説明

吸着管

【課題】短時間で、フォトマスクの曇りの原因となる異物を選択的に捕集することが可能な、フォトマスク生産の品質管理手法に使用するに相応しい吸着管を提供するものである。
【解決手段】粒子を捕集剤としてガラス管または金属管に充填した吸着管であって、前記粒子の表面が、クロム、シリカまたはモリブデンに覆われていることを特徴とする吸着管である。
フォトマスク表面の組成と同じか、または、近い組成を持つ捕集剤を用いて、フォトマスク表面に吸着するフォトマスクの曇りの原因となる異物の捕集を行うことにより、フォトマスクの曇りの原因となる異物と無関係な物質を捕集せず、フォトマスクの曇りの原因となる異物のみを分析することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク表面に付着した異物の特定のために使う吸着管に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトマスク製造環境中に微量存在する、異物(フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル)がフォトマスク表面に付着したまま露光されると、フォトマスク表面に曇り(ヘイズ)という現象を引き起こし、微細加工の際に悪影響を及ぼすことが知られている。
また、フォトマスク表面に付着した異物は、フォトマスク表面に描画された微細な加工を光によって転写する際、光の散乱といった現象を発生させ転写不良を起こすことが知られている。
【0003】
通常は、フォトマスクをフォトマスク製造環境中に暴露し、フォトマスク上の異物を捕集する暴露捕集法で、この異物は捕集されている。
【0004】
暴露捕集で異物を吸着させたフォトマスクを加熱装置に入れ、不活性ガスをパージしながら加熱して、異物をガスクロマトグラフ質量分析計などの成分分析装置に導入し分析する仕組みは、既に特許登録されている。(特許文献1参照)
【0005】
また、テナックスという吸着剤を充填した吸着管(以下テナックス管と記載する)を用いてフォトマスク製造環境中の物質を捕集する方法は、環境分析では一般的である。
【0006】
【特許文献1】特許第3299562号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、暴露捕集法は、フォトマスク製造環境中に微量しか存在しない異物が、フォトマスク上に分析必要量捕集されるまで、長時間待たなければならなく、フォトマスク生産の品質管理手法としては問題がある。
【0008】
暴露捕集法においては、フォトマスクに、フォトマスク製造環境中の雰囲気を強制的に当てて、フォトマスク上に分析必要量の異物を短時間で捕集することも可能である。
しかし、強制的に風を当てる装置からの発塵を考えると、フォトマスク生産の品質管理手法としては問題がある。
【0009】
また、テナックスという吸着剤を充填した吸着管を用いてフォトマスク製造環境中の物質を捕集する方法は、多種類の成分を吸着する能力が有るため、大気中に存在するもフォトマスク表面に吸着しない曇りの原因とならない成分まで捕集してしまう。
そのため、フォトマスクの曇りの原因となる異物の特定は不可能であり、フォトマスク生産の品質管理手法としては問題がある。
【0010】
本発明の課題は、短時間で、フォトマスクの曇りの原因となる異物のみを選択的に捕集することが可能な、フォトマスク生産の品質管理手法に使用するに相応しい吸着管を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、粒子を捕集剤としてガラス管または金属管に充填した吸着管であって、前記粒子の表面が、クロム、シリカまたはモリブデンに覆われていることを特徴とする吸着管である。
【0012】
フォトマスク表面の組成と同じか、または、近い組成を持つ捕集剤を用いて、フォトマスクの曇りの原因となる異物の捕集を行うことにより、フォトマスク表面に吸着するフォトマスクの曇りの原因となる異物と無関係な物質を捕集せず、フォトマスクの曇りの原因となる異物のみを分析することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、粒子を捕集剤としてガラス管または金属管に充填した吸着管であって、前記粒子が、シリカであることを特徴とする吸着管である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の粒子の大きさが0.05mm〜1mmの範囲であることを特徴とする吸着管である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粒子が、球またはそれに近い形状、または、砕片であることを特徴とする吸着管である。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、クロム、シリカまたはモリブデン等、フォトマスク表面組成を有する捕集剤粒子が充填された捕集管を用いることにより、フォトマスクの曇りの原因となる成分を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の吸着管を、図1を基にして説明する。
【0018】
吸着管4は、捕集剤2を管1に充填し、捕集剤留め具3で抑えたものである。
【0019】
管1の材料としては、ガラス、金属を用いることができる。
これは吸引ポンプでの吸引や加熱脱着装置付きの測定装置に使用されるに十分な強度を有していればよい。
【0020】
捕集剤2の材料としては、クロム、シリカやモリブデン、または、クロム、モリブデン表面を酸化させた物、または、ガラスなどの担体にクロム、モリブデンをコーティングさせた物、またはガラスなどの担体にクロム、モリブデンをコーティングさせた物で表面のクロム、モリブデンを酸化させた物を用いることができる。
【0021】
捕集剤留め具3の材料としては、グラスウール、焼結ガラス、金属網を用いることができる。
【0022】
捕集剤留め具3は、加熱した際、捕集剤留め具3からの成分の発生がない材質であって、管1に入れることができ、捕集剤2の漏れや抜けが生じなければ良い。
【0023】
吸着管4の使用方法は、吸着管4の片側をフォトマスク製造環境に晒し、吸着管4のフォトマスク製造環境に晒した方と逆側に図示しない吸引ポンプを接続し、吸引ポンプによりフォトマスク製造環境大気を吸着管4に吸引する方法を用いることができる。
【実施例】
【0024】
平均粒径0.2mmの金属クロム粒子を内径4mmのガラス管に約7cmの層厚になるように充填し、300℃で1時間空焼きして吸着管内の成分をクリーンアップさせた後、クリーンルーム内の空気を捕集した。
吸着管内へのクリーンルーム内の空気の吸引量は約0.5L毎分で、6時間吸引を行った。
【0025】
<比較例1>
6インチフォトマスクを300℃で1時間空焼きしクリーンアップを行った。
その後、実施例と同じクリーンルーム雰囲気中で、フォトマスクのクロム面を6時間露出させた。
【0026】
<比較例2>
テナックス管を300℃で1時間空焼きしクリーンアップした。
その後、このテナックス管内に実施例と同じクリーンルーム雰囲気を吸引した。
クリーンルーム内の空気の吸引量は約0.5L毎分で、6時間吸引を行った。
【0027】
実施例、比較例1および比較例2の方法で捕集した物質を、ガスクロマトグラフ質量分析装置にて成分分析を行った結果を表1に示した。
【表1】

【0028】
比較例1(暴露捕集法)では、検出成分が得られなかったので、フォトマスクの捕集時間を2週間として、再度分析を行ったところ実施例(本発明の吸着管)で検出された異物と同じ異物(フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル)が検出された。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の吸着管は、フォトマスク表面に吸着し、曇りの原因となるフタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチルの分析が短時間で行えるため、フォトマスクの品質管理工程に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の吸着管の一例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0031】
1・・・管
2・・・捕集剤
3・・・捕集剤留め具
4・・・吸着管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を捕集剤としてガラス管または金属管に充填した吸着管であって、前記粒子の表面が、クロム、シリカまたはモリブデンに覆われていることを特徴とする吸着管。
【請求項2】
粒子を捕集剤としてガラス管または金属管に充填した吸着管であって、前記粒子が、シリカであることを特徴とする吸着管。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の粒子の大きさが0.05mm〜1mmの範囲であることを特徴とする吸着管。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粒子が、球またはそれに近い形状、または、砕片であることを特徴とする吸着管。

【図1】
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【公開番号】特開2007−127476(P2007−127476A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319309(P2005−319309)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】