周波数領域OCT
【課題】本発明の目的は、OCTの分野に関する、既知の機器及び方法と比較して、より高い測定速度及びより広い測定領域によって特徴付けられるデバイス及び方法を提供することである。
【解決手段】透明物体又は拡散物体の少なくとも第1の領域(MB1)からの幾何学量及び第1の領域(MB1)から離れた第2の領域(MB2)からの幾何学量を確定するデバイスは、物体アーム、基準アーム、検出器アーム、及び光を放出する光源(ALQ)を有するコヒーレンス断層撮影装置を備える。デバイスは、物体アーム及び/又は基準アームによって形成された、第1の光路長を有する第1の経路及び第2の光路長を有する第2の経路を有し、光源(ALQ)によって放出される光は、第1の経路及び第2の経路を通って伝播することができる。
【解決手段】透明物体又は拡散物体の少なくとも第1の領域(MB1)からの幾何学量及び第1の領域(MB1)から離れた第2の領域(MB2)からの幾何学量を確定するデバイスは、物体アーム、基準アーム、検出器アーム、及び光を放出する光源(ALQ)を有するコヒーレンス断層撮影装置を備える。デバイスは、物体アーム及び/又は基準アームによって形成された、第1の光路長を有する第1の経路及び第2の光路長を有する第2の経路を有し、光源(ALQ)によって放出される光は、第1の経路及び第2の経路を通って伝播することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明物体又は拡散物体の少なくとも第1の領域からの幾何学量及び第1の領域から離れた第2の領域からの幾何学量を確定するデバイス及び方法であって、物体アーム、基準アーム、検出器アーム、及び光を放出する光源を有するコヒーレンス断層撮影装置を包含する、デバイス及び方法に関する。
【0002】
本発明は、透明物体又は拡散物体において、互いに離れた少なくとも2つの領域からの幾何学量を確定する方法及びデバイスに関し、特に、層厚及び長さ並びに/又は表面曲率(トポグラフィ)を幾何学量として確定する方法及びデバイスに関する。幾何学量は、例えば、層厚、距離、長さ、及びトポグラフィを意味すると理解される。
【背景技術】
【0003】
OCTの基礎にある原理は干渉法に基づく。この方法は、干渉計(通常、マイケルソン干渉計)を用いて信号のランタイムを比較する。このプロセスにおいて、既知の光路長を有する1つのアームが、測定アーム用の基準アームとして用いられる。
【0004】
両方のアームからの信号干渉(光学的相互相関)は、或るパターンをもたらし、このパターンから、深度プロファイル(振幅モードスキャン)内で相対光路長を読み出すことが可能である。1次元走査法では、ビームは、その後、1方向又は2方向に横方向に誘導され、それにより、平面トモグラム(明度モードスキャン)又は3次元トポグラフィ(cモードスキャン)を記録することが可能である。
【0005】
OCTは、特に眼科学で非常に普及しており、これは、特に、深度分解能が横方向分解能から分離されること、及び、OCTが非接触インビボ測定を可能にすることにその由来を辿ることができる。感光体の場合、例えば眼球の測定の場合には、測定について必要とされる電力が低いことによる、更なる利点が明らかになる。
【0006】
幾何学量を確定する既知のデバイスは、比較的低い測定速度及び信号対雑音比を有する点で不利である。さらに、設計が、比較的複雑であり、したがって、費用がかかる。最後に、測定領域が不十分であることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、コヒーレンス断層撮影装置によって幾何学量を確定するための、冒頭で述べた技術分野に属するデバイスを開発することであり、そのデバイスは、既知の機器と比較して、より高い測定速度及びより広い測定領域によって特徴付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的に対する解決策は、請求項1の特徴によって規定される。本発明によれば、デバイスは、物体アーム及び/又は基準アームによって形成される、第1の光路長を有する第1の経路及び第2の光路長を有する第2の経路を有し、光源によって放出される光が、第1の経路及び第2の経路を通って伝播することができる。
【0009】
波長可変レーザー線のコヒーレンス長が物体の測定深度に相当することは事実である。波長可変光源のコヒーレンス長が制限されているため、測定深度も制限される。最大でも約34mmである人間の軸長(human axis length)は、現在市販されているほとんどの波長可変光源のコヒーレンス長よりも長い。こうした理由で、34mmの軸長は、追加的な手段を用いることなく、今日入手可能なほとんどの波長可変光源によって測定することができない。本発明によれば、最大でも約34mmの軸長の測定を可能にする手段がここで提案される。正確に言えば、この手段は、互いに離れ、かつ、上述した第1の経路及び第2の経路にそれぞれ対応する2つの測定領域(深度スキャン領域)に測定領域を細分することである。互いに離れた3つ以上の測定領域を設けることができることは言うまでもない。互いに離れた2つの領域は、以下の本文では前測定領域及び後測定領域と呼ばれる。
【0010】
第1の光路長を有する第1の経路及び第2の光路長を有する第2の経路は、さまざまな方法で得ることができる。そのため、例えば、変位可能ミラーを、正確に1つの光学アーム(基準アーム又は物体アーム)に設けることができる。こうしてミラーを変位させることによって、第1の経路長から第2の経路長へ切換えを行うことが可能になる。実施形態に応じて、ミラーが3つ以上の位置を採用する可能性もあるため、原理上、複数の光路長を設定することも可能とすることができる。より詳細には、連続的な設定オプションの場合、任意の数の光路長を設定することも可能とすることができる。更なる実施形態では、物体アーム又は基準アームは、内又は外に旋回することができるミラーを備えることもでき、その結果として、2つの経路長を設定することができる。この点に関して、当業者ならば、更なるオプションも理解している。
【0011】
さらに、2つの光路長を、それら固有の光学アームによってそれぞれ別々に与えることもできる。
【0012】
第1のアームから第2のアームに光を偏向させるために、好ましくは、第1の位置において、第1のアームを通して光ビームを伝導することができ、第2の位置において、第2のアームを通して光ビームを伝導することができるスキャナーミラーが設けられる。さらに、光は、スキャナーミラー、より詳細にはガルバノメーターミラー、光ファイバースイッチ、又は液晶によって一方のアームから他方のアームに送ることができる。分散を補償するために、基準アーム内にガラス基板を設けることができる。これによって、網膜からの干渉信号を増加させることができる。いくつかの変形例では、分散補償板を省くこともできる。
【0013】
デバイスは、好ましくは、物体アームに焦点スイッチを備える。このスイッチは、両方の領域にフォーカスさせるために用いることができる。光が2つのアームを連続して通過する場合、焦点は、好ましくは、第1の光路長を有する第1の経路から第2の光路長を有する第2の経路へのスイッチと同期して切り換えられる。焦点スイッチは、内に旋回することができる光学要素として組み込むこともできる。当業者ならば、この点に関して更なるオプション、例えば向きに応じて異なる焦点距離を有するレンズも既知である。
【0014】
デバイスは、波長選択性ビームスプリッターを介して可視光を供給されることができるカメラを更に有することができる。これの利点は、OCT測定に必要とされる波長(例えば、赤外線)が減衰しないか又は僅かにしか減衰しないことである。このカメラは、好ましくは、測定される物体の領域に設置される。結果として、物体、より詳細には眼球の前側を記録してスクリーン上に表示することができる。ユーザーは、そのため、例えばクロススライドによって測定機器を位置決めすることができる。
【0015】
デバイスは、或るパターンを物体上に投影するための光学要素を更に備えることができる。この光学要素は、例えば、円錐又は半球として組み込まれることができ、また、パターンは、カメラによって記録することができる環状パターンとして提供することができる。結果として、例えば、眼球上の涙液膜の表面の形状を計算することが可能であり、それにより、確定されたこのデータを用いて、OCT測定の測定精度が最適化される。
【0016】
同じ波長を有する光が、通常、前領域及び後領域に用いられる。いくつかの変形例では、異なる波長を有する光を前領域及び後領域に用いることができる。そのため、電力を、物体、より詳細には眼球の領域の感度に応じて調整することができ、その結果として、感度を増加させることが可能である。一方、この実施形態は、デバイスが、より高価になり、その設計がより複雑になるため不利となる場合がある。このため、デバイスは、波長選択性ビームスプリッター、及び必要な場合には複数の光源を備えることができる。
【0017】
物体アーム、基準アーム、検出器アーム、及び光を放出する光源を備えるコヒーレンス断層撮影装置は、透明物体又は拡散物体の少なくとも第1の領域からの幾何学量及び第1の領域から離れた第2の領域からの幾何学量を確定する方法において用いられる。第1の領域の幾何学量を確定するために、光源からの光は、物体アーム及び/又は基準アームにおいて第1の光路長を有する第1の経路にわたって誘導される。第2の領域の幾何学量を確定するために、光源からの光は、物体アーム及び/又は基準アームにおいて第2の光路長を有する第2の経路にわたって誘導される。
【0018】
コヒーレンス断層撮影装置は、好ましくは、周波数領域OCTとして、より詳細にはSSOCT(波長掃引型(swept source)OCT)として、又はスペクトルOCTとして実施される。
【0019】
そのため、好ましくは、例えばマイケルソン干渉計の幾何学的設計において、周波数領域における光学コヒーレンス断層撮影装置が用いられる。この干渉法は、周波数領域OCTと呼ばれる(OCTはoptical coherence tomograph(光学コヒーレンス断層撮影装置)の頭文字である)。比較的長い間存在した時間領域OCTと対照的に、周波数領域OCTは、可動基準アームなしで深度測定が可能であり、測定物体によって反射される信号の深度割当て(depth assignment)が、ビート周波数(beat frequency)によってもたらされるという特性を有する。
【0020】
周波数領域OCTの2つの変形例が存在する。
1.一方の変形例は、その波長を周期的に変更する波長可変光源を用いることからなる(波長掃引型OCT、SSOCT、又は波長同調型(wavelength-tuning)OCT)。波長可変光源は、特定の時間周期で、同調範囲を通じて往復プッシュスルーされる狭スペクトル線(レーザー線)を放出する。そのプロセスでは、測定物体の深度における測定領域は、波長可変レーザー線の線幅に基づいて与えられる。測定物体を通じた測定の反復レートは、同調期間に基づいて与えられる。基準アーム及び物体アームから反射されるレーザー線の干渉によって生成される時間的なビート信号を、フォトダイオードを用いて同調期間あたり1回検出することができる。
【0021】
2.他方の方法は、スペクトルOCTと呼ばれ、該スペクトルOCTでは、時不変スペクトルを有する光源が用いられる。波長依存方式でスペクトルビート信号を記録するために、分光計が検出に必要とされる。そのプロセスでは、深度における測定領域は、分光計の分解能によって与えられる。測定物体を通じた測定の反復レートは、分光計で用いられる線検出器の読出し速度に基づいて与えられる。
【0022】
測定物体及び基準アームから後方散乱される光は、これらの周波数領域法の両方において深度に比例する周波数を有するビート信号を生成するため、散乱振幅を、フーリエ変換によって任意の深度で計算することができる。周波数領域OCTは、時間領域OCTよりも高い測定速度及び良好な信号対雑音比を可能にする。しかし、周波数領域OCTの欠点は、信号振幅が測定深度に伴って減少することである。
【0023】
物体アーム内に弱く反射する層だけがある場合でも、明瞭な干渉信号を得るために、測定放射は、好ましくは、前測定領域及び後測定領域において時間的に連続してフォーカスされる。前測定領域から後測定領域へ焦点をシフトさせることは、例えば2つの基準アームが利用される場合には、測定に用いられる基準アームの交換と同期して、又は、1つの基準アームだけが利用される場合には、基準アーム内の光路長におけるジャンプと同期して生じる。当業者ならば、更なるオプションも理解している。
【0024】
幾何学量は、好ましくは、物体の層厚、長さ、表面曲率、及び/又はトポグラフィである。デバイスは、幾何学量として層厚、長さ、及び/又は表面曲率(トポグラフィ)を確定するのに使われる。幾何学量は、例えば層厚、距離、長さ、及びトポグラフィを意味すると理解される。そのため、原理上、幾何学量は、好ましくは3次元、例えばデカルト座標系の点又はベクトルとすることができる。点又はベクトルは、より高い次元を有することもでき、ベクトルの1つの成分は、例えば波長、偏光等とすることができる。幾何学量は、物体の数多くの点、ベクトル、層厚、長さ、表面曲率、及び/又はトポグラフィを含むことができることも言うまでもないことである。当業者ならば、このデバイスによって確定することができる更なる幾何学量も理解している。
【0025】
物体アームは、好ましくは焦点スイッチを備える。デバイスが2つの物体アームを備え、光がこれらの物体アーム内を交互に伝播する場合、焦点は、適したレンズ選択によって得ることができる。しかし、2つの異なる光路長が1つの物体アームにおいて得られるべきである場合、焦点スイッチは、液体レンズ又は液晶として組み込まれることができる。
【0026】
いくつかの変形では、焦点スイッチは、特に焦点の変化が必要とされない物体が測定される場合には省くことができる。
【0027】
第1の領域は、好ましくは、眼球前側領域、より詳細には角膜の前側であり、第2の領域は、好ましくは、眼球後側領域、より詳細には網膜である。
【0028】
しかし、眼球でない他の物体(皮膚又は一般的な反射体)、又は眼球の他の領域、より詳細には例えば一般的に眼球の硝子体液等も検査することができることが当業者には明らかである。
【0029】
以下の節では、異なる深度スキャン領域を生成することができる方法を述べるために、5つのタイプ(第1のタイプから第5のタイプ)が用いられる。
【0030】
第1のタイプ
第1の光路長を有する第1の経路は、好ましくは第1の物体アームによって与えられ、第2の光路長を有する第2の経路は、好ましくは第2の物体アームによって与えられる。ここで、本実施形態のデバイスは、より詳細には正確に1つの基準アームを備える。
【0031】
デバイスは、3つ以上、例えば3つの物体アームを備えることもできることが当業者に明らかである。
【0032】
対応する方法では、光は、好ましくは、第1の光路長を有する第1の経路を備える第1の物体アーム、及び第2の光路長を有する第2の経路を備える第2の物体アームに連続して誘導される。例として、光を、2つのアームに次々に、すなわち交互に伝導することができる。
【0033】
そのため、光源からの光は、異なる長さを有する2つの物体アームを交互に伝播し、好ましくは、1つの基準アームが用いられる。2つの物体アームの光路長の差は、互いに離れた2つの領域間の光学距離に対応する。
【0034】
光学アームは、偏光コントローラーを有することができ、該偏光コントローラーによって、基準アームからの光の偏光を、物体アーム内の光の偏光に合わせることができる。
【0035】
基準アーム及び物体アームは、回転軸、半円ガラス板、半円吸収体、及び半円穴からなる回転可能要素を更に備えることができる。回転可能要素は、半回転中のそれぞれの場合に、回転可能要素の吸収材料によってそれぞれの光ビームを吸収することにり、又は、上記光ビームを回転可能要素内の穴を通して透過させることによって、第1の光学アーム及び第2の光学アームを交互に作動させることができる。
【0036】
焦点は、好ましくは、測定距離に同調して変位する。物体アームは、物体アーム内の光学系の屈折率及び物体アームの長さの点で異なる。Xスキャナー及びYスキャナーは、好ましくは、物体アームによって共用され、その結果として、単純な設計を有する効率的でかつ費用効果的なデバイスが得られる。Xスキャナー及びYスキャナーは、2つの別個のスキャナーによって実装することができるが、単一スキャナーによって実装することもできる。
【0037】
第2のタイプ
更なる好ましい実施形態では、第1の光路長は、第1の基準アームによって与えられ、第2の光路長は、第2の基準アームによって与えられる。
【0038】
対応する方法では、光は、好ましくは、第1の光路長を有する第1の経路を備える第1の基準アーム、及び第2の光路長を有する第2の経路を備える第2の基準アームに連続して誘導され、再度、光を2つの基準アームに例えば交互に伝導することができる。
【0039】
そのため、光源からの光は、異なる長さを有する2つの基準アーム内を交互に伝播し、好ましくは、1つの物体アームが用いられる。2つの基準アームの光路長の差は、互いに離れた2つの領域間の光学距離に対応する。
【0040】
第3のタイプ
更なる好ましい実施形態では、第1の光路長は第1の基準アームによって与えられ、第2の光路長は第1の物体アームによって与えられ、第3の光路長は第2の基準アームによって与えられ、第4の光路長は第2の物体アームによって与えられる。この場合、それぞれ1つの基準アーム及び1つの物体アームが、好ましくは対として用いられる。
【0041】
対応する方法では、光は、好ましくは、第1の光路長を有する第1の経路を備える第1の基準アーム、及び第2の光路長を有する第2の経路を備える第1の物体アームに誘導され、その後、第3の光路長を有する第3の経路を備える第2の基準アーム、及び第4の光路長を有する第4の経路を備える第2の物体アームに誘導される。したがって、第1の基準アーム及び第1の物体アームは、光が連続して誘導される対を形成する。その後、光を第2の対の光学アーム、すなわち第2の物体アーム及び第2の基準アームに誘導することができる。
【0042】
好ましい実施形態では、回転可能ミラーは、このミラーを用いて基準ビーム及び物体ビームに影響を及ぼすことによって、距離スイッチと焦点スイッチの両方として働くことができる。これは、デバイスの特に単純でかつコンパクトな設計をもたらす。
【0043】
第4のタイプ
デバイスは、好ましくは、内又は外に旋回することができる光学要素を有する物体アーム又は基準アームを備え、第1の光路長は、光学要素が内に旋回されると与えられ、第2の光路長は、光学要素が外に旋回されると与えられる。この場合、焦点スイッチは、例えば、液体レンズ又は液晶として組み込まれることができる。
【0044】
対応する方法では、好ましくは、光学要素は、物体アーム又は基準アームにおいて内に旋回されたり、外に旋回されたりする。これにより、第1の光路長を有する第1の経路は、光学要素が内に旋回されると設定され、第2の光路長を有する第2の経路は、光学要素が外に旋回されると設定され、光は、第1の経路及び第2の経路に連続して、より詳細には交互に誘導される。光学要素は、例えばミラーとして組み込まれることができる。
【0045】
そのため、光源からの光は、2つの異なる経路長を有する単一アーム(基準アーム又は物体アーム)に、時間的に連続して伝導される。アーム長の光学変化は、互いに離れた2つの領域間の光学距離に対応する。
【0046】
ここで、光学要素は、プリズム又はガラス板から形成されることができ、それによって、焦点及び測定領域を、前眼部及び後眼部間で同期して前後に切り換えることができる。
【0047】
この実施形態では、基準アーム及び物体アームは、さらに、回転軸、半円ガラス板、半円吸収体、及び半円穴からなる回転可能要素を備えることができる。回転可能要素は、半回転中のそれぞれの場合に、回転可能要素の吸収材料によってそれぞれの光ビームを吸収することにより、又は、上記光ビームを回転可能要素内の穴を通して透過させることによって、第1の光学アーム及び第2の光学アームを交互に作動させることができる。さらに、回転可能要素は、半回転中に物体アーム内でビーム経路にガラス板を挿入することができる。
【0048】
第5のタイプ
デバイスは、好ましくは、第1の光路長を有する第1のアーム及び第2の光路長を有する第2のアームを有し、第1及び第2のアームは、物体アーム又は基準アームとしてそれぞれ組み込まれ、一方のアームは、光の特性、より詳細には波長又は偏光を選択する光学変換要素を備え、検出器アームは、光学変換要素に対応する光学分離装置を備える。
【0049】
対応する方法では、光は、好ましくは、異なる経路長を有する、2つのアーム、より詳細には、物体アーム及び基準アームに同時に伝導され、第1のアームにおける光の1つの光学特性、より詳細には偏光又は波長は、第2のアームにおける同じ光学特性と異なり、光は、上記光学特性に基づいて光学分離装置によって検出器アーム内で分離される。
【0050】
そのため、光源からの光は、異なる長さの2つのアームに同時に伝導され、一方のアームの光は、特定の特性の点で(より詳細には、偏光又は波長において)他のアームの光と異なる。この場合、適した分離装置は、異なる特性を有する光が、基準アーム又は物体アームで、異なる長さを有する経路を通過することを可能にする。さらに、検出アームの適した分離装置は、2つの干渉が異なる検出器に送られることを可能にする。
【0051】
偏光を制御することができるように、偏光ビームスプリッターキューブをビーム経路内に設けることができる。
【0052】
本発明の更なる有利な実施形態及び特徴の組合せは、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲の全体から明らかになる。
【0053】
例示的な実施形態を説明するために図面が用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アームを有する第2のタイプであるデバイスの第1の実施形態変形例(embodiment variant)を示す図である。
【図2】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アームを有する第2のタイプであるデバイスの第2の実施形態変形例を示す図である。
【図3】幾何学量を確定するデバイスであって、時間的に連続して異なる経路長を有する単一基準アームを有する、第4のタイプであるデバイスの第3の実施形態変形例を示す図である。
【図4】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アームを有する第2のタイプであり、スペクトルOCTに基づくデバイスの第4の実施形態変形例を示す図である。
【図5】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アームを有する第2のタイプであり、SSOCTに基づくデバイスの第5の実施形態変形例を示す図である。
【図6】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アーム及び3つの液体レンズを有する第2のタイプであるデバイスの第6の実施形態変形例を示す図である。
【図7】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アーム及び2つの液晶を有する第2のタイプであるデバイスの第7の実施形態変形例を示す図である。
【図8a】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アーム及びミラースイッチを有する第1のタイプであるデバイスの第8の実施形態変形例を示す図である。
【図8b】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アーム及びミラースイッチを有する第1のタイプであるデバイスの第8の実施形態変形例を示す図である。
【図9a】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第9の実施形態変形例を示す図である。
【図9b】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第9の実施形態変形例を示す図である。
【図10】幾何学量を確定するデバイスであって、第5のタイプであり、光が2つのアームにおいて同時に伝導され、2つのアームの光が偏光の点で異なるデバイスの第10の実施形態変形例を示す図である。
【図11a】幾何学量を確定するデバイスであって、物体アーム及び基準アームの2つの対を有する第3のタイプであるデバイスの第11の実施形態変形例を示す図である。
【図11b】幾何学量を確定するデバイスであって、物体アーム及び基準アームの2つの対を有する第3のタイプであるデバイスの第11の実施形態変形例を示す図である。
【図12a】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アームを有する第2のタイプであるデバイスの第12の実施形態変形例を示す図である。
【図12b】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アームを有する第2のタイプであるデバイスの第12の実施形態変形例を示す図である。
【図13a】幾何学量を確定するデバイスであって、時間的に連続して異なる経路長を有する単一基準アームを有する、第4のタイプであるデバイスの第13の実施形態変形例を示す図である。
【図13b】幾何学量を確定するデバイスであって、時間的に連続して異なる経路長を有する単一基準アームを有する、第4のタイプであるデバイスの第13の実施形態変形例を示す図である。
【図14】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アームを有する第2のタイプであるデバイスの第14の実施形態変形例を示す図である。
【図15】幾何学量を確定するデバイスであって、第5のタイプであり、光が2つのアームにおいて同時に伝導され、2つのアームの光が波長の点で異なるデバイスの第15の実施形態変形例を示す図である。
【図16】幾何学量を確定するデバイスであって、第5のタイプであり、光が2つのアームにおいて同時に伝導され、2つのアームの光が波長の点で異なるデバイスの第16の実施形態変形例を示す図である。
【図17a】可変焦点距離を有するレンズを示す図である。
【図17b】可変焦点距離を有するレンズを示す図である。
【図18a】切換え可能なビーム制限によって達成された2つの焦点の略図である。
【図18b】切換え可能なビーム制限によって達成された2つの焦点の略図である。
【図19a】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第17の実施形態変形例を示す図である。
【図19b】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第17の実施形態変形例を示す図である。
【図19c】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第17の実施形態変形例を示す図である。
【図20】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第18の実施形態変形例を示す図である。
【図21a】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第19の実施形態変形例を示す図である。
【図21b】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第19の実施形態変形例を示す図である。
【図22a】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第20の実施形態変形例を示す図である。
【図22b】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第20の実施形態変形例を示す図である。
【図22c】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第20の実施形態変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
原則として、図の同一の部分は同じ参照符号を与えられる。
【0056】
上述したように、2つの深度スキャン領域は、原理的には、5つの異なる方法で生成することができる。これらの5つの異なる方法は、第1によりよく概観するために、機能的原理に基づいて、図を参照して簡潔に説明される。
【0057】
1.光源からの光は、1つの基準アームが用いられて、異なる長さの2つの物体アームに交互に伝播する(図8a、図8b、図9a、図9b、図19a、図19b、図19c、図20、図21a、図21b、図22a、図22b、図22cを参照)。2つの物体アームの光路長の差は、互いに離れた2つの領域間の光学距離に対応する。
【0058】
2.光源からの光は、1つの物体アームが用いられて、異なる長さの2つの基準アームに交互に伝播する(図1、図2、図4、図5、図6、図7、図12a、図12b、図14を参照)。2つの基準アームの光路長の差は、互いに離れた2つの領域間の光学距離に対応する。
【0059】
3.光源からの光は、それぞれ1つの基準アーム及び1つの物体アームが常に対として用いられる、2つの基準アーム及び2つの物体アームに交互に伝播する(図11a、図11bを参照)。
【0060】
4.光源からの光は、時間的に連続して2つの異なる経路長を有する単一アームに伝導される(図3、図13a、図13bを参照)。図3、図13a、及び図13bは、時間的に連続して異なる長さの経路長を有する基準アームを示す。時間的に連続して異なる長さの経路長を有する物体アームも実現可能である。アーム長の光学変化は、互いに離れた2つの領域間の光学距離に対応する。
【0061】
5.光源からの光は、異なる長さの2つのアームに同時に伝導され(図9を参照)、一方のアームの光は、特定の特性において、例えば、偏光において(図10を参照)又は波長において(図15、図16を参照)他方のアームの光と異なる。この場合、適した分離装置は、異なる特性を有する光が、基準アーム又は物体アームにおいて異なる長さを有する経路を通過することを、確保しなければならない。さらに、検出アームの適した分離装置を用いて、2つの干渉が異なる検出器に送られることを確保しなければならない。
【0062】
物体内での反射の光学距離が基準ミラーの光学距離からzの値だけ離れているか又は−zの値だけ離れているかの判断は、純粋に数学的な理由により、実施される測定信号のフーリエ変換に基づいて行うことができず、それゆえ、測定信号は、基準ミラーの点の周囲にミラー対称に配置される。そのため、フーリエ変換後に、正しい位置zに信号の半分(いわゆる「実信号」)が現れ、間違った位置−zに別の半分の信号が現れる。間違った位置−zに現れる信号(いわゆる「ミラー信号」)は、基準アームの光学距離が、最も近い物体構造の光学距離よりも短い場合、又は、基準アームの光学距離が、最も遠い物体構造の光学距離よりも長い場合にしか、識別及び除外することができない。そのため、例えば眼球全体等の物体を測定するとき、基準ミラーについて2つの最適点が存在する。例えば、一方の点は、正確に角膜の前側までの光学距離に対応し、他方の点は、網膜までの光学距離に対応する。全ての軸長における基準ミラーの光学距離は、少なくとも網膜の光学距離に対応するように、測定される最も長い眼球(34mmの)の網膜の光学距離になければならない。
【0063】
図1では、これらの事実は、2つの縦の線を用いて可視化される。基準ミラー平面1の線RSE1は、短い基準アームの光学距離が位置する物体アームの位置を示す。基準ミラー平面2の線RSE2は、長い基準アームの光学距離が位置する物体アームの位置を示す。MB1は前眼部に存在する。MB1は、短い基準アームによって提供される測定領域(スキャン深度)である。前角膜表面と後水晶体表面との間に延在する全ての物体及び眼球構造は、MB1において測定され、ほとんどの場合、これは、前角膜表面、後角膜表面、前水晶体表面、及び後水晶体表面である。しかし、それは、角膜内のフラップカット(flap-cut)とすることもできるし、強膜又は虹彩とすることもできる。MB2は、後眼部に存在する。MB2は、長い基準アームによって提供される測定領域(スキャン深度)である。後水晶体表面の背後に位置する全ての物体及び眼球組織は、MB2で測定され、ほとんどの場合、これは網膜である。しかし、硝子体組織(vitreous-humor structure)の(異常な)変化も、後測定領域で測定することができる。
【0064】
そのため、上述した検討は、基準ミラー平面が、例えば角膜内に存在してはならないことを示す。その理由は、基準ミラー平面が角膜内に存在する場合、角膜の前側からの実信号が存在するか、角膜の後側からのミラー信号が存在するか、角膜の後側からの実信号が存在するか、又は角膜の前側からのミラー信号が存在するかを、確実に判定することができないからである。同じ理由で、基準ミラー平面は、眼房水内にも、水晶体内にも、硝子体液内にも位置することができない。
【0065】
測定の感度が、基準ミラー平面からの信号の距離の増加に伴って減少するため、また、測定される軸長が、通常14mm〜34mmの広い範囲をカバーするため、測定される最も長い眼球の位置における基準ミラーが、網膜信号が最大になるまで水晶体(natural lens)の方向に段階的に変位される場合に、網膜信号の感度が著しく増加する可能性がある。こうした理由で、網膜の測定を担当する基準アームは、基準ミラーを入射基準ビームの方向に変位させる変位メカニズムを有する。
【0066】
ミラー項(mirror terms)の約1000倍までの減衰を可能にする数学的アルゴリズムが存在する。その結果として、測定物体を3つ以上の測定領域に細分することが可能になり、同時に、ミラー項の振幅が小さくなる結果として、測定を誤るリスクが大幅に低減される。例として、4つの測定領域が用いられる場合、4つの基準アームが連続して作動されなければならない。これは、波長可変光源のコヒーレンスに関する要件を軽減する。しかし、これらの数学的アルゴリズムは、例えば眼球等の高速移動物体の場合に、常に実行可能であるわけではない。
【0067】
ここで、個々の図が、以下の節で詳細に述べられる。
【0068】
実施形態変形例1
本発明の第1の実施形態変形例が、図1に見られる。光ビームは破線で示され、電線路は実線で示され、光ファイバーは太い実線で示される。波長可変光源ALQは、狭スペクトル線(レーザー線)を放出する。光は、2×2光ファイバーカプラーFK1並びに2つのビームスプリッターST1及びST2を介して基準アーム及び物体アームに送られる。物体アームでは、波長可変光源からの光は、偏光コントローラーPK1を介し、焦点スイッチFS、スキャナーS、走査光学系SO、及び第3のビームスプリッターST3を介して測定物体、この場合、人間の眼球に達する。ビームスプリッターST3は、波長選択性ビームスプリッターであり、可視光をカメラKに反射し、通常、OCT光源に用いられる赤外光を透過させる。スキャナーは、角膜にわたって1つ又は2つの横方向寸法(lateral dimension)に光ビームを偏向し、光ビームは角膜から屈折して眼球の中に入る。眼球の屈折率が変化するたびに、光の一部が反射される。反射光は、同じ経路に沿ってビームスプリッターST2に戻る。カメラKは、前眼部の2次元画像を記録し、その画像が、ユーザーのためにモニターM上に提供される。モニター上に表示されるカメラ画像は、測定が眼球の中心で行われるように、ユーザーが、クロススライドKSを用いて患者の眼球の前に測定機器を位置決めすることを可能にする。
【0069】
基準アームでは、光は、スキャナーミラーSS及び収束光学系O3を介して、後面に基準ミラーRS2をコーティングされたガラス基板DKに達する。ガラス基板DKは、測定物体の網膜で反射した信号用の分散補償器として役立つ。眼球の中で生成される分散は、基準アーム内に挿入される、適したガラス基板DKによって部分的に補償されることができ、これが、網膜からの干渉信号を増加させる。この基準ミラーRS2によって反射される光は、同じ経路に沿ってビームスプリッターST2に戻る。基準ミラーRS2の上の矢印は、長い基準アームの初期位置が、眼球の測定される最も長い軸長のすぐ後ろに位置する基準ミラー平面RSE2に対応することを示す。基準ミラーRS2を進めることによって、ビームスプリッターST2から基準ミラーRS2まで計測される長い基準アームの光学経路が、ビームスプリッターST2から網膜まで計測される物体アームの光学経路に正確に対応するときに、網膜からの信号が最大になる。
【0070】
図1に示されるスキャナーミラーSSの位置では、光は、長い基準アームにおいて伝導され、後眼部(硝子体液及び網膜)の測定をもたらす。スキャナーミラーSSは、交互に2つの位置を採用する。一方の位置では、基準ビームは基準ミラーRS2に対して垂直に偏向され(図1を参照)、他の位置では、基準ビームは基準ミラーRS1に対して垂直に偏向される。
【0071】
基準ビームが、光学系O2を介して基準ミラーRS1上にフォーカスされる場合、眼球は、角膜の前側から水晶体の後側まで測定される。干渉信号の振幅は、偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3を用いて最大にすることができ、偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、前後に並べて設置されたコンポーネント、すなわち、4分の1波長板、半波長板、及び4分の1波長板からなる。
【0072】
ビームスプリッターST2では、測定物体によって反射された光と基準ミラーによって反射された光との間の干渉が存在する。ビームスプリッターST2において、光は、フォトダイオード2 PD2に入る1つの部分と、ビームスプリッターST1を介してフォトダイオード1 PD1に達する別の部分に分割される。フォトダイオード1 PD1及びフォトダイオード2 PD2からの干渉信号は、180°の位相差を有する。この位相差は、いわゆる平衡検出BD1の2つの逆方向切換え式フォトダイオード1 PD1及び2 PD2と結合して、干渉信号に悪い影響を及ぼすことなく、非コヒーレントに(incoherently)重なる光学信号のDC成分の抑制を可能にする。
【0073】
焦点スイッチFSは、眼球内の2つ以上の軸位置間で測定ビームの焦点を切り換える。好ましくは、それぞれ1つの焦点位置が、前測定領域MB1及び後測定領域MB2に採用される。焦点位置の切換えは、スキャナーミラーSSの切換えに同調されなければならない。焦点スイッチの考えられる実施形態は、表面の形状を変化させる液体レンズか、屈折率を変化させる液晶か、又は、例えば圧電アクチュエータによって、レンズの位置が光の伝播方向に調整されるレンズ、又は物体ビームのビーム経路に出入りするように交互に旋回する光学コンポーネントである。焦点距離を変化させる更なるオプションは、光ビームが位置1にあるレンズを通過するときに焦点距離1(図17aを参照)を有するレンズであって、該レンズが例えば90°だけ回転して位置2になるときに、焦点距離1と異なる、同じ光ビームについての(図17bを参照)焦点距離2を有するレンズを用いることにある。この場合、レンズの回転軸は、レンズによってフォーカスされる光の伝播方向に垂直である。ビーム変調器は、焦点スイッチの更なる実施形態変形例に適しており、該ビーム変調器は、光ビームのビーム断面を、内側中央ディスク領域又は外側環状領域に交互に制限する。中央又は環状ビーム束は、中央領域及び外側環状領域において2つの異なる焦点距離を有するレンズに入射される。その結果として、中央及び環状ビーム束は、異なる焦点距離を有する2つの異なるレンズ領域によって屈折される。結果として、光の伝播方向に異なるように配置された2つの焦点が存在する(図18a、図18bを参照)。例として、変調器は、例えば液晶とすることができ、該液晶は、特定の時間に、光を透過するように外側環状領域を設定し、かつ、光を吸収するように中央ディスクを設定し、その後に、光を吸収するように外側環状領域を設定し、かつ、光を透過するように中央ディスクを設定する。
【0074】
時間の関数としての光の波長は、例えばマッハツェンダー干渉計において測定され、また、電子信号(いわゆるkクロック)として信号処理ステージSVに入力されることができる。マッハツェンダー干渉計は、2つの2×2光ファイバーカプラーFK4及びFK5からなる。マッハツェンダー干渉計からの信号は、逆方向切換え式フォトダイオードPD3及びPD4並びに平衡検出BD2においてそのDC成分を除去される。平衡検出BD2の出力はkクロックである。2つのフォトダイオードPD3及びPD4に送られる干渉信号の振幅は、偏光コントローラーPK4を用いて最大にされる。
【0075】
平衡検出BD1後に、信号は、アナログ/デジタル変換器ADでデジタル化される前に増幅器ステージVSに給送される。次のステージ、すなわちデジタル信号処理SVでは、時間的なビート信号は、測定される光波長に基づいて、時間の関数として線形化され、スキャナーS及びミラースキャナーSSのそれぞれの個々の位置についてフーリエ変換される。これらの個々のAスキャンは、更なる処理ステップにおいて平均化、平滑化等をされることができる。スキャナーS及びミラースキャナーSSの各位置で生成されるAスキャンは、空間内に互いに隣り合って正確に設置されなければならない。そのため、Aスキャンのセットは、スキャナーSが1つの横断方向に走査するか又は2つの横断方向に走査するかに応じて、2次元又は3次元空間内で生成される。
【0076】
3D評価3Dの次のステージでは、角膜、水晶体、及び網膜の表面が、このAスキャンのセットにおいて計算(区分化)される。前角膜表面に続く表面(角膜の後側、レンズの前側、レンズの後側、及び網膜)は、その後、上流表面の表面曲率及び屈折率に基づいてAスキャンの方向を新しく計算することによって計算される。この新しい計算では、個々の表面における光ビームの屈折が考慮される(いわゆる屈折補正)。さらに、瞳孔における光ビームの回折を考慮することも可能であり、それは、3mm未満の直径を有する瞳孔の場合に特に好都合である。それにより得られる表面は、ここで、例えば正規直交関数のセット(例えば、ゼルニケ多項式(Zernike polynomial))に従って拡張することによって更に処理することができる。
【0077】
計算ブロックIOLでは、3次元空間に広がる角膜の前側、角膜の後側、水晶体の前側、水晶体の後側、及び網膜の表面は、屈折及び回折の法則(laws of refraction and diffraction)に従う仮想光ビームによって照射される。ここで、人間の眼球の仮想表面におけるこのいわゆるレイトレーシングは、網膜上で結像されるビームパターンの空間広がりを最小にするか又は最適化することによって眼球内水晶体の計算、角膜の光屈折補正等を可能にする。
【0078】
3D評価3D及び計算ブロックIOLは、通常、パーソナルコンピュータPC上で実施される。
【0079】
実施形態変形例2
本発明の第2の実施形態変形例が図2に描かれる。波長可変光源ALQは、狭スペクトル線(レーザー線)を放出する。光は、3つの2×2光ファイバーカプラーFK1、FK2、及びFK3を介して基準アーム及び物体アームに送られる。物体アームでは、波長可変光源ALQからの光は、光ファイバー偏光コントローラーPK1を介し、焦点スイッチFS、スキャナーS、走査光学系SO、及びビームスプリッターST3を介して測定物体、この場合、人間の眼球に達する。スキャナーSは、角膜にわたって1つ又は2つの横方向寸法に光ビームを偏向し、光ビームは角膜から屈折して眼球の中に入る。眼球の屈折率が変化するたびに、光の一部が反射される。反射光は、同じ経路に沿って光ファイバーカプラーFK3に戻る。カメラKは、前眼部の2次元画像を記録し、その画像が、ユーザーのためにモニターM上に提供される。モニター上に表示されるカメラ画像は、測定が眼球の中心で行われるように、ユーザーが、クロススライドKSを用いて患者の眼球の前に測定機器を位置決めすることを可能にする。
【0080】
光ファイバーカプラーFK3の1つの出力は、光ファイバースイッチFOSにつながり、光ファイバースイッチFOSは、長い基準アーム及び短い基準アームに光を交互に送る。光ファイバーの端面に直接適用される、光ファイバー偏光コントローラーPK2及び基準ミラーRS1からなる短い基準アームは、短い基準アーム内で反射される放射と前眼部で反射される放射との間の干渉を可能にする。光ファイバー偏光コントローラーPK3、光学系O3、及び基準ミラーRS2からなる長い基準アームは、長い基準アーム内で反射される放射と後眼部で反射される放射との間の干渉を可能にする。光学系O3は、基準ミラーRS2に基準ビームをフォーカスする。図2の残りのコンポーネントは、図1のコンポーネントと同一であり、図1の説明において説明されている。
【0081】
実施形態変形例3
図3は、機械的に同調される焦点及び距離の切換えの実施形態変形例を示す。或るタイプのプリズムPからなる光学コンポーネントは、ガラス板GPに接続される。物体アーム及び基準アームのビーム経路に出入りするように、このコンポーネントを旋回させることによって、焦点及び測定領域が、前眼部と後眼部との間で前後に同調して切り換えられる。プリズムPが基準ビーム内に導入されるとき、基準ミラーRS1は最も強い網膜信号の位置に移動される。この場合、基準アームは長く、後眼部が測定される。プリズムPが基準アームのビーム経路内に位置しない場合、測定されるのは前眼部である。この位置においては、前眼部からの信号を最適化するために、基準ミラーを移動させることは、通常、必要でない。この実施形態変形例の残りのコンポーネントは、図2に述べられている。
【0082】
実施形態変形例4
本発明の更なる第4の実施形態変形例が図4に示される。図4は、スペクトルOCTに基づく測定機器を示す。図2に示す設計と対照的に、光源LQは波長可変ではない。光源LQは、時間的に一定であるスペクトルを放出する。スペクトルが不変であるため、この実施形態はkクロックを必要とせず、したがって、特に、図2に存在する、マッハツェンダー干渉計、光ファイバーカプラーFK1、平衡検出BD2、及び光ファイバーカプラーFK2の全てが不要であり、こうした理由で、それらが図4に存在しない。ソースアームを除いて、図2に示される実施形態に対する唯一の差は、干渉信号の検出にある。光干渉は、光学系O4を介して検出器アーム内の回折格子Gにもたらされる。回折格子は、スペクトルの種々の波長を種々の方向に偏向させる。これは、ラインスキャンカメラZKの各ピクセルが、光源LQの波長スペクトルから特定のセクションを検出することを意味する。光学系O5は、光源LQのスペクトルの種々の波長をラインスキャンカメラZKにフォーカスする。図4の残りの全てのコンポーネントは、図2のコンポーネントと同一であり、図2の説明において説明されている。
【0083】
実施形態変形例5
図5は、波長可変光源ALQを有するOCTを示す。図2に示す、2つの2×2光ファイバーカプラーFK2及びFK3の代わりに、ここでは3×3光ファイバーカプラーFK2が用いられる。3×3光ファイバーカプラーFK2は、1つの物体アームと2つの基準アームに光を分割する。ミラースキャナーは、短い基準アームからの光及び長い基準アームからの光を、基準ミラーRS1に交互に偏向する。偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、短い基準アームにおける偏光又は長い基準アームにおける偏光を物体アームの偏光に整合させるために用いられる。光学系O2は、短い基準アームからの光を基準ミラーRS1にフォーカスさせる。光学系O3は、長い基準アームからの光を基準ミラーRS1にフォーカスさせる。残りのコンポーネントは、図2及び図1の説明において既に説明されている。
【0084】
実施形態変形例6
簡潔にするために、図6は、OCTの2つの基準アーム及び物体アームのみを示す。残りのコンポーネントは省略されている。図6で省略されたソースアームは、例えば図5に示すソースアームと同一とすることができる。図6で省略された検出アームは、例えば図5に示す検出アームと同一とすることができる。図6は、その屈折率を周期的にかつ同調された方式で変更する3つの液体レンズFL1、FL2、及びFL3を示す。FL2は、短い基準アームのビームを基準ミラーRS1に一定のレートでフォーカスしたり、デフォーカスしたりし、FL3は、長い基準アームのビームを基準ミラーRS2に同じレートでフォーカスしたり、デフォーカスしたりするが、その位相は、180°だけシフトされている。その結果として、2つの基準アームのうちの一方だけが、物体アームから反射された光と任意のある時間に干渉することができる。図6は、液体レンズFL3が、分散補償器DKを収容する長い基準アームのビームを、基準ミラーRS2にフォーカスする方法を示す。結果として、長い基準アームの非常に大きな割合の光パワーが、光ファイバーカプラーFK2の光ファイバーに戻るように結合される。そのため、図6に示すスナップショットにおいて干渉することができるのは、長い基準アームである。すなわち、後眼部からの信号が測定される。そのため、示すスナップショットにおいて長い基準アームが開いていると言うことができる。
【0085】
図6は、液体レンズFL2が基準ビームをデフォーカスする方法を示す。その結果として、基準ビーム光パワーは、光ファイバーカプラーFK2の光ファイバーに戻らない、又は該光パワーの無視できるほどに僅かな量だけが光ファイバーカプラーFK2の光ファイバーに戻る。したがって、短い基準アームは、物体アームから反射される光と干渉することができない。すなわち、この時点で、前眼部からの信号を測定することはできない。そのため、短い基準アームが閉じていると言うことができる。
【0086】
偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、短い基準アームにおける偏光又は長い基準アームにおける偏光を物体アームの偏光に整合させるために用いられる。
【0087】
液体レンズFL1は、測定放射を、前眼部及び後眼部内に交互にフォーカスする。3つの液体レンズFL1、FL2、及びFL3は、同調して動作する。すなわち、FL1がビームを前眼部にフォーカスする場合、FL2は、基準ビームを基準ミラーRS1にフォーカスし、FL3は、基準ビームを基準ミラーRS2にデフォーカスする。FL1がビームを後眼部にフォーカスする場合、FL2は、基準ビームを基準ミラーRS1にデフォーカスし、FL3は、基準ビームを基準ミラーRS2にフォーカスする。
【0088】
実施形態変形例7
簡潔にするために、図7は、OCTの2つの基準アーム及び物体アームのみを示す。残りのコンポーネントは省略されている。図7で省略されたソースアームは、例えば図5に示すソースアームと同一とすることができる。図7で省略された検出アームは、例えば図5に示す検出アームと同一とすることができる。2つの基準アームの開閉は、2つの液晶LCS1及びLCS2を用いてもたらされる。LCS1は、短い基準アームを開閉し、LCS2は、長い基準アームを開閉する。任意のある時間に、2つの液晶のうちの一方だけが、透過状態にあり、2つの基準アームのうちの一方だけが、任意のある時間に物体アームから反射される放射と干渉することができる。図7には分散補償器は描かれていない。或る程度まで、長い基準アーム内の光ファイバーも、光ファイバー内の対応する経路によって、後眼部内の経路を補償することにより分散補償器として用いることができる。
【0089】
偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、短い基準アームにおける偏光又は長い基準アームにおける偏光を物体アームにおける偏光に整合させるために用いられる。光学系O2は、短い基準アームからの光を基準ミラーRS1にフォーカスさせる。光学系O3は、長い基準アームからの光を基準ミラーRS2にフォーカスさせる。
【0090】
実施形態変形例8
実施形態変形例8は、1つの基準アーム及び2つの物体アームを有する設計を示す。簡潔にするために、図8a及び図8bは、ソースアーム及び検出アームを示していない。図8a及び図8bで省略されたソースアームは、例えば図5に示すソースアームと同一とすることができる。図8a及び図8bで省略された検出アームは、例えば図5に示す検出アームと同一とすることができる。スイッチは、2つの物体アームのうちの一方を交互に開閉する。任意のある時間に、2つの物体アームのうちの一方だけが開いており、そのため、任意のある時間に、2つの物体アームのうちの一方だけが、基準アームから反射される放射と干渉することができる。(図8aに示すように)2つの物体アームの上側のアームが開いている場合、前眼部で反射される光が、基準アームから反射される光と干渉することができる。S1を介してFK2からスイッチまでの経路(長い物体アーム)とO2を介してFK2からスイッチまでの経路(短い物体アーム)との間の光路長の差は、前眼部の光路長に対応する。図8aは、短い物体アームからの光がスイッチにおいて吸収されることを示す。スイッチは、例えば2つの異なる角度位置を交互に採用するミラーとすることができる。ミラーが下に収納される場合、短い物体アームが開口する、図8b参照。ミラーのこの位置では、長い物体アームからの光が吸収体A1において吸収される。
【0091】
基準ミラーRS1は、短い物体アームが開口したときにのみ変位される。基準ミラーの変位は、測定される最も長い眼球を測定するために用いられる位置から開始する。基準ミラーを光学系O3の方向に変位させることによって、網膜信号が最大となる基準ミラーの位置が採用される。網膜信号を最大にすることは、白内障が存在する結果として網膜信号が強く減衰する眼球において必要とされる。
【0092】
偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、短い物体アームにおける偏光又は長い物体アームにおける偏光を基準アームにおける偏光に整合させるために用いられる。光学系O1は、長い物体アームからの光を前眼部にフォーカスさせる。光学系O2は、短い物体アームからの光を後眼部にフォーカスさせる。光学系O3は、基準アームからの光を基準ミラーRS1にフォーカスさせる。
【0093】
実施形態変形例9
実施形態変形例9は、1つの基準アーム及び2つの物体アームを有する設計を示す。簡潔にするために、図9a及び図9bは、ソースアーム及び検出アームを示していない。図9a及び図9bで省略されたソースアームは、例えば図5に示すソースアームと同一とすることができる。図9a及び図9bで省略された検出アームは、例えば図5に示す検出アームと同一とすることができる。2つの液晶LCS1及びLCS2の形態の2つのスイッチは、2つの物体アームのうちの一方を交互に開閉する。任意のある時間に、2つの物体アームのうちの一方だけが開いており、そのため、任意の或る時間に、2つの物体アームのうちの一方だけが、基準アームから反射される放射と干渉することができる。(図9aに示すように)2つの物体アームの上側のアームが開いている場合、前眼部で反射される光が、基準アームから反射される光と干渉することができる。S1を介してFK2からビームスプリッターST4までの経路(長い物体アーム)とO2を介してFK2からビームスプリッターST4までの経路(短い物体アーム)との間の光路長の差は、前眼部の光路長に対応する。図9aは、短い物体アームからの光が液晶LCS2において吸収されることを示す。図9bは、短い物体アームからの光が眼球に送られる間のスナップショットを示す。この設定では、短い物体アームからの光が、基準アームから反射される光と干渉することができる。
【0094】
図9bは、長い物体アームからの光が液晶LCS1において吸収されることを示す。
【0095】
基準ミラーRS1は、短い物体アームが開口したときにのみ変位される。基準ミラーの変位は、測定される最も長い眼球を測定するために用いられる位置から開始する。基準ミラーを光学系O3の方向に変位させることによって、網膜信号が最大となる基準ミラーの位置が採用される。網膜信号を最大にすることは、白内障が存在する結果として網膜信号が強く減衰する眼球において必要とされる。
【0096】
偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、短い物体アームにおける偏光又は長い物体アームにおける偏光を基準アームにおける偏光に整合させるために用いられる。光学系O1は、長い物体アームからの光を前眼部にフォーカスさせる。光学系O2は、短い物体アームからの光を後眼部にフォーカスさせる。光学系O3は、基準アームからの光を基準ミラーRS1にフォーカスさせる。
【0097】
実施形態変形例10
図10は、2つの偏光ビームスプリッターキューブPST1及びPST2並びに2つの液晶LCS1及びLCS2を有する設計を示す。図10には、2つの物体アーム及び1つの基準アームが存在する。光源ALQからビームスプリッターST2まで、図10に示す実施形態変形例は、図1に示す実施形態変形例に対応する。光学系O2は、基準ビームを基準ミラーRS1にフォーカスする。2つの物体アームが存在し、2つの物体アームのうちの一方が迂回ユニットを収容する。迂回ユニットは、偏光コントローラーPK2、2つの偏向ミラーS1及びS2、液晶LCS2、並びに光学系O3からなる。光学系O3は、測定ビームを前眼部にフォーカスする。偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、基準アームにおける偏光を、迂回ユニットを有する物体アーム又は迂回ユニットを有さない物体アームにおける偏光に整合させるために用いられる。偏光ビームスプリッターキューブPST1は、入射測定ビームを2つの互いに垂直な偏光を有するビームに分割する。すなわち、迂回ユニットを通過する放射の偏光は、迂回ユニットを通過しない放射の偏光に垂直である。偏光ビームスプリッターキューブPST2は、互いに垂直な2つの偏光を再結合する。眼球は僅かに複屈折しているだけであるため、眼球の構造によって反射される2つの偏光は、途中で通過した経路を通過することになる。すなわち、入射p偏光が迂回ユニットを通過する場合、眼球に入射するp偏光の反射も迂回ユニットを通過し、入射s偏光が迂回ユニットを通過しない場合、眼球に入射するs偏光の反射も迂回ユニットを通過しない。迂回ユニットを通過する光は、前眼部を測定する。迂回ユニットを通過しない光は、後眼部を測定する。図10に示すスナップショットでは、液晶LCS1は、迂回ユニットのない物体アームを開き、液晶LCS2は、迂回ユニットを有する物体アームを閉じる。
【0098】
実施形態変形例11
図11a及び図11bは、回転可能ミラーS1が、距離スイッチと焦点スイッチの両方として働く設計を示す。これは、回転可能ミラーS1が2つの基準ビームと物体ビームの両方に影響を及ぼすことによって可能にされる。
【0099】
簡潔にするために、図11a及び図11bは、ソースアーム及び検出アームを示していない。図11a及び図11bで省略されたソースアームは、例えば図5に示すソースアームと同一とすることができる。図11a及び図11bで省略された検出アームは、例えば図5に示す検出アームと同一とすることができる。
【0100】
光学系O1は、物体ビームをミラーS1に偏向する。光学系O2は、短い基準アームからの基準ビームを基準ミラーRS1にフォーカスする、図11aを参照。光学系O3は、長い基準アームからの基準ビームを基準ミラーRS1にフォーカスする、図11bを参照。偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、基準アームにおける偏光を物体アームにおける偏光に整合させるために用いられる。
【0101】
ミラーS1の位置1では、短い基準アームの光は、基準ミラーRS1において反射され、そのため、短い基準アームから反射される光と、物体アームの前測定領域から反射される光との間で干渉が可能にされる。位置1では、長い基準アームの光は反射されず、そのため、長い基準アームから反射される光と、物体アームの後測定領域から反射される光との間で干渉を起こすことはできない。長い基準アームからの光は、好ましくは、吸収体A1にて吸収され、それにより、長い基準アームからの光は、光ファイバーカプラーFK2内に戻るように結合しない。ミラーS1の位置1では、物体アームからの光は、光学系O4に送られ、光学系O4は、走査光学系SOと結合して、光を前測定領域MB1にフォーカスする。測定ビームは、固定ミラーS2によって、位置1にあるミラーS3に偏向される。
【0102】
ミラーS1の位置2では、長い反射アームの光は、基準ミラーRS1において反射され、そのため、長い基準アームから反射される光と、物体アームの後測定領域から反射される光との間で干渉が可能にされる。位置2では、短い基準アームの光は反射されず、そのため、短い基準アームから反射される光と、物体アームの前測定領域から反射される光との間で干渉を起こすことはできない。短い基準アームからの光は、好ましくは、吸収体A2にて吸収され、それにより、短い基準アームからの光は、光ファイバーカプラーFK2内に戻るように結合しない。ミラーS1の位置2では、物体アームからの光は、ここでは位置2にあるミラーS3に直接送られる。ミラーS3の位置2は、ミラーS3での反射後の測定ビームの伝播方向が、ミラーS1及びミラーS3が位置1にあるときの伝播方向に正確に対応するように測定ビームを偏向する。ミラーS1の位置2は、測定ビームは、光学系O4を通過せず、したがって、後測定領域MB2にフォーカスされる。
【0103】
実施形態変形例12
実施形態変形例12は、2つの基準アーム及び1つの物体アームを有する設計を示す。図12a及び図12bに示す実施形態変形例は、機械的に同調される焦点及び距離切換えを示す。
【0104】
簡潔にするために、図12aは、ソースアーム及び検出アームを示していない。図12aで省略されたソースアームは、例えば図5に示すソースアームと同一とすることができる。図12aで省略された検出アームは、例えば図5に示す検出アームと同一とすることができる。図12aは、回転軸、半円ガラス板、半円吸収体、及び半円穴からなる回転可能要素DEを示す。回転可能要素DEは、半回転中のそれぞれの場合に、回転可能要素DEの吸収材料によってそれぞれの基準ビームを吸収することにより、又は、上記基準ビームを回転可能要素DE内の穴を通して透過させることにより、短い基準アーム及び長い基準アームを交互に作動させる。さらに、回転可能要素DEは、半回転中に、物体アームのビーム経路にガラス板を挿入する。ガラス板の厚さは、測定ビームがガラス板を通過するときに、測定ビームの焦点が後眼部で合うように選択される(図12aを参照)。回転可能要素DEのこの位置では、長い基準アームが開口し、短い基準アームからのビームが吸収される。後眼部がこの位置で測定される。
【0105】
測定ビームのビーム経路内にガラス板が位置しない位置に回転可能要素がある場合、測定ビームの焦点は、前眼部に位置する。前眼部を測定するために用いられる短い基準アームが吸収体によって閉じられ、かつ、測定ビームが基準ミラーRS2まで遮られずに伝播するように、後眼部を測定するために用いられる長い基準アームが開かれる、まさにその瞬間に、測定ビームの焦点は、前眼部から後眼部へジャンプする。
【0106】
図12bは、図12aに示す視点と比較して、90°だけ回転した視点からの回転可能要素DEを示す。3つの黒点は、物体アームビーム及び2つの基準アームビームの貫入点を示す。
【0107】
実施形態変形例13
実施形態変形例13は、1つの基準アーム及び1つの物体アームを有する設計を示す。
【0108】
簡潔にするために、図13aは、ソースアーム及び検出アームを示していない。図13aで省略されたソースアームは、例えば図3に示すソースアームと同一とすることができる。図13aで省略された検出アームは、例えば図3に示す検出アームと同一とすることができる。図13aは、回転軸、半円ガラス板、半円ミラー、及び半円穴からなる回転可能要素DEを示す。回転可能要素DEは、半回転中のそれぞれの場合に、回転可能要素DEのミラーにおいてそれぞれの基準ビームを反射することによって、又は、上記基準ビームを回転可能要素DE内の穴を通して透過させることによって、短い基準アーム及び長い基準アームを交互に作動させる。回転可能要素DEのミラーは、基準アームのビーム経路内にある場合、短い基準アーム用の基準ミラーとして働く。
【0109】
さらに、回転可能要素DEは、半回転中に、物体アームのビーム経路にガラス板を挿入する。ガラス板の厚さは、測定ビームがガラス板を通過するときに、測定ビームの焦点が後眼部で合うように選択される。後眼部測定ビームのビーム経路内にガラス板が位置しない位置に回転可能要素がある場合、測定ビームの焦点は、前眼部に位置する。そのため、基準ビームが基準ミラーRS2まで遮られずに伝播することができるよう、後眼部を測定するために用いられる長い基準アームが開かれるように、回転可能要素DE内のミラーが回転して基準アームから出る、まさにその瞬間に、測定ビームの焦点は、前眼部から後眼部へジャンプする。
【0110】
図13bは、図13aに示す視点と比較して、90°だけ回転した視点からの回転可能要素DEを示す。2つの黒点は、物体アームビーム及び基準アームビームの貫入点を示す。
【0111】
実施形態変形例14
実施形態変形例14は、同心の暗円環及び明円環の内部パターンを有する円錐又は半球が、患者の眼球の前に直接取付けられているという1つの差を除いて実施形態変形例1と同一である。この環状パターン系RMSは、検査される眼球の涙液膜によって映される。この環状パターン系の反射は、カメラKによって記録される。ソフトウェアは、カメラに結像される環状パターン系の変形から涙液膜又は前角膜表面の表面形状を計算することができる。環状パターン系によって測定される表面形状は、OCT測定の測定精度を改善するために用いられる。
【0112】
実施形態変形例15
実施形態変形例15は図15に示される。この実施形態では、前眼部及び後眼部は、異なる波長で測定される。生きている人間の眼球を測定するために用いることができる最大許容可能光パワーは、波長の増加とともに増加するため、2つの波長を用いることは有利であるとすることができる。したがって、前眼部の測定には、後眼部の測定に用いられる波長(例えば、850nm又は1060nm)と比べて、より高い光パワーを有する、より長い波長A(例えば、1300nm)を用いることができ、この場合、測定放射の貫入深度は、後眼部の場合と同程度の大きさである必要はない。図15では、波長Aは点線として表示される一方、他の波長Bは破線として示される。
【0113】
波長可変光源ALQ−Aは、狭スペクトル線(レーザー線)を放出する。光は、2×2光ファイバーカプラーFK1−A、光学系O1−A、波長選択性ビームスプリッターWLST0、並びに2つのビームスプリッターST1及びST2を介して基準アーム及び物体アームにおいて伝導される。波長選択性ビームスプリッターWLST0は、波長可変光源ALQ−Aからの波長がほぼ完全に反射され、波長可変光源ALQ−Bからの波長がほぼ完全に透過されるようにコーティングされる。結果として、2つの波長可変光源からの2つの波長は、ほとんど損失なしで統合される。物体アームでは、波長可変光源ALQ−Aからの光は、波長選択性ビームスプリッターWLST1から偏光コントローラーPK1−Aを介し、ミラーS1、光学系O3−A、波長選択性ビームスプリッターWLST2、スキャナーS、走査光学系SO、及び第3のビームスプリッターST3を介して、測定物体、この場合、人間の眼球に達する。光学系O3−Aは、走査光学系SOと結合して、波長可変光源ALQ−Aからの光を前眼部にフォーカスする。ビームスプリッターST3は、可視光をカメラKに反射し、OCT光源のために通常用いられる赤外光を透過させる波長選択性ビームスプリッターである。スキャナーは、角膜にわたって1つ又は2つの横方向寸法に光ビームを偏向し、光ビームは角膜から屈折して眼球の中に入る。眼球の屈折率が変化するたびに、光の一部が反射される。反射光は、同じ経路に沿ってビームスプリッターST2に戻る。カメラKは、前眼部の2次元画像を記録し、その画像が、ユーザーのためにモニターM上に提供される。モニター上に表示されるカメラ画像は、測定が眼球の中心で行われるように、ユーザーが、クロススライドKSを用いて患者の眼球の前に測定機器を位置決めすることを可能にする。
【0114】
基準アームでは、光源ALQ−Aからの光は、波長選択性ビームスプリッターWLST3によって基準ミラーRS1に偏向される。光学系O2−Aは、基準ビームを基準ミラーRS1にフォーカスする。この基準ミラーRS1によって反射される光は、同じ経路に沿ってビームスプリッターST2に戻る。光源ALQ−A用の基準アームの長さは、この基準アームが前眼部を測定するように設計される。
【0115】
第2の波長可変光源ALQ−Bは、狭スペクトル線(レーザー線)を放出する。光は、2×2光ファイバーカプラーFK1−B、波長選択性ビームスプリッターWLST0、並びに2つのビームスプリッターST1及びST2を介して基準アーム及び物体アームにおいて伝導される。物体アームでは、波長可変光源ALQ−Bからの光は、波長選択性ビームスプリッターWLST1を通して透過され、波長選択性ビームスプリッターWLST1から、偏光コントローラーPK1−Bを介し、波長選択性ビームスプリッターWLST2を介し、スキャナーS、走査光学系SO、及びビームスプリッターST3を介して眼球に達する。走査光学系SOは、光源ALQ−Bからの光を後眼部にフォーカスする。
【0116】
基準アームでは、光源ALQ−Bからの光は、波長選択性ビームスプリッターWLST3によって基準ミラーRS2に偏向される。光学系O2−Bは、基準ビームを基準ミラーRS2にフォーカスする。この基準ミラーRS2によって反射される光は、同じ経路に沿ってビームスプリッターST2に戻る。光源ALQ−B用の基準アームの長さは、この基準アームが後眼部を測定するように設計される。基準ミラーRS2の上の矢印は、この基準アームの初期位置が、眼球の測定される最も長い軸長のすぐ後ろに位置する基準ミラー平面RSE2に対応することを示すことを意図される。基準ミラーRS2を進めることによって、網膜からの信号が最大になる。
【0117】
干渉信号の振幅は、偏光コントローラーPK1−A、PK2−A、PK1−B、及びPK2−Bを用いて最大にすることができ、偏光コントローラーPK1−A、PK2−A、PK1−B、及びPK2−Bは、前後に並べて設置されたコンポーネント、すなわち、4分の1波長板、半波長板、及び4分の1波長板からなる。
【0118】
ビームスプリッターST2では、測定物体によって反射される光と基準ミラーによって反射される光との間に干渉が存在し、2つの光源からの光は、それ自身とのみ干渉することができる。ビームスプリッターST2では、光は、波長選択性ビームスプリッターWLST5に向かう1つの部分と、ビームスプリッターST1を介して波長選択性ビームスプリッターWLST4に向かう別の部分に分割される。2つの波長選択性ビームスプリッターWLST4及びWLST5は、2つの光源からの波長を分離し、光を種々のフォトダイオードPD1−A、PD2−A、PD1−B、及びPD2−Bに伝送する。フォトダイオードPD1−A及びPD2−Aからの干渉信号は、180°の位相差を有する。この位相差は、いわゆる平衡検出BD1の2つの逆方向切換え式フォトダイオードPD1−A及びPD2−Aと結合して、干渉信号に悪い影響を及ぼすことなく、非コヒーレントに重なる光学信号のDC成分の抑制を可能にする。同じことが、光源ALQ−Bからの光を検出するフォトダイオードについて当てはまる。
【0119】
両方の光源はそれぞれ、マッハツェンダー干渉計を備え、その出力信号は、それぞれ2つの逆方向切換え式フォトダイオードPD3−A、PD4−A、又はPD3−B、PD4−B並びにそれぞれ1つの平衡検出BD2−A及びBD2−Bによって測定される。両方のマッハツェンダー干渉計はそれぞれ、2つの2×2光ファイバーカプラーFK4−A及びFK5−A又はFK4−B及びFK5−Bからなる。平衡検出BD2−Aの出力は、kクロック−Aと呼ばれる、光源ALQ−Aからのkクロックである。平衡検出BD2−Bの出力は、kクロック−Bと呼ばれる、光源ALQ−Bからのkクロックである。2つのフォトダイオードPD3−A及びPD4−Aに送られる干渉信号の振幅は、偏光コントローラーPK4−Aを用いて最大にされる。2つのフォトダイオードPD3−B及びPD4−Bに転送される干渉信号の振幅は、偏光コントローラーPK4−Bを用いて最大にされる。図15の残りのコンポーネントは、図1の説明において既に説明されている。
【0120】
実施形態変形例16
2つの異なる波長及び2つの異なる光源を利用する更なる実施形態変形例が図16に描かれる。図16はスペクトルOCTに基づく測定機器を示す。図15に示される設計と比較すると、光源LQ−A及びLQ−Bは波長可変ではない。光源LQ−A及びLQ−Bは、時間的に一定であるスペクトルを放出する。スペクトルが不変であるため、この実施形態はkクロックを必要とせず、したがって、特に、図15に存在する、マッハツェンダー干渉計並びに光ファイバーカプラーFK1−A及びFK1−Bは不必要である。さらに、平衡検出BD2−A、BD2−Bは、通常、スペクトルOCT内に存在せず、こうした理由で、平衡検出BD2−A、BD2−Bが図16に存在しない。ソースアームを除いて、図15に示される実施形態に対する唯一の差は、干渉信号の検出にある。光源LQ−A及び光源LQ−Bからの干渉は、波長選択性ビームスプリッターWLST4によって分離され、2つの異なる回折格子G−A、G−Bに送られる。回折格子は、スペクトルの種々の波長を種々方向に偏向させる。これは、ラインスキャンカメラZK−A及びZK−Bの各ピクセルが、光源LQ−A又はLQ−Bの波長スペクトルから特定のセクションを検出することを意味する。光学系O5−A及びO5−Bは、光源LQ−A又はLQ−Bからのスペクトルの種々の波長をラインスキャンカメラZK−A及びZK−Bにフォーカスする。図16の残りの全てのコンポーネントは、図15のコンポーネントと同一であり、図15の説明において説明される。
【0121】
実施形態変形例17
焦点及び測定距離を同調して変位させる実施形態変形例が図19a、図19b、及び図19cに示される。波長可変光源ALQからの光は、2×2光ファイバーカプラーFK1に伝導される。光ファイバーカプラーFK1は、光を3つの物体アーム及び1つの基準アームに分割する。基準アームは、単一モード光ファイバー及び偏光コントローラーPK1からなる。偏光コントローラーの例は、単一モードファイバーが3つのループに巻かれるデバイスである。これらの3つのループはそれぞれ、機械的に傾斜可能であり、これは、任意の偏光状態が、単一モード光ファイバーにおける光に影響を受けることを可能にする。基準アームは、光ファイバーカプラーFK1から始まり、光ファイバーカプラーFK2で終了する。基準アームの光路長は一定のままである。基準アームからの光と利用される物体アームからの光との間の干渉は、光ファイバーカプラーFK2において生じる。
【0122】
3つの物体アームは、光ファイバー1×3スイッチFOSによって生成される。光ファイバースイッチFOSは、光を3つの異なる物体アームに交互に送る。3つの物体アームのそれぞれにおいて、それぞれ1つの偏光コントローラーPK2、PK3、及びPK4、並びに、それぞれ1つの光学系O1、O2、及びO3が存在する。XスキャナーXS、YスキャナーYS、及び走査光学系SOは、3つ全ての物体アームによって共有される。3つの物体アームは、3つの光学系O1、O2、及びO3の屈折率の点で、並びに、光ファイバー1×3スイッチFOSから物体の前表面まで計測される光路長の点で異なる。図19a、図19b、及び図19cでは、物体の前表面は、前角膜表面である。測定ビームは、フォーカスをよりよく示すために、図19a、図19b、及び図19cにおいて3つの光ビームで示される。
【0123】
図19aでは、1×3スイッチFOSは、長い光ファイバーを有する物体アームに光を送る。光がこの物体アームを通過する場合、前測定領域MB1で反射される光が基準アームからの光と干渉する。光学系O1は、走査光学系SOと結合して、好ましくは、眼球角膜表面HHと水晶体の前表面KLとの間に光をフォーカスする。前基準表面RF1は、基準アームと同じ光路長を有する前測定領域MB1内の表面である。これは、前測定領域MB1の測定感度が、この表面RF1上で最大であることを意味する。XスキャナーXSは、物体アームからの光を、物体にわたってX方向に偏向させる。XスキャナーXSによって偏向される測定ビームの移動方向は、Xスキャンの矢印で示される。Xスキャンの開始時に、XスキャナーXSは、角膜の端から開始するX方向のスキャンをもたらす初期位置1を仮定する。YスキャナーYSは、物体アームからの光を、物体にわたってY方向に偏向させる。走査光学系SOは、測定ビームが所望の角度で前角膜表面に当たる(impinge)ように、測定ビームを眼球に偏光させるのに役立つ。走査光学系は、通常、測定ビームが測定物体にわたってテレセントリックに(telecentrically)偏向されるように選択される。フォトダイオードPD1及びPD2、平衡検出BD1、増幅器ステージVS、アナログ/デジタル変換器AD、並びに信号処理SVからなる検出アームにおいて、考えられる最も強い干渉信号が検出されるよう、物体によって反射されるビームの偏光を設定するために偏光コントローラーPK2が用いられる。測定信号は、コンピュータPCに送信され、コンピュータPCは、測定信号を更に処理し、モニター上の数値又は画像としてユーザーに提供する。
【0124】
図19bでは、1×3スイッチFOSは、中間長の光ファイバーを有する物体アームに光を送る。簡潔にするために、中間長の光ファイバーは、図19a、図19b、及び図19cの図では過度に短く示されている。光がこの物体アームを通過する場合、中間測定領域MB2で反射される光が、基準アームからの光と干渉する。中間基準表面RF2は、基準アームと同じ光路長を有する中間測定領域MB2内の表面である。これは、中間測定領域MB2の測定感度が、この表面RF2上で最大であることを意味する。光学系O2は、走査光学系SOと結合して、好ましくは、水晶体KLの中心の近くに光をフォーカスする。XスキャナーXSは、物体アームからの光を、物体にわたってX方向に偏向させる。Xスキャンの開始時に、XスキャナーXSは、水晶体KLの端から開始するX方向のスキャンをもたらす初期位置2を仮定する。
【0125】
図19cでは1×3スイッチFOSは、短い光ファイバーを有する物体アームに光を送る。光がこの物体アームを通過する場合、後測定領域MB3で反射される光が基準アームからの光と干渉する。光学系O3は、走査光学系SOと結合して、好ましくは、後基準表面RF3の近くに光をフォーカスする。後基準表面RF3は、基準アームと同じ光路長を有する後測定領域MB3内の表面である。これは、後測定領域MB3の測定感度が、この表面RF3上で最大であることを意味する。XスキャナーXSは、物体アームからの光を、物体にわたってX方向に偏向させる。Xスキャンの開始時に、XスキャナーXSは、網膜の端から開始するX方向のスキャンをもたらす初期位置3を仮定する。いくつかの用途では、網膜信号を測定するために、網膜までの軸方向距離を測定するだけで十分である可能性がある。この場合、Xスキャナー及びYスキャナーは移動しない。
【0126】
明確さを改善するために、図19a、図19b、及び図19cの初期位置1、2、及び3の角度は、差を誇張されて描かれている。実際の設計では、3つの物体アームの光学軸間の角度は、市販のXスキャナーXS(例えば、ガルバノメータースキャナー)の角度範囲が、3つの初期位置1、2、及び3を採用するのに十分であるように、かなり小さいであろう。
【0127】
図19a、図19b、及び図19cに示す実施形態変形例を、1×3光ファイバースイッチの代わりに1×2光ファイバースイッチ又は1×4光ファイバースイッチを用いて動作することもできる。2つの測定領域及び2つの焦点は、1×2光ファイバースイッチを用いて生成され、一方、4つの測定領域及び4つの焦点は、1×4光ファイバースイッチを用いて生成される。n個の測定領域及びn個の焦点を生成する1×n光ファイバースイッチを有するデバイスを作ることが可能であることは言うまでもない。
【0128】
実施形態変形例18
図20は、図19a、図19b、及び図19cで利用される焦点及び測定距離回路を利用するスペクトル短コヒーレンス断層撮影装置の実施形態変形例を示す。図19a、図19b、及び図19cに示す実施形態変形例と対照的に、図20に示す実施形態は、スーパールミネッセントダイオードSLD、並びに、回折格子G、ラインスキャンカメラZK、並びに光学系O5及びO6からなる分光計を用いる。スーパールミネッセントダイオードSLDからの光は、2×2光ファイバーカプラーFK1に送られる。2×2光ファイバーカプラーFK1は、3つの物体アーム及び1つの基準アームに光を分割する。基準アームは、単一モードファイバー、偏光コントローラーPK1、光学系O4、及び基準ミラーRSからなる。光学系O4は、基準ビームを基準ミラーRSにフォーカスする。基準ミラーRSは、任意選択で、基準表面RF1、RF2、及び/又はRF3を、物体アームにおいて測定される1つ又は複数の構造の距離に正確に整合させるように、基準ビームの伝播方向に制御方式で変位されるように取り付けられることができる。基準ミラーRSを変位させることは、測定信号を最大にするのに役立ち、それは、非常に低い測定信号の場合に必要である可能性がある。
【0129】
図20では、1×3スイッチFOSは、長い光ファイバーを有する物体アームに光を送る。光がこの物体アームを通過する場合、前測定領域MB1で反射される光が、基準アームからの光と干渉する。光学系O1は、走査光学系SOと連動して、好ましくは、眼球角膜表面HHと水晶体の前表面KLとの間に光をフォーカスする。前基準表面RF1は、基準アームと同じ光路長を有する前測定領域MB1内の表面である。これは、前測定領域MB1の測定感度が、この表面RF1上で最大であることを意味する。XスキャナーXSは、物体アームからの光を、物体にわたってX方向に偏向させる。XスキャナーXSによって偏向される測定ビームの移動方向は、Xスキャンの矢印で示される。Xスキャンの開始時に、XスキャナーXSは、角膜の端から開始するX方向のスキャンをもたらす初期位置1を仮定する。YスキャナーYSは、物体アームからの光を、物体にわたってY方向に偏向させる。走査光学系SOは、測定ビームが、所望の角度で前角膜表面に当たるように、測定ビームを眼球に偏向させるのに役立つ。走査光学系は、通常、測定ビームが測定物体にわたってテレセントリックに偏向されるように選択されることになる。考えられる最も強い干渉信号が検出アームにおいて検出されるよう、物体によって反射されるビームの偏光を設定するために偏光コントローラーPK2が用いられる。
【0130】
検出アームでは、光学系O5は、光ファイバーから出る光を、コリメート方式で回折格子Gにもたらす。回折格子Gは、広帯域光源、例えばスーパールミネッセントダイオードSLDのスペクトルに含まれる波長を種々の方向に回折する。光学系O6は、伝播方向が異なる波長を、空間的に分離した点でラインスキャンカメラに結像させる。ラインスキャンカメラ内の各ピクセルは、スーパールミネッセントダイオードSLDのスペクトルから狭波長範囲を検出する。ラインスキャンカメラからの出力は、アナログ/デジタル変換器ADにおいてデジタル化される。デジタル化された信号は、コンピュータPCでフーリエ変換される。フーリエ変換は、物体の反射を、基準表面RF1からの物体の距離の関数として提供する。位置の関数としてのこれらの反射は、輝度パターン又はデータ値としてモニター上に表示される。輝度パターンは、1次元的に(A−スキャン)、2次元的に(B−スキャン)、又は3次元的に(Cスキャン)表示されることができる。
【0131】
図20に示す実施形態変形例は、1×3光ファイバースイッチFOSを使用し、交互に用いられる3つの物体アームをもたらす。3つの物体アームは、前後に並べて配列される3つの測定領域における測定を可能にし、焦点は、測定領域切換えに同調してそれぞれの測定領域内に位置される。簡潔にするために、図20は、最も前の眼球部の測定用のビーム経路だけを示す。光ファイバースイッチFOSによる中間測定領域及び後測定領域の作動は示されていない。
【0132】
2つ、4つ、又はn個の物体アームを生成する、1×2光ファイバースイッチ、1×4光ファイバースイッチ、又は1×n光ファイバースイッチが用いられる変形が実行可能であることは言うまでもない。
【0133】
スペクトルOCTの図20に示す実施形態変形例は、さらに図20に示すデバイスと異なる、焦点及び距離切換えデバイスを備えることができる。これは、本特許文書で開示される全ての焦点及び距離切換えが、分光計を備えるスペクトルOCT機器と波長可変光源を備えるSSOCT機器の両方で動作するからである。より詳細には、図20に示すスペクトルOCTの物体アーム部は、例えば、図8a及び図8b、図21a及び図21b、又は図22a、図22b、及び図22cに記載される焦点及び距離切換えデバイスによって置換することができる。
【0134】
実施形態変形例19
焦点及び測定距離を同調して変位させる更なる実施形態変形例が図21a及び図21bに示される。波長可変光源ALQからの光は、2×2光ファイバーカプラーFK1に伝導される。光ファイバーカプラーFK1は、光を2つの物体アーム及び1つの基準アームに分割する。基準アームは、単一モード光ファイバー及び偏光コントローラーPK1からなる。基準アームは、光ファイバーカプラーFK1から始まり、光ファイバーカプラーFK2で終了する。基準アームからの光は、光ファイバーカプラーFK2において、物体アームからの光と干渉する。
【0135】
物体アームには、偏光コントローラーPK2、スキャナーミラー1 SS1、スキャナーミラー2 SS2、XYスキャナーXYS、走査光学系SO、及び静止ミラーS1、S2、並びに光学系O1、O2、及びO3が存在する。スキャナーミラー1 SS1は、2つの異なる物体アームに光を交互に送る。2つの物体アームは、2つの光学系O2及びO3の点で、並びに、光ファイバーカプラーFK1から物体の前表面まで計測された光路長の点で異なる。図21a及び図21bでは、物体の前表面は前角膜表面である。
【0136】
図20aでは、スキャナーミラー1 SS1は、空気中で長い経路を有する物体アームに光を偏向する。正しい角度での偏向は、スキャナーミラー1 SS1及びスキャナーミラー2 SS2の特定の位置1でのみ生じる。例として、スキャナーミラーはガルバノメーターミラーとすることができる。光がこの物体アームを通過する場合、前測定領域MB1で反射される光が基準アームからの光と干渉する。光学系O1は、光学系O2及び走査光学系SOと結合して、好ましくは水晶体KLの近くに光をフォーカスする。前基準表面RF1は、基準アームと同じ光路長を有する前測定領域MB1内の表面である。これは、前測定領域MB1の測定感度が、この表面RF1上で最大であることを意味する。XYスキャナーXYSは、物体アームからの光を、物体にわたってX方向及びY方向に偏向させる。走査光学系SOは、測定ビームが、所望の角度で前角膜表面に当たるように、測定ビームを物体に偏光させるのに役立つ。走査光学系は、通常、測定ビームが測定物体にわたってテレセントリックに偏向されるように選択される。フォトダイオードPD1及びPD2、平衡検出BD1、増幅器ステージVS、アナログ/デジタル変換器AD、及び信号処理SVからなる検出アームにおいて、考えられる最も強い干渉信号が検出されるよう、物体によって反射されるビームの偏光を設定するために偏光コントローラーPK1及びPK2が用いられる。測定信号は、コンピュータPCに送信され、コンピュータPCは、測定信号を更に処理し、数値又は画像としてユーザーに提供する。
【0137】
図21bでは、スキャナーミラー1 SS1は、空気中で短い経路を有する物体アームに光を偏向する。正しい角度での偏向は、スキャナーミラー1 SS1及びスキャナーミラー2 SS2の特定の位置2でのみ生じる。光がこの物体アームを通過する場合、後測定領域MB2で反射される光が基準アームからの光と干渉する。光学系O1は、光学系O3及び走査光学系SOと連動して、後基準表面RF2の近くに光をフォーカスする。
【0138】
実施形態変形例20
図21a及び図21bに示す実施形態変形例は、2つの静止ミラーS1及びS2の代わりに、3つの静止ミラーS1、S2、及びS3、又はn個の静止ミラーを用いて動作させることもできる。3つの測定領域及び3つの焦点は、3つのミラーを用いて生成され、n個の測定領域及びn個の焦点は、n個のミラーを用いて生成される。3つのミラーS1、S2、及びS3を有する実施形態変形例は、図22a、図22b、及び図22cに示される。
【0139】
結論として、本発明によれば、長い軸長を有する物体の場合にも、特に効率的な測定を可能にするデバイス及び方法が開発されることに留意するべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明物体又は拡散物体の少なくとも第1の領域からの幾何学量及び第1の領域から離れた第2の領域からの幾何学量を確定するデバイス及び方法であって、物体アーム、基準アーム、検出器アーム、及び光を放出する光源を有するコヒーレンス断層撮影装置を包含する、デバイス及び方法に関する。
【0002】
本発明は、透明物体又は拡散物体において、互いに離れた少なくとも2つの領域からの幾何学量を確定する方法及びデバイスに関し、特に、層厚及び長さ並びに/又は表面曲率(トポグラフィ)を幾何学量として確定する方法及びデバイスに関する。幾何学量は、例えば、層厚、距離、長さ、及びトポグラフィを意味すると理解される。
【背景技術】
【0003】
OCTの基礎にある原理は干渉法に基づく。この方法は、干渉計(通常、マイケルソン干渉計)を用いて信号のランタイムを比較する。このプロセスにおいて、既知の光路長を有する1つのアームが、測定アーム用の基準アームとして用いられる。
【0004】
両方のアームからの信号干渉(光学的相互相関)は、或るパターンをもたらし、このパターンから、深度プロファイル(振幅モードスキャン)内で相対光路長を読み出すことが可能である。1次元走査法では、ビームは、その後、1方向又は2方向に横方向に誘導され、それにより、平面トモグラム(明度モードスキャン)又は3次元トポグラフィ(cモードスキャン)を記録することが可能である。
【0005】
OCTは、特に眼科学で非常に普及しており、これは、特に、深度分解能が横方向分解能から分離されること、及び、OCTが非接触インビボ測定を可能にすることにその由来を辿ることができる。感光体の場合、例えば眼球の測定の場合には、測定について必要とされる電力が低いことによる、更なる利点が明らかになる。
【0006】
幾何学量を確定する既知のデバイスは、比較的低い測定速度及び信号対雑音比を有する点で不利である。さらに、設計が、比較的複雑であり、したがって、費用がかかる。最後に、測定領域が不十分であることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、コヒーレンス断層撮影装置によって幾何学量を確定するための、冒頭で述べた技術分野に属するデバイスを開発することであり、そのデバイスは、既知の機器と比較して、より高い測定速度及びより広い測定領域によって特徴付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的に対する解決策は、請求項1の特徴によって規定される。本発明によれば、デバイスは、物体アーム及び/又は基準アームによって形成される、第1の光路長を有する第1の経路及び第2の光路長を有する第2の経路を有し、光源によって放出される光が、第1の経路及び第2の経路を通って伝播することができる。
【0009】
波長可変レーザー線のコヒーレンス長が物体の測定深度に相当することは事実である。波長可変光源のコヒーレンス長が制限されているため、測定深度も制限される。最大でも約34mmである人間の軸長(human axis length)は、現在市販されているほとんどの波長可変光源のコヒーレンス長よりも長い。こうした理由で、34mmの軸長は、追加的な手段を用いることなく、今日入手可能なほとんどの波長可変光源によって測定することができない。本発明によれば、最大でも約34mmの軸長の測定を可能にする手段がここで提案される。正確に言えば、この手段は、互いに離れ、かつ、上述した第1の経路及び第2の経路にそれぞれ対応する2つの測定領域(深度スキャン領域)に測定領域を細分することである。互いに離れた3つ以上の測定領域を設けることができることは言うまでもない。互いに離れた2つの領域は、以下の本文では前測定領域及び後測定領域と呼ばれる。
【0010】
第1の光路長を有する第1の経路及び第2の光路長を有する第2の経路は、さまざまな方法で得ることができる。そのため、例えば、変位可能ミラーを、正確に1つの光学アーム(基準アーム又は物体アーム)に設けることができる。こうしてミラーを変位させることによって、第1の経路長から第2の経路長へ切換えを行うことが可能になる。実施形態に応じて、ミラーが3つ以上の位置を採用する可能性もあるため、原理上、複数の光路長を設定することも可能とすることができる。より詳細には、連続的な設定オプションの場合、任意の数の光路長を設定することも可能とすることができる。更なる実施形態では、物体アーム又は基準アームは、内又は外に旋回することができるミラーを備えることもでき、その結果として、2つの経路長を設定することができる。この点に関して、当業者ならば、更なるオプションも理解している。
【0011】
さらに、2つの光路長を、それら固有の光学アームによってそれぞれ別々に与えることもできる。
【0012】
第1のアームから第2のアームに光を偏向させるために、好ましくは、第1の位置において、第1のアームを通して光ビームを伝導することができ、第2の位置において、第2のアームを通して光ビームを伝導することができるスキャナーミラーが設けられる。さらに、光は、スキャナーミラー、より詳細にはガルバノメーターミラー、光ファイバースイッチ、又は液晶によって一方のアームから他方のアームに送ることができる。分散を補償するために、基準アーム内にガラス基板を設けることができる。これによって、網膜からの干渉信号を増加させることができる。いくつかの変形例では、分散補償板を省くこともできる。
【0013】
デバイスは、好ましくは、物体アームに焦点スイッチを備える。このスイッチは、両方の領域にフォーカスさせるために用いることができる。光が2つのアームを連続して通過する場合、焦点は、好ましくは、第1の光路長を有する第1の経路から第2の光路長を有する第2の経路へのスイッチと同期して切り換えられる。焦点スイッチは、内に旋回することができる光学要素として組み込むこともできる。当業者ならば、この点に関して更なるオプション、例えば向きに応じて異なる焦点距離を有するレンズも既知である。
【0014】
デバイスは、波長選択性ビームスプリッターを介して可視光を供給されることができるカメラを更に有することができる。これの利点は、OCT測定に必要とされる波長(例えば、赤外線)が減衰しないか又は僅かにしか減衰しないことである。このカメラは、好ましくは、測定される物体の領域に設置される。結果として、物体、より詳細には眼球の前側を記録してスクリーン上に表示することができる。ユーザーは、そのため、例えばクロススライドによって測定機器を位置決めすることができる。
【0015】
デバイスは、或るパターンを物体上に投影するための光学要素を更に備えることができる。この光学要素は、例えば、円錐又は半球として組み込まれることができ、また、パターンは、カメラによって記録することができる環状パターンとして提供することができる。結果として、例えば、眼球上の涙液膜の表面の形状を計算することが可能であり、それにより、確定されたこのデータを用いて、OCT測定の測定精度が最適化される。
【0016】
同じ波長を有する光が、通常、前領域及び後領域に用いられる。いくつかの変形例では、異なる波長を有する光を前領域及び後領域に用いることができる。そのため、電力を、物体、より詳細には眼球の領域の感度に応じて調整することができ、その結果として、感度を増加させることが可能である。一方、この実施形態は、デバイスが、より高価になり、その設計がより複雑になるため不利となる場合がある。このため、デバイスは、波長選択性ビームスプリッター、及び必要な場合には複数の光源を備えることができる。
【0017】
物体アーム、基準アーム、検出器アーム、及び光を放出する光源を備えるコヒーレンス断層撮影装置は、透明物体又は拡散物体の少なくとも第1の領域からの幾何学量及び第1の領域から離れた第2の領域からの幾何学量を確定する方法において用いられる。第1の領域の幾何学量を確定するために、光源からの光は、物体アーム及び/又は基準アームにおいて第1の光路長を有する第1の経路にわたって誘導される。第2の領域の幾何学量を確定するために、光源からの光は、物体アーム及び/又は基準アームにおいて第2の光路長を有する第2の経路にわたって誘導される。
【0018】
コヒーレンス断層撮影装置は、好ましくは、周波数領域OCTとして、より詳細にはSSOCT(波長掃引型(swept source)OCT)として、又はスペクトルOCTとして実施される。
【0019】
そのため、好ましくは、例えばマイケルソン干渉計の幾何学的設計において、周波数領域における光学コヒーレンス断層撮影装置が用いられる。この干渉法は、周波数領域OCTと呼ばれる(OCTはoptical coherence tomograph(光学コヒーレンス断層撮影装置)の頭文字である)。比較的長い間存在した時間領域OCTと対照的に、周波数領域OCTは、可動基準アームなしで深度測定が可能であり、測定物体によって反射される信号の深度割当て(depth assignment)が、ビート周波数(beat frequency)によってもたらされるという特性を有する。
【0020】
周波数領域OCTの2つの変形例が存在する。
1.一方の変形例は、その波長を周期的に変更する波長可変光源を用いることからなる(波長掃引型OCT、SSOCT、又は波長同調型(wavelength-tuning)OCT)。波長可変光源は、特定の時間周期で、同調範囲を通じて往復プッシュスルーされる狭スペクトル線(レーザー線)を放出する。そのプロセスでは、測定物体の深度における測定領域は、波長可変レーザー線の線幅に基づいて与えられる。測定物体を通じた測定の反復レートは、同調期間に基づいて与えられる。基準アーム及び物体アームから反射されるレーザー線の干渉によって生成される時間的なビート信号を、フォトダイオードを用いて同調期間あたり1回検出することができる。
【0021】
2.他方の方法は、スペクトルOCTと呼ばれ、該スペクトルOCTでは、時不変スペクトルを有する光源が用いられる。波長依存方式でスペクトルビート信号を記録するために、分光計が検出に必要とされる。そのプロセスでは、深度における測定領域は、分光計の分解能によって与えられる。測定物体を通じた測定の反復レートは、分光計で用いられる線検出器の読出し速度に基づいて与えられる。
【0022】
測定物体及び基準アームから後方散乱される光は、これらの周波数領域法の両方において深度に比例する周波数を有するビート信号を生成するため、散乱振幅を、フーリエ変換によって任意の深度で計算することができる。周波数領域OCTは、時間領域OCTよりも高い測定速度及び良好な信号対雑音比を可能にする。しかし、周波数領域OCTの欠点は、信号振幅が測定深度に伴って減少することである。
【0023】
物体アーム内に弱く反射する層だけがある場合でも、明瞭な干渉信号を得るために、測定放射は、好ましくは、前測定領域及び後測定領域において時間的に連続してフォーカスされる。前測定領域から後測定領域へ焦点をシフトさせることは、例えば2つの基準アームが利用される場合には、測定に用いられる基準アームの交換と同期して、又は、1つの基準アームだけが利用される場合には、基準アーム内の光路長におけるジャンプと同期して生じる。当業者ならば、更なるオプションも理解している。
【0024】
幾何学量は、好ましくは、物体の層厚、長さ、表面曲率、及び/又はトポグラフィである。デバイスは、幾何学量として層厚、長さ、及び/又は表面曲率(トポグラフィ)を確定するのに使われる。幾何学量は、例えば層厚、距離、長さ、及びトポグラフィを意味すると理解される。そのため、原理上、幾何学量は、好ましくは3次元、例えばデカルト座標系の点又はベクトルとすることができる。点又はベクトルは、より高い次元を有することもでき、ベクトルの1つの成分は、例えば波長、偏光等とすることができる。幾何学量は、物体の数多くの点、ベクトル、層厚、長さ、表面曲率、及び/又はトポグラフィを含むことができることも言うまでもないことである。当業者ならば、このデバイスによって確定することができる更なる幾何学量も理解している。
【0025】
物体アームは、好ましくは焦点スイッチを備える。デバイスが2つの物体アームを備え、光がこれらの物体アーム内を交互に伝播する場合、焦点は、適したレンズ選択によって得ることができる。しかし、2つの異なる光路長が1つの物体アームにおいて得られるべきである場合、焦点スイッチは、液体レンズ又は液晶として組み込まれることができる。
【0026】
いくつかの変形では、焦点スイッチは、特に焦点の変化が必要とされない物体が測定される場合には省くことができる。
【0027】
第1の領域は、好ましくは、眼球前側領域、より詳細には角膜の前側であり、第2の領域は、好ましくは、眼球後側領域、より詳細には網膜である。
【0028】
しかし、眼球でない他の物体(皮膚又は一般的な反射体)、又は眼球の他の領域、より詳細には例えば一般的に眼球の硝子体液等も検査することができることが当業者には明らかである。
【0029】
以下の節では、異なる深度スキャン領域を生成することができる方法を述べるために、5つのタイプ(第1のタイプから第5のタイプ)が用いられる。
【0030】
第1のタイプ
第1の光路長を有する第1の経路は、好ましくは第1の物体アームによって与えられ、第2の光路長を有する第2の経路は、好ましくは第2の物体アームによって与えられる。ここで、本実施形態のデバイスは、より詳細には正確に1つの基準アームを備える。
【0031】
デバイスは、3つ以上、例えば3つの物体アームを備えることもできることが当業者に明らかである。
【0032】
対応する方法では、光は、好ましくは、第1の光路長を有する第1の経路を備える第1の物体アーム、及び第2の光路長を有する第2の経路を備える第2の物体アームに連続して誘導される。例として、光を、2つのアームに次々に、すなわち交互に伝導することができる。
【0033】
そのため、光源からの光は、異なる長さを有する2つの物体アームを交互に伝播し、好ましくは、1つの基準アームが用いられる。2つの物体アームの光路長の差は、互いに離れた2つの領域間の光学距離に対応する。
【0034】
光学アームは、偏光コントローラーを有することができ、該偏光コントローラーによって、基準アームからの光の偏光を、物体アーム内の光の偏光に合わせることができる。
【0035】
基準アーム及び物体アームは、回転軸、半円ガラス板、半円吸収体、及び半円穴からなる回転可能要素を更に備えることができる。回転可能要素は、半回転中のそれぞれの場合に、回転可能要素の吸収材料によってそれぞれの光ビームを吸収することにり、又は、上記光ビームを回転可能要素内の穴を通して透過させることによって、第1の光学アーム及び第2の光学アームを交互に作動させることができる。
【0036】
焦点は、好ましくは、測定距離に同調して変位する。物体アームは、物体アーム内の光学系の屈折率及び物体アームの長さの点で異なる。Xスキャナー及びYスキャナーは、好ましくは、物体アームによって共用され、その結果として、単純な設計を有する効率的でかつ費用効果的なデバイスが得られる。Xスキャナー及びYスキャナーは、2つの別個のスキャナーによって実装することができるが、単一スキャナーによって実装することもできる。
【0037】
第2のタイプ
更なる好ましい実施形態では、第1の光路長は、第1の基準アームによって与えられ、第2の光路長は、第2の基準アームによって与えられる。
【0038】
対応する方法では、光は、好ましくは、第1の光路長を有する第1の経路を備える第1の基準アーム、及び第2の光路長を有する第2の経路を備える第2の基準アームに連続して誘導され、再度、光を2つの基準アームに例えば交互に伝導することができる。
【0039】
そのため、光源からの光は、異なる長さを有する2つの基準アーム内を交互に伝播し、好ましくは、1つの物体アームが用いられる。2つの基準アームの光路長の差は、互いに離れた2つの領域間の光学距離に対応する。
【0040】
第3のタイプ
更なる好ましい実施形態では、第1の光路長は第1の基準アームによって与えられ、第2の光路長は第1の物体アームによって与えられ、第3の光路長は第2の基準アームによって与えられ、第4の光路長は第2の物体アームによって与えられる。この場合、それぞれ1つの基準アーム及び1つの物体アームが、好ましくは対として用いられる。
【0041】
対応する方法では、光は、好ましくは、第1の光路長を有する第1の経路を備える第1の基準アーム、及び第2の光路長を有する第2の経路を備える第1の物体アームに誘導され、その後、第3の光路長を有する第3の経路を備える第2の基準アーム、及び第4の光路長を有する第4の経路を備える第2の物体アームに誘導される。したがって、第1の基準アーム及び第1の物体アームは、光が連続して誘導される対を形成する。その後、光を第2の対の光学アーム、すなわち第2の物体アーム及び第2の基準アームに誘導することができる。
【0042】
好ましい実施形態では、回転可能ミラーは、このミラーを用いて基準ビーム及び物体ビームに影響を及ぼすことによって、距離スイッチと焦点スイッチの両方として働くことができる。これは、デバイスの特に単純でかつコンパクトな設計をもたらす。
【0043】
第4のタイプ
デバイスは、好ましくは、内又は外に旋回することができる光学要素を有する物体アーム又は基準アームを備え、第1の光路長は、光学要素が内に旋回されると与えられ、第2の光路長は、光学要素が外に旋回されると与えられる。この場合、焦点スイッチは、例えば、液体レンズ又は液晶として組み込まれることができる。
【0044】
対応する方法では、好ましくは、光学要素は、物体アーム又は基準アームにおいて内に旋回されたり、外に旋回されたりする。これにより、第1の光路長を有する第1の経路は、光学要素が内に旋回されると設定され、第2の光路長を有する第2の経路は、光学要素が外に旋回されると設定され、光は、第1の経路及び第2の経路に連続して、より詳細には交互に誘導される。光学要素は、例えばミラーとして組み込まれることができる。
【0045】
そのため、光源からの光は、2つの異なる経路長を有する単一アーム(基準アーム又は物体アーム)に、時間的に連続して伝導される。アーム長の光学変化は、互いに離れた2つの領域間の光学距離に対応する。
【0046】
ここで、光学要素は、プリズム又はガラス板から形成されることができ、それによって、焦点及び測定領域を、前眼部及び後眼部間で同期して前後に切り換えることができる。
【0047】
この実施形態では、基準アーム及び物体アームは、さらに、回転軸、半円ガラス板、半円吸収体、及び半円穴からなる回転可能要素を備えることができる。回転可能要素は、半回転中のそれぞれの場合に、回転可能要素の吸収材料によってそれぞれの光ビームを吸収することにより、又は、上記光ビームを回転可能要素内の穴を通して透過させることによって、第1の光学アーム及び第2の光学アームを交互に作動させることができる。さらに、回転可能要素は、半回転中に物体アーム内でビーム経路にガラス板を挿入することができる。
【0048】
第5のタイプ
デバイスは、好ましくは、第1の光路長を有する第1のアーム及び第2の光路長を有する第2のアームを有し、第1及び第2のアームは、物体アーム又は基準アームとしてそれぞれ組み込まれ、一方のアームは、光の特性、より詳細には波長又は偏光を選択する光学変換要素を備え、検出器アームは、光学変換要素に対応する光学分離装置を備える。
【0049】
対応する方法では、光は、好ましくは、異なる経路長を有する、2つのアーム、より詳細には、物体アーム及び基準アームに同時に伝導され、第1のアームにおける光の1つの光学特性、より詳細には偏光又は波長は、第2のアームにおける同じ光学特性と異なり、光は、上記光学特性に基づいて光学分離装置によって検出器アーム内で分離される。
【0050】
そのため、光源からの光は、異なる長さの2つのアームに同時に伝導され、一方のアームの光は、特定の特性の点で(より詳細には、偏光又は波長において)他のアームの光と異なる。この場合、適した分離装置は、異なる特性を有する光が、基準アーム又は物体アームで、異なる長さを有する経路を通過することを可能にする。さらに、検出アームの適した分離装置は、2つの干渉が異なる検出器に送られることを可能にする。
【0051】
偏光を制御することができるように、偏光ビームスプリッターキューブをビーム経路内に設けることができる。
【0052】
本発明の更なる有利な実施形態及び特徴の組合せは、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲の全体から明らかになる。
【0053】
例示的な実施形態を説明するために図面が用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アームを有する第2のタイプであるデバイスの第1の実施形態変形例(embodiment variant)を示す図である。
【図2】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アームを有する第2のタイプであるデバイスの第2の実施形態変形例を示す図である。
【図3】幾何学量を確定するデバイスであって、時間的に連続して異なる経路長を有する単一基準アームを有する、第4のタイプであるデバイスの第3の実施形態変形例を示す図である。
【図4】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アームを有する第2のタイプであり、スペクトルOCTに基づくデバイスの第4の実施形態変形例を示す図である。
【図5】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アームを有する第2のタイプであり、SSOCTに基づくデバイスの第5の実施形態変形例を示す図である。
【図6】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アーム及び3つの液体レンズを有する第2のタイプであるデバイスの第6の実施形態変形例を示す図である。
【図7】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アーム及び2つの液晶を有する第2のタイプであるデバイスの第7の実施形態変形例を示す図である。
【図8a】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アーム及びミラースイッチを有する第1のタイプであるデバイスの第8の実施形態変形例を示す図である。
【図8b】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アーム及びミラースイッチを有する第1のタイプであるデバイスの第8の実施形態変形例を示す図である。
【図9a】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第9の実施形態変形例を示す図である。
【図9b】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第9の実施形態変形例を示す図である。
【図10】幾何学量を確定するデバイスであって、第5のタイプであり、光が2つのアームにおいて同時に伝導され、2つのアームの光が偏光の点で異なるデバイスの第10の実施形態変形例を示す図である。
【図11a】幾何学量を確定するデバイスであって、物体アーム及び基準アームの2つの対を有する第3のタイプであるデバイスの第11の実施形態変形例を示す図である。
【図11b】幾何学量を確定するデバイスであって、物体アーム及び基準アームの2つの対を有する第3のタイプであるデバイスの第11の実施形態変形例を示す図である。
【図12a】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アームを有する第2のタイプであるデバイスの第12の実施形態変形例を示す図である。
【図12b】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アームを有する第2のタイプであるデバイスの第12の実施形態変形例を示す図である。
【図13a】幾何学量を確定するデバイスであって、時間的に連続して異なる経路長を有する単一基準アームを有する、第4のタイプであるデバイスの第13の実施形態変形例を示す図である。
【図13b】幾何学量を確定するデバイスであって、時間的に連続して異なる経路長を有する単一基準アームを有する、第4のタイプであるデバイスの第13の実施形態変形例を示す図である。
【図14】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの基準アームを有する第2のタイプであるデバイスの第14の実施形態変形例を示す図である。
【図15】幾何学量を確定するデバイスであって、第5のタイプであり、光が2つのアームにおいて同時に伝導され、2つのアームの光が波長の点で異なるデバイスの第15の実施形態変形例を示す図である。
【図16】幾何学量を確定するデバイスであって、第5のタイプであり、光が2つのアームにおいて同時に伝導され、2つのアームの光が波長の点で異なるデバイスの第16の実施形態変形例を示す図である。
【図17a】可変焦点距離を有するレンズを示す図である。
【図17b】可変焦点距離を有するレンズを示す図である。
【図18a】切換え可能なビーム制限によって達成された2つの焦点の略図である。
【図18b】切換え可能なビーム制限によって達成された2つの焦点の略図である。
【図19a】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第17の実施形態変形例を示す図である。
【図19b】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第17の実施形態変形例を示す図である。
【図19c】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第17の実施形態変形例を示す図である。
【図20】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第18の実施形態変形例を示す図である。
【図21a】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第19の実施形態変形例を示す図である。
【図21b】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第19の実施形態変形例を示す図である。
【図22a】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第20の実施形態変形例を示す図である。
【図22b】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第20の実施形態変形例を示す図である。
【図22c】幾何学量を確定するデバイスであって、2つの物体アームを有する第1のタイプであるデバイスの第20の実施形態変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
原則として、図の同一の部分は同じ参照符号を与えられる。
【0056】
上述したように、2つの深度スキャン領域は、原理的には、5つの異なる方法で生成することができる。これらの5つの異なる方法は、第1によりよく概観するために、機能的原理に基づいて、図を参照して簡潔に説明される。
【0057】
1.光源からの光は、1つの基準アームが用いられて、異なる長さの2つの物体アームに交互に伝播する(図8a、図8b、図9a、図9b、図19a、図19b、図19c、図20、図21a、図21b、図22a、図22b、図22cを参照)。2つの物体アームの光路長の差は、互いに離れた2つの領域間の光学距離に対応する。
【0058】
2.光源からの光は、1つの物体アームが用いられて、異なる長さの2つの基準アームに交互に伝播する(図1、図2、図4、図5、図6、図7、図12a、図12b、図14を参照)。2つの基準アームの光路長の差は、互いに離れた2つの領域間の光学距離に対応する。
【0059】
3.光源からの光は、それぞれ1つの基準アーム及び1つの物体アームが常に対として用いられる、2つの基準アーム及び2つの物体アームに交互に伝播する(図11a、図11bを参照)。
【0060】
4.光源からの光は、時間的に連続して2つの異なる経路長を有する単一アームに伝導される(図3、図13a、図13bを参照)。図3、図13a、及び図13bは、時間的に連続して異なる長さの経路長を有する基準アームを示す。時間的に連続して異なる長さの経路長を有する物体アームも実現可能である。アーム長の光学変化は、互いに離れた2つの領域間の光学距離に対応する。
【0061】
5.光源からの光は、異なる長さの2つのアームに同時に伝導され(図9を参照)、一方のアームの光は、特定の特性において、例えば、偏光において(図10を参照)又は波長において(図15、図16を参照)他方のアームの光と異なる。この場合、適した分離装置は、異なる特性を有する光が、基準アーム又は物体アームにおいて異なる長さを有する経路を通過することを、確保しなければならない。さらに、検出アームの適した分離装置を用いて、2つの干渉が異なる検出器に送られることを確保しなければならない。
【0062】
物体内での反射の光学距離が基準ミラーの光学距離からzの値だけ離れているか又は−zの値だけ離れているかの判断は、純粋に数学的な理由により、実施される測定信号のフーリエ変換に基づいて行うことができず、それゆえ、測定信号は、基準ミラーの点の周囲にミラー対称に配置される。そのため、フーリエ変換後に、正しい位置zに信号の半分(いわゆる「実信号」)が現れ、間違った位置−zに別の半分の信号が現れる。間違った位置−zに現れる信号(いわゆる「ミラー信号」)は、基準アームの光学距離が、最も近い物体構造の光学距離よりも短い場合、又は、基準アームの光学距離が、最も遠い物体構造の光学距離よりも長い場合にしか、識別及び除外することができない。そのため、例えば眼球全体等の物体を測定するとき、基準ミラーについて2つの最適点が存在する。例えば、一方の点は、正確に角膜の前側までの光学距離に対応し、他方の点は、網膜までの光学距離に対応する。全ての軸長における基準ミラーの光学距離は、少なくとも網膜の光学距離に対応するように、測定される最も長い眼球(34mmの)の網膜の光学距離になければならない。
【0063】
図1では、これらの事実は、2つの縦の線を用いて可視化される。基準ミラー平面1の線RSE1は、短い基準アームの光学距離が位置する物体アームの位置を示す。基準ミラー平面2の線RSE2は、長い基準アームの光学距離が位置する物体アームの位置を示す。MB1は前眼部に存在する。MB1は、短い基準アームによって提供される測定領域(スキャン深度)である。前角膜表面と後水晶体表面との間に延在する全ての物体及び眼球構造は、MB1において測定され、ほとんどの場合、これは、前角膜表面、後角膜表面、前水晶体表面、及び後水晶体表面である。しかし、それは、角膜内のフラップカット(flap-cut)とすることもできるし、強膜又は虹彩とすることもできる。MB2は、後眼部に存在する。MB2は、長い基準アームによって提供される測定領域(スキャン深度)である。後水晶体表面の背後に位置する全ての物体及び眼球組織は、MB2で測定され、ほとんどの場合、これは網膜である。しかし、硝子体組織(vitreous-humor structure)の(異常な)変化も、後測定領域で測定することができる。
【0064】
そのため、上述した検討は、基準ミラー平面が、例えば角膜内に存在してはならないことを示す。その理由は、基準ミラー平面が角膜内に存在する場合、角膜の前側からの実信号が存在するか、角膜の後側からのミラー信号が存在するか、角膜の後側からの実信号が存在するか、又は角膜の前側からのミラー信号が存在するかを、確実に判定することができないからである。同じ理由で、基準ミラー平面は、眼房水内にも、水晶体内にも、硝子体液内にも位置することができない。
【0065】
測定の感度が、基準ミラー平面からの信号の距離の増加に伴って減少するため、また、測定される軸長が、通常14mm〜34mmの広い範囲をカバーするため、測定される最も長い眼球の位置における基準ミラーが、網膜信号が最大になるまで水晶体(natural lens)の方向に段階的に変位される場合に、網膜信号の感度が著しく増加する可能性がある。こうした理由で、網膜の測定を担当する基準アームは、基準ミラーを入射基準ビームの方向に変位させる変位メカニズムを有する。
【0066】
ミラー項(mirror terms)の約1000倍までの減衰を可能にする数学的アルゴリズムが存在する。その結果として、測定物体を3つ以上の測定領域に細分することが可能になり、同時に、ミラー項の振幅が小さくなる結果として、測定を誤るリスクが大幅に低減される。例として、4つの測定領域が用いられる場合、4つの基準アームが連続して作動されなければならない。これは、波長可変光源のコヒーレンスに関する要件を軽減する。しかし、これらの数学的アルゴリズムは、例えば眼球等の高速移動物体の場合に、常に実行可能であるわけではない。
【0067】
ここで、個々の図が、以下の節で詳細に述べられる。
【0068】
実施形態変形例1
本発明の第1の実施形態変形例が、図1に見られる。光ビームは破線で示され、電線路は実線で示され、光ファイバーは太い実線で示される。波長可変光源ALQは、狭スペクトル線(レーザー線)を放出する。光は、2×2光ファイバーカプラーFK1並びに2つのビームスプリッターST1及びST2を介して基準アーム及び物体アームに送られる。物体アームでは、波長可変光源からの光は、偏光コントローラーPK1を介し、焦点スイッチFS、スキャナーS、走査光学系SO、及び第3のビームスプリッターST3を介して測定物体、この場合、人間の眼球に達する。ビームスプリッターST3は、波長選択性ビームスプリッターであり、可視光をカメラKに反射し、通常、OCT光源に用いられる赤外光を透過させる。スキャナーは、角膜にわたって1つ又は2つの横方向寸法(lateral dimension)に光ビームを偏向し、光ビームは角膜から屈折して眼球の中に入る。眼球の屈折率が変化するたびに、光の一部が反射される。反射光は、同じ経路に沿ってビームスプリッターST2に戻る。カメラKは、前眼部の2次元画像を記録し、その画像が、ユーザーのためにモニターM上に提供される。モニター上に表示されるカメラ画像は、測定が眼球の中心で行われるように、ユーザーが、クロススライドKSを用いて患者の眼球の前に測定機器を位置決めすることを可能にする。
【0069】
基準アームでは、光は、スキャナーミラーSS及び収束光学系O3を介して、後面に基準ミラーRS2をコーティングされたガラス基板DKに達する。ガラス基板DKは、測定物体の網膜で反射した信号用の分散補償器として役立つ。眼球の中で生成される分散は、基準アーム内に挿入される、適したガラス基板DKによって部分的に補償されることができ、これが、網膜からの干渉信号を増加させる。この基準ミラーRS2によって反射される光は、同じ経路に沿ってビームスプリッターST2に戻る。基準ミラーRS2の上の矢印は、長い基準アームの初期位置が、眼球の測定される最も長い軸長のすぐ後ろに位置する基準ミラー平面RSE2に対応することを示す。基準ミラーRS2を進めることによって、ビームスプリッターST2から基準ミラーRS2まで計測される長い基準アームの光学経路が、ビームスプリッターST2から網膜まで計測される物体アームの光学経路に正確に対応するときに、網膜からの信号が最大になる。
【0070】
図1に示されるスキャナーミラーSSの位置では、光は、長い基準アームにおいて伝導され、後眼部(硝子体液及び網膜)の測定をもたらす。スキャナーミラーSSは、交互に2つの位置を採用する。一方の位置では、基準ビームは基準ミラーRS2に対して垂直に偏向され(図1を参照)、他の位置では、基準ビームは基準ミラーRS1に対して垂直に偏向される。
【0071】
基準ビームが、光学系O2を介して基準ミラーRS1上にフォーカスされる場合、眼球は、角膜の前側から水晶体の後側まで測定される。干渉信号の振幅は、偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3を用いて最大にすることができ、偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、前後に並べて設置されたコンポーネント、すなわち、4分の1波長板、半波長板、及び4分の1波長板からなる。
【0072】
ビームスプリッターST2では、測定物体によって反射された光と基準ミラーによって反射された光との間の干渉が存在する。ビームスプリッターST2において、光は、フォトダイオード2 PD2に入る1つの部分と、ビームスプリッターST1を介してフォトダイオード1 PD1に達する別の部分に分割される。フォトダイオード1 PD1及びフォトダイオード2 PD2からの干渉信号は、180°の位相差を有する。この位相差は、いわゆる平衡検出BD1の2つの逆方向切換え式フォトダイオード1 PD1及び2 PD2と結合して、干渉信号に悪い影響を及ぼすことなく、非コヒーレントに(incoherently)重なる光学信号のDC成分の抑制を可能にする。
【0073】
焦点スイッチFSは、眼球内の2つ以上の軸位置間で測定ビームの焦点を切り換える。好ましくは、それぞれ1つの焦点位置が、前測定領域MB1及び後測定領域MB2に採用される。焦点位置の切換えは、スキャナーミラーSSの切換えに同調されなければならない。焦点スイッチの考えられる実施形態は、表面の形状を変化させる液体レンズか、屈折率を変化させる液晶か、又は、例えば圧電アクチュエータによって、レンズの位置が光の伝播方向に調整されるレンズ、又は物体ビームのビーム経路に出入りするように交互に旋回する光学コンポーネントである。焦点距離を変化させる更なるオプションは、光ビームが位置1にあるレンズを通過するときに焦点距離1(図17aを参照)を有するレンズであって、該レンズが例えば90°だけ回転して位置2になるときに、焦点距離1と異なる、同じ光ビームについての(図17bを参照)焦点距離2を有するレンズを用いることにある。この場合、レンズの回転軸は、レンズによってフォーカスされる光の伝播方向に垂直である。ビーム変調器は、焦点スイッチの更なる実施形態変形例に適しており、該ビーム変調器は、光ビームのビーム断面を、内側中央ディスク領域又は外側環状領域に交互に制限する。中央又は環状ビーム束は、中央領域及び外側環状領域において2つの異なる焦点距離を有するレンズに入射される。その結果として、中央及び環状ビーム束は、異なる焦点距離を有する2つの異なるレンズ領域によって屈折される。結果として、光の伝播方向に異なるように配置された2つの焦点が存在する(図18a、図18bを参照)。例として、変調器は、例えば液晶とすることができ、該液晶は、特定の時間に、光を透過するように外側環状領域を設定し、かつ、光を吸収するように中央ディスクを設定し、その後に、光を吸収するように外側環状領域を設定し、かつ、光を透過するように中央ディスクを設定する。
【0074】
時間の関数としての光の波長は、例えばマッハツェンダー干渉計において測定され、また、電子信号(いわゆるkクロック)として信号処理ステージSVに入力されることができる。マッハツェンダー干渉計は、2つの2×2光ファイバーカプラーFK4及びFK5からなる。マッハツェンダー干渉計からの信号は、逆方向切換え式フォトダイオードPD3及びPD4並びに平衡検出BD2においてそのDC成分を除去される。平衡検出BD2の出力はkクロックである。2つのフォトダイオードPD3及びPD4に送られる干渉信号の振幅は、偏光コントローラーPK4を用いて最大にされる。
【0075】
平衡検出BD1後に、信号は、アナログ/デジタル変換器ADでデジタル化される前に増幅器ステージVSに給送される。次のステージ、すなわちデジタル信号処理SVでは、時間的なビート信号は、測定される光波長に基づいて、時間の関数として線形化され、スキャナーS及びミラースキャナーSSのそれぞれの個々の位置についてフーリエ変換される。これらの個々のAスキャンは、更なる処理ステップにおいて平均化、平滑化等をされることができる。スキャナーS及びミラースキャナーSSの各位置で生成されるAスキャンは、空間内に互いに隣り合って正確に設置されなければならない。そのため、Aスキャンのセットは、スキャナーSが1つの横断方向に走査するか又は2つの横断方向に走査するかに応じて、2次元又は3次元空間内で生成される。
【0076】
3D評価3Dの次のステージでは、角膜、水晶体、及び網膜の表面が、このAスキャンのセットにおいて計算(区分化)される。前角膜表面に続く表面(角膜の後側、レンズの前側、レンズの後側、及び網膜)は、その後、上流表面の表面曲率及び屈折率に基づいてAスキャンの方向を新しく計算することによって計算される。この新しい計算では、個々の表面における光ビームの屈折が考慮される(いわゆる屈折補正)。さらに、瞳孔における光ビームの回折を考慮することも可能であり、それは、3mm未満の直径を有する瞳孔の場合に特に好都合である。それにより得られる表面は、ここで、例えば正規直交関数のセット(例えば、ゼルニケ多項式(Zernike polynomial))に従って拡張することによって更に処理することができる。
【0077】
計算ブロックIOLでは、3次元空間に広がる角膜の前側、角膜の後側、水晶体の前側、水晶体の後側、及び網膜の表面は、屈折及び回折の法則(laws of refraction and diffraction)に従う仮想光ビームによって照射される。ここで、人間の眼球の仮想表面におけるこのいわゆるレイトレーシングは、網膜上で結像されるビームパターンの空間広がりを最小にするか又は最適化することによって眼球内水晶体の計算、角膜の光屈折補正等を可能にする。
【0078】
3D評価3D及び計算ブロックIOLは、通常、パーソナルコンピュータPC上で実施される。
【0079】
実施形態変形例2
本発明の第2の実施形態変形例が図2に描かれる。波長可変光源ALQは、狭スペクトル線(レーザー線)を放出する。光は、3つの2×2光ファイバーカプラーFK1、FK2、及びFK3を介して基準アーム及び物体アームに送られる。物体アームでは、波長可変光源ALQからの光は、光ファイバー偏光コントローラーPK1を介し、焦点スイッチFS、スキャナーS、走査光学系SO、及びビームスプリッターST3を介して測定物体、この場合、人間の眼球に達する。スキャナーSは、角膜にわたって1つ又は2つの横方向寸法に光ビームを偏向し、光ビームは角膜から屈折して眼球の中に入る。眼球の屈折率が変化するたびに、光の一部が反射される。反射光は、同じ経路に沿って光ファイバーカプラーFK3に戻る。カメラKは、前眼部の2次元画像を記録し、その画像が、ユーザーのためにモニターM上に提供される。モニター上に表示されるカメラ画像は、測定が眼球の中心で行われるように、ユーザーが、クロススライドKSを用いて患者の眼球の前に測定機器を位置決めすることを可能にする。
【0080】
光ファイバーカプラーFK3の1つの出力は、光ファイバースイッチFOSにつながり、光ファイバースイッチFOSは、長い基準アーム及び短い基準アームに光を交互に送る。光ファイバーの端面に直接適用される、光ファイバー偏光コントローラーPK2及び基準ミラーRS1からなる短い基準アームは、短い基準アーム内で反射される放射と前眼部で反射される放射との間の干渉を可能にする。光ファイバー偏光コントローラーPK3、光学系O3、及び基準ミラーRS2からなる長い基準アームは、長い基準アーム内で反射される放射と後眼部で反射される放射との間の干渉を可能にする。光学系O3は、基準ミラーRS2に基準ビームをフォーカスする。図2の残りのコンポーネントは、図1のコンポーネントと同一であり、図1の説明において説明されている。
【0081】
実施形態変形例3
図3は、機械的に同調される焦点及び距離の切換えの実施形態変形例を示す。或るタイプのプリズムPからなる光学コンポーネントは、ガラス板GPに接続される。物体アーム及び基準アームのビーム経路に出入りするように、このコンポーネントを旋回させることによって、焦点及び測定領域が、前眼部と後眼部との間で前後に同調して切り換えられる。プリズムPが基準ビーム内に導入されるとき、基準ミラーRS1は最も強い網膜信号の位置に移動される。この場合、基準アームは長く、後眼部が測定される。プリズムPが基準アームのビーム経路内に位置しない場合、測定されるのは前眼部である。この位置においては、前眼部からの信号を最適化するために、基準ミラーを移動させることは、通常、必要でない。この実施形態変形例の残りのコンポーネントは、図2に述べられている。
【0082】
実施形態変形例4
本発明の更なる第4の実施形態変形例が図4に示される。図4は、スペクトルOCTに基づく測定機器を示す。図2に示す設計と対照的に、光源LQは波長可変ではない。光源LQは、時間的に一定であるスペクトルを放出する。スペクトルが不変であるため、この実施形態はkクロックを必要とせず、したがって、特に、図2に存在する、マッハツェンダー干渉計、光ファイバーカプラーFK1、平衡検出BD2、及び光ファイバーカプラーFK2の全てが不要であり、こうした理由で、それらが図4に存在しない。ソースアームを除いて、図2に示される実施形態に対する唯一の差は、干渉信号の検出にある。光干渉は、光学系O4を介して検出器アーム内の回折格子Gにもたらされる。回折格子は、スペクトルの種々の波長を種々の方向に偏向させる。これは、ラインスキャンカメラZKの各ピクセルが、光源LQの波長スペクトルから特定のセクションを検出することを意味する。光学系O5は、光源LQのスペクトルの種々の波長をラインスキャンカメラZKにフォーカスする。図4の残りの全てのコンポーネントは、図2のコンポーネントと同一であり、図2の説明において説明されている。
【0083】
実施形態変形例5
図5は、波長可変光源ALQを有するOCTを示す。図2に示す、2つの2×2光ファイバーカプラーFK2及びFK3の代わりに、ここでは3×3光ファイバーカプラーFK2が用いられる。3×3光ファイバーカプラーFK2は、1つの物体アームと2つの基準アームに光を分割する。ミラースキャナーは、短い基準アームからの光及び長い基準アームからの光を、基準ミラーRS1に交互に偏向する。偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、短い基準アームにおける偏光又は長い基準アームにおける偏光を物体アームの偏光に整合させるために用いられる。光学系O2は、短い基準アームからの光を基準ミラーRS1にフォーカスさせる。光学系O3は、長い基準アームからの光を基準ミラーRS1にフォーカスさせる。残りのコンポーネントは、図2及び図1の説明において既に説明されている。
【0084】
実施形態変形例6
簡潔にするために、図6は、OCTの2つの基準アーム及び物体アームのみを示す。残りのコンポーネントは省略されている。図6で省略されたソースアームは、例えば図5に示すソースアームと同一とすることができる。図6で省略された検出アームは、例えば図5に示す検出アームと同一とすることができる。図6は、その屈折率を周期的にかつ同調された方式で変更する3つの液体レンズFL1、FL2、及びFL3を示す。FL2は、短い基準アームのビームを基準ミラーRS1に一定のレートでフォーカスしたり、デフォーカスしたりし、FL3は、長い基準アームのビームを基準ミラーRS2に同じレートでフォーカスしたり、デフォーカスしたりするが、その位相は、180°だけシフトされている。その結果として、2つの基準アームのうちの一方だけが、物体アームから反射された光と任意のある時間に干渉することができる。図6は、液体レンズFL3が、分散補償器DKを収容する長い基準アームのビームを、基準ミラーRS2にフォーカスする方法を示す。結果として、長い基準アームの非常に大きな割合の光パワーが、光ファイバーカプラーFK2の光ファイバーに戻るように結合される。そのため、図6に示すスナップショットにおいて干渉することができるのは、長い基準アームである。すなわち、後眼部からの信号が測定される。そのため、示すスナップショットにおいて長い基準アームが開いていると言うことができる。
【0085】
図6は、液体レンズFL2が基準ビームをデフォーカスする方法を示す。その結果として、基準ビーム光パワーは、光ファイバーカプラーFK2の光ファイバーに戻らない、又は該光パワーの無視できるほどに僅かな量だけが光ファイバーカプラーFK2の光ファイバーに戻る。したがって、短い基準アームは、物体アームから反射される光と干渉することができない。すなわち、この時点で、前眼部からの信号を測定することはできない。そのため、短い基準アームが閉じていると言うことができる。
【0086】
偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、短い基準アームにおける偏光又は長い基準アームにおける偏光を物体アームの偏光に整合させるために用いられる。
【0087】
液体レンズFL1は、測定放射を、前眼部及び後眼部内に交互にフォーカスする。3つの液体レンズFL1、FL2、及びFL3は、同調して動作する。すなわち、FL1がビームを前眼部にフォーカスする場合、FL2は、基準ビームを基準ミラーRS1にフォーカスし、FL3は、基準ビームを基準ミラーRS2にデフォーカスする。FL1がビームを後眼部にフォーカスする場合、FL2は、基準ビームを基準ミラーRS1にデフォーカスし、FL3は、基準ビームを基準ミラーRS2にフォーカスする。
【0088】
実施形態変形例7
簡潔にするために、図7は、OCTの2つの基準アーム及び物体アームのみを示す。残りのコンポーネントは省略されている。図7で省略されたソースアームは、例えば図5に示すソースアームと同一とすることができる。図7で省略された検出アームは、例えば図5に示す検出アームと同一とすることができる。2つの基準アームの開閉は、2つの液晶LCS1及びLCS2を用いてもたらされる。LCS1は、短い基準アームを開閉し、LCS2は、長い基準アームを開閉する。任意のある時間に、2つの液晶のうちの一方だけが、透過状態にあり、2つの基準アームのうちの一方だけが、任意のある時間に物体アームから反射される放射と干渉することができる。図7には分散補償器は描かれていない。或る程度まで、長い基準アーム内の光ファイバーも、光ファイバー内の対応する経路によって、後眼部内の経路を補償することにより分散補償器として用いることができる。
【0089】
偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、短い基準アームにおける偏光又は長い基準アームにおける偏光を物体アームにおける偏光に整合させるために用いられる。光学系O2は、短い基準アームからの光を基準ミラーRS1にフォーカスさせる。光学系O3は、長い基準アームからの光を基準ミラーRS2にフォーカスさせる。
【0090】
実施形態変形例8
実施形態変形例8は、1つの基準アーム及び2つの物体アームを有する設計を示す。簡潔にするために、図8a及び図8bは、ソースアーム及び検出アームを示していない。図8a及び図8bで省略されたソースアームは、例えば図5に示すソースアームと同一とすることができる。図8a及び図8bで省略された検出アームは、例えば図5に示す検出アームと同一とすることができる。スイッチは、2つの物体アームのうちの一方を交互に開閉する。任意のある時間に、2つの物体アームのうちの一方だけが開いており、そのため、任意のある時間に、2つの物体アームのうちの一方だけが、基準アームから反射される放射と干渉することができる。(図8aに示すように)2つの物体アームの上側のアームが開いている場合、前眼部で反射される光が、基準アームから反射される光と干渉することができる。S1を介してFK2からスイッチまでの経路(長い物体アーム)とO2を介してFK2からスイッチまでの経路(短い物体アーム)との間の光路長の差は、前眼部の光路長に対応する。図8aは、短い物体アームからの光がスイッチにおいて吸収されることを示す。スイッチは、例えば2つの異なる角度位置を交互に採用するミラーとすることができる。ミラーが下に収納される場合、短い物体アームが開口する、図8b参照。ミラーのこの位置では、長い物体アームからの光が吸収体A1において吸収される。
【0091】
基準ミラーRS1は、短い物体アームが開口したときにのみ変位される。基準ミラーの変位は、測定される最も長い眼球を測定するために用いられる位置から開始する。基準ミラーを光学系O3の方向に変位させることによって、網膜信号が最大となる基準ミラーの位置が採用される。網膜信号を最大にすることは、白内障が存在する結果として網膜信号が強く減衰する眼球において必要とされる。
【0092】
偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、短い物体アームにおける偏光又は長い物体アームにおける偏光を基準アームにおける偏光に整合させるために用いられる。光学系O1は、長い物体アームからの光を前眼部にフォーカスさせる。光学系O2は、短い物体アームからの光を後眼部にフォーカスさせる。光学系O3は、基準アームからの光を基準ミラーRS1にフォーカスさせる。
【0093】
実施形態変形例9
実施形態変形例9は、1つの基準アーム及び2つの物体アームを有する設計を示す。簡潔にするために、図9a及び図9bは、ソースアーム及び検出アームを示していない。図9a及び図9bで省略されたソースアームは、例えば図5に示すソースアームと同一とすることができる。図9a及び図9bで省略された検出アームは、例えば図5に示す検出アームと同一とすることができる。2つの液晶LCS1及びLCS2の形態の2つのスイッチは、2つの物体アームのうちの一方を交互に開閉する。任意のある時間に、2つの物体アームのうちの一方だけが開いており、そのため、任意の或る時間に、2つの物体アームのうちの一方だけが、基準アームから反射される放射と干渉することができる。(図9aに示すように)2つの物体アームの上側のアームが開いている場合、前眼部で反射される光が、基準アームから反射される光と干渉することができる。S1を介してFK2からビームスプリッターST4までの経路(長い物体アーム)とO2を介してFK2からビームスプリッターST4までの経路(短い物体アーム)との間の光路長の差は、前眼部の光路長に対応する。図9aは、短い物体アームからの光が液晶LCS2において吸収されることを示す。図9bは、短い物体アームからの光が眼球に送られる間のスナップショットを示す。この設定では、短い物体アームからの光が、基準アームから反射される光と干渉することができる。
【0094】
図9bは、長い物体アームからの光が液晶LCS1において吸収されることを示す。
【0095】
基準ミラーRS1は、短い物体アームが開口したときにのみ変位される。基準ミラーの変位は、測定される最も長い眼球を測定するために用いられる位置から開始する。基準ミラーを光学系O3の方向に変位させることによって、網膜信号が最大となる基準ミラーの位置が採用される。網膜信号を最大にすることは、白内障が存在する結果として網膜信号が強く減衰する眼球において必要とされる。
【0096】
偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、短い物体アームにおける偏光又は長い物体アームにおける偏光を基準アームにおける偏光に整合させるために用いられる。光学系O1は、長い物体アームからの光を前眼部にフォーカスさせる。光学系O2は、短い物体アームからの光を後眼部にフォーカスさせる。光学系O3は、基準アームからの光を基準ミラーRS1にフォーカスさせる。
【0097】
実施形態変形例10
図10は、2つの偏光ビームスプリッターキューブPST1及びPST2並びに2つの液晶LCS1及びLCS2を有する設計を示す。図10には、2つの物体アーム及び1つの基準アームが存在する。光源ALQからビームスプリッターST2まで、図10に示す実施形態変形例は、図1に示す実施形態変形例に対応する。光学系O2は、基準ビームを基準ミラーRS1にフォーカスする。2つの物体アームが存在し、2つの物体アームのうちの一方が迂回ユニットを収容する。迂回ユニットは、偏光コントローラーPK2、2つの偏向ミラーS1及びS2、液晶LCS2、並びに光学系O3からなる。光学系O3は、測定ビームを前眼部にフォーカスする。偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、基準アームにおける偏光を、迂回ユニットを有する物体アーム又は迂回ユニットを有さない物体アームにおける偏光に整合させるために用いられる。偏光ビームスプリッターキューブPST1は、入射測定ビームを2つの互いに垂直な偏光を有するビームに分割する。すなわち、迂回ユニットを通過する放射の偏光は、迂回ユニットを通過しない放射の偏光に垂直である。偏光ビームスプリッターキューブPST2は、互いに垂直な2つの偏光を再結合する。眼球は僅かに複屈折しているだけであるため、眼球の構造によって反射される2つの偏光は、途中で通過した経路を通過することになる。すなわち、入射p偏光が迂回ユニットを通過する場合、眼球に入射するp偏光の反射も迂回ユニットを通過し、入射s偏光が迂回ユニットを通過しない場合、眼球に入射するs偏光の反射も迂回ユニットを通過しない。迂回ユニットを通過する光は、前眼部を測定する。迂回ユニットを通過しない光は、後眼部を測定する。図10に示すスナップショットでは、液晶LCS1は、迂回ユニットのない物体アームを開き、液晶LCS2は、迂回ユニットを有する物体アームを閉じる。
【0098】
実施形態変形例11
図11a及び図11bは、回転可能ミラーS1が、距離スイッチと焦点スイッチの両方として働く設計を示す。これは、回転可能ミラーS1が2つの基準ビームと物体ビームの両方に影響を及ぼすことによって可能にされる。
【0099】
簡潔にするために、図11a及び図11bは、ソースアーム及び検出アームを示していない。図11a及び図11bで省略されたソースアームは、例えば図5に示すソースアームと同一とすることができる。図11a及び図11bで省略された検出アームは、例えば図5に示す検出アームと同一とすることができる。
【0100】
光学系O1は、物体ビームをミラーS1に偏向する。光学系O2は、短い基準アームからの基準ビームを基準ミラーRS1にフォーカスする、図11aを参照。光学系O3は、長い基準アームからの基準ビームを基準ミラーRS1にフォーカスする、図11bを参照。偏光コントローラーPK1、PK2、及びPK3は、基準アームにおける偏光を物体アームにおける偏光に整合させるために用いられる。
【0101】
ミラーS1の位置1では、短い基準アームの光は、基準ミラーRS1において反射され、そのため、短い基準アームから反射される光と、物体アームの前測定領域から反射される光との間で干渉が可能にされる。位置1では、長い基準アームの光は反射されず、そのため、長い基準アームから反射される光と、物体アームの後測定領域から反射される光との間で干渉を起こすことはできない。長い基準アームからの光は、好ましくは、吸収体A1にて吸収され、それにより、長い基準アームからの光は、光ファイバーカプラーFK2内に戻るように結合しない。ミラーS1の位置1では、物体アームからの光は、光学系O4に送られ、光学系O4は、走査光学系SOと結合して、光を前測定領域MB1にフォーカスする。測定ビームは、固定ミラーS2によって、位置1にあるミラーS3に偏向される。
【0102】
ミラーS1の位置2では、長い反射アームの光は、基準ミラーRS1において反射され、そのため、長い基準アームから反射される光と、物体アームの後測定領域から反射される光との間で干渉が可能にされる。位置2では、短い基準アームの光は反射されず、そのため、短い基準アームから反射される光と、物体アームの前測定領域から反射される光との間で干渉を起こすことはできない。短い基準アームからの光は、好ましくは、吸収体A2にて吸収され、それにより、短い基準アームからの光は、光ファイバーカプラーFK2内に戻るように結合しない。ミラーS1の位置2では、物体アームからの光は、ここでは位置2にあるミラーS3に直接送られる。ミラーS3の位置2は、ミラーS3での反射後の測定ビームの伝播方向が、ミラーS1及びミラーS3が位置1にあるときの伝播方向に正確に対応するように測定ビームを偏向する。ミラーS1の位置2は、測定ビームは、光学系O4を通過せず、したがって、後測定領域MB2にフォーカスされる。
【0103】
実施形態変形例12
実施形態変形例12は、2つの基準アーム及び1つの物体アームを有する設計を示す。図12a及び図12bに示す実施形態変形例は、機械的に同調される焦点及び距離切換えを示す。
【0104】
簡潔にするために、図12aは、ソースアーム及び検出アームを示していない。図12aで省略されたソースアームは、例えば図5に示すソースアームと同一とすることができる。図12aで省略された検出アームは、例えば図5に示す検出アームと同一とすることができる。図12aは、回転軸、半円ガラス板、半円吸収体、及び半円穴からなる回転可能要素DEを示す。回転可能要素DEは、半回転中のそれぞれの場合に、回転可能要素DEの吸収材料によってそれぞれの基準ビームを吸収することにより、又は、上記基準ビームを回転可能要素DE内の穴を通して透過させることにより、短い基準アーム及び長い基準アームを交互に作動させる。さらに、回転可能要素DEは、半回転中に、物体アームのビーム経路にガラス板を挿入する。ガラス板の厚さは、測定ビームがガラス板を通過するときに、測定ビームの焦点が後眼部で合うように選択される(図12aを参照)。回転可能要素DEのこの位置では、長い基準アームが開口し、短い基準アームからのビームが吸収される。後眼部がこの位置で測定される。
【0105】
測定ビームのビーム経路内にガラス板が位置しない位置に回転可能要素がある場合、測定ビームの焦点は、前眼部に位置する。前眼部を測定するために用いられる短い基準アームが吸収体によって閉じられ、かつ、測定ビームが基準ミラーRS2まで遮られずに伝播するように、後眼部を測定するために用いられる長い基準アームが開かれる、まさにその瞬間に、測定ビームの焦点は、前眼部から後眼部へジャンプする。
【0106】
図12bは、図12aに示す視点と比較して、90°だけ回転した視点からの回転可能要素DEを示す。3つの黒点は、物体アームビーム及び2つの基準アームビームの貫入点を示す。
【0107】
実施形態変形例13
実施形態変形例13は、1つの基準アーム及び1つの物体アームを有する設計を示す。
【0108】
簡潔にするために、図13aは、ソースアーム及び検出アームを示していない。図13aで省略されたソースアームは、例えば図3に示すソースアームと同一とすることができる。図13aで省略された検出アームは、例えば図3に示す検出アームと同一とすることができる。図13aは、回転軸、半円ガラス板、半円ミラー、及び半円穴からなる回転可能要素DEを示す。回転可能要素DEは、半回転中のそれぞれの場合に、回転可能要素DEのミラーにおいてそれぞれの基準ビームを反射することによって、又は、上記基準ビームを回転可能要素DE内の穴を通して透過させることによって、短い基準アーム及び長い基準アームを交互に作動させる。回転可能要素DEのミラーは、基準アームのビーム経路内にある場合、短い基準アーム用の基準ミラーとして働く。
【0109】
さらに、回転可能要素DEは、半回転中に、物体アームのビーム経路にガラス板を挿入する。ガラス板の厚さは、測定ビームがガラス板を通過するときに、測定ビームの焦点が後眼部で合うように選択される。後眼部測定ビームのビーム経路内にガラス板が位置しない位置に回転可能要素がある場合、測定ビームの焦点は、前眼部に位置する。そのため、基準ビームが基準ミラーRS2まで遮られずに伝播することができるよう、後眼部を測定するために用いられる長い基準アームが開かれるように、回転可能要素DE内のミラーが回転して基準アームから出る、まさにその瞬間に、測定ビームの焦点は、前眼部から後眼部へジャンプする。
【0110】
図13bは、図13aに示す視点と比較して、90°だけ回転した視点からの回転可能要素DEを示す。2つの黒点は、物体アームビーム及び基準アームビームの貫入点を示す。
【0111】
実施形態変形例14
実施形態変形例14は、同心の暗円環及び明円環の内部パターンを有する円錐又は半球が、患者の眼球の前に直接取付けられているという1つの差を除いて実施形態変形例1と同一である。この環状パターン系RMSは、検査される眼球の涙液膜によって映される。この環状パターン系の反射は、カメラKによって記録される。ソフトウェアは、カメラに結像される環状パターン系の変形から涙液膜又は前角膜表面の表面形状を計算することができる。環状パターン系によって測定される表面形状は、OCT測定の測定精度を改善するために用いられる。
【0112】
実施形態変形例15
実施形態変形例15は図15に示される。この実施形態では、前眼部及び後眼部は、異なる波長で測定される。生きている人間の眼球を測定するために用いることができる最大許容可能光パワーは、波長の増加とともに増加するため、2つの波長を用いることは有利であるとすることができる。したがって、前眼部の測定には、後眼部の測定に用いられる波長(例えば、850nm又は1060nm)と比べて、より高い光パワーを有する、より長い波長A(例えば、1300nm)を用いることができ、この場合、測定放射の貫入深度は、後眼部の場合と同程度の大きさである必要はない。図15では、波長Aは点線として表示される一方、他の波長Bは破線として示される。
【0113】
波長可変光源ALQ−Aは、狭スペクトル線(レーザー線)を放出する。光は、2×2光ファイバーカプラーFK1−A、光学系O1−A、波長選択性ビームスプリッターWLST0、並びに2つのビームスプリッターST1及びST2を介して基準アーム及び物体アームにおいて伝導される。波長選択性ビームスプリッターWLST0は、波長可変光源ALQ−Aからの波長がほぼ完全に反射され、波長可変光源ALQ−Bからの波長がほぼ完全に透過されるようにコーティングされる。結果として、2つの波長可変光源からの2つの波長は、ほとんど損失なしで統合される。物体アームでは、波長可変光源ALQ−Aからの光は、波長選択性ビームスプリッターWLST1から偏光コントローラーPK1−Aを介し、ミラーS1、光学系O3−A、波長選択性ビームスプリッターWLST2、スキャナーS、走査光学系SO、及び第3のビームスプリッターST3を介して、測定物体、この場合、人間の眼球に達する。光学系O3−Aは、走査光学系SOと結合して、波長可変光源ALQ−Aからの光を前眼部にフォーカスする。ビームスプリッターST3は、可視光をカメラKに反射し、OCT光源のために通常用いられる赤外光を透過させる波長選択性ビームスプリッターである。スキャナーは、角膜にわたって1つ又は2つの横方向寸法に光ビームを偏向し、光ビームは角膜から屈折して眼球の中に入る。眼球の屈折率が変化するたびに、光の一部が反射される。反射光は、同じ経路に沿ってビームスプリッターST2に戻る。カメラKは、前眼部の2次元画像を記録し、その画像が、ユーザーのためにモニターM上に提供される。モニター上に表示されるカメラ画像は、測定が眼球の中心で行われるように、ユーザーが、クロススライドKSを用いて患者の眼球の前に測定機器を位置決めすることを可能にする。
【0114】
基準アームでは、光源ALQ−Aからの光は、波長選択性ビームスプリッターWLST3によって基準ミラーRS1に偏向される。光学系O2−Aは、基準ビームを基準ミラーRS1にフォーカスする。この基準ミラーRS1によって反射される光は、同じ経路に沿ってビームスプリッターST2に戻る。光源ALQ−A用の基準アームの長さは、この基準アームが前眼部を測定するように設計される。
【0115】
第2の波長可変光源ALQ−Bは、狭スペクトル線(レーザー線)を放出する。光は、2×2光ファイバーカプラーFK1−B、波長選択性ビームスプリッターWLST0、並びに2つのビームスプリッターST1及びST2を介して基準アーム及び物体アームにおいて伝導される。物体アームでは、波長可変光源ALQ−Bからの光は、波長選択性ビームスプリッターWLST1を通して透過され、波長選択性ビームスプリッターWLST1から、偏光コントローラーPK1−Bを介し、波長選択性ビームスプリッターWLST2を介し、スキャナーS、走査光学系SO、及びビームスプリッターST3を介して眼球に達する。走査光学系SOは、光源ALQ−Bからの光を後眼部にフォーカスする。
【0116】
基準アームでは、光源ALQ−Bからの光は、波長選択性ビームスプリッターWLST3によって基準ミラーRS2に偏向される。光学系O2−Bは、基準ビームを基準ミラーRS2にフォーカスする。この基準ミラーRS2によって反射される光は、同じ経路に沿ってビームスプリッターST2に戻る。光源ALQ−B用の基準アームの長さは、この基準アームが後眼部を測定するように設計される。基準ミラーRS2の上の矢印は、この基準アームの初期位置が、眼球の測定される最も長い軸長のすぐ後ろに位置する基準ミラー平面RSE2に対応することを示すことを意図される。基準ミラーRS2を進めることによって、網膜からの信号が最大になる。
【0117】
干渉信号の振幅は、偏光コントローラーPK1−A、PK2−A、PK1−B、及びPK2−Bを用いて最大にすることができ、偏光コントローラーPK1−A、PK2−A、PK1−B、及びPK2−Bは、前後に並べて設置されたコンポーネント、すなわち、4分の1波長板、半波長板、及び4分の1波長板からなる。
【0118】
ビームスプリッターST2では、測定物体によって反射される光と基準ミラーによって反射される光との間に干渉が存在し、2つの光源からの光は、それ自身とのみ干渉することができる。ビームスプリッターST2では、光は、波長選択性ビームスプリッターWLST5に向かう1つの部分と、ビームスプリッターST1を介して波長選択性ビームスプリッターWLST4に向かう別の部分に分割される。2つの波長選択性ビームスプリッターWLST4及びWLST5は、2つの光源からの波長を分離し、光を種々のフォトダイオードPD1−A、PD2−A、PD1−B、及びPD2−Bに伝送する。フォトダイオードPD1−A及びPD2−Aからの干渉信号は、180°の位相差を有する。この位相差は、いわゆる平衡検出BD1の2つの逆方向切換え式フォトダイオードPD1−A及びPD2−Aと結合して、干渉信号に悪い影響を及ぼすことなく、非コヒーレントに重なる光学信号のDC成分の抑制を可能にする。同じことが、光源ALQ−Bからの光を検出するフォトダイオードについて当てはまる。
【0119】
両方の光源はそれぞれ、マッハツェンダー干渉計を備え、その出力信号は、それぞれ2つの逆方向切換え式フォトダイオードPD3−A、PD4−A、又はPD3−B、PD4−B並びにそれぞれ1つの平衡検出BD2−A及びBD2−Bによって測定される。両方のマッハツェンダー干渉計はそれぞれ、2つの2×2光ファイバーカプラーFK4−A及びFK5−A又はFK4−B及びFK5−Bからなる。平衡検出BD2−Aの出力は、kクロック−Aと呼ばれる、光源ALQ−Aからのkクロックである。平衡検出BD2−Bの出力は、kクロック−Bと呼ばれる、光源ALQ−Bからのkクロックである。2つのフォトダイオードPD3−A及びPD4−Aに送られる干渉信号の振幅は、偏光コントローラーPK4−Aを用いて最大にされる。2つのフォトダイオードPD3−B及びPD4−Bに転送される干渉信号の振幅は、偏光コントローラーPK4−Bを用いて最大にされる。図15の残りのコンポーネントは、図1の説明において既に説明されている。
【0120】
実施形態変形例16
2つの異なる波長及び2つの異なる光源を利用する更なる実施形態変形例が図16に描かれる。図16はスペクトルOCTに基づく測定機器を示す。図15に示される設計と比較すると、光源LQ−A及びLQ−Bは波長可変ではない。光源LQ−A及びLQ−Bは、時間的に一定であるスペクトルを放出する。スペクトルが不変であるため、この実施形態はkクロックを必要とせず、したがって、特に、図15に存在する、マッハツェンダー干渉計並びに光ファイバーカプラーFK1−A及びFK1−Bは不必要である。さらに、平衡検出BD2−A、BD2−Bは、通常、スペクトルOCT内に存在せず、こうした理由で、平衡検出BD2−A、BD2−Bが図16に存在しない。ソースアームを除いて、図15に示される実施形態に対する唯一の差は、干渉信号の検出にある。光源LQ−A及び光源LQ−Bからの干渉は、波長選択性ビームスプリッターWLST4によって分離され、2つの異なる回折格子G−A、G−Bに送られる。回折格子は、スペクトルの種々の波長を種々方向に偏向させる。これは、ラインスキャンカメラZK−A及びZK−Bの各ピクセルが、光源LQ−A又はLQ−Bの波長スペクトルから特定のセクションを検出することを意味する。光学系O5−A及びO5−Bは、光源LQ−A又はLQ−Bからのスペクトルの種々の波長をラインスキャンカメラZK−A及びZK−Bにフォーカスする。図16の残りの全てのコンポーネントは、図15のコンポーネントと同一であり、図15の説明において説明される。
【0121】
実施形態変形例17
焦点及び測定距離を同調して変位させる実施形態変形例が図19a、図19b、及び図19cに示される。波長可変光源ALQからの光は、2×2光ファイバーカプラーFK1に伝導される。光ファイバーカプラーFK1は、光を3つの物体アーム及び1つの基準アームに分割する。基準アームは、単一モード光ファイバー及び偏光コントローラーPK1からなる。偏光コントローラーの例は、単一モードファイバーが3つのループに巻かれるデバイスである。これらの3つのループはそれぞれ、機械的に傾斜可能であり、これは、任意の偏光状態が、単一モード光ファイバーにおける光に影響を受けることを可能にする。基準アームは、光ファイバーカプラーFK1から始まり、光ファイバーカプラーFK2で終了する。基準アームの光路長は一定のままである。基準アームからの光と利用される物体アームからの光との間の干渉は、光ファイバーカプラーFK2において生じる。
【0122】
3つの物体アームは、光ファイバー1×3スイッチFOSによって生成される。光ファイバースイッチFOSは、光を3つの異なる物体アームに交互に送る。3つの物体アームのそれぞれにおいて、それぞれ1つの偏光コントローラーPK2、PK3、及びPK4、並びに、それぞれ1つの光学系O1、O2、及びO3が存在する。XスキャナーXS、YスキャナーYS、及び走査光学系SOは、3つ全ての物体アームによって共有される。3つの物体アームは、3つの光学系O1、O2、及びO3の屈折率の点で、並びに、光ファイバー1×3スイッチFOSから物体の前表面まで計測される光路長の点で異なる。図19a、図19b、及び図19cでは、物体の前表面は、前角膜表面である。測定ビームは、フォーカスをよりよく示すために、図19a、図19b、及び図19cにおいて3つの光ビームで示される。
【0123】
図19aでは、1×3スイッチFOSは、長い光ファイバーを有する物体アームに光を送る。光がこの物体アームを通過する場合、前測定領域MB1で反射される光が基準アームからの光と干渉する。光学系O1は、走査光学系SOと結合して、好ましくは、眼球角膜表面HHと水晶体の前表面KLとの間に光をフォーカスする。前基準表面RF1は、基準アームと同じ光路長を有する前測定領域MB1内の表面である。これは、前測定領域MB1の測定感度が、この表面RF1上で最大であることを意味する。XスキャナーXSは、物体アームからの光を、物体にわたってX方向に偏向させる。XスキャナーXSによって偏向される測定ビームの移動方向は、Xスキャンの矢印で示される。Xスキャンの開始時に、XスキャナーXSは、角膜の端から開始するX方向のスキャンをもたらす初期位置1を仮定する。YスキャナーYSは、物体アームからの光を、物体にわたってY方向に偏向させる。走査光学系SOは、測定ビームが所望の角度で前角膜表面に当たる(impinge)ように、測定ビームを眼球に偏光させるのに役立つ。走査光学系は、通常、測定ビームが測定物体にわたってテレセントリックに(telecentrically)偏向されるように選択される。フォトダイオードPD1及びPD2、平衡検出BD1、増幅器ステージVS、アナログ/デジタル変換器AD、並びに信号処理SVからなる検出アームにおいて、考えられる最も強い干渉信号が検出されるよう、物体によって反射されるビームの偏光を設定するために偏光コントローラーPK2が用いられる。測定信号は、コンピュータPCに送信され、コンピュータPCは、測定信号を更に処理し、モニター上の数値又は画像としてユーザーに提供する。
【0124】
図19bでは、1×3スイッチFOSは、中間長の光ファイバーを有する物体アームに光を送る。簡潔にするために、中間長の光ファイバーは、図19a、図19b、及び図19cの図では過度に短く示されている。光がこの物体アームを通過する場合、中間測定領域MB2で反射される光が、基準アームからの光と干渉する。中間基準表面RF2は、基準アームと同じ光路長を有する中間測定領域MB2内の表面である。これは、中間測定領域MB2の測定感度が、この表面RF2上で最大であることを意味する。光学系O2は、走査光学系SOと結合して、好ましくは、水晶体KLの中心の近くに光をフォーカスする。XスキャナーXSは、物体アームからの光を、物体にわたってX方向に偏向させる。Xスキャンの開始時に、XスキャナーXSは、水晶体KLの端から開始するX方向のスキャンをもたらす初期位置2を仮定する。
【0125】
図19cでは1×3スイッチFOSは、短い光ファイバーを有する物体アームに光を送る。光がこの物体アームを通過する場合、後測定領域MB3で反射される光が基準アームからの光と干渉する。光学系O3は、走査光学系SOと結合して、好ましくは、後基準表面RF3の近くに光をフォーカスする。後基準表面RF3は、基準アームと同じ光路長を有する後測定領域MB3内の表面である。これは、後測定領域MB3の測定感度が、この表面RF3上で最大であることを意味する。XスキャナーXSは、物体アームからの光を、物体にわたってX方向に偏向させる。Xスキャンの開始時に、XスキャナーXSは、網膜の端から開始するX方向のスキャンをもたらす初期位置3を仮定する。いくつかの用途では、網膜信号を測定するために、網膜までの軸方向距離を測定するだけで十分である可能性がある。この場合、Xスキャナー及びYスキャナーは移動しない。
【0126】
明確さを改善するために、図19a、図19b、及び図19cの初期位置1、2、及び3の角度は、差を誇張されて描かれている。実際の設計では、3つの物体アームの光学軸間の角度は、市販のXスキャナーXS(例えば、ガルバノメータースキャナー)の角度範囲が、3つの初期位置1、2、及び3を採用するのに十分であるように、かなり小さいであろう。
【0127】
図19a、図19b、及び図19cに示す実施形態変形例を、1×3光ファイバースイッチの代わりに1×2光ファイバースイッチ又は1×4光ファイバースイッチを用いて動作することもできる。2つの測定領域及び2つの焦点は、1×2光ファイバースイッチを用いて生成され、一方、4つの測定領域及び4つの焦点は、1×4光ファイバースイッチを用いて生成される。n個の測定領域及びn個の焦点を生成する1×n光ファイバースイッチを有するデバイスを作ることが可能であることは言うまでもない。
【0128】
実施形態変形例18
図20は、図19a、図19b、及び図19cで利用される焦点及び測定距離回路を利用するスペクトル短コヒーレンス断層撮影装置の実施形態変形例を示す。図19a、図19b、及び図19cに示す実施形態変形例と対照的に、図20に示す実施形態は、スーパールミネッセントダイオードSLD、並びに、回折格子G、ラインスキャンカメラZK、並びに光学系O5及びO6からなる分光計を用いる。スーパールミネッセントダイオードSLDからの光は、2×2光ファイバーカプラーFK1に送られる。2×2光ファイバーカプラーFK1は、3つの物体アーム及び1つの基準アームに光を分割する。基準アームは、単一モードファイバー、偏光コントローラーPK1、光学系O4、及び基準ミラーRSからなる。光学系O4は、基準ビームを基準ミラーRSにフォーカスする。基準ミラーRSは、任意選択で、基準表面RF1、RF2、及び/又はRF3を、物体アームにおいて測定される1つ又は複数の構造の距離に正確に整合させるように、基準ビームの伝播方向に制御方式で変位されるように取り付けられることができる。基準ミラーRSを変位させることは、測定信号を最大にするのに役立ち、それは、非常に低い測定信号の場合に必要である可能性がある。
【0129】
図20では、1×3スイッチFOSは、長い光ファイバーを有する物体アームに光を送る。光がこの物体アームを通過する場合、前測定領域MB1で反射される光が、基準アームからの光と干渉する。光学系O1は、走査光学系SOと連動して、好ましくは、眼球角膜表面HHと水晶体の前表面KLとの間に光をフォーカスする。前基準表面RF1は、基準アームと同じ光路長を有する前測定領域MB1内の表面である。これは、前測定領域MB1の測定感度が、この表面RF1上で最大であることを意味する。XスキャナーXSは、物体アームからの光を、物体にわたってX方向に偏向させる。XスキャナーXSによって偏向される測定ビームの移動方向は、Xスキャンの矢印で示される。Xスキャンの開始時に、XスキャナーXSは、角膜の端から開始するX方向のスキャンをもたらす初期位置1を仮定する。YスキャナーYSは、物体アームからの光を、物体にわたってY方向に偏向させる。走査光学系SOは、測定ビームが、所望の角度で前角膜表面に当たるように、測定ビームを眼球に偏向させるのに役立つ。走査光学系は、通常、測定ビームが測定物体にわたってテレセントリックに偏向されるように選択されることになる。考えられる最も強い干渉信号が検出アームにおいて検出されるよう、物体によって反射されるビームの偏光を設定するために偏光コントローラーPK2が用いられる。
【0130】
検出アームでは、光学系O5は、光ファイバーから出る光を、コリメート方式で回折格子Gにもたらす。回折格子Gは、広帯域光源、例えばスーパールミネッセントダイオードSLDのスペクトルに含まれる波長を種々の方向に回折する。光学系O6は、伝播方向が異なる波長を、空間的に分離した点でラインスキャンカメラに結像させる。ラインスキャンカメラ内の各ピクセルは、スーパールミネッセントダイオードSLDのスペクトルから狭波長範囲を検出する。ラインスキャンカメラからの出力は、アナログ/デジタル変換器ADにおいてデジタル化される。デジタル化された信号は、コンピュータPCでフーリエ変換される。フーリエ変換は、物体の反射を、基準表面RF1からの物体の距離の関数として提供する。位置の関数としてのこれらの反射は、輝度パターン又はデータ値としてモニター上に表示される。輝度パターンは、1次元的に(A−スキャン)、2次元的に(B−スキャン)、又は3次元的に(Cスキャン)表示されることができる。
【0131】
図20に示す実施形態変形例は、1×3光ファイバースイッチFOSを使用し、交互に用いられる3つの物体アームをもたらす。3つの物体アームは、前後に並べて配列される3つの測定領域における測定を可能にし、焦点は、測定領域切換えに同調してそれぞれの測定領域内に位置される。簡潔にするために、図20は、最も前の眼球部の測定用のビーム経路だけを示す。光ファイバースイッチFOSによる中間測定領域及び後測定領域の作動は示されていない。
【0132】
2つ、4つ、又はn個の物体アームを生成する、1×2光ファイバースイッチ、1×4光ファイバースイッチ、又は1×n光ファイバースイッチが用いられる変形が実行可能であることは言うまでもない。
【0133】
スペクトルOCTの図20に示す実施形態変形例は、さらに図20に示すデバイスと異なる、焦点及び距離切換えデバイスを備えることができる。これは、本特許文書で開示される全ての焦点及び距離切換えが、分光計を備えるスペクトルOCT機器と波長可変光源を備えるSSOCT機器の両方で動作するからである。より詳細には、図20に示すスペクトルOCTの物体アーム部は、例えば、図8a及び図8b、図21a及び図21b、又は図22a、図22b、及び図22cに記載される焦点及び距離切換えデバイスによって置換することができる。
【0134】
実施形態変形例19
焦点及び測定距離を同調して変位させる更なる実施形態変形例が図21a及び図21bに示される。波長可変光源ALQからの光は、2×2光ファイバーカプラーFK1に伝導される。光ファイバーカプラーFK1は、光を2つの物体アーム及び1つの基準アームに分割する。基準アームは、単一モード光ファイバー及び偏光コントローラーPK1からなる。基準アームは、光ファイバーカプラーFK1から始まり、光ファイバーカプラーFK2で終了する。基準アームからの光は、光ファイバーカプラーFK2において、物体アームからの光と干渉する。
【0135】
物体アームには、偏光コントローラーPK2、スキャナーミラー1 SS1、スキャナーミラー2 SS2、XYスキャナーXYS、走査光学系SO、及び静止ミラーS1、S2、並びに光学系O1、O2、及びO3が存在する。スキャナーミラー1 SS1は、2つの異なる物体アームに光を交互に送る。2つの物体アームは、2つの光学系O2及びO3の点で、並びに、光ファイバーカプラーFK1から物体の前表面まで計測された光路長の点で異なる。図21a及び図21bでは、物体の前表面は前角膜表面である。
【0136】
図20aでは、スキャナーミラー1 SS1は、空気中で長い経路を有する物体アームに光を偏向する。正しい角度での偏向は、スキャナーミラー1 SS1及びスキャナーミラー2 SS2の特定の位置1でのみ生じる。例として、スキャナーミラーはガルバノメーターミラーとすることができる。光がこの物体アームを通過する場合、前測定領域MB1で反射される光が基準アームからの光と干渉する。光学系O1は、光学系O2及び走査光学系SOと結合して、好ましくは水晶体KLの近くに光をフォーカスする。前基準表面RF1は、基準アームと同じ光路長を有する前測定領域MB1内の表面である。これは、前測定領域MB1の測定感度が、この表面RF1上で最大であることを意味する。XYスキャナーXYSは、物体アームからの光を、物体にわたってX方向及びY方向に偏向させる。走査光学系SOは、測定ビームが、所望の角度で前角膜表面に当たるように、測定ビームを物体に偏光させるのに役立つ。走査光学系は、通常、測定ビームが測定物体にわたってテレセントリックに偏向されるように選択される。フォトダイオードPD1及びPD2、平衡検出BD1、増幅器ステージVS、アナログ/デジタル変換器AD、及び信号処理SVからなる検出アームにおいて、考えられる最も強い干渉信号が検出されるよう、物体によって反射されるビームの偏光を設定するために偏光コントローラーPK1及びPK2が用いられる。測定信号は、コンピュータPCに送信され、コンピュータPCは、測定信号を更に処理し、数値又は画像としてユーザーに提供する。
【0137】
図21bでは、スキャナーミラー1 SS1は、空気中で短い経路を有する物体アームに光を偏向する。正しい角度での偏向は、スキャナーミラー1 SS1及びスキャナーミラー2 SS2の特定の位置2でのみ生じる。光がこの物体アームを通過する場合、後測定領域MB2で反射される光が基準アームからの光と干渉する。光学系O1は、光学系O3及び走査光学系SOと連動して、後基準表面RF2の近くに光をフォーカスする。
【0138】
実施形態変形例20
図21a及び図21bに示す実施形態変形例は、2つの静止ミラーS1及びS2の代わりに、3つの静止ミラーS1、S2、及びS3、又はn個の静止ミラーを用いて動作させることもできる。3つの測定領域及び3つの焦点は、3つのミラーを用いて生成され、n個の測定領域及びn個の焦点は、n個のミラーを用いて生成される。3つのミラーS1、S2、及びS3を有する実施形態変形例は、図22a、図22b、及び図22cに示される。
【0139】
結論として、本発明によれば、長い軸長を有する物体の場合にも、特に効率的な測定を可能にするデバイス及び方法が開発されることに留意するべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明物体又は拡散物体の少なくとも第1の領域(MB1)からの幾何学量及び該第1の領域(MB1)から離れた第2の領域(MB2)からの幾何学量を確定するデバイスであって、物体アーム、基準アーム、検出器アーム、及び光を放出する光源(ALQ)を有するコヒーレンス断層撮影装置を備え、前記物体アーム及び/又は前記基準アームによって形成される、第1の光路長を有する第1の経路及び第2の光路長を有する第2の経路を有し、前記光源(ALQ)によって放出される前記光は、前記第1の経路及び前記第2の経路を通って伝播することができる、デバイス。
【請求項2】
前記コヒーレンス断層撮影装置は、周波数領域OCTとして、より詳細にはSSOCTとして又はスペクトルOCTとして組み込まれる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記幾何学量は、前記物体の層厚、長さ、表面曲率、及び/又はトポグラフィである、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記物体アームは、焦点スイッチ(FS)を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1の領域(MB1)は、眼球前側領域、より詳細には前角膜表面であり、前記第2の領域(MB2)は、眼球後側領域、より詳細には網膜である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1の光路長を有する前記第1の経路は第1の物体アームによって与えられ、前記第2の光路長を有する前記第2の経路は第2の物体アームによって与えられる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の光路長は第1の基準アームによって与えられ、前記第2の光路長は第2の基準アームによって与えられる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の光路長は第1の基準アームによって与えられ、前記第2の光路長は第1の物体アームによって与えられ、第3の光路長が第2の基準アームによって与えられ、第4の光路長が第2の物体アームによって与えられる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
内又は外に旋回することができる光学要素を有する物体アーム又は基準アームを備え、前記第1の光路長は、前記光学要素が内に旋回されると与えられ、前記第2の光路長は、前記光学要素が外に旋回されると与えられる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
第1の光路長を有する第1のアーム及び第2の光路長を有する第2のアームを有し、前記第1のアーム及び前記第2のアームは物体アーム又は基準アームとしてそれぞれ組み込まれ、一方のアームは、前記光の特性、より詳細には波長又は偏光を変更する光学変換要素(PST1)を備え、前記検出器アームは、前記光学変換要素に対応する光学分離装置を備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
物体アーム、基準アーム、検出器アーム、及び光を放出する光源(ALQ)を有するコヒーレンス断層撮影装置を用いて、透明物体又は拡散物体の少なくとも第1の領域(MB1)からの幾何学量及び前記第1の領域(MB1)から離れた第2の領域(MB2)からの幾何学量を確定する方法であって、前記光源(ALQ)からの前記光は、前記第1の領域(MB1)の前記幾何学量を確定するために、前記物体アーム及び/又は前記基準アームにおいて第1の光路長を有する第1の経路にわたって誘導され、また、前記光源からの前記光は、前記第2の領域(MB2)の前記幾何学量を確定するために、前記物体アーム及び/又は前記基準アームにおいて第2の光路長を有する第2の経路にわたって誘導される、方法。
【請求項12】
前記光は、前記第1の光路長を有する前記第1の経路を備える第1の物体アーム、及び前記第2の光路長を有する前記第2の経路を備える第2の物体アームにおいて連続して誘導される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記光は、前記第1の光路長を有する前記第1の経路を備える第1の基準アーム、及び前記第2の光路長を有する前記第2の経路を備える第2の基準アームにおいて誘導される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記光は、前記第1の光路長を有する前記第1の経路を備える第1の基準アーム、及び前記第2の光路長を有する前記第2の経路を備える第1の物体アームにおいて連続して誘導され、その後、前記第3の光路長を有する前記第3の経路を備える第2の基準アーム、及び前記第4の光路長を有する前記第4の経路を備える第2の物体アームにおいて連続して誘導される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
光学要素が、前記物体アーム又は前記基準アームにおいて内及び外に旋回し、前記光学要素が内に旋回されると前記第1の光路長を有する第1の経路が設定され、前記光学要素が外に旋回されると前記第2の光路長を有する第2の経路が設定され、前記光は、前記第1の経路及び前記第2の経路において連続して誘導される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記光は、異なる光路長を有する2つのアーム、より詳細には物体アーム及び基準アームにおいて同時に誘導され、第1のアームにおける前記光の1つの光学特性、より詳細には偏光又は波長は、第2のアームにおける同じ光学特性と異なり、前記光は、前記光学特性に基づいて光学分離装置によって前記検出器アームにおいて分離される、請求項11に記載の方法。
【請求項1】
透明物体又は拡散物体の少なくとも第1の領域(MB1)からの幾何学量及び該第1の領域(MB1)から離れた第2の領域(MB2)からの幾何学量を確定するデバイスであって、物体アーム、基準アーム、検出器アーム、及び光を放出する光源(ALQ)を有するコヒーレンス断層撮影装置を備え、前記物体アーム及び/又は前記基準アームによって形成される、第1の光路長を有する第1の経路及び第2の光路長を有する第2の経路を有し、前記光源(ALQ)によって放出される前記光は、前記第1の経路及び前記第2の経路を通って伝播することができる、デバイス。
【請求項2】
前記コヒーレンス断層撮影装置は、周波数領域OCTとして、より詳細にはSSOCTとして又はスペクトルOCTとして組み込まれる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記幾何学量は、前記物体の層厚、長さ、表面曲率、及び/又はトポグラフィである、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記物体アームは、焦点スイッチ(FS)を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1の領域(MB1)は、眼球前側領域、より詳細には前角膜表面であり、前記第2の領域(MB2)は、眼球後側領域、より詳細には網膜である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1の光路長を有する前記第1の経路は第1の物体アームによって与えられ、前記第2の光路長を有する前記第2の経路は第2の物体アームによって与えられる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の光路長は第1の基準アームによって与えられ、前記第2の光路長は第2の基準アームによって与えられる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の光路長は第1の基準アームによって与えられ、前記第2の光路長は第1の物体アームによって与えられ、第3の光路長が第2の基準アームによって与えられ、第4の光路長が第2の物体アームによって与えられる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
内又は外に旋回することができる光学要素を有する物体アーム又は基準アームを備え、前記第1の光路長は、前記光学要素が内に旋回されると与えられ、前記第2の光路長は、前記光学要素が外に旋回されると与えられる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
第1の光路長を有する第1のアーム及び第2の光路長を有する第2のアームを有し、前記第1のアーム及び前記第2のアームは物体アーム又は基準アームとしてそれぞれ組み込まれ、一方のアームは、前記光の特性、より詳細には波長又は偏光を変更する光学変換要素(PST1)を備え、前記検出器アームは、前記光学変換要素に対応する光学分離装置を備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
物体アーム、基準アーム、検出器アーム、及び光を放出する光源(ALQ)を有するコヒーレンス断層撮影装置を用いて、透明物体又は拡散物体の少なくとも第1の領域(MB1)からの幾何学量及び前記第1の領域(MB1)から離れた第2の領域(MB2)からの幾何学量を確定する方法であって、前記光源(ALQ)からの前記光は、前記第1の領域(MB1)の前記幾何学量を確定するために、前記物体アーム及び/又は前記基準アームにおいて第1の光路長を有する第1の経路にわたって誘導され、また、前記光源からの前記光は、前記第2の領域(MB2)の前記幾何学量を確定するために、前記物体アーム及び/又は前記基準アームにおいて第2の光路長を有する第2の経路にわたって誘導される、方法。
【請求項12】
前記光は、前記第1の光路長を有する前記第1の経路を備える第1の物体アーム、及び前記第2の光路長を有する前記第2の経路を備える第2の物体アームにおいて連続して誘導される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記光は、前記第1の光路長を有する前記第1の経路を備える第1の基準アーム、及び前記第2の光路長を有する前記第2の経路を備える第2の基準アームにおいて誘導される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記光は、前記第1の光路長を有する前記第1の経路を備える第1の基準アーム、及び前記第2の光路長を有する前記第2の経路を備える第1の物体アームにおいて連続して誘導され、その後、前記第3の光路長を有する前記第3の経路を備える第2の基準アーム、及び前記第4の光路長を有する前記第4の経路を備える第2の物体アームにおいて連続して誘導される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
光学要素が、前記物体アーム又は前記基準アームにおいて内及び外に旋回し、前記光学要素が内に旋回されると前記第1の光路長を有する第1の経路が設定され、前記光学要素が外に旋回されると前記第2の光路長を有する第2の経路が設定され、前記光は、前記第1の経路及び前記第2の経路において連続して誘導される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記光は、異なる光路長を有する2つのアーム、より詳細には物体アーム及び基準アームにおいて同時に誘導され、第1のアームにおける前記光の1つの光学特性、より詳細には偏光又は波長は、第2のアームにおける同じ光学特性と異なり、前記光は、前記光学特性に基づいて光学分離装置によって前記検出器アームにおいて分離される、請求項11に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図12a】
【図12b】
【図13a】
【図13b】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図18a】
【図18b】
【図19a】
【図19b】
【図19c】
【図20】
【図21a】
【図21b】
【図22a】
【図22b】
【図22c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図12a】
【図12b】
【図13a】
【図13b】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図18a】
【図18b】
【図19a】
【図19b】
【図19c】
【図20】
【図21a】
【図21b】
【図22a】
【図22b】
【図22c】
【公開番号】特開2012−161610(P2012−161610A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23165(P2012−23165)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【出願人】(501288743)ハーグ−シュトライト アーゲー (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【出願人】(501288743)ハーグ−シュトライト アーゲー (4)
【Fターム(参考)】
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