説明

吹付け材料およびそれを用いた吹付け工法

【課題】粉体急結剤に匹敵する凝結性状および初期強度発現性が得られ、硬化体の収縮量やイオンの溶出量も抑制でき、粉じん発生量も少ない吹付け材料およびそれを用いた吹付け工法を提供する。
【解決手段】セメント、骨材、四級アンモニウム塩化合物を含有するセメントコンクリートと、ケイ酸アルカリ金属塩を構成する珪素の酸化物換算(SiO)とアルカリ金属塩(RO、R:Li、Na、K)の酸化物換算のモル比(SiO/RO)が3.3〜4.5のケイ酸アルカリ金属塩と、強度増進材を含有する吹付け材料であり、セメント、骨材、四級アンモニウム塩化合物を含有するセメントコンクリートをポンプで圧送し、セメントコンクリートに合流混合する直前に、液体圧送ポンプで送液されているケイ酸アルカリ金属塩水溶液と空気搬送されている強度増進材を混合しスラリー化して、セメントコンクリートに合流混合することを特徴とする、吹付け工法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木・建築業界で使用される吹付け材料及びそれを用いた吹付け工法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘削等露出した地山の崩落を防止するために、急結剤をコンクリートに配合した急結コンクリートの吹付工法が行われている(特許文献1参照)。この工法は、通常、掘削工事現場に設置した、セメント、骨材、及び水の計量混合プラントで吹付コンクリートを調製し、アジテータ車で運搬した後、コンクリートポンプで圧送し、途中に設けた合流管で、他方から圧送した急結剤と混合し、急結性吹付コンクリートとして地山面に所定の厚みになるまで吹付けるものである。
【0003】
急結剤としては、カルシウムアルミネート、アルカリ金属アルミン酸塩とアルカリ金属炭酸塩等との混合物、並びに、カルシウムアルミネート、アルカリ金属アルミン酸塩、及びアルカリ金属炭酸塩等の混合物や、カルシウムアルミネートと3CaO・SiOとの混合物等が知られている(特許文献2〜5参照)。これら急結剤は、セメントコンクリートと混合して地山面に吹付けられる。
急結剤は、地山の緩みを早期に抑えるために吹付けコンクリートには必要な混和剤であるが、粉体であることから粉じんの発生量が多くなる。近年、粉じんの発生量を抑制することができる液状の急結剤を使用する吹付け技術が開発され、その使用量が増加している(特許文献6〜8参照)。
液状の急結剤の主成分としては、硫酸アルミニウムなどの水溶性のアルミニウム塩を含有するものは、凝結性状が粉体急結剤に比べ悪く、特に水セメント比が大きい場合やセメント量が少ない場合は、地山に吹き付けてもはく落が発生する場合があり、厚付けできないといった課題がある。また、数時間レベルの強度発現性も粉体急結剤に比べ小さいといった課題もある。
【0004】
その他に、ケイ酸アルカリ金属塩の水溶液があり(特許文献9参照)、単独で使用しても急結作用を示すものの、粉体急結剤に比べ混合直後の瞬間的な強ばりが弱く、コンクリートでの吹付けも可能であるが、10cm以上の厚付けを必要としないモルタルの吹付け施工などに向いている。また、ケイ酸アルカリ金属塩を添加した硬化体は収縮が大きく、湧水などの影響で硬化体から金属イオンとして溶出しやすいという課題もある。ケイ酸アルカリ塩と四級アンモニウム塩に関する従来の技術としては、抗菌性を有する素材としての利用に関するものが知られている(特許文献10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭60−4149号公報
【特許文献2】特開昭64−051351号公報
【特許文献3】特公昭56−27457号公報
【特許文献4】特開昭61−026538号公報
【特許文献5】特開昭63−210050号公報
【特許文献6】特開2005−60201号公報
【特許文献7】特開2005−89276号公報
【特許文献8】特開2008−30999号公報
【特許文献9】特開2002−249360号公報
【特許文献10】特開2002−235008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、セメントコンクリート側に四級アンモニウム塩化合物を添加し、特定のケイ酸アルカリ塩水溶液を急結剤としてセメントコンクリートに適用することで、粉体急結剤に匹敵する凝結性状および初期強度発現性が得られ、硬化体の収縮量やイオンの溶出量も抑制でき、さらに、粉じん発生量も少ない吹付け材料およびそれを用いた吹付け工法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、(1)セメント、骨材、四級アンモニウム塩化合物を含有するセメントコンクリートと、珪素の酸化物換算(SiO)とアルカリ金属塩(RO、R:Li、Na、K)の酸化物換算のモル比(SiO/RO)が3.3〜4.5のケイ酸アルカリ金属塩と、強度増進材を含有する吹付け材料、(2)強度増進材が、カルシウムアルミネート、又はカルシウムアルミネートにアルカリ金属又はアルカリ土類金属の硫酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の硝酸塩又は亜硝酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属のアルミン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上を含有する(1)の吹付け材料、(3)四級アンモニウム塩化合物の重量平均分子量が3000〜500000の重合体である(1)又は(2)の吹付け材料、(4)(1)〜(3)のうちのいずれかの吹付け材料を用いてなる吹付け工法、(5)セメント、骨材、四級アンモニウム塩化合物を含有するセメントコンクリートをポンプで圧送し、前記セメントコンクリートに合流混合する直前に、液体圧送ポンプで送液されているケイ酸アルカリ金属塩水溶液と空気搬送されている強度増進材を混合しスラリー化して、前記セメントコンクリートに合流混合することを特徴とする、(4)の吹付け工法、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吹付け材料を用いることで、粉体急結剤に匹敵する凝結性状および初期強度発現性が得られ、硬化体の収縮量やイオンの溶出量も抑制でき、さらに、粉じん発生量も少ない吹付け施工が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で使用する部や%は、特に規定しない限り質量基準である。
【0010】
本発明で使用するセメントとは、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、ブレーン比表面積で2000cm/g以上の石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末等を混合したフィラーセメント、並びに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)等のポルトランドセメントが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が使用可能である。
【0011】
本発明で使用する四級アンモニウム塩化合物とは、式(1)で示される四級アンモニウムイオンにおけるR1、R2、R3、R4は炭素数1〜30のアルキル基(ベンゼン環、カルボニル基、ヒドロキシル基、不飽和結合を有するアルケニルなどを有してもよい)であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、オクタデシル、フェニル、ベンジル、アセチル、ビニル、アリル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
【0012】
四級アンモニウムイオン重合体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの四級化物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、4−ビニル−1−メチルピリジニウムブロマイド等のモノマーを重合してなるホモポリマーや、これらと以下に示すようなモノマーとの共重合体であっても構わない。
例えば、共重合に使用されるモノマーとしては、ビニルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸及びそのアルカリ金属塩、イタコン酸及びそのアルカリ金属塩、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルこはく酸及びそのアルカリ金属塩、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸及びそのアルカリ金属塩、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸及びそのアルカリ金属塩、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩、スチレンスルホン酸及びその塩、ビニルスルホン酸及びその塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート及びその塩、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル燐酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルピリジン、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N′−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N′−ジメチルアミノネオペンチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2ピロリドン、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルミド、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(ポリエチレングリコールの数平均分子量400)、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(ポリエチレングリコールの数平均分子量1000)、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、スチレン等が挙げられる。
四級アンモニウムイオンの対となる陰イオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン、ヒドロキシイオン、酢酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン等が挙げられる。
【0013】
ケイ酸アルカリ金属塩と混合したときの強ばりが強い点で、四級アンモニウム化合物の重合体の使用が好ましい。四級アンモニウム塩化合物の重合体の重量平均分子量は、3000〜500000が好ましい。3000より小さいと、硬化収縮量が大きくなり、500000を越えるとゲル化の反応性が低下する場合がある。
【0014】
四級アンモニウム塩化合物は、セメントコンクリート側に添加されるが、純品をそのまま添加してもよく、水溶液として添加してもよい。
【0015】
四級アンモニウム塩化合物の使用量は、セメント100部に対して、0.001〜50部が好ましく、0.01〜35部がより好ましい。0.001部未満では、瞬時の強ばりを得ることが難しい場合があり、50部を越えると強ばりが弱くなる場合がある。
【0016】
本発明で使用するケイ酸アルカリ金属塩とは、四級アンモニウム化合物の窒素原子とケイ酸分子中の−ONa部が反応し架橋構造を作りゲル化を促進する作用を示す。−ONa部が反応し架橋構造を作りゲル化を促進する作用を示す。
例えば、JIS K 1408に規定されている1号(SiO/RO=1.9〜2.3)、2号(SiO/RO=2.4〜2.7)、3号(SiO/RO=2.9〜3.4)の水ガラス、1種のメタケイ酸ナトリウム(SiO/RO=0.95〜1.05)、2種のメタケイ酸ナトリウム(SiO/RO=0.9〜1.1)、オルトケイ酸ナトリウム(SiO/RO=0.48〜0.52)が挙げられるが、これらは、瞬時にゲル化を起こす能力は小さい。
瞬時のゲル化を起こす能力としては、アルカリケイ酸塩の酸化物換算のモル比(SiO/RO)で決まる。特に、四級アンモニウム化合物を混合したときのゲル化速度は、SiO/ROが3.3〜4.5のときが瞬間的な反応が起こりやすく、吹付け施工を行なう場合はその範囲が特に好ましい。また、SiO/ROが4.5を越えるとコロイダルシリカの組成に近づくので溶解性が悪くなり、強ばり性が得られない場合がある。Rは入手が容易で安価な点でナトリウムが好ましいが、それ以外のアルカリ金属(リチウムやカリウム)のケイ酸塩も使用できる。
ケイ酸アルカリ金属塩の使用量は、セメント100部に対して固形分で0.5〜10部が好ましく、1〜7部がより好ましい。0.5部未満では、十分な急結力を付与することが難しい場合があり、10部を越えると長期強度を阻害する場合がある。
ケイ酸アルカリ金属塩は、吹付け施工での粉じんを低減する目的で水溶液として使用するのが好ましい。
【0017】
本発明の強度増進材とは、未添加の場合に比べより初期強度発現と長期強度発現性を向上する効果を付与するものであり、特に限定されるものではないが、カルシウムアルミネート単独、又はカルシウムアルミネートにアルカリ金属又はアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、及びアルカリ金属のアルミン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上を併用した物質であることが好ましい。
【0018】
本発明のカルシウムアルミネートとは、CaO原料とAl原料を混合したものをキルンで焼成したり、電気炉等で溶融したり等の熱処理をして得られるものである。また、その他の成分として、ナトリウム、カリウム、及びリチウム等のアルカリ金属塩が一部固溶したカルシウムアルミネート、SiOを含有するカルシウムアルミネート、SOを含有するカルシウムアルミネートが挙げられる。これらの中では、反応活性の点で非晶質のカルシウムアルミネートが好ましい。カルシウムアルミネートの粒度はブレーン値で3000cm/g以上が好ましい。3000cm/g未満だと急結力が低下する場合がある。
【0019】
本発明で使用するアルカリ金属又はアルカリ土類金属の硫酸塩とは、無水セッコウ、半水セッコウ、ニ水セッコウ、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属亜硫酸塩、硫酸アルミニウム、ミョウバン類等が挙げられる。
【0020】
本発明で使用するアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩とは、炭酸カルシウム、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩等が挙げられる。
【0021】
本発明で使用するアルカリ金属又はアルカリ土類金属の硝酸塩とは、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ土類金属硝酸塩、アルカリ金属亜硝酸塩等が挙げられる。
【0022】
本発明で使用するアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物とは、水酸化カルシウム、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。
【0023】
本発明で使用するアルカリ金属のアルミン酸塩とは、アルミン酸リチウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等が挙げられる。
【0024】
本発明のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の硫酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の硝酸塩又は亜硝酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属のアルミン酸塩は、カルシウムアルミネートと併用する場合は、吹付け性状に悪影響を与えない範囲で使用すればよい。
【0025】
本発明の強度増進材の使用量は、セメント100部に対して1〜15部が好ましく、3〜10部がより好ましい。1部未満では、十分な強度発現性を付与できない場合があり、15部を超えても効果が頭打ちとなる可能性がある。
【0026】
本発明のケイ酸アルカリ金属塩水溶液と強度増進材の混合比率は、特に限定するものではないが、粉じんの発生がなくスラリー化が完全にできる比率であれば問題ない。概ね、強度増進材100部に対してケイ酸アルカリ金属塩水溶液が40〜120部が目安である。
【0027】
本発明のセメントコンクリートは、吹付けが可能であれば特に配合は限定されるものではない。一般的な配合としては、スランプ10cm程度、W/C=60%程度、s/a=60%程度、セメント量360kg/m程度、砂利の最大寸法13mmで実施されている場合が多く、高強度タイプでは、スランプ20cm程度、スランプフローで25〜35cm、W/C=40〜50%程度、s/a=60%程度、セメント量400〜500kg/m程度、砂利の最大寸法13mmで実施されている場合が多い。
本発明の吹付け材料を使用することで、400kg/m以下でも、従来の吹付けよりも低粉じんで高い初期強度を得ることできる。
【0028】
本発明で使用する骨材は、特に限定するものではなく、市販されているあらゆる骨材の使用が可能であり、吹付け施工に支障をきたさないものであれば問題ない。
【0029】
本発明では、吹付け施工に支障をきたさない範囲で、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、凝結遅延剤、セルロースエーテル類、ポリエチレンオキサイド類、多糖類などの増粘剤、消泡剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、高分子エマルジョン、高分子凝集剤、ベントナイトなどの粘土鉱物やハイドロタルサイト等のアニオン交換体等の各種添加剤、高炉水砕スラグ微粉末や高炉徐冷スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、石灰石微粉末等の混和材料、無水セッコウ等のセッコウ類、からなる群のうちの1種又は2種以上を併用することが可能である。
【0030】
本発明の吹付け方法は特に限定するものではないが、練り混ぜたコンクリートは、ピストンポンプ方式の圧送機あるいは空気搬送式の圧送機で圧送すればよい。
ケイ酸アルカリ金属塩の水溶液は、プランジャーポンプやスクイズポンプ等の液体圧送ポンプで送液すればよい。強度増進材の圧送方法は、粉体を圧縮空気とともに空気搬送できる装置(たとえば、ナトムクリート)を使用すればよい。
また、強度増進材をスラリ−状態でコンクリートに添加する場合は、コンクリートに合流する手前で送液されてくるケイ酸アルカリ金属塩の水溶液を空気搬送されている強度増進材に合流しスラリー状としたスラリー化物をコンクリートに合流すればよい。スラリー化する場合は、ケイ酸アルカリ金属塩の水溶液も圧縮空気を導入してミスト化したものを、空気搬送されてくる強度増進材に合流してもよい。
ケイ酸アルカリ金属塩の水溶液や強度増進材のコンクリートとの合流位置は、閉塞などによって吹付け施工ができない状態にならない位置であれば特に限定するものではない。例えば、ケイ酸アルカリ金属塩の水溶液を合流する位置は、吹付けノズルより後方0.2〜3mであればよい。強度増進材の合流位置は、吹付けノズルより後方0.2〜3mであればよく、ケイ酸アルカリ金属塩の合流位置の前後の位置どちらでもよい。また、強度増進材をスラリー状態で合流する場合も、スラリー化物の合流位置は、吹付けノズルより後方0.2〜3mであればよい。
【実施例】
【0031】
「実験例1」
各材料の単位量、セメント360kg/m、細骨材1,021kg/m、粗骨材691kg/m、水216kg/m、セメント100部に対して四級アンモニウム塩化合物(1)を0.5部加え吹付けコンクリートを調製した。
この吹付けコンクリートを吹付け圧力0.4MPa、吹付け速度10m/hの条件下で、コンクリート圧送機「MKW−25SMT」によりポンプ圧送した。液体急結剤搬送装置で圧縮空気とともにケイ酸アルカリ金属の水溶液(固形分30%に調整)Cを固形分で3部と圧縮空気で粉体輸送されてくる強度増進材5部を表に示す種類としセメントコンクリートと合流する直前で混合したスラリー状の急結剤をノズル先端から0.6mの位置でセメントコンクリートと合流混合し吹き付けた。この急結性吹付けコンクリートについて厚付け性、粉じん濃度、コンクリート圧縮強度、硬化収縮量、ケイ酸イオンの溶出量を測定した。
尚、比較のために、市販の粉体急結剤および硫酸アルミニウムを主成分とする液体急結剤を用いて同じ試験を行った。結果を表2に示す。
【0032】
(使用材料)
粗骨材:新潟県糸魚川市姫川産川砂利、表乾状態、比重2.66、最大寸法13mm
細骨材:新潟県糸魚川市姫川産川砂利、表乾状態、比重2.62、最大寸法5mm
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品
四級アンモニウム塩化合物(1):ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体の30%水溶液、重合度1000、市販品
ケイ酸アルカリ金属塩水溶液C:モル比3.72、市販品
強度増進材:表1に示す配合割合の強度増進材を使用した。
カルシウムアルミネート:C12(12CaO・7Al)組成に相当する溶融物を急冷した非晶質、ブレーン比表面積5900cm/g
硫酸塩:無水セッコウ、市販品
硝酸塩:硝酸カルシウム、市販品
炭酸塩:炭酸ナトリウム、市販品
水酸化物:水酸化カルシウム、市販品
アルミン酸塩:アルミン酸ナトリウム、市販品
市販の液体急結剤(L):主成分硫酸アルミニウム、固形分濃度41%、懸濁状
市販の粉体急結剤(P):セメント鉱物系粉体急結剤
【0033】
【表1】

【0034】
(測定方法)
厚付け性:吹付けノズルを1mの範囲で繰り返し動かしながら吹付けコンクリートを天井面に吹き付け、はく落するまでの厚みを計測した。30cm以上の厚みになったら良好な吹付け性と判断し試験を止めた。なお、試験を止めてから24時間以内ではく落した場合は厚付け性が不良と判断した。吹き付けた下地は鉄板。
粉じん濃度:急結性吹付けコンクリートを10m/hの圧送速度で10分間、模擬トンネルに吹付けた。吹付け場所より5mの定位置で粉塵量を粉塵計(柴田化学株式会社、測定範囲0.01〜100mg/m、P−5L型)により測定した。
コンクリート圧縮強度:材齢1時間、24時間の圧縮強度は、幅25cm×長さ25cmのプルアウト型枠に設置したピンを、プルアウト型枠表面から急結性吹付けコンクリートで被覆し、型枠の裏側よりピンを引き抜き、その時の引き抜き強度を求め、(圧縮強度)=(引き抜き強度)×4/(供試体接触面積)の式から圧縮強度を算出した。材齢28日の圧縮強度は、幅50cm×長さ50cm×厚さ20cmの型枠に急結性吹付けコンクリートを吹付け、1日後にコアドリルで採取した直径5cm×長さ10cmの供試体を20トン耐圧機で測定し、圧縮強度を求めた。測定までの養生は20℃水中養生とした。
硬化収縮量:専用型枠(10×10×36cm)に吹付けて供試体を作製した。材齢1日後脱型し基長を行い、温度20℃、湿度60%の室内で28日間養生後、収縮量を測定した。測定はJIS R 1129-3(ダイヤルゲージ法)に準拠した。
ケイ酸イオンの溶出量:圧縮強度と同様にコアドリルで試験体を採取し、ジョークラッシャーで粉砕した。その粉砕物100gを1000gの純粋に加え、1時間振動器を用いて攪拌した。その後、ろ過してろ液についてイオンクロマトグラフィーを用いてケイ酸イオンの溶出量を測定した。
【0035】
【表2】

【0036】
「実験例2」
各材料の単位量、セメント360kg/m、細骨材1,021kg/m、粗骨材691kg/m、水216kg/m、セメント100部に対して四級アンモニウム塩化合物(1)を0.5部加え吹付けコンクリートを調製した。
この吹付けコンクリートを吹付け圧力0.4MPa、吹付け速度10m/hの条件下で、コンクリート圧送機「MKW−25SMT」によりポンプ圧送した。液体急結剤搬送装置で圧縮空気とともにケイ酸アルカリ金属の水溶液(固形分30%に調整)Cを固形分で3部と圧縮空気で粉体輸送されてくる強度増進材5部を表に示す種類とし、セメントコンクリートに別々に合流混合した。合流混合位置はケイ酸アルカリ金属の水溶液がノズル後方0.5mの位置で、強度増進材がノズル後方0.7mの位置で添加した。この急結性吹付けコンクリートについて実験例1と同様に性能を評価した。結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
「実験例3」
強度増進材a、b、e、o用いて添加率を表に示すように変えたこと以外は実験例1と同様に行なった。結果を表3に示す。
【0039】
【表4】

【0040】
「実験例4」
セメント100部に対して四級アンモニウム塩化合物(1)を0.5部、強度増進材b5部、ケイ酸アルカリ金属の水溶液(固形分30%に調整)を固形分で表に示すように加えたこと以外は実験例1と同様に行なった。結果を表4に示す。
【0041】
(使用材料)
ケイ酸アルカリ金属塩水溶液A:2号水ガラス、モル比2.55 市販品
ケイ酸アルカリ金属塩水溶液B:3号水ガラス、モル比3.32 市販品
ケイ酸アルカリ金属塩水溶液D:モル比4.48 市販品
【0042】
【表5】

【0043】
「実験例5」
セメント100部に対してケイ酸アルカリ金属塩Cを3.0部とし、強度増進材b5部、四級アンモニウム塩化合物を表に示すように加えたこと以外は実験例1と同様に行なった。結果を表6に示す。
【0044】
(使用材料)
四級アンモニウム塩化合物(2):市販しているテトラメチルアンモニウムクロライドの50%水溶液
四級アンモニウム塩化合物(3):ジアリルジメチルアンモニウムヒドロキシド重合体の30%水溶液、重量平均分子量95000 市販品
四級アンモニウム化合物(4):ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体の30%水溶液、重量平均分子量3100、市販品
四級アンモニウム化合物(5):ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体の30%水溶液、重量平均分子量485000、市販品
【0045】
【表6】

【0046】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の吹付け材料は、セメント量が400kg/m以下でも一般的な粉体急結剤や液体急結剤を使用したときよりも高い初期強度発現性が得られ、硬化体の収縮量やイオンの溶出量も抑制でき、さらに、スラリー状体でセメントコンクリートに添加するので粉じん発生量も少ない吹付け施工への利用が可能となるため、土木、建築分野で広範に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、骨材、四級アンモニウム塩化合物を含有するセメントコンクリートと、珪素の酸化物換算(SiO)とアルカリ金属塩(RO、R:Li、Na、K)の酸化物換算のモル比(SiO/RO)が3.3〜4.5のケイ酸アルカリ金属塩と、強度増進材を含有する吹付け材料。
【請求項2】
強度増進材が、カルシウムアルミネート、又はカルシウムアルミネートにアルカリ金属又はアルカリ土類金属の硫酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の硝酸塩又は亜硝酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属のアルミン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の吹付け材料。
【請求項3】
四級アンモニウム塩化合物の重量平均分子量が3000〜500000の重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の吹付け材料。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1項記載の吹付け材料を用いてなる吹付け工法。
【請求項5】
セメント、骨材、四級アンモニウム塩化合物を含有するセメントコンクリートをポンプで圧送し、前記セメントコンクリートに合流混合する直前に、液体圧送ポンプで送液されているケイ酸アルカリ金属塩水溶液と空気搬送されている強度増進材を混合しスラリー化して、前記セメントコンクリートに合流混合することを特徴とする、請求項4記載の吹付け工法。

【公開番号】特開2011−84440(P2011−84440A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239304(P2009−239304)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】