説明

吸湿性積層体及びそれを用いた密封栓

【課題】吸湿による品質の低下が懸念される物品を乾燥した状態のまま保管するために、初期の吸湿速度の優れた吸湿性積層体およびそれを用いた密封栓を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂、吸湿剤としてゼオライトからなる吸湿層と熱可塑性エラストマー、特にスチレン系熱可塑性エラストマーまたはポリオレフィン樹脂とシリコーンとの重合体である熱可塑性エラストマーからなる保護層とを含む積層体およびその積層体を筒状に加工したものを内部に備えた密封栓。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿による品質の低下が懸念される物品を乾燥した状態のまま保管するための積層体、およびそれを用いた密封栓に関する。
【背景技術】
【0002】
吸湿による品質の低下が懸念される食品や医薬品などを内容物とし、これを乾燥した状態のまま保管するための積層体や容器として、例えば、特許文献1や2には、吸湿層にポリエチレンなどのポリオレフィンやアルミ箔、ポリエステル樹脂といった層を配した積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2885079号公報
【特許文献2】特開2004−143310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特許文献1や2の積層体に限らず、吸湿性能を有する積層体においては、吸湿層に含まれる吸湿剤が直接内容物と接触しないように吸湿層保護のために保護層を設けることは一般的であり、内容物や包装体の形態にもよるが通常はポリオレフィン等の樹脂が用いられている。
【0005】
しかしながら、保護層を設けることによって初期の吸湿速度に影響を及ぼす場合があり、吸湿速度にこだわらない内容物の場合はそれほど問題にはならないが、特に水分に敏感な医薬品のような感湿性物質の場合には、初期吸湿速度のさらなる向上が望まれていた。
【0006】
また、使用する形態によっては、管状のチューブに成形する必要がある場合もあり、保護層に用いる材料には成形性も考慮する必要があった。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、吸湿層の保護層としての基本的な性能を有し、かつ、初期の吸湿速度や成形性に優れた保護層と吸湿層とからなる積層体、及びそれを用いた密封栓の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る積層体は、熱可塑性樹脂と吸湿剤とからなる吸湿層と熱可塑性エラストマーからなる保護層とを備えた構成としてある。
【0009】
本発明における積層体においては、
(1)熱可塑性エラストマーがスチレン系熱可塑性エラストマーであること、
(2)熱可塑性エラストマーがポリオレフィン樹脂とシリコーンとの重合体であること、
(3)吸湿層がポリオレフィンとゼオライトとからなること、が好適である。
【0010】
また、本発明においては、上記の積層体を備えた密封栓、としたものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のような本発明によれば、初期の吸湿速度が向上することにより、吸湿による品質の低下が懸念される内容物を乾燥した状態のまま保管できることに加え、吸湿剤と内容物との接触を適切に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る密封栓と密封容器の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る積層体シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係る密封栓の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本発明の積層体は、熱可塑性樹脂と吸湿剤とからなる吸湿層と熱可塑性エラストマーからなる保護層とからなる構成を備えたものである。
【0014】
[保護層]
本発明の保護層に使用される熱可塑性エラストマー(TPE)は、分子中にゴム弾性を有するソフトセグメントと、塑性変形を防止するハードセグメントからなっている。熱可塑性エラストマーは通常の熱可塑性樹脂用成形機が利用でき成形加工性が容易であるため、本発明に好適である。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、アミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)、塩ビ系熱可塑性エラストマー(TPVC)、シリコン系熱可塑性エラストマー、樹脂にシリコーンを重合したものなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、スチレン系熱可塑性エラストマーや樹脂(特にポリオレフィン系樹脂)にシリコーンを重合したものが好適に使用される。
【0015】
スチレン系熱可塑性エラストマーとは、スチレン、その同族体もしくはその類似体を含有する熱可塑性エラストマーをいう。スチレン系熱可塑性エラストマーとして知られるものは、特に限定されることなく使用できる。具体的な例としては、スチレン、その同族体もしくはその類似体のブロックを、少なくとも一つの末端ブロックとして含み、共役ジエンもしくはその水添物のエラストマーブロックを少なくとも一つ中間ブロックとして含むブロック共重合体を挙げることができる。
【0016】
スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、ソフトセグメントの種類によりポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SIS)、ポリスチレン−ポリエチレン/ポリプロピレン−ポリスチレン(SEPS)などに分けられ、ハードセグメントとソフトセグメントの結合様式により、リニアトリブロック、ラジアルブロック、マルチブロックなどの種類がある。
本発明においては、スチレンーブタジエンースチレンブロックコポリマーの水添物であるSEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)が好適である。
【0017】
SEBSは、耐熱性、耐候性に優れ、耐油性も有している。また、加工が容易であるため射出成形や押出成形が可能であり、種々の形態の包装体に適用できる。さらに、医療、食品衛生性にも適用可能である。
【0018】
樹脂とシリコーンとを重合したものとは、ベースとなる樹脂にシリコーンをグラフト重合したものであり、より具体的には、各種樹脂に反応性ポリオルガノシロキサンをグラフト重合することによって作成されたものである。
本発明においては、ベースとなる樹脂にはポリオレフィン系の樹脂が好適であり、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、PPをポリマーアロイしたもの(リアクターPP)、エチレン−プロピレンラバー(EPR)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMA)等が挙げられ、上記の樹脂単独でも良いし、2種以上をブレンドしたものでもよい。
また、シリコーンの含有率はベース樹脂に対し30〜80重量%であることが好ましい。
【0019】
[吸湿層]
本発明の吸湿層は、熱可塑性樹脂と吸湿剤とからなり、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が使用できる。
本発明においては、ポリオレフィン系樹脂が好適に使用でき、具体的には、低密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン,エチレン−アクリル酸共重合体,エチレン−アクリル酸エステル共重合体,エチレン−メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0020】
吸湿剤としては、ゼオライト、硫酸マグネシウム、シリカ、酸化カルシウム、塩化カルシウムなど公知のものが使用できるが、本発明においてはゼオライトが好適に使用でき、前記の熱可塑性樹脂に配合して吸湿層を形成する。
吸湿性素材として配合するゼオライトは、平均粒径が5〜70μmであるのが好ましい。70μmを超えると総表面積が小さくなり、所望の吸湿機能が得られ難くなってしまう傾向にある。一方、5μmに満たないと凝縮しやすく、径の大きい二次粒子が生じてしまい、かえって総表面積が小さくなってしまう傾向にある。また、ゼオライトの配合量は、0.1〜50重量%であるのが好ましい。50重量%を超えると、吸湿が大きすぎて発泡しやすくなってしまう傾向にある。一方、0.1重量%に満たないと、所望の吸湿機能が得られ難い傾向にある。
なお、吸湿層を形成する樹脂材料には、ゼオライトの他に、必要に応じて酸化防止剤、滑剤などの添加剤を適宜配合してもよい。
【0021】
[積層体]
本発明の積層体は吸湿層と保護層を有する構成をしており、保護層が内容物と接触する側にある。吸湿層と保護層との間には接着樹脂層を設けてもよく、吸湿層を保護層で挟んで3層構成としてもよい。
保護層の厚みは、吸湿層に内容物が直接触れるのを避けるために必要な厚みがあればよいが、初期の吸湿速度を確保する必要もある点から、少なくとも厚さ5〜50μm程度に積層形成するのが好ましい。
【0022】
本発明の積層体には、さらに外層に種々の機能を有する層を積層してもよい。
他の機能を有する層としては、例えば、熱可塑性樹脂層、酸素や水分を遮断するバリア層、酸素吸収層、紙層等の任意の層を設けることができる。
この外層を構成する熱可塑性樹脂層としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン6,等のポリアミド、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルが挙げられる。
【0023】
バリア層としては、金属箔、ガスバリア性樹脂、無機蒸着層、ガスバリア性コーティング層が挙げられる。金属箔としては、アルミニウムやアルミニウム合金等の軽金属箔、鉄箔、ブリキ箔、表面処理鋼箔等のスチール箔等が挙げられる。
また、ガスバリア性樹脂としては、低い酸素透過係数を有し、かつ熱成形可能な熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド類等が挙げられる。また、無機蒸着層としては、CVDやPVD法によるシリカ、アルミナ等の蒸着層が挙げられる。また、ガスバリア性コーティングとしては、PVDC、PVA等のコーティングが挙げられる。
【0024】
本発明の積層体は物品を収納した容器に入れて用いても良いし、容器本体や蓋等に取り付けて使用してもよい。この場合、積層体はシート状でも良いしチューブ状に加工してしてもよい。
また、本発明の積層体を包装体に加工して使用してもよい。積層体を用いた包装体の具体例としては、例えば、フィルムやシートなどを用いた包装体、カップ、トレイ、ボトル、チューブなどの容器類等が挙げられる。
ボトルまたはチューブは、パリソンを押出した後、一対の割型でパリソンをピンチオフし、その内部に流体を吹き込むダイレクトブロー成形、また、プリフォームを射出成形し、プリフォームを冷却後、延伸温度に加熱し、軸方向に延伸するとともに、流体圧により周方向にブローする二軸延伸ブロー成形により成形される。カップまたはトレイ状容器は、フィルムまたはシートを真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形等の手段により成形される。
【0025】
[密封栓]
本発明の密封栓の一実施形態を図1に示す。
図1に示す密封栓の例において、密封栓1は、密封栓本体20の内部に本発明の積層体10を備えた構成である。密封栓本体20は、円板状の基板21と、基板21から円筒状に垂下する側壁部22とを有している。基板21のほぼ中央には、貫通孔21aが円形状に穿設されており、側壁部22は、この貫通孔21aと同軸状に垂下している。そして、容器本体40の開口部を密封栓1で封止したときに、側壁部22よりも外周側に位置する基板21の下面が、容器本体40の開口部に形成されたフランジ部41に面接するようになっている。
また、密封栓1に垂下して設けられた側壁部22の内側面には、本発明の積層体10が保持されている。これによって、容器本体40に収容された内容物50の乾燥状態を維持する吸湿機能が、密封栓1に付与される。
【0026】
積層体10は、筒状になっており内側に保護層を設けた構成となっている。密封栓の側壁部が筒状になっている場合は、吸湿層と保護層の2層構成となるが、より吸湿性能を向上させるために複数の柱状になっている場合には、保護層/吸湿層/保護層の3層構成とするのが好適である。
積層体10は多層の共押出成形にてチューブ状に成形し、所定の寸法に切断して作成される。
【0027】
密封栓1と容器40との嵌合は側壁部の径を所定の寸法に設定し打栓による封止を可能としている。また、側壁部やフランジ部にOリング等を用いて密封してもよいし、密封栓1のフランジ下面と容器本体の開口部天面とをヒートシールによって溶融接着することも可能である。更には、ゴム性シーリング剤等を塗布し、アルミ製キャップ等でかしめることもできる。さらには、密封栓と容器をネジによる嵌合としても良い。
【0028】
また、密封栓1の基板21には貫通孔21aが穿設されているところ、この貫通孔21aは、密封栓1の基板21の天面側に取り付けられるシール部材23によって閉塞されている。シール部材23としては、透湿性が低く、かつ、ガスバリヤー性にも優れたアルミニウム箔などの金属箔が好ましく用いられる。
密封栓1によって容器本体40の開口部が封止された密封容器は、注射針のような先端が鋭利な中空の筒状部材を突き刺すなどして、シール部材23を切り裂くことによって開封することができる。そして、容器内に挿入された筒状部材を介して、吸引などすることによって内容物を取り出すことができる。これにより、従来の栓で封止されたバイアルにおいて問題視されていた、異物(栓の削り片)の混入を有効に回避することができる。
【0029】
密封栓本体は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂,ナイロン等のポリアミド系樹脂,ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などの種々の熱可塑性樹脂を用いて、射出成形などの適当な成形手段によって所定の形状に成形することができる。
本発明の密封栓においては、密封栓本体は、嵌合性に優れたポリオレフィン系樹脂を用いて成形するのが好ましい。
また、密封栓に使用される樹脂材料には、更にポリオキシエチレンアルキルアミン混合組成物、グリセリン脂肪酸エステル、直鎖脂肪酸飽和1価アルコールなどの帯電防止剤が配合されてもよい。
【0030】
このような密封栓に吸湿機能を付与するにあたり、吸湿剤の表面積は、容器本体の開口部の開口面積も大きくなるようにするのが好ましい。これによって、密封栓に付与される吸湿機能をより良好なものとすることができる。特に、吸湿剤の表面積を大きくすることで、初期の吸湿速度を向上させることができ、これによって、内容物が吸湿してしまうよりも先に、吸湿剤の吸湿機能を発揮させることが可能となる。
また、吸湿剤の最大吸湿量は、吸湿剤の厚みと表面積により決定され、用途に応じて、それぞれを自由に変更することが可能である。
【実施例】
【0031】
以下の実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
(実験方法1)
押出シート成形機を用いて、図2に示すように吸湿層60cの厚みを一定とし、前記吸湿層60cが中間層となるように、保護層(表面層)60a,60bの樹脂を変更し、積層体シート60を形成した。形成された積層体シート60は、10cm×10cm(100cm)サイズに切断し、40℃−75%RH環境下で経時保管して経時日数での重量増加を測定した。各サンプル吸湿能力は、飽和吸湿量に到達するまでの日数すなわち吸湿速度で比較することとした。保護層60a,60bがない吸湿層60c(低密度ポリエチレンにゼオライトを50重量%で配合)のみのシート(厚み300μm)は、2日で飽和吸湿量に到達した。
【0033】
(実施例1)
中間層には、低密度ポリエチレンにゼオライトを50重量%で配合した厚み300μmの吸湿層60cと中間層両面の保護層60a,60bには、スチレン系熱可塑性エラストマーを100μmずつ配置した構成の積層体シート60を形成した。このシートの飽和吸湿量到達日数は3日であり、前記吸湿層のみのシートよりやや低下は見られるもののほぼ同等の吸湿速度であった。
【0034】
(比較例1)
中間層には、低密度ポリエチレンにゼオライトを50重量%で配合した厚み300μmの吸湿層60cと中間層両面の保護層60a,60bには、低密度ポリエチレンを100μmずつ配置した構成の積層体シート60を形成した。このシートの飽和吸湿量到達日数は20日であり、前記吸湿層のみのシートと比較して、明らかな吸湿速度の低下が見られた。
【0035】
(実施例2)
中間層両面の保護層60a,60bには、低密度ポリエチレンにシリコーンとの重合体からなる熱可塑性エラストマーを100μmずつ配置した以外は、実施例1と同様に積層体シート60を形成した。このシートの飽和吸湿量到達日数は3日であり、前記吸湿層のみのシートよりやや低下は見られるもののほぼ同等の吸湿速度であった。
【0036】
(実験方法2)
射出成形機を用いて、図3に示すように厚みを一定とした円筒状の吸湿材90を側壁部70aに埋設し、最内面に保護層70bを設けた密封栓70を形成した。形成された密封栓70は、40℃−75%RH環境下で経時保管して経時日数での重量増加を測定した。各サンプル吸湿能力は、飽和吸湿量に到達するまでの日数すなわち吸湿速度で比較することとした。保護層70bがなく、吸湿層90(低密度ポリエチレンにゼオライトを50重量%で配合、厚み300μm)が最内面に露出した密封栓は、15日で飽和吸湿量に到達した。
【0037】
(比較例2)
吸湿層90は、低密度ポリエチレンにゼオライトを50重量%で配合し、厚み300μmとし、最内面保護層70bには、低密度ポリエチレンを厚み100μm配置した構成の密封栓70を形成した。この密封栓の飽和吸湿量到達日数は60日であり、保護層がなく、吸湿層が最内面に露出した前記密封栓と比較して、明らかな吸湿速度の低下が見られた。
【0038】
(実施例3)
吸湿層90は、低密度ポリエチレンにゼオライトを50重量%で配合し、厚み300μmとし、最内面保護層70bには、スチレン系熱可塑性エラストマーを100μm配置した構成の密封栓70を形成した。この密封栓の飽和吸湿量到達日数は24日であり、保護層がなく、吸湿層が最内面に露出した前記密封栓より低下は見られるものの、比較例2の構成と比べると吸湿速度は、大きく向上した。
【0039】
(実施例4)
最内面保護層70bには、低密度ポリエチレンにシリコーンとの重合体からなる熱可塑性エラストマーを100μm配置した以外は、実施例3と同様に密封栓70を形成した。この密封栓の飽和吸湿量到達日数は24日であり、保護層がなく、吸湿層が最内面に露出した前記密封栓より低下は見られるものの、比較例2の構成と比べると吸湿速度は、大きく向上した。
【0040】
(実施例5)
吸湿層90は、低密度ポリエチレンにゼオライトを50重量%で配合し、厚み300μmとし、最内面保護層80bには、スチレン系熱可塑性エラストマーを100μm配置し、更に密封栓側壁の最外面保護層81もスチレン系熱可塑性エラストマーを100μm配置した構成の密封栓80を形成した。この密封栓の飽和吸湿量到達日数は18日であり、保護層がなく、吸湿層が最内面に露出した前記密封栓よりやや低下は見られるものの、ほぼ同等の吸湿速度であった。比較例2の構成と比べると吸湿速度は、格段に向上した。
【0041】
(実施例6)
最内面保護層80bには、低密度ポリエチレンにシリコーンとの重合体からなる熱可塑性エラストマーを100μm配置し、更に密封栓側壁の最外面保護層81も低密度ポリエチレンにシリコーンとの重合体からなる熱可塑性エラストマーを100μm配置した以外は、実施例5と同様に密封栓80を形成した。この密封栓の飽和吸湿量到達日数は18日であり、保護層がなく、吸湿層が最内面に露出した前記密封栓よりやや低下は見られるものの、ほぼ同等の吸湿速度であった。比較例2の構成と比べると吸湿速度は、格段に向上した。
上述した実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明は、吸湿による品質の低下が懸念される内容物を保管する技術として、医薬品を内容物とする場合に限らず、食料品などの他の分野においても広く利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 密封栓
10 積層体
20 密封栓
21 基板
21a 貫通孔
22 側壁部
23 シール部材
40 容器本体
50 内容物
60 積層体シート
60a、60b 保護層(表面層)
60c 吸湿層(中間層)
70、 密封栓
70a 側壁部
70b 側壁部最内面保護層
80 密封栓
80a 側壁部
80b 側壁部最内面保護層
81 側壁部最外面保護層
90 吸湿層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と吸湿剤とからなる吸湿層と熱可塑性エラストマーからなる保護層とを含む積層体。
【請求項2】
熱可塑性エラストマーがスチレン系熱可塑性エラストマーである請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
熱可塑性エラストマーがポリオレフィン樹脂とシリコーンとの重合体である請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
吸湿層がポリオレフィンとゼオライトとからなる請求項1乃至3いずれかに記載の積層体。
【請求項5】
請求項1から4に記載された積層体を備えた密封栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−167635(P2010−167635A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11275(P2009−11275)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】