説明

哺乳動物における高脂血症に関連する障害を治療するための方法

本発明は、哺乳動物において高脂血症を治療する方法を対象とする。この方法は、ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(MTP)阻害剤(例えば、BMS−201038およびインプリタピド)、ならびにHMG−CoAレダクターゼ阻害剤(例えば、シンバスタチンまたはアトルバスタチン)を使用した併用療法を伴う。MTP阻害剤とHMG−CoAレダクターゼ阻害剤との同時投与は、治療上の利点、例えば、血流中のコレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度の減少をもたらすが、同一もしくは同様の治療上の利点を実現するための単独療法の間により多い投与量のMTP阻害剤を使用する場合より、副作用が少ないか軽減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第60/788,616号(2006年4月3日出願)および米国仮特許出願第60/727,664号(2005年10月18日出願)に対する優先権を主張し、これらの全開示は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般に、哺乳動物の血液中のコレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度を減少させる方法に関する。より詳細には、本発明は、血液中のコレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度を減少させるために、ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(MTP)阻害剤およびHMG−CoAレダクターゼ阻害剤を使用するが、MTP阻害剤の単独療法と比較して減少した有害事象プロフィールを有する併用療法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
西洋社会の主な死亡原因であるアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)にはいくつかの公知の危険因子がある。1つの重要な危険因子は、血漿中に高濃度の脂質が存在する高脂血症である。様々な疫学研究によって、薬物がもたらす総コレステロール(TC)および低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール(LDL−C)の低下が、心血管イベントの有意な減少と関連することを示されてきた。全米コレステロール教育プログラム(NCEP)の更新済みガイドラインによると、ハイリスク患者の全体的な目的は、100mg/dL未満のLDLを達成することであり、このような患者が70mg/dL未満のLDL濃度を達成する目的を設定することが治療法の選択肢であると推奨している。
【0004】
高脂血症の1つの形態は、高トリグリセリド血症として知られており、血液中のトリグリセリド量の増加をもたらす。トリグリセリドは健康のために必要であるが、正常より高いトリグリセリド濃度は、心疾患の公知の危険因子と関連する場合が多い。
【0005】
血液中に高濃度のコレステロールが存在する高コレステロール血症として知られる高脂血症の他の形態は、多遺伝子性障害である。生活習慣の変更および従来の薬物療法は、コレステロール濃度を減少させることにおいて通常成功する。しかし、家族性高コレステロール血症(FH)におけるような一部の例では、原因は一遺伝子性の欠陥である。FHを有する患者の治療は、従来の治療法を積極的に使用するにも関わらずLDL−C濃度は高いままであるので、より難しい可能性がある。
【0006】
例えば、FHの1種類であるホモ接合型の家族性高コレステロール血症(hoFH)は、低密度リポタンパク質(LDL)受容体における変異のためにホモ接合または複合ヘテロ接合に起因する重大な生命を脅かす遺伝性疾患である。hoFHを有する患者は、400mg/dL超の血漿総コレステロール濃度を通常有し、これは、早発性アテローム硬化性血管疾患をもたらす。治療せずにいると、大部分の患者は20歳前にアテローム性動脈硬化を発症し、一般に30歳を超えて生存しない。しかし、hoFHと診断された患者は、大部分が従来の薬物療法に反応せず、治療法の選択肢が限定されている。具体的には、コレステロール合成阻害および肝臓のLDL受容体の上方制御によってLDL−Cを減少させるスタチンによる治療は、LDL受容体に欠損または欠陥のある患者においてはごくわずかな影響しか有さない。スタチンの極量(80mg/日で投与されるアトルバスタチンまたはシンバスタチン)で治療した遺伝子型が確認されたhoFHの患者において、平均でLDL−C減少がわずか約20%未満でしかないことが、最近報告された。10mg/日のエゼチミベをこの投与計画に加えることによって、全体で27%のLDL−C濃度の減少をもたらしたが、これはまだ最適とはかけ離れている。門脈大静脈吻合および回腸バイパスなどの外科的介入、ならびに同所性肝移植を含めて非薬理学的な選択肢もまた試されたが、明らかな不都合および危険性がある。したがって、hoFHのための新規な薬物療法への極めて大きないまだ対処されていない医学的な必要性が存在する。
【0007】
ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(MTP)阻害剤は、MTPによって媒介される中性脂肪転送作用の強力な阻害剤として開発されてきた。MTPは、小さな単膜小胞間のトリグリセリド、コレステリルエステル、およびホスファチジルコリンの輸送を触媒する。1つの代表的なMTP阻害剤はBristol−Myers Squibb社によって開発されたBMS−201038である。特許文献1、および特許文献2を参照されたい。ホモ接合型FHのための動物モデルを使用した研究によって、BMS−201038が、血漿コレステロール濃度を用量依存的に、例えば25mg/日で効果的に減少させたことが示され、これはこの化合物はhoFHを有する患者の治療のために効果的であり得ることを示唆した。しかし、25mg/日のBMS−201038で治療を受けた特定の患者が、特定の有害事象、例えば消化器障害、肝機能の異常、および肝脂肪症を患ったことが指摘された。見込みのある治療剤ではあるが、BMS−201038の大規模な臨床試験は、中断されてきた。インプリタピドとして知られている他の強力なMTP阻害剤が開発されてきた。特許文献3、特許文献4、特許文献5を参照されたい。臨床試験の間、80mg/日以上のインプリタピドの投与量は、治療的に有効であるが、特定の有害事象、例えば、消化器障害、肝機能の異常、および肝脂肪症をもたらしたことが見出された。インプリタピドを使用した大規模な臨床試験もまた、中断されてきた。
【特許文献1】米国特許第5,739,135号明細書
【特許文献2】米国特許第5,712,279号明細書
【特許文献3】米国特許第6,265,431号明細書
【特許文献4】米国特許第6,479,503号明細書
【特許文献5】米国特許第5,952,498号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、例えば循環しているコレステロールおよびトリグリセリド濃度を効果的に低下させる、高脂血症を積極的に治療する方法で、しかし単独療法においてMTP阻害剤のより高い投与量のみが使用された場合に通常もたらされる有害な作用が少ないか軽減される方法への必要性がいまだ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、血液中のコレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度を低下させ、および/またはアテローム性動脈硬化症の1種以上のマーカーの量を減少させるための方法を提供する。この方法は、BMS−201038またはインプリタピドなどのMTP阻害剤を、シンバスタチンまたはアトルバスタチンなどのHMG−CoAレダクターゼ阻害剤と組み合わせて投与するステップを含む。MTP阻害剤は、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤と組み合わせた場合、それでもなお治療的に有効である特定のより低い投与量で投与できるが、単独療法の間のMTP阻害剤の治療的に有効な投与量を使用した治療と比較した場合、有害な作用が少ないか軽減される。
【0010】
1つの態様によれば、本発明は、(i)哺乳動物の血液中のコレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度、ならびに(ii)哺乳動物のアテローム性動脈硬化のマーカー量、の少なくとも1つを減少させる方法を提供する。この方法は、哺乳動物、例えばヒトに、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびBMS−201038の組合せを毎日投与するステップを含む併用療法を含み、ここで、BMS−201038を、当初1〜5mg/日の範囲の第1の投与量、例えば、2.5mg/日または5mg/日を少なくとも4週間投与し、次いで3〜7mg/日の範囲の第2の投与量、例えば、5mg/日を少なくとも4週間投与し、次いで6〜9mg/日の範囲の第3の投与量、例えば、7.5mg/日を少なくとも4週間投与する。
【0011】
この方法は、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、1mg/日〜80mg/日の投与量で、より好ましくは5〜50mg/日の投与量で、最も好ましくは10mg/日〜20mg/日で投与するステップを含み得る。例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、5mg/日、10mg/日、20mg/日、40mg/日または80mg/日以上で投与し得る。一実施形態では、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、10mg/日の投与量で投与する。HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびBMS−201038は、同一の剤形中で共に投与することができ、または別々の剤形中で投与してもよい。別々の剤形の場合は、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤は、BMS−201038の前、後、または同時に投与することができる。
【0012】
上記の方法は、血液中のコレステロールおよびトリグリセリドの少なくとも1つの濃度を減少させ得るが、単独療法の間のBMS−201038の25mg/日の投与量の投与と比較して、有害事象の発生率が減少する。他の実施形態では、この方法は、哺乳動物の血管壁のプラーク、例えば動脈プラークの数および/または量を減少させるが、単独療法の間のBMS−201038の25mg/日の投与量の投与と比較して、有害事象の発生率が減少する。意図している有害事象には、例えば、消化器障害、肝機能異常、および/または肝脂肪症が挙げられる。
【0013】
他の態様では、本発明は、(i)哺乳動物の血液中のコレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度、ならびに(ii)哺乳動物のアテローム性動脈硬化のマーカー量、の少なくとも1つを減少させる方法を提供する。この方法は、哺乳動物にHMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびインプリタピドの組合せを毎日投与するステップを含み、ここで、インプリタピドを、0.01〜60mg/日の範囲の投与量で投与する。インプリタピドは、好ましくは20〜60mg/日の範囲で、例えば、20mg/日、25mg/日、30mg/日、35mg/日、40mg/日、45mg/日、50mg/日、55mg/日またはさらに60mg/日以上の投与量で投与することを理解されたい。
【0014】
さらに、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、1〜100mg/日、任意選択で1〜80mg/日、任意選択で5〜50mg/日の投与量で投与することを理解されたい。例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、5mg/日、10mg/日、20mg/日、40mg/日または80mg/日以上の投与量で投与する。HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびインプリタピドは、同一の剤形中で共に投与することができ、または別々の剤形中で投与してもよい。別々の剤形の場合は、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤は、インプリタピドの前、後、または同時に投与できる。
【0015】
この方法は、血液中のコレステロールまたはトリグリセリドの少なくとも1つの濃度を減少させ得るが、単独療法の間のインプリタピドの80mg/日以上の投与量の投与と比較して、例えば、80mg/日または160mg/日と比較して、有害事象の発生率を減少させる。他の実施形態では、この方法は、哺乳動物の血管壁のプラーク、例えば動脈プラークの量を減少させるが、単独療法の間のインプリタピドの80mg/日以上の投与量の投与と比較して、例えば、80mg/日または160mg/日と比較して、有害事象の発生率を減少させる。意図している有害事象には、例えば、消化器疾患、肝機能の異常、および/または肝脂肪症が挙げられる。
【0016】
上記の方法は、(i)高脂血症、例えば、高コレステロール血症(例えば、ホモ接合型もしくはヘテロ接合型家族性高コレステロール血症)または高トリグリセリド血症を有する患者、(ii)スタチン単独療法に抵抗性のある患者、(iii)スタチン不耐性患者、ならびに/または(iv)(i)および(ii)、(i)および(iii)、(ii)および(iii)、ならびに(i)、(ii)および(iii)の組合せを有する患者を治療するために使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(詳細な説明)
本発明は、部分的に、(i)哺乳動物の血液中のコレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度、ならびに(ii)哺乳動物のアテローム性動脈硬化のマーカー量、の少なくとも1つを減少させる方法に関する。この方法は、MTP阻害剤、例えば、BMS−201038またはインプリタピドを、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、例えば、シンバスタチンまたはアトルバスタチンと共に投与する併用療法に基づいている。開示された方法は、投与量を減らしたMTP阻害剤を使用するが、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤と組み合わせることによって、血液中のコレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度を減少させるのに効果的である場合があり、しかし、単独療法の間のより高い投与量のMTP阻害剤の使用によってもたらされるより、有害事象が少なくなり、有害事象の重篤度が低くなり、および/または有害事象の頻度が減少する。
【0018】
さらに、本発明は、部分的に、BMS−201038をHMG−CoAレダクターゼ阻害剤と共に投与することによって、BMS−201038によってもたらされる消化器疾患または肝脂肪症を減少させる方法に関する。特定の状況下で、このアプローチは、25mg/日以上のBMS−201038の投与量を患者に投与した場合に、肝脂肪症を緩和するのに有用であり得る。
【0019】
1 定義
便宜のため、明細書、実施例および添付の特許請求の範囲中で使用される特定の用語をこの節にまとめる。
【0020】
「併用療法」という表現は、本明細書で使用する場合、これらの治療剤の共同作用からの有益な効果を実現することを意図した特定の治療計画の一部として、MTP阻害剤、例えば、BMS−201038およびインプリタピドまたはこれらの組合せと、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、例えばシンバスタチンまたはアトルバスタチンとを同時投与することを意味する。組合せの有益な効果には、これらだけに限らないが、治療剤の組合せから得られる薬物動態学的または薬力学的共同作用が含まれる。組み合わせたこれらの治療剤の投与は、通常決められた期間に亘って行われる(通常、選択した組合せによって数週、数カ月または数年)。併用療法は、複数の治療剤の順次の態様での投与、すなわち、各治療剤が異なる時に投与される場合と、これらの治療剤、または治療剤の少なくとも2種類が実質的に同時の態様で投与される場合とを包含することを意図している。実質上の同時投与は、例えば、各治療剤の一定比率を有する単一の錠剤またはカプセル剤、あるいは治療剤の各々毎に複数の単一のカプセル剤を対象に投与することによって実現することができる。各治療剤の順次投与または実質上の同時投与は、それだけに限らないが、経口経路、静脈内経路、筋内経路、および粘膜組織を通した直接吸収が挙げられる任意の適切な経路によって行うことができる。治療剤は、同一の経路または異なる経路によって投与することができる。例えば、選択した組合せの第1の治療剤は、静脈内注射によって投与され、一方組合せの他の治療剤は経口で投与され得る。あるいは、例えば全ての治療剤を経口で投与し、または全ての治療剤を静脈内注射で投与し得る。
【0021】
併用療法はまた、他の生物活性のある成分および非薬物治療とさらに組み合わせた、上記のような治療剤の投与も包含することができる。併用療法が非薬物療法をさらに含む場合、非薬物療法は、治療剤および非薬物療法の組合せの共同作用から有益な効果がもたらされる限りは、任意の適切な時に行ってもよい。例えば適切な場合には、治療剤の投与から、非薬物療法が一時的に、恐らく数日またはさらに数週間、除かれた場合でも、有益な効果はまだ達成される。
【0022】
組合せの成分は、同時にまたは順次、患者に投与し得る。成分は、同一の医薬として許容される担体中にあり、したがって、同時に投与され得ることを理解されたい。あるいは活性成分は、同時にまたは順次に投与することのできる従来の経口剤形などの別々の医薬担体中にあってもよい。
【0023】
「個人」「患者」または「対象」という用語は、本明細書において互換的に使用され、動物、例えば、霊長類、例えば、ヒト、および他の動物、例えば、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、およびウマを含めた任意の哺乳動物が含まれる。本発明の化合物を、ヒトなどの哺乳動物に投与することができるが、また他の哺乳動物、例えば、獣医の治療を必要としている動物、例えば、家畜(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)でよい。
【0024】
「スタチン単独療法に耐性を示す患者」という用語は、本明細書で使用する場合、従来のスタチン単独療法の効果がない、または所望よりも効果が少ないと見出された患者を含む。患者に脂質減少の治療を計画する医師であれば、診断および定期的な血液コレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度の観察によって、その患者がスタチン単独療法に耐性を示している、または示してきたかを決定することができるであろう。
【0025】
「スタチン不耐性患者」という用語は、本明細書で使用する場合、例えば血清脂質減少のための従来のスタチン治療が、効果がないと見出された患者、および/あるいはスタチンの効果的に脂質を減少させる用量が多すぎて許容されない、または特定の用量に付随する受け入れがたい有害事象がある患者が含まれる。例えば、スタチン治療は、肝機能検査の異常、筋肉の痛みおよび疼痛または炎症−筋肉痛または筋炎、筋肉の有害事象を示す酵素(CK)の上昇などの有害事象に対する懸念によって、医師/患者によって中止し得る。患者に脂質減少の治療を計画している医師であれば、診断および定期的な血液コレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度の観察によって、その患者がスタチン不耐性であるかを決定することができるであろう。
【0026】
「有害な作用を最小化する」、「有害事象を減少させる」または「有害事象の減少」という表現は、本明細書で使用する場合、本発明のMTP阻害剤の使用に関連する1種以上の望ましくない副作用の寛解または解消を意味する。MTP阻害剤の従来の使用の副作用には、これらだけに限らないが、悪心、消化器疾患、脂肪便、腹部のけいれん、膨張、肝機能検査値の上昇、脂肪肝(肝脂肪症)、肝脂肪蓄積、多発性神経障害、末梢神経障害、横紋筋融解、関節痛、筋肉痛、胸痛、鼻炎、めまい、関節炎、末梢浮腫、胃腸炎、肝機能検査異常、大腸炎、直腸出血、食道炎、おくび、口内炎、胆管痛、口唇炎、十二指腸潰瘍、嚥下障害、腸炎、下血、歯肉出血、胃潰瘍、しぶり、潰瘍性口内炎、肝炎、膵臓炎、胆汁うっ滞性黄疸、知覚異常、健忘症、性欲減退、情動不安定、共調運動不能、斜頚、顔面神経麻痺、運動亢進症、うつ、触覚鈍麻、筋緊張亢進、足のけいれん、滑液包炎、腱鞘炎、筋無力症、腱拘縮、筋炎、高血糖症、クレアチニンホスホキナーゼ増加、痛風、体重増加、低血糖、アナフィラキシー、血管運動神経性浮腫、ならびに(多形性紅斑、スティーブンスジョンソン症候群、および中毒性表皮壊死症を含めた)水疱性発疹が挙げられる。したがって、本明細書に記載する方法は、効果的な治療を提供し、同時により少ないまたはより重大でない有害事象を実現する。
【0027】
特定の実施形態では、副作用が部分的に解消される。本明細書で使用する場合、「部分的に解消される」という表現は、単独療法の間の25mg/日のBMS−201038、あるいは単独療法の間の80mg/日または160mg/日のインプリタピドの投与によって見出されたのと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%および99%の特定の副作用の重篤度、程度、または期間の減少を意味する。特定の実施形態では、副作用は完全に解消される。当業者は、副作用の重篤度、程度、または期間、および副作用の寛解の程度を検知し段階付ける資質があると考えられる。いくつかの実施形態では、2つ以上の副作用が寛解する。
【0028】
「治療的に有効な」という用語は、活性成分、例えば、BMS−201038およびインプリタピドの、研究者、獣医師、医師または他の臨床医によって求められている生物学的または医学的反応を誘発する能力を意味する。非限定的実施例には、患者におけるコレステロール(例えば、LDL−C)および/またはトリグリセリド濃度の減少、血管壁のプラーク、例えば動脈プラークの量の減少などが挙げられる。
【0029】
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医によって求められている生物学的または医学的反応を誘発するであろう、活性成分、例えば、EMS−201038またはインプリタピドの量が含まれる。本発明の化合物は、血液中のコレステロール濃度および/または血液中のトリグリセリド濃度を低下させ、ならびに/あるいは1つ以上の血管の血液と接触する壁に蓄積するプラーク、例えば、動脈プラークの量を減少させるのに効果的な量で投与される。あるいは、活性成分の治療有効量は、状態と関連する兆候における防止または減少をもたらす活性成分の量などの、所望の治療および/または予防効果を達成するのに必要な化合物の量である。
【0030】
「医薬として許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、必要に応じて、動物またはヒトに投与した場合、有害なアレルギー反応または他の有害反応を生じない分子的実体および組成物を意味する。「医薬として許容される担体」という用語には、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。医薬活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合である場合を除いて、治療組成物におけるその使用が意図される。補足的活性成分もまた、組成物中に組み込むことができる。
【0031】
本明細書で使用する場合、「BMS−201038」という表現は、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−9−[4−[4−[[[4’−(トリフルオロメチル)[1,1’ビフェニル]−2−イル]カルボニル]アミノ]−1−ピペリジニル]ブチル]9H−フルオレン−9−カルボキサミドとして知られる、式
【0032】
【化1】

を有する化合物、その立体異性体、および/または医薬として許容されるその塩もしくはエステルを意味する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「インプリタピド」という表現は、(2S)−2−シクロペンチル−2−[4−[(2,4−ジメチル−9H−ピリド[2,3−b]インドール−9−イル)メチル]フェニル]−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル]エタンアミドとして知られる、下記に示す構造
【0034】
【化2】

を有する化合物、その立体異性体、および/または医薬として許容されるその塩もしくはエステルを意味する。
【0035】
本明細書で使用する場合、一般に「スタチン」と称される「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」は、コレステロールの体内生成を抑制し、酵素HMG−CoAレダクターゼによって触媒されるヒドロキシメチルグルタリル−コエンザイムAのメバロン酸への生物変換を阻害する薬剤を意味する。例示的なスタチンには、アトルバスタチン(7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−(フェニルカルバモイル)−1H−ピロール−1−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプタン酸、ブランド名:Lipitor)、フルバスタチン(ナトリウム7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−プロパン−2−イル−インドール−2−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプタ−6−エノアート、ブランド名:Lescol)、ロバスタチン(8−[2−(4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロピラン−2−イル)エチル]−3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロナフタレン−1−イル]2−メチルブタノアート、ブランド名:Altocor、Mevacor)、プラバスタチン(5−ジヒドロキシ−7−[6−ヒドロキシ−2−メチル−8−(2−メチルブタノイルオキシ)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロナフタレン−1−イル]−ヘプタン酸、ブランド名:Pravachol)、ロスバスタチン(7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−(1−メチルエチル)−2−(メチル−メチルスルホニルアミノ)−ピリミジン−5−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプタ−6−エン酸、ブランド名:Crestor)、ピタバスタチン、テニバスタチン、シンバスタチン(7−(2,6−ジメチル−8−(2,2−ジメチルブチリルオキシ)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−1−ナフチル)−3,5−ジヒドロキシヘプタン酸、ブランド名:Zocor)、リバスタチン、メバスタチン、またはセリバスタチンを挙げることができる。上記の化合物の各々は、このような化合物の立体異性体、および/またはこのような化合物の医薬として許容される塩もしくはエステルもまた含まれることが意図されている。
【0036】
上記の化合物の医薬として許容される塩は、例えば塩基性または酸性部分を含有する親化合物から、従来の化学的手法によって合成することができる。一般にこのような塩は、これらの化合物の遊離酸または遊離塩基形態を、水中または有機溶媒中、あるいはこの2種類の混合物中(一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい)で、適切な塩基または酸の化学量論量と反応させることによって調製することができる。適切な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、Lippincott Williams & Wilkins、Baltimore、MD、2000年、704頁に見出せる。
【0037】
本明細書で使用する場合、「立体異性体」という用語は、同一の結合によって結合している同一の原子で構成されているが、互換的ではない異なる空間的構造を有する化合物を意味する。三次元構造は、立体配置と称される。本明細書で使用する場合、「エナンチオマー」という用語は、その分子が互いに重ね合わせることができない鏡像である2つの立体異性体を意味する。「ラセミ化合物」、「ラセミ混合物」または「ラセミ体」という用語は、等量のエナンチオマーの混合物を意味する。
【0038】
2 本発明の方法
一般に本発明は、1種以上のMTP阻害剤、例えば、BMS−201038またはインプリタピドを使用して高脂血症を治療するための方法を提供する。MTP阻害剤は、1種以上の有害事象、例えば、消化器疾患、肝機能の異常および/または肝脂肪症をもたらすことをすでに見出された投与量(例えば、25mg/日のBMS−201038、80mg/日のインプリタピドおよび160mg/日のインプリタピドは、消化器疾患、肝機能の異常および/または肝脂肪症をもたらすことが見出された)より低い投与量で使用することができるが、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、例えば、シンバスタチンまたはアトルバスタチンと組み合わせた場合、それでもなお治療的に有効である。スタチンは、25mg/日以上の投与量のBMS−201038を投与する場合でさえ、脂肪症を減少させるのに効果的であり得ることが意図されている。
(a)BMS−201038およびHMG−CoAレダクターゼ阻害剤を使用した併用療法
特定の態様では、本発明は、(i)哺乳動物の血液中のコレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度、ならびに(ii)哺乳動物の血流中のアテローム性動脈硬化のマーカー量、の少なくとも1つを減少させる方法を提供する。この方法は、哺乳動物に、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびBMS−201038を毎日同時投与することによって達成できる併用療法を含む。1つのプロトコルでは、BMS−201038を、当初1〜5mg/日の範囲の第1の投与量で少なくとも4週間投与し、次いで3〜7mg/日の範囲の第2の投与量で少なくとも4週間投与し、次いで6〜9mg/日の範囲の第3の投与量で少なくとも4週間投与する。
【0039】
BMS−201038の第1の投与量は、例えば2.5mg/日または5mg/日でよい。BMS−201038の第2の投与量は、5mg/日でよい。BMS−201038の第3の投与量は、7.5mg/日でよい。特定の実施形態では、第2の投与を第1の投与の直後に投与する、すなわち、第2の投与を、当初の第1の投与から5週間目に開始して投与する。同様に特定の他の実施形態では、BMS−201038の第3の投与を、第2の投与の直後に投与する、例えば、第2の投与を、当初の第1の投与から9週間目に投与する。
【0040】
任意選択で、この方法には、BMS−201038単独、またはHMG−CoAレダクターゼ阻害剤と組み合わせた、第4の投与量を投与することを含み得る。このような第4の投与量として、BMS−201038が9〜12mg/日の範囲、またはそれ以上であってもよい。第4の投与は、第3の投与の直後に行ってもよく、または時間をおいて、例えば、第3の投与後、1日、数日、1週間、または数週間後に行ってもよい。第4の投与は、対象に1週間、2週間、3週間、4週間、またはそれ以上投与してもよい。
【0041】
このアプローチにおいて、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、0.01〜100mg/日の範囲の投与量で、より好ましくは1〜50mg/日の範囲の投与量で同時投与する。例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、10mg/日の投与量で投与し得る。HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびBMS−201038は、同一の剤形中で共に投与でき、または別々の剤形中で投与してもよい。別々の剤形の場合は、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、BMS−201038の前、後、または同時に投与できる。
【0042】
本明細書において開示されている方法は、例えば、BMS−201038および/または他のMTP阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、ならびに/あるいは他の脂質低下剤(lipid−lowering agent)を含み得る他の投与計画の前または後に行い得る。例えば、本明細書において開示されている方法は、患者がエゼチミベ単独療法またはエゼチミベ併用療法を受けた後に行ってもよい。
【0043】
このアプローチは、血液中のコレステロールまたはトリグリセリドの少なくとも1つの濃度を減少させ得るが、単独療法の間のBMS−201038の25mg/日の投与量の投与と比較して、有害事象の発生率が減少する。さらに、または別の方法では、この方法は、哺乳動物の血管壁のプラーク、例えば動脈プラークの量を減少させるが、単独療法の間のBMS−201038の25mg/日の投与量の投与と比較して、有害事象の発生率が減少する。動脈プラークの量およびその減少は、従来の非侵襲性であり当技術分野で公知の技術、例えば、磁気共鳴映像法、コンピュータ断層撮影法、および核シンチグラフィー技術を使用して測定できる。意図している有害事象には、例えば、消化器異常、肝脂肪症などが挙げられる。
【0044】
特定の他の実施形態では、この方法は、治療前の患者のLDL−C濃度と比較して、患者のLDL−Cの約35%、40%またはそれ以上の減少をもたらす。
【0045】
本明細書において開示されている方法は、血清コレステロール濃度を減少または低下させ得る。血清総コレステロールは、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中密度リポタンパク質(IDL)、LDLおよびカイロミクロンからもたらされ得ると理解される。したがって、併用療法は、血液総コレステロール、あるいはVLDL、IDL、LDLおよびカイロミクロンからもたらされるか関連するコレステロールを減少させ得ることが意図されている。さらに、本明細書において開示されている方法は、血清トリグリセリド濃度を減少または低下させ得る。血清トリグリセリドは、VLDLおよびカイロミクロンによって、およびそれほどではないにせよIDLおよびLDLによってもたらされる場合があると理解される。したがって、併用療法は、VLDL、IDL、LDLおよびカイロミクロンによってもたらされるか関連するトリグリセリドを減少させ得ることが意図されている。
【0046】
場合によっては、本明細書において提供する方法は、炎症マーカー(例えば、C反応性タンパク質(CRP)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−1(IL−1)、CD−40、組織壊死因子−α(TNF−α)、血清アミロイドA、フィブリノゲン、尿の単球走化性タンパク質(MCP−1)、ネオプテリン、IL−1受容体、IL−18、IL−10)、酸化マーカー(例えば、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、酸化チロシン残基、酸化LDL(ox−LDL)、リポタンパク質関連ホスホリパーゼA2(Lp−PLA2)、F2−イソプロスタン、ox−LDL自己抗体(IgG、IgM)、およびマロンジアルデヒド(MDA))、内皮マーカー(例えば、細胞内接着分子(ICAM)、血管細胞接着分子(VCAM)、e−セレクチン、硝酸塩/亜硝酸塩)、動脈リモデリングマーカー(例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)/MMPの組織阻害剤(TIMP)、PICP、PINP)、および/または血小板/血栓症マーカー(例えば、p−セレクチン、組織因子、ヘパリン副因子)などの血液中のアテローム性動脈硬化症のマーカーを減少させ得る。アテローム性動脈硬化症の例示的なマーカーは、慢性心疾患の前兆であると考えられている炎症のマーカーであるCRPである。血清コレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度の減少は、プラークの蓄積の減少をもたらすと思われ、場合によってはプラークの退縮を実際もたらし得る。
【0047】
他の態様では、本発明は、BMS−201038を投与されている患者において肝脂肪症を減少させる方法を提供する。この方法は、患者にBMS−201038およびHMG−CoAレダクターゼ阻害剤を同時投与するステップを含む。BMS−201038を、例えば1〜10mg/日、または1〜25mg/日の投与量で、または10mg/日を超える投与量で、例えば10〜80mg/日で投与し得る。HoFHまたは重篤な難治性患者には、より高い用量が適切である場合がある。BMS−201038およびHMG−CoAレダクターゼ阻害剤は、同一の剤形中で共に投与してもよく、または別々の剤形中で投与してもよい。別々の剤形の場合は、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、BMS−201038の前、後、または同時に投与する。
(b)インプリタピドおよびHMG−CoAレダクターゼ阻害剤を使用した併用療法
他の態様では、本発明は、(i)哺乳動物の血液中のコレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度、ならびに(ii)哺乳動物のアテローム性動脈硬化のマーカー量、の少なくとも1つを減少させる方法を提供する。この方法は、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびインプリタピドの組合せを哺乳動物に毎日投与する併用療法を含む。
【0048】
インプリタピドを、0.01〜60mg/日の範囲で、より好ましくは20〜60mg/日の範囲で、例えば、20mg/日、25mg/日、30mg/日、35mg/日、40mg/日または60mg/日の投与量で投与することを理解されたい。さらに、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、0.01〜100mg/日で、任意選択で1〜50mg/日、任意選択で1〜25mg/日の投与量で投与することを理解されたい。例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、5mg/日、10mg/日、20mg/日、40mg/日、または85mg/日の投与量で投与する。HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびインプリタピドは、同一の剤形中で共に投与でき、または別々の剤形中で投与してもよい。別々の剤形中で投与する場合、インプリタピドを、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤の前、後、または同時に投与できる。
【0049】
上記の方法は、血液中のコレステロールまたはトリグリセリドの少なくとも1つの濃度を減少させ得るが、単独療法の間のインプリタピドの80mg/日以上の投与量の投与、例えば、160mg/日と比較して、有害事象の発生率を減少させる。他の実施形態では、この方法は、哺乳動物の血管壁のプラーク、例えば動脈プラークの量を減少させるが、単独療法の間のインプリタピドの80mg/日以上の投与量の投与、例えば、160mg/日と比較して、有害事象の発生率を減少させる。意図している有害事象には、例えば、肝脂肪症が挙げられる。さらに、このプロトコルは、アテローム性動脈硬化症の前述のマーカーの1種以上の存在および/または量を減少させ得る。
【0050】
3 活性成分の配合および投与
特定の実施形態では、MTP阻害剤(例えば、BMS−201038およびインプリタピド)、ならびにHMG−CoAレダクターゼ阻害剤(例えば、シンバスタチンまたはアトルバスタチン)を、経口投与する。経口投与のために、活性成分は、結合剤(例えば、アルファ化(pregelatinized)トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸カルシウムなど)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカなど)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど)、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの医薬として許容される賦形剤および担体と共に従来の方法によって調製された、固体剤形、例えば、錠剤(嚥下可能および咀嚼可能な形態の両方)、カプセル剤またはジェルカプセル剤の形態を取り得る。このような錠剤はまた、当技術分野で周知の方法によってコーティングし得る。
【0051】
より好ましくはないが、活性成分を、非経口経路、例えば、静脈内経路、筋内経路、および粘膜を通した吸収のために配合し得、投与し得ることが意図されている。このような製剤および非経口投与方法は、当技術分野において公知であることが意図されている。
【0052】
上記の投与量は、毎日1回から4回の単一または分割した投与量で投与し得る。MTP阻害剤およびHMG−CoAレダクターゼ阻害剤は、同一の剤形、または同時もしくは異なる時間に摂取される別々の剤形で共に用いることができる。
【0053】
本明細書に記載する方法は、患者、例えば、医師が希望し、ならびに/あるいはNCEPガイドラインによって概説されたコレステロールおよび/またはLDLコレステロールの目標を達成できない患者であるLDL低下に対する抵抗性を有する患者を治療するのに特に有用である。このように達成不能であることは、MTP阻害剤(例えば、BMS−201038およびインプリタピド)ならびに/またはHMG−CoAレダクターゼ阻害剤(例えば、シンバスタチンもしくはアトルバスタチン)に対する耐容不能による場合、あるいは既存の薬剤が、十分なコレステロール低下をもたらしてこれらの目標を達成できないことによる場合がある(例えば、所望のエンドポイントを達成するために多すぎる活性成分を必要とする)。本明細書に記載する方法は、よりハイリスクな患者、例えば、冠動脈心疾患を有する患者または冠状動脈事象の同様のリスクを有する患者に特に有用である。このような患者は、10年の冠状動脈事象について20%超のリスクを有し得る。
【0054】
例えば、開示された方法は、LDL低下に対する抵抗性を有する患者、例えば、確立したNCEPガイドラインに基づいて治療にあたる医師によって決定された最大の許容される経口治療によって、NCEPのLDLコレステロールの目標の25%以内、より好ましくは15%以内を達成できない、冠動脈心疾患を有する患者または任意の病因の重篤な高コレステロール血症を有する冠動脈心疾患リスクと同等のリスクを有する患者の治療に有用であり得る。あるいは、他の好ましい実施形態では、この方法は、最大の許容される経口治療によってNCEPのLDLコレステロールの目標の75mg/dL以内を達成できない任意の病因の重篤な高コレステロール血症の治療に使用し得る。本明細書において開示されている方法は、最大の許容される治療によって<1000または<500mg/dLの総トリグリセリド(Tg)濃度を減少できない重篤な高トリグリセリド血症を有する患者を含み得る。
【0055】
他の実施形態では、スタチンに対して不耐性を示した患者は、開示された方法を使用して治療し得る。例えば、このような方法は、スタチン不耐性患者、例えば、有害事象(例えば、肝機能検査の異常、筋肉痛または筋炎などの筋肉の痛みおよび疼痛または炎症、ならびに/あるいは筋肉の有害事象を示す酵素(CK)の上昇)に対する懸念によって、患者の医師および/または患者により治療が中止された場合に効果的であり得る。
【0056】
特定の実施形態では、本明細書において開示されている方法は、BMS−201038および/またはインプリタピドの投与と関連する副作用の少なくとも1つを最小限にし得る。このような副作用には、例えば、消化器疾患、悪心、脂肪便、腹部のけいれん、膨張、アラニンなどの肝臓酵素の増加などの肝機能検査値の上昇、軽微な脂肪肝、肝脂肪蓄積、多発性神経障害、末梢神経障害、横紋筋融解、関節痛、筋肉痛、胸痛、鼻炎、めまい、関節炎、末梢浮腫、胃腸炎、肝機能検査異常、大腸炎、直腸出血、食道炎、おくび、口内炎、胆管痛、口唇炎、十二指腸潰瘍、嚥下障害、腸炎、下血、歯肉出血、胃潰瘍、しぶり、潰瘍性口内炎、肝炎、膵臓炎、胆汁うっ滞性黄疸、知覚異常、健忘症、性欲減退、情動不安定、共調運動不能、斜頚、顔面神経麻痺、運動亢進症、うつ、触覚鈍麻、筋緊張亢進、足のけいれん、滑液包炎、腱鞘炎、筋無力症、腱拘縮、筋炎、高血糖症、クレアチニンホスホキナーゼ増加、痛風、体重増加、低血糖、アナフィラキシー、血管運動神経性浮腫、および(多形性紅斑、スティーブンスジョンソン症候群、および中毒性表皮壊死症を含めた)水疱性発疹が挙げられる。いくつかの実施形態では、副作用の最小化は、対象への調査票によって、度合い、重篤度、程度、または期間を評価することによって決定される。
【実施例】
【0057】
下記の実施例は、本発明の範囲を限定することを決して意図していないが、本発明の方法を例示するために提供する。本発明の多くの他の実施形態は、当業者であれば明らかであろう。
(実施例1)
BMS−201038/HMG−CoAレダクターゼ阻害剤の併用療法
この試験は、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤と組み合わせた、25mg/日より有意に低いBMS−201038の用量によって、LDL−Cの臨床的に有意な減少をもたらすことができる一方、その場合でも改良された有害事象プロフィールがもたらされることを示すために設計する。この試験における主要な有効性のパラメーターは、治療16週間後のLDL−Cの変化百分率であろう。
【0058】
男性および女性両方の約175の対象は、同じ確率を有する5つの治療選択肢の1つに無作為に割り付けられよう。対象は、130〜250mg/dLのベースラインのLDLおよび400mg/dL未満のベースラインのトリグリセリド濃度を有しよう。治療選択肢1において、対象にプラセボを投与する。治療選択肢2において、対象に、BMS−201038(2.5mg)およびアトルバスタチンのプラセボを投与する。実際には治療選択肢2は、BMS−201038による単独療法を表す。治療選択肢3において、対象に、アトルバスタチンによる単独療法を効果的に表すアトルバスタチン10mgを投与する。治療選択肢4において、対象に、アトルバスタチン10mgおよびエゼチミベ(10mg)を投与する。治療選択肢5において、対象に、BMS−201038(2.5mg)およびアトルバスタチン(10mg)を投与する。実際には治療選択肢4および5の患者は、併用療法を受ける。
【0059】
治療の4週間後に、選択肢2および5の対象に、2.5mg〜5mgの逓増する濃度のBMS−201038を4週間投与する。その後、選択肢2および5の対象に、次いで5mg〜7.5mgの第2の逓増する濃度のBMS−201038を、さらに4週間の治療の間投与する。さらに4週間の治療の後、次いで選択肢2および5の対象に、7.5mg〜10mgの第3の逓増する濃度のBMS−201038を、さらに4週間の治療の間投与する。選択肢2の対象に、治療の全16週間に亘りアトルバスタチンに対応するプラセボを投与する。選択肢3(単独)、4(BMS−201038と組み合わせて)および5(インプリタピドと組み合わせて)において、アトルバスタチン(10mg/日)を投与するように無作為に割り付けられた対象に、全16週間の治療期間に亘り、アトルバスタチンのこの用量を続ける。
【0060】
試験の全体を通して、試験のため、例えば各患者のLDL−C、総コレステロール、トリグリセリド、HDL−C、非HDL−C、Apo B、およびApo A1の値を試験するために、血液試料を試験患者の各々から採取する。バイタルサインの収集の一部として対象の体重変化を測定する。
【0061】
均等物
記載された特定の方法、プロトコル、および投与量は変化し得るものであるので、開示した本発明は、それらに限定されないことを理解されたい。本明細書において使用した用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるであろう本発明の範囲を限定することを意図するものではないこともまた理解されたい。
【0062】
参考による援用
本明細書において言及した特許文献および化学論文の各々全部の開示は、全ての目的のために参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびBMS−201038の組合せを哺乳動物に毎日投与するステップを含み、BMS−201038を当初1〜5mg/日の範囲の第1の投与量で少なくとも4週間投与し、次いで3〜7mg/日の範囲の第2の投与量で少なくとも4週間投与し、次いで6〜9mg/日の範囲の第3の投与量で少なくとも4週間投与する、(i)哺乳動物の血液中のコレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度、ならびに(ii)哺乳動物のアテローム性動脈硬化のマーカー量、の少なくとも1つを減少させる方法。
【請求項2】
前記第3の投与量の後に、9〜12mg/日の範囲のBMS−201038の第4の投与量を少なくとも4週間投与するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の投与量が2.5mg/日である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の投与量が5mg/日である、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第3の投与量が7.5mg/日である、請求項1、2、3、または4に記載の方法。
【請求項6】
前記第4の投与量が10mg/日である、請求項2、3、4、または5に記載の方法。
【請求項7】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を1〜80mg/日の投与量で投与する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を5〜50mg/日の投与量で投与する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を10〜20mg/日の投与量で投与する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびBMS−201038を、同一の剤形中で共に投与する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびBMS−201038を、別々の剤形中で投与する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤が、メバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、アトルバスタチン、テニバスタチン、ロスバスタチン、およびピタバスタチンである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤が、シンバスタチンまたはアトルバスタチンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ヒトがスタチン単独療法に抵抗性のある患者である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒトがスタチン不耐性患者である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒトが、高脂血症、高コレステロール血症、高乳状脂粒血症、またはその組合せを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
高コレステロール血症が、ホモ接合型またはヘテロ接合型家族性高コレステロール血症である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
血液中のコレステロールまたはトリグリセリド濃度を減少させるが、BMS−201038の25mg/日の投与量の投与と比較して、有害事象の発生率が減少する、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物の血管壁の動脈プラークの量を減少させるが、BMS−201038の25mg/kgの投与量の投与と比較して、有害事象の発生率が減少する、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記有害事象が肝脂肪症である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびインプリタピドの組合せを哺乳動物に毎日投与するステップを含み、前記インプリタピドを0.01〜60mg/日の範囲の投与量で投与する、(i)哺乳動物の血液中のコレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度、ならびに(ii)哺乳動物のアテローム性動脈硬化のマーカー量、の少なくとも1つを減少させる方法。
【請求項23】
前記インプリタピドを、20〜40mg/日の範囲の投与量で投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、1〜80mg/日の投与量で投与する、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、5〜50mg/日の投与量で投与する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、10〜20mg/日の投与量で投与する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記インプリタピドおよびHMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、同一の剤形中で共に投与する、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記インプリタピドおよびHMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、異なる剤形中で投与する、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記哺乳動物がヒトである、請求項22から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒトがスタチン単独療法に抵抗性のある患者である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒトがスタチン不耐性患者である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒトが、高コレステロール血症、高脂血症、高乳状脂粒血症、またはその組合せを有する、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記高コレステロール血症が、ホモ接合型またはヘテロ接合型家族性高コレステロール血症である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
血液中のコレステロールまたはトリグリセリドの少なくとも1つの濃度を減少させるが、単独療法の間のインプリタピドの80mg/日の投与量の投与と比較して、有害事象の発生率が減少する、請求項22から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
哺乳動物の血管壁の動脈プラークの量を減少させるが、単独療法の間のインプリタピドの80mg/日の投与量の投与と比較して、有害事象の発生率が減少する、請求項22から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記有害事象が肝脂肪症である、請求項34または35に記載の方法。

【公表番号】特表2009−511635(P2009−511635A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536751(P2008−536751)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/040640
【国際公開番号】WO2007/047725
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(508117709)エージェリオン ファーマシューティカルズ (2)
【Fターム(参考)】