説明

哺乳類の皮膚の美化及び/又は改善のための無毛タンパク質相互作用パートナー複合体及びその方法

無毛タンパク質相互作用パートナー複合体、作用物質及び/又は拮抗物質化合物、それらを含む組成物及び製品、並びにその方法。無毛タンパク質は、哺乳類の皮膚の美化及び/又は改善に不可欠である。従って、そのような相互作用複合体は、哺乳類の皮膚の美化及び/又は改善のための試験化合物をスクリーニングするために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無毛タンパク質相互作用パートナー複合体、拮抗物質又は作用物質活性化合物、それらを含む組成物及び製品、並びにその方法に関する。この複合体は、試験剤をスクリーニングし、物質的な美化及び改善利益を哺乳類、特にヒトの皮膚に送り届ける化合物を同定することに有用である。
【背景技術】
【0002】
人々は外観、特に顔に対してこだわりを示し続けているが、皮膚及び身体の外観に対してもますますこだわりを示し続けている。事実、多くの人々が、外観は自尊心、大切な相手の選択、職業上の昇進及び社会的な容認に本質的に関連していると考えている。ヒトの皮膚の状態は典型的には20歳で絶頂を迎え、その後薄くなり弾性を失う。驚くことではないが、アメリカの消費者は、皮膚の老化を遅延するか、逆転すると主張する製品に対して2001年に約28億ドルを支払った。それぞれが所望の外観を向上させる結果をもたらすと主張している、多くの新しい製品及びサービスの登場からも明らかなように、外観を向上させる様式に対する要求は大きくなり続けている。
【0003】
多様な皮膚利益を主張しているローション類(ハーブ系及びそれ以外のもの)は、世界中のスキンケア市場で毎年売り出されている。明確な化学成分(例えば、α−ヒドロキシ酸、ナイアシンアミド、レチノイド類、ビタミンE、カイネチン、銅−ペプチド)を有する他の製品も広く入手可能である。しかしそのような製品の商品化にもかかわらず、皮膚の老化の予防及び逆転に有用な組成物及び製品に対する大きな満たされていない要求が依然として存在する。事実、注入(例えば、ボツリヌス毒素、コラーゲン、ヒアルロン酸、ケラチン、シリコーン、死体皮膚抽出物)を含む多様な臨床的及び/又は外科的手段が、哺乳類の皮膚の美化に有効であることが証明されている。それにもかかわらず、そのような手段は、高価であり、時間がかかる傾向があり、従って一般にほとんどの消費者は利用できない。更に、他の医療手段のように、哺乳類の皮膚の美化に対する臨床的及び外科的手法は、多くの危険性と副作用を伴う。世界中のスキンケア市場で見られるハーブ療法も物質的な美化利益を哺乳類の皮膚に送り届けていることをまだ実証していない。更に、ホルモン補充療法に関する近年の不利な知見が、哺乳類の皮膚の美化における薬剤系療法の実行可能性を制限している。栄養補助食品(又は機能性食品)は、皮膚の美化という関連において有効であることが証明される可能性があるが、皮膚老化防止利益をもつ安全且つ効果的な化合物の同定にはかなりの進歩が必要である。
【0004】
従って当業者による限りない努力にもかかわらず、年齢に抗う及び年齢に逆らう製品、特に効果的及び安全の両方である化合物の同定において大きな満たされていない要求が依然として存在する。例えば、エストロゲンは独特の皮膚利益を提供するが、他の組織におけるその多様な役割によって、数多くの望ましくない副作用を有し、そのため化粧用スキンケアの関連での使用が制限される。エストロゲンの作用は、一般に数多くのエストロゲン受容体(例えば、ERα、ERβ、ERx)により媒介され、エストロゲン受容体は、それ自体、多様な組織で他の細胞タンパク質と相互作用することが知られている。このジレンマは、目的の細胞又は組織の種類に特異的である皮膚処理剤を同定する必要性を強調している。最近のゲノム−プロテオーム及び生命情報学ツールにおける進歩が、現在、古典的な分子の遺伝的及び生化学的手法を介して、細胞及び/又は組織型事象の発見を促進している。タンパク質複合体は、一般に生物過程を制御し、従って皮膚特異的タンパク質複合体及び/又は相互作用パートナーの同定は、皮膚老化防止「標的」の発見及び皮膚老化防止利益を有する皮膚化合物の発見を促す。
【0005】
無毛タンパク質は、推定されるGATAファミリージンクフィンガータンパク質であり、これには数個の相互作用パートナーが存在する。事実、HRの多様な相互作用パートナーは、パスウエイマッピング、並びに特定の皮膚及び毛髪向上製品の発見への挑戦及び機会を提供し続けている。当業者は、今日まで、無毛タンパク質と哺乳類の育毛及び毛髪維持との関係しか確認していない。HRに点突然変異をもつ個人は、無毛であるが、それ意外は健康であることが認識されている。米国特許第6,348,348号(トンプソン(Thompson)ら、2002年2月19日発行)は、HRが、その発現を調節する同じタンパク質である甲状腺ホルモン受容体(TR)と直接且つ特異的に相互作用することを開示している。同第6,348,348号は、更に、対象ヒトHR配列のアミノ酸配列、アーマド(Ahmad)らにより発表されたヒト配列(サイエンス(Science)279、720〜724、1998年)、チコーン(Cichon)らにより発表されたヒト配列(ヒト分子ゲノム(Hum.Mol.Genet.)、7、1671〜1679、訂正1987年〜1988年、1998年)、トンプソン(Thompson)により発表されたマウス配列(神経科学ジャーナル(J.Neurosci.)、16、7832〜7840、1996年)、及びカション(Cachon)−ゴンザレス(Gonzalez)らにより発表されたマウス配列(米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、91、7717〜7721、1994年)の比較を開示している。PCT国際公開特許WO99/38965は、ヒト無毛タンパク質をコードする単離された核酸を提供する。最後に、譲渡人に共に譲渡された米国特許出願10/452,858(2003年6月2日出願、表題「無毛タンパク質相互作用パートナー複合体及びその方法(Hairless Protein-Interacting Partner Complexes and Methods Thereof)」は、育毛の阻害又は増進のための無毛タンパク質相互作用パートナー複合体の使用を記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当業者はHRと甲状腺ホルモン受容体(TR)との間で幾らかの相互作用を確認しているが、本明細書以前まで、哺乳類の皮膚のケラチノサイトにおいてHRと他のタンパク質との相互作用が確認されたことは一度もなかった。それ故に、当該技術分野において試験化合物をスクリーニングするために使用できる特異的タンパク質複合体を開発し、それによって哺乳類の皮膚に1つ以上の美化利益を提供する化合物を同定する、大きな満たされていない要求が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、哺乳類の皮膚に物質的な美化及び改善利益を提供するために適合された化合物のスクリーニング及び/又は発見において用いるための、無毛タンパク質相互作用パートナー複合体(HR−IP)に関する。本発明は、更に、拮抗物質及び/又は作用物質活性を示す化合物、前記化合物を含む組成物及び製品、並びに哺乳類の皮膚に物質的な美化及び/又は改善利益を送り届ける本明細書で開示されている化合物と組成物の両方を使用する方法に関する。本開示から明らかになるように、本発明は、無毛タンパク質相互作用パートナー複合体の相互作用が哺乳類の皮膚の状態に対して多くの密接な関係を有すると考えられている、本明細書で開示されている無毛タンパク質相互作用パートナー複合体を同定するために、一部変更された酵母ツーハイブリッド技術を利用した。本発明で提供される無毛タンパク質相互作用パートナーは、表1で提示されており、細胞周期、細胞分化、転写、核移行、シグナル伝達、細胞一体性、及びミトコンドリア機構に関わる分子を含む。
【0008】
従って、本発明の一つの態様において、マウスHRtタンパク質−ヒト相互作用パートナータンパク質複合体を含む組成物であって、ヒト相互作用パートナータンパク質が、ホモサピエンスケラチン5、オキシステロール受容体LXR−β、活性化STAT−1のホモサピエンスタンパク質阻害物質(PIAS1)、ストローマ抗原2のホモサピエンス類似物、ホモサピエンスヌクレオポリン160kD(NUP160)、ヒトレチノイン酸受容体γ−1、ホモサピエンス甲状腺ホルモン受容体α、ホモサピエンスアネキシンA1(リポコルチン−1又はP35)、ホモサピエンスHICタンパク質アイソフォームp32及びHICタンパク質アイソフォーム40、ホモサピエンスインスリン様増殖因子結合タンパク質6、ホモサピエンス内膜タンパク質ミトコンドリア(ミトフィリン(Mitofilin))、ホモサピエンス仮定的タンパク質、活性化STAT−3のホモサピエンスタンパク質阻害物質(PIAS3)、ホモサピエンスDEAD/H(Asp−Glu−Ala−Asp/His)Boxポリペプチド3、ホモサピエンスDpy−30様タンパク質、マウスビタミンD受容体(VDR)、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される分子を含む組成物が提供される。繰り返すが、前述の分子は、試験剤をスクリーニングするため、並びに哺乳類の皮膚に物質的美化及び改善を送り届ける化合物を同定するために有用である。
【0009】
本発明の別の態様において、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16及びこれらの組み合わせを含む核酸でコードされているヒト相互作用パートナータンパク質を含む組成物が開示されている。
【0010】
本発明のさらに別の態様において、哺乳類の皮膚の美化及び/又は改善における作用物質又は拮抗物質活性について試験化合物をアッセイする方法が開示されている。前記方法は、a)試験化合物の不在下でマウスHRtタンパク質とヒト相互作用パートナーとの間の相互作用のレベルを測定する工程、b)試験化合物の存在下でマウスHRタンパク質とヒト相互作用パートナーとの間の相互作用のレベルを測定する工程を含み、工程b)で測定されたレベルが工程a)のレベルより大きい場合は、試験化合物は作用物質活性を有し、工程b)で測定されたレベルが工程a)のレベルより小さい場合は、試験化合物は試験化合物は拮抗物質活性を有する。
【0011】
本発明の別の態様において、本明細書上記で定義されたように、作用物質及び拮抗物質活性を示す化合物が開示され、特許請求されている。前記化合物は、下記で考察される、試験化合物をアッセイする方法を利用して本発明により同定されてもよい。本発明の作用物質及び拮抗物質化合物は、物質的な改善及び/又は美化利益を送り届けることが望ましい哺乳類の皮膚の一部分に送達されてもよい。前記適用及び/又は送達は、前記化合物の局所用組成物への組み込み及び/又は経口投与用の医薬担体の使用が挙げられるが、それらには限定されない多様な方法を介して達成されてもよい。
【0012】
本発明のさらに別の態様において、本発明の作用物質及び/又は拮抗物質活性化合物の1つ以上を組み込んだ組成物が開示される。事実、本開示を検討すると明らかになることであるが、本発明の試験化合物は、作用物質活性を示しているか拮抗物質活性を示しているかにかかわらず、哺乳類の皮膚に物質的な美化及び/又は改善利益を送り届けるため、組成物に配合されてもよい及び/又は製品に組み込まれてもよい。本発明の組成物及び/又は製品は、配合者の厳密な要求、該当の化合物の性質及びそのような組成物及び製品の利用が意図される目的に応じて、多数の形状、大きさ及び特性をとってもよい。本発明の別の態様において、本明細書で開示されている組成物及び/又は製品は、下記で考察される、1つ以上の補助成分を組み込んでもよい。
【0013】
本発明のさらに別の態様において、哺乳類、特にヒトの皮膚に物質的な美化及び/又は改善利益を送り届ける方法が開示される。前記方法は、本明細書で開示されている前述の方法を利用することにより決定される、作用物質又は拮抗物質活性を示す化合物を、物質的な美化及び/又は改善利益を哺乳類の皮膚に送り届けるために十分な時間、経口的か局所的かにかかわらず投与する工程を含む。本発明の別の態様において、前記方法は、物質的な美化及び/又は改善利益を送り届けることが望ましい哺乳類の皮膚の一部分への、本明細書で開示されている作用物質及び/又は拮抗物質化合物を含む組成物又は製品の適用に関わる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(背景及び定義)
本発明は、無毛タンパク質相互作用パートナー(HR−IP)、作用物質及び/又は拮抗物質活性を示す化合物、これらを含む組成物及び製品、並びにその方法に関する。変更され、改善された酵母ツーハイブリッドシステム(上記で考察された)が、無毛タンパク質とのタンパク質相互作用パートナーを同定するために使用された。酵母ツーハイブリッドシステムは、一般に、酵母で発現した2つの融合タンパク質の関連を測定する。酵母で発見された相互作用は、生理学的条件下で起こるであろう潜在的な相互作用を示す。
【0015】
「無毛タンパク質(HR)」とは、本明細書においてマウス無毛タンパク質を意味する。「切断型無毛タンパク質(HRt)」とは、配列番号:16として提供されている配列を意味し、これはマウスHRタンパク質のC末端部のアミノ酸残基490〜1182である。本開示の観点では、当業者に既知のHRの誘導体、フラグメント又は類縁体は、HRの等価物と考慮される。マウスHRは、ヒトHRと80%を超えて同一であることが留意且つ強調されるべきである。従って、本明細書で提供される相互作用パートナーは、そのような相互作用パートナーがマウスHRと相互作用するのと同様の方法で、ヒト無毛タンパク質と相互作用することが予想される。それ故に、HRtに対して活性を有する拮抗物質及び/又は作用物質化合物は、更に、HRに対して活性を示すことが予想される。本HRt−IP複合体の拮抗物質又は作用物質は、更に、ヒト無毛タンパク質相互作用パートナー等価物に対して活性を示すことが予想される。
【0016】
「相互作用パートナー(IP)」とは、IPとHRtが転写制御因子の別個の構成要素に融合するとき、HRt−IP親和性が転写制御因子の構成要素の再構成を可能にするのに十分であり、それによりレポーター遺伝子の発現を可能にするように、HRtに対して十分な結合親和性を有するタンパク質又は核酸を意味する。相互作用は、HRtの特定の部分とIPの特定の部分との特定の静電気、疎水性、親水性、エントロピー又は他の相互作用により起こる可能性があり、相互作用を促進するのに有効な条件下で安定した複合体を形成する。相互作用パートナーは、表1で提供されるデータにより同定される。すなわち、相互作用パートナーの同一性は、酵母ツーハイブリッド系の陽性の結果からのヌクレオチド配列データを使用するホモロジー検索により決定された。本開示の観点では、当業者に既知の表1に同定されている相互作用パートナーの誘導体、フラグメント又は類縁体は、相互作用パートナーの等価物と考慮され、従って十分に本開示の範囲内である。
【0017】
「HRt−IP複合体」とは、イオン強度、温度、pHなどの生理学的条件下で、相互作用パートナーの少なくとも1つの分子と結合しているHRtの少なくとも1つの分子を意味する。複合体は、インビボ又はインビトロであってもよい。
【0018】
酵母ツーハイブリッドシステムにおいて、レポーター遺伝子(例えば、LACZ、MEL1、HIS3、ADE1、URA3)の転写は、それぞれ調節因子の「半分」に融合している2つのタンパク質の相互作用による、Gal4調節因子の再構成に左右される。2つのタンパク質が相互作用するのに十分な結合親和性を有する場合、相互作用は、GAL4調節因子の再構成を生じ、それは次にレポーター遺伝子の転写を活性化する。本発明の関連において、調節因子の「半分」は、DNA結合ドメイン(BD)であり、調節因子の「半分」は、活性化ドメイン(AD)である。「餌」タンパク質が結合ドメインに融合し、「餌食」タンパク質が活性化ドメインに融合している場合、又はその反対の場合、「餌」タンパク質と「餌食」タンパク質の十分な結合親和性がBD及びADの再構成を可能にして、レポーター遺伝子が活性化することを可能にする。従ってそのようなアッセイは、「餌」タンパク質と「餌食」タンパク質の親和性の試験である。酵母ツーハイブリッド技術は、例えば、米国特許第5,986,055号(ヤング(Yang)M.ら、1999年11月16日発行)で記載されており、参考として本明細書に組み込まれる。本主題の発明者たちは、下記で詳細に記載される、変更された酵母ツーハイブリッド技術を利用した。
【0019】
本発明の関連において、「餌」タンパク質は、アミノ酸残基490〜1182を有するマウスの無毛タンパク質(HRt)のC末端部である(配列番号:16として提供され、アミノ酸490〜1182をコードする核酸配列は、配列番号:17として提供される)(「マウスの無毛遺伝子の構造及び発現(Structure and Expression of the Hairless Gene of Mice)」、ベゴナ(Begona)、M.ら、米国科学アカデミー紀要(J.Proc.Natl.Acad.Sci,USA)91:7717〜7721,1994年)(ジーンバンク(GenBank)受付番号Z32675)。HRタンパク質(aa残基490〜1182)は、ジンクフィンガードメイン(595〜620)及びHR機能に潜在的に重要であることが以前に確認されている3つのPESTドメインを含有する。繰り返すが、マウスHRはヒトHRと極めて類似している。事実、PEST配列は、多くの場合にタンパク質の急速な分解の信号としての役割を果たすために使用される。信号は構成的又は条件的であってもよい。タンパク質がPEST領域を含有するかどうかを客観的に決定するために、PEST−FINDコンピュータプログラムが、M.レヒスタイナー(Rechsteiner)及びS.W.ロジャーズ(Rogers)により開発された(PEST配列及びタンパク質分解による調節(PEST sequences and regulation by proteolysis)、TIBS 21、1996年7月)。PC/GENE(オミガ(OMIGA))で入手できる関連するアルゴリズムは、あらゆる順序でP、E/D及びS/Tをそれぞれ少なくとも1個ずつ含有する12個以上のaa残基の親水性伸展として、PEST配列を定義する。PEST配列には、更に塩基性aa残基K、A又はHが隣接していなければならないが、塩基性残基は、PEST配列では許容されない。PEST−FINDは、約+50〜−50の範囲のスコアを生成する。分類のため、0より小さいスコアは、可能性のあるPEST領域を示すが、+5を超えるスコアは、PEST領域の存在の高い可能性を示す。例えば、PESTドメインは、下記のHRタンパク質の領域(aa残基490〜1182):aa残基522〜546の間のPESTドメイン12.26、aa残基709〜722の間のPESTドメイン7.56、及びaa残基729〜744の間のPESTドメイン21.71に位置していた。
【0020】
本発明の関連において、「餌食」タンパク質は、ヒトケラチノサイトAD−cDNAライブラリーでコードされている。一方がBD−HRt融合タンパク質を含有し、他方がAD−ヒトcDNAタンパク質を含有する2つの相補性交配型の酵母が交配する場合、子孫がそれぞれの融合タンパク質に発現する。HRtに十分な親和性を有するこれらのADタンパク質は、HRtに結合し、BD及びADを再構成して、レポーター遺伝子を活性化することを可能にする。従って、ツーハイブリッドシステムの陽性の結果は、マウスHRtとヒトケラチノサイトタンパク質との間の親和性及び相互作用を示す。
【0021】
HR−IP相互作用の「拮抗物質」とは、HR−IP複合体の結合に対して阻害活性を有する剤を意味する。結合は、HRとIPの相互作用の効果によるか、又はHRとIPの集合的な相互作用に影響を及ぼすHR又はIPの個別の効果により阻害される可能性がある。
【0022】
HR−IP相互作用の「作用物質」とは、HR−IP複合体の結合に対して増強又は刺激活性を有する剤を意味する。結合は、HRとIPの相互作用の効果によるか、又はHRとIPの集合的な相互作用に影響を及ぼすHR又はIPの個別の効果により刺激される可能性がある。拮抗物質又は作用物質の同定は、試験化合物の存在下でHRとIPを相互作用させることにより実施される。試験剤の不在下での相互作用に対するHR−IP相互作用の減少又は増加は、一般に、下記で更に記載されるように、相互作用している対に試験剤が影響を及ぼしていることを示す。
【0023】
「美化及び/又は改善利益」とは、本発明の無毛タンパク質相互作用パートナー複合体が、下記の利益:改善された表皮バリア機能及び水和、セルライトの減少、向上されたバリア修復、皮膚のしわの予防に加えてその逆転、並びに育毛の遅延の1つ以上を哺乳類皮膚に送り届ける、HR−IP複合体の結合に対して拮抗物質及び作用物質活性を有する化合物を、スクリーニング及び/又は同定するために使用されてもよいことを意味する。
【0024】
マウスHRがヒトHRと80%を超えて同一であるので、本発明者たちは、本発明で提供されるマウスHRtと相互作用するヒトタンパク質は、また、ヒトHRtと相互作用すると、合理的な確実性をもって予想するであろう。同様に、マウスHRt−ヒト相互作用パートナー相互作用の作用物質又は拮抗物質であることが証明された試験化合物は、本発明者たちによって、ヒトHRt−ヒト相互作用パートナーの作用物質又は拮抗物質であることが予想される。
【0025】
本発明のHR相互作用パートナータンパク質組成物において、保存性のアミノ酸置換(例えば、Glu/Asp、Val/Ile、Ser/Thr、Arg/Lys及びGln/Asn)は、これらのアミノ酸残基対の化学的な類似性が機能の同等性を生じると予想されるので、等価物であると考慮されるであろう。HR相互作用パートナータンパク質の生物学的機能を保存するアミノ酸置換は、そのような特性を疎水性、親水性、側鎖電荷、又は大きさとして保存するであろう。機能の同等性は、未変性の対と比較した、等価物の対の相互作用により決定される。本発明の範囲内に含まれるものは、翻訳の間又は後に、例えば既知の保護/ブロック基、タンパク質分解開裂、抗体分子への又は他の細胞配位子への結合などによるグリコシル化、アセチル化、リン酸化反応、アミド化、脂肪酸アシル化、硫酸化、誘導体化によって変性されている、HR相互作用タンパク質フラグメント、誘導体又は類縁体の複合体である。
【0026】
本発明のHR相互作用パートナー核酸組成物において、相互作用するパートナー核酸に厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する核酸分子の補体である分子は、そのような分子が相互作用パートナー核酸と機能の同等性を生じることが予想されるので、等価物であると考慮されるであろう。機能の同等性は、未変性の対と比較した、等価物の対の相互作用により決定される。ハイブリッド形成の厳密な条件は、例えば、ハイブリッド形成する分子の長さ、塩濃度、温度、変性剤の存在又は非存在のような多数の要因に依存する。高厳密条件には、約42℃及び約50%ホルムアミド、0.1mg/mLの剪断されたサケ精子DNA、1%SDS、2×SSC、10%硫酸デキストランでのハイブリッド形成、約65℃、約2×SSC及び1%SDSでの最初の洗浄、続く約65℃及び約0.1×SSCでの第2の洗浄を挙げてもよい。あるいは、高厳密条件には、約42℃及び約50%ホルムアミド、0.1mg/mLの剪断されたサケ精子DNA、0.5%SDS、5×SSPE、1×デンハート液でのハイブリッド形成、続く室温及び2×SSC、0.1%SDSで2回洗浄、約55〜60℃及び約0.2×SSC、0.1%SDSで2回洗浄を挙げてもよい。
【0027】
HR−IP複合体は、親和性精製、検出及び/又は他の機能性の研究のためのポリクローナル又はモノクローナル抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体、単鎖抗体の調製に使用されてもよい。抗体を生成する方法は、当該技術分野において周知であり、本開示の観点から、HR−IP複合体に適用できる。HR−IP複合体のHR部分又はIP部分に特異的な結合を有する抗体は、HR又はIPを用いる吸着によって抗HR−IP調整から除去されてもよい。残りの抗体は複合体に対して特異性を有する。
【0028】
マウスHR突然変異の背景
無毛(HR)遺伝子は、多数の組織、主に皮膚に発現し、HR遺伝子の突然変異は、典型的な皮膚表現型の無毛マウスに関与している。突然変異HRマウス株は、特にT細胞及びマクロファージに関与する免疫欠如、並びに加齢に関連した免疫不全症及び胸腺の促進的萎縮を示す。(参照:無毛rhino−j(hr/rh−j)マウスの胸腺(The thymus of the hairless rhino-j(hr/rh-j)mice)。ホセ(Jose)ら、解剖学ジャーナル(J Anat)2001年4月、198(Pt4):399〜406)。
【0029】
無毛マウス(hr/hr):最初の無毛突然変異が初めて分子レベルで特徴決定された。HR遺伝子のイントロン6中のネズミ白血病ウイルスpmv43挿入が異常なスプライシングを起こし、正常にスプライシングされたHRが、正常なレベルの約5%で発現する。従って、この種類のマウスは、少量の正常なHRタンパク質を発現する。(参照:突然変異誘発物質としての内因性レトロウイルスの役割(Role of endogenous retroviruses as mutagens):マウスの無毛突然変異(the hairless mutation of mice)。ストヤ(Stoye)ら、細胞(Cell)1988年、54:383〜391)。
【0030】
Rhino Yurlovoマウス(hrrhY):HR遺伝子のエクソン16中のヌクレオチド位置3520での13ベースペア(bp)挿入。これは、フレームシフトと、エクソン17中の挿入部位から下流の264ベースペア(bp)及びエクソン19中の内因性終止コドンから上流の139ベースペア(bp)で早期終止を生じる。(参照:rhino Yurlovo(hrrhY)表現型の分子的基礎(Molecular basis for the rhino Yurlovo(hrrhY)phenotype):無毛遺伝子の挿入に関連する重篤な皮膚異常及び雌性生殖障害(Severe skin abnormalities and female reproductive defects associated with an insertion in the hairless gene)。パンテレイエフ(Panteleyev)ら、実験皮膚科学(Exp.Dermatol.)1998年、7:281〜288)。
【0031】
Rhinoマウス(hrrh-8j):エクソン4のヌクレオチド位置1910と1911での2ベースペア(bp)置換が、位置511(Q511H)でグルタミンのヒスチジンへのアミノ酸置換及び隣接するアミノ酸512(K512X)でリシンのナンセンスコドンへのアミノ酸置換を生じる。Rhinoは、HR遺伝子の機能性ノックアウトである。(参照:rhino(hrhr-8j)表現型の分子的基礎(Molecular basis for the rhino(hrrh-8j)phenotype):マウス無毛遺伝子のナンセンス突然変異(A nonsense mutation in the mouse hairless gene)。アーマド(Ahmad)ら、ゲノム(Genomics)1998年、53:383〜386)。
【0032】
Rhinoマウス(hrrhChr):CからTへの転移が、アミノ酸位置467(R467X)でのアルギニン残基(CGA)の、早期終止コドン(TGA)への変換を生じる。(参照:新規rhino(hrrhChr)表現型の分子的基礎(Molecular basis of a novel rhino(hrrhChr)phenotype):マウス無毛遺伝子のナンセンス突然変異(A nonsense mutation in the mouse hairless gene)。アーマド(Ahmad)ら、実験皮膚科学(Exp.Dermatol.)1998年、7:298〜301)。
【0033】
Rhinoマウス(hrrh/hrrh):切断型のHR(C末端アミノ酸711〜1189が非存在である)の発現は、エクソン6における早期停止に起因する。(参照:マウスの無毛遺伝子(The hairless gene of the mouse):発現特性と遺伝子型との表現型効果の関係(relationship of phenotypic effects with expression profile and genotype.)。ゴンザレス(Gonzalez)ら、発達的動力学(Dev Dyn.)1999年10月、216(2):113〜26)。
【0034】
【表1】

【0035】
参照:ズロトゴルスキー(Zlotogorski)ら、(2002年a)、丘疹状病変をもつ先天性無毛症の臨床及び分子診断基準(Clinical and molecular diagnostic criteria of congenital atrichia with papular lesions)、研究皮膚科学ジャーナル(J Invest Dermatol.)2002年、118:887〜890。アーマド(Ahmad)ら(1999年a)、ヒト無毛遺伝子(HR)のゲノム機構及びアラブパレスチナ人家族の先天性無毛症の根底にある突然変異の同定(Genomic organization of the humanhairless gene(HR)and identification of a mutation underlying congenital atrichia in the Arab Palestinian family)、ゲノム(Genomics)56、141〜148。シュプレヒャー(Sprecher)ら(1999年b)、ヒト無毛遺伝子内のナンセンス突然変異から生じる一般的病変をもつ無毛症(Atrichia with popular lesions resulting from a nonsense mutation within the human hairless gene)、研究皮膚科学ジャーナル(J.Invest.Dermatol)113,687〜690。アーマド(Ahmad)ら(1999年b)、先天性無毛症の根底にあるヒト無毛遺伝子のジンクフィンガードメインにおける同型接合ナンセンス突然変異(A homozygous nonsense mutation in thezinc-finger domain of the human hairless gene underlines congenital atrichia)、研究皮膚科学ジャーナル(J Invest Dermatol)113、281〜283。アーマド(Ahmad)ら(1998年b)、アイルランド人旅行者の家族における先天性無毛症の根底にあるヒト無毛遺伝子のジンクフィンガードメインにおけるミスセンス突然変異(A miss sense mutation in the zinc-finger domain of the human hairless gene underlines congenital atrichia in a family of Irish travelers)、人類遺伝学米国ジャーナル(Am J Hum Genet)63,984〜991。アイタ(Aita)ら(2000年)、先天性無毛症及び一般的病変に関連するヒト無毛遺伝子のジンクフィンガードメインにおける新規ミスセンス突然変異(C622G)(A novel missense mutation(C622G)in the zinc-finger domain of the human hairless gene associated with congenital atrichia and popular lesions)、実験皮膚科学(Exp Dermatol)9,157〜162。クルーズ(Kruse)ら(1999年)、常染色体劣性一般的無毛症をもつ2つの家系における無毛突然変異(Hairless mutations in two kindreds with autosomal recessive popular atrichia)、研究皮膚科学ジャーナル(J Invest Dermatol)113,954〜959。ズロトゴルスキー(Zlotogorski)ら(1998年)、ヒト無毛遺伝子の欠失突然変異から生じるアラブパレスチナ人の5家族における先天性無毛症(Congenital atrichia in five Arab Palestinian families resulting from a deletion mutation in the human hairless gene)、人類遺伝子学(Hum Genet.)1998年、103:400〜404。チコーン(Cichon)ら、(1998年)、常染色体劣性先天性全身性脱毛症に関与する遺伝子のクローニング、ゲノム機構、選択的転写及び突然変異分析(Cloning,genomicorganization,alternative transcripts and mutational analysis of the gene responsible for autosomal recessive universal congenital alopecia)、ヒト分子遺伝子学(Hum Mol Genet)7、1671〜1679。クルーズ(Kruse)ら(1999年)、常染色体劣性一般的無毛症(tarichia)をもつ2つの家系における無毛突然変異(Hairless mutations in two kindreds with autosomal recessive popular tarichia)、研究皮膚科学ジャーナル(J Invest Dermatol)113,954〜959。クライン(Klein)ら(2002年)、先天性無毛症を引き起こすヒト無毛甲状腺受容体相互作用ドメイン2に影響を及ぼす新規ミスセンス突然変異(A novel missense mutation affecting the human hairless thyroid receptor interaction domain 2 causes congenital atrichia)、研究皮膚科学ジャーナル(J Invest Dermatol)119、920〜922。アーマド(Ahmad)ら(1998年a)ヒト無毛遺伝子の突然変異に関連する全身性脱毛症(Alopecia universalis associated with mutation in the human hairless gene)、サイエンス(Science)279、720〜724。ズロトゴルスキー(Zlotogorski)ら(2002年b)、丘疹状病変をもつ無毛症の偽優性遺伝の証拠(Evidence for pseudodominant inheritance of atrichia with papular lesions)、研究皮膚科学ジャーナル(J Invest Dermatol)2002年、118:881〜886。シュプレヒャー(Sprecher)ら(1999年a)、一般的病変をもつ無毛症における無毛遺伝の遺伝的欠陥の同定(Identification of a genetic defect in the hairless gene in atrichia with popular lesions):遺伝した無毛症のうちの表現型異質性の証拠(evidence for phenotypic heterogeneity among inherited atrichia)、人類遺伝学米国ジャーナル(Am J Hum Genet)64、1323〜1329、これらは全て参考として本明細書に組み込まれる。
【0036】
第1態様:HRtタンパク質−ヒト相互作用パートナータンパク質複合体
本発明の第1態様によると、マウスHRtタンパク質−ヒト相互作用パートナータンパク質複合体を含む組成物であって、ヒト相互作用パートナータンパク質が、ホモサピエンスケラチン5、オキシステロール受容体LXR−β、活性化STAT−1のホモサピエンスタンパク質阻害物質(PIAS1)、ストローマ抗原2のホモサピエンス類似物、ホモサピエンスヌクレオポリン160kD(NUP160)、ヒトレチノイン酸受容体γ−1、ホモサピエンス甲状腺ホルモン受容体α、ホモサピエンスアネキシンA1(リポコルチン−1又はP35)、ホモサピエンスHICタンパク質アイソフォームp32及びHICタンパク質アイソフォーム40、ホモサピエンスインスリン様増殖因子結合タンパク質6、ホモサピエンス内膜タンパク質ミトコンドリア(ミトフィリン(Mitofilin))、ホモサピエンス仮定的タンパク質、活性化STAT−3のホモサピエンスタンパク質阻害物質(PIAS3)、ホモサピエンスDEAD/H(Asp−Glu−Ala−Asp/His)Boxポリペプチド3、ホモサピエンスDpy−30様タンパク質、マウスビタミンD受容体(VDR)、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される分子を含む組成物が提供される。本明細書で開示されている分子は、下記で記載される、変更された酵母ツーハイブリッド技術を利用して同定されている。事実、前述の分子は、試験剤をスクリーニングするため、並びに哺乳類の皮膚に物質的美化及び改善を送り届ける化合物を同定するために有効である。
【0037】
本発明の別の態様において、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16及びこれらの組み合わせを含む核酸でコードされているヒト相互作用パートナータンパク質が提供される。前記核酸配列は、加えて、試験剤をスクリーニングするため、並びに哺乳類、特にヒトの皮膚に物質的美化及び/又は改善を送り届ける化合物を同定するために有効である。化合物は、本開示の後続のセクションに従って、本明細書で開示されている分子及び核酸配列を含むHR−IP複合体に対する作用物質及び/又は拮抗物質活性を試験されてもよい。
【0038】
第2態様:HR−IP複合体の拮抗物質及び/又は作用物質化合物
本発明の第2態様によると、HR−IP複合体に拮抗物質及び/又は作用物質活性を示す化合物が開示され、特許請求されている。当然のことながら、先行のセクションで記載されたヒト相互作用パートナータンパク質が、HR−IP複合体に結合するように適合されている拮抗物質及び/又は作用物質化合物をスクリーニングするために利用されてもよい。前記化合物とHR−IP複合体との相互作用は、哺乳類の皮膚に物質的な美化及び/又は改善利益の1つ以上を送り届けるために、消費者用及びその他のための組成物及び製品におけるそれらの使用を促進する。本発明の拮抗物質及び/又は作用物質化合物は、新規アッセイ(下記で記載される)を使用して同定されてもよく、次に本明細書で開示されている他の方法を使用して精製されてもよい。
【0039】
HR−IP複合体の拮抗物質又は作用物質のスクリーニング
HR−IP複合体又はHR−IP複合体をコードする核酸は、HR−IP複合体に結合する化合物をスクリーニングするために使用されてもよく、従ってそのような化合物は、HR−IP複合体の作用物質又は拮抗物質としての使用を有する。従って本発明は、HRと相互作用パートナーとの相互作用を増強するか又は阻害するかのいずれかである分子を検出するアッセイを提供する。そのような分子は、例えば、小型の分子、ペプチド、修飾ペプチド、アプタマー、核酸又は修飾核酸であってもよい。HR−IPの活性を調節する分子は、試験分子を、HR及びIPと一緒に接触させる前に、HRと接触させるか又はIPと接触させるかのいずれかによるか、或いはHR、IP及び試験分子の3方向結合させるかによって同定される。HR−IP相互作用の調節は、複合体の安定性、複合体の親和性又は結合、複合体の形成速度、複合体の量、又は複合体の別の機能により測定されてもよい。試験化合物の不在下でのパラメータと比較したこれらのパラメータのいずれかの増加又は減少は、試験化合物が複合体の作用物質又は拮抗物質であることを示している。そのような作用物質又は拮抗物質を同定する方法は、本明細書で記載されている変更された酵母ツーハイブリッドアッセイを使用して実施されてもよいか、又は例えばインビトロで実施されてもよい。
【0040】
拮抗物質又は作用物質活性がスクリーニングされる試験剤は、特定の化合物の混合物としてか、或いは化合物ライブラリー、ペプチドライブラリー、抗血清、アンチセンス核酸、ランダム若しくはコンビナトリアルライブラリー、化学的に合成されたライブラリー、組み換えライブラリー、又はインビトロ翻訳系ライブラリーとして提供される。剤は、HR−IP相互作用の競争的又は非競争的阻害物質としての活性がスクリーニングされてもよい。特にHR又はIPのフラグメント又は類縁体は、そのような阻害活性がスクリーニングされてもよい。剤は、試験される剤の不在下でHR−IP結合が起こる水性又は生理学的結合条件下でのHRとIPとの結合の阻害又は増強について、スクリーニングされてもよい。結合を弱める剤は、複合体の拮抗物質として同定され、結合を増強する剤は、複合体の作用物質として同定される。
【0041】
典型的な結合条件は、例えば、10〜250mM NaCl、5〜50mM トリス−HCl、pH5〜8、0.5%トリトンX−100の水溶液である。金属キレーター又は二価カチオンが、結合を改善するために添加されてもよい。結合温度には、氷浴の温度から42℃までを挙げてもよい。インキュベーション時間は、結合平衡が発生することを可能にするのに十分である。本開示に照らしてみると、検出可能な標識の使用及び複合体形成の定量化を含む当業者に既知の方法が、HRと相互作用パートナーと試験剤との結合をアッセイするために使用されてもよい。
【0042】
CDK2相互作用タンパク質のための米国特許第5,986,055号(1999年11月16日発行)に記載のアッセイシステム(参照として本明細書に組み込まれる)と同様の酵母ツーハイブリッドアッセイシステムが、HR−IP結合に対する剤の拮抗物質又は作用物質活性を試験するために使用されてもよい。このツーハイブリッドアッセイは、試験剤の存在下で行われている以外は、本実施例で記載されているように実施される。試験剤の不在下で示される活性と比較したレポーター遺伝子活性の増加又は減少は、試験剤が、相互作用対に対して影響を及ぼすことを示す。
【0043】
そのようなシステムの構成要素には、再構成可能な転写制御因子及びレポーター遺伝子が挙げられる。再構成可能な転写活性化因子は、再構成されたときにレポーター遺伝子の転写を誘導する、DNA結合ドメイン(BD)及び活性化因子ドメイン(AD)を含む。HRt、そのフラグメント、誘導体、又は類縁体をコードするヌクレオチド配列は、DNA結合ドメインか又は活性化因子ドメインのどちらかに融合し、表1のデータから同定される相互作用パートナーをコードするヌクレオチド配列は、BDかADの他方に融合する。DNA結合ドメインは、それがレポーター遺伝子のプロモーター活性物質内でDNA配列を特異的に認識する限り、あらゆるDNA結合ドメインであることができる。活性化因子ドメインは、転写制御因子の結合ドメインに対して活性を有する。レポーター遺伝子は、DNA結合ドメインのための結合部位を含有するプロモーターに作動可能に結合する。例としては、BD−HRのAD−IPへの結合は、レポーター遺伝子の発現を活性化するBD−AD転写制御因子の再構成をもたらす。レポーター遺伝子の転写の活性化は、細胞内で、例えば原核又は真核細胞内、好ましくは細胞培養内で起こる。レポーター遺伝子は、検出可能なシグナルを起こすことができる検出可能なマーカー分子、例えば、蛍光タンパク質、或いは容易に視覚化できるか、或いは特定の抗体により認識されるタンパク質又はLacZ若しくはα−ガラクトシダーゼのような酵素であって、且つ容易にアッセイされる検出可能マーカー分子をコードする。
【0044】
酵母菌株は、選択可能なマーカーを発現しない細胞の増殖を支持しない条件下で、増殖するための能力を付与する選択可能なマーカーのために選択され、例えば、選択可能なマーカーは、必須の栄養素を提供する酵素であり、相互作用アッセイが行われる細胞は、酵素内に欠いており、選択培地は、そのような栄養素を欠いている。レポーター遺伝子は、DNA結合タンパク質のための結合部位を天然に含有する未変性プロモーターの制御下にあるか、又は非相同若しくは合成プロモーターの制御下にある。
【0045】
別個の結合及び転写活性化ドメインを有する転写制御因子タンパク質の例には、例えば、S.セレヴィシエのGAL4、GCN4及びARD1タンパク質及びヒトエストロゲン受容体が挙げられる。融合タンパク質で利用されるDNA結合ドメイン及び活性化ドメインは、同じ転写制御因子からである必要はない。例えば、GAL4又はLEXA DNA結合ドメインが使用されるか、或いはGAL4又は単純ヘルペスウイルスVP16活性化ドメインが使用される。一つの実施形態において、酵母転写因子GAL4は、タンパク質−タンパク質相互作用により再構成され、宿主株は、GAL4の突然変異体である。本開示に照らしてみると、別の実施形態は当業者には既知である。
【0046】
コードされた相互作用パートナーの単離を促進するため、融合作成物は、更に、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ又はマルトース結合タンパク質のような親和性タグをコードする配列を含有するか、或いはHR−IRに結合するための親和性精製のため、HR又はHRt抗体のエピトープを含有する。IPが核酸である場合、親和性タグは、核酸IPに相補的であるハイブリッド形成ヌクレオチド配列であってもよい。
【0047】
相互作用アッセイが行われる宿主細胞は、レポーター遺伝子の転写が起こることができ、且つ検出されることができる、哺乳類(例えば、サル、ニワトリ、マウス、ラット、ヒト、ウシ)、細菌、及び昆虫細胞が挙げられるが、それらには限定されない原核又は真核のいずれの細胞であることができ、好ましくは酵母菌である。結合ドメイン融合タンパク質をコードし、発現することができる発現作成物、転写活性化ドメイン融合タンパク質、及びレポーター遺伝子産物は、発現作成物を含有する細胞の交配によるか、或いは、例えば、細胞融合、形質転換、電気穿孔法、又は顕微注入法により、宿主細胞内に提供される。使用される宿主細胞は、DNA結合ドメイン融合個体群により認識されるものと同じDNA部位に結合する内因性転写因子を、発現するべきではない。加えて、宿主細胞は、突然変異体であるか、あるいはアッセイに使用されるレポーター遺伝子の内因性の機能形態を欠いたものである。
【0048】
2つの融合タンパク質個体群の酵母における発現のための多様なベクター及び宿主株は、既知であり、使用できる(米国特許第5,986,055号、1999年11月16日発行を参照すること)。例えば、使用できる酵母菌株又はそれから作られる誘導体株は、N105、N106、N1051、N1061及びYULH、Y190:MATa、ura3−52、his3−200、lys2−801、ade2−101、trpl−901、leu2−3,112、gal4.DELTA.、gal80.DELTA.、cyh.sup.r2、LYS2::GAL1.sub.UAS−HIS3.sub.TATA HIS3、URA3::GAL1.sub.UAS−GAL1.sub.TATA−lacZ.CG−1945:MATa、ura3−52、his3−200、lys2−801、ade2−101、trpl−901、leu2−3,112、gal4−542、gal80−538、cyh.sup.r2、LYS2::GAL1.sub.UAS−HIS3.sub.TATA HIS3、URA3::GAL1.sub.UAS17mers(x3)−CYC1.sub.TATA−lacZ.Y187:MAT−α、ura3−52、his3−200、ade2−101、trp1−901、leu2−3,112、gal4.DELTA.、gal80.DELTA.、URA3::GAL1.sub.UAS−GAL1.sub.TATA−lacZ.SFY526:MATa、ura3−52、his3−200、lys2−801、ade2−101、trp1−901、leu2−3,112、gal4−542、gal80−538、can.sup.r、URA3::GAL1−lacZ.HF7c:MATa、ura3−52、his3−200、lys2−801、ade2−101、trp1−901、leu2−3,112、gal4−542、gal80−538、LYS2::GAL1.−HIS3.URA3::GAL1.sub.UAS17MERS(X3)−CYC1−lacZ..YRG−2:MATa、ura3−52、his3−200、lys2−801、ade2−101、trp1−901、leu2−3,112、gal4−542、gal80−538 LYS2::GAL1.sub.UAS−GAL1.sub.TATA−HIS3、URA3::GAL1.sub.UAS17mers(x3)−CYC1−lacZである。
【0049】
プラスミドは、宿主酵母菌中で自律複製することができ、好ましくは大腸菌中で増殖することができる。プラスミドは、DNA結合又は活性化ドメイン融合遺伝子の転写を指示するプロモーターと、転写終結シグナルとを含有する。またプラスミドは、好ましくは、選択可能なマーカー遺伝子を含有し、プラスミドを含有する細胞の選択を可能にする。プラスミドは、単一コピー又は多コピーであることができる。酵母中心節(centromere)を有する単一コピー酵母プラスミドは、また、活性化及びDNA結合ドメイン融合を発現するために使用されてもよい。本開示に照らしてみると、別の実施形態において、融合作成物は、当業者に既知の方法を使用して、相同組み換えを介して酵母染色体に直接導入されてもよい。
【0050】
別個の融合タンパク質をコードするプラスミドは、HRt−IP相互作用のアッセイを実施するため、1つ以上のレポーター遺伝子を含有する単宿主細胞(例えば、半数体酵母菌)に同時形質転換により導入できる。あるいは、2つの融合タンパク質は、交配(例えば、酵母菌との)又は細胞融合(例えば、哺乳類の細胞の)によって単細胞に導入される。交配型アッセイにおいて、結合ドメイン融合発現作成物と活性化ドメイン融合発現作成物によりそれぞれ形質転換された反対の交配型の半数体酵母菌の接合は、両方の作成物を同じ二倍体細胞内に送達する。酵母菌株の交配型は、HO遺伝子を用いる形質転換により操作されてもよい。
【0051】
一つの態様において、2種類の異なる宿主細胞、株型a及びαの酵母サッカロマイセス・セレヴィシエを使用する、酵母相互作用交配アッセイが利用される。宿主細胞の1つのセット、例えば、株細胞は、GAL4のような転写活性化因子のDNA結合ドメインを有するHRtヌクレオチド配列の融合を含有する。この宿主細胞のセットで発現されるハイブリッドタンパク質は、レポーター遺伝子のDNA結合部位を認識することができる。酵母宿主細胞の第2のセット、例えば、α株合図は、転写活性化因子の活性化ドメインに融合している、表1で提供されたデータにより同定されるヌクレオチド配列を含有する。一つの実施形態において、融合タンパク質作成物は、プラスミドのセットとして宿主細胞に導入される。
【0052】
バクテリオファージベクターは、DNA結合ドメイン及び/又は活性化ドメイン融合タンパク質を発現するために使用されてもよい。ライブラリーは、一般にプラスミドベクターよりもバクテリオファージベクターからより素早く、より容易に調製できる。
【0053】
レポーター遺伝子には、例えば、URA3、HIS3、lacZ、MEL1、GFP、ルシフェラーゼ、LEU2、LYS2、ADE2、TRP1、CAN1、CYH2、GUS、CUP1、又はCATが挙げられる。LEU2、LYS2、ADE2及びTRP1の発現は、特異的に定義された培地における増殖により検出され、GUS、lacZ、MEL1及びCATは、周知の酵素アッセイによりモニタリングすることができ、CAN1及びCYH2は、カナバニン及びシクロヘキシミドの存在下での選択により検出される。GFPの自然蛍光が検出される。本開示に照らしてみると、別の実施形態において、レポーター遺伝子の転写は、当業者に既知の結合複製アッセイにより検出される。別の実施形態において、レポーター遺伝子の発現は、免疫アッセイにより検出される。レポーター遺伝子lacZの活性は、X−gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−α−D−ガラクトシド)のような検出可能なシグナルを測定することによりモニタリングされる。
【0054】
転写活性化因子ドメイン融合タンパク質の非存在下でのDNA結合ドメイン融合タンパク質による転写活性化で生じる偽陽性は、負の淘汰により防止又は低減される。
【0055】
本発明の一つの実施形態において、相互作用パートナーの対をコードするDNA配列は、それぞれ個別の反応における増幅により単離される。増幅は、DNA結合ドメインハイブリッド又は活性化ドメインハイブリッドのいずれかに特異的なオリゴヌクレオチドプライマーの対を使用する、当業者に既知のポリメラーゼ連鎖反応によって実施される。Q−βレプリカーゼなどを使用するリガーゼ連鎖反応が挙げられるが、それらには限定されない、当該技術分野において既知の他の増幅法が使用できる。
【0056】
デュアルハイブリッドスクリーンIIパッケージBスクリーニング(DUALhybrid Screen II Package B Screening)
デュアルシステムズ・バイオテック社(Dualsystems Biotech AG)(スイス、チューリッヒ(Zurich)から入手可能なデュアルハイブリッドスクリーンIIパッケージBシステム(DUALhybrid Screen II Package B System)が、ヒトケラチノサイトにおけるHRの相互作用パートナーを同定するために使用された。このスクリーニング法の完全な解説は、デュアルシステムズ・バイオテック(Dualsystems Biotech)から入手することができ、info@dualsystems.comへ電子メールにより依頼を送るか、又はインターネットhttp://www.dualsystems.comを介して入手することができる。このスクリーニング法は、一般に、餌ベクターを作成し、検証する工程、大規模ライブラリーを形質転換し、陽性クローンを選択する工程、陽性クローンを単離し、分析を限定する工程、餌依存性のためにクローンを再形質転換し、試験する工程、及び餌依存性クローンの配列決定する工程を含む。正確なベクターライブラリー(pACT2)の情報、並びに利用される完全なヌクレオチド配列は、クローンテック(Clontech)のウエブサイトhttp://www.clontech.comで入手可能である。
【0057】
HR−IP複合体の精製
HR−IP複合体は、カラム・クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和、ゲル排除、逆相高圧、高速タンパク質液体など)、分画遠心分離、溶解度の差が挙げられるが、それらには限定されない、当該技術分野において既知の標準的方法によるか、又はタンパク質複合体若しくはタンパク質−核酸複合体の精製に使用される標準的技術により、複合体を発現している天然供給源又は組み換え宿主細胞から単離及び精製されてもよい。相互作用タンパク質のアミノ酸配列は、それをコードしたキメラ遺伝子の核酸配列から差し引くことができる。その結果、タンパク質又はその誘導体は、当該技術分野において既知の標準的化学又は組み換え方法によって合成できる。
【0058】
第3態様:HR−IPの作用物質及び/又は拮抗物質化合物を含む製剤及び製品、並びにその投与
本発明のさらに別の態様において、無毛タンパク質相互作用複合体に対して作用物質及び/又は拮抗物質活性を示している化合物は、哺乳類の皮膚に1つ以上の物質的な美化及び/又は改善利益を送り届ける組成物又は製品に配合されてもよい。本発明の方法で同定される拮抗物質活性物質又は作用物質活性物質の組成物中の濃度は、飽和溶液までの広い範囲にわたって変わってもよく、好ましくは0.01重量%〜99重量%である。有効的に適用される最大量は、活性物質が皮膚に浸透する速度により限定される。一般に有効量は、皮膚1平方センチメートル当たり100μg〜3000μgの範囲である。組成物は、哺乳類の皮膚の美化及び/又は改善の知覚される効果を達成するために、2週間から6か月までの間に、1日1回若しくは2回、又はさらにより頻繁に適用されてもよい。
【0059】
組成物は、あらゆる都合のよい方法で局所的に投与されてもよい。皮膚に局所的に適用できる局所適用組成物は、溶液、油、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、シャンプー、リーブオンリンスアウトヘアコンディショナー、ミルク、クレンザー、モイスチャライザー、スプレー、皮膚パッチなどの形態であってもよい。組成物は、皮膚上に塗布されるために適合されている、非毒性の皮膚科学的に許容可能なビヒクル又は担体を含んでもよい。適したビヒクルの例は、活性化合物を有効に送達できるアセトン、アルコール類、又はクリーム、ローション若しくはゲルである。加えて、製剤の有効性を更に増強するために浸透増強剤がビヒクルに添加されてもよい。
【0060】
本発明の拮抗物質活性又は作用物質活性化合物含有組成物及び製品は、物質的な美化及び/又は改善利益を送り届けることが望ましい哺乳類、特にヒトの皮膚の領域に適用されるべきである。例えば、女性は、HR−IP作用物質含有組成物を、顔、腕、首又は物質的な美化及び/又は改善利益が望ましい皮膚の他のあらゆる領域に適用することを選択する可能性がある。同様に、男性は、そのような組成物を、処置が必要な領域又は処置が望ましい領域に適用することにより、皮膚の健康及び活力を増加する可能性がある。本明細書上記で定義されたあらゆる物質的な美化及び/又は改善利益が知覚されるとき、哺乳類の皮膚の美化及び/又は改善が示される。
【0061】
当業者は、選択される拮抗物質活性物質又は作用物質活性物質、得られる組成物の意図される使用、及び配合者の要求及び/若しくは能力に応じて、過度の実験をすることなく、上記で記載された組成物に配合するために適切な補助成分及び量を選択することができるであろう。事実、本発明の製品及び製剤を組み合わせた系統的な使用は、それらが適用される哺乳類の皮膚、特にヒトの皮膚を美しくし、その状態を改善する。本発明のこの態様によれば、前記製品及び製剤は、本発明の実施者の特定の要求及び/又は能力、並びにそれらの使用が求められる目的に応じて、種々の形状及び形態をとる。どのような場合でも、本発明によるこの組成物の使用は、小じわ及びしわの顕著な低減をもたらし、並びに哺乳類、特にヒトの皮膚全体の外観に改善をもたらすと考えられる。
【0062】
更に、本発明の製品及び製剤に組み込まれる拮抗物質活性及び/又は作用物質活性化合物の量及び/若しくは比率は、主題製品及び/又は製剤の使用が望まれる目的に左右される。それにもかかわらず、本発明の一つの態様では、本明細書で開示される製品及び製剤は、約0.0001%〜約10%、好ましくは0.05%〜約10%、より好ましくは約0.1%〜約5%、最も好ましくは約0.5%〜約3%の拮抗物質活性又は作用物質活性化合物のいずれかを含む。本発明のさらに別の態様では、本明細書で開示される製品及び製剤は、拮抗物質活性又は作用物質活性化合物の両方の組み合わせを含む。そのような場合、本製品及び製剤は、約0.05%〜20%、好ましくは約0.1%〜約3%の拮抗物質活性化合物と、約0.01%〜約5%、好ましくは約0.05%〜約1%の作用物質活性化合物を含む。
【0063】
本発明の別の態様によると、本発明の拮抗物質活性又は作用物質活性化合物を含むパーソナルケア製品が開示される。適しているが、非限定的製品の形態には、エマルション、ゲル、ローション、クリーム、軟膏、ムース、スプレー、ミスト、スティック、粉末、拭き取り用品及びこれらの組み合わせが挙げられる。拮抗物質活性又は作用物質活性化合物を含む適したパーソナルケア製品には、ハンドソープ、手の除菌剤、身体洗浄剤、口腔洗浄剤、練り歯磨き、シャワーゲル、シャンプー、ヘアコンディショナー、ハンド及び/又はボディローション、顔用ローション、顔用クリーム、ファンデーション、リップスティック、口紅、防臭剤、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、当然のことながらそれらには限定されない。本発明のなおさらに別の態様において、本発明の拮抗物質活性又は作用物質活性化合物は、1つ以上の家庭用ケア製品に組み込まれる。事実、本発明の目的に適した家庭用品ケア製品には、硬質表面クリーナー、消臭剤、布地ケア組成物、布地洗浄組成物、手洗い用食器洗剤、自動食器洗い用洗剤、フロアケア組成物、台所用クリーナー又は消毒剤、浴室用クリーナー又は消毒剤、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、それらには限定されない。
【0064】
本発明の別の態様において、本発明の拮抗物質活性又は作用物質活性化合物は、単独及び/又は組み合わせの両方でスキンケア製品に組み込まれる。本発明の一つの態様において、スキンケア製品は、哺乳類の皮膚の望ましい領域への本化合物の安全な移動を促進するために、皮膚科学的に許容可能な担体を組み込む。本発明の別の態様において、本発明のスキンケア製品は、特定の補助成分を含む。前記補助剤には、抗菌及び抗カビ活性物質、界面活性剤、剥離活性物質、抗ニキビ活性物質、抗しわ活性物質、抗皮膚萎縮活性物質、酸化防止剤、ラジカルスカベンジャー、キレート剤、フラボノイド、抗炎症剤、抗セルライト剤、局所麻酔剤、日焼け活性物質、日焼け止め活性物質、コンディショニング剤、増粘剤、粘着性除去剤、賦香剤、皮膚感覚剤、制汗剤、及びこれらの混合物が挙げられるが、当然のことながらそれらには限定されない。事実、前述されたそれぞれの補助成分の詳細な説明及び例が、プロクター・アンド・ギャンブル社(Procter & Gamble Company)(オハイオ州シンシナティ(Cincinnati))に譲渡された米国特許第6,294,186号に記載されており、これは参考として本明細書に組み込まれる。本発明の別の態様において、本明細書で開示される化合物は、織物又は不織拭き取り用品形態のスキンケア製品、特にプロクター・アンド・ギャンブル社(Procter and Gamble Company)(オハイオ州シンシナティ(Cincinnati))によって販売されるような製品に組み込まれる。本発明のさらに別の態様において、本明細書で開示される拮抗物質活性又は作用物質活性化合物は、ローション、クリーム、ゲル及び軟膏、特にプロクター・アンド・ギャンブル社(Procter and Gamble Company)(オハイオ州シンシナティ(Cincinnati))によって販売されるものが挙げられるが、これらに限定されない局所用スキンケア製品に組み込まれる。事実、本発明の拮抗物資活性又は作用物質活性化合物が組み込まれてもよい適したスキンケア製品の明確な形態は、前記製品の配合者の要求及び/又は能力に左右される。
【0065】
化合物、組成物及び製品の投与
本発明のさらに別の態様において、本明細書で開示されている拮抗物質活性又は作用物質活性化合物は、哺乳類、特にヒトの皮膚にへの投与のための組成物及び/又は製品に配合される。本発明の一つの態様において、本明細書で開示されている局所用製剤は、それらが適用される哺乳類の皮膚の外観を向上させるために適合された、安全且つ有効量の美化及び/又は改善剤、並びに他の成分を含む。
【0066】
「安全かつ有効量」とは、化合物又は組成物の組み込まれた量が、皮膚の外観を顕著に改善するために十分多いが、皮膚の外観及び美しさを実際に低減するかもしれない副作用を抑えるために十分に少ないことが意図される。事実、本発明の化合物及び/又は組成物に用いられる剤の安全且つ有効量は、下記の要因、処置が求められる皮膚の性質、処置が求められる皮膚の年齢及び物理的状態、現在のあらゆる皮膚状態の重症度、意図される処置期間、あらゆる併用療法の存在及び特性、使用が求められる特定の剤、利用される特定の賦形剤、並びに本化合物及び組成物の配合者の要求及び/又は能力の1つ以上に応じて変わる。それにもかかわらず、本組成物に組み込まれる剤の、好ましくは本明細書で開示されている拮抗物質活性/又は作用物質活性化合物の適切な量は、動物モデルによる日常的な試験によって決定されてもよい。事実、このようなモデルの1つには、哺乳類の無処置の加齢ネズミモデル、特にヒトの皮膚が挙げられるが、当然のことながらそれらには限定されない。
【0067】
本発明の拮抗物質活性又は作用物質活性化合物は、全身的に、例えば、経口的に及び/又は皮下注射若しくは静脈注射を含む非経口的に、及び/又は経鼻的に投与されてよく、しかし特に経皮的に投与されてもよい。本発明の一つの態様において、本明細書で開示されている拮抗物質活性又は作用物質活性化合物は、処置が求められている哺乳類の皮膚に単位剤形で直接適用される。単位剤形に組み込まれる本化合物の明確な量は、本明細書上記で開示されている1つ以上の要因、特に本化合物の配合者の要求及び/又は能力、並びに処置が望まれる哺乳類の皮膚の性質に左右される。
【0068】
本発明のさらに別の態様において、本化合物及び組成物で用いられる剤形には、鼻腔、経皮、直腸、舌下、経口及びこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の別の態様において、本発明で用いるのに適した1つ以上の担体が、本化合物及び組成物の、特に注射又は外科的な埋め込みによる送達を達成するために、使用されてもよい。前記担体には、ヒドロゲル、制御又は持続放出性デバイス、ポリ乳酸、コラーゲンマトリックス及びこれらの組み合わせが挙げられるが、当然のことながらそれらには限定されない。本発明の別の態様において、埋め込みデバイスは、本明細書で開示されている拮抗物質活性若しくは作用物質活性化合物、及び/又は製剤でコーティングされている。本発明の別の態様において、本明細書で開示されている拮抗物質活性若しくは作用物質活性化合物、及び/又は製剤は、緩衝剤に溶解され、埋め込みデバイスの多孔質末端部にコーティングされるためコラーゲンゲルと混合される。
【0069】
事実、本発明のさらなる態様において、本明細書で開示されている化合物は経口投与される。この点において、本化合物及び製剤の投与に適した経口形態には、リポソーム、脂質エマルション、タンパク質ケージ、他の賦形剤及びこれらの組み合わせが挙げられるが、当然のことながらこれらには限定されない。本明細書で用語「賦形剤」を使用することは、当業者に既知の生理学的に不活性であり、薬理学的に不活性なあらゆる物質を包含することが意図される。本発明に用いるのに適した賦形剤は、使用が求められる特定の拮抗物質活性又は作用物質活性成分、並びに適用が望まれる哺乳類の皮膚基質の物理的及び化学的特性と適合性がある。本発明の一つの態様において、本明細書に用いるのに適した賦形剤には、ポリマー、樹脂、可塑剤、充填剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、溶媒、共溶媒、緩衝系、界面活性剤、防腐剤、甘味剤、着香料、芳香剤、製薬等級染料、顔料及びこれらの組み合わせが挙げられるが、それらには限定されない。
【0070】
製造品
本発明の別の態様において、本発明の拮抗物質活性若しくは作用物質活性物質化合物及び/又は上記の製品の1つ以上を含む製造品は、パーソナルケア、スキンケア、及び家庭用品ケア用途が意図される。本発明の製造品は、消費者用の一組の使用説明とともに容器又はディスペンサー内に包装されてもよい、本明細書上記で記載された1つ以上の製品を包含する。本発明の製造品は、典型的には、(a)容器又はディスペンサー、(b)製品、及び(c)前記製品を適切な基質に適用して物質的な美化及び改善利益を哺乳類の皮膚に送り届けるための一組の使用説明を含む。本発明の製造品に適した容器及び/又はディスペンサーには、PETボトル及びタブ、フローラップ・ポーチ、フォーミングディスペンサー、スプレーディスペンサー、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、それらには限定されない。繰り返すが、本発明の製造品は、容器に関連付けられた一組の使用説明を更に含む。「関連付けられた」とは、製造品の消費者に一組の使用説明を伝えるため、使用説明が、容器若しくはディスペンサー自体の上に直接印刷されているか、又はパンフレット、印刷広告、電子広告及び/若しくは口頭伝達が挙げられるが、それらには限定されない異なる方式で提示されているかのいずれかであることを意味する。
【0071】
一組の使用説明は、典型的には、本発明の拮抗物質活性又は作用物質活性化合物を処置が求められる適した基質上に適用する製品の使用に関連する使用説明を含む。一組の使用説明は、処置された基質から化合物をすすいだり、又は他の何らかの方法で除去することなく、本化合物を処置された基質上に維持させる使用説明を更に含んでもよい。それにもかかわらず、本発明の製造品と共に含まれる明確な使用説明は、特定の化合物及び使用説明を含むことが望ましい製品、並びに製品の適用が意図される基質により左右される。本発明の別の態様において、本製造品に含まれる使用説明は、本明細書で開示され、特許請求されている方法を反映する。
【0072】
第4態様:化合物、組成物及び製品の使用方法
本発明の別の態様において、1つ以上の物質的な美化及び/又は改善利益を哺乳類の皮膚に送り届ける、特許請求されている化合物、組成物及び製品の使用方法が開示されている。本発明の一つの態様において、哺乳類の皮膚を改善する及び/又は美しくする方法が開示されている。前記方法は、1つ以上の作用物質及び/又は拮抗物質化合物を改善及び/又は美化が望ましい哺乳類の皮膚の一部分に送達する工程、及び任意に前記化合物をそれらの送達の後に除去する工程(局所的に投与された場合)を含む。本発明の別の態様において、本発明の作用物質及び/又は拮抗物質化合物を含む組成物及び/又は製品を投与する方法が開示されている。前記方法は、前記組成物又は製品を美化及び/又は改善が望ましい哺乳類の皮膚の一部分に送達する工程、及び任意に前記組成物又は製品をその送達の後に除去する工程(局所的に投与された場合)を含む。事実、本明細書で開示されている方法の系統的な使用は、1つ以上の物質的な美化及び/又は改善利益を、本明細書で開示されている方法が使用される哺乳類、特にヒトの皮膚に送り届ける。
【0073】
本発明のさらに別の態様において、本明細書で記載されている化合物、組成物及び/又は製品を使用した、哺乳類の皮膚の表皮を処置する方法が開示されている。前記方法は、一般に、本明細書で開示されている化合物、組成物及び/又は製品を美化及び/又は改善が望ましい哺乳類の皮膚の表皮の一部分に投与する工程、及び任意に前記化合物、組成物及び/又は製品をそれらの送達の後に除去する工程(局所的に投与された場合)を含む。
【0074】
本発明のさらなる別の態様において、表皮か又はそうでないかに関わらず、ヒトスフィンゴ脂質活性化因子タンパク質を使用した、哺乳類の皮膚を美化及び/又は改善する方法が開示されている。前記方法は、ヒトスフィンゴ脂質活性化因子タンパク質を美化及び/又は改善が望ましい哺乳類の皮膚の領域に送達する工程、及び任意に前記化合物をその送達の後で除去する工程(局所投与の場合)を含む。本発明者たちは、以前に、ジーンバンク(GeneBank)受け入れ番号M60255に関連するヒトスフィンゴ脂質活性化因子タンパク質が、育毛を阻害及び/又は刺激する無毛タンパク質の相互作用パートナーであることを開示していることに留意するべきである。しかし、本明細書以前には、ヒトスフィンゴ脂質活性化因子タンパク質が、哺乳類の皮膚の美化及び/又は改善に有用であることが開示されてはいない。
【0075】
本発明のさらに別の態様によると、本発明の化合物、組成物及び/又は製品を使用する体重増加及び/又は減少を制御する方法が開示されている。また前記方法も、一般に、本化合物、組成物及び/又は製品を体重制御が望ましい哺乳類の領域に送達する工程、及び任意に前記化合物、組成物及び/又は製品をそれらの送達の後に除去する工程(局所的に投与された場合)を含む。理論に束縛されるものではないが、本発明の無毛タンパク質相互作用複合体、特にLXRが、哺乳類の体重増加及び減少に影響を及ぼすと考えられている。この考えは、無毛タンパク質が脂肪でも発現し、それ自体の発現が、高血糖症の進展の間に下方制御されることを示す、発表された文献に基づいている。ナドラー(Nadler)ら(2000年)、脂肪生成遺伝子の発現は肥満症及び真性糖尿病で減少する(The Expression of adipogenic genes is decreased in obesity and diabetes mellitus)、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci(USA))97、11371〜11376を参照すること。更に、他の文献は、LXRが脂肪で豊富に発現し、脂肪生成の制御に関係していることを開示している。事実、LXRは、ステロイド類調節因子エレメント結合タンパク質(SREベースペア(BP))を上方制御する能力を通して、脂質生成酵素(アセチルCoAカルボキシラーゼ、脂肪酸シンセターゼ、ステアロイル−CoAデサチュラーゼなどを含む)の上方制御を媒介する。LXRは、また、リポタンパク質リパーゼ発現を上方制御することが開示されている。シュルツJR(Schultz JR)ら、脂質生成の制御におけるLXRの役割(Role of LXRs in control of Lipogenesis)、チューラリック社(Tularik Inc.)、米国カリフォルニア州南サンフランシスコ(South San Francisco)94080も参照すること。
【0076】
他の出版物は、内因性肝臓X受容体(LXR)配位子としてのオキシステロールの発見、続くマウスにおける遺伝子ターゲティング研究が、LXRがコレステロール代謝で中心的な役割を果たすという強力な証拠を提供したことを開示している。ここで、T0314407及びT0901317で表される合成の非ステロイド性LXR選択的作用物質シリーズの同定は、LXRの新規の生理学的な役割を明らかにした。T0901317のマウス及びハムスターへの経口投与は、LXRが主要な脂肪酸生合成遺伝子(脂質生成)の協調的発現を活性化し、両方の種で血漿トリグリセリドとリン脂質の濃度を増加することを示した。細胞培養及び動物における補足的に研究は、血漿脂質の増加は、ステロール調節因子エレメント結合タンパク質1(SREベースペア(BP)−1)脂質生成プログラムのLXR媒介誘導を介して起こることを示唆した。スタルニッヒ(Stulnig)ら、2002年、肝臓及び脂肪組織における遺伝子発現プロフィールにより明らかになった肝臓X受容体の新規の役割(Novel roles of liver X receptors exposed by gene expression profiling in liver and adipose tissue)、分子生理学(Mol Pharmacol.)62、1299〜1305、スタルニッヒ(Stulnig)ら、2002年、肝臓X受容体は11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ型1発現及び活性を下方制御する(Liver X receptors downregulate 11beta-hydroxysteroid dehydrogenase type 1 expression and activity)、糖尿病(Diabetes)51、2426〜2433、ローズ(Ross)ら、2002年、脂肪生成中のマイクロアレイ分析(Microarray analyses during adipogenesis):脂肪生成に対するWnt信号伝達の作用及び脂肪細胞代謝における肝臓X受容体αの役割の理解(understanding the effects of Wnt signaling on adipogenesis and the roles of liver X receptor alpha in adipocyte metabolism)、分子細胞生物学(Mol Cell Biol)22、5989〜5999、マツザカ(Matsuzaka)ら、2002年、SREベースペア(BP)により調節される脂質生成酵素としての哺乳類脂肪酸アシル−CoAエロンガーゼのクローニング及び特徴決定(Cloning and characterization of a mammalian fatty acyl-CoA elongase as a lipogenic enzyme regulated by SREベースペア(BP)s)、脂質研究ジャーナル(J Lipid Res)43、911〜920、チャン(Zhang)ら、2001年、オキシステロール受容体、LXRα及びLXRβによるリポタンパク質リパーゼの調節(Regulation of lipoprotein lipase by the oxysterol receptors,LXRalpha and LXRbeta)、生物化学ジャーナル(J Biol Chem)276、43018〜43024、ヨシカワ(Yoshikawa)ら、2001年、ステロール調節エレメント結合タンパク質1c遺伝子プロモーターの活性化因子としての肝臓X受容体−レチノイドX受容体の同定(Identification of liver X receptor-retinoid X receptor as an activator of the sterol regulatory element-binding protein 1c gene promoter)、分子細胞生物学(Mol Cell Biol)21、2991〜3000、ラフィット(Laffitte)ら、2001年、マクロファージ及び脂肪細胞におけるアポリポタンパク質E遺伝子のLXR制御脂質誘導性発現(LXRs control lipid-inducible expression of the apolipoprotein E gene in macrophages and adipocytes)、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci U S A)98、507〜512を参照すること。
【0077】
本発明のさらに別の態様において、本発明の化合物、組成物及び製品を使用した糖尿病の治療方法が開示されている。前記方法は、本発明の化合物、組成物及び製品を、糖尿病の治療の必要な哺乳動物に投与する工程、及び任意に前記化合物、組成物及び/又は製品をそれらの送達の後で除去する工程(局所的に投与された場合)を含む。
【0078】
調製例
実施例1−無毛タンパク質の相互作用パートナー(IP)
本実施例は、酵母ツーハイブリッド技術を使用して、無毛タンパク質(HR)相互作用パートナー(HR−IP)を提供する。HRタンパク質(aa残基490〜1182、以降HRt)の半分のC末端に対応するHRcDNAが、酵母においてLex A DNA BD−HRtを発現するように、デュアルハイブリッド(DUALhybrid)餌部ベクターにクローニングされる。BD−HRtを発現している酵母菌は、活性化ドメイン(AD)ベクターにおけるヒトケラチノサイトcDNAライブラリーにより形質転換される。本発明で提供される得られた相互作用パートナーは、表1で提示されており、これは、細胞周期、細胞分化、転写、核移行、シグナル変換、細胞一体性、及びミトコンドリア機構に関わる分子を含む。従って、HRt(及びHR)は、良好に結合された多機能タンパク質であると思われる。
【0079】
材料
マウス初期成長期cDNAライブラリーは、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)の社員により標準的技術を使用して作成される。大腸菌発現プラスミドpET32a(カタログ番号69015−3、ノバゲン(Novagen)のpET原核発現システムの構成成分プラスミド)及び大腸菌株BL21(DE3)適応細胞(カタログ番号69387−3)は、ノバゲン(Novagen)(ウイスコンシン州マディソン(Madison))から購入される。特注設計オリゴヌクレオチドは、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)の社員により標準的技術を使用して合成されるか、又はBDバイオサイエンス・クローンテック(Biosciences Clontech)(カリフォルニア州パロアルト(PaloAlto))により作成される。DNA配列決定は、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)の社員により標準的技術を使用して行われるか、又はセクライト社(Seqwright Inc)(テキサス州ヒューストン(Houston))により作成される。DNA配列分析及びデータベースのホモロジー検索は、セクウェブ(SeqWeb)バージョン1.2を(ウイスコンシンパッケージ(Wisconsin Package)バージョン10.1と併せて)使用して、実施される。種々の微生物学的培地が、BDバイオサイエンス・クローンテック(Biosciences Clontech)(カリフォルニア州パロアルト(PaloAlto))及びDIFCOベクトン・ディキンソン・マイクロバイオロジー・システムズ(Becton Dickinson Microbiology Systems)(メリーランド州スパークス(Sparks))から購入される。大腸菌及び酵母の培養用の予め作られた種々の培地プレートは、ギブソン・ラボラトリーズ(Gibson Laboratories)(ケンタッキー州レキシントン(Lexington))から購入される。マッチメーカー・ツーハイブリッドシステム3(Matchmaker two-hybrid System 3)(カタログ番号K1612−1)、pACT2ベクターにおける形質転換済ヒト脳マッチメーカーcDNAライブラリー(pre-transformed human brain Matchmaker cDNA library in pACT2 vector)(カタログ番号HY4004AH、ロット番号9070550)、アドバンテージ2PCRキット(Advantage 2 PCR kit)(カタログ番号K1910−1)、及びマッチメーカーAD LD−挿入スクリーニング増幅セット(Matchmaker AD LD-insert screening amplimer sets)(カタログ番号9103−1)は、BDバイオサイエンス・クローンテック(Biosciences Clontech)(カリフォルニア州パロアルト(PaloAlto))から購入される。雄マウス(C3H系統)は、ハーラン・ラボ(Harlan Labs)(インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis)から購入される。NAIRローション脱毛剤(4マイナス処方)は、地元のウオールグリーン(Walgreen)の店から購入される。ドルゲル・ゲル(Dolgel Gel)(イブプロフェン5%)は、ライフ・エクステンション・インターナショナル・センター社(Life Extension International Center Inc.)(フロリダ州 コーラルゲーブルズ(Coral Gables))から購入される。制限酵素、T4DNAリガーゼ、分子量マーカー、アガロース、及び他の常用の分子生物学試薬は、ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)(メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg))から購入される。
【0080】
マウス無毛(HR)cDNAのクローニング及び特徴決定
オリゴヌクレオチドは、発表されたマウスHRの配列(「マウスの無毛遺伝子の構造及び発現(Structure and Expression of the Hairless Gene of Mice)」、ベゴナ(Begona)、M.ら、米国科学アカデミー紀要(J.Proc.Natl.Acad.Sci,USA)91:7717〜7721、1994年)(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号Z32675)に基づいて、マウスHRcDNAの所望の部分のPCR増幅のために設計される。オリゴヌクレオチドは、また、後に続くPCR産物の操作のため、Eco RI、Xba I、Not I及びBam HI制限酵素のための制限酵素認識部位を含有するように設計される。特に、Eco RI及びNot Iのための制限酵素部位(下記で示されているオリゴヌクレオチドで下線が引かれイタリック体になっているものに留意すること)は、後に続くクローニング及び操作に特に有用である。順方向及び逆方向オリゴヌクレオチドプライマー対5’−CCGGAA TTC GTC ACC CAG TGC CAA AGC TGT(配列番号:100)及び5’−CGG GAT CCT CTA GAG CGG CCG CTT ATT ATT TAG CTT CCT GTA ACG CCCC(配列番号:101)が、マウス初期成長期cDNAライブラリーからのHRのヌクレオチド1845〜3923に対応するHRcDNAをPCR増幅するために使用される。PCR増幅はアドバンテージ2PCRキット(Advantage 2 PCR kit)により供給される、標準PCRプロトコールを使用して実施される。PCR産物は、アガロースゲル電気泳動により分析され、予想された大きさ(約2Kb)を有することが判明している。PCR産物は、Eco RI及びNot I制限酵素で切除されている。制限産物は、ゲル精製され、挿入断片が上流配列とインフレーム融合を起こすように、pET32aのEco RI及びNot I部位に挿入される。得られるプラスミドは、指定のpET32a−HRtである。このプラスミドは、ヌクレオチド配列確認、並びに大腸菌におけるタンパク質発現の両方のために使用される。ヌクレオチド配列は、発表された配列(配列番号:102)の3つの位置における変化(ヌクレオチド位置2166、CからTへの変化は、AGCからAGTへのコドンの変化を引き起こす、ヌクレオチド位置2611、CからTへの変化は、GACからGATへのコドンの変化を引き起こす、ヌクレオチド位置2916、TからCへの変化は、CCTからCCCへのコドンの変化を引き起こす)を明らかにしている。配列番号:103のアミノ酸番号1は、HRタンパク質のC末端部のアミノ酸残基490に対応する。この切断型HR(HRt)cDNAは、HRタンパク質のC末端部のアミノ酸残基490〜1182に対応する。
【0081】
しかし、上記で引用された変化のうちのどれも、アミノ酸に変化を生じない。結局のところ、本明細書でクローニングされたHRtは、マウスHRtと同一のタンパク質産物をコードすると予測される。ジンクフィンガー領域(アミノ酸595〜620)及び3つのPESTドメインが、HRのアミノ酸部分490〜1182に存在する。PESTドメイン(12.26のスコアを有する領域522〜546、7.56のスコアを有する領域709〜722、及び21.71のスコアを有する領域729〜744)は、HR機能において重要であることが本発明者たちにより予測される。マウスHRは、ヒトHRと80%を超えて同一である。PEST配列は、多くの場合、急速なタンパク質分解の信号として役立つことが判明している。PEST配列は、構成的又は条件的な信号である。構成的とは、「それ自体」を意味し、条件的とは、「変性による」(例えば、リン酸化反応、光、配位子結合などにより誘導されるシス−トランス異性体化反応)ことを意味する。タンパク質がPEST領域を含有するかどうかを客観的に決定するため、PEST−FINDと呼ばれるコンピュータプログラムが、M.レヒスタイナー(Rechsteiner)及びS.W.ロジャーズ(Rogers)により開発されている(PEST配列及びタンパク質分解による調節(PEST Sequences and Regulation by Proteolysis)、TIBS21、1996年7月)。PC/GENE(オミガ(OMIGA))で入手できるアルゴリズムは、あらゆる順序又は組み合わせで、Pro、Glu/Asp、及びSer/Thrをそれぞれ少なくとも1個ずつ含有する12個以上のアミノ酸残基の親水性伸展として、PEST配列を定義する。またこれらには、塩基性アミノ酸残基Lys、Ala、又はHisが隣接していなければならないが、塩基性残基は、PEST配列内では許容されない。PEST−FINDは、約+50〜−50の範囲のスコアを生成する。定義によれば、スコア>0は、可能性のあるPEST領域を示すが、値>+5は、PEST領域の高い確率を示す。本明細書で言及されるPEST領域は、また、多数の潜在的なタンパク質キナーゼC及びカゼインキナーゼIIリン酸化反応部位も有する。上記で引用されたPESTスコアは、いままで文献で報告されているうちで最良のものである。
【0082】
pET32a−HRtは、また、誘導性大腸菌発現プラスミドである。タンパク質発現は、これも供給元により提供されている大腸菌発現の標準的プロトコルを使用して、研究される。タンパク質産物のために誘導される四重大腸菌BL21(DE3)/pET32a−HRtクローンから単離される総タンパク質のSDS−PAGE(10〜20%)分析は、2時間の誘導の直後でのHRt融合タンパク質の予想される大きさのタンパク質産物の高レベルの発現を明らかにしている。対照菌株大腸菌BL21(DE3)/pET32aは、大腸菌BL21(DE3)/pET32a−HRtクローンと比較して、高分子量領域においてタンパク質発現の誘導を全く示していない。この研究は、HRt挿入断片からのタンパク質産物の発現を確認する。このタンパク質産物は、非変性条件下で修復可能ではない。
【0083】
HRtのGAL4結合ドメイン(BD)酵母ツーハイブリッド(Y2H)ベクターへのクローニング
pET32a−HRtからのHRt挿入断片がEcoRI−Xho Iフラグメント(HRt挿入断片に直ぐ隣接する独自のXho I部位が存在する)として切除され、Y2H−BDベクターpGBKT7(カタログ番号K1612−B、マッチメーカーツーハイブリッドシステム3(Matchmaker two-hybrid System 3)(カタログ番号K1612−1)、BDバイオサイエンス・クローンテック(Biosciences Clontech,)、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto)の構成成分)のEco RI−Sal I部位に挿入して、pGBKT7−HRtを得て、そこでは、HRtは、GAL4 DNA BD(このプラスミドも指定されたGAL4 BD−HRtである)にインフレーム融合している。このプラスミドは、HRt−IP相互作用の作用物質及び拮抗物質について、S.セレヴィシエAH109菌株スクリーニングにおいてAD−IPと組み合わされた(実施例2及び3を参照すること)。しかし、まずIPのためにスクリーニングするため、GAL BDーHRtからのHRtが切除され、デュアルハイブリッド(DUALhybrid)餌ベクター(このプラスミドも指定されたLexA BD−HRtである)に挿入される。
【0084】
HRt相互作用のためのヒトケラチノサイトcDNAライブラリースクリーニング
pACT2ベクターにおけるクローンテック(Clontech)ヒトケラチノサイトGAL4cDNAライブラリー(複雑度2.5×106)が、HRt相互作用タンパク質をスクリーニングするために使用された。酵母ツーハイブリッド相互作用(菌株L41)のためのHIS3及びLACZレポーターを有するLeu-、Trp-酵母菌株は、最初に、Trp+表現型のためにLexA BD−HRtプラスミドにより形質転換された。得られたL41/LexA BD−HR形質転換体は、LexA BD−HRtタンパク質の発現を確実するため、またレポーター遺伝子HIS3及びLACZの自己活性化の欠如を確実にするためにスクリーニングされた。この菌株は、ケラチノサイトAD−cDNAライブラリーで形質転換され、陽性相互作用をもつクローンを選択するためにTrp-Leu-His-プレートで平板培養された。選択プレート上に現れたコロニーは、続いてX−GALプレート上でLACZ発現について試験された。合計90個のコロニーが同定された。AD−プラスミドが、90個のクローンから救出され、HRt餌依存性について再試験された。54個の隔離集団が陽性と確認された。陽性クローンは、BD−HRtと相互作用するAD−IP(相互作用パートナー)を含有すると予想される。IPを特徴決定するため、IPの配列が決定され、ヒトゲノムデータベースDNA配列分析と照合され、データベースのホモロジー検索は、セクウェブ(SeqWeb)バージョン1.2を(ウイスコンシンパッケージ(Wisconsin Package)バージョン10.1と併せて)使用して実施される。
【0085】
HRtと相互作用する幾つかのヒト相互作用パートナーは、表1で提示されているように同定されている。配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14及び配列番号:15を有するタンパク質は、新しいタンパク質であると思われる。
【0086】
【表2】

【0087】
実施例2−酵母菌株においてBD−HRt<AD−IP相互作用を破壊する化合物のスクリーニング
AH109が化合物のスクリーニングのために使用された。AH109(マッチメーカーツーハイブリッドシステム3(Matchmaker two-hybrid System 3)(カタログ番号K1612−1)、BDバイオサイエンス・クローンテック(Biosciences Clontech)、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto)の構成成分)は、Y2H相互作用のために望ましい酵母レポーター菌株である。それはADE2、HIS3、lacZ及びMEL1レポーター遺伝子を含有し、これらはそれぞれ異なるGAL4応答性プロモーターを使用する。種々のY2H組み換えプラスミドは、Y2Hシステムの供給元(BDバイオサイエンス・クローンテック(Biosciences Clontech)、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto))により提供される酢酸リチウム媒介酵母形質転換プロトコルを使用して、酵母菌株AH109に導入される。組み合わされたAD及びBDプラスミドのための形質転換体は、Leu及びTrp二重脱落培地(DDO)で増殖する能力に基づき選択される。
【0088】
AD及びBD融合タンパク質間の相互作用(Y2H相互作用)は、GAL4タンパク質のAD及びBDドメインを互いに近接させ、従って、機能性GAL4タンパク質を再構成する。これは、形質転換体がLeu、Trp、His、Ade四重脱落培地(QDO)で増殖することを可能にする。QDOでの増殖速度、並びにMEL1(α−ガラクトシダーゼ)又はlacZ(β−ガラクトシダーゼ)活性の測定は、Y2H相互作用の結合活性のほぼ定量的な測定を与える。
【0089】
Leu、TrpのDDOではなく、Leu、Trp、His、AdeのQDOにおけるAH109(BD−HRt><AD−IP)菌株の増殖抑制が、HRt−IP相互作用を破壊する化合物の初期スクリーニングとして使用される。化合物の多様なライブラリーがスクリーニングされる。650nmでの光学密度(OD650)が0.01〜0.03の新たに培養された酵母菌により播種された200μlのQDO及びDDO培地を有するマイクロタイタープレートは、種々の試験化合物で処理される。20mMの試験化合物の原液がDMSOで作成され、400μMの最終濃度で試験される。プレートは、振盪することなく25℃でインキュベートされる。OD650は、最初に、化合物の添加後に測定され、次に8〜10日間記録される。化合物が添加されていないウエル(陽性対照)は、飽和増殖(インキュベーションの3日以内に約0.7)に達することが予想される。培地のみであり、細胞が接種されていないウエルは、アッセイの全期間にわたって初期OD650値(約0.03)を維持すると予想される。このアッセイで陽性の化合物は、無関係のY2H相互作用(p53><T抗原)アッセイにおいて試験される。pGBKT7−53及びpGADT7−Tプラスミドは、p53タンパク質がT抗原と相互作用する、(HRtと)無関係のY2H相互作用を確立するために使用された。これらのプラスミドは、マッチメーカーツーハイブリッドシステム3(Matchmaker two-Hybrid system 3)(カタログ番号K1612−1、BDバイオサイエンス・クローンテック、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto))の一部である。
【0090】
実施例3−BD−HRt><AD−IP相互作用を増強するか又は破壊する化合物のスクリーニング
種々の試験化合物の存在下でのLeu、Trp、HisのTDO中で増殖するAH109(BD−HRt><AD−IP)菌株のα−ガラクトシダーゼ活性の増加又は減少は、BD−HRt><AD−IP相互作用の作用物質又は拮抗物質のスクリーニングに使用される。化合物の多様なライブラリーがスクリーニングされる。
【0091】
650nmでの光学密度(OD650)が0.05の新たに培養された酵母菌により播種されたTDO培地を有するマイクロタイタープレートは、100〜400uMで種々の試験化合物により又はビヒクル(DMSO)対照により処理される。10〜20mMの試験化合物の原液がDMSOで作成され、100〜400μMの最終濃度で試験される。細胞、TDO及び化合物(又はDMSOのみ)を含む最終アッセイ混合物は、100ulになるように調整され、DMSOの量は、2%以下に維持される。プレートは、振盪することなく25℃で3〜4日間インキュベートされる。プレートは、アッセイ緩衝剤の添加の前に、細胞の均一な懸濁を得るために短時間攪拌される。レポーター酵素(α−ガラクトシダーゼ)活性のアッセイは、100ulのアッセイ緩衝剤〔0.025Mパラ−ニトロフェニルαガラクトピラノシド(PNPG)含有酢酸塩緩衝剤(0.2M、pH4.5)〕により30℃で2〜5時間インキュベートすることにより実施される。インキュベーション時間は、所定のBD−HRt><AD−IP対のαガラクトシダーゼ活性の程度に応じて、削減又は増加できる。プレートは、細胞の均一な懸濁を得るために短時間攪拌され、650nM(OD650)refと410nm(OD410)refの両方での吸光度が測定される。OD650refは、細胞密度の参照値の役割を果たし、OD410refは、アッセイにより生成される生成物(p−ニトロフェノール)で黄色が発色する前の参照値の役割を果たす。発色のために、100ulの0.1M炭酸ナトリウム溶液が添加され、少なくとも1分間放置された後、OD410expが測定される。相対的なα−ガラクトシダーゼ活性が、下記の関係式を使用して推測される:
相対的活性=〔OD410exp−OD410ref×0.67〕/OD650ref
【0092】
このアッセイの陽性化合物は、化合物がBD−HRt><AD−IP相互作用に特異的であることを確実にするため、無関係のY2H相互作用(p53><T抗原)アッセイにおいて試験される。
【0093】
実施例4−AD−HRtとの相互作用のスクリーニング
発明者たちは、甲状腺ホルモン受容体(TR)のような特定のIPによって、BD−HRt><AD−TR構成よりもAD−HRt><BD−TR構成において相互作用がより強力であることを観察した。この観察に基づき、発明者たちは、幾つかのIPが、BD−HRt><AD−cDNAライブラリースクリーニングで検出されずにいる可能性があり、HRtのための追加のIPが、またAD−HRt><BD−cDNAライブラリースクリーニングを使用して検出できると想像する。
【0094】
BD−HRt><AD−cDNAライブラリースクリーニングで見逃した1つの候補は、ビタミンD受容体(VDR)である。発明者たちは、HRをコードする遺伝子における突然変異と同様に、哺乳類のVDR遺伝子における突然変異が、ヒト及びマウスの両方に先天性の脱毛症を生じる(参照:皮膚科学におけるビタミンD(Vitamin D in Dermatology)、クラグバレー(Kragballe)K.編、マルセル・デッカー社(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク、バーゼル出版、2000年)という報告を含む、ビタミンDの皮膚及び毛髪に対する重要性に基づいて、ビタミンD受容体(VDR)は、HRtのためのIPである可能性があると推測した。この興味深い可能性を試験するため、AD−VDR及びBD−VDR作成物は、マウスVDR cDNA(ジーンバンク(GenBank)アカウント番号BC006716)を使用して作成され、BD−HRt及びAD−HRtそれぞれとの相互作用が試験された。予測されたように、BD−VDRは、AD−HRtと活発に相互作用した。更に、実施例3で記載されたアッセイを使用して、発明者たちは、μM以下の濃度で試験された、VDRリガンド25−ヒドロキシコレカルシフェロール(25HC)(シグマ(Sigma)、H−4014)1α、25−ジヒドロキシコレカルシフェロール(25DHC)(シグマ、D−1530)によって、相互作用が3倍を超えて増強されたことを示すことができた。興味深いことに、発明者たちは、また、BD−VDRがAD−TRβと相互作用することを見出し、そしてこの相互作用は、25HCにより約2倍増強され、25DHCでは変わらなかった。
【0095】
引用される全ての文献は、その関連部分において参考として本明細書に組み込まれるが、いずれの文献の引用も、本発明に関する先行技術であると解釈されるべきではない。
【0096】
本発明の特定の実施形態が例示され記載されたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正が実施されうることが、当業者には明らかであろう。従って、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うことが意図される。
【0097】
本発明の特定の実施形態が例示され記載されたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正が実施されうることが、当業者には明らかであろう。従って、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うことが意図される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスHRtタンパク質−ヒト相互作用パートナータンパク質複合体を含むことを特徴とする組成物であって、ヒト相互作用パートナータンパク質が、ホモサピエンスケラチン5、ホモサピエンスに遍在する受容体、活性化STAT−1のホモサピエンスタンパク質阻害物質、ストローマ抗原2のホモサピエンス類似物、ホモサピエンスヌクレオポリン160Kda、ホモサピエンスレチノイン酸受容体γ−1、ホモサピエンス甲状腺ホルモン受容体α、ホモサピエンスアネキシンA1、ホモサピエンスHICタンパク質アイソフォームp32及びアイソフォーム40、ホモサピエンスインスリン様増殖因子結合ドメインタンパク質6、ホモサピエンス内膜タンパク質ミトコンドリア、ホモサピエンス小胞体チオレドキシンスーパーファミリーメンバー、活性化STAT−3のホモサピエンスタンパク質阻害物質、ホモサピエンスDEAD Boxポリペプチド3、ホモサピエンスDpy−30様タンパク質、ハツカネズミビタミンD受容体、及びこれらの組み合わせから選択される分子を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
マウスHRtタンパク質−ヒト相互作用パートナータンパク質複合体を含むことを特徴とする組成物であって、前記ヒト相互作用パートナーが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16及びこれらの組み合わせから選択される核酸でコードされている、組成物。
【請求項3】
請求項1の組成物に対する作用物質又は拮抗物質活性について試験化合物をアッセイする方法であって、
a)試験化合物の不在下でマウスHRtタンパク質とヒト相互作用パートナータンパク質との間の相互作用のレベルを測定すること、
b)試験化合物の存在下でマウスHRtタンパク質とヒト相互作用パートナータンパク質との間の相互作用のレベルを測定すること、を含むことを特徴とし、
工程b)で測定されたレベルが工程a)のレベルより大きい場合は、試験化合物は作用物質活性を有し、工程b)で測定されたレベルが工程a)のレベルより小さい場合は、試験化合物は拮抗物質活性を有する、方法。
【請求項4】
請求項2の組成物に対する作用物質又は拮抗物質活性について試験化合物をアッセイする方法であって、
a)試験化合物の不在下でマウスHRtタンパク質とヒト相互作用パートナータンパク質との間の相互作用のレベルを測定すること、
b)試験化合物の存在下でマウスHRtタンパク質とヒト相互作用パートナータンパク質との間の相互作用のレベルを測定すること、を含むことを特徴とし、
工程b)で測定されたレベルが工程a)のレベルより大きい場合は、試験化合物は作用物質活性を有し、工程b)で測定されたレベルが工程a)のレベルより小さい場合は、試験化合物は拮抗物質活性を有する、方法。
【請求項5】
哺乳類の皮膚の美化及び/又は改善を、その必要性のある対象で行う方法であって、請求項1の組成物に対して拮抗物質活性を有する化合物を、治療を必要とする哺乳類の皮膚の一部分に適用する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
哺乳類の皮膚の美化及び/又は改善をその必要性のある対象で行う方法であって、請求項1の組成物に対して作用物質活性を有する化合物を、治療を必要とする哺乳類の皮膚の一部分に適用する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
哺乳類の皮膚の美化及び/又は改善をその必要性のある対象で行う方法であって、請求項2の組成物に対して拮抗物質活性を有する化合物を、治療を必要とする哺乳類の皮膚の一部分に適用する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
哺乳類の皮膚の美化及び/又は改善をその必要性のある対象で行う方法であって、請求項2の組成物に対して作用物質活性を有する化合物を、治療を必要とする哺乳類の皮膚の一部分に適用する工程を含むことを特徴とする方法。


【公表番号】特表2007−516236(P2007−516236A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539724(P2006−539724)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/037263
【国際公開番号】WO2005/050201
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】