説明

唇用化粧料

【課題】塗布直後に二次付着レス効果を発現し、つやがよく、安定性も良好な唇用化粧料を提供する。
【解決手段】(a)グリセリンの付加モル数が4〜10であり、イソステアリン酸残基の数が1〜4個であるイソステアリン酸ポリグリセリル 5〜20質量%と、(b)メチルフェニルシリコーン 20〜60質量%と、(c)ペンタエリスリトールエステル 5〜45質量%を含み、(b)と(c)の合計配合量を30〜70質量%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は唇用化粧料に関し、より詳しくは、塗布後ただちに優れた二次付着レス性を有し、しかもつやの持続性に優れたスティック固形状の唇用化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の唇用化粧料は、口紅を口唇に塗布した後、該口紅がカップなど口唇に接触する部位に転写されてしまう二次付着性が問題となっていた。これに対し、二次付着を起こしにくい、いわゆる二次付着レス効果をもつ口紅組成物が開発されている。
例えば、特許文献1では、揮発性炭化水素系溶媒、揮発性炭化水素系溶媒に溶解または分散可能な非揮発性シリコーン化合物、及び揮発性溶媒に溶解し、非揮発性シリコーン化合物と非融和性の非揮発性炭化水素系油を含有し、該非揮発性炭化水素系油が、ある溶解パラメーターを有する耐移り性化粧品組成物が開示されている。
しかしながらこの耐移り性化粧品組成物は、安定性の点で改善の余地があり、ワックス量が多いためリキッド状の使用感が得られず、またつやも不十分である。
特許文献2には、非融和性であるペルフルオロポリエーテル型の非揮発性油と揮発性油を含有する耐移り性を有する口紅組成物が記載されている。この特許文献2では支持体への適用中に油分が分離し、第一組成物の上に油分が移動するようになっている。
しかしながら、第一組成物は、かなりのワックスを配合しており、固形状となるため、つややうるおい感が充分に得られない。また、この系では非融和性の油相を良好に分散させることが難しく、発汗などの安定性の問題を生じる。
特許文献3には、揮発性油分と組み合わせてシリコーン界面活性剤を配合し、顔料を良好に分散させた耐移り性を有するスティック化粧品が開示されている。
しかしながら、このスティック化粧品は揮発性油分の組成物における割合が大きいためマットな仕上がりとなり、唇に乾燥感を生じやすいという欠点がある。
特許文献4には、揮発性油分とシリコーン樹脂を配合した一相型の口紅用組成物が開示されている。
しかしながら、この口紅用組成物は、耐移り性は改善されるものの、揮発性油が蒸発した後に時間が経つと乾燥感が生じやすく、また樹脂の皮膜が唇上に残り、皮膜感や突っ張り感を生じると共に、得られた付着物はマットであるという欠点がある。
特許文献5には、シリコーン系皮膜剤と揮発性シリコーン系油分と非揮発性シリコーン系液状油分と乳化剤とを含む連続相油分と、エステル油分と色材とを含む分散相油分とからなり、分散相油分/(分散相油分+連続相油分)の配合量比が0.05〜0.5である油中油型乳化組成物が記載されている。
しかしながら、この油中油型乳化組成物は色材が分散相に存在するため色むらが生じやすく、更には、この系では経時安定性を保つことが困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−199846号公報
【特許文献2】国際公開96/40044号公報
【特許文献3】国際公開97/16157号公報
【特許文献4】特開平9−48709号公報
【特許文献5】特開2000−53530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、優れた二次付着レス性を有し、かつ塗布後のつやが持続し、安定性にも優れたスティック固形状の唇用化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究の結果、特定の界面活性剤とシリコーン油とエステル油を組み合わせて用いることで塗布後の二次付着レス性とつやを両立させた唇用化粧料が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の(a)〜(c)を含み、(b)と(c)の合計配合量が30〜70質量%であることを特徴とする唇用化粧料である。
(a)グリセリンの付加モル数が4〜10であり、イソステアリン酸残基の数が1〜4個であるイソステアリン酸ポリグリセリル 5〜20質量%
(b)メチルフェニルシリコーン 20〜60質量%
(c)ペンタエリスリトールエステル 5〜45質量%
【発明の効果】
【0007】
本発明の唇用化粧料は、塗布直後から二次付着レス効果を発現し、この二次付着レス性を維持したまま、つやがよく、安定性も良好なものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一般的に、二次付着レス効果が高いと塗布時のつやに欠ける傾向があり、一方、つやがある基剤は残存油分が多いために二次付着しやすいという欠点がある。本発明においては、特定の界面活性剤とシリコーン油とエステル油を組み合わせて用いることで、シリコーン油およびエステル油が表層に分離してつやを付与し、界面活性剤は内層にあって色剤を抱えこむため、二次付着し難くなる。この結果、二次付着がなく、かつ優れたつやを有する唇用化粧料とすることができる。
この際、分散相は密着性が高いため、塗布すると同時にシリコーン油とエステル油は表層に分離し、ただちに二次付着レス効果を発揮する。
以下、各構成成分について詳細に説明する。
【0009】
((a)イソステアリン酸ポリグリセリル)
本発明で用いられる成分(a)のイソステアリン酸ポリグリセリルは界面活性剤であり、平均付加モル数が4〜10のポリグリセリンにイソステアリン酸が場所を特定せずに付加したものである。イソステアリン酸は一分子中に、1〜4個、特に2〜4個付加したものが好ましい。また平均付加モル数が5のポリグリセリンが好ましい。
本発明において(a)成分は塗布時には色材を抱え込んで密着油分となり、すみやかに染み出し油分である(b)成分、(c)成分と分離する。
【0010】
イソステアリン酸ポリグリセリルは種々の公知の合成法により提供され得るが、グリセリン付加モル数の分布が狭いものや、不純物としての環状物が少ないものが好ましい。
かかるイソステアリン酸ポリグリセリルは、例えば特許第3487881号や特開2006−111539号公報(水酸基価が1200以下であり、全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されたポリグリセリン脂肪酸エステル)に記載の方法によって製造することができる。
このうち特に好ましいのは、重合度5のイソステアリン酸ポリグリセリルが(a)成分全量中、40質量%以上であるようなイソステアリン酸ポリグリセリル−5である。
このイソステアリン酸ポリグリセリル−5は種々の公知の合成法により提供され得る。本発明においては、低重合度のポリグリセリンが少なく、かつ重合度の分布が狭いポリグリセリン−5とイソステアリン酸を原料にして得られるイソステアリン酸ポリグリセリル−5が好ましく、特に、グリセリンの重合度が5であるイソステアリン酸ポリグリセリル−5が(a)成分全量中、40質量%以上であるものが好ましい。
また、イソステアリン酸残基は2〜4、特に3のトリイソステアリン酸ポリグリセリル−5が好ましい。
【0011】
通常の合成法によれば、グリセリンを原料としてポリグリセリンを製造した場合、脱水縮合に際して分子内縮合や6員環や8員環など好ましくない副生成物が多く発生するので、これら副生成物が発生しないようにグリシドール,エピクロルヒドリン,モノクロロヒドリンなどを原料として合成,精製して得られるポリグリセリンが好ましい。更に、ポリグリセリンと脂肪酸を反応する際に、一般に低分子量のポリグリセリンは高分子量のポリグリセリンに比べて脂肪酸との反応性が高いので広い分子量の分布をもつポリグリセリンを原料とした場合には均一なエステルを製造することができない。したがって、できるだけ狭い分子量分布を持つポリグリセリンが好ましく、例えばグリセリンもしくはその重合体の部分アルコラートとハロゲン化炭化水素もしくはオキシハロゲン化炭化水素を原料にして脱ハロゲン化アルカリ金属塩反応によって得ることができる。
製造方法を例示すると第一工程として、ジグリセリン1モルとして、水酸化ナトリウム1モルを加えて加熱脱水してジグリセリンモノアルコラートを生成し、第二工程として得られたジグリセリンモノアルコラート2モルにジクロロヒドリン1モルを添加して加熱すると重合度5の分布が狭いポリグリセリン1モルを得ることができる。
狭分布のポリグリセリンの製法の詳細については、例えば特許第3487881号に記載されている。
【0012】
本発明のイソステアリン酸ポリグリセリル−5は、上記で得られたポリグリセリンとイソステアリン酸とを公知の方法によってエステル化する。例えばアルカリ触媒下、酸触媒下、あるいは無触媒下にて、常圧あるいは減圧下でエステル化することができる。
【0013】
本発明における成分(a)の配合量は、5〜20質量%であり、好ましくは12〜20質量%である。(a)成分の配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、二次付着レス効果に劣るようになり、また多すぎる場合には塗布後にべたつきが出る傾向もある。
【0014】
((b)メチルフェニルシリコーン)
本発明において、成分(b)は、塗布後に成分(a)と分離して表層を形成して二次付着レス効果を発揮すると共に、つやをよくさせるものである。
(b)メチルフェニルシリコーンは、130℃で(a)と混合した時に分離せず、25℃で(a)と混合した時に分離するものが二次付着レス効果のためには好ましく、メチルフェニルシリコーンは一種であっても、二種以上の混合物であっても良い。
【0015】
ここで、「分離」とは、以下の条件で測定した時のことをいう。
(測定条件)
(a)と(b)を130℃において攪拌混合した場合と、この混合物を静置し、室温(25℃)になった場合において、境界が均一に2層に分離しているものを「分離する」とし、境界が不均一で半透明な状態、又は、境界がなく透明な相溶した状態を「分離せず」とした。
【0016】
本発明で用いられるメチルフェニルシリコーンとしては、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、ジフェニルジメチコンおよびジフェニルシロキシフェニルトリメチコンが好ましく、特にジフェニルシロキシフェニルトリメチコンを含むことが好ましい。
そして、これらをメチルフェニルシリコーン全体として上記条件になるような割合で配合したものであることが好ましい。
【0017】
トリメチルペンタフェニルトリシロキサンとしては市販品としてメチルフェニルシリコーンFZ3156(165mm2/s(25℃)、東レ・ダウコーニング社製)が挙げられる。ジフェニルジメチコンとしては、市販品としてシリコーンKF54(400mm2/s(25℃)、信越化学社製)、シリコーンKF50−300CS(信越化学社製)、シリコーンKF−54HV(信越化学社製)等が挙げられる。ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンとしては、例えばシリコーンKF56(14mm2/s(25℃)、信越化学社製))が挙げられる。
【0018】
本発明の(b)成分としては、上記以外に、フェニルトリメチコン(例えば、シリコーンSH556(22mm2/s(25℃)、東レ・ダウコーニング社製))などを用いることができる。
【0019】
成分(b)の配合量は、20〜60質量%であり、好ましくは25〜55質量%である。(b)成分の配合量が20質量%未満では、二次付着しやすく、またつやも少ない。また60質量%を超えると、安定性が悪い。
【0020】
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンの配合量は、10〜30質量%であることが好ましい。
【0021】
本発明においては、(b)成分中のジフェニルシロキシフェニルトリメチコンの配合量は、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン/ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン以外の(b)成分=0.5〜3.5(質量比)で用いることが、二次付着レス効果と安定性の両立のためには好ましく、より好ましくは、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン/{ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン以外の(b)成分}=1.2〜2(質量比)である。
【0022】
((c)ペンタエリスリトールエステル)
本発明において、(c)成分であるペンタエリスリトールエステルは(b)成分と同様に、塗布後に(a)成分と分離して表層を形成して二次付着レス効果を発揮すると共に、つやをよくさせるものである。
本発明にかかるペンタエリスリトールエステルとしては、テトラ(安息香酸/2−エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/2−エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、ヘキサ(12−ヒドロキシステアリン酸)ジペンタエリスリットから選ばれる一種又は二種以上が好ましい。
【0023】
ペンタエリスリトールエステルは一般的な合成法により製造することが可能である。例えば適当な反応容器に(ジ)ペンタエリスリトールと、安息香酸、2−エチルヘキサン酸、ベヘン酸等の製造しようとする化合物に対応する酸を入れ(添加順序は特に限定しない)、酸、アルカリ、その他の金属触媒の存在下または非存在下、好ましくは該反応に不活性な有機溶媒または/および気体中で150〜250℃において数時間〜30時間程度まで副生する水を除去しながら反応を行うことにより得ることができる。
【0024】
成分(c)の配合量は、5〜45質量%であり、好ましくは10〜40質量%である。(c)成分の配合量が5質量%未満では、二次付着しやすく、つやも少ない。また45質量%を超えると、安定性が悪い。
【0025】
本発明において、(b)と(c)の合計配合量は30〜70質量%であり、好ましくは50〜70質量%である。(b)と(c)の合計配合量が30質量%未満では、二次付着しやすく、またつやも少ない。70質量%を超えると、安定性が悪い。
【0026】
本発明においては、上記(b)、(c)成分以外の油分として、130℃で全体を相溶させる油分が配合されることが好ましい。かかる油分としては例えば、イソパラフィンが挙げられる。
【0027】
((d)グリセリン)
本発明においては、(d)グリセリンをさらに配合することが好ましい。(d)成分を配合することにより二次付着レス効果は向上する。
(a)イソステアリン酸ポリグリセリルの一部、例えば(a)成分の20〜40質量%をグリセリンに変更して用いることで会合構造を形成し、密着油分の粘度は(a)成分のみを用いた場合よりも高くなる。
(d)グリセリンは、イソステアリン酸ポリグリセリルの製造において原料として用いられるものであるため、イソステアリン酸ポリグリセリルの不純物として含まれる場合があり、別途加える必要がない場合もある。
【0028】
本発明においては、さらにワックスを配合することができる。
用いられるワックスとしては、通常化粧料に配合されるものであれば、特に限定されず、例えば、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ビースワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、モクロウ、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0029】
ワックスの配合量は、4〜10質量%、好ましくは6〜9質量%である。ワックスの配合量が少なすぎると固化しづらく、多すぎると、のびが重く、つやもなくなる。
【0030】
本発明においては、上記必須成分の他に色材を配合することができる。
本発明で用いられる色材は通常唇用化粧料で用いられるものを配合することができる。
かかる色材としては、口紅に通常用いられる色材であれば良く、粉末状でもレーキ状(油を練り込んだ状態)でもよい。無機顔料であっても、有機顔料であっても、パール剤であってもよい。色材は、化粧料塗布時には(a)イソステアリン酸ポリグリセリルに抱え込まれ、シリコーン油の内側に存在するようになるため、二次付着し難くなる。
色材の配合量は1〜13質量%であり、好ましくは3〜8質量%である。
【0031】
本発明の唇用化粧料には、皮膜剤をさらに配合することができる。
皮膜剤としては、例えば(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー等が例示される。具体的には、シリコーンKP545(信越化学社製)として、それぞれ商業的に入手可能である。
【0032】
皮膜剤を配合する場合は、その配合量は2〜15質量%が好ましく、より好ましくは5〜10質量%である。
【0033】
本発明の唇用化粧料には、上記必須成分の他、通常の唇用化粧料に用いられる上記以外の油剤、粉体、高分子化合物、保湿剤、香料、酸化防止剤、防腐剤、美容成分等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。ただし油剤については、上記必須成分のみとし、他の油剤は含まない方が好ましい。保湿剤としては、例えば、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール等の多価アルコール系保湿剤が挙げられる。
【0034】
本発明の唇用化粧料は、その製造工程のすべてにおいて分離せず、均一一相の状態であるように成分構成されたものであることが好ましく、具体的には全組成物が130℃で分離せず均一一相の状態であるように成分構成されたものであることが好ましい。
【0035】
本発明の唇用化粧料は、口紅、リップグロス、下地用のリップベース、口紅オーバーコート、リップクリームなどに応用することができる。
【実施例】
【0036】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた効果試験方法について説明する。
【0037】
(1)二次付着レス効果の評価試験
10名の専門パネルによる実使用性試験を行った。評価は、二次付着レス効果について下記の評価点基準に基づいて5段階官能評価(スコア)した。そのスコア平均値により、下記評価基準で判定した。
【0038】
(スコア)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
【0039】
(評価基準)
◎◎:評価値(平均値)4.7点以上5.0点以下
◎:評価値(平均値)4.5点以上4.7点未満
○:評価値(平均値)4点以上4.5点未満
○△:評価値(平均値)3.5点以上4点未満
△:評価値(平均値)2.5点以上3.5点未満
×:評価値(平均値)1.0点以上2.5点未満
なお、「−」と表中に記載した例は、安定性が悪く、二次付着レスの効果が測定できないものである。
【0040】
(2)安定性の評価試験
スティック状にした試料の切断面における色の均一性について、以下の方法で評価した。
【0041】
(評価基準)
○:均一
○△:均一だが、発色が乏しい
△:やや不均一
×:不均一
【0042】
(3)使用性(つや)の評価試験
10名の専門パネルによる実使用性試験を行った。評価は、つやについて下記の評価点基準に基づいて5段階官能評価(スコア)した。そのスコア平均値により、下記評価基準で判定した。
【0043】
(スコア)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
【0044】
(評価基準)
◎◎:評価値(平均値)4.7点以上5.0点以下
◎:評価値(平均値)4.5点以上4.7点未満
○:評価値(平均値)4点以上4.5点未満
○△:評価値(平均値)3.5点以上4点未満
△:評価値(平均値)2.5点以上3.5点未満
×:評価値(平均値)1.0点以上2.5点未満
【0045】
(4)(a)と(b)の分離状態の評価試験
(a)と(b)を混合し、以下の条件で測定した時に、130℃では分離せず、25℃では分離するものを「○」、それ以外のものを「×」とした。
【0046】
(測定条件)
(a)と(b)を、(a):(b)=1:3(質量比)で用いて130℃において攪拌混合した場合と、この混合物を静置し、室温(25℃)になった場合において、境界が均一に2層に分離しているものを「分離する」とし、境界が不均一で白濁もしくは半透明な状態、又は、境界がなく透明な相溶した状態を「分離せず」とした。
【0047】
製造例1(イソステアリン酸ポリグリセリル−5の製造)
5リットルの四ツ口フラスコにジグリセリン3300gと50%水酸化ナトリウム水溶液800gを入れ、窒素気流下で水を除去しながら140℃まで加熱した。水の留出が終わった後ジクロロヒドリン640gを2時間かけて滴下した。滴下後120℃で2時間攪拌する。これを分子蒸留にて過量のジクリセリンを除去後水に希釈して活性炭,イオン交換樹脂で脱色,脱塩し、水を除いてポリグリセリンを得た。本品をTMS化し、GC法により分析を行ったところ、重合度5の成分が60%であった。
得られたポリグリセリン−5をイソステアリン酸と常法により反応させて、イソステアリン酸の付加モル数を変化させたイソステアリン酸ポリグリセリル−5を得た。
【0048】
試験例
次の表1〜3に示す処方で常法により口紅を調製し、二次付着レス効果、安定性および分離状態について、上記した基準で評価した。その結果を併せて表1〜3に示す。イソステアリン酸ポリグリセリル−5は、上記製造例1で得られたものである。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
※1:製造例1で製造したもの。イソステアリン酸の平均付加モル数=3
※2:シリコーンKF56(信越化学社製)
※3:メチルフェニルシリコーンFZ3156(東レ・ダウコーニング社製)
※4:シリコーンKF54(信越化学社製)
※5:安息香酸/2−エチルヘキサン酸=2.5モル/1.5モル
※6:チミロンMP−115(三好化成社製)
※7:(ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン)/(ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン以外の(b)成分)の値(質量比)
※8:ベヘン酸/安息香酸/2−エチルヘキサン酸=1モル/2モル/1モル
※9:パラミックス91(日興リカ社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(a)〜(c)を含み、(b)と(c)の合計配合量が30〜70質量%であることを特徴とする唇用化粧料。
(a)グリセリンの付加モル数が4〜10であり、イソステアリン酸残基の数が1〜4個であるイソステアリン酸ポリグリセリル 5〜20質量%
(b)メチルフェニルシリコーン 20〜60質量%
(c)ペンタエリスリトールエステル 5〜45質量%
【請求項2】
(b)成分は、(b)成分全体として、130℃で(a)と混合した時に分離せず、25℃で(a)と混合した時に分離する一種又は二種以上からなることを特徴とする請求項1に記載の唇用化粧料。
【請求項3】
(b)成分中にジフェニルシロキシフェニルトリメチコンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の唇用化粧料。
【請求項4】
(b)成分中のジフェニルシロキシフェニルトリメチコンの配合量が、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン/{ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン以外の(b)成分}=0.5〜3.5(質量比)であることを特徴とする請求項3に記載の唇用化粧料。
【請求項5】
さらに(d)グリセリンを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の唇用化粧料。
【請求項6】
(a)成分は、重合度5のイソステアリン酸ポリグリセリルが(a)成分全量中、40質量%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の唇用化粧料。
【請求項7】
(a)成分は、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−5であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の唇用化粧料。

【公開番号】特開2012−20972(P2012−20972A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160611(P2010−160611)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【特許番号】特許第4772157号(P4772157)
【特許公報発行日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】