説明

吸水性樹脂の微細ゲル粒子、ならびにそれにより得られるコーティング膜および積層体

【課題】 水性媒体に安定的に分散可能な吸水性樹脂の微細ゲル粒子、ならびにそれにより得られるコーティング膜および積層体を提供する。
【解決手段】 膨潤度が80〜100%の吸水性樹脂のゲルを粉砕することにより得られる、中位粒子径が0.01〜5μmの吸水性樹脂の微細ゲル粒子、ならびにそれにより得られるコーティング膜および積層体。
本発明の吸水性樹脂の微細ゲル粒子は、吸水性樹脂粒子が膨潤した状態として中位粒子径が0.01〜5μmと小さく、インクジェットプリンター用記録媒体、防曇塗料、汚れ防止機能を有する塗料、結露防止壁紙用処理剤、農業用ビニルフィルムの表面処理剤、メディカル用薬液吸収体、帯電防止剤、合成皮革、人工皮革、繊維コーティング用透湿防水素材、陶器用粘着剤等に、親水性コーティング膜形成材料として好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂の微細ゲル粒子、ならびにそれにより得られるコーティング膜および積層体に関する。さらに詳しくは、インクジェットプリンター用記録媒体、防曇塗料、汚れ防止機能を有する塗料、結露防止壁紙用処理剤、農業用ビニルフィルムの表面処理剤、メディカル用薬液吸収体、帯電防止剤、合成皮革、人工皮革、繊維コーティング用透湿防水素材、陶器用粘着剤等に、親水性コーティング膜形成材料として好適に用いられる吸水性樹脂の微細ゲル粒子、ならびにそれにより得られるコーティング膜および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吸水性樹脂は、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料、ケーブル用止水材等の工業材料、土壌改質剤、結露防止剤、固化剤等の土木建築材料等に幅広く用いられている。
【0003】
近年、様々な基材に対して、くもり防止、汚れ防止、結露防止、帯電防止、透水防止、吸湿防止等の性能を付与するために、吸水性樹脂を溶媒に分散させたコーティング剤が検討されている。また、環境、安全性の観点から、水および/または親水性有機溶媒を用いたコーティング剤が特に望まれている。
【0004】
このようなコーティング剤に用いられる吸水性樹脂は、微細なものが好適に用いられる。微細な吸水性樹脂を得るには、吸水性樹脂を製造後、粉砕する方法が挙げられるが、多大な労力、時間を要し、経済的にも不利である。そこで、直接微細な吸水性樹脂を得る方法が提案されているが(特許文献1参照)、微細粉化した吸水性樹脂は、粉立ち、帯電等の安全面、ハンドリング面において問題がある。一方、上記の問題を解決するために、吸水性樹脂の製造時から水系の溶媒を用いて、直接、水系の吸水性樹脂分散液を得る方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この方法では使用できるモノマーが限定されるため、様々な機能を付与した吸水性樹脂を有する分散液を製造することは難しい。
【0005】
さらに、吸水性樹脂を膨潤させた状態で粉砕する方法として、吸水ポリマーを水中で膨潤した状態で粉砕する方法(特許文献3参照)、吸水性ゲルを水性溶媒により膨潤させて、機械的に粉砕させる方法(特許文献4参照)等が提案されている。しかしながら、これらの方法では粉砕時の吸水性樹脂の膨潤度が低く粉砕が不十分となり、微細な粒子径の吸水性ゲル粒子が得られない。
【0006】
このため、水性媒体に安定的に分散可能な、吸水性樹脂の微細ゲル粒子が望まれている。
【0007】
【特許文献1】特開平05−178924号公報
【特許文献2】特開平11−228808号公報
【特許文献3】特開平06−207107号公報
【特許文献4】特開平10−279693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、水性媒体に安定的に分散可能な吸水性樹脂の微細ゲル粒子、ならびにそれにより得られるコーティング膜および積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、膨潤度が80〜100%の吸水性樹脂のゲルを粉砕することにより得られる、中位粒子径が0.01〜5μmの吸水性樹脂の微細ゲル粒子、ならびにそれにより得られるコーティング膜および積層体に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸水性樹脂を水により特定の膨潤度に膨潤させた状態で粉砕するので、吸水性樹脂の微細粉化に、多大な労力や時間を要せず、粉立ち、帯電等の安全面、ハンドリング面における問題もなく、水性分散液に安定的に分散可能な、吸水性樹脂の微細ゲル粒子が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の中位粒子径が0.01〜5μmの吸水性樹脂の微細ゲル粒子は、膨潤度が80〜100%の吸水性樹脂のゲルを粉砕することにより得られる。
【0012】
吸水性樹脂としては、特に限定されず、例えば、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリル酸塩−ビニルアルコール共重合体およびその架橋物、無水マレイン酸グラフトポリビニルアルコール架橋物、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロースのアルカリ塩架橋物、α−ヒドロキシアクリル酸重合体の架橋物、ポリアクリル酸部分中和物、変性ポリアルキレンオキサイド、アミノ基含有エチレン性不飽和単量体重合物、スルホン酸基含有エチレン性不飽和単量体重合物等が挙げられる。
【0013】
前記吸水性樹脂は、市販のものを用いることもでき、例えば、ポリアクリル酸部分中和物(住友精化株式会社の商品名「アクアキープSA60、10SH−P」);ノニオン型ポリアルキレンオキサイド系樹脂(住友精化株式会社の商品名「アクアコークTWB−P」);アクリル酸塩−ビニルアルコール共重合体(住友精化株式会社製)等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記吸水性樹脂のイオン交換水に対する吸水能は、1〜1500g/gが好ましく、1〜1000g/gであることがより好ましい。吸水性樹脂のイオン交換水に対する吸水能が1g/g未満の場合、得られる吸水性樹脂粒子の水性分散液を用いてコーティング膜を形成したときに、充分な吸水能力が得られないおそれがある。また、吸水性樹脂のイオン交換水に対する吸水能が1500g/gを超える場合、使用できなくはないが、工業的に製造されていないため実用的ではない。なお、本発明においてイオン交換水に対する吸水能とは、後述の測定方法により求められた値である。
【0015】
本発明においては、吸水性樹脂を水により膨潤させ、膨潤度が80〜100%、好ましくは83〜100%となるように、膨潤状態の吸水性樹脂のゲルを調製する。膨潤度が80%未満の場合、吸水性樹脂が十分に膨潤できていないために粉砕不良となり、得られる吸水性樹脂のゲル粒子の中位粒子径が大きくなったり、不均一となる。
【0016】
本発明において、膨潤度とは、吸水性樹脂のゲルに含まれる吸水性樹脂単位質量あたりの水(g/g)の、後述の測定方法により求められた吸水性樹脂のイオン交換水に対する吸水能(g/g)に対する割合を意味する。詳しくは、次式により求められる。
[膨潤度(%)]=[ゲルに含まれる水(g)/吸水性樹脂(g)]
÷吸水能(g/g)×100
【0017】
なお、吸水性樹脂のゲルに含みきれない遊離水が存在する(吸水能以上の水が存在する)状態も、膨潤度100%である。
【0018】
吸水性樹脂を膨潤させる水としては、上水、工業用水、イオン交換水および蒸留水等の水が挙げられる。
【0019】
膨潤度が80〜100%の吸水性樹脂のゲルを粉砕する手段としては、水で膨潤させた吸水性樹脂に対して、強い剪断エネルギーを与えることが可能なものであれば特に限定されず、例えば、高速回転遠心放射型攪拌機、高速回転剪断型攪拌機、コロイドミル、メディア式分散機、高圧噴射式乳化分散機、超音波乳化分散機等の一般的な乳化機または粉砕機が挙げられる。これらの中でも、微小な粒子を得る手段として特に強い剪断エネルギーを与えることが可能な、フィルミックス(プライミクス株式会社製)、クレアミックス(エム・テックニック株式会社製)等の高速回転剪断型攪拌機;コロイドミル;ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、スターバースト(株式会社スギノマシン製)等の高圧噴射式乳化分散機が好適に用いられる。
【0020】
粉砕する際の条件としては、使用する機械、機種、および、処理を行う膨潤した吸水性樹脂のゲルの状態により異なるため、一概には言えないが、例えば、高速回転剪断型攪拌機であれば、回転数:12000〜22000r/min、処理時間:5〜60分間;高圧噴射式乳化分散機であれば、加圧条件:50〜245MPa、処理数:1〜10pass等が挙げられる。
【0021】
また、1度の粉砕で所望の中位粒子径を有する吸水性樹脂の微細ゲル粒子が得られない際は、2度以上の粉砕工程を経て、所望の中位粒子径を有する吸水性樹脂の微細ゲル粒子を得ることもできる。
【0022】
粉砕の際、粉砕効率を向上させる観点から、水に可溶な親水性有機溶媒を添加することができる。親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、およびイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、エチルメチルケトンおよびイソブチルメチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸プロピル、および酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。これら親水性有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明の吸水性樹脂の微細ゲル粒子には、吸水性樹脂の物性を損なわない範囲、かつ粉砕中および粉砕後の吸水性樹脂の微細ゲル粒子を水性媒体に安定的に分散させる目的で、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等の界面活性剤を添加してもよい。
【0024】
本発明の吸水性樹脂の微細ゲル粒子には、目的に応じて、成膜助剤、pH調製剤、増粘剤、防腐剤、防カビ剤、防藻剤、防蟻剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。
【0025】
前記界面活性剤および各種添加剤は、その使用する目的に応じて、粉砕前〜粉砕後の任意の工程において添加が可能である。
【0026】
本発明の吸水性樹脂の微細ゲル粒子は、別途、水や親水性有機溶媒を添加する方法、粉砕の際に吸水性樹脂を膨潤させるために用いて過剰となった水や親水性有機溶媒をろ過や留去(減圧留去を含む)等を行う方法により、所望の吸水性樹脂濃度に調整された吸水性樹脂の微細ゲル粒子の水性分散液とすることもできる。
【0027】
本発明の吸水性樹脂の微細ゲル粒子の中位粒子径は、0.01〜5μm、好ましくは0.05〜5μmである。中位粒子径が0.01μm未満の場合、コーティング膜にした際に、膜強度が低くなりすぎて、破壊されやすくなる傾向がある。また、中位粒子径が5μmを超える場合、コーティング膜を形成したときに、不均一な皮膜を形成したり、ピンホールが発生しやすくなる傾向がある。なお、中位粒子径は、後述する測定方法によって測定したときの値である。
【0028】
本発明において、膨潤度が80〜100%の吸水性樹脂のゲルを粉砕することにより、中位粒子径が0.01〜5μmの吸水性樹脂の微細ゲル粒子が得られる理由は定かではないが、膨潤度が80〜100%であれば、粉砕の際に吸水性樹脂からはきだされた水や遊離水が、吸水性樹脂のゲルのまわりに存在し、粉砕時に吸水性樹脂が流動性を有する柔らかいゲル状態を保てるため、非常に微細な状態まで粉砕できると推察できる。
【0029】
本発明においては、得られた吸水性樹脂の微細ゲル粒子を用い、例えば、基材上に塗布、乾燥することにより、基材上に吸水能を有する樹脂コーティング膜を形成することができ、さらにそのコーティング膜を有する積層体を提供することができる。
【0030】
吸水性樹脂の微細ゲル粒子を基材上に塗布する方法としては、特に限定されず、キャスティングヘッド法、ロールコート法、エアナイフコート法、グラビアロールコート法、ドクターロールコート法、ドクターナイフコート法、カーテンフローコート法、スプレー法、浸漬法、刷毛塗り法等の公知の塗布方法を採用することができる。
【0031】
前記方法により吸水性樹脂の微細ゲル粒子が塗布された基材を乾燥する方法としては、例えば、自然乾燥法、赤外線照射法、熱風乾燥法等が挙げられる。
【0032】
また、本発明の吸水性樹脂の微細ゲル粒子は、スプレードライ等の方法により乾燥させることにより、均一な粒子径を有する微細粉化された吸水性樹脂を得ることも可能である。
【0033】
以下、実施例、比較例および参考例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0034】
なお、実施例1〜3、比較例1〜2、および参考例1において、用いた吸水性樹脂のイオン交換水に対する吸水能、得られた吸水性樹脂の微細ゲル粒子の中位粒子径は、以下の手順により測定した。
【0035】
(1)吸水性樹脂のイオン交換水に対する吸水能
1000gのイオン交換水を入れた1L容のビーカーに、吸水性樹脂0.5gを攪拌下で添加し、ママコが発生していないのを確認した後、30分間攪拌し続けた。その後、あらかじめ質量(Wa(g))を測定しておいた直径20cmの目開き38μmのJIS標準篩を用いて濾過し、篩を水平方向に対して30度傾けた状態で、30分間放置した。篩に付着している余分な水分をふき取った後、篩の質量(Wb(g))を測定し、次式により吸水能を算出した。
吸水能(g/g)=[Wb−Wa−0.5](g)÷0.5(g)
【0036】
(2)中位粒子径
実施例1により得られた吸水性樹脂の微細ゲル粒子は、動的光散乱式粒子径測定装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノ)を用いて中位粒子径を測定した。また、実施例2,3により得られた吸水性樹脂の微細ゲル粒子、ならびに比較例2および参考例により得られた吸水性樹脂のゲル粒子は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD−2000)を用いて中位粒子径を測定した。
【0037】
[実施例1]
2L容のビーカーに水900gをとり、吸水性樹脂としてノニオン型ポリアルキレンオキサイド系樹脂(住友精化株式会社の商品名「アクアコークTWB−P」、乾燥時中位粒子径50μm、吸水能30g/g)30gを添加し、10分間攪拌混合することにより、吸水性樹脂の膨潤ゲルを調製した(膨潤度100%)。
【0038】
吸水性樹脂の膨潤ゲルを、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社の商品名「PANDA」、2K型)を用いて、150MPa/10passの条件で粉砕処理し、吸水性樹脂の微細ゲル粒子を得た。なお、得られた吸水性樹脂の微細ゲル粒子の中位粒子径は0.07μmであった。
【0039】
[実施例2]
2L容のビーカーに水1040gをとり、吸水性樹脂としてアクリル酸塩−ビニルアルコール共重合体(住友精化株式会社製、乾燥時中位粒子径200μm、吸水能370g/g)2gを添加し、10分間攪拌混合することにより、吸水性樹脂の膨潤ゲルを調製した(膨潤度100%、遊離水あり)。
【0040】
吸水性樹脂の膨潤ゲル(遊離水込み)を、クレアミックス(エム・テクニック株式会社の商品名「CLM−0.8型」)を用いて、15000r/min、5分間の条件で粉砕処理し、吸水性樹脂のゲル粒子を得た。なお、得られた吸水性樹脂のゲル粒子の中位粒子径は110μmであった。
【0041】
得られた吸水性樹脂のゲル粒子を、さらに高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社の商品名「PANDA」、2K型)を用いて、150MPa/10passの条件で更に粉砕処理し、吸水性樹脂の微細ゲル粒子を得た。なお、得られた吸水性樹脂の微細ゲル粒子の中位粒子径は4.5μmであった。
【0042】
[実施例3]
2L容のビーカーに水1020gをとり、吸水性樹脂としてアクリル酸塩−ビニルアルコール共重合体(住友精化株式会社製、乾燥時中位粒子径50μm、吸水能600g/g)2gを添加し、10分間攪拌混合することにより、吸水性樹脂の膨潤ゲルを調製した(膨潤度85%)。
【0043】
吸水性樹脂の膨潤ゲルを、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社の商品名「PANDA」、2K型)を用いて、150MPa/10passの条件で粉砕処理し、吸水性樹脂の微細ゲル粒子を得た。なお、得られた吸水性樹脂の微細ゲル粒子の中位粒子径は2μmであった。
【0044】
[比較例1]
2L容のビーカーに水900gをとりに、吸水性樹脂としてノニオン型ポリアルキレンオキサイド系樹脂(住友精化株式会社の商品名「アクアコークTWB−P」、乾燥時中位粒子径50μm、吸水能30g/g)60gを添加し、10分間攪拌混合することにより、吸水性樹脂の膨潤ゲルを調製した(膨潤度50%)。
【0045】
吸水性樹脂の膨潤ゲルを、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社の商品名「PANDA」、2K型)を用いて、150MPa/10passの条件で粉砕処理を行ったが、粉砕できなかった。
【0046】
また、吸水性樹脂の膨潤ゲルを、クレアミックス(エム・テクニック株式会社の商品名「CLM−0.8型」)を用いて、15000r/min、5分間の条件で粉砕処理を行ったが、粉砕できなかった。
【0047】
[比較例2]
2L容のビーカーに水1095gをとり、吸水性樹脂としてアクリル酸塩−ビニルアルコール共重合体(住友精化株式会社製、乾燥時中位粒子径200μm、吸水能370g/g)4gを添加し、10分間攪拌混合することにより、吸水性樹脂の膨潤ゲルを調製した(膨潤度74%)。
【0048】
吸水性樹脂の膨潤ゲルを、クレアミックス(エム・テクニック株式会社の商品名「CL
M−0.8型」)を用いて、20000r/min、60分間の条件で粉砕処理し、吸水性樹脂のゲル粒子を得た。なお、得られた吸水性樹脂のゲル粒子の中位粒子径は20μmであった。
【0049】
[参考例1]
2L容のビーカーに水900gをとり、吸水性樹脂としてアクリル酸塩−ビニルアルコール共重合体(住友精化株式会社製、乾燥時中位粒子径50μm、吸水能600g/g)1gを添加し、10分間攪拌混合することにより、吸水性樹脂のゲル粒子を得た。なお、得られた吸水性樹脂のゲル粒子の中位粒子径は460μmであった。
【0050】
以下、実施例4〜6、比較例3および参考例2において、前記実施例1〜3で得られた吸水性樹脂の微細ゲル粒子、ならびに比較例2および参考例1で得られた吸水性樹脂のゲル粒子を用いて、コーティング膜を形成し、外観、膜厚、吸水能を以下の手順で測定した。
【0051】
(3)外観
コーティング膜の表面の外観(ひび割れ等)を、目視で観察した。
【0052】
(4)膜厚
コーティング膜の膜厚は、分光法を用いた膜厚計(スペクトラコープ社製)を用いて測定した。
【0053】
(5)コーティング膜のイオン交換水に対する吸水能
吸水性樹脂の微細ゲル粒子をコーティングしたガラス板(Wd(g))を、イオン交換水50gを入れたシャーレに浸漬し、30分間放置した。その後、ガラス板を取り出して余分な水分をふき取った後、吸水後のガラス板の質量(We(g))を測定し、次式により吸水能を算出した。ただし、Wc(g)は、コーティング前のガラス板の質量である。
吸水能(g/g)=[We−Wd](g)÷[Wd−Wc](g)
【0054】
[実施例4]
ガラス板(35×100mm、厚さ2mm)の片面に、実施例1で得られた吸水性樹脂の微細ゲル粒子を、バーコーター(No.80)を用いて塗工し、120℃で5分間乾燥し、吸水性樹脂コーティング膜を形成した。得られたコーティング膜は、均質でひび割れは無く、膜厚は6μm、吸水能は25g/gであった。
【0055】
[実施例5]
ガラス板(35×100mm、厚さ2mm)の片面に、実施例2で得られた吸水性樹脂の微細ゲル粒子を、バーコーター(No.80)を用いて塗工し、120℃で5分間乾燥し、吸水性樹脂コーティング膜を形成した。得られたコーティング膜は、均質でひび割れは無く、膜厚は0.5μm、吸水能は300g/gであった。
【0056】
[実施例6]
ガラス板(35×100mm、厚さ2mm)の片面に、実施例3で得られた吸水性樹脂の微細ゲル粒子を、バーコーター(No.80)を用いて塗工し、120℃で5分間乾燥し、吸水性樹脂コーティング膜を形成した。得られたコーティング膜は、均質でひび割れは無く、膜厚は0.45μm、吸水能は500g/gであった。
【0057】
[比較例3]
ガラス板(35×100mm、厚さ2mm)の片面に、比較例2で得られた吸水性樹脂のゲル粒子を、バーコーター(No.80)を用いて塗工し、120℃で5分間乾燥し、吸水性樹脂コーティング膜を形成した。得られたコーティング膜は、不均一に乾燥粒子が分散し、ピンホールが発生した。
【0058】
[参考例2]
ガラス板(35×100mm、厚さ2mm)の片面に、参考例1で得られた吸水性樹脂のゲル粒子を、刷毛を用いて塗工し、120℃で5分間乾燥したが、成膜せずに不均一に乾燥粒子が分散し、付着していた。
【0059】
実施例1〜3で得られた吸水性樹脂の微細ゲル粒子は、均質でひび割れが無く、良好な膜厚および吸水能を有するコーティングを付与できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の吸水性樹脂の微細ゲル粒子は、吸水性樹脂粒子が膨潤した状態として中位粒子径が0.01〜5μmと小さく、インクジェットプリンター用記録媒体、防曇塗料、汚れ防止機能を有する塗料、結露防止壁紙用処理剤、農業用ビニルフィルムの表面処理剤、メディカル用薬液吸収体、帯電防止剤、合成皮革、人工皮革、繊維コーティング用透湿防水素材、陶器用粘着剤等に、親水性コーティング膜形成材料として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨潤度が80〜100%の吸水性樹脂のゲルを粉砕することにより得られる、中位粒子径が0.01〜5μmの吸水性樹脂の微細ゲル粒子。
膨潤度:吸水性樹脂のゲルに含まれる吸水性樹脂単位質量あたりの水(g/g)の、吸水性樹脂のイオン交換水に対する吸水能(g/g)に対する割合。
[膨潤度(%)]=[ゲルに含まれる水(g)/吸水性樹脂(g)]
÷吸水能(g/g)×100
【請求項2】
吸水性樹脂のイオン交換水に対する吸水能が、1〜1500g/gである請求項1に記載の吸水性樹脂の微細ゲル粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吸水性樹脂の微細ゲル粒子をコーティングしてなるコーティング膜。
【請求項4】
基材上に、請求項1または2に記載の吸水性樹脂の微細ゲル粒子がコーティングされていることを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2009−91499(P2009−91499A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265253(P2007−265253)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】