆動することによって、底部の水Wは、本体槽11底部の側壁を貫通する貫通口19から槽外へ送出されてポンプ13から循環ライン15を介して本体槽11の頂部に供給され、本体槽11内のディストリビュータ17から多孔質ユニット5Aに散布される。散布された水は、各ユニットのスポンジ材3と差込部材1との隙間及びスポンジ材3中の空孔を通り、多孔質ユニット5Bの下部から排出されて本体槽11の底部に落下する。
【0035】
多孔質ユニット5Bの下方には、本体槽11の側壁を貫通する通気口21が、底部に貯留される水Wの水位より上方の位置に設けられる。臭気物質を含むガスGは、通気口21から本体槽11内に導入され、多孔質ユニット5Bの下側から供給されて上方へ向かって気液接触層を通過する。従って、本体槽11内において、気液接触層を通過する水Wの移動方向とガスGの移動方向は逆である。ガスGは、気液接触層を通過する間にスポンジ材3の気孔に拡散して、臭気物質はスポンジ材3に含まれる水に吸収される。これにより浄化されたガスG’は、本体槽11の頂部中央に設けられる通気口23から排出される。通気口23は、ディストリビュータ17より上方位置であれば、本体槽11の頂部周縁部や側壁に設けても良い。
【0036】
この実施形態においては、本体槽11内部で多孔質ユニット5A,5Bの各々を支持するための通水性、通気性の支持板25A,25Bを有する。支持板25A,25Bは、多孔質ユニットの荷重に耐える強度及び耐水性を備える素材で製造され、その形状は、網目状薄板状、スリットを有するスクリーン状、貫通孔を穿設した厚板等のような通水/通気穴を有する様々な形状から必要に応じて適宜選択して使用すればよい。
【0037】
本体槽11の一側壁に開閉可能な扉を設けて差込部材1及びスポンジ材3を側面から挿入可能に構成することによって、多孔質ユニット5A,5Bの装着及び取外しが容易になる。更に、本体槽11の側壁内側に、支持板25A,25Bを支持するための突起又は水平方向の案内溝を設けて、支持板を突起上又は案内溝内を水平方向に摺動させることによって槽内への装着・取り外しができるように構成すると、装置の組み立て・メンテナンス等において有利である。
【0038】
装着された多孔質ユニット5A,5Bは、本体槽11内に嵌合され、各ユニットの両端に位置するスポンジ材3の外側面は、本体槽11の側壁に密接して支持され、各スポンジ材3の両端縁及び各差込部材1の両端縁も本体槽11の側壁に密接する。この際、スポンジ材3の幅及び差込部材1が占有する平板状空間の幅の合計が、本体槽11の内部空間の横幅より若干大きくなるように設定すると、槽内に嵌入したスポンジ材3及び差込部材1は互いに水平方向に圧接されて密接性が高まり、ガスの逃げ道をなくすことができる。これに関連して、本体槽11は、スポンジ材3の弾性反発力に抗して多孔質ユニットを収容可能な耐久強度があればよい。
【0039】
差込部材1及びスポンジ材3の並列方向は、多孔質ユニット5Aと多孔質ユニット5Bとでは垂直に交差するように配置され、これにより、水及びガスの逃げ道の形成が抑制され、それにより気液接触効率の低下が防止される。この実施形態を応用して、3組以上の多孔質ユニットを上下方向に配置して多段構成とする場合には、差込部材1及びスポンジ材3の並列方向が上下の多孔質ユニットにおいて互いに垂直になるようにすると良い。このように差込部材1及びスポンジ材3の並列方向をユニット毎に交互にする場合、本体槽11の内部の水平断面形状は正方形となる。単独の多孔質ユニットを用いる一段構成、又は、複数の多孔質ユニットにおける差込部材1及びスポンジ材3の並列方向を同一にする多段構成などでは、本体槽11内部の水平断面形状は長方形であっても良い。
【0040】
臭気物質を分解可能な微生物をスポンジ材3に供給し、本体槽11底部に貯溜される水Wに微生物の成育に必要な栄養塩を添加して循環させると、微生物はスポンジ材3の表面、気孔中や差込部材1の表面で成育・繁殖し、微生物が担持された気液接触層となる。あるいは、予めスポンジ材に微生物培養液を浸透させて微生物を付着させ、これを用いて多孔質ユニットを構成して本体槽11に装着しても良い。多孔質ユニット5A,5Bを水が流下する際にガスGとの接触によって水に溶解した臭気物質は、水中を拡散してスポンジ材3上の微生物に取り込まれて分解されるとともに微生物のエネルギー源となる。本体槽11底部に貯留される水Wにも、スポンジ材3で繁殖する微生物が含まれ、微生物による分解は、底部に貯留される水Wにおいても進行する。従って、気液接触層で微生物による分解を受けずに水中に残存したまま底部に落下する臭気物質は、本体槽11底部の水W中で分解されるか、あるいは、ディストリビュータ17へ還流され、多孔質ユニット5Aに再度供給されて分解される。臭気物質としては、例えば、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル等の水溶性イオウ化合物や、アンモニア、トリメチルアミン等の水溶性窒素化合物が挙げられる。このような臭気物質の分解に有効な微生物としては、硫黄酸化細菌、アンモニア酸化細菌(硝化細菌)等が挙げられ、例えば、廃水処理に用いられる活性汚泥等に含まれる微生物を適宜採取して利用できる。
【0041】
図2の吸収塔10を、ガスG中に含まれる特定物質を物理化学的に吸収する吸収塔として使用する場合は、循環させる水W及びスポンジ材3の素材を、特定物質を吸収し易い液体媒体、及び、液体に耐性を有する素材に変更することができる。例えば、二酸化炭素を吸収する吸収塔の場合にはアルカノールアミンを吸収剤として含有する水溶液に変更すると好適である。吸収された特定物質は分解されないので、ガスの浄化処理を連続して行うには、吸収された特定物質を液体媒体から回収して液体媒体を再生する必要がある。このため、液体媒体を再生するための再生手段を併設して、吸収塔10の底部に貯留する液体が再生手段を介して頂部のディストリビュータ17に還流するように循環させると、吸収塔で吸収された特定物質は再生手段によって回収され、再生された液体を用いて浄化処理を連続して実施できる。二酸化炭素の回収塔として使用する場合は、液体媒体を加熱する加熱装置と気液接触層とを有する再生塔が設けられる。
【0042】
図3は、吸収塔の第2の実施形態を示し、この実施形態では、図2におけるポンプ13を水中ポンプ13’に変更している。詳細には、吸収塔30の本体槽31は、底部側面から横方向に突出する拡張部33が設けられ、横方向に延伸した循環水貯留槽が構成される。拡張部33内に水中ポンプ13’が据え置かれ、水中ポンプ13’によって吸引される水Wは、拡張部33の上壁部を貫通する管を通じて循環ライン15へ送出される。この構成は、吸収塔30からの水漏れ事故の防止に有効である。拡張部33の上壁部に開閉可能な扉を設けて水中ポンプ13’の出し入れを容易にすると、メンテナンスに有利である。上記構成以外については、図2の吸収塔10と同じであるので、その説明は省略する。
【0043】
図4は、吸収塔の第3の実施形態を示し、この吸収塔40では、図2の吸収塔10における多孔質ユニット5A,5Bの差込部材1を図1(c)の差込部材1cに変更した多孔質ユニット5A’,5B’を用いている。差込部材1cを用いた場合、スポンジ材3と差込部材1cとの間隙の幅が一定になるので、ガスや水の逃げ道の形成を防止するための寸法調節等を行い易い。上記構成以外については、図2の吸収塔10と同じであるので、その説明は省略する。
【0044】
図5は、吸収塔の第4の実施形態を示し、この実施形態では、吸収塔50内をガスGが流れる方向が、図2の吸収塔10におけるガスGの流れと逆である。つまり、臭気物質を含むガスGの供給源は、本体槽11の頂部中央の通気口23に接続され、ガスGは、通気口23から本体槽11内に導入されて、多孔質ユニット5Aの上側から下方へ向かって流れる。ガスGが気液接触層を通過する間に臭気物質が水に吸収され、浄化されたガスG’は、本体槽11の底部の通気口21から排出される。この吸収塔50では、気液接触層における水Wの流れとガスGの流れが同方向であるので、流通抵抗が少なく、目詰まりが生じ難くなる。上記構成以外については、図2の吸収塔10と同じであるので、その説明は省略する。
【0045】
図6は、吸収塔の第5の実施形態を示し、この吸収塔60では、図2の吸収塔10における各多孔質ユニット5A,5Bの差込部材1及びスポンジ材3を水平方向に貫通する支持棒61を有する多孔質ユニット65A,65Bを用いている。この実施形態では、支持棒61は断面が円形のステンレス鋼製丸棒であり、50cm程度の一定間隔で並行する支持棒61が差込部材1及びスポンジ材3を垂直に貫通するように、支持棒61の径に対応する円筒形の貫通孔が各多孔質ユニット65A,65Bの差込部材1及びスポンジ材3の上部に設けられる。支持棒61の長さは、本体槽11の内部の横幅にほぼ等しく、支持棒61を挿通させた差込部材1及びスポンジ材3を本体槽11に嵌入することによって、多孔質ユニット5A,5Bは本体槽11内に密接嵌合され、支持棒61は、差込部材1によって水平に支持されると共にスポンジ材3を垂下保持するので、差込部材1による挟持と相まってスポンジ材3の沈み込み及び潰れを好適に防止する。上記構成以外については、図2の吸収塔10と同じであるので、その説明は省略する。
【0046】
図7は、吸収塔の第6の実施形態を示し、この吸収塔70では、図2の吸収塔10における循環水貯留槽の水位を一定に保つために必要に応じて水を補給するシステム、及び、水中の微生物を活性化するために空気を供給するシステムを設けている。詳細には、本体槽11は、その側壁底部から延伸する導管71、及び、通気口21より下方で循環水貯留槽の水Wの水位より上方に設けられる給水管73を有し、導管71には液面レベルを検知するレベル計75が接続され、レベル計75はポンプ77と電気的に接続されている。レベル計75は、循環貯留槽の水Wの水位を導管71内において検知し、循環水貯溜槽の水Wが蒸発等により減少したときにポンプ77を自動的に駆動して水を補給し、水位が戻ればポンプ77を停止するように、検知した水位に基づいてポンプ77は電気的に制御される。更に、本体槽11の底部に散気管79が設置され、ブロワ81から散気管79へ空気を送ることによって、循環水貯溜槽の水W中に空気が供給され、微生物による臭気物質の分解が促進される。上記構成以外については、図2の吸収塔10と同じであるので、その説明は省略する。
【0047】
図8は、吸収塔の第7の実施形態を示し、この吸収塔90は、図2の吸収塔10の支持板25Aを省略して、支持板25Bのみで多孔質ユニット5A,5Bの両方を支持するように構成している。これは、差込部材1が、上部の多孔質ユニットの荷重に耐え得る強度を有し、支持板25Bが、多孔質ユニット5A,5Bの両荷重に耐えるに十分な強度である場合に有効な実施形態である。上記構成以外については、図2の吸収塔10と同じであるので、その説明は省略する。
【0048】
図2〜8に示す吸収塔の本体槽11,31は、例えば鋼材などの耐久強度を有する構造材料で製作されるが、本発明の気液接触層(つまり多孔質ユニット)を頑強な材料で包囲する必要はなく、供給されるガス及び吸収液が適切に気液接触層に導入されるように案内されればよい。つまり、柔軟なシート材等で形成した外被を用いて気液接触層を包むように吸収塔を構成してもよい。気液接触層を包囲する外被が柔軟な素材であると、気液接触層の側面に外被が密着するように締め付けることによって、ガスが気液接触層を通過せずに外側から迂回するのを防止し易いので、短絡による気液接触効率の低下を容易に防ぐことができ、非常に有効である。又、軟質シート製の外被を用いた場合、吸収塔の設計変更に対応し易く、吸収塔を設置する環境及び条件に応じて適宜応用でき、軽量化及び材料費の削減も可能である。
【0049】
外被は、処理対象のガスによって劣化せず、ガス及び液体に対して非透過性の素材を用いて製造される軟質シートによって作成され、液体及びガスを各々導入・排出するための2つの開口を有する形状、つまり、管状に形成される。軟質シートの素材として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリチレンテレフタレート、セロハン等の樹脂や、塩酸ゴム等のエラストマー等が挙げられる。軟質シートの厚さは、柔軟性及び曲げ易さ等の点から、0.03〜3mm程度であると好ましい。単独のシートではガスに対する耐久性に問題がある場合は、2種以上のシートを重ねて用いると良く、例えば、アンモニアに対する耐久性が低いポリ塩化ビニリデンシートや硫化水素に対する耐久性に懸念があるポリ塩化ビニルシートは、高密度ポリエチレンなどのガスに対する耐久性に優れたシートを内側に重ねて使用することによって、それらのガス透過性の低さを活かすことができる。或いは、積層フィルムのシートを用いれば、組み立て作業が煩雑にならずに済む。光透過性のシート、つまり、透明又は半透明のシートを用いると、内部の観察が可能であるので、多孔質ユニットの状態を把握し易い点で有用であり、使用条件に応じた設計変更の要否判断に関しても有利である。
【0050】
外被の内周が多孔質ユニットの外周より僅かに小さいと、多孔質ユニットを外被内に挿入した時に、多孔質ユニットの差込部材及びスポンジ材が互いに押圧されてしっかり挟持されると共に、多孔質ユニットの側面が外被と密接するので、ガスが多孔質ユニットと外被との隙間を通過するのが抑制される。但し、外被に引っ張り応力が加わって外被の耐久性が低下する虞があるので、これを回避するには、内周が多孔質ユニットの外周と同程度又はそれより大きい外被を使用し、紐や金属線等の条部材で外被の外側から気液接触層の周囲に締着する方法がある。これによって、気液接触層の側面に周回状の密接状態が形成されて封止される。この際、温熱によって外被の柔軟性を高めてから巻締めると、外被と多孔質ユニットの側面との密閉性が向上する。更に、外被−多孔質ユニット間の密閉性を高め易い形態として、多孔質ユニットと外被との間にガスケットとして機能する弾性部材を介在させる方法がある。具体的には、図9〜図11に示すように、スポンジ等の弾力性の素材で形成した弾性変形可能な環状のクッション9に多孔質ユニットを嵌入して外被7内に挿入し、条部材8を用いて外被7をクッション9上で巻き締める。この場合、クッション9は、多孔質ユニットを周回して外被と多孔質ユニットと間でガスケットの様に機能して弾性圧着によって閉塞性を高めると共に、差込部材1及びスポンジ材3を一体に固定して多孔質ユニット5A,5Bの拘持具としても作用する。
【0051】
クッション9は、処理対象のガスGや水によって劣化しない弾力性の素材を用いて調製される。弾力性の素材としては、天然ゴム及び各種合成ゴム等のエラストマー、ウレタンエラストマー等の熱可塑性エラストマー、発泡ポリウレタン等の発泡プラスチック(独立又は連続気泡型)等が挙げられ、このような弾力性素材から、処理するガスに対する耐久性を有するものを適宜選択することができる。スポンジ材3と同じ素材を用いてもよく、費用の点において有利である。或いは、ガスGによって劣化しない樹脂等のフィルムによってクッション9を被覆すると、クッション9自体はガスGに対する耐久性が低くても良い。ガス及び液体に対して非透過性の弾力性素材でクッション9を形成すると、外被−多孔質ユニット間の密閉性が極めて高くなる。巻締めに用いる条部材8としては、例えば、綿、麻等の植物繊維による紐、ナイロン、ポリ塩化ビニル等の樹脂による紐、鉄線や銅線等の金属線等が挙げられるが、これらに限定されず、外皮がクッション9に密着するように締付けられるものであればよい。
【0052】
以下、図9〜11を参照して、軟質シート製の外被に気液接触層が内包される第8の実施形態に係る吸収塔100について具体的に説明する。
【0053】
図9に示す吸収塔100は、組み立て式に構成され、図10及び図11に示すような構成部品を用いて組み立てられる。具体的には、図10(a)に示す頂部部分101、(b)の中央部分103、及び、(c)の底部部分105を組み合わせることによって、図11の(a)に示すような吸収塔の主要構造107が構成され、頂部部分101を支持するために、図11(b)のような架台109が用いられる。この吸収塔100の構成は、図2の吸収塔10と機能的に同等であり、図2の本体槽31の代わりに、透明のポリ塩化ビニルシートで形成される管状の外被7と、その開口に接続される頂部部分101及び底部部分105とを用いて、気液接触層を内包する。気液接触層として、鉛直方向に積上げた2組の多孔質ユニット5A,5Bを用いるが、必要に応じて、多孔質ユニットの数を増加して積上げ段数を増加してもよい。又、図中の差込部材1は、波形の差込部材1aとして記載するが、他の形状であってもよい。
【0054】
図10(b)の中央部分103は、気液接触によるガス吸収を行う部分であり、2組の多孔質ユニット5A,5Bで構成される気液接触層と、気液接触層を内包してその側面を覆う管状の外被7とを有し、多孔質ユニット5A,5Bの各々を構成する差込部材1及びスポンジ材3は、側面を周回するクッション9によって拘持される。図10(a)の頂部部分101は、導水管111、ディストリビュータ17及び通気口23を有し、外被7の上部開口に接続された状態において、頂部部分101は、多孔質ユニット5A,5Bへの給水、及び、処理後ガスG’の排気を行う。図10(c)の底部部分105は、導気管113を取付けた貯水槽115及び支持台117を有し、多孔質ユニット5A,5Bを支持台117に載せて外被7の下部を支持台117の外周に密着させた状態において、底部部分105は、多孔質ユニット5A,5BへガスGを供給し、気液接触後の水を収容する。貯水槽115内にはポンプ13が設置され、ポンプ13と頂部部分101の導水管11とを循環ラインによって接続することで、貯水槽115と多孔質ユニット5A,5Bとの水Wの循環が可能となる。
【0055】
クッション9は、図10の(e),(f)に示すように、多孔質ユニットを嵌装可能なように、多孔質ユニットの側面形状に対応した正方形の孔部を有する四角環帯状又は四角管状に形成される。クッション9の外周の4つの角は丸く面取りされ、これは、外被7を被せる作業が容易で、角部が破損し難くなる点で有用な形状である。クッション9の孔部を多孔質ユニットの水平断面より僅かに小さく形成すると、嵌入した多孔質ユニットの側面とクッション9の内周との密着性を得易い。クッション9の形状は上記の形状に限られず、孔部が正方形であれば、外周が円形の環帯状又は管状であってもよい。クッション9の厚さ(軸方向長さ)が1〜10cm程度であると、気密性及び締着作業性の点で好ましい。又、軸方向(鉛直方向)に沿った断面が円形又は楕円形である四角環のクッションも使用可能であるが、この実施形態のように断面が長方形のクッション9は、外周が平面であり、巻き締め作業をし損じ難い点で有利である。クッション9の外周に条部材を受ける案内溝を設けると、巻き締め作業が容易になる。クッション9の幅(水平方向)は5mm〜5cm程度が好ましい。クッションを形成する弾力性素材が高い変形性又は伸縮性を備える場合は、アニュラス又はトーラス体(ドーナツ形)等の丸い内径でも、多孔質ユニットの四角い外周に内径を対応させることができる。
【0056】
多孔質ユニットを載置するための支持台117は、通水性及び通気性の支持板119と、脚部121とを有し、脚部121は、上側が開放された箱形に形成され、支持板119は水平に支持されるように脚部121の内側に固定される。脚部121の側壁の下部に、導気管113を貫通させる孔と、脚部121の内外を連通する通水孔123とを有する。支持板119の形状は、多孔質ユニットの水平断面に対応した大きさの正方形であり、多孔質ユニットの荷重に耐える強度の耐水性素材を用いて、網目状、スリットを有するスクリーン状、貫通孔を穿設した厚板状等から適宜選択した形態に製造される。支持板119の位置は、貯水槽115の上縁と同程度の高さに設定されるので、支持板119上に載置される多孔質ユニット5A,5Bは、貯水槽内の水位より常に上に維持される。脚部121の上部は、支持板119より上方に延伸して多孔質ユニットの位置決め手段として作用し、支持板119上に載せた多孔質ユニット5A,5Bの横方向の位置ずれを防止するする。脚部121は、底面がない四角管状であっても良い。又、4本の棒脚やフレームに横板を渡して管状に構成しても良く、この場合、横板の下端が水面下に浸る程度の長さに短縮して、脚部121の下端にスリット又は窓を有するような構成であっても良い。
【0057】
頂部部分101は、通気口23を有する天板125と、天板125の下面に固着される四角管状のダクト127と、ダクト127の一側面を貫通する導水管111と、ダクト127の下端に水平に取付けられるディストリビュータ17とを有する。この実施形態におけるディストリビュータ17は、平板状に成形された通水性の多孔質材で構成され、導水管111から供給される水は多孔質材に浸透して全体から分散して落下する。ディストリビュータ17は、ダクト127に取り付けずに、多孔質ユニット5Aの上に載せた状態で用いてもよい。或いは、ディストリビュータ17として、図2の吸収塔で用いる有穴管や、底部全体に多数の小さい通水孔を有する浅い角形容器を用いてもよい。架台109は、直方体形のフレーム129と、頂部部分101を係止するための1対の係止部材131と、屋根133とを有し、係止部材131は、同じ高さでフレーム129の側柱部に水平且つ平行に固着される。
【0058】
吸収塔100は、以下のように組み立てられる。先ず、中央部分103と底部部分105とが組み立てられる。具体的には、気液接触層を支持するための支持台117を貯水槽115内に据え付け、クッション9によって拘持された多孔質ユニット5A,5Bを縦に積み上げて、支持台117の支持板119上に気液接触層として載置する。
【0059】
次に、多孔質ユニット5A,5Bに外被7を被せる。外被7の下端が水中に浸り、且つ、外皮7の上端が多孔質ユニットより上方に伸びて頂部部分101との接続に使用可能な余分が生じるように、上下方向に外被7を位置決めして、紐、金属線等の条部材8を用いて外被7をクッション9上に巻き締める。外被−多孔質ユニット間のガスケットとしての役割においては、クッション9は、気液接触層全体に少なくとも1つあればよく、多孔質ユニットの拘持具としては、ユニット当たり少なくとも1つのクッション9があればよい。この実施形態では、1つの多孔質ユニットを複数のクッション9で拘持する。このように締着部分を複数重ねると、各クッション上の締着による封止が完全でなくても、全体として満足な閉塞性が得られる。複数のクッション9を用いる場合、クッション9の幅(水平方向)は同一でも異なってもよく、異なる幅によって密閉効率が異なっても全体として良好な密閉性が得られればよい。尚、最下位のクッション9aは、多孔性ユニット5Bの下端を囲む支持台117の上端部に嵌装し、これによって外被7と支持台117とが密封接続され、支持台117と外被7との隙間からガスGが漏れるのを防止できる。
【0060】
更に、頂部部分101を図11の(a)に示すように組み立てる。このために、頂部部分101の位置を固定する必要があるので、図11の(b)に示すような架台109を設置して、組み立てられた中央部分103及び底部部分105が架台109の中央に位置するように配置する。頂部部分101の天板125を係止部材131上に架けて頂部部分101を架台109で支持することによって頂部部分101の位置が固定される。係止部材131上に支持された頂部部分101は、ディストリビュータ17が多孔質ユニット5Aの直上に配置される高さに位置する。この後、多孔質ユニット5A,5Bに締着された外被7は、条部材8によって頂部部品101と接続される。具体的には、ダクト127の下部にはクッション9bが嵌装され、外被7の上端でダクト127の下部を包囲して、条部材8で外被7をクッション9b上に巻き締めることによって、図9のように外被7は頂部部分101と密封接続される。
【0061】
この実施形態の架台109は直方体形のフレームで構成されるので、中央部分103と底部部分105との組み立て作業を架台109中で行うと効率的であるが、この架台には限定されない。例えば、頂部部分101を吊下げる形態のスタンドを用いて頂部部分101の位置を固定しても良く、中央部分103と底部部分105とを組み立てた後にスタンドを設置することができる。又、係止部材131の高さを変更・調節可能な架台109又はスタンドを使用すると、多孔質ユニットの高さ(積み上げ段数、差込部材1及びスポンジ材3の高さ)の変更に対応でき、外被7の長さを適正に調整するだけで、変更した吸収塔を組み立てられる。
【0062】
貯水槽115にポンプ13を設置して、ポンプ13と導水管111とを循環ラインで接続することによって基本的な組み立ては終了する。更に、図9のように、貯水槽115の水位を検知するレベル計75を架台109に付設して、検出される水位に応じてポンプ13の駆動を制御するようにポンプ13と電気的に接続すると、処理中の貯水槽115内の水位を所定レベルに維持することができる。レベル計の代わりにレベルスイッチを用いると、水位を所定レベル以下に下がるのを防止できるので、ポンプの空運転を防止できる。
【0063】
図9の様に組み立てられた吸収塔100において、水を貯水槽115に投入し、微生物をスポンジ材3上に担持すれば、生物脱臭処理が可能な状態となる。微生物の担持は、前述と同様に、組み立て前のスポンジ材3に予め施しても、組み立て後に水の循環を利用して行っても可能である。ポンプ13を駆動すると、貯水槽115から汲み上げられる水Wは、循環ラインを通って導水管111からディストリビュータ17に供給され、多孔質ユニット5A上全体に分配して散水される。多孔質ユニット5A,5B中を流下した水は、支持板119を通って貯水槽115に落下する。水の循環によって、スポンジ材3に担持される微生物は繁殖する。一方、ガスGは、ブロワ又はファン(図示略)等を用いて導気管113から支持台117の内側へ導入されると、支持板119を通って多孔質ユニット5A,5B中を上昇し、流下する水Wとの気液接触において、ガスに含まれる臭気物質が水に吸収される。浄化されたガスG’は、ダクト127内を通って通気口23から排出される。通気口23に吸引用ブロワ等を接続してダクト127からの排気を促進しても良い。
【0064】
外被7は、クッション9a,9bを介して支持台117及びダクト127に巻き締められて密着するので、ガスの流れは外被7によって規制される。つまり、支持台117から供給されるガスGは、多孔質ユニット5A,5B中を確実に通過してダクト127へ至るように外被7によって案内される。従って、支持台117、外被7及びダクト127は、図2の本体槽11と同様に機能し、内包される気液接触層に適確にガスが導入される。
【0065】
第8の実施形態は、図5の吸収塔のように、ガスを吸収塔100上部の通気口23から供給して下方に向かって流れるように変更することも可能である。
【0066】
第8の実施形態のように吸収塔を構成すると、軽量化や材料費の低減が可能であり、又、設計変更が行い易いので、吸収塔の設置条件に応じた変更が可能であり、適用性が高い。架台109の役割は、頂部部分101を支持することのみであるので、支持機能のみに特化するように構造を単純化したり、逆に、必要に応じて他の機能を付加してもよい。例えば、遮光板や遮光フィルムで側面を覆って遮光性を付与したり、太陽光パネルを用いて屋根133を構成してポンプ等の駆動エネルギーの供給に利用しても良い。又、外観のデザイン変更に関して極めて自由度が高く、例えば、架台のフレームに様々な装飾を施しても、本質的な機能には何等影響がない。
【0067】
上述の実施形態から必要に応じて複数の実施形態を適宜選択して組み合わせて使用することもできる。
【0068】
以下、実施例を参照して、本発明について詳細に説明する。
【実施例】
【0069】
(実施例)
図2に示す吸収塔10に準じた装置において、孔径2mm程度の連続気泡を有する空孔率約95容積%のポリウレタンエーテルフォームで形成された厚さ25mm、高さ430mm及び長さ190mmのスポンジ材3、及び、厚さ0.5mmのポリ塩化ビニル製平板を振幅10mm、周期(谷から谷までの距離)70mmで波形に湾曲させた形状の差込部材1を用いて多孔質ユニット5Aを構成し、ユニット5Bは省略して吸収塔10に装着した。ここでは、スポンジ材3を4枚、差込部材1を3枚用いたので、多孔質ユニットの平面図は正方形にはならない。
【0070】
微生物として活性汚泥から硫化物で馴養した硫黄酸化細菌を含む微生物群を底部の水Wに供給し、本体槽11底部に貯溜される水Wに微生物の成育に必要な栄養塩として塩化アンモニウム、リン酸カリウム及び硫酸マグネシウムを添加してポンプで循環させて多孔質ユニットに散布しながら、臭気物質として濃度800ppmの硫化水素を含むガスGを多孔質ユニット5Aの全容積10Lに対して2L/分の供給速度で通気口21から本体槽11内に導入した。通気口23から排出されるガスG’の硫化水素濃度を測定したところ、平均36ppm(32ppm及び40ppm)であった。スポンジ材3は、嵌入時と同じ高さを維持しており、潰れや沈み込みを生じることなく好適に挟持されていた。同じ水Wに浸したスポンジ材3と同等のスポンジキューブに存在する硫黄酸化細菌をStarkey寒天培地を用いて測定(参照:土壌微生物実験法研究会編、 「新編土壌微生物実験法」(1992)、322〜325,394頁、株式会社養賢堂発行)したところ、スポンジ1cm3あたり1.9×107cfu(コロニー数)であった。従って、吸収塔10では、スポンジ材3の潰れや沈み込みは防止され、スポンジ材3に硫黄酸化細菌を高密度に担持させることができ、生物脱臭に有効であることが明らかである。
【0071】
(参考例)
上記多孔質ユニット5Aの代わりに、外径30mm及び長さ30mmの中空円筒状のプラスチック充填材を10L充填して吸収塔10に装着したこと以外は実施例と同様にして上述の操作を行い、通気口23から排出されるガスG’の硫化水素濃度を測定したところ、平均67ppm(64ppm及び70ppm)であった。
【0072】
(比較例)
差込部材1を使用せずに、スポンジ材として1辺が20mmの立方体のものを用いて上記多孔質ユニット5Aと同じ容積に積み上げたこと以外は実施例と同様にして上述の操作を行ったところ、1ヶ月後にスポンジ材は沈み込みを生じ、最下部は潰れのために通気が困難になっていた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
多孔質体の形状が長期間保持されることにより吸収効率の低下を防止可能な吸収塔が提供され、スポンジ材の利点を活かして臭気物質の吸収効率及び微生物による分解効率を長期間維持可能な生物脱臭装置を提供でき、排ガス処理や環境浄化において使用する処理装置のメンテナンス頻度の低減や耐用年数の増加、操作性の向上に有用である。
【符号の説明】
【0074】
1,1a,1b,1c:差込部材、 3:スポンジ材、
5A,5B,5A’,5B’,65A,65B:多孔質ユニット、
7:外被、 8:条部材、 9,9a,9b:クッション、
10,30,40,50,60,70,90,100:吸収塔、 11,31:本体槽、
13,77:ポンプ、 15:循環ライン、 17:ディストリビュータ、
19:貫通口、 21,23:通気口、 25A,25B,91,119:支持板、
33:拡張部、 61:支持棒、71:導管、 73:給水管、
75:レベル計、 79:散気管、 81:ブロア、
101:頂部部品、 103:中央部品、 105:底部部品、 107:主要構造、
109:架台、 111:導水管、 113:導気管、 115:貯水槽、
117:支持台、 121:脚部、 123:通水穴、 125:天板、
127:ダクト、 129:フレーム、 131:係止部材、 133:屋根、
G,G’:ガス、 W:水。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質体を用いて気体中の物質を気液接触によって液体に吸収する吸収塔、及び、吸収塔の多孔質体に微生物を担持して気体中の悪臭物質を微生物の作用によって除去する生物脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状又は片状の充填材や多孔質体を用いて気液接触により気体中に含まれる物質を吸収する吸収塔は様々な用途に用いられ、その代表的なものに脱臭装置がある。中でも、生物脱臭装置は、臭気物質を分解可能な微生物を担持した充填材に水を通過させると共に、気相中の臭気物質を水に溶解させて微生物による分解を進行させるので、化学薬剤を殆ど使用する必要がなく、低コストであるため、広く普及している(例えば、下記非特許文献1)。生物脱臭装置の性能を決める要素には、臭気物質の吸収効率及びその微生物による分解効率があり、臭気物質の吸収効率は、充填材の表面積、特に濡れ面積に大きく支配される。従って、吸収効率を上げるためには、比表面積が大きい親水性の充填材を使用することが望ましい。又、微生物が充填材表面に繁殖することを考慮すると、微生物による分解効率の点からも比表面積が大きい充填材の使用が好ましい。しかし、比表面積が大きい充填材として、細かい粒子の充填材を堆積させて用いた場合、通気性が悪く、微生物の繁殖による目詰まりも生じ易い。このため、生物脱臭装置では、目詰まり防止及び通気性確保のためにある程度以上の大きさ(具体的には5cm程度以上)の充填材が用いられ、吸収効率及び分解効率はある程度犠牲にせざるを得ない。その結果、生物脱臭装置は、コストは安くても、吸収効率及び分解効率の低さを補うために広い敷地を要するという評価がされてきた。
【0003】
このような欠点を克服する手段として、下記特許文献1では、多孔質のスポンジを吸収塔の充填材として用いた生物脱臭装置を開示している。この文献では、スポンジの充填形態について開示されていない。下記特許文献2では、圧縮強度の大きい粒状充填材と吸水性充填材とを混合して充填する生物脱臭装置が記載され、ポリプロピレン粒状体と親水性ポリウレタンフォームとの混合充填を例示する。
【0004】
一方、廃水処理の分野においては、スポンジを利用した処理技術の開発が進められており、スポンジシートを折り曲げて、屈曲部を丸棒及び支持板で支持した廃水処理装置(下記特許文献3)や、スポンジ塊をシートや線材で繋いて吊り下げて汚水の濾過に使用する散水濾床装置(下記特許文献4,5)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−91934号公報
【特許文献2】特許第3922920号
【特許文献3】特許第2620300号
【特許文献4】特許第3443725号
【特許文献5】特許第3586745号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】建設省都市局下水道部監修、「下水道施設計画・設計指針と解説」(1994年版)、社団法人日本下水道協会発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的には、スポンジを吸収塔の充填材として使用する場合、キューブ状のスポンジ塊を積み上げて使用する。この場合、ある程度の大きさのキューブを用いることによって目詰まりを防止しつつ通気性を確保できるように構成することは可能であるので、多孔質による比表面積の大きさを活用して生物脱臭装置の効率を改善することが期待できる。しかし、実際には、例えば上記特許文献1の生物脱臭装置等においてキューブ状スポンジを積み上げて長く使用すると、吸水及び微生物の繁殖による重みによって下層のスポンジが押し潰され、スポンジ層の高さが低くなり(所謂、沈み込み)、その結果、通気が困難になる。この点に関し、上記特許文献2の生物脱臭装置では沈み込みは抑制されるが、圧縮強度を有する充填材によって却って吸水性充填材の占める容積が制限されるために、期待されるほどの効率向上は困難である。
【0008】
又、特許文献3の構成では、スポンジの重量増加による負荷が局所に集中するため、沈み込みの抑制は充分でなく、長期的な強度の問題は解消されない。特許文献4,5の構成では、製作工程が非常に煩雑で手間がかかるため、実施には経済的困難等が伴い、実用に不向きである。
【0009】
本発明の課題は、上述の問題を解決し、スポンジ材の利点を活かしつつ、長期使用に伴う潰れを抑制して吸収効率の低下を防止可能な吸収塔を実用に供し易い構成で提供することである。
【0010】
又、本発明の課題は、スポンジ材の利点を活かしつつ、長期使用に伴う潰れを抑制して吸収効率及び微生物による臭気物質の分解効率の低下を防止可能な生物脱臭装置を実用に供し易い構成で提供することである。
【0011】
更に、本発明の課題は、軽量化や使用条件に応じた設計変更に対応し易い構成を有する吸収塔及びそれを用いた生物脱臭装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、板状のスポンジ材と、スポンジ材を挟持する差込部材とを用いることによって、スポンジ材の潰れを抑制して吸収効率の低下を防止可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の一態様によれば、吸収塔は、気液接触層と、前記気液接触層に液体を供給する液体供給装置と、前記気液接触層にガスを供給するガス供給部とを有し、前記気液接触層における前記液体と前記ガスとの接触によって前記ガスに含まれる所定成分を前記液体に吸収させる吸収塔であって、前記気液接触層は、立位で並列する複数の平板状又はシート状の多孔質材と、前記複数の多孔質材と交互に当接配置されて前記多孔質材を挟持する複数の差込部材とを有し、前記差込部材は、凹凸した表面形状を有し、前記凹凸によって前記多孔質材との間に前記ガスが通過可能な間隙を形成することを要旨とする。
【0014】
前記多孔質材は、孔径500μm〜3mmの連続気孔を有し、空孔率が90容積%以上のスポンジ材を用いることができる。前記差込部材は剛性素材製で保形性を有する。
【0015】
又、本発明の一態様によれば、生物脱臭装置は、上記吸収塔を有し、前記気液接触層は、臭気物質を分解可能な微生物を保持し、前記液体は水であり、前記所定成分としてガスに含まれる臭気物質を水に吸収して前記微生物を用いて分解する。
【0016】
上記生物脱臭装置において、前記多孔質材として、ポリウレタンエーテルフォーム製のスポンジ材を使用でき、前記微生物には、硫黄酸化細菌又はアンモニア酸化細菌を使用できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、実用に供し易い構成を用いて、スポンジ材の長期使用に伴う潰れを抑制して吸収効率の低下を防止可能な吸収塔が提供可能であり、これを用いて微生物を担持させることにより、スポンジ材の利点を活かして臭気物質の吸収効率及び微生物による分解効率を長期間維持可能な生物脱臭装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における差込部材及びスポンジ材の例を説明するための説明図。
【図2】本発明に係る吸収塔の第1の実施形態を示す上面図(a)、鉛直方向断面図(b)、(b)におけるA−A線断面図(c)、(b)におけるB−B線断面図(d)。
【図3】本発明に係る吸収塔の第2の実施形態を示す鉛直方向断面図。
【図4】本発明に係る吸収塔の第3の実施形態を示す上面図(a)、鉛直方向断面図(b)、(b)におけるA−A線断面図(c)、(b)におけるB−B線断面図(d)。
【図5】本発明に係る吸収塔の第4の実施形態を示す鉛直方向断面図。
【図6】本発明に係る吸収塔の第5の実施形態を示す上面図(a)、鉛直方向断面図(b)、(b)におけるA−A線断面図(c)、(b)におけるB−B線断面図(d)。
【図7】本発明に係る吸収塔の第6の実施形態を示す鉛直方向断面図。
【図8】本発明に係る吸収塔の第7の実施形態を示す鉛直方向断面図。
【図9】本発明に係る吸収塔の第8の実施形態を示す鉛直方向断面図。
【図10】図9の吸収塔を構成する各部の要素を示し、(a)〜(c)は側面図、(d)は下面図、(e)は(b)におけるA−A線断面図、(f)は(b)におけるB−B線断面図。
【図11】図9の吸収塔の構成要素を示し、(a)は主要構造の側面図、(b)は架台の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ガス中の物質を液体に吸収させる気液接触を行うために多孔質体を用いる場合、ガスの通過を容易にするためには、ある程度以上の大きさの気孔を有する必要があるので、吸収塔での使用に適する多孔質体は、柔軟で弾性変形し易いスポンジ状となる。スポンジは、保水によって重くなり、又、微生物を繁殖させて担持した場合には微生物の重量が増加するので、吸収塔に使用されるスポンジ材は、時間の経過に伴って重量が増加する。これにより、荷重が大きくなる下部ほどスポンジは潰れ易くなり、材料疲労等に伴ってスポンジの潰れ及び目詰まりが進行するため、長期使用は困難になる。
【0020】
本発明においては、平板状又はシート状の多孔質材と剛性素材製の保形性差込部材とを使用し、複数の多孔質材間に複数の差込部材を介在させて立位の多孔質材を差込部材によって挟持する。具体的には、鉛直方向に立設する複数の平板状又はシート状の多孔質材と複数の板状差込部材とを交互に並列配置して互いに当接させることによって多孔質材を差込部材で挟持し、これらを一体として気液接触層を構成する。差込部材は、凹凸した表面形状を有し、凸部において多孔質材と当接し、凹部において多孔質材との間にガスが通過可能な間隙が形成される。差込部材によって挟持される多孔質材は、差込部材の凸部によって支持されるため、含水及び微生物の繁殖による重量増加に対する耐久性が得られるので、多孔質材としてスポンジ素材を用いても、潰れ・沈み込み等の形状変化が抑制される。差込部材の凹部における間隙によってガスの流通及び気液接触が促進される。
【0021】
以下、本発明に係る吸収塔及び生物脱臭装置について詳細に記載する。
【0022】
本発明の吸収塔及び生物脱臭装置は、気液接触するための多孔質体として複数の板状又はシート状の多孔質材を使用し、空孔率が高いスポンジ材が好適に用いられる。複数の差込部材を用いて複数のスポンジ材を挟持して一体化することによって吸収塔の気液接触層を形成する。
【0023】
気液接触層を構成する多孔質材は、優れた通液性及び通気性を発揮するために、具体的には、液相に対する親和性及び耐性を有し、孔径500μm〜3mm程度の連続気孔を有するスポンジ材が好ましい。好適な接触効率を得るために、空孔率が90容積%程度以上の発泡材が好適に使用され、空孔率の高さによって柔質で弾性を示す素材となる。但し、自重に耐える保形性を保持するためには、空孔率は概して97容積%程度が上限となる。多孔質材には様々な天然又は合成発泡材があり、吸収塔や生物脱臭装置に用いる多孔質材は、成形が容易で軽量であることが望ましいことから、発泡プラスチックによるスポンジ材が適しており、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリウレタン、ポリエステル等のプラスチックの発泡材が挙げられる。液相として水を使用する吸収塔においては、親水性を有する多孔質材が用いられ、生物脱臭装置においては、更に、微生物を担持・繁殖可能な素材で構成された多孔質材であることが要点となる。従って、親水性ポリウレタン、メラミン、ポリエステル等の発泡材の使用が好ましく、加水分解による劣化等を考慮すると、ポリウレタンエーテルフォームが最適である。
【0024】
立設したスポンジ材の側面を差込部材によって挟持してスポンジ材の潰れを好適に抑制するためには、スポンジ材は、厚さが10〜50mm程度の平板状又はシート状であることが好ましく、立設状態での多孔質材の高さは50〜300cm程度が好ましい。スポンジ材が過度に厚いと、厚みの中央部における窪みが生じ易くなる。スポンジ材が高過ぎると、スポンジ最下部において荷重が差込部材の支持を上回って潰れが起こり易くなる。
【0025】
差込部材は、保形性(強度)を有する剛質素材を用いて、表面が凹凸した形状に形成され、その強度は、含水したスポンジ材の重量負荷によって変形しない耐久性を備えていればよい。差込部材は軽量で薄形に成形できることが望ましく、その好ましい素材としては、例えば、塩化ビニル、FRP、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS等のポリマー樹脂類や、ステンレス鋼、アルミニウム等の腐食し難い金属材などが挙げられるが、これらに限定されず、水に対する耐久性、耐腐食性を有する硬質素材から好適なものを適宜選択して使用してよい。
【0026】
差込部材の形状は、差込部材の主体部分が真直であるか屈曲するかによって2つに分類することができ、第1は、薄い平板を湾曲又は屈折させた屈曲板状、つまり、主体部が屈曲した形状であり、第2は、平板表面に突起を設けた直板状、つまり、主体部が真直ぐに伸びた形状である。図1の(a)は、平板を所定周期で波形に湾曲させた差込部材1aを、図1の(b)は、所定周期で蛇腹形に屈折させた差込部材1bを、図1の(c)は、平板表面に所定間隔で複数の突起pを設けた(或いは窪みを形成した)差込部材1cを例示する。差込部材1cを鉛直に立設すると、突起pは、水平断面が長方形の四角棒状突起であって鉛直方向に伸長し、隣接する突起との間に鉛直方向に伸長する溝が構成され、溝の水平断面は長方形である。差込部材1a〜1cの何れも表面形状が規則的に凹凸するので、スポンジ材3と差込部材1a〜1cとを交互に並列させると、差込部材1a〜1cの凸部においてスポンジ材3と当接して、スポンジ材間の平板状空間を差込部材が占めて互いに平行に配置される。
【0027】
気液接触層における気液接触効率を高めるためには、スポンジ材間に差込部材が占める空間をできる限り小さく構成することが望ましく、実用的にはこの空間の幅(スポンジ材間の距離)を10mm程度以下、好ましくは3〜7mm程度に薄く構成するとよい。差込部材1a〜cの凹部においてスポンジ材3との間に間隙が形成され、鉛直方向の通気が可能である。この通気用の間隙は、過剰に広いと、ガスや水の逃げ道となって気液接触効率を低下させる恐れがあるので、突起p間の溝の幅及び深さ(通気幅)が0.25〜2.5cm程度となるように構成することが好ましい。凹部の断面形状は、正方形、長方形、台形等の矩形や三角形を含む多角形、半円、半楕円、波形などの様々な形状から適宜選択してよい。図1(c)の棒状突起Pを角柱状突起に変更して突起間の溝の形状を碁盤目等の各種網目状としても良い。
【0028】
差込部材の凸部が規則的に位置することによって、スポンジ材は、差込部材の凸部によって全体として均等にバランス良く支持される。スポンジ材を強固に挟持するには、差込部材とスポンジ材との接触面積が多いことが好ましく、この点では、差込部材の凸部が平面でスポンジ材と当接する図1(c)の差込部材1cが最適である。曲面でスポンジ材と当接する場合は、スポンジ材が僅かに弾性変形する程度に押圧することによって接触面積が増え、又、スポンジ材の歪みの局所集中を抑制できるので、これらを考慮すると、図1(a)のような湾曲面で接触する差込部材1aは好適である。尚、図1(a)では、差込部材1aの湾曲が互いに並行するように配置されているが、スポンジ材を中心として両側の差込部材の湾曲が面対称になるように向きを変更すると、スポンジ材は対称に挟持されるので、支持の確度及び密接性が得られ易い。
【0029】
スポンジ材の数をnとした時、差込部材の数がn±1の範囲内であると、これらを交互に配置でき、n+1である時にはスポンジ材の両末端が差込部材で挟持され、n−1である時には図1のように末端がスポンジ材の配列となり、この場合の両端のスポンジ材は、片面を吸収塔の側壁内面によって挟持することができる。差込部材の一部を、例えば、凹凸のない平板状差込部材によって代替することも可能である。部分的にスポンジ材間の差込部材を欠いた配列(差込部材の数<n−1)であっても利用は可能であるが、差込部材を欠いた部分はスポンジの潰れ抑止効果がないので、スポンジ材及び差込部材が交互に位置することが望ましい。差込部材は、厚さ方向に貫通する細孔を設けて、差込部材を介した両側間の通気が可能なように構成しても良い。この場合は、差込部材の強度が不足しないように細孔の寸法、数及び分布に留意すると良い。
【0030】
上述のように交互に立設配置した複数の差込部材と複数のスポンジ材とを一組のユニットとして、吸収塔又は生物脱臭装置の気液接触層を構成する。差込部材の高さは、スポンジ材と実質的に同等であることが好ましく、スポンジ材より差込部材の高さが高い場合は、気液接触を阻害するガスの逃げ道とならないように留意し、差を20cm程度以下とすることが望ましい。差込部材及びスポンジ材を一組のユニットに拘束するための拘持具を使用しても良いが、吸収塔又は生物脱臭装置の気液接触層としての空間に差込部材及びスポンジ材を纏めて装着した時にこれらが装置内壁面に密接した状態で嵌合固定されるように吸収塔の内部構造を設計することによって、拘持具を用いずに差込部材及びスポンジ材を密接固定することができる。立設配置した差込部材及びスポンジ材は、スポンジ材が僅かに弾性変形する程度に水平方向に押圧すると、差込部材の凸部とスポンジ材との密接性が高まり、スポンジ材の弾性反発によって差込部材による挟持が強固になる。従って、吸収塔又は生物脱臭装置の気液接触層を構成する空間の幅を、スポンジ材の幅及び差込部材が占有する平板状空間の幅(スポンジ材間の距離)の合計量より若干小さく設定すると、スポンジ材及び差込部材を吸収塔又は生物脱臭装置に装着した時にこれらが互いに圧接されて強固に挟持され、使用時の重量負荷によるスポンジ材の潰れを好適に抑制できるので好ましい。
【0031】
上記構成において、立設されるスポンジ材及び差込部材を水平方向に貫通する支持棒を設けると、差込部材に横架される支持棒によってスポンジ材が垂下保持され、荷重がスポンジ材の最下部に集中して潰れるのを防止できるので、スポンジ材の厚さ及び高さを増大させることが可能である。従って、上述の適正範囲より厚い又は高いスポンジ材を使用する場合には、支持棒を設けることによって対処できる。支持棒がスポンジ材の上部を貫通するように構成すると好適である。支持棒は、差込部材と同様に、剛性及び耐水性を有する素材で製造すると良く、例えば、各種プラスチックやステンレス鋼等の耐蝕性金属、セラミックス等が挙げられる。支持棒によって支持されるスポンジ材の荷重が支持面においてなるべく均等に分散することが好ましいので、例えば、断面が円形又は楕円形の支持棒を使用し、これに対応する貫通孔をスポンジ材及び差込部材に設けるとよい。支持棒の太さは5〜25mm程度が好ましく、20〜80cm程度の間隔で垂直にスポンジ材及び差込部材を貫通するように平行に配置すると好適である。或いは、スポンジ材と差込部材とを局所的に接着剤で接合することによって支持棒の代わりとすることも可能である。
【0032】
以下に、上述のスポンジ材及び差込部材のユニットを気液接触層(微生物担持層)として使用する吸収塔の実施形態について説明する。以下の記載においては、吸収塔を生物脱臭装置として用いる実施形態として説明し、液相として水を用い、臭気物質を分解する微生物をスポンジ材に担持させて、臭気物質を特定物質として吸収して微生物によって分解するが、スポンジ材に微生物を担持させずに、使用する液相及びスポンジ材の素材を、ガス中の所定成分の吸収に適した液体及びこれに耐性を有する素材に変更すれば、吸収塔として汎用可能な使用形態となる。
【0033】
図2は、吸収塔の第1の実施形態を示し、吸収塔10は、上述のような差込部材1及びスポンジ材3からなる2組の多孔質ユニット5A,5Bを気液接触層として有する。図2の(a)は、吸収塔10の上面図、(b)は鉛直方向断面図、(c)は、(b)におけるA−A線断面図、(d)は、(b)におけるB−B線断面図である。この実施形態では、差込部材1として、図1(a)の差込部材1aを使用しているが、これに限定されず、必要に応じて他の差込部材に変更して良い。
【0034】
吸収塔10は、内部に気液接触層及び循環水貯留槽を構成するための箱形の本体槽11と、水Wを循環させるためのポンプ13、循環ライン15及びディストリビュータ17を有し、ポリ塩化ビニル製の差込部材1及びポリウレタンエーテルフォーム製のスポンジ材3からなる2組の多孔質ユニット5A,5Bを上下に配置して本体槽11内に装着することによって縦型配置の二段式気液接触層が構成される。ディストリビュータ17は、下方に向けて水を散布するための多数の穴が設けられた管を用いて構成され、多孔質ユニット5Aの上方に水平に配置され、スポンジ材3の上面全体に散水できるように、必要に応じて管を分岐させて多孔質ユニット5Aの上方全体に張り巡らせることにより局所散水を防止する。本体槽11の底部は、水Wが貯留されて循環水貯留槽を構成する。本体槽11の外に付設されるポンプ13を駆動することによって、底部の水Wは、本体槽11底部の側壁を貫通する貫通口19から槽外へ送出されてポンプ13から循環ライン15を介して本体槽11の頂部に供給され、本体槽11内のディストリビュータ17から多孔質ユニット5Aに散布される。散布された水は、各ユニットのスポンジ材3と差込部材1との隙間及びスポンジ材3中の空孔を通り、多孔質ユニット5Bの下部から排出されて本体槽11の底部に落下する。
【0035】
多孔質ユニット5Bの下方には、本体槽11の側壁を貫通する通気口21が、底部に貯留される水Wの水位より上方の位置に設けられる。臭気物質を含むガスGは、通気口21から本体槽11内に導入され、多孔質ユニット5Bの下側から供給されて上方へ向かって気液接触層を通過する。従って、本体槽11内において、気液接触層を通過する水Wの移動方向とガスGの移動方向は逆である。ガスGは、気液接触層を通過する間にスポンジ材3の気孔に拡散して、臭気物質はスポンジ材3に含まれる水に吸収される。これにより浄化されたガスG’は、本体槽11の頂部中央に設けられる通気口23から排出される。通気口23は、ディストリビュータ17より上方位置であれば、本体槽11の頂部周縁部や側壁に設けても良い。
【0036】
この実施形態においては、本体槽11内部で多孔質ユニット5A,5Bの各々を支持するための通水性、通気性の支持板25A,25Bを有する。支持板25A,25Bは、多孔質ユニットの荷重に耐える強度及び耐水性を備える素材で製造され、その形状は、網目状薄板状、スリットを有するスクリーン状、貫通孔を穿設した厚板等のような通水/通気穴を有する様々な形状から必要に応じて適宜選択して使用すればよい。
【0037】
本体槽11の一側壁に開閉可能な扉を設けて差込部材1及びスポンジ材3を側面から挿入可能に構成することによって、多孔質ユニット5A,5Bの装着及び取外しが容易になる。更に、本体槽11の側壁内側に、支持板25A,25Bを支持するための突起又は水平方向の案内溝を設けて、支持板を突起上又は案内溝内を水平方向に摺動させることによって槽内への装着・取り外しができるように構成すると、装置の組み立て・メンテナンス等において有利である。
【0038】
装着された多孔質ユニット5A,5Bは、本体槽11内に嵌合され、各ユニットの両端に位置するスポンジ材3の外側面は、本体槽11の側壁に密接して支持され、各スポンジ材3の両端縁及び各差込部材1の両端縁も本体槽11の側壁に密接する。この際、スポンジ材3の幅及び差込部材1が占有する平板状空間の幅の合計が、本体槽11の内部空間の横幅より若干大きくなるように設定すると、槽内に嵌入したスポンジ材3及び差込部材1は互いに水平方向に圧接されて密接性が高まり、ガスの逃げ道をなくすことができる。これに関連して、本体槽11は、スポンジ材3の弾性反発力に抗して多孔質ユニットを収容可能な耐久強度があればよい。
【0039】
差込部材1及びスポンジ材3の並列方向は、多孔質ユニット5Aと多孔質ユニット5Bとでは垂直に交差するように配置され、これにより、水及びガスの逃げ道の形成が抑制され、それにより気液接触効率の低下が防止される。この実施形態を応用して、3組以上の多孔質ユニットを上下方向に配置して多段構成とする場合には、差込部材1及びスポンジ材3の並列方向が上下の多孔質ユニットにおいて互いに垂直になるようにすると良い。このように差込部材1及びスポンジ材3の並列方向をユニット毎に交互にする場合、本体槽11の内部の水平断面形状は正方形となる。単独の多孔質ユニットを用いる一段構成、又は、複数の多孔質ユニットにおける差込部材1及びスポンジ材3の並列方向を同一にする多段構成などでは、本体槽11内部の水平断面形状は長方形であっても良い。
【0040】
臭気物質を分解可能な微生物をスポンジ材3に供給し、本体槽11底部に貯溜される水Wに微生物の成育に必要な栄養塩を添加して循環させると、微生物はスポンジ材3の表面、気孔中や差込部材1の表面で成育・繁殖し、微生物が担持された気液接触層となる。あるいは、予めスポンジ材に微生物培養液を浸透させて微生物を付着させ、これを用いて多孔質ユニットを構成して本体槽11に装着しても良い。多孔質ユニット5A,5Bを水が流下する際にガスGとの接触によって水に溶解した臭気物質は、水中を拡散してスポンジ材3上の微生物に取り込まれて分解されるとともに微生物のエネルギー源となる。本体槽11底部に貯留される水Wにも、スポンジ材3で繁殖する微生物が含まれ、微生物による分解は、底部に貯留される水Wにおいても進行する。従って、気液接触層で微生物による分解を受けずに水中に残存したまま底部に落下する臭気物質は、本体槽11底部の水W中で分解されるか、あるいは、ディストリビュータ17へ還流され、多孔質ユニット5Aに再度供給されて分解される。臭気物質としては、例えば、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル等の水溶性イオウ化合物や、アンモニア、トリメチルアミン等の水溶性窒素化合物が挙げられる。このような臭気物質の分解に有効な微生物としては、硫黄酸化細菌、アンモニア酸化細菌(硝化細菌)等が挙げられ、例えば、廃水処理に用いられる活性汚泥等に含まれる微生物を適宜採取して利用できる。
【0041】
図2の吸収塔10を、ガスG中に含まれる特定物質を物理化学的に吸収する吸収塔として使用する場合は、循環させる水W及びスポンジ材3の素材を、特定物質を吸収し易い液体媒体、及び、液体に耐性を有する素材に変更することができる。例えば、二酸化炭素を吸収する吸収塔の場合にはアルカノールアミンを吸収剤として含有する水溶液に変更すると好適である。吸収された特定物質は分解されないので、ガスの浄化処理を連続して行うには、吸収された特定物質を液体媒体から回収して液体媒体を再生する必要がある。このため、液体媒体を再生するための再生手段を併設して、吸収塔10の底部に貯留する液体が再生手段を介して頂部のディストリビュータ17に還流するように循環させると、吸収塔で吸収された特定物質は再生手段によって回収され、再生された液体を用いて浄化処理を連続して実施できる。二酸化炭素の回収塔として使用する場合は、液体媒体を加熱する加熱装置と気液接触層とを有する再生塔が設けられる。
【0042】
図3は、吸収塔の第2の実施形態を示し、この実施形態では、図2におけるポンプ13を水中ポンプ13’に変更している。詳細には、吸収塔30の本体槽31は、底部側面から横方向に突出する拡張部33が設けられ、横方向に延伸した循環水貯留槽が構成される。拡張部33内に水中ポンプ13’が据え置かれ、水中ポンプ13’によって吸引される水Wは、拡張部33の上壁部を貫通する管を通じて循環ライン15へ送出される。この構成は、吸収塔30からの水漏れ事故の防止に有効である。拡張部33の上壁部に開閉可能な扉を設けて水中ポンプ13’の出し入れを容易にすると、メンテナンスに有利である。上記構成以外については、図2の吸収塔10と同じであるので、その説明は省略する。
【0043】
図4は、吸収塔の第3の実施形態を示し、この吸収塔40では、図2の吸収塔10における多孔質ユニット5A,5Bの差込部材1を図1(c)の差込部材1cに変更した多孔質ユニット5A’,5B’を用いている。差込部材1cを用いた場合、スポンジ材3と差込部材1cとの間隙の幅が一定になるので、ガスや水の逃げ道の形成を防止するための寸法調節等を行い易い。上記構成以外については、図2の吸収塔10と同じであるので、その説明は省略する。
【0044】
図5は、吸収塔の第4の実施形態を示し、この実施形態では、吸収塔50内をガスGが流れる方向が、図2の吸収塔10におけるガスGの流れと逆である。つまり、臭気物質を含むガスGの供給源は、本体槽11の頂部中央の通気口23に接続され、ガスGは、通気口23から本体槽11内に導入されて、多孔質ユニット5Aの上側から下方へ向かって流れる。ガスGが気液接触層を通過する間に臭気物質が水に吸収され、浄化されたガスG’は、本体槽11の底部の通気口21から排出される。この吸収塔50では、気液接触層における水Wの流れとガスGの流れが同方向であるので、流通抵抗が少なく、目詰まりが生じ難くなる。上記構成以外については、図2の吸収塔10と同じであるので、その説明は省略する。
【0045】
図6は、吸収塔の第5の実施形態を示し、この吸収塔60では、図2の吸収塔10における各多孔質ユニット5A,5Bの差込部材1及びスポンジ材3を水平方向に貫通する支持棒61を有する多孔質ユニット65A,65Bを用いている。この実施形態では、支持棒61は断面が円形のステンレス鋼製丸棒であり、50cm程度の一定間隔で並行する支持棒61が差込部材1及びスポンジ材3を垂直に貫通するように、支持棒61の径に対応する円筒形の貫通孔が各多孔質ユニット65A,65Bの差込部材1及びスポンジ材3の上部に設けられる。支持棒61の長さは、本体槽11の内部の横幅にほぼ等しく、支持棒61を挿通させた差込部材1及びスポンジ材3を本体槽11に嵌入することによって、多孔質ユニット5A,5Bは本体槽11内に密接嵌合され、支持棒61は、差込部材1によって水平に支持されると共にスポンジ材3を垂下保持するので、差込部材1による挟持と相まってスポンジ材3の沈み込み及び潰れを好適に防止する。上記構成以外については、図2の吸収塔10と同じであるので、その説明は省略する。
【0046】
図7は、吸収塔の第6の実施形態を示し、この吸収塔70では、図2の吸収塔10における循環水貯留槽の水位を一定に保つために必要に応じて水を補給するシステム、及び、水中の微生物を活性化するために空気を供給するシステムを設けている。詳細には、本体槽11は、その側壁底部から延伸する導管71、及び、通気口21より下方で循環水貯留槽の水Wの水位より上方に設けられる給水管73を有し、導管71には液面レベルを検知するレベル計75が接続され、レベル計75はポンプ77と電気的に接続されている。レベル計75は、循環貯留槽の水Wの水位を導管71内において検知し、循環水貯溜槽の水Wが蒸発等により減少したときにポンプ77を自動的に駆動して水を補給し、水位が戻ればポンプ77を停止するように、検知した水位に基づいてポンプ77は電気的に制御される。更に、本体槽11の底部に散気管79が設置され、ブロワ81から散気管79へ空気を送ることによって、循環水貯溜槽の水W中に空気が供給され、微生物による臭気物質の分解が促進される。上記構成以外については、図2の吸収塔10と同じであるので、その説明は省略する。
【0047】
図8は、吸収塔の第7の実施形態を示し、この吸収塔90は、図2の吸収塔10の支持板25Aを省略して、支持板25Bのみで多孔質ユニット5A,5Bの両方を支持するように構成している。これは、差込部材1が、上部の多孔質ユニットの荷重に耐え得る強度を有し、支持板25Bが、多孔質ユニット5A,5Bの両荷重に耐えるに十分な強度である場合に有効な実施形態である。上記構成以外については、図2の吸収塔10と同じであるので、その説明は省略する。
【0048】
図2〜8に示す吸収塔の本体槽11,31は、例えば鋼材などの耐久強度を有する構造材料で製作されるが、本発明の気液接触層(つまり多孔質ユニット)を頑強な材料で包囲する必要はなく、供給されるガス及び吸収液が適切に気液接触層に導入されるように案内されればよい。つまり、柔軟なシート材等で形成した外被を用いて気液接触層を包むように吸収塔を構成してもよい。気液接触層を包囲する外被が柔軟な素材であると、気液接触層の側面に外被が密着するように締め付けることによって、ガスが気液接触層を通過せずに外側から迂回するのを防止し易いので、短絡による気液接触効率の低下を容易に防ぐことができ、非常に有効である。又、軟質シート製の外被を用いた場合、吸収塔の設計変更に対応し易く、吸収塔を設置する環境及び条件に応じて適宜応用でき、軽量化及び材料費の削減も可能である。
【0049】
外被は、処理対象のガスによって劣化せず、ガス及び液体に対して非透過性の素材を用いて製造される軟質シートによって作成され、液体及びガスを各々導入・排出するための2つの開口を有する形状、つまり、管状に形成される。軟質シートの素材として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリチレンテレフタレート、セロハン等の樹脂や、塩酸ゴム等のエラストマー等が挙げられる。軟質シートの厚さは、柔軟性及び曲げ易さ等の点から、0.03〜3mm程度であると好ましい。単独のシートではガスに対する耐久性に問題がある場合は、2種以上のシートを重ねて用いると良く、例えば、アンモニアに対する耐久性が低いポリ塩化ビニリデンシートや硫化水素に対する耐久性に懸念があるポリ塩化ビニルシートは、高密度ポリエチレンなどのガスに対する耐久性に優れたシートを内側に重ねて使用することによって、それらのガス透過性の低さを活かすことができる。或いは、積層フィルムのシートを用いれば、組み立て作業が煩雑にならずに済む。光透過性のシート、つまり、透明又は半透明のシートを用いると、内部の観察が可能であるので、多孔質ユニットの状態を把握し易い点で有用であり、使用条件に応じた設計変更の要否判断に関しても有利である。
【0050】
外被の内周が多孔質ユニットの外周より僅かに小さいと、多孔質ユニットを外被内に挿入した時に、多孔質ユニットの差込部材及びスポンジ材が互いに押圧されてしっかり挟持されると共に、多孔質ユニットの側面が外被と密接するので、ガスが多孔質ユニットと外被との隙間を通過するのが抑制される。但し、外被に引っ張り応力が加わって外被の耐久性が低下する虞があるので、これを回避するには、内周が多孔質ユニットの外周と同程度又はそれより大きい外被を使用し、紐や金属線等の条部材で外被の外側から気液接触層の周囲に締着する方法がある。これによって、気液接触層の側面に周回状の密接状態が形成されて封止される。この際、温熱によって外被の柔軟性を高めてから巻締めると、外被と多孔質ユニットの側面との密閉性が向上する。更に、外被−多孔質ユニット間の密閉性を高め易い形態として、多孔質ユニットと外被との間にガスケットとして機能する弾性部材を介在させる方法がある。具体的には、図9〜図11に示すように、スポンジ等の弾力性の素材で形成した弾性変形可能な環状のクッション9に多孔質ユニットを嵌入して外被7内に挿入し、条部材8を用いて外被7をクッション9上で巻き締める。この場合、クッション9は、多孔質ユニットを周回して外被と多孔質ユニットと間でガスケットの様に機能して弾性圧着によって閉塞性を高めると共に、差込部材1及びスポンジ材3を一体に固定して多孔質ユニット5A,5Bの拘持具としても作用する。
【0051】
クッション9は、処理対象のガスGや水によって劣化しない弾力性の素材を用いて調製される。弾力性の素材としては、天然ゴム及び各種合成ゴム等のエラストマー、ウレタンエラストマー等の熱可塑性エラストマー、発泡ポリウレタン等の発泡プラスチック(独立又は連続気泡型)等が挙げられ、このような弾力性素材から、処理するガスに対する耐久性を有するものを適宜選択することができる。スポンジ材3と同じ素材を用いてもよく、費用の点において有利である。或いは、ガスGによって劣化しない樹脂等のフィルムによってクッション9を被覆すると、クッション9自体はガスGに対する耐久性が低くても良い。ガス及び液体に対して非透過性の弾力性素材でクッション9を形成すると、外被−多孔質ユニット間の密閉性が極めて高くなる。巻締めに用いる条部材8としては、例えば、綿、麻等の植物繊維による紐、ナイロン、ポリ塩化ビニル等の樹脂による紐、鉄線や銅線等の金属線等が挙げられるが、これらに限定されず、外皮がクッション9に密着するように締付けられるものであればよい。
【0052】
以下、図9〜11を参照して、軟質シート製の外被に気液接触層が内包される第8の実施形態に係る吸収塔100について具体的に説明する。
【0053】
図9に示す吸収塔100は、組み立て式に構成され、図10及び図11に示すような構成部品を用いて組み立てられる。具体的には、図10(a)に示す頂部部分101、(b)の中央部分103、及び、(c)の底部部分105を組み合わせることによって、図11の(a)に示すような吸収塔の主要構造107が構成され、頂部部分101を支持するために、図11(b)のような架台109が用いられる。この吸収塔100の構成は、図2の吸収塔10と機能的に同等であり、図2の本体槽31の代わりに、透明のポリ塩化ビニルシートで形成される管状の外被7と、その開口に接続される頂部部分101及び底部部分105とを用いて、気液接触層を内包する。気液接触層として、鉛直方向に積上げた2組の多孔質ユニット5A,5Bを用いるが、必要に応じて、多孔質ユニットの数を増加して積上げ段数を増加してもよい。又、図中の差込部材1は、波形の差込部材1aとして記載するが、他の形状であってもよい。
【0054】
図10(b)の中央部分103は、気液接触によるガス吸収を行う部分であり、2組の多孔質ユニット5A,5Bで構成される気液接触層と、気液接触層を内包してその側面を覆う管状の外被7とを有し、多孔質ユニット5A,5Bの各々を構成する差込部材1及びスポンジ材3は、側面を周回するクッション9によって拘持される。図10(a)の頂部部分101は、導水管111、ディストリビュータ17及び通気口23を有し、外被7の上部開口に接続された状態において、頂部部分101は、多孔質ユニット5A,5Bへの給水、及び、処理後ガスG’の排気を行う。図10(c)の底部部分105は、導気管113を取付けた貯水槽115及び支持台117を有し、多孔質ユニット5A,5Bを支持台117に載せて外被7の下部を支持台117の外周に密着させた状態において、底部部分105は、多孔質ユニット5A,5BへガスGを供給し、気液接触後の水を収容する。貯水槽115内にはポンプ13が設置され、ポンプ13と頂部部分101の導水管11とを循環ラインによって接続することで、貯水槽115と多孔質ユニット5A,5Bとの水Wの循環が可能となる。
【0055】
クッション9は、図10の(e),(f)に示すように、多孔質ユニットを嵌装可能なように、多孔質ユニットの側面形状に対応した正方形の孔部を有する四角環帯状又は四角管状に形成される。クッション9の外周の4つの角は丸く面取りされ、これは、外被7を被せる作業が容易で、角部が破損し難くなる点で有用な形状である。クッション9の孔部を多孔質ユニットの水平断面より僅かに小さく形成すると、嵌入した多孔質ユニットの側面とクッション9の内周との密着性を得易い。クッション9の形状は上記の形状に限られず、孔部が正方形であれば、外周が円形の環帯状又は管状であってもよい。クッション9の厚さ(軸方向長さ)が1〜10cm程度であると、気密性及び締着作業性の点で好ましい。又、軸方向(鉛直方向)に沿った断面が円形又は楕円形である四角環のクッションも使用可能であるが、この実施形態のように断面が長方形のクッション9は、外周が平面であり、巻き締め作業をし損じ難い点で有利である。クッション9の外周に条部材を受ける案内溝を設けると、巻き締め作業が容易になる。クッション9の幅(水平方向)は5mm〜5cm程度が好ましい。クッションを形成する弾力性素材が高い変形性又は伸縮性を備える場合は、アニュラス又はトーラス体(ドーナツ形)等の丸い内径でも、多孔質ユニットの四角い外周に内径を対応させることができる。
【0056】
多孔質ユニットを載置するための支持台117は、通水性及び通気性の支持板119と、脚部121とを有し、脚部121は、上側が開放された箱形に形成され、支持板119は水平に支持されるように脚部121の内側に固定される。脚部121の側壁の下部に、導気管113を貫通させる孔と、脚部121の内外を連通する通水孔123とを有する。支持板119の形状は、多孔質ユニットの水平断面に対応した大きさの正方形であり、多孔質ユニットの荷重に耐える強度の耐水性素材を用いて、網目状、スリットを有するスクリーン状、貫通孔を穿設した厚板状等から適宜選択した形態に製造される。支持板119の位置は、貯水槽115の上縁と同程度の高さに設定されるので、支持板119上に載置される多孔質ユニット5A,5Bは、貯水槽内の水位より常に上に維持される。脚部121の上部は、支持板119より上方に延伸して多孔質ユニットの位置決め手段として作用し、支持板119上に載せた多孔質ユニット5A,5Bの横方向の位置ずれを防止するする。脚部121は、底面がない四角管状であっても良い。又、4本の棒脚やフレームに横板を渡して管状に構成しても良く、この場合、横板の下端が水面下に浸る程度の長さに短縮して、脚部121の下端にスリット又は窓を有するような構成であっても良い。
【0057】
頂部部分101は、通気口23を有する天板125と、天板125の下面に固着される四角管状のダクト127と、ダクト127の一側面を貫通する導水管111と、ダクト127の下端に水平に取付けられるディストリビュータ17とを有する。この実施形態におけるディストリビュータ17は、平板状に成形された通水性の多孔質材で構成され、導水管111から供給される水は多孔質材に浸透して全体から分散して落下する。ディストリビュータ17は、ダクト127に取り付けずに、多孔質ユニット5Aの上に載せた状態で用いてもよい。或いは、ディストリビュータ17として、図2の吸収塔で用いる有穴管や、底部全体に多数の小さい通水孔を有する浅い角形容器を用いてもよい。架台109は、直方体形のフレーム129と、頂部部分101を係止するための1対の係止部材131と、屋根133とを有し、係止部材131は、同じ高さでフレーム129の側柱部に水平且つ平行に固着される。
【0058】
吸収塔100は、以下のように組み立てられる。先ず、中央部分103と底部部分105とが組み立てられる。具体的には、気液接触層を支持するための支持台117を貯水槽115内に据え付け、クッション9によって拘持された多孔質ユニット5A,5Bを縦に積み上げて、支持台117の支持板119上に気液接触層として載置する。
【0059】
次に、多孔質ユニット5A,5Bに外被7を被せる。外被7の下端が水中に浸り、且つ、外皮7の上端が多孔質ユニットより上方に伸びて頂部部分101との接続に使用可能な余分が生じるように、上下方向に外被7を位置決めして、紐、金属線等の条部材8を用いて外被7をクッション9上に巻き締める。外被−多孔質ユニット間のガスケットとしての役割においては、クッション9は、気液接触層全体に少なくとも1つあればよく、多孔質ユニットの拘持具としては、ユニット当たり少なくとも1つのクッション9があればよい。この実施形態では、1つの多孔質ユニットを複数のクッション9で拘持する。このように締着部分を複数重ねると、各クッション上の締着による封止が完全でなくても、全体として満足な閉塞性が得られる。複数のクッション9を用いる場合、クッション9の幅(水平方向)は同一でも異なってもよく、異なる幅によって密閉効率が異なっても全体として良好な密閉性が得られればよい。尚、最下位のクッション9aは、多孔性ユニット5Bの下端を囲む支持台117の上端部に嵌装し、これによって外被7と支持台117とが密封接続され、支持台117と外被7との隙間からガスGが漏れるのを防止できる。
【0060】
更に、頂部部分101を図11の(a)に示すように組み立てる。このために、頂部部分101の位置を固定する必要があるので、図11の(b)に示すような架台109を設置して、組み立てられた中央部分103及び底部部分105が架台109の中央に位置するように配置する。頂部部分101の天板125を係止部材131上に架けて頂部部分101を架台109で支持することによって頂部部分101の位置が固定される。係止部材131上に支持された頂部部分101は、ディストリビュータ17が多孔質ユニット5Aの直上に配置される高さに位置する。この後、多孔質ユニット5A,5Bに締着された外被7は、条部材8によって頂部部品101と接続される。具体的には、ダクト127の下部にはクッション9bが嵌装され、外被7の上端でダクト127の下部を包囲して、条部材8で外被7をクッション9b上に巻き締めることによって、図9のように外被7は頂部部分101と密封接続される。
【0061】
この実施形態の架台109は直方体形のフレームで構成されるので、中央部分103と底部部分105との組み立て作業を架台109中で行うと効率的であるが、この架台には限定されない。例えば、頂部部分101を吊下げる形態のスタンドを用いて頂部部分101の位置を固定しても良く、中央部分103と底部部分105とを組み立てた後にスタンドを設置することができる。又、係止部材131の高さを変更・調節可能な架台109又はスタンドを使用すると、多孔質ユニットの高さ(積み上げ段数、差込部材1及びスポンジ材3の高さ)の変更に対応でき、外被7の長さを適正に調整するだけで、変更した吸収塔を組み立てられる。
【0062】
貯水槽115にポンプ13を設置して、ポンプ13と導水管111とを循環ラインで接続することによって基本的な組み立ては終了する。更に、図9のように、貯水槽115の水位を検知するレベル計75を架台109に付設して、検出される水位に応じてポンプ13の駆動を制御するようにポンプ13と電気的に接続すると、処理中の貯水槽115内の水位を所定レベルに維持することができる。レベル計の代わりにレベルスイッチを用いると、水位を所定レベル以下に下がるのを防止できるので、ポンプの空運転を防止できる。
【0063】
図9の様に組み立てられた吸収塔100において、水を貯水槽115に投入し、微生物をスポンジ材3上に担持すれば、生物脱臭処理が可能な状態となる。微生物の担持は、前述と同様に、組み立て前のスポンジ材3に予め施しても、組み立て後に水の循環を利用して行っても可能である。ポンプ13を駆動すると、貯水槽115から汲み上げられる水Wは、循環ラインを通って導水管111からディストリビュータ17に供給され、多孔質ユニット5A上全体に分配して散水される。多孔質ユニット5A,5B中を流下した水は、支持板119を通って貯水槽115に落下する。水の循環によって、スポンジ材3に担持される微生物は繁殖する。一方、ガスGは、ブロワ又はファン(図示略)等を用いて導気管113から支持台117の内側へ導入されると、支持板119を通って多孔質ユニット5A,5B中を上昇し、流下する水Wとの気液接触において、ガスに含まれる臭気物質が水に吸収される。浄化されたガスG’は、ダクト127内を通って通気口23から排出される。通気口23に吸引用ブロワ等を接続してダクト127からの排気を促進しても良い。
【0064】
外被7は、クッション9a,9bを介して支持台117及びダクト127に巻き締められて密着するので、ガスの流れは外被7によって規制される。つまり、支持台117から供給されるガスGは、多孔質ユニット5A,5B中を確実に通過してダクト127へ至るように外被7によって案内される。従って、支持台117、外被7及びダクト127は、図2の本体槽11と同様に機能し、内包される気液接触層に適確にガスが導入される。
【0065】
第8の実施形態は、図5の吸収塔のように、ガスを吸収塔100上部の通気口23から供給して下方に向かって流れるように変更することも可能である。
【0066】
第8の実施形態のように吸収塔を構成すると、軽量化や材料費の低減が可能であり、又、設計変更が行い易いので、吸収塔の設置条件に応じた変更が可能であり、適用性が高い。架台109の役割は、頂部部分101を支持することのみであるので、支持機能のみに特化するように構造を単純化したり、逆に、必要に応じて他の機能を付加してもよい。例えば、遮光板や遮光フィルムで側面を覆って遮光性を付与したり、太陽光パネルを用いて屋根133を構成してポンプ等の駆動エネルギーの供給に利用しても良い。又、外観のデザイン変更に関して極めて自由度が高く、例えば、架台のフレームに様々な装飾を施しても、本質的な機能には何等影響がない。
【0067】
上述の実施形態から必要に応じて複数の実施形態を適宜選択して組み合わせて使用することもできる。
【0068】
以下、実施例を参照して、本発明について詳細に説明する。
【実施例】
【0069】
(実施例)
図2に示す吸収塔10に準じた装置において、孔径2mm程度の連続気泡を有する空孔率約95容積%のポリウレタンエーテルフォームで形成された厚さ25mm、高さ430mm及び長さ190mmのスポンジ材3、及び、厚さ0.5mmのポリ塩化ビニル製平板を振幅10mm、周期(谷から谷までの距離)70mmで波形に湾曲させた形状の差込部材1を用いて多孔質ユニット5Aを構成し、ユニット5Bは省略して吸収塔10に装着した。ここでは、スポンジ材3を4枚、差込部材1を3枚用いたので、多孔質ユニットの平面図は正方形にはならない。
【0070】
微生物として活性汚泥から硫化物で馴養した硫黄酸化細菌を含む微生物群を底部の水Wに供給し、本体槽11底部に貯溜される水Wに微生物の成育に必要な栄養塩として塩化アンモニウム、リン酸カリウム及び硫酸マグネシウムを添加してポンプで循環させて多孔質ユニットに散布しながら、臭気物質として濃度800ppmの硫化水素を含むガスGを多孔質ユニット5Aの全容積10Lに対して2L/分の供給速度で通気口21から本体槽11内に導入した。通気口23から排出されるガスG’の硫化水素濃度を測定したところ、平均36ppm(32ppm及び40ppm)であった。スポンジ材3は、嵌入時と同じ高さを維持しており、潰れや沈み込みを生じることなく好適に挟持されていた。同じ水Wに浸したスポンジ材3と同等のスポンジキューブに存在する硫黄酸化細菌をStarkey寒天培地を用いて測定(参照:土壌微生物実験法研究会編、 「新編土壌微生物実験法」(1992)、322〜325,394頁、株式会社養賢堂発行)したところ、スポンジ1cm3あたり1.9×107cfu(コロニー数)であった。従って、吸収塔10では、スポンジ材3の潰れや沈み込みは防止され、スポンジ材3に硫黄酸化細菌を高密度に担持させることができ、生物脱臭に有効であることが明らかである。
【0071】
(参考例)
上記多孔質ユニット5Aの代わりに、外径30mm及び長さ30mmの中空円筒状のプラスチック充填材を10L充填して吸収塔10に装着したこと以外は実施例と同様にして上述の操作を行い、通気口23から排出されるガスG’の硫化水素濃度を測定したところ、平均67ppm(64ppm及び70ppm)であった。
【0072】
(比較例)
差込部材1を使用せずに、スポンジ材として1辺が20mmの立方体のものを用いて上記多孔質ユニット5Aと同じ容積に積み上げたこと以外は実施例と同様にして上述の操作を行ったところ、1ヶ月後にスポンジ材は沈み込みを生じ、最下部は潰れのために通気が困難になっていた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
多孔質体の形状が長期間保持されることにより吸収効率の低下を防止可能な吸収塔が提供され、スポンジ材の利点を活かして臭気物質の吸収効率及び微生物による分解効率を長期間維持可能な生物脱臭装置を提供でき、排ガス処理や環境浄化において使用する処理装置のメンテナンス頻度の低減や耐用年数の増加、操作性の向上に有用である。
【符号の説明】
【0074】
1,1a,1b,1c:差込部材、 3:スポンジ材、
5A,5B,5A’,5B’,65A,65B:多孔質ユニット、
7:外被、 8:条部材、 9,9a,9b:クッション、
10,30,40,50,60,70,90,100:吸収塔、 11,31:本体槽、
13,77:ポンプ、 15:循環ライン、 17:ディストリビュータ、
19:貫通口、 21,23:通気口、 25A,25B,91,119:支持板、
33:拡張部、 61:支持棒、71:導管、 73:給水管、
75:レベル計、 79:散気管、 81:ブロア、
101:頂部部品、 103:中央部品、 105:底部部品、 107:主要構造、
109:架台、 111:導水管、 113:導気管、 115:貯水槽、
117:支持台、 121:脚部、 123:通水穴、 125:天板、
127:ダクト、 129:フレーム、 131:係止部材、 133:屋根、
G,G’:ガス、 W:水。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液接触層と、前記気液接触層に液体を供給する液体供給装置と、前記気液接触層にガスを供給するガス供給部とを有し、前記気液接触層における前記液体と前記ガスとの接触によって前記ガスに含まれる所定成分を前記液体に吸収させる吸収塔であって、
前記気液接触層は、立位で並列する複数の平板状又はシート状の多孔質材と、前記複数の多孔質材と交互に当接配置されて前記多孔質材を挟持する複数の差込部材とを有し、前記差込部材は、凹凸した表面形状を有し、前記凹凸によって前記多孔質材との間に前記ガスが通過可能な間隙を形成することを特徴とする吸収塔。
【請求項2】
前記多孔質材は、孔径500μm〜3mmの連続気孔を有し、空孔率が90容積%以上のスポンジ材である請求項1記載の吸収塔。
【請求項3】
前記差込部材は剛性素材製で保形性を有し、前記多孔質材の全体に渡って挟持するために前記多孔質材と実質的に同等の高さ及び長さを有する請求項1又は2に記載の吸収塔。
【請求項4】
前記差込部材は、波形又は蛇腹形に湾曲又は屈折した板状部材、及び、表面に突起又は溝を有する直板部材からなる群より選択される少なくとも一種であり、前記間隙は、鉛直方向に伸長する請求項1〜3の何れかに記載の吸収塔。
【請求項5】
前記複数の多孔質材及び前記複数の差込部材は、前記多孔質材及び前記差込部材が交互に当接配置される多孔質ユニットを複数組構成し、前記複数の多孔質ユニットが縦方向に配置される請求項1〜4の何れかに記載の吸収塔。
【請求項6】
前記複数組の多孔質ユニットにおいて、前記多孔質材及び前記差込部材の並列方向は、上下の多孔質ユニットにおいて垂直になるように配置される請求項5に記載の吸収塔。
【請求項7】
前気液体供給装置は、前記気液接触層に液体を散布するディストリビュータと、前記気液接触層から排出される液体を前記ディストリビュータに還流させる循環ラインとを有し、前記気液接触層において、前記液体と前記ガスとは逆方向に移動する請求項1〜6の何れかに記載の吸収塔。
【請求項8】
更に、前記気液接触層を通過した液を貯留する貯留槽と、前記貯留槽の液面レベルを検知するレベル計と、前記レベル計に検知される液面レベルに基づいて前記貯留槽に液体を補給するためのポンプとを有する請求項1〜7の何れかに記載の吸収塔。
【請求項9】
更に、前記気液接触層が内部に装着される箱形の槽を有する請求項1〜8の何れかに記載の吸収塔。
【請求項10】
更に、前記気液接触層を内包する柔軟な外被を有し、前記外被は2つの開口を有し、前記液体及び前記ガスは、各々、前記2つの開口のうちの何れか一方から供給されて他方から排出される請求項1〜8の何れかに記載の吸収塔。
【請求項11】
前記外被は、気体及び液体に対して非透過性の軟質シートで管状に形成され、前記外被の2つの開口は、前記気液接触層の上方及び下方に位置し、上方の開口から前記液体供給装置によって液体が供給され、下方の開口から前記ガス供給部によってガスが供給されて前記外被によって前記気液接触層へ案内される請求項10に記載の吸収塔。
【請求項12】
前記外被は、光に対して透過性のシート材で形成される請求項10又は11に記載の吸収塔。
【請求項13】
前記外被と前記気液接触層の側面との間は閉塞されてガスの流通が抑制される請求項10〜12の何れかに記載の吸収塔。
【請求項14】
前記外被は、条部材を用いて前記気液接触層の周囲に締着されて前記外被と前記気液接触層とが周回状に密接して閉塞される請求項10〜13の何れかに記載の吸収塔。
【請求項15】
更に、前記気液接触層の側面を周回する弾性部材を有し、前記外被は、条部材によって前記弾性部材上に締着されて、前記弾性部材による弾性圧着によって前記気液接触層と前記外被との間の密閉性が高まる請求項14に記載の吸収塔。
【請求項16】
前記弾性部材は、前記気液接触層を嵌装可能な孔部を有する環帯状又は管状の形状であり、前記穴部に気液接触層を嵌装することによって前記複数の多孔質材及び複数の差込部材が一体に固定される請求項15に記載の吸収塔。
【請求項17】
請求項1〜16の何れかに記載の吸収塔を有し、前記気液接触層は、臭気物質を分解可能な微生物を保持し、前記液体は水であり、前記所定成分としてガスに含まれる臭気物質を水に吸収して前記微生物を用いて分解する生物脱臭装置。
【請求項18】
前記多孔質材は、ポリウレタンエーテルフォーム製であり、前記微生物は、硫黄酸化細菌又はアンモニア酸化細菌を含む請求項17記載の生物脱臭装置。
【請求項1】
気液接触層と、前記気液接触層に液体を供給する液体供給装置と、前記気液接触層にガスを供給するガス供給部とを有し、前記気液接触層における前記液体と前記ガスとの接触によって前記ガスに含まれる所定成分を前記液体に吸収させる吸収塔であって、
前記気液接触層は、立位で並列する複数の平板状又はシート状の多孔質材と、前記複数の多孔質材と交互に当接配置されて前記多孔質材を挟持する複数の差込部材とを有し、前記差込部材は、凹凸した表面形状を有し、前記凹凸によって前記多孔質材との間に前記ガスが通過可能な間隙を形成することを特徴とする吸収塔。
【請求項2】
前記多孔質材は、孔径500μm〜3mmの連続気孔を有し、空孔率が90容積%以上のスポンジ材である請求項1記載の吸収塔。
【請求項3】
前記差込部材は剛性素材製で保形性を有し、前記多孔質材の全体に渡って挟持するために前記多孔質材と実質的に同等の高さ及び長さを有する請求項1又は2に記載の吸収塔。
【請求項4】
前記差込部材は、波形又は蛇腹形に湾曲又は屈折した板状部材、及び、表面に突起又は溝を有する直板部材からなる群より選択される少なくとも一種であり、前記間隙は、鉛直方向に伸長する請求項1〜3の何れかに記載の吸収塔。
【請求項5】
前記複数の多孔質材及び前記複数の差込部材は、前記多孔質材及び前記差込部材が交互に当接配置される多孔質ユニットを複数組構成し、前記複数の多孔質ユニットが縦方向に配置される請求項1〜4の何れかに記載の吸収塔。
【請求項6】
前記複数組の多孔質ユニットにおいて、前記多孔質材及び前記差込部材の並列方向は、上下の多孔質ユニットにおいて垂直になるように配置される請求項5に記載の吸収塔。
【請求項7】
前気液体供給装置は、前記気液接触層に液体を散布するディストリビュータと、前記気液接触層から排出される液体を前記ディストリビュータに還流させる循環ラインとを有し、前記気液接触層において、前記液体と前記ガスとは逆方向に移動する請求項1〜6の何れかに記載の吸収塔。
【請求項8】
更に、前記気液接触層を通過した液を貯留する貯留槽と、前記貯留槽の液面レベルを検知するレベル計と、前記レベル計に検知される液面レベルに基づいて前記貯留槽に液体を補給するためのポンプとを有する請求項1〜7の何れかに記載の吸収塔。
【請求項9】
更に、前記気液接触層が内部に装着される箱形の槽を有する請求項1〜8の何れかに記載の吸収塔。
【請求項10】
更に、前記気液接触層を内包する柔軟な外被を有し、前記外被は2つの開口を有し、前記液体及び前記ガスは、各々、前記2つの開口のうちの何れか一方から供給されて他方から排出される請求項1〜8の何れかに記載の吸収塔。
【請求項11】
前記外被は、気体及び液体に対して非透過性の軟質シートで管状に形成され、前記外被の2つの開口は、前記気液接触層の上方及び下方に位置し、上方の開口から前記液体供給装置によって液体が供給され、下方の開口から前記ガス供給部によってガスが供給されて前記外被によって前記気液接触層へ案内される請求項10に記載の吸収塔。
【請求項12】
前記外被は、光に対して透過性のシート材で形成される請求項10又は11に記載の吸収塔。
【請求項13】
前記外被と前記気液接触層の側面との間は閉塞されてガスの流通が抑制される請求項10〜12の何れかに記載の吸収塔。
【請求項14】
前記外被は、条部材を用いて前記気液接触層の周囲に締着されて前記外被と前記気液接触層とが周回状に密接して閉塞される請求項10〜13の何れかに記載の吸収塔。
【請求項15】
更に、前記気液接触層の側面を周回する弾性部材を有し、前記外被は、条部材によって前記弾性部材上に締着されて、前記弾性部材による弾性圧着によって前記気液接触層と前記外被との間の密閉性が高まる請求項14に記載の吸収塔。
【請求項16】
前記弾性部材は、前記気液接触層を嵌装可能な孔部を有する環帯状又は管状の形状であり、前記穴部に気液接触層を嵌装することによって前記複数の多孔質材及び複数の差込部材が一体に固定される請求項15に記載の吸収塔。
【請求項17】
請求項1〜16の何れかに記載の吸収塔を有し、前記気液接触層は、臭気物質を分解可能な微生物を保持し、前記液体は水であり、前記所定成分としてガスに含まれる臭気物質を水に吸収して前記微生物を用いて分解する生物脱臭装置。
【請求項18】
前記多孔質材は、ポリウレタンエーテルフォーム製であり、前記微生物は、硫黄酸化細菌又はアンモニア酸化細菌を含む請求項17記載の生物脱臭装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−232292(P2012−232292A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94675(P2012−94675)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
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