喘息の処置方法
喘息の処置に有用な薬剤のための方法を開示する。該方法としては、PKC−θタンパク質の産生を阻害する薬剤、およびPKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性を阻害する薬剤のスクリーニングなどが挙げられる。ここで、かかる薬剤は、喘息の処置に有用である。該方法はまた、PKC−θプロモーターと作動可能に連結された核酸配列によりコードされたレポーター遺伝子産物の産生を阻害する薬剤のスクリーニングを含む。また、機能性PKC−θタンパク質の産生またはPKC−θタンパク質もしくはその機能性断片のキナーゼ活性を阻害する薬剤を投与することを含む、喘息の処置方法も開示する。内因性PKC−θの発現を欠く単離されたマスト細胞もまた開示する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願第60/532,525号(2003年12月24日出願)および米国特許仮出願第60/589,415号(2004年7月20日出願)(その各々の全内容を出典明示により本明細書の一部とする)の利益を主張するものである。
【0002】
(技術分野)
本発明は、生物学および免疫学の分野に関する。詳しくは、本発明は、喘息および喘息の処置方法に関する。
【0003】
(従来技術)
喘息は、可逆性気道閉塞および気道過剰応答(AHR)の再発性症状発現を特徴とする気道の慢性炎症性疾患である。喘息の患者の気道は、多くの場合、敏感であり、炎症を起こしている。喘息患者がアレルゲンまたはその気道を刺激する何かと接触すると、気道が収縮し(すなわち、気道壁周囲の筋肉が堅くなり)、患者は、呼吸するのが困難になる。気道の内膜(lining)は炎症を起こし、痰の生成および他のアレルギーの臨床徴候をもたらす。喘息の他の臨床徴候としては、息切れ、喘鳴、咳および胸苦しさ(これは、生命を脅かす状態になることがあり得、場合によっては致命的となり得る)などが挙げられる。
【0004】
既存の治療法は、症候性気管支痙攣および呼吸器の炎症を低減することに焦点を当てたものであるが、喘息患者の肺悪化の加速における長期気道リモデリングの役割の認識が高まってきている。気道リモデリングは、いくつかの病理学的特徴をいい、上皮平滑筋ならびに筋線維芽細胞過形成および/または化生、上皮下線維症ならびにマトリックス沈着などが挙げられる。これらのプロセスは、集合的に、致命的喘息の場合において気道の約300%までの肥厚をもたらす。喘息の病態生理学の解明においてなされた相当な進歩にもかかわらず、該疾患の有病率、罹患率および死亡率は、過去20年間で増加している。入手可能な最新データは、米国で約2000万人、世界中では1億5000万人の人々が喘息を患っていることを示す。ここ10年の間に、米国だけで、ほぼ190万の救急治療外来患者、454,000例の入院および4,000例を超える死亡が、喘息が直接の要因のものであった(年間基準)。
【0005】
アレルギー性喘息は、空気媒介性アレルゲンに対する不適当な炎症性反応によって最初に起こると、一般的に認められている。喘息患者の肺は、リンパ球、マスト細胞、および特に好酸球の激しい浸潤を示す。
【0006】
最新の研究で、喘息において観察される炎症に寄与する複雑な細胞相互作用および分子相互作用の一部が明らかになったが、知識との大きなギャップがなお存在する。
【0007】
喘息の原因に関する研究の結果、喘息の症状を処置するために、多種多様な薬物が利用可能となった。しかしながら、これらの薬物の多くは種々の欠点を有し、そのため、理想的な喘息処置には満たない。例えば、多くの薬物、例えば、エピネフリンおよびイソプロテレノールなどは、喘息の症状を短時間軽減するにすぎない。他の処置も、一定時間使用すると、有効性が低下する。さらに、一部の薬物(コルチコステロイド類など)は、重度の副作用を有し、その慢性使用が制限されている。喘息の分子的理解の進展だけでなく、さらに有益な喘息治療法の必要性が明らかにある。本発明は、これらの必要性に取り組むものである。
【0008】
(発明の開示)
本発明は、少なくとも一部、タンパク質キナーゼCシータ(PKC−θ)θが、呼吸器疾患状態(喘息が挙げられる)においてある役割を果たすというという本発明者の知見に基づく。したがって、本発明は、喘息の処置に有用な薬剤を同定するための方法、喘息または喘息様症状を患う患者の処置のための方法、および内因性PKC−θタンパク質発現を欠く単離されたマスト細胞を提供する。
【0009】
したがって、第1の態様において、本発明は、PKC−θタンパク質のモジュレーターの同定方法を提供する。該方法は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を、被験薬剤と接触させること;および被験薬剤がPKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性をモジュレートしたかどうかを測定することを含み、ここで、被験薬剤の存在下におけるPKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性の変化は、PKC−θタンパク質のモジュレーターを示す。ある特定の実施形態では、前記測定工程は、被験薬剤のキナーゼ活性を被験薬剤の非存在のときと比較することを含む。
【0010】
ある一部の実施形態では、該キナーゼ活性を低下させるPKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のインヒビターである。ある一部の実施形態では、該キナーゼ活性を増大させるPKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のアクチベーターである。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質、その機能性断片の該キナーゼ活性を少なくとも2倍低下させる。
【0011】
ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質は全長PKC−θタンパク質である。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質は、全長PKC−θタンパク質の機能性バリアントである。特定の実施形態では、機能性断片はPKC−θキナーゼドメインである。
【0012】
ある一部の実施形態では、前記接触工程は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片と被験薬剤の反応混合物を提供することにより行なわれる。ある特定の実施形態では、反応混合物が、50mM〜100mM、100〜150mM、150〜200mMおよび200〜250mMおよび250〜300mMからなる群より選択される濃度のNaClを含むバッファーの状態である。特定の実施形態では、NaClの濃度は250mMである。
【0013】
ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、哺乳動物(例えば、ヒトなど)における喘息の処置に有用である。ある一部の実施形態では、喘息はIgE媒介性喘息である。特定の実施形態では、該方法は、被験薬剤の効力を、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて評価することをさらに含み、ここで、対照薬剤と比べ、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて増大した効力を示す被験薬剤を喘息の処置に有用であると認める。
【0014】
ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその断片は、原核生物細胞、例えば、細菌細胞(例えば、大腸菌)などから得たものである。
【0015】
ある一部の実施形態では、前記接触工程は細胞内で行なわれる。
【0016】
ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化である。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化は、配列番号:1の695位のセリン残基、685位のセリン残基、538位のトレオニン残基および536位のトレオニン残基からなる群より選択されるアミノ酸残基において起こる。特定の実施形態では、自己リン酸化は、配列番号:1の538位のトレオニン残基において起こる。
【0017】
ある一部の実施形態では、該方法は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を被験薬剤およびPKC−θ基質と接触させることを含む。ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性は、PKC−θ基質のリン酸化である。ある一部の実施形態では、PKC−θ基質は、R-X-X-SモチーフまたはR-X-X-Tモチーフを含む(式中、Rはアルギニンであり、Xは、不明または任意の既知いずれかのアミノ酸であり得、Sはセリンであり、Tはトレオニンである。例えば、PKC−θ基質は、KKRFSFKKSFK (配列番号:5)、FARKGSLRQKN (配列番号:6)、FARKGSLRQ (配列番号:15)、KKRFSFKKSFK (配列番号:16)、QKRPSQRSKYL (配列番号:17)、KIQASFRGHMA (配列番号:18)、LSRTLSVAAKK (配列番号:19)、AKIQASFRGHM (配列番号:20)、VAKRESRGLKS (配列番号:21)、KAFRDTFRLLL (配列番号:22)、PKRPGSVHRTP (配列番号:23)、ATFKKTFKHLL (配列番号:24)、SPLRHSFQKQQ (配列番号:25)、KFRTPSFLKKS (配列番号:26)、IYRASYYRKGG (配列番号:27)、KTRRLSAFQQG (配列番号:28)、RGRSRSAPPNL (配列番号:29)、MYRRSYVFQT (配列番号:30)、QAWSKTTPRRI (配列番号:31)、RGFLRSASLGR (配列番号:32)、ETKKQSFKQTG (配列番号:33)、DIKRLTPRFTL (配列番号:34)、APKRGSILSKP (配列番号:35)、MYHNSSQKRH (配列番号:36)、MRRSKSPADSA (配列番号:37)、TRSKGTLRYMS (配列番号:38)、LMRRNSVTPLA (配列番号:39)、ITRKRSGEAAV (配列番号:40)、EEPVLTLVDEA (配列番号:41)、SQKRPSQRHGS (配列番号:42)、KPFKLSGLSFK (配列番号:43)、AFRRTSLAGGG (配列番号:44)、ALGKRTAKYRW (配列番号:45)、VVRTDSLKGRR (配列番号:46)、KRRQISIRGIV (配列番号:47)、WPWQVSLRTRF (配列番号:48)、GTFRSSIRRLS (配列番号:49)、RVVGGSLRGAQ (配列番号:50)、LRQLRSPRRTQ (配列番号:51)、KTRKISQSAQT (配列番号:52)、NKRRATLPHPG (配列番号:53)、SYTRFSLARQV (配列番号:54)、NSRRPSRATWL (配列番号:55)、RLRRLTAREAA (配列番号:56)、NKRRGSVPILR (配列番号:57)、GKRRPSRLVAL (配列番号:58)、QKKRVSMILQS (配列番号:59)、およびRLRRLTAREAA (配列番号:60)からなる群より選択されるアミノ酸配列(普遍的(universal)一文字アミノ酸コードに基づく)を有し得る。
【0018】
ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片は、細胞(例えば、マスト細胞またはCD4+T細胞など)内にある。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を発現する細胞を、被験薬剤と接触させること、および被験薬剤が細胞内において機能性PKC−θタンパク質の量を低下させたかどうかを測定することを含み、ここで、細胞内において機能性PKC−θタンパク質の量を低下させる被験薬剤を、PKC−θタンパク質のモジュレーターであると認める、PKC−θタンパク質のモジュレーターの同定方法を提供する。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、哺乳動物(例えば、ヒトなど)における喘息の処置に有用である。ある一部の実施形態では、喘息はIgE媒介性喘息である。特定の実施形態では、該方法は、被験薬剤の効力を、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて評価することをさらに含み、ここで、対照薬剤と比べ、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて増大した効力を示す被験薬剤を喘息の処置に有用であると認める。
【0020】
ある一部の実施形態では、該薬剤は、細胞内において、機能性PKC−θタンパク質をコードする核酸分子の発現を低下させる。特定の実施形態では、喘息はIgE媒介性喘息である。ある一部の実施形態では、哺乳動物はヒトである。ある特定の実施形態では、機能性PKC−θタンパク質は、細胞(例えば、マスト細胞またはCD4+T細胞(例えば、TH2 T細胞))内にある。
【0021】
ある特定の実施形態では、該薬剤は、機能性PKC−θタンパク質をコードするRNAの量を低下させる。ある一部の実施形態では、該薬剤は、機能性PKC−θタンパク質をコードするRNAの翻訳を阻害する。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、PKC−θプロモーターと作動可能に連結されたレポーター遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を被験薬剤と接触させること、および被験薬剤がレポーター遺伝子産物の産生を低下させたかどうかを測定することを含み、ここで、レポーター遺伝子産物の産生を低下させる被験薬剤を喘息の処置に有用な薬剤であると認める、哺乳動物において喘息の処置に有用な薬剤を同定するための方法を提供する。
【0023】
ある特定の実施形態では、PKC−θプロモーターと作動可能に連結されたレポーター遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、細胞(例えば、マスト細胞またはCD4+T細胞)内にある。ある一部の実施形態では、マスト細胞は内因性PKC−θタンパク質の発現を欠く。ある特定の実施形態では、レポーター遺伝子産物は、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアシルトランスフェラーゼ、β-グルクロニダーゼ、アルカリホスファターゼまたは緑色蛍光タンパク質である。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、PKC−θタンパク質のモジュレーターの同定方法を提供する。該方法は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を発現する細胞を、被験薬剤と接触させること;および被験薬剤が、該細胞内においてPKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化を低下させたかどうかを測定することを含み、ここで、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化を低下させる被験薬剤を、PKC−θタンパク質のモジュレーターであると認める。ある一部の実施形態では、前記測定工程は、被験薬剤のキナーゼ活性を被験薬剤の非存在のときと比較することを含む。
【0025】
ある一部の実施形態では、該キナーゼ活性を低下させるPKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のインヒビターである。ある一部の実施形態では、該キナーゼ活性を増大させるPKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のアクチベーターである。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の該キナーゼ活性を少なくとも2倍低下させる。
【0026】
ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質は全長PKC−θタンパク質である。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質は、全長PKC−θタンパク質の機能性バリアントである。特定の実施形態では、機能性断片はPKC−θキナーゼドメインである。
【0027】
ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、哺乳動物(例えば、ヒトなど)における喘息の処置に有用である。ある一部の実施形態では、喘息はIgE媒介性喘息である。特定の実施形態では、該方法は、被験薬剤の効力を、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて評価することをさらに含み、ここで、対照薬剤と比べ、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて増大した効力を示す被験薬剤を喘息の処置に有用であると認める。
【0028】
ある一部の実施形態では、細胞が原核生物細胞(例えば、細菌細胞(例えば、大腸菌)など)である。
【0029】
ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化は、配列番号:1の695位のセリン残基、685位のセリン残基、538位のトレオニン残基および536位のトレオニン残基からなる群より選択されるアミノ酸残基において起こる。
【0030】
また別の態様において、本発明は、喘息を患うか、または喘息症状を患う哺乳動物に、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の該キナーゼ活性を低下させるか、または機能性PKC−θタンパク質の産生を低下させる薬剤を投与することを含む、喘息の処置方法を特色とする。ある一部の実施形態では、該薬剤を、薬学的に許容され得る担体とともに投与する。ある一部の実施形態では、担体はエーロゾルの形態である。
【0031】
本方法のある一部の実施形態では、該薬剤は、静脈内、経口、経皮および/または筋肉内経路で投与される。特定の実施形態では、該薬剤が吸入によって投与される。ある一部の実施形態では、喘息はIgE媒介性喘息である。ある一部の実施形態では、該薬剤は、β-アドレナリン作用剤、テオフィリン化合物、コルチコステロイド、抗コリン作用薬、抗ヒスタミン薬、カルシウムチャネル遮断薬、クロモリンナトリウムまたはその組合せであり得る薬物と共投与される。特定の実施形態では、該薬剤は、PKC−θタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体である。ある一部の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。ある一部の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。
【0032】
ある一部の実施形態では、被験薬剤は核酸分子である。ある特定の実施形態では、核酸分子はリボ核酸分子である。ある一部の実施形態では、リボ核酸分子が、配列番号:3に示すヌクレオチド配列の一部分に相補的であるヌクレオチド配列を含む。
【0033】
ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化である。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化は、配列番号:1の695位のセリン残基、685位のセリン残基、538位のトレオニン残基および536位のトレオニン残基からなる群より選択されるアミノ酸残基において起こる。
【0034】
ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性はPKC−θ基質のリン酸化である。ある一部の実施形態では、PKC−θ基質はR-X-X-SモチーフまたはR-X-X-Tモチーフを含む(式中、Rはアルギニンであり、Xは、不明または任意の既知いずれかのアミノ酸であり、Sはセリンであり、Tはトレオニンである)。例えば、PKC−θ基質は、KKRFSFKKSFK (配列番号:5)、FARKGSLRQKN (配列番号:6)、FARKGSLRQ (配列番号:15)、KKRFSFKKSFK (配列番号:16)、QKRPSQRSKYL (配列番号:17)、KIQASFRGHMA (配列番号:18)、LSRTLSVAAKK (配列番号:19)、AKIQASFRGHM (配列番号:20)、VAKRESRGLKS (配列番号:21)、KAFRDTFRLLL (配列番号:22)、PKRPGSVHRTP (配列番号:23)、ATFKKTFKHLL (配列番号:24)、SPLRHSFQKQQ (配列番号:25)、KFRTPSFLKKS (配列番号:26)、IYRASYYRKGG (配列番号:27)、KTRRLSAFQQG (配列番号:28)、RGRSRSAPPNL (配列番号:29)、MYRRSYVFQT (配列番号:30)、QAWSKTTPRRI (配列番号:31)、RGFLRSASLGR (配列番号:32)、ETKKQSFKQTG (配列番号:33)、DIKRLTPRFTL (配列番号:34)、APKRGSILSKP (配列番号:35)、MYHNSSQKRH (配列番号:36)、MRRSKSPADSA (配列番号:37)、TRSKGTLRYMS (配列番号:38)、LMRRNSVTPLA (配列番号:39)、ITRKRSGEAAV (配列番号:40)、EEPVLTLVDEA (配列番号:41)、SQKRPSQRHGS (配列番号:42)、KPFKLSGLSFK (配列番号:43)、AFRRTSLAGGG (配列番号:44)、ALGKRTAKYRW (配列番号:45)、VVRTDSLKGRR (配列番号:46)、KRRQISIRGIV (配列番号:47)、WPWQVSLRTRF (配列番号:48)、GTFRSSIRRLS (配列番号:49)、RVVGGSLRGAQ (配列番号:50)、LRQLRSPRRTQ (配列番号:51)、KTRKISQSAQT (配列番号:52)、NKRRATLPHPG (配列番号:53)、SYTRFSLARQV (配列番号:54)、NSRRPSRATWL (配列番号:55)、RLRRLTAREAA (配列番号:56)、NKRRGSVPILR (配列番号:57)、GKRRPSRLVAL (配列番号:58)、QKKRVSMILQS (配列番号:59)、およびRLRRLTAREAA (配列番号:60)からなる群より選択されるアミノ酸配列(普遍的一文字アミノ酸コードに基づく)を有し得る。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、内因性PKC−θタンパク質の発現を欠く単離されたマスト細胞を提供する。ある一部の実施形態では、該細胞は、外因性PKC−θタンパク質またはその断片を発現する。
【0036】
本発明のこれらのおよび他の態様、実施形態および利点は、本明細書の記載内容から明らかとなろう。
【0037】
(好ましい実施形態の記載)
本発明は、タンパク質キナーゼ Cシータ(PKC−θ)θをモジュレートする薬剤または機能性PKC−θタンパク質の量をモジュレートする薬剤が喘息の処置に有用であるという知見に基づく。ここに示すこの新規な所見は、アレルギーおよび喘息において、PKC−θ触媒活性を低下させる、または機能性PKC−θタンパク質の量を低下させる薬剤の、マスト細胞標的化用薬剤としての使用を裏付ける。
【0038】
本発明の原理の理解を高める目的で、以下に好ましい実施形態を示し、特定の文言は同じものを指す。とはいうものの、それによって本発明の範囲を限定しないことを理解されたい。本明細書に示す本発明の改変およびさらなる変形、および本発明の原理のさらなる適用が想定され、これらは、本発明が関係する技術分野の当業者には普通に思いつくものであろう。
【0039】
本明細書で引用した特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立するものである。発行済みの米国特許、許可された出願、公開された出願(米国および外国)および参考文献(GenBankデータベース配列を含む)は、引用により、各々が具体的に個々に本明細書に組み込まれているのと同じ程度に本明細書に組み込まれる。
【0040】
PKC−θは、PKCのCa+2非依存性の新規なクラスの構成員である。これは、T細胞および筋肉において高度に発現される。本明細書に記載するように、PKC−θタンパク質は、呼吸器疾患(例えば、喘息など)においてある役割を果たし、これに関連する(例えば、喘息、例えば、アトピー性喘息(例えば、IgE媒介性喘息)、非アトピー性喘息、職業性喘息および薬物誘導性喘息などの症状および/または合併症と関連している)ことが見出されている。本明細書に示す所見に基づき、本発明は、喘息を処置するための薬剤の同定方法を提供し、哺乳動物に、PKC−θ産生および/またはキナーゼ活性をモジュレートする(例えば、阻害または増強により)薬剤の治療有効量を投与することによる喘息の処置方法を提供する。加えて、本発明は、内因性PKC−θタンパク質発現を欠く単離されたマスト細胞を提供する。
【0041】
一態様において、本発明は、PKC−θタンパク質のモジュレーターの同定方法を提供する。該方法は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を、被験薬剤と接触させること;および被験薬剤がPKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性を阻害したかどうかを測定することを含む。PKC−θタンパク質またはその機能性断片の該キナーゼ活性を低下させる被験薬剤は、PKC−θタンパク質のモジュレーターであると認める。
【0042】
本明細書で使用する場合、「被験薬剤」は、化学物質(例えば、有機系または無機系)、低分子化合物、核酸分子、ペプチドまたはタンパク質(例えば、ホルモン、抗体および/またはその一部分)である。「PKC−θタンパク質のモジュレーター」により、薬剤が、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性を、増大または低下させることのいずれかによりモジュレートできること、または機能性PKC−θタンパク質の量をモジュレートできること(例えば、転写または翻訳により)が意図される。ある一部の実施形態では、該キナーゼ活性を低下させるPKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のインヒビターである。ある一部の実施形態では、該キナーゼ活性を増大させるPKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のアクチベーターである。
【0043】
本発明の一形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターの同定方法は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を、被験薬剤と接触させること、およびPKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化の変化(例えば、以下の配列番号:1の残基:695位のセリン残基、685位のセリン残基、538位のトレオニン残基および536位のトレオニン残基のリン酸化の変化)を検出することを含む。別の形態では、該方法は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を、被験薬剤およびPKC−θの基質と接触させること、およびPKC−θ基質のリン酸化の変化を検出することを含む。被験薬剤は、PKC−θタンパク質もしくはその機能性断片のキナーゼ活性、または機能性PKC−θタンパク質の量(例えば、機能性PKC−θタンパク質をコードするRNAまたはDNAの量を変化させることにより)のモジュレート(すなわち、阻害または増大)に有効であると思われるものである。ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の該キナーゼ活性を少なくとも2倍低下させる。ある一部の実施形態では、該モジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性を少なくとも4倍、または少なくとも10倍低下させる。ある一部の実施形態では、該モジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性を排除する。PKC−θタンパク質キナーゼ活性は、例えば、標準的な手法(例えば、以下に記載するインビトロキナーゼアッセイなど)を用いて定量することができる。
【0044】
本発明の別の非限定的な実施形態では、機能性PKC−θタンパク質の量は、PKC−θタンパク質のモジュレーターによって低下する。
【0045】
本明細書で使用する場合、「機能性」は、通常の機能を果たす(例えば、野生型PKC−θタンパク質と同じキナーゼ活性を有する)PKC−θタンパク質またはその断片を意味する。PKC−θタンパク質またはその断片が機能性であるか否かの決定は、通常の技量を有する生物学者によって容易に行なわれ得る。目的のPKC−θタンパク質またはその断片が機能性であるか否かを決定するための非限定的な方法の一例は、目的のPKC−θタンパク質またはその断片を野生型PKC−θタンパク質または野生型PKC−θ断片と、標準的なタンパク質キナーゼアッセイ(例えば、Ausubelら編, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York, New York(1995、および後の2003年までの最新情報)を参照のこと)および以下の実施例に記載のキナーゼアッセイにて比較することである。
【0046】
PKC−θタンパク質の機能性断片の非限定的な一例は、PKC−θキナーゼドメインである。以下の実施例に記載のように(特に、実施例3)、PKC−θタンパク質のキナーゼドメイン(「PKC−θキナーゼドメイン」または単に「PKC−θ KD」ともよぶ)は、驚くべきことに、自己リン酸化することができる。これは、このクラスの他の酵素が自己リン酸化しないことを考えると、驚くべきことである。用語「PKC−θキナーゼドメイン」は、使用する場合、PKC−θタンパク質のキナーゼドメインであって、該タンパク質の約アミノ酸残基362〜約アミノ酸残基706の範囲の部分を含むドメインを意味する。ある一部の実施形態では、本発明のPKC−θ KDは、配列番号:61に示すアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、本発明のPKC−θ KDは、配列番号:62に示すアミノ酸配列を有する(配列番号:62の最初の2個のN末端アミノ酸残基、メチオニンおよびグリシンは、PKC−θ KD断片の発現に便利であるが、全長PKC−θタンパク質には存在しないことに注意)。
【0047】
ある一部の実施形態では、本発明のPKC−θキナーゼドメインは、原核生物細胞、例えば、細菌(大腸菌など)内で発現される。ある一部の実施形態では、PKC−θキナーゼドメインは、以下のアミノ酸残基:配列番号:1の695位のセリン、685位のセリン、538位のトレオニンおよび536位のトレオニンの1個以上がリン酸化されている(例えば、自己リン酸化によって)。
【0048】
ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、機能性PKC−θタンパク質の量を少なくとも2倍低下させる。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、機能性PKC−θタンパク質の量を少なくとも4倍低下させる。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、機能性PKC−θタンパク質の量を少なくとも10倍低下させる。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、機能性PKC−θタンパク質の量を排除する。機能性PKC−θタンパク質のレベルは、例えば、標準的な手法(例えば、以下に記載するウェスタンブロッティング解析など)を用いて定量することができる。
【0049】
さらなる態様において、本発明は、機能性PKC−θタンパク質またはその機能性断片を含む細胞を、被験薬剤と接触させること、および被験薬剤が、機能性PKC−θタンパク質またはその機能性断片の量を該細胞内において低下させたかどうかを測定することを含み、ここで、機能性PKC−θタンパク質またはその機能性断片の量を該細胞内において低下させる被験薬剤を、PKC−θタンパク質のモジュレーターであると認める、別のPKC−θタンパク質のモジュレーターの同定方法を提供する。かかるPKC−θタンパク質のモジュレーターは、例えば、転写または翻訳レベルで作用し得る。
【0050】
ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、哺乳動物(例えば、ヒトなど)における呼吸器疾患の処置に有用である。呼吸器疾患としては、限定されないが、喘息(例えば、アレルギー性および非アレルギー性喘息);気管支炎(例えば、慢性気管支炎);慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば、気腫);気道炎症、好酸球増加症、線維症および過剰粘液生成(excess mucus production)、例えば、嚢胞性線維症、呼吸器線維症およびアレルギー性鼻炎に伴う状態などが挙げられる。
【0051】
ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、アトピー性疾患の処置に有用である。「アトピー」は、多くの場合、アレルギー性反応の発現に遺伝的な傾向がある一群の疾患をいう。アトピー性障害の非限定的な例としては、アレルギー、アレルギー性鼻炎(花粉症、その症状としては、痒み、鼻水、くしゃみまたは鼻づまりおよび目の痒みなどが挙げられる)、アトピー性皮膚炎(湿疹としても知られる;皮膚を冒す慢性疾患)、喘息および花粉症などが挙げられる。
【0052】
特定の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、哺乳動物(例えば、ヒトなど)における喘息の処置に有用である。「喘息」は、本明細書で使用する場合、喘鳴を伴う連続性または発作性の苦しい呼吸、胸部締付け感、およびしばしば咳またはあえぎの発作が顕著である(marked)状態を意味する。これらの症状のいずれか、またはすべてが「喘息症状」として含まれる。本明細書で使用する場合「喘息」としては、限定されないが、非アレルギー性喘息(内因性または非アトピー性喘息とも呼ばれる)、アレルギー性喘息(内因性またはアトピー性喘息とも呼ばれる)、非アレルギー性とアレルギー性喘息の併発、運動誘発性喘息(混合型喘息とも呼ばれる)、薬物誘発性喘息、職業性喘息および後期(late stage)喘息などが挙げられる。外因性またはアレルギー性喘息としては、例えば、アレルゲン(例えば、花粉、胞子、芝生または雑草、ペットのふけ、埃、ダニなど)により引き起こされるか、またはこれらと関連する発症などが挙げられる。アレルゲンおよび他の刺激物は、あらゆる場所で年中、自身を提示するため、これらの型の発症は、季節性喘息ともよばれる。また、気管支喘息およびアレルギー性気管支肺アスペルギルス症も外因性喘息の群に含まれる。
【0053】
喘息は、表現型が不均一な障害であり、断続的な呼吸器疾患症状(例えば、気管支の過剰応答性および可逆性気道閉塞など)を伴う。喘息の免疫組織病理学的特徴としては、例えば、気道上皮の裸出、基底膜下のコラーゲン沈着;浮腫;マスト細胞活性化;および炎症性細胞浸潤(例えば、好中球、好酸球およびリンパ球による)などが挙げられる。気道炎症は、気道過剰応答、空気流制限、急性気管支収縮、粘液栓(mucus plug)形成、気道壁リモデリングおよび他の呼吸器疾患症状にさらに寄与し得る。
【0054】
本発明の方法によって処置または軽減され得る喘息としては、感染因子、例えば、ウイルス(例えば、風邪および流感ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス、ライノウイルスおよびインフルエンザウイルス)によって引き起こされるものなどが挙げられる。RSV、ライノウイルスおよびインフルエンザウイルス感染は、小児によく見られ、幼児および若年小児に呼吸管の病気の原因をもたらすものである。ウイルス性気管支炎を有する小児は、慢性喘鳴および喘息を発現し得るが、これは、本発明の方法を用いて処置され得る。また、運動および/または冷気によって一部の喘息患者に起こり得る喘息状態なども挙げられる。本発明の方法は、煙への曝露(例えば、タバコ誘導性および向上煤煙)ならびに産業的および職業的曝露(例えば、煙、オゾン、毒ガス、亜硫酸ガス、窒素酸化物、噴煙(例えば、塗料、プラスチック、ポリウレタン、ワニスなどからのイソシアネート)、木材、植物または他の有機性文末など)に関連する喘息に有用である。該方法はまた、食品添加物、保存料または薬理物質と関連する喘息発症に有用である。本発明の方法はまた、サイレント(silent)喘息と呼ばれる型の喘息または風邪の変種の喘息の処置、阻害または軽減に有用である。
【0055】
加えて、本発明の方法は、胃食道逆流(GERD)(これは、気管支収縮を刺激し得る)と関連する喘息の処置および軽減に有用である。
【0056】
ある一部の実施形態では、喘息はIgE媒介性喘息である。特定の実施形態では、該方法は、被験薬剤の効力を、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて評価することをさらに含み、ここで、対照薬剤と比べ、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて増大した効力を示す被験薬剤を、喘息の処置に有用であると認める。
【0057】
種々の喘息モデルが当該技術分野において知られている。例えば、Solerら, J. Appl. Physiol. 70 (2): 617-23 (1991) および Longら, J. Appl. Physiol. 69 (2): 584-590 (1990) には、ヒツジの気管支収縮モデルが記載されている。ヒツジは、生まれつき回虫寄生虫Ascaris suumに感作されている。Ascaris suum抗原での吸入抗原刺激後、この動物は、アレルゲン感作に曝露されたときの喘息患者の反応と同様の初期および後期気管支収縮応答を行う。Ascaris抗原刺激はまた、ヒツジにおいて気道過剰応答を誘導し、これは、コリン作動薬であるカルバコールでの誘発抗原刺激後の肺抵抗(resistance)の増加として測定される。所与の応答を惹起するのに必要なカルバコールの用量は、Ascaris抗原刺激後24時間で減少し、気道過剰応答を示す。
【0058】
Bischofら(Clin. Exp. Allergy 33 (3): 367-75 (2003))には、ヒツジのアレルギー性喘息モデルが記載されており、この場合、可溶化イエダニ抽出物で皮下にて免疫処置したヒツジに、続いてイエダニでの単回気管支抗原刺激を与えた。このモデルでは、気管支肺胞洗浄液(BAL)および末梢血白血球を、イエダニの気管支抗原刺激の前後にフローサイトメトリー用に回収し、組織試料を、抗原刺激の48時間後に組織学検査および免疫組織化学的解析(Bischofら、前出)用に採取した。PKC−θタンパク質のモジュレーターであると思われる被験薬剤、特に、PKC−θタンパク質のインヒビターであると思われるものをヒツジに投与し、本発明の被験薬剤を投与していないヒツジにおけるBAL白血球の数と比べ、抗原刺激後のBAL白血球の数を低減する能力について評価し得る。
【0059】
また別のよく知られた喘息モデルは、Ascaris誘導性気道炎症の非ヒト霊長類モデルである(例えば、Gundelら, Clin. Exp. Allergy 22 (1): 51-57 (1992)を参照のこと)。カニクイザルは、生まれつき回虫寄生虫Ascaris suum(これは、強いIgE応答を誘導することによりアレルゲンとして作用する)に感作されている。該抗原による気管内抗原刺激時、この動物は、主に好酸球で構成される気道炎症を示す。これは、肺分節アレルゲン抗原刺激の24時間後に、気管支肺胞洗浄液内に流入した白血球を計測することにより測定することができる。
【0060】
また別の非限定的な喘息モデルは、マウスのオボアルブミン(OVA)誘導性気道過剰応答である(例えば、Kipsら, Eur. Respir. J. 22 (2): 374-382 (2003);Taubeら, Int. Arch. Allergy Immunol. 135 (2): 173-186 (2004);およびReaderら, Am. J. Pathol. 162 (6): 2069-2078 (2003) を参照のこと)。このモデルでは、マウスをオボアルブミン(OVA)含有ミョウバンアジュバントで免疫処置し、追加免疫し、次いで、OVAのエーロゾル抗原刺激を与える。抗原刺激時、該動物は、気道抵抗の増大および白血球の気管支肺胞洗浄(BAL)液内への浸透を示す。加えて、血清サイトカインレベルが増加し、肺組織学検査は、組織炎症および粘液生成を示す。
【0061】
当該技術分野で知られた他の非限定的な喘息モデルとしては、イヌおよびサルのAscaris suum抗原誘導性喘息モデル(例えば、Hirshmanら, J. Appl. Physiol. 49: 953-957 (1980);Mauserら, Am. J. Respir. Crit. Care Med. 152 (2): 467-472 (1995) を参照のこと)などが挙げられる。
【0062】
また、インビトロ喘息モデルも、通常の技量を有する生物学者に知られている。例えば、T細胞標的化治療には、非限定的な一例は、TH2細胞によるサイトカイン産生の阻害である。このT細胞は、CD3およびCD28に対する刺激されたインビトロ抗体であり、TCR媒介性活性化を模擬し得る。これは、サイトカイン産生を誘導し、48時間後の上清みにてアッセイすることができる。重要なサイトカインは、IL-4およびIL-13である。特に、IL-13は、動物モデルにおける喘息病因の主な誘導因子である(例えば、Wills-Karp M., Immunol Rev. 202: 175-190 (2004)を参照のこと)。
【0063】
PKC−θタンパク質モジュレーターの喘息に対する効果を評価するための別の非限定的なインビトロ方法は、抗CD3および抗CD28に応答したT細胞増殖の抑制またはNFATの核の転写因子NF-kBの誘導である。T細胞増殖は、例えば、3H-チミジン取込みによってアッセイすることができる(例えば、Ausubelら(前出)の方法を参照のこと)。T細胞活性化に応答し、NFATまたはNF-kBは活性化および核移動を受ける(これらは、細胞ライセートのウエスタンブロットによってアッセイすることができる)。
【0064】
PKC−θタンパク質インヒビターはまた、オボアルブミン免疫処置マウスにおいてTH2応答を低下させるばずであり、これは、オボアルブミン特異的IgG1または全IgEの産生の減少としてアッセイすることができる。これらの抗体のレベルは、マウスの血清のELISAによってアッセイすることができる。
【0065】
本明細書で使用する場合、本発明のPKC−θタンパク質はヒト由来であり得、配列番号:1 (GenBank受託番号:NM_006257)に示すアミノ酸配列を有し得る。別の実施形態では、本発明のPKC−θタンパク質はマウス由来であり得、配列番号:2(GenBank受託番号:NM_008859)に示すアミノ酸配列を有し得る。本発明に有用なPKC−θタンパク質はまた、配列番号:3(ヒト)(GenBank受託番号:NM_006257)または配列番号:4(マウス)(GenBank受託番号:NM_008859)に示すヌクレオチド配列にコードされたものであり得る。さらなるPKC−θタンパク質の配列およびこれらのタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、GenBank受託番号:NM_178075(Niinoら, J. Biol. Chem. 276 (39): 36711-36717 (2001);(マウス));GenBank受託番号:AF473820(NonnemanおよびRohrer, Anim. Genet. 34 (1):42-46 (2003);(ブタ))で入手可能である。
【0066】
本明細書で使用する場合、ヌクレオチド配列は、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシドならびにその誘導体の天然または合成の線状で連続した(sequential)アレイを指すことが意図される。用語「コードする(をコードする)」および「coding」は、ヌクレオチド配列が、転写および翻訳の機構を介して、細胞に、一連のアミノ酸を特定のアミノ酸配列に組み立ててポリペプチドが生成され得る情報を提供するプロセスをいう。特定のアミノ酸配列をコードするプロセスは、コードされたアミノ酸に変化を引き起こさない1個以上の塩基変化(すなわち、挿入、欠失、置換)を有するDNA配列を伴い得るか、または1個以上のアミノ酸を改変するが、DNA配列にコードされたポリペプチドの機能特性を排除しない塩基変化を伴い得る。
【0067】
PKC−θが喘息の症状および/または合併症の誘導と関連するという知見により、PKC−θの配列は、本発明の薬剤の同定方法に有用となる。かかる方法は、PKC−θキナーゼ活性をモジュレート(例えば、阻害または増強)する能力をもつ可能性のある薬剤をアッセイすることを含む。本発明のアッセイに有用なPKC−θ核酸分子(例えば、PKC−θプロモーター配列)およびタンパク質には、本明細書に開示した遺伝子およびコードされたポリペプチドだけでなく、野生型遺伝子およびポリペプチドと実質的に同じ活性を有するそのバリアントも含まれる。「バリアント」は、本明細書で使用する場合、1つ以上の欠失、挿入または置換を含有するポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含むが、バリアントは野生型ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと実質的に同じ活性を維持している。ポリペプチドに関し、欠失バリアントは、生物学的活性に必須でないポリペプチドの部分を欠く断片を含むことが想定され、挿入バリアントは、野生型ポリペプチドまたはその断片を別のポリペプチドと融合させた融合ポリペプチドを含むことが想定される。
【0068】
したがって、ある特定の実施形態では、本発明のPKC−θタンパク質は、全長PKC−θタンパク質の機能性バリアントである。したがって、PKC−θタンパク質は、配列番号:3または配列番号:4に示すヌクレオチド配列にコードされるものに限定されないことを理解されたい。例えば、上記のようなバリアントアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、PKC−θをコードするヌクレオチド配列の範囲に含まれる。配列に対する修飾、例えば配列における欠失、挿入または置換(PKC−θタンパク質の機能特性に実質的に影響しない「サイレント」変化をもたらす)は、本発明において明らかに想定される。例えば、ヌクレオチド配列において、遺伝暗号の縮重を反映する改変、または化学的に等価なアミノ酸生成を所与の部位にもたらす改変が想定されることを理解されたい。したがって、アミノ酸アラニン(疎水性アミノ酸)のコドンは、別の疎水性がより低い残基(例えば、グリシンなど)、または疎水性がより高い残基(例えばバリン、ロイシンまたはイソロイシンなど)をコードするコドンに置き換えてもよい。同様に、負電荷を有する残基の1つを別のもの(例えば、アスパラギン酸をグルタミン酸)、または正電荷を有する残基の1つを別のもの(例えば、リシンをアルギニン)への置換をもたらす変化もまた、生物学的に等価なPKC−θタンパク質をもたらすことが期待され得る。
【0069】
本明細書に記載のアッセイにおける使用のため、PKC−θタンパク質は、種々の供給業者、例えば、Panvera(Madison, WI)などで購入してもよく、当業者に知られた遺伝子操作およびタンパク質精製方法によって作製してもよい。例えば、哺乳動物PKC−θタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、所望の宿主細胞内に導入し、培養し、単離および精製し得る。かかるヌクレオチド配列は、まず、適切な、あるいはまた所望の組換え発現ベクター内に挿入するのがよい。例えば、哺乳動物PKC−θタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、以下の実施例に記載のように、pcDNA3発現ベクター内にサブクローン化し、ヒト293細胞内で発現させてもよい。原核生物細胞におけるPKC−θタンパク質またはPKC−θキナーゼドメインの発現もまた想定される。例えば、以下の実施例に記載のように、PKC−θタンパク質またはPKC−θキナーゼドメインは、細菌系発現ベクター(例えば、pET16b(例えば、EMD Biosciences/Merck Biosciences(San Diego, CA)から市販されたものなど)内にサブクローン化し、細菌細胞内で発現させ得る。「ベクター」は、本明細書で使用する場合、および当該技術分野で知られているように、標的化される細胞の形質転換を指令するよう設計された遺伝物質を含む構築物をいう。ベクターは、位置的および配列的に配向された、すなわち、他の必要な要素または所望の要素と作動可能に連結されている多数の遺伝要素を、核酸カセット内の核酸が、トランスフェクトされた細胞内で転写され得るように(所望により、翻訳されるように)含有し得る。
【0070】
組換え発現ベクターは、上記のヌクレオチド配列をベクター内に、当業者によく知られた、例えば、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory, 第2版, Cold Springs Harbor, New York (1989)に記載の方法にしたがって組み込むことにより構築物され得る。分子生物学および組換えDNA手法を記載した他の参考文献、例えば、DNA Cloning 1: Core Techniques(D. N. Gloverら編, IRL Press, 1995);DNA Cloning 2: Expression Systems(B. D. Hamesら編, IRL Press, 1995);DNA Cloning 3: A Practical Approach(D. N. Gloverら編, IRL Press, 1995);DNA Cloning 4: Mammalian Systems(D. N. Gloverら編, IRL Press, 1995);Oligonucleotide Synthesis(M. J. Gait編, IRL Press, 1992);Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach(S. J. HigginsおよびB. D. Hames編, IRL Press, 1991);Transcription and Translation:A Practical Approach(S. J. Higgins & B. D. Hames編, IRL Press, 1996);R. I. Freshney, Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique, 第4版(Wiley-Liss, 1986);およびB. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning, 第2版(John Wiley & Sons, 1988);およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編, John Wiley & Sons)(これは、定期的および周期的に改定される)にもさらに説明されている。
【0071】
本発明において用途を有する多種多様なベクターが知られている。好適なベクターとしては、プラスミドベクター、ウイルス系ベクター、例えばレトロウイルスベクター(例えば、Millerら, Methods of Enzymology 217: 581-599 (1993)を参照)、アデノウイルスベクター(例えば、Erzurumら, Nucleic Acids Res. 21: 1607-1612 (1993)を参照;Zabnerら, Nature Genetics 6: 75-83 (1994);およびDavidsonら, Nature Genetics 3: 219-223 (1993))アデノ随伴ウイルスベクター(例えば、Flotteら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10613-10617 (1993) を参照)およびヘルペスウイルス系ベクター(例えば、Andersonら, Cell Mol. Neurobiol. 13: 503-515 (1993)を参照)が挙げられる。ベクターは、特定の宿主細胞内で核酸の発現を誘発するのに必要な、または望ましい他の公知の遺伝要素(調節エレメントが挙げられる)を含み得る。例えば、ベクターは、プロモーターおよび該プロモーターと協働して遺伝子の転写を達成する任意の必要なエンハンサー配列を含み得る。「エンハンサー」により、細胞(例えば、真核生物宿主細胞)内でプロモーター活性を刺激し得るヌクレオチド配列エレメントが意図される。
【0072】
本明細書において規定するように、ヌクレオチド配列は、別のヌクレオチド配列と機能的に関連した状態で配置されている場合、別のヌクレオチド配列と「作動可能に連結されている」。コーディング配列が、プロモーター配列と作動可能に連結されている場合、これは、一般的に、プロモーターは、コーディング配列の転写を促進し得ることを意味する。作動可能に連結されているとは、連結されたDNA配列が、典型的には隣接しており、必要な場合は2つのタンパク質コード領域が接合されていること、隣接しており読み枠内にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、プロモーターから数キロ塩基離れている場合およびイントロン配列が種々の長さであり得る場合も機能し得るため、いくつかのヌクレオチド配列は、作動可能に連結されているものであり得るが、隣接していない。
【0073】
数多くの当該技術分野で知られた方法が、PKC−θタンパク質をコードするヌクレオチド配列(組換え発現ベクター内、宿主細胞内に含め得る)を導入するために利用可能である。かかる方法としては、限定されないが、機械的方法、化学的方法、脂肪親和的方法およびエレクトロポレーションなどが挙げられる。例示的な機械的方法としては、例えば、マイクロインジェクションおよびDNAを組み込むための、例えば金粒子基質との遺伝子銃の使用などが挙げられる。例示的な化学的方法としては、例えば、リン酸カルシウムまたはDEAE-デキストランの使用などが挙げられる。例示的な脂肪親和的方法としては、リポソームおよび脂質媒介性トランスフェクションのための他のカチオン系薬剤の使用などが挙げられる。かかる方法は当該技術分野でよく知られており、かかる方法の多くは、例えば、Gene Transfer Methods: Introducing DNA into Living Cells and Organisms(P. A. NortonおよびL. F. Steel編, Biotechniques Press, 2000);およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編, John Wiley & Sons)(これは、定期的および周期的に改定される)に記載されている。
【0074】
多種多様な宿主細胞が本発明において利用され得、所望の量のPKC−θタンパク質またはその機能性断片を、例えば、本明細書に記載のスクリーニングアッセイにおける使用のために作製し得る。かかる細胞としては、真核生物および原核生物細胞など(例えば、当該技術分野で知られた哺乳動物細胞および細菌細胞など)が挙げられる。数多くの宿主細胞が、American Type Culture Collection(Manassas, VA)から市販されている。
【0075】
PKC−θタンパク質またはその機能性断片は、当業者によく知られた手法によって単離および精製され得、例えば、クロマトグラフィー、電気泳動および遠心分離手法が挙げられる。かかる方法は当該技術分野で知られており、例えば、Current Protocols in Protein Science, J. Wiley and Sons, New York, NY, Coliganら(編)(2002);およびHarris, E. L. V.およびS. Angal, Protein Purification Applications: A Practical Approach, Oxford University Press, New York, NY (1990) を見ると示されている。
【0076】
組換えにより作製したPKC−θタンパク質またはその機能性断片の精製および検出を補助するため、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を、「タグ化」されるように操作してもよい。以下のいくつかの実施例では、PKC−θタンパク質およびPKC−θキナーゼドメイン(PKC−θタンパク質の機能性断片の非限定的な例)をヒスチジンタグでタグ化している。これにより、his-タグ化タンパク質をニッケル-NTAに結合させ、したがって精製することが可能になる。以下の他の例では、PKC−θタンパク質を、ヘマグルチニン(HA)タグでタグ化し、293細胞内で発現させている。PKC−θタンパク質(またはその機能性断片)の精製および/または検出の補助に使用され得る他の非限定的な市販のタグとしては、限定されないが、mycタグ(抗mycタグ抗体に結合する)、GSTタグ(グルタチオン-Sepharoseに結合する)およびfluタグ(抗fluタグ抗体に結合する)が挙げられる。
【0077】
被験薬剤がPKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性を阻害するか否かを測定するため、使用され得る非限定的なアッセイの1つでは、PKC−θタンパク質(またはその機能性断片)を被験薬剤と、PKC−θタンパク質のキナーゼ活性を阻害するのに充分な時間接触させる。この時間は、選択したインヒビターおよびPKC−θタンパク質またはその機能性断片の性質に応じて異なり得る。かかる時間は、当業者が必要以上に実験することなく容易に決定し得る。本発明の非限定的な被験薬剤は、PKC−θタンパク質(またはその機能性断片)のキナーゼ活性を減少させるものであるが、PKC−θを、例えばPKC−θの基質に結合することにより阻害する被験薬剤、またはPKC−θのキナーゼ活性をいくつかの他の機構によって阻害する被験薬剤もまた想定(envision)される。
【0078】
以下に記載するように、PKC−θは、IgEレセプター架橋時、BMMC内の以下の残基:配列番号:1の695位のセリン、685位のセリン、538位のトレオニンおよび536位のトレオニンの少なくとも1個が誘導的にリン酸化される。したがって、特定の実施形態では、被験薬剤は、PKC−θタンパク質の自己リン酸化を阻害する能力により、PKC−θのキナーゼ活性を阻害することができる(したがって喘息の処置に有用である)薬剤であると決定され得る。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質の活性化ループのアミノ酸残基の自己リン酸化が阻害される。
【0079】
数多くのアッセイが、被験薬剤がPKC−θタンパク質のキナーゼ活性を阻害するか否かを測定するために利用され得る。PKC−θタンパク質はキナーゼであるため、かかるアッセイは、PKC−θが自身を538位のトレオニン残基において、リン酸塩の形態(例えば、アデノシン三リン酸(ATP)など)またはPKC−θ基質に輸送され得る他の形態のリン酸塩の存在下で、自己リン酸化する能力に対する被験薬剤の効果の測定を含む。同様に、かかるアッセイでは、PKC−θがPKC−θ基質をリン酸塩の形態の存在下でリン酸化する能力に対する被験薬剤の効果を測定し得る。放射能系アッセイおよび非放射能系アッセイ(蛍光系アッセイを含む)を利用してもよい。放射能系アッセイでは、例えば、[γ-32P]-ATPのPKC−θ基質内への取込みが測定され、液体シンチレーション計測により測定する。インビトロ基質リン酸化および抗体系比色検出または他の検出方法を用いる他のアッセイは、種々の供給源、例えば、Promega(Madison, WI;カタログ番号 V7470 および V5330)、Calbiochem(San Diego, CA;カタログ番号 539484、539490、539491)、Panvera Discovery Screening(Madison, WI;カタログ番号 P2747 および P2748;これは、Invitrogen, Carlsbad, CAの子会社である)などから市販品として容易に得られ得る。非放射能系アッセイ(R-X-X-S/Tコンセンサスモチーフを有する基質のリン酸化およびリン酸化された基質の蛍光偏光による測定を含む)としては、Panvera(Madison, WI)から販売されているものが挙げられる。
【0080】
非限定的な一例では、被験薬剤および32P-ATPに曝露されたBMMCは、抗IgEレセプター抗体によって刺激され、IgEレセプターと架橋し得る。架橋の15分後、次いで、該細胞を、溶解し得る。次に、内因性PKC−θを市販の抗体(例えば、Santa Cruz Biotechnology, Inc.(Santa Cruz, CA)から市販されている抗PKC−θ抗体、これは、以下の実施例に記載している)で免疫沈降させ、SDS-PAGE解析により分離し得る。PKC−θ自己リン酸化を阻害する被験薬剤で処理したBMMC由来のPKC−θは、未処理細胞由来のPKC−θと比べ、リン酸化の低下(すなわち、32P-ATPの取込みの低下)を示す。
【0081】
この例の代替例では、BMMCを被験薬剤に、32P-ATPの非存在下で曝露する。抗IgEレセプター架橋の15分後、該細胞を溶解し、内因性PKC−θを免疫沈降させ、SDS-PAGEにより分離する。次いで、SDS-PAGEゲルを、抗ホスホトレオニン抗体(例えば、Zymed Laboratories Inc., San Francisco, CAから市販)を用いてウェスタンブロッティング解析に供する。PKC−θ自己リン酸化を阻害する被験薬剤で処理したBMMC由来のPKC−θは、未処理細胞由来のPKC−θと比べ、リン酸化の低下(すなわち、32P-ATPの取込みの低下)を示す。
【0082】
PKC−θキナーゼ活性はまた、基質をリン酸化するその能力によって測定され得る。したがって、多種多様なオリゴペプチドおよびポリペプチド基質が、PKC−θキナーゼ活性を測定するためのアッセイにおいて利用され得る。本発明に有用なペプチドは、コンセンサスR-X-X-S/Tモチーフ(式中、Rはアルギニンであり、Xは、不明または任意の既知いずれかのアミノ酸であり、Sはセリンであり、Tはトレオニンである)を有する。他のタンパク質基質としては、限定されないが、ミリストイル化アラニン高含有C-キナーゼ基質(MARCKS)(アミノ酸配列 KKRFSFKKSFK (配列番号:5)、式中、下線部のセリン残基がリン酸化される)、PKC−α偽基質(アミノ酸配列 FARKGSLRQKN (配列番号:6)、式中、下線部のセリン残基がリン酸化される)などが挙げられる。ペプチドアレイ技術を用い、生理学的PKC−θの基質に特有の配列を含有し得、かつPKC−θと同じ適用用途を有する治療標的であり得るPKC−θの潜在的基質がいくつか同定された(以下の図9Bおよび実施例4を参照)。これらの基質は、PKC−θに触媒される反応に関与するものであれば、種々の修飾を有していてもよい。
【0083】
PKC−θのキナーゼ活性を測定するためのまた別の方法は、自己リン酸化するその能力を測定することである。以下に記載する実施例では、PKC−θのキナーゼドメインが、驚くべきことに、細菌細胞内で発現させると、リン酸化されていることがわかった。細菌細胞はタンパク質をリン酸化しないため、このリン酸化は、自己リン酸化によるものであった。したがって、本発明はまた、PKC−θタンパク質(またはその機能性断片)を発現する細胞を被験薬剤と接触させること;および被験薬剤がPKC−θタンパク質(またはその機能性断片)の自己リン酸化を該細胞内において低下させたかどうかを測定する(ここで、PKC−θタンパク質(またはその機能性断片)の自己リン酸化を低下させる被験薬剤を、免疫障害の処置に有用な薬剤であると認める)ことにより、哺乳動物において、免疫障害の処置に有用な薬剤を同定するための方法を提供する。ある一部の実施形態では、細胞は細菌細胞(例えば、大腸菌)である。ある一部の実施形態では、免疫障害は喘息である。
【0084】
本発明によれば、細胞は、該細胞内に、PKC−θタンパク質またはその機能性断片をコードするヌクレオチド配列を導入することにより、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を発現可能となり得る。上記のように、ヌクレオチド配列は、細胞がPKC−θタンパク質(またはその機能性断片)を発現可能にする調節配列(例えば、プロモーター配列およびエンハンサー)と作動可能に連結されている。当業者には、PKC−θタンパク質(またはその機能性断片)をコードするヌクレオチド配列の発現を達成するのに必要とされる調節配列の型が、PKC−θタンパク質(またはその機能性断片)をコードするヌクレオチド配列が導入される細胞の型に応じて異なることが理解されよう。例えば、細胞が細菌細胞であれば、細菌細胞由来の調節配列が好ましく使用される。数多くの異なる型の細胞(例えば、昆虫、哺乳動物および細菌のもの)の調節配列が、当該技術分野においてよく知られている(例えば、Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, NY(これは、定期的および周期的に改定される)を参照のこと)。
【0085】
また別の態様において、本発明は、機能性PKC−θタンパク質またはPKC−θキナーゼドメインを被験薬剤と接触させること;および被験薬剤が機能性PKC−θタンパク質またはPKC−θキナーゼドメインの自己リン酸化を低下させたかどうかを測定すること(ここで、機能性PKC−θタンパク質またはPKC−θキナーゼドメインの自己リン酸化を低下させる被験薬剤を、免疫障害の処置に有用な薬剤であると認める)ことにより、哺乳動物において、免疫障害(例えば、喘息など)の処置に有用な薬剤を同定するための方法を提供する。ある一部の実施形態では、該接触はインビトロでなされる。
【0086】
ある一部の実施形態では、機能性PKC−θタンパク質またはPKC−θキナーゼドメインと被験薬剤との接触は、バッファー中でなされる。ある一部の実施形態では、バッファーは、細胞内部で見られるイオン強度と比べて高い全イオン強度を有する(およそ100mM NaCl)。例えば、ある一部の実施形態では、バッファーは少なくとも100mMのイオン強度を有する。ある一部の実施形態では、バッファーは少なくとも200mM、または少なくとも250mMのイオン強度を有する。
【0087】
ある特定の実施形態では、機能性PKC−θタンパク質またはPKC−θキナーゼドメインを被験薬剤と接触させるバッファーは、NaClを含有する。例えば、バッファーは、少なくとも50mM NaClを含有し得る(さらなる塩(すなわち、NaCl以外)がバッファー中に存在し得ることに注意)。ある一部の実施形態では、バッファーは、少なくとも100mM NaCl、または少なくとも150mM NaCl、または少なくとも200mM NaClを含有する。ある一部の実施形態では、バッファーは、少なくとも250mM NaClを含有する。もちろん、当業者には、高イオン強度を有するバッファーを得るために、NaCl以外の塩またはNaClとともに加える塩を使用し得ることが理解されよう。かかる塩の非限定的な一例としては、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウムおよび塩化カリウムなどが挙げられる。
【0088】
本発明によれば、「免疫障害」は、免疫系の細胞(例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、マスト細胞、好中球およびマクロファージ)が正常に機能しない障害を意味する。ある一部の実施形態では、免疫障害は喘息である。他の免疫障害としては、限定されないが、自己免疫疾患(例えば、I型真性糖尿病および慢性関節リウマチなど)、移植片拒絶および呼吸器疾患、例えば、アレルギーなど免疫細胞がある役割を果たすものなどが挙げられる。
【0089】
したがって、本発明は、機能性PKC−θタンパク質のレベルをモジュレートする(例えば、減少させる)薬剤またはPKC−θキナーゼ活性をモジュレートする(例えば、減少させる)薬剤を同定することにより、免疫障害(例えば、喘息など)の処置に有用である薬剤を同定するための方法を提供する。機能性PKC−θタンパク質の産生またはPKC−θキナーゼ活性をモジュレートする(例えば、減少させる)薬剤としては、限定されないが、低分子化合物、化学物質、核酸分子、ペプチドおよびタンパク質(例えば、ホルモンおよび抗体など)が挙げられる。また、該薬剤には、例えば、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、例えば、アンチセンスリボ核酸および低分子干渉性RNA(siRNA)などが含まれ得る。アンチセンスヌクレオチド配列およびsiRNAは、典型的には、標的ヌクレオチド配列の一部分に相補的であるか、あるいは該一部分にハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列を含む。非限定的な一例では、アンチセンスヌクレオチド配列および/またはsiRNAは、ヌクレオチド配列CAGAATATGTTCAGGAACTTTTCCTTCATGAACCCCG (配列番号:7)(これは、T538自己リン酸化に必要とされる695位のセリン残基を含有するアミノ酸残基688〜699に対応するアミノ酸配列 QNMFRNFSFMNP (配列番号:8)をコードする)にハイブリダイズする。別の非限定的な例では、アンチセンスRNAおよび/またはsiRNAは、ヌクレオチド配列GGAGATGCCAAGACGAATACCTTCTGTGGGACACCT (配列番号:9)(これは、536および538位のトレオニン残基(その少なくとも一方がキナーゼ活性に必要とされる)を含有するアミノ酸残基532〜543に対応するアミノ酸配列 GDAKTNTFCGTP (配列番号:10)をコードする)にハイブリダイズする(例えば、図2Bおよび2Cを参照のこと)。アンチセンスヌクレオチド配列は、約20ヌクレオチド長を有し得るが、約20〜約200ヌクレオチド長の範囲であってもよく、該遺伝子標的の全長であってもよい。当業者は、所望の治療効果を奏するように、当該技術分野で知られ、例えば、Methods in Enzymology, Antisense Technology, パートA および B(第313巻および314巻)(M. Phillips編, Academic Press, 1999)に記載のような標準的な手順によって適切な標的および適切な長さのアンチセンス核酸を選択することができよう。本発明に有用なアンチセンス分子の非限定的な例は、Bennettら, 米国特許第6,190,869号(2001年2月20日発行)(引用により本明細書に組み込まれる)に記載されたものである。
【0090】
RNA干渉は、サイレンシングされる遺伝子標的と相同な低分子干渉性二本鎖RNA断片によって引き起こされる配列特異的転写後遺伝子サイレンシングに関する(Lee, N. S.ら, Nature Biotech. 19: 500-505 (2002))。このようなsiRNAは、天然mRNA分子を特異的に標的化し、排除し得る。siRNAを利用してタンパク質の産生を阻害するための方法は、当該技術分野でよく知られており、例えば、PCT国際公開公報WO 01/75164;WO 00/63364;WO 01/92513;WO 00/44895;およびWO 99/32619に開示されている。
【0091】
機能性PKC−θタンパク質の産生をモジュレートする(例えば、減少させる)か、またはPKC−θキナーゼ活性をモジュレートする(例えば、減少させる)ために使用され得る他の薬剤としては、限定されないが、細胞表面膜へのPKC−θの移動をブロックする薬剤などが挙げられる。利用可能な他の薬剤としては、本明細書に記載のスクリーニングアッセイで見られるものが挙げられる。
【0092】
さらなる薬剤、またはPKC−θのインヒビターもしくはアンタゴニストとしては、例えば、PKC−θタンパク質またはPKC−θタンパク質の一部分に特異的に結合する抗体および低分子などが挙げられる。「特異的に結合する」により、本発明の抗体が、PKC−θタンパク質(またはその一部分)を認識し、少なくとも10-5Mの解離定数(KD)で、または少なくとも10-6MのKDで、または少なくとも10-7MのKDで、または少なくとも10-8MのKDで、または少なくとも10-10MのKDで結合することが意図される。結合および結合親和性を測定するための標準的な方法は、よく知られている。したがって、PKC−θタンパク質に特異的に結合する抗体が本発明において提供される。
【0093】
本発明で使用されるPKC−θタンパク質に特異的に結合する抗体は、限定されないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、遺伝子操作された抗体、二重特異性抗体、抗体断片(限定されないが、「Fv」、「F(ab')2」、「F(ab)」および「Dab」などが挙げられる)および抗体の反応性部分を表す単鎖であり得る。上記の抗体形態の各々の作製方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0094】
例えば、ポリクローナル抗体は、精製された酸哺乳動物PKC−θタンパク質を種々の動物に注射し、血清中に産生された抗体を単離することにより得られ得、例えば、Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons(これは、定期的および周期的に改定される)に、より詳細に記載されている。抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、その作製方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0095】
特異的モノクローナル抗体は、市販品として入手してもよく、あるいは、Kohler および Milstein, Eur. J. Immunol. 6: 511-519 (1976)の手法(ならびにその改善法および修正変形法)によって調製してもよい。簡単には、かかる方法としては、所望の抗体を産生できる不死化細胞株の調製などが挙げられる。不死化細胞株は、選択した抗原を動物(例えば、マウスなど)に注射し、B細胞を該動物の脾臓から回収し、該細胞を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを形成することにより作製され得る。単一のコロニーを選択し、当該技術分野において常套的な手順により、所望のエピトープに対する高親和性抗体を分泌する能力について試験し得る。
【0096】
あるいはまた、抗体は、発現ライブラリーから、当該技術分野で知られた種々の方法によって組換えにより作製したものであってもよい。例えば、cDNAを、リンパ球、好ましくはBリンパ球(好ましくは、所望の抗原を注射した動物由来)から単離したリボ核酸(RNA)から作製し得る。cDNA(例えば、種々の免疫グロブリン遺伝子をコードするものなど)は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し、適切なベクター、例えばファージディスプレイベクターなどにクローン化し得る。かかるベクターは、細菌懸濁液中(好ましくは、大腸菌を含むもの)に添加し得、対応する抗体断片(ファージ粒子の表面に結合している)をディスプレイするバクテリオファージまたはファージ粒子が生成し得る。サブライブラリーを、所望の抗体を含むファージ粒子を、当該技術分野で知られた方法によって(例えば親和性精製手法など(例えば、パニングなど)が挙げられる)スクリーニングすることにより構築してもよい。次いで、サブライブラリーを利用して、抗体を所望の細胞型(例えば、細菌細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞など)から単離し得る。本明細書に記載の組換え抗体を作製するための方法およびその修正変形法は、例えば、Griffiths, W. G.ら, Ann. Rev. Immunol. 12: 433-455 (1994);Marks, J. D.ら, J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1991);Winter, G. および Milstein, C., Nature 349: 293-299 (1991);Hoogenboom, H. R. および Winter, G., J. Mol. Biol. 227: 381-388 (1992)を見るとよい。
【0097】
本発明における使用のため、PKC−θタンパク質を、まず、抗体の生成に使用する前に、当業者に同様によく知られ、かつ本明細書において先に記載した手法によって精製するのがよい。
【0098】
本発明のさらなる実施形態は、被験薬剤をプレスクリーニングすることにより被験薬剤の数を絞るための非限定的な方法を提供する。例えば、PKC−θタンパク質またはPKC−θ遺伝子発現を指令するプロモーターに結合する能力を有する被験薬剤のみが、本発明の機能性アッセイに使用され得る。
【0099】
被験薬剤をまず、PKC−θタンパク質に結合する能力でスクリーニングする非限定的な一例の場合では、精製PKC−θタンパク質を単離し、被験薬剤のスクリーニングに使用し得る。例えば、精製PKC−θタンパク質を、固相表面(例えば、セファロースビーズまたはプラスチック)上に固定化し、被験薬剤を、固定化された精製PKC−θタンパク質と接触させ得る。代替例では、PKC−θタンパク質を被験薬剤に曝露後、PKC−θタンパク質に対する抗体を添加してPKC−θタンパク質との免疫沈降に使用し、被験薬剤がPKC−θタンパク質と共免疫沈降したかどうかを測定することができる。PKC−θタンパク質に結合できる被験薬剤のみを、次に、機能性アッセイに使用し、これらが、細胞(例えば、マスト細胞またはT細胞(例えば、TH1もしくはTH2ヘルパーT細胞)など)において、PKC−θキナーゼ活性をモジュレート(例えば、低下)し得るかどうか、または機能性PKC−θタンパク質の量をモジュレート(例えば、低下)し得るかどうかを測定する。
【0100】
被験薬剤をまず、PKC−θプロモーターに結合する能力でスクリーニングする非限定的な一例の場合では、PKC−θプロモーター配列を、DNAマイクロチップアレイのようにして固定化し得る。次いで、異なる被験薬剤を、該プロモーターに結合する能力でスクリーニングし得る。PKC−θプロモーターに結合できる被験薬剤のみを、次いで、機能性アッセイに使用し、これらが、細胞(例えば、マスト細胞またはT細胞(例えば、TH2 T細胞)など)において、機能性PKC−θタンパク質の量をモジュレート(例えば、低下)し得るかどうかを測定する。
【0101】
さらなる態様において、本発明は、PKC−θプロモーターと作動可能に連結されたレポーター遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を被験薬剤と接触させること、およびレポーター遺伝子産物の産生を被験薬剤が低下させたかどうかを測定することを含み、ここで、レポーター遺伝子産物の産生を低下させる被験薬剤を喘息の処置に有用な薬剤であると認める、哺乳動物(例えば、ヒト)において喘息の処置に有用な薬剤を同定するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、PKC−θプロモーターと作動可能に連結されたレポーター遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、細胞(例えば、マスト細胞またはT細胞(例えば、TH1もしくはTH2ヘルパーT細胞)など)内に存在する。
【0102】
PKC−θプロモーターのヌクレオチド配列は、当該技術分野で認められた方法によって決定される。かかる方法の非限定的な一例は、ゲノムライブラリー(例えば、YACヒトゲノムライブラリー)を目的のプロモーター配列について、PKC−θのヌクレオチド配列をプローブとして用いてスクリーニングし、次いで、5'にプローブが結合したヌクレオチド配列を単離することである。適切なプロモーター配列を決定するための方法の別の非限定的な一例は、ヒトゲノムDNAのサザンブロッティング解析を行うことであり、分離されたヒトゲノムDNAをプローブ(例えば、ヒトPKC−θタンパク質またはその一部分をコードするヌクレオチド配列を含むプローブ)で電気泳動によりプローブし、次いで、cDNAプローブがハイブリダイズする位置を決定することにより行う。プローブがハイブリダイズするバンドが決定されたら、このバンドを単離し(例えば、ゲルの切断)、配列解析に供し得る。これにより、ヌクレオチドATG(すなわち、転写開始部位)の5'ヌクレオチド断片の検出が可能になる。このヌクレオチド断片は、PKC−θのプロモーターであり、シーケンシング解析に供し得る。ヌクレオチド断片は、およそ500〜1000ヌクレオチド長であり得る。かかる配列と少なくとも約70%、少なくとも約80%または少なくとも約90%同一性を有し、プロモーターとしての機能を果たす(例えば、本明細書に記載のPKC−θタンパク質をコードする遺伝子の発現を指令する)ヌクレオチド配列もまた、本発明に包含される。
【0103】
多種多様なレポーター遺伝子を、上記のように、PKC−θプロモーターと作動可能に連結させ得る。かかる遺伝子は、例えば、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β-グルクロニダーゼ、アルカリホスファターゼおよび緑色蛍光タンパク質または当該技術分野で知られた他のレポーター遺伝子産物をコードしたものであり得る。
【0104】
本発明の一形態では、PKC−θプロモーターと作動可能に連結されたレポーター遺伝子をコードするヌクレオチド配列を、宿主細胞内に導入する。上記のように、数多くの宿主細胞が本発明において用いられ得る。かかるヌクレオチド配列を、まず、本明細書において先に記載した適切な、あるいは所望の組換え発現ベクター内に挿入し得る。
【0105】
本発明のこの形態におけるベクターは、哺乳動物細胞におけるPKC−θプロモーターからのレポーター遺伝子の発現に必要な、または望ましい他の公知の遺伝要素(調節エレメントなどが挙げられる)を含み得る。例えば、ベクターは、プロモーターとインビボで協働し、例えばレポーター遺伝子のインビボ転写を達成する任意の必要なエンハンサー配列を含み得る。ヌクレオチド配列を宿主細胞内に導入する方法は、PKC−θタンパク質の作製について先に記載したものと同一である。
【0106】
PKC−θプロモーターと作動可能に連結されたレポーター遺伝子をコードするヌクレオチド配列を被験薬剤と接触させた後、被験薬剤がレポーター遺伝子産物の産生を阻害したかどうかを測定する。この終点は、レポーター遺伝子産物の量または活性のいずれかを定量することにより決定され得る。定量方法は、使用するレポーター遺伝子に依存するが、
レポーター遺伝子産物に対する抗体を用いる酵素結合イムノソルベント検定法の使用を伴ってもよい。さらに、アッセイは、化学発光、蛍光、放射性崩壊などを測定するものであり得る。被験薬剤がレポーター遺伝子産物の産生を阻害する場合、これは、喘息を処置するための薬剤に分類される。
【0107】
本明細書に記載のような、レポーター遺伝子産物の活性または量を測定するためのアッセイは、当該技術分野で知られており、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編, John Wiley & Sons)(これは、定期的および周期的に改定される)に記載されている。本明細書に記載のレポーター遺伝子産物のアッセイのさらなる記載は、例えば、以下の刊行物:ルシフェラーゼについては、Nguyen, V. T.ら, Anal. Biochem. 171: 404-408 (1988)を参照;β-ガラクトシダーゼについては、例えば、Martin, C. S.ら, Bioluminescence and Chemiluminescence: Molecular Reporting with Photons pp. 525-528(J. W. Hastingsら編, John Wiley & Sons, 1997);Jain, V. K.およびMagrath, I. T., Anal. Biochem. 199: 119-124 (1991)を参照;β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼおよびアルカリホスファターゼについては、例えば、Bronstein, I.ら, Bioluminescence and Chemiluminescence: Fundamentals and Applied Aspects, pp. 20-23(A. K. Campbellら編, John Wiley & Sons, 1994)を参照;クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼについては、Cullen, B., Methods. Enzymol. 152: 684 (1987);Gorman, C.ら, Mol. Cell. Biol. 2: 1044 (1982);Miner, J. N.ら, J. Virol. 62: 297-304 (1988);Sleigh, M. J., Anal. Biochem. 156: 251-256 (1986);Hruby, D. E.およびWilson, E. M., Methods Enzymol. 216: 369-376 (1992)を参照)を見るとよい。
【0108】
PKC−θ活性選択的に阻害する低分子もまた、喘息の処置における治療剤である。選択性は、PKC−θの阻害が他のPKCイソフォームよりも約20倍大きいIC50によって規定され得る。(IC50は、インヒビター標的の活性の50パーセントをもたらすインヒビターの濃度であると定義する。)
【0109】
本発明の別の態様において、本発明は、喘息を患うか、または喘息症状を患う哺乳動物(例えば、ヒト)に、PKC−θの触媒活性を低下させるか、または機能性PKC−θタンパク質の産生を低下させる薬剤の治療有効量を投与することを含む、喘息の処置方法を提供する。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。ある一部の実施形態では、喘息はIgE媒介性喘息である。
【0110】
「処置(treatment)」、「処置する」または「処置される」は、本明細書で使用する場合、喘息の少なくとも1つの症状または合併症を予防、低減または排除することを意味する。「治療有効量」は、機能性PKC−θタンパク質の産生を阻害または減少、またはPKC−θタンパク質のキナーゼ活性を阻害または減少させ、臨床的に有意な応答を引き起こすことができる薬剤の量を表す。臨床的に有意な応答としては、限定されないが、処置された状態の改善または状態の抑制の改善などが挙げられる。本発明にしたがって投与される薬剤の具体的な用量は、もちろん、その場の具体的な周囲状況(投与する薬剤、処置対象の具体的な喘息および類似の条件を含む)によって決定される。喘息は、例えば、気道過剰応答を減少させること、粘液(mucus)過剰生成を減少させること、血清IgEレベルを減少させることまたは気道好酸球増加症を減少させることにより処置する。
【0111】
薬剤は、哺乳動物に多種多様な経路で、例えば、経腸的、非経口的および局所に投与され得る。例えば、該薬剤は、経口、鼻腔内、吸入、筋肉内、皮下、腹腔内、血管内、静脈内、経皮、皮下または任意のその組合せで投与され得る。
【0112】
薬剤は、薬学的に許容され得る担体にて投与され得る。薬学的に許容され得る担体およびその配合は、よく知られており、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(第20版, A. Gennaro(編), Lippincott, Williams & Wilkins, 2000)に一般的に記載されている。ある一部の実施形態では、薬学的に許容され得る担体はエーロゾルの形態である。当該技術分野で知られた任意の好適な薬学的に許容され得る担体が使用され得る。担体は、固体、液体または固体と液体の混合物であり得る。液体または固体と液体の混合物として存在する場合、薬剤を効率的に可溶化する担体が好ましい。担体は、カプセル、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ、懸濁剤、エマルジョンもしくはシロップの形態または他の公知の形態をとり得る。担体は、香料剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁剤、結合剤、安定剤、錠剤崩壊剤およびカプセル化材料としての機能を果たす物質を含み得る。固体または液体の担体は、エーロゾルの形態をとり得、例えば、該薬剤を吸入するためのネブライザーにて使用した場合、該薬剤をその所望される位置に送達し得る。
【0113】
全身性経口投与のための錠剤は、当該技術分野で知られた賦形剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、糖類(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール)、セルロース(例えば、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、ゴム(例えば、アラビア、トラガカント)などを、崩壊剤(例えば、トウモロコシ、デンプンまたはアルギン酸など)、結合剤(例えば、ゼラチン、コラーゲンまたはアカシアなど)および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなど)とともに含み得る。散剤では、担体は、微細に細分された固体であり、これを、有効量の微細に細分されたインヒビター剤と混合する。液剤、懸濁剤またはシロップでは、有効量のインヒビター剤を、担体、例えば、滅菌水, 生理食塩水または有機溶媒(例えば、水性プロピレングリコールなど)に溶解または懸濁する。他の組成物もまた、インヒビターを水性デンプンもしくはナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液または当該技術分野で知られた適当な油に分散させることにより作製し得る。
【0114】
薬剤は、哺乳動物に治療有効量で投与する。かかる量は、喘息の処置または喘息症状の低減にに有効である。この量は、用いる薬剤の活性、他のいずれかの喘息沈静剤を共投与したかどうか、およびかかる喘息沈静剤の性質、喘息の性質および患者の健康に応じて異なり得る。かかる量は、当業者によって決定され得るが、典型的な治療有効量としては、約10 mg/kg/日〜約100 mg/kg/日が挙げられる。もちろん、具体的な症例に応じて、より低い用量またはより高い容量が必要とされることもある。該薬剤は、担体と組み合わせる場合、約1重量パーセント〜約99重量パーセントの量で存在し得、残部が薬学的に許容され得る担体で構成される。
【0115】
ある特定の実施形態では、PKC−θ産生または触媒活性の該薬剤またはインヒビターは、例えば、1種類以上の喘息沈静剤を含む組成物にて共投与され得る。かかる薬剤は当該技術分野で知られており、例えば、β-アドレナリン作用剤(イソプロテレノール、エピネフリン、メタプロテレノールおよびテルブタリンなど);メチルキサンチン類(テオフィリン、アミノフィリンおよびオクストリフィリンなど);コルチコステロイド類(ベクロメタゾン、ベータメタゾン、ヒドロコルチゾンおよびプレドニゾンなど);抗コリン作用薬(アトロピンおよび臭化イプラトロピウムなど);抗ヒスタミン薬(テルフェナジンおよびアステミゾールなど);カルシウムチャネル遮断薬(ベラパミル、ニフェジピンなど);およびマスト細胞安定剤(クロモリンナトリウムおよびネドクロミルナトリウムなど)が挙げられる。
【0116】
ある一部の実施形態では、該薬剤が核酸分子である。ある特定の実施形態では、核酸分子はリボ核酸分子である。ある一部の実施形態では、リボ核酸分子は、配列番号:3に示すヌクレオチド配列の一部分に相補的であるヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、該薬剤は、PKC−θタンパク質をコードするRNAの量を低下させる。ある一部の実施形態では、該薬剤は、PKC−θタンパク質をコードするRNAの翻訳を阻害する。特定の実施形態では、該薬剤は、PKC−θタンパク質またはその一部分に特異的に結合する抗体(例えば、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化またはキメラ抗体)である。
【0117】
さらなる態様において、本発明は、内因性PKC−θの発現を欠く細胞を特色とする。ある特定の実施形態では、該細胞はマスト細胞である。かかる細胞は、例えば、以下に記載するPKC−θノックアウトマウスから単離されたものであり得る(Sunら, Nature 404: 402-407 (2000)も参照のこと)。マスト細胞を単離するための方法は、よく知られており(例えば、以下に記載する方法を参照)。また、内因性PKC−θタンパク質の発現を欠くかかる細胞は、ヒト細胞であってもよく、PKC−θをコードする遺伝子が、該細胞がもはや内因性PKC−θを発現しなくなるように欠失または変異させたものである。
【0118】
内因性PKC−θタンパク質の発現を欠くマスト細胞は、例えば、被験薬剤が喘息の処置に有用に有用な薬剤であるか否かを試験するために有用である。以下の実施例に記載のように、ヘマグルチニン(HA)タグ化PKC−θは、293細胞内で発現された。HA-タグ化PKC−θは、マスト細胞内で発現され得、HA-タグ化PKC−θタンパク質の活性および/または量は、これらの細胞内で被験薬剤の存在下で測定され得る。しかしながら、マスト細胞は内因性PKC−θを発現するため、一部の被験薬剤は内因性PKC−θタンパク質に影響し、それにより、HA-タグ化タンパク質に対する効果が減弱される。この減弱は、内因性PKC−θタンパク質発現を欠き、HA-タグ化PKC−θタンパク質を発現するマスト細胞では起こらない。またさらに、かかる細胞は、HA-タグ化PKC−θに対して野生型PKC−θとは異なる影響を及ぼす被験薬剤のスクリーニングに有用である。
【0119】
ある一部の実施形態では、該細胞は外因性PKC−θまたはその断片を発現する。次に、上記の組成物および方法を説明する具体例について述べる。これらの例は好ましい実施形態を説明するために示すものであり、これによって、本発明の範囲の限定を意図しないことを理解されたい。
【0120】
実施例1
ヒトT細胞のTCR副刺激でのPKC−θ膜移行および活性ループリン酸化
PKC−θヌル(すなわち、PKC−θノックアウト)マウスは生存可能であるが、成熟T細胞は、増殖、IL-2産生およびNF-κBの活性化において欠損している(Sunら、Nature 404:402-407(2000))。ヒト培養マスト細胞(HCMC)において、PKC活性は、IgE受容体架橋後、迅速に(<5分間)膜に局在化することが実証された(Kimataら、BBRC 3:895-900(1999))。PKC−θはTCR媒介シグナル伝達において中心的な役割を果たし、ラット好塩基球性白血病株であるRBL-2H3細胞中で実証された効果を有するので(Liuら、J.Leukocyte Biol.69:831-840(2001))、BMMC、腹膜マスト細胞、およびT細胞におけるPKC−θの活性化および機能を調べた。
【0121】
TCR刺激後、PKC−θは、最大4時間留まる超分子的な活性化複合体の中心領域に迅速に移行する、(Huangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:9369-9373(2002))。この移行がPKC−θタンパク質のリン酸化の変化に対応するか否かを決定するために、ヒトT細胞を精製し、PKC−θ移行および自己リン酸化を分析した。
【0122】
T細胞を精製するために、単核細胞調製物を、Biological Specialties(Colmar,PA)から入手した。細胞を、Ficoll-Histopaque(例えば、Sigma Chemical Co.,St.Louis,MOから市販されている)上に重層し、バフィーコートを遠心分離後に収集した。細胞をPBS中で数回洗浄し、RPMI/10%FCS中で、106/mlの密度で培養した。T細胞をネガティブ選択によって精製した(Dynal Biotech,Oslo,Norway)。精製したT細胞を、可溶性抗CD3ε(5μg/ml、10μg/ml抗mIgGと架橋)および可溶性抗CD28(5μg/ml)を用いて、0、2、10、45、および60分間刺激した(抗CD3εと抗CD28の両方は、BD Biosciences,San Jose,CAから市販されている)。
【0123】
分析のために、刺激された細胞を遠心分離によって収集し、氷冷PBS中で1回洗浄した。細胞ペレットを100μlの低張性溶解緩衝液[20mM Tris-HCl、pH 7.5、2mM EDTA、5mM エチレングリコール−ビス(B−アミノ−エチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、1mLあたり各10μgのロイペプチンおよびアプロチニン、プロテアーゼカクテルおよびホスファターゼ阻害剤]中に再懸濁することによって、全細胞溶解物を調製した。25ゲージ針を30回通過させることによってこの細胞懸濁液を剪断し、次いで、280×gで7分間遠心分離して核を沈殿させた。分析のためのアリコートを確保した後、全細胞抽出物を高速遠心分離(16,000×g)によって清澄化した。細胞質ゾル抽出物を収集し、膜ペレットを低調性溶解緩衝液中で1回洗浄し、次いで、1% NP-40界面活性剤を加えた同じ緩衝液中で、氷上にて30分間、溶解のために再懸濁した。界面活性剤溶解性膜画分を、もう1回の高速遠心分離によって得、残存している粒子画分は、膜ミクロドメインを含む界面活性剤不溶性膜画分(DI画分)であった。このDI画分を、分析のためにSDS-PAGEサンプル緩衝液中で煮沸した。細胞下タンパク質画分を、4〜20% SDS-PAGEによって分析し、ニトロセルロースに転写し、5% blotto/TBS-Tween.05%中の抗ホスホT538PKC−θ特異的抗体(Cell Signaling Technology,Inc.(Beverly,MA)から市販されている)でブロットイムノブロットを行った(図1Aを参照のこと)。
【0124】
次に、ニトロセルロースブロットを剥離し、抗PKC−θ E7(Santa Cruz Biotechnology,Inc.,Santa Cruz,CA)で再プローブした(図1Bを参照のこと)。最後に、図1Cに示されるように、すべてのレーン中に等しくロードしたことを示すために、ブロットを再度剥離し、次いで抗アクチン(Santa Cruz Biotechnology,Inc.から市販されている)を用いた。
【0125】
図1Aに示されるように、PKC−θは、TCR刺激(CD3およびCD28刺激を経由する)の後で、キナーゼの活性化ループ中で、538位のスレオニン残基上で自己リン酸化される。この自己リン酸化事象は、超分子活性化複合体の中心領域へのPKC−θの移行と同時発生する(図1Bを参照のこと)。図1Cにおいて示されるように、ほぼ等量のアクチンがすべての時間処理において見い出された。
【0126】
従って、これらの結果は、超分子活性化複合体の中心領域へのPKC−θの移行が、アミノ酸残基スレオニン538上でのキナーゼの活性化ループの同時の誘導性リン酸化と一致することを示した。
【0127】
実施例2
PKC−θ活性化ループ自己リン酸化はキナーゼ活性のために必要とされる
実施例1に記載されたように、PKC−θ膜移行は、ヒトT細胞のT細胞受容体副刺激の際にアミノ酸残基スレオニン538上でキナーゼの活性化ループの誘導性リン酸化と一致した。活性化ループのリン酸化は、必要とされるキナーゼ機能であると報告されている(Liuら、Biochemical Journal,2002,361-255-265)。この報告を確認するために、PKC−θ全長cDNAを、C末端赤血球凝集素(HA)タグエピトープタグとともにプラスミドpcDNA3(Invitrogenから市販されている)にサブクローン化し、C末端HAタグエピトープタグ化全長(WT)PKC−θ(ヌクレオチド配列の配列番号11;アミノ酸配列の配列番号12)を作製した。HAタグ化キナーゼ不活性PKC−θもまた、アミノ酸409位のリジンをトリプトファンに変異させることによって生成した。このキナーゼ不活性化K409W変異は、PCR産物をサブクローン化することによって生成し、配列決定によって確認し(ヌクレオチド配列の配列番号13;アミノ酸配列の配列番号14)、pcDNA3発現ベクターにサブクローン化した。ヒト胚性腎臓293細胞(American Type Culture Collection,Manassas,VAから市販されている)を、脂質を使用して(Mirus Corporation,Madison WIから市販されているMirus TransIT-LT1試薬を使用する)、これらの発現構築物で2連で一過性にトランスフェクトした。トランスフェクトの24時間後または72時間後に、ウェスタンブロッティング分析および活性のために細胞を収集した。
【0128】
収集した細胞を低張性溶解条件で溶解し、核を遠心分離した(実施例1におけるより詳細な方法を参照のこと)。1つの複製の全細胞抽出物をSDS-PAGE上で泳動し、ニトロセルロースに転写し、抗ホスホT538PKC−θ特異的抗体(Cell Signaling Technology)で最初にプローブし、次いで、剥離し、抗HA-抗体(Santa Cruz)で再プローブした。図2Aに示されるように、キナーゼ不活性化全長PKC−θタンパク質が存在していたが(抗HA抗体を用いるその染色によって決定される)、しかし538位におけるスレオニン残基上でリン酸化されなかった(抗pT538PKC−θ抗体を用いる染色のその欠如によって決定される)。従って、図2Aにおけるトランスフェクション実験において示されるように、野生型キナーゼ活性化ループが効果的にリン酸化されるのに対して、キナーゼ不活性化バージョン(タンパク質中の409位の触媒性リジンをトリプトファンに変異させることによって生成する、すなわち、名称K409W)はリン酸化されない。他のPKCアイソフォームからの証拠は、活性化ループ(すなわち、538位のスレオニン)におけるリン酸化が、他のPKCアイソフォームからの証拠に基づくと、PDK-1キナーゼによるものであったかもしれないことを示したが、本明細書に提示した結果は、ヒト胚性293腎臓細胞に存在する内因性PDK-1細胞がPKC−θ活性化ループをリン酸化しないことを示す。活性化ループの自己リン酸化もまた、細菌で発現された活性キナーゼドメインのホスホブロット分析、および精製キナーゼドメインの分析によって証明された(データ示さず)。
【0129】
次に、同じ複製(すなわち、図2Aにおいて使用したもの)からの細胞質ゾル抽出物を、ペプチド基質を使用して、キナーゼ活性について分析した。細胞質ゾル抽出物を、30μlの最終容量中、5μgタンパク質を用いて、ADBII緩衝液(20mM MOPS pH 7.2、25mM β-グリセルアルデヒド、1mM オルトバナジウム酸ナトリウム、1mM DTT、1mM CaCl2)中の各々最終濃度、83μM ビチオン化ペプチド(アミノ酸配列FARKGSLRQ;配列番号15),166μM ATP、0.5μlのP33 ATP(比活性3000 Ci/mmol、10 mCi/ml)、84ng/μl ホスファチジルセリン、8.4ng/μl ジアシルグリセロールとともに、室温で30分間、96ウェルプレート中でインビトロでキナーゼ活性について分析した。キナーゼアッセイを、EDTAを含む緩衝液で停止し、洗浄およびプレートリーダー中での放射能検出のためにストレプトアビジンコートしたシンチプレートに移した。ペプチドのみおよびキナーゼのみの反応を、バックグラウンドとして、最終的な計数から減算した。
【0130】
図2Bに示されるように、キナーゼ不活性化全長PKC−θタンパク質は、野生型PKC−θタンパク質と比較して、ヒト胚性腎臓293細胞へのトランスフェクションの24時間後と72時間後の両方で、タンパク、劇的に低いキナーゼ活性を有した。最後に、野生型PKC−θおよびキナーゼ不活性型PKC−θの、内因性基質IKK(IκBαキナーゼ)のリン酸化を生じる能力を決定した。これを行うために、2連のセットからの細胞を、1%NP-40溶解緩衝液中で溶解し、界面活性剤不溶性膜画分をニトロセルロースに移した。このニトロセルロースブロットを、最初に抗pIKKα/βでプローブし、次いで剥離し、抗IKKαで再プローブし、最後に、剥離し、抗IKKβで再プローブした(すべての抗体はCell Signaling Technologyからである)。図2Cに示されるように、キナーゼ不活性化PKC−θではなく野生型PKC−θが、IKK-βのリン酸化を生じた。
【0131】
図2Bおよび2Cに示される結果は、活性化ループ自己リン酸化(538位のスレオニンにおいて)が、合成基質を使用するインビトロ細胞溶解物キナーゼ活性(図2B)および内因性IKKのリン酸化(図2C)によって示されるように、PKC−θ活性およびシグナル伝達のために必要とされることを実証する。これらの結果は、野生型キナーゼがIKKリン酸化を誘導するが、キナーゼ不活性バージョンはそうすることに失敗することを示す。これらの結果は、治療的調節のための独特かつ新規な機構としてのPKC−θ活性化ループを同定した。
【0132】
実施例3
PKC−θキナーゼドメインの触媒の機構
新規なリン酸化されたPKC−θキナーゼドメイン(PKC−θ KD)の触媒の機構を評価するための研究を次に実行した。これを行うために、触媒的に活性なPKC−θ KDを発現させ、リン酸化部位の分析のために精製した。これらの研究のために、PKC−θのキナーゼドメイン(PKC−θ KD;アミノ酸残基362〜706)を最初に発現し、精製した。これを行うために、PKC−θ KD(アミノ酸残基362〜706)を、pET16b発現ベクターにクローン化し、C末端にヘキサヒスチジンタグを導入した。ヒスタグ化PKC−θ KDのアミノ酸配列は配列番号63に提供される(配列番号63のN末端メチオニン残基およびグリシン残基は全長PKC−θには存在しないことに注意のこと)。このプラスミドを使用して、過剰発現のために大腸菌株BL21-DE3を形質転換した。37℃で0.4の光学密度の10リットル細胞培養を、0.1mM IPTGを用いて3時間、25℃で誘導し、その後これらを収集し、緩衝液(25mM Tris pH 8.0、25mM NaCl、5mM 2−メルカプトエタノール、5mM イミダゾール、50μM ATPおよびプロテアーゼ阻害剤)中に再懸濁し、マイクロフルイダイザーを使用して溶解した。
【0133】
この溶解物を、20mLのニッケル-NTA樹脂に、1時間、4℃で適用した。続いて、この樹脂をクロマトグラフィーカラムとして流し込み、25mM イミダゾールを含む同じ緩衝液で広範囲にわたって洗浄した。樹脂に結合したタンパク質を、200mM イミダゾール緩衝液で溶出した。タンパク質をアニオン交換HQにすぐにロードし、このカラムを、25mM Tris pH 8.0、25mM NaCl、5mM DTT、50μM ATPで洗浄し、その後25mM〜500mM NaClの直線状勾配の適用によって溶出した。PKC−θ KDを含む画分をSDS-PAGEによって選択し、プールし、25mM Tris pH 8.0、5mM DTTで2倍に希釈し、ヘパリンクロマトグラフィーカラムにロードした。素通り画分をヒドロキシアパタイトカラムに適用し、25mM Tris pH 8.0、50mM NaCl、5mM DTTで広範囲にわたって洗浄した。0〜100mMのリン酸ナトリウムの直線状勾配は標的タンパク質を溶出した。次いで、タンパク質を、Superdex 200サイズ排除クロマトグラフィーカラム上でモノマーとしてサイズ分画し、25mM Tris pH 8.0、50mM NaCl、5mM DTTに対して4℃で一晩透析し、濃縮した。
【0134】
次に、質量スペクトル分析を実行した。これを行うために、PKC−θ KD(0.25 μg/μl中で、50mM Hepes pH 7.5、5mM MgCl2、5mM DTT、10% グリセロールおよび0.0025% Brij-35、)を、10% Tricineゲル(Invitrogen)上で泳動し、クマシーブルーで染色した。ゲルを切断し、ProGest研究用ロロボット(Genomics Solutions,Ann Arbor,MI)中で、トリプシン(Promega,Madison,WI)を用いて、ゲル内消化に供した。サンプル量をSpeedVacによって減少し、最終量の約30μlまで0.1M 酢酸で再構成した。次いで、ペプチドを、ナノLC/MS/MS分析に供した。手短に述べると、サンプルを、10μm C18ビーズ(YMC,Wilmington,NC)を充填した75μm×10cm IntegraFritカラム(New Objectives,Woburn,MA)に注入した。HPLC勾配は、45分間にわたって、250nL/分の流速で、4〜60%溶媒B(溶媒A、0.1M酢酸/1% ACN;溶媒B、0.1M 酢酸/90% ACN)まで直線状に増加した。質量スペクトルを、LCQ DECA XPイオントラップ質量スペクトル測定装置(ThermoFinnigan,San Jose,CA)を使用して収集した。MS/MSデータを、Sequestアルゴリズム(ThermoFinnigan,San Jose,CA)を使用して、セリン、スレオニンおよびロチロシン上の差別的なリン酸化修飾についてPKC−θに対して検索した。
【0135】
PKC−θ KDによる触媒の機構の分析において補助するために、部位特異的変異誘発を使用して(Stratagene,La Jolla,CAから市販されているキットを使用する)、PKC−θ KD発現構築物中で種々の変異を作製した。これらの変異の配列を、配列決定によって確認した。この構築物を、野生型PKC−θ KDの発現のために上記に記載されるのと同様に発現し、等価量の大腸菌溶解物を、Bradfordアッセイ(BioRad,Hercules,CAから市販されている)によるタンパク質の見積もりの後で、ブロットイムノブロットおよびキナーゼアッセイによって分析した。手短に述べると、溶解物を、4〜20% SDS-PAGEによって分析し、ニトロセルロースに転写し、5% blotto/TBS-Tween 0.05%中のCell Signaling Technology (Beverly,MA)から市販されている抗pT538PKC−θ抗体またはInvitrogen(Carlsbad,CA)から市販されている抗His抗体のいずれかを用いてブロットイムノブロットを行った。
【0136】
質量スペクトル研究は、PKC−θ KDがリン酸されることを明らかにした。セリン-スレオニンキナーゼが存在しない大腸菌中でPKC−θ KD発現が実行されたとき、質量スペクトルの所見は、発現されたキナーゼによる自己リン酸化の結果である。アミノ酸配列に基づく予想分子量は41,615ダルトンであるが、、ESI-MSによる分子量の決定は42,092ダルトンおよび42,173ダルトン(各々の種が50%)であった。これは、大腸菌における5個または6個のアミノ酸の自己リン酸化を示す。図3A〜3Dは、PKC−θ KD自己リン酸化の特徴を示す概略図である。図3Aが示すように、新規なC2ドメインがタンパク質のアミノ末端に位置し、続いて2つのコファクター結合C1ドメイン、および次いでカルボキシ末端キナーゼドメインがある。保存性リン酸化部位(すなわち、538位のスレオニン、676位のセリン、685位のセリン、および695位のセリン)は図3Aの上に示され、一方PKC−θ KD N末端およびC末端アミノ酸残基(それぞれ362位および706位)はこの図の下に示される。
【0137】
質量分析スペクトル分析において、m/z比はペプチドの分子量/電荷の比であり、z(電荷)は1である。従って、m/z比は、ペプチドフラグメントの分子量を与える。質量分析生成物イオンスペクトル分析は、Ser695がリン酸化部位であることを示した。
【0138】
従って、図3Bは、m/z 705.52におけるペプチドNFpSFMNPGMER(693〜703位に広がる)の生成物イオンスペクトルを示し、これはSer695がリン酸部位であることを確証した。図3Cは、m/z 760.48におけるペプチドALINpSMDQNMFR(681〜692位に広がる)の生成物イオンスペクトルを示し、これはSer685がリン酸部位であることを確証した。図3Dは、m/z 1159.71におけるペプチドTNTFCGTPDYIAPEILLGQK(536〜555位に広がる)の生成物イオンスペクトルを示す。図3Dの生成物イオンスペクトルは、このペプチド上の1つのリン酸を示し、これはまた、リン酸化部位がThr536またはThr538のいずれかであることを示した。540位のシステイン残基(図3Dにおいて#によって示される)はヨードアセトアミドによってアルキル化されていることに注意のこと。
【0139】
従って、疎水性モチーフのSer695およびターンモチーフのSer685を自己リン酸化部位として同定した(それぞれ図3Bおよび3Cを参照のこと)。質量スペクトル測定は、Ser662およびSer657ターンモチーフ残基における任意のリン酸化を検出しなかった。他のPKCターンモチーフとの相同性に基づくと、Ser676は自己リン酸化されそうであるが、このことはこれらの研究において明白ではない。Ser676はトリプシンペプチド中では検出されないからである。
【0140】
これらの研究はさらに、活性化ループ中のThr536またはThr538のいずれかもまた自己リン酸化されることを明らかにした(図3D)。細菌で発現されたPKC−θ KDのX線構造決定は、Thr538残基がリン酸化されること確証した(Xuら、J.Biol.Chem.279(48):50401-50409(2004))。この結果は、活性化ループがPDK-1によってリン酸化されるという以前の提案と対照的であることを考えると、驚くべきことである(Balendranら、FEBS Lett.484:217-223(2000);LeGoodら、Science 281:2042-2045 (1998))。確かに、キナーゼ不活性化全長PKC−θ変異体K409Wの以前の研究は、この分子がThr538でリン酸化されないことを示してきた(Liuら、Biochem.J.361:255-265(2002))。上記の実施例2に記載されるように、HEK293細胞異種発現系を使用して、細胞中でのK409W PKC−θ変異体のThr538リン酸化の欠如もまた観察した(データ示さず)。この所見は、K409Wキナーゼ変異体が自己リン酸化できないことに起因するThr538リン酸化の欠如を暗示する。さらに、K409W PKC−θ分子の無効にされたThr538リン酸化は、インビトロ細胞溶解物キナーゼ活性、および内因性IKKα/βリン酸化の欠如と相関する(データ示さず)。
【0141】
PKC−θ活性化ループがPDK-1によってリン酸化されることが以前に示唆されたので(Balendranら、FEBS Lett.484:217-223(2000);LeGoodら、Science 281:2042-2045(1998))、細菌によって発現されたPKC−θ KDのThr536またはThr538のいずれかが自己リン酸化されることを示す質量スペクトル分析の結果は驚くべきものである(図3B〜3Dを参照のこと)。これは、水素結合中のリン酸化されたThr538が、Thr536に先行する側鎖と相互作用するX線構造によって部分的に説明される(Xuら、J.Biol.Chem.279(48):50401-50409(2004))。この相互作用は、おそらく、活性化ループ中での相互作用、およびαC-へリックスとの相互作用をさらに安定化し、これらの両方が触媒において関連性を有する(Johnsonら、Cell 85:149-158(1996))。
【0142】
以前の研究では、PKC−θについての触媒能力のある立体構造を示唆しており、ここで、活性化ループは構成的にリン酸化される(Newton,A.C.,Biochemical Journal.370:361-371(2003))。PDK-1は、疎水性モチーフおよびターンモチーフ上の保存性部位に存在する、自己リン酸化に先行する必要とされる修飾として、キナーゼドメイン活性化ループでPKCおよび他のAGCファミリーのキナーゼをリン酸化する(Newton,A.C.,Biochemical Journal.370:361-371(2003);Balendranら、FEBS Lett.484:217-223(2000))。本明細書に提示された結果から、有力な仮説とは対照的に、PKC−θが独特に自己リン酸化可能であるということを明らかにする。PKC−θ KDの特徴に対する本明細書に提示される所見は、キナーゼドメイン内の疎水性モチーフおよびターンモチーフに加えて、活性化ループもまた自己リン酸化されることを支持する証拠を提示する(図3B〜3Dを参照のこと)。これらの研究では、細胞中でPDK-1がPKC−θ活性化ループをリン酸化することができるという可能性を除外しない。しかし、細菌で発現されたPKC−θとは対照的に(Smithら、J.Biol.Chem.277:45866-45873(2002))、本実施例に提示された所見は、PKC−θ KDがPKC−θ活性化ループで自己リン酸化が可能であり、それゆえに、必須のPDK-1リン酸化の要求性を有さないことを示す。
【0143】
質量スペクトル分析データは、細菌で発現されたPKC−θ KDが5個または6個のアミノ酸残基で自己リン酸化されることを示す。これらの実験において同定されたリン酸化部位には、疎水性モチーフのSer695、ターンモチーフのSer685、および活性化ループのThr538またはThr536が含まれる。疎水性モチーフのSer676はトリプシン性ペプチド中で検出されるが、これはまた、おそらく配列相同性に基づいてリン酸化される。Ser685は、ターンモチーフ中で新たに同定されたリン酸化部位である。最後に、上記に同定されたリン酸化部位に加えて、少なくとも2つのアミノ酸残基が自己リン酸化されるが、これらの技術によって検出されない。
【0144】
活性化ループ中のアミノ酸残基Thr538は、キナーゼ活性のために必要とされる(Liuら、Biochem.J.361:255-265(2002))。従って、キナーゼドメイン内のいくつかのリン酸化部位における点変異を、活性化ループのThr538自己リン酸化に対するそれらの効果について試験した。これを行うため、PKC−θ KDタンパク質の大腸菌溶解物および種々の変異を、抗pT538PKC−θ抗体を使用するウェスタンブロッティングによってアッセイした。図4Aに示されるように、野生型PKC−θ KDタンパク質および試験された3つの変異体フラグメントのみが、538位のロチロシン上でリン酸化された。等しいローディングのレーンを、ブロットを剥離すること、および抗His抗体を用いる染色で再プローブすることによって決定した(図4Bを参照のこと)。これらの大腸菌溶解物の画分もまた溶解物キナーゼ活性に供した。これらのキナーゼアッセイを、20mM MOPS pH 7.2、25mM β-グリセロリン酸、1mM DTT、1mM CaCl2中の83μMのビチオン化ペプチド基質(FARKGSLFQ)、166μM ATP、0.5μlのP33ATP(比活性3000Ci/mmol、10mCi/ml)、84ng/μlホスファチジルセリン、8.4ng/μlジアシルグリセロールの最終濃度を用いて、30μl中で、30分間、室温で実行した。5〜10μlの反応物をホスホセルロースペーパー上にスポットし、次いでこれを、0.75%リン酸中で3回、およびアセトン中で1回洗浄した。シンチレーションカクテルをホスホセルロースペーパーに加え、結合した放射能を、シンチレーションカウンターを用いて検出した。図4Cに示されるように、試験された種々のPKC−θ KD変異体の中で、野生型PKC−θ KDタンパク質および3つの変異体フラグメントのみが、スレオニン538上でリン酸化され、インビトロキナーゼ活性アッセイにおいて活性を示した。確かに、溶解物のキナーゼ活性は、発現された変異体の各々について溶解物中で検出されたリン酸化スレオニン538(pThr538)の範囲を相関する(図4Aおよび4Cを比較のこと)。
【0145】
PKC−θ KDのC末端疎水性モチーフ中の695位のセリン(Ser695)もまた、抗pT538ウェスタンブロットパネルにおける有意に減少したシグナルによって証明されるように、最適な活性化ループの自己リン酸化のために必要とされる(図4AにおけるS695A変異体(すなわち、695位においてアラニンに変異したセリン)を参照のこと)。従って、695位のセリンは、S695A変異体(図4CにおけるS695A変異体を参照のこと)のキナーゼ活性の欠如によって実証されるように、不活性変異およびキナーゼ不活性化変異、それぞれ、T538AおよびK409Wと同様に、PKC−θ KDキナーゼ活性のために必須である(図4Aおよび4Cを参照のこと)。対照的に、ターンモチーフ残基Ser662は、活性とThr538自己リン酸化の両方のために不必要であるのに対して(図4AにおけるS662Aを参照のこと)、ターンモチーフ残基Ser676およびSer685は、部分的な影響を与える(図4AにおけるS676A変異体およびS685A変異体を参照のこと)。
【0146】
従って、保存性ターンモチーフ中のSer676とSer685の両方がPKC−θ KDのキナーゼ機能に部分的に影響を与えることを実証した(図4Aおよび4Cを参照のこと)。全長キナーゼにおけるS676A変異は、キナーゼ活性に影響を与えないのに対して、全長分子におけるS695A変異がキナーゼ活性を80%減少したことが以前に報告されている(Liuら、Biochem.J.361:255-265(2002))。全長PKC−θにおいて報告されたS695Aの残渣の活性は、キナーゼドメインの状況において、S695Aについて観察された適度なホスホ-Thr538シグナルと一致する(図4C、S695A変異体を参照のこと)。このことは、Ser695変異が最適なThr538自己リン酸化の損失を生じ、結果として、キナーゼ活性の減弱を生じることを示唆する。この特徴はまた、他のPKCアイソフォームの中でも、PKC−θ独特である。PKC−θの場合において、Ser695およびThr538自己リン酸化は、いくらか相互依存的であることがあり得る。活性化ループにおいてリン酸化されたPKC分子は、コファクター結合、自己リン酸化、および基質触媒の段階の前に存在する、「触媒可能立体構造」として記載される(Newton,A.C.,Biochemical Journal.370:361-371(2003))。最適なPKC−θ KDキナーゼ機能について、活性化ループと疎水性モチーフの両方の自己リン酸化がPKC−θ「触媒可能立体構造」に寄与することがあり得る。
【0147】
発現された活性PKC−θ KDのリン酸化部位の関連性が確立されたので、次に、詳細な酵素機構の研究が、キナーゼ触媒反応を試験するために着手された。PKC−θの反応速度論的機構を決定する際の使用のために試験されるペプチド基質が表1に示される。
【表1】
【0148】
ペプチド1およびペプチド2は、PKC−αの偽基質領域に由来する基質である。ペプチド3およびペプチド4は、それぞれ、血清応答因子(Heidenreichら、J.Biol.Chem.274:14434-14443(1999))およびリンパ球特異性タンパク質-1(Huangら、J.Biol.Chem.272:17-19(1997))におけるリン酸部位に由来する。
【0149】
酵素反応速度論的アッセイのために、ATP、ATPγS、Ficoll-400、スクロース、ATP、ADP、ホスホエノールピルビン酸(PEP)、NADH、ピルビン酸キナーゼ(PK)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、AMP-PNP、アセトニトリル、および緩衝液HEPESを、Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO)から購入した。ペプチド基質、阻害剤およびリン酸化基質ペプチドは、AnaSpec(San Jose,CA)、SynPep(Dublin,CA)またはOpen Biosystems(Huntsville,AL)から購入した。酵素活性は、分子デバイスプレートリーダー上で、共役PK/LDHアッセイを使用して、25℃で340nmで分光光度的に追跡して決定した。示されない限り、標準的な反応は、25mM HEPES pH 7.5、10mM MgCl2、2mM DTT、0.008% TritonX100、100mM NaCl、20単位PK、30単位LDH、0.25mM NADH、および2mM PEP中で、0.0080mLの最終容量で実行した。PKC−θ KD濃度は、0.156μg/mlと0.312μg/mlの間で変動した。
【0150】
次に、溶媒粘性研究を実行した。定常状態の反応速度論的パラメーターを、様々なスクロース(0〜35%)またはFicoll 400(0〜8%)を含む反応速度論的酵素アッセイのために上記の緩衝液中で決定した。相対的な溶媒粘度(ηrel)を、Ostwald粘度計を使用して、25mM HEPES pH 7.5、10mM MgCl2、2mM DTTおよび100mM NaClと比較して、25℃にて3連で決定した。粘性源を有さない緩衝液は、0の上付文字で示される。共役酵素系はこれらの粘性源の存在によって影響されなかった。ATPγSを用いるチオ効果研究およびADPを用いる生成物阻害研究を、Phenomenex Auga 5m C18 124 A050mmX4.60mMカラム(00B-4299-E0)を使用して、Hewlett Packardシリーズ1100 HPLC上で分析した。リン酸化ペプチドを、0%〜100% 20mM リン酸 pH 8.8/アセトニトリル(50/50)を使用して、非リン酸化ペプチドから分離した。ロフルオロセイン標識ペプチドを485nmにおける励起、および530nmにおける蛍光発光をモニターすることによって検出した。V
【0151】
次に、基質反応速度論を決定した、これを行うために、データを、通常のMichaelis-Menten反応速度論についての式1または基質阻害についての式2にフィットさせた:
【0152】
ここでSは基質であり、Vmaxは最大酵素速度であり、KmはMichaelis定数であり、Kiは基質阻害のための阻害定数である(Adams,J.A.,Biochemistry 42:601-607(2003))。初速度を種々のペプチドおよびATPの固定濃度で得、以下に列挙した式にフィットさせた:
【0153】
上記の式において、[A]および[B]はそれぞれATPおよびペプチドの濃度であり;KaおよびKbはそれぞれATPおよびペプチドについてのKmであり;KiaはEA複合体からのAの解離定数である。
【0154】
反応初速度を、生成物阻害の関数として(ADPもしくはホスホペプチド)または終点の阻害の関数として(AMP-PNP)のいずれかで得た。これらの研究において、1種の基質を一定に保持しながら、他方を、阻害剤の増加濃度に対して変化させる。生成物阻害の場合において変化させない基質を飽和または非飽和のレベルに保持しながら、終点の阻害において変化させない基質を飽和レベルに保持する。データを、拮抗阻害モデル(式5)、非拮抗阻害モデル(式6)、または不拮抗阻害モデル(式7)にフィットさせた:
【0155】
ここでKiiおよびKisは切片および傾きの阻害定数である。データをSPSS Science(Richmond,CA)からのSigma Plot 2000 Enzyme Kinetics Moduleを使用して分析した。
【0156】
表2は、ペプチド1〜4、ATP、およびペプチドの非存在下でのATPについての定常状態反応速度論的パラメーターの要約を提供する。
【表2】
aペプチド1およびペプチド2は式(2)にフィットさせ;ペプチド3、ペプチド4、およびATPは式(1)にフィットさせる
bペプチド1はこのアッセイ中に存在する
cペプチドがアッセイに存在しない
【0157】
表2に示されるように、ペプチド基質の非存在下では、PKC−θ KDは、ペプチドが存在する場合(18秒-1)よりも110倍遅く(0.16秒-1)ATPを加水分解した。59μM(ペプチドなし)および49μM(飽和ペプチド1において)のATPについてのKmは、ペプチドキシルの存在下でのATPの有意な違いが存在することを示す。飽和ATPでのPKC−θについての定常状態の反応速度論的パラメーターを表2に列挙する。ペプチド3およびペプチド4は、それぞれ、420μMおよび240μMの値の、PKC−θについての最大のKmを示す。対照的に、ペプチド1およびペプチド2は、それぞれ6.5μMおよび4.3μMのKm値を有し、最大濃度において酵素の阻害を引き起こす(表2)。より塩基性の強いペプチド1および2の低いKm値は、PKC−θにとって塩基性アミノ酸基質ペプチドの選択性を暗示する。
【0158】
興味深いことに、より長くより塩基性の強いペプチド2を用いて観察された基質阻害は、より短いペプチド1よりもより明白であった(表2)。それゆえに、PKC−θについての反応速度論的パラメーター(ペプチド1およびATP)を、増加NaCl濃度で試験した。これらの研究の結果を表3に示す。
【表3】
a0.2mM ペプチド1
b式(1)にフィット
c式(2)にフィット
【0159】
表3に示されるように、NaClの濃度が増加するにつれて、ATPについてのKmと酵素のターンオーバーの両方が増加するのに対して、ペプチド1についてのKmは比較的一定のままである。PKC−θに対するイオン強度の効果もまた、基質を非生産的または終点複合体中で酵素と合わせたときに起こる、基質阻害に対するNaClの効果を試験することによって調べた。基質阻害を、好ましい塩基性ペプチド1および2について観察したが、より最適ではないペプチド3および4については観察しなかった(表2を参照のこと)。さらに、基質阻害はまた、緩衝液のイオン強度に依存することが見い出された。ペプチド1と用いる基質阻害は、NaCl濃度が250mMまで増加するにつれて、減少する(表3を参照のこと)。
【0160】
従って、表3は、緩衝液のNaCl濃度の増加がATPについてのPKC−θ KD Kmおよび酵素ターンオーバーを増加させたことを示す。イオン強度の効果はまた、ペプチド1基質阻害に対して観察した。NaCl濃度が増加するにつれて、ペプチド1を用いて観察された基質阻害が減少した(表3を参照のこと)。イオン対形成に対する塩(NaCl)の性質およびその効果は、これらの観察に対して洞察をあたえることができる。カチオンおよびアニオンの
ホフマイスター系列に従うと、NaClはコスモトロップ(kosmotrops)とカオトロップ(chaotrops)の中点に位置する(Cacaceら、Quarterly Reviews of Biophysics 30:241-277,1997)。それゆえに、NaClは酵素を塩析するはずもないし、酵素を変性させるはずもない。しかし、緩衝液のイオン強度の増加は、イオン対の形成に対して影響を与える(Park C.R.R.,J.Am.Chem.Soc.123:11472-11479(2001))。ロチロシンキナーゼCskを用いると、50mM NaClは負に荷電した基質であるポリ(Gly、Tyr)についてKmを増加させる効果を有したが、ATPについてのKmおよび酵素のターンオーバーに対しては効果がなかった(Coleら、J.Biol.Chem.269:30880-30887,1994)。PKC−θ KDの場合には、ATPについてのKmの増加は2つの可能性の結果であり得る:1)250mM NaClにおいて、酵素-ATP2成分複合体のより多くの生成的結合が存在し、観察されるKmが実際のATPについてのKmの反映である;または2)ペプチド1と同じ様式で、荷電した基質であるATPのイオン強度効果の増加。観察されたKmの増加は上記2つの可能性の組合せの結果であることが可能である。ペプチド1を用いると、イオン対形成(コロンビック相互作用)は、酵素への基質の結合において重要であるかもしれない。pH 7.5で、ペプチド1などの塩基性ペプチドは正味の正電荷を有する。それゆえに、NaCl濃度を増加させることは、イオン対形成のためにより好ましくない環境を生じる(Park C,R.R.,J.Am.Chem.Soc.123:11472-11479(2001))。イオン対形成がペプチド1の阻害に寄与するならば、NaClを増加させることで基質阻害を減少させることは、コロンビック相互作用を弱めることと一致する。
【0161】
PKC−θの反応速度論的機構を決定する際に、様々なATPを用いての反応の初速度を、100mM NaClにおいてペプチド基質の様々な固定した濃度に対して決定した。このアッセイを最初にペプチド1を用いて行ったが、、得られるLineweaver-Burkプロットは、ペプチド1基質阻害に起因して解釈することが困難であった(データ示さず)。次に、Lineweaver-Burkプロットの切片および傾きの再プロット(示さず)を、ペプチド1に対して実行した。
【0162】
図5Aおよび5Bに示されるように、100mM NaClにおけるペプチド1に対しての切片および傾きは、それぞれ非線形であった。初速度アッセイはまた、ペプチド3を使用して、同一の条件下で実行した。固定した様々なペプチド3濃度に対する様々なATP濃度は、逐次的反応速度論的機構を示すLineweaver-Burkプロット上の交差パターンを生じた(データ示さず)。ATPについてのKja値は61±22μMであり、ATPについてのKaは118±17μMであった。次いで、塩濃度が増加するとペプチド1についての基質阻害が減少するので、ペプチド1を用いる初速度パターンを、625mM NaClにおいて決定した(表3を参照のこと)。得られるLineweaver-Burkプロットは同様に切片のパターンを生じ(データ示さず)、これは、ペプチド1が基質であるときの逐次的反応速度論的機構と一致する。高NaCl濃度において、ペプチド1に対するLineweaver-Burkプロットの切片および傾きの再プロットは線形であった(図5Cおよび5Dを参照のこと)。高NaClで得られた66±32μMのATPについてのKia値は、100mM NaClにおいてペプチド3を用いての61±22μMのATPについてのKia値と同様であることが見い出された。このことは、増加したイオン強度が酵素-ATP複合体からのATPの解離定数に影響を与えないことを示す。625mM NaClで得られたATPのKaは321±19μMであり、100mM NaClにおけるATPのKaである118±17μMと対照的であった。このことは、イオン強度が増加されるにつれての、ATPについてのKmの増加と一致した(表3を参照のこと)。
【0163】
終点阻害研究は、PKC−θ KDに結合する最初の基質としてのATPを同定した。従って、逐次的触媒機構における基質結合の順序を次に決定した。加水分解されないATPのアナログであるAMP-PNP、およびペプチド1由来でセリンからアラニンへの変化を有するペプチド5(表1を参照のこと)を阻害研究のために使用した。阻害研究の結果を表4に示す。
【表4】
aNaCl濃度は100mMに保持した
bc、拮抗的;nc、非拮抗的;uc,不拮抗的;-、阻害観察せず
cデータをフィットさせた数式
dATPは0.1mMに保持した
eペプチド1の低いKmのためペプチド3を使用し、ペプチド3を0.5mMに保持した
fペプチド1を用いて観察された基質阻害のため、ペプチド3を使用した
【0164】
表4において示されるように、AMP-PNPは、228μMのKi値で、ATPの拮抗阻害剤であることが見い出された。飽和ATPにいて、ペプチドに対して、AMP-PNPを用いて観察された阻害は存在しなかった。ペプチド阻害剤、ペプチド5は、ペプチド3と同様にペプチド1に対する拮抗阻害剤であることが示され、それぞれ、10μMおよび4.4μMのKis値を有した(表4)。ペプチド5は、1100μMのKii値を有する、ATPに対する不拮抗的阻害剤であることがさらに示された(表4を参照のこと)。これらの結果は、PKC−θについての基質の順序立てた逐次的付加と一致し、ここでATPは最初に酵素と結合し、続いてペプチドと結合する。
【0165】
PK/LDH共役キナーゼアッセイは触媒生成物ADPを消費するので、HPLCアッセイを使用して、ADPを用いる阻害パターンを決定した(表4を参照のこと)。ADPは、291μMのKisで、飽和ペプチド1において、ATPに対する拮抗阻害剤であることが見い出された。飽和ATPにおいてADPをペプチド1に対してアッセイしたときには、阻害は観察されなかった。アッセイを飽和していないATP(0.1mM)で実行したとき、非拮抗的パターンが、494μMのKisおよび200μMのKiiで観察された(表4を参照のこと)。ADPを用いるこれらの結果は、図6Cに模式的に示されるようにランダム機構を除外するが、逐次順序(図6Aとして模式的に示される)またはTheorell-Chance(図6Bとして模式的に示される)のいずれかの反応速度論的機構と一致し、ここでADPは遊離する最終生成物である。反応速度論的機構をさらに説明するために、ホスホペプチド1を用いる生成物阻害アッセイを実行した。ペプチド1を用いて観察された基質阻害のために、生成物阻害アッセイを、ペプチド3を用いて行った。ホスホペプチド1は、飽和ATP濃度において1700μMのKisおよび1200μMのKiiを有する、ペプチド3の非拮抗的阻害剤であった(表4)。飽和していないATPにおいて、不拮抗的パターンが、2000μMのKiiで観察された。ホスホペプチド1は、飽和していないペプチド3(0.5mM)において、1600μMのKiiで、ATPに対する不拮抗的阻害剤であった。上記の結果は、ADPが最終生成物として遊離される、逐次順序Bi-Bi機構とより一致する(図6Aを参照のこと)。
【0166】
触媒におけるリンの移動段階の速度を、ATPのチオアナログであるATPγSを使用して調べ、これらの研究の結果を表5に示す。
【表5】
aペプチド1をアッセイに使用した
b速度:ピーク面積/(分での保持時間)([酵素]nM)
【0167】
表5において示されるように、ATPの代わりにATPγSに置き換えると、反応のkcatの大きな変化が生じた。ATPを用いる反応と比較したATPγS反応は、100mM NaClおよび250mM NaClにおいて、それぞれ、112倍および146倍遅い。しかし、HPLCを使用して得られたATPおよびATPγSについてのKmは、たった2倍の違いであった(表5)。
【0168】
化学段階のみが反応の速度に寄与するのか否かを決定するために、PKC−θについての定常状態反応速度論的パラメーターに対する溶媒粘性の効果を決定した。2つの型の粘性源、ミクロ粘性源スクロースおよびマクロ粘性源Ficoll-400を、本研究において利用した。ミクロ粘性源は低分子の核酸に直接影響を与えながら、同時に粘度計で観察される粘性効果を生じる(Blacklowら、Biochemistry 27:1158-1167(1988))。マクロ粘性源は粘度計で見られる粘性効果を引き起こすが、低分子の拡散速度に有意な影響を与えず、それによって、アッセイにおいて観察されるミクロ粘性効果をための対照として働く(Coleら、J.Biol.Chem.269:30880-30887(1994))。ペプチド1、ペプチド3、およびATPの定常状態反応速度論的パラメーターを、増加する溶媒粘性において、および2つの異なるイオン強度で決定した。反応速度論的パラメーターkcatおよびkcat/Km'に対する溶媒粘性の相対的効果を、緩衝液の相対的粘度に対してプロットし、線形回帰にフィットさせた。
【0169】
図7A〜7Dは、PKC−θに KDについてのkcatおよびkcat/Kmに対する溶媒粘性効果を示す。図7Aは、2.0mMに保持されたATPとともに、変化させたペプチド1を用いてのkcat効果を示す。図7Bは、0.125mM ペプチド1におけるATPについてのkcat/Kmを示す。図7Cは、2.0mMに保持されたATPとともに、変化させたペプチド3を用いてのkcat効果を示す。図7Dは、2.0mM ATPにおけるペプチド3についてのkcat/Kmを示す。図7A〜7Dについて、白丸記号(○)は増加スクロース中の100mM NaClを示し;白逆三角記号(▽)は増加スクロース中の250mM NaClを示し;黒丸記号(●)は増加Ficoll 400中の100mM NaClを示し;および黒逆三角記号(▼)は増加Ficoll 400中の250mM NaClを示す。図7A〜7Dにおける破線は1の傾きを示す。1の傾きは、反応速度論的パラメーターに対するミクロ粘液源の最大効果を示す。マクロ粘液源の存在下では、酵素速度に対してほとんど効果が存在しなかった。溶媒のミクロ粘性が増加したのにつれて、(kcat)η値に対して見られる中程度の効果が存在した。これは、100mM NaClおよび250mM NaClにおいて研究された3つすべての基質を用いて酵素の観察された速度において直線的な減少として見られた。すべての条件下で得られた傾き[(kcat)η]は0.38〜0.54で変化し、このことは、生成物の遊離が部分的に律速であることを暗示する(図7Aおよび7C)。0.8〜1の値は、生成物遊離が触媒的に律速段階であることを示す(Adams,J.A.,Biochemistry 42:601-607(2003))。
【0170】
基質の粘性は粘性分析によって決定することができる。手短に述べると、粘性の基質については、生成物形成の速度が基質の解離の速度よりも速いのに対して、非粘性基質は、生成物形成の速度よりも速く酵素から解離する(Cleland,W.W.(1986)Investigations of Rates and Mechanisms of Reactions,Vol. 6,Wiley-Interscience Publications,John Wiley & Sons,New York,NY)。kcat/kmに対する増加した溶媒ミクロ粘性の相対的効果を、相対的溶媒粘性に対してプロットする(図7Bおよび7D)。ミクロ粘性の効果をペプチド1についての相対的溶媒粘性に対してプロットしたとき、傾きは、250mM NaClにおいて0.86の(kcat/km)η値を有した(データ示さず)。低イオン強度において観察した基質阻害のために、データは100mM NaClにおいてペプチド1については得られなかった。他方、ペプチド3は、いずれのイオン強度においても溶媒粘性効果を示さなかった(図7D)。これらの研究は、パプチド1が粘性基質であるのに対して、ペプチド3が粘性ではないことを暗示する。
【0171】
いくつかのキナーゼについて反応速度論的機構が報告されている(例えば、Wuら、Biochemistry 41:1129-1139(2003);Traugerら、Biochemistry 41:8948-8953(2003);Chenら、Biochemistry 39:2079-2087(2000)を参照のこと)。高イオン強度と低イオン強度の両方を用いてのPKC−θ初速度プロットは、縦軸の左および下で交差するグラフを生じた。このパターンは、緩衝液イオン強度によって影響されないままである逐次機構の明確な表示である。さらに、ATP Kia値、100mM NaClにおけるペプチド3について61μM、および625mM NaClにおけるペプチド1について66μMには違いが存在せず、酵素-ATP複合体からのATPの解離がイオン強度によって影響されなかったことをさらに示した。両方の条件下で、Kia値は、それぞれ118μMおよび321μMのKa値よりも低いことが見い出され、迅速平衡機構を除外した。
【0172】
終点阻害および生成物阻害の研究(表4を参照のこと)は、逐次順序機構と一致し、ここで、ATPが結合する最初の基質である。ペプチド阻害剤(表1におけるペプチド5)は両方のペプチド基質に対して拮抗的であり、ATPに対して不拮抗的である。ATPアナログAMP-PNPはATPに対して拮抗的であることが見い出され、飽和ATPにおいて、最大2.0mMのAMP-PNPで、ペプチド1に対する観察される阻害が存在しなかった。ATPをADPに対して変化させるときに拮抗パターンが観察され、ペプチド1を飽和ATPでADPに対して変化させるときに阻害は観察されない。非拮抗パターンは、ペプチド1が飽和されていないATPにおいてADPに対して変化させるときに観察される。これらの阻害研究は、PKC−θ KDについてのランダム機構を除外し、図6Aに示されるように、ADPが遊離される最後の生成物であることを実証する。
【0173】
100mM NaClにおける、ペプチド1を用いる初速度実験は、観察された基質阻害の型にいくつかの洞察を与える。手短に述べると、図8に示されるように。順序付けられた2反応物質系において観察される基質阻害の3つの型が存在する(Segel,I.H.Enzyme Kinetics:Behavior and Analysis of Rapid Equilibrium and Steady-State Enzyme Systems,Whiely-Interscience,1975)。2つは、基質Bが終点EB複合体を形成する、または基質AがEAA終点複合体を形成する基質阻害である。3番目のものは、BがEBQ終点複合体を形成する基質阻害である。EAA終点複合体の形成は、結合する最初の基質がATPであり、ATPを用いると基質阻害が観察されるので、除外される。図5A〜5Dは、ペプチド1について、100mM NaClおよび625mM NaClにおいての初速度データの再プロットを示す。図5Aおよび5Bに示されるように、阻害の効果は、100mM NaClにおける傾きと切片の両方の再プロット上で見られる(すなわち、再プロットは直線状ではない)。しかし、625mM NaClで(図5Cおよび5Dに示されるように)、再プロットは直線状になり、このことは、高イオン強度において、0.5mM ペプチド1までで阻害が消滅することを示す。傾きと切片の両方の再プロットに対する基質阻害の効果は、非拮抗的基質阻害を一致する(Cleland,W.W.,Methods Enzymol.63:500-513(1979))。順序付けられた逐次機構における非拮抗的基質阻害は、非生成的酵素複合体の以下の型の形成を示唆する。2つは図8において提示され、EBおよびEBQ複合体である。3番目の可能性は、非産生的EAB複合体である。これは、明確な可能性である、なぜなら、0mM NaClにおいて基質阻害は強力であり(0.129mM)、ATP濃度は〜80xKm(0mM NaClにおいて0.025mM)であるからである。ATPが最初にそこに結合する逐次順序機構において、EB終点複合体を形成するために存在する遊離の酵素はほとんど存在しない。
【0174】
ホスホロチオエートを、異なる型の酵素的リン転移反応を研究するために使用する。ATPγS反応速度は、Cskキナーゼの場合におけるATP反応よりも15〜20倍遅かった(Coleら、J.Biol.Chem.269:30880-30887(1994))。同様に、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PLC)の酵素機構研究において、非架橋酸素を硫黄で置換したとき、反応は105倍遅くなった(Kravchukら、Biochemistry 40:5433-5439(2001))。どのATPアナログ、ATPまたはATPγSを使用するかに関わらず、生成物ADPは同一である。従って、触媒速度は、生成物の遊離によって影響を受けないままである。PKC−θ KDについて観察されるチオ効果は、酵素反応の全体の速度に対するリン転移化学の寄与を暗示する。さらに、PKC−θを用いて観察される大きなチオ効果は、図6Bに示されるTheorell-Chance順序逐次反応速度論的機構に相反する(McKayら、Biochemistry 35:8680-8685(1996))。Theorell-Chance反応速度論的機構を用いると、三重複合体は短命であり、それゆえに化学段階が非常に速いことを暗示する。
【0175】
溶媒粘度の効果は、酵素反応における律速段階の決定において価値のあるツールである。増加した溶媒粘性の効果は、酵素からの生成物の拡散、および酵素活性部位への基質の拡散などの非化学的段階において見られ(Blacklowら、Biochemistry 27,1158-1167(1988))、リン転移段階などの単分子段階では見られない(Adams,J.A.,Biochemistry 42:601-607(2003))。本明細書で報告されるPKC−θ溶媒粘性効果研究は、生成物遊離が触媒において部分的に律速段階であることを示す。
【0176】
本明細書に提示される研究は、PKC酵素の触媒特性および反応速度論的機構を例証し、それによって、PKCアイソフォームおよび/またはPKCに高度に類似するAGCファミリーのキナーゼへの洞察を提供する。提示される結果は、ATPが最初に結合しADPが最後に遊離するという逐次順序機構と一致する。ホスホペプチド遊離およびリン転移は律速段階に寄与する。重要なことに、PKC−θに潜在的に独特である特徴は、本明細書に提示されるキナーゼドメインのリン酸化研究において示されている。PKC−θの構造的特徴とまとめると(Xuら、J.Biol.Chem.279(48):50401-50409(2004)を参照のこと)、これらの所見は、疾患の治療のためのこのキナーゼの選択的標的化を進行させる際に有意な意味を有する。
【0177】
実施例4
PKC−θ基質の同定
次に、ペプチドスキャニングアレイを、PKC−θについてのペプチド基質を同定するために実行した。これを行うために、実施例3に記載されるように、PKC−θの362残基〜706残基の触媒キナーゼドメインを、pET-16b発現ベクター中にクローン化した。このベクターに、発現クローンに対してC末端ヘキサヒスチジンタグをイン骨格に導入した。プラスミド、過剰発現のために、BL21-DE3 大腸菌株中にプラスミドを形質転換した。10リットル細胞培養を、0.4のO.D.まで37℃で最初に増殖させ、次いで温度を25℃まで低下させ、その後0.1mM IPTGを用いて発現を誘導した。細胞を、収集前にさらに3時間増殖させた。
【0178】
細胞を再懸濁し、マイクロフルイダイザーを使用して、Tris 25mM pH 8.0、NaCl 25mM、2-メルカプトエタノール 5mM、イミダゾール 5mM、ATP 50μMおよびプロテアーゼ阻害剤中で溶解した。この溶解物を、1時間、4℃、バッチ法によって、20ml(ベッド)のニッケル-NTA樹脂に適用した。この樹脂を、引き続いてクロマトグラフィーカラムに注ぎ、イミダゾールを25mMに増加させた同じ緩衝液で広範囲にわたって洗浄した。段階溶出を、200mM イミダゾール緩衝液を用いて実現した。次いで、タンパク質をすぐにアニオン交換HQ上にロードし、Tris 25mM pH 8.0、NaCl 25mM、DTT 5mM、ATP 50μMで洗浄し、その後500mMまでのNaClの直線状勾配の適用によって溶出した。SDS-PAGEによって選択した画分をプールし、Tris 25mM pH 8.0、DTT 5mMで2倍に希釈し、ヘパリンクロマトグラフィーカラム上にロードした。素通りしたタンパク質画分をハイドロキシアパタイトカラムに直接適用し、Tris 25mM pH 8.0、NaCl 50mM、DTT 5mMで広範囲にわたって洗浄した。0〜100mMのリン酸ナトリウムの直線状勾配が標的タンパク質を溶出した。次いで、このタンパク質を、superdex 200サイズ排除クロマトグラフィー上でモノマーとしてサイズ分画し、Tris 25mM pH 8.0、NaCl 50mM、DTT 5mMに対して一晩透析し、濃縮した。
【0179】
ペプチドスポット分析のために、ポリエチレングリコールおよびFmoc-保護化アミノ酸で修飾したセルロース膜をIntavisから購入した。Fmoc-保護化アラニンはChem-Impex(Wood Dale,IL)から購入した。β-アラニンスペーサーをカップリングすることによって膜上に配列を定義し、以前に記載されたように(例えば、Molinaら、Peptide Research 9:151-155 (1996);およびFrank,R.,Tetrahedron 48:9217-9232(1992)を参照のこと)、標準的なDIC/HOBt(ジイソプロピルカルボジイミド/ヒドロキシベンゾトリアゾール)カップリング化学を用いて、ペプチドを合成した。活性化アミノ酸を、Abimed ASP 222ロロボットを使用してスポットした。洗浄および脱保護の段階を手動で行い、最終的な合成サイクルの後でペプチドをN末端アセチル化した。
【0180】
ペプチド合成および側鎖脱保護の後で、キナーゼアッセイを実行した。これらのアッセイのために、膜を10分間メタノール中、および10分間アッセイ緩衝液(20mM HEPES pH=7.5、10mM MgCl2、2mM DTT、100mM NaClおよび20μM ATP)中で洗浄した。次いで、膜を、0.33Ci/mMol γ-32P-ATPを含むアッセイ緩衝液中で、50nM PKC−θ(大腸菌中で発現され、精製されたC末端His-タグ化されたキナーゼドメインアミノ酸残基362〜706)とともに1時間インキュベートした。次いで、膜を、0.1% Triton-Xおよび100μM冷却ATPを含む200mMリン酸ナトリウムで5回、およびエタノールで3回洗浄した。次に、膜を乾燥させ、Biorad Fxを使用して可視化した。
【0181】
これらの方法を使用して、384個のペプチド配列を試験した。これらのペプチドのリン酸化を図9Aに示す。これらの384個のペプチド配列のうち、以下がPKC−θに関する基質であることが示された。
FARKGSLRQKN(配列番号6)
KKRFSFKKSFK(配列番号16)
QKRPSQRSKYL(配列番号17)
KIQASFRGHMA(配列番号18)
LSRTLSVAAKK(配列番号19)
AKIQASFRGHM(配列番号20)
VAKRESRGLKS(配列番号21)
KAFRDTFRLLL(配列番号22)
PKRPGSVHRTP(配列番号23)
ATFKKTFKHLL(配列番号24)
SPLRHSFQKQQ(配列番号25)
KFRTPSFLKKS(配列番号26)
IYRASYYRKGG(配列番号27)
KTRRLSAFQQG(配列番号28)
RGRSRSAPPNL(配列番号29)
MYRRSYVFQT(配列番号30)
QAWSKTTPRRI(配列番号31)
RGFLRSASLGR(配列番号32)
ETKKQSFKQTG(配列番号33)
DIKRLTPRFTL(配列番号34)
APKRGSILSKP(配列番号35)
MYHNSSQKRH(配列番号36)
MRRSKSPADSA(配列番号37)
TRSKGTLRYMS(配列番号38)
LMRRNSVTPLA(配列番号39)
ITRKRSGEAAV(配列番号40)
EEPVLTLVDEA(配列番号41)
SQKRPSQRHGS(配列番号42)
KPFKLSGLSFK(配列番号43)
AFRRTSLAGGG(配列番号44)
ALGKRTAKYRW(配列番号45)
VVRTDSLKGRR(配列番号46)
KRRQISIRGIV(配列番号47)
WPWQVSLRTRF(配列番号48)
GTFRSSIRRLS(配列番号49)
RVVGGSLRGAQ(配列番号50)
LRQLRSPRRTQ(配列番号51)
KTRKISQSAQT(配列番号52)
NKRRATLPHPG(配列番号53)
SYTRFSLARQV(配列番号54)
NSRRPSRATWL(配列番号55)
RLRRLTAREAA(配列番号56)
NKRRGSVPILR(配列番号57)
GKRRPSRLVAL(配列番号58)
QKKRVSMILQS(配列番号59)
RLRRLTAREAA(配列番号60)
【0182】
これらのペプチドのいくつかが、太字体で示されたPKC−θによってリン酸化されたセリンを有し、図9Bに示される。
【0183】
PKC−θによってリン酸化されたこれらのペプチド配列は、PKC−θの生理学的な基質内に含まれてもよく、そのようなものとして、細胞中またはインビボで基質のリン酸化の阻害を試験することによって、阻害剤の生理学的活性を試験するための方法であってもよい。さらに、これらの任意のアミノ酸残基を含む生理学的基質は、PKC−θシグナル伝達経路における機構であることによって、喘息の治療における阻害または調節のための潜在的な治療標的である可能性がある。
【0184】
実施例5
PKC−θ活性化ループは誘導的にリン酸化され、PKC−θ膜移行はBMMC上のIgE受容体架橋の際に起こる
喘息およびアレルギー性応答における活性化ループ中(すなわち、スレオニン538上)のPKC−θの自己リン酸化の効果を調べるために、活性化ループ中のPKC−θの自己リン酸化を、BMMC中でのIgE受容体架橋後に決定した。これらの研究のために、BMMCを単離した。これを行うために、C57 B1/6Jマウス(The Jackson Laboratory,Bar Harbor,MEから市販されている)の骨髄を骨(大腿骨および脛骨)から抽出し、次いで、DMEM+PS/glnおよび50μM βME+20ng/ml組換えマウスIL-3および50ng/ml組換えマウスSCF中の10% HI FCS(R&D Systems,Minneapolis,MNから市販されている)中で、5×105細胞/mlでプレートした。細胞を3〜7日毎に継代した。4週間後、培養物は>95%マスト細胞を含む(IgE受容体発現およびc-kit発現によって決定される)。この時点で、細胞を、50ng/mlで、マウスIL-3のみを含む上記の培地中で培養した。
【0185】
単離したBMMCを、抗DNP(ジニトロフェニル)IgEで一晩(約16時間)、培養中で処理した。翌日、IgE受容体架橋を、0、2、5、30、および90分間、培養物へのDNP-BSAの付加によって引き起こした。次に、処理したBMMCを1% NP-40溶解緩衝液中で溶解し、細胞質ゾル抽出物(実施例1に記載されるように調製)をSDS-PAGE上で泳動し、ニトロセルロース膜に転写した。このニトロセルロースブロットを、最初に抗ホスホT538PKC−θ特異的抗体(Cell Signaling Technology)で最初にプローブし、次いで剥離し、抗PKC−θ(Santa Cruzから市販されている)で再プローブした。
【0186】
図10Aに示されるように、アレルギーおよび喘息におけるマスト細胞エフェクター機能のとの関連で、PKC−θは、IgE受容体架橋の際に、骨髄由来粘膜マスト細胞中のスレオニン538上で迅速にリン酸化されることが見い出された(図9A)。治療レジメンに関わらず、すべてのBMMCがほぼ等量のPKC−θを発現したことに注意のこと(図10Bを参照のこと)。T細胞中で観察される保持されたリン酸化とは異なり(図1A〜1Cを参照のこと)、マスト細胞中のこの部位でのリン酸化は、迅速かつ一過性であることが見い出された(図10A)。図10Aに示されるように、活性化ループリン酸化は、IgE受容体架橋の2分後までの初期に起こることが見い出され、架橋の30分後にはベースラインレベルまで戻った。
【0187】
BMMC中でのIgE受容体架橋の際にPKC−θ膜移行が起こるか否かを決定するために、BMMC(上記に記載されるように単離した)を、一晩、培養中で抗DNP IgEで処理し、0分、2分、5分、または30分、DNP-BSAの付加を用いて刺激した。次いで、細胞を、実施例1中の上記に記載されるように溶解および分画した。膜画分、界面活性剤不溶性画分(DI)、および全細胞抽出物(WCE)をSDS-PAGEによって分離し、次いでニトロセルロースに転写した。次いで、このニトロセルロースブロットを最初にPKC−θ(Santa Cruz)でプローブし、次いで剥離し、膜画分およびDI画分については抗FcεRIγサブユニットで、WCEについては抗アクチン(Santa Cruz)で再プローブして、膜画分およびDI画分上で等価量のIgE受容体(すなわち、FcεR1γサブユニット)の発現を確認し、ならびにWCEにおいては等価量の細胞タンパク質、アクチンを確認した。同様に、図11Aに示されるように、PKC−θは、IgE受容体の架橋の2分後にBMMCの膜画分中で見い出すことができ、架橋の30分後には明確に顕著である。同様に、図11Bに示されるように、PKC−θは未刺激のBMMCにおけるDI画分中で低レベルで観察することができるが(すなわち、図11Bにおける0分)、存在するタンパク質の量は、IgE受容体の架橋後に増加する。図11Aおよび11Bに示されるように、等価量のIgE受容体が、すべての細胞のレーンに存在したことに注意のこと。
【0188】
従って、T細胞におけるシグナル伝達と同様に、PKC−θは、脂肪細胞中でのIgE受容体架橋の際に、膜の界面活性剤不溶性画分に迅速に移行することが見い出された。図11Cは、この結果が、すべてのレーンのBMMCがそれらの全細胞抽出物中で等価量のPKC−θを有したので、単に異なるレーン中のPKC−θの量の違いに起因するのではなかったことを確証する。
【0189】
実施例6
PKC−δおよびPKC−βの分布は、BMMC上でのIgE受容体架橋の際に有意に変化しない
2つのさらなるPKCファミリーメンバー、PKC−δおよびPKC−βは、IgE受容体架橋後に脂肪細胞機能を媒介することに関与していた(Nechushtanら、Blood 95:1752-1757(2000);Kalesnikoffら、J.Immunol.168:4737-4746(2002))。他のPKCファミリーメンバーがIgE受容体架橋後にBMMC中の膜に移行されるか否かを決定するために、その結果が図11A〜11Cに提示される実施例5において記載された実験からの画分(すなわち、膜、DI、およびWCE画分)を、抗PKC−δ(図12A)および抗PKC−βI/βII(図12B)(両方ともSanta Cruz Biotechnology Inc.より)を使用する、PKC−δおよびPKC−β(PKC−θの代わりに)についてプローブされるブロットを用いるウェスタンブロッティング分析に供した。図12Aおよび12Bに示されるように、誘導性膜移行はPKC−β(図12A)およびPKC−δ(図12B)については検出されず、両方とも細胞質ゾル、膜、および界面活性剤不溶性画分中に、刺激(すなわち、IgE受容体の架橋)の前後で等価量存在する。これらの結果は、脂肪細胞中のIgE受容体シグナル伝達において、PKC−βとPKC−δの両方とのPKC−θの調節の重要な違いを実証する。
【0190】
実施例7
PKC−θノックアウトマウスからの脂肪細胞は、野生型マウスからの脂肪細胞とは異なる
PKC−θノックアウトマウスの研究は、PKC−θがTCR媒介性T細胞活性化のために必要であることを示した(Sunら、Nature 404:402-407(2000))。PKC−θノックアウトマウスからのBMMCが野生型マウスからのBMMCと異なるか否かに関する決定を行った。これを行うために、PKC−θノックアウトマウスを入手し、T細胞増殖欠損を、Sunら、Nature 404:402-407(2000)に記載される方法に従って確認した(データ示さず)。PKC−θ欠損の効果を、粘膜脂肪細胞(MMC)と結合組織脂肪細胞(CTMC)の両方において試験した。これらの別個の脂肪細胞表現型は、顆粒の組成およびメディエーター含量、ならびにそれらの解剖学的分布が異なる(Beilら、Histol Histopathol.15:937-946(2000)を参照のこと)。MMCは、肺および腸粘膜において見い出され、高レベルのプロテアーゼ、トリプターゼを含む。これらの顆粒は、プロテオグリカンであるコンドロイチン硫酸が豊富であり、細胞をアルシアンブルーで染色することを可能にする。対照的に、腸、皮膚、および腹腔において見い出されるCTMCは、高レベルのトリプターゼとチマーゼの両方を発現し、MMCよりも比較的高レベルのヒスタミンを放出する。これらの顆粒はプロテオグリカンであるヘパラン硫酸を含み、このことは、これらをアルシアンブルーではなくトルイジンブルーで染色されることを可能にする。これらの2つの表現型的に区別できる脂肪細胞サブセットは、それらのインビボ機能および調節において異なるようであるが(例えば、MillerおよびPemberton,Immunology 105:375-90(2002)を参照のこと)、、これらの違いの正確な性質はなお研究中である。脂肪細胞上のPKC−θの効果を十分に調べるために、各々の脂肪細胞サブセットをPKC−θノックアウトマウスで試験した。MMCは骨髄前駆細胞からインビトロ誘導した。対照的に、CTMCは、マウスの腹腔から成熟型で回収可能であった。
【0191】
最初に、野生型マウスおよびPKC−θノックアウトマウスからのCTMCおよびBMMCを表現型的に比較した。これを行うために、CTMCを、腹腔洗浄液によって単離し、サイトスピンを使用して顕微鏡スライド上で回転させ、トルイジンブルーで染色し、次いで、サフラニンで対比染色した。代替的には、細胞をWright's-Geimsaで染色した。いずれかの染色プロトコールが脂肪細胞顆粒を同定する。腹腔脂肪細胞の数もしくはパーセンテージ、または細胞あたりの顆粒密度もしくは分布において、野生型マウスとPKC−θノックアウトマウスの間で違いは明らかではなかった(データ示さず)。野生型マウスおよびPKC−θノックアウトマウスのBMMCを、実施例5に記載されるように単離し、サイトスピンを使用して顕微鏡スライド上で回転させ、3%酢酸中の1%アルシアンブルーで5分間染色して、顆粒を染色した。細胞をサフラニンで対比染色した。図13Aに示されるように、野生型マウスからのBMMCは、PKC−θノックアウトマウスからのBMMCよりもより多くの顆粒化を示した。
【0192】
次に、IgE受容体架橋後のBMM中の顆粒化の違いを提唱するために、細胞表面アネキシン染色を利用した。細胞表面アネキシン染色は脱顆粒に伴って、顆粒膜融合および原形質膜上のホスファチジルセリン曝露に従って増加する。細胞表面アネキシン発現の分析のために、野生型マウスまたはPKC−θノックアウトマウス由来のBMMCに、0.2μg/ml IgE抗DNPで一晩処理することによって、IgE抗DNPをロードした。翌日、細胞を収集し、PACM緩衝液中で洗浄した。FITCアネキシンを加え、3分間、37℃で細胞とインキュベートした。時間ベースのデータ取得を、37℃サンプルチャンバーを装着したFACScan上で開始し、示された濃度のDNP-BSAを付加するために、中断して顆粒化を誘導し、次いでサンプルあたり10分間再開した。従って、細胞をFITC標識アネキシンの存在下で脱顆粒を誘導した。細胞表面におけるアネキシンの発現は、脱顆粒でのでの細胞膜との顆粒膜の融合を示す。平均蛍光強度を、時間の関数としてプロットした(図13B)。
【0193】
図13Bにおいて示されるように、野生型と比較して、PKC−θノックアウトマウスからのBMMCは、脱顆粒の際により少ない細胞表面アネキシン染色を示した。これは、アルシアンブルー染色による、それらのより少ない顆粒含量と一致している(図13Aを参照のこと)。
【0194】
実施例8
PKC−θノックアウトマウスは減少したIgEレベルを有する
次に、野生型マウスおよびPKC−θノックアウトマウスからのCTMC上のIgE受容体のレベルを比較した。これを行うために、野生型マウスおよびPKC−θノックアウトマウスの腹腔をPIPES-EDTA緩衝液で洗浄した。個々のマウスからの未分画の腹腔洗浄液の細胞を、1% BSAを含むPBS(PBS-BSA)で洗浄し、5μg/ml IgE抗DNPとともに、または抗体なしで、氷上にて30分間インキュベートした。細胞をPBS-BSAで洗浄し、次いで、FITC標識した抗マウスIgEおよびPE標識した抗ckit(BD-Pharmingen)で染色した。平均蛍光強度を、フローサイトメトリーによって定量した。図14Aに示されるように、野生型と比較して、PKC−θノックアウトマウスは、CTMC表面に結合したIgEの有意に減少したレベルを有した。対照的に、ckitの発現のレベルには違いがなかった(図14B)。CTMCの表面IgE受容体に結合したIgEのレベルは、動物中で循環しているIgEのレベルと関連する。CTMC上の減少した脂肪細胞結合IgEは、PKC−θノックアウトマウスが低レベルのIgEを有する可能性があることを示唆する。
【0195】
さらに、有意な違いを、野生型マウスおよびPKC−θノックアウトマウスの血清抗体レベルの間で観察した。これらの研究のために、野生型マウスおよびPKC−θノックアウトマウスからの血清サンプルを、IgE、IgG1、およびIgAの含量についてアッセイした。これを行うために、Maxi-Sorp ELISAプレート(Nunc,Rochester,NYから市販されている)を、抗マウスIgE(Pharmingen,San Diego,CAから市販されている)、IgAのための抗マウスκ軽鎖(Sigma,St.Louis,MOから市販されている)、またはIgG1のための抗マウスIgG(Fab特異的;Sigma)でコートした。プレートを、0.05% Tween-20(PBS-Tween)を含むPBSで洗浄し、次いでPBS中の0.5%ゼラチンで、室温にて2時間ブロックした。血清希釈物をPBS-Tween中に加え、室温で2〜6時間インキュベートした。結合を、マウスIgEまたはIgA(Southern Biotechnology Associates,Inc.,Birmingham,ALから市販されている)、またはIgG1(Pharmingen)に対して指向される特異的ビチオン化抗体、続いてHRP-ストレプトアビジン(Southern Biotechnology Associates)およびSure-Blueペルオキシダーゼ基質(Kirkegaard and Perry Labsから市販されている)を使用して検出した。Igレベルを、適切なアイソタイプの精製標準(Pharmingen)を使用して定量した。
【0196】
従って、個々のマウスからの血清試料は、特異的ELISAを使用して適切な抗体アイソタイプのレベルについてアッセイし、精製標準に対する比較によって定量した。図15Aに示されるように、IgEレベルは、PKC−θノックアウトマウスにおいて有意に減少した。しばしばIgEと協調して調節されるIgG1もまた減少した(図15B)。対照的に、IgAレベルは、野生型と比較して、PKC−θノックアウトマウスにおいてより高かった(図15C)。
【0197】
確かに、PKC−θノックアウトマウスからのCTMCは、抗IgEを用いて、より少ないインビトロ脱顆粒を有することが見い出され(データ示さず)、これは、循環IgEの減少レベル、および脂肪細胞結合IgEの減少と一致した(図14Aおよび15Aを参照のこと)。
【0198】
PKC−θノックアウトマウスにおいて報告されたT細胞活性化欠損とは異なり、有意なインビトロ脂肪細胞機能欠損は、PKC−θノックアウトマウスからのBMMCにおいては観察されなかった(データ示さず)。これらの細胞は骨髄中の前駆細胞からインビトロで誘導されるので、これらは、インビボレベルのIgEによって影響を受けず、内因性IgE抗DNPをインビトロでロードすることができる。次に、DNP-BSAとのIgE受容体の架橋の際に、PKC−θノックアウトマウスからのBMMCが、野生型マウスからのBMMCによって産生されるものと同様のレベルで、脱顆粒し、ロイコトリエンを生成し、およびサイトカインを産生するか否かを決定するための研究を実行した。これらの研究のために、方法に従って、脂肪細胞を、一晩、DMEM中の10% HI FCS+PS/glnおよび50μM βME+50ng/ml 組換えマウスIL-3+0.1μg/ml 抗DNP-IgE(Sigma)中でプレートした。細胞をPACM(110mMNaCl、5mM KCI、5mM CaCl2、2mM MgCl2、および0.05% BSAを含む25mM PIPES、pH 7.2)中で洗浄し、2.5×105細胞/mlの最終濃度で、DNP-BSA(Calbiochem,San Diego,CAから市販されている)の滴定にプレートして、IgE受容体またはイオノマイシンを架橋した。
【0199】
ヒスタミン、B-ヘキソシミニダーゼ、およびロイコトリエン産生の研究のために、細胞を、DNP-BSAまたはイオノマイシンの存在下で、37℃にて30分間培養し、次いで、上清を収集し、すぐに試験を行うかまたは凍結させるかのいずれかを行った。脱顆粒およびロイコトリエン産生実験の結果は、PKC−θノックアウトマウスのBMMCが通常レベルの脱顆粒およびロイコトリエン産生を有することを示した(データ示さず)。最大脱顆粒は、0.1% Triton X-100を用いて細胞のアリコートを溶解することによって決定した。β−ヘキソサミニダーゼについては、上清を、0.08M クエン酸ナトリウム pH 4.5中のp-ニトロフェニルN-アセチルB-Dグルコサミニド(Sigma)を用いて、37℃で一晩インキュベートした。12〜18時間後、反応を、1N NaOHの付加によって停止し、β−ヘキソサミニダーゼを、分光光度計にて405nmの吸収を読み取ることによって定量した。最大顆粒の際に、有意な違いは観察されなかった(データ示さず)。
【0200】
サイトカイン産生アッセイのために、抗DNP-IgE中で一晩培養した細胞を、上清を収集する前に、DNP-BSAとともにインキュベートして、IgE受容体架橋を6時間誘導した。ロイコトリエンについて、LT(C4/D4/E4)(ALPCO(Windham,NH)から市販されている)に特異的なELISAを使用して、またはIL-6、IL-13、もしくはGM-CSFについては、特異的ELISAアッセイ(R&D Systems,Minneapolis,MN)を使用して上清を、アッセイした。図16A〜16Cに示されるように、PKC−θノックアウトマウスからのBMMCは、野生型マウスからのBMMCよりも低いレベルのサイトカインTNF-α(図16A)、IL-13(図16B)、およびIL-6(図16C)を一貫して産生した。
【0201】
次に、C57BL/6マウス(The Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)からの脾臓を単一細胞懸濁物から作製し、CD4+細胞を、製造業者の説明書に従って抗CD4磁気ビーズ、次にDetach-A-bead(Dynal Biotech)によって単離した。細胞は、休止T細胞としてアッセイするか、またはエフェクター細胞を生成するように活性化させるかのいずれかであった。10% FCS、2mM L-グルタミン、5×10-5M 2-メルカプトエタノール、ペニシリン、ストレプトマイシン、ピルビン酸ナトリウム、および非必須アミノ酸(すべてGibco Life Technologies,Invitrogen,Carlsbad,CAの関連会社より)を補充したDMEM培地中の6×105CD4+細胞/mlを、1μg/ml抗CD3抗体および4μg/ml抗CD28抗体でコートした24ウェルプレートにプレートすることによって、エフェクター細胞を生成した。Th1-スキューT細胞を、30ng/ml rmIL-12(Wyeth,Cambridge,MA)、10U/ml rhIL-2(Invitrogen,Carlsbad,CA)、および5μg/ml 抗マウスIL-4抗体の存在下で培養した。TH-2スキューT細胞を、40ng/ml rmIL-4(R&D Systems,Minneapolis,MN)、10U/ml rhIL-2(Invitrogen)、および5μg/ml 抗マウスIFN-γ抗体の存在下で培養した。刺激を与えた3日後、さらに3〜4日間 IL-2(5U/ml)の非存在下で、細胞を拡張した。休止CD4+T細胞またはTh1もしくはTh2エフェクター細胞を、1×105細胞/ウェルで、0.5μg/mlの抗CD3(2C11)でコートした96ウェル平底プレートにプレートした。すべての抗体は、B-D PharMingen,San Jose,CAからであった。3日後、細胞培養上清を収集し、IL-4およびIL-5について、サイトカインビーズアッセイ(FACS)によってアッセイした。
【0202】
図17Aおよび17Bに示されるように、PKC−θノックアウトマウスからのT細胞サイトカインデータは、これらのマウスが、減少したレベルのこれらサイトカインの両方を産生したことを示した。
【0203】
未処理のPKC−θノックアウトマウスが循環IgEおよびIgG1レベルに欠けることは、インビボでホメオスタシスレベルのIL-4を維持する際のPKC−θにおける役割と一致するという結果を示す。IL-4は、Th2サイトカインであり、これは、IgEおよびIgG1合成を生じる、Ig(免疫グロブリン)遺伝子スイッチングにおいて役割を有する(BacharierおよにGeha,J.Allergy Clin.Immunol.105 (2 Pt 2):S547-58(2000);ならびにBergstedt-Lindqvistら、Eur.J.Immunol.18:1073-1077(1988)を参照のこと)。ドミナントネガティブ遺伝子構築物のT細胞発現は、PKC−θが、GDP/GTP交換因子Vavと同調して、IL-4遺伝子転写を活性化することを実証した(Hehnerら、J.Immunol.164:3829-3836(2000)を参照のこと)。
【0204】
実施例9
PKC−θノックアウトマウスは、抗IgEに応答して、または内因性IgEの存在下で、PCAモデルにおいて耳の腫脹の増大を有しない
PKC−θがIgE媒介性脂肪細胞活性化に関与するか否かを決定するために、PKC−θノックアウトマウスを、受動皮膚アナフィラキシー(PCA)を調べる呼吸器疾患マウスモデルにおいて評価した。従って、PKC−θがIgE媒介性脂肪細胞活性化に関与しているか否かを決定するために、PKC−θ-/-(すなわち、PKC−θノックアウト)マウスおよびC57BL/6野生型対照に、左の耳に抗IgE(Pharmingen;20μlのPBS中0.5μg/kg)を皮内で試験した。対照として、動物は反対側の右耳に20μlのPBSを注入した。抗IgE試験の前に、ベースラインの耳の厚さを、.0001''まで測定する技術者用マイクロメーターUpright Dial Gauge(Mitutoyo(Japan)から市販されている)を使用して決定した。耳の厚みを試験後、1時間、2時間、4時間、および6時間目に収集し、ベースライン上の読み取りにおける増加を表わした。
【0205】
図18に示されるように、PKC−θノックアウトマウスは、抗IgEに応答した耳の膨張の増加を有さなかった。確かに、抗IgE試験後、耳の腫脹は、PKC−θノックアウトマウスと比較して、1時間の時点で野生型動物において約2.5倍大きかった(図18)。これらのマウスにおける減少した耳の腫脹応答は、細胞表面および循環のIgEレベルと一致している。上記のように、PKC−θ欠損は、より少ない脂肪細胞顆粒(図13A〜13B)およびより低いIgEレベル(図14A)を生じる。これらの効果は、脂肪細胞機能を修飾することに対する減弱されたT細胞依存性効果に部分的に起因するようである(Boyce,J.Allergy Clin.Immunol.111:24-32(2003))。
【0206】
PKC−θがIgE媒介性脂肪細胞シグナル伝達に関与しているか否かに取り組むために、脂肪細胞欠損KitW/KitW-vマウス(the Jackson Laboratoryから市販されている)を、PKC−θノックアウトマウスまたは野生型マウスのいずれかに由来する脂肪細胞を用いて、それらの脂肪細胞欠損について選択的に修復した。換言すると、PKC−θノックアウトマウスまたは正常な野生型マウスからの脂肪細胞を、KitW/KitW-vマウスに移植した(この養子免疫伝達技術は、GalliおよびLantz、Allergy.In Fundamental Immunology,W.E.Paul(編),pp.1137-1184,Lippincott-Raven Press,Philadelphia PA 1999;ならびにWilliamおよびGalli,J.Allergy Clin.Immunol.105(5):47-859(2000)に概説されている)。手短に述べると、PKC−θノックアウトマウスまたは野生型マウスからの1×106BMMCを20μlのDMEM中に再懸濁し、7週齢の脂肪細胞欠損KitW/KitW-vマウス(10匹の動物/群)の左耳と右耳の両方に注入した(1×106BMCMC/耳)。12週間後(養子免疫伝達された脂肪細胞が接合組織内で成熟可能であるために適切な時間の間)、マウスを左耳へのIgE抗DNP(5μg/kg)での皮内注射によって感作させた。対照として、動物は、右の耳に0.9%生理食塩水を注入した。24時間後、動物を静脈内DNP-HSA(10mg/kg)で試験した。ベースライン耳測定試験の前、ならびに試験の後1時間、2時間、4時間、および6時間目に収集した。
【0207】
結果は、脂肪細胞を欠くPKC−θを用いて再構成されたKitW/KitW-vマウスは、野生型脂肪細胞を用いて同じ処理を行って再構成されたKitW/KitW-vマウスと比較して、耳の膨潤について違いを示さなかった(データ示さず)。これらの結果は、PKC−θマウスにおける耳の腫脹が、T細胞依存性エフェクター機能に直接的に起因するか、および/または他の免疫細胞型に間接的に依存するかでありそうであることを示唆する。阻害されるか、または免疫細胞機能に影響を与えるいくつかのT細胞サイトカインには、IL-4、IL-5、TNF-αが含まれる(図17A、17B、データ示さず)。
【0208】
しかし、脂肪細胞のデータは、PKC−θの阻害が脂肪細胞応答を直接的に調節するかもしれないことを示唆する。上記に議論されるように、PKC−θは、IgE受容体架橋の際に活性化ループ上で迅速にリン酸化されることが見い出された(図10A〜10Bを参照されたい)。PKC−δまたはPKC−βI/βIIではなく、PKC−θの細胞下分布は、IgE受容体架橋の際に変化される(図11A〜12Bを参照されたい)。最も重要なことには、IgEに応答して、PKC−θノックアウトマウスBMMCによる減弱したサイトカイン産生が存在する(図16A〜16C)。これらの細胞は骨髄中の前駆細胞からインビトロで誘導され、かつインビボレベルのIgEによっては影響されない。
【0209】
別の実験において、PKC−θノックアウトマウス(すなわち、PKC−θ-/-)マウスおよびC57BL/6野生型対照を、試験の24時間前に、モノクローナルIgE抗DNP(Sigma;20μlの0.9%生理食塩水中5μg/kg)を用いる、左の耳への皮内注射によって受動的に感作させた。対照として、動物は、対側の右の耳に20μlの0.9%生理食塩水を注入した。24時間後、ベースラインの耳測定を収集し、次いで、動物をDNP-HSA(100μlの0.9%生理食塩水中10mg/kg)を用いる静脈内試験に供した。次の6時間の期間にわたって(すなわち、試験後1時間、2時間、4時間、および6時間での読み取り)、耳の厚みの測定を上記と同様に収集した。
【0210】
図19に示されるように、PKC−θノックアウトマウスは、同じに処理された野生型対応物と比較して、有意に少ない耳の膨張を有した。これらのPCA研究の結果(図18および19)は、動物疾患モデルにおけるアレルギーおよび喘息においてPKC−θ低分子アンタゴニストの使用を支持する。
【0211】
実施例10
PKC−θノックアウトマウスからのTH1およびTH2 T細胞は、PKC−θ野生型マウスと比較して、刺激に対する応答の際に減少した増殖を示す
PKC−θノックアウトマウスからの分化したT細胞が、刺激に応答するそれらの能力において正常であるか否かを決定するために、野生型マウスおよびPKC−θノックアウトマウスからの脾臓細胞をインビトロでTH1またはTH2集団に分化させて、PKC−θ発現の非存在下でのTヘルパー細胞のサブセットの増殖欠損を確認した。これらの実験のために、未処理のT細胞を単離し、TH1およびTH2エフェクター細胞を生成した。これを行うために、C57/B6マウス(Taconic,Germantown,NYから市販されている)からの脾臓を、単一細胞懸濁物から作製した。赤血球細胞(RBC)をRBC溶解緩衝液(0.0M Tris-HCl緩衝液pH 7.5中0.3g/L 塩化アンモニウム)で溶解し、2回洗浄した。CD4+細胞を、抗CD4磁気粒子によって、次にDetach-A-Bead(Dynal)によって、製造業者の説明書(Dynal Biotech,Oslo,Norway)に従って単離した。細胞を、未処理T細胞としてアッセイするか、または活性化してエフェクター細胞を生成した。
【0212】
10% FCS、2mM L-グルタミン、5×10-5M 2-メルカプトエタノール、ペニシリン、ストレプトマイシン、ピルビン酸ナトリウム、および非必須アミノ酸(すべてGibco Life Technologiesより)を補充したDMEM培地中の6×105CD4+単離物/mlを、1μg/ml抗CD3抗体および4μg/ml抗CD28抗体でコートした24ウェルプレートにプレートすることによって、未処理T細胞を活性化することによって、エフェクター細胞を生成した。TH1-スキューT細胞を、30ng/ml 組換えマウスIL-12(Wyeth,Cambridge,MA)、10U/ml 組換えヒトIL-2(Invitrogen,Carlsbad,CA)、および5μg/ml 抗マウスIL-4抗体の存在下で3日間培養した。TH-2スキューT細胞を、40ng/ml 組換えマウスIL-4(R&D Systems,Minneapolis,MN)、10U/ml 組換えヒトIL-2(Invitrogen)、および5μg/ml 抗マウスIFN-γ抗体の存在下で3日間培養した。すべての抗体は、B-D PharMingen,San Jose,CAからであった。
【0213】
増殖アッセイのために、TH1-およびTH2-エフェクター細胞を、1×105細胞/0.2ml/ウェルで、種々の濃度の抗CD3(2C11)でコートした96ウェル平底プレートに、示されるように可溶性5μg/mlの抗CD28(クローン37.51)および/または10U/mlの組換えヒトIL-2の存在下または非存在下で、プレートした。2日目に、0.5μCiの[3H]チミジン(Amersham Bioscience,Piscataway,NJ)でパルスし、6〜8時間後に、96ウェルプレートハーベスターを使用して、フィルターに収集した。取り込まれた放射能を、液体シンチレーションカウンター(Wallac,Gaithersburg,MD)を使用して測定した。すべての抗体は、B-D PharMingen,San Jose,CAからであった。
【0214】
図20および21に示されるように、PKC−θノックアウトマウスからのTH1およびTH2細胞は、TCR/CD28副刺激の際と同様に(それぞれ、図20Aおよび図21A)、最適(0.5μg/ml)と最適以下(0.05μg/ml)の抗CD3シグナル強度の両方で(それぞれ、図20Cおよび図21C)、TCR刺激に対する増殖応答を有意に減少した。PKC−θ非依存性経路によるT細胞増殖を支持するための外因性IL-2の付加は、PKC−θノックアウトマウスからの未処理のTH0、TH1、およびTH2細胞の減少した増殖応答を部分的に克服したが、TCR/CD28副刺激と組み合わせて、最適で0.5μg/ml抗CD3シグナルのみであった(抗CD28ありは図20B、および抗CD28なしは図20D)。最適以下の0.05μg/ml抗CD3では、CD28の副刺激は、PKC−θノックアウトマウスからの細胞の増殖のほぼ完全な欠如を克服することに失敗した(図21A)。これらの条件において、非常に適度な外因性IL-2の効果が存在し(図21Bおよび21D)、PKC−θノックアウトマウスからのTH2細胞の増殖は、野生型マウスからのTH2細胞の増殖の約30%を残していた。
【0215】
これらの結果は、PKC−θノックアウトT細胞によるIL-2産生の阻害とともに(例えば、Sunら、Nature 404:402-407(2000)を参照のこと)、PKC−θ活性がこれらの細胞において阻害される場合、TCR刺激誘導性の増殖が、TH0、TH1、およびTH2細胞によって持続可能でないことを示唆する。それゆえに、減少したTH2サイトカイン産生と合わせると、これらのTヘルパー細胞は、喘息およびアレルギー性病理においてT細胞依存性経路を媒介する最適なエフェクター細胞として機能しない。これらの所見より、本発明のさらなる局面は、TH2 T細胞においてPKC−θを標的とすることである。従って、本発明は、TH2 T細胞においてPKC−θを標的とすることによって、喘息の徴候を予防および/または改善するための治療的介入をさらに提供する。
【0216】
本発明は図面および前述の説明において、詳細に例証および説明されてきたが、これは例示であって特性の限定でないと見なされるべきである。好ましい実施形態が示されかつ説明されたに過ぎないこと、および本発明の精神の範囲内にあるすべての変更および改変が保護されることが望ましいことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】図1A〜1Cは、ヒトT細胞のTCR共刺激時のPKC−θ膜移動および誘導性活性化ループリン酸化を示す、ウェスタンブロッティング解析の写真の表示である。
【図2】図2A〜2Cは、PKC−θ活性化ループの自己リン酸化が、細胞内のキナーゼ活性に必要とされることを示す写真(図2Aおよび2C)ならびにグラフ(図2B)の表示である。
【図3】図3A〜3Dは、PKC−θキナーゼドメイン(PKC−θ KD)自己リン酸化のキャラクタリゼーション(図3A)、ならびにペプチドNFpSFMNPGMER(配列番号:64;式中、「pS」は、セリンがリン酸化されていることを示す;693〜703位の範囲)、m/z 705.52(図3B)、ペプチドALINpSMDQNMFR(配列番号:65;681〜692位の範囲)、m/z 760.48(図3C)およびペプチドTNTFCGTPDYIAPEILLGQK(配列番号:66;536〜555位の範囲)、m/z 1159.71 (図3D)の生成スペクトル(質量分析法で測定)を示す模式図である。注:図3Dにおいて、ヨードアセトアミドでアルキル化したシステインを#で示す。
【図4】図4A〜4Cは、表示したPKC−θ KDタンパク質および変異体の大腸菌ライセートのウェスタンブロッティング解析である。抗pT538 PKC−θでのイムノブロッティング(図4A)、および同等の発現を確認するための抗His(図4B)、表示したPKC−θ KDタンパク質および変異体のインビトロライセート活性を示すグラフ(図4C)。
【図5】図5A〜5Dは、切片再プロット 対 1/[ペプチド1](100mM NaCl)(図5A);傾き再プロット 対 1/[ペプチド1](100mM NaCl)(図5B);切片再プロット 対 1/[ペプチド1](625mM NaCl)(図5C);および傾き再プロット 対 1/[ペプチド1](625 NaCl)(図5D)を示す一連のグラフである。
【図6】図6A〜6Cは、PKC−θ KDが動力学的に挙動し得る種々の機構を示す一連の模式図である。図6Aは、ADPが放出される最終生成物である時系列(sequential ordered)機構を示す。図6Bは、ADPが放出される最終生成物である動力学的機構を示し、図6Cは、ランダム機構を示す。図6A〜6Cにおいて、「E」は、酵素を表し、「A」は、基質Aを表し、「B」は、基質Bを表し、「P」は、生成物Pを表し、「Q」は、生成物Qを表す。
【図7】図7A〜7Dは、PKC−θ KDに関するkcat(図7Aおよび7C)ならびにkcat/Km(図7Bおよび7D)に対する溶媒粘度効果を示す。図7Aは、種々のペプチド1でのkcat効果を示し、ATPを2.0mMに保持した。図7Bは、ペプチド1でのkcat/Kmを示し、ATPを0.125mMに保持した。図7Cは、種々のペプチド3でのkcat効果を示し、ATPを2.0mMに保持した。図7Dは、ペプチド3でのkCat/Kmを示し、ATPを2.0mMに保持した。白丸記号(○)は、スクロース増量における100mM NaClを示す;白逆三角記号(▽)は、スクロース増量における250mM NaClを示す;黒丸記号(●)は、Ficoll 400増量における100mM NaClを示す;および黒逆三角記号(▼)は、Ficoll 400増量における250mM NaClを示す。図7A〜7D中の点線は、傾き1を示す。
【図8】図8は、インヒビター基質がPKC−θ KD触媒活性を干渉し得る異なる機構を示す模式図である。図8において「E」は、酵素を表し、「A」は、基質Aを表し、「B」は、基質Bを表し、「P」は、生成物Pを表し、「Q」は、生成物Qを表す。
【図9】図9A〜9Bは、いくつかのPKC−θのペプチド基質配列を同定したペプチドアレイスキャン(図9A)およびPKC−θによってリン酸化されたことが確認されたペプチド(図9B)の表示である。
【図10】図10A〜10Bは、骨髄由来マスト細胞(BMMC)でのIgEレセプター架橋時に、PKC−θ活性化ループが誘導的にリン酸化されたことを示すウェスタンブロッティング解析の写真の表示である。
【図11】図11A〜11Cは、IgEレセプター架橋BMMCの膜画分(図11A)、界面活性剤不溶性画分(DI)(図11B)および全細胞抽出物(WCE)(図11C)のウェスタンブロッティング解析の写真の表示である。これは、IgEレセプター刺激BMMC内でのPKC−θ膜移動を示す。
【図12】図12A〜12Bは、PKC−δ(図12A)およびPKC−β(図12B)分布は、BMMCでのIgEレセプター架橋時に有意に変化しないことを示すウェスタンブロッティング解析の写真の表示である。
【図13】図13A〜13Bは、PKC−θノックアウトマウス由来BMMCは、野生型マウス由来BMMCよりも少ない顆粒を含むことを示す組織学的(図13A)およびグラフによる(図13B)表示である。図13Bのデータは、時間の関数としての、またはDNP-BSA濃度の関数としての細胞の平均蛍光強度(MFI)を示す。
【図14】図14A〜14Bは、PKC−θノックアウトマウス由来の腹腔マスト細胞は、野生型マウス由来細胞よりも低いレベルの細胞表面IgEを有する(図14A)が、同様のレベルの細胞表面ckitを有する(図14B)ことを示すグラフ表示である。p値はt-検定により決定した。
【図15】図15A〜15Cは、PKC−θノックアウトマウスが、野生型マウスと比べ、低下したレベルの血清IgE (図15A)およびIgG1(図15B)を有するが、増加したレベルのIgA (図15C)を有することを示すグラフ表示である。p値はt-検定により決定した。
【図16】図16A〜16Cは、IgEレセプター架橋後、PKC−θノックアウトマウス由来BMMCは、以下のサイトカイン:TNF-α(図16A)、IL-13 (図16B)およびIL-6(図16C)の産生を欠くことを示すグラフ表示である。
【図17】図17A〜17Bは、PKC−θノックアウトマウス由来の休止CD4+T細胞、TH1細胞およびTH2細胞が、IL-2の非存在下および0.5μg/ml 抗CD3の存在下での培養後、IL-4(図17A)およびIL-5(図17B)のレベルの低下を示したことを示すグラフ表示である。
【図18】図18は、PKC−θノックアウトマウスが、以下の実施例7に記載の受身皮膚アナフィラキシー(PCA)モデルにおいて、抗IgEに応答した耳の腫脹の増大を有しないことを示すグラフ表示である。耳の腫脹は、ベースラインからのΔ変化量で示した。統計学的解析は、student unpaired t検定を用いて行った。p値は、野生型対PKC−θノックアウト動物の比較を示す。
【図19】図19は、PKC−θノックアウトマウスが、以下に記載する受身皮膚アナフィラキシー(PCA)モデルにおいて、外因性IgEの存在下で耳の腫脹の増大を有しないことを示すグラフ表示である。耳の腫脹は、ベースラインからのΔ変化量で示した。統計学的解析は、student unpaired t検定を用いて行った。p値は、野生型対PKC−θノックアウト動物の比較を示す。
【図20】図20A〜20Dは、PKC−θノックアウトマウス由来のTH1およびTH2両T細胞は、PKC−θ野生型マウス由来のTH1およびTH2両T細胞と比べ、抗CD3刺激に対する増強の低下(0.5μg/ml)を示すことを示す棒グラフの表示である。PKC−θ野生型マウス由来(薄灰色バー)またはPKC−θノックアウトマウス由来(濃灰色バー)のTH0、TH1またはTH2細胞は、抗CD28 (図20A)、抗CD28+IL-2 (図20B)、抗CD28なし、およびIL-2なし(図20C)、ならびにIL-2あり、抗CD28の非存在下(図20D)でさらに刺激した。
【図21】図21A〜21Dは、PKC−θノックアウトマウス由来のTH1およびTH2両T細胞は、PKC−θ野生型マウス由来のTH1およびTH2両T細胞と比べ、抗CD3刺激に対する増強の低下(0.05μg/ml)を示すことを示す棒グラフの表示である。PKC−θ野生型マウス由来(薄灰色バー)またはPKC−θノックアウトマウス由来(濃灰色バー)のTH0、TH1またはTH2細胞は、抗CD28 (図21A)、抗CD28+IL-2 (図21B)、抗CD28なし、およびIL-2なし(図21C)、ならびにIL-2あり、抗CD28の非存在下(図21D)でさらに刺激した。
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願第60/532,525号(2003年12月24日出願)および米国特許仮出願第60/589,415号(2004年7月20日出願)(その各々の全内容を出典明示により本明細書の一部とする)の利益を主張するものである。
【0002】
(技術分野)
本発明は、生物学および免疫学の分野に関する。詳しくは、本発明は、喘息および喘息の処置方法に関する。
【0003】
(従来技術)
喘息は、可逆性気道閉塞および気道過剰応答(AHR)の再発性症状発現を特徴とする気道の慢性炎症性疾患である。喘息の患者の気道は、多くの場合、敏感であり、炎症を起こしている。喘息患者がアレルゲンまたはその気道を刺激する何かと接触すると、気道が収縮し(すなわち、気道壁周囲の筋肉が堅くなり)、患者は、呼吸するのが困難になる。気道の内膜(lining)は炎症を起こし、痰の生成および他のアレルギーの臨床徴候をもたらす。喘息の他の臨床徴候としては、息切れ、喘鳴、咳および胸苦しさ(これは、生命を脅かす状態になることがあり得、場合によっては致命的となり得る)などが挙げられる。
【0004】
既存の治療法は、症候性気管支痙攣および呼吸器の炎症を低減することに焦点を当てたものであるが、喘息患者の肺悪化の加速における長期気道リモデリングの役割の認識が高まってきている。気道リモデリングは、いくつかの病理学的特徴をいい、上皮平滑筋ならびに筋線維芽細胞過形成および/または化生、上皮下線維症ならびにマトリックス沈着などが挙げられる。これらのプロセスは、集合的に、致命的喘息の場合において気道の約300%までの肥厚をもたらす。喘息の病態生理学の解明においてなされた相当な進歩にもかかわらず、該疾患の有病率、罹患率および死亡率は、過去20年間で増加している。入手可能な最新データは、米国で約2000万人、世界中では1億5000万人の人々が喘息を患っていることを示す。ここ10年の間に、米国だけで、ほぼ190万の救急治療外来患者、454,000例の入院および4,000例を超える死亡が、喘息が直接の要因のものであった(年間基準)。
【0005】
アレルギー性喘息は、空気媒介性アレルゲンに対する不適当な炎症性反応によって最初に起こると、一般的に認められている。喘息患者の肺は、リンパ球、マスト細胞、および特に好酸球の激しい浸潤を示す。
【0006】
最新の研究で、喘息において観察される炎症に寄与する複雑な細胞相互作用および分子相互作用の一部が明らかになったが、知識との大きなギャップがなお存在する。
【0007】
喘息の原因に関する研究の結果、喘息の症状を処置するために、多種多様な薬物が利用可能となった。しかしながら、これらの薬物の多くは種々の欠点を有し、そのため、理想的な喘息処置には満たない。例えば、多くの薬物、例えば、エピネフリンおよびイソプロテレノールなどは、喘息の症状を短時間軽減するにすぎない。他の処置も、一定時間使用すると、有効性が低下する。さらに、一部の薬物(コルチコステロイド類など)は、重度の副作用を有し、その慢性使用が制限されている。喘息の分子的理解の進展だけでなく、さらに有益な喘息治療法の必要性が明らかにある。本発明は、これらの必要性に取り組むものである。
【0008】
(発明の開示)
本発明は、少なくとも一部、タンパク質キナーゼCシータ(PKC−θ)θが、呼吸器疾患状態(喘息が挙げられる)においてある役割を果たすというという本発明者の知見に基づく。したがって、本発明は、喘息の処置に有用な薬剤を同定するための方法、喘息または喘息様症状を患う患者の処置のための方法、および内因性PKC−θタンパク質発現を欠く単離されたマスト細胞を提供する。
【0009】
したがって、第1の態様において、本発明は、PKC−θタンパク質のモジュレーターの同定方法を提供する。該方法は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を、被験薬剤と接触させること;および被験薬剤がPKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性をモジュレートしたかどうかを測定することを含み、ここで、被験薬剤の存在下におけるPKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性の変化は、PKC−θタンパク質のモジュレーターを示す。ある特定の実施形態では、前記測定工程は、被験薬剤のキナーゼ活性を被験薬剤の非存在のときと比較することを含む。
【0010】
ある一部の実施形態では、該キナーゼ活性を低下させるPKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のインヒビターである。ある一部の実施形態では、該キナーゼ活性を増大させるPKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のアクチベーターである。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質、その機能性断片の該キナーゼ活性を少なくとも2倍低下させる。
【0011】
ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質は全長PKC−θタンパク質である。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質は、全長PKC−θタンパク質の機能性バリアントである。特定の実施形態では、機能性断片はPKC−θキナーゼドメインである。
【0012】
ある一部の実施形態では、前記接触工程は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片と被験薬剤の反応混合物を提供することにより行なわれる。ある特定の実施形態では、反応混合物が、50mM〜100mM、100〜150mM、150〜200mMおよび200〜250mMおよび250〜300mMからなる群より選択される濃度のNaClを含むバッファーの状態である。特定の実施形態では、NaClの濃度は250mMである。
【0013】
ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、哺乳動物(例えば、ヒトなど)における喘息の処置に有用である。ある一部の実施形態では、喘息はIgE媒介性喘息である。特定の実施形態では、該方法は、被験薬剤の効力を、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて評価することをさらに含み、ここで、対照薬剤と比べ、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて増大した効力を示す被験薬剤を喘息の処置に有用であると認める。
【0014】
ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその断片は、原核生物細胞、例えば、細菌細胞(例えば、大腸菌)などから得たものである。
【0015】
ある一部の実施形態では、前記接触工程は細胞内で行なわれる。
【0016】
ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化である。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化は、配列番号:1の695位のセリン残基、685位のセリン残基、538位のトレオニン残基および536位のトレオニン残基からなる群より選択されるアミノ酸残基において起こる。特定の実施形態では、自己リン酸化は、配列番号:1の538位のトレオニン残基において起こる。
【0017】
ある一部の実施形態では、該方法は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を被験薬剤およびPKC−θ基質と接触させることを含む。ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性は、PKC−θ基質のリン酸化である。ある一部の実施形態では、PKC−θ基質は、R-X-X-SモチーフまたはR-X-X-Tモチーフを含む(式中、Rはアルギニンであり、Xは、不明または任意の既知いずれかのアミノ酸であり得、Sはセリンであり、Tはトレオニンである。例えば、PKC−θ基質は、KKRFSFKKSFK (配列番号:5)、FARKGSLRQKN (配列番号:6)、FARKGSLRQ (配列番号:15)、KKRFSFKKSFK (配列番号:16)、QKRPSQRSKYL (配列番号:17)、KIQASFRGHMA (配列番号:18)、LSRTLSVAAKK (配列番号:19)、AKIQASFRGHM (配列番号:20)、VAKRESRGLKS (配列番号:21)、KAFRDTFRLLL (配列番号:22)、PKRPGSVHRTP (配列番号:23)、ATFKKTFKHLL (配列番号:24)、SPLRHSFQKQQ (配列番号:25)、KFRTPSFLKKS (配列番号:26)、IYRASYYRKGG (配列番号:27)、KTRRLSAFQQG (配列番号:28)、RGRSRSAPPNL (配列番号:29)、MYRRSYVFQT (配列番号:30)、QAWSKTTPRRI (配列番号:31)、RGFLRSASLGR (配列番号:32)、ETKKQSFKQTG (配列番号:33)、DIKRLTPRFTL (配列番号:34)、APKRGSILSKP (配列番号:35)、MYHNSSQKRH (配列番号:36)、MRRSKSPADSA (配列番号:37)、TRSKGTLRYMS (配列番号:38)、LMRRNSVTPLA (配列番号:39)、ITRKRSGEAAV (配列番号:40)、EEPVLTLVDEA (配列番号:41)、SQKRPSQRHGS (配列番号:42)、KPFKLSGLSFK (配列番号:43)、AFRRTSLAGGG (配列番号:44)、ALGKRTAKYRW (配列番号:45)、VVRTDSLKGRR (配列番号:46)、KRRQISIRGIV (配列番号:47)、WPWQVSLRTRF (配列番号:48)、GTFRSSIRRLS (配列番号:49)、RVVGGSLRGAQ (配列番号:50)、LRQLRSPRRTQ (配列番号:51)、KTRKISQSAQT (配列番号:52)、NKRRATLPHPG (配列番号:53)、SYTRFSLARQV (配列番号:54)、NSRRPSRATWL (配列番号:55)、RLRRLTAREAA (配列番号:56)、NKRRGSVPILR (配列番号:57)、GKRRPSRLVAL (配列番号:58)、QKKRVSMILQS (配列番号:59)、およびRLRRLTAREAA (配列番号:60)からなる群より選択されるアミノ酸配列(普遍的(universal)一文字アミノ酸コードに基づく)を有し得る。
【0018】
ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片は、細胞(例えば、マスト細胞またはCD4+T細胞など)内にある。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を発現する細胞を、被験薬剤と接触させること、および被験薬剤が細胞内において機能性PKC−θタンパク質の量を低下させたかどうかを測定することを含み、ここで、細胞内において機能性PKC−θタンパク質の量を低下させる被験薬剤を、PKC−θタンパク質のモジュレーターであると認める、PKC−θタンパク質のモジュレーターの同定方法を提供する。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、哺乳動物(例えば、ヒトなど)における喘息の処置に有用である。ある一部の実施形態では、喘息はIgE媒介性喘息である。特定の実施形態では、該方法は、被験薬剤の効力を、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて評価することをさらに含み、ここで、対照薬剤と比べ、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて増大した効力を示す被験薬剤を喘息の処置に有用であると認める。
【0020】
ある一部の実施形態では、該薬剤は、細胞内において、機能性PKC−θタンパク質をコードする核酸分子の発現を低下させる。特定の実施形態では、喘息はIgE媒介性喘息である。ある一部の実施形態では、哺乳動物はヒトである。ある特定の実施形態では、機能性PKC−θタンパク質は、細胞(例えば、マスト細胞またはCD4+T細胞(例えば、TH2 T細胞))内にある。
【0021】
ある特定の実施形態では、該薬剤は、機能性PKC−θタンパク質をコードするRNAの量を低下させる。ある一部の実施形態では、該薬剤は、機能性PKC−θタンパク質をコードするRNAの翻訳を阻害する。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、PKC−θプロモーターと作動可能に連結されたレポーター遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を被験薬剤と接触させること、および被験薬剤がレポーター遺伝子産物の産生を低下させたかどうかを測定することを含み、ここで、レポーター遺伝子産物の産生を低下させる被験薬剤を喘息の処置に有用な薬剤であると認める、哺乳動物において喘息の処置に有用な薬剤を同定するための方法を提供する。
【0023】
ある特定の実施形態では、PKC−θプロモーターと作動可能に連結されたレポーター遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、細胞(例えば、マスト細胞またはCD4+T細胞)内にある。ある一部の実施形態では、マスト細胞は内因性PKC−θタンパク質の発現を欠く。ある特定の実施形態では、レポーター遺伝子産物は、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアシルトランスフェラーゼ、β-グルクロニダーゼ、アルカリホスファターゼまたは緑色蛍光タンパク質である。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、PKC−θタンパク質のモジュレーターの同定方法を提供する。該方法は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を発現する細胞を、被験薬剤と接触させること;および被験薬剤が、該細胞内においてPKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化を低下させたかどうかを測定することを含み、ここで、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化を低下させる被験薬剤を、PKC−θタンパク質のモジュレーターであると認める。ある一部の実施形態では、前記測定工程は、被験薬剤のキナーゼ活性を被験薬剤の非存在のときと比較することを含む。
【0025】
ある一部の実施形態では、該キナーゼ活性を低下させるPKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のインヒビターである。ある一部の実施形態では、該キナーゼ活性を増大させるPKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のアクチベーターである。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の該キナーゼ活性を少なくとも2倍低下させる。
【0026】
ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質は全長PKC−θタンパク質である。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質は、全長PKC−θタンパク質の機能性バリアントである。特定の実施形態では、機能性断片はPKC−θキナーゼドメインである。
【0027】
ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、哺乳動物(例えば、ヒトなど)における喘息の処置に有用である。ある一部の実施形態では、喘息はIgE媒介性喘息である。特定の実施形態では、該方法は、被験薬剤の効力を、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて評価することをさらに含み、ここで、対照薬剤と比べ、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて増大した効力を示す被験薬剤を喘息の処置に有用であると認める。
【0028】
ある一部の実施形態では、細胞が原核生物細胞(例えば、細菌細胞(例えば、大腸菌)など)である。
【0029】
ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化は、配列番号:1の695位のセリン残基、685位のセリン残基、538位のトレオニン残基および536位のトレオニン残基からなる群より選択されるアミノ酸残基において起こる。
【0030】
また別の態様において、本発明は、喘息を患うか、または喘息症状を患う哺乳動物に、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の該キナーゼ活性を低下させるか、または機能性PKC−θタンパク質の産生を低下させる薬剤を投与することを含む、喘息の処置方法を特色とする。ある一部の実施形態では、該薬剤を、薬学的に許容され得る担体とともに投与する。ある一部の実施形態では、担体はエーロゾルの形態である。
【0031】
本方法のある一部の実施形態では、該薬剤は、静脈内、経口、経皮および/または筋肉内経路で投与される。特定の実施形態では、該薬剤が吸入によって投与される。ある一部の実施形態では、喘息はIgE媒介性喘息である。ある一部の実施形態では、該薬剤は、β-アドレナリン作用剤、テオフィリン化合物、コルチコステロイド、抗コリン作用薬、抗ヒスタミン薬、カルシウムチャネル遮断薬、クロモリンナトリウムまたはその組合せであり得る薬物と共投与される。特定の実施形態では、該薬剤は、PKC−θタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体である。ある一部の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。ある一部の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。
【0032】
ある一部の実施形態では、被験薬剤は核酸分子である。ある特定の実施形態では、核酸分子はリボ核酸分子である。ある一部の実施形態では、リボ核酸分子が、配列番号:3に示すヌクレオチド配列の一部分に相補的であるヌクレオチド配列を含む。
【0033】
ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化である。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化は、配列番号:1の695位のセリン残基、685位のセリン残基、538位のトレオニン残基および536位のトレオニン残基からなる群より選択されるアミノ酸残基において起こる。
【0034】
ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性はPKC−θ基質のリン酸化である。ある一部の実施形態では、PKC−θ基質はR-X-X-SモチーフまたはR-X-X-Tモチーフを含む(式中、Rはアルギニンであり、Xは、不明または任意の既知いずれかのアミノ酸であり、Sはセリンであり、Tはトレオニンである)。例えば、PKC−θ基質は、KKRFSFKKSFK (配列番号:5)、FARKGSLRQKN (配列番号:6)、FARKGSLRQ (配列番号:15)、KKRFSFKKSFK (配列番号:16)、QKRPSQRSKYL (配列番号:17)、KIQASFRGHMA (配列番号:18)、LSRTLSVAAKK (配列番号:19)、AKIQASFRGHM (配列番号:20)、VAKRESRGLKS (配列番号:21)、KAFRDTFRLLL (配列番号:22)、PKRPGSVHRTP (配列番号:23)、ATFKKTFKHLL (配列番号:24)、SPLRHSFQKQQ (配列番号:25)、KFRTPSFLKKS (配列番号:26)、IYRASYYRKGG (配列番号:27)、KTRRLSAFQQG (配列番号:28)、RGRSRSAPPNL (配列番号:29)、MYRRSYVFQT (配列番号:30)、QAWSKTTPRRI (配列番号:31)、RGFLRSASLGR (配列番号:32)、ETKKQSFKQTG (配列番号:33)、DIKRLTPRFTL (配列番号:34)、APKRGSILSKP (配列番号:35)、MYHNSSQKRH (配列番号:36)、MRRSKSPADSA (配列番号:37)、TRSKGTLRYMS (配列番号:38)、LMRRNSVTPLA (配列番号:39)、ITRKRSGEAAV (配列番号:40)、EEPVLTLVDEA (配列番号:41)、SQKRPSQRHGS (配列番号:42)、KPFKLSGLSFK (配列番号:43)、AFRRTSLAGGG (配列番号:44)、ALGKRTAKYRW (配列番号:45)、VVRTDSLKGRR (配列番号:46)、KRRQISIRGIV (配列番号:47)、WPWQVSLRTRF (配列番号:48)、GTFRSSIRRLS (配列番号:49)、RVVGGSLRGAQ (配列番号:50)、LRQLRSPRRTQ (配列番号:51)、KTRKISQSAQT (配列番号:52)、NKRRATLPHPG (配列番号:53)、SYTRFSLARQV (配列番号:54)、NSRRPSRATWL (配列番号:55)、RLRRLTAREAA (配列番号:56)、NKRRGSVPILR (配列番号:57)、GKRRPSRLVAL (配列番号:58)、QKKRVSMILQS (配列番号:59)、およびRLRRLTAREAA (配列番号:60)からなる群より選択されるアミノ酸配列(普遍的一文字アミノ酸コードに基づく)を有し得る。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、内因性PKC−θタンパク質の発現を欠く単離されたマスト細胞を提供する。ある一部の実施形態では、該細胞は、外因性PKC−θタンパク質またはその断片を発現する。
【0036】
本発明のこれらのおよび他の態様、実施形態および利点は、本明細書の記載内容から明らかとなろう。
【0037】
(好ましい実施形態の記載)
本発明は、タンパク質キナーゼ Cシータ(PKC−θ)θをモジュレートする薬剤または機能性PKC−θタンパク質の量をモジュレートする薬剤が喘息の処置に有用であるという知見に基づく。ここに示すこの新規な所見は、アレルギーおよび喘息において、PKC−θ触媒活性を低下させる、または機能性PKC−θタンパク質の量を低下させる薬剤の、マスト細胞標的化用薬剤としての使用を裏付ける。
【0038】
本発明の原理の理解を高める目的で、以下に好ましい実施形態を示し、特定の文言は同じものを指す。とはいうものの、それによって本発明の範囲を限定しないことを理解されたい。本明細書に示す本発明の改変およびさらなる変形、および本発明の原理のさらなる適用が想定され、これらは、本発明が関係する技術分野の当業者には普通に思いつくものであろう。
【0039】
本明細書で引用した特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立するものである。発行済みの米国特許、許可された出願、公開された出願(米国および外国)および参考文献(GenBankデータベース配列を含む)は、引用により、各々が具体的に個々に本明細書に組み込まれているのと同じ程度に本明細書に組み込まれる。
【0040】
PKC−θは、PKCのCa+2非依存性の新規なクラスの構成員である。これは、T細胞および筋肉において高度に発現される。本明細書に記載するように、PKC−θタンパク質は、呼吸器疾患(例えば、喘息など)においてある役割を果たし、これに関連する(例えば、喘息、例えば、アトピー性喘息(例えば、IgE媒介性喘息)、非アトピー性喘息、職業性喘息および薬物誘導性喘息などの症状および/または合併症と関連している)ことが見出されている。本明細書に示す所見に基づき、本発明は、喘息を処置するための薬剤の同定方法を提供し、哺乳動物に、PKC−θ産生および/またはキナーゼ活性をモジュレートする(例えば、阻害または増強により)薬剤の治療有効量を投与することによる喘息の処置方法を提供する。加えて、本発明は、内因性PKC−θタンパク質発現を欠く単離されたマスト細胞を提供する。
【0041】
一態様において、本発明は、PKC−θタンパク質のモジュレーターの同定方法を提供する。該方法は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を、被験薬剤と接触させること;および被験薬剤がPKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性を阻害したかどうかを測定することを含む。PKC−θタンパク質またはその機能性断片の該キナーゼ活性を低下させる被験薬剤は、PKC−θタンパク質のモジュレーターであると認める。
【0042】
本明細書で使用する場合、「被験薬剤」は、化学物質(例えば、有機系または無機系)、低分子化合物、核酸分子、ペプチドまたはタンパク質(例えば、ホルモン、抗体および/またはその一部分)である。「PKC−θタンパク質のモジュレーター」により、薬剤が、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性を、増大または低下させることのいずれかによりモジュレートできること、または機能性PKC−θタンパク質の量をモジュレートできること(例えば、転写または翻訳により)が意図される。ある一部の実施形態では、該キナーゼ活性を低下させるPKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のインヒビターである。ある一部の実施形態では、該キナーゼ活性を増大させるPKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のアクチベーターである。
【0043】
本発明の一形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターの同定方法は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を、被験薬剤と接触させること、およびPKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化の変化(例えば、以下の配列番号:1の残基:695位のセリン残基、685位のセリン残基、538位のトレオニン残基および536位のトレオニン残基のリン酸化の変化)を検出することを含む。別の形態では、該方法は、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を、被験薬剤およびPKC−θの基質と接触させること、およびPKC−θ基質のリン酸化の変化を検出することを含む。被験薬剤は、PKC−θタンパク質もしくはその機能性断片のキナーゼ活性、または機能性PKC−θタンパク質の量(例えば、機能性PKC−θタンパク質をコードするRNAまたはDNAの量を変化させることにより)のモジュレート(すなわち、阻害または増大)に有効であると思われるものである。ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の該キナーゼ活性を少なくとも2倍低下させる。ある一部の実施形態では、該モジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性を少なくとも4倍、または少なくとも10倍低下させる。ある一部の実施形態では、該モジュレーターは、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性を排除する。PKC−θタンパク質キナーゼ活性は、例えば、標準的な手法(例えば、以下に記載するインビトロキナーゼアッセイなど)を用いて定量することができる。
【0044】
本発明の別の非限定的な実施形態では、機能性PKC−θタンパク質の量は、PKC−θタンパク質のモジュレーターによって低下する。
【0045】
本明細書で使用する場合、「機能性」は、通常の機能を果たす(例えば、野生型PKC−θタンパク質と同じキナーゼ活性を有する)PKC−θタンパク質またはその断片を意味する。PKC−θタンパク質またはその断片が機能性であるか否かの決定は、通常の技量を有する生物学者によって容易に行なわれ得る。目的のPKC−θタンパク質またはその断片が機能性であるか否かを決定するための非限定的な方法の一例は、目的のPKC−θタンパク質またはその断片を野生型PKC−θタンパク質または野生型PKC−θ断片と、標準的なタンパク質キナーゼアッセイ(例えば、Ausubelら編, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York, New York(1995、および後の2003年までの最新情報)を参照のこと)および以下の実施例に記載のキナーゼアッセイにて比較することである。
【0046】
PKC−θタンパク質の機能性断片の非限定的な一例は、PKC−θキナーゼドメインである。以下の実施例に記載のように(特に、実施例3)、PKC−θタンパク質のキナーゼドメイン(「PKC−θキナーゼドメイン」または単に「PKC−θ KD」ともよぶ)は、驚くべきことに、自己リン酸化することができる。これは、このクラスの他の酵素が自己リン酸化しないことを考えると、驚くべきことである。用語「PKC−θキナーゼドメイン」は、使用する場合、PKC−θタンパク質のキナーゼドメインであって、該タンパク質の約アミノ酸残基362〜約アミノ酸残基706の範囲の部分を含むドメインを意味する。ある一部の実施形態では、本発明のPKC−θ KDは、配列番号:61に示すアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、本発明のPKC−θ KDは、配列番号:62に示すアミノ酸配列を有する(配列番号:62の最初の2個のN末端アミノ酸残基、メチオニンおよびグリシンは、PKC−θ KD断片の発現に便利であるが、全長PKC−θタンパク質には存在しないことに注意)。
【0047】
ある一部の実施形態では、本発明のPKC−θキナーゼドメインは、原核生物細胞、例えば、細菌(大腸菌など)内で発現される。ある一部の実施形態では、PKC−θキナーゼドメインは、以下のアミノ酸残基:配列番号:1の695位のセリン、685位のセリン、538位のトレオニンおよび536位のトレオニンの1個以上がリン酸化されている(例えば、自己リン酸化によって)。
【0048】
ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、機能性PKC−θタンパク質の量を少なくとも2倍低下させる。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、機能性PKC−θタンパク質の量を少なくとも4倍低下させる。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、機能性PKC−θタンパク質の量を少なくとも10倍低下させる。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、機能性PKC−θタンパク質の量を排除する。機能性PKC−θタンパク質のレベルは、例えば、標準的な手法(例えば、以下に記載するウェスタンブロッティング解析など)を用いて定量することができる。
【0049】
さらなる態様において、本発明は、機能性PKC−θタンパク質またはその機能性断片を含む細胞を、被験薬剤と接触させること、および被験薬剤が、機能性PKC−θタンパク質またはその機能性断片の量を該細胞内において低下させたかどうかを測定することを含み、ここで、機能性PKC−θタンパク質またはその機能性断片の量を該細胞内において低下させる被験薬剤を、PKC−θタンパク質のモジュレーターであると認める、別のPKC−θタンパク質のモジュレーターの同定方法を提供する。かかるPKC−θタンパク質のモジュレーターは、例えば、転写または翻訳レベルで作用し得る。
【0050】
ある特定の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、哺乳動物(例えば、ヒトなど)における呼吸器疾患の処置に有用である。呼吸器疾患としては、限定されないが、喘息(例えば、アレルギー性および非アレルギー性喘息);気管支炎(例えば、慢性気管支炎);慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば、気腫);気道炎症、好酸球増加症、線維症および過剰粘液生成(excess mucus production)、例えば、嚢胞性線維症、呼吸器線維症およびアレルギー性鼻炎に伴う状態などが挙げられる。
【0051】
ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、アトピー性疾患の処置に有用である。「アトピー」は、多くの場合、アレルギー性反応の発現に遺伝的な傾向がある一群の疾患をいう。アトピー性障害の非限定的な例としては、アレルギー、アレルギー性鼻炎(花粉症、その症状としては、痒み、鼻水、くしゃみまたは鼻づまりおよび目の痒みなどが挙げられる)、アトピー性皮膚炎(湿疹としても知られる;皮膚を冒す慢性疾患)、喘息および花粉症などが挙げられる。
【0052】
特定の実施形態では、PKC−θタンパク質のモジュレーターは、哺乳動物(例えば、ヒトなど)における喘息の処置に有用である。「喘息」は、本明細書で使用する場合、喘鳴を伴う連続性または発作性の苦しい呼吸、胸部締付け感、およびしばしば咳またはあえぎの発作が顕著である(marked)状態を意味する。これらの症状のいずれか、またはすべてが「喘息症状」として含まれる。本明細書で使用する場合「喘息」としては、限定されないが、非アレルギー性喘息(内因性または非アトピー性喘息とも呼ばれる)、アレルギー性喘息(内因性またはアトピー性喘息とも呼ばれる)、非アレルギー性とアレルギー性喘息の併発、運動誘発性喘息(混合型喘息とも呼ばれる)、薬物誘発性喘息、職業性喘息および後期(late stage)喘息などが挙げられる。外因性またはアレルギー性喘息としては、例えば、アレルゲン(例えば、花粉、胞子、芝生または雑草、ペットのふけ、埃、ダニなど)により引き起こされるか、またはこれらと関連する発症などが挙げられる。アレルゲンおよび他の刺激物は、あらゆる場所で年中、自身を提示するため、これらの型の発症は、季節性喘息ともよばれる。また、気管支喘息およびアレルギー性気管支肺アスペルギルス症も外因性喘息の群に含まれる。
【0053】
喘息は、表現型が不均一な障害であり、断続的な呼吸器疾患症状(例えば、気管支の過剰応答性および可逆性気道閉塞など)を伴う。喘息の免疫組織病理学的特徴としては、例えば、気道上皮の裸出、基底膜下のコラーゲン沈着;浮腫;マスト細胞活性化;および炎症性細胞浸潤(例えば、好中球、好酸球およびリンパ球による)などが挙げられる。気道炎症は、気道過剰応答、空気流制限、急性気管支収縮、粘液栓(mucus plug)形成、気道壁リモデリングおよび他の呼吸器疾患症状にさらに寄与し得る。
【0054】
本発明の方法によって処置または軽減され得る喘息としては、感染因子、例えば、ウイルス(例えば、風邪および流感ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス、ライノウイルスおよびインフルエンザウイルス)によって引き起こされるものなどが挙げられる。RSV、ライノウイルスおよびインフルエンザウイルス感染は、小児によく見られ、幼児および若年小児に呼吸管の病気の原因をもたらすものである。ウイルス性気管支炎を有する小児は、慢性喘鳴および喘息を発現し得るが、これは、本発明の方法を用いて処置され得る。また、運動および/または冷気によって一部の喘息患者に起こり得る喘息状態なども挙げられる。本発明の方法は、煙への曝露(例えば、タバコ誘導性および向上煤煙)ならびに産業的および職業的曝露(例えば、煙、オゾン、毒ガス、亜硫酸ガス、窒素酸化物、噴煙(例えば、塗料、プラスチック、ポリウレタン、ワニスなどからのイソシアネート)、木材、植物または他の有機性文末など)に関連する喘息に有用である。該方法はまた、食品添加物、保存料または薬理物質と関連する喘息発症に有用である。本発明の方法はまた、サイレント(silent)喘息と呼ばれる型の喘息または風邪の変種の喘息の処置、阻害または軽減に有用である。
【0055】
加えて、本発明の方法は、胃食道逆流(GERD)(これは、気管支収縮を刺激し得る)と関連する喘息の処置および軽減に有用である。
【0056】
ある一部の実施形態では、喘息はIgE媒介性喘息である。特定の実施形態では、該方法は、被験薬剤の効力を、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて評価することをさらに含み、ここで、対照薬剤と比べ、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて増大した効力を示す被験薬剤を、喘息の処置に有用であると認める。
【0057】
種々の喘息モデルが当該技術分野において知られている。例えば、Solerら, J. Appl. Physiol. 70 (2): 617-23 (1991) および Longら, J. Appl. Physiol. 69 (2): 584-590 (1990) には、ヒツジの気管支収縮モデルが記載されている。ヒツジは、生まれつき回虫寄生虫Ascaris suumに感作されている。Ascaris suum抗原での吸入抗原刺激後、この動物は、アレルゲン感作に曝露されたときの喘息患者の反応と同様の初期および後期気管支収縮応答を行う。Ascaris抗原刺激はまた、ヒツジにおいて気道過剰応答を誘導し、これは、コリン作動薬であるカルバコールでの誘発抗原刺激後の肺抵抗(resistance)の増加として測定される。所与の応答を惹起するのに必要なカルバコールの用量は、Ascaris抗原刺激後24時間で減少し、気道過剰応答を示す。
【0058】
Bischofら(Clin. Exp. Allergy 33 (3): 367-75 (2003))には、ヒツジのアレルギー性喘息モデルが記載されており、この場合、可溶化イエダニ抽出物で皮下にて免疫処置したヒツジに、続いてイエダニでの単回気管支抗原刺激を与えた。このモデルでは、気管支肺胞洗浄液(BAL)および末梢血白血球を、イエダニの気管支抗原刺激の前後にフローサイトメトリー用に回収し、組織試料を、抗原刺激の48時間後に組織学検査および免疫組織化学的解析(Bischofら、前出)用に採取した。PKC−θタンパク質のモジュレーターであると思われる被験薬剤、特に、PKC−θタンパク質のインヒビターであると思われるものをヒツジに投与し、本発明の被験薬剤を投与していないヒツジにおけるBAL白血球の数と比べ、抗原刺激後のBAL白血球の数を低減する能力について評価し得る。
【0059】
また別のよく知られた喘息モデルは、Ascaris誘導性気道炎症の非ヒト霊長類モデルである(例えば、Gundelら, Clin. Exp. Allergy 22 (1): 51-57 (1992)を参照のこと)。カニクイザルは、生まれつき回虫寄生虫Ascaris suum(これは、強いIgE応答を誘導することによりアレルゲンとして作用する)に感作されている。該抗原による気管内抗原刺激時、この動物は、主に好酸球で構成される気道炎症を示す。これは、肺分節アレルゲン抗原刺激の24時間後に、気管支肺胞洗浄液内に流入した白血球を計測することにより測定することができる。
【0060】
また別の非限定的な喘息モデルは、マウスのオボアルブミン(OVA)誘導性気道過剰応答である(例えば、Kipsら, Eur. Respir. J. 22 (2): 374-382 (2003);Taubeら, Int. Arch. Allergy Immunol. 135 (2): 173-186 (2004);およびReaderら, Am. J. Pathol. 162 (6): 2069-2078 (2003) を参照のこと)。このモデルでは、マウスをオボアルブミン(OVA)含有ミョウバンアジュバントで免疫処置し、追加免疫し、次いで、OVAのエーロゾル抗原刺激を与える。抗原刺激時、該動物は、気道抵抗の増大および白血球の気管支肺胞洗浄(BAL)液内への浸透を示す。加えて、血清サイトカインレベルが増加し、肺組織学検査は、組織炎症および粘液生成を示す。
【0061】
当該技術分野で知られた他の非限定的な喘息モデルとしては、イヌおよびサルのAscaris suum抗原誘導性喘息モデル(例えば、Hirshmanら, J. Appl. Physiol. 49: 953-957 (1980);Mauserら, Am. J. Respir. Crit. Care Med. 152 (2): 467-472 (1995) を参照のこと)などが挙げられる。
【0062】
また、インビトロ喘息モデルも、通常の技量を有する生物学者に知られている。例えば、T細胞標的化治療には、非限定的な一例は、TH2細胞によるサイトカイン産生の阻害である。このT細胞は、CD3およびCD28に対する刺激されたインビトロ抗体であり、TCR媒介性活性化を模擬し得る。これは、サイトカイン産生を誘導し、48時間後の上清みにてアッセイすることができる。重要なサイトカインは、IL-4およびIL-13である。特に、IL-13は、動物モデルにおける喘息病因の主な誘導因子である(例えば、Wills-Karp M., Immunol Rev. 202: 175-190 (2004)を参照のこと)。
【0063】
PKC−θタンパク質モジュレーターの喘息に対する効果を評価するための別の非限定的なインビトロ方法は、抗CD3および抗CD28に応答したT細胞増殖の抑制またはNFATの核の転写因子NF-kBの誘導である。T細胞増殖は、例えば、3H-チミジン取込みによってアッセイすることができる(例えば、Ausubelら(前出)の方法を参照のこと)。T細胞活性化に応答し、NFATまたはNF-kBは活性化および核移動を受ける(これらは、細胞ライセートのウエスタンブロットによってアッセイすることができる)。
【0064】
PKC−θタンパク質インヒビターはまた、オボアルブミン免疫処置マウスにおいてTH2応答を低下させるばずであり、これは、オボアルブミン特異的IgG1または全IgEの産生の減少としてアッセイすることができる。これらの抗体のレベルは、マウスの血清のELISAによってアッセイすることができる。
【0065】
本明細書で使用する場合、本発明のPKC−θタンパク質はヒト由来であり得、配列番号:1 (GenBank受託番号:NM_006257)に示すアミノ酸配列を有し得る。別の実施形態では、本発明のPKC−θタンパク質はマウス由来であり得、配列番号:2(GenBank受託番号:NM_008859)に示すアミノ酸配列を有し得る。本発明に有用なPKC−θタンパク質はまた、配列番号:3(ヒト)(GenBank受託番号:NM_006257)または配列番号:4(マウス)(GenBank受託番号:NM_008859)に示すヌクレオチド配列にコードされたものであり得る。さらなるPKC−θタンパク質の配列およびこれらのタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、GenBank受託番号:NM_178075(Niinoら, J. Biol. Chem. 276 (39): 36711-36717 (2001);(マウス));GenBank受託番号:AF473820(NonnemanおよびRohrer, Anim. Genet. 34 (1):42-46 (2003);(ブタ))で入手可能である。
【0066】
本明細書で使用する場合、ヌクレオチド配列は、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシドならびにその誘導体の天然または合成の線状で連続した(sequential)アレイを指すことが意図される。用語「コードする(をコードする)」および「coding」は、ヌクレオチド配列が、転写および翻訳の機構を介して、細胞に、一連のアミノ酸を特定のアミノ酸配列に組み立ててポリペプチドが生成され得る情報を提供するプロセスをいう。特定のアミノ酸配列をコードするプロセスは、コードされたアミノ酸に変化を引き起こさない1個以上の塩基変化(すなわち、挿入、欠失、置換)を有するDNA配列を伴い得るか、または1個以上のアミノ酸を改変するが、DNA配列にコードされたポリペプチドの機能特性を排除しない塩基変化を伴い得る。
【0067】
PKC−θが喘息の症状および/または合併症の誘導と関連するという知見により、PKC−θの配列は、本発明の薬剤の同定方法に有用となる。かかる方法は、PKC−θキナーゼ活性をモジュレート(例えば、阻害または増強)する能力をもつ可能性のある薬剤をアッセイすることを含む。本発明のアッセイに有用なPKC−θ核酸分子(例えば、PKC−θプロモーター配列)およびタンパク質には、本明細書に開示した遺伝子およびコードされたポリペプチドだけでなく、野生型遺伝子およびポリペプチドと実質的に同じ活性を有するそのバリアントも含まれる。「バリアント」は、本明細書で使用する場合、1つ以上の欠失、挿入または置換を含有するポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含むが、バリアントは野生型ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと実質的に同じ活性を維持している。ポリペプチドに関し、欠失バリアントは、生物学的活性に必須でないポリペプチドの部分を欠く断片を含むことが想定され、挿入バリアントは、野生型ポリペプチドまたはその断片を別のポリペプチドと融合させた融合ポリペプチドを含むことが想定される。
【0068】
したがって、ある特定の実施形態では、本発明のPKC−θタンパク質は、全長PKC−θタンパク質の機能性バリアントである。したがって、PKC−θタンパク質は、配列番号:3または配列番号:4に示すヌクレオチド配列にコードされるものに限定されないことを理解されたい。例えば、上記のようなバリアントアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、PKC−θをコードするヌクレオチド配列の範囲に含まれる。配列に対する修飾、例えば配列における欠失、挿入または置換(PKC−θタンパク質の機能特性に実質的に影響しない「サイレント」変化をもたらす)は、本発明において明らかに想定される。例えば、ヌクレオチド配列において、遺伝暗号の縮重を反映する改変、または化学的に等価なアミノ酸生成を所与の部位にもたらす改変が想定されることを理解されたい。したがって、アミノ酸アラニン(疎水性アミノ酸)のコドンは、別の疎水性がより低い残基(例えば、グリシンなど)、または疎水性がより高い残基(例えばバリン、ロイシンまたはイソロイシンなど)をコードするコドンに置き換えてもよい。同様に、負電荷を有する残基の1つを別のもの(例えば、アスパラギン酸をグルタミン酸)、または正電荷を有する残基の1つを別のもの(例えば、リシンをアルギニン)への置換をもたらす変化もまた、生物学的に等価なPKC−θタンパク質をもたらすことが期待され得る。
【0069】
本明細書に記載のアッセイにおける使用のため、PKC−θタンパク質は、種々の供給業者、例えば、Panvera(Madison, WI)などで購入してもよく、当業者に知られた遺伝子操作およびタンパク質精製方法によって作製してもよい。例えば、哺乳動物PKC−θタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、所望の宿主細胞内に導入し、培養し、単離および精製し得る。かかるヌクレオチド配列は、まず、適切な、あるいはまた所望の組換え発現ベクター内に挿入するのがよい。例えば、哺乳動物PKC−θタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、以下の実施例に記載のように、pcDNA3発現ベクター内にサブクローン化し、ヒト293細胞内で発現させてもよい。原核生物細胞におけるPKC−θタンパク質またはPKC−θキナーゼドメインの発現もまた想定される。例えば、以下の実施例に記載のように、PKC−θタンパク質またはPKC−θキナーゼドメインは、細菌系発現ベクター(例えば、pET16b(例えば、EMD Biosciences/Merck Biosciences(San Diego, CA)から市販されたものなど)内にサブクローン化し、細菌細胞内で発現させ得る。「ベクター」は、本明細書で使用する場合、および当該技術分野で知られているように、標的化される細胞の形質転換を指令するよう設計された遺伝物質を含む構築物をいう。ベクターは、位置的および配列的に配向された、すなわち、他の必要な要素または所望の要素と作動可能に連結されている多数の遺伝要素を、核酸カセット内の核酸が、トランスフェクトされた細胞内で転写され得るように(所望により、翻訳されるように)含有し得る。
【0070】
組換え発現ベクターは、上記のヌクレオチド配列をベクター内に、当業者によく知られた、例えば、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory, 第2版, Cold Springs Harbor, New York (1989)に記載の方法にしたがって組み込むことにより構築物され得る。分子生物学および組換えDNA手法を記載した他の参考文献、例えば、DNA Cloning 1: Core Techniques(D. N. Gloverら編, IRL Press, 1995);DNA Cloning 2: Expression Systems(B. D. Hamesら編, IRL Press, 1995);DNA Cloning 3: A Practical Approach(D. N. Gloverら編, IRL Press, 1995);DNA Cloning 4: Mammalian Systems(D. N. Gloverら編, IRL Press, 1995);Oligonucleotide Synthesis(M. J. Gait編, IRL Press, 1992);Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach(S. J. HigginsおよびB. D. Hames編, IRL Press, 1991);Transcription and Translation:A Practical Approach(S. J. Higgins & B. D. Hames編, IRL Press, 1996);R. I. Freshney, Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique, 第4版(Wiley-Liss, 1986);およびB. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning, 第2版(John Wiley & Sons, 1988);およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編, John Wiley & Sons)(これは、定期的および周期的に改定される)にもさらに説明されている。
【0071】
本発明において用途を有する多種多様なベクターが知られている。好適なベクターとしては、プラスミドベクター、ウイルス系ベクター、例えばレトロウイルスベクター(例えば、Millerら, Methods of Enzymology 217: 581-599 (1993)を参照)、アデノウイルスベクター(例えば、Erzurumら, Nucleic Acids Res. 21: 1607-1612 (1993)を参照;Zabnerら, Nature Genetics 6: 75-83 (1994);およびDavidsonら, Nature Genetics 3: 219-223 (1993))アデノ随伴ウイルスベクター(例えば、Flotteら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10613-10617 (1993) を参照)およびヘルペスウイルス系ベクター(例えば、Andersonら, Cell Mol. Neurobiol. 13: 503-515 (1993)を参照)が挙げられる。ベクターは、特定の宿主細胞内で核酸の発現を誘発するのに必要な、または望ましい他の公知の遺伝要素(調節エレメントが挙げられる)を含み得る。例えば、ベクターは、プロモーターおよび該プロモーターと協働して遺伝子の転写を達成する任意の必要なエンハンサー配列を含み得る。「エンハンサー」により、細胞(例えば、真核生物宿主細胞)内でプロモーター活性を刺激し得るヌクレオチド配列エレメントが意図される。
【0072】
本明細書において規定するように、ヌクレオチド配列は、別のヌクレオチド配列と機能的に関連した状態で配置されている場合、別のヌクレオチド配列と「作動可能に連結されている」。コーディング配列が、プロモーター配列と作動可能に連結されている場合、これは、一般的に、プロモーターは、コーディング配列の転写を促進し得ることを意味する。作動可能に連結されているとは、連結されたDNA配列が、典型的には隣接しており、必要な場合は2つのタンパク質コード領域が接合されていること、隣接しており読み枠内にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、プロモーターから数キロ塩基離れている場合およびイントロン配列が種々の長さであり得る場合も機能し得るため、いくつかのヌクレオチド配列は、作動可能に連結されているものであり得るが、隣接していない。
【0073】
数多くの当該技術分野で知られた方法が、PKC−θタンパク質をコードするヌクレオチド配列(組換え発現ベクター内、宿主細胞内に含め得る)を導入するために利用可能である。かかる方法としては、限定されないが、機械的方法、化学的方法、脂肪親和的方法およびエレクトロポレーションなどが挙げられる。例示的な機械的方法としては、例えば、マイクロインジェクションおよびDNAを組み込むための、例えば金粒子基質との遺伝子銃の使用などが挙げられる。例示的な化学的方法としては、例えば、リン酸カルシウムまたはDEAE-デキストランの使用などが挙げられる。例示的な脂肪親和的方法としては、リポソームおよび脂質媒介性トランスフェクションのための他のカチオン系薬剤の使用などが挙げられる。かかる方法は当該技術分野でよく知られており、かかる方法の多くは、例えば、Gene Transfer Methods: Introducing DNA into Living Cells and Organisms(P. A. NortonおよびL. F. Steel編, Biotechniques Press, 2000);およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編, John Wiley & Sons)(これは、定期的および周期的に改定される)に記載されている。
【0074】
多種多様な宿主細胞が本発明において利用され得、所望の量のPKC−θタンパク質またはその機能性断片を、例えば、本明細書に記載のスクリーニングアッセイにおける使用のために作製し得る。かかる細胞としては、真核生物および原核生物細胞など(例えば、当該技術分野で知られた哺乳動物細胞および細菌細胞など)が挙げられる。数多くの宿主細胞が、American Type Culture Collection(Manassas, VA)から市販されている。
【0075】
PKC−θタンパク質またはその機能性断片は、当業者によく知られた手法によって単離および精製され得、例えば、クロマトグラフィー、電気泳動および遠心分離手法が挙げられる。かかる方法は当該技術分野で知られており、例えば、Current Protocols in Protein Science, J. Wiley and Sons, New York, NY, Coliganら(編)(2002);およびHarris, E. L. V.およびS. Angal, Protein Purification Applications: A Practical Approach, Oxford University Press, New York, NY (1990) を見ると示されている。
【0076】
組換えにより作製したPKC−θタンパク質またはその機能性断片の精製および検出を補助するため、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を、「タグ化」されるように操作してもよい。以下のいくつかの実施例では、PKC−θタンパク質およびPKC−θキナーゼドメイン(PKC−θタンパク質の機能性断片の非限定的な例)をヒスチジンタグでタグ化している。これにより、his-タグ化タンパク質をニッケル-NTAに結合させ、したがって精製することが可能になる。以下の他の例では、PKC−θタンパク質を、ヘマグルチニン(HA)タグでタグ化し、293細胞内で発現させている。PKC−θタンパク質(またはその機能性断片)の精製および/または検出の補助に使用され得る他の非限定的な市販のタグとしては、限定されないが、mycタグ(抗mycタグ抗体に結合する)、GSTタグ(グルタチオン-Sepharoseに結合する)およびfluタグ(抗fluタグ抗体に結合する)が挙げられる。
【0077】
被験薬剤がPKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性を阻害するか否かを測定するため、使用され得る非限定的なアッセイの1つでは、PKC−θタンパク質(またはその機能性断片)を被験薬剤と、PKC−θタンパク質のキナーゼ活性を阻害するのに充分な時間接触させる。この時間は、選択したインヒビターおよびPKC−θタンパク質またはその機能性断片の性質に応じて異なり得る。かかる時間は、当業者が必要以上に実験することなく容易に決定し得る。本発明の非限定的な被験薬剤は、PKC−θタンパク質(またはその機能性断片)のキナーゼ活性を減少させるものであるが、PKC−θを、例えばPKC−θの基質に結合することにより阻害する被験薬剤、またはPKC−θのキナーゼ活性をいくつかの他の機構によって阻害する被験薬剤もまた想定(envision)される。
【0078】
以下に記載するように、PKC−θは、IgEレセプター架橋時、BMMC内の以下の残基:配列番号:1の695位のセリン、685位のセリン、538位のトレオニンおよび536位のトレオニンの少なくとも1個が誘導的にリン酸化される。したがって、特定の実施形態では、被験薬剤は、PKC−θタンパク質の自己リン酸化を阻害する能力により、PKC−θのキナーゼ活性を阻害することができる(したがって喘息の処置に有用である)薬剤であると決定され得る。ある一部の実施形態では、PKC−θタンパク質の活性化ループのアミノ酸残基の自己リン酸化が阻害される。
【0079】
数多くのアッセイが、被験薬剤がPKC−θタンパク質のキナーゼ活性を阻害するか否かを測定するために利用され得る。PKC−θタンパク質はキナーゼであるため、かかるアッセイは、PKC−θが自身を538位のトレオニン残基において、リン酸塩の形態(例えば、アデノシン三リン酸(ATP)など)またはPKC−θ基質に輸送され得る他の形態のリン酸塩の存在下で、自己リン酸化する能力に対する被験薬剤の効果の測定を含む。同様に、かかるアッセイでは、PKC−θがPKC−θ基質をリン酸塩の形態の存在下でリン酸化する能力に対する被験薬剤の効果を測定し得る。放射能系アッセイおよび非放射能系アッセイ(蛍光系アッセイを含む)を利用してもよい。放射能系アッセイでは、例えば、[γ-32P]-ATPのPKC−θ基質内への取込みが測定され、液体シンチレーション計測により測定する。インビトロ基質リン酸化および抗体系比色検出または他の検出方法を用いる他のアッセイは、種々の供給源、例えば、Promega(Madison, WI;カタログ番号 V7470 および V5330)、Calbiochem(San Diego, CA;カタログ番号 539484、539490、539491)、Panvera Discovery Screening(Madison, WI;カタログ番号 P2747 および P2748;これは、Invitrogen, Carlsbad, CAの子会社である)などから市販品として容易に得られ得る。非放射能系アッセイ(R-X-X-S/Tコンセンサスモチーフを有する基質のリン酸化およびリン酸化された基質の蛍光偏光による測定を含む)としては、Panvera(Madison, WI)から販売されているものが挙げられる。
【0080】
非限定的な一例では、被験薬剤および32P-ATPに曝露されたBMMCは、抗IgEレセプター抗体によって刺激され、IgEレセプターと架橋し得る。架橋の15分後、次いで、該細胞を、溶解し得る。次に、内因性PKC−θを市販の抗体(例えば、Santa Cruz Biotechnology, Inc.(Santa Cruz, CA)から市販されている抗PKC−θ抗体、これは、以下の実施例に記載している)で免疫沈降させ、SDS-PAGE解析により分離し得る。PKC−θ自己リン酸化を阻害する被験薬剤で処理したBMMC由来のPKC−θは、未処理細胞由来のPKC−θと比べ、リン酸化の低下(すなわち、32P-ATPの取込みの低下)を示す。
【0081】
この例の代替例では、BMMCを被験薬剤に、32P-ATPの非存在下で曝露する。抗IgEレセプター架橋の15分後、該細胞を溶解し、内因性PKC−θを免疫沈降させ、SDS-PAGEにより分離する。次いで、SDS-PAGEゲルを、抗ホスホトレオニン抗体(例えば、Zymed Laboratories Inc., San Francisco, CAから市販)を用いてウェスタンブロッティング解析に供する。PKC−θ自己リン酸化を阻害する被験薬剤で処理したBMMC由来のPKC−θは、未処理細胞由来のPKC−θと比べ、リン酸化の低下(すなわち、32P-ATPの取込みの低下)を示す。
【0082】
PKC−θキナーゼ活性はまた、基質をリン酸化するその能力によって測定され得る。したがって、多種多様なオリゴペプチドおよびポリペプチド基質が、PKC−θキナーゼ活性を測定するためのアッセイにおいて利用され得る。本発明に有用なペプチドは、コンセンサスR-X-X-S/Tモチーフ(式中、Rはアルギニンであり、Xは、不明または任意の既知いずれかのアミノ酸であり、Sはセリンであり、Tはトレオニンである)を有する。他のタンパク質基質としては、限定されないが、ミリストイル化アラニン高含有C-キナーゼ基質(MARCKS)(アミノ酸配列 KKRFSFKKSFK (配列番号:5)、式中、下線部のセリン残基がリン酸化される)、PKC−α偽基質(アミノ酸配列 FARKGSLRQKN (配列番号:6)、式中、下線部のセリン残基がリン酸化される)などが挙げられる。ペプチドアレイ技術を用い、生理学的PKC−θの基質に特有の配列を含有し得、かつPKC−θと同じ適用用途を有する治療標的であり得るPKC−θの潜在的基質がいくつか同定された(以下の図9Bおよび実施例4を参照)。これらの基質は、PKC−θに触媒される反応に関与するものであれば、種々の修飾を有していてもよい。
【0083】
PKC−θのキナーゼ活性を測定するためのまた別の方法は、自己リン酸化するその能力を測定することである。以下に記載する実施例では、PKC−θのキナーゼドメインが、驚くべきことに、細菌細胞内で発現させると、リン酸化されていることがわかった。細菌細胞はタンパク質をリン酸化しないため、このリン酸化は、自己リン酸化によるものであった。したがって、本発明はまた、PKC−θタンパク質(またはその機能性断片)を発現する細胞を被験薬剤と接触させること;および被験薬剤がPKC−θタンパク質(またはその機能性断片)の自己リン酸化を該細胞内において低下させたかどうかを測定する(ここで、PKC−θタンパク質(またはその機能性断片)の自己リン酸化を低下させる被験薬剤を、免疫障害の処置に有用な薬剤であると認める)ことにより、哺乳動物において、免疫障害の処置に有用な薬剤を同定するための方法を提供する。ある一部の実施形態では、細胞は細菌細胞(例えば、大腸菌)である。ある一部の実施形態では、免疫障害は喘息である。
【0084】
本発明によれば、細胞は、該細胞内に、PKC−θタンパク質またはその機能性断片をコードするヌクレオチド配列を導入することにより、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を発現可能となり得る。上記のように、ヌクレオチド配列は、細胞がPKC−θタンパク質(またはその機能性断片)を発現可能にする調節配列(例えば、プロモーター配列およびエンハンサー)と作動可能に連結されている。当業者には、PKC−θタンパク質(またはその機能性断片)をコードするヌクレオチド配列の発現を達成するのに必要とされる調節配列の型が、PKC−θタンパク質(またはその機能性断片)をコードするヌクレオチド配列が導入される細胞の型に応じて異なることが理解されよう。例えば、細胞が細菌細胞であれば、細菌細胞由来の調節配列が好ましく使用される。数多くの異なる型の細胞(例えば、昆虫、哺乳動物および細菌のもの)の調節配列が、当該技術分野においてよく知られている(例えば、Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, NY(これは、定期的および周期的に改定される)を参照のこと)。
【0085】
また別の態様において、本発明は、機能性PKC−θタンパク質またはPKC−θキナーゼドメインを被験薬剤と接触させること;および被験薬剤が機能性PKC−θタンパク質またはPKC−θキナーゼドメインの自己リン酸化を低下させたかどうかを測定すること(ここで、機能性PKC−θタンパク質またはPKC−θキナーゼドメインの自己リン酸化を低下させる被験薬剤を、免疫障害の処置に有用な薬剤であると認める)ことにより、哺乳動物において、免疫障害(例えば、喘息など)の処置に有用な薬剤を同定するための方法を提供する。ある一部の実施形態では、該接触はインビトロでなされる。
【0086】
ある一部の実施形態では、機能性PKC−θタンパク質またはPKC−θキナーゼドメインと被験薬剤との接触は、バッファー中でなされる。ある一部の実施形態では、バッファーは、細胞内部で見られるイオン強度と比べて高い全イオン強度を有する(およそ100mM NaCl)。例えば、ある一部の実施形態では、バッファーは少なくとも100mMのイオン強度を有する。ある一部の実施形態では、バッファーは少なくとも200mM、または少なくとも250mMのイオン強度を有する。
【0087】
ある特定の実施形態では、機能性PKC−θタンパク質またはPKC−θキナーゼドメインを被験薬剤と接触させるバッファーは、NaClを含有する。例えば、バッファーは、少なくとも50mM NaClを含有し得る(さらなる塩(すなわち、NaCl以外)がバッファー中に存在し得ることに注意)。ある一部の実施形態では、バッファーは、少なくとも100mM NaCl、または少なくとも150mM NaCl、または少なくとも200mM NaClを含有する。ある一部の実施形態では、バッファーは、少なくとも250mM NaClを含有する。もちろん、当業者には、高イオン強度を有するバッファーを得るために、NaCl以外の塩またはNaClとともに加える塩を使用し得ることが理解されよう。かかる塩の非限定的な一例としては、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウムおよび塩化カリウムなどが挙げられる。
【0088】
本発明によれば、「免疫障害」は、免疫系の細胞(例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、マスト細胞、好中球およびマクロファージ)が正常に機能しない障害を意味する。ある一部の実施形態では、免疫障害は喘息である。他の免疫障害としては、限定されないが、自己免疫疾患(例えば、I型真性糖尿病および慢性関節リウマチなど)、移植片拒絶および呼吸器疾患、例えば、アレルギーなど免疫細胞がある役割を果たすものなどが挙げられる。
【0089】
したがって、本発明は、機能性PKC−θタンパク質のレベルをモジュレートする(例えば、減少させる)薬剤またはPKC−θキナーゼ活性をモジュレートする(例えば、減少させる)薬剤を同定することにより、免疫障害(例えば、喘息など)の処置に有用である薬剤を同定するための方法を提供する。機能性PKC−θタンパク質の産生またはPKC−θキナーゼ活性をモジュレートする(例えば、減少させる)薬剤としては、限定されないが、低分子化合物、化学物質、核酸分子、ペプチドおよびタンパク質(例えば、ホルモンおよび抗体など)が挙げられる。また、該薬剤には、例えば、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、例えば、アンチセンスリボ核酸および低分子干渉性RNA(siRNA)などが含まれ得る。アンチセンスヌクレオチド配列およびsiRNAは、典型的には、標的ヌクレオチド配列の一部分に相補的であるか、あるいは該一部分にハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列を含む。非限定的な一例では、アンチセンスヌクレオチド配列および/またはsiRNAは、ヌクレオチド配列CAGAATATGTTCAGGAACTTTTCCTTCATGAACCCCG (配列番号:7)(これは、T538自己リン酸化に必要とされる695位のセリン残基を含有するアミノ酸残基688〜699に対応するアミノ酸配列 QNMFRNFSFMNP (配列番号:8)をコードする)にハイブリダイズする。別の非限定的な例では、アンチセンスRNAおよび/またはsiRNAは、ヌクレオチド配列GGAGATGCCAAGACGAATACCTTCTGTGGGACACCT (配列番号:9)(これは、536および538位のトレオニン残基(その少なくとも一方がキナーゼ活性に必要とされる)を含有するアミノ酸残基532〜543に対応するアミノ酸配列 GDAKTNTFCGTP (配列番号:10)をコードする)にハイブリダイズする(例えば、図2Bおよび2Cを参照のこと)。アンチセンスヌクレオチド配列は、約20ヌクレオチド長を有し得るが、約20〜約200ヌクレオチド長の範囲であってもよく、該遺伝子標的の全長であってもよい。当業者は、所望の治療効果を奏するように、当該技術分野で知られ、例えば、Methods in Enzymology, Antisense Technology, パートA および B(第313巻および314巻)(M. Phillips編, Academic Press, 1999)に記載のような標準的な手順によって適切な標的および適切な長さのアンチセンス核酸を選択することができよう。本発明に有用なアンチセンス分子の非限定的な例は、Bennettら, 米国特許第6,190,869号(2001年2月20日発行)(引用により本明細書に組み込まれる)に記載されたものである。
【0090】
RNA干渉は、サイレンシングされる遺伝子標的と相同な低分子干渉性二本鎖RNA断片によって引き起こされる配列特異的転写後遺伝子サイレンシングに関する(Lee, N. S.ら, Nature Biotech. 19: 500-505 (2002))。このようなsiRNAは、天然mRNA分子を特異的に標的化し、排除し得る。siRNAを利用してタンパク質の産生を阻害するための方法は、当該技術分野でよく知られており、例えば、PCT国際公開公報WO 01/75164;WO 00/63364;WO 01/92513;WO 00/44895;およびWO 99/32619に開示されている。
【0091】
機能性PKC−θタンパク質の産生をモジュレートする(例えば、減少させる)か、またはPKC−θキナーゼ活性をモジュレートする(例えば、減少させる)ために使用され得る他の薬剤としては、限定されないが、細胞表面膜へのPKC−θの移動をブロックする薬剤などが挙げられる。利用可能な他の薬剤としては、本明細書に記載のスクリーニングアッセイで見られるものが挙げられる。
【0092】
さらなる薬剤、またはPKC−θのインヒビターもしくはアンタゴニストとしては、例えば、PKC−θタンパク質またはPKC−θタンパク質の一部分に特異的に結合する抗体および低分子などが挙げられる。「特異的に結合する」により、本発明の抗体が、PKC−θタンパク質(またはその一部分)を認識し、少なくとも10-5Mの解離定数(KD)で、または少なくとも10-6MのKDで、または少なくとも10-7MのKDで、または少なくとも10-8MのKDで、または少なくとも10-10MのKDで結合することが意図される。結合および結合親和性を測定するための標準的な方法は、よく知られている。したがって、PKC−θタンパク質に特異的に結合する抗体が本発明において提供される。
【0093】
本発明で使用されるPKC−θタンパク質に特異的に結合する抗体は、限定されないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、遺伝子操作された抗体、二重特異性抗体、抗体断片(限定されないが、「Fv」、「F(ab')2」、「F(ab)」および「Dab」などが挙げられる)および抗体の反応性部分を表す単鎖であり得る。上記の抗体形態の各々の作製方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0094】
例えば、ポリクローナル抗体は、精製された酸哺乳動物PKC−θタンパク質を種々の動物に注射し、血清中に産生された抗体を単離することにより得られ得、例えば、Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons(これは、定期的および周期的に改定される)に、より詳細に記載されている。抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、その作製方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0095】
特異的モノクローナル抗体は、市販品として入手してもよく、あるいは、Kohler および Milstein, Eur. J. Immunol. 6: 511-519 (1976)の手法(ならびにその改善法および修正変形法)によって調製してもよい。簡単には、かかる方法としては、所望の抗体を産生できる不死化細胞株の調製などが挙げられる。不死化細胞株は、選択した抗原を動物(例えば、マウスなど)に注射し、B細胞を該動物の脾臓から回収し、該細胞を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを形成することにより作製され得る。単一のコロニーを選択し、当該技術分野において常套的な手順により、所望のエピトープに対する高親和性抗体を分泌する能力について試験し得る。
【0096】
あるいはまた、抗体は、発現ライブラリーから、当該技術分野で知られた種々の方法によって組換えにより作製したものであってもよい。例えば、cDNAを、リンパ球、好ましくはBリンパ球(好ましくは、所望の抗原を注射した動物由来)から単離したリボ核酸(RNA)から作製し得る。cDNA(例えば、種々の免疫グロブリン遺伝子をコードするものなど)は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し、適切なベクター、例えばファージディスプレイベクターなどにクローン化し得る。かかるベクターは、細菌懸濁液中(好ましくは、大腸菌を含むもの)に添加し得、対応する抗体断片(ファージ粒子の表面に結合している)をディスプレイするバクテリオファージまたはファージ粒子が生成し得る。サブライブラリーを、所望の抗体を含むファージ粒子を、当該技術分野で知られた方法によって(例えば親和性精製手法など(例えば、パニングなど)が挙げられる)スクリーニングすることにより構築してもよい。次いで、サブライブラリーを利用して、抗体を所望の細胞型(例えば、細菌細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞など)から単離し得る。本明細書に記載の組換え抗体を作製するための方法およびその修正変形法は、例えば、Griffiths, W. G.ら, Ann. Rev. Immunol. 12: 433-455 (1994);Marks, J. D.ら, J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1991);Winter, G. および Milstein, C., Nature 349: 293-299 (1991);Hoogenboom, H. R. および Winter, G., J. Mol. Biol. 227: 381-388 (1992)を見るとよい。
【0097】
本発明における使用のため、PKC−θタンパク質を、まず、抗体の生成に使用する前に、当業者に同様によく知られ、かつ本明細書において先に記載した手法によって精製するのがよい。
【0098】
本発明のさらなる実施形態は、被験薬剤をプレスクリーニングすることにより被験薬剤の数を絞るための非限定的な方法を提供する。例えば、PKC−θタンパク質またはPKC−θ遺伝子発現を指令するプロモーターに結合する能力を有する被験薬剤のみが、本発明の機能性アッセイに使用され得る。
【0099】
被験薬剤をまず、PKC−θタンパク質に結合する能力でスクリーニングする非限定的な一例の場合では、精製PKC−θタンパク質を単離し、被験薬剤のスクリーニングに使用し得る。例えば、精製PKC−θタンパク質を、固相表面(例えば、セファロースビーズまたはプラスチック)上に固定化し、被験薬剤を、固定化された精製PKC−θタンパク質と接触させ得る。代替例では、PKC−θタンパク質を被験薬剤に曝露後、PKC−θタンパク質に対する抗体を添加してPKC−θタンパク質との免疫沈降に使用し、被験薬剤がPKC−θタンパク質と共免疫沈降したかどうかを測定することができる。PKC−θタンパク質に結合できる被験薬剤のみを、次に、機能性アッセイに使用し、これらが、細胞(例えば、マスト細胞またはT細胞(例えば、TH1もしくはTH2ヘルパーT細胞)など)において、PKC−θキナーゼ活性をモジュレート(例えば、低下)し得るかどうか、または機能性PKC−θタンパク質の量をモジュレート(例えば、低下)し得るかどうかを測定する。
【0100】
被験薬剤をまず、PKC−θプロモーターに結合する能力でスクリーニングする非限定的な一例の場合では、PKC−θプロモーター配列を、DNAマイクロチップアレイのようにして固定化し得る。次いで、異なる被験薬剤を、該プロモーターに結合する能力でスクリーニングし得る。PKC−θプロモーターに結合できる被験薬剤のみを、次いで、機能性アッセイに使用し、これらが、細胞(例えば、マスト細胞またはT細胞(例えば、TH2 T細胞)など)において、機能性PKC−θタンパク質の量をモジュレート(例えば、低下)し得るかどうかを測定する。
【0101】
さらなる態様において、本発明は、PKC−θプロモーターと作動可能に連結されたレポーター遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を被験薬剤と接触させること、およびレポーター遺伝子産物の産生を被験薬剤が低下させたかどうかを測定することを含み、ここで、レポーター遺伝子産物の産生を低下させる被験薬剤を喘息の処置に有用な薬剤であると認める、哺乳動物(例えば、ヒト)において喘息の処置に有用な薬剤を同定するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、PKC−θプロモーターと作動可能に連結されたレポーター遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、細胞(例えば、マスト細胞またはT細胞(例えば、TH1もしくはTH2ヘルパーT細胞)など)内に存在する。
【0102】
PKC−θプロモーターのヌクレオチド配列は、当該技術分野で認められた方法によって決定される。かかる方法の非限定的な一例は、ゲノムライブラリー(例えば、YACヒトゲノムライブラリー)を目的のプロモーター配列について、PKC−θのヌクレオチド配列をプローブとして用いてスクリーニングし、次いで、5'にプローブが結合したヌクレオチド配列を単離することである。適切なプロモーター配列を決定するための方法の別の非限定的な一例は、ヒトゲノムDNAのサザンブロッティング解析を行うことであり、分離されたヒトゲノムDNAをプローブ(例えば、ヒトPKC−θタンパク質またはその一部分をコードするヌクレオチド配列を含むプローブ)で電気泳動によりプローブし、次いで、cDNAプローブがハイブリダイズする位置を決定することにより行う。プローブがハイブリダイズするバンドが決定されたら、このバンドを単離し(例えば、ゲルの切断)、配列解析に供し得る。これにより、ヌクレオチドATG(すなわち、転写開始部位)の5'ヌクレオチド断片の検出が可能になる。このヌクレオチド断片は、PKC−θのプロモーターであり、シーケンシング解析に供し得る。ヌクレオチド断片は、およそ500〜1000ヌクレオチド長であり得る。かかる配列と少なくとも約70%、少なくとも約80%または少なくとも約90%同一性を有し、プロモーターとしての機能を果たす(例えば、本明細書に記載のPKC−θタンパク質をコードする遺伝子の発現を指令する)ヌクレオチド配列もまた、本発明に包含される。
【0103】
多種多様なレポーター遺伝子を、上記のように、PKC−θプロモーターと作動可能に連結させ得る。かかる遺伝子は、例えば、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β-グルクロニダーゼ、アルカリホスファターゼおよび緑色蛍光タンパク質または当該技術分野で知られた他のレポーター遺伝子産物をコードしたものであり得る。
【0104】
本発明の一形態では、PKC−θプロモーターと作動可能に連結されたレポーター遺伝子をコードするヌクレオチド配列を、宿主細胞内に導入する。上記のように、数多くの宿主細胞が本発明において用いられ得る。かかるヌクレオチド配列を、まず、本明細書において先に記載した適切な、あるいは所望の組換え発現ベクター内に挿入し得る。
【0105】
本発明のこの形態におけるベクターは、哺乳動物細胞におけるPKC−θプロモーターからのレポーター遺伝子の発現に必要な、または望ましい他の公知の遺伝要素(調節エレメントなどが挙げられる)を含み得る。例えば、ベクターは、プロモーターとインビボで協働し、例えばレポーター遺伝子のインビボ転写を達成する任意の必要なエンハンサー配列を含み得る。ヌクレオチド配列を宿主細胞内に導入する方法は、PKC−θタンパク質の作製について先に記載したものと同一である。
【0106】
PKC−θプロモーターと作動可能に連結されたレポーター遺伝子をコードするヌクレオチド配列を被験薬剤と接触させた後、被験薬剤がレポーター遺伝子産物の産生を阻害したかどうかを測定する。この終点は、レポーター遺伝子産物の量または活性のいずれかを定量することにより決定され得る。定量方法は、使用するレポーター遺伝子に依存するが、
レポーター遺伝子産物に対する抗体を用いる酵素結合イムノソルベント検定法の使用を伴ってもよい。さらに、アッセイは、化学発光、蛍光、放射性崩壊などを測定するものであり得る。被験薬剤がレポーター遺伝子産物の産生を阻害する場合、これは、喘息を処置するための薬剤に分類される。
【0107】
本明細書に記載のような、レポーター遺伝子産物の活性または量を測定するためのアッセイは、当該技術分野で知られており、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編, John Wiley & Sons)(これは、定期的および周期的に改定される)に記載されている。本明細書に記載のレポーター遺伝子産物のアッセイのさらなる記載は、例えば、以下の刊行物:ルシフェラーゼについては、Nguyen, V. T.ら, Anal. Biochem. 171: 404-408 (1988)を参照;β-ガラクトシダーゼについては、例えば、Martin, C. S.ら, Bioluminescence and Chemiluminescence: Molecular Reporting with Photons pp. 525-528(J. W. Hastingsら編, John Wiley & Sons, 1997);Jain, V. K.およびMagrath, I. T., Anal. Biochem. 199: 119-124 (1991)を参照;β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼおよびアルカリホスファターゼについては、例えば、Bronstein, I.ら, Bioluminescence and Chemiluminescence: Fundamentals and Applied Aspects, pp. 20-23(A. K. Campbellら編, John Wiley & Sons, 1994)を参照;クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼについては、Cullen, B., Methods. Enzymol. 152: 684 (1987);Gorman, C.ら, Mol. Cell. Biol. 2: 1044 (1982);Miner, J. N.ら, J. Virol. 62: 297-304 (1988);Sleigh, M. J., Anal. Biochem. 156: 251-256 (1986);Hruby, D. E.およびWilson, E. M., Methods Enzymol. 216: 369-376 (1992)を参照)を見るとよい。
【0108】
PKC−θ活性選択的に阻害する低分子もまた、喘息の処置における治療剤である。選択性は、PKC−θの阻害が他のPKCイソフォームよりも約20倍大きいIC50によって規定され得る。(IC50は、インヒビター標的の活性の50パーセントをもたらすインヒビターの濃度であると定義する。)
【0109】
本発明の別の態様において、本発明は、喘息を患うか、または喘息症状を患う哺乳動物(例えば、ヒト)に、PKC−θの触媒活性を低下させるか、または機能性PKC−θタンパク質の産生を低下させる薬剤の治療有効量を投与することを含む、喘息の処置方法を提供する。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。ある一部の実施形態では、喘息はIgE媒介性喘息である。
【0110】
「処置(treatment)」、「処置する」または「処置される」は、本明細書で使用する場合、喘息の少なくとも1つの症状または合併症を予防、低減または排除することを意味する。「治療有効量」は、機能性PKC−θタンパク質の産生を阻害または減少、またはPKC−θタンパク質のキナーゼ活性を阻害または減少させ、臨床的に有意な応答を引き起こすことができる薬剤の量を表す。臨床的に有意な応答としては、限定されないが、処置された状態の改善または状態の抑制の改善などが挙げられる。本発明にしたがって投与される薬剤の具体的な用量は、もちろん、その場の具体的な周囲状況(投与する薬剤、処置対象の具体的な喘息および類似の条件を含む)によって決定される。喘息は、例えば、気道過剰応答を減少させること、粘液(mucus)過剰生成を減少させること、血清IgEレベルを減少させることまたは気道好酸球増加症を減少させることにより処置する。
【0111】
薬剤は、哺乳動物に多種多様な経路で、例えば、経腸的、非経口的および局所に投与され得る。例えば、該薬剤は、経口、鼻腔内、吸入、筋肉内、皮下、腹腔内、血管内、静脈内、経皮、皮下または任意のその組合せで投与され得る。
【0112】
薬剤は、薬学的に許容され得る担体にて投与され得る。薬学的に許容され得る担体およびその配合は、よく知られており、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(第20版, A. Gennaro(編), Lippincott, Williams & Wilkins, 2000)に一般的に記載されている。ある一部の実施形態では、薬学的に許容され得る担体はエーロゾルの形態である。当該技術分野で知られた任意の好適な薬学的に許容され得る担体が使用され得る。担体は、固体、液体または固体と液体の混合物であり得る。液体または固体と液体の混合物として存在する場合、薬剤を効率的に可溶化する担体が好ましい。担体は、カプセル、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ、懸濁剤、エマルジョンもしくはシロップの形態または他の公知の形態をとり得る。担体は、香料剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁剤、結合剤、安定剤、錠剤崩壊剤およびカプセル化材料としての機能を果たす物質を含み得る。固体または液体の担体は、エーロゾルの形態をとり得、例えば、該薬剤を吸入するためのネブライザーにて使用した場合、該薬剤をその所望される位置に送達し得る。
【0113】
全身性経口投与のための錠剤は、当該技術分野で知られた賦形剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、糖類(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール)、セルロース(例えば、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、ゴム(例えば、アラビア、トラガカント)などを、崩壊剤(例えば、トウモロコシ、デンプンまたはアルギン酸など)、結合剤(例えば、ゼラチン、コラーゲンまたはアカシアなど)および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなど)とともに含み得る。散剤では、担体は、微細に細分された固体であり、これを、有効量の微細に細分されたインヒビター剤と混合する。液剤、懸濁剤またはシロップでは、有効量のインヒビター剤を、担体、例えば、滅菌水, 生理食塩水または有機溶媒(例えば、水性プロピレングリコールなど)に溶解または懸濁する。他の組成物もまた、インヒビターを水性デンプンもしくはナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液または当該技術分野で知られた適当な油に分散させることにより作製し得る。
【0114】
薬剤は、哺乳動物に治療有効量で投与する。かかる量は、喘息の処置または喘息症状の低減にに有効である。この量は、用いる薬剤の活性、他のいずれかの喘息沈静剤を共投与したかどうか、およびかかる喘息沈静剤の性質、喘息の性質および患者の健康に応じて異なり得る。かかる量は、当業者によって決定され得るが、典型的な治療有効量としては、約10 mg/kg/日〜約100 mg/kg/日が挙げられる。もちろん、具体的な症例に応じて、より低い用量またはより高い容量が必要とされることもある。該薬剤は、担体と組み合わせる場合、約1重量パーセント〜約99重量パーセントの量で存在し得、残部が薬学的に許容され得る担体で構成される。
【0115】
ある特定の実施形態では、PKC−θ産生または触媒活性の該薬剤またはインヒビターは、例えば、1種類以上の喘息沈静剤を含む組成物にて共投与され得る。かかる薬剤は当該技術分野で知られており、例えば、β-アドレナリン作用剤(イソプロテレノール、エピネフリン、メタプロテレノールおよびテルブタリンなど);メチルキサンチン類(テオフィリン、アミノフィリンおよびオクストリフィリンなど);コルチコステロイド類(ベクロメタゾン、ベータメタゾン、ヒドロコルチゾンおよびプレドニゾンなど);抗コリン作用薬(アトロピンおよび臭化イプラトロピウムなど);抗ヒスタミン薬(テルフェナジンおよびアステミゾールなど);カルシウムチャネル遮断薬(ベラパミル、ニフェジピンなど);およびマスト細胞安定剤(クロモリンナトリウムおよびネドクロミルナトリウムなど)が挙げられる。
【0116】
ある一部の実施形態では、該薬剤が核酸分子である。ある特定の実施形態では、核酸分子はリボ核酸分子である。ある一部の実施形態では、リボ核酸分子は、配列番号:3に示すヌクレオチド配列の一部分に相補的であるヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、該薬剤は、PKC−θタンパク質をコードするRNAの量を低下させる。ある一部の実施形態では、該薬剤は、PKC−θタンパク質をコードするRNAの翻訳を阻害する。特定の実施形態では、該薬剤は、PKC−θタンパク質またはその一部分に特異的に結合する抗体(例えば、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化またはキメラ抗体)である。
【0117】
さらなる態様において、本発明は、内因性PKC−θの発現を欠く細胞を特色とする。ある特定の実施形態では、該細胞はマスト細胞である。かかる細胞は、例えば、以下に記載するPKC−θノックアウトマウスから単離されたものであり得る(Sunら, Nature 404: 402-407 (2000)も参照のこと)。マスト細胞を単離するための方法は、よく知られており(例えば、以下に記載する方法を参照)。また、内因性PKC−θタンパク質の発現を欠くかかる細胞は、ヒト細胞であってもよく、PKC−θをコードする遺伝子が、該細胞がもはや内因性PKC−θを発現しなくなるように欠失または変異させたものである。
【0118】
内因性PKC−θタンパク質の発現を欠くマスト細胞は、例えば、被験薬剤が喘息の処置に有用に有用な薬剤であるか否かを試験するために有用である。以下の実施例に記載のように、ヘマグルチニン(HA)タグ化PKC−θは、293細胞内で発現された。HA-タグ化PKC−θは、マスト細胞内で発現され得、HA-タグ化PKC−θタンパク質の活性および/または量は、これらの細胞内で被験薬剤の存在下で測定され得る。しかしながら、マスト細胞は内因性PKC−θを発現するため、一部の被験薬剤は内因性PKC−θタンパク質に影響し、それにより、HA-タグ化タンパク質に対する効果が減弱される。この減弱は、内因性PKC−θタンパク質発現を欠き、HA-タグ化PKC−θタンパク質を発現するマスト細胞では起こらない。またさらに、かかる細胞は、HA-タグ化PKC−θに対して野生型PKC−θとは異なる影響を及ぼす被験薬剤のスクリーニングに有用である。
【0119】
ある一部の実施形態では、該細胞は外因性PKC−θまたはその断片を発現する。次に、上記の組成物および方法を説明する具体例について述べる。これらの例は好ましい実施形態を説明するために示すものであり、これによって、本発明の範囲の限定を意図しないことを理解されたい。
【0120】
実施例1
ヒトT細胞のTCR副刺激でのPKC−θ膜移行および活性ループリン酸化
PKC−θヌル(すなわち、PKC−θノックアウト)マウスは生存可能であるが、成熟T細胞は、増殖、IL-2産生およびNF-κBの活性化において欠損している(Sunら、Nature 404:402-407(2000))。ヒト培養マスト細胞(HCMC)において、PKC活性は、IgE受容体架橋後、迅速に(<5分間)膜に局在化することが実証された(Kimataら、BBRC 3:895-900(1999))。PKC−θはTCR媒介シグナル伝達において中心的な役割を果たし、ラット好塩基球性白血病株であるRBL-2H3細胞中で実証された効果を有するので(Liuら、J.Leukocyte Biol.69:831-840(2001))、BMMC、腹膜マスト細胞、およびT細胞におけるPKC−θの活性化および機能を調べた。
【0121】
TCR刺激後、PKC−θは、最大4時間留まる超分子的な活性化複合体の中心領域に迅速に移行する、(Huangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:9369-9373(2002))。この移行がPKC−θタンパク質のリン酸化の変化に対応するか否かを決定するために、ヒトT細胞を精製し、PKC−θ移行および自己リン酸化を分析した。
【0122】
T細胞を精製するために、単核細胞調製物を、Biological Specialties(Colmar,PA)から入手した。細胞を、Ficoll-Histopaque(例えば、Sigma Chemical Co.,St.Louis,MOから市販されている)上に重層し、バフィーコートを遠心分離後に収集した。細胞をPBS中で数回洗浄し、RPMI/10%FCS中で、106/mlの密度で培養した。T細胞をネガティブ選択によって精製した(Dynal Biotech,Oslo,Norway)。精製したT細胞を、可溶性抗CD3ε(5μg/ml、10μg/ml抗mIgGと架橋)および可溶性抗CD28(5μg/ml)を用いて、0、2、10、45、および60分間刺激した(抗CD3εと抗CD28の両方は、BD Biosciences,San Jose,CAから市販されている)。
【0123】
分析のために、刺激された細胞を遠心分離によって収集し、氷冷PBS中で1回洗浄した。細胞ペレットを100μlの低張性溶解緩衝液[20mM Tris-HCl、pH 7.5、2mM EDTA、5mM エチレングリコール−ビス(B−アミノ−エチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、1mLあたり各10μgのロイペプチンおよびアプロチニン、プロテアーゼカクテルおよびホスファターゼ阻害剤]中に再懸濁することによって、全細胞溶解物を調製した。25ゲージ針を30回通過させることによってこの細胞懸濁液を剪断し、次いで、280×gで7分間遠心分離して核を沈殿させた。分析のためのアリコートを確保した後、全細胞抽出物を高速遠心分離(16,000×g)によって清澄化した。細胞質ゾル抽出物を収集し、膜ペレットを低調性溶解緩衝液中で1回洗浄し、次いで、1% NP-40界面活性剤を加えた同じ緩衝液中で、氷上にて30分間、溶解のために再懸濁した。界面活性剤溶解性膜画分を、もう1回の高速遠心分離によって得、残存している粒子画分は、膜ミクロドメインを含む界面活性剤不溶性膜画分(DI画分)であった。このDI画分を、分析のためにSDS-PAGEサンプル緩衝液中で煮沸した。細胞下タンパク質画分を、4〜20% SDS-PAGEによって分析し、ニトロセルロースに転写し、5% blotto/TBS-Tween.05%中の抗ホスホT538PKC−θ特異的抗体(Cell Signaling Technology,Inc.(Beverly,MA)から市販されている)でブロットイムノブロットを行った(図1Aを参照のこと)。
【0124】
次に、ニトロセルロースブロットを剥離し、抗PKC−θ E7(Santa Cruz Biotechnology,Inc.,Santa Cruz,CA)で再プローブした(図1Bを参照のこと)。最後に、図1Cに示されるように、すべてのレーン中に等しくロードしたことを示すために、ブロットを再度剥離し、次いで抗アクチン(Santa Cruz Biotechnology,Inc.から市販されている)を用いた。
【0125】
図1Aに示されるように、PKC−θは、TCR刺激(CD3およびCD28刺激を経由する)の後で、キナーゼの活性化ループ中で、538位のスレオニン残基上で自己リン酸化される。この自己リン酸化事象は、超分子活性化複合体の中心領域へのPKC−θの移行と同時発生する(図1Bを参照のこと)。図1Cにおいて示されるように、ほぼ等量のアクチンがすべての時間処理において見い出された。
【0126】
従って、これらの結果は、超分子活性化複合体の中心領域へのPKC−θの移行が、アミノ酸残基スレオニン538上でのキナーゼの活性化ループの同時の誘導性リン酸化と一致することを示した。
【0127】
実施例2
PKC−θ活性化ループ自己リン酸化はキナーゼ活性のために必要とされる
実施例1に記載されたように、PKC−θ膜移行は、ヒトT細胞のT細胞受容体副刺激の際にアミノ酸残基スレオニン538上でキナーゼの活性化ループの誘導性リン酸化と一致した。活性化ループのリン酸化は、必要とされるキナーゼ機能であると報告されている(Liuら、Biochemical Journal,2002,361-255-265)。この報告を確認するために、PKC−θ全長cDNAを、C末端赤血球凝集素(HA)タグエピトープタグとともにプラスミドpcDNA3(Invitrogenから市販されている)にサブクローン化し、C末端HAタグエピトープタグ化全長(WT)PKC−θ(ヌクレオチド配列の配列番号11;アミノ酸配列の配列番号12)を作製した。HAタグ化キナーゼ不活性PKC−θもまた、アミノ酸409位のリジンをトリプトファンに変異させることによって生成した。このキナーゼ不活性化K409W変異は、PCR産物をサブクローン化することによって生成し、配列決定によって確認し(ヌクレオチド配列の配列番号13;アミノ酸配列の配列番号14)、pcDNA3発現ベクターにサブクローン化した。ヒト胚性腎臓293細胞(American Type Culture Collection,Manassas,VAから市販されている)を、脂質を使用して(Mirus Corporation,Madison WIから市販されているMirus TransIT-LT1試薬を使用する)、これらの発現構築物で2連で一過性にトランスフェクトした。トランスフェクトの24時間後または72時間後に、ウェスタンブロッティング分析および活性のために細胞を収集した。
【0128】
収集した細胞を低張性溶解条件で溶解し、核を遠心分離した(実施例1におけるより詳細な方法を参照のこと)。1つの複製の全細胞抽出物をSDS-PAGE上で泳動し、ニトロセルロースに転写し、抗ホスホT538PKC−θ特異的抗体(Cell Signaling Technology)で最初にプローブし、次いで、剥離し、抗HA-抗体(Santa Cruz)で再プローブした。図2Aに示されるように、キナーゼ不活性化全長PKC−θタンパク質が存在していたが(抗HA抗体を用いるその染色によって決定される)、しかし538位におけるスレオニン残基上でリン酸化されなかった(抗pT538PKC−θ抗体を用いる染色のその欠如によって決定される)。従って、図2Aにおけるトランスフェクション実験において示されるように、野生型キナーゼ活性化ループが効果的にリン酸化されるのに対して、キナーゼ不活性化バージョン(タンパク質中の409位の触媒性リジンをトリプトファンに変異させることによって生成する、すなわち、名称K409W)はリン酸化されない。他のPKCアイソフォームからの証拠は、活性化ループ(すなわち、538位のスレオニン)におけるリン酸化が、他のPKCアイソフォームからの証拠に基づくと、PDK-1キナーゼによるものであったかもしれないことを示したが、本明細書に提示した結果は、ヒト胚性293腎臓細胞に存在する内因性PDK-1細胞がPKC−θ活性化ループをリン酸化しないことを示す。活性化ループの自己リン酸化もまた、細菌で発現された活性キナーゼドメインのホスホブロット分析、および精製キナーゼドメインの分析によって証明された(データ示さず)。
【0129】
次に、同じ複製(すなわち、図2Aにおいて使用したもの)からの細胞質ゾル抽出物を、ペプチド基質を使用して、キナーゼ活性について分析した。細胞質ゾル抽出物を、30μlの最終容量中、5μgタンパク質を用いて、ADBII緩衝液(20mM MOPS pH 7.2、25mM β-グリセルアルデヒド、1mM オルトバナジウム酸ナトリウム、1mM DTT、1mM CaCl2)中の各々最終濃度、83μM ビチオン化ペプチド(アミノ酸配列FARKGSLRQ;配列番号15),166μM ATP、0.5μlのP33 ATP(比活性3000 Ci/mmol、10 mCi/ml)、84ng/μl ホスファチジルセリン、8.4ng/μl ジアシルグリセロールとともに、室温で30分間、96ウェルプレート中でインビトロでキナーゼ活性について分析した。キナーゼアッセイを、EDTAを含む緩衝液で停止し、洗浄およびプレートリーダー中での放射能検出のためにストレプトアビジンコートしたシンチプレートに移した。ペプチドのみおよびキナーゼのみの反応を、バックグラウンドとして、最終的な計数から減算した。
【0130】
図2Bに示されるように、キナーゼ不活性化全長PKC−θタンパク質は、野生型PKC−θタンパク質と比較して、ヒト胚性腎臓293細胞へのトランスフェクションの24時間後と72時間後の両方で、タンパク、劇的に低いキナーゼ活性を有した。最後に、野生型PKC−θおよびキナーゼ不活性型PKC−θの、内因性基質IKK(IκBαキナーゼ)のリン酸化を生じる能力を決定した。これを行うために、2連のセットからの細胞を、1%NP-40溶解緩衝液中で溶解し、界面活性剤不溶性膜画分をニトロセルロースに移した。このニトロセルロースブロットを、最初に抗pIKKα/βでプローブし、次いで剥離し、抗IKKαで再プローブし、最後に、剥離し、抗IKKβで再プローブした(すべての抗体はCell Signaling Technologyからである)。図2Cに示されるように、キナーゼ不活性化PKC−θではなく野生型PKC−θが、IKK-βのリン酸化を生じた。
【0131】
図2Bおよび2Cに示される結果は、活性化ループ自己リン酸化(538位のスレオニンにおいて)が、合成基質を使用するインビトロ細胞溶解物キナーゼ活性(図2B)および内因性IKKのリン酸化(図2C)によって示されるように、PKC−θ活性およびシグナル伝達のために必要とされることを実証する。これらの結果は、野生型キナーゼがIKKリン酸化を誘導するが、キナーゼ不活性バージョンはそうすることに失敗することを示す。これらの結果は、治療的調節のための独特かつ新規な機構としてのPKC−θ活性化ループを同定した。
【0132】
実施例3
PKC−θキナーゼドメインの触媒の機構
新規なリン酸化されたPKC−θキナーゼドメイン(PKC−θ KD)の触媒の機構を評価するための研究を次に実行した。これを行うために、触媒的に活性なPKC−θ KDを発現させ、リン酸化部位の分析のために精製した。これらの研究のために、PKC−θのキナーゼドメイン(PKC−θ KD;アミノ酸残基362〜706)を最初に発現し、精製した。これを行うために、PKC−θ KD(アミノ酸残基362〜706)を、pET16b発現ベクターにクローン化し、C末端にヘキサヒスチジンタグを導入した。ヒスタグ化PKC−θ KDのアミノ酸配列は配列番号63に提供される(配列番号63のN末端メチオニン残基およびグリシン残基は全長PKC−θには存在しないことに注意のこと)。このプラスミドを使用して、過剰発現のために大腸菌株BL21-DE3を形質転換した。37℃で0.4の光学密度の10リットル細胞培養を、0.1mM IPTGを用いて3時間、25℃で誘導し、その後これらを収集し、緩衝液(25mM Tris pH 8.0、25mM NaCl、5mM 2−メルカプトエタノール、5mM イミダゾール、50μM ATPおよびプロテアーゼ阻害剤)中に再懸濁し、マイクロフルイダイザーを使用して溶解した。
【0133】
この溶解物を、20mLのニッケル-NTA樹脂に、1時間、4℃で適用した。続いて、この樹脂をクロマトグラフィーカラムとして流し込み、25mM イミダゾールを含む同じ緩衝液で広範囲にわたって洗浄した。樹脂に結合したタンパク質を、200mM イミダゾール緩衝液で溶出した。タンパク質をアニオン交換HQにすぐにロードし、このカラムを、25mM Tris pH 8.0、25mM NaCl、5mM DTT、50μM ATPで洗浄し、その後25mM〜500mM NaClの直線状勾配の適用によって溶出した。PKC−θ KDを含む画分をSDS-PAGEによって選択し、プールし、25mM Tris pH 8.0、5mM DTTで2倍に希釈し、ヘパリンクロマトグラフィーカラムにロードした。素通り画分をヒドロキシアパタイトカラムに適用し、25mM Tris pH 8.0、50mM NaCl、5mM DTTで広範囲にわたって洗浄した。0〜100mMのリン酸ナトリウムの直線状勾配は標的タンパク質を溶出した。次いで、タンパク質を、Superdex 200サイズ排除クロマトグラフィーカラム上でモノマーとしてサイズ分画し、25mM Tris pH 8.0、50mM NaCl、5mM DTTに対して4℃で一晩透析し、濃縮した。
【0134】
次に、質量スペクトル分析を実行した。これを行うために、PKC−θ KD(0.25 μg/μl中で、50mM Hepes pH 7.5、5mM MgCl2、5mM DTT、10% グリセロールおよび0.0025% Brij-35、)を、10% Tricineゲル(Invitrogen)上で泳動し、クマシーブルーで染色した。ゲルを切断し、ProGest研究用ロロボット(Genomics Solutions,Ann Arbor,MI)中で、トリプシン(Promega,Madison,WI)を用いて、ゲル内消化に供した。サンプル量をSpeedVacによって減少し、最終量の約30μlまで0.1M 酢酸で再構成した。次いで、ペプチドを、ナノLC/MS/MS分析に供した。手短に述べると、サンプルを、10μm C18ビーズ(YMC,Wilmington,NC)を充填した75μm×10cm IntegraFritカラム(New Objectives,Woburn,MA)に注入した。HPLC勾配は、45分間にわたって、250nL/分の流速で、4〜60%溶媒B(溶媒A、0.1M酢酸/1% ACN;溶媒B、0.1M 酢酸/90% ACN)まで直線状に増加した。質量スペクトルを、LCQ DECA XPイオントラップ質量スペクトル測定装置(ThermoFinnigan,San Jose,CA)を使用して収集した。MS/MSデータを、Sequestアルゴリズム(ThermoFinnigan,San Jose,CA)を使用して、セリン、スレオニンおよびロチロシン上の差別的なリン酸化修飾についてPKC−θに対して検索した。
【0135】
PKC−θ KDによる触媒の機構の分析において補助するために、部位特異的変異誘発を使用して(Stratagene,La Jolla,CAから市販されているキットを使用する)、PKC−θ KD発現構築物中で種々の変異を作製した。これらの変異の配列を、配列決定によって確認した。この構築物を、野生型PKC−θ KDの発現のために上記に記載されるのと同様に発現し、等価量の大腸菌溶解物を、Bradfordアッセイ(BioRad,Hercules,CAから市販されている)によるタンパク質の見積もりの後で、ブロットイムノブロットおよびキナーゼアッセイによって分析した。手短に述べると、溶解物を、4〜20% SDS-PAGEによって分析し、ニトロセルロースに転写し、5% blotto/TBS-Tween 0.05%中のCell Signaling Technology (Beverly,MA)から市販されている抗pT538PKC−θ抗体またはInvitrogen(Carlsbad,CA)から市販されている抗His抗体のいずれかを用いてブロットイムノブロットを行った。
【0136】
質量スペクトル研究は、PKC−θ KDがリン酸されることを明らかにした。セリン-スレオニンキナーゼが存在しない大腸菌中でPKC−θ KD発現が実行されたとき、質量スペクトルの所見は、発現されたキナーゼによる自己リン酸化の結果である。アミノ酸配列に基づく予想分子量は41,615ダルトンであるが、、ESI-MSによる分子量の決定は42,092ダルトンおよび42,173ダルトン(各々の種が50%)であった。これは、大腸菌における5個または6個のアミノ酸の自己リン酸化を示す。図3A〜3Dは、PKC−θ KD自己リン酸化の特徴を示す概略図である。図3Aが示すように、新規なC2ドメインがタンパク質のアミノ末端に位置し、続いて2つのコファクター結合C1ドメイン、および次いでカルボキシ末端キナーゼドメインがある。保存性リン酸化部位(すなわち、538位のスレオニン、676位のセリン、685位のセリン、および695位のセリン)は図3Aの上に示され、一方PKC−θ KD N末端およびC末端アミノ酸残基(それぞれ362位および706位)はこの図の下に示される。
【0137】
質量分析スペクトル分析において、m/z比はペプチドの分子量/電荷の比であり、z(電荷)は1である。従って、m/z比は、ペプチドフラグメントの分子量を与える。質量分析生成物イオンスペクトル分析は、Ser695がリン酸化部位であることを示した。
【0138】
従って、図3Bは、m/z 705.52におけるペプチドNFpSFMNPGMER(693〜703位に広がる)の生成物イオンスペクトルを示し、これはSer695がリン酸部位であることを確証した。図3Cは、m/z 760.48におけるペプチドALINpSMDQNMFR(681〜692位に広がる)の生成物イオンスペクトルを示し、これはSer685がリン酸部位であることを確証した。図3Dは、m/z 1159.71におけるペプチドTNTFCGTPDYIAPEILLGQK(536〜555位に広がる)の生成物イオンスペクトルを示す。図3Dの生成物イオンスペクトルは、このペプチド上の1つのリン酸を示し、これはまた、リン酸化部位がThr536またはThr538のいずれかであることを示した。540位のシステイン残基(図3Dにおいて#によって示される)はヨードアセトアミドによってアルキル化されていることに注意のこと。
【0139】
従って、疎水性モチーフのSer695およびターンモチーフのSer685を自己リン酸化部位として同定した(それぞれ図3Bおよび3Cを参照のこと)。質量スペクトル測定は、Ser662およびSer657ターンモチーフ残基における任意のリン酸化を検出しなかった。他のPKCターンモチーフとの相同性に基づくと、Ser676は自己リン酸化されそうであるが、このことはこれらの研究において明白ではない。Ser676はトリプシンペプチド中では検出されないからである。
【0140】
これらの研究はさらに、活性化ループ中のThr536またはThr538のいずれかもまた自己リン酸化されることを明らかにした(図3D)。細菌で発現されたPKC−θ KDのX線構造決定は、Thr538残基がリン酸化されること確証した(Xuら、J.Biol.Chem.279(48):50401-50409(2004))。この結果は、活性化ループがPDK-1によってリン酸化されるという以前の提案と対照的であることを考えると、驚くべきことである(Balendranら、FEBS Lett.484:217-223(2000);LeGoodら、Science 281:2042-2045 (1998))。確かに、キナーゼ不活性化全長PKC−θ変異体K409Wの以前の研究は、この分子がThr538でリン酸化されないことを示してきた(Liuら、Biochem.J.361:255-265(2002))。上記の実施例2に記載されるように、HEK293細胞異種発現系を使用して、細胞中でのK409W PKC−θ変異体のThr538リン酸化の欠如もまた観察した(データ示さず)。この所見は、K409Wキナーゼ変異体が自己リン酸化できないことに起因するThr538リン酸化の欠如を暗示する。さらに、K409W PKC−θ分子の無効にされたThr538リン酸化は、インビトロ細胞溶解物キナーゼ活性、および内因性IKKα/βリン酸化の欠如と相関する(データ示さず)。
【0141】
PKC−θ活性化ループがPDK-1によってリン酸化されることが以前に示唆されたので(Balendranら、FEBS Lett.484:217-223(2000);LeGoodら、Science 281:2042-2045(1998))、細菌によって発現されたPKC−θ KDのThr536またはThr538のいずれかが自己リン酸化されることを示す質量スペクトル分析の結果は驚くべきものである(図3B〜3Dを参照のこと)。これは、水素結合中のリン酸化されたThr538が、Thr536に先行する側鎖と相互作用するX線構造によって部分的に説明される(Xuら、J.Biol.Chem.279(48):50401-50409(2004))。この相互作用は、おそらく、活性化ループ中での相互作用、およびαC-へリックスとの相互作用をさらに安定化し、これらの両方が触媒において関連性を有する(Johnsonら、Cell 85:149-158(1996))。
【0142】
以前の研究では、PKC−θについての触媒能力のある立体構造を示唆しており、ここで、活性化ループは構成的にリン酸化される(Newton,A.C.,Biochemical Journal.370:361-371(2003))。PDK-1は、疎水性モチーフおよびターンモチーフ上の保存性部位に存在する、自己リン酸化に先行する必要とされる修飾として、キナーゼドメイン活性化ループでPKCおよび他のAGCファミリーのキナーゼをリン酸化する(Newton,A.C.,Biochemical Journal.370:361-371(2003);Balendranら、FEBS Lett.484:217-223(2000))。本明細書に提示された結果から、有力な仮説とは対照的に、PKC−θが独特に自己リン酸化可能であるということを明らかにする。PKC−θ KDの特徴に対する本明細書に提示される所見は、キナーゼドメイン内の疎水性モチーフおよびターンモチーフに加えて、活性化ループもまた自己リン酸化されることを支持する証拠を提示する(図3B〜3Dを参照のこと)。これらの研究では、細胞中でPDK-1がPKC−θ活性化ループをリン酸化することができるという可能性を除外しない。しかし、細菌で発現されたPKC−θとは対照的に(Smithら、J.Biol.Chem.277:45866-45873(2002))、本実施例に提示された所見は、PKC−θ KDがPKC−θ活性化ループで自己リン酸化が可能であり、それゆえに、必須のPDK-1リン酸化の要求性を有さないことを示す。
【0143】
質量スペクトル分析データは、細菌で発現されたPKC−θ KDが5個または6個のアミノ酸残基で自己リン酸化されることを示す。これらの実験において同定されたリン酸化部位には、疎水性モチーフのSer695、ターンモチーフのSer685、および活性化ループのThr538またはThr536が含まれる。疎水性モチーフのSer676はトリプシン性ペプチド中で検出されるが、これはまた、おそらく配列相同性に基づいてリン酸化される。Ser685は、ターンモチーフ中で新たに同定されたリン酸化部位である。最後に、上記に同定されたリン酸化部位に加えて、少なくとも2つのアミノ酸残基が自己リン酸化されるが、これらの技術によって検出されない。
【0144】
活性化ループ中のアミノ酸残基Thr538は、キナーゼ活性のために必要とされる(Liuら、Biochem.J.361:255-265(2002))。従って、キナーゼドメイン内のいくつかのリン酸化部位における点変異を、活性化ループのThr538自己リン酸化に対するそれらの効果について試験した。これを行うため、PKC−θ KDタンパク質の大腸菌溶解物および種々の変異を、抗pT538PKC−θ抗体を使用するウェスタンブロッティングによってアッセイした。図4Aに示されるように、野生型PKC−θ KDタンパク質および試験された3つの変異体フラグメントのみが、538位のロチロシン上でリン酸化された。等しいローディングのレーンを、ブロットを剥離すること、および抗His抗体を用いる染色で再プローブすることによって決定した(図4Bを参照のこと)。これらの大腸菌溶解物の画分もまた溶解物キナーゼ活性に供した。これらのキナーゼアッセイを、20mM MOPS pH 7.2、25mM β-グリセロリン酸、1mM DTT、1mM CaCl2中の83μMのビチオン化ペプチド基質(FARKGSLFQ)、166μM ATP、0.5μlのP33ATP(比活性3000Ci/mmol、10mCi/ml)、84ng/μlホスファチジルセリン、8.4ng/μlジアシルグリセロールの最終濃度を用いて、30μl中で、30分間、室温で実行した。5〜10μlの反応物をホスホセルロースペーパー上にスポットし、次いでこれを、0.75%リン酸中で3回、およびアセトン中で1回洗浄した。シンチレーションカクテルをホスホセルロースペーパーに加え、結合した放射能を、シンチレーションカウンターを用いて検出した。図4Cに示されるように、試験された種々のPKC−θ KD変異体の中で、野生型PKC−θ KDタンパク質および3つの変異体フラグメントのみが、スレオニン538上でリン酸化され、インビトロキナーゼ活性アッセイにおいて活性を示した。確かに、溶解物のキナーゼ活性は、発現された変異体の各々について溶解物中で検出されたリン酸化スレオニン538(pThr538)の範囲を相関する(図4Aおよび4Cを比較のこと)。
【0145】
PKC−θ KDのC末端疎水性モチーフ中の695位のセリン(Ser695)もまた、抗pT538ウェスタンブロットパネルにおける有意に減少したシグナルによって証明されるように、最適な活性化ループの自己リン酸化のために必要とされる(図4AにおけるS695A変異体(すなわち、695位においてアラニンに変異したセリン)を参照のこと)。従って、695位のセリンは、S695A変異体(図4CにおけるS695A変異体を参照のこと)のキナーゼ活性の欠如によって実証されるように、不活性変異およびキナーゼ不活性化変異、それぞれ、T538AおよびK409Wと同様に、PKC−θ KDキナーゼ活性のために必須である(図4Aおよび4Cを参照のこと)。対照的に、ターンモチーフ残基Ser662は、活性とThr538自己リン酸化の両方のために不必要であるのに対して(図4AにおけるS662Aを参照のこと)、ターンモチーフ残基Ser676およびSer685は、部分的な影響を与える(図4AにおけるS676A変異体およびS685A変異体を参照のこと)。
【0146】
従って、保存性ターンモチーフ中のSer676とSer685の両方がPKC−θ KDのキナーゼ機能に部分的に影響を与えることを実証した(図4Aおよび4Cを参照のこと)。全長キナーゼにおけるS676A変異は、キナーゼ活性に影響を与えないのに対して、全長分子におけるS695A変異がキナーゼ活性を80%減少したことが以前に報告されている(Liuら、Biochem.J.361:255-265(2002))。全長PKC−θにおいて報告されたS695Aの残渣の活性は、キナーゼドメインの状況において、S695Aについて観察された適度なホスホ-Thr538シグナルと一致する(図4C、S695A変異体を参照のこと)。このことは、Ser695変異が最適なThr538自己リン酸化の損失を生じ、結果として、キナーゼ活性の減弱を生じることを示唆する。この特徴はまた、他のPKCアイソフォームの中でも、PKC−θ独特である。PKC−θの場合において、Ser695およびThr538自己リン酸化は、いくらか相互依存的であることがあり得る。活性化ループにおいてリン酸化されたPKC分子は、コファクター結合、自己リン酸化、および基質触媒の段階の前に存在する、「触媒可能立体構造」として記載される(Newton,A.C.,Biochemical Journal.370:361-371(2003))。最適なPKC−θ KDキナーゼ機能について、活性化ループと疎水性モチーフの両方の自己リン酸化がPKC−θ「触媒可能立体構造」に寄与することがあり得る。
【0147】
発現された活性PKC−θ KDのリン酸化部位の関連性が確立されたので、次に、詳細な酵素機構の研究が、キナーゼ触媒反応を試験するために着手された。PKC−θの反応速度論的機構を決定する際の使用のために試験されるペプチド基質が表1に示される。
【表1】
【0148】
ペプチド1およびペプチド2は、PKC−αの偽基質領域に由来する基質である。ペプチド3およびペプチド4は、それぞれ、血清応答因子(Heidenreichら、J.Biol.Chem.274:14434-14443(1999))およびリンパ球特異性タンパク質-1(Huangら、J.Biol.Chem.272:17-19(1997))におけるリン酸部位に由来する。
【0149】
酵素反応速度論的アッセイのために、ATP、ATPγS、Ficoll-400、スクロース、ATP、ADP、ホスホエノールピルビン酸(PEP)、NADH、ピルビン酸キナーゼ(PK)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、AMP-PNP、アセトニトリル、および緩衝液HEPESを、Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO)から購入した。ペプチド基質、阻害剤およびリン酸化基質ペプチドは、AnaSpec(San Jose,CA)、SynPep(Dublin,CA)またはOpen Biosystems(Huntsville,AL)から購入した。酵素活性は、分子デバイスプレートリーダー上で、共役PK/LDHアッセイを使用して、25℃で340nmで分光光度的に追跡して決定した。示されない限り、標準的な反応は、25mM HEPES pH 7.5、10mM MgCl2、2mM DTT、0.008% TritonX100、100mM NaCl、20単位PK、30単位LDH、0.25mM NADH、および2mM PEP中で、0.0080mLの最終容量で実行した。PKC−θ KD濃度は、0.156μg/mlと0.312μg/mlの間で変動した。
【0150】
次に、溶媒粘性研究を実行した。定常状態の反応速度論的パラメーターを、様々なスクロース(0〜35%)またはFicoll 400(0〜8%)を含む反応速度論的酵素アッセイのために上記の緩衝液中で決定した。相対的な溶媒粘度(ηrel)を、Ostwald粘度計を使用して、25mM HEPES pH 7.5、10mM MgCl2、2mM DTTおよび100mM NaClと比較して、25℃にて3連で決定した。粘性源を有さない緩衝液は、0の上付文字で示される。共役酵素系はこれらの粘性源の存在によって影響されなかった。ATPγSを用いるチオ効果研究およびADPを用いる生成物阻害研究を、Phenomenex Auga 5m C18 124 A050mmX4.60mMカラム(00B-4299-E0)を使用して、Hewlett Packardシリーズ1100 HPLC上で分析した。リン酸化ペプチドを、0%〜100% 20mM リン酸 pH 8.8/アセトニトリル(50/50)を使用して、非リン酸化ペプチドから分離した。ロフルオロセイン標識ペプチドを485nmにおける励起、および530nmにおける蛍光発光をモニターすることによって検出した。V
【0151】
次に、基質反応速度論を決定した、これを行うために、データを、通常のMichaelis-Menten反応速度論についての式1または基質阻害についての式2にフィットさせた:
【0152】
ここでSは基質であり、Vmaxは最大酵素速度であり、KmはMichaelis定数であり、Kiは基質阻害のための阻害定数である(Adams,J.A.,Biochemistry 42:601-607(2003))。初速度を種々のペプチドおよびATPの固定濃度で得、以下に列挙した式にフィットさせた:
【0153】
上記の式において、[A]および[B]はそれぞれATPおよびペプチドの濃度であり;KaおよびKbはそれぞれATPおよびペプチドについてのKmであり;KiaはEA複合体からのAの解離定数である。
【0154】
反応初速度を、生成物阻害の関数として(ADPもしくはホスホペプチド)または終点の阻害の関数として(AMP-PNP)のいずれかで得た。これらの研究において、1種の基質を一定に保持しながら、他方を、阻害剤の増加濃度に対して変化させる。生成物阻害の場合において変化させない基質を飽和または非飽和のレベルに保持しながら、終点の阻害において変化させない基質を飽和レベルに保持する。データを、拮抗阻害モデル(式5)、非拮抗阻害モデル(式6)、または不拮抗阻害モデル(式7)にフィットさせた:
【0155】
ここでKiiおよびKisは切片および傾きの阻害定数である。データをSPSS Science(Richmond,CA)からのSigma Plot 2000 Enzyme Kinetics Moduleを使用して分析した。
【0156】
表2は、ペプチド1〜4、ATP、およびペプチドの非存在下でのATPについての定常状態反応速度論的パラメーターの要約を提供する。
【表2】
aペプチド1およびペプチド2は式(2)にフィットさせ;ペプチド3、ペプチド4、およびATPは式(1)にフィットさせる
bペプチド1はこのアッセイ中に存在する
cペプチドがアッセイに存在しない
【0157】
表2に示されるように、ペプチド基質の非存在下では、PKC−θ KDは、ペプチドが存在する場合(18秒-1)よりも110倍遅く(0.16秒-1)ATPを加水分解した。59μM(ペプチドなし)および49μM(飽和ペプチド1において)のATPについてのKmは、ペプチドキシルの存在下でのATPの有意な違いが存在することを示す。飽和ATPでのPKC−θについての定常状態の反応速度論的パラメーターを表2に列挙する。ペプチド3およびペプチド4は、それぞれ、420μMおよび240μMの値の、PKC−θについての最大のKmを示す。対照的に、ペプチド1およびペプチド2は、それぞれ6.5μMおよび4.3μMのKm値を有し、最大濃度において酵素の阻害を引き起こす(表2)。より塩基性の強いペプチド1および2の低いKm値は、PKC−θにとって塩基性アミノ酸基質ペプチドの選択性を暗示する。
【0158】
興味深いことに、より長くより塩基性の強いペプチド2を用いて観察された基質阻害は、より短いペプチド1よりもより明白であった(表2)。それゆえに、PKC−θについての反応速度論的パラメーター(ペプチド1およびATP)を、増加NaCl濃度で試験した。これらの研究の結果を表3に示す。
【表3】
a0.2mM ペプチド1
b式(1)にフィット
c式(2)にフィット
【0159】
表3に示されるように、NaClの濃度が増加するにつれて、ATPについてのKmと酵素のターンオーバーの両方が増加するのに対して、ペプチド1についてのKmは比較的一定のままである。PKC−θに対するイオン強度の効果もまた、基質を非生産的または終点複合体中で酵素と合わせたときに起こる、基質阻害に対するNaClの効果を試験することによって調べた。基質阻害を、好ましい塩基性ペプチド1および2について観察したが、より最適ではないペプチド3および4については観察しなかった(表2を参照のこと)。さらに、基質阻害はまた、緩衝液のイオン強度に依存することが見い出された。ペプチド1と用いる基質阻害は、NaCl濃度が250mMまで増加するにつれて、減少する(表3を参照のこと)。
【0160】
従って、表3は、緩衝液のNaCl濃度の増加がATPについてのPKC−θ KD Kmおよび酵素ターンオーバーを増加させたことを示す。イオン強度の効果はまた、ペプチド1基質阻害に対して観察した。NaCl濃度が増加するにつれて、ペプチド1を用いて観察された基質阻害が減少した(表3を参照のこと)。イオン対形成に対する塩(NaCl)の性質およびその効果は、これらの観察に対して洞察をあたえることができる。カチオンおよびアニオンの
ホフマイスター系列に従うと、NaClはコスモトロップ(kosmotrops)とカオトロップ(chaotrops)の中点に位置する(Cacaceら、Quarterly Reviews of Biophysics 30:241-277,1997)。それゆえに、NaClは酵素を塩析するはずもないし、酵素を変性させるはずもない。しかし、緩衝液のイオン強度の増加は、イオン対の形成に対して影響を与える(Park C.R.R.,J.Am.Chem.Soc.123:11472-11479(2001))。ロチロシンキナーゼCskを用いると、50mM NaClは負に荷電した基質であるポリ(Gly、Tyr)についてKmを増加させる効果を有したが、ATPについてのKmおよび酵素のターンオーバーに対しては効果がなかった(Coleら、J.Biol.Chem.269:30880-30887,1994)。PKC−θ KDの場合には、ATPについてのKmの増加は2つの可能性の結果であり得る:1)250mM NaClにおいて、酵素-ATP2成分複合体のより多くの生成的結合が存在し、観察されるKmが実際のATPについてのKmの反映である;または2)ペプチド1と同じ様式で、荷電した基質であるATPのイオン強度効果の増加。観察されたKmの増加は上記2つの可能性の組合せの結果であることが可能である。ペプチド1を用いると、イオン対形成(コロンビック相互作用)は、酵素への基質の結合において重要であるかもしれない。pH 7.5で、ペプチド1などの塩基性ペプチドは正味の正電荷を有する。それゆえに、NaCl濃度を増加させることは、イオン対形成のためにより好ましくない環境を生じる(Park C,R.R.,J.Am.Chem.Soc.123:11472-11479(2001))。イオン対形成がペプチド1の阻害に寄与するならば、NaClを増加させることで基質阻害を減少させることは、コロンビック相互作用を弱めることと一致する。
【0161】
PKC−θの反応速度論的機構を決定する際に、様々なATPを用いての反応の初速度を、100mM NaClにおいてペプチド基質の様々な固定した濃度に対して決定した。このアッセイを最初にペプチド1を用いて行ったが、、得られるLineweaver-Burkプロットは、ペプチド1基質阻害に起因して解釈することが困難であった(データ示さず)。次に、Lineweaver-Burkプロットの切片および傾きの再プロット(示さず)を、ペプチド1に対して実行した。
【0162】
図5Aおよび5Bに示されるように、100mM NaClにおけるペプチド1に対しての切片および傾きは、それぞれ非線形であった。初速度アッセイはまた、ペプチド3を使用して、同一の条件下で実行した。固定した様々なペプチド3濃度に対する様々なATP濃度は、逐次的反応速度論的機構を示すLineweaver-Burkプロット上の交差パターンを生じた(データ示さず)。ATPについてのKja値は61±22μMであり、ATPについてのKaは118±17μMであった。次いで、塩濃度が増加するとペプチド1についての基質阻害が減少するので、ペプチド1を用いる初速度パターンを、625mM NaClにおいて決定した(表3を参照のこと)。得られるLineweaver-Burkプロットは同様に切片のパターンを生じ(データ示さず)、これは、ペプチド1が基質であるときの逐次的反応速度論的機構と一致する。高NaCl濃度において、ペプチド1に対するLineweaver-Burkプロットの切片および傾きの再プロットは線形であった(図5Cおよび5Dを参照のこと)。高NaClで得られた66±32μMのATPについてのKia値は、100mM NaClにおいてペプチド3を用いての61±22μMのATPについてのKia値と同様であることが見い出された。このことは、増加したイオン強度が酵素-ATP複合体からのATPの解離定数に影響を与えないことを示す。625mM NaClで得られたATPのKaは321±19μMであり、100mM NaClにおけるATPのKaである118±17μMと対照的であった。このことは、イオン強度が増加されるにつれての、ATPについてのKmの増加と一致した(表3を参照のこと)。
【0163】
終点阻害研究は、PKC−θ KDに結合する最初の基質としてのATPを同定した。従って、逐次的触媒機構における基質結合の順序を次に決定した。加水分解されないATPのアナログであるAMP-PNP、およびペプチド1由来でセリンからアラニンへの変化を有するペプチド5(表1を参照のこと)を阻害研究のために使用した。阻害研究の結果を表4に示す。
【表4】
aNaCl濃度は100mMに保持した
bc、拮抗的;nc、非拮抗的;uc,不拮抗的;-、阻害観察せず
cデータをフィットさせた数式
dATPは0.1mMに保持した
eペプチド1の低いKmのためペプチド3を使用し、ペプチド3を0.5mMに保持した
fペプチド1を用いて観察された基質阻害のため、ペプチド3を使用した
【0164】
表4において示されるように、AMP-PNPは、228μMのKi値で、ATPの拮抗阻害剤であることが見い出された。飽和ATPにいて、ペプチドに対して、AMP-PNPを用いて観察された阻害は存在しなかった。ペプチド阻害剤、ペプチド5は、ペプチド3と同様にペプチド1に対する拮抗阻害剤であることが示され、それぞれ、10μMおよび4.4μMのKis値を有した(表4)。ペプチド5は、1100μMのKii値を有する、ATPに対する不拮抗的阻害剤であることがさらに示された(表4を参照のこと)。これらの結果は、PKC−θについての基質の順序立てた逐次的付加と一致し、ここでATPは最初に酵素と結合し、続いてペプチドと結合する。
【0165】
PK/LDH共役キナーゼアッセイは触媒生成物ADPを消費するので、HPLCアッセイを使用して、ADPを用いる阻害パターンを決定した(表4を参照のこと)。ADPは、291μMのKisで、飽和ペプチド1において、ATPに対する拮抗阻害剤であることが見い出された。飽和ATPにおいてADPをペプチド1に対してアッセイしたときには、阻害は観察されなかった。アッセイを飽和していないATP(0.1mM)で実行したとき、非拮抗的パターンが、494μMのKisおよび200μMのKiiで観察された(表4を参照のこと)。ADPを用いるこれらの結果は、図6Cに模式的に示されるようにランダム機構を除外するが、逐次順序(図6Aとして模式的に示される)またはTheorell-Chance(図6Bとして模式的に示される)のいずれかの反応速度論的機構と一致し、ここでADPは遊離する最終生成物である。反応速度論的機構をさらに説明するために、ホスホペプチド1を用いる生成物阻害アッセイを実行した。ペプチド1を用いて観察された基質阻害のために、生成物阻害アッセイを、ペプチド3を用いて行った。ホスホペプチド1は、飽和ATP濃度において1700μMのKisおよび1200μMのKiiを有する、ペプチド3の非拮抗的阻害剤であった(表4)。飽和していないATPにおいて、不拮抗的パターンが、2000μMのKiiで観察された。ホスホペプチド1は、飽和していないペプチド3(0.5mM)において、1600μMのKiiで、ATPに対する不拮抗的阻害剤であった。上記の結果は、ADPが最終生成物として遊離される、逐次順序Bi-Bi機構とより一致する(図6Aを参照のこと)。
【0166】
触媒におけるリンの移動段階の速度を、ATPのチオアナログであるATPγSを使用して調べ、これらの研究の結果を表5に示す。
【表5】
aペプチド1をアッセイに使用した
b速度:ピーク面積/(分での保持時間)([酵素]nM)
【0167】
表5において示されるように、ATPの代わりにATPγSに置き換えると、反応のkcatの大きな変化が生じた。ATPを用いる反応と比較したATPγS反応は、100mM NaClおよび250mM NaClにおいて、それぞれ、112倍および146倍遅い。しかし、HPLCを使用して得られたATPおよびATPγSについてのKmは、たった2倍の違いであった(表5)。
【0168】
化学段階のみが反応の速度に寄与するのか否かを決定するために、PKC−θについての定常状態反応速度論的パラメーターに対する溶媒粘性の効果を決定した。2つの型の粘性源、ミクロ粘性源スクロースおよびマクロ粘性源Ficoll-400を、本研究において利用した。ミクロ粘性源は低分子の核酸に直接影響を与えながら、同時に粘度計で観察される粘性効果を生じる(Blacklowら、Biochemistry 27:1158-1167(1988))。マクロ粘性源は粘度計で見られる粘性効果を引き起こすが、低分子の拡散速度に有意な影響を与えず、それによって、アッセイにおいて観察されるミクロ粘性効果をための対照として働く(Coleら、J.Biol.Chem.269:30880-30887(1994))。ペプチド1、ペプチド3、およびATPの定常状態反応速度論的パラメーターを、増加する溶媒粘性において、および2つの異なるイオン強度で決定した。反応速度論的パラメーターkcatおよびkcat/Km'に対する溶媒粘性の相対的効果を、緩衝液の相対的粘度に対してプロットし、線形回帰にフィットさせた。
【0169】
図7A〜7Dは、PKC−θに KDについてのkcatおよびkcat/Kmに対する溶媒粘性効果を示す。図7Aは、2.0mMに保持されたATPとともに、変化させたペプチド1を用いてのkcat効果を示す。図7Bは、0.125mM ペプチド1におけるATPについてのkcat/Kmを示す。図7Cは、2.0mMに保持されたATPとともに、変化させたペプチド3を用いてのkcat効果を示す。図7Dは、2.0mM ATPにおけるペプチド3についてのkcat/Kmを示す。図7A〜7Dについて、白丸記号(○)は増加スクロース中の100mM NaClを示し;白逆三角記号(▽)は増加スクロース中の250mM NaClを示し;黒丸記号(●)は増加Ficoll 400中の100mM NaClを示し;および黒逆三角記号(▼)は増加Ficoll 400中の250mM NaClを示す。図7A〜7Dにおける破線は1の傾きを示す。1の傾きは、反応速度論的パラメーターに対するミクロ粘液源の最大効果を示す。マクロ粘液源の存在下では、酵素速度に対してほとんど効果が存在しなかった。溶媒のミクロ粘性が増加したのにつれて、(kcat)η値に対して見られる中程度の効果が存在した。これは、100mM NaClおよび250mM NaClにおいて研究された3つすべての基質を用いて酵素の観察された速度において直線的な減少として見られた。すべての条件下で得られた傾き[(kcat)η]は0.38〜0.54で変化し、このことは、生成物の遊離が部分的に律速であることを暗示する(図7Aおよび7C)。0.8〜1の値は、生成物遊離が触媒的に律速段階であることを示す(Adams,J.A.,Biochemistry 42:601-607(2003))。
【0170】
基質の粘性は粘性分析によって決定することができる。手短に述べると、粘性の基質については、生成物形成の速度が基質の解離の速度よりも速いのに対して、非粘性基質は、生成物形成の速度よりも速く酵素から解離する(Cleland,W.W.(1986)Investigations of Rates and Mechanisms of Reactions,Vol. 6,Wiley-Interscience Publications,John Wiley & Sons,New York,NY)。kcat/kmに対する増加した溶媒ミクロ粘性の相対的効果を、相対的溶媒粘性に対してプロットする(図7Bおよび7D)。ミクロ粘性の効果をペプチド1についての相対的溶媒粘性に対してプロットしたとき、傾きは、250mM NaClにおいて0.86の(kcat/km)η値を有した(データ示さず)。低イオン強度において観察した基質阻害のために、データは100mM NaClにおいてペプチド1については得られなかった。他方、ペプチド3は、いずれのイオン強度においても溶媒粘性効果を示さなかった(図7D)。これらの研究は、パプチド1が粘性基質であるのに対して、ペプチド3が粘性ではないことを暗示する。
【0171】
いくつかのキナーゼについて反応速度論的機構が報告されている(例えば、Wuら、Biochemistry 41:1129-1139(2003);Traugerら、Biochemistry 41:8948-8953(2003);Chenら、Biochemistry 39:2079-2087(2000)を参照のこと)。高イオン強度と低イオン強度の両方を用いてのPKC−θ初速度プロットは、縦軸の左および下で交差するグラフを生じた。このパターンは、緩衝液イオン強度によって影響されないままである逐次機構の明確な表示である。さらに、ATP Kia値、100mM NaClにおけるペプチド3について61μM、および625mM NaClにおけるペプチド1について66μMには違いが存在せず、酵素-ATP複合体からのATPの解離がイオン強度によって影響されなかったことをさらに示した。両方の条件下で、Kia値は、それぞれ118μMおよび321μMのKa値よりも低いことが見い出され、迅速平衡機構を除外した。
【0172】
終点阻害および生成物阻害の研究(表4を参照のこと)は、逐次順序機構と一致し、ここで、ATPが結合する最初の基質である。ペプチド阻害剤(表1におけるペプチド5)は両方のペプチド基質に対して拮抗的であり、ATPに対して不拮抗的である。ATPアナログAMP-PNPはATPに対して拮抗的であることが見い出され、飽和ATPにおいて、最大2.0mMのAMP-PNPで、ペプチド1に対する観察される阻害が存在しなかった。ATPをADPに対して変化させるときに拮抗パターンが観察され、ペプチド1を飽和ATPでADPに対して変化させるときに阻害は観察されない。非拮抗パターンは、ペプチド1が飽和されていないATPにおいてADPに対して変化させるときに観察される。これらの阻害研究は、PKC−θ KDについてのランダム機構を除外し、図6Aに示されるように、ADPが遊離される最後の生成物であることを実証する。
【0173】
100mM NaClにおける、ペプチド1を用いる初速度実験は、観察された基質阻害の型にいくつかの洞察を与える。手短に述べると、図8に示されるように。順序付けられた2反応物質系において観察される基質阻害の3つの型が存在する(Segel,I.H.Enzyme Kinetics:Behavior and Analysis of Rapid Equilibrium and Steady-State Enzyme Systems,Whiely-Interscience,1975)。2つは、基質Bが終点EB複合体を形成する、または基質AがEAA終点複合体を形成する基質阻害である。3番目のものは、BがEBQ終点複合体を形成する基質阻害である。EAA終点複合体の形成は、結合する最初の基質がATPであり、ATPを用いると基質阻害が観察されるので、除外される。図5A〜5Dは、ペプチド1について、100mM NaClおよび625mM NaClにおいての初速度データの再プロットを示す。図5Aおよび5Bに示されるように、阻害の効果は、100mM NaClにおける傾きと切片の両方の再プロット上で見られる(すなわち、再プロットは直線状ではない)。しかし、625mM NaClで(図5Cおよび5Dに示されるように)、再プロットは直線状になり、このことは、高イオン強度において、0.5mM ペプチド1までで阻害が消滅することを示す。傾きと切片の両方の再プロットに対する基質阻害の効果は、非拮抗的基質阻害を一致する(Cleland,W.W.,Methods Enzymol.63:500-513(1979))。順序付けられた逐次機構における非拮抗的基質阻害は、非生成的酵素複合体の以下の型の形成を示唆する。2つは図8において提示され、EBおよびEBQ複合体である。3番目の可能性は、非産生的EAB複合体である。これは、明確な可能性である、なぜなら、0mM NaClにおいて基質阻害は強力であり(0.129mM)、ATP濃度は〜80xKm(0mM NaClにおいて0.025mM)であるからである。ATPが最初にそこに結合する逐次順序機構において、EB終点複合体を形成するために存在する遊離の酵素はほとんど存在しない。
【0174】
ホスホロチオエートを、異なる型の酵素的リン転移反応を研究するために使用する。ATPγS反応速度は、Cskキナーゼの場合におけるATP反応よりも15〜20倍遅かった(Coleら、J.Biol.Chem.269:30880-30887(1994))。同様に、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PLC)の酵素機構研究において、非架橋酸素を硫黄で置換したとき、反応は105倍遅くなった(Kravchukら、Biochemistry 40:5433-5439(2001))。どのATPアナログ、ATPまたはATPγSを使用するかに関わらず、生成物ADPは同一である。従って、触媒速度は、生成物の遊離によって影響を受けないままである。PKC−θ KDについて観察されるチオ効果は、酵素反応の全体の速度に対するリン転移化学の寄与を暗示する。さらに、PKC−θを用いて観察される大きなチオ効果は、図6Bに示されるTheorell-Chance順序逐次反応速度論的機構に相反する(McKayら、Biochemistry 35:8680-8685(1996))。Theorell-Chance反応速度論的機構を用いると、三重複合体は短命であり、それゆえに化学段階が非常に速いことを暗示する。
【0175】
溶媒粘度の効果は、酵素反応における律速段階の決定において価値のあるツールである。増加した溶媒粘性の効果は、酵素からの生成物の拡散、および酵素活性部位への基質の拡散などの非化学的段階において見られ(Blacklowら、Biochemistry 27,1158-1167(1988))、リン転移段階などの単分子段階では見られない(Adams,J.A.,Biochemistry 42:601-607(2003))。本明細書で報告されるPKC−θ溶媒粘性効果研究は、生成物遊離が触媒において部分的に律速段階であることを示す。
【0176】
本明細書に提示される研究は、PKC酵素の触媒特性および反応速度論的機構を例証し、それによって、PKCアイソフォームおよび/またはPKCに高度に類似するAGCファミリーのキナーゼへの洞察を提供する。提示される結果は、ATPが最初に結合しADPが最後に遊離するという逐次順序機構と一致する。ホスホペプチド遊離およびリン転移は律速段階に寄与する。重要なことに、PKC−θに潜在的に独特である特徴は、本明細書に提示されるキナーゼドメインのリン酸化研究において示されている。PKC−θの構造的特徴とまとめると(Xuら、J.Biol.Chem.279(48):50401-50409(2004)を参照のこと)、これらの所見は、疾患の治療のためのこのキナーゼの選択的標的化を進行させる際に有意な意味を有する。
【0177】
実施例4
PKC−θ基質の同定
次に、ペプチドスキャニングアレイを、PKC−θについてのペプチド基質を同定するために実行した。これを行うために、実施例3に記載されるように、PKC−θの362残基〜706残基の触媒キナーゼドメインを、pET-16b発現ベクター中にクローン化した。このベクターに、発現クローンに対してC末端ヘキサヒスチジンタグをイン骨格に導入した。プラスミド、過剰発現のために、BL21-DE3 大腸菌株中にプラスミドを形質転換した。10リットル細胞培養を、0.4のO.D.まで37℃で最初に増殖させ、次いで温度を25℃まで低下させ、その後0.1mM IPTGを用いて発現を誘導した。細胞を、収集前にさらに3時間増殖させた。
【0178】
細胞を再懸濁し、マイクロフルイダイザーを使用して、Tris 25mM pH 8.0、NaCl 25mM、2-メルカプトエタノール 5mM、イミダゾール 5mM、ATP 50μMおよびプロテアーゼ阻害剤中で溶解した。この溶解物を、1時間、4℃、バッチ法によって、20ml(ベッド)のニッケル-NTA樹脂に適用した。この樹脂を、引き続いてクロマトグラフィーカラムに注ぎ、イミダゾールを25mMに増加させた同じ緩衝液で広範囲にわたって洗浄した。段階溶出を、200mM イミダゾール緩衝液を用いて実現した。次いで、タンパク質をすぐにアニオン交換HQ上にロードし、Tris 25mM pH 8.0、NaCl 25mM、DTT 5mM、ATP 50μMで洗浄し、その後500mMまでのNaClの直線状勾配の適用によって溶出した。SDS-PAGEによって選択した画分をプールし、Tris 25mM pH 8.0、DTT 5mMで2倍に希釈し、ヘパリンクロマトグラフィーカラム上にロードした。素通りしたタンパク質画分をハイドロキシアパタイトカラムに直接適用し、Tris 25mM pH 8.0、NaCl 50mM、DTT 5mMで広範囲にわたって洗浄した。0〜100mMのリン酸ナトリウムの直線状勾配が標的タンパク質を溶出した。次いで、このタンパク質を、superdex 200サイズ排除クロマトグラフィー上でモノマーとしてサイズ分画し、Tris 25mM pH 8.0、NaCl 50mM、DTT 5mMに対して一晩透析し、濃縮した。
【0179】
ペプチドスポット分析のために、ポリエチレングリコールおよびFmoc-保護化アミノ酸で修飾したセルロース膜をIntavisから購入した。Fmoc-保護化アラニンはChem-Impex(Wood Dale,IL)から購入した。β-アラニンスペーサーをカップリングすることによって膜上に配列を定義し、以前に記載されたように(例えば、Molinaら、Peptide Research 9:151-155 (1996);およびFrank,R.,Tetrahedron 48:9217-9232(1992)を参照のこと)、標準的なDIC/HOBt(ジイソプロピルカルボジイミド/ヒドロキシベンゾトリアゾール)カップリング化学を用いて、ペプチドを合成した。活性化アミノ酸を、Abimed ASP 222ロロボットを使用してスポットした。洗浄および脱保護の段階を手動で行い、最終的な合成サイクルの後でペプチドをN末端アセチル化した。
【0180】
ペプチド合成および側鎖脱保護の後で、キナーゼアッセイを実行した。これらのアッセイのために、膜を10分間メタノール中、および10分間アッセイ緩衝液(20mM HEPES pH=7.5、10mM MgCl2、2mM DTT、100mM NaClおよび20μM ATP)中で洗浄した。次いで、膜を、0.33Ci/mMol γ-32P-ATPを含むアッセイ緩衝液中で、50nM PKC−θ(大腸菌中で発現され、精製されたC末端His-タグ化されたキナーゼドメインアミノ酸残基362〜706)とともに1時間インキュベートした。次いで、膜を、0.1% Triton-Xおよび100μM冷却ATPを含む200mMリン酸ナトリウムで5回、およびエタノールで3回洗浄した。次に、膜を乾燥させ、Biorad Fxを使用して可視化した。
【0181】
これらの方法を使用して、384個のペプチド配列を試験した。これらのペプチドのリン酸化を図9Aに示す。これらの384個のペプチド配列のうち、以下がPKC−θに関する基質であることが示された。
FARKGSLRQKN(配列番号6)
KKRFSFKKSFK(配列番号16)
QKRPSQRSKYL(配列番号17)
KIQASFRGHMA(配列番号18)
LSRTLSVAAKK(配列番号19)
AKIQASFRGHM(配列番号20)
VAKRESRGLKS(配列番号21)
KAFRDTFRLLL(配列番号22)
PKRPGSVHRTP(配列番号23)
ATFKKTFKHLL(配列番号24)
SPLRHSFQKQQ(配列番号25)
KFRTPSFLKKS(配列番号26)
IYRASYYRKGG(配列番号27)
KTRRLSAFQQG(配列番号28)
RGRSRSAPPNL(配列番号29)
MYRRSYVFQT(配列番号30)
QAWSKTTPRRI(配列番号31)
RGFLRSASLGR(配列番号32)
ETKKQSFKQTG(配列番号33)
DIKRLTPRFTL(配列番号34)
APKRGSILSKP(配列番号35)
MYHNSSQKRH(配列番号36)
MRRSKSPADSA(配列番号37)
TRSKGTLRYMS(配列番号38)
LMRRNSVTPLA(配列番号39)
ITRKRSGEAAV(配列番号40)
EEPVLTLVDEA(配列番号41)
SQKRPSQRHGS(配列番号42)
KPFKLSGLSFK(配列番号43)
AFRRTSLAGGG(配列番号44)
ALGKRTAKYRW(配列番号45)
VVRTDSLKGRR(配列番号46)
KRRQISIRGIV(配列番号47)
WPWQVSLRTRF(配列番号48)
GTFRSSIRRLS(配列番号49)
RVVGGSLRGAQ(配列番号50)
LRQLRSPRRTQ(配列番号51)
KTRKISQSAQT(配列番号52)
NKRRATLPHPG(配列番号53)
SYTRFSLARQV(配列番号54)
NSRRPSRATWL(配列番号55)
RLRRLTAREAA(配列番号56)
NKRRGSVPILR(配列番号57)
GKRRPSRLVAL(配列番号58)
QKKRVSMILQS(配列番号59)
RLRRLTAREAA(配列番号60)
【0182】
これらのペプチドのいくつかが、太字体で示されたPKC−θによってリン酸化されたセリンを有し、図9Bに示される。
【0183】
PKC−θによってリン酸化されたこれらのペプチド配列は、PKC−θの生理学的な基質内に含まれてもよく、そのようなものとして、細胞中またはインビボで基質のリン酸化の阻害を試験することによって、阻害剤の生理学的活性を試験するための方法であってもよい。さらに、これらの任意のアミノ酸残基を含む生理学的基質は、PKC−θシグナル伝達経路における機構であることによって、喘息の治療における阻害または調節のための潜在的な治療標的である可能性がある。
【0184】
実施例5
PKC−θ活性化ループは誘導的にリン酸化され、PKC−θ膜移行はBMMC上のIgE受容体架橋の際に起こる
喘息およびアレルギー性応答における活性化ループ中(すなわち、スレオニン538上)のPKC−θの自己リン酸化の効果を調べるために、活性化ループ中のPKC−θの自己リン酸化を、BMMC中でのIgE受容体架橋後に決定した。これらの研究のために、BMMCを単離した。これを行うために、C57 B1/6Jマウス(The Jackson Laboratory,Bar Harbor,MEから市販されている)の骨髄を骨(大腿骨および脛骨)から抽出し、次いで、DMEM+PS/glnおよび50μM βME+20ng/ml組換えマウスIL-3および50ng/ml組換えマウスSCF中の10% HI FCS(R&D Systems,Minneapolis,MNから市販されている)中で、5×105細胞/mlでプレートした。細胞を3〜7日毎に継代した。4週間後、培養物は>95%マスト細胞を含む(IgE受容体発現およびc-kit発現によって決定される)。この時点で、細胞を、50ng/mlで、マウスIL-3のみを含む上記の培地中で培養した。
【0185】
単離したBMMCを、抗DNP(ジニトロフェニル)IgEで一晩(約16時間)、培養中で処理した。翌日、IgE受容体架橋を、0、2、5、30、および90分間、培養物へのDNP-BSAの付加によって引き起こした。次に、処理したBMMCを1% NP-40溶解緩衝液中で溶解し、細胞質ゾル抽出物(実施例1に記載されるように調製)をSDS-PAGE上で泳動し、ニトロセルロース膜に転写した。このニトロセルロースブロットを、最初に抗ホスホT538PKC−θ特異的抗体(Cell Signaling Technology)で最初にプローブし、次いで剥離し、抗PKC−θ(Santa Cruzから市販されている)で再プローブした。
【0186】
図10Aに示されるように、アレルギーおよび喘息におけるマスト細胞エフェクター機能のとの関連で、PKC−θは、IgE受容体架橋の際に、骨髄由来粘膜マスト細胞中のスレオニン538上で迅速にリン酸化されることが見い出された(図9A)。治療レジメンに関わらず、すべてのBMMCがほぼ等量のPKC−θを発現したことに注意のこと(図10Bを参照のこと)。T細胞中で観察される保持されたリン酸化とは異なり(図1A〜1Cを参照のこと)、マスト細胞中のこの部位でのリン酸化は、迅速かつ一過性であることが見い出された(図10A)。図10Aに示されるように、活性化ループリン酸化は、IgE受容体架橋の2分後までの初期に起こることが見い出され、架橋の30分後にはベースラインレベルまで戻った。
【0187】
BMMC中でのIgE受容体架橋の際にPKC−θ膜移行が起こるか否かを決定するために、BMMC(上記に記載されるように単離した)を、一晩、培養中で抗DNP IgEで処理し、0分、2分、5分、または30分、DNP-BSAの付加を用いて刺激した。次いで、細胞を、実施例1中の上記に記載されるように溶解および分画した。膜画分、界面活性剤不溶性画分(DI)、および全細胞抽出物(WCE)をSDS-PAGEによって分離し、次いでニトロセルロースに転写した。次いで、このニトロセルロースブロットを最初にPKC−θ(Santa Cruz)でプローブし、次いで剥離し、膜画分およびDI画分については抗FcεRIγサブユニットで、WCEについては抗アクチン(Santa Cruz)で再プローブして、膜画分およびDI画分上で等価量のIgE受容体(すなわち、FcεR1γサブユニット)の発現を確認し、ならびにWCEにおいては等価量の細胞タンパク質、アクチンを確認した。同様に、図11Aに示されるように、PKC−θは、IgE受容体の架橋の2分後にBMMCの膜画分中で見い出すことができ、架橋の30分後には明確に顕著である。同様に、図11Bに示されるように、PKC−θは未刺激のBMMCにおけるDI画分中で低レベルで観察することができるが(すなわち、図11Bにおける0分)、存在するタンパク質の量は、IgE受容体の架橋後に増加する。図11Aおよび11Bに示されるように、等価量のIgE受容体が、すべての細胞のレーンに存在したことに注意のこと。
【0188】
従って、T細胞におけるシグナル伝達と同様に、PKC−θは、脂肪細胞中でのIgE受容体架橋の際に、膜の界面活性剤不溶性画分に迅速に移行することが見い出された。図11Cは、この結果が、すべてのレーンのBMMCがそれらの全細胞抽出物中で等価量のPKC−θを有したので、単に異なるレーン中のPKC−θの量の違いに起因するのではなかったことを確証する。
【0189】
実施例6
PKC−δおよびPKC−βの分布は、BMMC上でのIgE受容体架橋の際に有意に変化しない
2つのさらなるPKCファミリーメンバー、PKC−δおよびPKC−βは、IgE受容体架橋後に脂肪細胞機能を媒介することに関与していた(Nechushtanら、Blood 95:1752-1757(2000);Kalesnikoffら、J.Immunol.168:4737-4746(2002))。他のPKCファミリーメンバーがIgE受容体架橋後にBMMC中の膜に移行されるか否かを決定するために、その結果が図11A〜11Cに提示される実施例5において記載された実験からの画分(すなわち、膜、DI、およびWCE画分)を、抗PKC−δ(図12A)および抗PKC−βI/βII(図12B)(両方ともSanta Cruz Biotechnology Inc.より)を使用する、PKC−δおよびPKC−β(PKC−θの代わりに)についてプローブされるブロットを用いるウェスタンブロッティング分析に供した。図12Aおよび12Bに示されるように、誘導性膜移行はPKC−β(図12A)およびPKC−δ(図12B)については検出されず、両方とも細胞質ゾル、膜、および界面活性剤不溶性画分中に、刺激(すなわち、IgE受容体の架橋)の前後で等価量存在する。これらの結果は、脂肪細胞中のIgE受容体シグナル伝達において、PKC−βとPKC−δの両方とのPKC−θの調節の重要な違いを実証する。
【0190】
実施例7
PKC−θノックアウトマウスからの脂肪細胞は、野生型マウスからの脂肪細胞とは異なる
PKC−θノックアウトマウスの研究は、PKC−θがTCR媒介性T細胞活性化のために必要であることを示した(Sunら、Nature 404:402-407(2000))。PKC−θノックアウトマウスからのBMMCが野生型マウスからのBMMCと異なるか否かに関する決定を行った。これを行うために、PKC−θノックアウトマウスを入手し、T細胞増殖欠損を、Sunら、Nature 404:402-407(2000)に記載される方法に従って確認した(データ示さず)。PKC−θ欠損の効果を、粘膜脂肪細胞(MMC)と結合組織脂肪細胞(CTMC)の両方において試験した。これらの別個の脂肪細胞表現型は、顆粒の組成およびメディエーター含量、ならびにそれらの解剖学的分布が異なる(Beilら、Histol Histopathol.15:937-946(2000)を参照のこと)。MMCは、肺および腸粘膜において見い出され、高レベルのプロテアーゼ、トリプターゼを含む。これらの顆粒は、プロテオグリカンであるコンドロイチン硫酸が豊富であり、細胞をアルシアンブルーで染色することを可能にする。対照的に、腸、皮膚、および腹腔において見い出されるCTMCは、高レベルのトリプターゼとチマーゼの両方を発現し、MMCよりも比較的高レベルのヒスタミンを放出する。これらの顆粒はプロテオグリカンであるヘパラン硫酸を含み、このことは、これらをアルシアンブルーではなくトルイジンブルーで染色されることを可能にする。これらの2つの表現型的に区別できる脂肪細胞サブセットは、それらのインビボ機能および調節において異なるようであるが(例えば、MillerおよびPemberton,Immunology 105:375-90(2002)を参照のこと)、、これらの違いの正確な性質はなお研究中である。脂肪細胞上のPKC−θの効果を十分に調べるために、各々の脂肪細胞サブセットをPKC−θノックアウトマウスで試験した。MMCは骨髄前駆細胞からインビトロ誘導した。対照的に、CTMCは、マウスの腹腔から成熟型で回収可能であった。
【0191】
最初に、野生型マウスおよびPKC−θノックアウトマウスからのCTMCおよびBMMCを表現型的に比較した。これを行うために、CTMCを、腹腔洗浄液によって単離し、サイトスピンを使用して顕微鏡スライド上で回転させ、トルイジンブルーで染色し、次いで、サフラニンで対比染色した。代替的には、細胞をWright's-Geimsaで染色した。いずれかの染色プロトコールが脂肪細胞顆粒を同定する。腹腔脂肪細胞の数もしくはパーセンテージ、または細胞あたりの顆粒密度もしくは分布において、野生型マウスとPKC−θノックアウトマウスの間で違いは明らかではなかった(データ示さず)。野生型マウスおよびPKC−θノックアウトマウスのBMMCを、実施例5に記載されるように単離し、サイトスピンを使用して顕微鏡スライド上で回転させ、3%酢酸中の1%アルシアンブルーで5分間染色して、顆粒を染色した。細胞をサフラニンで対比染色した。図13Aに示されるように、野生型マウスからのBMMCは、PKC−θノックアウトマウスからのBMMCよりもより多くの顆粒化を示した。
【0192】
次に、IgE受容体架橋後のBMM中の顆粒化の違いを提唱するために、細胞表面アネキシン染色を利用した。細胞表面アネキシン染色は脱顆粒に伴って、顆粒膜融合および原形質膜上のホスファチジルセリン曝露に従って増加する。細胞表面アネキシン発現の分析のために、野生型マウスまたはPKC−θノックアウトマウス由来のBMMCに、0.2μg/ml IgE抗DNPで一晩処理することによって、IgE抗DNPをロードした。翌日、細胞を収集し、PACM緩衝液中で洗浄した。FITCアネキシンを加え、3分間、37℃で細胞とインキュベートした。時間ベースのデータ取得を、37℃サンプルチャンバーを装着したFACScan上で開始し、示された濃度のDNP-BSAを付加するために、中断して顆粒化を誘導し、次いでサンプルあたり10分間再開した。従って、細胞をFITC標識アネキシンの存在下で脱顆粒を誘導した。細胞表面におけるアネキシンの発現は、脱顆粒でのでの細胞膜との顆粒膜の融合を示す。平均蛍光強度を、時間の関数としてプロットした(図13B)。
【0193】
図13Bにおいて示されるように、野生型と比較して、PKC−θノックアウトマウスからのBMMCは、脱顆粒の際により少ない細胞表面アネキシン染色を示した。これは、アルシアンブルー染色による、それらのより少ない顆粒含量と一致している(図13Aを参照のこと)。
【0194】
実施例8
PKC−θノックアウトマウスは減少したIgEレベルを有する
次に、野生型マウスおよびPKC−θノックアウトマウスからのCTMC上のIgE受容体のレベルを比較した。これを行うために、野生型マウスおよびPKC−θノックアウトマウスの腹腔をPIPES-EDTA緩衝液で洗浄した。個々のマウスからの未分画の腹腔洗浄液の細胞を、1% BSAを含むPBS(PBS-BSA)で洗浄し、5μg/ml IgE抗DNPとともに、または抗体なしで、氷上にて30分間インキュベートした。細胞をPBS-BSAで洗浄し、次いで、FITC標識した抗マウスIgEおよびPE標識した抗ckit(BD-Pharmingen)で染色した。平均蛍光強度を、フローサイトメトリーによって定量した。図14Aに示されるように、野生型と比較して、PKC−θノックアウトマウスは、CTMC表面に結合したIgEの有意に減少したレベルを有した。対照的に、ckitの発現のレベルには違いがなかった(図14B)。CTMCの表面IgE受容体に結合したIgEのレベルは、動物中で循環しているIgEのレベルと関連する。CTMC上の減少した脂肪細胞結合IgEは、PKC−θノックアウトマウスが低レベルのIgEを有する可能性があることを示唆する。
【0195】
さらに、有意な違いを、野生型マウスおよびPKC−θノックアウトマウスの血清抗体レベルの間で観察した。これらの研究のために、野生型マウスおよびPKC−θノックアウトマウスからの血清サンプルを、IgE、IgG1、およびIgAの含量についてアッセイした。これを行うために、Maxi-Sorp ELISAプレート(Nunc,Rochester,NYから市販されている)を、抗マウスIgE(Pharmingen,San Diego,CAから市販されている)、IgAのための抗マウスκ軽鎖(Sigma,St.Louis,MOから市販されている)、またはIgG1のための抗マウスIgG(Fab特異的;Sigma)でコートした。プレートを、0.05% Tween-20(PBS-Tween)を含むPBSで洗浄し、次いでPBS中の0.5%ゼラチンで、室温にて2時間ブロックした。血清希釈物をPBS-Tween中に加え、室温で2〜6時間インキュベートした。結合を、マウスIgEまたはIgA(Southern Biotechnology Associates,Inc.,Birmingham,ALから市販されている)、またはIgG1(Pharmingen)に対して指向される特異的ビチオン化抗体、続いてHRP-ストレプトアビジン(Southern Biotechnology Associates)およびSure-Blueペルオキシダーゼ基質(Kirkegaard and Perry Labsから市販されている)を使用して検出した。Igレベルを、適切なアイソタイプの精製標準(Pharmingen)を使用して定量した。
【0196】
従って、個々のマウスからの血清試料は、特異的ELISAを使用して適切な抗体アイソタイプのレベルについてアッセイし、精製標準に対する比較によって定量した。図15Aに示されるように、IgEレベルは、PKC−θノックアウトマウスにおいて有意に減少した。しばしばIgEと協調して調節されるIgG1もまた減少した(図15B)。対照的に、IgAレベルは、野生型と比較して、PKC−θノックアウトマウスにおいてより高かった(図15C)。
【0197】
確かに、PKC−θノックアウトマウスからのCTMCは、抗IgEを用いて、より少ないインビトロ脱顆粒を有することが見い出され(データ示さず)、これは、循環IgEの減少レベル、および脂肪細胞結合IgEの減少と一致した(図14Aおよび15Aを参照のこと)。
【0198】
PKC−θノックアウトマウスにおいて報告されたT細胞活性化欠損とは異なり、有意なインビトロ脂肪細胞機能欠損は、PKC−θノックアウトマウスからのBMMCにおいては観察されなかった(データ示さず)。これらの細胞は骨髄中の前駆細胞からインビトロで誘導されるので、これらは、インビボレベルのIgEによって影響を受けず、内因性IgE抗DNPをインビトロでロードすることができる。次に、DNP-BSAとのIgE受容体の架橋の際に、PKC−θノックアウトマウスからのBMMCが、野生型マウスからのBMMCによって産生されるものと同様のレベルで、脱顆粒し、ロイコトリエンを生成し、およびサイトカインを産生するか否かを決定するための研究を実行した。これらの研究のために、方法に従って、脂肪細胞を、一晩、DMEM中の10% HI FCS+PS/glnおよび50μM βME+50ng/ml 組換えマウスIL-3+0.1μg/ml 抗DNP-IgE(Sigma)中でプレートした。細胞をPACM(110mMNaCl、5mM KCI、5mM CaCl2、2mM MgCl2、および0.05% BSAを含む25mM PIPES、pH 7.2)中で洗浄し、2.5×105細胞/mlの最終濃度で、DNP-BSA(Calbiochem,San Diego,CAから市販されている)の滴定にプレートして、IgE受容体またはイオノマイシンを架橋した。
【0199】
ヒスタミン、B-ヘキソシミニダーゼ、およびロイコトリエン産生の研究のために、細胞を、DNP-BSAまたはイオノマイシンの存在下で、37℃にて30分間培養し、次いで、上清を収集し、すぐに試験を行うかまたは凍結させるかのいずれかを行った。脱顆粒およびロイコトリエン産生実験の結果は、PKC−θノックアウトマウスのBMMCが通常レベルの脱顆粒およびロイコトリエン産生を有することを示した(データ示さず)。最大脱顆粒は、0.1% Triton X-100を用いて細胞のアリコートを溶解することによって決定した。β−ヘキソサミニダーゼについては、上清を、0.08M クエン酸ナトリウム pH 4.5中のp-ニトロフェニルN-アセチルB-Dグルコサミニド(Sigma)を用いて、37℃で一晩インキュベートした。12〜18時間後、反応を、1N NaOHの付加によって停止し、β−ヘキソサミニダーゼを、分光光度計にて405nmの吸収を読み取ることによって定量した。最大顆粒の際に、有意な違いは観察されなかった(データ示さず)。
【0200】
サイトカイン産生アッセイのために、抗DNP-IgE中で一晩培養した細胞を、上清を収集する前に、DNP-BSAとともにインキュベートして、IgE受容体架橋を6時間誘導した。ロイコトリエンについて、LT(C4/D4/E4)(ALPCO(Windham,NH)から市販されている)に特異的なELISAを使用して、またはIL-6、IL-13、もしくはGM-CSFについては、特異的ELISAアッセイ(R&D Systems,Minneapolis,MN)を使用して上清を、アッセイした。図16A〜16Cに示されるように、PKC−θノックアウトマウスからのBMMCは、野生型マウスからのBMMCよりも低いレベルのサイトカインTNF-α(図16A)、IL-13(図16B)、およびIL-6(図16C)を一貫して産生した。
【0201】
次に、C57BL/6マウス(The Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)からの脾臓を単一細胞懸濁物から作製し、CD4+細胞を、製造業者の説明書に従って抗CD4磁気ビーズ、次にDetach-A-bead(Dynal Biotech)によって単離した。細胞は、休止T細胞としてアッセイするか、またはエフェクター細胞を生成するように活性化させるかのいずれかであった。10% FCS、2mM L-グルタミン、5×10-5M 2-メルカプトエタノール、ペニシリン、ストレプトマイシン、ピルビン酸ナトリウム、および非必須アミノ酸(すべてGibco Life Technologies,Invitrogen,Carlsbad,CAの関連会社より)を補充したDMEM培地中の6×105CD4+細胞/mlを、1μg/ml抗CD3抗体および4μg/ml抗CD28抗体でコートした24ウェルプレートにプレートすることによって、エフェクター細胞を生成した。Th1-スキューT細胞を、30ng/ml rmIL-12(Wyeth,Cambridge,MA)、10U/ml rhIL-2(Invitrogen,Carlsbad,CA)、および5μg/ml 抗マウスIL-4抗体の存在下で培養した。TH-2スキューT細胞を、40ng/ml rmIL-4(R&D Systems,Minneapolis,MN)、10U/ml rhIL-2(Invitrogen)、および5μg/ml 抗マウスIFN-γ抗体の存在下で培養した。刺激を与えた3日後、さらに3〜4日間 IL-2(5U/ml)の非存在下で、細胞を拡張した。休止CD4+T細胞またはTh1もしくはTh2エフェクター細胞を、1×105細胞/ウェルで、0.5μg/mlの抗CD3(2C11)でコートした96ウェル平底プレートにプレートした。すべての抗体は、B-D PharMingen,San Jose,CAからであった。3日後、細胞培養上清を収集し、IL-4およびIL-5について、サイトカインビーズアッセイ(FACS)によってアッセイした。
【0202】
図17Aおよび17Bに示されるように、PKC−θノックアウトマウスからのT細胞サイトカインデータは、これらのマウスが、減少したレベルのこれらサイトカインの両方を産生したことを示した。
【0203】
未処理のPKC−θノックアウトマウスが循環IgEおよびIgG1レベルに欠けることは、インビボでホメオスタシスレベルのIL-4を維持する際のPKC−θにおける役割と一致するという結果を示す。IL-4は、Th2サイトカインであり、これは、IgEおよびIgG1合成を生じる、Ig(免疫グロブリン)遺伝子スイッチングにおいて役割を有する(BacharierおよにGeha,J.Allergy Clin.Immunol.105 (2 Pt 2):S547-58(2000);ならびにBergstedt-Lindqvistら、Eur.J.Immunol.18:1073-1077(1988)を参照のこと)。ドミナントネガティブ遺伝子構築物のT細胞発現は、PKC−θが、GDP/GTP交換因子Vavと同調して、IL-4遺伝子転写を活性化することを実証した(Hehnerら、J.Immunol.164:3829-3836(2000)を参照のこと)。
【0204】
実施例9
PKC−θノックアウトマウスは、抗IgEに応答して、または内因性IgEの存在下で、PCAモデルにおいて耳の腫脹の増大を有しない
PKC−θがIgE媒介性脂肪細胞活性化に関与するか否かを決定するために、PKC−θノックアウトマウスを、受動皮膚アナフィラキシー(PCA)を調べる呼吸器疾患マウスモデルにおいて評価した。従って、PKC−θがIgE媒介性脂肪細胞活性化に関与しているか否かを決定するために、PKC−θ-/-(すなわち、PKC−θノックアウト)マウスおよびC57BL/6野生型対照に、左の耳に抗IgE(Pharmingen;20μlのPBS中0.5μg/kg)を皮内で試験した。対照として、動物は反対側の右耳に20μlのPBSを注入した。抗IgE試験の前に、ベースラインの耳の厚さを、.0001''まで測定する技術者用マイクロメーターUpright Dial Gauge(Mitutoyo(Japan)から市販されている)を使用して決定した。耳の厚みを試験後、1時間、2時間、4時間、および6時間目に収集し、ベースライン上の読み取りにおける増加を表わした。
【0205】
図18に示されるように、PKC−θノックアウトマウスは、抗IgEに応答した耳の膨張の増加を有さなかった。確かに、抗IgE試験後、耳の腫脹は、PKC−θノックアウトマウスと比較して、1時間の時点で野生型動物において約2.5倍大きかった(図18)。これらのマウスにおける減少した耳の腫脹応答は、細胞表面および循環のIgEレベルと一致している。上記のように、PKC−θ欠損は、より少ない脂肪細胞顆粒(図13A〜13B)およびより低いIgEレベル(図14A)を生じる。これらの効果は、脂肪細胞機能を修飾することに対する減弱されたT細胞依存性効果に部分的に起因するようである(Boyce,J.Allergy Clin.Immunol.111:24-32(2003))。
【0206】
PKC−θがIgE媒介性脂肪細胞シグナル伝達に関与しているか否かに取り組むために、脂肪細胞欠損KitW/KitW-vマウス(the Jackson Laboratoryから市販されている)を、PKC−θノックアウトマウスまたは野生型マウスのいずれかに由来する脂肪細胞を用いて、それらの脂肪細胞欠損について選択的に修復した。換言すると、PKC−θノックアウトマウスまたは正常な野生型マウスからの脂肪細胞を、KitW/KitW-vマウスに移植した(この養子免疫伝達技術は、GalliおよびLantz、Allergy.In Fundamental Immunology,W.E.Paul(編),pp.1137-1184,Lippincott-Raven Press,Philadelphia PA 1999;ならびにWilliamおよびGalli,J.Allergy Clin.Immunol.105(5):47-859(2000)に概説されている)。手短に述べると、PKC−θノックアウトマウスまたは野生型マウスからの1×106BMMCを20μlのDMEM中に再懸濁し、7週齢の脂肪細胞欠損KitW/KitW-vマウス(10匹の動物/群)の左耳と右耳の両方に注入した(1×106BMCMC/耳)。12週間後(養子免疫伝達された脂肪細胞が接合組織内で成熟可能であるために適切な時間の間)、マウスを左耳へのIgE抗DNP(5μg/kg)での皮内注射によって感作させた。対照として、動物は、右の耳に0.9%生理食塩水を注入した。24時間後、動物を静脈内DNP-HSA(10mg/kg)で試験した。ベースライン耳測定試験の前、ならびに試験の後1時間、2時間、4時間、および6時間目に収集した。
【0207】
結果は、脂肪細胞を欠くPKC−θを用いて再構成されたKitW/KitW-vマウスは、野生型脂肪細胞を用いて同じ処理を行って再構成されたKitW/KitW-vマウスと比較して、耳の膨潤について違いを示さなかった(データ示さず)。これらの結果は、PKC−θマウスにおける耳の腫脹が、T細胞依存性エフェクター機能に直接的に起因するか、および/または他の免疫細胞型に間接的に依存するかでありそうであることを示唆する。阻害されるか、または免疫細胞機能に影響を与えるいくつかのT細胞サイトカインには、IL-4、IL-5、TNF-αが含まれる(図17A、17B、データ示さず)。
【0208】
しかし、脂肪細胞のデータは、PKC−θの阻害が脂肪細胞応答を直接的に調節するかもしれないことを示唆する。上記に議論されるように、PKC−θは、IgE受容体架橋の際に活性化ループ上で迅速にリン酸化されることが見い出された(図10A〜10Bを参照されたい)。PKC−δまたはPKC−βI/βIIではなく、PKC−θの細胞下分布は、IgE受容体架橋の際に変化される(図11A〜12Bを参照されたい)。最も重要なことには、IgEに応答して、PKC−θノックアウトマウスBMMCによる減弱したサイトカイン産生が存在する(図16A〜16C)。これらの細胞は骨髄中の前駆細胞からインビトロで誘導され、かつインビボレベルのIgEによっては影響されない。
【0209】
別の実験において、PKC−θノックアウトマウス(すなわち、PKC−θ-/-)マウスおよびC57BL/6野生型対照を、試験の24時間前に、モノクローナルIgE抗DNP(Sigma;20μlの0.9%生理食塩水中5μg/kg)を用いる、左の耳への皮内注射によって受動的に感作させた。対照として、動物は、対側の右の耳に20μlの0.9%生理食塩水を注入した。24時間後、ベースラインの耳測定を収集し、次いで、動物をDNP-HSA(100μlの0.9%生理食塩水中10mg/kg)を用いる静脈内試験に供した。次の6時間の期間にわたって(すなわち、試験後1時間、2時間、4時間、および6時間での読み取り)、耳の厚みの測定を上記と同様に収集した。
【0210】
図19に示されるように、PKC−θノックアウトマウスは、同じに処理された野生型対応物と比較して、有意に少ない耳の膨張を有した。これらのPCA研究の結果(図18および19)は、動物疾患モデルにおけるアレルギーおよび喘息においてPKC−θ低分子アンタゴニストの使用を支持する。
【0211】
実施例10
PKC−θノックアウトマウスからのTH1およびTH2 T細胞は、PKC−θ野生型マウスと比較して、刺激に対する応答の際に減少した増殖を示す
PKC−θノックアウトマウスからの分化したT細胞が、刺激に応答するそれらの能力において正常であるか否かを決定するために、野生型マウスおよびPKC−θノックアウトマウスからの脾臓細胞をインビトロでTH1またはTH2集団に分化させて、PKC−θ発現の非存在下でのTヘルパー細胞のサブセットの増殖欠損を確認した。これらの実験のために、未処理のT細胞を単離し、TH1およびTH2エフェクター細胞を生成した。これを行うために、C57/B6マウス(Taconic,Germantown,NYから市販されている)からの脾臓を、単一細胞懸濁物から作製した。赤血球細胞(RBC)をRBC溶解緩衝液(0.0M Tris-HCl緩衝液pH 7.5中0.3g/L 塩化アンモニウム)で溶解し、2回洗浄した。CD4+細胞を、抗CD4磁気粒子によって、次にDetach-A-Bead(Dynal)によって、製造業者の説明書(Dynal Biotech,Oslo,Norway)に従って単離した。細胞を、未処理T細胞としてアッセイするか、または活性化してエフェクター細胞を生成した。
【0212】
10% FCS、2mM L-グルタミン、5×10-5M 2-メルカプトエタノール、ペニシリン、ストレプトマイシン、ピルビン酸ナトリウム、および非必須アミノ酸(すべてGibco Life Technologiesより)を補充したDMEM培地中の6×105CD4+単離物/mlを、1μg/ml抗CD3抗体および4μg/ml抗CD28抗体でコートした24ウェルプレートにプレートすることによって、未処理T細胞を活性化することによって、エフェクター細胞を生成した。TH1-スキューT細胞を、30ng/ml 組換えマウスIL-12(Wyeth,Cambridge,MA)、10U/ml 組換えヒトIL-2(Invitrogen,Carlsbad,CA)、および5μg/ml 抗マウスIL-4抗体の存在下で3日間培養した。TH-2スキューT細胞を、40ng/ml 組換えマウスIL-4(R&D Systems,Minneapolis,MN)、10U/ml 組換えヒトIL-2(Invitrogen)、および5μg/ml 抗マウスIFN-γ抗体の存在下で3日間培養した。すべての抗体は、B-D PharMingen,San Jose,CAからであった。
【0213】
増殖アッセイのために、TH1-およびTH2-エフェクター細胞を、1×105細胞/0.2ml/ウェルで、種々の濃度の抗CD3(2C11)でコートした96ウェル平底プレートに、示されるように可溶性5μg/mlの抗CD28(クローン37.51)および/または10U/mlの組換えヒトIL-2の存在下または非存在下で、プレートした。2日目に、0.5μCiの[3H]チミジン(Amersham Bioscience,Piscataway,NJ)でパルスし、6〜8時間後に、96ウェルプレートハーベスターを使用して、フィルターに収集した。取り込まれた放射能を、液体シンチレーションカウンター(Wallac,Gaithersburg,MD)を使用して測定した。すべての抗体は、B-D PharMingen,San Jose,CAからであった。
【0214】
図20および21に示されるように、PKC−θノックアウトマウスからのTH1およびTH2細胞は、TCR/CD28副刺激の際と同様に(それぞれ、図20Aおよび図21A)、最適(0.5μg/ml)と最適以下(0.05μg/ml)の抗CD3シグナル強度の両方で(それぞれ、図20Cおよび図21C)、TCR刺激に対する増殖応答を有意に減少した。PKC−θ非依存性経路によるT細胞増殖を支持するための外因性IL-2の付加は、PKC−θノックアウトマウスからの未処理のTH0、TH1、およびTH2細胞の減少した増殖応答を部分的に克服したが、TCR/CD28副刺激と組み合わせて、最適で0.5μg/ml抗CD3シグナルのみであった(抗CD28ありは図20B、および抗CD28なしは図20D)。最適以下の0.05μg/ml抗CD3では、CD28の副刺激は、PKC−θノックアウトマウスからの細胞の増殖のほぼ完全な欠如を克服することに失敗した(図21A)。これらの条件において、非常に適度な外因性IL-2の効果が存在し(図21Bおよび21D)、PKC−θノックアウトマウスからのTH2細胞の増殖は、野生型マウスからのTH2細胞の増殖の約30%を残していた。
【0215】
これらの結果は、PKC−θノックアウトT細胞によるIL-2産生の阻害とともに(例えば、Sunら、Nature 404:402-407(2000)を参照のこと)、PKC−θ活性がこれらの細胞において阻害される場合、TCR刺激誘導性の増殖が、TH0、TH1、およびTH2細胞によって持続可能でないことを示唆する。それゆえに、減少したTH2サイトカイン産生と合わせると、これらのTヘルパー細胞は、喘息およびアレルギー性病理においてT細胞依存性経路を媒介する最適なエフェクター細胞として機能しない。これらの所見より、本発明のさらなる局面は、TH2 T細胞においてPKC−θを標的とすることである。従って、本発明は、TH2 T細胞においてPKC−θを標的とすることによって、喘息の徴候を予防および/または改善するための治療的介入をさらに提供する。
【0216】
本発明は図面および前述の説明において、詳細に例証および説明されてきたが、これは例示であって特性の限定でないと見なされるべきである。好ましい実施形態が示されかつ説明されたに過ぎないこと、および本発明の精神の範囲内にあるすべての変更および改変が保護されることが望ましいことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】図1A〜1Cは、ヒトT細胞のTCR共刺激時のPKC−θ膜移動および誘導性活性化ループリン酸化を示す、ウェスタンブロッティング解析の写真の表示である。
【図2】図2A〜2Cは、PKC−θ活性化ループの自己リン酸化が、細胞内のキナーゼ活性に必要とされることを示す写真(図2Aおよび2C)ならびにグラフ(図2B)の表示である。
【図3】図3A〜3Dは、PKC−θキナーゼドメイン(PKC−θ KD)自己リン酸化のキャラクタリゼーション(図3A)、ならびにペプチドNFpSFMNPGMER(配列番号:64;式中、「pS」は、セリンがリン酸化されていることを示す;693〜703位の範囲)、m/z 705.52(図3B)、ペプチドALINpSMDQNMFR(配列番号:65;681〜692位の範囲)、m/z 760.48(図3C)およびペプチドTNTFCGTPDYIAPEILLGQK(配列番号:66;536〜555位の範囲)、m/z 1159.71 (図3D)の生成スペクトル(質量分析法で測定)を示す模式図である。注:図3Dにおいて、ヨードアセトアミドでアルキル化したシステインを#で示す。
【図4】図4A〜4Cは、表示したPKC−θ KDタンパク質および変異体の大腸菌ライセートのウェスタンブロッティング解析である。抗pT538 PKC−θでのイムノブロッティング(図4A)、および同等の発現を確認するための抗His(図4B)、表示したPKC−θ KDタンパク質および変異体のインビトロライセート活性を示すグラフ(図4C)。
【図5】図5A〜5Dは、切片再プロット 対 1/[ペプチド1](100mM NaCl)(図5A);傾き再プロット 対 1/[ペプチド1](100mM NaCl)(図5B);切片再プロット 対 1/[ペプチド1](625mM NaCl)(図5C);および傾き再プロット 対 1/[ペプチド1](625 NaCl)(図5D)を示す一連のグラフである。
【図6】図6A〜6Cは、PKC−θ KDが動力学的に挙動し得る種々の機構を示す一連の模式図である。図6Aは、ADPが放出される最終生成物である時系列(sequential ordered)機構を示す。図6Bは、ADPが放出される最終生成物である動力学的機構を示し、図6Cは、ランダム機構を示す。図6A〜6Cにおいて、「E」は、酵素を表し、「A」は、基質Aを表し、「B」は、基質Bを表し、「P」は、生成物Pを表し、「Q」は、生成物Qを表す。
【図7】図7A〜7Dは、PKC−θ KDに関するkcat(図7Aおよび7C)ならびにkcat/Km(図7Bおよび7D)に対する溶媒粘度効果を示す。図7Aは、種々のペプチド1でのkcat効果を示し、ATPを2.0mMに保持した。図7Bは、ペプチド1でのkcat/Kmを示し、ATPを0.125mMに保持した。図7Cは、種々のペプチド3でのkcat効果を示し、ATPを2.0mMに保持した。図7Dは、ペプチド3でのkCat/Kmを示し、ATPを2.0mMに保持した。白丸記号(○)は、スクロース増量における100mM NaClを示す;白逆三角記号(▽)は、スクロース増量における250mM NaClを示す;黒丸記号(●)は、Ficoll 400増量における100mM NaClを示す;および黒逆三角記号(▼)は、Ficoll 400増量における250mM NaClを示す。図7A〜7D中の点線は、傾き1を示す。
【図8】図8は、インヒビター基質がPKC−θ KD触媒活性を干渉し得る異なる機構を示す模式図である。図8において「E」は、酵素を表し、「A」は、基質Aを表し、「B」は、基質Bを表し、「P」は、生成物Pを表し、「Q」は、生成物Qを表す。
【図9】図9A〜9Bは、いくつかのPKC−θのペプチド基質配列を同定したペプチドアレイスキャン(図9A)およびPKC−θによってリン酸化されたことが確認されたペプチド(図9B)の表示である。
【図10】図10A〜10Bは、骨髄由来マスト細胞(BMMC)でのIgEレセプター架橋時に、PKC−θ活性化ループが誘導的にリン酸化されたことを示すウェスタンブロッティング解析の写真の表示である。
【図11】図11A〜11Cは、IgEレセプター架橋BMMCの膜画分(図11A)、界面活性剤不溶性画分(DI)(図11B)および全細胞抽出物(WCE)(図11C)のウェスタンブロッティング解析の写真の表示である。これは、IgEレセプター刺激BMMC内でのPKC−θ膜移動を示す。
【図12】図12A〜12Bは、PKC−δ(図12A)およびPKC−β(図12B)分布は、BMMCでのIgEレセプター架橋時に有意に変化しないことを示すウェスタンブロッティング解析の写真の表示である。
【図13】図13A〜13Bは、PKC−θノックアウトマウス由来BMMCは、野生型マウス由来BMMCよりも少ない顆粒を含むことを示す組織学的(図13A)およびグラフによる(図13B)表示である。図13Bのデータは、時間の関数としての、またはDNP-BSA濃度の関数としての細胞の平均蛍光強度(MFI)を示す。
【図14】図14A〜14Bは、PKC−θノックアウトマウス由来の腹腔マスト細胞は、野生型マウス由来細胞よりも低いレベルの細胞表面IgEを有する(図14A)が、同様のレベルの細胞表面ckitを有する(図14B)ことを示すグラフ表示である。p値はt-検定により決定した。
【図15】図15A〜15Cは、PKC−θノックアウトマウスが、野生型マウスと比べ、低下したレベルの血清IgE (図15A)およびIgG1(図15B)を有するが、増加したレベルのIgA (図15C)を有することを示すグラフ表示である。p値はt-検定により決定した。
【図16】図16A〜16Cは、IgEレセプター架橋後、PKC−θノックアウトマウス由来BMMCは、以下のサイトカイン:TNF-α(図16A)、IL-13 (図16B)およびIL-6(図16C)の産生を欠くことを示すグラフ表示である。
【図17】図17A〜17Bは、PKC−θノックアウトマウス由来の休止CD4+T細胞、TH1細胞およびTH2細胞が、IL-2の非存在下および0.5μg/ml 抗CD3の存在下での培養後、IL-4(図17A)およびIL-5(図17B)のレベルの低下を示したことを示すグラフ表示である。
【図18】図18は、PKC−θノックアウトマウスが、以下の実施例7に記載の受身皮膚アナフィラキシー(PCA)モデルにおいて、抗IgEに応答した耳の腫脹の増大を有しないことを示すグラフ表示である。耳の腫脹は、ベースラインからのΔ変化量で示した。統計学的解析は、student unpaired t検定を用いて行った。p値は、野生型対PKC−θノックアウト動物の比較を示す。
【図19】図19は、PKC−θノックアウトマウスが、以下に記載する受身皮膚アナフィラキシー(PCA)モデルにおいて、外因性IgEの存在下で耳の腫脹の増大を有しないことを示すグラフ表示である。耳の腫脹は、ベースラインからのΔ変化量で示した。統計学的解析は、student unpaired t検定を用いて行った。p値は、野生型対PKC−θノックアウト動物の比較を示す。
【図20】図20A〜20Dは、PKC−θノックアウトマウス由来のTH1およびTH2両T細胞は、PKC−θ野生型マウス由来のTH1およびTH2両T細胞と比べ、抗CD3刺激に対する増強の低下(0.5μg/ml)を示すことを示す棒グラフの表示である。PKC−θ野生型マウス由来(薄灰色バー)またはPKC−θノックアウトマウス由来(濃灰色バー)のTH0、TH1またはTH2細胞は、抗CD28 (図20A)、抗CD28+IL-2 (図20B)、抗CD28なし、およびIL-2なし(図20C)、ならびにIL-2あり、抗CD28の非存在下(図20D)でさらに刺激した。
【図21】図21A〜21Dは、PKC−θノックアウトマウス由来のTH1およびTH2両T細胞は、PKC−θ野生型マウス由来のTH1およびTH2両T細胞と比べ、抗CD3刺激に対する増強の低下(0.05μg/ml)を示すことを示す棒グラフの表示である。PKC−θ野生型マウス由来(薄灰色バー)またはPKC−θノックアウトマウス由来(濃灰色バー)のTH0、TH1またはTH2細胞は、抗CD28 (図21A)、抗CD28+IL-2 (図21B)、抗CD28なし、およびIL-2なし(図21C)、ならびにIL-2あり、抗CD28の非存在下(図21D)でさらに刺激した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PKC−θタンパク質のモジュレーターを同定する方法であって、
(a) PKC−θタンパク質またはその機能性断片を、被験薬剤と接触させること;および
(b) 被験薬剤が、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性をモジュレートするかどうかを測定することを含み、
ここで、被験薬剤の存在下におけるPKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性の変化は、PKC−θタンパク質のモジュレーターの指標であるところの、方法。
【請求項2】
該キナーゼ活性を低下させるPKC−θタンパク質のモジュレーターが、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のインヒビターである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該キナーゼ活性を増大させるPKC−θタンパク質のモジュレーターが、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のアクチベーターである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
PKC−θタンパク質が全長PKC−θタンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
PKC−θタンパク質が、全長PKC−θタンパク質の機能性バリアントである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該機能性断片が、PKC−θキナーゼドメインである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記測定工程が、被験薬剤のキナーゼ活性を被験薬剤の非存在のときと比較することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記接触工程が、PKC−θタンパク質またはその機能性断片と被験薬剤の反応混合物を提供することにより行なわれる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
反応混合物が、50mM〜100mM、100〜150mM、150〜200mMおよび200〜250mMおよび250〜300mMからなる群より選択される濃度のNaClを含むバッファーの状態である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
NaClの濃度が250mMである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
PKC−θタンパク質またはその断片が、原核生物細胞から得たものである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
原核生物細胞が大腸菌である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記接触工程が細胞内で行なわれる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
PKC−θタンパク質のモジュレーターが、哺乳動物における喘息の処置に有用である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物がヒトである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
喘息がIgE媒介性喘息である、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記キナーゼ活性が、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化が、配列番号:1の695位のセリン残基、685位のセリン残基、538位のトレオニン残基および536位のトレオニン残基からなる群より選択されるアミノ酸残基において起こる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
自己リン酸化が、配列番号:1の538位のセリン残基において起こる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
工程(a)が、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を被験薬剤およびPKC−θ基質と接触させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記キナーゼ活性がPKC−θ基質のリン酸化である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
PKC−θ基質がR-X-X-SモチーフまたはR-X-X-Tモチーフを含む(ここに、Rはアルギニンであり、Xは不明または既知のいずれかのアミノ酸であり、Sはセリンであり、Tはトレオニンである)、請求項20記載の方法。
【請求項23】
PKC−θ基質が、KKRFSFKKSFK (配列番号:5)、FARKGSLRQKN (配列番号:6)、FARKGSLRQ (配列番号:15)、KKRFSFKKSFK (配列番号:16)、QKRPSQRSKYL (配列番号:17)、KIQASFRGHMA (配列番号:18)、LSRTLSVAAKK (配列番号:19)、AKIQASFRGHM (配列番号:20)、VAKRESRGLKS (配列番号:21)、KAFRDTFRLLL (配列番号:22)、PKRPGSVHRTP (配列番号:23)、ATFKKTFKHLL (配列番号:24)、SPLRHSFQKQQ (配列番号:25)、KFRTPSFLKKS (配列番号:26)、IYRASYYRKGG (配列番号:27)、KTRRLSAFQQG (配列番号:28)、RGRSRSAPPNL (配列番号:29)、MYRRSYVFQT (配列番号:30)、QAWSKTTPRRI (配列番号:31)、RGFLRSASLGR (配列番号:32)、ETKKQSFKQTG (配列番号:33)、DIKRLTPRFTL (配列番号:34)、APKRGSILSKP (配列番号:35)、MYHNSSQKRH (配列番号:36)、MRRSKSPADSA (配列番号:37)、TRSKGTLRYMS (配列番号:38)、LMRRNSVTPLA (配列番号:39)、ITRKRSGEAAV (配列番号:40)、EEPVLTLVDEA (配列番号:41)、SQKRPSQRHGS (配列番号:42)、KPFKLSGLSFK (配列番号:43)、AFRRTSLAGGG (配列番号:44)、ALGKRTAKYRW (配列番号:45)、VVRTDSLKGRR (配列番号:46)、KRRQISIRGIV (配列番号:47)、WPWQVSLRTRF (配列番号:48)、GTFRSSIRRLS (配列番号:49)、RVVGGSLRGAQ (配列番号:50)、LRQLRSPRRTQ (配列番号:51)、KTRKISQSAQT (配列番号:52)、NKRRATLPHPG (配列番号:53)、SYTRFSLARQV (配列番号:54)、NSRRPSRATWL (配列番号:55)、RLRRLTAREAA (配列番号:56)、NKRRGSVPILR (配列番号:57)、GKRRPSRLVAL (配列番号:58)、QKKRVSMILQS (配列番号:59)、およびRLRRLTAREAA (配列番号:60)からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
PKC−θタンパク質のモジュレーターが、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性を少なくとも2倍低下させる、請求項1記載の方法。
【請求項25】
PKC−θタンパク質またはその機能性断片が細胞内にある、請求項1記載の方法。
【請求項26】
細胞が、マスト細胞およびCD4+T細胞からなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
工程(b)で同定された被験薬剤の効力を、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて評価することをさらに含み、対照薬剤と比べ、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて増大した効力を示す被験薬剤を、喘息の処置に有用であると同定する、請求項14記載の方法。
【請求項28】
PKC−θタンパク質のモジュレーターを同定する方法であって、
(a) PKC−θタンパク質またはその機能性断片を発現する細胞を、被験薬剤と接触させること;および
(b) 被験薬剤がPKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化を細胞内にて低減させるかどうかを測定することを含み、
ここで、被験薬剤の存在下におけるPKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化の変化は、PKC−θタンパク質のモジュレーターの指標であるところの、方法。
【請求項29】
該キナーゼ活性を低下させるPKC−θタンパク質のモジュレーターが、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のインヒビターである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
該キナーゼ活性を増大させるPKC−θタンパク質のモジュレーターが、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のアクチベーターである、請求項28記載の方法。
【請求項31】
PKC−θタンパク質が全長PKC−θタンパク質である、請求項28記載の方法。
【請求項32】
PKC−θタンパク質が、全長PKC−θタンパク質の機能性バリアントである、請求項28記載の方法。
【請求項33】
該機能性断片が、PKC−θキナーゼドメインである、請求項28記載の方法。
【請求項34】
前記測定工程が、被験薬剤のキナーゼ活性を被験薬剤の非存在のときと比較することを含む、請求項28記載の方法。
【請求項35】
PKC−θタンパク質のモジュレーターが喘息の処置に有用である、請求項28記載の方法。
【請求項36】
工程(b)で同定された被験薬剤の効力を、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて評価することをさらに含み、対照薬剤と比べ、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて増大した効力を示す被験薬剤を、喘息の処置に有用であると同定する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
細胞が原核生物細胞である、請求項28記載の方法。
【請求項38】
原核生物細胞が大腸菌である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化が、配列番号:1の695位のセリン残基、685位のセリン残基、538位のトレオニン残基および536位のトレオニン残基からなる群より選択されるアミノ酸残基において起こる、請求項28記載の方法。
【請求項40】
自己リン酸化が、配列番号:1の538位のトレオニン残基において起こる、請求項39記載の方法。
【請求項41】
喘息を患うか、または喘息症状を患う哺乳動物に、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の該キナーゼ活性を低下させるか、または機能性PKC−θタンパク質の産生を低減する薬剤の治療有効量を投与することを含む、喘息の処置方法。
【請求項42】
該薬剤を薬学的に許容され得る担体にて投与する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
担体がエーロゾルの形態である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
該薬剤を、静脈内、経口、経皮および筋肉内からなる群より選択される経路によって投与する、請求項41記載の方法。
【請求項45】
該薬剤が吸入によって投与される、請求項41記載の方法。
【請求項46】
喘息がIgE媒介性喘息である、請求項41記載の方法。
【請求項47】
該薬剤を、β-アドレナリン作用剤、テオフィリン化合物、コルチコステロイド類、抗コリン作用薬、抗ヒスタミン薬、カルシウムチャネル遮断薬およびクロモリンナトリウムからなる群より選択される薬物と共投与する、請求項41記載の方法。
【請求項48】
該薬剤が、PKC−θタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体である、請求項41記載の方法。
【請求項49】
該抗体がポリクローナル抗体である、請求項48記載の方法。
【請求項50】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項48記載の方法。
【請求項51】
該薬剤が核酸分子である、請求項41記載の方法。
【請求項52】
核酸分子がリボ核酸分子である、請求項51記載の方法。
【請求項53】
リボ核酸分子が、配列番号:3に示すヌクレオチド配列の一部分に相補的であるヌクレオチド配列を含む、請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記キナーゼ活性が、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化である、請求項41記載の方法。
【請求項55】
PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化が、配列番号:1の695位のセリン残基、685位のセリン残基、538位のトレオニン残基および536位のトレオニン残基からなる群より選択されるアミノ酸残基において起こる、請求項54記載の方法。
【請求項56】
PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化が、配列番号:1の538位のトレオニン残基において起こる、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記キナーゼ活性がPKC−θ基質のリン酸化である、請求項41記載の方法。
【請求項58】
PKC−θ基質がR-X-X-SモチーフまたはR-X-X-Tモチーフを含む(ここで、Rはアルギニンであり、Xは不明または既知のいずれかのアミノ酸であり、Sはセリンであり、Tはトレオニンである)、請求項57記載の方法。
【請求項59】
PKC−θ基質が、KKRFSFKKSFK (配列番号:5)、FARKGSLRQKN (配列番号:6)、FARKGSLRQ (配列番号:15)、KKRFSFKKSFK (配列番号:16)、QKRPSQRSKYL (配列番号:17)、KIQASFRGHMA (配列番号:18)、LSRTLSVAAKK (配列番号:19)、AKIQASFRGHM (配列番号:20)、VAKRESRGLKS (配列番号:21)、KAFRDTFRLLL (配列番号:22)、PKRPGSVHRTP (配列番号:23)、ATFKKTFKHLL (配列番号:24)、SPLRHSFQKQQ (配列番号:25)、KFRTPSFLKKS (配列番号:26)、IYRASYYRKGG (配列番号:27)、KTRRLSAFQQG (配列番号:28)、RGRSRSAPPNL (配列番号:29)、MYRRSYVFQT (配列番号:30)、QAWSKTTPRRI (配列番号:31)、RGFLRSASLGR (配列番号:32)、ETKKQSFKQTG (配列番号:33)、DIKRLTPRFTL (配列番号:34)、APKRGSILSKP (配列番号:35)、MYHNSSQKRH (配列番号:36)、MRRSKSPADSA (配列番号:37)、TRSKGTLRYMS (配列番号:38)、LMRRNSVTPLA (配列番号:39)、ITRKRSGEAAV (配列番号:40)、EEPVLTLVDEA (配列番号:41)、SQKRPSQRHGS (配列番号:42)、KPFKLSGLSFK (配列番号:43)、AFRRTSLAGGG (配列番号:44)、ALGKRTAKYRW (配列番号:45)、VVRTDSLKGRR (配列番号:46)、KRRQISIRGIV (配列番号:47)、WPWQVSLRTRF (配列番号:48)、GTFRSSIRRLS (配列番号:49)、RVVGGSLRGAQ (配列番号:50)、LRQLRSPRRTQ (配列番号:51)、KTRKISQSAQT (配列番号:52)、NKRRATLPHPG (配列番号:53)、SYTRFSLARQV (配列番号:54)、NSRRPSRATWL (配列番号:55)、RLRRLTAREAA (配列番号:56)、NKRRGSVPILR (配列番号:57)、GKRRPSRLVAL (配列番号:58)、QKKRVSMILQS (配列番号:59)、およびRLRRLTAREAA (配列番号:60)からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、請求項58記載の方法。
【請求項60】
内因性PKC−θタンパク質の発現を欠く単離されたマスト細胞。
【請求項61】
外因性PKC−θタンパク質またはその断片を発現する、請求項40記載のマスト細胞。
【請求項1】
PKC−θタンパク質のモジュレーターを同定する方法であって、
(a) PKC−θタンパク質またはその機能性断片を、被験薬剤と接触させること;および
(b) 被験薬剤が、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性をモジュレートするかどうかを測定することを含み、
ここで、被験薬剤の存在下におけるPKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性の変化は、PKC−θタンパク質のモジュレーターの指標であるところの、方法。
【請求項2】
該キナーゼ活性を低下させるPKC−θタンパク質のモジュレーターが、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のインヒビターである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該キナーゼ活性を増大させるPKC−θタンパク質のモジュレーターが、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のアクチベーターである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
PKC−θタンパク質が全長PKC−θタンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
PKC−θタンパク質が、全長PKC−θタンパク質の機能性バリアントである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該機能性断片が、PKC−θキナーゼドメインである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記測定工程が、被験薬剤のキナーゼ活性を被験薬剤の非存在のときと比較することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記接触工程が、PKC−θタンパク質またはその機能性断片と被験薬剤の反応混合物を提供することにより行なわれる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
反応混合物が、50mM〜100mM、100〜150mM、150〜200mMおよび200〜250mMおよび250〜300mMからなる群より選択される濃度のNaClを含むバッファーの状態である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
NaClの濃度が250mMである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
PKC−θタンパク質またはその断片が、原核生物細胞から得たものである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
原核生物細胞が大腸菌である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記接触工程が細胞内で行なわれる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
PKC−θタンパク質のモジュレーターが、哺乳動物における喘息の処置に有用である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物がヒトである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
喘息がIgE媒介性喘息である、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記キナーゼ活性が、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化が、配列番号:1の695位のセリン残基、685位のセリン残基、538位のトレオニン残基および536位のトレオニン残基からなる群より選択されるアミノ酸残基において起こる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
自己リン酸化が、配列番号:1の538位のセリン残基において起こる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
工程(a)が、PKC−θタンパク質またはその機能性断片を被験薬剤およびPKC−θ基質と接触させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記キナーゼ活性がPKC−θ基質のリン酸化である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
PKC−θ基質がR-X-X-SモチーフまたはR-X-X-Tモチーフを含む(ここに、Rはアルギニンであり、Xは不明または既知のいずれかのアミノ酸であり、Sはセリンであり、Tはトレオニンである)、請求項20記載の方法。
【請求項23】
PKC−θ基質が、KKRFSFKKSFK (配列番号:5)、FARKGSLRQKN (配列番号:6)、FARKGSLRQ (配列番号:15)、KKRFSFKKSFK (配列番号:16)、QKRPSQRSKYL (配列番号:17)、KIQASFRGHMA (配列番号:18)、LSRTLSVAAKK (配列番号:19)、AKIQASFRGHM (配列番号:20)、VAKRESRGLKS (配列番号:21)、KAFRDTFRLLL (配列番号:22)、PKRPGSVHRTP (配列番号:23)、ATFKKTFKHLL (配列番号:24)、SPLRHSFQKQQ (配列番号:25)、KFRTPSFLKKS (配列番号:26)、IYRASYYRKGG (配列番号:27)、KTRRLSAFQQG (配列番号:28)、RGRSRSAPPNL (配列番号:29)、MYRRSYVFQT (配列番号:30)、QAWSKTTPRRI (配列番号:31)、RGFLRSASLGR (配列番号:32)、ETKKQSFKQTG (配列番号:33)、DIKRLTPRFTL (配列番号:34)、APKRGSILSKP (配列番号:35)、MYHNSSQKRH (配列番号:36)、MRRSKSPADSA (配列番号:37)、TRSKGTLRYMS (配列番号:38)、LMRRNSVTPLA (配列番号:39)、ITRKRSGEAAV (配列番号:40)、EEPVLTLVDEA (配列番号:41)、SQKRPSQRHGS (配列番号:42)、KPFKLSGLSFK (配列番号:43)、AFRRTSLAGGG (配列番号:44)、ALGKRTAKYRW (配列番号:45)、VVRTDSLKGRR (配列番号:46)、KRRQISIRGIV (配列番号:47)、WPWQVSLRTRF (配列番号:48)、GTFRSSIRRLS (配列番号:49)、RVVGGSLRGAQ (配列番号:50)、LRQLRSPRRTQ (配列番号:51)、KTRKISQSAQT (配列番号:52)、NKRRATLPHPG (配列番号:53)、SYTRFSLARQV (配列番号:54)、NSRRPSRATWL (配列番号:55)、RLRRLTAREAA (配列番号:56)、NKRRGSVPILR (配列番号:57)、GKRRPSRLVAL (配列番号:58)、QKKRVSMILQS (配列番号:59)、およびRLRRLTAREAA (配列番号:60)からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
PKC−θタンパク質のモジュレーターが、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のキナーゼ活性を少なくとも2倍低下させる、請求項1記載の方法。
【請求項25】
PKC−θタンパク質またはその機能性断片が細胞内にある、請求項1記載の方法。
【請求項26】
細胞が、マスト細胞およびCD4+T細胞からなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
工程(b)で同定された被験薬剤の効力を、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて評価することをさらに含み、対照薬剤と比べ、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて増大した効力を示す被験薬剤を、喘息の処置に有用であると同定する、請求項14記載の方法。
【請求項28】
PKC−θタンパク質のモジュレーターを同定する方法であって、
(a) PKC−θタンパク質またはその機能性断片を発現する細胞を、被験薬剤と接触させること;および
(b) 被験薬剤がPKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化を細胞内にて低減させるかどうかを測定することを含み、
ここで、被験薬剤の存在下におけるPKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化の変化は、PKC−θタンパク質のモジュレーターの指標であるところの、方法。
【請求項29】
該キナーゼ活性を低下させるPKC−θタンパク質のモジュレーターが、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のインヒビターである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
該キナーゼ活性を増大させるPKC−θタンパク質のモジュレーターが、PKC−θタンパク質またはその機能性断片のアクチベーターである、請求項28記載の方法。
【請求項31】
PKC−θタンパク質が全長PKC−θタンパク質である、請求項28記載の方法。
【請求項32】
PKC−θタンパク質が、全長PKC−θタンパク質の機能性バリアントである、請求項28記載の方法。
【請求項33】
該機能性断片が、PKC−θキナーゼドメインである、請求項28記載の方法。
【請求項34】
前記測定工程が、被験薬剤のキナーゼ活性を被験薬剤の非存在のときと比較することを含む、請求項28記載の方法。
【請求項35】
PKC−θタンパク質のモジュレーターが喘息の処置に有用である、請求項28記載の方法。
【請求項36】
工程(b)で同定された被験薬剤の効力を、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて評価することをさらに含み、対照薬剤と比べ、インビトロまたはインビボ喘息モデルにおいて増大した効力を示す被験薬剤を、喘息の処置に有用であると同定する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
細胞が原核生物細胞である、請求項28記載の方法。
【請求項38】
原核生物細胞が大腸菌である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化が、配列番号:1の695位のセリン残基、685位のセリン残基、538位のトレオニン残基および536位のトレオニン残基からなる群より選択されるアミノ酸残基において起こる、請求項28記載の方法。
【請求項40】
自己リン酸化が、配列番号:1の538位のトレオニン残基において起こる、請求項39記載の方法。
【請求項41】
喘息を患うか、または喘息症状を患う哺乳動物に、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の該キナーゼ活性を低下させるか、または機能性PKC−θタンパク質の産生を低減する薬剤の治療有効量を投与することを含む、喘息の処置方法。
【請求項42】
該薬剤を薬学的に許容され得る担体にて投与する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
担体がエーロゾルの形態である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
該薬剤を、静脈内、経口、経皮および筋肉内からなる群より選択される経路によって投与する、請求項41記載の方法。
【請求項45】
該薬剤が吸入によって投与される、請求項41記載の方法。
【請求項46】
喘息がIgE媒介性喘息である、請求項41記載の方法。
【請求項47】
該薬剤を、β-アドレナリン作用剤、テオフィリン化合物、コルチコステロイド類、抗コリン作用薬、抗ヒスタミン薬、カルシウムチャネル遮断薬およびクロモリンナトリウムからなる群より選択される薬物と共投与する、請求項41記載の方法。
【請求項48】
該薬剤が、PKC−θタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体である、請求項41記載の方法。
【請求項49】
該抗体がポリクローナル抗体である、請求項48記載の方法。
【請求項50】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項48記載の方法。
【請求項51】
該薬剤が核酸分子である、請求項41記載の方法。
【請求項52】
核酸分子がリボ核酸分子である、請求項51記載の方法。
【請求項53】
リボ核酸分子が、配列番号:3に示すヌクレオチド配列の一部分に相補的であるヌクレオチド配列を含む、請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記キナーゼ活性が、PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化である、請求項41記載の方法。
【請求項55】
PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化が、配列番号:1の695位のセリン残基、685位のセリン残基、538位のトレオニン残基および536位のトレオニン残基からなる群より選択されるアミノ酸残基において起こる、請求項54記載の方法。
【請求項56】
PKC−θタンパク質またはその機能性断片の自己リン酸化が、配列番号:1の538位のトレオニン残基において起こる、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記キナーゼ活性がPKC−θ基質のリン酸化である、請求項41記載の方法。
【請求項58】
PKC−θ基質がR-X-X-SモチーフまたはR-X-X-Tモチーフを含む(ここで、Rはアルギニンであり、Xは不明または既知のいずれかのアミノ酸であり、Sはセリンであり、Tはトレオニンである)、請求項57記載の方法。
【請求項59】
PKC−θ基質が、KKRFSFKKSFK (配列番号:5)、FARKGSLRQKN (配列番号:6)、FARKGSLRQ (配列番号:15)、KKRFSFKKSFK (配列番号:16)、QKRPSQRSKYL (配列番号:17)、KIQASFRGHMA (配列番号:18)、LSRTLSVAAKK (配列番号:19)、AKIQASFRGHM (配列番号:20)、VAKRESRGLKS (配列番号:21)、KAFRDTFRLLL (配列番号:22)、PKRPGSVHRTP (配列番号:23)、ATFKKTFKHLL (配列番号:24)、SPLRHSFQKQQ (配列番号:25)、KFRTPSFLKKS (配列番号:26)、IYRASYYRKGG (配列番号:27)、KTRRLSAFQQG (配列番号:28)、RGRSRSAPPNL (配列番号:29)、MYRRSYVFQT (配列番号:30)、QAWSKTTPRRI (配列番号:31)、RGFLRSASLGR (配列番号:32)、ETKKQSFKQTG (配列番号:33)、DIKRLTPRFTL (配列番号:34)、APKRGSILSKP (配列番号:35)、MYHNSSQKRH (配列番号:36)、MRRSKSPADSA (配列番号:37)、TRSKGTLRYMS (配列番号:38)、LMRRNSVTPLA (配列番号:39)、ITRKRSGEAAV (配列番号:40)、EEPVLTLVDEA (配列番号:41)、SQKRPSQRHGS (配列番号:42)、KPFKLSGLSFK (配列番号:43)、AFRRTSLAGGG (配列番号:44)、ALGKRTAKYRW (配列番号:45)、VVRTDSLKGRR (配列番号:46)、KRRQISIRGIV (配列番号:47)、WPWQVSLRTRF (配列番号:48)、GTFRSSIRRLS (配列番号:49)、RVVGGSLRGAQ (配列番号:50)、LRQLRSPRRTQ (配列番号:51)、KTRKISQSAQT (配列番号:52)、NKRRATLPHPG (配列番号:53)、SYTRFSLARQV (配列番号:54)、NSRRPSRATWL (配列番号:55)、RLRRLTAREAA (配列番号:56)、NKRRGSVPILR (配列番号:57)、GKRRPSRLVAL (配列番号:58)、QKKRVSMILQS (配列番号:59)、およびRLRRLTAREAA (配列番号:60)からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、請求項58記載の方法。
【請求項60】
内因性PKC−θタンパク質の発現を欠く単離されたマスト細胞。
【請求項61】
外因性PKC−θタンパク質またはその断片を発現する、請求項40記載のマスト細胞。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2007−525210(P2007−525210A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547362(P2006−547362)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/043281
【国際公開番号】WO2005/062918
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/043281
【国際公開番号】WO2005/062918
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
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