説明

呼気エタノール濃度測定システム、呼気導入管及び呼気測定管理システム

【課題】 呼気採取袋を使用した場合に比べ、地球環境にやさしく、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を迅速に測定することができ、被験者がマウスピースなどに直接息を吹きかける方法に比べ、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を正確に測定することが可能となる、呼気エタノール濃度測定システム、呼気導入管及び呼気測定管理システムを提供する。
【解決手段】 湾曲部16を有する略逆L字型に形成された呼気導入通路の途中に位置する末広ノズルとを備えた呼気導入管10と、測定素子部の近傍の空間における風圧を検知する風圧センサ及び測定素子部の近傍の空間に存在するガスを排気する排気ポンプを備えた接触燃焼式ガスセンサ20とからなる呼気エタノール濃度測定システム30などにより課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触燃焼式ガスセンサを用いて被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定する場合において、呼気採取袋を使用しなくても、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を正確に測定することが可能となる、呼気エタノール濃度測定システム、呼気導入管及び呼気測定管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、警察による飲酒運転の取り締まりが強化されているにもかかわらず、自動車、飛行機、船舶、電車等の運転者が飲酒運転を行い、大惨事を巻き起こすケースが後を絶たない。また、飲酒後に機械操作を行う者も少なくなく、事故に至るケースも生じている。
【0003】
被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定する機器として、本出願の発明者らは、既に、特許文献1に示す、接触燃焼式ガスセンサを用いた呼気エタノール濃度測定システムを提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−107341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接触燃焼式ガスセンサに用いられる検知素子は、風の影響を受けやすく、風を受けることにより、抵抗値が変動するという現象が発生する。本出願の発明者らの提案した特許文献1に記載された呼気エタノール濃度測定システムでは、風の影響を受けないようにするため、呼気採取袋を使用している。
【0006】
しかしながら、呼気採取袋を使用した場合、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定するには2分程度要するため、被験者が多数いるときなどには、測定時間の短縮が必要となるという課題がある。
【0007】
また、呼気採取袋は一度使ったら廃棄しなければならない使い捨て品である。本出願の発明者らの提案した特許文献1に記載された呼気エタノール濃度測定システムにおいて、例えば、タクシー会社やバス会社のように、従業員全員が始業時に飲酒点検を行った場合には、廃棄すべき呼気採取袋が毎日多量に発生するため、地球環境の点から好ましくないという課題がある。
【0008】
一方、被験者がマウスピースなどに直接息を吹きかける方法を採用すると、呼気採取袋を使用する場合に比べ、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度をより早く検知することが可能であるが、被験者の呼気が相当の風力で検知素子及び補償素子に当たるため、検知素子の抵抗値が変動してしまい、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を正確に測定することができないという問題点がある。
【0009】
本発明の目的とするところは、呼気採取袋を使用した場合に比べ、地球環境にやさしく、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を迅速に測定することができ、被験者がマウスピースなどに直接息を吹きかける方法に比べ、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を正確に測定することが可能となる、呼気エタノール濃度測定システム、呼気導入管及び呼気測定管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、前記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、湾曲部を有する略逆L字型に形成された呼気導入通路と、呼気導入通路の途中に位置する末広ノズルと、被験者の呼気を呼気導入通路の外部から内部に導入するための呼気注入路を挿入する呼気注入路挿入口と、接触燃焼式ガスセンサの測定素子部を呼気導入通路の内部に位置するように接触燃焼式ガスセンサと接続する接続部とを備えた呼気導入管を用いた呼気エタノール濃度測定システムなどが上記目的を達成することを見出し、本発明をするに至った。
【0011】
即ち、本発明の呼気エタノール濃度測定システムは、導電性コイルに、酸化コバルトを含有し、かつエタノールと反応する第一の燃焼触媒を被覆してなる検知素子と、該検知素子と同一の材質及び同一の形状の導電性コイルに、エタノールと反応しない第二の燃焼触媒を被覆してなる補償素子とを配置した測定素子部を有し、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定する接触燃焼式ガスセンサと、該接触燃焼式ガスセンサの測定素子部に被験者の呼気を導入する呼気導入管とからなる呼気エタノール濃度測定システムであって、前記接触燃焼式ガスセンサは、前記検知素子の第一の燃焼触媒と前記補償素子の第二の燃焼触媒の近傍の空間における風圧を検知する風圧センサと、前記検知素子の第一の燃焼触媒と前記補償素子の第二の燃焼触媒の近傍の空間に存在するガスを前記接触燃焼式ガスセンサの外部に排気する排気ポンプとを備え、前記呼気導入管は、湾曲部を有する略逆L字型に形成された呼気導入通路と、該呼気導入通路の一端に配置され、被験者の呼気を該呼気導入通路の外部から内部に導入するために用いられる呼気注入路の一端を挿入可能とする呼気注入路挿入口と、該呼気導入通路の内側に配置された末広ノズルと、該呼気導入通路の他端に配置され、前記接触燃焼式ガスセンサの測定素子部が該呼気導入通路の内側に位置するように前記接触燃焼式ガスセンサと接続する接続部とを備えたものであることを特徴とする。
【0012】
本発明の呼気エタノール濃度測定システムの好適形態においては、前記末広ノズルの喉部は、直径0.8mm〜1.5mmの円形断面であり、また、前記湾曲部の開き角度は80度〜120度である。
【0013】
本発明の呼気導入管は、上述した呼気エタノール濃度測定システムに用いるものである。
【0014】
本発明の第一の呼気測定管理システムは、上述した呼気エタノール濃度測定システムと、被験者を特定するために必要となる被験者特定情報を取得する取得手段と、該取得手段で取得した被験者特定情報、上述した呼気エタノール濃度測定システムで測定した被験者の呼気に含まれるエタノール濃度及び被験者の呼気を採取した時間を被験者毎に関連付けて記憶し、管理する、管理サーバと、該管理サーバから送られた情報を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の第二の呼気測定管理システムは、上述した呼気エタノール濃度測定システムと、被験者を特定するために必要となる被験者特定情報を取得する取得手段と、呼気に含まれるエタノール濃度を測定する測定対象者の個人情報である測定対象者個人情報を記憶すると共に、該取得手段で取得した被験者特定情報、上述した呼気エタノール濃度測定システムで測定した被験者の呼気に含まれるエタノール濃度及び上述した呼気エタノール濃度測定システムで被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定した時間を被験者毎に関連付けて記憶し、管理する、管理サーバと、該管理サーバから送られた情報を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の第二の呼気測定管理システムの好適形態においては、前記呼気測定管理システムは、前記取得手段で被験者特定情報を取得した後、上述した呼気エタノール濃度測定システムにより被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始する。また、前記呼気測定管理システムは、上述した呼気エタノール濃度測定システムにより被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始した後、前記取得手段で取得した被験者特定情報と前記管理サーバに記憶された測定対象者個人情報を照合し、被験者を特定する被験者特定手段をさらに備える。さらに、前記呼気測定管理システムは、上述した呼気エタノール濃度測定システムにより被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始した後、前記管理サーバに記憶された測定対象者個人情報若しくは前記取得手段で取得した被験者特定情報に含まれる運転免許証の有効期限又は前記管理サーバに記憶された測定対象者個人情報若しくは前記取得手段で取得した被験者特定情報に含まれる生年月日及び運転免許証の色並びに被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定した日付に基づいて、被験者の所持する運転免許証の有効期限までの日数を算出する有効日数算出手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の呼気エタノール濃度測定システムは、呼気採取袋を使用しないため、地球環境にやさしく、呼気採取袋を使用した場合に比べて、迅速(30秒以内)に測定することができるという利点がある。
【0018】
本発明の呼気導入管を用いることにより、マウスピースなどに直接息を吹きかける方法に比べ、検知素子と補償素子が風の影響を受けず、検知素子と補償素子の抵抗値が変動しないため、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定する際に生じ得る誤差を効果的に抑制することができ、マウスピースなどを使い回しする必要もなく、衛生的であるという利点がある。
【0019】
本発明の呼気測定管理システムは、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度を迅速かつ正確に測定することができ、被験者毎に呼気に含まれるアルコール濃度のデータの管理が容易になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の呼気エタノール濃度測定システムの一実施形態の概略を示す斜視図である。
【図2】本発明の呼気導入管の一実施形態を示す左側面の断面図である。
【図3】(a)本発明の呼気導入管を本発明に用いる接触燃焼式ガスセンサに装着した状態の一例を示す左側面図であり、(b)本発明の呼気導入管を本発明に用いる接触燃焼式ガスセンサに装着した状態の一例を示す左側面の一部断面図である。
【図4】(a)本発明に用いる接触燃焼式ガスセンサの測定素子部の一例の一部を示す断面図であり、(b)本発明に用いる接触燃焼式ガスセンサの測定素子部の一例の一部を示す他の断面図である。
【図5】本発明に用いる接触燃焼式ガスセンサで使用する導電性コイルの一例を示す図である。
【図6】(a)本発明に用いる接触燃焼式ガスセンサで使用する検知素子の一例を示す斜視図であり、(b)本発明に用いる接触燃焼式ガスセンサで使用する補償素子の一例を示す斜視図である。
【図7】本発明に用いる接触燃焼式ガスセンサに使用するブリッジ回路の一例を示す回路図である。
【図8】本発明の呼気測定管理システムの一実施形態の概略を示す斜視図である。
【図9】本発明の呼気エタノール濃度測定システムを用いて測定したエタノール標準ガスのサンプル管のエタノール濃度の測定値(接触燃焼式ガスセンサの指示値)と測定回数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の呼気エタノール濃度測定システム30は、呼気導入管10と、接触燃焼式ガスセンサ20とを備える(図1)。
【0022】
呼気導入管10は、呼気注入路挿入口11と、呼気導入通路12と、末広ノズル15と、接続部17とを有する(図2)。
【0023】
呼気注入路挿入口11は、呼気導入通路12の一端12aに配置され、被験者の呼気を呼気導入通路12の外部から内部に導入するための呼気注入路11aを挿入することができるようになっている。呼気注入路11aとしては、中空の管状物であれば特に限定されず、例えば、ストローなどが挙げられる。
【0024】
呼気導入通路12は湾曲部16を有する略逆L字型に形成される。ここで、湾曲部16の開き角度は80度〜120度であることが好ましい。開き角度が80度未満であると、被験者が呼気注入路11aから呼気を導入しにくくなるからであり、逆に開き角度が120度を超えると、検知素子21の第一の燃焼触媒23と補償素子25の第二の燃焼触媒26の近傍の空間における風圧が強くなりすぎる可能性があるからである。
【0025】
末広ノズル15は、呼気導入通路12の内側に設置される。末広ノズル15は、呼気導入通路12の垂直方向12cの内側に設置してもよいが、図2に示すように、呼気導入通路12の水平方向12bの内側に設置する方が好ましい。
【0026】
末広ノズル15の喉部15aは、検知素子21の第一の燃焼触媒23と補償素子25の第二の燃焼触媒26の近傍の空間における風力を安定させるため、直径0.8mm〜1.5mmの円形断面であるのが好ましく、直径1.0mmの円形断面であるのがより好ましい。また、末広ノズル15の喉部15aの長手方向の長さは、2.0mm〜5.0mmであるのが好ましく、3.0mmであるのがより好ましい。末広ノズル15の喉部15aの長手方向の長さが2.0mm未満であると、検知素子21の第一の燃焼触媒23と補償素子25の第二の燃焼触媒26の近傍の空間における風圧が強くなりすぎる可能性があるからであり、逆に長手方向の長さが5.0mmを超えると、検知素子21の第一の燃焼触媒23と補償素子25の第二の燃焼触媒26の近傍の空間に到達する被験者の呼気が不十分となるおそれがあるからである。
【0027】
なお、呼気導入通路12には、被験者の呼気が末広ノズル15を通過する前に、被験者の呼気を採取する際に混入する唾液などを収納できるドレン管13と、被験者の呼気が逆流することを防止し、検知素子21の第一の燃焼触媒23と補償素子25の第二の燃焼触媒26の近傍の空間に被験者の呼気を大量に導入しないようにするための逆止弁14を設置するのが望ましい。
【0028】
接続部17は、呼気導入通路12の他端12d及び他端12dの近傍に配置され、接触燃焼式ガスセンサ20の測定素子部27が呼気導入通路12の垂直方向12cの内側に位置するように、接触燃焼式ガスセンサ20と接続する(図3(a),同(b))。接続部17の形状は、保護管28内に測定素子部27を収納した場合には、必然的に保護管28の外形と相似形状になる。
【0029】
接触燃焼式ガスセンサ20は、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定する。接触燃焼式ガスセンサ20は、検知素子21と、補償素子25と、風圧センサ29と、排気口27bとを備えた測定素子部27(例えば、図3(b))と、ブリッジ回路31(例えば、図7)と、排気ポンプ33と、電圧制御部(不図示)とを有する。
【0030】
検知素子21は、導電性コイル22に、酸化コバルトを含有し、エタノールに反応する第一の燃焼触媒23を被覆してなる(例えば、図6(a))。
【0031】
導電性コイル22を形成する材質としては、例えば、白金線、ニッケル線が挙げられる。導電性コイル22の形状としては、図5に示すように、コイル本体22aと、足部22b,22bとから構成されたものを例示することができる。足部22bは、コイル本体22aとつながり、コイル本体22aの最も上方にある外縁からの延長線22cよりもコイル本体22aから距離的に離れた位置に配置され、最も上方にある外縁からの延長線22cと平行の方向に延びている。ここで、足部22bと最も上方にある外縁からの延長線22cとの間隔は、導電性コイル22の直径の2〜4倍であるのが好ましい。なお、導電性コイル22は、両端にある足部22b,22bをピンに固着させ、可燃性ガスが酸化燃焼する際の燃焼熱によって抵抗の変化が生じる金属抵抗体として用いる。
【0032】
第一の燃焼触媒23に、酸化コバルトを含有させるのは、被験者の呼気から低濃度のアルコール濃度を高精度で感知できるようにするためである。ここにいう酸化コバルトは、一酸化コバルト(CoO)、四酸化三コバルト(Co)、二酸化コバルト(CoO)、三酸化二コバルト(Co)をいう。なお、酸化コバルトには、酸化銅(CuO)を混合してもよく、例えば、四酸化三コバルトと酸化銅は、モル重量比に換算すると、Co:CuO=4:1〜1:3にあるのが望ましい。
【0033】
導電性コイル22に第一の燃焼触媒23を円筒状に被覆する方法としては、例えば、以下に示すコーティング工程を行った後、以下に示す焼成工程を行うことが挙げられる。
【0034】
コーティング工程は、導電性コイル22をコーティング液に浸し、コーティングにより、導電性コイル22に第一の燃焼触媒23、コーティング樹脂及び担体の混合物を薄膜状に付着させる。コーティング液は、第一の燃焼触媒23、担体及びコーティング樹脂を含有してなる水溶液であって、それぞれの成分を所定の割合で混合する。各成分の構成割合(重量比)は、コーティング樹脂:(第一の燃焼触媒+担体)が60:40〜85:15であることが好ましい。焼成の際に酸化して孔となるコーティング樹脂の割合を比較的大きくすることで(最大85%程度)、貫通孔を含む比較的径が大きく深い孔24が多数形成され、担体内部に存在する第一の燃焼触媒23がより有効に活用できるようになる。担体は、エタノールに対し不活性な無機化合物である必要があり、通常、アルミナ(Al)を用いるが、シリカ(SiO)や酸化亜鉛(ZnO)などを用いてもよい。コーティング樹脂としては、例えば、酢酸ビニルとアクリル酸アルキルエステル(アクリル樹脂)の混合物が挙げられる。導電性コイル22を第一の燃焼触媒23、担体、コーティング樹脂が混合されたコーティング液に浸した後、導電性コイル22を陰極とし、所定時間、所定電圧を印加してコーティングする。このとき、電圧を間欠的に印加することが好ましい。電圧を間欠的に印加するのは、コーティング中のコーティング液の成分が一定濃度を保つための拡散時間を設けることができ、一定電圧を持続的に印加する場合と比較して、コーティング液成分の濃度むらを抑えることができるからである。なお、コーティング時間は、積算電力量に基づいて決定し、積算電力量が所定量になるように調整する。
【0035】
焼成工程は、第一の燃焼触媒23、コーティング樹脂及び担体の混合物を薄膜状に付着させた導電性コイル22を焼成する。焼成することにより、導電性コイル22に付着した担体に含まれるコーティング樹脂が酸化して分離するため、導電性コイル22に付着した混合物は、複数の孔24を有し、第一の燃焼触媒23を担持した担体に変化する。焼成は、空気(酸素)雰囲気中で外部から熱を加えると同時に、導電性コイル22に通電することによりコイルを加熱することで、内部からも加熱する。焼成は、コーティング樹脂を分離させるために必要な条件が設定される。好ましい焼成条件は、雰囲気温度500〜700℃、コイル印加電圧3〜5V、焼成時間10分以上である。雰囲気温度及び印加電圧を、上記条件以上にした場合には、導電性コイル22(ニッケル線の場合)が酸化を起こし、コイルの役割を果たさなくなってしまうため、好ましくなく、逆に、上記条件以下にした場合には、コーティング樹脂の燃焼が不十分となるため、好ましくないからである。なお、焼成工程を行った後の第一の燃焼触媒23は、担体と混合された状態で導電性コイル22に担持され、担体の表面に限らず、担体の内部にもほぼ均一に存在するようになると共に、担体の厚さが、0.1mm〜0.5mmとなり、担体からコーティング樹脂が除去されて、担体の表面には、貫通孔を含み、可燃性ガスと担体の内部に存在している第一の燃焼触媒23を接触可能とするのに十分な通気性を有する程度の大きさ、深さを有する多数の孔24が形成される(図6(a))。
【0036】
導電性コイル22に第一の燃焼触媒23を円筒状に被覆した検知素子21は、第一の燃焼触媒23を担持する担体の表面のみならず、担体内部に存在する第一の燃焼触媒23の接触燃焼を効率よく行うことできるため、接触燃焼が行われる領域が飛躍的に増大して、高濃度領域における検出可能範囲が拡大すると共に、担体の熱容量も下がり、低濃度領域における感度の向上が図られる。
【0037】
補償素子25は、検知素子21と同一の材質及び形状の導電性コイル22にエタノールに反応しない第二の燃焼触媒26を被覆してなる(例えば、図6(b))。
【0038】
第二の燃焼触媒26には、エタノールに不活性であるものを使用する。第二の燃焼触媒26としては、例えば、γアルミナ、αアルミナ、酸化ニッケルが挙げられるが、温湿度補償という点で表面状態が似たようなものがよいという理由から、酸化ニッケル(例えば、NiO、Ni)を含有してなるものが好ましい。
【0039】
導電性コイル22に第二の燃焼触媒26を円筒状に被覆する方法は、導電性コイル22に第一の燃焼触媒23を円筒状に被覆する方法と同様の方法を採用することができる。
【0040】
検知素子21及び補償素子25は、両端にある足部22b,22bが一対のピン27a,27aに固着されて、電気的に絶縁される。
【0041】
測定素子部27は、被験者の呼気が検知素子21の第一の燃焼触媒23と補償素子25の第二の燃焼触媒26の近傍の空間で対流するように、接触燃焼式ガスセンサ20の内部に形成された一定空間内に設置される。測定素子部27は、被験者の呼気が検知素子21の第一の燃焼触媒23と補償素子25の第二の燃焼触媒26の近傍の空間でより適切な対流状態となるように、例えば、円筒状の保護管28の内部に設置するのが好ましい(図3(b),図4)。なお、例えば、図4のように、円筒状の保護管28の上面28aには、複数の開口部28b,28b,28b,28b,28bを設けると共に、開口部28b,28b,28b,28b,28bの内側には、測定対象となる被験者の呼気中の異物が保護管内に侵入するのを防止し、被験者の呼気のみを矢示28dの方向に導入するための網目状のフィルタ28cを取り付けてもよい。
【0042】
風圧センサ29は、検知素子21の第一の燃焼触媒23と補償素子25の第二の燃焼触媒26の近傍の空間における風圧を検知する。風圧センサ29によって、被験者の呼気に含まれるエタノールの濃度を測定する際、誤差の原因となる一定範囲を逸脱した不適正な風量を適切に検出できるため、測定精度が向上する上、被験者の不正行為を効果的に防止することが可能となり、呼気測定の自動化を図ることも可能となる。風圧センサ29としては、公知の風圧センサを用いることができ、気体の流動を検知するものであっても、風圧によるフィルムの変形を検出するものであってもよく、特に限定されない。
【0043】
排気口27bは、検知素子21の第一の燃焼触媒23と補償素子25の第二の燃焼触媒26を配置した空間内に設けられる。排気口27bは、配管27cにより、排気ポンプ33に接続される。
【0044】
排気ポンプ33を作動させることにより、検知素子21の第一の燃焼触媒23と補償素子25の第二の燃焼触媒26の近傍の空間に存在するガスは、矢示27dの方向に移動し、接触燃焼式ガスセンサ20の外部27eに排出される。検知素子21の第一の燃焼触媒23と補償素子25の第二の燃焼触媒26の近傍の空間に存在するガスを排気ポンプ33で排気することにより、測定素子部27が設置された一定空間内に存在するエタノールガスの濃度が速やかに0になるため、測定結果がより安定するだけでなく、測定精度がより向上し、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度を繰り返して測定する場合における測定時間の短縮に寄与することに加え、測定素子部27が設置された一定空間内に存在するインフルエンザウイルス等のウイルスも排出されるため、測定素子部27が設置された一定空間内を清潔に保つことができる。
【0045】
なお、排気ポンプ33には、複数のダイヤフラムを設置することができる。これにより、常にいずれかのダイヤフラムが開かれた状態となるため、ガス流動の動圧による脈動への影響が抑制されると共に、閉塞率の変化に対してガス流量の変化が小さくなり、排気ポンプ33の吸引口と吐出口の弁の開閉時に生じるビビリ振動が排除される。
【0046】
ブリッジ回路31は、例えば、検知素子21と、補償素子25と、ブリッジ抵抗32a,32b,32cを用いて形成される(図7)。ブリッジ回路31は接触燃焼式ガスセンサ20の本体内に配置される。なお、図7には検知素子21と補償素子25を直列に配置する例を示したが、検知素子21と補償素子25を並列に配置してもよい。
【0047】
検知素子21及び補償素子25は、導電性コイル22に通電することによって発熱するが、接触燃焼式ガスセンサ20の本体内に配置された電圧制御部(不図示)において、検知素子21及び補償素子25の電圧が制御され、250〜350℃の所定の温度に維持される。検知素子21の温度及び補償素子25の温度が250℃未満では、測定対象ガスの燃焼が不十分になるため、ガスセンサの感度が低下する一方、検知素子21の温度及び補償素子25の温度が350℃を超えると、導電性コイル22の寿命が短くなるだけでなく、不飽和炭化水素(たとえばプロピレン等)に対しても反応し、エタノールに対する感度も低下するからである。つまり、検知素子21及び補償素子25が250〜350℃の所定の温度に到達し安定した状態になると、エタノールの濃度を高精度で測定することが可能となる。
【0048】
呼気エタノール濃度測定システム30では、被験者の呼気(測定対象ガス)は、例えば、呼気注入路11aから呼気導入通路12の内部に導入され、末広ノズル15を通過して風圧が整えられた後、湾曲部16で、横方向から縦方向に流れが変換されると共に、風圧が弱められ、接触燃焼式ガスセンサの保護管28内に設置された検知素子21の第一の燃焼触媒23と補償素子25の第二の燃焼触媒26に到達し、検知素子21の第一の燃焼触媒23と補償素子25の第二の燃焼触媒26の近傍の空間で対流する。
【0049】
検知素子21と補償素子25の間に設置された風圧センサ29が所定値(しきい値)を超える風圧を検出すると、スイッチ(不図示)と時刻タイマー(不図示)がいずれもONになり、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度の測定が始まる。
【0050】
検知素子21にある第一の燃焼触媒23はエタノールに反応するが、補償素子25にある第二の燃焼触媒26はエタノールに反応しないため、検知素子21にある第一の燃焼触媒23の表面でエタノールが燃焼して、検知素子21の温度が電圧制御部によって維持される温度よりも上昇する一方、補償素子25の温度は、電圧制御部によって一定に維持される。つまり、検知素子21と補償素子25の温度差は、エタノールが燃焼するか否かによって発生する。ここで、検知素子21の温度が変化すれば、その抵抗値も変化するため、検知素子21の温度上昇に起因する抵抗値の変化をブリッジ回路31で検出することにより、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を行うことができる。
【0051】
ここで、エタノール濃度の測定を始めてから、例えば3秒間、風圧センサ29が所定値(しきい値)を超える風圧を検出し続けた場合には、正確なエタノール濃度の測定ができたと判断して、例えば、ブザーを鳴らし、アルコール濃度の表示をして、排気ポンプ33を作動させる。約15秒後、排気ポンプ33の作業が終了し、次の被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定が可能となる。
【0052】
一方、例えば3秒以内に、風圧センサ29が所定値(しきい値)以下の風圧を検出した場合には、正確なエタノール濃度の測定ができていないと判断して、例えば、スイッチ(不図示)をOFFにすると共に、ブザーを鳴らし、「ERROR」表示をして、排気ポンプ33を作動させる。約15秒後、排気ポンプ33の作業が終了し、次の被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定が可能となる。
【0053】
以上に説明した原理により、本発明の呼気エタノール濃度測定システムは、被験者の呼気に含まれるエタノールの濃度を正確に測定することができる優れものである。
【0054】
次に、呼気測定管理システムについて説明する。本発明の呼気測定管理システム40は、呼気エタノール濃度測定システム30と、取得手段41と、管理サーバ42と、表示手段43を備える(図8)。
【0055】
取得手段41は、被験者を特定するために必要となる被験者特定情報を取得し、取得した被験者特定情報を管理サーバ42に送信する。被験者を特定するために必要となる被験者特定情報を取得手段41で取得し、取得した被験者特定情報を管理サーバ42で管理することにより、他人にエタノール測定を依頼するという不正行為を効果的に防止することが可能となる。
【0056】
取得手段41としては、例えば、被験者の顔を撮影するWebカメラ41a、運転免許証や証明書の記載事項を読み取る読取装置41b、被験者IDを入力するテンキー41cなどが挙げられる。なお、読取装置41bには、免許証リーダー、ICカードリーダライタ、バーコードリーダーが含まれる。
【0057】
被験者特定情報としては、例えば、被験者の顔の撮影データ、被験者ID、社員ID、免許証番号、証明書番号、氏名、生年月日、所属部署、運転免許証の交付年月日、照会番号、運転免許証の有効期限、運転免許証の色、免許の種類、免許の条件等、住所、本籍、運転免許証の顔写真などが挙げられる。
【0058】
管理サーバ42は、取得手段41で取得した情報、呼気エタノール濃度測定システム30で測定した被験者の呼気に含まれるアルコール濃度及び被験者の呼気を採取した時間及び/又は被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定した時間を被験者毎に関連付けて記憶し、管理する。
【0059】
ここで、管理サーバ42は測定対象者個人情報を記憶することが好ましい。測定対象者個人情報と被験者特定情報を照合することにより、被験者を特定することが可能であるからであり、測定対象者個人情報に含まれる運転免許証の有効期限又は測定対象者個人情報に含まれる生年月日及び運転免許証の色と、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定した時間とに基づいて、被験者の所持する運転免許証の有効期限までの日数を算出することも可能となるからである。
【0060】
測定対象者個人情報としては、呼気に含まれるエタノール濃度を測定する測定対象者の個人情報であり、例えば、被験者の顔の撮影データ、被験者ID、社員ID、免許証番号、証明書番号、氏名、生年月日、電話番号、携帯番号、メールアドレス、所属部署、運転免許証の交付年月日、照会番号、有効期間、運転免許証の色、免許の種類、免許の条件等、住所、本籍、運転免許証の顔写真などが挙げられる。
【0061】
表示手段43は、例えば、管理サーバ42とケーブルで接続され、管理サーバ42から送られた情報を表示する。なお、管理サーバ42が行う取得・記憶・管理機能と表示手段43が行う機能は、例えば、図8に示すように、ノートパソコン44に一括して実行させてもよい。
【0062】
本発明の呼気測定管理システム40により、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度を迅速かつ正確に測定することができることは勿論のこと、被験者毎に呼気に含まれるアルコール濃度のデータの管理を容易に行うことが可能であるため、被験者に対して義務付けられる毎日の呼気アルコール測定が迅速かつ容易に実施することができることから、例えば、悲惨な交通事故や健康被害から被験者や被験者を管理する企業を守ることも可能となる。
【0063】
本発明の呼気測定管理システムにおいては、取得手段41で被験者特定情報を取得した後、呼気エタノール濃度測定システム30により被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始することが好ましい。取得手段41で被験者特定情報を取得した後に呼気エタノール濃度測定システム30により被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始することにより、取得手段41に被験者特定情報を取得させるための作業を完了したことを確認した後において行う接触燃焼式ガスセンサ20の前面パネルに設置された測定開始ボタンを押すという作業をなくすことができるからである。
【0064】
具体的には、例えば、被験者が読取装置41b(免許証リーダー)に運転免許証を差し込むと、読取装置41bは、運転免許証から免許証番号と運転免許証の有効期限を読み取り、読み取った免許証番号と運転免許証の有効期限を被験者特定情報として管理サーバ42に送信する。読取装置41bから送られた免許証番号と運転免許証の有効期限を管理サーバ42が受信すると、管理サーバ42は、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始すべき旨の指令信号を接触燃焼式ガスセンサ20に送信する。管理サーバ42から送られた指令信号を受信した接触燃焼式ガスセンサ20は、排気ポンプ33の作業が終了していることを確認した後、ランプを点灯させたり、ブザーを鳴らすなどして、被験者に対し、ストローへ息を吹きかけることを促す。
【0065】
本発明の呼気測定管理システムにおいては、さらに、被験者特定手段を備えることも好ましい。被験者特定手段では、呼気エタノール濃度測定システム30により被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始した後、取得手段41で取得した被験者特定情報と管理サーバ42に記憶された測定対象者個人情報を照合し、被験者を特定する。被験者の特定を被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始した後に行う場合、被験者の特定を被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始する前に行う場合よりも、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定値が早く得られるようになるからである。なお、被験者特定手段は、例えば、管理サーバ42に設置する。
【0066】
具体的には、例えば、被験者がストローへ息を吹き始め、呼気エタノール濃度測定システム30が被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始すると、管理サーバ42は、読取装置41bから送られた免許証番号と記憶された測定対象者個人情報を照合する。読取装置41bから送られた免許証番号が測定対象者個人情報に存在した場合には、免許証番号から特定される測定対象者を被験者として特定し、風圧センサ29が所定値(しきい値)を超える風圧を3秒間検出し続けた場合には、正確なエタノール濃度の測定ができたと判断して、ブザーを鳴らすと同時に、表示手段43などにエタノール濃度を表示し、その後、管理サーバ42が測定日時と測定結果を記録する。読取装置41bから送られた免許証番号が測定対象者個人情報に存在しない場合には、風圧センサ29が所定値(しきい値)を超える風圧を3秒間検出し続け、たとえ正確なエタノール濃度の測定ができた場合であっても、他人にエタノール測定を依頼するという不正行為が行われたものと判断し、表示手段43などに「ERROR」表示をして、その後、管理サーバ42が測定日時と測定結果を記録する。
【0067】
本発明の呼気測定管理システムにおいては、さらに、有効日数算出手段を備えることも好ましい。有効日数算出手段は、呼気エタノール濃度測定システム30により被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始した後、測定対象者個人情報若しくは被験者特定情報に含まれる運転免許証の有効期限又は測定対象者個人情報若しくは被験者特定情報に含まれる生年月日及び運転免許証の色と、呼気エタノール濃度測定システム30で被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定した日付とに基づいて、被験者の所持する運転免許証の有効期限までの日数を算出する。有効日数算出手段により、被験者の所持する運転免許証の有効期限までの日数を簡単に算出することができ、免許証の失効についての管理も非常に容易になる。なお、有効日数算出手段は、例えば、管理サーバ42に設置する。
【0068】
具体的には、例えば、被験者がストローへ息を吹き始め、呼気エタノール濃度測定システム30が被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始し、風圧センサ29が所定値(しきい値)を超える風圧を3秒間検出し続けた場合には、正確なエタノール濃度の測定ができたと判断して、管理サーバ42は、読取装置41bから送られた運転免許証の有効期限から呼気エタノール濃度測定システム30で被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定した日付を引いて、被験者の所持する運転免許証の有効期限までの日数を算出する。運転免許証の有効期限までの日数が正の数である場合には、表示手段43に運転免許証の有効期限までの日数を表示し、その後、管理サーバ42が測定日時と測定結果を記録する。運転免許証の有効期限までの日数が0又は負の数である場合には、表示手段43などに「ERROR」表示をし、その後、管理サーバ42が測定日時と測定結果を記録する。
【実施例】
【0069】
(1)接触燃焼式ガスセンサの製作
直径0.018mm、長さ55mmのニッケル線を使用して、コイル径0.8mm、ピッチ0.1mm、巻き数22とし、図5に示す足部を有する導電性コイルを作成した。
【0070】
この導電性コイルに、以下のコーティング工程を行った後、以下の焼成工程を行い、円筒状(外径1.2mm、内径0.2mm、長さ2.5mm)に形成した検知素子を作成した。つまり、コーティング液は、第一の燃焼触媒8.5重量%、担体6.0重量%、コーティング樹脂55.7重量%、水29.8重量%とする水溶液とした。コーティング樹脂は、酢酸ビニルとアクリル酸アルキルエステル(アクリル樹脂)の混合物とした。第一の燃焼触媒は四酸化三コバルト及び酸化銅の混合物(モル重量比で1:3)とした。担体はアルミナとした。コーティングは電圧を間欠的に印加して行った。即ち、最大電圧20V、周波数50Hzの交流電圧を印加して、電流値は20mAとし、印加時間は30秒とした。焼成工程は、雰囲気温度を500℃とし、コイル印加電圧を3V(コイル温度300℃)として、10分間焼成した。
【0071】
補償素子は、上述した検知素子と同一の材質及び同一の形状の導電性コイルを使用し、四酸化三コバルトと酸化銅の混合物(モル重量比1:3)の第一の燃焼触媒を、γアルミナと酸化ニッケルの混合物(モル重量比1:3)の第二の燃焼触媒に変えた以外は、上述した検知素子を作成した方法と同様の操作を繰り返して作成した。
【0072】
このようにして得られた検知素子と補償素子のそれぞれについて、素子の両端にある足部を一対のピンに固着して、円筒状の保護管(プローブ)内に設置した測定素子部に配置した。測定素子部には風圧センサと排気口も配置した。排気口は配管によりガスセンサ本体内に設置した排気ポンプと接続した。測定素子部はガスセンサ本体に接続し、検知素子、補償素子及びブリッジ抵抗で、図8に示すブリッジ回路を形成した。
【0073】
ガスセンサ本体内には、検知素子及び補償素子の電圧を制御することにより、検知素子及び補償素子を250〜350℃の所定の温度に維持する電圧制御部と、測定値を表示するデジタル表示部と、測定値をプリントアウトする簡易プリント部を設置して、本発明となる接触燃焼式ガスセンサを製作した。
【0074】
(2)呼気導入管の製作
図2に示すような、本発明の呼気導入管を製作した。呼気導入通路の一端には、被験者の呼気を呼気導入通路の外部から内部に導入するために用いられる呼気注入路の一端を挿入することができる呼気注入路挿入口を設けた。略逆L字型に形成した呼気導入通路の湾曲部の開き角度は90度とした。被験者の呼気が湾曲部に到達する前、即ち、水平方向に位置する呼気導入通路の内側には、被験者から呼気を採取する際に混入する唾液などを収納するドレン管と、被験者の呼気が逆流することを防止し、測定素子部の空間内に適量送るようにするための逆止弁と、直径1.0mmの円形断面となる末広ノズルとを設けた。呼気導入通路の他端には、垂直方向に位置する呼気導入通路の内部に接触燃焼式ガスセンサの円筒状の保護管(プローブ)を内包するための接続部を設けた。
【0075】
(3)エタノール測定試験
図3(a)に示すように、実施例2で製作した本発明の呼気導入管を実施例1で製作した接触燃焼式ガスセンサの円筒状の保護管(プローブ)に接続した後、実施例1で製作した接触燃焼式ガスセンサのガスセンサ本体に設置された電圧制御部で、円筒状の保護管(プローブ)内に設置された検知素子及び補償素子の電圧を制御して、検知素子及び補償素子の温度をいずれも280℃付近に維持した。
【0076】
その後、呼気注入路挿入口にエタノール標準ガスのサンプル管(0.15ミリグラム/リットル、25℃)を挿入し、実施例1で製作した接触燃焼式ガスセンサにより、サンプル管中のエタノール濃度を測定した。そして、リセットボタンを押し、排気ポンプを起動させて、検知素子の第一の燃焼触媒と補償素子の第二の燃焼触媒の近傍の空間に存在するガスを接触燃焼式ガスセンサの外部に排出した。
【0077】
20秒後、エタノール標準ガスのサンプル管を再び挿入し、実施例1で製作した接触燃焼式ガスセンサにより、サンプル管中のエタノール濃度を測定した後、リセットボタンを押し、排気ポンプを起動させて、検知素子の第一の燃焼触媒と補償素子の第二の燃焼触媒の近傍に存在するガスを接触燃焼式ガスセンサの外部に排出した。
【0078】
エタノール標準ガスのサンプル管の再挿入、サンプル管中のエタノール濃度の測定及び排気ポンプによるガスの排出の操作を18回繰り返し、エタノール標準ガスのサンプル管中のエタノール濃度を20回連続して測定した。その結果は、図9に示すように、エタノール濃度の測定値(接触燃焼式ガスセンサの指示値)の平均は0.16ミリグラム/リットル、変動係数は4.8%となった。
【0079】
これにより、本発明の呼気エタノール濃度測定システムは、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を、迅速かつ正確に測定することができることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0080】
10 呼気導入管
11 呼気注入路挿入口
11a 呼気注入路
12 呼気導入通路
12a 呼気導入通路の一端
12b 水平方向
12c 垂直方向
12d 呼気導入通路の他端
13 ドレン管
14 逆止弁
15 末広ノズル
15a 末広ノズルの喉部
16 湾曲部
17 接続部
20 接触燃焼式ガスセンサ
21 検知素子
22 導電性コイル
22a コイル本体
22b 足部
22c 最も上方にある外縁からの延長線
23 第一の燃焼触媒
24 孔
25 補償素子
26 第二の燃焼触媒
27 測定素子部
27a ピン
27b 排気口
27c 配管
27e 外部
28 保護管
28a 保護管の上面
28b 開口部
28c フィルタ
29 風圧センサ
30 呼気エタノール濃度測定システム
31 ブリッジ回路
32a,32b,32c ブリッジ抵抗
33 排気ポンプ
40 呼気測定管理システム
41 取得手段
41a Webカメラ
41b 読取装置
41c テンキー
42 管理サーバ
43 表示手段
44 ノートパソコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性コイルに、酸化コバルトを含有し、かつエタノールと反応する第一の燃焼触媒を被覆してなる検知素子と、該検知素子と同一の材質及び同一の形状の導電性コイルに、エタノールと反応しない第二の燃焼触媒を被覆してなる補償素子とを配置した測定素子部を有し、被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定する接触燃焼式ガスセンサと、該接触燃焼式ガスセンサの測定素子部に被験者の呼気を導入する呼気導入管とからなる呼気エタノール濃度測定システムであって、
前記接触燃焼式ガスセンサは、前記検知素子の第一の燃焼触媒と前記補償素子の第二の燃焼触媒の近傍の空間における風圧を検知する風圧センサと、前記検知素子の第一の燃焼触媒と前記補償素子の第二の燃焼触媒の近傍の空間に存在するガスを前記接触燃焼式ガスセンサの外部に排気する排気ポンプとを備え、
前記呼気導入管は、湾曲部を有する略逆L字型に形成された呼気導入通路と、該呼気導入通路の一端に配置され、被験者の呼気を該呼気導入通路の外部から内部に導入するために用いられる呼気注入路の一端を挿入可能とする呼気注入路挿入口と、該呼気導入通路の内側に配置された末広ノズルと、該呼気導入通路の他端に配置され、前記接触燃焼式ガスセンサの測定素子部が該呼気導入通路の内側に位置するように前記接触燃焼式ガスセンサと接続する接続部とを備えたものであることを特徴とする呼気エタノール濃度測定システム。
【請求項2】
前記末広ノズルの喉部は、直径0.8mm〜1.5mmの円形断面であることを特徴とする請求項1に記載の呼気エタノール濃度測定システム。
【請求項3】
前記湾曲部の開き角度は80度〜120度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の呼気エタノール濃度測定システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の呼気エタノール濃度測定システムに用いる呼気導入管。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の呼気エタノール濃度測定システムと、被験者を特定するために必要となる被験者特定情報を取得する取得手段と、該取得手段で取得した被験者特定情報、請求項1〜3のいずれか1項に記載の呼気エタノール濃度測定システムで測定した被験者の呼気に含まれるエタノール濃度及び被験者の呼気を採取した時間を被験者毎に関連付けて記憶し、管理する、管理サーバと、該管理サーバから送られた情報を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする呼気測定管理システム。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の呼気エタノール濃度測定システムと、被験者を特定するために必要となる被験者特定情報を取得する取得手段と、呼気に含まれるエタノール濃度を測定する測定対象者の個人情報である測定対象者個人情報を記憶すると共に、該取得手段で取得した被験者特定情報、請求項1〜3のいずれか1項に記載の呼気エタノール濃度測定システムで測定した被験者の呼気に含まれるエタノール濃度及び請求項1〜3のいずれか1項に記載の呼気エタノール濃度測定システムで被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定した時間を被験者毎に関連付けて記憶し、管理する、管理サーバと、該管理サーバから送られた情報を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする呼気測定管理システム。
【請求項7】
前記呼気測定管理システムは、前記取得手段で被験者特定情報を取得した後、請求項1〜3のいずれか1項に記載の呼気エタノール濃度測定システムにより被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始することを特徴とする請求項6に記載の呼気測定管理システム。
【請求項8】
前記呼気測定管理システムは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の呼気エタノール濃度測定システムにより被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始した後、前記取得手段で取得した被験者特定情報と前記管理サーバに記憶された測定対象者個人情報を照合し、被験者を特定する被験者特定手段をさらに備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載の呼気測定管理システム。
【請求項9】
前記呼気測定管理システムは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の呼気エタノール濃度測定システムにより被験者の呼気に含まれるエタノール濃度の測定を開始した後、前記管理サーバに記憶された測定対象者個人情報若しくは前記取得手段で取得した被験者特定情報に含まれる運転免許証の有効期限又は前記管理サーバに記憶された測定対象者個人情報若しくは前記取得手段で取得した被験者特定情報に含まれる生年月日及び運転免許証の色並びに被験者の呼気に含まれるエタノール濃度を測定した日付に基づいて、被験者の所持する運転免許証の有効期限までの日数を算出する有効日数算出手段をさらに備えたことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の呼気測定管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−261940(P2010−261940A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89348(P2010−89348)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(390022389)サンコーテクノ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】