説明

吸引カテーテル洗浄容器

【課題】 救急現場において吸引チップを濡らすための水と、洗浄のための水とを分離して使用でき、さらに、非作業時の吸引カテーテルを保存しておくことができる容器を提供することを課題とする。
【解決手段】 吸引カテーテル洗浄容器として、有底筒体からなる本体部と、本体部内底面から立設される筒体からなる第1槽と、前記第1槽内に貯められる第1液と、本体部内の前記第1槽外部に形成される第2槽に貯められる第2液と、本体部および第1槽の上面を封止する蓋体を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は救急現場において吸引カテーテルを洗浄等するための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
救急災害現場においては、迅速かつ正確な処置を行うことが極めて重要である。このため、医師・救急隊員が行っている傷病者の気管内、口腔内又は鼻腔内の嘔吐物、粘液及び血液等の吸引に使用する吸引カテーテルの準備に際しても一刻を争う場合が多く、一連の流れが清潔でなおかつ迅速に行われなければならない。救急現場における吸引カテーテルの使用では、吸引チューブが詰まり吸引が困難になった場合、容器に貯めた水を吸引しカテーテル内腔を洗浄した後に再吸引したり、吸引チップの先端で気道粘膜を損傷させないように水を吸引し先端をしっかりと濡らす作業を行う等、作業中に水が必要となる。このために、従来は、吸引カテーテルとともに水の入ったボトルを使用し、これを用いて作業を行っていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、水の入ったボトルでは分離して水を使用することができないので、吸引チップの先端で気道粘膜を損傷させないように水を吸引し先端を濡らす作業にだけ使用されることが多い。
また、吸引チップ及び吸引チューブは非作業時においては、床面に接触させないようにして清潔に操作する必要があるが、従来は、そのための道具などがなく作業に支障をきたしていた。このような場合に吸引チップ及び吸引チューブを洗浄水につけておくことができれば、そのまま作業に取り掛かることができ効率的であると考えられる。
本発明は、このような事情に鑑みて、救急現場において吸引チップを濡らすための水と、洗浄のための水とを分離して使用でき、さらに、非作業時の吸引カテーテルを保存しておくことができる容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成を有する。
請求項1に記載の発明は、有底筒体からなる本体部と、本体部内底面から立設される筒体からなる第1槽と、前記第1槽内に貯められる第1液と、本体部内の前記第1槽外部に形成される第2槽に貯められる第2液と、本体部および第1槽の上面を封止する蓋体と
を有する吸引カテーテル洗浄容器である。
請求項2に記載の発明は、前記吸引カテーテル洗浄容器において、前記第1槽は、前記本体内壁から離れた位置に立設されるものである。
請求項3に記載の発明は、前記吸引カテーテル洗浄容器において、前記本体部上縁近傍もしくは第1槽上縁近傍に、吸引カテーテルの吸引チューブを固定するホルダーが形成されるものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明は、第1液及び第2液が蓋体により第1槽内及び第2槽内に封止された状態で携帯することができ、現場において蓋体を取ることで、第1槽の第1液と第2槽の第2液のいずれか一方を吸引チップを濡らすために使用し、いずれか他方を洗浄用に分離して使用できる。また、洗浄用の液には、非作業時の吸引カテーテルを漬けて保存しておくこともできる。
請求項2に記載の発明は、第1槽を本体内部の内壁から離すことで、第2槽は第1槽の回りにリング状に形成されることとなるので、長い吸引チューブを巻いて第2槽内に保存することができる。
請求項3に記載の発明は、本体部の上縁部もしくは第1槽の上縁部に吸引カテーテルの吸引チューブを固定するホルダーを設けることで、吸引カテーテルを第1槽もしくは第2槽内に保存する際に、吸引カテーテルの基端部を上縁より上に位置するように吸引チューブをホルダーにより保持することで再び使用する際に取出しやすくなり作業性が向上するとともに、保存中の吸引カテーテルをしっかりと保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に本実施形態に係る吸引カテーテル洗浄容器Xの斜視図を示し、図2に吸引カテーテル洗浄容器Xの縦断面図を示す。吸引カテーテル洗浄容器Xは、有底円筒状の本体部10と、本体部10の内部底面中央に立設される本体部10よりも外径の小さな円筒体からなる第1槽20と、本体部10の上縁部に係合する扁平な円筒体からなるチューブホルダー部30と、チューブホルダー部30の上縁及び第1槽20の上縁を封止する薄いシート体からなる蓋体40とから構成される。
本体部10及び第1槽20とは合成樹脂により一体に形成されており、本体部10の内壁と第1槽20との間の空間が第2槽11を形成する。第1槽20の上縁は本体部10の上縁よりやや高く形成され、本体部10に係合するチューブホルダー部30の縁部の上縁とほぼ一致するように設定される。第1槽20及び第2槽11内部には、清潔な水が第1槽20は満水、第2槽11は約4分の3程度入れられている。
チューブホルダー部30は内壁が本体部10に係合する大きさを有する扁平な円筒体の中央位置に外方及び内方に向って張り出すフランジが形成されている。そして内方に張り出すフランジには吸引カテーテルの吸引チューブを保持する切り欠きである吸引チューブ保持部31、32が3つずつ対象に形成されている。吸引チューブ保持部31、32は切り欠きの奥側に所定の太さの吸引チューブの外周に嵌合して接する円弧状のふくらみが形成されている。吸引チューブ保持部31と吸引チューブ保持部32は対象となる吸引チューブの太さが異なるものであり、2種類の大きさの吸引チューブを保持できるようになっている。
蓋体40は合成樹脂製もしくはアルミ製のシートによりチューブホルダー部30の上縁とほぼ一致する円形に形成されるものであり、接着剤によりチューブホルダー部30の上縁及び第1槽20の上縁に固定される。蓋体40の外縁の一部には剥がしやすいように舌部41が形成されている。
【0007】
次に、以上のような構成を有する吸引カテーテル洗浄容器Xの使用方法について説明する。まず、最初に救急現場において吸引カテーテル洗浄容器Xを適当な位置に載置して、蓋体40を剥がして第1槽20、第2槽11の上方を開放する。次に、図3に示すように吸引カテーテルAの先端を第1槽内の水に付けて吸引チップを濡らして、対象者の口腔等へ吸引カテーテルを挿入し作業を行う。また、吸引カテーテルA内が詰まった場合などには、第2槽11内の水を吸い込み内部を洗浄する。そして、吸引カテーテルAの使用を一時中断する場合には、図4に示すように吸引カテーテルAを第2槽11内に巻いて第2槽11内の水に漬けるように保存する。この際、図に示すように吸引カテーテルAの基端近傍の吸引チューブ外周をチューブホルダー部30の吸引チューブ保持部31もしくは吸引チューブ保持部32に係合固定しておく。このようにすることで、再び使用するときに、基端を水に漬けることなく、直ぐに基端部を見つけることができ作業性が高めることができる。
なお、吸引カテーテル洗浄容器Xの使用に際しては、図5に示すように本体部10の底部に係合する内周面を持つ、重量のある円筒体である台座50を係合させるようにすれば、作業時に転倒することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る吸引カテーテル洗浄容器の斜視図である。
【図2】実施形態に係る吸引カテーテル洗浄容器の縦断面図である。
【図3】実施形態に係る吸引カテーテル洗浄容器の第1槽に吸引カテーテル先端を漬けた状態を示す斜視図である。
【図4】実施形態に係る吸引カテーテル洗浄容器の第2槽に吸引カテーテルを保存した状態を示す斜視図である。
【図5】実施形態に係る吸引カテーテル洗浄容器に台座を係合させた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0009】
X 吸引カテーテル洗浄容器
A 吸引カテーテル
10 本体部
11 第2槽
20 第1槽
30 チューブホルダー部
31、32 吸引チューブ保持部
40 蓋体
50 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒体からなる本体部と、
本体部内底面から立設される筒体からなる第1槽と、
前記第1槽内に貯められる第1液と、
本体部内の前記第1槽外部に形成される第2槽に貯められる第2液と、
本体部および第1槽の上面を封止する蓋体と
を有する吸引カテーテル洗浄容器。
【請求項2】
前記第1槽は、前記本体内壁から離れた位置に立設されるものである請求項1に記載の吸引カテーテル洗浄容器。
【請求項3】
前記本体部上縁近傍もしくは第1槽上縁近傍に、吸引カテーテルの吸引チューブを固定するホルダーが形成される請求項1又は2に記載の吸引カテーテル洗浄容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−212478(P2008−212478A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55995(P2007−55995)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(504383830)
【Fターム(参考)】