説明

周波数安定化回路、アンテナ装置及び通信端末機器

【課題】放射体や筺体の形状、近接部品の配置状況などに影響されることなく、高周波信号の周波数を安定化させることのできる周波数安定化回路、アンテナ装置及び通信端末機器を構成する。
【解決手段】周波数安定化回路25は4つのコイル状導体L1〜L4を備え、第1のコイル状導体L1と第2のコイル状導体L2とが直列に接続されて第1の直列回路が構成され、第3のコイル状導体L3と第4のコイル状導体L4とが直列に接続されて第2の直列回路が構成され、アンテナポートと給電ポートとの間に第1の直列回路が接続され、アンテナポートとグランドとの間に第2の直列回路が接続されている。第1のコイル状導体L1と第2のコイル状導体L2は第1の閉磁路(磁束FP12で示すループ)が構成されるように巻回されていて、第3のコイル状導体L3と第4のコイル状導体L4は、第2の閉磁路(磁束FP34で示すループ)が構成されるように巻回されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数安定化回路、アンテナ装置、通信端末機器に関し、特に、携帯電話などの通信端末機器に搭載されるアンテナ装置、該アンテナ装置に組み込まれる周波数安定化回路、及び、該アンテナ装置を備えた通信端末機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信端末に搭載されるアンテナ装置として、特許文献1,2,3に記載されているように、端末筺体の内部に配置した金属体(プリント配線基板のグランド板など)を放射素子として利用する筺体ダイポールアンテナが提案されている。この種の筺体ダイポールアンテナでは、折りたたみ式やスライド式の携帯通信端末における二つの筺体グランド板(本体部筺体のグランド板と蓋体部筺体のグランド板)に差動給電することでダイポールアンテナと同等の性能を得ることができる。また、筺体に設けたグランド板を放射素子として利用しているため、別途専用の放射素子を設ける必要がなく、携帯通信端末の小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−172919号公報
【特許文献2】特開2005−6096号公報
【特許文献3】特開2008−118359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記筺体ダイポールアンテナでは、放射素子として用いているグランド板の形状や筺体の形状さらには近接する金属体(近接配置されている電子部品やヒンジ部品など)の配置状況などに応じてグランド板のインピーダンスが変化してしまう。それゆえ、高周波信号のエネルギーロスをできる限り小さくするために、機種ごとにインピーダンスマッチング回路を設計する必要があった。また、折りたたみ式やスライド式の携帯通信端末では、本体部筺体と蓋体部筺体の位置関係(例えば、折りたたみ式では蓋体部を閉じた状態と開いた状態)に応じてグランド板やインピーダンスマッチング回路のインピーダンスが変化してしまう。それゆえ、インピーダンスをコントロールするために制御回路などが必要になることもある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、放射体や筺体の形状、近接部品の配置状況などに影響されることなく、高周波信号の周波数を安定化させることのできる周波数安定化回路、アンテナ装置及び通信端末機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)第1の形態の周波数安定化回路は、
第1のコイル状導体、第2のコイル状導体、第3のコイル状導体、第4のコイル状導体を少なくとも備え、
第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とが直列に接続されて第1の直列回路が構成され、
第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とが直列に接続されて第2の直列回路が構成され、
第1のコイル状導体及び第2のコイル状導体は、第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とによって第1の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第3のコイル状導体及び第4のコイル状導体は、第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とによって第2の閉磁路が構成されるように巻回されていること、
を特徴とする。
【0007】
(2)第2の形態の周波数安定化回路は、
前記第1のコイル状導体、前記第2のコイル状導体、前記第3のコイル状導体、及び前記第4のコイル状導体が、前記第1の閉磁路を通る磁束と前記第2の閉磁路を通る磁束とが互いに逆方向になるように巻回されていることを特徴とする。
【0008】
(3)第3の形態の周波数安定化回路は、
前記第1のコイル状導体及び前記第3のコイル状導体は互いに磁気的に結合していて、
前記第2のコイル状導体及び前記第4のコイル状導体は互いに磁気的に結合していること、
を特徴とする。
【0009】
(4)第4の形態の周波数安定化回路は、
アンテナに接続されるアンテナポートとグランドとの間にキャパシタが接続されたことを特徴とする。
【0010】
(5)第5の形態の周波数安定化回路は、
前記第1のコイル状導体、前記第2のコイル状導体、前記第3のコイル状導体、及び前記第4のコイル状導体が共通の多層基板内の導体パターンで構成されていることを特徴とする。
【0011】
(6)第6の形態の周波数安定化回路は、
前記第1のコイル状導体、前記第2のコイル状導体、前記第3のコイル状導体、及び前記第4のコイル状導体のそれぞれの巻回軸は前記多層基板の積層方向に向き、
前記第1のコイル状導体と第2のコイル状導体は、それぞれの巻回軸が異なる関係で並置され、
前記第3のコイル状導体と第4のコイル状導体は、それぞれの巻回軸が異なる関係で並置され、
前記第1のコイル状導体と第3のコイル状導体のそれぞれの巻回範囲が平面視で少なくとも一部で重なり、前記第2のコイル状導体と第4のコイル状導体のそれぞれの巻回範囲が平面視で少なくとも一部で重なる、
ことを特徴とする。
【0012】
(7)第7の形態の周波数安定化回路は、
第1のコイル状導体、第2のコイル状導体、第3のコイル状導体、第4のコイル状導体、第5のコイル状導体、第6のコイル状導体、を少なくとも備え、
第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とが直列に接続されて第1の直列回路が構成され、
第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とが直列に接続されて第2の直列回路が構成され、
第5のコイル状導体と第6のコイル状導体とが直列に接続されて第3の直列回路が構成され、
第1のコイル状導体及び第2のコイル状導体は、第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とによって第1の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第3のコイル状導体及び第4のコイル状導体は、第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とによって第2の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第5のコイル状導体及び第6のコイル状導体は、第5のコイル状導体と第6のコイル状導体とによって第3の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第2の閉磁路が第1の閉磁路および第3の閉磁路で層方向に挟み込まれた、
ことを特徴とする。
【0013】
(8)第8の形態の周波数安定化回路は、
前記第1のコイル状導体、前記第2のコイル状導体、前記第3のコイル状導体、及び前記第4のコイル状導体は、前記第1の閉磁路を通る磁束と前記第2の閉磁路を通る磁束とが互いに逆方向になるように巻回されていて、
前記第3のコイル状導体、前記第4のコイル状導体、前記第5のコイル状導体、及び前記第6のコイル状導体は、前記第2の閉磁路を通る磁束と前記第3の閉磁路を通る磁束とが互いに逆方向になるように巻回されていることを特徴とする。
【0014】
(9)第9の形態の周波数安定化回路は、
前記第1のコイル状導体、前記第2のコイル状導体、前記第3のコイル状導体、及び前記第4のコイル状導体は、前記第1の閉磁路を通る磁束と前記第2の閉磁路を通る磁束とが互いに逆方向になるように巻回されていて、
前記第3のコイル状導体、前記第4のコイル状導体、前記第5のコイル状導体、及び前記第6のコイル状導体は、前記第2の閉磁路を通る磁束と前記第3の閉磁路を通る磁束とが互いに同方向になるように巻回されていることを特徴とする。
【0015】
(10)第10の形態のアンテナ装置は、
給電回路に接続される給電ポートとアンテナに接続されるアンテナポートとを備えた周波数安定化回路と、前記アンテナポートに接続されたアンテナと、で構成されたアンテナ装置であって、(1)の周波数安定化回路を備えたことを特徴とする。
【0016】
(11)第11の形態のアンテナ装置は、
給電回路に接続される給電ポートとアンテナに接続されるアンテナポートとを備えた周波数安定化回路と、前記アンテナポートに接続されたアンテナと、で構成されたアンテナ装置であって、(7)の周波数安定化回路を備えたことを特徴とする。
【0017】
(12)第12の形態の通信端末機器は、
給電回路に接続される給電ポートとアンテナに接続されるアンテナポートとを備えた周波数安定化回路と、前記アンテナポートに接続されたアンテナと、前記給電ポートに接続された給電回路と、を備えた通信端末機器であって、(1)の周波数安定化回路を備えたことを特徴とする。
【0018】
(13)第13の形態の通信端末機器は、
給電回路に接続される給電ポートとアンテナに接続されるアンテナポートとを備えた周波数安定化回路と、前記アンテナポートに接続されたアンテナと、前記給電ポートに接続された給電回路と、を備えた通信端末機器であって、(7)の周波数安定化回路を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、放射体や筺体の形状、近接部品の配置状況などに影響されることなく、高周波信号の周波数を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(A)は、本発明の周波数安定化回路、それを備えたアンテナ装置、及び移動体通信端末の概略構成図である。図1(B)は比較例としてのアンテナ装置及び移動体通信端末の概略構成図である。
【図2】図2は本発明に係る周波数安定化回路の比較例としての周波数安定化回路35の回路図である。
【図3】図3(A)は図2に示した比較例としての周波数安定化回路35の等価回路図、図3(B)はその変形回路図である。
【図4】図4は本発明に係る周波数安定化回路の基本形の回路図である。
【図5】図5(A)は図4に示した周波数安定化回路の基本形の等価回路図、図5(B)はその変形回路図である。
【図6】図6(A)は本発明の周波数安定化回路の基本形の反射特性S11と通過特性S21、図6(B)は比較例の周波数安定化回路の反射特性S11と通過特性S21である。
【図7】図7は第1の実施形態に係る周波数安定化回路25の回路図である。
【図8】図8は第1の実施形態に係る周波数安定化回路25を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。
【図9】図9は、図8に示した多層基板の各層に形成された導体パターンによるコイル状導体を通る主な磁束を示している。
【図10】図10は第1の実施形態に係る周波数安定化回路25の4つのコイル状導体L1〜L4の磁気的結合の関係を示す図である。
【図11】図11はコイル状導体L1〜L4によるコイル状導体同士の結合係数を所定値に定めたときの、給電回路から給電ポートを見た入力インピーダンスをスミスチャート上に表した図である。
【図12】図12は負性のインダクタンスを示す周波数安定化回路による、放射体と給電回路とのインダクタンス整合について示す図である。
【図13】図13は第2の実施形態に係る周波数安定化回路の構成を示す図であり、この周波数安定化回路を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。
【図14】図14は、図13に示した多層基板の各層に形成された導体パターンによるコイル状導体を通る主な磁束を示す図である。
【図15】図15は第2の実施形態に係る周波数安定化回路の4つのコイル状導体L1〜L4の磁気的結合の関係を示す図である。
【図16】図16は第3の実施形態に係る周波数安定化回路25Aの回路図である。
【図17】図17(A)は、周波数安定化回路の反射特性を示す図、図17(B)はその周波数安定化回路のアンテナポートにキャパシタを接続した状態での反射特性を示す図である。
【図18】図18(A)は放射体のインピーダンス軌跡である。図18(B)は周波数安定化回路のアンテナポートにキャパシタを接続した状態での反射特性を示す図である。
【図19】図19(A)は、第3の実施形態に係る周波数安定化回路に図18に示した特性の放射体を接続した状態での周波数安定化回路の給電ポートから見たインピーダンス軌跡である。図19(B)は周波数安定化回路の給電ポートから見た反射特性S11と通過特性S21の周波数特性図である。
【図20】図20は、多層基板に構成された第4の実施形態に係る周波数安定化回路の各層の導体パターンの例を示す図である。
【図21】図21は第4の実施形態に係る周波数安定化回路の4つのコイル状導体L1〜L4の磁気的結合の関係を示す図である。
【図22】図22は、図2に示した比較例としての周波数安定化回路35の周波数特性を示す図である。
【図23】図23は、第3の実施形態で示した周波数安定化回路25Aの周波数特性を示す図である。
【図24】図24は第5の実施形態に係る周波数安定化回路の回路図である。
【図25】図25は第5の実施形態に係る周波数安定化回路を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。
【図26】図26は第5の実施形態で示した周波数安定化回路の周波数特性を示す図である。
【図27】図27(A)は図2に示した比較例としての周波数安定化回路35の反射特性を示す図である。図27(B)は第3の実施形態で示した周波数安定化回路25Aの反射特性を示す図である。図27(C)は第5の実施形態に係る周波数安定化回路の反射特性を示す図である。
【図28】図28は第6の実施形態に係る周波数安定化回路の回路図である。
【図29】図29は第6の実施形態に係る周波数安定化回路を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。
【図30】図30は第7の実施形態に係る周波数安定化回路の回路図である。
【図31】図31は第7の実施形態に係る周波数安定化回路を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の周波数安定化回路の具体的な実施の形態を示す前に、本発明の周波数安定化回路の目的と作用効果について説明する。
【0022】
図1(A)は、本発明の周波数安定化回路、それを備えたアンテナ装置、及び移動体通信端末の概略構成図である。図1(B)は比較例としてのアンテナ装置及び移動体通信端末の概略構成図である。
【0023】
図1(B)は給電回路30によって給電される放射体11Dの構成を示している。従来のアンテナ設計手法は、製品の外観デザインが先に決定されて、それに収まるように放射体11を設計しなければならない、という設計上の制約があった。アンテナを設計するうえでの目標は、
(1)放射効率を高める。空間になるべく多くの電力を放射させる。
(2)周波数調整をする。アンテナに電力を入れるためのマッチングをとる。
という二点であるが、組み込み先のサイズと形状の限られた筐体に収まるアンテナを設計すると上記アンテナの放射効率と周波数調整とはしばしばトレードオフの関係となる。
【0024】
図1(A)に示す本発明に係る周波数安定化回路25は給電ポートとアンテナポートを備え、給電ポートに給電回路30が接続され、アンテナポートに放射体11が接続される。この周波数安定化回路25と放射体11とによってアンテナ装置が構成される。さらに、このアンテナ装置と給電回路30を含む回路によって移動体通信端末が構成される。
【0025】
本発明の周波数安定化回路25を用いることにより、放射体は、放射体間、放射体−グランド間の容量結合を減らしたシンプルな形状にして放射効率を高めることにだけに特化させ、周波数調整は周波数安定化回路25に任せる。したがって、前述のトレードオフの関係を受けることなくアンテナの設計が極めて容易となり、開発期間も大幅に短縮化される。
【0026】
図2は本発明に係る周波数安定化回路の比較例としての周波数安定化回路35の回路図である。周波数安定化回路35は、給電回路30に接続された一次側直列回路36と、この一次側直列回路に対して電磁界結合する二次側直列回路37とで構成されている。一次側直列回路36は、第1のコイル状導体L1と第2のコイル状導体L2との直列回路であり、二次側直列回路37は、第3のコイル状導体L3と第4のコイル状導体L4との直列回路である。
【0027】
一次側直列回路36の一方端は給電回路30に接続され、二次側直列回路37の一方端は放射体11に接続されている。一次側直列回路36の他方端及び二次側直列回路37の他方端はグランドに接続されている。
【0028】
図3(A)は図2に示した比較例としての周波数安定化回路35の等価回路図、図3(B)はその変形回路図である。ここで、インダクタLpは一次側直列回路のインダクタンス、インダクタLsは二次側直列回路のインダクタンス、インダクタMは相互インダクタンスを表している。LpとLsの結合係数をkで表すと、M=k√(Lp*Ls)の関係である。インピーダンスZdは給電回路30のインピーダンスであり、インピーダンスZaは放射体11のインピーダンスである。
【0029】
図4は本発明に係る周波数安定化回路の基本形の回路図である。給電回路30と放射体11との間にインダクタLaが接続され、放射体11とグランドとの間にインダクタLbが接続されている。
【0030】
図5(A)は図4に示した周波数安定化回路の基本形の等価回路図、図5(B)はその変形回路図である。
図2に示した比較例の周波数安定化回路では、一次側直列回路36と二次側直列回路37とによってトランス部が構成される。このトランス部によるインピーダンス変換比は、図3に示した等価回路で表すとLp:Lsとなる。
【0031】
一方、図4に示した本発明の周波数安定化回路の基本形では、図5(B)に示した等価回路のように、インピーダンス変換比は、
(La+M+Lb+M):(−M+Lb+M)
=(La+Lb+2M):Lb
となる。LaとLbの結合係数をkで表すと、相互インダクタンスMは、M=k√(La*Lb)の関係である。相互インダクタンスMを大きくすれば、比較例の周波数安定化回路に比べて大きなインピーダンス変換比が得られる。そのため、比較例の周波数安定化回路に比べて、給電回路側のインダクタLaの値を小さくすることが可能となる。また、図4に示した給電回路30とグランド間のインダクタンスがLa+Lb+2Mとなるため、Laが小さくても、グランドに対して“ショート”に見えにくいという利点もある。これにより、インダクタLaのインダクタンス値を小さくでき、そのため小型化、低ロス化できる。このように、この周波数安定化回路は、インピーダンス変換回路として機能する。
【0032】
図6(A)は本発明の周波数安定化回路の基本形(図4参照)の反射特性S11と通過特性S21、図6(B)は比較例の周波数安定化回路の反射特性S11と通過特性S21である。必要インダクタは、比較例でLp=25nH、Ls=8.7nHであるのに対し、本発明の周波数安定化回路の基本形ではLa=5.6nH、Lb=13nHである。このように小さなインダクタンスでマッチングがとれるため、構造を小さくできる。そのため、導体パターンによる損失が低減され、通過損失が小さくなる。ここで、インダクタのQ値を75とすれば、通過損失で12.5%程度改善できる。
【0033】
また、必要なインダクタンス値が小さくてすむので、低コスト化されるだけでなく、トランス部の自己共振周波数が高くなる。すなわち、トランス部の自己共振周波数は2π√(1/LC)で定まるが、Lが小さくなることにより自己共振周波数が高くなる。自己共振周波数ではエネルギーが閉じこもってしまいトランスとして作用しないので、この自己共振周波数が高くなることによって、トランスとして作用する周波数帯域が拡大することになる。
【0034】
《第1の実施形態》
図7は第1の実施形態に係る周波数安定化回路25の回路図である。周波数安定化回路25は、給電回路30に接続された第1の直列回路26と、この第1の直列回路26に対して電磁界結合する第2の直列回路27とで構成されている。第1の直列回路26は、第1のコイル状導体L1と第2のコイル状導体L2との直列回路であり、第2の直列回路27は、第3のコイル状導体L3と第4のコイル状導体L4との直列回路である。アンテナポートと給電ポートとの間に第1の直列回路26が接続され、アンテナポートとグランドとの間に第2の直列回路27が接続されている。
【0035】
図8は第1の実施形態に係る周波数安定化回路25を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。各層は磁性体シートで構成され、各層の導体パターンは図8に示す向きでは磁性体シートの裏面に形成されているが、各導体パターンは実線で表している。また、線状の導体パターンは所定の線幅を備えているが、ここでは単純な実線で表している。
【0036】
図8に示した範囲で第1層51aの裏面に導体パターン73が形成され、第2層51bの裏面に導体パターン72,74が形成され、第3層51cの裏面に導体パターン71,75が形成されている。第4層51dの裏面に導体パターン63が形成され、第5層51eの裏面に導体パターン62,64が形成され、第6層51fの裏面に導体パターン61,65が形成されている。第7層51gの裏面に導体パターン66が形成され、第8層51hの裏面には給電端子41、グランド端子42、アンテナ端子43が形成されている。図8中の縦方向に延びる破線はビア電極であり、導体パターン同士を層間で接続する。これらのビア電極は実際には所定の径寸法を有する円柱形の電極であるが、ここでは単純な破線で表している。
【0037】
図8において、導体パターン63の右半分と導体パターン61,62によって第1のコイル状導体L1を構成している。また、導体パターン63の左半分と導体パターン64,65によって第2のコイル状導体L2を構成している。また、導体パターン73の右半分と導体パターン71,72によって第3のコイル状導体L3を構成している。また、導体パターン73の左半分と導体パターン74,75によって第4のコイル状導体L4を構成している。各コイル状導体L1〜L4の巻回軸は多層基板の積層方向に向いている。そして、第1のコイル状導体L1と第2のコイル状導体L2の巻回軸は異なる関係で並置されている。同様に、第3のコイル状導体L3と第4のコイル状導体L4は、それぞれの巻回軸が異なる関係で並置されている。そして、第1のコイル状導体L1と第3のコイル状導体L3のそれぞれの巻回範囲が平面視で少なくとも一部で重なり、第2のコイル状導体L2と第4のコイル状導体L4のそれぞれの巻回範囲が平面視で少なくとも一部で重なる。この例ではほぼ完全に重なる。このようにして8の字構造の導体パターンで4つのコイル状導体を構成している。なお、各コイル状導体は、少なくとも一つのループ状導体を含んでいればよく、一つの平面状にループ状導体が複数ターン巻回されているものであってもよいし、1ターンまたは複数ターンのループ状導体を複数層積み重ねたものであってもよい。
【0038】
なお、各層は誘電体シートで構成されていてもよい。但し、比透磁率の高い磁性体シートを用いれば、コイル状導体間の結合係数をより高めることができる。
【0039】
図9は、図8に示した多層基板の各層に形成された導体パターンによるコイル状導体を通る主な磁束を示している。磁束FP12は導体パターン61〜63による第1のコイル状導体L1及び導体パターン63〜65による第2のコイル状導体L2を通る。また、磁束FP34は導体パターン71〜73による第3のコイル状導体L3及び導体パターン73〜75による第4のコイル状導体L4を通る。また、ループ状の導体パターン75と63、71と63はそれぞれ容量を介して結合している。つまり、これらのコイル状導体L1とL3、L2とL4は磁界および電界を介してそれぞれ結合する。よって、たとえばL1に電流が流れると、L3には誘導電流および電界結合による電流が励起され、しかもL1とL3は逆向きに巻回されているため、誘導電流と電界結合による電流は同方向に流れ、エネルギー伝達効率が向上する。コイル状導体L2とL4との関係についても同様である。
【0040】
図10は第1の実施形態に係る周波数安定化回路25の4つのコイル状導体L1〜L4の磁気的結合の関係を示す図である。このように、第1のコイル状導体L1及び第2のコイル状導体L2は、この第1のコイル状導体L1と第2のコイル状導体L2とによって第1の閉磁路(磁束FP12で示すループ)が構成されるように巻回されていて、第3のコイル状導体L3及び第4のコイル状導体L4は、第3のコイル状導体L3と第4のコイル状導体L4とによって第2の閉磁路(磁束FP34で示すループ)が構成されるように巻回されている。このように、第1の閉磁路を通る磁束FP12と第2の閉磁路を通る磁束FP34とが互いに逆方向になるように4つのコイル状導体L1〜L4が巻回されている。図10中の二点鎖線の直線はこの2つの磁束FP12とFP34とを結合させない磁気障壁を表している。このようにコイル状導体L1とL3の間、及びL2とL4の間に磁気障壁が生じる。
次に、第1の実施形態に係る周波数安定化回路25の作用効果について示す。
周波数安定化回路25の主たる役割は次の二つである。
(1)アンテナが小型になるほどアンテナのインピーダンスは例えば3〜20Ω程度と低くなる。周波数安定化回路はそのトランス機能でインピーダンスの実部Rのマッチングをとる。
【0041】
(2)放射体は基本的にインダクタンス性であるので、インピーダンスの周波数特性は右上がりの特性があるが、周波数安定化回路は負性インダクタンスとして作用し、放射体に周波数安定化回路を組み合わせることによって、アンテナのインピーダンス(jx)の傾きを緩くする。
【0042】
周波数安定化回路が負性インダクタンスとして作用する点について以降に説明する。
図11は前記コイル状導体L1〜L4によるコイル状導体同士の結合係数を所定値に定めたときの、給電回路から給電ポートを見た反射特性をスミスチャート上に表した図である。ここで、各結合係数は次のとおりである。
【0043】
L1−L2 k≒0.3
L3−L4 k≒0.3
L1−L3 k≒0.8
L2−L4 k≒0.8
このように、L1とL3,L2とL4を強結合(k=0.8程度)とし、L1とL2,L3とL4を弱結合(K=0.3程度)とすることで、結合により発生する相互インダクタンスMの値は大きいままに、L1,L2,L3,L4の実効値は小さくなる。そのため、結合係数は等価的に1以上となって、周波数安定化回路のインピーダンスが負性のインダクタンスに見えることになる。すなわちメタマテリアル構造を成すことが可能となる。
【0044】
なお、L1とL2の結合及びL3とL4の結合(横同士のコイル状導体間の結合)はそれぞれインダクタンス値が小さくなる磁界結合となっているが、L1とL3の結合及びL2とL4の結合(縦同士のコイル状導体間の結合)には、前記横同士のコイル状導体間の結合が影響しないため、このような新たな効果が生じているものと推測される。
【0045】
図11において、マーカm9は周波数820MHzにおける入力インピーダンス(S(1,1)=0.358+j0.063)であり、マーカm10は周波数1.99GHzにおける入力インピーダンス(S(1,1)=0.382-j0.059)である。このように、周波数の低い帯域で誘導性、周波数の高い帯域で容量性となり、且つ実数成分(抵抗成分)が連続的に変化する負性のインダクタンスが得られる。
【0046】
図12は前記負性のインダクタンスを示す周波数安定化回路による、放射体と給電回路とのインダクタンス整合について示す図である。図12において、横軸は周波数、縦軸はリアクタンスjxである。放射体はそれ自体でインダクタンスを備え、グランドとの間にキャパシタンスを備えている。そのため放射体のインピーダンスjxaは、jxa=ωL−1/ωCで表される。図12中の曲線RIはこの放射体のインピーダンスjxaを表している。放射体の共振周波数はjxa=0のときである。一方、周波数安定化回路のインピーダンスは負性インダクタンスであるので、曲線(直線)SIで表されるように右下がりの特性で表される。したがって、周波数安定化回路と放射体とのよるアンテナ装置のインピーダンス(給電ポートから見たインピーダンス)は曲線(直線)AIで示されるような傾きの小さな周波数特性となる。
【0047】
ここで、この共振周波数よりずれた点での放射体のインピーダンスの実部をRで表し、jx=Rの関係となる周波数をf1とすると、周波数f1は入力した電力の半分が反射して半分が放射される(3dB落ちの)周波数である。そこで、−Rというものと仮定し、jx=−Rとなる周波数をf2とすると、周波数f2〜f1の周波数幅がアンテナの帯域幅(半値全幅)と定義できる。
【0048】
周波数安定化回路と放射体を含めたアンテナ装置のインピーダンスの傾きが緩くなると、jx=Rとなる周波数は前記f1より高くなり、jx=−Rとなる周波数は前記f2より低くなる。そのため、アンテナの帯域幅(3dB落ちの周波数帯域)は広くなる。すなわち広帯域に亘ってインピーダンス整合がとれることになる。これが、負性インダクタンスによる効果である。
【0049】
《第2の実施形態》
図13は第2の実施形態に係る周波数安定化回路の構成を示す図であり、この周波数安定化回路を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。各層の導体パターンは図13に示す向きでは裏面に形成されているが、各導体パターンは実線で表している。また、線状の導体パターンは所定の線幅を備えているが、ここでは単純な実線で表している。
【0050】
図13に示した範囲で第1層51aの裏面に導体パターン73が形成され、第2層51bの裏面に導体パターン72,74が形成され、第3層51cの裏面に導体パターン71,75が形成されている。第4層51dの裏面に導体パターン63が形成され、第5層51eの裏面に導体パターン62,64が形成され、第6層51fの裏面に導体パターン61,65が形成されている。第7層51gの裏面に導体パターン66が形成され、第8層51hの裏面には給電端子41、グランド端子42、アンテナ端子43が形成されている。図13中の縦方向に延びる破線はビア電極であり、導体パターン同士を層間で接続する。これらのビア電極は実際には所定の径寸法を有する円柱形の電極であるが、ここでは単純な破線で表している。
【0051】
図13において、導体パターン63の右半分と導体パターン61,62によって第1のコイル状導体L1を構成している。また、導体パターン63の左半分と導体パターン64,65によって第2のコイル状導体L2を構成している。また、導体パターン73の右半分と導体パターン71,72によって第3のコイル状導体L3を構成している。また、導体パターン73の左半分と導体パターン74,75によって第4のコイル状導体L4を構成している。
【0052】
図14は、図13に示した多層基板の各層に形成された導体パターンによるコイル状導体を通る主な磁束を示す図である。また、図15は第2の実施形態に係る周波数安定化回路の4つのコイル状導体L1〜L4の磁気的結合の関係を示す図である。磁束FP12で示すように、第1のコイル状導体L1と第2のコイル状導体L2とによる閉磁路が構成され、磁束FP34で示すように、第3のコイル状導体L3と第4のコイル状導体L4とによる閉磁路が構成される。また、磁束FP13で示すように、第1のコイル状導体L1と第3のコイル状導体L3とによる閉磁路が構成され、磁束FP24で示すように、第2のコイル状導体L2と第4のコイル状導体L4とによる閉磁路が構成される。さらに、4つのコイル状導体L1〜L4による閉磁路FPallも構成される。
【0053】
この第2の実施形態の構成によっても、コイル状導体L1とL2、L3とL4のインダクタンス値はそれぞれの結合により小さくなるため、第2の実施形態で示した周波数安定化回路も第1の実施形態の周波数安定化回路25と同様の効果を奏する。
【0054】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、第1、第2の実施形態で示した周波数安定化回路のアンテナポートに付加回路を設けた例を示す。
図16は第3の実施形態に係る周波数安定化回路25Aの回路図である。周波数安定化回路25Aは、給電回路30に接続された一次側直列回路26と、この一次側直列回路26に対して電磁界結合する第2の直列回路27とで構成されている。一次側直列回路26は、第1のコイル状導体L1と第2のコイル状導体L2との直列回路であり、第2の直列回路27は、第3のコイル状導体L3と第4のコイル状導体L4との直列回路である。アンテナポートと給電ポートとの間に第1の直列回路26が接続され、アンテナポートとグランドとの間に第2の直列回路27が接続されている。そして、アンテナポートとグランドとの間にキャパシタCaが接続されている。
【0055】
図17(A)は、第1の実施形態で示した周波数安定化回路の反射特性を示す図、図17(B)はその周波数安定化回路のアンテナポートに所定のキャパシタンスのキャパシタを接続した状態での反射特性を示す図である。ここでは周波数を700MHz〜2.30GHzまでスイープしたときの軌跡をスミスチャート上に表している。反射特性S11は給電ポートからの反射特性の軌跡、反射特性S22はアンテナポートからの反射特性の軌跡である。
ここで、各マーカと周波数との対応関係は次のとおりである。
【0056】
(m9,m17):824.0MHz
(m14,m18):960.0MHz
(m15,m19):1.710GHz
(m16,m20):1.990GHz
周波数安定化回路のアンテナポートに所定キャパシタンスのキャパシタをシャントに接続すれば、周波数安定化回路のアンテナポートを見た反射特性S22の軌跡は、スミスチャートの等コンダクタンス曲線上を移動して、図17(A)に示す状態から図17(B)に示す状態へ変化する。すなわち、周波数の上昇にともなって、誘導性から容量性へ(スミスチャートの上半円から下半円方向へ)軌跡が描かれる。このように周波数安定化回路の負性インダクタンス特性が顕著に現れる。
【0057】
図18(A)は放射体のインピーダンス軌跡である。ここで、各マーカと周波数との対応関係は次のとおりである。
【0058】
m10:824.0MHz
m11:960.0MHz
m12:1.710GHz
m13:1.990GHz
図18(B)は周波数安定化回路のアンテナポートに所定キャパシタンスのキャパシタを接続した状態での反射特性(S22)を示す図である。この図は図17(B)に示したものと同じである。図18(A)と図18(B)を対比すれば明らかなように、周波数上昇に伴い、放射体のインピーダンスは右上方向に移動し、周波数安定化回路のインピーダンスは右下方向に移動する。
【0059】
図19(A)は、第3の実施形態に係る周波数安定化回路に図18に示した特性の放射体を接続した状態での周波数安定化回路の給電ポートから見たインピーダンス軌跡である。また、図19(B)は周波数安定化回路の給電ポートから見た反射特性S11と通過特性S21の周波数特性図である。
【0060】
このように、周波数上昇に伴いインピーダンスが右上方向へ移動する放射体に、周波数上昇に伴いインピーダンスが右下方向へ移動する周波数安定化回路を接続することによって、周波数安定化回路の給電ポートから見たインピーダンスはスミスチャートの中央付近を回る。すなわち広い周波数帯域(700MHz〜2.3GHz)に亘ってインピーダンス整合がとられることがわかる。
【0061】
《第4の実施形態》
図20は、多層基板に構成された第4の実施形態に係る周波数安定化回路の各層の導体パターンの例を示す図である。各層は磁性体シートで構成され、各層の導体パターンは図20に示す向きでは磁性体シートの裏面に形成されているが、各導体パターンは実線で表している。また、線状の導体パターンは所定の線幅を備えているが、ここでは単純な実線で表している。
【0062】
図20に示した範囲で第1層51aの裏面に導体パターン73が形成され、第2層51bの裏面に導体パターン72,74が形成され、第3層51cの裏面に導体パターン71,75が形成されている。第4層51dの裏面に導体パターン61,65が形成され、第5層51eの裏面に導体パターン62,64が形成され、第6層51fの裏面に導体パターン63が形成されている。第7層51gの裏面には給電端子41、グランド端子42、アンテナ端子43が形成されている。図20中の縦方向に延びる破線はビア電極であり、導体パターン同士を層間で接続する。これらのビア電極は実際には所定の径寸法を有する円柱形の電極であるが、ここでは単純な破線で表している。
【0063】
図20において、導体パターン63の右半分と導体パターン61,62によって第1のコイル状導体L1を構成している。また、導体パターン63の左半分と導体パターン64,65によって第2のコイル状導体L2を構成している。また、導体パターン73の右半分と導体パターン71,72によって第3のコイル状導体L3を構成している。また、導体パターン73の左半分と導体パターン74,75によって第4のコイル状導体L4を構成している。
【0064】
図21は第4の実施形態に係る周波数安定化回路の4つのコイル状導体L1〜L4の磁気的結合の関係を示す図である。このように、第1のコイル状導体L1と第2のコイル状導体L2とによって第1の閉磁路(磁束FP12で示すループ)が構成される。また、第3のコイル状導体L3と第4のコイル状導体L4とによって第2の閉磁路(磁束FP34で示すループ)が構成される。第1の閉磁路を通る磁束FP12と第2の閉磁路を通る磁束FP34の向きは互いに逆方向である。
【0065】
ここで、第1のコイル状導体L1及び第2のコイル状導体L2を「1次側」、第3のコイル状導体L3及び第4のコイル状導体L4を「2次側」と表すと、図20に示すように、1次側のうちの2次側に近い方に給電回路がつながるので、1次側のうちの2次側近傍の電位を高くすることができ、給電回路から流れる電流で2次側にも誘導電流が流れる。そのため、図21に示したような磁束が発生する。
【0066】
この第4の実施形態の構成によっても、コイル状導体L1とL2、L3とL4のインダクタンス値はそれぞれの結合により小さくなるため、この第4の実施形態で示した周波数安定化回路も第1の実施形態の周波数安定化回路25と同様の効果を奏する。
【0067】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、トランス部の自己共振点の周波数を第1〜第4の実施形態で示したものよりさらに高めるための構成例を示す。
図2に示した周波数安定化回路35においては、一次側直列回路36と二次側直列回路37によるインダクタンスと、一次側直列回路36と二次側直列回路37との間に生じるキャパシタンスとでLC共振による自己共振が生じる。
【0068】
図22は、図2に示した比較例としての周波数安定化回路35の周波数特性を示す図である。図22において、曲線S21は給電ポートからアンテナポートへの通過特性、S11は給電ポート側の反射特性をそれぞれ示している。楕円で囲んだ領域は自己共振により電力が通過できない周波数領域を示している。この例では1.3〜1.5GHzの周波数帯で反射が大きく、通過損失が大きいので、この周波数帯域では電力が殆ど通過できない。
【0069】
図23は、第3の実施形態で示した周波数安定化回路25Aの周波数特性を示す図である。この周波数安定化回路25Aでは、トランス部のインダクタンスを小さくすることができ、そのため自己共振点の周波数を高くできる。図23の特性によれば、2.0GHz以下の周波数帯で用いることができる。図23において楕円で囲んだ領域は自己共振により電力が通過できない周波数領域を示している。自己共振点の周波数は図の範囲外である。この例では2.3GHz以上の周波数帯で反射が大きく、通過損失が大きいので、この周波数帯域では電力が殆ど通過できない。
【0070】
図24は第5の実施形態に係る周波数安定化回路の回路図である。この周波数安定化回路は、給電回路30とアンテナ11との間に接続された第1の直列回路26、給電回路30とアンテナ11との間に接続された第3の直列回路28、およびアンテナ11とグランドとの間に接続された第2の直列回路27とで構成されている。
【0071】
第1の直列回路26は第1のコイル状導体L1と第2のコイル状導体L2とが直列に接続された回路である。第2の直列回路27は第3のコイル状導体L3と第4のコイル状導体L4とが直列に接続された回路である。第3の直列回路28は第5のコイル状導体L5と第6のコイル状導体L6とが直列に接続された回路である。
【0072】
図24において、囲みM12はコイル状導体L1とL2との結合、囲みM34はコイル状導体L3とL4との結合、囲みM56はコイル状導体L5とL6との結合をそれぞれ表している。また、囲みM135はコイル状導体L1とL3とL5との結合を表している。同様に、囲みM246はコイル状導体L2とL4とL6との結合を表している。
【0073】
図25は第5の実施形態に係る周波数安定化回路を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。各層は磁性体シートで構成され、各層の導体パターンは図25に示す向きでは磁性体シートの裏面に形成されているが、各導体パターンは実線で表している。また、線状の導体パターンは所定の線幅を備えているが、ここでは単純な実線で表している。
【0074】
図25に示した範囲で第1層51aの裏面に導体パターン82が形成され、第2層51bの裏面に導体パターン81,83が形成され、第3層51cの裏面に導体パターン72が形成されている。第4層51dの裏面に導体パターン71,73が形成され、第5層51eの裏面に導体パターン61,63が形成され、第6層51fの裏面に導体パターン62が形成されている。第7層51gの裏面には給電端子41、グランド端子42、アンテナ端子43がそれぞれ形成されている。図25中の縦方向に延びる破線はビア電極であり、導体パターン同士を層間で接続する。これらのビア電極は実際には所定の径寸法を有する円柱形の電極であるが、ここでは単純な破線で表している。
【0075】
図25において、導体パターン62の右半分と導体パターン61とによって第1のコイル状導体L1を構成している。また、導体パターン62の左半分と導体パターン63とによって第2のコイル状導体L2を構成している。また、導体パターン71と導体パターン72の右半分とによって第3のコイル状導体L3を構成している。また、導体パターン72の左半分と導体パターン73とによって第4のコイル状導体L4を構成している。また、導体パターン81と導体パターン82の右半分とによって第5のコイル状導体L5を構成している。また、導体パターン82の左半分と導体パターン83とによって第6のコイル状導体L6を構成している。
【0076】
図25において破線の楕円形は閉磁路を表している。閉磁路CM12はコイル状導体L1とL2とに鎖交する。また、閉磁路CM34はコイル状導体L3とL4とに鎖交する。さらに、閉磁路CM56はコイル状導体L5とL6とに鎖交する。このように、第1のコイル状導体L1と第2のコイル状導体L2とによって第1の閉磁路CM12が構成され、第3のコイル状導体L3と第4のコイル状導体L4とによって第2の閉磁路CM34が構成され、第5のコイル状導体L5と第6のコイル状導体L6とによって第3の閉磁路CM56が構成される。図25において二点鎖線の平面は、前記三つの閉磁路の間にコイル状導体L1とL3、L3とL5、L2とL4、L4とL6が各々逆向きに磁束が発生するように結合しているために等価的に生じる二つの磁気障壁MWである。換言すると、この二つの磁気障壁MWでコイル状導体L1,L2による閉磁路の磁束、コイル状導体L3,L4による閉磁路の磁束、およびコイル状導体L5,L6による閉磁路の磁束をそれぞれ閉じ込める。
このように、第2の閉磁路CM34が第1の閉磁路CM12および第3の閉磁路CM56で層方向に挟み込まれた構造とする。この構造により、第2の閉磁路CM34は二つの磁気障壁で挟まれて充分に閉じ込められる(閉じ込められる効果が高まる)。すなわち、結合係数の非常に大きなトランスとして作用させることができる。
【0077】
そのため、前記閉磁路CM12とCM34との間、およびCM34とCM56との間をある程度広くすることができる。ここで、コイル状導体L1,L2による直列回路と、コイル状導体L5,L6による直列回路とが並列接続された回路を一次側回路と称し、コイル状導体L3,L4による直列回路を二次側回路と称すると、前記閉磁路CM12とCM34との間、およびCM34とCM56との間を広くすることによって、第1の直列回路26と第2の直列回路27との間、第2の直列回路27と第3の直列回路28との間のそれぞれに生じるキャパシタンスを小さくできる。すなわち、自己共振点の周波数を定めるLC共振回路のキャパシタンス成分が小さくなる。
【0078】
また、第5の実施形態によれば、コイル状導体L1,L2による第1の直列回路26と、コイル状導体L5,L6による第3の直列回路28とが並列接続された構造であるので、自己共振点の周波数を定めるLC共振回路のインダクタンス成分が小さくなる。
【0079】
このようにして、自己共振点の周波数を定めるLC共振回路のキャパシタンス成分もインダクタンス成分も小さくなって、自己共振点の周波数を使用周波数帯域から充分に離れた高い周波数に定めることができる。
【0080】
図26は第5の実施形態で示した周波数安定化回路の周波数特性を示す図である。この周波数安定化回路では、自己共振点の周波数が図外の高い周波数であるので、例えば0.7〜2.5GHzの広い周波数帯で用いることができる。
【0081】
図27(A)は図2に示した比較例としての周波数安定化回路35の反射特性を示す図である。図27(B)は第3の実施形態で示した周波数安定化回路25Aの反射特性を示す図である。図27(C)は第5の実施形態に係る周波数安定化回路の反射特性を示す図である。ここでは周波数を700MHz〜2.50GHzまでスイープしたときの軌跡をスミスチャート上に表している。反射特性S11は給電ポートからの反射特性の軌跡、反射特性S22はアンテナポートからの反射特性の軌跡である。
ここで、各マーカと周波数との対応関係は次のとおりである。
【0082】
(m1,m5):824.0MHz
(m2,m6):960.0MHz
(m3,m7):1.710GHz
(m4,m8):1.960GHz
図27(A)に表れているように、図2に示した比較例としての周波数安定化回路35では、L性、C性ともに強いため、軌跡が非常に大きく、自己共振点をもつ。図27(A)において丸印の位置が自己共振点である。
【0083】
図27(B)に表れているように、第3の実施形態で示した周波数安定化回路25Aでは、L性を小さくすることで自己共振点(ショート側でjx=0と交わる点)がなくなっていることがわかる。
【0084】
図27(C)に表れているように、第5実施形態で示した周波数安定化回路では、C性を小さくすることで、軌跡がさらに小さくなるとともにショートの位置から遠ざかることがわかる。
【0085】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、第5の実施形態とは異なる構成で、トランス部の自己共振点の周波数を第1〜第4の実施形態で示したものより高めるための構成例を示す。
図28は第6の実施形態に係る周波数安定化回路の回路図である。この周波数安定化回路は、給電回路30とアンテナ11との間に接続された第1の直列回路26、給電回路30とアンテナ11との間に接続された第3の直列回路28、およびアンテナ11とグランドとの間に接続された第2の直列回路27とで構成されている。
【0086】
第1の直列回路26は第1のコイル状導体L1と第2のコイル状導体L2とが直列に接続された回路である。第2の直列回路27は第3のコイル状導体L3と第4のコイル状導体L4とが直列に接続された回路である。第3の直列回路28は第5のコイル状導体L5と第6のコイル状導体L6とが直列に接続された回路である。
【0087】
図28において、囲みM12はコイル状導体L1とL2との結合、囲みM34はコイル状導体L3とL4との結合、囲みM56はコイル状導体L5とL6との結合をそれぞれ表している。また、囲みM135はコイル状導体L1とL3とL5との結合を表している。同様に、囲みM246はコイル状導体L2とL4とL6との結合を表している。
【0088】
図29は第6の実施形態に係る周波数安定化回路を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。各層は磁性体シートで構成され、各層の導体パターンは図29に示す向きでは磁性体シートの裏面に形成されているが、各導体パターンは実線で表している。また、線状の導体パターンは所定の線幅を備えているが、ここでは単純な実線で表している。
【0089】
図25に示した周波数安定化回路と異なるのは、導体パターン81,82,83によるコイル状導体L5,L6の極性である。図29の例では、閉磁路CM36はコイル状導体L3,L5,L6,L4に鎖交する。したがって、コイル状導体L3,L4とL5,L6との間には等価的な磁気障壁が生じない。その他の構成は第5の実施形態で示したとおりである。
【0090】
第6の実施形態によれば、図29に示した閉磁路CM12,CM34,CM56が生じるとともに閉磁路CM36が生じることにより、コイル状導体L3,L4による磁束がコイル状導体L5,L6による磁束で吸い込まれる。そのため、第6の実施形態の構造でも磁束が漏れ難く、その結果、結合係数の非常に大きなトランスとして作用させることができる。
【0091】
第6の実施形態でも、自己共振点の周波数を定めるLC共振回路のキャパシタンス成分もインダクタンス成分も小さくなって、自己共振点の周波数を使用周波数帯域から充分に離れた高い周波数に定めることができる。
【0092】
《第7の実施形態》
第7の実施形態では、第5の実施形態および第6の実施形態とは異なる構成で、トランス部の自己共振点の周波数を第1〜第4の実施形態で示したものより高めるための別の構成例を示す。
図30は第7の実施形態に係る周波数安定化回路の回路図である。この周波数安定化回路は、給電回路30とアンテナ11との間に接続された第1の直列回路26、給電回路30とアンテナ11との間に接続された第3の直列回路28、およびアンテナ11とグランドとの間に接続された第2の直列回路27とで構成されている。
【0093】
図31は第7の実施形態に係る周波数安定化回路を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。各層は磁性体シートで構成され、各層の導体パターンは図31に示す向きでは磁性体シートの裏面に形成されているが、各導体パターンは実線で表している。また、線状の導体パターンは所定の線幅を備えているが、ここでは単純な実線で表している。
【0094】
図25に示した周波数安定化回路と異なるのは、導体パターン61,62,63によるコイル状導体L1,L2の極性、および導体パターン81,82,83によるコイル状導体L5,L6の極性である。図31の例では、閉磁路CM16はすべてのコイル状導体L1〜L6に鎖交する。したがって、この場合は等価的な磁気障壁は生じない。その他の構成は第5の実施形態および第6の実施形態で示したとおりである。
【0095】
第7の実施形態によれば、図31に示した閉磁路CM12,CM34,CM56が生じるとともに閉磁路CM16が生じることにより、コイル状導体L1〜L6による磁束が漏れ難く、その結果、結合係数の大きなトランスとして作用させることができる。
【0096】
第7の実施形態でも、自己共振点の周波数を定めるLC共振回路のキャパシタンス成分もインダクタンス成分も小さくなって、自己共振点の周波数を使用周波数帯域から充分に離れた高い周波数に定めることができる。
【0097】
《第8の実施形態》
本発明の通信端末機器は、第1〜第7の実施形態で示した周波数安定化回路と放射体と周波数安定化回路の給電ポートに接続された給電回路とを備える。給電回路はアンテナスイッチ、送信回路及び受信回路を備えた高周波回路で構成されている。通信端末機器はその他に変復調回路やベースバンド回路を備えて構成される。
【符号の説明】
【0098】
Ca…キャパシタ
CM12,CM34,CM56…閉磁路
CM36,CM16…閉磁路
FP12,FP13,FP24,FP34…磁束
L1…第1のコイル状導体
L2…第2のコイル状導体
L3…第3のコイル状導体
L4…第4のコイル状導体
L5…第5のコイル状導体
L6…第6のコイル状導体
11…放射体
11D…放射体
25…周波数安定化回路
26…第1の直列回路
27…第2の直列回路
28…第3の直列回路
30…給電回路
41…給電端子
42…グランド端子
43…アンテナ端子
51a〜51h…層
61〜65…導体パターン
66…導体パターン
71〜75…導体パターン
81〜83…導体パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコイル状導体、第2のコイル状導体、第3のコイル状導体、第4のコイル状導体を少なくとも備え、
第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とが直列に接続されて第1の直列回路が構成され、
第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とが直列に接続されて第2の直列回路が構成され、
第1のコイル状導体及び第2のコイル状導体は、第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とによって第1の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第3のコイル状導体及び第4のコイル状導体は、第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とによって第2の閉磁路が構成されるように巻回されている、周波数安定化回路。
【請求項2】
前記第1のコイル状導体、前記第2のコイル状導体、前記第3のコイル状導体、及び前記第4のコイル状導体は、前記第1の閉磁路を通る磁束と前記第2の閉磁路を通る磁束とが互いに逆方向になるように巻回されている、請求項1に記載の周波数安定化回路。
【請求項3】
前記第1のコイル状導体及び前記第3のコイル状導体は互いに磁気的に結合していて、
前記第2のコイル状導体及び前記第4のコイル状導体は互いに磁気的に結合している、請求項1に記載の周波数安定化回路。
【請求項4】
アンテナに接続されるアンテナポートとグランドとの間にキャパシタが接続された、請求項1乃至3の何れかに記載の周波数安定化回路。
【請求項5】
前記第1のコイル状導体、前記第2のコイル状導体、前記第3のコイル状導体、及び前記第4のコイル状導体は共通の多層基板内の導体パターンで構成されている、請求項1乃至4の何れかに記載の周波数安定化回路。
【請求項6】
前記第1のコイル状導体、前記第2のコイル状導体、前記第3のコイル状導体、及び前記第4のコイル状導体のそれぞれの巻回軸は前記多層基板の積層方向に向き、
前記第1のコイル状導体と第2のコイル状導体は、それぞれの巻回軸が異なる関係で並置され、
前記第3のコイル状導体と第4のコイル状導体は、それぞれの巻回軸が異なる関係で並置され、
前記第1のコイル状導体と第3のコイル状導体のそれぞれの巻回範囲が平面視で少なくとも一部で重なり、前記第2のコイル状導体と第4のコイル状導体のそれぞれの巻回範囲が平面視で少なくとも一部で重なる、請求項5に記載の周波数安定化回路。
【請求項7】
第1のコイル状導体、第2のコイル状導体、第3のコイル状導体、第4のコイル状導体、第5のコイル状導体、第6のコイル状導体、を少なくとも備え、
第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とが直列に接続されて第1の直列回路が構成され、
第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とが直列に接続されて第2の直列回路が構成され、
第5のコイル状導体と第6のコイル状導体とが直列に接続されて第3の直列回路が構成され、
第1のコイル状導体及び第2のコイル状導体は、第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とによって第1の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第3のコイル状導体及び第4のコイル状導体は、第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とによって第2の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第5のコイル状導体及び第6のコイル状導体は、第5のコイル状導体と第6のコイル状導体とによって第3の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第2の閉磁路が第1の閉磁路および第3の閉磁路で層方向に挟み込まれた、周波数安定化回路。
【請求項8】
前記第1のコイル状導体、前記第2のコイル状導体、前記第3のコイル状導体、及び前記第4のコイル状導体は、前記第1の閉磁路を通る磁束と前記第2の閉磁路を通る磁束とが互いに逆方向になるように巻回されていて、
前記第3のコイル状導体、前記第4のコイル状導体、前記第5のコイル状導体、及び前記第6のコイル状導体は、前記第2の閉磁路を通る磁束と前記第3の閉磁路を通る磁束とが互いに逆方向になるように巻回されている、請求項7に記載の周波数安定化回路。
【請求項9】
前記第1のコイル状導体、前記第2のコイル状導体、前記第3のコイル状導体、及び前記第4のコイル状導体は、前記第1の閉磁路を通る磁束と前記第2の閉磁路を通る磁束とが互いに逆方向になるように巻回されていて、
前記第3のコイル状導体、前記第4のコイル状導体、前記第5のコイル状導体、及び前記第6のコイル状導体は、前記第2の閉磁路を通る磁束と前記第3の閉磁路を通る磁束とが互いに同方向になるように巻回されている、請求項7に記載の周波数安定化回路。
【請求項10】
給電回路に接続される給電ポートとアンテナに接続されるアンテナポートとを備えた周波数安定化回路と、前記アンテナポートに接続されたアンテナと、で構成されたアンテナ装置であって、
前記周波数安定化回路は、
第1のコイル状導体、第2のコイル状導体、第3のコイル状導体、第4のコイル状導体を少なくとも備え、
第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とが直列に接続されて第1の直列回路が構成され、
第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とが直列に接続されて第2の直列回路が構成され、
アンテナポートと給電ポートとの間に第1の直列回路が接続され、
アンテナポートとグランドとの間に第2の直列回路が接続され、
第1のコイル状導体及び第2のコイル状導体は、第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とによって第1の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第3のコイル状導体及び第4のコイル状導体は、第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とによって第2の閉磁路が構成されるように巻回されている、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項11】
給電回路に接続される給電ポートとアンテナに接続されるアンテナポートとを備えた周波数安定化回路と、前記アンテナポートに接続されたアンテナと、で構成されたアンテナ装置であって、
前記周波数安定化回路は、
第1のコイル状導体、第2のコイル状導体、第3のコイル状導体、第4のコイル状導体、第5のコイル状導体、第6のコイル状導体、を少なくとも備え、
第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とが直列に接続されて第1の直列回路が構成され、
第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とが直列に接続されて第2の直列回路が構成され、
第5のコイル状導体と第6のコイル状導体とが直列に接続されて第3の直列回路が構成され、
アンテナポートと給電ポートとの間に第1の直列回路および第3の直列回路が互いに並列に接続され、
アンテナポートとグランドとの間に第2の直列回路が接続され、
第1のコイル状導体及び第2のコイル状導体は、第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とによって第1の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第3のコイル状導体及び第4のコイル状導体は、第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とによって第2の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第5のコイル状導体及び第6のコイル状導体は、第5のコイル状導体と第6のコイル状導体とによって第3の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第2の閉磁路が第1の閉磁路および第3の閉磁路で層方向に挟み込まれた、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項12】
給電回路に接続される給電ポートとアンテナに接続されるアンテナポートとを備えた周波数安定化回路と、前記アンテナポートに接続されたアンテナと、前記給電ポートに接続された給電回路と、を備えた通信端末機器であって、
前記周波数安定化回路は、
第1のコイル状導体、第2のコイル状導体、第3のコイル状導体、第4のコイル状導体を少なくとも備え、
第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とが直列に接続されて第1の直列回路が構成され、
第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とが直列に接続されて第2の直列回路が構成され、
アンテナポートと給電ポートとの間に第1の直列回路が接続され、
アンテナポートとグランドとの間に第2の直列回路が接続され、
第1のコイル状導体及び第2のコイル状導体は、第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とによって第1の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第3のコイル状導体及び第4のコイル状導体は、第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とによって第2の閉磁路が構成されるように巻回されている、ことを特徴とする通信端末機器。
【請求項13】
給電回路に接続される給電ポートとアンテナに接続されるアンテナポートとを備えた周波数安定化回路と、前記アンテナポートに接続されたアンテナと、前記給電ポートに接続された給電回路と、を備えた通信端末機器であって、
前記周波数安定化回路は、
第1のコイル状導体、第2のコイル状導体、第3のコイル状導体、第4のコイル状導体、第5のコイル状導体、第6のコイル状導体、を少なくとも備え、
第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とが直列に接続されて第1の直列回路が構成され、
第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とが直列に接続されて第2の直列回路が構成され、
第5のコイル状導体と第6のコイル状導体とが直列に接続されて第3の直列回路が構成され、
アンテナポートと給電ポートとの間に第1の直列回路および第3の直列回路が互いに並列に接続され、
アンテナポートとグランドとの間に第2の直列回路が接続され、
第1のコイル状導体及び第2のコイル状導体は、第1のコイル状導体と第2のコイル状導体とによって第1の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第3のコイル状導体及び第4のコイル状導体は、第3のコイル状導体と第4のコイル状導体とによって第2の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第5のコイル状導体及び第6のコイル状導体は、第5のコイル状導体と第6のコイル状導体とによって第3の閉磁路が構成されるように巻回されていて、
第2の閉磁路が第1の閉磁路および第3の閉磁路で層方向に挟み込まれた、ことを特徴とする通信端末機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−85250(P2012−85250A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8533(P2011−8533)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【特許番号】特許第4761009号(P4761009)
【特許公報発行日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】