説明

周期欠陥検出装置、周期欠陥検出方法、およびプログラム

【課題】帯状体の表面に発生しうる周期欠陥の検出精度の向上を図ることが可能な周期欠陥検出装置、周期欠陥検出方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】決定された初期設定位置ごとに複数の追跡点を設定する追跡点設定部と、設定された追跡点をそれぞれ移動させる追跡点移動部と、移動前の追跡点を含む予め規定された大きさの第1領域の画像と、移動後の追跡点を含む第2領域の画像とに基づく類似度を評価値として追跡点ごとに算出する追跡点評価部と、評価値に基づいて周期欠陥が含まれる第2領域を検出する欠陥検出部とを備え、追跡点設定部は、追跡点評価部が追跡点ごとの評価値を算出すると評価値に対応する移動後の追跡点を複数複製して追跡点を再設定し、欠陥検出部は、追跡点設定部、追跡点移動部、および追跡点評価部にける一連の処理が予め規定された回数繰り返された場合に評価値に基づく検出を行う周期欠陥検出装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周期欠陥検出装置、周期欠陥検出方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板などの帯状体の搬送や圧延は、例えば、搬送ロールや圧延ロールを用いて行われる。ここで、搬送ロールや圧延ロールに異物が付着している場合や、搬送ロールや圧延ロール自体に欠けが生じている場合などには、疵や汚れなどの表面欠陥が帯状体に周期的に発生することがある。上記のような周期的に発生する表面欠陥(以下、「周期欠陥」とよぶ場合がある。)は、一旦発生すると帯状体上に大量に発生するので、周期欠陥が発生した場合には、帯状体の歩留まりの大幅な低下につながる。よって、上記のような周期欠陥を早期に検出して当該周期欠陥の発生源を特定することは、帯状体の品質管理を行う上で非常に重要である。
【0003】
このような中、周期欠陥を検出する技術が開発されている。帯状体を撮像した画像の画素値自体の長手方向の自己相関を計算し、相関値に基づいて周期欠陥を検出する技術としては、例えば、特許文献1が挙げられる。また、帯状体を撮像した画像から欠陥を検出し、検出された欠陥の帯状体における長手位置の間隔頻度を計算することによって、周期欠陥を検出する技術としては、例えば、特許文献2が挙げられる。また、周期欠陥が生じうる帯状体における長手方向の間隔を予め定め、帯状体を撮像した画像を予め定めた間隔で同期加算することにより欠陥と背景とのS/N比を向上させることによって、周期欠陥を検出する技術としては、例えば、特許文献3が挙げられる。また、周期欠陥が生じうる帯状体における長手方向の間隔を複数仮定し、帯状体を撮像した画像を仮定した間隔でそれぞれ同期加算した画像の中から輝度分布が最も大きな画像を選択することによって、周期欠陥を検出する技術としては、例えば、特許文献4が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−156842号公報
【特許文献2】特開平2−74852号公報
【特許文献3】特開平6−324005号公報
【特許文献4】特開2006−105790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1、図2は、周期欠陥を説明するための説明図である。図1は、帯状体10が搬送ロール12より所定の搬送方向(帯状体10の長手方向に対応)に搬送される場合に生じうる周期欠陥を一例を示す説明図である。また、図2は、図1に示す帯状体10の表面を撮像装置により撮像した撮像画像の一例を示している。ここで、図2に示すように、撮像画像の幅(図2に示す画像幅)は、撮影対象の帯状体10の幅よりも大きい。上記は、例えば搬送時に帯状体10が蛇行した場合であっても、帯状体10が撮像画像内に含まれるようにするためである。撮像画像の幅は、例えば、帯状体10の幅に想定される蛇行量を加えた撮影視野幅と、必要とされる撮影分解能とから決定される。
【0006】
図1に示すように、搬送ロール12に異物Aが付着している場合には、異物Aが帯状体10に疵(欠陥の一例)を付けることによって、帯状体10の表面には、例えば搬送ロール12の円周の長さに相当する長さLで周期的に発生する周期欠陥Bが生じる。よって、図1において発生した周期欠陥Bは、例えば図2に示すように、理想的には、帯状体10の幅方向(短手方向)に同一の位置で、かつ帯状体10の長手方向に間隔Lで撮像画像上に現れることが想定される。
【0007】
しかしながら、周期欠陥は、図2に示すように、帯状体10の幅方向に同一の位置で、かつ帯状体10の長手方向に間隔Lで現れることに限られない。図3は、周期欠陥を説明するための説明図であり、帯状体10の表面を撮像した撮像画像を周期欠陥Bに着目して簡略的に表している。ここで、図3では、水平方向が帯状体10の幅方向に対応し、垂直方向が帯状体10の搬送方向に対応する場合を示している。
【0008】
図3に示すように、周期欠陥Bは、帯状体10の幅方向に同一の位置で、かつ帯状体10の長手方向に間隔Lで現れることもあれば(図3(a))、幅方向の位置および長手方向の間隔がそれぞれずれることもある(図3(b))。ここで、撮像画像上に現れる周期欠陥Bに幅方向の位置のズレが生じる場合としては、例えば、斜行して搬送されている帯状体10(すなわち、帯状体10のエッジは、搬送方向に対して傾いている。)に周期欠陥が発生する場合が挙げられる。また、撮像画像上に現れる周期欠陥Bに長手方向の間隔のズレが生じる場合としては、例えば、帯状体の厚み変動や張力変動がある帯状体10に周期欠陥が発生する場合が挙げられる。
【0009】
上記のように、撮像画像に現れる周期欠陥Bには、帯状体10の斜行や帯状体10の厚み変動などの影響によって、帯状体10の幅方向の位置および/または帯状体10の長手方向の間隔Lにズレ(以下、総称して「位置ズレ」とよぶ場合がある。)が生じる場合がある。したがって、帯状体10を撮像した撮像画像に基づいて帯状体10に発生した周期欠陥Bを検出するためには、上記位置ズレを考慮する必要がある。
【0010】
また、帯状体10が、例えば鉄鋼業の圧延鋼板製造ラインで製造された鋼板である場合には、品質をより向上させるために、軽微な周期欠陥(例えば、撮像画像上での輝度変化が小さい周期欠陥や、輝度変化の面積が小さな周期欠陥)をより確実に検出して不良な帯状体10の流出を防止する必要がある。
【0011】
ここで、特許文献1に記載の、帯状体を撮像した画像の画素値自体の長手方向の自己相関を計算し、相関値に基づいて周期欠陥を検出する従来の技術(以下、「従来の技術1」という。)を用いる場合、撮像画像に含まれる周期欠陥が軽微な欠陥であるときには、軽微な周期欠陥は輝度値の変換が小さいために地合に負けて有意な相関を出すことができない。したがって、従来の技術1を用いたとしても、周期欠陥を検出できない恐れがある。
【0012】
また、特許文献2に記載の、帯状体を撮像した画像から欠陥を検出し、検出された欠陥の帯状体における長手位置の間隔頻度を計算することによって、周期欠陥を検出する従来の技術(以下、「従来の技術2」という。)を用いたとしても、従来の技術1と同様に、周期欠陥が軽微であるときには、周期欠陥1つ1つを検出できない。よって、従来の技術2では欠陥の間隔を計算することができない場合があるので、従来の技術2を用いたとしても周期欠陥を検出できない恐れがある。
【0013】
また、特許文献3に記載の、帯状体を撮像した画像を予め定めた間隔で同期加算することにより欠陥と背景とのS/N比を向上させることによって周期欠陥を検出する従来の技術(以下、「従来の技術3」という。)と、特許文献4に記載の、帯状体を撮像した画像を仮定した間隔でそれぞれ同期加算した画像の中から輝度分布が最も大きな画像を選択することによって周期欠陥を検出する従来の技術(以下、「従来の技術4」という。)とを用いる場合には、図2や図3(a)に示す理想的な周期欠陥を検出できる可能性はある。
【0014】
しかしながら、従来の技術3および従来の技術4は、周期欠陥が、帯状体の幅方向には(欠陥の大きさに比べてほぼ)同じ位置、帯状体の長手方向には(欠陥の大きさに比べてほぼ)一定間隔で出現するという仮定に基づいているので、例えば図3(b)に示すように周期欠陥に位置ズレが生じた場合には、周期欠陥を検出することができない。また、従来の技術3および従来の技術4における上記仮定は、帯状体が例えば鉄鋼業の圧延鋼板製造ラインで製造された鋼板であるとき、圧延現象が非定常状態(すなわち、板厚変動がある場合や、張力変動がある場合など)である場合(圧延工程でのコイルの先端や尾端部分など)には、特に成立しない。また、上記仮定が成立しない場合には、同期加算しても欠陥が重ならないのでS/Nが向上しない(逆に劣化する)。また、帯状体10の長手方向の間隔が異なる複数の周期欠陥が混在している場合には、これらの周期欠陥の全てを検出できない恐れがある。したがって、従来の技術3と従来の技術4とを用いたとしても、周期欠陥を検出できるとは限らない。
【0015】
上記のように、従来の技術1〜従来の技術4(以下、総称して「従来の技術」という。)を用いたとしても、帯状体に発生しうる周期欠陥の検出精度の向上は、望むべくもない。
【0016】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、帯状体の表面に周期的に発生しうる周期欠陥の検出精度の向上を図ることが可能な、新規かつ改良された周期欠陥検出装置、周期欠陥検出方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点によれば、搬送される帯状体の表面が撮像された撮像画像に基づいて、上記帯状体の表面に周期的に発生した周期欠陥を検出する周期欠陥検出装置であって、上記周期欠陥を探索するための基準点である追跡点を初期設定する上記撮像画像の位置を決定し、決定された上記位置ごとに複数の上記追跡点を設定する追跡点設定部と、上記追跡点設定部において設定された上記追跡点について、上記帯状体の長手方向における上記周期欠陥の推定される平均値である基準間隔、上記帯状体の短手方向に生じうる上記周期欠陥の推定最大ズレ量、および上記帯状体の長手方向に生じうる上記周期欠陥の上記基準間隔からの推定最大ズレ量に基づく乱数により、上記追跡点設定部において設定された上記追跡点をそれぞれ移動させる追跡点移動部と、移動前の上記追跡点を含む予め規定された大きさの第1領域の画像と、移動後の追跡点を含む上記第1領域と同一の大きさの第2領域の画像とに基づく類似度を、追跡点の評価値として追跡点ごとに算出する追跡点評価部と、上記追跡点評価部が算出した上記評価値に基づいて、上記周期欠陥が含まれる上記第2領域を検出する欠陥検出部とを備え、上記追跡点設定部は、上記追跡点評価部が追跡点ごとの評価値を算出すると、上記評価値に対応する個数分移動後の追跡点を複数複製して、追跡点を再設定し、上記追跡点移動部は、上記追跡点設定部において再設定された上記追跡点をそれぞれ移動させ、上記追跡点評価部は、再設定された上記追跡点の評価値を算出し、上記欠陥検出部は、上記追跡点設定部、上記追跡点移動部、および上記追跡点評価部にける一連の処理が予め規定された回数繰り返された場合に、上記評価値に基づく検出を行う周期欠陥検出装置が提供される。
【0018】
かかる構成により、帯状体の表面に周期的に発生しうる周期欠陥の検出精度の向上を図ることができる。
【0019】
また、上記追跡点設定部は、上記追跡点評価部が算出した追跡点ごとの上記評価値の総和と、各追跡点ごとの上記評価値とに基づいて、上記追跡点評価部が評価値を算出した移動後の追跡点それぞれを、上記評価値の総和および各追跡点における上記評価値に応じた数複製してもよい。
【0020】
また、上記追跡点設定部は、上記追跡点評価部が算出した各追跡点ごとの上記評価値と、追跡点の複製を制限するための第1の閾値とを比較し、上記評価値が第1の閾値以下の追跡点を複製しなくてもよい。
【0021】
また、上記追跡点設定部は、上記追跡点評価部が算出した各追跡点ごとの上記評価値と、複製される追跡点の数を制限するための第2の閾値とを比較し、上記評価値が第2の閾値以上の追跡点の複製数を、予め規定された上限数としてもよい。
【0022】
また、上記追跡点設定部は、上記初期設定において、上記撮像画像に設定した格子の交点に上記追跡点を設定し、設定された上記格子に囲まれた領域それぞれの大きさは、上記第1領域の大きさであってもよい。
【0023】
また、上記追跡点設定部は、上記格子の交点に設定された追跡点を含む上記第1領域と同一の大きさの領域内から輝度が最大の画素を検出し、検出された上記画素が上記領域の中心位置となるように設定された追跡点の位置を移動させてもよい。
【0024】
また、上記追跡点設定部は、上記格子の交点に設定された追跡点を含む上記第1領域と同一の大きさの領域内から輝度が最小の画素を検出し、検出された上記画素が上記領域の中心位置となるように設定された追跡点の位置を移動させてもよい。
【0025】
また、上記追跡点評価部は、上記評価値の算出対象の追跡点への移動元となった追跡点に対応する予め規定された大きさの領域の画像を、上記第1領域の画像としてもよい。
【0026】
また、上記追跡点評価部は、上記初期設定された追跡点に対応する予め規定された大きさの領域の画像を、上記第1領域の画像としてもよい。
【0027】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点によれば、搬送される帯状体の表面が撮像された撮像画像に基づいて、上記帯状体の表面に周期的に発生した周期欠陥を検出する周期欠陥検出方法であって、上記周期欠陥を探索するための基準点である追跡点を初期設定する上記撮像画像の位置を決定し、決定された上記位置ごとに複数の上記追跡点を設定する追跡点設定ステップと、上記追跡点が設定された場合に、設定された上記追跡点について、上記帯状体の長手方向における上記周期欠陥の推定される平均値である基準間隔、上記帯状体の短手方向に生じうる上記周期欠陥の推定最大ズレ量、および上記帯状体の長手方向に生じうる上記基準間隔からの推定最大ズレ量に基づく乱数により、設定された上記追跡点をそれぞれ移動させる追跡点移動ステップと、移動前の上記追跡点を含む予め規定された大きさの第1領域の画像と、移動後の追跡点を含む上記第1領域と同一の大きさの第2領域の画像とに基づく類似度を、追跡点の評価値として追跡点ごとに算出する追跡点評価ステップと、上記追跡点評価ステップにおいて追跡点ごとの評価値が算出されると、上記評価値に対応する移動後の追跡点を複数複製して、上記追跡点を再設定する追跡点再設定ステップと、予め規定された回数だけ上記追跡点再設定ステップと、上記追跡点再設定ステップにおいて再設定された追跡点に基づく上記追跡点移動ステップと、上記追跡点再設定ステップにおいて再設定された追跡点に基づき上記追跡点移動ステップにおいて移動された追跡点を移動後の追跡点とする上記追跡点評価ステップとが行われた場合に、上記追跡点評価ステップにおいて算出された上記評価値に基づいて、上記周期欠陥が含まれる上記第2領域を検出する欠陥検出ステップとを有し、上記追跡点移動ステップでは、上記追跡点設定ステップにおいて設定された上記追跡点または上記追跡点再設定ステップにおいて再設定された上記追跡点が移動される周期欠陥検出方法が提供される。
【0028】
かかる方法を用いることにより、帯状体の表面に周期的に発生しうる周期欠陥の検出精度の向上を図ることができる。
【0029】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点によれば、搬送される帯状体の表面が撮像された撮像画像に基づいて、上記帯状体の表面に周期的に発生した周期欠陥を検出する周期欠陥検出装置に用いることが可能なプログラムであって、上記周期欠陥を探索するための基準点である追跡点を初期設定する上記撮像画像の位置を決定し、決定された上記位置ごとに複数の上記追跡点を設定する追跡点設定ステップ、上記追跡点が設定された場合に、設定された上記追跡点について、上記帯状体の長手方向における上記周期欠陥の推定される平均値である基準間隔、上記帯状体の短手方向に生じうる上記周期欠陥の推定最大ズレ量、および上記帯状体の長手方向に生じうる上記基準間隔からの推定最大ズレ量に基づく乱数により、設定された上記追跡点をそれぞれ移動させる追跡点移動ステップ、移動前の上記追跡点を含む予め規定された大きさの第1領域の画像と、移動後の追跡点を含む上記第1領域と同一の大きさの第2領域の画像とに基づく類似度を、追跡点の評価値として追跡点ごとに算出する追跡点評価ステップ、上記追跡点評価ステップにおいて追跡点ごとの評価値が算出されると、上記評価値に対応する移動後の追跡点を複数複製して、上記追跡点を再設定する追跡点再設定ステップ、予め規定された回数だけ上記追跡点再設定ステップと、上記追跡点再設定ステップにおいて再設定された追跡点に基づく上記追跡点移動ステップと、上記追跡点再設定ステップにおいて再設定された追跡点に基づき上記追跡点移動ステップにおいて移動された追跡点を移動後の追跡点とする上記追跡点評価ステップとが行われた場合に、上記追跡点評価ステップにおいて算出された上記評価値に基づいて、上記周期欠陥が含まれる上記第2領域を検出する欠陥検出ステップをコンピュータに実行させ、上記追跡点移動ステップでは、上記追跡点設定ステップにおいて設定された上記追跡点または上記追跡点再設定ステップにおいて再設定された上記追跡点が移動されるプログラムが提供される。
【0030】
かかるプログラムを用いることにより、帯状体の表面に周期的に発生しうる周期欠陥の検出精度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、帯状体の表面に周期的に発生しうる周期欠陥の検出精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】周期欠陥を説明するための説明図である。
【図2】周期欠陥を説明するための説明図である。
【図3】周期欠陥を説明するための説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法における仮定を説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法の概要を説明するための説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法の概要を説明するための説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理における追跡点設定処理を説明するための説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る追跡点設定処理において設定される追跡点および領域を説明するための説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理における追跡点移動処理を説明するための説明図である。
【図10】本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理における追跡点再設定処理を説明するための説明図であり、撮像画像の一部を簡略的に示している。
【図11】本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理における追跡点設定処理の他の例を説明するための説明図である。
【図12】本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理における追跡点設定処理の他の例を説明するための説明図である。
【図13】本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理における評価値算出処理の他の例を説明するための説明図である。
【図14】本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置を有する周期欠陥検出システムの一例を示す説明図である。
【図15】本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置の構成の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0034】
(本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法)
本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置(以下、「周期欠陥検出装置100」とよぶ場合がある。)の構成について説明する前に、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法について説明する。
【0035】
以下では、周期欠陥検出装置100が、所定の搬送方向に搬送される帯状体(以下、「帯状体10」とよぶ場合がある。)が撮像された撮像画像に基づいて、帯状体10の表面に生じうる周期欠陥を検出するものとして説明する。
【0036】
また、以下では、周期欠陥検出装置100が処理する撮像画像がモノクロの画像であり、周期欠陥検出装置100が、画素値として輝度値を用いる場合を例に挙げて説明する。なお、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置100が処理する撮像画像は、モノクロの画像に限られず、カラーの画像であってもよい。
【0037】
ここで、本発明の実施形態に係る撮像画像とは、例えば、ラインカメラなどのように帯状体をその搬送方向とは直交する1次元方向に撮像する撮像装置における撮像結果を示す画像である。より具体的には、本発明の実施形態では、例えば撮像装置がラインカメラである場合、帯状体が一定距離搬送されるごとに撮像が行われ、その撮像結果を搬送方向に並べることで1つの撮像画像とする。以下では、撮像画像における水平方向が帯状体10の幅方向に対応し、垂直方向が帯状体10の搬送方向に対応するものとして説明する。
【0038】
また、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置100が検出する欠陥としては、例えば、帯状体10に付着したごみや、帯状体10に付着した油よごれ、帯状体10の疵などが挙げられる。
【0039】
図3を参照して示したように、周期欠陥は、帯状体10の幅方向の位置および/または帯状体10の長手方向の間隔に位置ズレが生じる場合がある。また、周期欠陥は、例えば図1に示す異物Aによる周期的な疵のように、発生する要因が同一であることから、撮像画像における特徴(例えば、撮像画像上での輝度変化や、輝度変化が生じている面積など)も類似することが想定される。
【0040】
そこで、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法では、周期欠陥の特性として、例えば下記の仮定をおく。
(i)周期を前後する周期欠陥の、帯状体10における幅方向位置のズレ量の上下限を予め設定できる
(ii)周期を前後する周期欠陥の、帯状体10における長手方向間隔の上下限を予め設定できる
(iii)同一の要因による欠陥同士は、撮像画像上で類似する
【0041】
図4は、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法における仮定を説明するための説明図である。ここで、図4は、図3と同様に、帯状体10の表面を撮像した撮像画像を周期欠陥B1および周期欠陥B2に着目して簡略的に表している。
【0042】
本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法では、幅方向位置のズレ量D(帯状体10の短手方向に生じうる周期欠陥の推定ズレ量)として、「−SeM≦D≦TeM」(Mは、1以上の整数である。Mは、後述する周期のステップ数を表す。)を設定する(上記(i)の仮定)。ここで、“−SeM”は、ズレ量Dの下限値であり、“TeM”は、ズレ量Dの上限値である。
【0043】
また、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法では、長手方向間隔L(帯状体10の長手方向に生じうる周期欠陥の推定ズレ量)として、「L−UeM≦L≦L+VeM」を設定する(上記(ii)の仮定)。ここで、“L”は、周期欠陥における長手方向間隔Lの基準値であり、過去に発生した周期欠陥の間隔の平均値、あるいは欠陥の原因となるロールの周囲長、すなわち、推定される周期欠陥の間隔の平均値である。“−UeM”は、長手方向間隔Lの下限値を規定する値であり、“VeM”は、長手方向間隔Lの上限値を規定する値である。
【0044】
また、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法では、画像が類似している欠陥B1と欠陥B2とを、同一の要因により発生した欠陥と捉える(上記(iii)の仮定)。
【0045】
本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法では、上記(i)〜(iii)の仮定を用いて、例えば以下のように周期欠陥を追跡することによって、幅方向位置のズレや長手方向間隔の変動があった場合にも周期欠陥を検出する。
【0046】
[周期欠陥検出方法の概要]
以下では、周期欠陥検出装置100が、周期欠陥検出方法に係る処理を行うものとして説明する。図5、図6は、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法の概要を説明するための説明図である。図5、図6を適宜参照して、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法の概要を説明する。
【0047】
(I)初期位置〜1周期目の処理(図5)
周期欠陥検出装置100は、撮像画像上に追跡点CPの初期位置を決定する(図5(a))。また、周期欠陥検出装置100は、追跡点を含む所定の大きさの領域Rを設定し、設定した領域Rと当該追跡点とを対応付ける。周期欠陥検出装置100は、設定した領域Rを含む画像を、「参照画像」とする。ここで、本発明の実施形態に係る領域Rとしては、例えば、追跡点を左上頂点とする32×32画素の領域が挙げられるが、上記に限られない。例えば、本発明の実施形態に係る領域Rは、発生が想定される欠陥の大きさに対応する大きさの領域とすることができ、また、周期欠陥検出装置100のユーザが適宜設定することもできる。
【0048】
追跡点および当該追跡点に対応する領域Rが設定されると、周期欠陥検出装置100は、長手方向間隔Lの基準値L、長手方向のズレ量Ue1、Ve1、幅方向位置のズレ量Se1、Te1に基づいて、1周期後の周期欠陥が存在しうる領域である予測領域PreRを決定する(図5(b))。ここで、図5では、周期欠陥検出装置100が、設定した領域Rの中心位置を基準として予測領域PreRを決定した例を示しているが、周期欠陥検出装置100における予測領域PreRの決定方法は、上記に限られない。例えば、周期欠陥検出装置100は、決定した追跡点の位置を基準として、予測領域PreRを決定することもできる。
【0049】
予測領域PreRが決定されると、周期欠陥検出装置100は、予測領域PreR内で、参照画像と類似する画像を探索する(テンプレートマッチングによる。)。
【0050】
上記テンプレートマッチングによって参照画像と類似する画像が検出された場合には、周期欠陥検出装置100は、後述する(II)の処理を行う。また、上記テンプレートマッチングによって参照画像と類似する画像が検出されない場合には、周期欠陥検出装置100は、当該追跡点を用いることによって周期欠陥が検出されなかったものとして、当該追跡点を用いた処理を終了する。
【0051】
(II)1周期目〜2周期目の処理(図6)
上記テンプレートマッチングによって参照画像と類似する画像が検出された場合には、周期欠陥検出装置100は、当該類似する画像が示す領域を新たに領域Rとして、その領域Rに基づいて、新たな追跡点CPを設定する(図6(a))。図6(a)では、領域Rの左上頂点の位置を新たな追跡点CPとして設定した例を示している。また、周期欠陥検出装置100は、例えば参照画像と類似する画像を新たな参照画像とするが、周期欠陥検出装置100が処理に用いる参照画像は、上記に限られない。例えば、周期欠陥検出装置100は、初期位置の参照画像を用いて2周期目以降の処理を行うこともできる。
【0052】
新たな追跡点CPが設定されると、周期欠陥検出装置100は、初期位置〜1周期目での類似画像検索で検出された類似画像との距離を基準間隔Lとし、長手方向のズレ量Ue2、Ve2、幅方向位置のズレ量Se2、Te2に基づいて、2周期後の周期欠陥が存在しるうる領域である予測領域PreRを決定する(図6(b))。
【0053】
ここで、図6(b)では、幅方向位置のズレ量Dの下限値を規定する“−Se2”が−Se2>−Se1であり、幅方向位置のズレ量Dの上限値を規定する“Te2”がTe2<Te1である例を示しているが、上記に限られない。例えば、“−Se2”と“−Se1”、および“Te2”と“Te1”は、それぞれ等しくてもよい。また、同様に、図6(b)では、長手方向間隔Lの下限値を規定する値“−Ue2”が−Ue2>−Ue1であり、長手方向間隔Lの上限値を規定する値“Ve2”がVe2<Ve1である例を示しているが、上記に限られない。
【0054】
予測領域PreRが決定されると、周期欠陥検出装置100は、1周期目と同様に、予測領域PreR内で、参照画像と類似する画像を探索する。
【0055】
(III)3周期目以降の処理
周期欠陥検出装置100は、上記(II)と同様の処理を所定の周期繰り返す。そして、周期欠陥検出装置100は、所定の周期後に参照画像と類似する画像が検出された場合には、検出された当該画像に対応する領域を、周期欠陥が含まれる領域として検出する。ここで、上記所定の周期としては、例えば4周期が挙げられる。
【0056】
周期欠陥検出装置100は、例えば、上記(I)の処理〜(III)の処理を行うことによって、撮像画像に基づいて周期欠陥が含まれる領域を検出する。
【0057】
ここで、実際には、図5(a)に示すような、「欠陥のある初期位置」を一意に特定できるとは限らない。そこで、周期欠陥検出装置100は、撮像画像上に複数の追跡点を設定し、設定した複数の追跡点それぞれについて、上記(I)の処理〜(III)の処理を行うことによって、撮像画像に基づいて周期欠陥が含まれる領域を検出する。
【0058】
また、周期欠陥検出装置100は、周期欠陥の追跡の効率や精度を高めるために、上記のように、ある追跡点を用いた処理途中で参照画像と類似する画像がない場合には、当該追跡点を用いた処理を終了する。また、その一方で、ある追跡点を用いた処理途中で参照画像と類似する画像が見つかった場合には、例えば当該追跡点を用いた以降の周期欠陥の追跡をより密に行う。
【0059】
以下、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理について、より具体的に説明する。
【0060】
[周期欠陥検出方法に係る処理の一例]
周期欠陥検出装置100は、例えば、上記(1)の処理〜(5)の処理を行うことによって、帯状体10に発生しうる周期欠陥を検出する。
【0061】
(1)追跡点設定処理
周期欠陥検出装置100は、周期欠陥を検出するための追跡点を初期設定する撮像画像の位置(初期設定位置)を決定し、決定された位置ごとに複数の追跡点を設定する。
【0062】
図7は、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理における追跡点設定処理を説明するための説明図であり、撮像画像の一例を示している。ここで、図7に示す“Lmax”は、想定最大欠陥間隔を示している。ここで、想定最大欠陥間隔Lmaxとしては、例えば、帯状体10における周期欠陥の最大間隔が“2300[mm]”、撮像画像の画素分解能が“0.5[mm]/画素”の場合、4600画素が挙げられる。
【0063】
周期欠陥検出装置100は、図7に示すように、帯状体幅範囲×想定最大欠陥間隔の領域内に、所定の大きさ(例えば32×32画素)のグリッド(格子)を設定し、グリッドの各交点を追跡点の初期設定位置として決定する。そして、周期欠陥検出装置100は、各初期設定位置に複数の追跡点を設定する。ここで、周期欠陥検出装置100は、例えば、1つの初期設定位置に500点程度の追跡点を設定するが、周期欠陥検出装置100が設定する追跡点の数は、上記に限られない。
【0064】
また、周期欠陥検出装置100は、設定した追跡点ごとに、各追跡点を含む領域を設定する。
【0065】
図8は、本発明の実施形態に係る追跡点設定処理において設定される追跡点および領域を説明するための説明図である。ここで、図8は、図7に示すグリッドの一部を示している。
【0066】
周期欠陥検出装置100は、図8に示すように、グリッドの交点に追跡点CP1を設定し、追跡点CP1を左上頂点とする設定されたグリッドに囲まれた領域(例えば32×32画素の大きさの領域)を、追跡点CP1に対応する領域R1とする。ここで、撮像画像における領域R1に対応する画像は、上記参照画像に相当する。以下では、本発明の実施形態に係る参照画像に対応する領域を、「第1領域」とよぶ場合がある。
【0067】
また、本発明の実施形態に係る追跡点は、例えば、下記の属性を有する。ここで、“i”は、1≦i≦N(Nは、総追跡点数)であり、座標(Xi,Yi)の初期値および1周期前の座標(X’i,Y’i)の初期値は、初期位置の座標である。また、重みWiの初期値は、1/Nである。また、本発明の実施形態に係る重みWiは、後述する評価値算出処理において算出される評価値に該当する。
・座標(Xi,Yi)
・1周期前の座標(X’i,Y’i)
・重みWi
【0068】
周期欠陥検出装置100は、(1)の処理において、例えば上記のように、初期設定位置を決定し、決定された位置ごとに複数の追跡点を設定する。
【0069】
(2)追跡点移動処理
上記(1)の処理(追跡点設定処理)において追跡点が設定されると、周期欠陥検出装置100は、各追跡点をそれぞれ移動させる。
【0070】
図9は、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理における追跡点移動処理を説明するための説明図であり、撮像画像の一部を簡略的に示している。図9の追跡点CP1および追跡点CP1’に示すように、周期欠陥検出装置100は、追跡点それぞれを移動量(dx,dy)分移動させる。以下では、図9に示す移動のステップを、「周期ステップ」とよぶ場合がある。
【0071】
より具体的には、周期欠陥検出装置100は、例えば下記の数式1、数式2に示すように乱数を用いて移動量を決定する。そして、周期欠陥検出装置100は、決定した移動量に基づいて、例えば下記の数式3、数式4により各追跡点を移動させる。また、周期欠陥検出装置100は、移動に際して、移動前の追跡点の座標(Xi,Yi)を、座標(X’i,Y’i)=(Xi,Yi)として記憶することができる。
【0072】
ここで、数式1、数式2における“N(m,s)”(添字は省略)は、平均m、分散sの正規分布(ガウス分布)乱数である。また、数式1、数式2における“mx,j”、“sx,j”、“my,j”、“sy,j”は、変動量に関する先見知識に基づいて予め決定する。なお、“mx,j”および“my,j”は、通常0(ゼロ)となる。また、“sy,j”については、例えば“sy,1”、“sy,2”、…を“sy,0”より小さく設定する。上記は、数式2に示す“L0,j”の値が、理想的な周期欠陥における長手方向の間隔に必ずしも近似しているとは限らないためである。
【0073】
また、数式1、数式2に示す添字jは、周期ステップを表しており、例えば、初期位置から1周期目への移動はj=0であり、2周期目への移動はj=1である。また、数式2に示す“L0,j”は、周期ステップjにおける長手方向の基準間隔である。L0,0は、基準間隔であり、L0,1は、周期ステップjと周期ステップj−1との間における長手方向の移動量である。
【0074】
dx=N(mx,j,sx,j
・・・(数式1)
【0075】
dy=L0,j+N(my,j,sy,j
・・・(数式2)
【0076】
Xi=Xi+dx
・・・(数式3)
【0077】
Yi=Yi+dy
・・・(数式4)
【0078】
周期欠陥検出装置100は、(2)の処理において、例えば上記数式1〜数式4の演算を追跡点ごとに行うことによって、各追跡点を追跡点ごとに移動させる。(2)の処理を行うことによって、周期欠陥検出装置100は、数式1、数式2により設定される予測領域PreR内に各追跡点を移動させることができる。
【0079】
(3)評価値算出処理
上記(2)の処理において各追跡点が移動されると、周期欠陥検出装置100は、移動前の追跡点を含む所定の大きさの第1領域の画像と、移動後の追跡点を含む第1領域と同一の大きさの第2領域の画像とに基づく類似度を、追跡点の評価値として追跡点ごとに算出する。ここで、上記第1領域の画像としては、例えば図9の領域R0に対応する画像のように、1周期ステップ前の追跡点に対応する領域の画像が挙げられる。また、上記第2領域の画像としては、例えば図9の領域R1に対応する画像のように、現周期ステップの追跡点に対応する領域の画像が挙げられる。以下では、評価値の算出対象の追跡点である現周期ステップの追跡点に対応する領域を、「第2領域」とよぶ場合がある。
【0080】
より具体的には、周期欠陥検出装置100は、例えば下記の数式5により類似度として正規化相関係数を算出することによって、重みWiを算出する。ここで、数式5に示す“u”は、第1領域に対応する画像の画素ベクトルを示しており、“v”は、第2領域に対応する画像の画素ベクトルを示している。また、数式5に示す“(U,V)”は、UとVとの内積を示しており、“|U|”および“|V|”はそれぞれベクトルのノルムを示している。
【0081】
【数1】

・・・(数式5)
【0082】
周期欠陥検出装置100は、(3)の処理において、例えば上記数式5の演算を追跡点ごとに行うことによって、各追跡点の評価値(重みWi)を算出することができる。
【0083】
(4)追跡点再設定処理
上記(3)の処理(評価値算出処理)において追跡点ごとの評価値が算出されると、周期欠陥検出装置100は、評価値に対応する移動後の追跡点を複数複製して、追跡点を再設定する。そして、周期欠陥検出装置100は、再設定された追跡点に基づいて、上記(2)の処理(追跡点移動処理)と上記(3)の処理(評価値算出処理)を行う。ここで、周期欠陥検出装置100は、上記(3)の処理(評価値算出処理)が所定の回数行われるまで、(1)から(4)の処理を繰り返し行う。
【0084】
図10は、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理における追跡点再設定処理を説明するための説明図であり、撮像画像の一部を簡略的に示している。図10(a)は、複製前の追跡点の一例を示しており、図10(b)は、図10(a)に示す追跡点が複製された場合の一例を示している。
【0085】
周期欠陥検出装置100は、例えば下記の数式6に示すように、上記(3)の処理(評価値算出処理)において算出された追跡点それぞれの重みWiの総和を算出する。そして、周期欠陥検出装置100は、例えば下記の数式6に示すように、追跡点ごとの複製個数を決定し、決定された数だけ追跡点を複製して設定する。ここで、複製された追跡点の座標は、複製元の追跡点の座標の値とする。
【0086】
Wsum=ΣWi
・・・(数式6)
【0087】
複製個数=[Wi/Wsum×N] ([・]はガウス記号であり、引数を超えない最大の整数を表す。)
・・・(数式7)
【0088】
ここで、数式7より、重みWiが大きい(すなわち、画像の類似度が高い)追跡点ほど、複製個数が多くなる。また、数式7より、重みWiがある程度小さくなると、複製個数は0(ゼロ)となる。よって、周期ステップ前後で第1領域の画像と第2領域の画像とが類似しており、周期欠陥の追跡が成功する見込みが高い追跡点は、より多く複製され、次の周期ステップにおける乱数による移動(上記(2)の処理)によって、追跡がより密に継続される。また、逆に、周期欠陥の追跡が成功する見込みが低い追跡点は、次第に追跡の密度が疎になり、最終的には当該追跡点に基づく処理が終了する。
【0089】
周期欠陥検出装置100は、(4)の処理において、例えば上記数式6、数式7の演算を追跡点ごとに行って追跡点を重みWiに応じて複製することにより、追跡点を再設定することができる。
【0090】
(5)周期欠陥検出処理
上記(4)の処理(追跡点再設定処理)において所定の回数追跡点の再設定が行われた場合、周期欠陥検出装置100は、再設定された追跡点に基づいて算出された評価値に基づいて、周期欠陥が含まれる第2領域を選択的に検出する。より具体的には、周期欠陥検出装置100は、例えば、上記(3)の処理(評価値算出処理)において算出された追跡点ごとの評価値と、所定の閾値とを比較し、当該閾値以上(または、閾値より大きい。)の追跡点に対応する領域を、周期欠陥を含む領域として検出する。ここで、上記閾値としては、例えば0.8などが挙げられる。
【0091】
周期欠陥検出装置100は、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理として、例えば上記(1)の処理(追跡点設定処理)〜上記(5)の処理(周期欠陥検出処理)を行うことによって、周期欠陥を検出する。ここで、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法は、周期欠陥に位置ズレが生じる可能性があることが仮定されているので、たとえ帯状体10に発生した周期欠陥に位置ズレが生じたとしても、当該周期欠陥を検出することが可能である。また、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法は、第1の領域の画像と第2の領域の画像とを比較するテンプレートマッチングによって、周期欠陥を検出するので、たとえ撮像画像に含まれる周期欠陥が軽微な欠陥であったとしても、撮像画像上で欠陥が類似していれば当該欠陥を検出することができる。
【0092】
したがって、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法を用いることによって、従来の技術を用いる場合よりもより精度が高く周期欠陥を検出することが可能であり、帯状体10の表面に周期的に発生しうる周期欠陥の検出精度の向上を図ることができる。
【0093】
[本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理の他の例]
なお、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理は、上述した(1)の処理〜(5)の処理に限られない。次に、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理の他の例について説明する。
【0094】
(A)追跡点設定処理の他の例
図11、図12それぞれは、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理における追跡点設定処理の他の例を説明するための説明図である。
【0095】
上記では、周期欠陥検出装置100が、所定の大きさのグリッドの交点を追跡点の初期設定位置として決定する例を示したが、周期欠陥検出装置100における追跡点の設定方法は、上記に限られない。
【0096】
例えば、周期欠陥検出装置100は、一様乱数などを用いて、例えば図11に示すように、追跡点をランダムに設定することができる。
【0097】
また、周期欠陥検出装置100は、周期欠陥が発生する可能性の高い位置が先見知識として分かっている場合には、当該位置に対して密に追跡点の初期設定値を設定することもできる。上記の場合には、欠陥の追跡効率を上げることができるので、追跡点の総数を少なくしてたとしても、所定の大きさのグリッドの交点を追跡点の初期設定位置として決定する場合と同様の結果を得ることができる。
【0098】
また、周期欠陥検出装置100は、図12(a)に示すように、追跡点をグリッドの交点上に一旦設定する。そして、周期欠陥が撮影画像に白く(あるいは黒く)映るとわかっている場合、周期欠陥検出装置100は、上記追跡点に対応する領域(第1領域と同一の大きさの領域)の中から輝度が最大(あるいは最小)の画素を検出し、図12(b)に示すように、検出された上記画素が領域の中心位置となるように設定された追跡点の位置を移動させることもできる。上記によって、周期欠陥検出装置100は、欠陥が複数の追跡点に対応する領域に跨ることを低減することが可能となるので、周期欠陥の追跡の精度を向上させることができる。
【0099】
(B)追跡点移動処理の他の例
上記では、周期欠陥検出装置100が、追跡点の移動時に正規分布乱数を用いたが、一様乱数などの他の乱数を用いることもできる。また、周期欠陥検出装置100は、例えば、分布中心に周期欠陥が現れる確立が高い場合には正規分布乱数を用い、分布のどこに周期欠陥が現れるか分からない未知の場合には、一様乱数を用いるなど、複数の分布を使い分けることもできる。
【0100】
(C)評価値算出処理の他の例
(C−1)
上記では、周期欠陥検出装置100が、追跡点の移動後の第2領域の画像と、当該追跡点への直接的な移動元となった追跡点(移動前の追跡点)に対応する第1領域の画像とを比較することによって、類似度を算出することを示したが、周期欠陥検出装置100における類似度の算出方法は、上記に限られない。
【0101】
図13は、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理における評価値算出処理の他の例を説明するための説明図である。ここで、図13(a)は、初期位置を示している。また、図13(b)は1周期目、図13(c)は2周期目をそれぞれ示している。
【0102】
例えば、周期欠陥検出装置100は、図13に示すように、追跡点の移動後の第2領域の画像の比較対象として、当該追跡点への間接的な移動元となった初期設定された追跡点に対応する領域R0の画像を常に用いて類似度を算出することもできる(図13のComp1、Comp2)。上記の場合には、数式5により計算する類似度の一方の画像が固定されることになるため、正規化相関関数の計算の一部を予め計算してキャッシュしておくことができる。したがって、上記の場合には、(3)の処理(評価値算出処理)における計算負荷を低減することができる。
【0103】
(C−2)
上記では、周期欠陥検出装置100が、数式5に示すように画像の類似度として正規化相関関数を用いたが、上記に限らず、例えば下記の数式8に示す画素同士の差の絶対値の総和(SAD:sum of absolute difference)を用いてもよい。SADを用いる場合には、正規化相関関数を用いる場合よりも計算精度は落ちるが、計算負荷は格段に小さいため、より多くの追跡点を設定して周期欠陥の追跡を行うことができる。
【0104】
SAD=Σ|ui−vi|
・・・(数式8)
【0105】
(D)追跡点再設定処理の他の例
(D−1)
上記では、周期欠陥検出装置100が、数式7に示すように上記(3)の処理(評価値算出処理)において算出された重みWiに比例して複製個数を決定したが、周期欠陥検出装置100における追跡点の複数個数の決定方法は、上記に限られない。例えば、周期欠陥検出装置100は、算出された重みWi(評価値)と、追跡点の複製を制限するための第1の閾値とを比較し、重みWiが第1の閾値以下(または、第1の閾値よりも小さい。)の追跡点を複製しない(すなわち、複製個数を0(ゼロ)とする)こともできる。上記の方法を用いる場合には、周期欠陥の追跡が行える見込みが低い追跡点による周期欠陥の追跡を中断させることができるので、欠陥の探索効率を向上させることができる。
【0106】
(D−2)
また、追跡点再設定処理において設定する追跡点の総数Nは周期ステップを通して不変であるので、数式7に示すように、重みWi(評価値)の大きな追跡点に対して非常に大きな複製個数の複製を行ってしまう場合がある。そこで、周期欠陥検出装置100は、重みWiと、複製される追跡点の数を制限するための第2の閾値とを比較し、重みWiが第2の閾値以上(または、第2の閾値よりも大きい。)の追跡点の複製数を、所定の上限数とする。上記の方法を用いる場合には、周期ステップが進むにつれ、周期欠陥の追跡において有望な追跡点が残っている場合は、追跡点の総数が徐々に少なくなっていき、計算量を減らすことができる。
【0107】
(E)その他
上記では、周期欠陥検出装置100が撮像画像に含まれる帯状体10全体を一度に処理することを示したが、周期欠陥検出装置100における処理は、上記に限られない。例えば、周期欠陥検出装置100は、撮像画像を帯状体10の幅方向に分割し、各分割単位で本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理を行うことができる。上記の方法を用いる場合には、例えば、長い縦筋などの外乱(長い縦筋は周期無限の周期欠陥と見なされる)が帯状体10に発生していた場合に全ての追跡点が当該外乱に吸い寄せられることによって、他の周期欠陥の検出のための追跡点が割り振られなくなることを防止することができる。
【0108】
(本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置)
次に、上述した本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法を実現することが可能な、周期欠陥検出装置100の構成例について説明する。
【0109】
[周期欠陥検出システムの一例]
周期欠陥検出装置100の構成について説明する前に、周期欠陥検出装置100を有する周期欠陥検出システムの一例について説明する。図14は、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置100を有する周期欠陥検出システム1000の一例を示す説明図である。
【0110】
ここで、図14は、周期欠陥検出装置100が本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る処理を行うことにより帯状体10の周期欠陥検出を行う周期欠陥検出システム1000の一例を示している。また、本発明の実施形態に係る帯状体10としては、例えば、鉄鋼業の圧延鋼板製造ラインで製造された鋼板が挙げられる。
【0111】
また、図14では、周期欠陥検出装置100として、PC(Personal Computer)を示しているが、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置100は、PCに限られない。
【0112】
帯状体10は、搬送ロール12a、12bによって、搬送方向(図14に示すY方向)に搬送される。また、搬送ロール12a、12bの回転は、ロータリーエンコーダ14a、14bにより検出される。
【0113】
また、周期欠陥検出システム1000は、周期欠陥検出装置100と、照明装置200と、撮像装置300と、表示装置400とを有する。
【0114】
照明装置200は、帯状体10を照明する。ここで、照明装置200は、例えばハロゲンランプなどで構成され、光を発光する発光部(図示せず)と、集光レンズなどの集光部(図示せず)とを有する。照明装置200は、発光部(図示せず)から出射される光が集光部(図示せず)で線状に集光されることによって、帯状体10の表面が、帯状体10の幅方向(図14に示すX方向)で線状に照明される。ここで、図14では、照明装置200は、帯状体10が確実に照明されるように、例えば、帯状体10だけでなく搬送ロール12bまで照明する例を示している。
【0115】
撮像装置300は、照明装置200が帯状体10を照明することによって得られる反射光に基づいて帯状体10を撮像する。ここで、撮像装置300は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)や、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの撮像素子を有し、帯状体10を撮像する。
【0116】
周期欠陥検出装置100と撮像装置300とは有線(または無線)で接続され、周期欠陥検出装置100は、撮像装置300から送信される撮像画像を示す画像信号を受信する。そして、周期欠陥検出装置100は、受信した画像信号に対して、上述した周期欠陥検出方法に係る処理などの各種処理を行う。また、周期欠陥検出装置100は、撮像装置300に撮像命令(例えば撮像パルス)を送信することによって、撮像装置300が一定距離搬送されたら一回撮像を行うよう制御する。
【0117】
表示装置400は、周期欠陥検出装置100と接続され、例えば、周期欠陥検出装置100から送信される画像信号に応じた画像などを表示画面に表示する。ここで、表示装置400に表示される表示画面としては、例えば、周期欠陥検出装置100が周期欠陥検出方法に係る処理の処理結果(例えば、周期欠陥が検出されたか否か)などの情報を表示する画面や、周期欠陥検出装置100のユーザが所望の操作を周期欠陥検出装置100にさせるための操作画面などが挙げられる。
【0118】
周期欠陥検出システム1000では、例えば図14に示す構成によって周期欠陥検出装置100に撮像画像が入力され、表周期欠陥検出装置100が、撮像画像に基づく周期欠陥検出方法に係る処理を行う。したがって、周期欠陥検出装置100を有する周期欠陥検出システム1000は、帯状体10の表面に周期的に発生しうる周期欠陥の検出精度の向上を図ることができる。
【0119】
[周期欠陥検出装置100の構成例]
次に、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置100の構成の一例について説明する。図15は、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置100の構成の一例を示す説明図である。ここで、図15では、図14に示す撮像装置300を併せて示している。
【0120】
周期欠陥検出装置100は、記憶部102と、追跡点設定部104と、追跡点移動部106と、追跡点評価部108と、欠陥検出部110とを備える。
【0121】
また、周期欠陥検出装置100は、例えば、制御部(図示せず)や、ROM(Read Only Memory;図示せず)、RAM(Random Access Memory;図示せず)、ユーザが操作可能な操作部(図示せず)、各種画面を表示画面に表示する表示部(図示せず)、外部装置と通信を行うための通信部(図示せず)などを備えていてもよい。周期欠陥検出装置100は、例えば、データの伝送路としてのバス(bus)により上記各構成要素間を接続する。
【0122】
ここで、制御部(図示せず)は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)や、各種処理回路などで構成され周期欠陥検出装置100全体を制御する。また、制御部(図示せず)は、例えば、追跡点設定部104、追跡点移動部106、追跡点評価部108、および欠陥検出部110としての役目を果たすこともできる。
【0123】
ROM(図示せず)は、制御部(図示せず)が使用するプログラムや演算パラメータなどの制御用データを記憶する。RAM(図示せず)は、制御部(図示せず)により実行されるプログラムや、上記変数などを一次記憶する。
【0124】
操作部(図示せず)としては、例えば、ボタンや、方向キー、あるいは、これらの組み合わせなどが挙げられる。また、表示部(図示せず)としては、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイが挙げられる。また、周期欠陥検出装置100は、周期欠陥検出装置100の外部装置としての操作入力デバイス(例えば、キーボードやマウスなど)や、表示装置400と接続することもできる。
【0125】
通信部(図示せず)は、周期欠陥検出装置100が備える通信手段であり、ネットワークを介して(あるいは、直接的に)、外部装置と無線/有線で通信を行う。ここで、通信部(図示せず)としては、例えば、通信アンテナおよびRF(Radio Frequency)回路や、LAN(Local Area Network)端子および送受信回路などが挙げられる。
【0126】
記憶部102は、周期欠陥検出装置100が備える記憶手段である。ここで、記憶部102としては、例えば、ハードディスク(Hard Disk)などの磁気記録媒体や、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)などの不揮発性メモリ(nonvolatile memory)が挙げられる。
【0127】
また、記憶部102は、例えば、撮像装置300から送信される画像信号に応じた画像データや、アプリケーションなど様々なデータを記憶する。ここで、図15では、画像データ130が記憶部102に記憶されている例を示している。
【0128】
追跡点設定部104は、上記(1)の処理(追跡点設定処理)と、上記(4)の処理(追跡点再設定処理)とを行う役目を果たす。より具体的には、追跡点設定部104は、処理対象の撮像画像に対して追跡点の初期設定位置を決定し、決定された位置ごとに複数の追跡点を設定する。
【0129】
また、追跡点設定部104は、追跡点評価部108において追跡点ごとの評価値が算出されると、算出された評価値に対応する移動後の追跡点を複数複製して、追跡点を再設定する。追跡点設定部104は、所定の回数再設定が行われると、欠陥検出部110に所定の回数再設定が行われた旨を伝達する。ここで、上記所定の回数は、例えば3回(すなわち、4周期目の追跡点の評価値が追跡評価部108にて算出される。)など予め規定された回数が挙げられるが、上記に限られない。例えば、上記所定の回数は、ユーザが適宜設定可能であってもよい。
【0130】
追跡点移動部106は、上記(2)の処理(追跡点移動処理)を行う役目を果たす。より具体的には、追跡点移動部106は、追跡点設定部104において設定された各追跡点をそれぞれ乱数を用いて移動させる。
【0131】
追跡点評価部108は、上記(3)の処理(評価値算出処理)を行う役目を果たす。より具体的には、追跡点評価部108は、追跡点移動部106において各追跡点が移動されると、第1領域の画像と第2領域の画像とに基づく類似度を追跡点の評価値として追跡点ごとに算出する。また、追跡点評価部108は、追跡点ごとに評価値が算出されると、評価値が算出された旨を追跡点設定部104へ伝達する。
【0132】
欠陥検出部110は、上記(5)の処理(周期欠陥検出処理)を行う役目を果たす。より具体的には、欠陥検出部110は、所定の回数再設定が行われた旨が追跡点設定部104から伝達された場合に、直近に再設定された追跡点に基づいて追跡点評価部108が算出した評価値に基づいて、周期欠陥が含まれる領域を選択的に検出する。
【0133】
周期欠陥検出装置100は、例えば図15の構成によって、上述した(1)の処理(追跡点設定処理)〜(5)の処理(周期欠陥検出処理)を行い、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法を実現することができる。したがって、周期欠陥検出装置100は、例えば図15の構成によって、帯状体10の表面に周期的に発生しうる周期欠陥の検出精度の向上を図ることができる。
【0134】
以上のように、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置100は、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る上述した(1)の処理(追跡点設定処理)〜(5)の処理(周期欠陥検出処理)を行うことによって、周期欠陥を検出する。ここで、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法では周期欠陥に位置ズレが生じる可能性があることが仮定されているので、たとえ帯状体10に発生した周期欠陥に位置ズレが生じたとしても、周期欠陥検出装置100は、当該周期欠陥を検出することができる。また、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法では、第1の領域の画像と第2の領域の画像とを比較するテンプレートマッチングによって周期欠陥を検出するので、たとえ撮像画像に含まれる周期欠陥が軽微な欠陥であったとしても、周期欠陥検出装置100は、当該欠陥を検出することができる。
【0135】
したがって、周期欠陥検出装置100は、従来の技術を用いる従来の周期欠陥検出装置よりもより精度が高く周期欠陥を検出することが可能であり、帯状体10の表面に周期的に発生しうる周期欠陥の検出精度の向上を図ることができる。
【0136】
また、動画像中の対象物をトラッキングする技術としては、例えば、「粒子フィルタ」という状態推定手法を用いた技術がある。ここで、動画像中の対象物をトラッキングする技術は、位置を推定する対象物をユーザが特定しなければ、当該対象物をトラッキングすることはできない。これに対して、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置100は、上述した(1)の処理(追跡点設定処理)〜(5)の処理(周期欠陥検出処理)を行うことによって、帯状体10に発生しうる周期欠陥を予め特定することなく、周期欠陥を検出することができる。
【0137】
(本発明の実施形態に係るプログラム)
コンピュータを、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置として機能させるためのプログラムによって、帯状体の表面に周期的に発生しうる周期欠陥の検出精度の向上を図ることができる。
【0138】
例えば、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出方法に係る上述した(1)の処理(追跡点設定処理)〜(5)の処理(周期欠陥検出処理)は、専用または汎用のハードウェアにより実行させてもよいが、ソフトウェアにより実行させてもよい。上記各処理をソフトウェアにより行う場合、汎用または専用のコンピュータにプログラムを実行させることにより、上記各処理を実行することができる。ここで、上記コンピュータの構成としては、例えば上述した周期欠陥検出装置100の構成が挙げられる。また、上記コンピュータは、例えば、自装置が備える記憶手段や着脱可能な外部記録媒体に記録された上記プログラム、またはネットワークを介して取得された上記プログラムを実行することによって、上記各処理を実行することができる。
【0139】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0140】
例えば、図15では、周期欠陥検出装置100が、追跡点設定部104、追跡点移動部106、追跡点評価部108、および欠陥検出部110を備える構成を示したが、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置の構成は、上記に限られない。例えば、本発明の実施形態に係る周期欠陥検出装置は、図15に示す追跡点設定部104、追跡点移動部106、追跡点評価部108、および欠陥検出部110の全ての構成要素(あるいは、任意の複数の構成要素)を、1つの処理回路で実現する(すなわち、複数の構成要素を1つの部と捉える)こともできる。
【0141】
また、上記では、コンピュータを、本発明の実施形態に係る欠陥検出装置として機能させるためのプログラム(コンピュータプログラム)が提供されることを示したが、本発明の実施形態は、さらに、上記プログラムを記憶させた記憶媒体も併せて提供することができる。
【0142】
上述した構成は、本発明の実施形態の一例を示すものであり、当然に、本発明の技術的範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0143】
10 帯状体
12、12a、12b 搬送ロール
14a、14b ロータリーエンコーダ
100 周期欠陥検出装置
102 記憶部
104 追跡点設定部
106 追跡点移動部
108 追跡点評価部
110 欠陥検出部
200 照明装置
300 撮像装置
400 表示装置
1000 周期欠陥検出システム



【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される帯状体の表面が撮像された撮像画像に基づいて、前記帯状体の表面に周期的に発生した周期欠陥を検出する周期欠陥検出装置であって、
前記周期欠陥を探索するための基準点である追跡点を初期設定する前記撮像画像の位置を決定し、決定された前記位置ごとに複数の前記追跡点を設定する追跡点設定部と、
前記追跡点設定部において設定された前記追跡点について、前記帯状体の長手方向における前記周期欠陥の推定される平均値である基準間隔、前記帯状体の短手方向に生じうる前記周期欠陥の推定最大ズレ量、および前記帯状体の長手方向に生じうる前記周期欠陥の前記基準間隔からの推定最大ズレ量に基づく乱数により、前記追跡点設定部において設定された前記追跡点をそれぞれ移動させる追跡点移動部と、
移動前の前記追跡点を含む予め規定された大きさの第1領域の画像と、移動後の追跡点を含む前記第1領域と同一の大きさの第2領域の画像とに基づく類似度を、追跡点の評価値として追跡点ごとに算出する追跡点評価部と、
前記追跡点評価部が算出した前記評価値に基づいて、前記周期欠陥が含まれる前記第2領域を検出する欠陥検出部と、
を備え、
前記追跡点設定部は、前記追跡点評価部が追跡点ごとの評価値を算出すると、前記評価値に対応する個数分移動後の追跡点を複数複製して、追跡点を再設定し、
前記追跡点移動部は、前記追跡点設定部において再設定された前記追跡点をそれぞれ移動させ、
前記追跡点評価部は、再設定された前記追跡点の評価値を算出し、
前記欠陥検出部は、前記追跡点設定部、前記追跡点移動部、および前記追跡点評価部にける一連の処理が予め規定された回数繰り返された場合に、前記評価値に基づく検出を行うことを特徴とする、周期欠陥検出装置。
【請求項2】
前記追跡点設定部は、前記追跡点評価部が算出した追跡点ごとの前記評価値の総和と、各追跡点ごとの前記評価値とに基づいて、前記追跡点評価部が評価値を算出した移動後の追跡点それぞれを、前記評価値の総和および各追跡点における前記評価値に応じた数複製することを特徴とする、請求項1に記載の周期欠陥検出装置。
【請求項3】
前記追跡点設定部は、前記追跡点評価部が算出した各追跡点ごとの前記評価値と、追跡点の複製を制限するための第1の閾値とを比較し、前記評価値が第1の閾値以下の追跡点を複製しないことを特徴とする、請求項2に記載の周期欠陥検出装置。
【請求項4】
前記追跡点設定部は、前記追跡点評価部が算出した各追跡点ごとの前記評価値と、複製される追跡点の数を制限するための第2の閾値とを比較し、前記評価値が第2の閾値以上の追跡点の複製数を、予め規定された上限数とすることを特徴とする、請求項2に記載の周期欠陥検出装置。
【請求項5】
前記追跡点設定部は、前記初期設定において、前記撮像画像に設定した格子の交点に前記追跡点を設定し、
設定された前記格子に囲まれた領域それぞれの大きさは、前記第1領域の大きさであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の周期欠陥検出装置。
【請求項6】
前記追跡点設定部は、前記格子の交点に設定された追跡点を含む前記第1領域と同一の大きさの領域内から輝度が最大の画素を検出し、検出された前記画素が前記領域の中心位置となるように設定された追跡点の位置を移動させることを特徴とする、請求項5に記載の周期欠陥検出装置。

【請求項7】
前記追跡点設定部は、前記格子の交点に設定された追跡点を含む前記第1領域と同一の大きさの領域内から輝度が最小の画素を検出し、検出された前記画素が前記領域の中心位置となるように設定された追跡点の位置を移動させることを特徴とする、請求項5に記載の周期欠陥検出装置。
【請求項8】
前記追跡点評価部は、前記評価値の算出対象の追跡点への移動元となった追跡点に対応する予め規定された大きさの領域の画像を、前記第1領域の画像とすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の周期欠陥検出装置。
【請求項9】
前記追跡点評価部は、前記初期設定された追跡点に対応する予め規定された大きさの領域の画像を、前記第1領域の画像とすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の周期欠陥検出装置。
【請求項10】
搬送される帯状体の表面が撮像された撮像画像に基づいて、前記帯状体の表面に周期的に発生した周期欠陥を検出する周期欠陥検出方法であって、
前記周期欠陥を探索するための基準点である追跡点を初期設定する前記撮像画像の位置を決定し、決定された前記位置ごとに複数の前記追跡点を設定する追跡点設定ステップと、
前記追跡点が設定された場合に、設定された前記追跡点について、前記帯状体の長手方向における前記周期欠陥の推定される平均値である基準間隔、前記帯状体の短手方向に生じうる前記周期欠陥の推定最大ズレ量、および前記帯状体の長手方向に生じうる前記基準間隔からの推定最大ズレ量に基づく乱数により、設定された前記追跡点をそれぞれ移動させる追跡点移動ステップと、
移動前の前記追跡点を含む予め規定された大きさの第1領域の画像と、移動後の追跡点を含む前記第1領域と同一の大きさの第2領域の画像とに基づく類似度を、追跡点の評価値として追跡点ごとに算出する追跡点評価ステップと、
前記追跡点評価ステップにおいて追跡点ごとの評価値が算出されると、前記評価値に対応する移動後の追跡点を複数複製して、前記追跡点を再設定する追跡点再設定ステップと、
予め規定された回数だけ前記追跡点再設定ステップと、前記追跡点再設定ステップにおいて再設定された追跡点に基づく前記追跡点移動ステップと、前記追跡点再設定ステップにおいて再設定された追跡点に基づき前記追跡点移動ステップにおいて移動された追跡点を移動後の追跡点とする前記追跡点評価ステップとが行われた場合に、前記追跡点評価ステップにおいて算出された前記評価値に基づいて、前記周期欠陥が含まれる前記第2領域を検出する欠陥検出ステップと、
を有し、
前記追跡点移動ステップでは、前記追跡点設定ステップにおいて設定された前記追跡点または前記追跡点再設定ステップにおいて再設定された前記追跡点が移動されることを特徴とする、周期欠陥検出方法。
【請求項11】
搬送される帯状体の表面が撮像された撮像画像に基づいて、前記帯状体の表面に周期的に発生した周期欠陥を検出する周期欠陥検出装置に用いることが可能なプログラムであって、
前記周期欠陥を探索するための基準点である追跡点を初期設定する前記撮像画像の位置を決定し、決定された前記位置ごとに複数の前記追跡点を設定する追跡点設定ステップ、
前記追跡点が設定された場合に、設定された前記追跡点について、前記帯状体の長手方向における前記周期欠陥の推定される平均値である基準間隔、前記帯状体の短手方向に生じうる前記周期欠陥の推定最大ズレ量、および前記帯状体の長手方向に生じうる前記基準間隔からの推定最大ズレ量に基づく乱数により、設定された前記追跡点をそれぞれ移動させる追跡点移動ステップ、
移動前の前記追跡点を含む予め規定された大きさの第1領域の画像と、移動後の追跡点を含む前記第1領域と同一の大きさの第2領域の画像とに基づく類似度を、追跡点の評価値として追跡点ごとに算出する追跡点評価ステップ、
前記追跡点評価ステップにおいて追跡点ごとの評価値が算出されると、前記評価値に対応する移動後の追跡点を複数複製して、前記追跡点を再設定する追跡点再設定ステップ、
予め規定された回数だけ前記追跡点再設定ステップと、前記追跡点再設定ステップにおいて再設定された追跡点に基づく前記追跡点移動ステップと、前記追跡点再設定ステップにおいて再設定された追跡点に基づき前記追跡点移動ステップにおいて移動された追跡点を移動後の追跡点とする前記追跡点評価ステップとが行われた場合に、前記追跡点評価ステップにおいて算出された前記評価値に基づいて、前記周期欠陥が含まれる前記第2領域を検出する欠陥検出ステップ、
をコンピュータに実行させ、
前記追跡点移動ステップでは、前記追跡点設定ステップにおいて設定された前記追跡点または前記追跡点再設定ステップにおいて再設定された前記追跡点が移動されることを特徴とする、プログラム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−145103(P2011−145103A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4147(P2010−4147)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】