説明

周波数選択型の電磁波シールド材、及びそれを用いた電磁波吸収体

【課題】安価に作製され、視覚的に違和感の無い透視性(目視されないこと)を有しているパッチアンテナ素子による周波数選択型の電磁波シールド材、及びそれを用いた電磁波吸収体を提供することを課題とする。
【解決手段】透明基材2の少なくとも一方の面に、所定周波数の電磁波を遮蔽するためのパッチアンテナ素子3が2次元的に配設されてなり、前記パッチアンテナ素子3のパターンは、線幅が10〜80μmの導電性薄膜の細線からなるメッシュパターンを用いて、透視性を有するように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の周波数の電磁波のみを選択的に遮蔽する電磁波シールド材、及びそれを用いた電磁波吸収体に関する。さらに詳しくは、安価に作製され、視覚的に違和感の無い透視性を有しているパッチアンテナ素子による周波数選択型の電磁波シールド材、及びそれを用いた電磁波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の電子機器から発生する電磁波が人体に悪影響を与えたり、周囲の電子機器を誤動作させることが問題とされるようになり、さらには、無線LANの普及により建物内の通信データが建物の外部に漏洩して傍受されるのを防止する必要が生じている。
所定の周波数の電磁波のみを選択的に透過または遮蔽するという周波数選択型の電磁波遮蔽を行う対策が、ますます重要視されつつある。
【0003】
従来、所定の周波数の電磁波のみを選択的に遮蔽し、他の周波数の電磁波を透過する周波数選択型の電磁波遮蔽材(シールド材)としては、導電体からなるFSS素子(FSS:Frequency Selective Surface)を繰り返し配列したものが知られている(特許文献1〜3参照)。
また、FSS素子、又はパッチアンテナ素子のパターンが配設された周波数選択型の電磁波シールド材を用いて、所定の周波数の電磁波のみを選択的に吸収する電磁波吸収体(または電波吸収体)を作製することに関しては、既に知られている(特許文献4〜6)。
【0004】
FSS素子の製造方法としては、次に示すようにエッチング法や印刷法が用いられている。
(1)透明基材に金属箔を貼りあわせ、または透明基材に金属薄膜を蒸着した後、フォトリソグラフ法によりFSS素子のパターンを形成するエッチング法(特許文献1、3)。
(2)透明基材の上に金属ペーストを印刷してFSS素子のパターンを形成する印刷法(特許文献1、2)。
【0005】
また、パッチアンテナ素子のパターンを製造する方法としては、次に示すようにエッチング法や印刷法、あるいは貼り付ける方法が用いられている。
(1)基材に金属箔を貼りあわせ、または基材に金属薄膜を蒸着した後、フォトリソグラフ法によりパッチアンテナ素子のパターンを形成するエッチング法(特許文献4,5)。
(2)基材の上に金属ペーストを印刷してパッチアンテナ素子のパターンを形成する印刷法(特許文献5)。
(3)基材にパッチアンテナ素子のパターンに裁断した金属片を貼り付ける方法(特許文献6)。
【0006】
特許文献1には、平面上に規則的に配置された複数の導電性双極性素子から成る導電性双極性素子パターン(FSS素子)を用いた周波数選択性電磁波シールド材が開示されている。FSS素子のパターンの図形形状としては、線分で描かれた円形や十字形などが用いられている。FSS素子のパターンの形成方法としては、導電性インキを用いて印刷する方法や、樹脂フィルムに金属箔の貼り付けや蒸着により薄膜を形成した後、フォトリソグラフ法によりFSS素子のパターンを形成するエッチング法が開示されている。
また、実施例によると、PETフィルムにアルミニウムの蒸着膜が形成されたフィルムをエッチングして線幅1.0mm、線長52mm、の十字形パッチアンテナ素子パターンが線間隔0.3mmで配置された電磁波シールド材が示されている。
【0007】
また、特許文献2には、低誘電体材料の基板上に、印刷、溶着等の手段により導電体が貼着されて形成され線分で描かれた閉ループから成る素子の中に、閉ループとは異なる周波数の電磁波を遮蔽する先端開放素子を配置することで、2種類の電磁波を遮断する周波数選択性の電磁波シールド材が開示されている。しかし、具体的な線幅は開示されていない。
【0008】
また、特許文献3には、透明基材の少なくとも片面に幅50μm以下の導電体の集合体によるアンテナパターンにて特定周波数を吸収または反射電磁波遮蔽体が形成された電磁波シールド性を有するフィルムが開示されている。
アンテナパターンの図形形状は、線分で描かれた円形、四角形、十字形、線状などである。アンテナパターン図形の製造方法は、透明基材に金属箔をラミネートしたり、真空蒸着、スパッタ法にて金属薄膜を形成した後、フォトリソ法によりエッチングしてパッチアンテナ素子パターンを形成する。実施例によると、厚さ50μmのポリエステルフィルムからなる透明基材に9μmのアルミ箔を貼り合せた後、線幅10μmのレジストパターンで露光した後にエッチングしてアンテナ図形パターンを形成している。
【0009】
また、特許文献4には、2次元配置された、線状(長尺状)パターン、円形パッチアンテナ素子、及び方形パッチアンテナ素子からなる所定周波数の電磁波を吸収する電磁波吸収体が開示されている。円形パッチアンテナ素子、及び方形パッチアンテナ素子の形成方法は、基板の上に蒸着や金属片の貼り合せることにより行なわれる。
なお、特許文献4では、エレメント(パッチアンテナ素子)及び基板は光透過性を有していない材料で形成して良いが、導電率に加えて光透過率も考慮して原料の種類及び配合比率等を定めてエレメントを構成すると共に、光透過性を有する材料で基板を構成すれば、光透過性が必要とされる箇所に電磁波吸収パネルを配設することも可能であるとの記載があるが、エレメント(パッチアンテナ素子)を導電性の材料によりメッシュパターンで形成することは、何ら記載されていない。
【0010】
また、特許文献5には、電波を反射する反射層と、炭化珪素繊維で補強された繊維強化プラスチックからなる吸収層とが積層され、導体パッチアンテナ素子からなる電波選択層が吸収層の間に挿入されている電波吸収体が開示されている。導体パッチアンテナ素子の図形形状は、円形パッチアンテナ素子、方形パッチアンテナ素子、及び十字形などである。導体パッチアンテナ素子は、導電性塗料を使用してシルクスクリーン印刷などで行なう印刷方法、銅張積層板をフォトリソ法によりエッチングする方法などにより形成される。実施例によると、電波選択層は、厚さ25μmのPETフィルムに、厚さ18μmの電解銅箔を形成した銅張りPETフィルムを使用し、フォトリソ法によるエッチングにて直径2.3mmの円形パッチを0.7mmの間隔でパターンに形成したものが開示されている。
また、特許文献5には、パッチアンテナ素子を導電性の材料によりメッシュパターンで形成することは、何ら記載されていない。
【0011】
また、特許文献6には、電磁波を反射する反射部材と、前記反射部材の電磁波到来側に距離を隔てて設けられ、互いに間隙を隔てて配置された複数の導体(パッチアンテナ素子に相当する)と、前記導体間の間隙及び前記導体の電磁波到来側の少なくとも一方に設けられた空気以外の誘電体と、を備えた電磁波吸収体が開示されている。
特許文献6の図4には、分割導電膜の複数の形態例として、方形パッチアンテナ素子が例示されている。また、実施例には、透明な分割導電膜の形成方法として、酸化スズ膜の蒸着膜に、サンドブラスターやレーザーなどにより分割溝を形成してパッチアンテナ素子化することが記載されている。しかし、特許文献6には、パッチアンテナ素子を導電性の材料によりメッシュパターンで形成することは、何ら記載されていない。
【特許文献1】特開平11−195890号公報
【特許文献2】特開2000−68675号公報
【特許文献3】特開2003−258487号公報
【特許文献4】特開平9−162589号公報
【特許文献5】特開2000−031684号公報
【特許文献6】特開2003−298278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
こうした中で、パターンの図形が線分で描かれたFSS素子の図形パターンからなる周波数選択型の電磁波シールド材及び電磁波吸収体であれば、線幅を細くして目立たなくさせることで、透視性を有するようにFSS素子のパターンを作成することは容易に想到されることである。
【0013】
一方、塗りつぶしたパターンの図形が基本となるパッチアンテナ素子のパターンを用いた周波数選択型の電磁波シールド材及び電磁波吸収体では(例えば、特許文献4〜6)、パッチアンテナ素子のパターンに透視性を持たせることは重要視されておらず、わずかに特許文献6において金属の蒸着膜を用いた透明なパッチアンテナ素子のパターンが記載されている以外は、パッチアンテナ素子のパターン(形状パターンは、円形、方形など)は、導電性材料などで塗りつぶされたものであり、透視性を有していない。
【0014】
ところが、金属の蒸着膜により形成される透視性を有するパッチアンテナ素子のパターンは製造コストが高く、広い面積に使用される窓ガラス用の電磁波シールド材及び電磁波吸収体に採用することは困難である。
一方、導電性材料で塗りつぶされたパッチアンテナ素子を用いた電磁波シールド材及び電磁波吸収体は、金属の蒸着膜を用いたものに比べて生産性が高く安価に製造されるが、透視性を有しておらず、これらを室内の窓ガラスや透明なパーテーションに貼り付けて使用する場合、美感を害し、精神的な不快感を生じさせるという問題があった。
【0015】
このように、従来、大型建築物の窓ガラスなどに貼り付けるのに適した、安価に作製され、透視性を有するパッチアンテナ素子のパターンによる周波数選択型の電磁波シールド材及び電磁波吸収体は知られていなかった。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、安価に作製され、視覚的に違和感の無い透視性(目視されないこと)を有しているパッチアンテナ素子による周波数選択型の電磁波シールド材、及びそれを用いた電磁波吸収体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため、本発明は、長さが1〜10000mである長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、所定周波数の電磁波を遮蔽するためのパッチアンテナ素子のパターンが2次元的に配設されてなり、前記パッチアンテナ素子のパターンは、線幅が10〜80μmの導電性薄膜の細線からなるメッシュパターンで形成されてなり、透視性を有することを特徴とする周波数選択型の電磁波シールド材を提供する。
【0018】
また、前記電磁波シールド材のメッシュパターンは、導電性薄膜の細線メッシュパターン、または導電性薄膜の細線メッシュパターンの上にメッキ層を積層した、メッキ積層の金属メッシュパターンからなり、前記電磁波シールド材のメッシュパターンの導電性薄膜は、写真製法により生成された現像銀層からなる金属薄膜、金属粒子、カーボンナノ粒子もしくはカーボンファイバーの中から選択された1種以上を含有する導電性ペーストを印刷して形成した導電性薄膜、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して形成した導電性薄膜、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して行なう、剥離(リフトオフ)法により形成した導電性薄膜、金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着により製膜された薄膜をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、金属箔をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、のいずれかであることが好ましい。
【0019】
また、前記パッチアンテナ素子のパターン図形の形状は、図形の周辺長さを遮蔽しようとする所定周波数の波長λに等しくするものであり、1つ又は複数の共振周波数に対して吸収遮蔽できるように、1種類又は複数種類の形状からなるパッチアンテナ素子のパターンが2次元的に配列されてなることが好ましい。
【0020】
また、前記課題を解決するため、本発明は、長さが1〜10000mである長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、切れ目の無い連続したメッシュパターンが形成され、前記メッシュパターンの線幅が10〜80μmである導電性薄膜の細線からなり透視性を有する電磁波反射材と、請求項1〜3のいずれかに記載の周波数選択型の電磁波シールド材とが、透明な誘電体を介して積層されてなり、透視性を有することを特徴とする電磁波吸収体を提供する。
【0021】
また、前記電磁波反射材のメッシュパターンは、導電性薄膜の細線メッシュパターン、または導電性薄膜の細線メッシュパターンの上にメッキ層を積層した、メッキ積層の金属メッシュパターンからなり、前記電磁波反射材のメッシュパターンの導電性薄膜は、写真製法により生成された現像銀層からなる金属薄膜、金属粒子、カーボンナノ粒子もしくはカーボンファイバーの中から選択された1種以上を含有する導電性ペーストを印刷して形成した導電性薄膜、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して形成した導電性薄膜、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して行なう、剥離(リフトオフ)法により形成した導電性薄膜、金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着により製膜された薄膜をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、金属箔をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、のいずれかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のパッチアンテナ素子のパターンからなる周波数選択型の電磁波シールド材によれば、所定周波数の電磁波を遮蔽するためのパッチアンテナ素子のパターンは、線幅が10〜80μmの導電性薄膜の細線からなるメッシュパターンを用いて形成されてなり、透視性(目視されないこと)を有している。
また、本発明の周波数選択型の電磁波シールド材は、製造コストが高くなる金属の蒸着膜によるものでなく、生産性の高いメッシュパターンによるパッチアンテナ素子のパターンを用いているので、安価に作製することができる。
このため、本発明によれば、安価に作製され、視覚的に違和感の無い透視性を有しているパッチアンテナ素子による周波数選択型の電磁波シールド材、及びそれを用いた電磁波吸収体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明の周波数選択型の電磁波シールド材の一例を示す図面であり、図1は周波数選択型の電磁波シールド材の概略構成を示す正面図である。図2は、図1のA部の拡大図であって、図2(a)は、長尺の透明基材の長さ方向と平行なメッシュパターンの例であり、図2(b)は、長尺の透明基材の長さ方向と一定のバイアス角度を有するメッシュパターンの例を示す。図3は、図2(a)のB−B矢視断面図である。図3(a)は、導電性薄膜からなる細線を示す。図3(b)は、導電性薄膜の上にメッキ層を積層した細線を示す。
図4(a)〜(f)は、それぞれパッチアンテナ素子のパターンの例を示す部分拡大正面図である。図5は、本発明の電磁波吸収体の一例を示す斜視断面図である。図6は、図5のC−C矢視図であって、本発明の電磁波吸収体の一例を示す概略断面図である。
【0024】
図1に示す、本発明の周波数選択型の電磁波シールド材1は、長尺の透明基材2の片面に所定周波数の電磁波を遮蔽するための細線パターンからなるパッチアンテナ素子3のパターンが2次元的に多数配設され、パッチアンテナ素子3によって遮蔽されない他の周波数の電磁波を透過させる周波数選択型の電磁波シールド材である。
必要に応じて、透明基材2の他方の面(裏面)には、粘着剤層及びこれを保護する剥離フィルム(いずれも図示略)を設けることができる。粘着剤層を設けた周波数選択型の電磁波シールド材は、剥離フィルムを剥がしてガラスなどの表面に容易に貼り付けることができる。
本発明において、「長尺」とは、ロール体を形成して、ロールtoロールの加工が可能な長さを意味する。例えば、長さが1〜10000mである。
【0025】
図2は、図1のA部の部分拡大図であって、長尺の透明基材2の片面に、パッチアンテナ素子3のパターンが配設され、このパッチアンテナ素子のパターンは、線幅が10〜80μmの細線が、一定の間隔で配置されたメッシュパターンが形成されていて、隙間があることから透視性(目視されないこと)を有していることが理解される。
メッシュパターンのピッチ間隔は、選択的に遮蔽しようとする電磁波の波長及び細線の線幅、及び細線の導電性に関係して決定されるが、通常、遮蔽しようとする電磁波の波長の1/20〜1/100程度以下のピッチ間隔にする必要がある。例えば、2GHzの電磁波を選択的に遮蔽しようとする場合には、メッシュパターンのピッチ間隔は150〜750μm程度とするのが好ましい。
また、図2(a)においては、メッシュパターンの縦横の線が、長尺の透明基材の長さ方向と平行になっているが、図2(b)のようにメッシュパターンの縦横の線が、長尺の透明基材の長さ方向と一定のバイアス角度を持つことが好ましい場合がある。
ここで、図5に示した本発明の電磁波吸収体20のように、電磁波反射材17を構成するメッシュパターン15と、周波数選択型の電磁波シールド材1を構成する、パッチアンテナ素子3のメッシュパターン(図2(a)または図2(b)に示したパターン)とが重なり合うと、2枚のメッシュパターンの重なり合う角度によっては、モアレ現象を起してしまうことがある。
電磁波反射材17を構成するメッシュパターン15と、パッチアンテナ素子3のメッシュパターンとの重なり合う角度を調整することによって、モアレ現象が起こるのを防ぐことができる。このため、電磁波反射材17を構成するメッシュパターン15の縦横の線が長尺の透明基材の長さ方向と平行になっている場合には、図2(b)のように、パッチアンテナ素子3のメッシュパターンの縦横の線9が、長尺の透明基材の長さ方向と一定のバイアス角度θを持つようにするのが好ましい。
また図2(b)に示すメッシュパターンにおいて、パッチアンテナ素子3ごとの縁取り線(外周の輪郭線)は必ずしも必要ではなく、パッチアンテナ素子3の図形寸法に比較して、メッシュパターンのピッチ間隔が相当程度狭い場合には、パッチアンテナ素子3ごとの縁取り線を省くことも可能である。その場合、長尺の透明基材の長さ方向と一定のバイアス角度θを持つメッシュパターンの縦横の線9のみでパッチアンテナ素子3を構成することができる。
【0026】
図3は、図2(a)のB−B矢視断面図である。図3(a)は、透明基材2の片面に導電性薄膜からなる細線4を用いて、図2のようなアンテナ素子3のパターンが形成されていることを示す。図3(b)は、透明基材2の片面に導電性薄膜からなる細線4の上にメッキ層5が積層された細線6を用いて、図2のようなアンテナ素子3のパターンが形成されていることを示す。
なお、本発明の電磁波吸収体(詳しくは後述)の構成部材である、透明基材16の片面に切れ目の無い連続したメッシュパターン15が形成された透視性を有する電磁波反射材17も、図3(a)に示す導電性薄膜からなる細線4、または図3(b)に示す導電性薄膜からなる細線4の上にメッキ層5が積層された細線6のいずれかを用いて作製されている。
【0027】
(透明基材)
本発明に使用される透明基材2,16は、可視領域で透明性を有し、一般に全光線透過率が90%以上のものが好ましい。中でも、フレキシブル性を有する樹脂フィルムは、取扱い性に優れることから透明基材2として好ましい。透明基材2,16に使用される樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる厚さ50〜300μmの単層フィルム又は前記樹脂からなる複数層の複合フィルムが挙げられる。
【0028】
(パッチアンテナ素子)
透明基材2上には、所定周波数の電磁波を遮蔽するためのパッチアンテナ素子3が一定間隔で2次元的に規則的に配設されている。一般にパッチアンテナ素子は、所定の周波数の電磁波に共振して当該周波数を遮蔽する素子である。本発明の周波数選択型の電磁波シールド材の場合、周波数選択型の電磁波シールド材の透過性の観点から、細線メッシュパターンからなるパッチアンテナ素子が用いられる。細線メッシュパターンからなるパッチアンテナ素子の形状、寸法、配列などは、遮蔽対象とする電磁波の周波数に応じて最適な仕様が設計される。
【0029】
本発明の周波数選択型の電磁波シールド材におけるパッチアンテナ素子3の作製方法は、詳しくは後述するが、導電性薄膜からなる細線のメッシュパターン、または導電性薄膜からなる細線のメッシュパターンの上にメッキ層を積層した金属メッシュパターンが用いられる。
この方法を用いることにより、細線パターンからなるパッチアンテナ素子3の形成が容易になり、透過性と電磁波シールド効果とがともに優れたパッチアンテナ素子を備える周波数選択型の電磁波シールド材1を製造することができる。
【0030】
本発明の周波数選択型の電磁波シールド材1においては、透視性(目視されないこと)を確保するため、導電性薄膜からなる細線メッシュパターンまたは導電性薄膜からなる細線のメッシュパターンの上にメッキ層を積層した金属メッシュパターンによりパッチアンテナ素子3を構成する。パッチアンテナ素子3を構成する導電性薄膜の線幅は、10〜80μmが好ましく、さらには10〜40μmであることがより好ましい。
【0031】
パッチアンテナ素子3の好ましいパターン形状は、一般的には、作製のし易さの点から、図4の(a)〜(d)に示すような、単純図形である円形パッチアンテナ素子または方形パッチアンテナ素子(環状図形を含む)、図4の(e)に示すような十字形パッチアンテナ素子、図4の(f)に示すようなY字形パッチアンテナ素子が挙げられる。
このような末端を有しない閉じた図形(環状図形を含む)の場合、外周辺の長さが遮蔽する電磁波の波長と同程度とされる。
なお、円形パッチアンテナ素子よりも方形パッチアンテナ素子の方が、同一の外周長さとした場合に図形寸法が小さくなり、単位面積当たりに配置できるパターン数量の密度が大きくなるため、より好ましいパターン形状である。
また、異なる2種類以上の形状、寸法が異なるパッチアンテナ素子を組み合わせて用いることにより、2種類以上の周波数の電磁波を選択して遮蔽することが可能な電磁波シールド材を構成することも可能である。
図4の(a)〜(d)に示したパッチアンテナ素子3の好ましいパターン形状では、メッシュパターンの縦横の線が、長尺の透明基材の長さ方向に対して平行であり、バイアス角度が90度となっているが、図2(b)のように、パッチアンテナ素子3のメッシュパターンの縦横の線9に、長尺の透明基材の長さ方向と一定のバイアス角度θを持たせることも可能である。
また、パッチアンテナ素子3ごとの縁取り線(外周の輪郭線)は必ずしも必要ではなく、パッチアンテナ素子3の図形寸法に比較して、メッシュパターンのピッチ間隔が相当程度狭い場合には、パッチアンテナ素子3ごとの縁取り線を省くことも可能である。その場合、長尺の透明基材の長さ方向と一定のバイアス角度θを持つメッシュパターンの縦横の線9のみでパッチアンテナ素子3を構成することができる。
【0032】
比較的小規模な面積を覆う用途の場合、定尺長さ毎に周波数選択型の電磁波シールド材を切断しやすいように、図1に示すように、透明基材2の長さ方向の所定長さ毎にパッチアンテナ素子3の配置を区切ってもよい。この場合、周波数選択型の電磁波シールド材1枚分の長さ7に切り分けるには、パッチアンテナ素子3を設けない切れ目の部分8で切断すればよい。これにより、パッチアンテナ素子3を分断して切断することなしに透明基材2を切断することが容易になる。
【0033】
また、大規模な面積を覆う用途、例えば大型建築物の窓ガラスの場合、図1における周波数選択型の電磁波シールド材1のパッチアンテナ素子3のパターンは、切れ目の部分8を無くして連続して配設する。これにより、切れ目の部分8からの電磁波の漏洩がなく、周波数選択型の電磁波シールド材1の長さ方向全体にわたって電磁波シールド効果を得ることができる。
【0034】
本発明に適用できるパッチアンテナ素子のパターンの作製方法は特に限定されないが、導電性薄膜の細線メッシュパターン、または導電性薄膜の細線メッシュパターンの上にメッキ層を積層した金属メッシュパターンにより作製する方法が好適である。
図3は、本発明に使用されるパッチアンテナ素子のパターンを構成するメッシュパターンの部分断面図であり、図3(a)は、導電性薄膜からなる細線メッシュパターンの断面図、図3(b)は、導電性薄膜の上にメッキされた金属メッシュパターンの断面図である。
【0035】
図3(a)は、導電性薄膜からなる細線メッシュパターン4であり、導電性薄膜は、写真製法により生成された現像銀層からなる金属薄膜、金属粒子、カーボンナノ粒子もしくはカーボンファイバーの中から選択された1種以上を含有する導電性ペーストを印刷して形成した導電性薄膜、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して形成した導電性薄膜、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して行なう、剥離(リフトオフ)法により形成した導電性薄膜、金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着により製膜された薄膜をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、金属箔をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、のいずれかであることが好ましい。
【0036】
図3(b)の例では、金属メッシュパターン6は、導電性薄膜からなる細線メッシュパターン4の上にメッキ層5が積層されたものであり、導電性薄膜は、写真製法により生成された現像銀層からなる金属薄膜、金属粒子、カーボンナノ粒子もしくはカーボンファイバーの中から選択された1種以上を含有する導電性ペーストを印刷して形成した導電性薄膜、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して形成した導電性薄膜、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して行なう、剥離(リフトオフ)法により形成した導電性薄膜、金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着により製膜された薄膜をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、金属箔をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、のいずれかであることが好ましい。
【0037】
図3(a)及び図3(b)において、導電性薄膜からなる細線メッシュパターン4またはその上にメッキ層5が積層された金属メッシュパターン6において、メッシュパターン(4または6)の線幅は、いずれも10〜80μmが好ましく、さらには10〜40μmであることがより好ましい。線幅を10μm未満の微細線にすると、導電性薄膜の細線パターンを導電性のペーストを用いて印刷して形成するためのスクリーン印刷の原版や、導電性薄膜の細線パターンを写真製法で形成するための露光マスクの製造コストが著しく上昇するので好ましくない。逆に線幅を太くして80μmを超えると、導電性は高くなるが透視性は低下するので好ましくない。
【0038】
また、導電性薄膜のメッシュパターンの厚みは、所望とする特性により任意に変えることができるが、好ましくは0.05〜15μmの範囲であり、より好ましくは0.05〜10μmの範囲である。導電性薄膜の細線メッシュパターンの膜厚が薄いと電磁波遮蔽性能が低くなり過ぎてしまい、又、細線メッシュパターンの膜厚が厚いとコスト高の要因となってしまう。
【0039】
本発明では、メッシュパターンの導電性薄膜の作製方法として、導電性薄膜は、写真製法により生成された現像銀層からなる金属薄膜、金属粒子、カーボンナノ粒子もしくはカーボンファイバーの中から選択された1種以上を含有する導電性ペーストを印刷して形成した導電性薄膜、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して形成した導電性薄膜、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して行なう、剥離(リフトオフ)法により形成した導電性薄膜、金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着により製膜された薄膜をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、金属箔をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、のいずれかを用いることができる。
以下にそれぞれの方法による導電性薄膜による細線パターンの作製方法と、併せて金属メッキ層について順に説明する。
【0040】
(印刷による導電性薄膜の生成)
本発明に用いる導電性ペーストは、導電性薄膜からなるメッシュパターンとなるものであるから、金属粒子、カーボンナノ粒子もしくはカーボンファイバーの中から選択された1種以上を含有する導電性ペーストを用いることができる。
通常は金属粉末をバインダーとなる樹脂成分に混ぜ込んだ導電性ペーストが用いられる。前記の金属粉末としては、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉が用いられるが、導電性、価格の点から銅または銀の微粉末を用いるのが好ましい。
印刷したメッシュパターンに含まれる金属粉末に起因する金属光沢を消して外光の反射を抑え、視認性を高めるために、導電性ペーストの中にカーボンブラックなどの黒色顔料を混ぜ込むのが好ましい。黒色顔料は、導電性ペーストの中に0.1〜10重量%で含有させるのが好ましい。
印刷するメッシュパターンの線幅は10〜80μm程度であることから、導電性ペーストに用いる金属粉末は、特別な超微粒子である必要性はなく、金属粉末の粒子径は0.1〜2μmであればよい。
【0041】
導電性ペーストに用いられる樹脂成分としては、好ましくは、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、熱可塑性樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。また、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂などの熱硬化型であってもよい。
導電性ペーストは、これらの樹脂成分に金属粉末、及び黒色顔料を混ぜ込んだ後にアルコールやエーテルなどの有機溶剤を加えて粘度調整を行なう。
図3(a)(b)の透明基材2の片面に、導電性ペーストを用いてメッシュパターンを印刷し、溶剤を乾燥除去して、細線メッシュパターンを硬化させる。
導電性ペーストを塗布して細線メッシュパターンを形成する方法は特に制限されないが、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット方式などの方法で印刷するのが好ましい。
【0042】
(写真製法による現像銀層からの金属薄膜層の生成)
現像銀層を生成するための写真製法に基づく露光現像法には、(a)露光マスクに覆われていなくて露光された部分に現像銀が発現する、即ち、露光マスクと反対の形に現像銀が表れるいわゆるネガ型の露光現像方法と、(b)露光マスクに覆われて露光されなかった部分には現像銀が発現する、即ち、露光マスクと同じ形に現像銀が表れるいわゆるポジ型の露光現像方法の2通りがある。
すなわち、露光現像法には、特開2004−221564号公報に記載された方法であって、支持体上に設けられた銀塩を含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、さらに前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成する方法と、WO2004/007810に記載された方法(ここでは、DTR−メッキ法と称する)とがある。
本発明には、上記の2つの写真製法である(a)ネガ型の露光・現像方法と、(b)ポジ型の露光・現像方法のいずれでも適用できる。
【0043】
(写真製法)
以下、重複した説明を避けるため、ポジ型の露光・現像方法(DTR法)による現像銀メッシュパターンの作製方法について説明する。DTR法の場合、透明基材表面には、予め物理現像核層が設けられていることが好ましい。物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられる。これらの物理現像核の微粒子層は、真空蒸着法、カソードスパッタリング法、コーティング法等によって透明基材上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1平方メートル当たり0.1〜10mg程度が適当である。
【0044】
図3(a)(b)の透明基材2には、塩化ビニリデンやポリウレタン等のポリマーラテックス層の接着層を設けることができ、また接着層と物理現像核層との間にはゼラチン等の親水性バインダーからなる中間層を設けることもできる。
物理現像核層は、親水性バインダーを含有するのが好ましい。親水性バインダー量は物理現像核に対して10〜300質量%程度が好ましい。親水性バインダーとしては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。物理現像核層には親水性バインダーの架橋剤を含有することもできる。
【0045】
物理現像核層や前記中間層等の塗布には、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの塗布方式で塗布することができる。本発明において物理現像核層は、上記したコーティング法によって、通常連続した均一な層として設けることが好ましい。
物理現像核層に金属銀を析出させるためのハロゲン化銀の供給は、基材上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に一体的に設ける方法、あるいは別の紙やプラスチック樹脂フィルム等の基材上に設けられたハロゲン化銀乳剤層から可溶性銀錯塩を供給する方法がある。コスト及び生産効率の面からは前者の物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を一体的に設けるのが好ましい。
【0046】
前記ハロゲン化銀乳剤は、ハロゲン化銀写真感光材料の一般的なハロゲン化銀乳剤の製造方法に従って製造することができる。ハロゲン化銀乳剤は、通常、硝酸銀水溶液、塩化ナトリウムや臭化ナトリウムのハロゲン水溶液をゼラチンの存在下で混合熟成することによって作られる。
前記ハロゲン化銀乳剤層のハロゲン化銀組成は、塩化銀を80モル%以上含有するのが好ましく、特に90モル%以上が塩化銀であることが好ましい。塩化銀含有率を高くすることによって形成された物理現像銀の導電性が向上する。
前記ハロゲン化銀乳剤層は、各種の光源に対して感光性を有している。本発明において物理現像銀により現像銀メッシュパターンを形成する場合、ハロゲン化銀乳剤層の露光方法として、現像銀メッシュパターンの透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。前者の密着露光は、ハロゲン化銀の感光性は比較的低くても可能であるが、レーザー光を用いた走査露光の場合は比較的高い感光性が要求される。従って、後者の露光方法を用いる場合は、ハロゲン化銀の感光性を高めるために、ハロゲン化銀は化学増感あるいは増感色素による分光増感を施してもよい。
【0047】
化学増感としては、金化合物や銀化合物を用いた金属増感、硫黄化合物を用いた硫黄増感、あるいはこれらの併用が挙げられる。好ましくは、金化合物と硫黄化合物を併用した金−硫黄増感である。上記したレーザー光で露光する方法においては、450nm以下の発振波長の持つレーザー光、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードともいう)を用いることによって、明室下(明るいイエロー蛍光灯下)でも取り扱いが可能となる。
物理現像核層が設けられる基材上の任意の位置、たとえば接着層、中間層、物理現像核層あるいはハロゲン化銀乳剤層、保護層、または支持体を挟んで設けられる裏塗り層にハレーションないしイラジエーション防止用の染料もしくは顔料を含有させてもよい。
物理現像核層の上に直接にあるいは中間層を介してハロゲン化銀乳剤層が塗設された感光材料を用いて現像銀を生成する場合は、現像銀メッシュパターンの透過原稿と上記感光材料を密着して露光、あるいは、現像銀メッシュパターンのデジタル画像を各種レーザー光の出力機で上記感光材料に走査露光した後、可溶性銀錯塩形成剤と還元剤の存在下でアルカリ液中で処理することにより銀錯塩拡散転写現像(DTR現像)が起こり、未露光部のハロゲン化銀が溶解されて銀錯塩となり、物理現像核上で還元されて金属銀が析出して現像銀メッシュパターンの物理現像銀薄膜を得ることができる。露光された部分はハロゲン化銀乳剤層中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、ハロゲン化銀乳剤層及び中間層、あるいは必要に応じて設けられた保護層は水洗除去されて、現像銀メッシュパターンの物理現像銀薄膜が表面に露出する。
【0048】
DTR現像後、物理現像核層の上に設けられたハロゲン化銀乳剤層等の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。
一方、物理現像核層が塗布された基材とは別の基材上に設けたハロゲン化銀乳剤層から可溶性銀錯塩を供給する場合、前述と同様にハロゲン化銀乳剤層に露光を与えた後、物理現像核層が塗布された基材と、ハロゲン化銀乳剤層が塗布された別の感光材料とを、可溶性銀錯塩形成剤と還元剤の存在下でアルカリ液中で重ね合わせて密着し、アルカリ液中から取り出した後、数十秒〜数分間経過した後に、両者を剥がすことによって、物理現像核上に析出した現像銀メッシュパターンの物理現像銀薄膜が得られる。
【0049】
次に、銀錯塩拡散転写現像のために必要な可溶性銀錯塩形成剤、還元剤、及びアルカリ液について説明する。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物であり、これらの作用はアルカリ液中で行われる。
本発明に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、アルカノールアミン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、T.H.ジェームス編のザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス4版の474〜475項(1977年)に記載されている化合物等が挙げられる。
前記還元剤としては、写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0050】
上記した可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤は、物理現像核層と一緒に基材に塗布してもよいし、ハロゲン化銀乳剤層中に添加してもよいし、またはアルカリ液中に含有させてもよく、更に複数の位置に含有してもよいが、少なくともアルカリ液中に含有させるのが好ましい。
アルカリ液中への可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり、0.1〜5モルの範囲で用いるのが適当であり、還元剤は現像液1リットル当たり0.05〜1モルの範囲で用いるのが適当である。
アルカリ液のpHは10以上が好ましく、更に11〜14の範囲が好ましい。銀錯塩拡散転写現像を行うためのアルカリ液の適用は、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯流されたアルカリ液中に、物理現像核層及びハロゲン化銀乳剤層が設けられた基材を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えばハロゲン化銀乳剤層上にアルカリ液を1平方メートル当たり40〜120ml程度塗布するものである。
【0051】
透視性(目視されないこと)を確保するため、金属薄膜層からなる細線により細線メッシュパターンを構成する。細線メッシュパターンの金属薄膜層の線幅は、10〜80μmが好ましく、さらには15〜50μmであることがより好ましい。細線メッシュパターンの金属薄膜層の厚みは、所望とする特性により任意に変えることができるが、好ましくは0.05〜15μmの範囲であり、より好ましくは0.05〜10μmの範囲である。
前述したように、本発明の細線メッシュパターンの線幅を細くして10μm未満にすると、透視性(目視されないこと)は上がるが導電性(及び遮蔽する波長の電磁波の遮蔽性)は低下し、逆に線幅を大きくして80μmを超えると、透視性は低下するが導電性は高くなる。また、線幅を10μm未満の微細線にすると、金属層の細線パターンを写真製法で形成するための露光マスクの製造コストが著しく上昇するので好ましくない。
【0052】
本発明に係る透明基材上に形成された任意の細線パターンの物理現像による現像銀層は、膜厚みが極めて薄いが導電性が高いので、細線化することが可能であり電磁波シールド材の透視性を高くすることができる。
また、この物理現像による現像銀層自身は、現像処理後に得られた現像銀層を形成する金属銀粒子が極めて小さく、かつ、現像銀層中に存在する親水性バインダー量が極めて少ないことにより、現像銀層を形成する金属銀粒子が最密充填状態に近い状態で現像銀層が形成されて通電性を有しているため、銅やニッケルなどの金属による鍍金(メッキ)を施すことが可能であり、必要に応じて、現像銀層の上に金属メッキ層を積層することができる。
【0053】
(露光装置)
上記のハロゲン化銀乳剤層を露光する露光装置としては、枚葉式の露光マスク(フォトマスク)を用いる枚葉処理方式の露光装置と、連続したパターンが形成できる連続露光装置とがある。枚葉処理方式の露光装置は、所定のマスクパターンが形成された枚葉式の露光マスク(フォトマスク)を用いて、基材を間欠送りで露光装置に送り、装置内を真空排気して露光マスクと基材とを密着させて隙間を無くしてから、例えば紫外線で露光する。枚葉処理方式の露光装置では、真空排気、露光、大気開放を間欠的に行うので、連続的な生産ができず、処理速度は遅くなる。
これに対して、基材を連続的に露光できる連続露光装置を用いると、枚葉処理方式の露光装置に比較して処理速度が速く、連続的な生産が可能になるという長所がある。
連続露光装置の一例としては、写真製法における露光に用いられる光を透過する材質からなる円筒ドラムと、円筒ドラムの外周壁に設けられたメッシュパターンが形成された露光マスクフィルムと、円筒ドラムの内部に配設された露光用光源とを備え、円筒ドラムの内側の光源から出射した光によって円筒ドラムに巻き付けられた基材を露光する装置である。
【0054】
(蒸着による導電性薄膜の生成)
本発明で使用される金属または金属酸化物の蒸着層からなる導電性薄膜の細線メッシュパターンは、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して行なう、剥離(リフトオフ)法により形成した導電性薄膜、金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着により製膜された薄膜をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜のいずれかを用いることができる。
その中でも、簡便さの点から剥離(リフトオフ)法を用いて形成されるのが好ましい。剥離(リフトオフ)法では、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して、細線メッシュパターンの導電性薄膜が形成される。
【0055】
フォトレジストパターンを遮蔽マスクとして用いて行なう、剥離(リフトオフ)法による細線メッシュパターンの形成方法は、次による。
まず、基材上にレジストを塗布した後、熱処理(プリベーク)を行い、レジストから溶媒を除去する。次に、フォトマスクを用いてレジストに所望のパターンを露光した後、レジストパターンを現像して遮蔽マスクとなるレジストパターンを形成する。次に、基材とレジストパターンからなる遮蔽マスクの上に、全面に渡って蒸着膜を形成した後、レジスト剥離剤を用いて遮蔽マスクとその上に乗っている蒸着膜とを同時に除去し、基材の上に残された蒸着膜からなる細線メッシュパターンの導電性薄膜を得る。
【0056】
溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンを遮蔽マスクとして用いて行なう、剥離(リフトオフ)法による細線メッシュパターンの形成方法は、次による。
まず、基材上に溶剤溶解性の樹脂を主成分とする印刷材料で遮蔽マスクとなる部分を印刷する。次に、基材の上と印刷材料からなる遮蔽マスクの上に、全面に渡って蒸着膜を形成した後、溶剤を用いて遮蔽マスクとその上に乗っている蒸着膜とを同時に除去して、基材の上に残された蒸着膜からなる細線メッシュパターンの導電性薄膜を得る。
【0057】
(金属メッキ層)
細線メッシュパターンの導電性薄膜である現像銀層などの導電性薄膜の上に金属メッキ層を積層するときに用いるメッキ法は、パッチアンテナ素子のパターンのように、不連続のパターンが2次元的に配設された場合では、無電解メッキ法によりメッキ層を積層する。
また、本発明の電磁波吸収体を構成する部材である細線メッシュパターンからなる電磁波反射材のように、切れ目の無い連続したメッシュパターンの場合には、無電解メッキ法、電解メッキ法あるいは両者を組み合わせたメッキ法のいずれでも可能である。
本発明において、金属メッキ法は公知の方法で行うことができるが、例えば無電解メッキ法は、銅、ニッケル、銀、金、スズ、はんだ、あるいは銅/ニッケルの多層あるいは複合系などの従来公知の方法を使用でき、これらについては、「無電解めっき 基礎と応用;日刊工業新聞社、1994年5月30日初版」等の文献を参照することができる。
【0058】
メッキが容易で、かつメッキ層の導電性が優れ、さらに厚膜にメッキでき、低コストであるなどの理由により、メッキに用いる金属としては、銅(Cu)および/またはニッケル(Ni)が好ましい。金属メッキ層は、メッキを複数回行うことにより、同種の金属または異種の金属を複数層積層することも好ましい。例えば、現像銀層の上に第1のメッキ層、さらにその上に第2のメッキ層を積層する場合に、一方のメッキ層が無電解ニッケルメッキ層であり、他方のメッキ層が無電解銅メッキ層である組み合わせが好ましい。
メッキに使用するメッキ槽の型式は、竪型、横型のいずれであっても構わないが、所定のメッキ滞留時間を確保できるように長さを決定する。
【0059】
(金属箔のエッチングによる金属メッシュパターン)
本発明の周波数選択型の電磁波シールド材は、前述のとおり、導電性薄膜の細線メッシュパターン、または導電性薄膜の細線メッシュパターンの上にメッキ層を積層した金属メッシュパターンが用いられるが、図3(a)の透明基材2に金属箔を接着剤により貼り合せた後、公知技術であるフォトリソ法によりエッチングして形成した、金属メッシュパターンを使用することもできる。導電性の金属箔であれば、材質は特に制限されなくて、銅、アルミ、錫などの箔を使用することができる。その中でも、価格が安価であり、エッチング処理の腐食速度が速い点から、銅箔が好適に使用される。
【0060】
銅箔は、電解銅箔または圧延銅箔のいずれも用いることができる。本発明に使用できる、一般的な銅箔の厚みは6〜15μm程度である。厚みが6μmよりも薄い銅箔は、特殊な製品であって高価であることから、安価な電磁波シールド材の部材には、採用することが困難である。また、厚みが15μmを超える場合は、エッチングの処理費用および廃液の処理費用が嵩むことから好ましくない。
銅箔がエッチングされた箇所に露出される透明基材2の表面は、銅箔の表面が有する凸凹が接着剤層に転写されていて、接着剤層の凸凹表面が露出するため透過光が散乱されることから光線透過率が低下してしまう問題を有する。この問題を解決するには、金属メッシュの凸凹面を、透明な樹脂や粘着剤で埋め、加圧しながら高温に保持して行なう透明化処理を施す必要がある。
また、銅箔を用いた場合は、金属素材の光沢色である茶色を目立たなくするために、表面を黒化処理するのが好ましい。
【0061】
(黒化処理)
前記金属メッキ層の表面に黒化処理を施すことにより、反射率を低下させるための黒化層を形成してもよい。黒化層は、光を反射しにくい暗色の層であればよく、真黒だけでなく、例えば黒っぽい茶色や黒っぽい緑色等でもよい。黒化層の形成により、金属細線が一層目立ちにくくなり、例えば、窓ガラス等に電磁波遮蔽材積層体を貼り付けて用いる場合に透明基材を通して向こう側が見やすくなるため、好ましい。
黒化層は、黒色インクの塗布によるインキ処理、ルテニウムやニッケル、スズなどの表面が黒色を呈する金属のメッキによる黒化メッキ処理、金属細線の化成処理(酸化処理等)などにより形成することができる。このうち化成処理では、金属層の表面に金属酸化物の薄膜が形成されることにより、黒色を呈するようになる。
【0062】
上記の説明は、本発明に適用できるパッチアンテナ素子のパターンの作製方法として、導電性薄膜の細線メッシュパターン、または導電性薄膜の細線メッシュパターンの上にメッキ層を積層した金属メッシュパターンにより作製する方法を示した。
導電性薄膜の作製方法として、写真製法により生成された現像銀層からなる金属薄膜、金属粒子、カーボンナノ粒子もしくはカーボンファイバーの中から選択された1種以上を含有する導電性ペーストを印刷して形成した導電性薄膜、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して形成した導電性薄膜、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して行なう、剥離(リフトオフ)法により形成した導電性薄膜、金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着により製膜された薄膜をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、金属箔をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、などよる作製方法を示した。
【0063】
(電磁波吸収体の電磁波反射材)
上記の本発明のパッチアンテナ素子のパターンの作製方法は、そのまま、本発明の電磁波吸収体を構成する電磁波反射材の金属メッシュパターンの作製方法として用いることができる。すなわち、導電性の導電性薄膜の細線メッシュパターン、または導電性薄膜の細線メッシュパターンの上にメッキ層を積層した金属メッシュパターンにより、パッチアンテナ素子のパターン作製する方法は、電磁波反射材の切れ目の無い連続したメッシュパターンの作製方法に用いることができる。したがって、重複した説明を避けるため、電磁波反射材の切れ目の無い連続したメッシュパターンの作製方法を、改めての説明することは省略する。
上記方法によって得られる、本発明の電磁波吸収体を構成する切れ目の無い連続したメッシュパターンからなる電磁波反射材は、金属メッシュパターンが0.5〜15μmの厚み及び10〜80μmの線幅であるとき、全光線透過率50%以上、かつ表面抵抗率が10オーム/□以下という優れた透光性能と導電性能を持ち、30MHz〜1,000MHzのような広い周波数帯に亘って30dB以上の遮蔽効果を発揮することができる。
【0064】
(透明な誘電体層)
本発明の電磁波吸収体に使用される透明な誘電体層12を構成する透明材料としては、可視領域で透明であり、またフレキシブル性を有し、好ましくは耐熱性の良好な樹脂からなるプラスチックフィルムである。そのようなフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等からなる厚さが150〜500μmの単層または複合フィルムが挙げられる。このような厚み範囲であれば、可撓性を有する樹脂基材であることから好適に使用できる。
本発明に使用される透明な誘電体層12の厚みが500μmを越えると、透明な誘電体層12の腰が強すぎて、ロールtoロールによる生産方法を採用することができないため、安価に製造することができないという問題が発生するので好ましくない。
【0065】
(透明樹脂層)
本発明の電磁波吸収体において、透明樹脂層10,14は、透明基材2上に設けたパッチアンテナ素子3および透明基材16上に設けたメッシュパターン15による凹凸を平坦化するために設けられた透明な樹脂層である。
【0066】
(粘着剤層)
本発明の電磁波吸収体において、各粘着剤層11,13を構成する粘着剤としては、可視領域で透明であれば(すなわち、十分な透過率を有すれば)特に限定されず、硬化型樹脂でも良いし、熱可塑性樹脂でも良い。透明性の観点からは、アクリル系樹脂が好適に用いられる。
【0067】
(電磁波吸収体)
図5は、本発明の電磁波吸収体の斜視断面図である。透明基材16の片面にメッシュパターン15が形成された電磁波反射材17の上に、透明基材2の片面にパッチアンテナ素子3のパターンが2次元的に配設されてなる周波数選択型の電磁波シールド材1が、透明な誘電体層12を介して積層してなる電磁波吸収体20を構成している。
図6は、図5のC−C矢視断面図である。電磁波吸収体の製造方法としては、次のような工程を経て行うことができる。
(1)事前に、長さが1〜10000mである長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、所定周波数の電磁波を遮蔽するためのパッチアンテナ素子のパターンが2次元的に配設された周波数選択型の電磁波シールド材を用意する。
(2)事前に、長さが1〜10000mである長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、切れ目の無い連続したメッシュパターンが形成された電磁波反射材を用意する。
(3)前記の長尺の周波数選択型の電磁波シールド材と、長尺の電磁波反射材とを、透明な誘電体を介して、粘着剤を用いて貼り合わせて積層して、長尺の電磁波吸収体を作製する。
【0068】
長尺の周波数選択型の電磁波シールド材と、長尺の電磁波反射材とを、透明な誘電体を介して、粘着剤を用いて貼り合わせて積層して、得られた長尺の電磁波吸収体は、ロール状に巻いて電磁波シールド材のロール体が作製される。なお、電磁波シールド材は、ロール状に巻かないで、そのまま一定の長さで裁断して、シート状で供給してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、従来技術では対応できない、大型建築物の窓ガラスなどの広い面積を覆うための幅広なシートで(特に連続ロールシート状態で)供給される、安価に作製され、視覚的に違和感の無い透視性を有しているパッチアンテナ素子のパターンによる周波数選択型の電磁波シールド材、及び電磁波吸収体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の周波数選択型の電磁波シールド材の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1のA部の拡大図であって、(a)は、長尺の透明基材の長さ方向と平行なメッシュパターンの例であり、(b)は、長尺の透明基材の長さ方向と一定のバイアス角度を有するメッシュパターンの例を示す。
【図3】図2(a)のB−B矢視断面図であって、(a)は、導電性薄膜からなる細線を、(b)は、導電性薄膜の上にメッキ層を積層した細線を、それぞれ示す断面図である。
【図4】(a)〜(f)は、それぞれパッチアンテナ素子のパターンの例を示す部分拡大正面図である。
【図5】本発明の電磁波吸収体の一例を示す斜視断面図である。
【図6】図5のC−C矢視図であって、本発明の電磁波吸収体の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0071】
θ…バイアス角度、1…周波数選択型の電磁波シールド材、2…透明基材、3…パッチアンテナ素子、4…導電性薄膜、5…メッキ層、6…メッキ積層した細線、7…パッチアンテナ素子のパターンが連続する範囲、8…パッチアンテナ素子のパターンの切れ目の部分、9…メッシュパターンの縦横の線、10,14…透明樹脂層、11,13…粘着剤層、12…透明な誘電体層、15…メッシュパターン、16…透明基材、17…電磁波反射材、20…電磁波吸収体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さが1〜10000mである長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、所定周波数の電磁波を遮蔽するためのパッチアンテナ素子のパターンが2次元的に配設されてなり、前記パッチアンテナ素子のパターンは、線幅が10〜80μmの導電性薄膜の細線からなるメッシュパターンで形成されてなり、透視性を有することを特徴とする周波数選択型の電磁波シールド材。
【請求項2】
前記電磁波シールド材のメッシュパターンは、導電性薄膜の細線メッシュパターン、または導電性薄膜の細線メッシュパターンの上にメッキ層を積層した、メッキ積層の金属メッシュパターンからなり、前記電磁波シールド材のメッシュパターンの導電性薄膜は、写真製法により生成された現像銀層からなる金属薄膜、金属粒子、カーボンナノ粒子もしくはカーボンファイバーの中から選択された1種以上を含有する導電性ペーストを印刷して形成した導電性薄膜、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して形成した導電性薄膜、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して行なう、剥離(リフトオフ)法により形成した導電性薄膜、金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着により製膜された薄膜をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、金属箔をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の周波数選択型の電磁波シールド材。
【請求項3】
前記パッチアンテナ素子のパターン図形の形状は、図形の周辺長さを遮蔽しようとする所定周波数の波長λに等しくするものであり、1つ又は複数の共振周波数に対して吸収遮蔽できるように、1種類又は複数種類の形状からなるパッチアンテナ素子のパターンが2次元的に配列されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の周波数選択型の電磁波シールド材。
【請求項4】
長さが1〜10000mである長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、切れ目の無い連続したメッシュパターンが形成され、前記メッシュパターンの線幅が10〜80μmである導電性薄膜の細線からなり透視性を有する電磁波反射材と、請求項1〜3のいずれかに記載の周波数選択型の電磁波シールド材とが、透明な誘電体を介して積層されてなり、透視性を有することを特徴とする電磁波吸収体。
【請求項5】
前記電磁波反射材のメッシュパターンは、導電性薄膜の細線メッシュパターン、または導電性薄膜の細線メッシュパターンの上にメッキ層を積層した、メッキ積層の金属メッシュパターンからなり、前記電磁波反射材のメッシュパターンの導電性薄膜は、写真製法により生成された現像銀層からなる金属薄膜、金属粒子、カーボンナノ粒子もしくはカーボンファイバーの中から選択された1種以上を含有する導電性ペーストを印刷して形成した導電性薄膜、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して形成した導電性薄膜、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して行なう、剥離(リフトオフ)法により形成した導電性薄膜、金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着により製膜された薄膜をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、金属箔をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の電磁波吸収体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−3964(P2010−3964A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163277(P2008−163277)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】