説明

咽頭粘膜抗炎症スプレー剤

【課題】 風邪による咽頭炎、特に咽頭痛に有用な咽頭粘膜抗炎症スプレー剤を提供する。
【解決手段】 トラネキサム酸及び殺菌消毒成分を配合した咽頭粘膜抗炎症スプレー剤、並びにトラネキサム酸、殺菌消毒成分あるいはさらにポリビニルピロリドンなどの増粘剤を配合した咽頭粘膜抗炎症スプレー剤であり、殺菌消毒成分が塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリウム、チモール、グルコン酸クロルヘキシジン、ジアルキルアミノエチルグリシンからなる群から選ばれる1種以上である咽頭粘膜抗炎症スプレー剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラネキサム酸及び殺菌消毒成分を配合し、あるいはさらにこれにポリビニルピロリドンなどの増粘剤を配合した咽頭粘膜抗炎症スプレー剤に関する。より詳しくは、風邪に起因する咽頭炎である、のどの腫れ、のどの充血、特にのどの痛みに有用な咽頭粘膜抗炎症スプレー剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口腔粘膜スプレー剤は、殺菌消毒成分のヨウ素、ポビドンヨードや塩化セチルピリジニウムを配合した口腔粘膜スプレー剤、あるいは抗炎症成分のアズレンスルホン酸ナトリウムを配合した口腔粘膜スプレー剤が市販されている。これらスプレー剤は、主に、風邪による急性上気道炎症の治療に用いられている。
【0003】
風邪は、呼吸器粘膜の急性炎症疾患である。呼吸器は、鼻腔から、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺にいたる臓器であり、風邪は、呼吸器のいろいろな部位、あるいはその全体にわたる急性炎症、つまり、粘膜が赤く腫れあがる症状である。鼻腔粘膜が炎症をおこせば、くしゃみ、鼻みず、鼻詰まりなどの鼻炎症状があらわれ、咽頭粘膜の炎症では、のどの腫れ、のどの充血、のどの痛みなどの咽頭炎症状があらわれる。同様に、喉頭炎、気管支炎では、がらがら声、せき、たんなどの症状があらわれる。それぞれの部位からの症状が、いろいろな程度にあらわれる総合症状が風邪であって、また、症状は呼吸器にだけに止まらず、炎症がある程度まで進むと、全身反応、すなわち発熱、頭痛、腰痛、全身のだるさなどもあらわれる。
【0004】
風邪による急性上気道炎症は、ウイルスが原因の大部分を占めるが、ウイルスによる急性上気道炎症は、1週間ほどで回復するとされる。しかしながら、ウイルス感染によって、上皮細胞が破壊されてしまえば、細菌が侵入定着し二次感染が生じる。
したがって、風邪治療の基本は、ウイルスに対する原因療法よりは、むしろ対処療法であり、不愉快な症状の緩和や、細菌による二次感染を防ぐ対処療法が多くとられている。この細菌による二次感染予防や治療のために、殺菌消毒成分を配合した口腔粘膜スプレー剤が市販され、のどの殺菌消毒、のどの炎症による声がれ、のどのあれ、のどの不快感、のどの痛み、のどの腫れに適用されている。
【0005】
殺菌消毒成分としては、ヨウ素、ポビドンヨードや塩化セチルピリジニウムが、スプレー剤に配合されている。しかし、ヨウ素やポビドンヨードは、ヨード特有の味や臭いがあること、また、ヨード過敏症やヨード過剰摂取による甲状腺機能低下などもあり、ヨウ素やポビドンヨードを配合したスプレー剤は、使用が制限されるという欠点があった。
【0006】
また、抗炎症成分のアズレンスルホン酸ナトリウムを配合したスプレー剤は、口腔粘膜の炎症による、声がれ、のどのあれ、のどの不快感、のどの痛み、のどの腫れ、口内炎に使用されているが、このアズレンスルホン酸ナトリウムは、粘膜炎症に効果があるものの、細菌に対する殺菌消毒作用が無く、風邪による粘膜炎症治療には限界があった。そのため、殺菌消毒成分と抗炎症成分とを組み合わせた、粘膜抗炎症スプレー剤の開発が要望されていたが、殺菌消毒成分と抗炎症成分の両成分を配合した、風邪に対する粘膜抗炎症スプレー剤は、未だ実現していなかった。
【0007】
特に、風邪によるのどの痛みは日常ありふれた症状であり、のどの激痛のため嚥下困難に陥り、食事も出来ないこともしばしば生じる。早期にのどの痛みを軽減し、食事ができることが切望されていたが、この咽頭痛に有用な咽頭粘膜抗炎症スプレー剤は、未だ実現されていなかったのが現状である。
【0008】
現在、歯周疾患の予防、治療に際し、又は肛門周辺部などの清浄のために、第4級アンモニウム塩型カチオン抗菌成分と抗プラスミン成分のトラネキサム酸を配合した外用液剤が提案されている。例えば、特許文献1には、う蝕、歯周疾患、口臭などの口腔用組成物として、抗プラスミン成分のトラネキサム酸及び/又はε−アミノカプロン酸、第4級アンモニウム塩型カチオン抗菌成分、ステビア系甘味剤からなる組成物が開示されている。
【0009】
また特許文献2には、歯周疾患の予防、治療のための口腔組成物として、第4級アンモニウム塩型カチオン抗菌成分、抗プラスミン成分、塩化ナトリウムからなる組成物が開示されている。さらに特許文献3には、同様に歯周疾患の予防、治療のための口腔組成物として、第4級アンモニウム塩型カチオン抗菌成分、抗プラスミン成分、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムからなる組成物が開示されている。また、特許文献4には、第4級アンモニウム塩型カチオン抗菌成分及び/又は抗プラスミン成分、マルチトールの組み合わせからなる組成物が、歯周疾患の予防、治療の口腔組成物として記載されている。
【0010】
また、特許文献5には、トラネキサム酸類、水溶性殺菌成分(第4級アンモニウム塩型カチオン抗菌成分及び/又はグルコン酸クロルヘキシジン)などの組み合わせからなる組成物が、肛門周辺部などの清浄剤として記載されている。また、特許文献6には、第4級アンモニウム塩型カチオン抗菌成分及び/又はトラネキサム酸、水溶性カルシウムの組み合わせからなる組成物が、抗菌性・歯肉炎などの口腔組成物として記載されている。
しかしながら、風邪による急性上気道炎症の咽頭炎、とりわけ咽頭痛に有用な咽頭粘膜抗炎症スプレー剤については、未だ報告はない。
【0011】
【特許文献1】特許第3070152号公報
【特許文献2】特開平9−95429号公報
【特許文献3】特開平9−95457号公報
【特許文献4】特開2003−128540号公報
【特許文献5】特開2005−68076号公報
【特許文献6】特開2005−104911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、風邪による咽頭粘膜炎である、のどの腫れ、のどの充血、のどの痛み、特にのどの痛みを軽減除去させる咽頭粘膜抗炎症スプレー剤の提供である。風邪による、のどの痛みは日常ありふれた症状であり、のどの激痛のため嚥下困難に陥り、食事も出来ないこともしばしば生じる。本発明は早期にのどの痛みを軽減し、食事ができるようにするため、咽頭炎、特に咽頭痛に有用な、咽頭粘膜抗炎症スプレー剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、抗炎症成分としてのトラネキサム酸に、殺菌消毒成分を配合したスプレー剤、あるいは、さらにこれにポリビニルピロリドンを配合したスプレー剤が、咽頭粘膜炎である、のどの腫れ、のどの充血、特に、のどの痛みに著しく有用であることを見出し、本発明の咽頭粘膜抗炎症スプレー剤を完成させた。
【0014】
したがって本発明は、具体的には以下の構成からなる。
(1)トラネキサム酸及び殺菌消毒成分を配合したことを特徴とする咽頭粘膜抗炎症スプレー剤;
(2)殺菌消毒成分が塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリウム、チモール、グルコン酸クロルヘキシジン、ジアルキルアミノエチルグリシンからなる群から選ばれる1種以上である上記(1)に記載の咽頭粘膜抗炎症スプレー剤;
(3)さらに増粘剤を配合したことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の咽頭粘膜抗炎症スプレー剤;
(4)トラネキサム酸、殺菌消毒成分及び増粘剤を配合したことを特徴とする咽頭粘膜抗炎症スプレー剤;
(5)増粘剤がポリビニルピロリドンである上記(3)又は(4)に記載の咽頭粘膜抗炎症スプレー剤;
である。
【発明の効果】
【0015】
本発明が提供するトラネキサム酸に殺菌消毒成分を配合し、あるいはさらにこれにポリビニルピロリドンなどの増粘剤を配合した咽頭粘膜抗炎症スプレー剤は、風邪による咽頭炎である、のどの腫れ、のどの充血、特に、のどの痛みを顕著に改善するものである。それに加えて、本発明が提供する咽頭粘膜抗炎症スプレー剤は、風邪によるありふれた一般症状である、のどの痛み、すなわち咽頭痛を早期に軽減し、嚥下障害による食事摂取が困難な状態を早期に改善することが出来るものであり、したがって、風邪による咽頭炎、特に咽頭痛に対する対処療法剤として、極めて有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
上記したように、本発明の基本は、抗炎症成分としてのトラネキサム酸に、殺菌消毒成分を配合したスプレー剤であり、さらにこれにポリビニルピロリドンなどの抗菌剤を配合したスプレー剤である。
風邪治療の基本は、上記したように、ウイルスに対する原因療法よりは、むしろ、不愉快な症状の緩和や、細菌による二次感染予防の対処療法である。
本発明で使用するトラネキサム酸は、化学名がトランス−4−(アミノメチル)シクロへキサンカルボン酸であり、抗プラスミン作用があることが知られており、このプラスミン阻止作用により、止血や抗アレルギーなどの抗炎症効果が認められている。
【0017】
これまでトラネキサム酸は、注射投与あるいは経口投与(カプセル剤、錠剤、散剤、シロップ剤)形態の医薬品として用いられてきているが、外用剤として、特に咽頭粘膜抗炎症スプレー剤としての使用は報告されていない。
したがって、かかる点で本発明は極めて特異的なものであるといえる。
【0018】
以下本発明の特異性を、さらに詳しく説明すると、細菌感染による咽頭炎は、起炎菌である化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌などが産生する菌体外毒素であるストレプトキナーゼ、スタフィロキナーゼなどのタンパク分解酵素の活性化による咽頭炎であるとされる。
本発明で使用するトラネキサム酸は、起炎菌が産生するタンパク分解酵素や、タンパク分解酵素により活性化されたプラスミンを抑制することにより、止血作用、抗血管透過性作用などの抗炎症効果をもたらすものである。
【0019】
しかしながら、トラネキサム酸には起炎菌に対する殺菌消毒作用は本来的に有しないものである。したがって、本発明においては、抗炎症成分であるトラネキサム酸に加え、さらに殺菌消毒成分を配合することにより、抗炎症作用と共に、起炎菌をも殺菌消毒する咽頭粘膜抗炎症スプレー剤で、咽頭炎であるのどの腫れ、のどの充血、特に、のどの痛みを著しく改善させることを見出したのである。
【0020】
以下、本発明の咽頭粘膜抗炎症スプレー剤(以下、スプレー剤)についてより具体的に説明する。
【0021】
本発明のスプレー剤において配合するトラネキサム酸の量は、0.05〜10w/v%であり、好ましくは0.5〜10w/v%であり、より好ましくは1〜7w/v%である。0.05w/v%未満であると目的とする抗炎症作用を発揮することができず、また10w/v%を超えて配合しても、それ以上の効果は望めず、かえって無駄である。
【0022】
一方、トラネキサム酸と共に配合される殺菌消毒成分としては、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリウム、チモール、グルコン酸クロルヘキシジン、ジアルキルアミノエチルグリシンなどを挙げることができる。特に好ましくは塩化セチルピリジニウムである。
本発明においてはこれら殺菌消毒成分の1種以上を用いることもできる。
本発明のスプレー剤において、殺菌消毒成分の配合量は、0.01〜1w/v%であり、より好ましくは0.1〜0.5w/v%である。0.01w/v%未満であると目的とする殺菌消毒効果を発揮することができず、また1w/v%を超えて配合しても、それ以上の効果は認められず、かえって資源の無駄となる。
【0023】
本発明のスプレー剤にあって、上記のトラネキサム酸及び殺菌消毒成分に加えて配合するポリビニルピロリドンは、別名ポビドンであって、その重合度により分けられ、K17(分子量10,000)、K25(分子量40,000)、K30(分子量40,000)、K90(分子量360,000)などがあり、そのうちのいずれを用いることもできる。
【0024】
これらのポリビニルピロリドンは、本発明の咽頭粘膜抗炎症スプレー剤に配合されることにより、薬液の粘度を増加させるものであり、また、この液を咽頭の患部にスプレーすることにより薬液の皮膜を形成させて、薬効成分を長く滞留させることができる。
この場合のポリビニルピロリドンの配合量は、0.05〜10w/v%、好ましくは0.5〜10w/v%、より好ましくは1〜7w/v%である。
0.05w/v%未満であると、目的とする効果を上げることができず、また10w/v%を超えて配合しても、それ以上の効果は認められない。
【0025】
本発明が提供するスプレー剤には、上記成分に加えて、さらに多価アルコール、糖アルコール、清涼化剤、矯味剤、甘味剤、界面活性剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤などを、適宜配合することができる。
【0026】
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。そのなかでも、好ましくは、グリセリン、プロピレングリコールである。これらの多価アルコールは1種以上を併用することもできる。
【0027】
糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、マルチトール、マルトース、キシロースなどが挙げられる。特に、ソルビトール、キシリトールが好ましい。これらの糖アルコールは1種以上を併用することもできる。多価アルコール及び糖アルコールの配合量は特に制限されるものではないが、通常、1〜70w/v%、好ましくは5〜70w/v%である。
【0028】
清涼化剤としては、メントール、ユーカリ油、チョウジ油、カルボン、オイゲノール、リナロール、シネロール、アネトール、ペパーミント油、レモン油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、カンフル、ボルネオール、天然ミント、セージ、ローズマリー、タイム、バジル、カモミールなどが挙げられる。好ましくは、メントール、ユーカリ油、レモン油などが挙げられる。清涼化剤の配合量は、0.005〜0.2w/v%である。
【0029】
また、矯味剤としては、サッカリンナトリウム、エタノール、アスパルテーム、カンゾウエキス、デキストリンなどが挙げられる。
【0030】
甘味剤としては、白糖、蜂蜜、粉末還元麦芽糖水飴、果糖、ブドウ糖などを挙げることができる。その配合量は特に制限はなく、所望により適宜な量を配合することができる。
【0031】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0032】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:例えば、ポリソルベート60,ポリソルベート80など、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油:例えば、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油など、ポリオキシエチレンアルキルエーテル:例えば、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(23)セチルエーテルなど、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル:例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)などやショ糖脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0033】
また、イオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウムなどが配合できる。
【0034】
これら界面活性剤は、所望により、適宜な量を配合することができる。
【0035】
増粘剤としては、カルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、ゼラチンなどが挙げられる。好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンであり、特に、好ましくはポリビニルピロリドンである。
【0036】
安定化剤としては、エデト酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
【0037】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸、安息香酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0038】
pH調節剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、酒石酸、塩酸、リン酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
【0039】
さらに配合できる成分としては、精製水、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどを挙げられることができる。
【0040】
本発明が提供するスプレー剤は、精製水に適宜配合成分を溶解し、適宜pHなどの調整を行った後、所望の用量にメスアップし、得られた咽頭粘膜用スプレー液を所定の容器に充填することにより、製造することができる。
なお、所定の容器とは通常のスプレー用容器を意味する。
【実施例】
【0041】
以下に本発明を、実施例、試験例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1:
精製水60mLにトラネキサム酸0.5g、塩化セチルピリジニウム0.1g、ソルビトール13gを溶解し、予め、プロピレングリコール8g、グリセリン10gにメントール0.02g及びユーカリ油0.005gを溶かした溶液を添加し混合する。クエン酸でpH5.75に調整し、精製水で100mLにメスアップし、得られた咽頭粘膜用スプレー液を所定の容器に充填した。
【0043】
実施例2〜4:
前記した実施例1と同様に処理し、下記表1の実施例2〜4の咽頭粘膜用スプレー液を調製し、所定の容器に充填した。
なお、表中の各成分の配合量はg単位で表示している。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例5:
精製水60mLにトラネキサム酸5g、塩化ベンゼトニウム0.1g、ソルビトール13gを溶解し、予め、プロピレングリコール8g、グリセリン10gにメントール0.02g及びユーカリ油0.005gを溶かした溶液を添加し混合する。クエン酸でpH5.80に調整し、精製水で100mLにメスアップし、得られた咽頭粘膜用スプレー液を所定の容器に充填する。
【0046】
実施例6:
精製水60mLにトラネキサム酸5g、塩化ベンザルコニウム0.1g、ソルビトール13gを溶解し、予め、プロピレングリコール8g、グリセリン10gにメントール0.02g及びユーカリ油0.005gを溶かした溶液を添加し混合する。クエン酸でpH5.84に調整し、精製水で100mLにメスアップし、得られた咽頭粘膜用スプレー液を所定の容器に充填する。
【0047】
実施例7:
精製水80mLにトラネキサム酸10g、塩化セチルピリジニウム0.1g、ソルビトール2gを溶解し、予め、プロピレングリコール5gにメントール0.02g及びユーカリ油0.005gを溶かした溶液を添加し混合する。クエン酸でpH6.00に調整し、精製水で100mLにメスアップし、得られた咽頭粘膜用スプレー液を所定の容器に充填する。
【0048】
実施例8:
精製水60mLにトラネキサム酸5g、塩化デカリウム0.1g、ソルビトール13gを溶解し、予め、プロピレングリコール8g、グリセリン10gにメントール0.02g及びユーカリ油0.005gを溶かした溶液を添加し混合する。クエン酸でpH5.90に調整し、精製水で100mLにメスアップし、得られた咽頭粘膜用スプレー液を所定の容器に充填する。
【0049】
実施例9:
精製水60mLにトラネキサム酸5g、ソルビトール13gを溶解し、予め、プロピレングリコール8g、グリセリン10gにメントール0.02g、ユーカリ油0.005g、チモール0.1gを溶かした溶液を添加し混合する。クエン酸でpH5.85に調整し、精製水で100mLにメスアップし、得られた咽頭粘膜用スプレー液を所定の容器に充填する。
【0050】
実施例10:
精製水60mLにトラネキサム酸5g、グルコン酸クロルヘキシジン0.1g、ソルビトール13gを溶解し、予め、プロピレングリコール8g、グリセリン10gにメントール0.02g及びユーカリ油0.005gを溶かした溶液を添加し混合する。クエン酸でpH5.87に調整し、精製水で100mLにメスアップし、得られた咽頭粘膜用スプレー液を所定の容器に充填する。
【0051】
実施例11:
精製水60mLにトラネキサム酸5g、ジアルキルアミノエチルグリシン0.1g、ソルビトール13gを溶解し、予め、プロピレングリコール8g、グリセリン10gにメントール0.02g及びユーカリ油0.005gを溶かした溶液を添加し混合する。クエン酸でpH5.87に調整し、精製水で100mLにメスアップし、得られた咽頭粘膜用スプレー液を所定の容器に充填する。
【0052】
実施例12:
精製水40mLにトラネキサム酸5g、塩化セチルピリジニウム0.3g、ソルビトール2.5g、粉末還元麦芽糖水飴7.5g、リン酸水素ナトリウム0.4、ポリビニルピロリドン(K30)4gを溶解し、予め、プロピレングリコール8g、グリセリン45gにメントール0.08g、ユーカリ油0.005g、レモン油0.06gを溶かした溶液を添加し混合する。クエン酸でpH7.00に調整し、精製水で100mLにメスアップし、得られた咽頭粘膜用スプレー液を所定の容器に充填する。
【0053】
実施例13:
精製水40mLにトラネキサム酸5g、塩化セチルピリジニウム0.3g、キシリトール10g、リン酸水素ナトリウム0.4g、ポリビニルピロリドン(K30)4gを溶解し、予め、プロピレングリコール8g、グリセリン45gにメントール0.08g、ユーカリ油0.005g、レモン油0.06gを溶かした溶液を添加し混合する。クエン酸でpH7.00に調整し、精製水で100mLにメスアップし、得られた咽頭粘膜用スプレー液を所定の容器に充填する。
【0054】
実施例14:
精製水40mLにトラネキサム酸5g、塩化セチルピリジニウム0.3g、キシリトール10g、リン酸水素ナトリウム0.4g、ポリビニルピロリドンン(K30)4gを溶解し、予め、グリセリン50gにメントール0.08g、ユーカリ油0.005g、レモン油0.06gを溶かした溶液を添加し混合する。クエン酸でpH7.00に調整し、精製水で100mLにメスアップし、得られた咽頭粘膜用スプレー液を所定の容器に充填する。
【0055】
安定性試験:
上記で得た実施例1〜実施例4の薬液について、苛酷試験(加熱:60℃×2週間、曝光:60万ルクス時)を実施した。
その結果を下記表2中に示した。表中に示した結果からも判明するように、苛酷条件下での保存において、本発明のスプレー剤は、スプレー液中に含有されたトラネキサム酸の含量や薬液のpHには殆ど変化が無く、安定なものであった。
【0056】
【表2】

【0057】
抗咽頭炎試験:
風邪による咽頭炎で、様々な段階の咽頭痛を訴えるパネラー10名に、実施例13の咽頭粘膜抗炎症スプレー剤を、少なくとも5日間使用した。
各パネラーの、抗咽頭炎試験開始時の風邪の症状と、5日間使用した後の、のどの腫れ、のどの充血、のどの痛み、のどの激痛のため嚥下困難などの自覚症状について、改善の有無を数値化し、咽頭粘膜抗炎症スプレー剤の効果を評価した。
なお、評価判定は、咽頭の症状を肉眼、自覚症状などで確認し、著明に改善>より改善>改善で評価した。
その結果を、下記表3に示した。
【0058】
【表3】

【0059】
上記の結果らも判明するように、10名のパネラーの咽頭痛は、全てのパネラーにおいて、のどの腫れ、のどの充血、のどの痛み、のどの激痛のため嚥下困難などの自覚症状に改善、より改善、著明改善が見られ、本発明の咽頭粘膜抗炎症スプレー剤が、咽頭痛に有用であることが判明した。
特に咽頭痛が中程度のパネラーにおいては、のどの腫れ、のどの充血、のどの痛み、のどの激痛のため嚥下困難などの自覚症状が5日後に著明に改善され、食事も出来るようになった。
【0060】
したがって、本発明のトラネキサム酸及び殺菌消毒成分を配合し、あるいはさらにこれにポリビニルピロリドンを配合した咽頭粘膜抗炎症スプレー剤は、風邪による咽頭炎を改善するものであり、その有用性が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上記載のように、本発明は、抗炎症作用を有するトラネキサム酸に殺菌消毒成分を配合し、あるいはさらにこれにポリビニルピロリドンなどの増粘剤を配合した咽頭粘膜抗炎症スプレー剤であり、風邪による咽頭炎である、のどの腫れ、のどの充血、特に、のどの痛みを顕著に改善するものである。それに加えて、本発明が提供する咽頭粘膜抗炎症スプレー剤は、風邪によるありふれた一般症状である、のどの痛み、すなわち咽頭痛を早期に軽減し、嚥下障害による食事摂取が困難な状態を早期に改善することが出来るものであり、したがって、風邪による咽頭炎、特に咽頭痛に対する対処療法剤として、極めて有用なものであって、その医療上の価値は多大なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラネキサム酸及び殺菌消毒成分を配合したことを特徴とする咽頭粘膜抗炎症スプレー剤。
【請求項2】
殺菌消毒成分が塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリウム、チモール、グルコン酸クロルヘキシジン、ジアルキルアミノエチルグリシンからなる群から選ばれる1種以上である請求項1に記載の咽頭粘膜抗炎症スプレー剤。
【請求項3】
さらに増粘剤を配合したことを特徴とする請求項1又は2に記載の咽頭粘膜抗炎症スプレー剤。
【請求項4】
トラネキサム酸、殺菌消毒成分及び増粘剤を配合したことを特徴とする咽頭粘膜抗炎症スプレー剤。
【請求項5】
増粘剤がポリビニルピロリドンである請求項3又は4に記載の咽頭粘膜抗炎症スプレー剤。

【公開番号】特開2006−347958(P2006−347958A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176572(P2005−176572)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(594105224)東亜薬品株式会社 (15)
【Fターム(参考)】