説明

唾液内の検体を検出する装置及び方法

本発明により、唾液内の乱用薬物又はその他の化合物を検出する装置が提供される。本発明は、故に、唾液標本内の1つ以上の検体の存在を検出する装置であって、(a)前記1つ以上の検体の検出を妨げる唾液標本の部分の少なくとも一部を特異的あるいは非特異的に除去する1つ以上の前処理部と、(b)バイオセンサ表面を有する検出部であり、該バイオセンサ表面が、前記1つ以上の検体を特異的に結合させることが可能な分子、又は前記1つ以上の検体及び/又は検体類似体、を有する検出部とを有する装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唾液標本内の分子を検出且つ/或いは定量化する装置及び方法に関する。この方法及び装置は、前処理と検出と結合する。
【背景技術】
【0002】
診断検査においては、1つ以上の特定の標的分子又は被分析物(検体)が測定されなければならない。これは、しばしば、直接的あるいは間接的に検出可能な信号をもたらす(生化学)反応における相互作用を標的分子に可能にすることによって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第02/082040号パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Van Nieuw Amerongen等、Bohn Stafleu Van Loghum、(Houten、オランダ)、2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬物のロードサイド検査を実行するために、現在商業的に、数多くの装置及び方法を利用可能になっている。これらの殆どは、標本上で直接的に実行される標的の免疫学的検出に基づいている。特許文献1には、異なる複数の被分析物、特に体液内の薬物、を決定する“1つの装置(ワンデバイス)”システムが記載されている。体液は、吸着性のパッドを備えた装置の収集端部によって収集され、収集装置のキャップ内の一連の圧力ヘッドが、(装置の収集端部が圧力ヘッドを通り過ぎるときに)薬物検出用の診断ストリップ(細長片)を含む免疫学的検定システムのコア(中核部)内に標本を押し入れる。標本内の薬物は、着色されたマイクロスフェア(微小球)上の有限な抗体部位の膜支持体上に固定される薬物複合体を備える。有色のラインが、標本内の関連薬物の存在又は不存在を指し示す。標本の一部は、外部から密閉された確認標本保存ウェル内で保持され、更なる検査のために保存される。
【0006】
しかしながら、これらの検査の多くは、主に分析感度に関して、満足いくものでないことが実証されてきた。これは部分的に、唾液内の殆どの薬物の濃度は血液又は尿においてより幾分低いことが通常であるという事実に因るものである。しかしながら、より重要なことに、唾液は、多くの検出方法と干渉する(妨げる)成分を含有している。唾液は大部分が水から成るが、さらに、数多くの相異なる物質を含有している。それらには、電解質(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、重炭酸塩、リン酸塩)、抗菌成分(例えば、チオシアン酸塩、過酸化水素、免疫グロブリンAなど)、酵素(例えば、アミラーゼ、リゾチーム、リパーゼ、ホスファターゼ、アミダーゼ、デヒドロゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、スーパーオキシド・ジスムターゼ、トランスフェラーゼ、イソメラーゼ)、細胞(細菌性細胞、及び宿主細胞、すなわち唾液を生成する動物又はヒトの細胞、の双方)、及び、例えばホルモンなどのその他の化合物が含まれる。しかしながら、非常に重要なことに、唾液は、主としてムコ多糖体及び糖タンパク質から成る粘液を含有している。
【0007】
唾液内に見出される1つの重要な部類の糖タンパク質はムチン類である。これらは、大きくて重い糖化タンパク質の部類である。少なくとも19のヒトムチン遺伝子が、c(相補的)DNAクローニングによって、MUC1、2、3A、3B、4、5AC、5B、6−9、11−13及び15−19として区別されている。ムチンは、おおよそ10万から1000万Daの分子量を有する巨大なタンパク質の集合体として分泌される。これらの集合体内では、大抵、非共有相互作用によってモノマーが互いに結合されている。なお、この過程においては、分子間ジスルフィド結合も役割を果たし得る。ムチンは、唾液標本の偽陽性検査の大部分に関与していることが実証されている。
【0008】
唾液内の薬物の存在を正確に決定するためには、検体の前抽出又は干渉成分(例えばムチンなど)の除去が必要とされる。典型的に、干渉成分を除去するために、あるいは固定相に結合することによって関心検体を単離するために、固相クリーンアップシステムが使用される。非結合成分はカラム外に洗い流される。検体がカラムに結合されている場合、その検体はその後、吸着された検体を固定相から取り外すことが可能な適切な緩衝液を用いて溶出される。他の例では、干渉成分が結合されている場合、検体を含有する溶出液が直接的に収集される。必要に応じて、以下に限られないが例えば酵素免疫測定(enzyme-linked immunosorbent assay;ELISA)、放射免疫測定(radio immunoassay;RIA)、高速液体クロマトグラフィー(high-performance liquid chromatography;HPLC)、液体クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography mass spectrometry;LC−MS)及びガスクロマトグラフィー質量スペクトル分析;GC−MS)などの方法を用いる分析に先立って事前濃縮するため、溶出液は気化され、より小さい容積にて再溶解される。
【0009】
しかしながら、伝統的な分析方法は幾つかの欠点を有している。第1に、それらの方法は時間のかかるものであり高くつく。また、それらは、複雑な器具と、分析を実行する人物の側の比較的高度なスキルとを必要とすることが多い。
【0010】
従って、過度な機器又は高度な訓練を受けた技師を必要とすることなく、唾液内の検体の正確且つ高感度な検出を可能にする検査装置及び方法が望まれる。
【0011】
本発明は、標本の前処理と検出とが同一セッティングにて続けて実行され、操作の容易さと、高い特異度(スペシフィシティ)及び感度とを提供する装置及び方法を提供することを目的とする。当該方法及び装置は、特に、唾液内の検体の検査に使用される。また、これらの方法及び装置は、実験室環境外での使用を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前処理部と検出部とを1つの装置に統合することは幾つかの利点をもたらす。標本とのユーザ介入の必要性が低下する。その結果、標本操作によって導入される誤りの可能性が低下される。また、必要とされる標本物質が少なくなる。実際、標本物質を1つの装置から別の装置へと移送する場合のような標本の損失が存在しない。さらに、これにより、標本物質とのユーザの接触が最小限であることが確保され、標本の汚染の危険性が最小化される。
【0013】
本発明に係る方法及び装置は、検出を妨げる成分が除去されるような、検出に先立っての標本の前処理を想定している。これは、感度及び特異度に影響を及ぼすことなく、装置内で磁化可能な粒子を使用することを可能にする。実際、典型的に磁化可能粒子の凝集を誘起する干渉部分が、磁化可能粒子と接触する前に除去される。これは、バックグラウンド信号の抑制又は特異的結合の抑制をもたらす。また、本発明に係る方法及び装置は、磁気作動(アクチュエーション)に基づく検出を可能にする。これは特に、更に診断検査の高速化及び例えば微小流体(microfluidic)デバイスにおける流体工学を単純化するために磁気作動が使用されるときに重要である。従って、本発明にて説明される方法及び装置は、唾液内の検体を決定するための、迅速、高感度且つロバストなツールを提供する。
【0014】
ここで説明される装置及び方法はまた、間接的な検出方法、すなわち、標本内の検体の存在及び必要に応じて量の測定結果として非結合検体又は例えば競合アッセイなどの検体特異試薬が検出される方法、における使用に特に適している。
【0015】
本発明に係る装置及び方法は、特に実験室環境外(例えば、ロードサイド検査、ポイントオブケア検査)で、最小限の処理のみを必要とする検査に使用されることができる。結果として、当該装置は、使い捨て装置として、あるいは微小流体デバイスにおけるカートリッジとして提供され得る。
【0016】
従って、本発明は、唾液標本内の1つ以上の検体の存在を検出する装置であって:
(a)前記1つ以上の検体の検出を妨げる前記唾液標本の部分の、少なくとも一部を、特異的あるいは非特異的に除去する1つ以上の前処理部;及び
(b)バイオセンサ表面を有する検出部であり、該バイオセンサ表面が:
− 前記1つ以上の検体を特異的に結合させることが可能な分子;又は
− 前記1つ以上の検体、及び/又は検体類似体;
を有する、検出部;
を有する装置を提供する。
【0017】
特定の実施形態によれば、微小流体デバイスである装置が提供される。代替的な特定の実施形態によれば、側方流動(ラテラルフロー)デバイスである装置が提供される。
【0018】
特定の一実施形態によれば、1つ以上の前処理部は、1つ以上の検体の検出を妨げる唾液標本内の成分に特異的あるいは非特異的に結合することが可能な分子で被覆された磁化可能粒子を格納する1つ以上の別個のチャンバー内に含まれる。特に、これらの磁化可能粒子は常磁性粒子又は超常磁性粒子である。
【0019】
代替的な実施形態において、1つ以上の検体の検出を妨げる唾液標本内の成分に特異的あるいは非特異的に結合することが可能な分子を有する表面を有する1つ以上の前処理部が、装置に備えられる。唾液標本内の成分に結合する分子が表面に結合されてもよいし、表面がほぼ、あるいは本質的に、そのような分子で構成されてもよい。前者は、典型的に、特異的に結合することが可能な分子が想定される場合に当たり、後者は、唾液標本内の成分に非特異的に結合する分子が使用されるときに想定される。しかしながら、これは単なる通例であり、この実施形態を限定するものとして解されるべきでない。
【0020】
更なる特定の実施形態によれば、1つ以上の検体の検出を妨げる唾液標本内の成分に特異的あるいは非特異的に結合することが可能な分子を有する、多孔質体である表面、を有する装置が提供される。より更なる特定の実施形態によれば、この多孔質表面は焼結された多孔質構造である。
【0021】
特定の実施形態によれば、1つ以上の検体の検出を妨げる唾液標本内の成分に結合する、ヒドロキシアパタイトである分子、を有する装置が提供される。
【0022】
特定の実施形態によれば、1つ以上の検体の検出を妨げる唾液標本内の成分に結合する、抗体である分子、を有する装置が提供される。更なる特定の実施形態によれば、この抗体は、凝集因子に対する抗体である。極めて具体的な実施形態によれば、この抗体は抗ムチン抗体である。
【0023】
特定の実施形態によれば、唾液標本を検出部に接触させる前に唾液標本を収容する中継部を有する装置が提供される。この中継部は、標本を単に輸送するためのもの(例えば、微小流体デバイス内の微小流体チャネルなどのチャネル、又は側方流動デバイス内の不活性領域)であってもよい。しかしながら、中継部はまた、例えば、標本を検出部に接触させるのに先立って標本を1つ以上の試薬に接触させるなどの別の機能を有していてもよい。
【0024】
特定の実施形態によれば、装置の検出部又は中継部が、1つ以上の検体を特異的に結合させることが可能な分子で被覆された磁化可能粒子を格納する別個のチャンバーであり、且つ該分子がバイオセンサ表面の分子とは異なるものである装置が提供される。
【0025】
特定の実施形態によれば、使い捨てに適した装置が提供される。
【0026】
ここで説明したような装置を用いる方法も想定される。特定の一実施形態によれば、唾液標本内の1つ以上の検体の存在を検出する方法であって:
(a)前記1つ以上の検体の検出を妨げる前記唾液標本の部分の、少なくとも一部を、特異的あるいは非特異的に除去する1つ以上の前処理部;及び
(b)バイオセンサ表面を有する検出部であり、該バイオセンサ表面が:
− 前記1つ以上の検体を特異的に結合させることが可能な分子;又は
− 前記1つ以上の検体、及び/又は検体類似体;
を有する、検出部;
を有する装置に、前記唾液標本を接触させるステップと、
前記検体の存在を、前記検出部にて、競合アッセイ又は非競合アッセイにて検出するステップと、
を有する方法が提供される。
【0027】
特定の実施形態によれば、1つ以上の前処理部のうちの少なくとも1つにおいて、1つ以上の検体の検出を妨げる唾液標本内の成分に特異的あるいは非特異的に結合することが可能な分子で被覆された磁化可能粒子を用いて、唾液標本をインキュベートするステップを有する方法が提供される。
【0028】
特定の実施形態によれば、1つ以上の検体の検出を妨げる唾液標本内の成分に結合する分子がヒドロキシアパタイトである方法が提供される。
【0029】
代替的な特定の実施形態によれば、1つ以上の検体の検出を妨げる唾液標本内の成分に結合する分子が抗体である方法が提供される。更なる特定の実施形態によれば、この抗体は、凝集因子に対する抗体である。極めて具体的な実施形態によれば、この抗体は抗ムチン抗体である。
【0030】
特定の実施形態によれば、標本を1つ以上の前処理部に接触させるステップと、その後、標本を検出部に接触させるステップとを有し、それにより、前処理部に接触させた後に、バイオセンサ表面の分子とは異なる、1つ以上の検体に特異的に結合することが可能な分子、で被覆された磁化可能粒子に標本が接触させられる方法が提供される。
【0031】
特定の実施形態によれば、薬物検出、特に乱用薬物検出、に使用される方法が提供される。故に、これらの実施形態によれば、検出すべき検体の少なくとも1つは薬物である。
【0032】
本発明の他の一態様は、ヒドロキシアパタイト上での唾液のフィルタリングの恩恵に関連する。故に、前記検体の検出を実行するのに先立って、唾液標本をヒドロキシアパタイトに接触させることを有する、唾液標本内の1つ以上の検体を検出する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の上述及びその他の特性、特徴及び利点が、例として本発明の原理を示す以下の詳細な説明及び添付の図面から明らかになる。ここでの説明は、単に例示のために与えられるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【図1】前処理部(2)と検出部(4)とを有する本発明の特定の一実施形態に従った装置(1)を概略的に示す図である。検出部(4)は、この実施形態において、1つ以上の検体を特異的に結合させることが可能な分子(6)を有するバイオセンサ表面(5)を有している。
【図2A】前処理部(2)と検出部(4)とを有する本発明の特定の一実施形態に従った装置(1)を、図2Bとともに、概略的に示す図であり、図2Aは、使用前の装置を示している。検出部(4)は、この実施形態において、1つ以上の検体を特異的に結合させることが可能な分子(6)を有するバイオセンサ表面(5)を有している。ここに図示した特定の実施形態において、装置は、検出部(4)を、上記1つ以上の検体を特異的に結合させることが可能な分子で被覆された磁化可能粒子(7)と接触させる手段を有している。
【図2B】前処理部(2)と検出部(4)とを有する本発明の特定の一実施形態に従った装置(1)を、図2Aとともに、概略的に示す図であり、図2Bは、標本内の検体の検出中の装置を示している。装置(1)の使用の特定の実施形態において、唾液標本は、上記1つ以上の検体の検出を妨げる唾液標本の部分の少なくとも一部を特異的あるいは非特異的に除去する分子を有する前処理部(2)に与えられる。そして、前処理された標本は、この実施形態においては微小流体チャネル(3)を介して、検出部(4)に輸送される。標本内に存在する検体(8)は、該検体を特異的に結合させることが可能な、バイオセンサ表面(5)上に含まれる分子(6)に結合することが可能にされる。磁界の印加により、結合されていない磁化可能粒子(7)の、バイオセンサ表面(5)の方向への移動を引き起こし、そこで、それらは存在する検体(8)に結合することができる。所定の時間後、引き付け磁界は除去される。結合されなかった磁化可能ビーズをバイオセンサ表面(5)から引き離すため、別の磁界が印加される。そして、バイオセンサ表面上の(検体の存在を指し示す)標識磁化可能粒子の存在が、適切な検出手段によって検出される。
【図3】前処理部におけるヒドロキシアパタイト・フィルタリング後の分析機能性を示す図である。関心検体はアヘン剤である。この実験において、バイオセンサ表面はBSA−アヘン剤で被覆し、検出は、抗アヘン剤抗体で被覆した超常磁性粒子を用いて行った。前処理(30%緩衝液で希釈)なし、濾過による前処理、及びヒドロキシアパタイト前処理と組み合わされた濾過による前処理での、標本内のアヘン剤の検出可能性を決定するため、競合アッセイを行った。示した結果は、3人の被検者からの唾液標本に関するものである。光信号変化(%)は、超常磁性粒子の付加後の信号変化を表している。
【図4】前処理部におけるヒドロキシアパタイト濾過後の分析機能性を示す図である。関心検体はアヘン剤である。この実験において、バイオセンサ表面はBSA−アヘン剤で被覆し、検出は、単クローン性の抗アヘン剤抗体で被覆した超常磁性粒子を用いて行った。濾過により前処理された標本、又は濾過と組み合わせてヒドロキシアパタイト前処理により前処理された標本におけるアヘン剤の検出可能性を決定するため、競合アッセイを行った。示した結果は、5人の被検者からの唾液標本に関するものである。光信号変化(%)は、超常磁性粒子の付加後の信号変化を表している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
特定の実施形態及び特定の図を参照して本発明を説明するが、本発明は、それらに限定されるものではなく、請求項のみによって限定されるものである。請求項中の如何なる参照符号も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。図面は概略的且つ非限定的なものに過ぎない。図面においては、説明の目的で、一部の要素の大きさが誇張され、縮尺通りに描かれていないことがある。
【0035】
ここでの説明及び請求項において用語“有する”が使用される場合、それはその他の要素又はステップを排除するものではない。単数形の名詞に“a”若しくは“an”、“the”などの不定冠詞又は定冠詞が使用される場合、これは、特に断らない限り、その名詞のものが複数である場合を含む。
【0036】
また、ここでの説明及び請求項における第1、第2、第3などの用語は、複数の同様の要素を区別するために用いられ、必ずしも順次的あるいは時間的な順序を表すものではない。理解されるように、そのように使用されるこれらの用語は適当な状況下で相互に交換可能であり、また、ここで説明する本発明の実施形態は、ここで説明あるいは図示されるもの以外の順序で処理されることが可能である。
【0037】
ここで用いられる用語又は定義は、単に、本発明の理解を助けるために提供されるものである。
【0038】
定義
用語“検体”は、ここでは、その存在及び/又は濃度の検出が望まれる標本内の化合物を表す。
【0039】
用語“検体類似体”は、ここでは、検体特異プローブを結合させる点で検体に類似する分子を表す。しかしながら、検体類似体は、検体よりも弱く検体特異プローブに結合し、検体類似体のプローブとの結合は、検体の存在によって置換されることができる。ここでは、例えば、検体類似体は競合アッセイにて使用される分子を表す。この種のアッセイにおいては、唯一の検体結合分子(典型的に抗体)が使用される。検体類似体は、検体とは構造的に異なるものの構造的に関連性を有する化合物であり、検体結合分子によって等しく結合される。
【0040】
このような競合アッセイにおいては、検体及び検体類似体の双方が、同一の検体結合分子に結合するために争うことになる。ここで、検体類似体結合分子は、検体自体と比較して、検体結合分子に対して同一の親和力で、あるいは低い親和力で結合し、検体結合分子に結合された検体類似体は、検体によって置換されることができる。典型的に、検体類似体は、検体結合抗体に対して、同一のエピトープ(抗原決定基)を検体と共有する。このような競合アッセイにおいて検体自体に代えて検体類似体を用いる理由は、例えば、合成の容易さ、基質との結合の容易さ、安定性及び/又は貯蔵寿命の改善、又は、検体自体(例えば、バクテリア毒素、乱用薬物)より低い毒性若しくは薬剤活性といった検査装置の製造における危険性の低下にある。
【0041】
“存在を検出する”という言い回しは、ここでは、検体の存在の定性的且つ/或いは定量的な検出を表す。存在を検出することはまた、検体の不存在を検出すること、すなわち、検出可能な検体が存在しないことを見出すことを含む。同様に、検体の定量的な検出は、定量化可能なレベルの検体の検出に加えて、ゼロレベルに相当する検体の不存在の検出をも含む。
【0042】
用語“前処理”は、ここでは、検出を最適化する目的で検出の前に標本上で行われる操作(典型的に、精製)を表す。このような前処理は、分子の物理特性(例えば、大きさ、粘性)又は生化学特性(例えば、マトリックスへの分子の特異的あるいは非特異的な結合)の何れかに基づく、標本からの分子の除去を伴い得る。加えて、あるいは代えて、‘前処理’は、標本内の分子の物理特性及び/又は生化学特性を変化させることを伴い得る。装置に言及するときの“前処理部”は、標本の前処理を請け負うと考えられる装置内の領域である。
【0043】
“凝集因子”は、ここでは、分子の凝集を誘起する1つ以上の物質を表す。凝集は、凝集因子自体の凝集、検出されるべき検体の凝集、検出プロセスで使用されるアッセイ分子(例えば、抗体、又は例えば磁化可能粒子といった粒子)の凝集、又は標本内に存在する、あるいは検体の検出中に使用されるその他の物質の凝集とし得る。典型的に、凝集因子によって引き起こされる凝集は、検体の検出の効率又は精度の低下をもたらす。唾液は、様々な凝集因子を含むことが知られており(例えば、非特許文献1参照)、それらの凝集因子は、1つ以上の検体の検出を妨げ得る唾液標本の部分の一部を形成する。唾液内の凝集因子の典型例には、S−IgAと、ムチンと、凝集素、プロリンリッチの糖タンパク質(PRG)及びリゾチームなどの高分子糖タンパク質が含まれる。
【0044】
装置に言及するときの用語“検出部”は、ここでは、該検出部内で生成された信号を記録することが可能な検出器によって標本内の検体の存在の検出が行われる装置内の領域を表す。
【0045】
用語“バイオセンサ表面”は、ここでは、装置又はカートリッジの検出部内の、検出が検出手段によって請け負われる領域を表す。バイオセンサ表面は、生物学的要素及び検出器要素を有する。
【0046】
用語“磁化可能粒子”は、ここでは、(外部から印加される)磁界の存在下で磁性を有し、且つ外部から印加される磁界によって操作されることが可能であるが、そのような磁界が存在しないときには磁化を保持しない、粒子又はビーズを表す。これは、常磁性粒子又は超常磁性粒子を含む。非常に小さい磁気粒子(例えば、直径1−20nm程度)は、熱的効果によって非常に速く磁化を失う。本発明においては、これらの粒子もまた、常磁性粒子と等価に、磁化可能粒子と見なされ得る。
【0047】
本発明は、特には唾液標本である標本内の1つ以上の検体の存在を検出する装置及び方法を提供する。特定の一態様によれば、当該装置は、1つ以上の検体の検出を妨げる唾液標本の部分の少なくとも一部を特異的あるいは非特異的に除去するための1つ以上の前処理部と、それに連結される検出部とを有する。
【0048】
本発明に係る装置及び方法における1つ以上の前処理部は、特に、検出部での、標本内に存在する可能性のある検体の検出の感度を高めることを狙いとする。標本内に見出される多数の物質が検体の検出を妨げ得る。本発明に係る装置及び方法は、検体の検出を妨げ得る物質のうちの少なくとも一部を除去するための、標本の前処理を可能にする。特定の実施形態によれば、唾液標本の前処理は、凝集因子の除去を伴う。凝集因子は、実際、1つ以上の検体の検出を妨げる唾液標本の部分の一部である。特定の実施形態によれば、凝集因子は、S−IgAと、ムチンと、凝集素、プロリンリッチの糖タンパク質(PRG)及びリゾチームなどの高分子糖タンパク質とから成る群から選択される。他の特定の実施形態によれば、凝集因子(又は複数の凝集因子)は、ムコ多糖体、糖タンパク質、又はこれらの組み合わせである。更なる特定の実施形態によれば、凝集因子は、ムチン、又は複数のムチンの組み合わせである。
【0049】
本発明に係る方法及び装置は、特に、例えば唾液標本などのムチン含有標本内での検体の検出にとって興味深いものである。
【0050】
本発明において想定される1つ以上の前処理部は、標本の前処理を1つ以上の異なる手法で確保することを想定している。特定の実施形態において、1つ以上の前処理部は、検出を妨げる唾液標本の部分の少なくとも一部の除去を確実にする。
【0051】
特定の実施形態において、検出を妨げる分子の除去は、それらの分子を、標本の残りの部分(検体を含む)を移動相に留めたままで、特異的あるいは非特異的に固定することによって確保される。従って、1つ以上の前処理部は、標本内に存在する干渉部分に結合するが、検出すべき検体に対しては全く、あるいは無視できる程度しか親和力を有しない分子を有する。
【0052】
特定の実施形態において、検出を妨げる唾液標本の部分の少なくとも一部又はその中の1つ以上の分子を結合させる物質及び/又は分子を有する前処理部が使用される。更なる特定の実施形態において、唾液内に存在する凝集因子を結合させる分子が用いられる。
【0053】
本発明において前処理部での使用に想定される物質の例には、以下に限られないが、ヒドロキシアパタイト、金属酸化物、金属水酸化物(特に、負に帯電した金属水酸化物)、水酸化アルミニウム、金属(例えば、チタン、鉄など)、ポリマー(例えば、以下に限られないが、例えば酸化ポリエチレンなどのポリエチレン誘導体、ポリメチルメタクリレート、及びこれらに類するもの)が含まれる。ヒドロキシアパタイト(HAP)は、歯のエナメル質の主要な構成物質である。この毒性のない物質は、唾液の様々な構成物質に対して一定の親和力を有することが知られている。特に、唾液のムチンはヒドロキシアパタイトに付着する。また、細菌(例えば、連鎖球菌種)は、ヒドロキシアパタイトに吸着することが知られている。特定の実施形態によれば、本発明に係る方法及び装置にて想定される1つ以上の前処理部は、ヒドロキシアパタイトを有する。更なる特定の実施形態において、前処理部は、ヒドロキシアパタイトフィルタを有する、代替的な特定の実施形態において、前処理部は、後の標本のヒドロキシアパタイト処理でのフィルタリングのために、フィルタ(特に、ヒドロキシアパタイトフリーのフィルタ)及びヒドロキシアパタイトの双方を有する。
【0054】
本発明に係る方法及び装置の特定の実施形態において、検体検出を妨げる唾液標本の部分の少なくとも一部の特異的な除去が想定される。特定の実施形態において、唾液内の干渉物質に対して特異親和性を有する分子が使用される。更なる特定の実施形態において、唾液内の検体の検出を妨げる1つ以上の化合物を特異的に結合させることが可能な、1つ以上の前処理部内に存在する分子は、特異性生化学的相互作用に基づいて化合物を捕捉することが可能な分子である。典型的な特異性相互作用には、以下に限られないが、DNA/DNA若しくはDNA/RNA結合、タンパク質/タンパク質、タンパク質/DNA及びタンパク質/糖質相互作用、抗体/抗原相互作用、並びにレセプター/リガンド結合が含まれる。
【0055】
また、干渉化合物(例えば、修飾酵素阻害薬、小分子)を結合させるために合成分子が用いられ得る。
【0056】
特定の実施形態によれば、1つ以上の前処理部内で用いられる唾液内の1つ以上の干渉物質に対して特異親和性を有する分子は抗体である。好適な抗体には、多クローン性抗体及び単クローン性抗体、ナノボディ、並びに、対応する抗体がそれに対して集められる抗原に結合することが可能な抗体の断片(フラグメント)若しくは誘導体が含まれる。抗体フラグメントには、以下に限られないが、一本鎖可変フラグメント(scFvs)、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvフラグメント、又は重鎖若しくは軽鎖の例えば相補性決定領域(例えばCDR1、CDR2及びCDR3といったCDR)などの一層小さいフラグメント、及び/又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせ、並びにこれらの派生物が含まれる。更なる特定の実施形態によれば、抗体は抗ムチン抗体である。
【0057】
加えて、あるいは代えて、検体検出を妨げる分子は物理特性に基づいて除去される。例えば、検体が小分子である場合、検出を妨げる、より大きい分子又は成分(例えば、細胞)の物理的な除去が、濾過によって確保される。本発明に係る装置及び方法の1つ以上の前処理部では、様々な生化学的な方法及び物理的な方法が組み合わされてもよい。特定の一実施形態において、標本は、例えば、先ず非特異的な手法で濾過され、その後、成分が特異的に(例えば、抗体を用いて)除去される。故に、特定の実施形態において、標本の前処理は、2つ以上の前処理工程、及び/又は2つ以上の前処理部の間での標本の移動を有し得る。別々の順次の前処理部が提供されるとき、干渉部分の一層完全なる除去を確保することが可能である。
【0058】
更なる特定の実施形態において、1つ以上の前処理部は、例えば唾液の特定の成分を中和する化合物や、粘性を低下させる化合物若しくは条件(例えば、熱処理、酵素処理)などの、干渉分子の物理特性及び/又は生化学特性を変化させることが可能な1つ以上の化合物又は条件に、標本が接触させられる領域である。
【0059】
本発明に係る方法及び装置にて想定される1つ以上の前処理部は、前処理工程がどのようにして実行されるかに応じて、幾つかの形態を取ることができる。特定の実施形態によれば、1つ以上の前処理部は、必要に応じて検出部から物理的に離隔された、装置の1つ以上のチャンバー内に含まれる。更なる特定の実施形態において、1つ以上の前処理部は、検出を妨げる唾液標本内の化合物に特異的あるいは非特異的に結合することが可能な1つ以上の分子で被覆された磁化可能粒子を含んだチャンバー内に存在する。そのような1つ以上の前処理チャンバー内に唾液標本が導入されるとき、唾液標本内に存在する干渉成分は、磁化可能粒子上の上記分子に結合する。磁界の印加により、磁化可能粒子上に結合された、検出を妨げる部分の(少なくとも一部の)除去が確保され得る。複数のチャンバーが用いられる場合、干渉要因の最適な除去を確保するよう、前処理された標本が1つの前処理チャンバーから次の前処理チャンバーへと移動される。干渉成分を除去するために使用される磁化可能粒子は、検体の検出には使用されない。
【0060】
代替的な実施形態において、1つ以上の前処理部は、検出すべき1つ以上の検体の検出を妨げる唾液標本内の成分に特異的あるいは非特異的に結合することが可能な分子を備えた表面を有する。
【0061】
更なる特定の一実施形態によれば、1つ以上の前処理部のうちの1つ以上は、検体検出を妨げる唾液標本内の成分に特異的に結合する分子で被覆された、例えば表面パッドといった表面を有する。特定の一実施形態によれば、干渉成分を特異的に結合させるこれらの分子は、抗体、又はそのフラグメント若しくは誘導体である。より更なる特定の一実施形態によれば、それらの抗体(又は、そのフラグメント若しくは誘導体)は抗ムチン抗体である。
【0062】
特定の実施形態によれば、1つ以上の前処理部のうちの1つ以上は、検体検出を妨げる唾液標本内の成分に非特異的に結合する分子が結合された表面を有する。更なる特定の一実施形態によれば、1つ以上の前処理部は、ヒドロキシアパタイトが結合された表面を有する。加えて、あるいは代えて、1つ以上の前処理部は、金属酸化物、又は例えば水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物が結合された表面を有する。
【0063】
用語“結合された”は、ここでは、限定的に解釈されるべきでない。実際、検体検出を妨げる唾液標本内の成分に非特異的に結合する物質(例えば、ヒドロキシアパタイト)の形態は大幅に変わり得る。それらは、例えば粉末として、好適な担体内あるいは上に含浸されて提供され得るし、あるいは、焼結によって作成された多孔質構造であってもよい。故に、検体検出を妨げる唾液標本内の成分に非特異的に結合する分子が結合された1つ以上の前処理部内の表面は、ほぼ完全に、基本的に完全に、あるいは完全に、唾液標本内の成分に非特異的に結合する分子から作られていてもよい。特定の一実施形態によれば、前処理部内の上記表面の少なくとも一部は、検体検出を妨げる唾液標本内の成分に非特異的に結合する分子から成る多孔質焼結構造である。他の例では、唾液標本内の成分に非特異的に結合する分子は、中を標本が流れることが可能な粉末として提供され、該粉末が前処理部の上記表面を形成する。故に、唾液標本内の成分に非特異的に結合する分子は、表面に結合されるだけでなく、表面の部分であってもよい。
【0064】
1つ以上の前処理部内に存在する上記表面は、その中を標本が流れ得るように多孔質であってもよいし、その上を標本が移動することを可能にするように非多孔質であってもよい。特定の一実施形態によれば、多孔質の表面は、当該多孔質表面を通る標本の流れを高速化するために最終的に必要な圧力を低下させるべく、十分に大きい気孔を有する。更なる特定の一実施形態によれば、多孔質表面の気孔の大きさは、200nm以上、特には500nm以上である。更なる一実施形態によれば、気孔はミクロンスケール(すなわち、1μm−1000μm)である。故に、唾液標本を前処理する際、干渉成分(例えば、凝集因子など)の前処理表面への吸着は、気孔の大きさに基づくサイズ排除と組み合わされ得る。実際、例えばムチンなどの凝集因子は、しばしば、気孔を通り抜けることができない大きい凝集体を形成する。
【0065】
上述のように、本発明に係る装置及び方法は、特に、干渉部分を含有する唾液又はその他の標本内での検体の検出に適している。
【0066】
本発明に係る方法及び装置において、唾液標本は典型的に、装置の前処理部又はそれと直接的に接続された領域に与えられる。唾液標本は、純粋な形で、あるいは1つ以上の操作工程を受けた後に、の何れかで与えられることができる。特定の実施形態によれば、本発明に係る方法及び装置は、更なる操作工程及び/又は標本操作領域を有する。標本を前処理部に(最初に、あるいはそれのみに)与えるのに先立って標本に行われることが想定される操作には、以下に限られないが、唾液標本の希釈(水又は特異性緩衝液を用いる)、唾液標本の濾過(特に、標本の非特異的な濾過、又は、前処理部で想定される前処理とは同一でない手法での標本の非特異的あるいは特異的な濾過)が含まれる。しかしながら、特定の実施形態によれば、迅速且つ単純な方法を提供することが想定され、唾液標本は、ここでの前処理部に相当する領域に与えられ、あるいは前もっての操作を受けることなくそのような領域に導かれる。
【0067】
装置に与えられる標本は、流体の形態で(例えば、吐いた唾の標本として、あるいは唾液をピペットで採取することによって)直接的に与えられてもよいし、吸収性の固体媒体(例えば、綿棒)から間接的に与えられてもよい。唾液を吸収するのに適した吸収媒体は技術的に知られている。使用され得る典型的な媒体には、以下に限られないが、ゲル、泡、ガラス繊維、綿、セルロース、レーヨン、及びその他の合成材料が含まれる。特定の実施形態によれば、本発明に係る方法及び装置は、唾液標本を前処理部に直接的に与える手段を含む。
【0068】
本発明に係る方法及び装置は更に、1つ以上の関心検体の検出を担う検出部を利用する。
【0069】
特定の実施形態において、当該方法及び装置は、検出部内のバイオセンサ表面を利用する。バイオセンサ表面は、1つ以上の検体の検出を確かにする分子を有する。それらの分子の性質は、検出が基礎とする原理によって決定される。本発明に従った検出部での1つ以上の検体の分析方法は、直接(非競合)分析(アッセイ)及び競合アッセイを含む。特定の実施形態によれば、検体は直接的に検出される。代替的な特定の実施形態によれば、検体は間接的に検出される。何れの種類の分析においても、検出は、結合した、あるいは結合していない、検体又は抗原特異的な分子の何れかを測定することができる。
【0070】
直接検出が想定される場合、バイオセンサ表面は、検体特異分子、すなわち、1つ以上の検体を特異的に結合させることが可能な分子を有する。競合すなわち間接的な検出が想定される場合、バイオセンサ表面は検体又は検体類似体を有する。
【0071】
本発明の状況において用いられる、1つ以上の検体を特異的に結合させることが可能な好適な分子は、検体特異分子は検体と特異的に相互作用するものの、検出を妨げる成分の特異的な除去に使用され得る分子と基本的に同一の性質を有する。典型的な特異性相互作用には、DNA/DNA若しくはDNA/RNA結合、タンパク質/タンパク質、タンパク質/DNA及びタンパク質/糖質相互作用、抗体/抗原相互作用、並びにレセプター(受容体)/リガンド(配位子)結合が含まれる。また、検体(例えば、酵素阻害薬、医薬品、ライブラリ・スクリーニングから分離された鉛化合物)を検出するために合成分子が用いられ得る。従って、検体特異プローブの例には、以下に限られないが、オリゴヌクレオチド、抗体、酵素基質、受容体リガンド、レクチンなどが含まれる。
【0072】
特定の実施形態によれば、検体特異分子は、(上述のように、)単クローン性抗体若しくは多クローン性抗体、ナノボディ、及びそれらのフラグメント若しくは誘導体である。
【0073】
典型的に、検体特異分子は表面(バイオセンサ表面)に設けられ、それにより、検体特異分子への検体の結合が、検出器によって直接的あるいは間接的に検出され得る。他の例では、標本を検体特異分子に接触させる手段が検出部に備えられる。検体特異分子との検体の結合は、(例えば、検体特異分子を結合させることが可能な分子を用いて)表面の錯体を捕捉することによって検出され得る。加えて、あるいは代えて、錯体は検体特異分子上に存在する標識の結果として検出部にて検出される。
【0074】
検体又は検体特異プローブは、バイオセンサ表面に直接的あるいは間接的に被覆され得る。生体分子で表面を被覆する方法は、技術的に知られており、以下では例を説明する。
【0075】
本発明の状況における検出は、典型的に、標識の存在によって確実にされる。典型的な標識には、以下に限られないが、発色団、放射性標識、エレクトロルミネセント、化学発光、リン光、蛍光、又は反射性の標識が含まれる。
【0076】
方法及び装置の特定の一態様によれば、検出は、(典型的に、磁化可能粒子の使用を伴う)磁気作動を伴う。磁気作動は、検出を容易にするように、検出すべき分子を局所的に集めるために用いられてもよく、且つ/或いは磁界の変化を測定することによって実際の検出処理のために用いられてもよい。例えば、成分(例えば、粒子など)の存在は、表面に近接され且つ該表面が外側部分を成す部材内に埋め込まれた磁気センサ素子などによって検出されることができる。他の例では、フーリエ変換赤外分光(Fourier transform infrared spectroscopy;FTIR)を用いた粒子の光学的な検出が想定され、表面が外側部分を成す部材は電磁放射線(例えば、光)に対して透明にされる。典型的に、磁化可能粒子の磁気的な検出又は光学的な検出を用いる方法は、表面近くの、あるいは表面に結合された(典型的に10nm−5000nm程度)成分を検知することができる。
【0077】
故に、本発明に係る装置及び方法の特定の実施形態において、磁気粒子又は磁化可能粒子の使用が想定される。特に、検出は、検出部内の磁化可能粒子の存在及び/又は量を決定することを伴う。検出部内で使用される磁化可能粒子は、前処理部で使用され得る磁化可能粒子と異なっていてもよい。
【0078】
本発明の状況で使用される磁化可能粒子の性質はクリティカルなものではない。好適な磁化可能粒子には、完全なる無機粒子、及び無機材料と有機材料(例えば、ポリマー)との混合物である粒子が含まれる。
【0079】
磁化可能粒子、特に、常磁性粒子及び超常磁性粒子は、例えば高スループット臨床免疫学的検定器具、標本精製、細胞抽出においてなど、生化学分析にて広く使用されている。幾つかのダイアグノスティックス会社(ロシュ、バイエル、ジョンソン&ジョンソン、アボット、ビオメリューなど)が、例えば免疫学的検定、核酸抽出及び標本精製などのための、磁化可能粒子を備えた試薬の製造販売を行っている。
【0080】
磁化可能粒子の表面への検体特異分子又は検体の付着は、技術的に記載された方法によって行われ得る。例えば、粒子は例えばヒドロキシル基、カルボニル基、アルデヒド基又はアミノ基などの官能基を携え得る。これらは一般的に、例えば被覆されていない単分散超常磁性粒子を処理することによって、このような官能基のうちの1つを担持するポリマーの表面コーティングを提供する、例えば、ポリグリコールとともにポリウレタンでヒドロキシル基を提供する、セルロース誘導体でヒドロキシル基を提供する、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー又は共重合体でカルボニル基を提供する、あるいは、アミノアルキル化されたポリマーでアミノ基を提供する、ことによって提供される。米国特許第4654267号は、数多くのこのような表面コーティングを紹介している。米国特許第4336173号、4459378号及び4654267号に従った粒子の修飾によって、その他の被覆粒子も準備され得る。特定の一種類の粒子の場合、表面は、(CHCHO)8−10リンクを介してポリマー骨格に接続された−OH基を担持する。他の特定の粒子は、メタクリル酸の重合によって得られた−COOH基を担持する。例えば、粒子内に当初存在するNH基が、米国特許第4654267号に記載されているようにジエポキシドを用いて反応された後、メタクリル酸を用いた反応が行われて、末端ビニル基が提供され得る。メタクリル酸を用いた溶液重合は、末端カルボニル基を担持するポリマーコーティングを生じさせる。同様に、ジエポキシドを用いた反応の上述の生成物質を用いてジアミンを反応させることによってアミノ基が導入され、例えばアミノグリセロールなどのヒドロキシルアミンを用いた反応によってヒドロキシル基が導入される。粒子への生物活性分子の結合は、不可逆的であり得るが、また、粒子と生物活性分子との間での架橋形成のためのリンカー分子の使用によって可逆的になり得る。そのようなリンカーの例には、特定のタンパク質分解認識部位を備えたペプチド、特定の制限酵素に関する認識部位を備えたオリゴヌクレオチド配列、又は還元性ジスルフィド基を有するもののような化学的に可逆な架橋基が含まれる。ピアス・バイオテクノロジー社(米国、イリノイ州、ロックフォード)から、多様な可逆架橋基を入手することができる。他の例では、分子の固定化は、共有結合によってではなく物理吸着によって行われる。例えば、多くのタンパク質は疎水性の表面に容易に固定され得る。これは、粒子の表面及び巨視的な表面(例えば、バイオセンサ表面)への分子の固定の何れにも当てはまる。
【0081】
磁化可能粒子は、ナノメートルからマイクロメートルまでの範囲内の様々なサイズで商業的に入手可能である。磁界によって移動されることができ且つ(必要に応じて)高感度の検出を可能にする限り、本発明の状況での使用に好適であるとして様々な大きさ(以下に限られないが、例えば10nm−5μm、典型的に50nm−1μm)の磁化可能粒子が想定される。同様に、粒子の形状(球体、回転楕円体、棒状)はクリティカルでない。例えば異なる磁気特性及び/又は光学特性を有するものといった異なる種類の磁化可能粒子が、1つの反応チャンバー内で同時に使用され得ること(磁気粒子の多重化)が想定される。これは、2つ以上の検体を検出する必要がある場合に当てはまり得る。
【0082】
本発明にて提供される方法、装置及びツールの特定の実施形態は、検出部内での磁化可能粒子の、その磁気/磁化可能特性又は光学特性に基づく検出を想定する。加えて、あるいは代えて、磁化可能粒子に直接的に付着されるか検体を介して該粒子に間接的に結合されるかの何れかである標識の存在に基づいて、磁化可能粒子が検出され得ることが想定される。磁化可能粒子に結合する好適な標識については上述した。従って、特定の実施形態において、ここで説明する方法及び装置にて使用される磁化可能粒子は標識付けられる。標識は、無機成分又は有機成分を介して外側で磁化可能粒子に付与され、あるいは粒子内に組み込まれ得る。
【0083】
更なる特定の実施形態において、標識としての磁化可能粒子と非磁気標識との双方を有する分子(例えば、検体特異化合物又は検体)が用いられる。
【0084】
様々な種類の検出が想定されるので、検出部は、検出がどのように実行されるかと装置とに応じて、様々な物理形態を取ることができ、例えば、二次元又は三次元とされてもよい。バイオセンサ表面は、その中を標本が流れ得るように多孔質にされてもよいし、多孔質でないものにして、その上を標本が移動することを可能にしてもよい。
【0085】
典型的に、検出部の機能は検出器によって確保され、すなわち、例えばバイオセンサ表面上などの検出部にて、検出手段が検体の存在を検出することができる。特定の実施形態において、検出は、以下に限られないが例えば磁気信号、磁気抵抗、ホール効果、光信号(反射、吸収、散乱、蛍光、化学発光、ラマン、FTIRなど)、音響信号(水晶振動子マイクロバランス(QCM)、表面音響波(SAW)、バルク音響波(BAW)など)などの信号に基づく。特定の実施形態において、信号は、例えば特別な機器を用いることなく検出可能な色変化などの光信号である。信号の生成は、直接的、すなわち、表面に結合された標識の直接的な効果であってもよいし、例えば色変化を確保する酵素の基質といった反応物質の付加の結果であってもよい。
【0086】
本発明の特定の一態様は、1つ以上の検体の検出を妨げる唾液標本の部分の少なくとも一部を特異的あるいは非特異的に除去するための1つ以上の前処理部と、1つ以上の検体の検出を可能にする検出部とを有する装置に関する。
【0087】
特定の実施形態によれば、(最後又は唯一の)前処理部及び検出部は、互いに直接隣接する。他の例では、前処理部及び検出部は、不活性な領域、チャネル又はチャンバーによって離隔される。そのような不活性領域の例には、以下に限られないが、微小流体デバイス内の微小流体チャネル(図1参照)、側方流動デバイス内の固体基板(場合により、毛細管作用を備える)などが含まれる。
【0088】
1つの前処理部から別の前処理部への移動、及び/又は前処理部から、場合により不活性領域を介しての、検出部への移動は、様々な手法で確保され得る。特定の実施形態において、標本は、1つ以上の前処理部及び検出部を有する装置内を鉛直方向に流れる。これは、重力又は毛細管引力の何れかに基づき得る。加えて、あるいは代えて、装置が、例えば毛細管力又は装置内に流体流を生成する力(例えば、機械的な流体流、又は音響的あるいは超音波による流体励起による)によって、横方向の流れを確保することが想定される。特定の実施形態において、例えば結合表面に向かう煙突形状といった装置の物理特性が、前処理部及び/又は検出部へと向かう粒子の移動を保証する。
【0089】
特定の実施形態において、磁界内で移動される磁気粒子を利用する装置が提供される。特に、磁気/磁化可能粒子の使用は検出部において想定される。加えて、あるいは代えて、磁化可能粒子の使用は1つ以上の前処理部において想定される。磁界によって磁気(又は磁化可能)粒子に作用する力は、この磁界の勾配及び粒子の磁化率によって与えられる。磁気力は計算することができる(例えば、J.D.Jackson、「Classical Electrodynamics」、John Wiley&Sons,Inc.、1999年を参照)。結果として、磁気粒子への力は磁界の勾配に関係する。換言すれば、磁気粒子は、より小さい磁界を有する領域から、より大きい磁界を有する領域へと移動する性質を有する。
【0090】
前処理部及び検出部の双方において磁気作動が想定される場合、磁気作動は異なる領域では同時に実行されないが、標本が1つの領域から次の領域へと移動されるときに相互に続けて実行される。
【0091】
従って、1つ以上の磁界生成手段によって1つ以上の磁界が生成され得るシステムが提供される。本発明においては、例えば永久磁石、電磁石、コイル及び/又はワイヤなど、様々な種類の磁界生成手段が想定される。粒子への磁気力の強さは、誘起される進行距離が、磁界なしで進行される距離より大きくなるようにされる。すなわち、磁気力は並進ブラウン運動より優勢にされるべきである。
【0092】
本発明によれば、1つ以上の磁界生成手段によって生成される磁界は、一定、パルス状、又は強度変化するものの何れかにされ得る。また、2つ以上の磁界が生成される場合、それらの正確な向きは固定にもされ得るし、可変にもされ得る。
【0093】
特定の実施形態によれば、磁界生成手段は電磁石又は1つ以上の電線を有する。これは、装置内の部品の機械的な移動を回避することを可能にする。特定の実施形態によれば、磁界生成手段は前処理部及び/又は検出部の下に配置される。
【0094】
ここで説明する方法及び装置の特定の実施形態において、少なくとも1つの磁界により、検出が行われるバイオセンサ表面である検出部内の領域へと向かう移動が確保される。磁界を生成する手段と組み合わせて使用され得るカートリッジである装置が想定される。加えて、あるいは代えて、磁界を生成する手段は装置内に組み込まれる。
【0095】
特定の実施形態によれば、外部からの物理的な力の印加(例えば、プランジャーによる圧力の印加)に頼らない装置が提供される。
【0096】
特定の実施形態において、本発明に従った装置は側方流動デバイスである。更なる特定の実施形態において、装置は微小流体デバイス、又は微小流体デバイス内で使用される(使い捨て)カートリッジである。微小流体デバイスは、ここでは、少なくとも1つの次元において大きさが0.05−5000μmの範囲内、特に10μmと500μmとの間、にある形状(例えば、チャネルなど)を有する装置を意味する。
【0097】
特定の実施形態によれば、本発明に係る装置は、ヒドロキシアパタイトを有する1つ以上の前処理部を有する。
【0098】
本発明に係る装置は更に検出部を有する。特定の実施形態において、検出部はバイオセンサ表面を有する。これは典型的に、分子、より具体的にはプローブ、が結合され得る特別に誘導体化された表面である。好適な表面の例には、ガラス、金属、プラスチック、有機結晶若しくは無機結晶(例えば、シリコン)、非晶質有機材料若しくは非晶質無機材料(例えば、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム)が含まれる。好適な表面材料及び連結特性は技術的に当業者に知られており、例えば、A.M.Usmani及びN.Akmalによる「Diagnostic Biosensor Polymers」(American Chemical Society、1994 Symposium Book Series 556、ワシントンDC、米国、1994年)、Y.Lvov及びH.Mhwald監修の「Protein Architecture,Interfacing Molecular Assemblies and Immobilization Biotechnology」(Marcel Dekker、ニューヨーク、2000年)、David Wildによる「The Immunoassay Handbook」(Nature Publishing Group、ロンドン、2001年、ISBN1-56159-270-6)、又はKress-Rogersによる「Handbook of Biosensors and Electronic Noses,Medicine,Food and the Environment」(ISBN0-8493-8905-4)に記載されている。被覆されたプラスチック及び被覆されていないプラスチックにタンパク質を結合させるサポート及びガラスのサポートがAngenendt等(2002年、Anal Biochem. 309、pp.253-260)にて開示されている。また、Dufva(2005年、Biomol. Eng. 22、pp.173-184)は、オリゴヌクレオチドを付着させる方法及びこの処理に影響を及ぼす要因を検討している。
【0099】
特定の実施形態において、バイオセンサ表面が検体、検体類似体又は検体特異プローブで被覆されるシステム及び装置が提供される。
【0100】
本発明に従った装置は、検出部内での検体の検出を確保する検出手段と組み合わせて使用されるカートリッジとして提供されてもよい。加えて、あるいは代えて、ここで説明する方法を実行するシステム及び装置に、好適な検出手段が組み込まれてもよい。好適な検出手段には、例えば以下に限られないが磁気信号、磁気抵抗、ホール効果、光信号(反射、吸収、散乱、蛍光、化学発光、ラマン、FTIRなど)、音響信号(水晶振動子マイクロバランス(QCM)、表面音響波(SAW)、バルク音響波(BAW)など)などの関連信号を検出することが可能な手段が含まれる。特定の実施形態において、磁気抵抗素子である検出手段が設けられる。
【0101】
故に、特定の実施形態によれば、バイオセンサ表面内又はその上の磁気粒子を検出するセンサは、検出部に一体化される(例えば、磁気抵抗センサが一体化される)。他の例では、検出手段又はセンサ(例えば、光ユニット)は装置の一体化部分ではない。そのような実施形態において、検出部は必要に応じて、検出部内、より具体的にはバイオセンサ表面、での標識の検出を可能にする検出窓を有する。検出窓の位置は、検出部内のバイオセンサ表面の位置によって決定される。より具体的には、検出窓は、バイオセンサ表面に適合されるように、バイオセンサ表面の上方又は下方の地点又は長さ領域を中心として配置される。
【0102】
特定の実施形態において、検出は、検出部内のバイオセンサ表面の下のセンサによって行われる。必要に応じて、バイオセンサ表面を支持する部材に検出窓が設けられる。
【0103】
検出が磁界又は光学的な方法に基づく場合、特別な検出窓を設けることは、例えば検出部及び/又はバイオセンサ表面部材の全て又は一部が検出すべき信号に対して透明である場合などにおいて、余計なこととなり得る。
【0104】
ここで説明するシステム及び装置の更なる特定の実施形態は、上述の構成要素に加えて、以下の構成要素のうちの1つ以上を有する。本発明に係るシステムは通常、標本、磁化可能粒子及び/又は試薬を反応チャンバー内に導入するための1つ以上の挿入手段を有する。これらは必要に応じて、複数の試作の各々を有するソースに結合されることができる。必要に応じて、本発明に従った装置は、試薬、反応廃棄物及び/又は場合により磁化可能粒子をバイオセンサ表面及び/又は検出部から取り出すための排出手段を有する。
【0105】
本発明の特定の実施形態は、ここで説明する前処理部及び検出部を統合する(場合により、使い捨ての)カートリッジを提供する。使い捨てカートリッジは更に、内部に統合された磁化可能粒子を有することができ、あるいは、これらは別個に提供されることができる。特定の実施形態において、カートリッジの材料は、その内部に磁界が生成され得るようにされる。例えば、カートリッジは、ガラス、又は例えばプレキシガラス[ポリ(メチル)メタクリレート]、クリアPVC(ポリ塩化ビニル)、PC(ポリカーボネート)、COP(例えば、Zeonex)若しくはPS(ポリスチレン)などの合成材料から成る。
【0106】
本発明の状況において想定されるカートリッジは更に、必要に応じて、磁界勾配を生成するための少なくとも1つの物理的なキャリアを有する。
【0107】
本発明において説明される装置は、小さい標本容積に対する、迅速、ロバスト且つ取扱が容易な、ポイントオブケア・バイオセンサとして使用されることができる。上述のように、装置又はカートリッジは、小型の読み取り機とともに使用される使い捨てアイテムとすることができ、必要に応じて、1つ以上の磁界生成手段及び/又は1つ以上の検出手段を格納し得る。場合により、装置の唯一の部品、又はより多くの部品(例えば、前処理部、検出部、又はバイオセンサ表面のみ)が使い捨てにされる。
【0108】
更なる一態様によれば、本発明は、唾液標本内の検体の検出及び/又は定量化のために本発明に係る装置及び/又はカートリッジが使用される方法を提供する。
【0109】
検出すべき検体の性質は本発明にとって本質的ではない。本発明の状況において想定される方法は、様々な種類の分子、より具体的には、DNA、RNA、タンパク質、糖質、脂質、及び有機の同化産物若しくは代謝産物などの生体分子、とし得る検体の検出を含む。しかしながら、特定の一実施形態によれば、唾液標本内の薬物の存在を検出する方法が提供される。
【0110】
流体標本内の薬物を検出する方法は、技術的に周知であり、例えば先出の特許文献1に記載されている。本発明に係る方法を用いて検査され得る薬物には、以下に限られないが、幻覚薬、精神刺激薬、鎮痛剤、抑制薬、乱用吸入抗原、睡眠薬及びアルコールが含まれる。特定の一実施形態によれば、検出すべき1つ以上の検体には、アルコール、アヘン剤(OPI)、コカイン(COC)、例えば大麻若しくは特にテトラヒドロカンナビノール(THC)などのカンナビノイド、アンフェタミン/メタアンフェタミン(AMP)、モルヒネ(MOR)、ベンゾジアゼピン(BZO)、1−(1’−フェニルシクロヘキシル)ピペリジン(PCP)、バルビツレート(BAR)、メタドン(MET)及びヘロイン、又は、例えば以下に限られないが、コデイン、パパベリン、ノスカピン、ヒドロコドン若しくはフェンタニルなどのモルヒネのような作用を有するその他のオピオイドが含まれる。これらの薬物の誘導体又は代謝産物も検出され得る。特定の実施形態によれば、この方法は特に薬物乱用検査に適している。
【0111】
本発明に係る検出方法においては様々な分析原理が想定される。
【0112】
特定の実施形態において、検出は、検体特異プローブへの結合による検体の直接検出に基づく。
【0113】
これは、図2A及び2Bに特定の一実施形態によって示されている。バイオセンサ表面(5)に結び付けられた検体特異プローブ(6)を有する検出部(4)を有する装置が設けられている。検出部内で、標本は、検出すべき唾液標本内の検体に特異的に結合することが可能な分子で被覆された磁化可能粒子(7)に接触させられる。特定の実施形態によれば、これらの分子はバイオセンサ表面の分子と同一でないものにされ、双方の分子が同時に関心検体を結合させ得ることが確保される。図2Bに示した装置の使用中において、唾液標本内の検体(8)は、磁化可能粒子(7)上の検体特異分子に結合する。磁界の印加による、結合していない磁気粒子のバイオセンサ表面(5)からの除去後、結合している磁気粒子を検出することができる。
【0114】
特定の実施形態において、検出は、検体特異プローブへの検体の競合的結合に基づく。例えば、バイオセンサ表面が検体のような化合物又は検体類似体で被覆される方法が想定される。磁化可能粒子で標識付けられた検体特異プローブが、バイオセンサ表面と接触させられ、検体のような化合物に弱く結合する。検体を有する標本と接触すると、検体が検体特異プローブに強く結合し、バイオセンサ表面から移動される。検出部内の(検体特異プローブに結合した)磁化可能粒子の残量は、標本内の検体の濃度に反比例する。
【0115】
競合アッセイの更なる代替的な実施形態において、検体特異プローブは、結合表面に固定され、標本を結合表面に接触させるのに先立って、磁気的に標識付けられた検体類似体又は検体が標本に付加される。
【0116】
ここで想定される方法の特定の実施形態において、検体の検出は、例えば二次抗体、標識、基質など、1つ以上の更なる試薬を検出部に付加することを必要とする。
【0117】
当業者に明らかなように、上述の実施形態は本発明を限定するものではなく、上述の分析(アッセイ)には更なる変形が想定される。
【0118】
ここで説明する方法の特定の実施形態においては、結合していない磁化可能粒子を洗い流す代わりに、結合していない磁化可能粒子は、検体の存在(及び量)を決定するために使用される。
【0119】
特定の実施形態によれば、本発明に係る方法は、標本の磁化可能粒子(例えば、磁気的に標識付けられた検体特異プローブ、又は磁気的に標識付けられた検体若しくは検体類似体)との接触と、前処理部内及び/又は検出部内での粒子の移動とを含む。磁化可能粒子は、流体の試薬又は乾燥した試薬の一部とされ得る。磁化可能粒子に加えて、試薬は例えば、緩衝塩、浄化剤、生化学的相互作用を支援する生体分子などを含むことができる。これらの工程は、使用される試薬(すなわち、検体、検体特異プローブ、標識)と混合可能な例えば標準緩衝液などの液体、最小限の前処理を施された標本、又は純粋な標本(例えば、血液又は唾液)である液体内で実行され得る。洗浄目的で前処理部及び/又は検出部に液体が導入され得る。他の例では、これらの方法は、特にバイオセンサ表面の位置に、最小限の量の液体を用いて実行される。
【0120】
特定の実施形態によれば、本発明に係る方法は更に、検出部内に存在する標識の量を定性的あるいは定量的に決定することを可能にする検出工程を有する。標識の量は、標本内の検体の量の(直接的あるいは間接的な)指標である。この検出工程は、上述の一つ以上の検出手段を用いることで行われる。
【0121】
本発明の更なる一態様は、検体の検出における唾液標本の前処理にヒドロキシアパタイトを使用することに関する。ヒドロキシアパタイトを用いた一度以上の唾液標本の前処理により、標本からムチン分子が除去され、それらが標本の可動性を妨げること、及び検体の検出におけるそれらの干渉が防止される。
【0122】
従って、本発明は、唾液標本を少なくとも一度ヒドロキシアパタイトに接触させることを有する、唾液内の検体を決定する方法を提供する。特定の実施形態において、ヒドロキシアパタイト前処理は濾過工程と組み合わされる。
【0123】
本発明のこの態様の特定の実施形態において、ヒドロキシアパタイトを用いた前処理は、検出装置又はカートリッジに統合される。
【0124】
本発明のこの態様の特定の実施形態において、検出部に加えてヒドロキシアパタイト搭載フィルタを有する装置が提供される。
【0125】
特定の実施形態において、磁化可能粒子が検体の検出に使用される。より具体的には、検出部に蓄積された磁化可能粒子の存在及び/又は量を検出するために、磁化可能粒子の磁気特性が使用される。加えて、あるいは代えて、磁化可能粒子の検出は、粒子の光学特性、又は磁化可能粒子に直接的あるいは間接的に付着された標識(上記参照)の光学特性に基づいて、視覚的あるいは光学的に行われる。特定の一実施形態によれば、磁化可能粒子を用いるとき、検体の検出にFTIRが使用される。
【0126】
当業者にとって、本発明を具現化するためのその他の構成も自明であろう。理解されるように、本発明に従った装置及び方法に関して、ここでは、好適な実施形態、具体的な構造及び構成並びに材料を説明したが、本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、形態及び細部における様々な変形又は変更が為され得る。単に例示のためのものと解されるべき以下の実施例によって本発明を例示する。本発明はここで説明した特定の実施形態に限定されるものではない。
【0127】
本発明に従った装置及び方法は、特に免疫学的検定、より具体的には競合アッセイとして実行される免疫学的検定に適したものである。
【0128】
以下、実施例を説明する。
【0129】
実施例1:前処理工程を繰り返すことによる干渉ムチンの除去
超常磁性ビーズを、唾液の干渉化合物を特異的に結合させることが可能な分子、このケースでは抗ムチン抗体、でコーティングする。第1の工程において、抗ムチン抗体で被覆された常磁性ビーズを有する第1の前処理部に唾液標本を接触させる。磁界の印加により、流体からビーズを除去する。そして、標本を第2の前処理部に移動させる。常磁性ビーズとの標本の接触の効果の観察のため、例えば、ムチンにより引き起こされる超常磁性ビーズのクラスター化又は凝集状態を、前処理部との接触中にモニタすることができる。これは、顕微鏡の下で、あるいは例えばナノサイザ(マルバーン社製)を用いることによって、標本又はその一定分量(アリコート)を調査することによって行う。凝集又はクラスター化が観測されたとき、更なる前処理部に標本を与えること、又は超常磁性粒子が除去され且つ新たな被覆超常磁性粒子で置換された第1の前処理部に再び標本を与えることの何れかによって、前処理工程を繰り返す。必要に応じて、前処理工程は、ビーズのクラスター化が観察されなくなるまで繰り返す。
【0130】
次に、唾液標本を検出部に移送し、そこで検体の検出を行う。この例において、検体はモルヒネである。モルヒネは唯一の抗原決定基(エピトープ)を有する小分子であり、標本内のモルヒネの量を決定するためには競合アッセイを行わなければならない。
【0131】
1μlのBSA−モルヒネ(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)内に1mg/ml)をウェル上に均一に塗布し、それを乾燥させることによって(モルヒネ−3−グルコロニドが過剰なBSA内にそのリジン残基を解して結合される)、検出部のポリスチレン表面にモルヒネ−BSA複合体をコーティングする。コーティング後、表面を1時間、10mg/mlのBSA+PBS内0.65%のTween−20でブロッキングする。そして、ブロッキング溶液を廃棄する。
【0132】
(1つ以上の)前処理部から得られた唾液標本を、モルヒネで被覆された検出部内の表面に接触させる。同時に、抗モルヒネ抗体で被覆された常磁性粒子(溶液総量50μlの10mg/mlのBSA+PBS内0.65%のTween−20の溶液内で抗モルヒネAb被覆常磁性粒子(200nmプロテインG被覆磁性粒子)を1:10で希釈)を付加する。唾液内にモルヒネが存在しなければ、抗体を有する全ての磁化可能粒子が、ウェル上にコーティングされたモルヒネに結合する。効率的な結合を確保するため、センサ表面に常磁性ビーズを引き付けるように磁界を印加する。唾液内(又は、1−40ng/mlモルヒネを添加された制御標本内)にモルヒネが存在するとき、抗体の一部は唾液のモルヒネで飽和され、表面にコーティングされた検体に結合しない。
【0133】
表面から離れる向きの第2の磁界を印加することで、被覆検体に結合していない磁化可能粒子をバイオセンサ表面から除去することができる。バイオセンサ表面に結合している常磁性粒子の量を測定することによって検出を行う。
【0134】
実施例2:側方流アッセイを用いたアンフェタミンの迅速検出
標本パッド部材の表面に抗ムチン抗体が固定された標本パッド(多孔質構造)を有する前処理部に唾液標本を付加する。唾液内に存在するムチンは、固定された抗ムチン抗体に結合することになる。インキュベーション時間は標本パッドサイズ及び/又は標本パッドの気孔サイズによって影響され得る。固定される抗体の数及び標本パッドでのインキュベーション時間は、干渉マトリックス成分が十分に除去されて、a−特異結合又は移動固相の凝集/クラスター化がもはや問題とならなくなるように調整する。
【0135】
前処理ゾーンを通り抜けての移動後、標本を、アンフェタミン又はアンフェタミン類似体で標識付けられた色付き粒子に標本を接触させるゾーンに移す。そして、標本は更に、‘検出ライン’を形成するように抗アンフェタミン抗体を配置した検出部を有する検出部まで移る。唾液標本内に存在する(標識付けられていない)アンフェタミンは、標識付けられた抗アンフェタミン抗体上の結合部位を占めることになり、それにより、色付き粒子で標識付けられたアンフェタミンの検出ラインでの結合及び集中が防止される。標本内にアンフェタミンが存在しない場合、標識付けられたアンフェタミンの全てが検出ゾーンに結合し、色付きの帯が生じる。これは視覚的に検出することができる。
【0136】
実施例3:HAP濾過を用いる分析でのアヘン剤の検出
超常磁性粒子(Ademtech社の500nmCOOH被覆粒子)を、単クローン性抗アヘン剤抗体でコーティングした。BSA−アヘン剤でコーティングされた表面を設けることにより、検出部を準備する。テープを用いてバイオセンサの頂部及び底部を組み立て、該センサを室温の実験室条件下に維持した。4つの異なる前処理条件を用いた:前処理なし、スポンジ・ボブフィルタ材料(Filtrona社、密度0.29g/cm)、及び50mg/mlのHAPとの接触とその後のフィルタ。次に、前処理した緩衝液又は唾液内で粒子を0.2wt%で再分散させた。
【0137】
分析緩衝液、又は分析緩衝液に70%の唾液(唾液提供者1−3)の何れかを有する標本を、異なる前処理部に掛け、続けて磁化可能粒子と混合した。
【0138】
異なる前処理条件から得られた標本内のアヘン剤の検出を、光バイオセンサシステムにて競合アッセイを用いて行った。競合アッセイにおいて最大信号を得るために薬物を適用することはしていない。毛細管チャネルによる自律的な充填により、標本を検出部に接触させた。磁気ビーズをバイオセンサ表面に引き付ける磁界を印加した。磁気コイルシステムを用いて磁力/磁気作動を適用した。結合していないビーズを基質表面から引き離すため、カートリッジ上に別の磁界を印加した。総分析時間(充填、再分散及び磁気作動)は35秒(5sのカートリッジ充填、30sの作動)であった。
【0139】
分析結果を図3にまとめた。ヒドロキシアパタイト・フィルタリング工程を用いないときに結果が変化し得ることが見て取れる。実際には、標本2においては、アヘン剤を有しない緩衝液と同様の結果を生じさせるのに、単なる標本の希釈で十分であった。しかしながら、異なる個体からの標本1及び3においては、標本マトリックスが検出を妨げた。濾過はこの問題を一部の標本(例えば、標本3を参照)では解決し得るが、標本1で正確な結果を生じさせるには、ヒドロキシアパタイトとの接触と組み合わせた濾過が最も適している。このように、ヒドロキシアパタイトは分析の感度を高める。
【0140】
同様の結果は、フィルタに固定されたヒドロキシアパタイト(例えば、ナノ粉末として)を用いるときにも得ることができる。このようなフィルタは、標本が、微小流体チャネルに流入して検査チャンバーに向かう前に、このフィルタを通って流れるように、微小流体デバイスのカートリッジに組み込まれ得る。
【0141】
同様の結果はまた、カートリッジの頂部に乾燥された磁化可能ビーズを用いて得ることができる。その場合、唾液は先ず、磁化可能粒子を含んだ前処理部に掛けられる。次に、標本は、毛細管チャネルによる自律的な充填により、検出部に接触させられる。検出部にて、磁気粒子は再分散し、上述のように磁気作動を用いて分析が行われる(実施例4も参照)。
【0142】
実施例4:HAP濾過及び検出用乾燥ビーズを用いる競合アヘン剤アッセイ
超常磁性粒子(Ademtech社の500nmCOOH被覆粒子)を、単クローン性抗アヘン剤抗体でコーティングした。BSA−アヘン剤(3印刷点)でコーティングされた表面を設けることにより、検出部を準備する。乾燥性緩衝液(10mMのTris社HCl、1wt%のBSA、10wt%のスクロース、pH7.5)内に磁気粒子を再分散させた。テープを用いてバイオセンサの頂部及び底部を組み立て、該センサを室温の実験室条件下に維持した。2つの異なる前処理条件を用いた:BNWフィルタ材料(Filtrona社、密度0.3g/cm)、及び500μlの唾液当たり20mg/mlのHAPとの接触とその後のBNWフィルタ。100%の唾液(唾液提供者1−5)を有する標本を異なる前処理部に掛け、続けて検出チャンバーに誘導した。
【0143】
異なる前処理条件から得られた標本における競合アッセイを、光バイオセンサシステムを用いて行った。競合アッセイにおいて最大信号を得るために薬物を適用することはしていない。毛細管チャネルによる自律的な充填により、標本を検出部に接触させた。磁気ビーズをバイオセンサ表面に引き付ける磁界を印加した。磁気コイルシステムを用いて磁力/磁気作動を適用した。結合していないビーズを基質表面から引き離すため、カートリッジ上に別の磁界を印加した。総分析時間(充填、再分散及び磁気作動)は35秒(5sのカートリッジ充填、30sの作動)であった。
【0144】
分析結果を図4にまとめた。ヒドロキシアパタイト・フィルタリング工程を用いないときには常に、結果(超常磁性ビーズのふ化後の信号変化を%で表している)が低くなっていることが見て取れる。競合検出アッセイにおけるこれらの低い信号は、肯定的な信号として誤って解釈され得る。唾液標本で高い信号を生じさせるには、ヒドロキシアパタイトとの接触と組み合わせた濾過が最も適していることが見て取れる。このように、ヒドロキシアパタイトは分析の感度を高め、且つ偽陽性結果のリスクを低下させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
唾液標本内の1つ以上の検体の存在を検出する装置であって:
(a)前記1つ以上の検体の検出を妨げる前記唾液標本の部分の、少なくとも一部を、特異的あるいは非特異的に除去する1つ以上の前処理部;及び
(b)バイオセンサ表面を有する検出部であり、該バイオセンサ表面が:
− 前記1つ以上の検体を特異的に結合させることが可能な分子;又は
− 前記1つ以上の検体、及び/又は検体類似体;
を有する、検出部;
を有する装置。
【請求項2】
微小流体デバイスである請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記1つ以上の前処理部は、前記1つ以上の検体の検出を妨げる前記唾液標本内の成分に特異的あるいは非特異的に結合することが可能な分子、で被覆された磁化可能粒子、を格納する1つ以上の別個のチャンバー内に含まれている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記1つ以上の前処理部は、前記1つ以上の検体の検出を妨げる前記唾液標本内の成分に特異的あるいは非特異的に結合することが可能な分子、を有する表面を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記表面は多孔質である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記表面は焼結された多孔質構造である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記1つ以上の検体の検出を妨げる前記唾液標本内の成分に結合する前記分子は、ヒドロキシアパタイトである、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記抗体は抗ムチン抗体である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記唾液標本を前記検出部に接触させる前に前記唾液標本を収容する中継部、を更に有する請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記検出部又は前記中継部は、前記1つ以上の検体を特異的に結合させることが可能な分子、で被覆された磁化可能粒子を格納する別個のチャンバーであり、該分子は前記バイオセンサ表面の前記分子とは異なる、請求項1又は9に記載の装置。
【請求項11】
使い捨て装置である請求項1に記載の装置。
【請求項12】
唾液標本内の1つ以上の検体の存在を検出する方法であって:
(a)前記1つ以上の検体の検出を妨げる前記唾液標本の部分の、少なくとも一部を、特異的あるいは非特異的に除去する1つ以上の前処理部;及び
(b)バイオセンサ表面を有する検出部であり、該バイオセンサ表面が:
− 前記1つ以上の検体を特異的に結合させることが可能な分子;又は
− 前記1つ以上の検体、及び/又は検体類似体;
を有する、検出部;
を有する装置に、前記唾液標本を接触させるステップと、
前記検体の存在を、前記検出部にて、競合アッセイ又は非競合アッセイにて検出するステップと、
を有する方法。
【請求項13】
前記1つ以上の前処理部のうちの少なくとも1つにおいて、前記唾液標本は、前記1つ以上の検体の検出を妨げる前記唾液標本内の成分に特異的あるいは非特異的に結合することが可能な分子、で被覆された磁化可能粒子を用いてインキュベートされる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の検体の検出を妨げる前記唾液標本内の成分に結合する前記分子は、ヒドロキシアパタイトである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
唾液標本内の検体を検出する方法であって、前記検体の検出を実行するのに先立って、前記唾液標本をヒドロキシアパタイトに接触させることを有する方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−522243(P2011−522243A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511144(P2011−511144)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052196
【国際公開番号】WO2009/144660
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【出願人】(310011376)コザート バイオサイエンス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】