説明

吹付けノズル、およびそれを用いた吹付け方法

【課題】筒状のノズル本体の内周面にセメント系吹付け材料が固着してノズル本体の内空断面積が減少する「ノズルの閉塞」現象を防止し、吹付け作業の効率を向上させるとともに、吹き付けられた吹付け層の品質を向上させることができる吹付けノズル、およびそれを用いた吹付け方法を提供することを目的としている。
【解決手段】筒状のノズル本体2の先端からセメント系吹付け材料Cを吹き出させる吹付けノズル1において、ノズル本体2の全体或いは一部が、吹付けノズル1を振ったときに撓む程度の可撓性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹付け材料を吹き付けるための吹付けノズル、およびそれを用いた吹付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートやモルタル等のセメント系吹付け材料をトンネル掘削の仕上げ面や、掘削仕上げのり面、構造物の補修面等に吹き付ける際には、吹付け機本体に接続されたホースの先端に吹付けノズルを継手し、この吹付けノズルの先端を吹付け面に向けて、吹付けノズル先端から噴出する気流に乗せてセメント系吹付け材料と高圧空気とを吹き付けている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記したようにセメント系吹付け材料を吹き付けるとき、セメント系吹付け材料が吹き付けられた直後に固まるように、セメント系吹付け材料の固結を促進させる急結剤が、ホース内を流通するセメント系吹付け材料に混合される。吹付け面に吹き付けられるセメント系吹付け材料を短時間で高強度にすることは、吹付け層の支保能力を増大させてトンネル等の安定性を向上させることになり、望ましい。したがって、近年では、セメント系吹付け材料を数分程度の短時間で固結させる急結剤が開発されている。
【特許文献1】特開昭61−176764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の吹付けノズルでは、セメント系吹付け材料を極めて短時間で固結させる急結剤を混合させると、吹付けノズル内にセメント系吹付け材料の一部が固着し易くなり、吹付けノズルの内周面にセメント系吹付け材料が固着して吹付けノズルの内空断面積が減少する「ノズルの閉塞」現象が生じるという問題がある。この「ノズルの閉塞」現象が生じた場合、吹付け作業を中断し、吹付けノズルを取り外して吹付けノズルの中に固着した固着物を除去する必要があり、固着物を除去する作業が手間であるとともに、吹付けノズルの取外し・取付作業及び固着物の除去作業によって工期が遅延するという問題がある。さらに、吹付け作業を中断すると、吹付け面に吹き付けられた吹付け層に作業中断による打ち継ぎ面が生じるため、吹付け層の強度低下(品質低下)が生じる懸念がある。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、上記した「ノズルの閉塞」現象を防止し、吹付け作業の効率を向上させるとともに、吹き付けられた吹付け層の品質を向上させることができる吹付けノズル、およびそれを用いた吹付け方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、筒状のノズル本体の先端から吹付け材料を吹き出させる吹付けノズルにおいて、前記ノズル本体の全体或いは一部が、吹付けノズルを振ったときに撓む程度の可撓性を有することを特徴としている。
【0007】
このような特徴により、吹付けノズルを振ってノズル本体を振り子状に撓ませ、ノズル本体に曲げを生じさせることで、ノズル本体の内周面に固着した固着物(吹付け材料)が、曲げ破壊されて小割れされるとともにノズル本体の内周面から剥離される。そして、固着物の小割れ片は、吹付け材料とともにノズル本体の先端から吹き出される。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の吹付けノズルにおいて、前記ノズル本体の外周に、該ノズル本体が撓んだときに該ノズル本体の外周面に当接して前記ノズル本体の撓み支点となる支点部材が設けられていることを特徴としている。
【0009】
このような特徴により、吹付けノズルを振ったとき、ノズル本体が支点部材に当接して支点部材で反力がとられることになり、支点部材が撓み支点となってノズル本体が中折れされ、ノズル本体が支点部材の箇所で急角度に曲げられた状態になる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の吹付けノズルにおいて、前記支点部材が前記ノズル本体の外周に複数設けられ、これら複数の支点部材が、前記ノズル本体の軸線方向および周方向にそれぞれ異なる位置にそれぞれ配置されていることを特徴としている。
【0011】
このような特徴により、ノズル本体の撓み支点が複数箇所となり、複数の箇所でノズル本体が中折れされる。例えば、ノズル本体を間に挟んで対向する2つの支点部材が軸線方向に異なる位置に配置されている場合、吹付けノズルを振ってノズル本体が一方側に中折れされたときの撓み支点の位置とノズル本体が他方側に中折れされたときの撓み支点の位置とは、互いに異なることになる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の吹付けノズルにおいて、前記支点部材が、前記ノズル本体の基端、又は前記ノズル本体の基端に継手された基端部材に取り付けられていることを特徴としている。
【0013】
このような特徴により、吹付けノズルを振ってノズル本体に撓みが生じた場合であっても支点部材に撓みが生じない。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか記載の吹付けノズルを用いて吹付け材料を吹き付ける吹付け方法において、前記吹付けノズルを振って前記ノズル本体を撓ませることを特徴としている。
【0015】
このような特徴により、ノズル本体が撓むと、ノズル本体の内周面に固着した固着物が、曲げ破壊されて小割れされるとともにノズル本体の内周面から剥離される。そして、固着物の小割れ片は、吹付け材料とともにノズル本体の先端から吹き出される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る吹付けノズル、およびそれを用いた吹付け方法によれば、ノズル本体の内周面に固着した固着物が曲げ破壊されるとともにノズル本体の内周面から剥離されて吹付け材料とともにノズル本体の先端から排除されるため、吹付けノズルの「ノズルの閉塞」を防止することができる。これによって、吹付け作業を中断することなく行うことができ、吹付け作業の効率を向上させ、工期の遅延を防止することができるとともに、吹き付けられた吹付け層の品質を向上させることができる。
【0017】
また、ノズル本体の外周に、ノズル本体が撓んだときにノズル本体の外周面に当接してノズル本体の撓み支点となる支点部材が設けられている構成にすることにより、支点部材が撓み支点となってノズル本体が中折れされ、ノズル本体が支点部材の箇所で急角度に曲げられた状態になるため、ノズル本体の内周面に固着した固着物を、より確実に曲げ破壊するとともにノズル本体内周面から剥離させることができる。
【0018】
また、支点部材がノズル本体の外周に複数設けられ、これら複数の支点部材が、ノズル本体の軸線方向および周方向にそれぞれ異なる位置にそれぞれ配置されている構成にすることにより、複数の箇所でノズル本体が中折れされるため、ノズル本体の内周面に固着した固着物を、より広い範囲で、確実に曲げ破壊するとともにノズル本体内周面から剥離させることができる。
【0019】
さらに、支点部材が、ノズル本体の基端、又はノズル本体の基端に継手された基端部材に取り付けられている構成にすることにより、吹付けノズルを振ってノズル本体に撓みが生じた場合であっても支点部材に撓みが生じないため、支点部材が、ノズル本体から反力を確実にとることができ、ノズル本体を確実に中折れさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る吹付けノズル、およびそれを用いた吹付け方法の第一、第二の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0021】
[第一の実施の形態]
まず、第一の実施の形態における吹付けノズル1の構成について説明する。
図1は本実施の形態における吹付けノズル1を表す斜視図である。図1に示すように、吹付けノズル1は、セメント系吹付け材料である吹付けコンクリートC(吹付け材料)を吹き付けるための部材であり、図示せぬコンクリートポンプから圧送された吹付けコンクリートC´を圧縮空気とともに搬送するホース11に、急結剤添加部12(基端部材)を介して接続されている。
【0022】
急結剤添加部12は、ホース11の先端に継手されているとともに後述する吹付けノズル1のノズル本体2の基端に継手された、つまり、ホース11先端と吹付けノズル1基端との間に介装された円筒形状の部材である。急結剤添加部12には、急結剤Aを急結剤添加部12内に供給するための供給部12aが付設されており、この供給部12aから圧縮空気とともに急結剤Aが、吹付けコンクリートC´が流通する急結剤添加部12内に供給される。ここで、急結剤Aは、吹付けコンクリートC´を短時間で高強度に固結させる添加剤であり、急結剤添加部12内で吹付けコンクリートC´に添加される。急結剤Aが添加された吹付けコンクリートCは、短時間で高強度を発揮する短時間高剛性吹付けコンクリートとなり、例えば材齢10分で3N/mm以上を発揮することができる吹付けコンクリートになる。
【0023】
吹付けノズル1は、その基端が急結剤添加部12の先端に例えば図示せぬビクトリックジョイント構造を介して継手され、先端から吹付けコンクリートCが吹き出される円筒形状(管状)のノズル本体2と、ノズル本体2の中間付近部分に外装された環状(リング状)の支点部材3とから構成されている。
【0024】
ノズル本体2は、吹付けノズルを上下左右に振ったときに振り子状に撓む程度の可撓性を有する構成からなっており、例えば吹付けノズルを振ったときに撓る程度の可撓性がある軟らかいゴム素材や高分子素材等のフレキシビリティのある材料で形成されている。また、ノズル本体2は、ノズル本体2の材質のほかに、ノズル本体2の厚さ、径、長さが、上記した可撓性が実現されるようにそれぞれ設定されている。
【0025】
支点部材3は、ノズル本体2が撓んだときにノズル本体2の外周面に当接してノズル本体の撓み支点となる部材であり、ノズル本体2が撓んで当接した時に反力をとることができる程度の剛性を有する例えば金属等からなる反力体である。支点部材3の内径は、ノズル本体2の外径よりも若干大きくなっており、支点部材3の中にノズル本体2が緩く挿通された状態になっている。また、支点部材3は、ノズル本体2のフランジ2aから先方に張り出された架材4,4に支持されており、この架材4,4を介してノズル本体2基端のフランジ2aに取り付けられている。
【0026】
次に、上記した構成からなる吹付けノズル1を用いて、吹付け面Gに吹付けコンクリートCを吹き付ける際の吹付け方法について説明する。
【0027】
図2は吹付け状況を表す側面図である。図1,図2に示すように、例えば図示せぬコンクリートポンプでホース11に吹付けコンクリートC´を圧送する。圧送された吹付けコンクリートC´は、ホース11内から急結剤添加部12内に圧送される。このとき、供給部12aから急結剤添加部12内に圧縮空気とともに急結剤Aを供給して、急結剤添加部12内で吹付けコンクリートC´に急結剤Aを添加する。急結剤Aが添加された吹付けコンクリートCは、吹付けノズル1内に圧送されて、吹付けノズル1の先端から吹き出される。このとき、吹付けノズル1の先端を吹付け面Gに向けておき、吹付け面Gに吹付けコンクリートCを吹き付ける。なお、吹付けノズル1を図示せぬ機械に取り付けて、その機械によって吹付けノズル1の先端を吹付け面Gに向けてもよく、或いは、作業員が吹付けノズル1を持って、作業員の手作業で吹付けノズル1の先端を吹付け面Gに向けてもよい。
【0028】
図3は吹付けノズル1の断面図である。上記した吹付け作業を行っていると、ノズル本体2内を流通する吹付けコンクリートCに混入された急結剤Aの急結性能(吹付けコンクリートCの強度を短時間で上昇させる機能)が高いため、図3(a)に示すように、ノズル本体2内で吹付けコンクリートCが固結してノズル本体2の内周面に固着し、この固着物Xによってノズル本体2の内空断面積が減少する所謂「ノズルの閉塞」現象が生じる場合がある。
【0029】
上記「ノズルの閉塞」現象が生じた場合、図2,図3(b)に示すように、吹付けノズル1を上下左右(図2では上下方向)に振る。このとき、作業員が吹付けノズル1を持って上下左右に振ってもよく、或いは、吹付けノズル1を把持する機械によって吹付けノズル1を上下左右に振ってもよい。吹付けノズル1が上下左右に振られると、その振りの勢いによってノズル本体2が振り子状に上下左右に撓む。このとき、支点部材3にノズル本体2の外周面が衝突し、支点部材3が撓み支点となってノズル本体2は曲げ変形する。ノズル本体2が曲げ変形すると、ノズル本体2の内周面に固着した固着物Xが曲げ破壊されて複数の小割れ片X´…に分割される。固着物Xは、セメント系の吹付けコンクリートCが固結したものであり、曲げ歪に弱いため、容易に曲げ破壊される。また、ノズル本体2が曲げ変形すると、固着物X(小割れ片X´…)がノズル本体2の内周面から剥離される。そして、図3(c)に示すように、小割れされるとともに剥離された小割れ片X´…は、圧送される吹付けコンクリートCとともに気流に乗って、ノズル本体2の先端からノズル本体2の外に排出される。
【0030】
上記した構成からなる吹付けノズル1および吹付け方法によれば、吹付けノズル1が、ノズル本体2の全体が吹付けノズル1を振ったときに撓む程度の可撓性を有する構成からなり、ノズル本体2の内周面に固着物Xが固着したときに、吹付けノズル1を振ってノズル本体2を撓ませるため、ノズル本体2が振り子状に撓んでノズル本体2に曲げが生じると、ノズル本体2の内周面に固着した固着物Xが、曲げ破壊されて小割れされるとともにノズル本体2の内周面から剥離される。そして、固着物Xの小割れ片X´…は、吹付けコンクリートCとともにノズル本体2の先端から吹き出される。これによって、吹付けノズル1の所謂「ノズルの閉塞」現象を防止することができ、途中で中断することなく吹付け作業を行うことができる。これによって、吹付け作業の効率を向上させ、工期の遅延を防止することができるとともに、不要な打ち継ぎ面をつくらずに、吹き付けられた吹付け層の品質を向上させることができる。
【0031】
また、吹付けノズル1が、ノズル本体2の外周に、ノズル本体2が撓んだときにノズル本体2の外周面に当接してノズル本体2の撓み支点となる支点部材3が設けられている構成からなるため、吹付けノズル1を上下左右に振ると、支点部材3が撓み支点となってノズル本体2が中折れし、ノズル本体2が支点部材3の箇所で急角度に曲げられた状態になる。これによって、ノズル本体2内周面に固着した固着物Xを、より確実に曲げ破壊するとともにノズル本体2の内周面から剥離させることができる。
【0032】
さらに、吹付けノズル1は、支点部材3が、ノズル本体2の基端のフランジ2aに架材4,4を介して取り付けられている構成からなるため、吹付けノズル1を上下左右に振ってノズル本体2に撓みが生じた場合であっても支点部材3に撓みが生じない。これによって、支点部材3が、ノズル本体2から反力を確実にとることができ、ノズル本体2を確実に中折れさせることができる。
【0033】
[第二の実施の形態]
次に、第二の実施の形態における吹付けノズル101の構成について説明する。
なお、以下の第二の実施の形態の説明では、上記した第一の実施の形態と同様の構成については、同様の符号を付すことで、その説明を省略する。
【0034】
図4は吹付けノズル101を表す斜視図である。図4に示すように、吹付けノズル101のノズル本体2の外周には、ノズル本体2の外径よりも内径が若干大きい半リング形状(円弧形状)の第一,第二の支点部材103a、103bが配設されている。第一,第二の支点部材103a、103bは、それぞれノズル本体2の外周面に沿って延在されており、その内側面をノズル本体2の外周面に対向させた状態で設けられている。
【0035】
第一,第二の支点部材103a、103bは、ノズル本体2の軸線方向および周方向にそれぞれ異なる位置にそれぞれ配置されている。具体的には、第一,第二の支点部材103a、103bは、互い違いに配置されており、第一の支点部材103aは、ノズル本体2の基端側に配置され、且つノズル本体2の一方の側面に外装された状態で設けられており、第二の支点部材103bは、ノズル本体2の中間部分に配置され、且つノズル本体2の他方の側面に外装された状態で設けられている。
【0036】
また、第一,第二の支点部材103a、103bの両端は、ノズル本体2のフランジ2aから先方にそれぞれ張り出された2本の架材104,104にそれぞれ接合されており、第一,第二の支点部材103a、103bは2本の架材104,104によってそれぞれ支持され、これらの架材104,104を介してノズル本体2の基端(フランジ2a)にそれぞれ取り付けられている。
【0037】
次に、上記した構成からなる吹付けノズル101を用いて、吹付け面Gに吹付けコンクリートCを吹き付ける際の吹付け方法について説明する。なお、吹付けコンクリートCをノズル本体2の先端から吹き出させるまでは、上記した第一の実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0038】
図5は上記した吹付けノズル101を用いた吹付け状況を表す平面図である。吹付けノズル101に「ノズルの閉塞」現象が生じた場合、図4,図5に示すように、吹付けノズル101を、第一,第二の支点部材103a、103bが配置された方向(本実施の形態では左右方向)に振ってノズル本体2を振り子状に左右に撓ませる。このとき、ノズル本体2が一方側(図5における下側)に振られると、その振りの勢いによって、ノズル本体2の一方側の側面が第一の支点部材103aに衝突し、この第一の支点部材103aを撓み支点にしてノズル本体2が一方側に曲げ変形する。一方、ノズル本体2が他方側(図5における上側)に振られると、その振りの勢いによって、ノズル本体2の他方側の側面が第二の支点部材103bに衝突し、この第二の支点部材103bを撓み支点にしてノズル本体2が他方側に曲げ変形する。ノズル本体2が曲げ変形すると、上記した第一の実施の形態の場合と同様に、ノズル本体2の内周面に固着した固着物Xが曲げ破壊されるとともにノズル本体2の内周面から剥離され、吹付けコンクリートCとともにノズル本体2の先端からノズル本体2の外に排出される。
【0039】
上記した構成からなる吹付けノズル1および吹付け方法によれば、上記した第一の実施の形態における効果と同一の効果を奏することができる。さらに、ノズル本体2の外周に2つの支点部材103a、103bが設けられ、これら第一,第二の支点部材103a、103bが、ノズル本体2の軸線方向および周方向のそれぞれにおいて互いに異なる位置にそれぞれ配置されている構成からなることにより、吹付けノズル101を振ったときに、ノズル本体2の撓み支点が2箇所となり、2箇所でノズル本体2が中折れされる。これによって、ノズル本体2の内周面に固着した固着物を、より広い範囲で、確実に曲げ破壊するとともにノズル本体2の内周面から剥離させることができる。
【0040】
以上、本発明に係る吹付けノズル、およびそれを用いた吹付け方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した第一,第二の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した第一,第二の実施の形態では、吹付けノズル1,101に所謂「ノズルの閉塞」現象が生じたときに、吹付けノズル1,101を上下左右に振ってノズル本体2を撓ませているが、本発明は、吹付けコンクリートCの吹付け作業中に、一定時間ごとに吹付けノズル1,101を振ってノズル本体2を撓ませてもよく、或いは、吹付けコンクリートCの吹付け作業中に、継続的に吹付けノズル1,101を振ってノズル本体2を撓ませてもよい。
【0041】
また、上記した第一,第二の実施の形態では、ノズル本体2全体が所定の可撓性を有しているが、本発明は、ノズル本体の一部だけが所定の可撓性を有しており、その他の部位については可撓性がなくてもよい。例えば、可撓性のあるゴム製のリング部材と、可撓性がない金属製のリング部材とを、交互に連設させた構成からなるノズル本体であってもよい。
【0042】
また、上記した第一,第二の実施の形態では、ノズル本体2の外周に支点部材3,103a,103bが設けられた構成からなっているが、本発明は、ノズル本体の外周に支点部材が設けられてなくてもよい。この場合、吹付けノズルを上下左右に振ると、ノズル本体の基端が撓み支点となってノズル本体が撓む。
【0043】
また、上記した第一,第二の実施の形態では、吹付けコンクリートCを吹き付ける場合について説明しているが、本発明は、吹付けコンクリートC以外の吹付け材料を吹き付けるものでもよく、例えば、モルタルや補修材、セメントリシン等の他のセメント系吹付け材料でもよく、或いは、アクリルリシンなどの樹脂系吹付け材料でもよく、その他の吹付け材料であってもよい。
【0044】
また、上記した第一,第二の実施の形態では、支点部材3,103a,103bがロッド状の架材4,104を介してノズル本体2のフランジ2aに取り付けられているが、本発明は、支点部材が、急結剤添加部等の基端部材に支点部材を取り付けてもよい。また、本発明は、ロッド状の架材4,104でなく、板状或いは筒状の部材を介して支点部材を取り付けてもよく、或いは、支点部材をノズル本体の基端や基端部材に直接取り付けてもよい。
【0045】
また、上記した第二の実施の形態では、第一の支点部材103aがノズル本体2の一方の側面に外装された状態で設けられており、第二の支点部材103bがノズル本体2の他方の側面に外装された状態で設けられているが、本発明は、一方の支点部材がノズル本体の上面に外装された状態で設けられ、他方の支点部材がノズル本体の下面に外装された状態で設けられていてもよい。なお、この場合、吹付けノズルを上下方向に振ることでノズル本体を撓ませる。
【0046】
また、上記した第二の実施の形態では、ノズル本体2の外周に、2つの支点部材103a,103bが備えられているが、本発明は、ノズル本体の軸線方向および周方向の位置が互いに異なる3つ以上の支点部材がノズル本体の外周にそれぞれ設けられていてもよい。例えば、ノズル本体の両側面にそれぞれ外装させる左右の支点部材と、ノズル本体の上下面にそれぞれ外装させる上下の支点部材とをそれぞれ設けてもよい。また、本発明は、支点部材が片側一箇所のみに設けられていてもよく、例えば、図5に表された吹付けノズル101において、第二の支点部材103bが無く、第一の支点部材103aのみが備えられた構成であってもよい。この場合、吹付けノズルを左右或いは上下に振ったときに、どちらか一方側のみが支点部材に当接される。
また、本発明は、ノズル先端部側に重量を付加してノズル重心をノズル先端側にしてもよい。これによって、フレキシブルなノズル本体がより撓み易くなる。
なお、急結剤添加部12における供給部12aの付設位置であるが、吹付けノズル1の基端部から0.3m以内にすることが、急結剤添加部12内面にコンクリートが付着するのを防止する意味で望ましい。さらに、吹付けコンクリートCを吐出する吹付ノズル1先端からの供給部12aの位置は、急結剤Aと吹付けコンクリートC´との混練を良くするため、及び、吹付けコンクリートCの閉塞防止のため、吹付ノズル1先端から0.8m〜2.0mの位置にすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る吹付けノズルの第一の実施の形態を説明するための斜視図である。
【図2】本発明に係る吹付けノズル及び吹付け方法の第一の実施の形態を説明するための側面図である。
【図3】本発明に係る吹付けノズル及び吹付け方法の第一の実施の形態を説明するための断面図である。
【図4】本発明に係る吹付けノズルの第二の実施の形態を説明するための斜視図である。
【図5】本発明に係る吹付けノズル及び吹付け方法の第二の実施の形態を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1,101 吹付けノズル
3,103a,103b 支点部材
2 ノズル本体
2a フランジ(ノズル本体の基端)
12 急結剤添加部(基端部材)
C 吹付けコンクリート(セメント系吹付け材料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のノズル本体の先端から吹付け材料を吹き出させる吹付けノズルにおいて、
前記ノズル本体の全体或いは一部が、吹付けノズルを振ったときに撓む程度の可撓性を有することを特徴とする吹付けノズル。
【請求項2】
請求項1記載の吹付けノズルにおいて、
前記ノズル本体の外周に、該ノズル本体が撓んだときに該ノズル本体の外周面に当接して前記ノズル本体の撓み支点となる支点部材が設けられていることを特徴とする吹付けノズル。
【請求項3】
請求項2記載の吹付けノズルにおいて、
前記支点部材が前記ノズル本体の外周に複数設けられ、
これら複数の支点部材が、前記ノズル本体の軸線方向および周方向にそれぞれ異なる位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする吹付けノズル。
【請求項4】
請求項2又は3記載の吹付けノズルにおいて、
前記支点部材が、前記ノズル本体の基端、又は前記ノズル本体の基端に継手された基端部材に取り付けられていることを特徴とする吹付けノズル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか記載の吹付けノズルを用いて吹付け材料を吹き付ける吹付け方法において、
前記吹付けノズルを振って前記ノズル本体を撓ませることを特徴とする吹付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−138386(P2008−138386A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323441(P2006−323441)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【出願人】(303059071)独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 (64)
【Fターム(参考)】