説明

周波数変換回路及び衛星測位信号受信装置

【課題】小規模な装置構成でありながら3周波の測位信号を利用可能で、さらに省電力化、低コスト化を実現する衛星測位信号受信装置を提供する。
【解決手段】ミキサ104において、L1、L2C及びL5・E5aの各信号を、L1信号の周波数と、L2C及びL5・E5a信号の周波数とが互いに影像関係となる局部発振信号と混合して周波数変換(1stIF)する。次に、イメージ除去ミキサ108において、1stIFの各測位信号を、1stIFのL1信号の周波数と、1stIFのL2C信号及びL5・E5a信号の周波数とが互いに影像関係となる局部発振信号と混合して周波数変換(2ndIF)し、2ndIFのL1信号と、2ndIFのL2C及びL5・E5a信号とをそれぞれ独立に出力する。分波器112は、イメージ除去ミキサ108から混合されて出力された2ndIFのL2CとL5・E5a信号とを分離して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星測位システムに用いられる測位衛星から測位信号を受信するための受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の現在位置や速度を求める測位システムとして、従来、GPS(Global Positioning System)が実用化され、航空、船舶の航法用のみならず、カーナビゲーションシステムでも広く使われている。また、GPS以外にも、ロシアで開発・運用されているGLONASS(Global Orbiting Navigation Satellite System)や、欧州連合(EU)を中心とする国際協力により開発・運用されているGalileo等の測位システムが知られている。例えば、GPSとGalileoとでは、測位衛星から放送する測位信号のスペクトル拡散変調に用いる擬似雑音(PNコード)や搬送周波数等の設定が異なるが、大まかな測位原理、測位演算の手法は同様のものである。したがって、これら複数の測位システムを共用可能な受信装置の開発が盛んに行われている。
【0003】
複数の測位システムを共用可能な受信装置として、特許文献1に記載のような、GPSを構成する測位衛星(以下、GPS衛星)からの測位信号と、GLONASSを構成する測位衛星(以下、GLONASS衛星)からの測位信号との2周波の測位信号を受信可能なGPS/GLONASS共用受信装置が案出されている。この受信装置は、GPS衛星及びGLONASS衛星から受信した2周波の測位信号を、初段のイメージ除去ミキサにより各測位信号をRF(高調波)信号からIF(中間周波数)信号へと周波数変換すると共に、各測位信号を分離することで各測位信号の干渉を抑え、GPS/GLONASSの共用を実現している。
【特許文献1】特開平7−128423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、GPSにおいては、「GPS近代化計画」によって、当初からBlock IIRまでの形式のGPS衛星で民生用に放送されていたL1の信号に加え、近年、Block IIR-M、Block IIFといった形式のGPS衛星の打上げに伴い、新たな民生用信号としてL2C(Block IIR-M以降)の信号及びL5(Block IIF以降)の信号の放送が開始されている。これにより、GPSでは、民生用としてL1,L2C,L5の3周波の測位信号を利用できるようになった。
【0005】
また、Galileoにおいては、民生用としてE2−L1−E1(以下、単にL1と表記する)、E5a、E5b、E6といった複数の周波数帯の測位信号が当初より利用可能となる予定である。これらの複数の測位信号を利用することができれば、従来以上の性能(受信エリアの拡大、測位精度の向上等)を実現することが可能となる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の受信装置は、GPSとGLONASSとの2周波の受信にしか対応しておらず、例えばGPSのL1、L2C、L5といった3周波の測位信号を受信することはできない。また、例えば複数周波の測位信号を利用して測位精度劣化の原因である電離層遅延誤差の補正を行うことで高精度の測位を実現しようとする場合、2周波の受信では衛星の稼働状況や配置状況によっては測位信号を同時に受信できないこともあり、補正による高精度の測位を実現できる時間帯が限られてしまうため、不十分である。
【0007】
これに対し、3周波の測位信号を受信可能にすれば、2周波受信の場合よりも確実に高精度の測位を行うことができる。また、3周波の測位信号を受信することで、例えば高精度な測位結果が得られる搬送波測位を行う場合に、エクストラワイドレーン(EWL)法によって、整数不定性(アンビギュイティ)を容易に決定することができるといったメリットもある。
【0008】
しかし、3周波の測位信号の受信に対応するためには、新たな周波数・帯域幅に対応した処理系を必要とすることになる。具体的には、例えば測位信号を周波数変換するミキサ部、周波数変換に利用する局部発振器、基準発振器、中間波を増幅するアンプ部といった信号処理系が受信する測位信号の数だけ必要となり、受信装置の規模が大きくなるという問題点がある。また、受信装置の規模が大きくなれば、消費電力の増加や製造コストの高騰といった問題も発生する。
【0009】
また、例えば特許文献1に記載の受信装置では、初段のイメージ除去ミキサで2つの測位信号を分離するため、それ以降は2系統の処理系が必要となり、このような構成を3周波受信に適用した場合、受信装置の十分な小型化は行えない。
【0010】
本発明はこのような問題を解決するためになされており、小規模な装置構成でありながら3周波の測位信号を利用可能で、さらに省電力化、低コスト化を実現する受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の周波数変換回路は、衛星測位システムで用いられる人工衛星から受信した搬送周波数がそれぞれ異なる第1測位信号、第2測位信号及び第3測位信号を周波数変換する周波数変換回路であって、発振信号生成手段と、第1混合手段と、分周手段と、第2混合手段と、分離手段とを備える。
【0012】
発振信号生成手段は、第1測位信号の周波数と、第2測位信号及び第3測位信号の周波数とが互いに影像関係となり、かつ第1混合手段による周波数変換で各測位信号の周波数帯域が重ならないように設定された周波数の第1局部発振信号を生成する。第1混合手段は、発振信号生成手段により生成された第1局部発振信号と第1,第2,第3測位信号とを混合することにより、各測位信号を第1中間周波数(1stIF)に周波数変換する。このとき、第1局部発振信号の周波数を上述のように設定することで、初段の周波数変換において各測位信号同士のイメージ(影像)妨害を除去できる。
【0013】
分周手段は、発振信号生成手段により生成された第1局部発振信号を1/m(mは2以上の整数)に分周することで、1stIFの第1測位信号の周波数と、1stIFの第2測位信号及び1stIFの第3測位信号の周波数とが互いに影像関係となるように設定された周波数の第2局部発振信号を生成する。第2混合手段は、分周手段によって生成された第2局部発振信号と、1stIFの第1,第2,第3測位信号とを混合することにより、各測位信号を第2中間周波数(2ndIF)に周波数変換し、2ndIFの第1測位信号と、2ndIFの第2測位信号及び2ndIFの第3測位信号とを互いの干渉を排除しながら、すなわちイメージを除去しながら分離し、それぞれ独立に出力する。分離手段は、第2混合手段から混合されて出力された2ndIFの第2測位信号と2ndIFの第3測位信号とを分離してそれぞれ独立に出力する。
【0014】
このように構成された周波数変換回路によれば、3周波の高調波(RF)測位信号から、中間周波数(IF)の測位信号への周波数変換をイメージ妨害を受けることなく行うことができる。また、第1,2混合手段における2段階の周波数変換のうち、後段の周波数変換時に、第1測位信号と、第2測位信号及び第3測位信号とを分離し、その後の分離手段において第2測位信号と第3測位信号とを分離することで、初段の周波数変換時に各信号を分離する場合と比較して、分離後の各測位信号に係る信号処理系統を短く構成できる。これにより、周波数変換回路の小型化、低コスト化が実現する。また、回路が簡素な構成であれば電力消費の低減につながり、省電力化にも寄与する。
【0015】
さらに、第2混合手段による周波数変換で用いる第2局部発振信号は、発振信号生成手段で発振した第1局部発振信号を分周したものを用いることで、各段の周波数変換に対して例えば電圧制御発振器(VCO)のような局部発振器を複数用いることなく1つの局部発振器で賄うことができる。これにより、周波数変換回路の小型化、低コスト化、省電力化が実現する。
【0016】
つぎに、請求項2に記載の周波数変換回路は、第1,第2,第3測位信号のうち、受信対象として選択されていない測位信号に係る信号処理系統に対する電力の供給をオフにすることを特徴とする。このようにすることで、測位演算に使用しない信号処理系等による電力消費が低減され、省電力化が実現する。具体的には、例えばユーザが操作部に対して行った操作に応じて各測位信号の受信の可否を選択可能な構成してもよいし、受信状態の良否に基づき自動的に各測位信号の受信の可否を選択可能な構成であってもよい。
【0017】
ところで、3周波の測位信号を受信する場合、例えばGPSのL1,L2C,L5といった同一の衛星測位ステムで放送される複数の測位信号を受信したり、GPSとGalileoといった複数の衛星測位システムで放送される測位信号を受信したりすることが考えられる。そして、必要に応じて各衛星測位システムの測位衛星を混用しつつ測位演算を行うことで、測位精度を良好に維持することができる。
【0018】
その際、例えばGPS−L1とGalileo−L1の信号(共に搬送周波数1575.42MHz)や、GPS−L5とGalileo−E5aの信号(共に搬送周波数1176.45MHz)のように、異なる衛星測位システムであっても、搬送周波数が同一の測位信号であれば、1つの受信処理系統で同時に測位信号を受信することができる。
【0019】
そこで、請求項3に記載の衛星測位信号受信装置のように構成するとよい。すなわち、衛星測位システムで用いられる人工衛星から無線電波の形態で送信される測位信号を受信する受信手段と、請求項1又は請求項2に記載の周波数変換回路と、周波数変換回路によって周波数変換された第1,第2,第3測位信号をそれぞれ復調する復調手段と、制御手段とを備える。
【0020】
このうち、復調手段は、第1、第2、第3の各復調系統を備える。そして、第1,第2,第3復調系統のうち少なくとも何れか1つは、複数の衛星測位システムに対して、各衛星測位システムごとに専用の復調回路と、複数の衛星測位システムで共用可能な復調回路とを、それぞれの衛星測位システム係る測位演算に用いる最大の衛星個数を満たす回路数を確保できるような個数で備え、複数の衛星測位システムに係る同一の搬送周波数の測位信号を復調可能に構成されている。
【0021】
制御手段は、復調手段による測位信号の復調を行う際、測位信号の受信状態に応じて測位演算に用いる測位衛星を選択し、この選択した測位衛星に対して何れかの復調回路を割り当て、この割り当てた復調回路によって復調された測位信号に基づき測位演算を行う。
【0022】
GPS及びGalileoについてこの構成を適用する場合、周波数変換回路側において、例えば、第1測位信号としてGPS−L1及びGalileo−L1を同時に受信し、第2測位信号としてGPS−L2を受信し、第3測位信号としてGPS−L5及びGalileo−E5aを同時に受信するような構成とすることが考えられる。
【0023】
このような周波数変換回路の構成に対して、第1復調系統でGPS−L1及びGalileo−L1に対してそれぞれに専用の復調回路と、GPS−L1及びGalileo−L1で共用可能な復調回路とを備え、これらを受信状態に応じてGPSとGalileoとで適宜分配して測位演算に使用することで、1つの受信系統においてGPSとGalileoの測位信号を同時に受信することによるハイブリッド測位が可能になる。また、第2復調系統でGPS−L2、第3復調系統でGPS−L5及びGalileo−E5aをそれぞれ復調可能に構成することで、第1復調系統からのGPS−1又はGalileo−L2の各測位信号による測位演算の結果を、第2復調系統又は第3復調系統からの各測位信号によってそれぞれ補正することができる。
【0024】
また、GPS及びGalileoに係る測位衛星の中から測位信号の受信状態に応じて測位演算に適した測位衛星を選択し、これに適宜復調回路を割り当てることで、測位精度が高くなるような測位衛星の組合せで測位信号を受信して測位演算を行うことが可能になる。これにより、良好な測位精度を保つことができる。
【0025】
また、上述の例で挙げたGPS−L1及びGalileo−L1で共用可能な復調回路のように、複数の衛星測位システムで共用可能な復調回路を用いることで、それぞれの衛星測位システム専用の復調回路を各衛星測位システムによる測位演算に用いる最大個数を揃える場合と比較して、より少数の復調回路で各衛星測位システムによる測位演算に用いる最大個数を満たすことができる。これにより、衛星測位信号受信装置を小型化、低コスト化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得る。
【0027】
[衛星側信号受信装置の構成の説明]
図1及び図2は、3周波の測位信号に対応する衛星測位信号受信装置の概略構成を示すブロック図である。この衛星測位信号受信装置は、測位衛星からの測位信号を受信するアンテナ101(図1)と、測位衛星から受信した測位信号を周波数変換し、デジタル信号として出力するRFフロントエンド部1(図1)と、測位衛星からの搬送波及びPNコードの捕捉・追尾を行い、RFフロントエンド部1から供給された測位信号を復調して測位演算を行う信号処理部2(図2)とを備える。
【0028】
なお、本実施形態では、受信可能な測位信号として、GPS及びGalileoの各衛星測位システムで用いられる以下の3周波5種類の測位信号を採用する。
(1)GPS−L1及びGalileo−L1(共に1575.42MHz)
(2)GPS−L2C(1227.6MHz)
(3)GPS−L5及びGalileo−E5a(共に1176.45MHz)
上記の(1)〜(3)の各周波の測位信号の搬送周波数は、何れもfo=1.023MHz(foはGPSの基本周波数である10.023MHzの1/10)の逓倍で構成されている。すなわち、上記(1)のGPS−L1及びGalileo−L1の測位信号(以下、これらを併せて単にL1とも表記する)の搬送周波数は1540fo、上記(2)のGPS−L2Cの測位信号(以下、単にL2Cとも表記する)の搬送周波数は1200fo、上記(3)のGPS−L5及びGalileo−E5aの測位信号(以下、これらを併せて単にL5・E5aとも表記する)の搬送周波数は1150foで表される。
【0029】
GPS及びGalileoでは、測位衛星から測位信号を送信する際、所定のPNコードを用いて測位信号にスペクトル拡散変調が施されている。測位衛星からの測位信号を受信した衛星測位信号受信装置は、受信した測位信号を高調波(RF)から中間周波数(IF)へ、そしてベースバンドへと周波数変換する。そして、測位信号を送信している測位衛星からの搬送波及び当該測位衛星でスペクトル拡散変調に用いたPNコードを捕捉して、受信した測位信号を復調する。衛星測位信号受信装置は、この復調した測位信号を用いて当該測位衛星までの擬似距離や各測位衛星の位置を算出したり、電階層遅延等の各種誤差を補正し、算出した各種データによる現在位置、速度、方位等の算出を行う。
【0030】
図1に示すRFフロントエンド部1は、本発明の周波数変換回路に相当し、低雑音増幅器(LNA)102と、バンドパスフィルタ(BPF)102と、ミキサ104と、電圧制御発振器(VCO)105と、分周器106,107と、イメージ除去ミキサ108と、ローパスフィルタ(LPF)109,116と、分波器112と、バンドパスフィルタ(BPF)113と、AGC(Automatic Gain Control)アンプ110,114,117と、A/Dコンバータ111,115,118と、基準発振器119と、電源制御器120とを備える。
【0031】
アンテナ101は、L1、L2C、L5・E5aの各測位信号を受信するトリプルバンドアンテナ、若しくはL1の周波数帯を1つの極とし、L2Cと、L5・E5aとの両周波数帯の中間の周波数帯にもう1つの極を持ちブロードな特性を有するデュアルバンドアンテナである。このアンテナ101により、GPS衛星及びGalileo衛星からの測位信号を受信する。
【0032】
アンテナ101で受信された各測位信号のRF信号は、LNA102によって低雑音で増幅される。LNA102によって増幅された各測位信号のRF信号は、BPF103によって帯域制限される。このBPF103は、例えばSAWフィルタ等で構成されており、その通過帯域は、上記L1,L2C,L5・E5aの各周波数帯を通過させるトリプルバンド、若しくはL1の周波数帯を通過させるバンドと、L2C,L5・E5aの両周波数帯を通過させるバンドとによるデュアルバンドで構成されている。
【0033】
BPF103により帯域制限された各測位信号のRF信号は、ミキサ104においてVCO105からの発振信号(Lo)を分周器106によって分周した第1局部発振信号(1stLo)と混合されることによって、第1中間周波数(1stIF)へと周波数変換される。ここで、1stLoの周波数は、L1の搬送周波数と、L2C及びL5・E5aの搬送周波数とが1stLoの側から見て互いに影像関係となり、かつ周波数変換することで各測位信号の周波数帯域が重ならないような周波数に設定されている。すなわち、1stLoの周波数は、L1の搬送周波数と、L2C〜L5・E5aの周波数帯域とのほぼ中間の周波数(具体的には、foの逓倍である1376fo)に設定されている。この1stLoは、基準発振器119が発振するリファレンスクロック(周波数:64fo)との比較周波数が十分に高くなるような周波数にてVCO105から発振されるLo(周波数:2752fo)を、分周器106で1/2の周波数に分周することで得られる。
【0034】
RFのL1は、ミキサ104において1stLoと混合されることで、周波数164foの1stIF(L1)に周波数変換される。同じく、RFのL2Cは、周波数176foの1stIF(L2C)に周波数変換される。また、RFのL5・E5aは、周波数226foの1stIF(L5・E5a)に周波数変換される。
【0035】
ミキサ104によって周波数変換された1stIFの各測位信号は、イメージ除去ミキサ108において、1stLoを分周器107によって分周した第2局部発振信号(2ndLo)と混合されることによって、第2中間周波数(2ndIF)へと周波数変換される。ここで、2ndLoの周波数は、1stIFのL1の周波数と、1stIFのL2C及びL5・E5aの周波数とが2ndLoの側から見て互いに影像関係となるような周波数(具体的には、foの逓倍である172fo)に設定されている。すなわち、2ndLoの周波数は、1stIFのL1の周波数と、1stIFのL2C〜1stIFのL5・E5aの周波数帯域とのほぼ中間の周波数に設定されている。この2ndLoは、1stLo(周波数:1376fo)を、分周器107で1/8の周波数に分周することで得られる。
【0036】
stIFのL1は、イメージ除去ミキサ108において2ndLoと混合されることで、周波数8foの2ndIFに周波数変換される。同じく、1stIFのL2Cは、周波数4foの2ndIFに周波数変換される。また、1stIFのL5・E5aは、周波数54foの2ndIFに周波数変換される。
【0037】
イメージ除去ミキサ108は、周波数変換した2ndIFのL1と、2ndIFのL2C及びL5・E5aとを互いの干渉を排除しながら、すなわちイメージを除去しながら分離し、それぞれ独立に出力する。つまり、2ndIFのL1と、2ndIFのL2C及びL5・E5aとは、この段階で分離される。
【0038】
イメージ除去ミキサ108から単独で出力された2ndIFのL1は、LPF109により中心周波数8foの通過帯域で帯域制限をかけられた後、AGCアンプ110によって次のアナログ/デジタル変換に必要な入力レベルを満足するレベルまで増幅される。AGCアンプ110によって増幅された2ndIFのL1は、A/Dコンバータ111によってデジタル信号に変換され、信号処理部2(図2参照)に供給される。
【0039】
また、イメージ除去ミキサ108から出力された2ndIFのL1に係る信号処理系統を構成する上述のLPF109、AGCアンプ110、A/Dコンバータ111は、電源制御器120からの制御により、系統ごとに一括して電源のON/OFFを切り替え可能に構成されている。これにより、測位衛星からL1の信号を受信しない場合に、この系統の電源を断つことでRFフロントエンド部1における電力消費量を低減する。
【0040】
一方、2ndIFのL2C及びL5・E5aは、イメージ除去ミキサ108から混合して出力される。イメージ除去ミキサ108から出力された2ndIFのL2C及びL5/E5aは、分波器112によってそれぞれ分離される。分離された2ndIFのL2Cは、BPF113により中心周波数4foの通過帯域で帯域制限をかけられた後、AGCアンプ114によって次のアナログ/デジタル変換に必要な入力レベルを満足するレベルまで増幅される。AGCアンプ114によって増幅された2ndIFのL2Cは、A/Dコンバータ115によってデジタル信号に変換され、信号処理部2(図2参照)に供給される。
【0041】
また、分波器112から出力された2ndIFのL2Cに係る信号処理系統を構成する上述のBPF113、AGCアンプ114、A/Dコンバータ115は、電源制御器120からの制御により、系統ごとに一括して電源のON/OFFを切り替え可能に構成されている。これにより、測位衛星からL2Cの信号を受信しない場合に、この系統の電源を断つことでRFフロントエンド部1における電力消費量を低減する。
【0042】
一方、分波器112によって分離された2ndIFのL5・E5aは、LPF116により中心周波数54foの通過帯域で帯域制限をかけられた後、AGCアンプ117によって次のアナログ/デジタル変換に必要な入力レベルを満足するレベルまで増幅される。AGCアンプ117によって増幅された2ndIFのL5・E5aは、A/Dコンバータ118において、基準発振器119から発振される周波数64foのリファレンスクロックをサンプリング周波数として、周波数10foの第3中間周波数(3rdIF)にダウンコンバートされる。そして、3rdIFのL5・E5aはデジタル信号に変換され、信号処理部2(図2参照)に供給される。
【0043】
また、分波器112から出力された2ndIFのL5・E5aに係る信号処理系統を構成する上述のLPF116、AGCアンプ117、A/Dコンバータ118は、電源制御器120からの制御により、系統ごとに一括して電源のON/OFFを切り替え可能に構成されている。これにより、測位衛星からL5・E5aの信号を受信しない場合に、この系統の電源を断つことでRFフロントエンド部1における電力消費量を低減する。
【0044】
電源制御器120は、信号処理部2(図2参照)の演算処理部5からの電源制御信号に基づき、上述の各系統に対する電源のON/OFFの切り替えを行う。例えば、図示しないスイッチ等により、3周波受信と2周波受信との何れかを選択する操作や、L1,L2C,L5・E5aの中から何れの信号を受信するかを選択する操作等を受け付け、受信対象として選択された測位信号に係る系統のみに電源を供給するような構成が考えられる。また、演算処理部5において、測位信号の受信状態の良否等から各測位信号の受信の可否を選択し、演算処理部5によって受信対象として選択された測位信号に係る系統のみに電源を供給するような構成であってもよい。
【0045】
図2に示す信号処理部2は、ダウンコンバータ部3と、信号プロセッサ部4と、演算処理部5とを備える。なお、以下において、説明の便宜のためL1の信号に対する信号処理に係る系統を第1系統、L2Cの信号に対する信号処理に係る系統を第2系統、L5・E5aの信号に対する信号処理に係る系統を第3系統と称する。
【0046】
ダウンコンバータ部3は、上記第1,第2,第3の各系統ごとにミキサ31a,31b,31c、LPF32a,32b,32c、分周器33a,33b,33cを備える。
RFフロントエンド部1から供給されてきたL1、L2c、L5・E5aの各測位信号は、各ミキサ31a,31b,31cにおいて、各分周期33a,33b,33cにより生成される発振信号とそれぞれ混合され、ベースバンドに周波数変換される。ここで、各分周器33a,33b,33cは、RFフロントエンド部1から供給されるリファレンスクロックを分周することで2ndIFのL1並びにL2c、及び3rdIFのL5・E5aの各中間周波数と同じ周波数の発振信号をそれぞれ生成する。
【0047】
各ミキサ31a,31b,31cによりベースバンドに周波数変換されたL1、L2c、L5・E5aの各測位信号は、それぞれLPF32a,32b,32cによって帯域制限され、信号プロセッサ部4に供給される。なお、第1系統においては、GPS−L1とGalileo−L1とで測位信号の復調に必要となる帯域幅が異なるため、LPF32aは、演算処理部5から出力されるGPS/Galileo識別信号に従って信号の通過帯域を変更する。
【0048】
信号プロセッサ部4は、第1,第2,第3の各系統ごとに測位演算に用いる測位衛星のチャンネル数に応じた複数の信号プロセッサ40a,40b,40cを備える。なお、以下の説明において、各信号プロセッサ40a,40b,40cを特に区別しない場合は、「信号プロセッサ40」のようにa,b,cの記号を付記しない。また、各信号プロセッサ40内の各部構成についても同様にする。
【0049】
各信号プロセッサ40は、ミキサ41,42と、搬送波発生器43と、コード発生器44とを備える。搬送波発生器43は、RFフロントエンド部1から供給されるリファレンスクロックに同期しながら、演算処理部5からの搬送周波数設定信号により設定される周波数で発振する。演算処理部5により設定される周波数は、各信号プロセッサ40で処理すべき測位信号の搬送周波数に対応する。ダウンコンバータ部3から供給される各測位信号は、ミキサ41において搬送波発生器43の出力と混合される。ミキサ41の出力信号は、ミキサ42を介して演算処理部5に供給される。演算処理部5は、供給された信号に基づいて搬送周波数を検出し、この周波数に応じた搬送周波数設定信号を搬送波発生器43へ出力する。つまり、信号プロセッサ40のミキサ41及び搬送波発生器43は、演算処理部5を介してGPS又はGalileoの各測位信号の搬送波を捕捉・追尾する搬送波追尾ループを構成している。
【0050】
ミキサ41の出力信号は、ミキサ42においてコード発生器44の出力信号と混合されることで、元の信号波に復調される。コード発生器44は、RFフロントエンド部1から供給されるリファレンスクロックに同期しながら、演算処理部5からのコード設定信号により設定されるPNコードを発生する。GPS及びGalileoでは、測位衛星から測位信号を送信する際、所定のPNコードを用いて測位信号にスペクトル拡散変調が施されている。そこで、測位信号の拡散変調に用いられたPNコードと同一のPNコードをコード発生器44で生成し、これをミキサ42においてベースバンドに変換された測位信号と混合することで、当該測位信号のスペクトル逆拡散を行う。信号プロセッサ40のミキサ42及びコード発生器44は、演算処理部5を介してGPS又はGalileoの各測位信号のPNコードを捕捉・追尾する動作を行う遅延ロックループ(DLL)を構成している。また、演算処理部5において、コード発生器44が発生したPNコードの位相と測位衛星からのPNコードの位相との時間差から、その測位衛星と衛星測位受信装置との擬似距離を算出することができる。
【0051】
なお、第1系統では、上記のような構成を有する信号プロセッサ40aが、GPS−L1専用回路を4個、GPS−L1及びGalileo−L1の両信号で共用可能な回路を4個、Galileo−L1専用回路を4個の合計12個設けられている。このような構成によれば、GPS−L1及びGalileo−L1の両信号を処理可能な4個の信号プロセッサ40aに対して、GPS信号用とGalileo信号用と配分を適宜変更することで、GPS−L1及びGalileo−L1のそれぞれの測位信号について、捕捉するチャンネル数を4〜8チャンネルの間で変更できる。また、第2系統では、信号プロセッサ40bが、GPS−L2C専用で8個設けられており、第3系統では、信号プロセッサ40cが、GPS−L5及びGalileo−E5aの両信号で共用可能な回路で8個設けられている。
【0052】
演算処理部5は、CPUを中心に構成されており、測位演算に利用する測位衛星の決定、この決定した測位衛星からの測位信号の受信処理に係る信号プロセッサ40に対する搬送周波数の設定及びPNコードの設定、各信号プロセッサ40からの出力である復号信号の解析による擬似距離や各測位衛星の位置の算出、電階層遅延等の各種誤差の補正、算出した各種データによる現在位置、速度、方位等の算出、RFフロントエンド部1に対する電源制御等といった各種処理を実行する。
【0053】
なお、本実施形態の衛星測位信号受信装置においては、L1,L2C,L5・E5aの3周波の測位信号のうち、L2C及びL5・E5aは、L1の電離層遅延誤差等を補正する目的で利用される。そこで、演算処理部5は、信号プロセッサ部4でL1の信号処理に係る系統(すなわち、第1系統)でGPS−L1及びGalileo−L1の両信号で共用可能な信号プロセッサ40a(4回路)に対して、GPS及びGalileoのチャンネルの配分を順次切り替えて、測位演算に最適なチャンネルの組み合わせを探索する処理を行う(「チャンネル選択処理」)。以下、この「チャンネル選択処理」の詳細な内容について説明する。
【0054】
以上、実施形態の衛星測位信号受信装置の構成について説明したが、本実施形態における各構成と特許請求の範囲に記載した構成との対応は次のとおりである。本実施形態の衛星測位信号受信装置におけるRFフロントエンド部1が特許請求の範囲における周波数変換回路に相当する。このうち、電圧制御発振器(VCO)105及び分周器106が発振信号生成手段に相当し、ミキサ104が第1混合手段に相当し、分周器107が分周手段に相当し、イメージ除去ミキサ108が第2混合手段に相当し、分波器112が分離手段に相当する。また、アンテナ101が受信手段に相当し、信号処理部2における信号プロセッサ部4が復調手段に相当し、演算処理部5が制御手段に相当する。
【0055】
[チャンネル選択処理の説明]
図3は、信号処理部2の演算処理部5が実行する「チャンネル選択処理」の手順を示すフローチャートである。
【0056】
演算処理部5は、「チャンネル選択処理」を開始すると、各信号プロセッサ40a(図2参照)に対してGPS−L1とGalileo−L1とをそれぞれ6チャンネルずつ割り当て、各チャンネルで受信した測位信号に基づいて、各チャンネルに対応する測位衛星との擬似距離を算出する(S100)。
【0057】
ここで、下記のS101〜S105の処理については、第1系統で測位信号を受信した各チャンネルごとに実行するものとする。まず、当該チャンネルで捕捉している信号がGPS−L1信号であるか、Galileo−L1信号であるかを判定する(S101)。ここで、当該チャンネルで捕捉している信号がGPS−L1信号であると判定した場合(S101:GPS)、当該チャンネルに係るGPS衛星の型式を確認する(S102)。GPS衛星の型式が「Block IIR-M」であると判定した場合(S102:IIR-M)、この形式のGPS衛星はL1の信号と併せてL2Cの信号を放送しているので、L2Cの信号処理に係る第2系統(図2参照)を介して入力された同一のGPS衛星からのL2Cの信号を用いて測位信号の電離層遅延を補正する(S103)。一方、GPS衛星の型式が「Block IIF」以降のものであると判定した場合(S102:IIF以降)、この形式のGPS衛星はL1の信号と併せてL5の信号を放送しているので、L5の信号処理に係る第3系統(図2参照)を介して入力された同一のGPS衛星からのL5の信号を用いて測位信号の電離層遅延を補正する(S104)。一方、GPS衛星の型式が、「Block IIR」以前のものであると判定した場合(S102:IIR以前)、この形式のGPS衛星は民生用としてはL1の信号のみ放送しているので、電離層遅延の補正を行わずに次のステップへ移行する。
【0058】
一方、S101で、当該チャンネルで受信している信号がGalileo−L1信号であると判定した場合(S101:Galileo)、E5aの信号処理に係る第3系統(図2参照)を介して入力された同一のGalileo衛星からのE5aの信号を用いて測位信号の電離層遅延を補正する(S105)。
【0059】
つづいて、各チャンネルごとにS103、S104、S105で電離層遅延の補正をした結果に基づき、再度各測位衛星との擬似距離を算出し、現在のチャンネル設定おける精度劣化指数DOP(dilution of precision)を算出する(S106)。DOPは、測位衛星の配置状況による測位精度の劣化の度合を示す指標(数値が小さいほど測位精度が良い)であり、これにより測位信号の受信状況の良否を判断できる。
【0060】
S106で擬似距離とDOPとを算出した後、12のチャンネル全てで測位信号を捕捉できているか否かを判定する(S107)。ここで、捕捉できていないチャンネルがある場合(S107:NO)、GPS−L1又はGalileo−L1の何れかについて6つ以上のチャンネルを捕捉できているか否かを判定する(S108)。GPS−L1及びGalileo−1の何れについても6つ以上のチャンネルを捕捉できていない場合(S108:NO)、空きチャンネルで測位信号の捕捉を継続しつつ、S100の処理へ戻る。
【0061】
一方、GPS−L1又はGalileo−L1の何れかについて6つ以上のチャンネルを捕捉できていると判定した場合(S108:YES)、それがGPS−L1の場合(S109:GPS)、空きチャンネルに対してGPS−L1のチャンネルを1つ追加する(S110)。一方、Galileo−L1のチャンネルを6つ以上捕捉できている場合(S109:Galileo)、空きチャンネルに対してGalileo−L1のチャンネルを1つ追加する(S111)。S110又はS111でそれぞれ捕捉するチャンネルを追加した後、このチャンネル設定で受信した測位信号に基づいて、各チャンネルに対応する測位衛星との擬似距離を算出し(S119)、S101の処理へ戻る。
【0062】
一方、S107で12のチャンネル全てで測位信号を捕捉できていると判定した場合(S107:YES)、前回のルーチンループでS108を経由している場合(S112:YES)はS117へ、S108を経由していない場合(S112:NO)はS113へ移行する。S113では、後述するS120において捕捉するチャンネルの組み合わせをDOPが最適となる設定に切り替えた後か否かを判定する。DOPが最適となる設定に切り替えた後ではないと判定した場合(S113:NO)、S114へ移行する。S114では、初めてこのステップを経由する場合(S114:YES)、S116へ移行する。
【0063】
S116では、GPS−L1及びGalileo−L1の両信号で共用可能な信号プロセッサ40aのうち、Galileo−L1のチャンネルが割り当てられている回路の1つに対してGPS−L1のチャンネルを新たに割り当て、捕捉するチャンネルとしてGPS−L1のチャンネルを1つ追加する。すなわち、ここでは捕捉する12のチャンネルのうちGPS−L1のチャンネルが1つ増え、Galileo−L1のチャンネルが1つ減る。S116でGPS−L1のチャンネルを1つ追加した後、現在のチャンネル設定で受信した測位信号に基づいて、各チャンネルに対応する測位衛星との擬似距離を算出し(S119)、S101の処理へ戻る。
【0064】
一方、S114で、2回目以降にこのステップを経由する場合(S114:NO)、S115へ移行する。S115では、現在のチャンネル設定においてGPS−L1のチャンネルが8つ未満であり、かつ前回チャンネル設定を変更した際にGPS−L1のチャンネルを1つ追加した否かを判定する。ここで、肯定判定の場合(S115:YES)、捕捉するチャンネルとして再びGPS−L1のチャンネルを1つ追加する(S116)。否定判定の場合(S115:NO)、すなわち、現在GPS−L1のチャンネルを8つ(捕捉できる最大チャンネル数)捕捉している場合、又は前回チャンネル設定を変更した際にGalileo−L1のチャンネルを1つ追加した場合の少なくとも何れかの場合、現在のチャンネル設定においてGalileo−L1のチャンネルが8つ未満であるか否かを判定する(S117)。
【0065】
ここで、Galileo−L1のチャンネルが8つ未満であると判定した場合(S117:YES)、GPS−L1及びGalileo−L1の両信号で共用可能な信号プロセッサ40aのうち、GPS−L1のチャンネルが割り当てられている回路の1つに対してGalileo−L1のチャンネルを新たに割り当て、捕捉するチャンネルとしてGalileo−L1のチャンネルを1つ追加する(S118)。すなわち、ここでは捕捉する12のチャンネルのうち、GPS−L1のチャンネルが1つ減り、Galileo−L1のチャンネルが1つ増える。S118でGalileo−L1のチャンネルを1つ追加した後、現在のチャンネル設定で受信した測位信号に基づいて、各チャンネルに対応する測位衛星との擬似距離を算出し(S119)、S101の処理へ戻る。
【0066】
上述のような手順でS101〜S119の処理を順次繰り返すことにより、12個の信号プロセッサ40aに対するGPS−L1及びGalileo−L1とのチャンネルの配分について、全て組み合わせに対して擬似距離の算出(S100,S119)及びDOPの算出(S106)を行う。そして、S117で現在のチャンネル設定においてGalileo−L1のチャンネルが8つであると判定した場合(S117:NO)、現在のチャンネルの組み合わせから、これまでで試行したチャンネルの組み合わせのうちDOPが最小(すなわち、受信状況が最良)であった設定に切り替え(S120)、このチャンネル設定で擬似距離を算出し(S119)、S101の処理へ戻る。以降のルーチンループでは、S113では肯定判定(S113:YES)を行い、現在のチャンネル設定において最も測位精度に対する寄与度が低いチャンネルについて、GPS−L1とGalileo−L1とで交互にチャンネルを交換しつつ(S121)、上述の処理を繰り返す。なお、測位精度に対する寄与度は、例えば各測位衛星の高度や位置のばらつき等の測位精度に影響する条件に基づいて判断できる。
【0067】
具体的には、測位精度に対する寄与度の最も低いチャンネルがGPS衛星のチャンネルであった場合、これをGalileo衛星のチャンネルへ切り替える。逆に、測位精度に対する寄与度の最も低いチャンネルがGalileo衛星のチャンネルであった場合、これをGPS衛星のチャンネルへ切り替える。このように、DOPが最適となるチャンネル設定に切り替えた後は、上述のような作動を繰り返し行うことで、常に高い測位精度を維持できるようにする。
【0068】
[効果]
上記実施形態の衛星測位信号受信装置によれば、以下のような効果を奏する。
衛星測位信号受信装置のRFフロントエンド部1(図1参照)は、L1,L2C,L5・E5aの3周波の高調波(RF)測位信号から、中間周波数(IF)の測位信号への周波数変換をイメージ妨害を受けることなく行うことができる。また、ミキサ104及びイメージ除去ミキサ108における2段階の周波数変換のうち、後段の周波数変換時に、L1の信号と、L2C及びL5・E5aの信号とを分離し、その後の分波器112においてL2Cの信号とL5・E5aの信号とを分離することで、初段の周波数変換時に各信号を分離する場合と比較して、分離後の各測位信号に係る信号処理系統を短く構成できる。これにより、周波数変換回路の小型化、低コスト化が実現する。また、回路が簡素な構成であるので電力消費の低減につながり、省電力化にも寄与する。
【0069】
イメージ除去ミキサ108で測位信号と混合される第2局部発振信号は、VCO105で発振し、分周器106で分周した第1局部発振信号を更に分周したものを用いることで、各段の周波数変換に対してVCOを複数用いることなく1つのVCOで賄うことができる。これにより、RFフロントエンド部1の小型化、低コスト化、省電力化が実現する。
【0070】
また、受信対象として選択された測位信号に係る信号処理系統のみに電源を供給し、受信対象として選択されていない測位信号に係る信号処理系統に対する電力の供給をオフにすることで、RFフロントエンド部1における電力消費が低減され、省電力化が実現する。
【0071】
図2に示す信号処理部2においては、信号プロセッサ40を、第1系統(L1)で12チャンネル、第2系統(L2C)で8チャンネル、第3系統(L5・E5a)で8チャンネルの合計28チャンネルを備えており、十分な測位精度を得られる数の測位衛星を捕捉することができる。
【0072】
このうち、第1系統においては、GPS−L1及びGalileo−L1に対してそれぞれに専用の信号プロセッサ40aと、GPS−L1及びGalileo−L1で共用可能な信号プロセッサ40aとを備えている。そして、測位信号の受信状況に応じてGPS−L1とGalileo−L1とでチャンネルの配分を適宜変更し、測位精度が高くなるようなチャンネル設定で測位信号を受信することで、良好な測位精度を保つことができる。
【0073】
また、GPS−L1及びGalileo−L1で共用可能な信号プロセッサ40aを用いることで、それぞれの衛星測位システム専用の信号プロセッサを各衛星測位システムによる測位演算に用いる最大個数を揃える場合と比較して、より少数の回路で各衛星測位システムによる測位演算に用いる最大個数を満たすことができる。これにより、衛星測位信号受信装置を小型化、低コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施形態の衛星測位信号受信装置の一部であるRFフロントエンド部1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態の衛星測位信号受信装置の一部である信号処理部2の概略構成を示すブロック図である。
【図3】信号処理部2の演算処理部5が実行する「チャンネル選択処理」の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
1…RFフロントエンド部、101…アンテナ、102…低雑音増幅器(LNA)、103…バンドパスフィルタ(BPF)、104…ミキサ、105…電圧制御発振器(VCO)、106,107…分周器、108…イメージ除去ミキサ、109,116…ローパスフィルタ(LPF)、112…分波器、113…バンドパスフィルタ(BPF)、110,114,117…AGCアンプ、111,115,118…A/Dコンバータ,119…基準発振器、120…電源制御器
2…信号処理部
3…ダウンコンバータ部、31a,31b,31c…ミキサ、32a,32b,32c…ローパスフィルタ(LPF)、33a,33b,33c…分周器
4…信号プロセッサ部、40a,40b,40c…信号プロセッサ、41a,41b,41c,42a,42b,42c…ミキサ、43a,43b,43c…搬送波発生器、44a,44b,44c…コード発生器
5…演算処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星測位システムで用いられる人工衛星から受信した搬送周波数がそれぞれ異なる第1測位信号、第2測位信号及び第3測位信号を周波数変換する周波数変換回路であって、
第1測位信号の周波数と、第2測位信号及び第3測位信号の周波数とが互いに影像関係となり、かつ周波数変換することで各測位信号の周波数帯域が重ならないように設定された周波数の第1局部発振信号を生成する発振信号生成手段と、
前記発振信号生成手段により生成された第1局部発振信号と前記第1,第2,第3測位信号とを混合することにより、前記各測位信号を第1中間周波数(以下、1stIF)に周波数変換する第1混合手段と、
前記発振信号生成手段により生成された第1局部発振信号を1/m(mは2以上の整数)に分周することで、前記1stIFの第1測位信号の周波数と、前記1stIFの第2測位信号及び前記1stIFの第3測位信号の周波数とが互いに影像関係となるように設定された周波数の第2局部発振信号を生成する分周手段と、
前記分周手段によって生成された第2局部発振信号と、前記1stIFの第1,第2,第3測位信号とを混合することにより、前記各測位信号を第2中間周波数(以下、2ndIF)に周波数変換し、前記2ndIFの第1測位信号と、前記2ndIFの第2測位信号及び前記2ndIFの第3測位信号とを互いの干渉を排除しながら分離し、それぞれ独立に出力する第2混合手段と、
前記第2混合手段から混合されて出力された2ndIFの第2測位信号と2ndIFの第3測位信号とを分離してそれぞれ独立に出力する分離手段とを備えること
を特徴とする周波数変換回路。
【請求項2】
請求項1に記載の周波数変換回路において、
前記第2混合手段及び前記分離手段によって出力された2ndIFの第1,第2,第3測位信号に対して、それぞれ信号処理を行う3つの信号処理系統を有し、
前記第1,第2,第3測位信号のうち、受信対象として選択されていない測位信号に係る前記信号処理系統に対する電力の供給をオフにすること
を特徴とする周波数変換回路。
【請求項3】
衛星測位システムで用いられる人工衛星から無線電波の形態で送信される測位信号を受信する受信手段と、
請求項1又は請求項2に記載の周波数変換回路と、
前記周波数変換回路によって周波数変換された前記第1,第2,第3測位信号をそれぞれ復調する復調手段とを備え、
前記復調手段は、
前記第1測位信号を復調する復調回路を、前記第1測位信号による測位演算に用いる測位衛星の個数に応じた個数備える第1復調系統と、
前記第2測位信号を復調する復調回路を、前記第2測位信号による測位演算に用いる測位衛星の個数に応じた個数備える第2復調系統と、
前記第3測位信号を復調する復調回路を、前記第3測位信号による測位演算に用いる測位衛星の個数に応じた個数備える第3復調系統とを備え、
前記第1,第2,第3復調系統のうち少なくとも何れか1つは、複数の衛星測位システムに対して、各衛星測位システムごとに専用の復調回路と、前記複数の衛星測位システムで共用可能な復調回路とを、それぞれの衛星測位システム係る測位演算に用いる最大の衛星個数を満たす回路数を確保できるような個数で備え、前記複数の衛星測位システムに係る同一の搬送周波数の測位信号を復調可能に構成されており、
さらに、前記復調手段による測位信号の復調を行う際、測位信号の受信状態に応じて測位演算に用いる測位衛星を選択し、この選択した測位衛星に対して何れかの前記復調回路を割り当て、この割り当てた前記復調回路によって復調された測位信号に基づき測位演算を行う制御手段を備えること
を特徴とする衛星測位信号受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−128791(P2008−128791A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313376(P2006−313376)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】