説明

吸音パネル

【課題】吸音性基材の表面に表面化粧を設けたものであるにもかかわらず、吸音性基材の吸音性能の低下及び意匠性の低下を招かない安価な吸音パネルを提供する。
【解決手段】吸音性能を有する吸音性基材1の表面に表面化粧2を施した吸音パネル3である。表面化粧2が吸音性基材1の表面にインク4をドット状に印刷することで形成してある。吸音性基材1の表面のインク4が付着していない非印刷部分が表面通気部5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から天井パネルや壁パネルのような建物の内装パネルとして吸音パネルが使用されている。従来の吸音パネルは、ロックウールボードのような吸音性能を有する吸音性基材の表面に表面化粧を施して構成してある。
【0003】
従来の吸音パネルにおける表面化粧は、吸音性基材に直接塗料を塗布することで表面化粧を形成したり、あるいは、吸音性基材に表層材を接着し表面化粧を形成したり、あるいは、吸音性基材に通気性表層材を接着せずに巻き込むことにより表面化粧を形成したりしている。
【0004】
しかしながら、吸音性基材に直接塗料を塗布することで表面化粧を形成するものにおいては、吸音性基材の表面に塗布した塗料が膜を形成してしまって、その膜が吸音パネルに入射する音を反射してしまうため吸音性能が劣化するという問題がある。
【0005】
すなわち、下記の表1には吸音性基材であるロックウールボードの表面に塗装を塗布して膜を形成した場合と、塗装をしなかった場合の周波数と吸音率の関係を示しており、図4には表1をグラフにしたものが示してある。
【0006】
【表1】

【0007】
上記表1、図4から明らかように、塗料の膜が形成されると吸音性能が劣化することが明らかである。
【0008】
このため、吸音性基材に塗料を直接塗布した場合の吸音性能の低下の対策として、従来にあっては表面に多数の小穴を形成して塗膜による音の反射を抑えるようにしているが、この場合は穴あけ加工による意匠低下が問題となり、内装パネルとしてあまり好ましいとは言えない。
【0009】
そこで、吸音性基材に直接塗料を塗布することで表面化粧を形成するものにおいて、吸音性基材に直接塗布する塗料を改良することで、吸音性能の低下を少なくしようとする提案も特許文献1等により提案されている。しかしながら、このような従来例にあっては、特別な塗料組成物の塗料を使用しなければならず、コストが高くつくと共に、塗料を塗布するものであるから、膜が形成されることにかわりはなく、吸音性能の低下を少なくするといえども依然として膜による反射の問題は残る。
【0010】
また、吸音性基材に表層材を接着し表面化粧を形成するものにおいては、接着剤、表層材が音を反射して吸音性能が劣化する。このため、対策としては表層材をスリット状とすることが行われているが、意匠劣化は避けられず、この従来例も内装パネルとしてあまり好ましいとは言えない。
【0011】
また、吸音性基材に通気性表層材を接着せずに巻き込むことにより表面化粧を形成するものにおいては、吸音性、意匠性は問題がないが、製造上手加工となることが想定され、非常に高価なものとなるという問題がある。また、吸音性基材に通気性表層材を接着せずに巻き込むものであるため、通気性表面材が剥がれやすいという問題も残る。
【特許文献1】特願2004−124094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、吸音性基材の表面に表面化粧を設けたものであるにもかかわらず、吸音性基材の吸音性能の低下及び意匠性の低下を招かない安価な吸音パネルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明に係る吸音パネルは、吸音性能を有する吸音性基材1の表面に表面化粧2を施した吸音パネル3であって、表面化粧2が吸音性基材1の表面にインク4をドット状に印刷することで形成されると共に、吸音性基材1の表面のインク4が付着していない非印刷部分が表面通気部5であることを特徴とするものである。
【0014】
このように、吸音性基材1の表面にインク4をドット状に印刷して表面化粧2を形成することで、吸音性基材1の表面に膜を形成することなくドット状に印刷するという簡単な構成で吸音性基材1の表面に表面化粧2を形成することができ、また、膜が形成されることなく吸音性基材1の表面のインク4が付着していない非印刷部分が表面通気部5となっているため、このインク4が付着していない表面通気部5においては、入射する音が反射せずに、吸音性基材1に音が入射して吸音性基材1により確実に吸音することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記のように、表面化粧が吸音性基材の表面にインクをドット状に印刷することで形成されると共に、吸音性基材の表面のインクが付着していない非印刷部分が表面通気部であるので、従来のように吸音性基材の表面に膜を形成することなくドット状に印刷するという簡単な構成で吸音性基材の表面に安価に且つ意匠性の低下を招くことなく表面化粧を形成でき、また、インクが付着していない表面通気部から吸音性基材に音が入射して吸音性基材により確実に吸音することができて、吸音性パネルの吸音性能が低下しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0017】
本発明の吸音パネル3は吸音性能を有する吸音性基材1の表面に表面化粧2を施して構成してある。
【0018】
吸音性基材1としては、例えは、ロックウールボード、グラスウールボード、連続発泡樹脂ボード、繊維ボード等の吸音性能を有するものが使用される。
【0019】
吸音性能を有する吸音性基材1の表面に、インクジェットやスクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷手段によりインク4をドット状に印刷を施すことにより多数のインク4のドット4aの集合により表面化粧2が形成してある。
【0020】
このように、吸音性基材1の表面に、インクジェットやスクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷手段によりインク4をドット状に印刷を施すことにより多数のインク4のドット4aの集合により表面化粧2を形成すると、図3のように、吸音性基材1の表面のインク4のドット4aとドット4aとの間はインク4が付着してない非印刷部分となり、この部分においては吸音性基材1の表面が露出していて表面通気部5となっている。
【0021】
上記のような構成の吸音パネル3は、例えば天井パネルや壁パネル等の建築用の内装パネルとして使用されるものであり、音が吸音パネル3の表面に入射すると、表面化粧2を形成するためのインク4のドット4aの部分では音が反射するが、インク4のドット4aと4aとの間の非印刷部分である表面通気部5においては入射した音が反射することなくそのまま、吸音性基材1に入射し、吸音性基材1により確実に吸音されることになる。したがって、本発明においては吸音性基材1のもつ吸音性能を阻害することなく効果的に発揮させて吸音ができる吸音パネル3を提供できることになる。
【0022】
本発明においては、吸音性基材1の表面に形成した表面化粧2は、インク4をドット状に印刷することで形成しているので、吸音性能の低下を防ぐための特別なインク4を使用する必要がなく、また、インクジェットやスクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷手段により簡単且つ確実に表面化粧2を形成できて、簡単かつ低コストで意匠性の劣化のない表面化粧2を形成することができ、しかも、インク4のドット4a間が入射した音が反射しない表面通気部5となっていて、この表面通気部5が吸音性基材1の全表面にほぼ均一に分散して存在することになり、吸音パネル3の全面においてほぼ均一な吸音性能を発揮できることになる。
【0023】
また、本発明においては、インク4のドット4aの集合として表面化粧2を形成するので、ドット数を調整することで、吸音性基材1への音の入射量を調整でき、吸音調整が簡単に行えることになり、特に、インクジェットによりドット印刷をする場合は、簡単にドット数の調整ができ、目的とする表面化粧を形成すると共に目的とする吸音性能に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の吸音パネルを示し、(a)は分解斜視図であり、(b)は斜視図である。
【図2】同上の平面図である。
【図3】同上の図2のA部分の拡大断面図である。
【図4】吸音性基材であるロックウールボードの表面に塗装を塗布して膜を形成した場合と、塗装をしなかった場合の周波数と吸音率の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0025】
1 吸音性基材
2 表面化粧
3 吸音パネル
4 インク
5 表面通気部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸音性能を有する吸音性基材の表面に表面化粧を施した吸音パネルであって、表面化粧が吸音性基材の表面にインクをドット状に印刷することで形成されると共に、吸音性基材の表面のインクが付着していない非印刷部分が表面通気部であることを特徴とする吸音パネル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−285969(P2008−285969A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134550(P2007−134550)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】