説明

吸収式システム

【課題】台数制御及び冷温水流量制御を併用可能な吸収式冷凍システムを提供する。
【解決手段】再生器1A〜1E、凝縮器、蒸発器及び吸収器を備えた複数の吸収式冷凍機100A〜100Eと、これら複数の吸収式冷凍機100A〜100Eを集中制御する集中制御装置70とを備えた吸収式システム200において、集中制御装置70は、運転中の吸収式冷凍機の吸収式冷凍機負荷から吸収式システム負荷を算出し、この吸収式システム負荷に応じて吸収式冷凍機100A〜100Eの運転台数を制御する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の吸収式冷凍機を備えた吸収式システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の吸収式冷凍機を備えた吸収式システムでは、省エネルギー対策のため、冷温水設定温度(目標温度)と冷温水入口温度との温度差、及び冷温水の流量から冷房負荷を判断して吸収式冷凍機の運転台数を制御する台数制御を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、一の吸収式冷凍機において、冷房負荷(バーナの加熱量)の割合に応じて冷温水の流量を制御する冷温水変流量制御を行うことで、吸収式冷凍機で生成された冷温水を熱負荷へと送水する冷温水ポンプの省エネルギーを実現したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−255880号公報
【特許文献2】特開平4−80567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、さらなる省エネルギー対策を実施するべく、上記2つの台数制御及び冷温水変流量制御を組み合わせることが望まれている。
しかしながら、冷温水変流量制御では、冷温水入口温度が一定に保たれるため、冷温水入口温度に基づいて制御する台数制御を組み合わせることができなかった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、台数制御及び冷温水流量制御を併用可能な吸収式システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、再生器、凝縮器、蒸発器及び吸収器を備えた複数の吸収式冷凍機と、これら複数の吸収式冷凍機を集中制御する集中制御装置とを備えた吸収式システムにおいて、前記集中制御装置は、運転中の前記吸収式冷凍機の吸収式冷凍機負荷から吸収式システム負荷を算出し、この吸収式システム負荷に応じて前記吸収式冷凍機の運転台数を制御することを特徴とする。
【0006】
上記構成において、前記集中制御装置は、前記吸収式冷凍機負荷を当該吸収式冷凍機が備える蒸発器の冷温水入口温度と冷温水出口温度の差、及び、当該冷温水の流量から算出してもよい。
【0007】
上記構成において、前記集中制御装置は、100%負荷時の冷凍能力の割合に応じて前記吸収式冷凍機の運転台数を制御してもよい。
【0008】
上記構成において、前記集中制御装置は、前記吸収式システム負荷が所定時間所定負荷以上になった場合に、前記吸収式冷凍機の運転台数を増加させてもよい。
【0009】
上記構成において、各吸収式冷凍機は、前記再生器として高温再生器及び低温再生器を備え、前記集中制御装置は、前記吸収式冷凍機の高温再生器温度が所定時間以上所定温度になった場合に、前記吸収式冷凍機の運転台数を増加させてもよい。
【0010】
上記構成において、各吸収式冷凍機は、再生器として高温再生器及び低温再生器を備え、前記集中制御装置は、前記吸収式システム負荷が所定時間所定負荷以上になった場合に、或いは、前記吸収式冷凍機の高温再生器温度が所定時間以上所定温度になった場合に、前記吸収式冷凍機の運転台数を増加させてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、集中制御装置は、運転中の吸収式冷凍機の吸収式冷凍機負荷から吸収式システム負荷を算出し、この吸収式システム負荷に応じて吸収式冷凍機の運転台数を制御するため、台数制御及び冷温水流量制御を併用可能となり、さらなる省エネルギー化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る吸収式冷凍機を示す回路図である。
【図2】吸収式システムを模式的に示す構成図である。
【図3】台数制御テーブルを示す図である。
【図4】吸収式システムの台数制御の一例を示す説明図である。
【図5】吸収式システムの台数制御の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係る吸収式冷凍機を示す回路図である。
吸収式冷凍機100は、例えば、冷媒に水、吸収液に臭化リチウム(LiBr)溶液を用いた二重効用吸収式冷凍機である。この吸収式冷凍機100は、高温再生器1、低温再生器2、凝縮器3、蒸発器4、吸収器5、高温熱交換器6、及び低温熱交換器7等が配管接続され、吸収液及び冷媒の循環サイクルが構成されている。
【0014】
高温再生器1には、吸収液ポンプ11により、冷媒が吸収液に吸収された稀釈吸収液(以下、稀液と言う。)を吸収器5から導く稀液管20が接続されている。高温再生器1内には、吸収液ポンプ11によって吸収器5から稀液管20を介して導かれた稀液が収容されており、この稀液の液面を検知する液面検知器15が設けられている。この稀液は、例えば都市ガスを燃料とするバーナ8によって加熱されるようになっている。バーナ8は、燃料に点火する点火器9と、燃料量を制御して熱源量を可変にする燃料制御弁10とを備えて構成されている。高温再生器1には、排ガスを排気する排気管16が設けられている。
【0015】
また、高温再生器1には、稀液が加熱されることで生じた冷媒蒸気を凝縮器3へと導く冷媒蒸気管21と、冷媒蒸気が分離されて濃度が高くなった中間液を低温再生器2へと導く吸収液管22とが接続されている。冷媒蒸気管21は、第1冷媒蒸気管21Aと第2冷媒蒸気管21Bとに分岐され、第1冷媒蒸気管21Aは、低温再生器2を伝熱管として経由し、凝縮器3に接続されている。第2冷媒蒸気管21Bは、開閉弁31を備え、吸収器5に接続されている。吸収液管22は、第1吸収液管22Aと第2吸収液管22Bとに分岐され、第1吸収液管22Aには高温熱交換器6が設けられ、第2吸収液管22Bは開閉弁32を備え、吸収器5に接続されている。
【0016】
低温再生器2には、第1冷媒蒸気管23Aを流通する冷媒蒸気によって中間液が加熱されることで生じた冷媒蒸気を凝縮器3へと流入させるエリミネータ36が仕切壁の上部に設けられている。また、低温再生器2には、冷媒蒸気が分離された濃縮吸収液(以下、濃液と言う。)を吸収器5へと導く吸収液管23が接続されている。この吸収液管23は、低温熱交換器7を備え、吸収器5内の上部に設けられた散布器5Aに接続されている。
【0017】
凝縮器3には、この凝縮器3の下部から蒸発器4へ延出し、途中にU字部を備えた冷媒管25が接続され、重力の作用により冷媒管25を介して流下する凝縮器3内の液冷媒が蒸発器4内に流入するようになっている。また、凝縮器3内には、冷却水が流通する冷却水管26が伝熱管として配置されている。
蒸発器4には、凝縮器3から流入した冷媒が溜まる冷媒溜まり4Bが形成され、この冷媒溜まり4Bから上部に設けられた散布器4Aへと液冷媒を循環させる冷媒ポンプ12を備えた冷媒管27が接続されている。蒸発器4内には、冷温水管(供給管)28が伝熱管として配置され、この冷温水管28を介して、ブライン(例えば、冷水又は温水)が熱負荷300(例えば空気調和装置)(図2参照)に循環供給される。
【0018】
蒸発器4及び吸収器5の内部は高真空に保持されている。蒸発器4と吸収器5との間は仕切壁37Aで仕切られており、仕切壁37Aの上部には、蒸発器4において散布器4Aから冷温水管28に散布されて蒸発した冷媒蒸気が吸収器5へと流入するエリミネータ37Bが設けられている。
吸収器5の下部には、蒸発器4からの冷媒蒸気が散布器5Aから散布された濃液に吸収された稀液が溜まる稀液溜まり5Bが形成されている。この稀液溜まり5Bには、冷媒溜まり4Bから延出して開閉弁33が設けられた分岐管30と、上記稀液管20とが接続されている。吸収器5内には、冷却水が流通する冷却水管26が伝熱管として配置されている。この冷却水管26は、この吸収器5内を経由して上記凝縮器3内を経由するように配設されている。冷却水管26には冷却水ポンプ13が、冷温水管28にはインバータ(不図示)により周波数可変に制御される冷温水ポンプ14が設けられている。
【0019】
吸収式冷凍機100には、冷温水管28の蒸発器4入口側に設けられて冷温水入口温度を検出する冷温水入口温度センサ51と、冷温水管28の蒸発器4出口側に設けられて冷温水出口温度を検出する冷温水出口温度センサ52と、冷却水管26の吸収器5入口側に設けられて冷却水入口温度を検出する冷却水入口温度センサ53と、高温再生器1に設けられて高温再生器温度Thを検出する高温再生器温度センサ54と、冷温水管28に設けられて冷温水流量fを検出する冷温水流量計55が設けられている。
【0020】
また、吸収式冷凍機100には、当該吸収式冷凍機100の制御を行う制御装置60が設けられている。この制御装置60は、図示しない計時手段を備え、吸収式冷凍機100運転のための後述する集中制御装置70(図2参照)からの運転信号、液面検知器15により検出される高温再生器1における吸収液の液面の高さ、温度センサ51〜54により検出される冷温水、冷却水、及び高温再生器1の温度、冷温水流量計55により検出される冷温水流量等を取得する。そして、制御装置60は、取得した値に基づいて、点火器9の点火制御、燃料制御弁10の開閉及び開度制御、ポンプ11〜13の制御、冷温水ポンプ14のインバータのインバータ制御等を実行する。
【0021】
吸収式冷凍機100は、制御装置60の制御により、冷温水管28から冷水を取り出す冷房運転と、冷温水管28から温水を取り出す暖房運転とに運転モードが切り替えられる。
冷房運転時には、冷温水管28を介して熱負荷300に循環供給されるブライン(例えば冷水)の蒸発器4出口側温度が所定の設定温度、例えば7℃になるように吸収式冷凍機100に投入される熱量が制御装置60により制御される。具体的には、制御装置60は、ポンプ11〜14を起動し、バーナ8で燃料を燃焼させ、冷温水出口温度センサ52が検出するブラインの温度が所定の7℃となるようにバーナ8の火力を制御する。なお、冷房運転時には、開閉弁31〜33は閉じられる。
【0022】
この場合、高温再生器1内の吸収液は、バーナ8により加熱され、濃縮して中間液と冷媒蒸気とに分離する。この中間液は、吸収液管22,22Aを流通して高温熱交換器6を経由し、吸収器5から流出する稀液によって冷却された後、低温再生器2に入る。高温再生器1で発生した冷媒蒸気は、冷媒蒸気管21,21Aを流通して低温再生器2を経由し、低温再生器2に供給された中間液を加熱して、凝縮して液冷媒となって凝縮器3に入る。高温再生器1からの冷媒蒸気によって加熱された低温再生器2の中間液は、濃縮して濃液と冷媒蒸気とに分離する。この冷媒蒸気は、エリミネータ36を通って凝縮器3に入る。
【0023】
低温再生器2から凝縮器3に入った冷媒蒸気は、冷却水管26内を流通する冷却水によって冷却されて液冷媒となる。この液冷媒及び高温再生器1からの液冷媒は、冷媒管25を流通して蒸発器4に入り、一部蒸発しながらも冷媒溜まり4Bに溜まる。冷媒溜まり4Bに溜まった液冷媒は、冷媒ポンプ12によって冷媒管27を流通して蒸発器4内の散布器4Aに供給され、散布器4Aから冷温水管28の表面に散布される。このとき、冷媒は気化熱により、冷温水管28内を流通する温水の熱を奪い取り、温水が冷却されて冷水となる。この冷水は、熱負荷300に供給されて冷房等の冷却運転が行われる。蒸発器4で蒸発した冷媒蒸気は、エリミネータ37Bを通って吸収器5に入る。
【0024】
一方で、低温再生器2で濃縮された濃液は、吸収液管23を流通して低温熱交換器7を経由し、吸収液ポンプ11によって吸収器5から流出した稀液によって冷却された後、吸収器5内の散布器5Aに供給され、散布器5Aから冷却水管26の表面に散布される。吸収器5では、蒸発器4で発生した冷媒蒸気が濃液に吸収され、濃度の低下した稀液となって稀液溜まり5Bに溜まる。なお、冷媒蒸気が濃液に吸収される際に発生する熱は、冷却水管26内を流通する冷却水により冷却される。
吸収器5の稀液溜まり5Bに溜まった稀液は、吸収液ポンプ11によって稀液管20から流出される。この稀液は、稀液管20を流通して低温熱交換器7を経由し、吸収液管23を流通する濃液によって加熱された後、高温熱交換器6を経由し、第1吸収液管22Aを流通する中間液によって加熱され、高温再生器1に入る。
【0025】
暖房運転時には、冷温水管28を介して熱負荷300に循環供給されるブライン(例えば温水)の蒸発器4出口側温度が所定の設定温度、例えば55℃になるように吸収式冷凍機100Aに投入される熱量が制御装置60により制御される。具体的には、制御装置60は、ポンプ11,13,14だけを起動し、バーナ8で燃料を燃焼させ、冷温水出口温度センサ52が計測するブラインの温度が所定の55℃となるようにバーナ8の火力を制御する。なお、暖房運転時には、開閉弁31,32は開かれ、開閉弁33は閉じられる。
【0026】
この場合、高温再生器1内の吸収液は、バーナ8により加熱され、濃縮して中間液と冷媒蒸気とに分離する。この中間液は、吸収液管22,22Bを流通して吸収器5に入って稀液溜まり5Bに溜まり、冷媒蒸気は、冷媒蒸気管21を流通し、主に流路抵抗の小さい第2冷媒蒸気管21Bを流通して吸収器5に入る。吸収器5に入った冷媒蒸気は、エリミネータ37Bを通って蒸発器4に入り、冷温水管28を流通する冷水により冷却されて液冷媒となって冷媒溜まり4Bに溜まる。このとき、冷温水管28を流通する冷水は、蒸発器4に入った冷媒蒸気によって加熱されて温水となる。この温水は、熱負荷300に供給されて暖房等の暖房運転が行われる。冷媒溜まり4Bに溜まった冷媒は、冷媒管27及び分岐管30を流通して吸収器5に入って稀液溜まり5Bに溜まる。稀液溜まり5Bでは、冷媒が中間液に吸収されて濃度の低下した稀液となり、この稀液は、吸収液ポンプ11によって稀液管20を流通して高温再生器1に供給される。
なお、本実施の形態の吸収式冷凍機100は、蒸発器4で凝縮した冷媒が冷媒管27、分岐管30を流通して吸収器5に入るように構成されているが、開閉弁33を閉じ、蒸発器4で凝縮して冷媒溜まり4Bに溜まった冷媒を冷媒溜まり4Bからオーバーフローさせて吸収器5に入るように構成することもできる。
【0027】
また、制御装置60は、冷温水入口温度が一定となるように、冷温水ポンプ14の周波数を制御することで、冷温水ポンプ14の運転能力を抑制し、省エネルギー化を図る冷温水変流量制御を行う。
【0028】
図2は、上記吸収式冷凍機100を複数備える吸収式システム200を模式的に示す構成図である。
吸収式システム200は、例えば、複数(例えば、5台)の吸収式冷凍機100と、集中制御装置70とを備えた吸収式システムで、例えば、渡り配線による通信配線71で接続されて構成されている。ここで、吸収式冷凍機100に吸収式冷凍機100A〜100Eと符号を付して各々を区別し、また吸収式冷凍機100が備える構成部品についても、吸収式冷凍機100A〜100Eに対応してA〜Eの符号を付して各々を区別して表記するものとする。
なお、本実施形態では、集中制御装置70と各吸収式冷凍機100A〜100Eとを接続する通信配線71を渡り配線としているが、これに限らず、集中制御装置70から各吸収式冷凍機100A〜100Eへと個別に通信配線71を接続するものとしても構わない。
【0029】
吸収式システム200では、吸収式冷凍機100A〜100Eの冷温水管28A〜28Eから供給された冷温水は、送水管301を介して熱負荷300に送水される。
吸収式冷凍機100A〜100Eには、上述したように、冷温水入口温度センサ51A〜51Eと、冷温水出口温度センサ52A〜52Eと、冷温水流量計55A〜55Eと、高温再生器1A〜1Eと、この高温再生器1A〜1Eの温度を検出する高温再生器温度センサ54A〜54Eと、バーナ8A〜8Eと、このバーナ8A〜8Eの燃焼制御を始めとする吸収式冷凍機100A〜100Eの運転制御および、集中制御装置70への通信を行う制御装置60A〜60Eとがそれぞれ備えられ、各吸収式冷凍機100A〜100Eより、機種や、定格能力や、冷温水温度や、高温再生器温度、冷温水流量などのデータが、通信配線71を通じて集中制御装置70へ送信される。
【0030】
なお、本実施の形態では、吸収式冷凍機100Aを1号機(ベース機)と称し、吸収式冷凍機100Bを2号機と称し、吸収式冷凍機100Cを3号機と称し、吸収式冷凍機100Dを4号機と称し、吸収式冷凍機100Eを5号機と称し、これら吸収式冷凍機100A〜100Eが運転される優先順位は、吸収式冷凍機100A、吸収式冷凍機100B、吸収式冷凍機100C、吸収式冷凍機100D、吸収式冷凍機100Eの順になっているものとして説明するが、この優先順位は、号機番号に関わらず、各吸収式冷凍機100A〜100Eの冷凍能力順に決められたものとしてもよく、或いは、例えば外部熱源からの排熱回収を行える吸収式冷凍機を優先するものとしもよい。
【0031】
集中制御装置70では、受信したこのデータの一括管理を行い、各吸収式冷凍機100A〜100Eへ対して、運転停止の指示や、運転能力の指示が行われている。
そして、集中制御装置70の盤面に設けられた運転スイッチ(不図示)の操作により、運転が指示されると、集中制御装置70は、吸収式システム200の負荷(吸収式システム負荷)に応じて、吸収式冷凍機100A〜100Eの運転台数を制御する台数制御を開始する。
【0032】
吸収式システム200の起動時は負荷があっても能力が出ず、正確な負荷の判断ができないため、集中制御装置70は、吸収式システム200の起動開始から所定時間to(例えば、30分)待機する。所定時間to経過すると、集中制御装置70は、運転中の吸収式冷凍機100の負荷(吸収式冷凍機負荷)を機器負荷割合Lchiとして算出する。各吸収式冷凍機100の機器負荷割合Lchiは、当該吸収式冷凍機100の冷温水入口温度センサ51が検出する冷温水入口温度、冷温水出口温度センサ52が検出する冷温水出口温度、冷温水流量計55が検出する冷温水流量fを用いて、下記の算出式(1)によって求められる。
機器負荷割合Lchi=ΔT(冷温水入口温度と冷温水出口温度の温度差)×冷温水流量f・・・(1)
【0033】
集中制御装置70は、運転中の吸収式冷凍機100の機器負荷割合Lchiから当該吸収式冷凍機100の容量設定を加味して、吸収式システム200の負荷を負荷割合Lchとして算出する。
例えば、容量設定がそれぞれ40冷凍トンである3台の吸収式冷凍機100A〜100Cが運転中であって、吸収式冷凍機100A〜100Cの機器負荷割合Lchiが80%、60%、40%とすると、吸収式システム200の負荷割合Lchは、40/(40+40+40)×0.8+40/(40+40+40)×0.6+40/(40+40+40)×0.6=0.6(60%)となる。
一方、容量設定がそれぞれ80冷凍トン、60冷凍トン、40冷凍トンである3台の吸収式冷凍機100A〜100Cが運転中であって、吸収式冷凍機100A〜100Cの機器負荷割合Lchiが80%、60%、40%とすると、吸収式システム200の負荷割合Lchは、80/(80+60+40)×0.8+60/(80+60+40)×0.6+40/(80+60+40)×0.4=0.644(64.4%)となる。
集中制御装置70は、図3に示す運転台数制御テーブルTBに基づき、上記のように算出した負荷割合Lchに応じて運転台数を制御する。運転台数制御テーブルTBは、集中制御装置70が備える記憶部(不図示)に記憶されている。
【0034】
条件1に示すように、負荷割合Lchが所定負荷α×能力割合E%以下の場合には、集中制御装置70は、吸収式冷凍機100の運転台数を優先順位の低い方から1台減少し、その後所定時間t1(例えば、30分)待機する。ここで、負荷αは100%負荷時の冷凍能力を示す値(例えば、90%)であり、能力割合Eは100%負荷時の冷凍能力に対する能力割合を示す値(例えば、0.95)である。このように、能力割合Eを加味することで、経年劣化等によって吸収式冷凍機100の能力が低下した場合でも、運転台数を適正に制御できる。
また、条件2に示すように、負荷割合Lchが所定負荷β%(例えば、45%)以下の場合には、集中制御装置70は、吸収式冷凍機100をベース機(1号機)以外停止する。
【0035】
一方、条件3に示すように、負荷割合Lchが所定負荷α%(例えば、90%)以上で所定時間t2(例えば、5分)以上継続する場合、あるいは、高温再生器温度Thが所定温度Th1(例えば、150℃)以上で所定時間t3(例えば、5分)継続した場合には、集中制御装置70は、吸収式冷凍機100の運転台数を優先順位の高い方から1台増加し、その後所定時間t4(例えば、5分)待機する。ここで、高温再生器温度Thは、運転中の吸収式冷凍機100から受信した高温再生器温度から当該吸収式冷凍機100の容量設定を加味して算出した平均値である。
【0036】
また、条件4に示すように、条件3に関わらず、冷房時には冷温水出口温度Toutが所定温度Tout1(例えば、9℃)以上、暖房時には冷温水出口温度Toutが所定温度Tout2(例えば、53℃)以下で所定時間t5(例えば、10分)継続した場合、には、集中制御装置70は、吸収式冷凍機100の運転台数を優先順位の高い方から1台増加し、その後所定時間t5(例えば、30分)待機する。ここで、冷温水出口温度Toutは、運転中の吸収式冷凍機100から受信した冷温水出口温度から当該吸収式冷凍機100の容量設定を加味して算出した平均値である。
【0037】
なお、所定負荷α,β、能力割合E、所定時間t1〜t5、所定温度Th1,Tout1,Tout2は、集中制御装置70の盤面に設けてある操作スイッチにより可変可能である。また、所定負荷α,β、能力割合E、所定時間t1〜t5、所定温度Th1は、冷房運転と暖房運転で値を変えてもよい。さらに、所定温度Tout1,Tout2は、冷温水出口温度の設定温度(冷房時7℃、暖房時55℃)からの温度差を設定することで、設定されてもよい。所定負荷α,β、能力割合E、所定時間t1〜t5、所定温度Th1,Tout1,Tout2(或いは、冷温水出口温度の設定温度)は、集中制御装置70が備える上記記憶部に記憶される。
【0038】
図4は、吸収式システム200の台数制御の一例を示す説明図である。
図4の例では、はじめに吸収式冷凍機100が全数(5台)運転されている。負荷割合Lchが所定負荷α×能力割合E%以下になると(点P1)、集中制御装置70は、最も優先順位の低い吸収式冷凍機100(5号機(吸収式冷凍機100E))を停止する。所定時間t1経過しても、負荷割合Lchが所定負荷α×能力割合E%以下の場合には(点P2)、集中制御装置70は、次に優先順位の低い吸収式冷凍機100(4号機(吸収式冷凍機100D))を停止する。所定時間t1経過しても、負荷割合Lchが所定負荷α×能力割合E%以下の場合には(点P3)、集中制御装置70は、次に優先順位の低い吸収式冷凍機100(3号機(吸収式冷凍機100C))を停止する。
負荷割合Lchが所定負荷β%以下になると(点P4)、集中制御装置70は、吸収式冷凍機100のベース機(1号機(吸収式冷凍機100A))以外を停止する。
【0039】
負荷割合Lchが所定負荷α%以上で所定時間t2以上継続すると(点P5)、集中制御装置70は、停止中の吸収式冷凍機100のうち最も優先順位の高い吸収式冷凍機100(2号機(吸収式冷凍機100B))を運転する。所定時間t4経過しても、負荷割合Lchが所定負荷α%以上で所定時間t2以上継続する場合(点P6)、集中制御装置70は、次に優先順位の高い吸収式冷凍機100(3号機(吸収式冷凍機100C))を運転する。
【0040】
負荷割合Lchが所定負荷α×能力割合E%以下になると(点P7)、集中制御装置70は、運転中の吸収式冷凍機100のうち最も優先順位の低い吸収式冷凍機100(3号機(吸収式冷凍機100C))を停止する。所定時間t1経過しても、負荷割合Lchが所定負荷α×能力割合E%以下の場合には(点P8)、集中制御装置70は、次に優先順位の低い吸収式冷凍機100(2号機(吸収式冷凍機100B))を停止する。
【0041】
図5は、吸収式システム200の台数制御の他の例を示す説明図である。なお、図5において、点P1〜点P4の制御は、図4に示す制御と同一であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
高温再生器温度Thが所定温度Th1以上で所定時間t3時間継続すると(点P9)、集中制御装置70は、停止中の吸収式冷凍機100のうち最も優先順位の高い吸収式冷凍機100(2号機(吸収式冷凍機100B))を運転する。所定時間t4経過しても、高温再生器温度Thが所定温度Th1以上で所定時間t3時間継続する場合(点P10)、集中制御装置70は、次に優先順位の高い吸収式冷凍機100(3号機(吸収式冷凍機100C))を運転する。
【0042】
負荷割合Lchが所定負荷α×能力割合E%以下になると(点P11)、集中制御装置70は、運転中の吸収式冷凍機100のうち最も優先順位の低い吸収式冷凍機100(3号機(吸収式冷凍機100C))を停止する。所定時間t1経過しても、負荷割合Lchが所定負荷α×能力割合E%以下の場合には(点P12)、集中制御装置70は、次に優先順位の低い吸収式冷凍機100(2号機(吸収式冷凍機100B))を停止する。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態によれば、集中制御装置70は、吸収式冷凍機負荷を運転中の吸収式冷凍機100が備える蒸発器4の冷温水入口温度と冷温水出口温度の差、及び、当該冷温水の流量から算出し、この吸収式冷凍機負荷から吸収式システム負荷を算出し、この吸収式システム負荷に応じて吸収式冷凍機100の運転台数を制御する構成とした。この構成により、各吸収式冷凍機100において、冷温水入口温度が一定に保たれる冷温水変流量制御が行われている場合であっても、台数制御を行うことができるため、さらなる省エネルギー化を実現できる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、集中制御装置70は、100%負荷時の冷凍能力の割合に応じて吸収式冷凍機100の運転台数を制御するため、経年劣化等によって吸収式冷凍機100の能力が低下した場合でも、運転台数を適正に制御できる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、集中制御装置70は、吸収式システム負荷が所定時間所定負荷以上になった場合に、吸収式冷凍機100の運転台数を増加させる構成とする。この構成により、吸収式冷凍機100の運転/停止の切り替えが頻繁に起こることを防止でき、ひいては省エネルギー化を実現できる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、各吸収式冷凍機100は、再生器として高温再生器1及び低温再生器2を備え、集中制御装置70は、吸収式システム負荷が所定時間所定負荷以上になった場合に、或いは、吸収式冷凍機100の高温再生器温度が所定時間以上所定温度になった場合に、吸収式冷凍機100の運転台数を増加させる構成とする。この構成により、吸収式システム負荷に応じて吸収式冷凍機100の運転台数を増加させつつ、高温再生器温度が高い状態で吸収式冷凍機100が運転されることが防止できるので、吸収式冷凍機100を長寿命化できる。
【0047】
但し、上記実施の形態は本発明の一態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、上記実施の形態では、条件3において、負荷割合又は高温再生器温度の両方を判定し、いずれかの条件を満たす場合に台数制御を行ったが、負荷割合だけを判定してもよいし、高温再生器温度だけを判定してもよい。さらに、負荷割合又は高温再生器温度を判定する場合、負荷割合だけを判定する場合、高温再生器温度だけを判定する場合の設定を、集中制御装置の盤面に設けてある操作スイッチにより切り替え可能としてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、冷温水の流量を冷温水流量計で検出していたが、これに限定されず、例えば圧力計で計測してもよい。また、冷温水ポンプが所定の定格周波数(例えば、60Hz)で運転されたときの冷温水の流量を定格流量とし、定格流量とそのインバータから冷温水ポンプへと出力される運転周波数との比から、冷温水の流量を算出して求めてもよい。
また、上記実施の形態では、吸収式冷凍機の優先順位は固定されていたが、集中制御装置の盤面に設けてある操作スイッチにより入れ替え可能としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 高温再生器(再生器)
2 低温再生器(再生器)
3 凝縮器
4 蒸発器
5 吸収器
51 冷温水入口温度センサ
52 冷温水出口温度センサ
54 高温再生器温度センサ
55 冷温水流量計
70 集中制御装置
100,100A〜100E 吸収式冷凍機
200 吸収式システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生器、凝縮器、蒸発器及び吸収器を備えた複数の吸収式冷凍機と、これら複数の吸収式冷凍機を集中制御する集中制御装置とを備えた吸収式システムにおいて、
前記集中制御装置は、運転中の前記吸収式冷凍機の吸収式冷凍機負荷から吸収式システム負荷を算出し、この吸収式システム負荷に応じて前記吸収式冷凍機の運転台数を制御することを特徴とする吸収式システム。
【請求項2】
前記集中制御装置は、前記吸収式冷凍機負荷を当該吸収式冷凍機が備える蒸発器の冷温水入口温度と冷温水出口温度の差、及び、当該冷温水の流量から算出することを特徴とする請求項1に記載の吸収式システム。
【請求項3】
前記集中制御装置は、100%負荷時の冷凍能力の割合に応じて前記吸収式冷凍機の運転台数を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収式システム。
【請求項4】
前記集中制御装置は、前記吸収式システム負荷が所定時間所定負荷以上になった場合に、前記吸収式冷凍機の運転台数を増加させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の吸収式システム。
【請求項5】
各吸収式冷凍機は、前記再生器として高温再生器及び低温再生器を備え、
前記集中制御装置は、前記吸収式冷凍機の高温再生器温度が所定時間以上所定温度になった場合に、前記吸収式冷凍機の運転台数を増加させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の吸収式システム。
【請求項6】
各吸収式冷凍機は、再生器として高温再生器及び低温再生器を備え、
前記集中制御装置は、前記吸収式システム負荷が所定時間所定負荷以上になった場合に、或いは、前記吸収式冷凍機の高温再生器温度が所定時間以上所定温度になった場合に、前記吸収式冷凍機の運転台数を増加させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の吸収式システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−113497(P2013−113497A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260291(P2011−260291)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】