説明

吸着式冷凍機のダンパ構造

【課題】ダンパの軽量化を図ることができるとともに耐久性を向上させることができ、各吸脱着器と蒸発器及び凝縮器との間に生じる適切な圧力差によって、各連通路の開閉を安定して行うことができる吸着式冷凍機のダンパ構造を提供すること。
【解決手段】ダンパ構造5は、吸着式冷凍機1において、各吸脱着器2A,2Bと蒸発器31及び凝縮器32との間に形成された蒸発器側連通路51A及び凝縮器側連通路51Bの開閉を行うものである。各連通路51A,51B内には、球状ダンパ6が転動可能に配置してある。各連通路51A,51Bの通路形成方向Lにおける傾斜下端側には、球状ダンパ6によって内周を塞ぐことができるリング状封止材55が設けてある。各連通路51A,51Bの通路形成方向Lにおける傾斜上端側には、球状ダンパ6が各連通路51A,51Bの外部へ抜け出すことを防止するためのストッパー56が設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着式冷凍機において、複数の吸脱着器と蒸発器及び凝縮器との間の連通路の開閉を行うダンパの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着式冷凍機においては、2つの吸脱着器内に伝熱管を挿通させるとともに、各吸脱着器内においては、伝熱管の表面にシリカゲル等の固体吸着剤を配置している。また、各吸脱着器に対して蒸発器と凝縮器とを、ダンパの開閉を利用して個別に連通可能にしている。また、各吸脱着器、蒸発器及び凝縮器を真空状態にするとともに、これらの間に冷媒を流通可能にしている。そして、吸着式冷凍機は、伝熱管に冷却水を流して吸着器として機能させる吸脱着器と、伝熱管に温水を流して脱着器として機能させる吸脱着器とを、所定の時間間隔で交互に切り替えて運転を行っている。
【0003】
各連通路の開閉を行うダンパとしては、例えば、特許文献1の吸着式冷凍機の温度制御方法において開示される複数のバルブがある。この複数のバルブは、各吸脱着器と蒸発器又は凝縮器との間に形成される圧力差を利用して開閉を行う。各バルブは、一方向にのみ冷媒蒸気を流通させる構造を有している。具体的には、各吸脱着器と蒸発器との間の連通路に配置したバルブは、蒸発器から吸脱着器への冷媒蒸気の流通を可能にする一方、吸脱着器から蒸発器へは冷媒蒸気を逆流させない構造を有している。また、各吸脱着器と凝縮器との間の連通路に配置したバルブは、吸脱着器から凝縮器への冷媒蒸気の流通を可能にする一方、凝縮器から各吸脱着器へは冷媒蒸気を逆流させない構造を有している。
【0004】
また、例えば、特許文献2の流体バルブにおいては、ダンパとしての弁体を、曲面を有する殻状に形成し、この弁体を配置する連通口を、円錐テーパ状に形成している。そして、弁体によって区画する各空間の間に生じる一方向への冷媒の動圧によって、弁体の外周の曲面が円錐テーパ状の連通口の表面に当接することにより、この連通口を閉口させている。また、各空間の間に生じる他方向への冷媒の動圧によって弁体が連通口から浮き上がることにより、連通口を開口させている。また、弁体は、バルブガイドによって、各空間を流通する冷媒の動圧によって流されないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−58966号公報
【特許文献2】特開2002−257250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、吸着式冷凍機における各吸脱着器と蒸発器及び凝縮器との間に生ずる圧力差は小さい。そのため、ダンパを軽量化して、小さな圧力差によってもダンパが開閉できるようにすることが考えられる。しかし、年間に数万回といった頻度でダンパを開閉させることを考慮すると、ダンパの軽量化を行うと、その耐久性を確保することが困難になる。
また、特許文献1、2においては、ダンパとしてのバルブ又は弁体を器型の形状にしており、器の内側に凝縮水が溜まると、ダンパの自重が増加することになる。そのため、場合によっては、上記圧力差によってダンパを開閉させることが困難になり、吸着式冷凍機の正常な運転ができなくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、ダンパの軽量化を図ることができるとともに耐久性を向上させることができ、各吸脱着器と蒸発器及び凝縮器との間に生じる適切な圧力差によって、各連通路の開閉を安定して行うことができる吸着式冷凍機のダンパ構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、固体吸着剤を表面に配置した伝熱管を挿通させてなる複数の吸脱着器と、該複数の吸脱着器に対して個別に連通可能な蒸発器と、上記複数の吸脱着器に対して個別に連通可能な凝縮器とを備え、上記伝熱管に冷却水を流して吸着器として機能させる上記吸脱着器と、上記伝熱管に温水を流して脱着器として機能させる上記吸脱着器とを、所定の時間間隔で交互に切り替えて運転する吸着式冷凍機に用いるダンパ構造において、
上記各吸脱着器と上記蒸発器との間に形成した蒸発器側連通路は、上記各吸脱着器側に比べて上記蒸発器側が低くなるよう傾斜状に形成してあり、上記各吸脱着器と上記凝縮器との間に形成した凝縮器側連通路は、上記各吸脱着器側に比べて上記凝縮器側が高くなるよう傾斜状に形成してあり、
上記蒸発器側連通路又は上記凝縮器側連通路である各連通路内には、球状ダンパが移動可能に配置してあり、
上記各連通路の通路形成方向における傾斜下端側には、上記球状ダンパによって内周が塞がれるリング状封止材が設けてあり、
上記各連通路の通路形成方向における傾斜上端側には、上記球状ダンパが該各連通路の外部へ抜け出すことを防止するためのストッパーが設けてあることを特徴とする吸着式冷凍機のダンパ構造にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸着式冷凍機のダンパ構造においては、蒸発器側連通路及び凝縮器側連通路を傾斜状に形成し、これらには、球状に形成した球状ダンパを移動可能に配置している。また、各連通路の通路形成方向における傾斜下端側にはリング状封止材を設け、各連通路の通路形成方向における傾斜上端側にはストッパーを設けている。
吸着式冷凍機においては、各吸脱着器、蒸発器及び凝縮器の内部は、真空状態になっており、各吸脱着器と蒸発器及び凝縮器との間には、各連通路を介して冷媒蒸気が流通可能になっている。
【0010】
本発明の球状ダンパは、次のようにして連通路内を移動することができる。
伝熱管に冷却水が供給され、吸着器として機能する吸脱着器においては、伝熱管によって固体吸着剤が冷却され、この固体吸着剤に冷媒蒸気が吸着反応(発熱反応)によって吸着される。そして、この吸着器内の圧力が低下することにより、この吸着器内の圧力は、蒸発器内の圧力及び凝縮器内の圧力よりも低くなる。
このとき、吸着器において、蒸発器側連通路に配置された球状ダンパは、吸着器内の圧力が蒸発器内の圧力よりも低くなった圧力差を受けて、リング状封止材から離れて、蒸発器側連通路の傾斜上端側(蒸発器側から吸着器側)へ移動することになる。これにより、蒸発器側連通路が開口される。
【0011】
また、吸着器において、凝縮器側連通路に配置された球状ダンパは、その自重、及び吸着器内の圧力が凝縮器内の圧力よりも低くなった圧力差を受けて、凝縮器側連通路の傾斜下端側(凝縮器側から吸着器側)へ移動することになる。これにより、この球状ダンパがリング状封止材の内周を塞ぐまで転がって、凝縮器側連通路が閉口される。この閉口状態は、脱着器内の圧力が凝縮器内の圧力よりも低くなった圧力差によって維持することができる。
こうして、吸着器においては、各球状ダンパによって、蒸発器との間の蒸発器側連通路を開口することができ、凝縮器との間の凝縮器側連通路を閉口することができる。
【0012】
一方、伝熱管に温水が供給され、脱着器として機能する吸脱着器においては、伝熱管によって固体吸着剤が加熱され、この固体吸着剤から冷媒蒸気が脱着反応(吸熱反応)によって脱着される。そして、この脱着器内の圧力が上昇することにより、この脱着器内の圧力は、蒸発器内の圧力及び凝縮器内の圧力よりも高くなる。
このとき、脱着器において、凝縮器側連通路に配置された球状ダンパは、脱着器内の圧力が凝縮器内の圧力よりも高くなった圧力差を受けて、リング状封止材から離れて、凝縮器側連通路の傾斜上端側(脱着器側から凝縮器側)へ移動することになる。これにより、凝縮器側連通路が開口される。
【0013】
また、脱着器において、蒸発器側連通路に配置された球状ダンパは、その自重によって、蒸発器側連通路の傾斜下端側(脱着器側から蒸発器側)へ移動することになる。これにより、この球状ダンパがリング状封止材の内周を塞ぐまで転がって、蒸発器側連通路が閉口される。この閉口状態は、脱着器内の圧力が蒸発器内の圧力よりも高くなった圧力差によって維持することができる。
こうして、脱着器において、各球状ダンパによって、凝縮器との間の蒸発器側連通路を開口することができ、蒸発器との間の凝縮器側連通路を閉口することができる。
【0014】
また、いずれかの吸脱着器が脱着器から吸着器へ切り替わるときには、この吸脱着器内の圧力が高い状態から低い状態に変化する。一方、いずれかの吸脱着器が吸着器から脱着器へ切り替わるときには、この吸脱着器内の圧力が低い状態から高い状態に変化する。これらの圧力の変化の過程を経て、各連通路内の球状ダンパは、主に転がって移動すると考えられる。ただし、球状ダンパに加わる圧力差の変化の速さ及び自重の大きさ等によっては、球状ダンパが滑って移動する場合もあると考えられる。
【0015】
また、各吸脱着器が吸着器と脱着器とに交互に切り替わるときの各吸脱着器内の圧力の変化の過程より、球状ダンパは、傾斜上端側から傾斜下端側へは、主に自重によって転がると考えられる。
また、各連通路の傾斜上端側には、ストッパーが設けてあることにより、圧力差を受けて傾斜上端側へ移動する球状ダンパが、連通路の外部へ抜け出すことを防止することができる。
【0016】
上記のごとく、球状ダンパは、吸着器として機能させる吸脱着器と蒸発器との間、脱着器として機能させる吸脱着器と凝縮器との間にそれぞれ生じる圧力差を利用して、各連通路を開けることができ、自重を利用して、各連通路を閉じることができる。そのため、球状ダンパを駆動するための駆動源を別に用いる必要がない。
また、本発明の球状ダンパは、球形状といった極めて簡単な形状を有しており、その製作が容易であるとともに、その軽量化も容易である。
【0017】
また、本発明の球状ダンパは、球形状を有するために、冷媒蒸気の流れによる揺れ、滑り等を伴って、連通路を移動すると考えられる。そのため、球状ダンパは、リング状封止材を封止するときには、適宜向きを変えることができる。これにより、球状ダンパの同一箇所のみが、リング状封止材と接触を繰り返して磨耗してしまうことを防止することができ、球状ダンパの耐久性を向上させることができる。
また、本発明の球状ダンパは、球形状を有するために、冷媒蒸気が溜まってその自重が増加してしまうこともない。そのため、各吸脱着器と蒸発器及び凝縮器との間の圧力差を、適切な圧力差に維持することができ、球状ダンパによって、各連通路の開閉を安定して行うことができる。さらに、球状ダンパの質量の変更、各連通路の傾斜角度の変更等を行うことにより、球状ダンパを移動させるための圧力差を任意に調整することができる。
【0018】
それ故、本発明の吸着式冷凍機のダンパ構造によれば、ダンパの軽量化を図ることができるとともに耐久性を向上させることができ、各吸脱着器と蒸発器及び凝縮器との間に生じる適切な圧力差によって、各連通路の開閉を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例にかかる、第1の吸脱着器を吸着器とするとともに第2の吸脱着器を脱着器として運転する吸着式冷凍機を概略的に示す構成図。
【図2】実施例にかかる、第1の吸脱着器を脱着器とするとともに第2の吸脱着器を吸着器として運転する吸着式冷凍機を概略的に示す構成図。
【図3】実施例にかかる、第1の吸脱着器を吸着器とするとともに第2の吸脱着器を脱着器として運転する横型吸着式冷凍機について、各吸脱着器と各連通路との周辺を示す説明図。
【図4】実施例にかかる、第1の吸脱着器を脱着器とするとともに第2の吸脱着器を吸着器として運転する横型吸着式冷凍機について、各吸脱着器と各連通路との周辺を示す説明図。
【図5】実施例にかかる、球状ダンパを配置した各連通路を示す説明図。
【図6】実施例にかかる、球状ダンパを省略した状態の各連通路を、図5のA−A線矢視方向から見た状態で示す説明図。
【図7】実施例にかかる、第1の吸脱着器を吸着器とするとともに第2の吸脱着器を脱着器として運転する縦型吸着式冷凍機について、各吸脱着器と蒸発器側連通路との周辺を示す説明図。
【図8】実施例にかかる、第1の吸脱着器を脱着器とするとともに第2の吸脱着器を吸着器として運転する縦型吸着式冷凍機について、各吸脱着器と凝縮器側連通路との周辺を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述した本発明の吸着式冷凍機のダンパ構造における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記蒸発器側連通路は、上記吸脱着器が上記吸着器として機能する場合に、該吸着器内の圧力が上記蒸発器内の圧力よりも低くなったときに、上記球状ダンパが上記傾斜上端側へ移動して開口される一方、上記吸脱着器が上記脱着器として機能する場合に、該脱着器内の圧力が上記凝縮器内の圧力よりも高くなったときに、上記球状ダンパがその自重によって上記傾斜下端側へ移動して閉口され、上記凝縮器側連通路は、上記吸脱着器が上記脱着器として機能する場合に、該脱着器内の圧力が上記凝縮器内の圧力よりも高くなったときに、上記球状ダンパが上記傾斜上端側へ移動して開口される一方、上記吸脱着器が上記吸着器として機能する場合に、該吸着器内の圧力が上記凝縮器内の圧力よりも低くなったときに、上記球状ダンパがその自重によって上記傾斜下端側へ移動して閉口されるよう構成することが好ましい(請求項2)。
この場合には、各球状ダンパを、圧力差と、連通路の傾斜面に加わる自重とによって、各連通口内を簡単に移動させることができる。
【0021】
また、上記球状ダンパは樹脂製であり、上記リング状封止材はゴムパッキンであることが好ましい(請求項3)。
この場合には、球状ダンパの軽量化を容易に図ることができる。また、リング状封止材を安価に形成することができる。
なお、球状ダンパは、大きさ、材質等による自重の大小によって、内部まで樹脂が満たされた中実形状と、内部に空洞を有する殻形状とのいずれにすることもできる。
【0022】
また、上記各連通路の上記傾斜下端側には、上記リング状封止材に上記球状ダンパが嵌り込んで抜けなくなることを防止するための嵌込み防止ストッパーを設けることができる(請求項4)。
この場合には、球状ダンパが、各吸脱着器と蒸発器及び凝縮器との間に生ずる圧力差によって傾斜下端側へ移動して、リング状封止材の内周を塞ぐときに、嵌込み防止ストッパーによって、リング状封止材に嵌り込んでしまうことを防止することができる。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の吸着式冷凍機のダンパ構造にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例のダンパ構造5は、吸着式冷凍機1において、各吸脱着器2A,2Bと蒸発器31及び凝縮器32との間に形成された各連通路51A,51Bの開閉を行うものである。
吸着式冷凍機1は、図1、図2に示すごとく、固体吸着剤211を表面に配置した伝熱管21を挿通させてなる複数の吸脱着器2A,2Bと、複数の吸脱着器2A,2Bに対して個別に連通可能な蒸発器31と、複数の吸脱着器2A,2Bに対して個別に連通可能な凝縮器32とを備え、伝熱管21に冷却水Cを流して吸着器X1として機能させる吸脱着器2A(又は2B)と、伝熱管21に温水Hを流して脱着器X2として機能させる吸脱着器2B(又は2A)とを、所定の時間間隔で交互に切り替えて運転するよう構成されている。
【0024】
図3、図4に示すごとく、各吸脱着器2A,2Bと蒸発器31との間に形成した蒸発器側連通路51Aは、各吸脱着器2A,2B側に比べて蒸発器31側が低くなるよう傾斜状に形成してあり、各吸脱着器2A,2Bと凝縮器32との間に形成した凝縮器側連通路51Bは、各吸脱着器2A,2B側に比べて凝縮器32側が高くなるよう傾斜状に形成してある。
蒸発器側連通路51A又は凝縮器側連通路51Bである各連通路51A,51B内には、球状ダンパ6が転動可能に配置してある。各連通路51A,51Bの通路形成方向Lにおける傾斜下端側には、球状ダンパ6によって内周を塞ぐことができるリング状封止材55が設けてある。各連通路51A,51Bの通路形成方向Lにおける傾斜上端側には、球状ダンパ6が各連通路51A,51Bの外部へ抜け出すことを防止するためのストッパー56が設けてある。
【0025】
以下に、本例の吸着式冷凍機1のダンパ構造5につき、図1〜図8を参照して詳説する。
まずは、ダンパ構造5を適用する吸着式冷凍機1について説明する。
図1は、第1の吸脱着器2Aを吸着器X1とするとともに第2の吸脱着器2Bを脱着器X2として運転を行う吸着式冷凍機1を概略的に示す構成図である。図2は、第1の吸脱着器2Aを脱着器X2とするとともに第2の吸脱着器2Bを吸着器X1として運転を行う吸着式冷凍機1を概略的に示す構成図である。各図においては、各連通路51A,51B及び球状ダンパ6を概略的に示す。
【0026】
各図に示すごとく、本例の吸着式冷凍機1は、固体吸着剤211を表面に配置した伝熱管21を挿通させてなる2つの吸脱着器2A,2Bと、2つの吸脱着器2A,2Bに対して個別に連通可能な蒸発器31と、2つの吸脱着器2A,2Bに対して個別に連通可能な凝縮器32とを備えている。
各吸脱着器2A,2B、蒸発器31及び凝縮器32の内部には、冷媒Aが流通可能になっており、各吸脱着器2A,2B、蒸発器31及び凝縮器32の内部は、冷媒Aが蒸発し易いように真空状態になっている。蒸発器31の内部は、1/100気圧程度になっており、凝縮器32の内部は、1/20気圧程度になっている。本例の固体吸着剤211はシリカゲルであり、冷媒Aは水である。
【0027】
蒸発器31は、2つの吸脱着器2A,2Bの一方側に隣接して設けてあり、凝縮器32は、2つの吸脱着器2A,2Bの他方側に隣接して設けてある。
各吸脱着器2A,2Bと蒸発器31との間の蒸発器側連通路51Aに配置した球状ダンパ6は、自重によって各吸脱着器2A,2Bの側から蒸発器31の側に向けて閉じられている。この球状ダンパ6は、各吸脱着器2A,2B内の圧力が蒸発器31内の圧力よりも低くなった場合のみ開くよう構成されている。各吸脱着器2A,2Bと凝縮器32との間の凝縮器側連通路51Bに配置した球状ダンパ6は、自重によって凝縮器32の側から各吸脱着器2A,2Bの側に向けて閉じられている。この球状ダンパ6は、各吸脱着器2A,2B内の圧力が凝縮器32内の圧力よりも高くなった場合のみ開くよう構成されている。
【0028】
図1、図2に示すごとく、各吸脱着器2A,2Bの伝熱管21は、2組の切替弁装置46A,46Bまで配管されている。
蒸発器31内には、冷水Wを通過させる蒸発管311が挿通してあり、蒸発管311は、冷水タンク44に接続されている。蒸発管311は、冷水Wを供給して冷やすための被冷却対象としての冷凍設備45に接続してある。この冷凍設備45は、空調システム、冷蔵庫等とすることができる。蒸発管311は、蒸発器31内と冷水タンク44及び冷凍設備45とを循環して配管されている。
【0029】
凝縮器32内には、冷却水Cを通過させる凝縮管321が挿通してあり、凝縮管321は、冷却水タンク41に接続されている。冷却水Cは、冷却水タンク41から切替弁装置46A、各吸脱着器2A,2Bの伝熱管21及び切替弁装置46Bを通過した後、凝縮管321に供給され、凝縮管321から冷却水タンク41に循環されるようになっている。
凝縮器32内には、凝縮管321によって凝縮されて液体化した冷媒A(本例では水)を受ける受皿35が設けてある。受皿35と蒸発器31との間には、受皿35に溜まった冷媒Aを蒸発器31内の蒸発管311の表面へ供給するための循環配管36が配管してある。
【0030】
各吸脱着器2A,2Bの伝熱管21に供給する温水Hは、熱を発生させる発熱設備42から出される排熱を利用して加熱されるものである。この発熱設備42は、太陽熱利用システム、ガスエンジンシステム、ボイラー、あるいは蒸気ドレンを出す設備等とすることができる。温水Hは、発熱設備42による排熱を利用して作られ、温水タンク43に貯留された後、切替弁装置46Aを経由して各吸脱着器2A,2Bの伝熱管21の入口に供給されるようになっている。また、温水Hは、各吸脱着器2A,2Bの伝熱管21の出口から、切替弁装置46Bを経由して発熱設備42へ循環されるようになっている。
冷却水Cは、25〜35℃(約30℃)の水であり、温水Hは、70〜90℃(約80℃)に加熱された水である。また、蒸発器31の蒸発管311内の冷水Wは、9〜14℃(約11℃)に冷却される。
【0031】
吸着式冷凍機1は、伝熱管21に冷却水Cを流して吸着器X1として機能させる吸脱着器2A(又は2B)と、伝熱管21に温水Hを流して脱着器X2として機能させる吸脱着器2B(又は2A)とを、2組の切替弁装置46A,46Bの操作によって所定の時間間隔で交互に切り替えて運転し、蒸発器31内に挿通させた蒸発管311内の冷水Wを冷却するよう構成されている。これにより、吸着式冷凍機1は、生成する冷水Wを冷水タンク44から冷凍設備45へ連続して供給する。
なお、本例においては、固体吸着剤211への冷媒蒸気Aの吸着と脱着を行う吸脱着工程を所定の時間間隔で繰り返し行う工程間には、冷却水Cと温水Hとの混流を防ぐための回収工程を行う。
【0032】
次に、ダンパ構造5の詳細につき説明する。
図5は、球状ダンパ6を配置した各連通路51A,51Bを示す説明図であり、図6は、球状ダンパ6を省略した状態の各連通路51A,51Bを、図5のA−A線矢視方向から見た状態で示す説明図である。
本例の球状ダンパ6は、ポリプロピレン等の樹脂から構成してあり、内部まで樹脂が満たされた中実形状に形成してある。球状ダンパ6の質量は、その材質を適宜変更することにより、あるいはリング状封止材55及び球状ダンパ6の絶対的な大きさを適宜変更することにより、適宜調整することができる。
【0033】
ここで、傾斜上端側又は傾斜下端側は、各連通路51A,51Bの通路形成方向Lにおける上端側又は下端側のことをいう。また、上面側又は下面側とは、鉛直方向の上面側又は下面側のことをいう。図5において、傾斜上端側を矢印L1で示し、傾斜下端側を矢印L2で示す。
本例の各連通路51A,51Bは、傾斜上端側を含む一般部の通路断面積に比べて、傾斜下端側の端部の通路断面積が小さくなっている。傾斜下端側の端部には、段差部52が形成されており、段差部52の傾斜上端側の端部には、リング状封止材55を保持するための環状溝521が形成されている。
【0034】
本例のリング状封止材55はゴムパッキンである。
各連通路51A,51Bの通路断面積は、球状ダンパ6の直径よりも大きくなっており、球状ダンパ6が各連通路51A,51Bを転がる際には、各連通路51A,51Bの上面側には隙間53が形成される。
リング状封止材55は、各連通路51A,51Bの段差部52の下面側に偏って配置してある。そして、リング状封止材55には、傾斜上端側から傾斜下端側へ各連通路51A,51Bの底部511を転がる球状ダンパ6が、リング状封止材55の内周の全周に当接するようになっている。
【0035】
球状ダンパ6が傾斜上端側へ転がったときには、球状ダンパ6と各連通路51A,51Bとの間に形成される隙間53を介して、傾斜下端側から傾斜上端側へ冷媒蒸気Aが通過することができる。そして、球状ダンパ6は、傾斜下端側から傾斜上端側へは、各連通路51A,51Bの上面側に形成される隙間53へ冷媒蒸気Aが流れることにより、主に転がって移動すると考える。
【0036】
球状ダンパ6に対するリング状封止材55の相対的大きさは、リング状封止材55の内周直径が球状ダンパ6の直径の0.5倍以上0.8倍未満になるよう決定することができる。
本例のストッパー56は、各連通路51A,51Bの傾斜上端側の端部において左右方向に掛け渡して設けてある。ストッパー56は、リング形状にして、その上端側を各連通路51A,51Bの空間中に浮上させて設けることもできる。ストッパー56は、リング状封止材55と異なって、各連通路51A,51Bを開口したままで、球状ダンパ6の転がりを止めることができる種々の形状とすることができる。
【0037】
各連通路51A,51Bの傾斜角度θを緩やかにすると、冷媒蒸気Aの圧力に押されて、球状ダンパ6が各連通路51A,51Bの傾斜上端側へ転がり易くすることができる。ただし、各連通路51A,51Bの傾斜角度θを緩やかにし過ぎると、冷媒蒸気Aの圧力を受けて、各連通路51A,51B内の球状ダンパ6の位置が安定しないおそれがある。一方、各連通路51A,51Bの傾斜角度θを急にした場合には、これらと逆の効果が生じる。
また、球状ダンパ6の質量を小さくすると、冷媒蒸気Aの圧力に押されて、球状ダンパ6が各連通路51A,51Bの傾斜上端側へ転がり易くすることができる。ただし、球状ダンパ6の質量を小さくし過ぎると、冷媒蒸気Aの圧力を受けて、各連通路51A,51B内の球状ダンパ6の位置が安定しないおそれがある。一方、球状ダンパ6の質量を大きくした場合には、これらと逆の効果が生じる。
【0038】
また、各連通路51A,51Bの傾斜角度θを急にし過ぎると、あるいは球状ダンパ6の質量を大きくし過ぎると、球状ダンパ6がリング状封止材55に当接する力が強くなってしまう。そのため、各吸脱着器2A,2Bと蒸発器31及び凝縮器32との間に生ずる圧力差によって、球状ダンパ6がリング状封止材55の内周を開口できなくなるおそれがある。
以上のことを考慮して、各連通路51A,51Bの傾斜角度θ及び球状ダンパ6の質量は、各吸脱着器2A,2Bと蒸発器31及び凝縮器32との間に生ずる圧力差の大きさも考慮して適切に決定する。
各連通路51A,51Bの傾斜角度θは、水平方向に対して、例えば、1〜15°とすることができる。
【0039】
また、図5に示すごとく、各連通路51A,51Bの傾斜下端側には、リング状封止材55に球状ダンパ6が嵌り込んで抜けなくなることを防止するための嵌込み防止ストッパー57を設けることができる。これにより、球状ダンパ6が、各吸脱着器2A,2Bと蒸発器31及び凝縮器32との間に生ずる圧力差によって傾斜下流側へ転動して、リング状封止材55の内周を塞ぐときに、嵌込み防止ストッパー57によって、リング状封止材55に嵌り込んでしまうことを防止することができる。
【0040】
球状ダンパ6を配置した各連通路51A,51Bによるダンパ構造5は、種々の吸着式冷凍機1に対して適用することができる。
図3、4に示すごとく、本例の吸着式冷凍機1は、横型吸着式冷凍機1として、第1の吸脱着器2Aと第2の吸脱着器2Bとを互いに対向させて略水平方向に配設することができる。第1の吸脱着器2Aと第2の吸脱着器2Bとは、水平方向に対して若干傾斜させた状態で配設する。
【0041】
ここで、図3は、第1の吸脱着器2Aを吸着器X1とするとともに第2の吸脱着器2Bを脱着器X2として運転する横型吸着式冷凍機1について、各吸脱着器2A,2Bと各連通路51A,51Bとの周辺を示す説明図である。図4は、第1の吸脱着器2Aを脱着器X2とするとともに第2の吸脱着器2Bを吸着器X1として運転する横型吸着式冷凍機1について、各吸脱着器2A,2Bと各連通路51A,51Bとの周辺を示す説明図である。
横型吸着式冷凍機1においては、第1の吸脱着器2Aと第2の吸脱着器2Bとの水平方向の傾斜下端側に、蒸発器31への配管を行うための蒸発器側通路形成部材58Aを配設するとともに、第1の吸脱着器2Aと第2の吸脱着器2Bとの水平方向の傾斜上端側に、凝縮器32への配管を行うための凝縮器側通路形成部材58Bを配設する。
【0042】
蒸発器31及び凝縮器32は、各通路形成部材58A,58Bの下側に配設する。蒸発器側連通路51Aは、各吸脱着器2A,2Bを傾斜させた角度と同じ角度で、各吸脱着器2A,2Bに対して蒸発器31側を下降傾斜させて設ける。凝縮器側連通路51Bは、各吸脱着器2A,2Bを傾斜させた角度と同じ角度で、各吸脱着器2A,2Bに対して蒸発側を上昇傾斜させて設ける。そして、各連通路51A,51Bは、傾斜下端側にリング状封止材55が位置し、傾斜上端側にストッパー56が位置するようにする。
【0043】
図3、図4に示すごとく、蒸発器側連通路51Aは、吸脱着器2A(又は2B)が吸着器X1として機能する場合に、吸着器X1内の圧力が蒸発器31内の圧力よりも低くなったときに、球状ダンパ6が傾斜上端側へ転動して開口される一方、吸脱着器2A(又は2B)が脱着器X2として機能する場合に、脱着器X2内の圧力が凝縮器32内の圧力よりも高くなったときに、球状ダンパ6がその自重によって傾斜下端側へ転動して閉口されるようになっている。
また、凝縮器側連通路51Bは、吸脱着器2A(又は2B)が脱着器X2として機能する場合に、脱着器X2内の圧力が凝縮器32内の圧力よりも高くなったときに、球状ダンパ6が傾斜上端側へ転動して開口される一方、吸脱着器2A(又は2B)が吸着器X1として機能する場合に、吸着器X1内の圧力が凝縮器32内の圧力よりも低くなったときに、球状ダンパ6がその自重によって傾斜下端側へ転動して閉口されるようになっている。
【0044】
図7、図8に示すごとく、吸着式冷凍機1は、縦型吸着式冷凍機1として、第1の吸脱着器2Aと第2の吸脱着器2Bとを、所定の空間を空けて鉛直方向に伸びる状態で配設することもできる。
ここで、図7は、第1の吸脱着器2Aを吸着器X1とするとともに第2の吸脱着器2Bを脱着器X2として運転する縦型吸着式冷凍機1について、各吸脱着器2A,2Bと蒸発器側連通路51Aとの周辺を示す説明図である。図8は、第1の吸脱着器2Aを吸着器X1とするとともに第2の吸脱着器2Bを脱着器X2として運転する縦型吸着式冷凍機1について、各吸脱着器2A,2Bと凝縮器側連通路51Bとの周辺を示す説明図である。
縦型吸着式冷凍機1にいては、第1の吸脱着器2Aの上端部と第2の吸脱着器2Bの上端部との間に、蒸発器31への配管を行うための蒸発器側通路形成部材58A(図7参照)と、凝縮器32への配管を行うための凝縮器側通路形成部材58B(図8参照)とを配設する。
【0045】
蒸発器31は、第1の吸脱着器2Aと第2の吸脱着器2Bとの間において、蒸発器側通路形成部材58Aの下側に配設し、蒸発器側連通路51Aは、蒸発器側通路形成部材58Aが各吸脱着器2A,2Bに繋がる部分にそれぞれ設ける。そして、各蒸発器側連通路51Aは、各吸脱着器2A,2Bが位置する水平方向の外方から蒸発器31が位置する水平方向の中心へ下降傾斜して設ける。
また、凝縮器32は、凝縮器側通路形成部材58Bの上側に配設し、凝縮器側連通路51Bは、凝縮器側通路形成部材58Bが各吸脱着器2A,2Bに繋がる部分にそれぞれ設ける。そして、凝縮器側連通路51Bは、凝縮器32が位置する水平方向の中心から各吸脱着器2A,2Bが位置する水平方向の外方へ下降傾斜して設ける。
【0046】
各連通路51A,51B内に配置した球状ダンパ6は、吸着式冷凍機1の運転を行う際に、次のように各連通路51A,51Bを開閉する。
図1に示すごとく、第1の吸脱着器2A内の伝熱管21に冷却水Cが供給される場合には、第1の吸脱着器2Aは吸着器X1として機能する。この場合、第1の吸脱着器2A内の伝熱管21の表面に配置された固体吸着剤211が冷却されて、この固体吸着剤211に、冷媒蒸気Aが吸着反応によって吸着される。そして、第1の吸脱着器2A内の圧力が低下することにより、第1の吸脱着器2A内の圧力は、蒸発器31内の圧力及び凝縮器32内の圧力よりも低くなる。
【0047】
この場合、図3に示すごとく、吸着器X1として機能する第1の吸脱着器2Aにおいて、蒸発器側連通路51Aに配置された球状ダンパ6Aは、第1の吸脱着器2A内の圧力が蒸発器31内の圧力よりも低くなった圧力差を受けて、リング状封止材55から離れて、蒸発器側連通路51Aの傾斜上端側(蒸発器31側から吸着器X1側)へ転がることになる。これにより、蒸発器側連通路51Aが開口される。
そして、図1に示すごとく、蒸発器31内の冷媒蒸気Aが第1の吸脱着器2A内へ流れ、蒸発器31内の蒸発管311の表面から気化熱としての熱が奪われ、蒸発管311内の冷水Wを冷却することができる。
【0048】
また、図3に示すごとく、吸着器X1として機能する第1の吸脱着器2Aにおいて、凝縮器側連通路51Bに配置された球状ダンパ6Bは、その自重によって、凝縮器側連通路51Bの傾斜下端側(凝縮器32側から吸着器X1側)へ転がることになる。これにより、この球状ダンパ6Bがリング状封止材55の内周を塞ぐまで転がって、凝縮器側連通路51Bが閉口される。この閉口状態は、第1の吸脱着器2A内の圧力が凝縮器32内の圧力よりも低くなった圧力差によって維持することができる。
こうして、吸着器X1として機能する第1の吸脱着器2Aにおいては、各球状ダンパ6A,6Bによって、蒸発器31との間の蒸発器側連通路51Aを開口することができ、凝縮器32との間の凝縮器側連通路51Bを閉口することができる。
【0049】
一方、図1に示すごとく、第1の吸脱着器2A内の伝熱管21に冷却水Cが供給される場合には、第2の吸脱着器2B内の伝熱管21に温水Hが供給される。第2の吸脱着器2B内の伝熱管21に温水Hが供給されるときには、第2の吸脱着器2Bは脱着器X2として機能する。この場合、第2の吸脱着器2B内の伝熱管21の表面に配置された固体吸着剤211が加熱されて、この固体吸着剤211から、冷媒蒸気Aが脱着反応によって脱着される。そして、第2の吸脱着器2B内の圧力が上昇することにより、第2の吸脱着器2B内の圧力は、蒸発器31内の圧力及び凝縮器32内の圧力よりも高くなる。
【0050】
この場合、図3に示すごとく、脱着器X2として機能する第2の吸脱着器2Bにおいて、凝縮器側連通路51Bに配置された球状ダンパ6Dは、脱着器X2内の圧力が凝縮器32内の圧力よりも高くなった圧力差を受けて、リング状封止材55から離れて、凝縮器側連通路51Bの傾斜上端側(脱着器X2側から凝縮器32側)へ転がることになる。これにより、凝縮器側連通路51Bが開口される。
そして、図1に示すごとく、第2の吸脱着器2B内の冷媒蒸気Aが凝縮器32内へ流れ、この冷媒蒸気Aが、凝縮器32内の凝縮管321を流れる冷却水Cによって凝縮される。また、凝縮された冷媒蒸気Aは、循環配管36を通って蒸発器31内へ循環される。
【0051】
また、図3に示すごとく、脱着器X2として機能する第2の吸脱着器2Bにおいて、蒸発器側連通路51Aに配置された球状ダンパ6Cは、その自重を受けて、蒸発器側連通路51Aの傾斜下端側(脱着器X2側から蒸発器31側)へ転がることになる。これにより、この球状ダンパ6Cがリング状封止材55の内周を塞ぐまで転がって、蒸発器側連通路51Aが閉口される。この閉口状態は、第2の吸脱着器2B内の圧力が蒸発器31内の圧力よりも高くなった圧力差によって維持することができる。
こうして、脱着器X2として機能する第2の吸脱着器2Bにおいて、各球状ダンパ6C,6Dによって、凝縮器32との間の蒸発器側連通路51Aを開口することができ、蒸発器31との間の凝縮器側連通路51Bを閉口することができる。
【0052】
また、いずれかの吸脱着器2A(又は2B)が脱着器X2から吸着器X1へ切り替わるときには、この吸脱着器2A(又は2B)内の圧力が高い状態から低い状態に変化する。一方、いずれかの吸脱着器2A(又は2B)が吸着器X1から脱着器X2へ切り替わるときには、この吸脱着器2A(又は2B)内の圧力が低い状態から高い状態に変化する。これらの圧力の変化の過程を経て、各連通路51A,51B内の球状ダンパ6は、主に転がって移動すると考える。ただし、球状ダンパ6に加わる圧力差の変化の速さ及び自重の大きさ等によっては、球状ダンパ6が滑って移動する場合もあると考える。
【0053】
また、各吸脱着器2A,2Bが吸着器X1と脱着器X2とに交互に切り替わるときの各吸脱着器2A,2B内の圧力の変化の過程より、球状ダンパ6は、傾斜上端側から傾斜下端側へは、主に自重によって転がると考える。
また、各連通路51A,51Bの傾斜上端側には、ストッパー56が設けてあることにより、圧力差を受けて傾斜上端側へ移動する球状ダンパ6が、各連通路51A,51Bの外部へ抜け出すことを防止することができる。
【0054】
その後、吸着器X1として機能する第1の吸脱着器2A内の固体吸着剤211に吸着された冷媒蒸気Aの量が飽和量に近づいたときには、図2に示すごとく、2組の切替弁装置46A,46Bを操作して、第1の吸脱着器2A内の伝熱管21に温水Hを流すとともに第2の吸脱着内の伝熱管21に冷却水Cを流し、第1の吸脱着器2Aを脱着器X2に切り替えるとともに第2の吸脱着器2Bを吸着器X1に切り替える。そして、第2の吸脱着器2Bを上記と同様に吸着器X1として機能させるとともに、第1の吸脱着器2Aを上記と同様に脱着器X2として機能させる。
【0055】
第1の吸脱着器2Aが脱着器X2として機能するとともに第2の吸脱着器2Bが吸着器X1として機能する場合(図4参照)についても、各球状ダンパ6によって各連通路51A,51Bを開閉する動作は、図3を参照して上述した場合と同様である。
以降は、同様にして、第1の吸脱着器2A内の伝熱管21と第2の吸脱着内の伝熱管21とに流す冷却水Cと温水Hとを交互に切り替える。これにより、2つの吸脱着器2A,2Bにおいて所定の時間間隔で吸着器X1と脱着器X2とを交互に切り替えて、蒸発管311内において生成する冷水Wを、冷凍設備45へ連続して供給することができる。
【0056】
上記のごとく、球状ダンパ6は、吸着器X1として機能させる吸脱着器2A(又は2B)と蒸発器31との間、脱着器X2として機能させる吸脱着器2B(又は2A)と凝縮器32との間にそれぞれ生じる圧力差を利用して、各連通路51A,51Bを開けることができ、自重を利用して、各連通路51A,51Bを閉じることができる。そのため、球状ダンパ6を駆動するための駆動源を別に用いる必要がない。
また、球状ダンパ6は、球形状といった極めて簡単な形状を有しており、その製作が容易であるとともに、その軽量化も容易である。
【0057】
また、球状ダンパ6は、球形状を有するために、冷媒蒸気Aの流れによる揺れ、滑り等を伴って、各連通路51A,51Bを転がると考えられる。そのため、球状ダンパ6は、リング状封止材55を封止するときには、適宜向きを変えることができる。これにより、球状ダンパ6の同一箇所のみが、リング状封止材55と接触を繰り返して磨耗してしまうことを防止することができ、球状ダンパ6の耐久性を向上させることができる。
また、球状ダンパ6は、球形状を有するために、冷媒蒸気Aが溜まってその自重が増加してしまうこともない。そのため、吸脱着器2A,2Bと蒸発器31及び凝縮器32との間の圧力差を、適切な圧力差に維持することができ、球状ダンパ6によって、各連通路51A,51Bの開閉を安定して行うことができる。さらに、球状ダンパ6の質量の変更、各連通路51A,51Bの傾斜角度の変更等を行うことにより、球状ダンパ6を移動させるための圧力差を任意に調整することができる。
【0058】
それ故、本例の吸着式冷凍機1のダンパ構造5によれば、ダンパ34の軽量化を図ることができるとともに耐久性を向上させることができ、各吸脱着器2A,2Bと蒸発器31及び凝縮器32との間に生じる適切な圧力差によって、各連通路51A,51Bの開閉を安定して行うことができる。
【符号の説明】
【0059】
1 吸着式冷凍機
2A,2B 吸脱着器
21 伝熱管
211 固体吸着剤
31 蒸発器
311 蒸発管
32 凝縮器
321 凝縮管
5 ダンパ構造
51A 蒸発器側連通路
51B 凝縮器側連通路
55 リング状封止材
56 ストッパー
57 嵌込み防止ストッパー
6 球状ダンパ
X1 吸着器
X2 脱着器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体吸着剤を表面に配置した伝熱管を挿通させてなる複数の吸脱着器と、該複数の吸脱着器に対して個別に連通可能な蒸発器と、上記複数の吸脱着器に対して個別に連通可能な凝縮器とを備え、上記伝熱管に冷却水を流して吸着器として機能させる上記吸脱着器と、上記伝熱管に温水を流して脱着器として機能させる上記吸脱着器とを、所定の時間間隔で交互に切り替えて運転する吸着式冷凍機に用いるダンパ構造において、
上記各吸脱着器と上記蒸発器との間に形成した蒸発器側連通路は、上記各吸脱着器側に比べて上記蒸発器側が低くなるよう傾斜状に形成してあり、上記各吸脱着器と上記凝縮器との間に形成した凝縮器側連通路は、上記各吸脱着器側に比べて上記凝縮器側が高くなるよう傾斜状に形成してあり、
上記蒸発器側連通路又は上記凝縮器側連通路である各連通路内には、球状ダンパが移動可能に配置してあり、
上記各連通路の通路形成方向における傾斜下端側には、上記球状ダンパによって内周が塞がれるリング状封止材が設けてあり、
上記各連通路の通路形成方向における傾斜上端側には、上記球状ダンパが該各連通路の外部へ抜け出すことを防止するためのストッパーが設けてあることを特徴とする吸着式冷凍機のダンパ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の吸着式冷凍機において、上記蒸発器側連通路は、上記吸脱着器が上記吸着器として機能する場合に、該吸着器内の圧力が上記蒸発器内の圧力よりも低くなったときに、上記球状ダンパが上記傾斜上端側へ移動して開口される一方、上記吸脱着器が上記脱着器として機能する場合に、該脱着器内の圧力が上記凝縮器内の圧力よりも高くなったときに、上記球状ダンパがその自重によって上記傾斜下端側へ移動して閉口され、
上記凝縮器側連通路は、上記吸脱着器が上記脱着器として機能する場合に、該脱着器内の圧力が上記凝縮器内の圧力よりも高くなったときに、上記球状ダンパが上記傾斜上端側へ移動して開口される一方、上記吸脱着器が上記吸着器として機能する場合に、該吸着器内の圧力が上記凝縮器内の圧力よりも低くなったときに、上記球状ダンパがその自重によって上記傾斜下端側へ移動して閉口されることを特徴とする吸着式冷凍機のダンパ構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸着式冷凍機において、上記球状ダンパは樹脂製であり、上記リング状封止材はゴムパッキンであることを特徴とする吸着式冷凍機のダンパ構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸着式冷凍機において、上記各連通路の上記傾斜下端側には、上記リング状封止材に上記球状ダンパが嵌り込んで抜けなくなることを防止するためのストッパーが設けてあることを特徴とする吸着式冷凍機のダンパ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202583(P2012−202583A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66320(P2011−66320)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(393007444)ユニオン産業株式会社 (6)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】