説明

周期性パターン検査装置

【課題】周期性のあるパターンをもつ被検査体のムラ欠陥を検出するためのムラ検査方法の、映り込みの発生を抑制して、有効な検査範囲の拡大、良好な欠陥の検出が可能な照明角度を選択できるようにすること、また照明角度の制限を減らすことによって、ムラ欠陥と正常部との画像コントラストの向上、結果的にムラ検出能力の向上に寄与すること。
【解決手段】周期性パターンが形成された基板に、照明光を複数の角度で斜めに照射し、前記周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査するムラ検査方法であって、被検査体である周期性パターンとそれ以外の周辺パターンとの位置関係と、照明投光角度から、映り込みの生じる位置を予測し、映り込みが無い位置でムラ検査を実施することができる検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周期性パターンを有する被検査体のムラ欠陥を検査するための検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周期性パターンとは、一定の形状が一定の間隔を持って配列されたパターンの集合体を称す。例えば、ストライプ状のパターンが所定の周期で配列した一次元の周期性パターン、または島状や格子状の単位パターンが所定の周期で配列した行列状のパターン等が該当する。周期性パターンを有する被検査体としては特に、半導体装置、撮像デバイスおよび表示デバイス等を製造する際にフォトリソグラフィ処理の露光工程で用いられるフォトマスクが挙げられる。さらに撮像デバイスや表示デバイスに用いられるカラーフィルタなどが挙げられる。
【0003】
このような周期性パターンを有する被検査体において、その周期性や個々の単位パターン形状に異常が発生しているとき、ムラ欠陥として観察できる。そのようなムラ欠陥の検査を行う方法や装置には、被検査体の周期パターンの配列する面に対して鉛直方向以外から光を当てる照明手段が採られるものが発明されている。
【0004】
しかしその様なムラ欠陥検出の検査装置や検査方法の対象である被検査体は周期性パターンの周囲に周期性パターン以外の形状をもつパターンが設置されることがある。例えば半導体製品においては配線やフォトリソグラフィ工程で露光するための位置合わせに用いるアライメントパターンなどである。前述のムラ欠陥検出の検査装置や検査方法では、これらの被検査領域外のパターンに照明が当たり、その反射光や散乱光が迷光となって周期性パターンの被検査領域に映り込むことがある。これらの映り込みを、実際に生じているムラ欠陥と区別しながら検査を行う必要がある。
【0005】
ムラ欠陥と映り込みとを区別する作業は、異なる条件での検査方法や別の検査装置による多重チェックが必要な場合もあり、時間や装置の運用効率低下に繋がる問題となっている。そのため検査装置や検査方法には映り込みの生じない装置構造や光学系が求められる。
【0006】
周期性パターンを有する被検査体、例えばCCDやCMOSなどの撮像デバイスや各種表示装置などの表示デバイスを製造するのに用いられるフォトマスクにおけるムラ欠陥は、周期的な画素のパターンの周期ずれや位置ずれやサイズずれといった変動が、規則的に配列して発生していることが原因であることが多い。そのため個々のパターン検査では発見することが困難で、周期性パターンを広い領域において観察した時に初めて認識できる欠陥である。
【0007】
周期性パターンにおける従来のムラ検査は、同軸の透過照明や平面照明を用いて透過画像を撮像し、各々の画像での光強度を比較することによって正常部とムラ欠陥部の弁別を行っている。しかし、正常部とムラ欠陥部における光の強度差は必ずしも大きいとは限らず、得られる画像のコントラストは低い。そのため、コントラストの低い画像に対しその強度差の処理方法を工夫することでコントラストの向上を図り、ムラ欠陥部を抽出して検査を行っている(特許文献1参照)。
しかし、前記従来技術においては、格子状周期性パターンの遮光部のムラ、特に開口部の大きいパターンのムラを撮像した画像において、正常部とムラ欠陥部のコントラスト向上が小さいことがある。この様に、元の画像のコントラストが低い場合、強度差の処理を工夫したとしても、目視での官能検査方法より低い検査能力しか達成できないという問題
がある。
【0008】
近年、半導体回路の微細化や、微細でかつ高い輝度出力を目指した表示機器の開発、また高い感度をもつ撮像機器の開発により、これらの製品で使用される周期性パターンはいっそう微細化したり開口部比率が増大したりする傾向が進んでいる。将来的には、より開口部が大きく、より微細な形状の周期性パターンのムラ検査装置及びムラ検査方法が必要となる。すなわち、従来の光の振幅による光の強度(明るさ)の強弱のみの出力では限界がある。
【0009】
そこで、周期性のあるパターン、例えばブラックマトリクスに発生するムラ欠陥を安定的かつ高精度に検出することを目的として、例えば特許文献2の検査装置が提案された。特許文献2の検査装置は、照明光を被検査体に照射し、周期性パターンによって生じる透過回折光の画像を撮像して検査するというものである。周期性パターンの正常部では開口部の形状・ピッチが一定となるため互いに干渉し一定の方向に回折光を生じる。それに対し、ムラ欠陥部では開口部の形状、ピッチが不規則になるため、形状、ピッチに応じて種々の方向に、種々の強さで回折光が生じる。この検査装置では、正常部とムラ欠陥部における回折光強度コントラストの違いから、ムラ欠陥部を検出する。
【0010】
周期性パターンを持つ被検査体の1つとして例えば撮像装置用のフォトマスクが挙げられるが、フォトマスクは、透明基板上にクロム等の遮光膜やMoSi等のハーフトーン膜が設けられ、これが選択的に除去されることで所定のパターンを形成して構成されたものが知られており、半導体回路、撮像デバイス及び表示デバイスなどの製造工程で用いられる。
【0011】
フォトマスクの製作にはまず、透明基板上に遮光膜(またはハーフトーン膜)を成膜したものにフォトレジストを塗布する。次にフォトレジスト上に描画装置で所定のパターンを描画する。その後、描画したフォトレジスト膜を現像し、描画部か非描画部のどちらか一方を選択的に除去する。現像によって残されたフォトレジスト膜をマスクとして遮光膜にパターン形状をエッチングし、その後残されたフォトレジストを除去することでフォトマスクが完成する。エッチングの手法として、遮光膜に対して腐食性を有す液体を使用するウェットエッチングや、遮光膜に対し腐食性を有す気体によるドライエッチングが挙げられる。
【0012】
フォトマスクにおいては、パターンを描画する際、一般的に電子ビーム描画装置やレーザビーム描画装置が用いられる。これらのパターン描画装置では、フォトマスク上の所定サイズの領域(描画単位領域)内にあるパターンを描画したら、次の描画単位領域に移ってその中にあるパターンを描画する、というステップアンドリピート方式でフォトマスク全体のパターンを描画する。
【0013】
フォトマスクの描画工程では、ある描画単位領域と隣接する描画単位領域の境界部分において、数nmオーダーで、ピッチずれ、サイズずれおよび位置ずれといった描画パターンの変動が連続して生じることが知られている。つまり、この描画単位領域の大きさの周期でムラ欠陥が発生する傾向があり、周期性パターン領域におけるムラ欠陥の発生様式、面内分布は、描画単位領域形状に依存するといってもよい。例えば描画単位領域の形状が帯状であった場合には、ムラ欠陥も帯または線が描画単位領域の寸法の周期で規則的に整列した画像が見られることがある。また描画単位領域の形状が矩形であった場合、ムラ欠陥は濃淡のある市松模様に似た画像となって見られることがある。この様にムラ欠陥は人工的な模様として見られることもある。
【0014】
実際のフォトマスクでは、フォトリソグラフィを行う際にフォトマスクとパターン転写を
行う半導体基板との間で位置合わせを行うための照準となるアライメントパターンをフォトマスク上に設ける場合がある。またCCDやCMOSなど撮像装置用のフォトマスク上には、画素を製造するための周期性パターンが設置された領域の周囲に、信号を取り出すための配線パターンなどが配置されている事がある。この用なパターンは前述の様な被検査体に照明光を当てる場合に、被検査領域と共に光が当たってしまうことがある。これらのパターンからの迷光が生じた事により、被検査領域への映り込みが発生する原因となる。
【0015】
フォトマスクに設置される配線やアライメントパターンは矩形や直線からなるパターンが多く用いられている。そのためこれらのパターンによって生じる迷光や映り込みも矩形や直線的なパターンとなる。このような映り込みが生じている場合、フォトマスクの描画装置の描画精度の不足によって生じたムラ欠陥が実際に生じているのか、映り込みなのかを判断するのは容易ではない。目視検査であれば作業者の習熟が必要である。またムラ欠陥検査装置による検査の場合は実際のムラ欠陥と映り込みと疑われる欠陥が検出された場所を、他の検査装置や方法によって再度検査・確認することが必要となる。これらの追加となる作業量の低減の為には、映り込みが生じにくい検査装置や検査方法の確立が必要とされる。そのために例えば特許文献3の様な機構が提案されている。
【0016】
しかしながら特許文献3で示された検査方法では、照明の照射角度や検査可能な領域に制限が加えられる。ムラ欠陥を撮像する場合には照明の角度によって画像のコントラストが大きく変化する。そのために照明の照射角度がフォトマスク内のパターン配置によって制限されると、最もムラ欠陥と正常部とのコントラストが得られる照明の条件を選択できなくなる可能性が危惧される。また仮に被検査体である周期性パターンが同一の単位パターン、同一の周期で設置されていても、周辺のパターン配置によって検査時に許容される照明の照射角度が変化するため、同じ条件での評価が出来なくなるという問題が生じる。また、ムラ欠陥は周期性パターンの被検査領域内のあらゆる場所に生じる可能性を持っており、検査不可能な領域があることは望ましくない。映り込みの発生を抑えると共に被検査体への照明条件の制約を少なくする検査装置や検査方法が必要である。
【0017】
特許文献4では、透明基板を透過した光の回折光をカメラで受光して画像を取得している。しかしこの構造では、被検査領域が透明基板の端に位置していた場合には基板端面からの反射光が映り込む為に検査可能な照明照射角度が限定される。反射回折光をカメラで受光する事により、透明基板面内で検査可能な領域の制限を極小化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2002−148210号公報
【特許文献2】特開2006−208084号公報
【特許文献3】特開2008−26306号公報
【特許文献4】特願2010−122708号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は上記の様な問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは撮像デバイス用フォトマスクや表示デバイス用フォトマスクの様に、周期性のあるパターンを持つ被検査体のムラ欠陥を検出するためのムラ検査装置および方法における、映り込み発生の抑制により有効な検査範囲を拡大することで欠陥の良好な検出が可能な照明の照射角度を選択できるようにし、また照明の照射角度の制限を減らすことでムラ欠陥と正常部との画像輝度コントラストを向上させることにより、ムラ検出能力を向上することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1は、透明基板上に形成された周期性パターンのムラ検査装置であって、検査対象である周期性パターンが形成された透明基板を載置するステージと照明部と撮像部と処理・制御部から構成されており、
前記ステージは、検査対象である周期性パターンが形成された透明基板を保持・固定する治具と該治具が設置され、該治具を回転させることができる水平面内回転ステージと該水平面内回転ステージが設置され、該水平面内回転ステージをX−Y方向に並進移動させることができるX−Yステージとからなり、
照明部は、光源と照明投光部と該光源からの光を該照明投光部に導くライトガイドと照明投光部保持治具と円弧レールと該円弧レールに沿って該照明投光部を移動させる駆動機構とからなり、
撮像部は、レンズとカメラと該カメラが撮像した画像情報を処理・制御部に伝達する信号線からなり、
処理・制御部は、情報処理手段とステージ動作制御装置と情報の表示手段と情報入力手段とからなり、
前記情報処理手段は、前記照明投光部と前記透明基板の鉛直方向とが為す角度がある値の時に撮像した画像を記憶し、次に前記照明投光部と前記透明基板の鉛直方向とが為す角度が異なる値の時に撮像した画像を記憶し、それらの画像を比較することによって、異なる位置にムラが見出される場合は、そのムラは前記照明投光部からの光の映りこみによるムラであると判定し、また周期的パターン以外の周辺部のパターンとの位置関係から映り込みによるムラが発生する領域を予測し、映り込みによるムラが発生しない領域でムラ検査を実施することが可能であることを特徴とする周期性パターン検査装置である。
【0021】
また請求項2は、映り込みが生じない複数の条件において撮像した画像領域を組み合わせることによって検査対象の周期性パターンの全体を検査する事を特徴とする請求項1に記載の周期性パターン検査装置である。
【0022】
また請求項3は、検査対象である周期性パターンが形成された基板表面に対し、垂直または水平な面内で照明光の角度を変化させる事を特徴とする請求項1または2に記載の周期性パターン検査装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の検査方法または検査装置によれば、周期性のあるパターン、特に撮像デバイス用フォトマスクや表示デバイス用フォトマスクなどの被検査体の検査において、検出された欠陥から、映り込みとムラ欠陥とを効率的に弁別することができる。また、映り込みの影響を排除しつつ、周期性パターン部が設置された領域の検査可能領域を拡大することができる。さらに、被検査体への照明角度条件の制限を行わずとも映り込みの発生を排除することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の方法を適用するムラ検査装置の一形態の概略図
【図2】図1のステージを円弧レール側から見た場合の一例を示した概略図
【図3】周期性パターンが形成された領域に投光した場合に、被検査体内部に映り込み部が形成される場合の一例を示す概略図
【図4】透明な被検査体に屈折率が異なる領域から光が入射した場合の光線がたどる経路の一例を示す概略図
【図5】異なる照明方向によって被検査体へ投光した場合の、映り込みとムラ欠陥の可視化の一例を示す概略図
【図6】円弧レールによって照明角度を変えた事によって映り込み位置が変わり、図3で示した検査可能な領域であるaとcがa’とc’に変化することの一例を示す概略図
【図7】透明基板を透過する回折光をカメラで受光する場合に生じる、透明基板保持治具の影による映り込みの発生例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明に係る実施形態の方法を適用するムラ検査装置50の一部を概略的に示した構成図であり、反射回折光を得るための装置構成例を示している。なお、本装置は外乱光や迷光を極力低減させた暗環境で稼動されることが望ましい。
【0026】
図1に示すように、本ムラ検査装置は検査画像を取得する為の撮像部20と、照明部30と、被検査体10の位置決め動作および基板搬送動作が可能なステージ52と、処理・制御部70から構成されている。
ここで、被検査体10の基板面には周期性パターンが形成されている。ここで基板面とは被検査体10の厚さ方向の一方に位置する面である。
【0027】
処理・制御部70は、照明部30、ステージ52、撮像部20を構成する機器類の動作制御を行い、撮像部20からの出力を画像情報、あるいは信号情報として入力を行い、演算処理を行う。さらにその処理結果や処理画像を、表示手段72に表示する。
【0028】
照明部30では、円弧レール33が設置されており、円弧レール33には照明投光部31が設けられており、光源35からはライトガイド36を用いて導光している。円弧レール33上で照明投光部31を駆動することによって被検査体10の基板面に対して垂直方向の照射角度調整を可能としている(なお、この駆動軸をφ軸と定義する)。円弧レール33上のどの位置にあっても照明投光部31は、ステージ52上の所定位置に照明光を照射することができるように調整されており、これによって、ステージ52上の被検査体10の基板面に対して、様々な照射角度からの照射が可能となっている。なお、照明投光部31には平行光学系が設けられている。
【0029】
図2は図1のステージ52を円弧レール33側から見た例を示したものである。ステージ52は、被検査体10を図2のX軸方向およびY軸方向に平行移動する機能と、被検査体10をその基板表面と直交する基板面法線周りの回転方向に360°回転させる機能を有する(この回転中心の軸をθ軸とする。)。これによって、予め設定した動作手順に従って被検査体10をX軸およびY軸方向に駆動する。また、θ軸を中心として被検査体10を面内回転させることにより、被検査体10の基板面内への照明照射方向の調整が可能である。
【0030】
撮像部20は、カメラ21、レンズ22から構成される。撮像部20にて、被検査体10を撮像し、原画像を取得する。さらに、周期性パターンが含まれる領域部分を原画像から切り出す処理を実施する。また、切り出した画像を合成する処理を実施する。
【0031】
図3に、被検査領域である検査対象の遮光膜層12に開口部14Aを経由した光によって映り込みが生じている場合における映り込みを含む回折光42の経路を示す。図3において点線矢印で示された経路を進む入射光が開口部14Aを通過後、透明基板11の底面(検査対象の遮光膜層が形成されていない面)で反射されて、周期パターンが設置されている検査対象の遮光膜層12へ到達し、検査対象の遮光膜層12のレンズ22側への鉛直方向へ回折する光がカメラに画像として映り込む。図3の位置関係においてカメラ21で画像を取得すると、図中のaとcの領域は映り込みが生じないが、bで示す領域は開口部14Aからの反射光が映り込む事によりaやcよりも明るく見える。開口部14Aの端から、映り込みが生じる位置までの距離をdとする。
【0032】
図3の状態でカメラ21を用いて周期性パターンが形成されている検査対象の遮光膜層12を撮像した画像は図5(a)の様に見える。この画像は、検査装置により被検査体10を撮像し、周期性パターンが形成されている検査対象の遮光膜層12の写っている画像領域のみを情報処理手段71で切り出したものである。ムラ欠陥63と共に映り込み部64も周期性パターンが形成されている任意の投光方向で撮像した遮光膜層61の領域内に写っている。この画像に対しムラ欠陥検出処理を適用すると、ムラ欠陥63のみならず映り込み部64もムラ欠陥として検出されてしまう。
【0033】
上記検査装置50の構成において周辺パターンから映り込みまでの距離dは以下の数1で求められる。
【数1】

ここでnは被検査基板外の空間の屈折率、nは被検査体10の透明基板11の屈折率で、tは透明基板11の厚さである。φは照明投光部31の照射角度である。φは検査対象の遮光膜面に垂直な方向を0°とする。φ=90°のとき、被検査体10へY軸正方向から被検査体10へ投光される。
【0034】
検査の対象である周期性パターンと異なる開口部を持つ周辺パターンに照明角度φで投光する場合、この光は被検査体の内外で屈折率が異なるため、透明基板の界面にて角度αで屈折しつつ透明基板へ入射する。この様子を図4に示す。また入射角度と屈折角度の関係式は数2で示される。
【数2】

入射した光は透明基板の裏側から基板の外へ透過するものもあるが、遮光膜の無い開口部などに入射した一部の光は基板裏側で反射し、再び遮光膜のある面へ戻ってくる。周辺パターンから映り込みまでの距離dは、入射光が基板に入射した位置から、光が基板表面へ反射して戻る位置までの距離であり、数3で得られる。
【数3】

上記数2、数3より、数4が求められる。
【数4】

【0035】
数4で得られた距離から周辺パターンと被検査領域との距離を差し引くことにより、被検査領域の外縁から映り込みまでの距離を求めることが出来る。パターンの情報からこの処理が行われる。情報処理手段71へパターンの配置情報を入力し、この処理を行っても良い。撮像手段によって得られた画像と、撮像条件から予測された映り込みの位置を比較して、検出されたムラ欠陥が映り込みであるかどうかの判断を下すことができる。
【0036】
被検査体10の検査に適当な投光角度条件で検査を行う際、前述の数4により映り込みが生じることが明らかである場合、次の手段によって回避できる。
【0037】
まず、周期性パターンが形成された検査対象の遮光膜層12の検査に適当な投光角度φにて画像を取得する。次に図6に示す様に円弧レール33によって、投光角度φを周期性パターンが形成された検査対象の遮光膜層12の設置された面と鉛直方向を軸として対称な投光方向(φ軸のマイナス側)から投光し、撮像する。この検査方法によれば、映り込みの原因となる周辺パターンと被検査領域との位置関係が変わり、投光角度φで撮像した画像に生じていた映り込み部64が同じ場所に生じなくなる。
【0038】
しかし例えば図2の様に、検査対象の周期パターンが形成された検査対象の遮光膜層12の周囲に検査対象外の遮光膜のパターンがあると被検査体10の配置によっては図5(b)に示す様に照射角度を変えた際の映り込み部65が反対側から生じる場合もある。
【0039】
φ軸のプラス側とマイナス側で撮像した画像には、それぞれ映り込みの生じる領域と生じ
ない領域が異なっている。プラス方向で撮像した画像のうち映り込みの生じない部分61と、マイナス方向で撮像した画像のうち映り込みの生じない部分62を抽出し、両者を合成することにより図5(c)の様に映り込み部64を含まない周期性パターンが形成された検査対象の遮光膜層12全体の画像が得られる。この画像に対してムラ欠陥を検出する画像処理を適用することにより、映り込みをムラ欠陥と誤認することなく一律に周期パターンの検査が可能となる。
【0040】
また図2に示すステージ52で、θを180°回転させることによって被検査体10を水平面内で回転させても、映り込みの原因となる周辺パターンと被検査領域との位置関係が変わる。このとき投光角度φは変更することなく、θ=0°で生じていた映り込み部64が生じなくなる。θ=0°、θ=180°でそれぞれ得られる画像も図5の(a)と(b)と同様の画像となる。これら2枚の画像から図5(c)を合成できる。
【0041】
透過照明系では、透明基板の保持治具の影が被検査領域に映り込む事により、検査不可能な照明角度条件が生じる場合がある。図7にこの場合の模式図を示す。反射回折光をカメラで受光する事により、透明基板を保持する治具の形状の影響を受けずに被検査領域である周期性パターンの画像を取得することが出来る。
【符号の説明】
【0042】
10…被検査体
11…透明基板
12…検査対象の遮光膜層
13…検査対象外の遮光膜層
14A、14B…開口部
20…撮像部
21…カメラ
22…レンズ
23…カメラの視野幅
30…照明部
31…照明投光部
32…投光方向を変えた照明投光部
33…円弧レール
34…照明投光部保持治具
35…光源
36…ライトガイド
41…遮光膜層からの回折光
42…映り込みを含む回折光
50…検査装置
51…水平面内回転ステージ
52…ステージ
55…ステージ動作制御装置
61…プラス方向で撮像した画像のうち映り込みの生じない部分
62…マイナス方向で撮像した画像のうち映り込みの生じない部分
63…ムラ欠陥
64…映り込み部
65…照射角度を変えた際の映り込み部
66…映り込みを生じさせる光線の軌跡の一例
67…任意の投光方向で撮像した遮光膜層の画像の一部
68…61の投光方向と鉛直を軸として対称な投光方向で撮像した遮光膜層の一部
70…処理・制御部
71…情報処理手段
72…表示手段
73…情報入力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に形成された周期性パターンのムラ検査装置であって、検査対象である周期性パターンが形成された透明基板を載置するステージと照明部と撮像部と処理・制御部から構成されており、
前記ステージは、検査対象である周期性パターンが形成された透明基板を保持・固定する治具と該治具が設置され、該治具を回転させることができる水平面内回転ステージと該水平面内回転ステージが設置され、該水平面内回転ステージをX−Y方向に並進移動させることができるX−Yステージとからなり、
照明部は、光源と照明投光部と該光源からの光を該照明投光部に導くライトガイドと照明投光部保持治具と円弧レールと該円弧レールに沿って該照明投光部を移動させる駆動機構とからなり、
撮像部は、レンズとカメラと該カメラが撮像した画像情報を処理・制御部に伝達する信号線からなり、
処理・制御部は、情報処理手段とステージ動作制御装置と情報の表示手段と情報入力手段とからなり、
前記情報処理手段は、前記照明投光部と前記透明基板の鉛直方向とが為す角度がある値の時に撮像した画像を記憶し、次に前記照明投光部と前記透明基板の鉛直方向とが為す角度が異なる値の時に撮像した画像を記憶し、それらの画像を比較することによって、異なる位置にムラが見出される場合は、そのムラは前記照明投光部からの光の映りこみによるムラであると判定し、また周期的パターン以外の周辺部のパターンとの位置関係から映り込みによるムラが発生する領域を予測し、映り込みによるムラが発生しない領域でムラ検査を実施することが可能であることを特徴とする周期性パターン検査装置。
【請求項2】
映り込みが生じない複数の条件において撮像した画像領域を組み合わせることによって検査対象の周期性パターンの全体を検査する事を特徴とする請求項1に記載の周期性パターン検査装置。
【請求項3】
検査対象である周期性パターンが形成された基板表面に対し、垂直または水平な面内で照明光の角度を変化させる事を特徴とする請求項1または2に記載の周期性パターン検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−58029(P2012−58029A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200197(P2010−200197)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】