説明

吸収性物品

【課題】体液が表面で広がり難く、吸収体以外での体液の液残りを低減すると共に、体液の吸収体への移行時間を短くすることのできる吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の生理用ナプキン1は、表面シート2、裏面シート3、これらのシート2,3間に配された吸収体4及びセカンドシート5を備えている。表面シート2とセカンドシート5とは、部分的に固着されている。表面シート2は、線状のエンボス21によって区画化された区画領域22を有しており、水銀ポロシメーターによる孔径分布測定において、所定の要件を満たすシートである。セカンドシート5は、その構成繊維が合成繊維であり、その厚み及び液保持量が所定の要件を満たすシートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティーライナー等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
経血漏れが生じない優れた機能を有する生理用ナプキンとして、特許文献1には、吸収部の上面に、網目模様状に圧縮条溝を設けられたナプキンが記載されている。確かに、特許文献1に記載の生理用ナプキンは、圧縮条溝が網目模様状に設けられているので、経血が表面で広がり難く、経血漏れが生じ難いが、特許文献1に記載の生理用ナプキンには、所謂セカンドシートが配されていないため、生理用ナプキンの表面から瞬間的に経血を吸収することが難しい。
【0003】
例えば、特許文献2には、トップシートと吸収材芯との間に、レーヨンとポリエステル繊維とからなるスパンレース不織布シートである液体透過性拭取り獲得シートが配されている比較的薄い生理用ナプキンが記載されている。また、例えば、特許文献3には、液体透過性の上シートと、液体不透過性の後シートとの間に、上シート側に体捕捉分配層と後シート側に液体貯蔵層とからなる吸収体コアを配置した吸収性物品が記載されており、該体捕捉分配層が、木材パルプ繊維を繊維間化学補剛剤で補剛した親水性セルロース繊維でできたウェブであることが記載されている。
【0004】
確かに、特許文献2の生理用ナプキンは、所謂セカンドシートである液体透過性拭取り獲得シートが配されているので、体液を横方向に分散することができ、生理用ナプキンのトップシートから瞬間的に経血を吸収することができる。しかしながら、特許文献2の生理用ナプキンの有する液体透過性拭取り獲得シートは、半合成繊維であるレーヨンを含んでいるため、体液の液残りを生じ易く、液体透過性拭取り獲得シートから吸収材芯へ体液を移行するのが難しいので、体液を吸収材芯へ完全に移行させるのに時間がかかってしまう。
【0005】
また、確かに、特許文献3の吸収性物品は、所謂セカンドシートである体捕捉分配層が配されているので、体液を迅速に収集し、一時的に保持することができ、吸収性物品の上シートから瞬間的に体液を吸収することができる。しかしながら、特許文献3の吸収性物品の有する体捕捉分配層は、親水性セルロース繊維でできたウェブであるため、体液を保持してしまい、特許文献2の生理用ナプキンと同様に、体液の液残りを生じ易く、体捕捉分配層から液体貯蔵層へ体液を移行するのに時間がかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−109660号公報
【特許文献2】特開平2−11137号公報
【特許文献3】特開平5−503445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、体液が表面で広がり難く、吸収体以外での体液の液残りを低減すると共に、体液の吸収体への移行時間を短くすることのできる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、肌当接面側に配された表面シート、非肌当接面側に配された裏面シート、これらのシート間に配された吸収体、及び該吸収体と前記表面シートとの間に配されたセカンドシートを備えた吸収性物品であって、前記表面シートと前記セカンドシートとは、部分的に固着されており、前記表面シートは、線状のエンボスによって区画化された多数の区画領域を有しており、水銀ポロシメーターによる孔径1〜600μmの孔径分布測定において、孔径100μm以下の領域の細孔容量が全細孔容量の10%以下のシートであり、前記セカンドシートは、その構成繊維が合成繊維であり、その厚みが0.15〜0.4mmであり且つその液保持量が60g/m2以下のシートである吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収性物品によれば、体液が表面で広がり難く、吸収体以外での体液の液残りを低減すると共に、体液の吸収体への移行時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキンを表面シート側から見た平面図である。
【図2】図2は、図1に示す生理用ナプキンの有する表面シートの一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2に示す表面シートの肌当接面側の一部を拡大して示す平面図である。
【図4】図4は、図1のX−X線断面図である。
【図5】図5は、図4における要部を拡大した要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。
本発明の一実施形態の吸収性物品は、生理用ナプキン1であり、図1,図4に示すように、肌当接面側に配された表面シート2、非肌当接面側に配された裏面シート3、表面シート2と裏面シート3との間に配された吸収体4、及び吸収体4と表面シート2との間に配されたセカンドシート5を備えている。
尚、本明細書において、「肌当接面側」とは、生理用ナプキン1の構成部材の表裏面側のうち、着用時に着用者の肌側に配される面側であり、また、「非肌当接面側」とは、着用時に着用者の肌側とは反対側に配される面側である。図中に示す「Y方向」とは、生理用ナプキン1の長手方向に沿う方向であり、「X方向」とは、Y方向に垂直な方向であり、生理用ナプキン1の幅方向に沿う方向である。
【0012】
図1,図4に示すように、本実施形態においては、装着時の前後方向と同方向に長い矩形状の吸収体4と、吸収体4と略同形同大のセカンドシート5とを備えている。吸収体4の肌当接面側にセカンドシート5が配されている。表面シート2は、図1,図4に示すように、矩形状のセカンドシート5の肌当接面側の全域を被覆しており、吸収体4及びセカンドシート5の長手方向(Y方向)の両端及び両側それぞれから外方に延出した部分を有している。裏面シート3は、図1,図4に示すように、吸収体4の非肌当接面側の全域を被覆しており、吸収体4及びセカンドシート5の長手方向(Y方向)の両端及び両側それぞれから外方に延出した部分を有している。表面シート2及び裏面シート3は、図1に示すように、吸収体4及びセカンドシート5の長手方向(Y方向)の両端それぞれから外方に延出した部分において、融着(ヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス)され、図4に示すように、吸収体4及びセカンドシート5の長手方向(Y方向)の両側それぞれから外方に延出した部分において、接着剤により固定されている。このように、吸収体4及びセカンドシート5は、表面シート2と裏面シート3とによって挟持されている。
【0013】
生理用ナプキン1の有する表面シート2は、図4に示すように、線状のエンボス21によって区画化された多数の区画領域22を有している。このように表面シート2が区画領域22を有しているので、一の区画領域22内に吸収された着用者の体液が、その区画領域22を越えて隣接する別の区画領域22に拡散し難い。ここで、「線状のエンボス」とは、そのエンボス形状が平面視して直線に限られず曲線を含むものであり、エンボス形状は、連続線であって、破線等の間欠的な線は含まないものである。但し、間欠的な線であっても、1mm未満の間隔であれば、実質的に連続線と同様の作用を有するため含むものとする。区画化された区画領域22の形状は菱形の格子柄以外に、四角形や曲線で区画化されてもかまわない。格子柄が特に好ましい。
【0014】
本実施形態の表面シート2は、図2に示すように、線状のエンボス21として、互いに平行に且つ所定の間隔で形成された多数本の第1線状のエンボス21aと、互いに平行に且つ所定の間隔で形成された多数本の第2線状のエンボス21bとを有しており、第1線状のエンボス21aと第2線状のエンボス21bとが角度αをなして互いに交差している。第1線状のエンボス21aの溝幅W1と第2線状のエンボス21bの溝幅は同じであり、隣り合う第1線状のエンボス21a同士の間隔W2と隣り合う第2線状のエンボス21b同士の間隔も同じである。
【0015】
図3に示すように、第1線状のエンボス21aの溝幅W1は、該線状のエンボスにおいて構成繊維を確実に固定する観点から0.1〜1.5mm、特に0.3〜0.9mmであることが好ましい。また、第1線状のエンボス21a同士の間隔W2は、液透過と液吸い上げの両立の観点から2〜14mm、特に2〜8mmであることが好ましい。溝幅W1及び間隔W2は、線に対して直行する方向に計測される。線の幅は交点部分から変化があっても良いが、W1は交点と交点の中点で計測される。W2は区画領域22の対辺同士を結ぶ線で計測される。
【0016】
本実施形態の表面シート2は、生理用ナプキン1に組み込まれたときに着用者の肌側に向けられる非肌当接面側から熱エンボス加工を施すことによって線状のエンボス21を形成しており、線状のエンボス21を形成した部分が凹部となっている。線状のエンボス21の部位においては、後述する構成繊維が厚み方向に熱融着されている。
線状のエンボス21は、第1線状のエンボス21aと第2線状のエンボス21bとによって格子状に形成されているため、表面シート2には、線状のエンボス21によって区画化された区画領域22,22・・が形成されている。各区画領域22は、それぞれの周囲を線状のエンボス21に囲まれた領域であり、平面視して菱形形状である。各区画領域22の中央部は、該区画領域22を囲む線状のエンボス21(凹部)に対して相対的に隆起して凸部となっている。
【0017】
本発明の表面シート2としては、高い透過性を有するシートが用いられる。シート中の繊維分布がもたらす空隙、特に細孔領域が少ない場合に良好な液透過性を示すことがわかっており、具体的には、水銀ポロシメーターによる細孔径1〜600μmの細孔径分布測定において、細孔径100μm以下の領域の細孔容量が全細孔容量の10%以下のシートであり、前記細孔容量が前記全細孔容量の8%以下であるシートであることが好ましく、6%以下であるシートであることが更に好ましい。このように、細孔径100μm以下の領域の細孔容量の下限は、特に制限されるものではなく、小さければ小さいほど好ましい。
【0018】
表面シート2の細孔径分布は、水銀圧入法(JIS R 1655)に準拠して、水銀ポロシメーター(島津製作所(株))を用いて測定される。水銀圧入法は、表面シート2の構成繊維同士の間(細孔)の大きさやその容積を測定することによって、表面シート2の物理的形状の情報を得るための手法である。水銀圧入法の原理は、水銀に圧力を加えて測定対象物の細孔中へ圧入し、その時に加えた圧力と、押し込まれた(浸入した)水銀容積の関係を測定することにある。以下、水銀ポロシメーターを用いる表面シート2の細孔径分布の測定方法について説明する。
【0019】
〔表面シートの細孔径分布の測定方法〕
先ず、生理用ナプキン1(吸収性物品)から表面シート2を取り出す。次に、取り出した表面シート2を24mm×15mmにカットする。計3枚カットし、それらのカットサンプルを、水銀ポロシメーター(島津製作所(株))のサンプルセルに、互いに重なり合わないようにしてセットして、細孔径1〜600μmの細孔径分布を測定する。得られる表面シート2の細孔分布曲線(微分・積分曲線)に基づいて、細孔径1〜600μmに亘る細孔容量のトータルを全細孔容量とし、細孔径100μm以下の領域の細孔容量の前記全細孔容量に対する割合を求める。更に、得られる表面シート2の細孔分布曲線(微分・積分曲線)に基づいて、細孔径1〜100μmの領域の細孔容量の前記全細孔容量に対する割合を求める。
【0020】
上述したような、水銀ポロシメーターによる細孔径1〜600μmの細孔径分布測定において、細孔径100μm以下の領域の細孔容量が前記全細孔容量の10%以下である表面シート2としては、4.4dtex以上の非熱伸長繊維のみで構成されるエアースルー不織布、3.3dtex以上の熱伸長繊維で構成されるエアースルー不織布、3.3dtex以上の非熱伸長繊維及び熱伸長繊維で構成されるエアースルー不織布が挙げられ、吸収性と風合いの両立の観点から、3.3dtex以上の非熱伸長繊維及び熱伸長繊維で構成されるエアースルー不織布が好ましい。このような不織布は、さらには線状エンボスにより区画化されているため、液が表面シートとしての不織布内を拡散しようとしても、線状エンボスのところで拡散が抑制されるため、いっそう下層への液透過性が発揮されやすくなる。
【0021】
表面シート2が熱伸長繊維を含んだエアスルー不織布である場合、表面シート2は、具体的には、区画領域22内において、加熱によって該熱伸張繊維の長さが伸びており、区画領域22内において、交差した該熱伸張繊維同士の互いの交点が熱融着によって接合された不織布のことを示す。このように、熱伸長繊維は、熱融着によって接合される熱融着性繊維であり、該熱融着は、例えば、エアスルー方式の熱融着である。熱伸長繊維としての熱融着性繊維は、熱融着成分と該熱融着成分より融点の高い高融点成分よりなる熱伸長性複合繊維であることが好ましく、熱融着成分を鞘、高融点成分を芯とする芯鞘型の熱伸長性複合繊維であることが更に好ましい。熱融着成分及び高融点成分は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱融着成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリペンテン−1、又はこれらのランダム若しくはブロック共重合体等が挙げられる。高融点成分としては、例えば、ポリエチレンテレフテレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン−6やナイロン−66などのポリアミド等が挙げられる。熱融着成分と高融点成分の好ましい組み合わせとしては、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンとポリプロピレン、低融点のポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンとポリブチレンテレフタレート等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。芯鞘型複合繊維は、同芯タイプの他、偏芯タイプのもの、更には繊維の全周の一部に芯成分が露出しているもの等であっても良い。
【0022】
上記熱伸長性複合繊維は、加熱によってその長さが伸びる繊維であり、温度が90℃以上、好ましくは、110℃〜130℃で伸張する繊維である。熱伸長性複合繊維は、表面シート2の製造時に伸長させることにより、表面シート2に起伏の大きい凹凸を形成することができる。従って、表面シート2として完成した後においては、その多くが伸長した状態となっており、その状態から更に伸長される繊維という意味ではない。また、伸長後の熱伸長性複合繊維も熱伸長性複合繊維に含める。
【0023】
上記熱伸長性複合繊維としては、例えば加熱により樹脂の結晶状態が変化して伸びたり、あるいは捲縮加工が施された繊維であって捲縮が解除されて見かけの長さが伸びたりする繊維等が挙げられる。熱伸長性複合繊維としては、熱融着成分の軟化点より10℃高く、さらに融点より10℃低い温度での伸張率が5〜40%、特に10〜30%であることが、繊維並列起立部や凹凸形状を顕著に形成させる点から好ましい。熱伸長性複合繊維の好ましい例は、特開2005−350836号公報の段落〔0024〕〜〔0040〕に記載されている。
【0024】
表面シート2が熱伸長繊維(熱伸長性複合繊維)を含んだエアスルー不織布である場合の熱伸長性複合繊維の割合は、風合いと隠蔽性と高い透過性を発揮する観点から、表面シート2の構成繊維中、40〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることが更に好ましく、95〜100質量%であることが特に好ましい。熱伸長性複合繊維の以外に配合する繊維としては、熱可塑性樹脂からなる繊維(非複合繊維)等が挙げられる。
表面シート2が熱伸長繊維(熱伸長性複合繊維)を含んだエアスルー不織布である場合には、その坪量は、20〜50g/m2であることが好ましい。
【0025】
表面シート2が4.4dtex以上(好ましくは4.4〜10dtex)の熱融着繊維(非熱伸長繊維)のみで構成されるエアスルー不織布である場合には、合成繊維である、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフテレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン−6やナイロン−66などのポリアミド等の樹脂からなる繊維を単独で、又は2種以上を混合して形成することができる。また、その坪量は、20〜50g/m2であることが好ましい。
【0026】
生理用ナプキン1の有するセカンドシート5は、その構成繊維が合成繊維である。このようにセカンドシート5が合成繊維で構成されているため、拡散性を低く抑えることができる。また、セカンドシート5を構成する合成繊維は、拡散性を低く抑えると共に、機械適合性の観点から、弱親水性である繊維であることが好ましい。セカンドシート5を構成する合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフテレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン−6やナイロン−66などのポリアミド等の樹脂からなる繊維を単独で、又は2種以上を混合して形成することができる。尚、ここで言う混合とは、融点の異なる2種以上の樹脂を、芯鞘型複合繊維やサイドバイサイド型複合繊維にして用いることを含む。
【0027】
セカンドシート5は、高い透過性と適度な拡散性を有するシートであるため、その厚みが0.15〜0.4mmであるが、体液の保持容量を低く抑え、高い透過性を発揮する観点から、0.15〜0.4mmであることが好ましく、0.2〜0.3mmであることが更に好ましい。厚みは、装着状態を考慮した観点から、0.5kPa荷重下において測定する。
【0028】
また、セカンドシート5は、高い透過性と適度な拡散性を有するシートであるため、その液保持量が60g/m2以下のシートであるが、高い透過性を発揮する観点から、35g/m2以下のシートであることが好ましく、25g/m2〜5g/m2のシートであることが更に好ましい。このように、セカンドシート5の液保持量の下限は低い程好ましい。セカンドシート5の液保持量は、以下の測定方法により測定する。
【0029】
〔液保持量の測定方法〕
生理用ナプキン1(吸収性物品)から、セカンドシート5を取り出す。次に、取り出したセカンドシート5を5cm×5cm四方にカットする。この初期のカットサンプルの質量を量り、該カットサンプルを、蒸留水500mLの入ったビーカーの中に入れ、1分間放置する。その後、カットサンプルを取り出し、該カットサンプルを、竿に吊した状態で10分間放置する。その後、カットサンプルを10分間、遠心脱水(800rpm)した後に、その質量を測定し、以下に示す式から液保持量を求める。
液保持量(g/m2)={遠心脱水後のカットサンプルの質量(g)−初期のカットサンプルの質量(g)}/初期のカットサンプルの面積(m2
【0030】
厚みが0.15〜0.4μmであり、液保持量が60g/m2以下との要件を満たすセカンドシート5としては、交差した合成繊維同士の互いの交点がエアスルー方式の熱融着によって接合されているエアスルー不織布を好ましく用いることができる。尚、エアスルー不織布以外にも、厚みの要件と液保持量の要件とを満たせば、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等であってもよい。
セカンドシート5がエアスルー不織布である場合には、その坪量は、15〜40g/m2であることが好ましい。
【0031】
生理用ナプキン1の表面シート2とセカンドシート5とは、部分的に固着されている。このことにより、表面シートの浮きを抑制し、表面シート2とセカンドシート5の密着性が向上し、液が移行しやすくなる。同様の理由で、セカンドシート5と吸収体4との間も、後述するように、部分的に固着されていることが好ましい。部分的に固着とは、点や線からなる固着部を有し、該固着部がシート面全体に分布しており、均一に分布する必要はないが、固着するシート間を全面固着するのではないことを意味する。該固着部の面積は被固着シート全面積の10〜60%程度が好ましい。具体的には、接着剤を間欠的に塗布したり、間欠的にヒートシールを施したりして、表面シート2とセカンドシート5とを部分的に固着している。接着剤を間欠的に塗布する場合には、接着剤を、公知の手段、例えば、スロットコートガンを用いて間欠的に塗布したり、スパイラルスプレーガンを用いて螺旋状に塗布したり、スプレーガンを用いて間欠的に霧状に塗布したり、ドットガンを用いてドット状に塗布したりして、表面シート2とセカンドシート5との間に体液の透過性を維持した状態で、表面シート2とセカンドシート5とを部分的に接着する。塗布する接着剤としては、例えば、ホットメルト接着剤が好ましく用いられる。
【0032】
ホットメルト接着剤としては、スチレン系、オレフィン系等が挙げられる。スチレン系ホットメルト接着剤としては、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、SBSの水素添加物であるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、及びこれらの2種以上をブレンドしたブレンド系ホットメルト接着剤を使用することができる。これらの中でも、タック力と凝集力のバランスが取り易い観点から、特にSISとSBSとのブレンド系ホットメルト接着剤、又はSISとSEBSのブレンド系ホットメルト接着剤が、本発明で好ましく用いられる。ホットメルト接着剤の塗布量は、3〜10g/m2であることが好ましい。
【0033】
間欠的にヒートシールを施す場合には、例えば、複数個の凸部を有する熱エンボスロールと平坦ロールとを用いて、表面シート2とセカンドシート5との積層シートを熱エンボスロールと平坦ロールとの間に搬送し、エンボスすることにより、表面シート2とセカンドシート5とを部分的に融着する。融着することにより形成される複数個の融着点同士の間隔は、表面シート2とセカンドシート5との間に適度な密着性を持たせて体液の透過性を維持する観点から、5〜15mmであることが好ましい。
【0034】
本実施形態の吸収性物品は、生理用ナプキン1であり、製品自体の薄さが求められるため、吸収体4は、多皺状の吸収シート40から形成されている。具体的には、吸収シート40は、その表面が多皺状であり、高吸収性ポリマーを有する吸収シートである。吸収シート40としては、例えば、特開平8−246395号公報記載の方法にて製造された吸収シート、気流に乗せて供給した粉砕パルプ及び吸水性ポリマーを堆積させた後、接着剤(例えば酢酸ビニル系の接着剤、PVA等)で固めた乾式シート、紙や不織布の間にホットメルト接着剤等を塗布した後高吸収性ポリマーを散布して得られた吸収シート、スパンボンド又はメルトブロー不織布製造工程中に高吸収性ポリマーを配合して得られた吸収シート等を用いることができる。これらの吸収シートは、一枚を所定形状に裁断して吸収シートとして用いることができる。また、吸収シートを複数枚貼り合わせて多層シートとするか又は一枚の吸収シートを折り畳むと共にそれらの層間を接着して多層シートとし、そのようにして得た多層シートを、吸収シートとして用いることもできる。尚、本実施形態の生理用ナプキン1には、通常、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられる、吸収性ポリマーの粒子及び繊維材料から構成された吸収コアをティッシュペーパによって被覆されている吸収体を用いることもできる。
【0035】
本実施形態の生理用ナプキン1の有する吸収シート40は、吸収性を高くし、厚みを薄くする観点から、特開平8−246395号公報記載の公知の薄くて吸収性の良い吸収シートを使用することが出来る。好ましくは、得られた吸収シートを湿潤状態か、乾燥している場合は、再度湿潤させて、加熱された円筒状の所謂ヤンキードライヤーのロール表面に湿潤状態の吸収シートを押し付けて付着させ、乾燥させた後、ブレードを介して、乾燥した吸収シートをヤンキードライヤーから引き剥がすクレープ処理を施して形成されている。このようにクレープ処理を施すことにより、吸収シート表面には目視できる程度の皺が多数形成され、吸収シート40の表面が多皺状となる。皺の間隔は、0.2mm〜2mmが好ましい。皺のある吸収シート40の表面(肌当接面40a)とセカンドシート5とが積層されることで、表面シート2を素早くスルーした体液がセカンドシート5で拡散されながら、吸収性シート40に液移行する。吸収シート40とセカンドシート5と間には、皺による僅かな空間ができることで、密着している場合よりもセカンドシート5での体液拡散が促進されるのではないかと考えられる。その結果、セカンドシート5で拡散した体液は、吸収シート40の比較的多くの面積で吸収できると考えられる。尚、本実施形態の吸収シート40はクレープ処理を施して形成されているが、クレープ処理以外の方法で乾燥していてもよい。
【0036】
本実施形態の生理用ナプキン1は、表面シート2及びセカンドシート5を透過した体液が吸収体4に吸収され易くする観点から、生理用ナプキン1を横断面視して、表面シート2の区画領域22の幅方向における平均間隔が、吸収シート40の肌当接面40aにおける構成繊維の繊維間距離の20〜180倍であることが好ましく、25〜160倍であることが更に好ましい。
【0037】
詳述すると、図4に示す生理用ナプキン1の横断面図は、図1に示すX1−X1線での断面図を示し、図5に示す生理用ナプキン1の横断面図は、要部拡大断面図を示している。ここで、X1−X1線は、生理用ナプキン1の中心を通るX方向に延びる直線である。表面シート2の区画領域22の幅方向における平均間隔は、表面シート2の横断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、区画領域22を形成する第1線状のエンボス21aと第2線状のエンボス21bとの間、更に具体的には、第1線状のエンボス21aの溝におけるX方向中心点と第2線状のエンボス21bの溝におけるX方向中心点との間を測定することで求められる。測定箇所は10箇所とし、その平均値をもって区画領域22の幅方向(X方向)における平均間隔とする。また、吸収シート40の肌当接面40aにおける構成繊維の繊維間距離は、肌当接面40aを、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することで測定される。測定箇所は10箇所とし、その平均値をもって肌当接面40aにおける構成繊維の繊維間距離とする。
【0038】
本実施形態の生理用ナプキン1は、図1,図2に示すように、表面シート2、セカンドシート5及び吸収体4を一体的に圧縮して形成される防漏溝6を、表面シート2の表面に、生理用ナプキン1の長手方向(Y方向)の両側部1b,1bに沿って備えている。本実施形態においては、図1に示すように、装着者の体液排泄部に当接される排泄部領域Aにおける表面シート2の両側部に、平面視してX方向の外方に凸状に湾曲する一対の防漏溝6A,6Aが形成されており、排泄部領域Aの前方に延在する前方領域B及び排泄部領域Aの後方に延在する後方領域Cそれぞれに、平面視してX方向の外方に凸状に湾曲する一対の防漏溝6B,6B及び一対の防漏溝6C,6Cが形成されている。本実施形態の防漏溝6は、図1に示すように、防漏溝6A、防漏溝6B及び防漏溝6Cそれぞれが繋がって環状の全周溝を形成している。
【0039】
生理用ナプキン1は、上述したように、表面シート2とセカンドシート5とが部分的に固着されており、本実施形態においては、図4に示すように、セカンドシート5と吸収体4とが、防漏溝6により、部分的に固着されている。即ち、セカンドシート5と吸収体4とは、防漏溝6を除き固着されていない。詳述すると、表面シート2とセカンドシート5とは、接着剤を間欠的に塗布したり、間欠的にヒートシールを施したりして、部分的に固着されており、特に、表面シート2の区画領域22を形成する線状のエンボス21(凹部)の位置で、表面シート2とセカンドシート5とが間欠的に固着されている。また、上述したように、吸収体4の肌当接面40aには、クレープ処理が施されているため、多皺状に凹凸形状が形成されている。従って、セカンドシート5と吸収体4とは、防漏溝6以外の領域においては、図5に示すように、クレープ処理が施されて形成された吸収シート40の肌当接面40aの凹凸形状とセカンドシート5との間には、空間が形成されている。
【0040】
本実施形態の生理用ナプキン1の形成材料について説明する。
表面シート2、裏面シート3としては、通常、生理用ナプキン、パンティーライナー等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、親水性且つ液透過性の不織布や、開孔フィルム、これらの積層体等を用いることができ、裏面シート3としては、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。
【0041】
防漏溝6を形成する加工法は、エンボス加工、ヒートエンボス加工、超音波エンボス加工、それらの組み合わせの加工法等が挙げられる。
【0042】
上述した本発明の実施形態である生理用ナプキン1を使用した際の作用効果について説明する。
本実施形態の生理用ナプキン1は、図1,図4に示すように、線状のエンボス21によって区画化された多数の区画領域22を有するため拡散し難く、且つ水銀ポロシメーターによる細孔径分布測定において、所定の要件を満たす高い透過性を有する表面シート2と、合成繊維で構成されているため低い拡散性であり、且つ厚み及び液保持量が所定の要件を満たす高い透過性のセカンドシート5とを備えている。本実施形態の生理用ナプキン1は、前記のように、拡散性が低く、透過性の高い表面シート2とセカンドシート5とが、部分的に固着されて形成されているので、生理用ナプキン1の使用時に着用者から排泄された体液が、表面シート2の表面で広がり難く、吸収体4以外の、表面シート2やセカンドシート5で体液の液残りを低減すると共に、体液の吸収体4への移行時間を短くすることができる。
【0043】
また、本実施形態の生理用ナプキン1は、図5に示すように、クレープ処理の施された吸収シート40を備え、セカンドシート5と吸収シート40とは、防漏溝6以外の部位においては固着されていないため、吸収シート40の肌当接面40aの凹凸形状とセカンドシート5との間には空間が形成されている。従って、表面シート2及びセカンドシート5を透過した体液がセカンドシート5と吸収シート40との間で拡散し易いので、多量に排泄された体液を表面シート2の表面から瞬間的に移行することができ、移行拡散した体液を吸収シート40の吸収面積を有効に活用しながら吸収することができる。
【0044】
本実施形態の生理用ナプキン1は、吸収性物品(生理用ナプキン1)の状態での液拡散性の測定において、吸収体4の液拡散面積が表面シート2の液拡散面積の1.6倍以上であることが好ましく、2倍以上であることが好ましい。液拡散性の指標である液拡散面積は、以下の測定方法により測定する。
【0045】
〔液拡散性の測定方法〕
測定は、20℃、65%RH環境下において、1日以上放置した吸収性物品(生理用ナプキン1)を用いて、この温度及び湿度条件下にて行う。
生理用ナプキン1を水平に置き、その上にアクリル製のプレート注入器(直径10mmの孔を持つ)を置き、5g/cm2の荷重をかけて、馬血(日本バイオテスト(株)製)を3g滴下した後、更に、3分後同位置から馬血(日本バイオテスト(株)製)を3g滴下した直後の表面シート2での拡散面積を測定する。次に、生理用ナプキン1から表面シート2及びセカンドシート5を素早く取り除き、吸収体4の拡散面積を測定する。それらの測定には、各種カメラ(撮影データが電子化されるものが好ましい)によって、滴下直後の拡散状態を記録し、その拡散の輪郭をマーキングし、マーキングした輪郭から画像解析装置(NEXUS製:NEW QUBE Ver.4.20)を使用してそれらの拡散面積を求める。
【0046】
本発明の吸収性物品は、上述の実施態様の生理用ナプキンに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
【0047】
例えば、本実施態様の生理用ナプキン1においては、図1,図4に示すように、防漏溝6を備えているが、備えていなくてもよい。防漏溝6を備えていない場合、セカンドシート5と吸収体4とは、表面シート2とセカンドシート5とを部分的に固着する方法と同じようにして、接着剤や熱融着により部分的に固着されていることが好ましい。
【0048】
本発明の吸収性物品は、上述の実施態様の生理用ナプキンの他、パンティーライナー、失禁パッド、使い捨ておむつ等であってもよい。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の吸収性物品を、実施例を用いて更に説明するが、本発明は、かかる実施例によって何ら制限されるものではない。
〔実施例1〕
図1に示す生理用ナプキンを作製し、これを実施例1のサンプルとした。用いた材料は、市販の生理用ナプキン(花王株式会社製 ロリエ スーパースリムガード)を利用した。但し、この生理用ナプキンの表面シートと、該表面シート及び吸収体の間にあるセカンドシートとは利用せず、その代わりに、以下のようにして作製した表面シート及びセカンドシートを用いて、実施例1の生理用ナプキンを得た。
【0050】
(表面シートの作製)
繊維径4.0dtex伸長率6%の芯鞘型の熱伸長性複合繊維(芯がポリプロピレン、鞘がポリエチレン)と、3.3dtexの非伸長の芯鞘型複合繊維(芯がポリエチレンテレフタレート、鞘がポリエチレン)を50wt%ずつの比率でカード機に通してウェブとし、該ウエブを、ヒートエンボス装置に導入して、該ウエブに線状のエンボス21(第1線状のエンボス21a及び第2線状のエンボス21b)を複数本形成した。次いで、そのウエブを、熱風吹き付け装置に導入し、エアスルー加工による熱風処理を行い、線状のエンボス21によって区画化された区画領域22を有する表面シートを得た。得られた表面シートの線状のエンボス21の形成パターンは、図3に示すパターンであり、第1及び第2線状のエンボス21a,21bそれぞれの幅W1は0.5mm、第1線状のエンボス21aどうし間の間隔及び第2線状のエンボス21bどうし間の間隔W2は6mm、第1線状のエンボス21aと第2線状のエンボス21bとのなす角αは56°であった。作製された表面シートの細孔径分布を上述した〔表面シートの細孔径分布の測定方法〕に基づき測定すると、細孔径100μm以下の領域の細孔容量が全細孔容量の8%であった。尚、得られた表面シートの坪量は25g/m2であった。
【0051】
(セカンドシートの作製)
繊維径2.2dtexのポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの複合樹脂からなる合成繊維をカード機に通してウェブとし、該ウエブを、熱風吹き付け装置に導入し、エアスルー加工による熱風処理を行い、その後ロールエンボスしてセカンドシートを得た。得られたセカンドシートは、その厚みが0.2mmであり、その液保持量が26g/m2であった。また、得られたセカンドシートの坪量は25g/m2であった。
【0052】
作製された表面シートと作製されたセカンドシートとの間には、SEBS系のホットメルト接着剤を塗布し、作製された表面シートと作製されたセカンドシートとを部分的に固着した。ホットメルト接着剤の塗布量は5g/m2であった。
【0053】
〔実施例2〕
上述した実施例1において用いる表面シートを、以下のようにして作製した表面シートに変更し、また、吸収シートは、市販のナプキン(花王株式会社製 ロリエ スーパースリムガード)使用の吸収シートを湿潤状態でクレープ処理したものであって、目視で1mm間隔の皺が確認できるものを使用した以外は、上述した実施例1と同様にして実施例2の生理用ナプキンを得た。
【0054】
(実施例2の生理用ナプキンに用いる表面シートの作製)
繊維径4.4dtexのポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの複合樹脂からなる合成繊維をカード機に通してウェブとし、該ウエブを、熱風吹き付け装置に導入し、エアスルー加工による熱風処理を行い、表面シートを得た。得られた表面シートに形成する線状のエンボス21のパターンは、実施例1の生理用ナプキンに用いる表面シートのパターンと同じであった。作製された表面シートの細孔径分布を上述した〔表面シートの細孔径分布の測定方法〕に基づき測定すると、細孔径100μm以下の領域の細孔容量が全細孔容量の5%であった。尚、得られた表面シートの坪量は25g/m2であった。
【0055】
〔比較例1〕
上述した実施例1において用いる表面シートを、以下のようにして作製した表面シートに変更する以外は、上述した実施例1と同様にして比較例1の生理用ナプキンを得た。
【0056】
(比較例1の生理用ナプキンに用いる表面シートの作製)
繊維径2.2dtexのポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの複合樹脂からなる合成繊維をカード機に通してウェブとし、該ウエブを、熱風吹き付け装置に導入し、エアスルー加工による熱風処理を行い、表面シートを得た。得られた表面シートには、線状のエンボス21を形成せず、その代わりに、複数個の立体開孔を形成した。立体開孔の開孔面積率は6%であり、立体開孔の形成ピッチは2mmであった。作製された表面シートの細孔径分布を上述した〔表面シートの細孔径分布の測定方法〕に基づき測定すると、細孔径100μm以下の領域の細孔容量が全細孔容量の35%であった。尚、得られた表面シートの坪量は25g/m2であった。
【0057】
〔比較例2〕
上述した実施例1において用いる表面シートを、坪量25g/m2から坪量30g/m2の表面シートに変更し、実施例1において用いたセカンドシートを用いない以外は、上述した実施例1と同様にして比較例2の生理用ナプキンを得た。作製された表面シートの細孔径分布を上述した〔表面シートの細孔径分布の測定方法〕に基づき測定すると、細孔径100μm以下の領域の細孔容量が全細孔容量の8%であった。
【0058】
〔評価〕
各生理用ナプキンを用いて下記の評価を行い、その結果を表1に示した。
表面シート及び吸収体の拡散面積を、上述した〔液拡散性の測定方法〕に基づき測定した。
【0059】
〔表面シートの液残り量〕
測定は、20℃、65%RH環境下において、1日以上放置した吸収性物品(生理用ナプキン1)を用いて、この温度及び湿度条件下にて行う。
生理用ナプキン1を水平に置き、その上にアクリル製のプレート注入器(直径10mmの孔を持つ)を置き、5g/cm2の荷重をかけて、脱繊維馬血(日本バイオテスト(株)製)を3g滴下した後、更に、3分後同位置から脱繊維馬血(日本バイオテスト(株)製)を3g滴下した直後に、表面シートを生理用ナプキンから取り出し、注入前後の表面シートの重さを測定して、シート中に残存した脱繊維馬血の重量を測定して表面シートの液残り量とした。
【0060】
〔体液の吸収時間〕
測定は、20℃、65%RH環境下において、1日以上放置した吸収性物品(生理用ナプキン1)を用いて、この温度及び湿度条件下にて行う。
生理用ナプキン1を水平に置き、その上にアクリル製のプレート注入器(直径10mmの孔を持つ)を置き、5g/cm2の荷重をかけて、馬血(日本バイオテスト(株)製)を3g滴下した後、更に、3分後同位置から馬血(日本バイオテスト(株)製)を3g滴下し、目視にて、表面シートから吸収体へ馬血が完全に移行するまでの時間を測定して生理用ナプキンの体液の吸収時間とした。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示す結果から、実施例1及び実施例2のサンプルは、比較例1及び比較例2のサンプルに比べ、表面シートの拡散面積が吸収体の拡散面積よりも狭く、表面シートの液残り量が少ないことが判った。また、実施例1及び実施例2のサンプルは、比較例1及び比較例2のサンプルに比べ、体液の吸収時間も短いことが判った。
【符号の説明】
【0063】
1 生理用ナプキン
1b 生理用ナプキンの側部
2 表面シート
21 線状のエンボス
21a 第1線状のエンボス,21b 第2線状のエンボス
22 区画領域
3 裏面シート
4 吸収体
40 吸収シート
40a 吸収シートの肌当接面
5 セカンドシート
6 防漏溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側に配された表面シート、非肌当接面側に配された裏面シート、これらのシート間に配された吸収体、及び該吸収体と前記表面シートとの間に配されたセカンドシートを備えた吸収性物品であって、
前記表面シートと前記セカンドシートとは、部分的に固着されており、
前記表面シートは、線状のエンボスによって区画化された多数の区画領域を有しており、水銀ポロシメーターによる孔径1〜600μmの孔径分布測定において、孔径100μm以下の領域の細孔容量が全細孔容量の10%以下のシートであり、
前記セカンドシートは、その構成繊維が合成繊維であり、その厚みが0.15〜0.4mmであり且つその液保持量が60g/m2以下のシートである吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体は多皺状の吸収シートであり、該吸収シートと前記セカンドシートとが部分的に固着されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記表面シートは、その構成繊維が熱伸長繊維を含んでおり、
前記区画領域内において、前記熱伸長繊維は加熱によって該熱伸張繊維の長さが伸びており、交差した該熱伸張繊維同士の互いの交点が熱融着によって接合されている請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収性物品の状態での液拡散性の測定において、前記吸収体の液拡散面積が前記表面シートの液拡散面積の1.6倍以上である請求項1〜3の何れかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−255023(P2011−255023A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132804(P2010−132804)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】