説明

呼吸器疾患の治療のためのスルホンアミド化合物

式(I)の化合物は、呼吸器疾患の治療に有用な、PPARγのアゴニストである。式(I)において、R1、R2またはR3は、それぞれ独立して、ハロ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボン酸またはそのエステルもしくはアミドを表し; R4は水素またはアルキルを表し; m、nまたはpは独立して0、1、2または3を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPARγのアゴニストであるスルホンアミド化合物、および呼吸器疾患を治療するための前記化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
広範なスペクトルの呼吸器疾患・障害が認識されており、その多くは病因が重複し、互いに影響し合っている。こうした疾患のうち最も広く知られていて高頻度に見られる2つの疾患が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と喘息である。呼吸器疾患は重大な炎症性要素を有する。例えば、COPDと喘息の現在の治療法は主に症状の軽減に重点がおかれており、短時間および長時間作用型の気管支拡張剤が単剤療法として用いられるか、長時間作用型β2アゴニスト気管支拡張剤と吸入コルチコステロイド剤(ICS)との併用療法が用いられている。
【0003】
COPDは世界中で罹患率および死亡率の主な原因となっており、現在40才以上の成人での有病率は9〜10%と推定されている(Halbert et al, Eur.Respir.J, 2006, 28(3):523-32(非特許文献1))。世界保健機関(WHO)によれば、約6億人がCOPDで苦しんでおり、そして300万人ほどが毎年この病気で死亡している。そのため、2020年までには、COPDが世界で死亡原因の第3位に、そして疾病原因の第5位になると予想されている。
【0004】
COPDの臨床的特徴としては息切れ、咳および痰が挙げられ、慢性気管支炎と気腫(遠位肺気腔の拡大)の結果として慢性気道閉塞および肺過膨張が認められる。慢性気管支過敏症は気管支喘息において顕著であるが、COPDにも見られる。COPDにおける気道リモデリングは、持続的かつ不可逆的な気道狭窄と粘液の過剰分泌につながる。気道狭窄と過剰反応性の直接原因は不明であるが、一般的には、気道平滑筋の機能異常が結果的に弛緩低下や弛緩障害または収縮の増強をもたらす、と提唱されている。
【0005】
COPDは死亡および身体障害の重大な原因となる。治療ガイドラインは、この疾病による死亡率と罹患率を下げるために、早期発見および禁煙プログラムの実行を推奨している。しかしながら、早期発見や診断はいくつかの理由のため難しかった。
【0006】
COPDは発症までに何年もかかり、喫煙者はしばしば喫煙からの病的影響を否定して、強い息切れがあるという初期警告兆候を加齢のせいにしてしまう。同様に、気管支炎の急性発作もCOPDの初期症状として一般開業医に認識されないことが多い。患者の多くは複数の疾患(例えば、慢性気管支炎または喘息性気管支炎)の特徴を示しており、このことが、特に病気の初期段階では、正確な診断を困難にしている。さらに、多くの患者は、肺機能の低下に関連した、より深刻な症状(例えば、呼吸困難、咳がおさまらない、痰が出るなど)を経験するまで、医療の助けを求めようとしない。その結果、患者の大半はより進行した疾病段階に入るまで診断や治療を受けない。
【0007】
最近、呼吸器疾患の原因を理解する上で進展があったにもかかわらず、それらは依然として治療が難しいことで知られている。以上のことから、COPDや喘息などの呼吸器疾患の予防および治療のための新規化合物を同定する必要があることがわかる。
【0008】
現在、COPD治療は主に、短時間および長時間作用型の気管支拡張剤を、単剤療法として用いて、または長時間作用型β2アゴニスト気管支拡張剤と吸入コルチコステロイド剤(ICS)との併用療法として用いて、症状を軽減することに焦点が当てられている。ICS単独またはICSとβ2アゴニストとの併用に関する抗炎症データが期待外れであったため、COPDに効果的な抗炎症薬の探索が高まってきている。検討中の1つの仮説は、新規な、確実に抗炎症作用のある薬剤がCOPDに特徴的な機能低下を停止させたり、遅らせたりすることができるかどうかである。増悪の頻度と重篤度を軽減することは、COPD治療にとってますます重要なターゲットとなってきている。というのは、増悪後の患者の予後がよくないからである。COPDおよび喘息における抗炎症療法は、増悪の頻度と重症度を減らし、クオリティ・オブ・ライフを向上させ、そしておそらくは肺機能の低下を抑える、ことが期待される。さらに、COPDでの効果的な抗炎症療法は肺機能の改善をもたらす可能性がある。
【0009】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(Peroxisome Proliferator-Activated Receptor gamma: PPARγ)アゴニストは、糖尿病患者のグルコースへの感受性を高めるクラスの薬物であり、現在は2種類のPPARγアゴニストが糖尿病での臨床使用を承認されている:ロシグリタゾン(Rosiglitazone)およびピオグリタゾン(Pioglitazone)。Campbell IW, Curr Mol Med. 2005 May;5(3):349-63(非特許文献2)を参照されたい。これらの化合物は両方ともチアゾリジンジオン系(TZD)であり、実用面では、全身送達のために経口経路で投与される。PPARγの生理的活性化は、インスリンに対する末梢組織の感受性を高め、それゆえに血液からのグルコースのクリアランスを促進して、所望の抗糖尿病効果をもたらすと考えられている。
【0010】
残念ながら、PPARγアゴニストには、血液希釈、末梢浮腫および肺水腫、うっ血性心不全(CHF)といった、心血管系への望まれない作用がある。CHFは労作性呼吸困難、疲労、また多くの場合、左心室機能不全(LVR)から生じる末梢浮腫を特徴とする複雑な臨床症候群である。こうした望まれない作用はPPARγの活性化に起因すると考えられている。特に、PPARγアゴニストが、腎臓でのPPARγ受容体に結合することを介して、正常な体液バランスの維持を妨げるという仮説を検証するために、相当な努力が注がれてきた。Guan et al, Nat Med. 2005;11(8):861-6(非特許文献3)およびZhang et al, Proc Natl Acad Sci USA. 2005 28;102(26):9406-11(非特許文献4)を参照されたい。全身送達のための経口経路でのPPARγアゴニストによる治療はまた、望まれない体重増加とも関連している。
【0011】
グルコース代謝に対するそれらの効果に加えて、ロシグリタゾンなどの特定のPPARγアゴニストが抗炎症効果を示す可能性があることを実証する、さまざまな報告例が発表されている。例えば、(i) ロシグリタゾンは糖尿病患者において抗炎症効果と一致する効果を発揮することが報告された(Haffner et al, Circulation. 2002 Aug 6;106(6):679-84(非特許文献5); Marx et al, Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2003 Feb 1;23(2):283-8(非特許文献6)); (ii) ロシグリタゾンは、以下に挙げられる様々な炎症の動物モデルにおいて抗炎症効果を示すことが報告された:カラギーナン誘発性足浮腫(Cuzzocrea et al, Eur J Pharmacol. 2004 Jan 1;483(1):79-93(非特許文献7))、TNBS誘発性大腸炎(Desreumanux et al, J Exp Med. 2001 Apr 2;193(7):827-38(非特許文献8); Sanchez-Hidalgo et al, Biochem Pharmacol. 2005 Jun 15;69(12):1733-44(非特許文献9))、実験的脳脊髄炎(Feinstein et al, Ann Neurol. 2002 Jun;51(6):694-702(非特許文献10))、コラーゲン誘発性関節炎(Cuzzocrea et al, Arthritis Rheum. 2003 Dec;48(12):3544-56(非特許文献11))、アジュバント誘発性関節炎(Shiojiri et al, Eur J Pharmacol. 2002 Jul 19;448(2-3):231-8(非特許文献12))、カラギーナン誘発性胸膜炎(Cuzzocrea et al, Eur J Pharmacol. 2004 Jan 1;483(1):79-93(非特許文献13))、オボアルブミン誘発性肺炎症(Lee et al, FASEB J. 2005 Jun;19(8):1033-5(非特許文献14))、およびLPS誘発性肺組織好中球増加症(Birrell et al, Eur Respir J. 2004 Jul;24(1):18-23(非特許文献15))、ならびに(iii) ロシグリタゾンは、以下に挙げられるように、単離細胞において抗炎症効果を発揮することが報告された:マウスマクロファージ内でのiNOS発現(Reddy et al, Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2004 Mar;286(3):L613-9(非特許文献16))、ヒト気管支上皮細胞内でのTNFα誘発MMP-9活性(Hetzel et al, Thorax. 2003 Sep;58(9):778-83(非特許文献17))、ヒト気道平滑筋細胞増殖(Ward et al, Br J Pharmacol. 2004 Feb;141(3):517-25(非特許文献18))、および好中球によるMMP-9放出(WO 00/62766(特許文献1))。
【0012】
肺に関係する細胞での抗炎症活性の観察に基づき、PPARγアゴニストの有用性は一般に、喘息、COPD、嚢胞性線維症、肺線維症を含む炎症性呼吸器疾患の治療について開示されている(特許出願WO00/53601(特許文献2)、WO02/13812(特許文献3)およびWO00/62766(特許文献4)を参照されたい)。これらの開示には、経口と吸入の両経路による投与が含まれる。
【0013】
COPD患者はうっ血性心不全(CHF)によるリスクが他の臨床集団よりも高いことが知られており(Curkendall et al, Ann Epidemiol, 2006;16: 63-70(非特許文献19); Padeletti et al, Int J Cardiol. 2008;125(2):209-15(非特許文献20))、それゆえ、CHFの可能性が増すのを避けるために、これらの患者ではPPARγ受容体の全身活性化を最小限に抑えることが重要である。呼吸器系の薬物の吸入経路による投与は、肺を抗炎症剤で標的化しながら、その薬物の全身暴露を低く保ち、全身作用の可能性と副作用の発生を抑えるための1つのアプローチである。
【0014】
したがって、呼吸器疾患の治療におけるPPARγ受容体アゴニストの抗炎症剤としての潜在的有用性を考慮し、また、この薬物クラスへの高い全身暴露による望ましくない副作用に対するその潜在的有用性を重視したうえで、このような疾患の治療に有効であり、かつ吸入による肺送達に適する物理化学的性質を有し、しかも吸入後に低い全身暴露を示すPPARγ受容体アゴニストが必要である。
【0015】
吸入薬物の全身暴露は一般的に2つの方法によって達成される。呼吸器薬物の経口吸入後、デバイス(例えば、吸入器またはネブライザー)により送達された投与量の10〜50%が気道に送達されて、肺で目的の薬理作用を奏することができる。最終的に、肺で代謝されなかった薬物は肺から体循環に送られる。ひとたび活性薬物が体循環に存在すると、血漿からの薬物のクリアランス速度がその全身作用にとって極めて重要である。したがって、肺疾患治療用の吸入薬物の望まれる特性は、投与した用量に対して低い血漿薬物濃度曲線下面積(AUC)をもつことである。というのは、こうした特性によって、全身性の薬理活性が制限され、それゆえ副作用の可能性が減ると予想されるからである。この点について各種化合物の適合性は、等用量を静脈内投与した後の血漿AUCを測定することにより評価できる。肺疾患治療のために吸入に適した化合物は低い血漿AUCをもつものであり、そして全身性の副作用の性質がありそうな化合物はより高い血漿AUCをもつと考えられる。
【0016】
呼吸器薬物の経口吸入後、吸入した用量の残りの50〜90%は嚥下される。したがって、吸入薬物による全身暴露を減らすための別の方法は、薬物の経口バイオアベイラビリティ(胃腸管が未変化の薬物を吸収して、それを体循環に送達できること)を減らすことである。低い経口バイオアベイラビリティをもつ化合物は、等量の同一化合物を静脈内(i.v.)経路で投与したときよりも、経口投与後の血漿AUCにより測定して、かなり低い血漿暴露をもつと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO 0062766
【特許文献2】WO00/53601
【特許文献3】WO02/13812
【特許文献4】WO00/62766
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Halbert et al, Eur.Respir.J, 2006, 28(3):523-32
【非特許文献2】Campbell IW, Curr Mol Med. 2005 May;5(3):349-63
【非特許文献3】Guan et al, Nat Med. 2005;11(8):861-6
【非特許文献4】Zhang et al, Proc Natl Acad Sci USA. 2005 28;102(26):9406-11
【非特許文献5】Haffner et al, Circulation. 2002 Aug 6;106(6):679-84
【非特許文献6】Marx et al, Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2003 Feb 1;23(2):283-8
【非特許文献7】Cuzzocrea et al, Eur J Pharmacol. 2004 Jan 1;483(1):79-93
【非特許文献8】Desreumanux et al, J Exp Med. 2001 Apr 2;193(7):827-38
【非特許文献9】Sanchez-Hidalgo et al, Biochem Pharmacol. 2005 Jun 15;69(12):1733-44
【非特許文献10】Feinstein et al, Ann Neurol. 2002 Jun;51(6):694-702
【非特許文献11】Cuzzocrea et al, Arthritis Rheum. 2003 Dec;48(12):3544-56
【非特許文献12】Shiojiri et al, Eur J Pharmacol. 2002 Jul 19;448(2-3):231-8
【非特許文献13】Cuzzocrea et al, Eur J Pharmacol. 2004 Jan 1;483(1):79-93
【非特許文献14】Lee et al, FASEB J. 2005 Jun;19(8):1033-5
【非特許文献15】Birrell et al, Eur Respir J. 2004 Jul;24(1):18-23
【非特許文献16】Reddy et al, Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2004 Mar;286(3):L613-9
【非特許文献17】Hetzel et al, Thorax. 2003 Sep;58(9):778-83
【非特許文献18】Ward et al, Br J Pharmacol. 2004 Feb;141(3):517-25
【非特許文献19】Curkendall et al, Ann Epidemiol, 2006;16: 63-70
【非特許文献20】Padeletti et al, Int J Cardiol. 2008;125(2):209-15
【発明の概要】
【0019】
発明の説明
一態様によれば、本発明は、式(I)の化合物:
【化1】

【0020】
[式中、
R1、R2またはR3は、それぞれ独立して、ハロ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボン酸またはそのエステルもしくはアミドを表し;
R4は、水素またはアルキルを表し;
m、nまたはpは、独立して、0、1、2または3を表す]
またはその製薬上許容される塩を提供する。
【0021】
本明細書中で用いる「式(I)の化合物」または「本発明の化合物」という語は、その化合物の個々の立体異性体を含むものである。
【0022】
別の態様によれば、本出願はさらに、呼吸器疾患の治療のための、または呼吸器疾患の治療用組成物の製造における、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩の使用を提供する。呼吸器疾患としては以下のような疾患が挙げられる:喘息(軽度、中程度または重度)、例えば気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、運動誘発性、薬物誘発性(アスピリンおよびNSAID誘発性を含む)およびダスト誘発性喘息、ステロイド抵抗性喘息、アレルギー性気道症候群、気管支炎(感染性および好酸球性気管支炎を含む)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、肺線維症(特発性線維化性肺胞炎を含む)、特発性肺線維症、特発性間質性肺炎、抗腫瘍療法を悪化させる線維症、および慢性感染症(結核、アスペルギルス症、他の真菌感染症を含む); 肺移植の合併症; 肺血管系の血管炎と血栓症、および肺高血圧(肺動脈高血圧を含む); 気道の炎症および分泌性症状を伴う慢性の咳、および医原性の咳の治療を含む鎮咳作用; 急性および慢性の鼻炎(薬物性鼻炎を含む)、ならびに血管運動神経性鼻炎; 神経性鼻炎を含む通年性および季節性アレルギー性鼻炎(花粉症); 鼻ポリープ; 急性ウイルス感染症(風邪を含む)、ならびにRSウイルス、インフルエンザ(予防的および治療的療法)、コロナウイルス(SARSを含む)およびアデノウイルスによる感染症、肺水腫、肺塞栓症、肺炎、肺サルコイドーシス、珪肺症、農夫肺および関連疾患; 過敏性肺炎、呼吸器不全、急性呼吸窮迫症候群、肺気腫、慢性気管支炎、結核、ならびに肺癌。
【0023】
別の態様によれば、本発明は、前段落で挙げたような呼吸器疾患の治療または予防方法を提供する。
【0024】
特に、本発明の方法および組成物は、上で挙げたような呼吸器疾患の予防および治療を包含し、かかる予防および治療は、それを必要とする個体に、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩と1種以上の製薬上許容される担体を含有する医薬組成物を治療に有効な量で投与することを含んでなる。本発明のこの態様において、式(I)の化合物は、多くの場合、吸入経路で投与される。
【0025】
別の態様において、本発明は、本発明の化合物と1種以上の製薬上許容される担体を含有する、鼻や口からの吸入に適した組成物などの医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を説明するために、特定の用語が以下のように本明細書中で定義される。
【0027】
本明細書中で用いる「アルキル」とは、炭素原子数1〜10、より好ましくは1〜6の、分岐鎖および直鎖の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基を含む。好適なアルキル基の非限定的な例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、およびt-ブチルが挙げられる。
【0028】
本明細書中で用いる「アルコキシ」とは、「アルキル-O-」として定義される(ここで、アルキル基は先に定義したとおりである)炭素原子の鎖を意味する。本明細書中に記載されるアルコキシ基の炭素原子の鎖は、飽和された直鎖または分岐鎖でありうる。代表的なアルコキシ基として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシなどが挙げられる。
【0029】
本明細書中で用いる「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード基を意味する。
【0030】
本明細書中で用いる「ハロアルキル」とは、アルキルの1個以上の水素原子が先に定義したハロ基で置換されている、先に定義したアルキルを意味する。ハロアルキル基の例としては、トリフルオロメチル、クロロメチル、フルオロエチル、クロロエチル、ヘキサフルオロエチルなどが挙げられる。
【0031】
本明細書中で用いる「ハロアルコキシ」とは、ハロアルキル-O-である(ここで、ハロアルキルは先に定義したとおりである)。代表的なハロアルコキシ基として、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、フルオロエトキシ、クロロエトキシ、トリフルオロメトキシ、ヘキサフルオロエトキシなどが挙げられる。
【0032】
本明細書中で用いる「カルボン酸またはそのエステルもしくはアミド」とは、カルボン酸のエステルまたはアミド誘導体を意味する。代表的なエステルおよびアミド誘導体として、CONH2、CONHMe、CONMe2、CONHEt、CONEt2、CONHPh、CON(OMe)Me、COOH、COOR”(ここで、R”はアルキル、またはベンジルなどのフェニルアルキルを表す)が挙げられる。
【0033】
他に特に規定がなければ、分子内の特定の位置にある任意の置換基または変数の定義はその分子の他の位置でのその定義とは無関係であるものとする。理解されるように、本発明の化合物の置換基および置換パターンは、本明細書に記載の方法だけでなく、当技術分野で知られた方法によって容易に合成できる、化学的に安定な化合物を提供するように、当業者により選択される。
【0034】
「治療」、「治療する」などといった語は、本明細書中で用いるとき、一般的に、所望の薬理学的および/または生理学的効果が得られることをさす。その効果は、疾患もしくはその症状を完全にまたは部分的に予防するという観点から予防的であってもよく、かつ/また、疾病および/またはその疾病に起因する副作用を部分的にまたは完全に安定させるまたは治癒するという観点から治療的であってもよい。本明細書中で用いる「治療」には、被験者(特にヒト)の疾病のあらゆる治療が包含され、以下が含まれる:(a) 疾病や症状の素因があるが、罹患しているとまだ診断されていない被験者において、その疾病や症状を発症から予防すること;(b) 疾病や症状を阻止すること、すなわち、その発症をくい止めること;または(c) 疾病や症状を軽減すること、すなわち、疾病や症状の退縮を起こさせること。
【0035】
「治療に有効な量」とは、求められている組織、系または患者の生物学的または医学的応答を引き出す薬物や薬剤の量をさす。
【0036】
本発明の化合物において:
置換基R1、R2またはR3は、存在するとき、それぞれ独立して、例えばメチル、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、メトキシ、およびトリフルオロメトキシから選択することができる。
【0037】
R4は、例えば、水素またはメチルである。
【0038】
いくつかの実施形態において、m、nおよびpは独立して0、1または2である。
【0039】
本発明の化合物の具体例としては、以下の化合物およびそれらの製薬上許容される塩が挙げられる:
【表1】



【0040】
本明細書中で用いる「製薬上許容される」塩または「薬理的に許容される」塩とは、一般的に、本化合物がアニオン性またはカチオン性のいずれかであり、それと結合された、それぞれ対カチオンまたは対アニオン(ヒトまたは動物による摂取に適すると一般に見なされるもの)を有する、本化合物の塩または錯体をさす。例えば、製薬上許容される塩は、酸(そのアニオンがヒトまたは動物による摂取に適すると一般に見なされる)との反応時または錯生成時に形成される、本明細書に開示した化合物の塩をさす。この点において、薬理的に許容される塩には有機酸または無機酸との塩が含まれる。薬理的に許容される塩の例としては、限定するものではないが、以下の塩が挙げられる:Li、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Zn、Mn; N,N'-ジアセチルエチレンジアミン、ベタイン、カフェイン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、ジエタノールアミン、メグルミン、エチレンジアミン、N,N'-ジフェニルエチレンジアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-ベンジルフェニルエチルアミン、コリン、水酸化コリン、ジシクロヘキシルアミン、メトホルミン、ベンジルアミン、フェニルエチルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、チアミン、アミノピリミジン、アミノピリジン、プリン、スペルミジン、アルキルフェニルアミン、グリシノール、フェニルグリシノール; グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、チロシン、シスチン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、ヒスチジン、オルニチン、リシン、アルギニン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン; 非天然アミノ酸; D-異性体または置換アミノ酸; グアニジン、置換グアニジン(置換基はニトロ、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニルから選択される)、アンモニウムもしくは置換アンモニウム塩およびアルミニウム塩; 硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、ハロゲン化水素酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、パルモエート(palmoates)、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、グリセロリン酸塩、またはケトグルタル酸塩。
【0041】
本化合物はプロドラッグの形に製剤化して投与することができる。一般的に、プロドラッグは、酵素的に活性化することや、より活性な親形態に変換することが可能な、本化合物の機能的誘導体を含む。したがって、本発明の治療方法において、「投与する」という語は、具体的に開示された化合物を用いるか、具体的に開示されていないが患者への投与後に特定化合物に生体内変換される化合物を用いる、さまざまな上記疾患の治療を包含する。好適なプロドラッグ誘導体の従来の選択および製造方法は、例えば、Wihnan, 14 Biochem. Soc. Trans. 375-82 (1986); Stella et al.,“Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery”, Directed Drug Delivery 247-67 (1985)に記載されている。
【0042】
本明細書中で用いる、本明細書に開示した化合物の「プロドラッグ」という語は、化学的または代謝的に切断可能な基をもつ化学種をさし、この化学種は生理的条件下で本明細書に開示した化合物になるか、該化合物を与えるか、該化合物を放出するか、または該化合物に変換される。このように、プロドラッグは医薬としてin vivo活性がある本化合物を放出することができる。例えば、本発明のプロドラッグとして、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:リン酸基含有プロドラッグ、チオリン酸基含有プロドラッグ、硫酸基含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、置換または非置換フェノキシアセトアミド含有プロドラッグ、置換または非置換フェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシンまたは他の5-フルオロウリジンプロドラッグ(より活性な種に変換され得る)など。別の面においては、本発明のプロドラッグとして、カルボン酸、スルホンアミド、アミン、ヒドロキシルなど(他の官能基やそれらの任意の組み合わせを含む)の誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明の化合物はPPARγ受容体のアゴニストである。
【0044】
本発明はまた、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患の治療または予防に用いるための本発明の化合物を提供する。呼吸器疾患の治療のために、本発明の化合物は例えば吸入経路によって投与することができる。
【0045】
別の態様において、本発明は、本発明の化合物と1種以上の製薬上許容される担体を含有する医薬組成物を提供する。好ましい医薬組成物には、鼻または特に口からの吸入投与に適したものが含まれる。
【0046】
呼吸器疾患の治療のための経路として、PPARγアゴニストを吸入することの一般的利点は冒頭に記載した。呼吸器疾患の治療のために、抗炎症治療を吸入経路で送達することのさらなる利点は、それを吸入気管支拡張薬と組み合わせて投与できる点である。気管支拡張療法は、喘息やCOPDといった慢性炎症性疾患の第1選択治療であり、急速な症状軽減をもたらす。これに対して、抗炎症療法は、長期治療後に大きな臨床的利益をもたらすにもかかわらず、あまり目立った即時的利益を提供しないため、患者のコンプライアンス(服薬順守)を妨げることがある。抗炎症剤と気管支拡張剤の吸入併用療法はコンプライアンスを向上させることができ、このことは、Advair(登録商標)/Seretide(登録商標)( キシナホ酸サルメテロール/プロピオン酸フルチカゾン)およびSymbicort(登録商標)(フマル酸ホルモテロール/ブデソニド)といった、β2アドレナリン受容体アゴニスト/グルココルチコイド併用製品に見られる。
【0047】
本明細書中で用いる「併用療法」、「同時投与」、「同時投与する」、「と共に投与」、「投与する」、「併用」または「共同療法」という語は、式(I)の化合物とPPARγアゴニスト以外の呼吸器疾患治療剤の使用について言及するとき、薬剤併用の有益な効果をもたらす投薬計画で各薬剤を連続的に投与することを包含し、また、これらの薬剤を実質的に同時に投与することをも包含するものである。かくして、式(I)の化合物とPPARγアゴニスト以外の呼吸器疾患治療剤は、1つの吸入可能な治療剤形で投与してもよいし、2つ以上の別個の治療剤形(そのうち少なくとも式(I)の化合物を含むものが吸入可能である)で投与してもよい。
【0048】
そのような治療剤の連続投与には、本方法の各薬物の投与と投与の間の比較的短い期間と比較的長い期間の両方が含まれる。しかし、本発明の目的上、第1の薬物がまだ被験者に効果的な影響を及ぼしているうちに、第2の薬物が投与される。こうして、本発明は、被験者における式(I)の化合物とPPARγアゴニスト以外の呼吸器疾患治療剤との組み合わせの同時存在が、どちらか一方の薬剤単独の投与よりも大きな効果を奏するという事実を利用するものである。
【0049】
いくつかの実施形態では、これら2種の薬物のうちの第2の薬物が、投与された第1の薬物の治療応答時間内に被験者に投与されることになる。例えば、本発明は、式(I)の化合物が被験者の体内に、呼吸器疾患治療剤と一緒になって治療上有効なレベルで、まだ存在しているうちに、そのレベルの呼吸器疾患治療剤が被験者に投与される場合に、被験者への式(I)の化合物の投与及びその後の呼吸器疾患治療剤の投与を包含し、その逆も同じことが言える。
【0050】
本明細書中で用いる「治療応答時間」とは、化合物が被験者の体内に存在するかまたは検出可能である持続時間を意味する。
【0051】
本明細書中で用いる「単剤療法」とは、呼吸器疾患または呼吸器疾患関連合併症を患っている被験者に、PPARγアゴニスト以外の呼吸器疾患治療剤を含む追加の治療処置を行わずに、単一の治療処置として式(I)の化合物を投与することを含むものである。しかし、式(I)の化合物を複数の投与形態で投与することが依然可能である。こうして、式(I)の化合物を1回以上の吸入粉末またはエアロゾル用量で投与することができる。
【0052】
いくつかの実施形態において、本発明による併用療法は気管支拡張剤と組み合わせた式(I)の化合物の吸入投与を含む。本明細書中で用いる「気管支拡張剤」とは、気管支筋を弛緩させて気管支気道の拡張をもたらす医薬を意味する。気管支拡張剤としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:β2アドレナリン受容体アゴニスト、例えばアルブテロール(albuterol)、バンブテロール(bambuterol)、テルブタリン(terbutaline)、フェノテロール(fenoterol)、ホルモテロール(formoterol)、フマル酸ホルモテロール(formoterol fumarate)、サルメテロール(salmeterol)、キシナホ酸サルメテロール(salmeterol xinafoate)、アルホルモテロール(arformoterol)、酒石酸アルホルモテロール(arfomoterol tartrate)、インダカテロール(indacaterol)(QAB-149)、カルモテロール(carmoterol)、ピクメテロール(picumeterol)、BI 1744 CL、GSK159797、GSK59790、GSK159802、GSK642444、GSK678007、GSK96108、クレンブテロール(clenbuterol)、プロカテロール(procaterol)、ビトルテロール(bitolterol)、およびブロドクサテロール(brodxaterol)、TA-2005、さらにEP1440966、JP05025045、WO93/18007、WO99/64035、US2002/0055651、US2005/0133417、US2005/5159448、WO00/075114、WO01/42193、WO01/83462、WO02/66422、WO02/70490、WO02/76933、WO03/24439、WO03/42160、WO03/42164、WO03/72539、WO03/91204、WO03/99764、WO04/16578、WO04/016601、WO04/22547、WO04/32921、WO04/33412、WO04/37768、WO04/37773、WO04/37807、WO04/39762、WO04/39766、WO04/45618、WO04/46083、WO04/71388、WO04/80964、EP1460064、WO04/087142、WO04/89892、EP01477167、US2004/0242622、US2004/0229904、WO04/108675、WO04/108676、WO05/033121、WO05/040103、WO05/044787、WO04/071388、WO05/058299、WO05/058867、WO05/065650、WO05/066140、WO05/070908、WO05/092840、WO05/092841、WO05/092860、WO05/092887、WO05/092861、WO05/090288、WO05/092087、WO05/080324、WO05/080313、US20050182091、US20050171147、WO05/092870、WO05/077361、DE10258695、WO05/111002、WO05/111005、WO05/110990、US2005/0272769 WO05/110359、WO05/121065、US2006/0019991、WO06/016245、WO06/014704、WO06/031556、WO06/032627、US2006/0106075、US2006/0106213、WO06/051373、WO06/056471に記載の化合物; ならびに抗コリン作用性気管支拡張剤、例えば臭化イプラトロピウム(ipratropium bromide)、チオトロピウム(tiotropium)、臭化チオトロピウム(tiotropium bromide)(Spiriva(登録商標))、グリコピロレート(glycopyrollate)、NVA237、LAS34273、GSK656398、GSK233705、GSK 573719、LAS35201、QAT370および臭化オキシトロピウム(oxytropium bromide)。他の気管支拡張剤には、TA 2005 (すなわち、8-ヒドロキシ-5-(1-ヒドロキシ-2-((2-(4-メトキシフェニル)-1-メチルエチル)アミノ)エチル)-2(1H)-キノリノン)(例えば、1塩酸塩として)、ならびに抗ヒスタミン剤(例えば、テルフェナジン(terfenadine))が含まれる。
【0053】
いくつかの実施形態において、併用療法はまた、他の抗炎症薬と組み合わせた式(I)の化合物の吸入投与を含み、抗炎症薬としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:コルチコステロイド、例えばベクロメタゾン(beclomethasone)(例えば、モノまたはジプロピオン酸エステルとして)、フルニソリド(flunisolide)、フルチカゾン(fluticasone)(例えば、プロピオン酸またはフロ酸エステルとして)、シクレソニド(Ciclesonide)、モメタゾン(mometasone)(例えば、フロ酸エステルとして)、モメタゾンデソニド(desonide)、ロフレポニド(rofleponide)、ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、プレドニゾン(prednisone)、プレドニゾロン(prednisolone)、メチルプレドニゾロン、ナフロコート(naflocort)、デフラザコート(deflazacort)、酢酸ハロプレドン(halopredone acetate)、フルオシノロンアセトニド(fluocinolone acetonide)、フルオシノニド(fluocinonide)、クロコルトロン(clocortolone)、チプレダン(tipredane)、プレドニカルベート(prednicarbate)、プロピオン酸アルクロメタゾン (alclometasone dipropionate)、ハロメタゾン(halometasone)、リメクソロン(rimexolone)、プロピオン酸デプロドン (deprodone propionate)、トリアムシノロン(triamcinolone)、ベタメタゾン(betamethasone)、フルドロコルチゾン(fludrocoritisone)、デスオキシコルチコステロン(desoxycorticosterone)、ロフレポニド(rofleponide)、エチプレドノールジクロアセタート(etiprendnol dicloacetate)など。ステロイド薬にはさらに、以下のような呼吸器疾患の臨床または前臨床開発中のステロイドも含まれる:GW-685698、GW-799943、NCX-1010、NCX-1020、NO-デキサメタゾン、PL-2146、NS-126 (以前はST-126)、ならびに国際特許出願WO02/12265、WO02/12266、WO02/100879、WO03/062259、WO03/048181、WO03/042229、WO02/88167、WO02/00679、WO03/35668、WO03/62259、WO03/64445、WO03/72592、WO04/39827およびWO04/66920に記載の化合物。加えて、ステロイド薬には、以下のような、副作用プロファイルを軽減させた開発中の次世代分子も含まれる:選択的グルココルチコイド受容体アゴニスト(SEGRAs)、例えばZK-216348、ならびに国際特許出願WO-00/032585、WO-00/0210143、WO-2005/034939、WO-2005/003098、WO-2005/035518およびWO-2005/035502に記載の化合物とそれらの機能的均等物および機能的誘導体。
【0054】
本発明の併用薬には、呼吸器疾患の治療に有用であることが知られている、以下のような1種以上の追加の活性物質が場合により含んでもよい:ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害剤(例えば、ロフルミラスト(roflumilast))、PDE5阻害剤、PDE7阻害剤、ロイコトリエンD4阻害剤、ロイコトリエンB4阻害剤、egfrキナーゼ阻害剤、p38 MAPキナーゼ阻害剤、NF-kB経路阻害剤(例えば、IkK阻害剤)、A2Aアデノシン受容体アゴニスト、TNFαシグナル伝達阻害剤(例えば、リガンド結合剤、受容体アンタゴニスト)、インターロイキン-1シグナル伝達阻害剤、CRTH2受容体アンタゴニスト、プロテアーゼ阻害剤(例えば、好中球エラスターゼ阻害剤、MMP阻害剤、カテプシン阻害剤)、IL-8シグナル伝達分子、CXCR1阻害剤、CXCR2阻害剤、iNOSモジュレーター、抗酸化物質(例えばN-アセチルシステインおよびスーパーオキシドジスムターゼ類似物質)、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン類); 例えば、ロスバスタチン(rosuvastatin)、メバスタチン(mevastatin)、ロバスタチン(lovastatin)、シンバスタチン(simvastatin)、プラバスタチン(pravastatin)およびフルバスタチン(fluvastatin); 粘液調節物質、例えばINS-37217、ジクアホソル(diquafosol)、シベナデット(sibenadet)、CS-003、タルネタント(talnetant)、DNK-333、MSI-1956、ゲフィチニブ(gefitinib); および/またはNK-1受容体アンタゴニスト。
【0055】
一態様において、本発明は、他の抗炎症剤/気管支拡張剤併用薬と組み合わせた式(I)の化合物の吸入投与の使用(すなわち、3剤併用製品)を提供し、併用薬としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:キシナホ酸サルメテロール/プロピオン酸フルチカゾン(Advair/Seretide(登録商標))、フマル酸ホルモテロール/ブデソニド(Symbicort(登録商標))、フマル酸ホルモテロール/フロ酸モメタゾン、フマル酸ホルモテロール/ジプロピオン酸ベクロメタゾン(Foster(登録商標))、フマル酸ホルモテロール/プロピオン酸フルチカゾン(FlutiForm(登録商標))、インダカテロール/フロ酸モメタゾン、インダカテロール/QAE-397、GSK159797/GSK 685698、GSK159802/GSK 685698、GSK642444/GSK 685698、フマル酸ホルモテロール/シクレソニド、酒石酸アルホルモテロール/シクレソニド。
【0056】
別の態様において、本発明は、他の気管支拡張剤併用薬(特に、B2アゴニスト/M3アンタゴニスト併用薬)と組み合わせた式(I)の化合物の吸入投与の使用(すなわち、3剤併用製品)を提供し、前記併用薬としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:キシナホ酸サルメテロール/臭化チオトロピウム、フマル酸ホルモテロール/臭化チオトロピウム、BI 1744 CL/臭化チオトロピウム、インダカテロール/NVA237、インダカテロール/QAT-370、ホルモテロール/LAS34273、GSK159797/GSK 573719、GSK159802/GSK 573719、GSK642444/GSK 573719、GSK159797/GSK 233705、GSK159802/GSK 233705、GSK642444/GSK 233705、および同一分子中にB2アゴニストとM3アンタゴニストの両活性(二重機能性)を有する化合物、例えばGSK 961081。
【0057】
本発明の式(I)の化合物は、例えば、呼吸器疾患の症状、例えば咳、炎症、うっ血、呼吸困難、喘鳴、過呼吸、息苦しさ、気管支痙攣、および気管支収縮などを、そのような症状に苦しむ被験者において軽減するのに有用である。本発明の化合物はまた、そのような症状が起こるのを予防する際にも有用である。
【0058】
本明細書中で用いる「治療応答時間」とは、化合物が被験者の体内に存在するかまたは検出可能である持続時間を意味する。
【0059】
本明細書に記載する化合物は、一般的に、1種以上の製薬上許容される賦形剤または担体と混合して、医薬組成物の形で投与される。「組成物」は1種の化合物または複数種の化合物の混合物を含みうる。「医薬組成物」とは、その医薬組成物が投与される被験者において生理学的応答を引き出すのに有用な、または潜在的に有用な組成物のことである。
【0060】
賦形剤または担体に関して「製薬上許容される」という語は、ヒトまたは動物の医薬品中で用いるのに一般に適した、無毒性の物質を定義するために用いられる。医薬組成物は錠剤、カプセル剤、粉剤、シロップ剤、溶液剤、懸濁液剤など、通常用いられる剤形とすることができ、好適な固体もしくは液体の担体または希釈剤中に、あるいは注射用の溶液剤または懸濁液剤とするのに適した無菌媒体中に、芳香剤、甘味剤などを含んでもよい。こうした組成物は一般に0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%の活性化合物を含有し、組成物の残部は製薬上許容される担体、希釈剤または溶媒である。
【0061】
好適な製薬上許容される担体には、固体の充填剤や希釈剤、および無菌の水性または有機溶液が含まれる。活性成分はそうした医薬組成物中に、上記のような範囲で所望の投与量を提供するのに十分な量で存在する。こうして、経口投与では、活性成分がカプセル剤、錠剤、粉剤、シロップ剤、溶液剤、懸濁液剤などを形成するのに適した固体や液体の担体または希釈剤と組み合わされうる。その医薬組成物は、所望により、芳香剤、甘味剤、賦形剤などの追加の成分を含んでもよい。非経口投与の場合は、活性成分を無菌の水性または有機媒体と混合して、注射用の溶液剤または懸濁液剤とすることができる。例えば、ゴマ油やラッカセイ油、水性プロピレングリコールなどに溶解した溶液剤が用いられ、また、本化合物の水溶性の製薬上許容される酸付加塩または塩基との塩の水溶液剤も用いられる。ポリヒドロキシル化ヒマシ油に溶解した活性成分を含む水溶液も、注射液剤として用いられる。このようにして調製した注射液剤はその後、静脈内、腹腔内、皮下または筋内に投与することができるが、ヒトでは筋内投与が好適である。
【0062】
タルクおよび/または炭水化物含有結合剤などを含む錠剤、糖衣錠またはカプセル剤は経口適用に特に適している。好ましくは、錠剤、糖衣錠またはカプセル剤の担体として、ラクトース、トウモロコシデンプンおよび/またはジャガイモデンプンが挙げられる。シロップ剤やエリキシル剤も用いられ、この場合には甘味剤入りのビヒクルが利用される。
【0063】
経鼻または吸入投与用の剤形は、エアロゾル剤、溶液剤、懸濁液剤、ゲル剤、または乾燥粉剤として都合よく製剤化することができる。
【0064】
経鼻投与の場合、その製剤は、エアロゾル用の液状担体(特に水性担体)中に溶解または懸濁された本発明の活性成分を含有する。担体は可溶化剤(プロピレングリコールなど)、界面活性剤、吸収促進剤(レシチン(ホスファチジルコリン)、シクロデキストリンなど)、または防腐剤(パラベン類など)などの添加剤を含んでもよい。
【0065】
吸入投与に適するおよび/または適応している組成物の場合、本発明の化合物は粒子径を縮小させた形態であることが好ましく、その粒子径縮小形態はマイクロ化によって得られることがさらに好ましい。粒子径縮小(例えば、マイクロ化)化合物または塩の好ましい粒子径は、約0.5〜約10ミクロン(例えば、レーザー回折により測定)のD50値により規定される。
【0066】
エアロゾル製剤(例えば、吸入投与用)は、製薬上許容される水性または非水性溶媒中の活性物質の溶液または微細な懸濁液を含むことができる。エアロゾル製剤は密封容器内の無菌の形態で1回量または複数回量として提供され、その容器は噴霧器または吸入器と一緒に用いるためのカートリッジまたは詰め替え品の形をとることができる。あるいはまた、密封容器は、容器の中身がなくなったら廃棄することになっている単一分配器具、例えば、単回経鼻吸入器、または計量バルブを備えたエアロゾルディスペンサー(定量噴霧式吸入器)であってもよい。
【0067】
投与形態がエアロゾルディスペンサーである場合、それは加圧下で適当な噴射剤を含むことが好ましく、例えば、圧縮空気、二酸化炭素、またはハイドロフルオロカーボン(HFC)(ハイドロフルオロアルカン(HFA)ともいう)などの有機噴射剤を含む。好適なHFC噴射剤には、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)および1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134a)が含まれる。エアロゾル投与形態はポンプ式噴霧器の形をとることもできる。加圧エアロゾルは活性化合物の溶液または懸濁液を含みうる。懸濁製剤の分散特性および/または均質性を改善するために、追加の担体、例えば共溶媒および/または界面活性剤の配合を必要とする場合がある。溶液製剤もエタノールなどの共溶媒の添加を必要とすることがある。さらに、例えば、これらの製剤の安定性および/または味および/または微粒子質量特性(量および/またはプロファイル)を改善するために、他の改良添加剤を配合してもよい。
【0068】
吸入投与に適するおよび/または適応している医薬組成物の場合、その医薬組成物は吸入可能な乾燥粉末組成物でありうる。そのような組成物は、粉末基剤(ラクトース、グルコース、トレハロース、マンニトール、デンプンなど)、式(I)の化合物またはその塩(好ましくは、粒子径縮小形態、例えばマイクロ化形態のもの)、および場合により性能改良剤、例えばL-ロイシンや他のアミノ酸、セロビオースオクタアセテートおよび/またはステアリン酸の金属塩(ステアリン酸マグネシウムまたはカルシウムなど)を含むことができる。好ましくは、乾燥粉末吸入組成物はラクトースと式(I)の化合物またはその塩の乾燥粉末ブレンドを含む。ラクトースはラクトース水和物(例えば、ラクトース1水和物)であることが好ましく、かつ/または吸入グレードおよび/または微粒子グレードのラクトースであることが好ましい。ラクトースの粒子径は、好ましくは、ラクトース粒子の90%以上(重量または体積基準)が1000ミクロン(マイクロメーター)未満(例えば10〜1000ミクロン、例えば30〜1000ミクロン)の直径であり、かつ/またはラクトース粒子の50%以上が500ミクロン未満(例えば、10〜500ミクロン)の直径である、と規定される。より好ましくは、ラクトースの粒子径は、ラクトース粒子の90%以上が300ミクロン未満(例えば10〜300ミクロン、例えば50〜300ミクロン)の直径であり、かつ/またはラクトース粒子の50%以上が100ミクロン未満の直径である、と規定される。場合により、ラクトースの粒子径は、ラクトース粒子の90%以上が100〜200ミクロン未満の直径であり、かつ/またはラクトース粒子の50%以上が40〜70ミクロン未満の直径である、と規定される。最も重要な点として、ラクトース粒子の約3〜約30%(例えば、約10%)(重量または体積基準)は50ミクロン未満または20ミクロン未満の直径であることが好ましい。例えば、限定するものではないが、好適な吸入グレードのラクトースはE9334ラクトース(微粒子10%) (Borculo Domo Ingredients社, Hanzeplein 25, 8017 JD Zwolle, オランダ)である。
【0069】
本発明の化合物は液体ディスペンサーから送り出すための液体製剤として製剤化することができる。例えば、液体ディスペンサーには分配ノズルまたは分配オリフィスが付いており、ユーザーの力が液体ディスペンサーのポンピング機構に加わると、定量の液体製剤がそのノズルまたはオリフィスを通して分配される。そのような液体ディスペンサーは一般に、複数回量の液体製剤を貯めておく容器を備えており、定量の液体製剤が連続的ポンプ作動時に分配される。分配ノズルまたはオリフィスは、液体製剤を鼻腔内にスプレーするために、ユーザーの鼻の穴に挿入するように構成することができる。上記タイプの液体ディスペンサーはWO-A-2005/044354に記載および説明されており、その内容全体を参照により本明細書に組み入れる。その液体ディスペンサーには液体放出装置を収容するハウジングがあり、その液体放出装置は液体製剤を入れる容器の上に取り付けられた圧縮ポンプを有する。ハウジングには指で操作可能な少なくとも1つのサイドレバーがあり、このサイドレバーをハウジングに対して内側に動かすことにより、容器がハウジング内で上方へ移動してポンプを圧縮し、ポンプステムからハウジングの鼻ノズルを通って定量の液体製剤が送り出される。
【0070】
吸入のためには、多数の器具が利用可能であり、患者にとって適切な吸入技術を用いて最適粒子径のエアロゾルを発生させ、投与することができる。定量エアロゾルの場合、特に粉末吸入器の場合には、アダプター(スペーサー、エキスパンダー)と西洋ナシ形容器(例えば、Nebulator(登録商標)、Volumatic(登録商標))の使用、ならびにパフスプレーを放出する自動器具(Autohaler(登録商標))に加えて、いくつかの技術的解決策を利用することができる(例えば、Diskhaler(登録商標)、Rotadisk(登録商標)、Turbohaler(登録商標)、または例えばヨーロッパ特許出願EP 0 505 321に記載されるような吸入器)。
【0071】
本発明の化合物を利用する投薬計画は、患者のタイプ、人種、年齢、体重、性別および医学的状態;治療すべき病状の重症度;投与経路;患者の腎機能と肝機能;用いる特定の化合物またはその塩といった、さまざまな要因に応じて選択される。当技術分野の医師、獣医師または臨床医であれば、その疾患を予防し、阻止し、その進行を止めるのに必要な薬物の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0072】
本発明の製薬上許容される化合物は、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩(遊離塩基として計算)について、例えば、経口または非経口投与量として0.01mg〜3000mg/日または0.5〜1000mg/日、あるいは経鼻または吸入投与量として0.001〜50mg/日または0.01〜5mg/日の1日量(成人患者)で投与することができる。この量は1日1回で投与されるか、より一般的には、1日あたりの合計量が同じになるような1日あたり数回(例えば、2、3、4、5または6回)の分割量で投与される。その塩の有効量は、式(I)の化合物それ自体の有効量の割合として決定することができる。
【0073】
本発明の方法において、本明細書中で詳述した化合物は活性成分として存在することができ、一般には、意図した投与形態(すなわち、経口錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤など)に応じて、また、通常の製薬プラクティスと矛盾しないように、適切に選択された好適な製薬上の希釈剤、賦形剤または担体(本明細書中では、まとめて「担体」という)と混合して投与される。
【0074】
本発明の新規化合物は、適切な物質を用いて、以下のスキームおよび実施例の手順に従って製造され、以下の具体的な実施例でさらに説明される。最も好ましい本発明の化合物はこれらの実施例で具体的に示された化合物のいずれかまたは全部である。しかし、これらの化合物は本発明と見なされる唯一の属(genus)を形成するものと解釈されるべきではなく、これらの化合物またはそれらの部分の任意の組み合わせも属を形成しうるものである。以下の実施例では、本発明の化合物を製造するための詳細がさらに説明される。当業者には容易に理解されるように、これらの化合物を製造するために、以下の製造方法の条件およびプロセスを既知のそれらと変更することが可能である。特に断りのない限り、温度はすべて摂氏である。
【0075】
本発明の一実施形態は、適切な物質を用いて以下のスキームの手順に従う、新規な式(I)の化合物の製造を提供する。当業者には容易に理解されるように、これらの化合物を製造するにあたって、以下の製造方法の条件およびプロセスを既知のそれらと変更することができる。さらに、詳述した方法を利用することによって、当業者であれば、特許請求の範囲の本発明のさらなる化合物を容易に製造することができる。特に断りのない限り、温度はすべて摂氏である。
【0076】
一般的プロセス
以下の反応スキームは、式(I)の化合物の製造プロセスを示す。
【化2】

【0077】
i. 式(1a)の化合物[ここで、R3およびpは式(I)で説明したものと同じである]と、式(1b)の化合物[ここで、Xはハロゲン、ヒドロキシルもしくはその誘導体(OMs、OTs、OTfなど)またはシリルオキシを表す]とを、溶媒(限定するものではないが、水、アルコール、アセトン、THF、ジオキサンまたはそれらの任意の比率での混合物など)の存在下で、適切な金属亜硝酸塩または有機亜硝酸/硝酸エステル(限定するものではないが、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸/硝酸イソアミルまたはそれらの混合物など)と共に、塩基(限定するものではないが、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、KOH、NaOH、LiOH、Ca(OH)2、NaHCO3、Na2CO3、K2CO3またはそれらの混合物など)の存在下に、−78℃から溶媒の還流温度までの温度で10分〜7日間にわたり反応させることにより、式(1c)の化合物を得る工程。
【0078】
ii. 式(1c)の化合物を、有機もしくは無機の塩基または酸(限定するものではないが、TEA、ピリジン、DMAP、DIPEA、LiOH、NaOH、KOH、KHCO3、NaHCO3、K2CO3、Na2CO3、ナトリウム-t-ブトキシド、カリウム-t-ブトキシド、n-BuLi、t-BuLiもしくはそれらの混合物、またはHCl、H2SO4、p-TSAもしくはそれらの混合物など)の存在下で、有機もしくは無機溶媒(限定するものではないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、THF、ジオキサン、水またはそれらの混合物など)の存在下に、−78℃から溶媒の還流温度までの温度で10分〜7日間にわたり反応させることにより、式(1d)の化合物を得る工程。
【0079】
iii. 式(1d)の化合物と、式(1e)の化合物[ここで、Xはハロゲン、ヒドロキシルもしくはその誘導体(OMs、OTs、OTfなど)またはシリルオキシを表す]とを、有機または無機塩基(限定するものではないが、TEA、ピリジン、DMAP、DIPEA、NaOH、KOH、CaOH、K2CO3、Na2CO3、NaHCO3、KHCO3、ナトリウム-t-ブトキシド、カリウム-t-ブトキシド、n-BuLi、t-BuLiまたはそれらの混合物など)の存在下または非存在下に、溶媒(限定するものではないが、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトニトリル、メタノール、エタノール、IPA、アセトン、THF、ジオキサン、水またはそれらの混合物など)の存在下または非存在下に、−78℃から溶媒の還流温度までの温度で10分〜7日間にわたり反応させることにより、式(1f)の化合物を得る工程。
【0080】
iv. 式(1f)の化合物を、水素ガスの加圧(1〜100気圧)下に遷移金属触媒(限定するものではないが、Fe、Co、Pd/C、Ra-Ni、Pt、Ru、Rhまたはそれらの混合物など)を用いて、あるいは水素ガスの非存在下または存在下に金属-酸または金属-塩基試薬(限定するものではないが、Fe/HCl、Zn/HCl、Sn/HCl、Fe/AcOH、Zn/AcOH、SnCl2、Al/NaOH、Zn/NaOH、ギ酸アンモニウムまたはそれらの混合物など)を用いて、溶媒(限定するものではないが、アルコール、例えばメタノール、エタノール、IPA、t-BuOH、酢酸、プロピオン酸、THF、DMF、DMSO、EtOAc、アセトン、水、アセトニトリルまたはそれらの混合物など)の存在下または非存在下に、−78℃から溶媒の還流温度までの温度で10分〜7日間かけて水素化することにより、式(1g)の化合物を得る工程。
【0081】
v. 式(1g)の化合物と式(1h)の化合物とを、有機または無機塩基(限定するものではないが、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、LiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)2、K2CO3、Na2CO3、NaHCO3、KHCO3、ナトリウム-t-ブトキシド、カリウム-t-ブトキシド、n-BuLi、t-BuLiまたはそれらの混合物など)の存在下に、溶媒(限定するものではないが、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジオキサン、THF、DMF、DMSO、EtOAc、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、IPA、t-BuOH、水またはそれらの混合物など)の存在下に、−78℃から溶媒の還流温度までの温度で10分〜7日間にわたり反応させることにより、式(I)の化合物を得る工程。
【0082】
一般的合成手順
カラムまたは薄層クロマトグラフィー用の全ての溶離液は容積:容積(v:v)溶液として調製し、記録した。反応の後処理または生成物の単離に用いる溶媒および試薬の分量は、有機化学合成の分野の当業者が一般に用いる分量であり、こうした溶媒および試薬の使用量は合成経験と特定の反応に対する適切性に基づいて決定される。例えば、1)砕いた氷の分量は一般に反応スケールに応じて約10〜1000gの範囲とした;2)カラムクロマトグラフィーに用いたシリカゲル量は材料量、混合物の複雑さ、および用いたクロマトグラフィーカラムの大きさによって決まるが、一般には約5〜1000gの範囲とした;3)抽出溶媒の容量は反応のサイズに応じて約10〜500mLの範囲とした;4)化合物の単離に用いた洗液は反応のスケールに応じて約10〜100mLの溶媒または水性試薬とした;ならびに5)乾燥試薬(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムなど)の量は一般に、乾燥すべき溶媒の量とその水分量に応じて約5〜100gの範囲とした。
【0083】
実験セクション全体を通して、下記の頭字語、略語、用語および定義を採用した。
【0084】
頭字語または略語:
THF (テトラヒドロフラン)、HCl (塩酸)、K2CO3 (炭酸カリウム)、Na2SO4 (硫酸ナトリウム)、CDCl3 (クロロホルム-d)、NaOH (水酸化ナトリウム)、Pd/C (パラジウム炭素)、Fe (鉄)、NaHCO3 (炭酸水素ナトリウム)、TLC (薄層クロマトグラフィー)、mol (モル)、mmol (ミリモル)、mL (ミリリットル)、M.Pt. (融点)、rt (室温)、aq (水性)、min (分)、h (hr, 時間)、g (グラム)、atm (気圧)、conc. (濃縮)、MS (質量分析)、HPLC (高速液体クロマトグラフィー)、IR (赤外)、NMR (核磁気共鳴)。
【0085】
NMR略語: br (幅広)、apt (明らか)、s (1重線)、d (2重線)、t (3重線)、q (4重線)、dq (2組の4重線)、dd (2組の2重線)、dt (2組の3重線)、m (多重線)。
【実施例】
【0086】
実施例1
2,4-ジクロロ-N-[4-(1-p-トリル-1H-ピラゾール-4-イルオキシ)-フェニル]ベンゼンスルホンアミドの合成
工程1: (p-トリル-ヒドラゾノ)-アセチルクロライドの製造:
【化3】

【0087】
4-メチルアニリン(4g, 37.38mmol)を水:HCl (2:1) 30ml中に懸濁した。亜硝酸ナトリウム(2.57g, 37.38mmol)の水溶液を0〜5℃で30分かけて添加した。その後、クロロアセト酢酸(6.63g, 48.59mmol)の水溶液を加え、続いて酢酸ナトリウム(6.13g, 74.76mmol)の水溶液を加えた。反応混合物を20〜35℃で30分ほど撹拌した。沈殿物(p-トリル-ヒドラゾノ)-アセチルクロライドを濾別し、冷水と石油エーテルで洗浄して真空乾燥させた。
【0088】
収量: 4g
収率: 51%(粗製)
【0089】
工程2: 1-p-トリル-1H-ピラゾール-4-オールの製造:
【化4】

【0090】
(p-トリル-ヒドラゾノ)-アセチルクロライド(4.0g, 19.04mmol)をメタノール中にとり、水酸化ナトリウム(1.52g, 38.0mmol)を加えた。その反応混合物を2.5時間撹拌した。メタノールを除去し、残留物を水に溶解し、希HClを加えてpHを3にした。固体をブフナー漏斗で濾別し、冷水で洗浄して真空乾燥させ、さらに石油エーテルで洗浄してから真空乾燥させた。
【0091】
収量: 2.5g
収率: 76%(純粋)
【0092】
工程3: 4-(4-ニトロ-フェノキシ)-1-p-トリル-1H-ピラゾールの製造:
【化5】

【0093】
ジメチルホルムアミド中の1-p-トリル-1H-ピラゾール-4-オール(1.0g, 5.75mmol)を水素化ナトリウム(344mg, 8.61mmol)の冷スラリーに添加した。反応混合物を0.5時間撹拌した後、低温状態で4-フルオロニトロベンゼン(810mg, 5.74mmol)を加えた。反応混合物を20〜35℃で20分撹拌した。次に水を添加して反応を停止させた。水層をジエチルエーテルで抽出し、有機層を一緒にしてブライン溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。溶媒を40℃で真空蒸発させ、生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテルと酢酸エチルの混合溶媒を使用)により精製した。
【0094】
収量: 1.1g
収率: 65%(純粋)
【0095】
工程4: 4-(1-p-トリル-1H-ピラゾール-4-イルオキシ)-フェニルアミンの製造:
【化6】

【0096】
4-(4-ニトロ-フェノキシ)-1-p-トリル-1H-ピラゾール(600mg, 2.03mml)をエタノールにとり、鉄粉(1.13g, 20.33mmol)を添加し、20〜35℃で6時間撹拌した。鉄粉を除去し、エタノールを真空蒸発させた。残留物を水に溶解し、飽和NaHCO3溶液を用いてpHを7に調整した。水層を酢酸エチルで抽出し、ブライン溶液で洗浄して、無水Na2SO4で乾燥させた。溶媒を50℃で真空蒸発させ、生成物を高真空下で乾燥させた。
【0097】
収量: 600mg
収率: 100%(粗製)
別法として、ニトロ化合物の還元を、メタノール溶媒中で10%パラジウム炭素を用いて水素雰囲気下に行った。
【0098】
工程5: 2,4-ジクロロ-N-[4-(1-p-トリル-1H-ピラゾール-4-イルオキシ)-フェニル]ベンゼンスルホンアミドの製造:
【化7】

【0099】
4-(1-p-トリル-1H-ピラゾール-4-イルオキシ)-フェニルアミン(100mg, 0754mmol)、2,4-ジクロロベンゼンスルホニルクロライド(92mg, 0.754mmol)をクロロホルムにとり、0.2mlのピリジンを添加し、その反応混合物を20〜35℃で3時間半撹拌した。クロロホルムを真空下で除去し、生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテルと酢酸エチルを使用)により精製した。
【0100】
収量: 60mg
収率: 34%(純粋)
M.P: 152〜153
1H NMR (CDCl3): δ: 7.87(d, 1H, J=8.8Hz); 7.70(s, 1H); 7.53(d, 1H, J=1.6Hz); 7.51(s, 1H); 7.48(s, 2H); 7.31(dd, 1H, J=8.8Hz, J2=2.4Hz); 7.24(d, 2H, J=8.4Hz); 7.05(d, 2H, J=8.8Hz); 6.93(d, 2H, J=8.8Hz, 6.88(bs, 1H(-NH), 2.15(s, 3H)
MS: 474(M+)
IR cm-1: 3126, 1500, 1186。
【0101】
以下の実施例2〜15は、適切な出発物質から実施例1と同様の手順を用いることにより、また、工程5で適切な置換フェニルスルホニルクロライド化合物を用いることにより製造した。
【表2】



【0102】
実施例16
本発明の化合物のヒトPPARγアゴニスト活性の測定
HEK-293 (ヒト胚性腎)細胞を6ウェルプレートでDMEM+10%脱脂FBS培地に2.8×105個/ウェルの細胞密度でまき、37℃、5%CO2でインキュベートした。70〜80%のコンフルエントの細胞を、ヒトpCDNA3.1E〜PPARγ+pGL2〜GAL4x5〜Luc+pADVプラスミドで3時間トランスフェクトした(2:0.25:1.25μg/ウェルの比)。その後、トランスフェクション培地を新鮮な培地で置き換えて、細胞を48時間インキュベートした。
【0103】
種々の最終濃度の本発明の化合物(ビヒクル=0.1%DMSO)を培地(50μl/ウェル)中に調製し、96ウェルプレートのウェルに加えた。トランスフェクトした細胞を回収し、遠心によりペレット化した。細胞ペレットを培地中に再懸濁させて、細胞をカウントした。本発明の化合物を含む96ウェルプレートに10,000個/ウェルの細胞を加え、18時間インキュベートした。PPARγ受容体の作動後に生じた発光を、Packardルシフェラーゼ基質試薬(100μl/ウェル)を用いて測定した。発光はTop Countを用いてSPCモードをカウントすることにより定量化した。活性化倍率を以下の式に従って算出した:
【数1】

【表3】

全ての化合物が30μMでPPARγアゴニストとしての活性を示す。相対的活性のためのキー:
* 10μMでの遺伝子トランス活性化において<8倍増加
** 10μMでの遺伝子トランス活性化において>8倍増加
*** 1μMでの遺伝子トランス活性化において>8倍増加。
【0104】
実施例17
COPD炎症(タバコの煙により誘発された肺炎症)の前臨床マウスモデルにおける本発明の化合物の抗炎症活性
これまでの研究で、タバコの煙(Tobacco Smoke: TS)に4日連続して毎日暴露し、最後のTS暴露から24時間後に気管支肺胞洗浄液(BAL)中に回収された好中球の数は大幅に増加していることが確認されたので、本研究ではこのタイムポイントを採用した。
【0105】
マウスへのTS暴露のプロトコル、気管支肺胞洗浄液(BAL)の回収、分画細胞数カウントのためのサイトスピンスライドの作製は以下に概説するとおりである。
【0106】
連続4日間毎日のマウスへのTS暴露:
この暴露プロトコルでは、1群5匹のマウスを個別の透明ポリカーボネートチャンバー(27cm×16cm×12cm)に入れて暴露した。タバコからのTSが100mL/分の流量で暴露チャンバーに入るようにした。高レベルのTS(6本のタバコ)への反復暴露によって起こり得る問題を最小限にするため、マウスへのTS暴露を、暴露期間にわたって最大6本のタバコへと徐々に増やした。4日間で用いた暴露計画は次のとおりであった:
1日目: 4本のタバコ (約32分暴露)
2日目: 4本のタバコ (約32分暴露)
3日目: 6本のタバコ (約48分暴露)
4日目: 6本のタバコ (約48分暴露)
別のマウス群には、対照(TS暴露なし)として、等しい時間の長さで毎日空気に暴露した。
【0107】
気管支肺胞洗浄(BAL)分析:
気管支肺胞洗浄を次のように行った。約8mmに短くしたPortexナイロン静脈内カニューレ(ピンク色のチューブ接続ホース口(luer fitting))を用いて、気管にカニューレを挿入した。洗浄液としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いた。0.4mL量を静かに注入し、1mL注射器を用いて3回抜き取り、エッペンドルフチューブに入れて、後続の測定に先立って氷上に保存した。
【0108】
細胞数カウント:
洗浄液を遠心によって細胞から分離し、上清をデカントし、後続の分析のために凍結させた。細胞ペレットを既知量のPBS中に再懸濁し、染色(Turks染色)したアリコートを血球計で顕微鏡を使ってカウントすることにより総細胞数を求めた。
【0109】
分画細胞数カウントを次のように行った。残りの細胞ペレットを約105個/mLの細胞へと希釈した。500μL量をサイトスピンスライドのファネルに入れ、800rpmで8分遠心した。そのスライドを空気乾燥させ、「Kwik-Diff」溶液(Shandon社)をメーカーの説明書に従って用いて染色した。それを乾燥させてカバースリップをのせてから、光学顕微鏡を使って分画細胞数カウントを行った。光学顕微鏡を使って最大400個までの細胞を公平なオペレーターがカウントした。細胞は標準的な形態学的手法を用いて識別した。
【0110】
薬物処理:
マウスやラットなどのげっ歯類は偏性鼻呼吸動物であることから、試験物質(治療薬など)を吸入のために経口送達しても、良好な肺暴露が生じない。従って、げっ歯類における肺への治療薬の送達は一般に、鼻腔内もしくは気管内投与によって、またはチャンバー内での全身エアロゾル暴露による吸入によって行われている。
【0111】
チャンバー法は多量の試験物質を用いるものであり、一般的には薬理効果の研究ではなく吸入毒性の研究のために利用される。気管内投与は、ほぼ全部の試験物質が肺に送達されるので、非常に効率の良い送達法であるが、それは非常に侵襲的な手法である。特にマウスで研究する場合、気管の直径がきわめて小さいため、それには大変な技術も要求される。鼻腔内経路は気管内経路ほど侵襲的ではなく、それゆえ以下で説明する4日マウスモデルのような反復投与試験には特に適している。鼻腔内投与後、投与された用量の約50%が肺に送達される(Eyles JE, Williamson ED and Alpar HO. 1999, Int J Pharm, 189(1):75-9)。
【0112】
マウスにビヒクル(生理食塩水中の0.2%tween 80)、実施例1 (0.1mg/kg)、実施例10 (0.1mg/kg)、実施例10 (0.03mg/kg)、または実施例10 (0.01mg/kg)を鼻腔内(経口吸入の代用)投与し、その3時間後、タバコの煙に毎日暴露した。対照群のマウスにはビヒクルを投与し、その3時間後、空気に1日あたり最大50分間毎日暴露した。最後のTS暴露の24時間後にBALを実施した。
【0113】
別の実験では、マウスにビヒクル(生理食塩水中の0.2%tween 80)、実施例7 (0.1mg/kg)、化合物7 (0.03mg/kg)、実施例15 (0.1mg/kg)、または実施例15 (0.03mg/kg)を鼻腔内(経口吸入の代用)投与し、その1時間後、タバコの煙に毎日暴露した。対照群のマウスにはビヒクルを投与し、その1時間後、空気に1日あたり最大50分間毎日暴露した。最後のTS暴露の24時間後にBALを実施した。
【0114】
データ管理と統計解析:
全ての結果を各動物について個々のデータ点として表し、また、平均値を各群について求めた。正規性検定が陽性であったため、データを一元配置分散分析(ANOVA)、続いて多重比較のためのBonferroni補正にかけて、処理群間の有意性について調べた。「p」値が<0.05のとき統計的に有意であると見なした。阻害パーセントは、下記の式を用いて、セルのデータについてExcelスプレッドシート内で自動的に計算した:
【数2】

【0115】
他のパラメータの阻害データは上記の式を用いて手動で計算した。
【0116】
表1に示すように、上記実施例1、7、10および15の化合物は、代用の吸入経路で投与したとき、TSにより誘発された好中球のBALへの流入を有意に阻害する。
【表4】

【0117】
実施例18
吸入経路で投与したときの本発明の化合物の、COPDなどの肺疾患の治療に対する適合性
肺疾患の治療のために吸入することに対する、上記実施例7、10および15に記載した化合物の適合性を、当技術分野で知られるようなWistar雄ラットを用いた標準的なin vivo薬物動態試験により調べた。1回量として5mg/kgの実施例7、実施例10および実施例15の化合物を90%Na.CMC (0.25%w/v)、10%Tween 80 (0.25%)ビヒクルにて強制的に経口投与し、血漿サンプルを30分、1時間、2時間、3時間、5時間、8時間、10時間および24時間の時点で採取した。1回量として1mg/kgの実施例7、実施例10および実施例15の化合物を、10%DMSO、10%Cremophor ELP、10%PEG 400、10%EtOHおよび60%Milli Q水にて静脈内(IV)経路により投与し、血漿サンプルを30分、1時間、2時間、3時間、5時間、8時間、10時間および24時間の時点で採取した。それぞれの血漿サンプル中の実施例7、実施例10および実施例15の化合物の濃度を標準的な分析方法により測定した。
【0118】
IVまたは経口投与後の標準薬物動態パラメータは、濃度曲線下面積(AUC)、最大血漿中濃度(Cmax)、最大血漿中濃度到達時間(Tmax)、消失時間(Kel)および血漿半減期(T1/2)を含めた血漿中濃度データから計算した。
【0119】
肺疾患の治療のために吸入に適する化合物は、IV投与後に低い血漿AUC(全身性副作用の可能性が少ないことを示す)をもつものである。肺疾患の治療のために吸入に適する化合物はまた、低い経口バイオアベイラビリティを有し、それはIV投与後に達成されるものよりかなり低い、経口投与後の血漿AUCにより示される。低い経口バイオアベイラビリティは、吸入後に嚥下した薬物のごく一部しか血漿に吸収されず、全身性副作用の出現がさらに低減することにつながる。
【表5】

* 5mg/kg経口投与PKデータから得られた
** 検出限界が5ng/mlであった
*** 0.4mg/kg経口および0.4mg/kg静脈内(IV)投与PKデータから得られたマレイン酸ロシグリタゾン(Avandia)のFDA Pharmacologyレビュー(http://www.fda.gov/cder/foi/nda/99/21071_Avandia.htm)からのデータ。
【0120】
上記の表2は、実施例7、実施例10および実施例15に詳述した化合物が、IV投与後に低い血漿AUCをもちかつ低い経口バイオアベイラビリティを有するので、吸入に特に適していることを示す。こうした特性は吸入後の全身作用(それゆえ全身性の副作用)の出現を低減させる。対照的に、糖尿病の治療のために処方される市販の経口PPARγアゴニストであるロシグリタゾンは、全身性疾患の治療に必要とされるプロファイルと一致して、IV投与後の高い血漿AUCと高い経口バイオアベイラビリティを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

[式中、
R1、R2またはR3は、それぞれ独立して、ハロ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボン酸またはそのエステルもしくはアミドを表し;
R4は、水素またはアルキルを表し;
m、nまたはpは、独立して、0、1、2または3を表す]
またはその製薬上許容される塩。
【請求項2】
前記化合物中に存在するそれぞれR1、R2およびR3が、独立して、メチル、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、メトキシ、およびトリフルオロメトキシから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
m、nおよびpが独立して0、1または2である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
mが0、1または2である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
以下の化合物:
2,4-ジクロロ-N-[4-(1-p-トリル-1H-ピラゾール-4-イルオキシ)-フェニル]-ベンゼンスルホンアミド;
2,4-ジクロロ-N-{3-クロロ-4-[1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ピラゾール-4-イルオキシ]-フェニル}-ベンゼンスルホンアミド;
2,4-ジクロロ-N-{3,5-ジクロロ-4-[1-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-1H-ピラゾール-4-イルオキシ]-フェニル}-ベンゼンスルホンアミド;
2,4-ジクロロ-N-{3,5-ジクロロ-4-[1-(4-フルオロ-フェニル)-1H-ピラゾール-4-イルオキシ]-フェニル}-ベンゼンスルホンアミド;
2,4-ジクロロ-N-{3-クロロ-4-[1-(4-フルオロ-フェニル)-1H-ピラゾール-4-イルオキシ]-フェニル}-ベンゼンスルホンアミド;
2,4-ジクロロ-N-{3-クロロ-4-[1-(4-クロロ-フェニル)-1H-ピラゾール-4-イルオキシ]-フェニル}-ベンゼンスルホンアミド;
2,4-ジクロロ-N-{3-クロロ-4-[1-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-1H-ピラゾール-4-イルオキシ]-フェニル}-ベンゼンスルホンアミド;
N-{3-クロロ-4-[1-(4-フルオロ-フェニル)-1H-ピラゾール-4-イルオキシ]-フェニル}-4-メチル-ベンゼンスルホンアミド;
2,4-ジクロロ-N-{4-[1-(4-フルオロ-フェニル)-1H-ピラゾール-4-イルオキシ]-3-メチル-フェニル}-ベンゼンスルホンアミド;
2,4-ジクロロ-N-{4-[1-(2,4-ジメチル-フェニル)-1H-ピラゾール-4-イルオキシ]-フェニル}-ベンゼンスルホンアミド;
4-メチル-N-[4-(1-p-トリル-1H-ピラゾール-4-イルオキシ)-フェニル]-ベンゼンスルホンアミド;
N-{3-クロロ-4-[1-(4-フルオロ-フェニル)-1H-ピラゾール-4-イルオキシ]-フェニル}-ベンゼンスルホンアミド;
2,4-ジクロロ-N-[3-クロロ-4-(1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イルオキシ)-フェニル]-ベンゼンスルホンアミド;
N-{4-[1-(2,4-ジメチル-フェニル)-1H-ピラゾール-4-イルオキシ]-フェニル}-4-メチル-ベンゼンスルホンアミド; および
N-{3-クロロ-4-[1-(2,4-ジメチル-フェニル)-1H-ピラゾール-4-イルオキシ]-フェニル}-4-メチル-ベンゼンスルホンアミド; ならびに
それらの製薬上許容される塩;
からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物および1種以上の製薬上許容される担体または賦形剤を含有する医薬組成物。
【請求項7】
鼻または口からの吸入による投与に適している、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
呼吸器疾患の治療のための、または呼吸器疾患治療用組成物の製造における、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
前記治療または治療用組成物が鼻または口からの吸入により投与される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
呼吸器疾患が喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性気道症候群、気管支炎、嚢胞性線維症および肺気腫から選択される、請求項8または9に記載の使用。

【公表番号】特表2012−514027(P2012−514027A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544077(P2011−544077)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002951
【国際公開番号】WO2010/076553
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(511030404)プルマゲン セラピューティクス(インフラメーション)リミテッド (2)
【Fターム(参考)】