説明

噛合衝撃を低減した逆歯チェーン・スプロケット駆動システム

逆歯チェーン駆動システムは、接線TLと、制御ピン中心と初期接触位置とを通る初期接触参照線との間に噛合接触角τを画定する。リンクプレートの入口角βは、初期接触参照線と、内側歯面半径の弧の中心と初期接触位置とを通る内側歯面参照線とがなす角度として定義される。噛合衝撃角σは接線と内側歯面参照線とがなす角度として定義されσ=τ+βであり、β<9°、σ≦34°である。スプロケット歯の圧力角は調整可能であり、チェーンはβ<7°かつσ≦31°であるように最適化される。こうしてシステムは、リンク衝撃力FLとその結果としての衝撃エネルギーEを低減する。逆歯チェーンそのものは、チェーンが真直ぐに引張られた場合、0.007P≦λ≦0.017PとなるようピッチPと内側歯面突出量λとを画定する。外側歯面はチャンファを含み、チェーンとスプロケットの初期接触が常にチェーンの前方内側歯面上にあるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年9月9日に出願された米国特許仮出願第61/095,393号の出願日からの優先権およびその利益を主張するものであり、この米国特許仮出願第61/095,393号のすべての開示はここで参照することにより本明細書に明示的に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
逆歯チェーン10は、自動車用途におけるシャフト間の動力と運動の伝達に長く利用されてきている。図1に示すように逆歯チェーンは通常、挟み込まれたリンクプレート30の並びすなわち列30a、30bなどを有する無端チェーン構造となっており、リンクプレートのそれぞれには外側歯面37と内側歯面36とを有する一対の歯34があり、歯と歯の間には股部35が画定されている。また各リンクプレートには2つの開口32がリンク列を横断して整列し、そこに接続ピン40(例えば丸ピン、ロッカージョイントなど)を受けて列を枢動可能に結合する。そうして、駆動スプロケットまたは従動スプロケットとの噛合開始時に、リンクプレートの内側歯面(“内側歯面係合”の場合)または外側歯面(“外側歯面係合”の場合)のいずれかにおいて駆動のためにスプロケット歯と係合する際に、ピン中心Cを中心とするチェーン10の関節連結を提供する。ピン中心C同士はチェーンリンクピッチPの距離で離れている。“ピン中心C”という用語には、ピン40が丸ピン、ロッカージョイント、または別の好適なジョイントであるか否かに拘わらず、連続するリンク列30a、30bが相互に回転するための軸も含まれる。外側歯面37は直線側面であり(ただし、曲面もあり得る)、外側歯面角Ψで画定される。内側歯面は凸曲面であり、弧中心79(図3A)を中心とする半径Rの円弧部分から成る。
【0003】
自動車エンジンのタイミング駆動には内側歯面係合と外側歯面係合の両方の噛合形式が用いられてきているが、内側歯面係合の方がより一般的である。図1を参照すると、スプロケットとの噛合開始時に、フリーのチェーンスパンでは通常そうであるようにリンク列30a,30bが直線状に配置された状態で、リンクプレート30の前方(チェーンの移動方向に関して)の内側歯面36が、先行する列30aの隣接リンクプレート30の外側歯面37に対して外側突出λを有していることによって、内側歯面の噛合接触が可能となる。
【0004】
噛合開始時のチェーン−スプロケット間の衝撃は、チェーン駆動システムの騒音の主因であり、それはチェーンリンク列が係合範囲を出る時にスプロケット歯にぶつかる際に発生する。噛合現象の複雑な動的挙動は、当技術分野においては周知であり、チェーン−スプロケット間の噛合衝撃の大きさは、さまざまな因子の影響を受ける。その内の多角形効果(“弦作用”または“弦運動”と称される)は、チェーンが接線に沿ってスプロケットに近づく際に、スプロケットの上流にある“フリー”な、すなわち支持されていないスパンに横振動を誘起することが知られている。弦運動は、噛合時にチェーンがスプロケット歯と係合する際に生じ、チェーンの移動方向に対して直角方向と、チェーンとスプロケットとの同一面内に弦運動を起こさせる。この望ましくないチェーンの振動運動は、初期接触点において噛合するチェーンのリンク列とスプロケット歯との間に速度差を生じ、それにより、チェーンとスプロケット間の噛合衝撃および関連するチェーンの係合ノイズレベルの度合いに影響を及ぼす。
【0005】
図2Aと図2Bは、スプロケットに対する弦上昇を示す。弦上昇CRは通常、チェーンが角度α/2だけ移動する際のチェーンピン中心C(もしくはその他のチェーン接続点)の垂直方向変位として定義される。ここで、
CR=r−r=r[1−cos(180°/N)]
であり、rは弦の半径、すなわちスプロケット中心から、チェーンのピッチ長に等しい長さPのスプロケットピッチ弦までの距離であり、rはスプロケットのピッチ半径の理論値、すなわちピッチ直径PDの半分であり、Nはスプロケット歯の数であり、αはスプロケット歯角度、すなわち360°/Nである。図2Aは、チェーンピン中心Cがスプロケットと噛合した瞬間の第1の位置を示し、そこでは、接線TLとスプロケットピッチ直径PDとに同時に整列している。当技術分野で周知であり、本明細書において使われるように、接線TLは、噛合するチェーンピン中心がスプロケットに近づく理論的直線経路である。ここで示すように、接線TLは水平方向に位置し、その場合接線TLは上死点、すなわちピッチ直径上の12時の位置においてピッチ直径PDに対する接線となる。つまり、チェーンピン中心がピッチ直径PD上に中心を置いて配置され、接線TLに直交する半径方向参照線上にも中心を置くように配置された場合、接線TLはピッチ直径PDに接する(接線がここに示すように水平方向であれば、参照線は垂直である)。図2Bは、スプロケットが角度α/2だけ回転した後の、同じピン中心Cの位置を示す。ここでは、ピン中心Cがスプロケット外周の周りの移動を続けた結果、横方向に距離CRだけ変位したことがわかる。このピン中心の垂直変位は、上流のチェーンスパンとその接線TLに対応する変位をもたらす。チェーンのピン中心Cが弦上昇および弦下降を経ながら移動する際の、この横方向の変位は、フリーなチェーンスパンの望ましくない振動を誘起する。
【0006】
このチェーンの望ましくない弦運動を低減する1つの試みが、Horieらの米国特許第6,533,691号明細書に記述されている。Horieらは、初期のスプロケット歯の噛合接触から全体的に噛合する(弦)位置に至るまで内側歯面が円滑な動きをすることを意図して、各リンクプレートの内側歯面が複合的な半径プロフィールで画定される逆歯チェーンを開示している。Horieらのリンクプレート形状での初期噛合接触は、リンクのトウ(toe)先端における内側歯面の凸面円弧部で起こり、内側歯面の第2の円弧部へ円滑かつ連続的に進んだ後に、先行リンクの外側歯面の全体噛合に移行する。
【0007】
弦運動は、Youngらによる米国特許出願公開第2006/0068959号明細書に開示のシステムによっても低減される。この開示においては、それぞれの隣接リンクプレートの外側歯面に対する、チェーンの内側歯面突出量は、チェーンピッチPの関数として定義され、関係する外側歯面に対する内側歯面の最大突出量λは、0.010×P≦λ≦0.020×Pの範囲内に入るように定義される。Youngらは、弦運動を制限するために内側歯面の初期噛合接触も組み込んだリンクプレートを開示しているが、その内側歯面噛合接触は、リンクプレートの同一の凸面円弧部で開始、終了し、その後、噛合接触が先行リンクの外側歯面全体噛合接触へ移行して、噛合サイクルが完結する。
【0008】
米国特許第6,244,983号明細書において、Matsudaは全噛合サイクルにおいてスプロケットとの内側歯面噛合を有するリンクプレートを開示している。Matsudaのリンクプレートの外側歯面は、スプロケット歯とは接触しないが、内側歯面の噛合ジオメトリによって係合時の弦運動が制限されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,533,691号
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0068959号
【特許文献3】米国特許第6,244,983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の従来技術による逆歯チェーンはすべて、噛合時の弦運動を有利に制限する特徴を有している。しかし、これらのチェーンにおいては、チェーンの駆動ノイズレベルへの悪影響を有する別の重要な因子に関しては、他の従来技術による逆歯チェーンと同様に、リンクプレートの設計において十分に考慮されていない。その因子とは、チェーンとスプロケットとの係合過程における噛合衝撃ジオメトリに関するものである。
【0011】
図3及びより明確には図3Aに示すように、チェーン10とスプロケット50とチェーン10に噛合する少なくとももう1つのスプロケットとを含むチェーン駆動システム15において、チェーン10の従来技術によるチェーンリンク列30cが、の従来型スプロケット50のスプロケット歯60cと噛合しようとしている。参照番号は通常、各列30a、30b、30cの前面に見える一個のチェーンリンク列30についてのみ示されているが、当業者であれば、ここでの議論は各列の複数のリンクプレート30に当てはまることが理解されるであろう。連続するピン中心Cは、C1、C2、C3、C4などのように番号を付けて、互いに識別できるようにした。
【0012】
リンク列30cは、対応するスプロケット歯60cとの初期噛合接触の瞬間を示している。すなわち、チェーンリンクプレートの前方内側歯面36とスプロケット歯60cの係合歯面62cとが、係合歯面62c上の初期接触位置ICにおいて最初の接触をする瞬間である。初期接触角Θは、スプロケットの回転軸を起点とし接線TLに対して直交する第1の参照線L1と、スプロケットの回転軸を起点とし対象のスプロケット歯60cの歯中心を通る第2の参照線TCとのなす角度として定義される。リンク列30cが初期噛合衝撃ICをする瞬間においては、先行するリンク列30bはチェーンスパンを出て、“浮遊状態”に入る。すなわち列30bのリンクプレート30はスプロケット50とは直接接触せず、噛合している列30cと、先行するスプロケット歯60bと全体噛合接触している先行列30aとの間で宙吊りの状態となる。列30cが初期噛合接触位置ICから内側歯面の最終的な噛合接触位置IFまで、スプロケット歯60cの係合歯面62cとの摺動接触を介して関節連結をしている間中、リンク列30bは、この浮遊状態にとどまっている。そして、IFに到達した時点で、列30bは噛合サイクルが完了し、後方外側歯面37が点OFにおいてスプロケット歯60cと全体噛合する位置へ移行する(接触位置IFとOFは図4と図4Aに示されている)。図4と図4Aは、噛合サイクルにおいて“同時噛合”と呼ばれる時点を示しており、そこでは、リンク列30bと30cとが、スプロケット歯60cに同時に接触し、その次のスプロケットの回転によってリンク列30cが内側歯面噛合接触から離れて行く。離れた後、リンク列30cはスパンにとどまり、次の列30dがスプロケット歯60dと初期噛合衝撃ICをする瞬間に浮遊状態に入る。
【0013】
リンク列30cが初期噛合衝撃する時点(図3、図3A参照)より前に、チェーンスパンはピン中心C1を中心とした回転を効果的に行い、列30cがスプロケット歯60cとの噛合衝撃ICに向かって関節的に連結していることに留意されたい。従って、ピン中心C1は“制御ピン中心”と呼ばれてもよい。制御ピン中心C1は、噛合リンク列30cの前方ピン中心C2に対して直近の先行(下流)ピン中心である(制御ピン中心C1はまた、全体噛合リンク列30aの(チェーン移動方向に関して)直近の後方ピン中心でもある)。このようにして、以下の関係が定義される。
・噛合接触角τは、接線TLと、制御ピン中心C1と初期接触位置ICとの両方を通る初期接触参照線70との間の角度として定義される。
・初期接触参照線70は、制御ピン中心C1と初期接触位置ICとの間のレバーアーム長を画定する。
・リンクプレートの入口角βは、初期接触参照線70と、内側歯面半径Rの弧の中心79と初期接触位置ICとを通る内側歯面参照線74との間の角度で定義される。(ここで、内側歯面参照線74は、スプロケット歯60cの係合歯面62cのインボリュート曲線(または円弧部分あるいはその他の曲面)に対して垂直となる。)
・噛合衝撃角σは、接線TLと内側歯面参照線74とのなす角度で定義される。すなわち、σ=τ+βとなる。
【0014】
チェーン−スプロケット間の噛合衝撃は、噛合リンク列30cとスプロケット歯60cの初期接触位置ICにおける速度差により発生する。そして、スプロケット歯が初期噛合衝撃の瞬間にチェーンスパンから噛合リンク列30cを受け止める際の、関連の衝撃エネルギーEは次式で与えられる。
【数1】


ここで、Cは定数、mは1つの噛合リンク列30cの質量に等しく、Lは制御ピン中心C1から初期接触位置ICまでの距離、ωはスプロケットの角速度、βはリンクプレートの噛合入口角である。噛合衝撃、及びそれに関連するノイズレベルは、速度差を小さくすることで低減可能であり、それは噛合入口角βを低減することで達成される。
【0015】
また、衝撃エネルギーEの式は、噛合リンク列30cの質量のみを含み、チェーン張力Tは考慮されていない。このチェーン張力は、生じる噛合衝撃エネルギーEと関連する全ノイズレベルを増大させる。チェーン張力Tは、噛合開始時にスプロケット歯60cに作用し、リンク衝撃力Fに反対向きで等しい歯の衝撃反力Fは、噛合衝撃角σの大きさと共に変化する。ここで、であり、
【数2】


は、水平方向の合力がゼロであることを満足するためにTと等しい。これらの関係を図3及び図3Aに示す。(図3Aにおいて、噛合衝撃角σとその成分角は、接線TLに平行で初期接触位置ICを通る参照線72(これは力ベクトルFに一致)からの角度として示されていることに留意されたい。)スプロケット歯60cは、歯60cの前方(下流側)にある次のいくつかの歯と共にチェーン張力Tの荷重分布を共有し、初期噛合接触の開始時に歯60cの位置ICにおいて最大の反力Fを生じることに留意されたい。歯60cの前方のいくつかの歯に掛かる、チェーン張力荷重の残りの部分は、噛合ノイズレベルには影響を与えないので、本発明の考慮の対象外とする。要約すると、リンク衝撃力ベクトルFは、初期噛合接触時に噛合衝撃位置ICに作用し、全噛合衝撃エネルギーEとそれに関連するノイズレベルを増大させる。
【0016】
前述したように、図4は同時噛合接触を示し、リンク列30cの前方内側歯面36はスプロケット歯60cの係合歯面62cと位置IFにおいて接触しており、先行リンク列30bの後方外側歯面37は、位置OFにおいて係合歯面62cと接触している。図4Aは図4を大きく拡大した部分図であり、ここにも同時噛合接触現象のジオメトリから生じる力が示されている。歯60がリンク列30cの前方内側歯面36との“内側歯面のみ”の接触から、先行リンク列30bの後方外側歯面37との同時外側歯面接触に移行するこの瞬間は、移行点とも呼ばれ、歯60cの噛合サイクルの終点も定義する。それはリンク列30bがこの時、ピッチ直径PD上にある前方ピン中心C1と後方ピン中心C2との両方に全体噛合しているからである。移行角Φは第1の半径参照線L1と歯60cの歯中心を表す第2の半径参照線TCとの間の角度として定義される。
【0017】
図4と図4Aはそれぞれ図3と図3Aに対応するが、移行現象に関するものであり、以下のことを示している。
・移行接触角τ'は、接線TLと、外側歯面接触位置OFと制御ピン中心C1との両方を通る、移行接触参照線80との間の角度として定義される。移行現象に関しては、制御ピン中心C1は地点OFにおいて後方外側歯面接触に移行するリンク列の前方ピン中心である(すなわち、同時噛合しているリンク列間の界面にあるピン中心の直前に先行するピン中心Cである)。
・移行接触参照線80は、制御ピン中心C1と、外側歯面接触位置OFとの間のレバーアーム長L’を定義する。
・リンクプレート移行角β’は、移行接触参照線80と、後方外側歯面37に対して垂直に延びる外側歯面参照線84とのなす角度として定義される。(ここで、外側歯面参照線84は、スプロケット歯60cの係合歯面62cのインボリュート曲線(または円弧部分あるいはその他の曲面)に対しても垂直となる。)
・移行衝撃角σ’は、接線TLと外側歯面参照線84とのなす角度で定義される。すなわち、σ’=τ’+β’となる。
ここで、図3と図3Aの特徴に対応する図4と図4Aの特徴は、対応する参照番号に(’)を付して表されており、そのすべてを必ずしもこれ以上議論しないことに注意されたい。また、図4Aにおいては、移行衝撃角σ’とその成分は、外側歯面接触位置OFを通り接線TLに平行な参照線82(これは力ベクトルF'に一致)からの角度として示されている。
【0018】
リンク列30bがスプロケット歯60cと位置OFにおいて全体弦噛合接触に移行する際の、第2の噛合衝撃とそれに関連するノイズレベルの強度は、上記の位置ICにおける初期噛合衝撃とそれによる噛合ノイズレベルに比較すれば小さい値である。第1に、移行衝撃角σ’は、初期噛合衝撃角σよりも常に小さい値である。第2に、位置OFでの外側面接触は、リンク列30bが浮遊状態から全体噛合状態に移行するのに応じて発生する。これは噛合開始時に、チェーンスパンからの1つのリンク列がスプロケット歯60との衝撃を受ける、チェーンスパン10とスプロケット50との間の初期接触に比較すれば、衝撃力の観点からは重大ではないと考えられる。さらに、ノイズと振動の試験結果から、位置OFにおける外側歯面37の移行噛合衝撃が全噛合ノイズレベルに与える寄与は、位置ICにおける内側歯面36の初期噛合衝撃よりも小さいことがわかっている。
【0019】
スプロケット50は従来型のものであり、歯60(すなわち、60a、60b、60cなど)は、それぞれ、歯中心半径線TCに対して対称的に画定され、噛合時にチェーン10と初期接触をする係合歯面62(すなわち、62a、62b、62cなど)と、それに整合した離合歯面64(すなわち、64a、64b、64cなど)とを有する。歯中心TCによって各歯60は二等分され、歯角α=360°/Nの均等な角度で配置されている。係合歯面62(および離合歯面64)のインボリュート曲線形状は基準円から生成され、その基準円は次のように定義される。
基準円=PD×COS(PA)
ここで、PD=スプロケットピッチ直径、およびPA=歯の圧力角、である。
更に、ピッチ直径PDそのものは以下のように定義される。
PD=P/SIN(180/N)
ここで、P=ピッチ、N=スプロケットの歯数である。
インボリュート歯形はラジアル歯形で近似することができ、ラジアル歯形の圧力角PAは、同様に決定することができる。いずれにせよ、小さい圧力角で画定される係合歯面62ほど、大きな圧力角で画定される係合歯面に比べてより急峻となる(スプロケットの回転軸を起点とするラジアル線により近くなる)。このように、初期接触位置ICにおける係合歯面62に接する参照線は、弧の参照線と、係合歯面とすぐ下流(前方)の離合歯面64との間にある半径参照線との間に角度を画定し、この角度は圧力角が減少すれば小さくなり、圧力角が増大すれば大きくなる。従来技術のシステムでは、リンク衝撃力Fと関連する衝撃エネルギーEとを最小化するために、従来のスプロケット歯の圧力角を大きく変えてチェーンリンクプレート30の設計を最適化することは行ってこなかった。下の表1に従来のスプロケット圧力角を度単位で示している。そしてスプロケット50はこれらの従来例に一致する(歯60の全てが同一の圧力角PAを有する)。
【表1】

【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様によれば、チェーン・スプロケット駆動システムが複数の歯からなるスプロケットを含み、それぞれの歯が係合歯面と離合歯面とを備える。逆歯チェーンは、スプロケットと噛合し、複数のリンク列を備え、そのそれぞれは前方ピン中心を中心として先行リンク列に対して関節連結し、かつそのそれぞれは後方ピン中心を中心として後続リンク列に対して関節連結し、その前方ピン中心と後方ピン中心とは、相互にチェーンピッチPだけ離間し、それらの列のそれぞれは前方内側歯面と後方外側歯面とを備える。各列の前方内側歯面は、先行列の後方外側歯面の接触部分すなわち作動部分よりも相対的に外側に突出していて、内側歯面半径Rを備える。チェーンは、接線沿いにスプロケットに近づき、スプロケットの各歯の係合歯面が、初期噛合接触の瞬間においてチェーンの噛合列の前方内側歯面上の初期接触位置において前記チェーンと初期噛合接触をする。初期噛合接触の瞬間において、噛合列に先行する直前のチェーン列が、制御ピン中心となる、ピッチ直径上に位置する前方ピン中心を含む。スプロケットと全体噛合しているチェーンの各列に対して、その前方ピン中心と後方ピン中心とは、ピッチ直径PD上に位置し、かつ、その後方外側歯面は、係合歯面の1つと接触する。噛合接触角τは、接線TLと、制御ピン中心と初期接触位置との両方を通る初期接触参照線とがなす角度として定義される。リンクプレートの入口角βは、初期接触参照線と、内側歯面半径の弧の中心と初期接触位置とを通る内側歯面参照線とがなす角度として定義される。噛合衝撃角σは、接線と、内側歯面参照線とがなす角度であって、σ=τ+βであって、σは34°以下であるように定義される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、逆歯チェーンは複数のリンク列を含み、そのそれぞれは前方ピン中心を中心として先行列に対して関節連結し、かつそのそれぞれは後方ピン中心を中心として後続リンク列に対して関節連結し、前方ピン中心と後方ピン中心とは、チェーンピッチPだけ相互に離間し、それぞれの列は前方内側歯面と後方外側歯面とを備える。
ここで、各列の前方内側歯面は、先行列の後方外側歯面の作動部分よりも、0.007×P≦λ≦0.017×Pとなるような最大突出量λだけ相対的に外側に突出している。チェーンの各列の前方内側歯面は、P≦R<2×Pである内側歯面半径Rで画定される。外側歯面は、チェーンの各リンクの作動部分とトウ先端との間にあるチャンファ(面取り)から成る非作動部分を備え、チェーンの隣接列の前方内側歯面は、逆歯チェーンが真直ぐに引張られている場合に、突出量λより大きな突出量だけチャンファよりも外側に突出している。
【0022】
本発明の別の態様によれば、逆歯チェーンと噛合するように適合されたスプロケットが、複数の歯を含み、それぞれの歯は係合歯面と離合歯面とを備える。それぞれの歯の係合歯面は、スプロケットに含まれる歯の総数を定義する歯数Nに基づいて、
N=19〜25に対して28°≦PA≦29°
N=26〜50に対して27°≦PA≦28°
のように大きさが変わる圧力角PAによって画定される。
【0023】
本発明の別の態様によれば、逆歯チェーンは、複数のリンク列を含み、そのそれぞれは前方ピン中心を中心として先行列に対して関節連結し、かつそのそれぞれは後方ピン中心を中心として後続リンク列に対して関節連結し、前方ピン中心と後方ピン中心とは、チェーンピッチPだけ相互に離間し、それぞれの列は前方内側歯面と後方外側歯面とを備え、 各列の前方内側歯面は、チェーンが真直ぐに引張られている場合に、先行列の後方外側歯面の直線的な作動部分よりも、0.007×P≦λ≦0.017×Pとなるような最大突出量λだけ相対的に外側に突出しており、
各列の前方内側歯面は、P≦R<2×Pである内側歯面半径Rで画定され、
各列の外側歯面は、作動部分とトウ先端との間にあるチャンファからなる非作動部分を備え、チェーンの隣接列の前方内側歯面は、チェーンが真直ぐに引張られている場合に、突出量λより大きな突出量だけチャンファよりも外側に突出しており、
外側歯面は、外側歯面角Ψ≦30.5°を画定し、この外側歯面角Ψは、(i)後方ピン中心を通り、前方ピン中心と後方ピン中心とを結ぶピン中心参照線に対して垂直である、第1の参照線と、(ii)後方外側歯面の直線作動部分に一致する、第2の参照線と、の間の角度として定義される。
【0024】
本発明はさまざまな部品および部品の配列からなっており、その好適な実施形態を添付の図面で示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】既知の逆歯チェーンの第1のリンク列および第2のリンク列を、背後のリンクプレートが見えるようにガイドプレートを取り除いた状態で示した図である。
【図2A】スプロケットに対する弦上昇を示す図である。
【図2B】スプロケットに対する弦上昇を示す図である。
【図3】チェーン駆動システムにおいて、図1のチェーンのリンク列が既知のスプロケットのスプロケット歯と噛合開始する時の状態を示す図である。
【図3A】図3の部分拡大図である。
【図4】図3のシステムにおいて、チェーンの2つの連続したリンク列がスプロケット歯と同時噛合接触している状態を示す図である。
【図4A】同時噛合接触をより明らかに示すために、前面のリンクプレートを除去した状態の図4の部分拡大図である。
【図5】本発明の第1の実施形態により形成された逆歯チェーンの第1のリンク列と第2のリンク列とを示す図である(背景のリンクプレートを見えるようにするために、ガイドプレートは除去されている)。
【図5A】図5の詳細部分5Aの拡大図である。
【図5B】図5のチェーンの多数のリンク列を示す、ガイドプレートも含んだ等角図である。
【図5C】図5の詳細部分5Aであり、噛合サイクル期間においてスプロケット歯の係合歯面と接触するチェーン上の位置を示す図である。
【図6】図5のチェーンのリンク列が図3の従来型スプロケットのスプロケット歯と噛合開始する時の状態を示す図である。
【図6A】図6の部分拡大図である。
【図7】図6のシステムにおいて、チェーンの2つの連続したリンク列がスプロケット歯と同時噛合接触している状態を示す図である。
【図7A】同時噛合接触をより明らかに示すために、前面のリンクプレートを除去した状態の図7の部分拡大図である。
【図8】本発明の第2の実施形態により形成された逆歯チェーンの第1のリンク列と第2のリンク列とを示す図である(背景のリンクプレートを見えるようにするために、ガイドプレートは除去されている)。
【図8A】図8の詳細部分8Aの拡大図である。
【図8B】図8のチェーンの多数のリンク列を示す、ガイドプレートも含んだ等角図である。
【図8C】図8の詳細部分8Aであり、噛合サイクル期間においてスプロケット歯の係合歯面と接触するチェーン上の位置を示す図である。
【図9】本発明の別の態様による、小さい圧力角で画定される歯面を有するスプロケットと噛合する図8のチェーンを示す図である。
【図9A】図9のスプロケット歯の拡大図である(図3の従来型スプロケット歯を仮想線で重ねて示している)。
【図10】図9の部分拡大図であり、図8のチェーンのリンク列がスプロケット歯と噛合開始した状態を示す図である。
【図10A】図10の部分拡大図である。
【図11】図10のシステムにおいて、チェーンの2つの連続したリンク列がスプロケット歯と同時噛合接触している状態を示す図である。
【図11A】同時噛合接触をより明らかに示すために、前面のリンクプレートを除去した状態の図11の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図5は、本発明により形成された、内側歯面係合逆歯チェーン110の第1の列と第2の列を示したものであり(チェーンのガイドプレートは表示されていない)、好適な内側歯面突出λと外側歯面形状を示している。図5Aは、図5の詳細部分5Aの拡大図であり、リンク歯先端139付近での外側歯面チャンファ138に対する内側歯面突出λを示している。図5Bは、逆歯チェーン110を画定する本発明に従った図5のリンクプレートを組み込んだチェーン部分の等角図である。
【0027】
チェーン110は、挟み込まれた内側リンクすなわちリンクプレート130の並びすなわち列130a、130b、130cなどを備え、それぞれのリンクプレートは、外側歯面137と内側歯面136とを有する一対の歯134を含み、歯134の内側歯面136の間に股部135が画定されている。歯134はそれぞれトウすなわち先端139を有する。各リンクプレート130には2つの開口132がリンク列を横断して整列し、そこに接続ピン140(例えば丸ピン、ロッカージョイントなど)を受けて列を枢動可能に結合する。そうして、従来型スプロケット50のようなスプロケットとの噛合開始時に、内側歯面136(“内側歯面係合”の場合)で駆動のためにスプロケット歯と係合する際に、ピン中心Cを中心とするチェーンの関節連結を提供する。ピン中心は、チェーンピッチすなわちリンクピッチPだけ相互に離間している。本明細書での“ピン中心C”という用語には、ピン140が丸ピン、ロッカージョイント、または別の好適なジョイントであるか否かに拘わらず、連続するリンク列130a、130b、130cが相互に回転するための軸も含まれる。第1及び第2のガイドプレート120(図5B)が1つ置きのリンク列(いわゆる“ガイド列”)の側面に配置されて、チェーン110をスプロケット上に整列させる。ただしガイドプレートはスプロケット歯とは噛合しない(ガイドプレート120は、背後のリンクプレート130を見えるようにするために、本明細書の大部分の図では表示されていない)。スプロケット50のようなスプロケットとの噛合が始まる時、フリーのチェーンスパンの場合には通常そうであるように、すべてのピン中心Cが接線TLに沿って整列して、リンク列が直線状に配置されている場合には、各リンク列130a、130b、130cの前方(チェーン移動方向に関して)の内側歯面136は、先行するリンク列130a、130b、130cの後方外側歯面137よりも突出量λだけ外側に突出している。前述の背景において説明したように、接線TLは、噛合するチェーンピン中心がスプロケットに近づく理論的直線経路である。ここで示すように、接線TLは水平方向に位置し、この場合は接線TLは上死点、すなわちピッチ直径上の12時の位置においてピッチ直径PDに対する接線である。つまり、チェーンピン中心がピッチ直径PD上に中心を置いて配置され、接線TLに直交する半径方向参照線上にも中心を置くように配置された場合、接線TLはピッチ直径PDに接する(接線がここに示すように水平方向であれば、参照線は垂直である)。
【0028】
それぞれのリンクプレート130は、互いに同一であり、ピン中心C同士の中間における、リンクプレート130に直交して配置された垂直面に関して対称的である。外側歯面137は直線側面であり(ただし、曲面もあり得る)、この第1の実施形態に関しては、外側歯面角度Ψは、30°<Ψ≦30.5°として画定される。ここで、Ψはピン中心C同士を結ぶ参照線Pに直交する第1の参照線W1と、外側歯面137に一致する第2の参照線W2とのなす角度として定義される。内側歯面136は、凸面の円弧形を有し、内側歯面は好ましくは、隣接するリンク列の外側歯面に対して、0.007×P≦λ≦0.017×Pなる関係を満足する突出量λだけ、外方向に突出している。ここで、Pはチェーンピッチ長に等しい。内側歯面136は好ましくは、不等式:
P≦R<2P
を満たすように形成されている。ここで、Rは内側歯面136の曲率半径であり、Pはチェーンピッチ長である。各内側歯面136は、弧中心179(図6A参照)を中心とする半径Rの円弧部分で画定され、股部135から先端139まで延びる。外側歯面137は、先端139に隣接する任意角度のチャンファ138を含んでいる。チャンファ138は、特に内側歯面突出λが製造上の下限にある場合においても、前方内側歯面136に対する初期噛合接触領域190(図5A参照)が、噛合開始時にλ>λだけ先行リンクプレート130の後方外側歯面137より外側に常に確実に突き出るように作用する。図示したように、チャンファ138は平坦で、外側歯面137の他の部分の面との間にチャンファ角133を画定する。λの値が小さければ、それだけ小さい角度βが有利に与えられる。
【0029】
チェーン110は、図6、図6Aに示すように、通常のスプロケット50と噛合し、チェーン駆動システムを画定する少なくとも1つ置きのスプロケットと噛合する。図6、図6Aにおいて、チェーンリンク列130cは、スプロケット50のスプロケット歯60cと噛合開始しようとしている(通常、各列130a、130b、130cなどの前面に見える一個のチェーンリンクプレート130についてのみ参照するが、当業者であれば、各列には複数のチェーンリンクプレート130が各列を横断して配置されていることが理解されるであろう)。連続するピン中心Cは、C1、C2、C3、C4などのように番号付けして、互いに識別できるようにした。列130cは、対応するスプロケット歯60cとの初期噛合接触の瞬間を示している。すなわち、チェーンリンクプレートの内側歯面136とスプロケット歯60cの係合歯面62cとが、係合歯面62c上の初期接触位置ICにおいて最初の接触をする瞬間である。初期接触角θは、スプロケットの回転軸を起点とし接線TLに対して直交する第1の参照線L1と、スプロケットの回転軸を起点とし対象のスプロケット歯60cの歯中心を通る第2の参照線TCとのなす角度として定義される。先行スプロケット歯60bの噛合サイクルは既に完了しており、リンク列130aの後方外側歯面137とスプロケット歯60bの係合歯面62bとの位置OFにおける接触によって制御された状態で、リンク列130bの前方ピン中心C1(これはリンク列130aの後方ピン中心Cでもある)はピッチ直径PD上にある。リンク列130bは、前述の“浮遊状態”にあり、前方内側歯面136および後方外側歯面137のいずれも、スプロケット50には直接的に接触していない。ピン中心C1は“制御ピン中心”と見なされ、それは噛合しているリンク列130cの前方ピン中心C2に対して(チェーンの移動方向から見て)先行する、すなわち下流の直近のピン中心Cである(制御ピン中心C1はまた、(チェーンの移動方向から見て)直近の全体噛合しているリンク列130aの後方ピン中心でもある)。このようにして、以下の関係が画定される。
・噛合接触角τは、接線TLと、制御ピン中心C1と初期接触位置ICとの両方を通る初期接触参照線170とがなす角度として定義される。
・初期接触参照線170は、制御ピン中心C1と、初期接触位置ICとの間のレバーアーム長Lを定義する。
・リンクプレートの入口角βは、初期接触参照線170と、内側歯面半径Rの弧の中心179と初期接触位置ICとを通る内側歯面参照線174とがなす角度として定義される。(ここで、内側歯面参照線174は、スプロケット歯60cの係合歯面62cのインボリュート曲線(または円弧部分あるいはその他の曲面)に対して垂直となる。)
・噛合衝撃角σは、接線TLと内側歯面参照線174とのなす角度で定義される。すなわち、σ=τ+βとなる。
【0030】
図6Aにおいては、噛合衝撃角σとその成分角は、接線TLに平行で初期接触位置ICを通る参照線172(これは力ベクトルFに一致)に対する角度として示されている。図6および図6Aに示されているように、図1及び図3の従来技術のチェーンとは違って、チェーン110のリンクプレート130の形状は、スプロケット歯60cとリンク列130cのリンクプレート130の前方内側歯面136との間の、初期接触位置ICにおける初期噛合衝撃ジオメトリの最適化設計がなされ、スプロケット歯60cがチェーンスパンからリンク列130cを受け止める際に、リンク衝撃力Fとそれに起因する衝撃エネルギーEとを減少させるようにする。このように、リンクプレート130の形状は、チェーン−スプロケットの噛合現象に係わるノイズと振動のレベルを低減する。図7と図7Aに関連して以下で説明するように、改善されたリンクプレート形状130は、先行リンク列130bの後方外側歯面137における、後続の全体弦噛合接触への移行に対しても最適化された噛合接触ジオメトリをもたらし、同一歯の噛合プロセスを完結させる。
【0031】
本発明に従ってリンクプレート130を設計するために、リンクプレート130cの内側歯面136は、スプロケット歯60cとの所望の初期接触位置ICの関数として決定される。これは好ましくは、チェーン110と共に使用される一群の(一連の歯数の)スプロケットの内の最小、または最小に近い歯数のスプロケットサイズ(歯数)に対して確立される。しかし外側歯面137は、これ以前に決定されている。それは、直近の全体噛合リンク列(この場合、リンク列130a)の後方外側歯面137が、噛合リンク列130b、130cを位置付ける役割をなすからである。その次に、リンクプレート130用の内側歯面136の形状を、初期噛合衝撃(初期接触)IC回転位置において確立することができる。
【0032】
前述したように、噛合衝撃角σは、図6、図6Aに示すように次式により定義される。
σ=τ+β
ここで、τはリンクプレート噛合接触角であり、βは噛合衝撃開始時のリンクプレート入口角である。歯の衝撃反力Fsは、一定のチェーン張力Tに対して噛合衝撃角σの大きさによって変化し、内側歯面136の形状を確立する際に、噛合衝撃角σが現実的な範囲で小さいほど有利である。
【0033】
再び図6Aを参照すると、噛合ジオメトリとリンクプレート荷重とを最適化する内側歯面136上の所望領域に初期接触位置ICが配置されるように、制御ピン中心C1の回転位置と噛合接触角τが選択される。図5Cに示すように、図示されたピッチP=7.7mmのチェーンに対して、内側歯面136上の初期接触位置ICは、リンクプレートのピン中心同士(図6と図6Aのピン中心C2とC3)を結ぶピン中心参照線Pから所望の初期接触距離ICだけ離れている。この所望の初期接触距離ICは、スプロケット50の歯数が、チェーン110と共に使用される一群(一連の歯数)の内の最小、または最小に近い歯数に対して決定された。ICはその範囲内の他のすべての歯数に対して変化する。従ってリンクプレート130の内側歯面137の設計は、使用される歯数が最小または最小に近い従来型スプロケット50と噛合する場合に決定される。所与のリンクプレートに対する最適初期接触距離ICは、リンクプレートの設計、特には内側歯面の関数となり、ICは勿論チェーンピッチPによって変化する。
【0034】
図6Aに示すように、参照線176は、初期接触位置ICにおいてとスプロケット歯係合歯面62と、リンクプレート内側歯面136の両方に接している。内側歯面参照線174は、したがって参照線176に垂直であり、初期接触位置ICにおいて歯面62のインボリュート面に直交する。参照線178は、初期接触参照線170に垂直である。したがって、リンクプレート入口角βは噛合接触角τの選択により決まることになる。制御ピン中心C1の回転位置と噛合接触角τの選択とが、リンクプレート入口角βを実効的に画定し、したがって噛合衝撃角σも画定する。図6Aに図形表示したように、噛合衝撃反力Fは、噛合衝撃角σが減少する程小さい値となる。したがってリンクプレート130の形状を画定する際に、ピン中心C1の回転(すなわち、制御ピン中心C1の回転位置)と噛合接触角τが次式を満足するように選択することが望ましい。
σ=(τ+β)≦34°(初期噛合衝撃ICにおいて)、但し、β≦9°
初期噛合衝撃ICにおいてσ=(τ+β)≦34°でありかつβ≦9°であるシステムは、リンク衝撃力Fおよびそれによる衝撃エネルギーEを従来システム(前記の背景で述べた)に比べて低減する結果となる。
【0035】
図7及び図7Aはそれぞれ図4及び図4Aに対応し、図7及び図7Aではチェーン110の同時噛合接触を示している。図7は図6に類似しているが、スプロケット50がさらに回転して噛合サイクルが進み、先行リンク列130bの後方外側歯面137がスプロケット歯60cの係合歯面62cと外側歯面接触位置OFにおいて接触し、同時に、リンク列130cの前方内側歯面136も係合歯面62cと位置IFにおいて接触している瞬間となっている。前述したように、歯60cがリンク列130cの前方内側歯面136との内側歯面のみの接触から、先行リンク列130bの後方外側歯面137と外側接触点OFにおける外側歯面接触もするように移行する瞬間は、移行点と呼ばれ、歯60cの噛合サイクルの終点も定義する。それはリンク列130bがこの時、ピッチ直径PD上にある前方ピン中心C1と後方ピン中心C2との両方で全体噛合しているからである。移行角Φは第1の半径参照線L1と歯60cの歯中心を通る第2の半径参照線TCとの間の角度として定義される。
【0036】
図7Aは図7の部分拡大図であって、次のことを示している。
・移行接触角τ’は、接線TLと、外側歯面接触位置OFと制御中心C1(これは移行現象に関しては、位置OFにおいて後方外側歯面接触に移行しようするリンク列の前方ピン中心である)の両方を通る移行接触参照線180とのなす角度として定義される。
・移行接触参照線180は、制御ピン中心C1と外側歯面接触位置OFとの間のレバーアーム長L’を定義する。
・リンクプレート移行角β’は、移行接触参照線180と、後方外側歯面137に対して垂直に延びる外側歯面参照線184とのなす角度として定義される(ここで、外側歯面参照線184は、スプロケット歯60cの係合歯面62cのインボリュート曲線(または円弧部分あるいはその他の曲面)に対して垂直となる)。
・移行衝撃角σ’は、接線TLと外側歯面参照線184とのなす角度で定義される。ここでは、σ’=τ’+β’となる。
結果として得られるリンクプレート移行角β’と移行衝撃角σ’は、地点OFにおける後方外側歯面137の移行衝撃に関するリンク衝撃力F’とそれによる衝撃エネルギーEとを決定づける。ここで、図6と図6Aの特徴に対応する図7と図7Aの特徴は、対応する参照文字に(’)を付して表されており、そのすべてを必ずしもこれ以上議論しないことに注意されたい。また、図7においては、移行衝撃角σ’とその成分は、外側歯面接触位置OFを通り接線TLに平行な参照線182(これは力ベクトルF’に一致)からの角度として示されている。これらの、地点OFにおける後方外側歯面137の移行衝撃は、前記の位置ICにおける前方内側歯面136の初期噛合衝撃に比べるとノイズと振動に対する寄与は小さいと考えられる。しかし、移行衝撃角σ’とその成分、すなわちリンクプレート移行角β’と移行接触角τ’とを制御することは、システム115のノイズと振動の更なる最小化のために望ましいと考えられる。
【0037】
図5Cに戻ると、リンク列の前方内側歯面136と、先行リンク列の後方外側歯面137とを含むチェーン110を大きく拡大した部分図が示されている。スプロケット50と噛合するチェーン110に関しては、チェーン110が、チェーンリンクピッチPが7.7mmで、19〜50の範囲の歯数を有する一群のスプロケットと噛合するように設計されているものとして、初期接触位置ICと外側歯面接触位置OFと内側歯面移行接触位置IFとは、対応する噛合衝撃角σと移行衝撃角σ’と共に、スプロケット歯数Nと圧力角とに依存して変化する。特に、スプロケット歯数Nおよび圧力角の関数として、初期接触位置ICは領域190内で変化し、外側歯面接触位置OFは領域185内で変化し、内側歯面移行位置IFは領域192内で変化する。
【0038】
λは、チェーンを真直ぐ引張った状態で、外側歯面137の直線的な“接触”部すなわち“作動部”に対する距離として測定される。すべてのピン中心Cが同一線上にある場合には、チェーンの第1列と第2列とは直線的に引張られているものと見なされる。外側歯面137の作動部分は、チェーン110と噛合するように意図されたすべてのスプロケット歯数に対して、外側接触位置OFがある領域である。チャンファ138は、チェーン110と噛合するように意図されたすべての歯数のスプロケット歯とは接触しないので、外側歯面137の“非接触”部または“非作動”部と呼ばれる。チャンファ138は、平坦である必要はないが、スプロケット50と初期接触ICをすることが要求される隣接リンク列の前方内側歯面136の少なくとも一部分が、あらゆる製造誤差条件下で常に、隣接列よりも十分な距離だけ外側に突出することを確保するために、含まれている。
【0039】
表1で定義されるような従来の圧力角で画定される歯を有する、スプロケット50のような従来型のスプロケットに対してチェーン110が噛合しなければならない場合、噛合衝撃角σと移行衝撃角σ’との最小化には限界がある。代替となる本発明の実施形態によると、図8、図8A,図8Bに示されているようなチェーン210が、図9に示されているような本発明に従って形成された、新規の変更されたスプロケット250と噛合するように画定されている。チェーン・スプロケット駆動システム215は、スプロケット250に噛合するチェーン210と、スプロケット250(同じ歯数または異なる歯数)の構造により画定される少なくとも1つ置きのスプロケットとによって定義される。スプロケット250は、前記の表1に示した従来型の圧力角よりも小さな圧力角で画定される歯260(260a、260b、260cなど)を含む。その結果、係合歯面262(262a、262b、262cなど)がスプロケット50の係合歯面62に比べて急峻となっている。このことは次の表2に示されている(与えられたスプロケット250のすべての歯260は同一圧力角PAで画定されている)。
【表2】


当業者であれば、チェーンピッチPが現在の実施例P=7.7mmから増減すると、表2に示された歯数も増減することが理解されるであろう。特に、チェーンピッチPが小さくなれば歯数の範囲は高い方にずれ、チェーンピッチPが大きくなれば低い方にずれる。
【0040】
図9Aは、歯中心TCに関して対称的に画定された係合歯面262cと離合歯面264cとを含むスプロケット250の歯260cを示す。従来のスプロケット50の歯60cが仮想線で示されている。歯面262c、264cはより小さな圧力角で画定され、従来の圧力角で画定された歯面62c、64cに比べるとより急峻となっている。参照線76と176は、それぞれ初期接触位置IC10とIC110とにおける係合歯面62cへの接線である。ここで、初期接触位置IC10はチェーン10に対する初期接触位置であり、初期接触位置IC110はチェーン110に対する初期接触位置である。参照線276は、チェーン210の噛合リンク列230の前方内側歯面236が係合歯面262cと初期噛合接触をする、初期接触位置IC210における係合歯面262cへの接線である。
【0041】
図10も参照すると、変更された圧力角を有するスプロケット250に対して、ノイズおよび振動を更に改善するために、噛合衝撃角σを以下のように更に低減することが可能である。
σ=(τ+β)≦31°(内部歯面初期噛合接触ICに対して)
ここでβ≦7°である。この場合、チェーン210がスプロケット250と適切に噛合するためには、外側歯面角Ψも
Ψ≦27°
のように低減する必要がある。この結果、移行衝撃角σ’も小さくなって、σ’=(τ’+β’)≦26°(外側歯面の全体噛合接触への移行に対して)となる。ここでβ’≦8°である。
【0042】
本明細書において、他の表示および記載をしない限り、図8〜図11Aに示すチェーン210は、チェーン110と同一であり、類似の部品にはチェーン110の場合よりも100だけ大きい参照番号を付けてある。内側歯面236は、凸面の円弧形を有し、内側歯面は好ましくは、隣接するリンク列の外側歯面237に対して、
0.007×P≦λ≦0.017×P
なる関係を満足する突出量λだけ、外方向に突出している。ここで、Pはチェーンピッチ長に等しい。内側歯面236は好ましくは、不等式:
P≦R<2P
を満たすように形成されている。ここで、Rは内側歯面236の曲率半径であり、Pはチェーンピッチ長である。各内側歯面236は、弧中心279(図10A)を中心とする半径Rの円弧部分で画定され、股部235から先端239まで延びる。同様に、スプロケット250は、本明細書において他の表示または記載をしない限り、スプロケット50と同一であり、類似の特徴はスプロケット50の場合よりも200だけ大きい参照番号を付けてある。さらには、図10と図10Aはそれぞれ図6と図6Aに対応し、図11と図11Aはそれぞれ図7と図7Aに対応している。ただしチェーン110とスプロケット50に代わって、チェーン210とスプロケット250が示されている。そういうことで、図8〜図11Aについての議論はここではこれ以上行わない。ただし、スプロケット歯の圧力角を減少し、それに対応して外側歯面角Ψを減少することにより、スプロケット250と噛合するチェーン210の噛合衝撃角σ、および移行衝撃角σ’の両方が、従来型のスプロケット50と噛合するチェーン110の噛合衝撃角σ、および移行衝撃角σ’に比較して所望通りに減少されることだけを言及しておく。したがって、衝撃エネルギーEと歯衝撃反力Fは、従来型のスプロケット50を利用するシステム115に比較してさらに低減される。
【0043】
次の表3に、結果として得られる噛合衝撃角σとリンクプレート入口角βに関する追加データを示す。
【表3】

【0044】
図8Cに戻ると、リンク列の前方内側歯面236と、先行リンク列の後方外側歯面237とを含むチェーン210を大きく拡大した部分図が示されている。スプロケット250と噛合するチェーン210に対して、初期接触位置ICは、リンクプレート230のピン中心C間に延びるピン中心参照線Pから、ピン中心参照線に対して直角に測った距離ICにある前方内側歯面236上に位置する。チェーン210は、チェーンリンクピッチPが7.7mmで、例えば19〜50の範囲の歯数Nを有する一群のスプロケットと噛合するように設計されているものとして、外側歯面接触位置OFと内側歯面移行接触位置IFは、噛合衝撃角σと移行衝撃角σ’の対応する変化と共に、スプロケット歯数Nと圧力角とに依存して変化する。
【0045】
下の表4は、システム215の一例を示している。ここでは、スプロケット歯数Nは19〜50で変化し、チェーンピッチP=7.7mm、λ=0.075であり、これらは上記のβおよびσに対する必要条件を満たす。
【表4】


当業者であれば、ITチェーンシステム215においてスプロケット圧力角PAを変更し得ることは、前述したように、初期接触位置ICを内側歯面236上の好適な位置(距離ICDによって定義)に置いたままで、衝撃エネルギーEを減少するために、βおよびσを最適化(β≦7°,σ≦31°)することが可能となることを理解できるであろう。
【0046】
本発明を好適な実施形態を参照して説明した。本発明が関係する分野の当業者は修正および変更を思いつくであろうが、本発明はそのような修正および変更のすべてを包含するものと見なされることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の歯を備えるスプロケットであって、それぞれの歯が係合歯面と離合歯面とからなるスプロケットと、
前記スプロケットと噛合する逆歯チェーンであって、前記逆歯チェーンは、複数のリンク列を備え、前記複数のリンク列のそれぞれは前方ピン中心を中心として先行リンク列に対して関節連結し、且つ前記複数のリンク列のそれぞれは後方ピン中心を中心として後続リンク列に対して関節連結し、前記前方ピン中心と後方ピン中心とは、相互にチェーンピッチPだけ離間し、前記列のそれぞれは前方内側歯面と後方外側歯面とを備える、逆歯チェーンと、
を備えるチェーンとスプロケット駆動システムであって、
各列の前記前方内側歯面は、先行列の前記後方外側歯面の作動部分よりも相対的に外側に突出していて、内側歯面半径Rをなし、
前記チェーンは、接線沿いに前記スプロケットに近づき、各スプロケット歯の係合歯面が、初期噛合接触の瞬間において前記チェーンの噛合列の前方内側歯面上の初期接触位置において前記チェーンと初期噛合接触を行い、
前記初期噛合接触の瞬間において、前記噛合列に先行する直前のチェーン列が、制御ピン中心となる、ピッチ直径上に位置する前方ピン中心を含み、
前記スプロケットと全体に噛合している前記チェーンの各列に対して、その前方ピン中心と後方ピン中心とは、前記ピッチ直径PD上に位置し、かつ、その後方外側歯面は、前記係合歯面の1つと接触しており、
噛合接触角τは、前記接線TLと、前記制御ピン中心と前記初期接触位置との両方を通る初期接触参照線とのなす角度として定義され、
リンクプレートの入口角βは、前記初期接触参照線と、前記内側歯面半径の弧の中心と前記初期接触位置とを通る内側歯面参照線とのなす角度として定義され、
噛合衝撃角σは、前記接線と、前記内側歯面参照線とがなす角度であって、σ=τ+βであり、σは34°以下であるように定義される、チェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項2】
それぞれのスプロケット歯の前記係合歯面は圧力角で画定され、
前記スプロケットは、前記の歯の全数に等しい歯数を画定し、前記圧力角は、前記歯数に応じて変化し、
前記歯数が19より小さい場合には、前記圧力角=33°であり、
前記歯数が19から25の範囲にある場合には、前記圧力角=31.5°であり、
前記歯数が26から60の範囲にある場合には、前記圧力角=30°であり、
βは9°以下である、請求項1に記載のチェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項3】
前記各列の前方内側歯面は、前記先行列の後方外側歯面の作動部分よりも、0.007×P≦λ≦0.017×Pとなるような最大突出量λだけ相対的に外側に突出している、請求項2に記載のチェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項4】
前記歯面半径は、P≦R<2×Pで定義される大きさを有する、請求項3に記載のチェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項5】
前記チェーンの前記内側リンクのそれぞれは、Ψ≦30.5°である外側歯面角度Ψを画定し、
前記外側歯面角度Ψは、前記後方ピン中心を通り前記接線に垂直な第1の参照線と、前記後方外側歯面に一致する第2の参照線とのなす角度として定義される、請求項4に記載のチェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項6】
前記外側歯面は、前記チェーンの各内側リンクの前記作動部分とトウ先端との間にあるチャンファからなる非作動部分を備え、
前記チェーンの隣接列の前記前方内側歯面は、前記逆歯チェーンが真直ぐに引張られている場合に、前記突出量λより大きな突出量だけ前記チャンファよりも外側に突出している、請求項3に記載のチェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項7】
前記後方外側歯面の作動部分と前記チャンファとはいずれも平坦であり、前記内側リンクのそれぞれに対して、前記チャンファと前記後方外側歯面とのなす角度としてチャンファ角が定義される、請求項6に記載のチェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項8】
前記各スプロケット歯の係合歯面は、少なくとも27°であり、且つ29°以下である圧力角で画定される、請求項1に記載のチェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項9】
前記σは31°以下である、請求項8に記載のチェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項10】
前記βは7°以下である、請求項9に記載のチェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項11】
前記各列の前方内側歯面は、前記先行列の後方外側歯面の作動部分よりも、0.007×P≦λ≦0.017×Pとなるような最大突出量λだけ相対的に外側に突出している、請求項10に記載のチェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項12】
前記歯面半径Rは、P≦R<2×Pで定義される大きさを有する、請求項11に記載のチェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項13】
前記チェーンの前記内側リンクのそれぞれは、外側歯面角度Ψ≦27°を画定し、
前記外側歯面角度Ψは、前記後方ピン中心を通り前記接線に垂直な第1の参照線と、前記後方外側歯面に一致する第2の参照線とのなす角度として定義される、請求項12に記載のチェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項14】
前記外側歯面は、前記チェーンの各リンクの前記作動部分とトウ先端との間にあるチャンファを含む非作動部分を更に備え、
前記チェーンの隣接列の前方内側歯面は、前記逆歯チェーンが真直ぐに引張られている場合に、前記最大突出量λより大きな突出量だけ前記チャンファよりも外側に突出している、請求項13に記載のチェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項15】
前記後方外側歯面の作動部分と前記チャンファとはいずれも平坦であり、前記内側リンクのそれぞれに対して、前記チャンファと前記後方外側歯面とのなす角度としてチャンファ角が定義される、請求項14に記載のチェーン・スプロケット駆動システム。
【請求項16】
複数のリンク列であって、前記複数のリンク列のそれぞれは前方ピン中心を中心として先行リンク列に対して関節連結し、かつ前記複数のリンク列のそれぞれは後方ピン中心を中心として後続リンク列に対して関節連結し、前記前方ピン中心と後方ピン中心とは、相互にチェーンピッチPだけ離間し、前記列のそれぞれは前方内側歯面と後方外側歯面とを備える、複数のリンク列を備える逆歯チェーンであって、
前記各列の前方内側歯面は、前記先行列の後方外側歯面の作動部分よりも、0.007×P≦λ≦0.017×Pとなるような最大突出量λだけ相対的に外側に突出しており、
前記チェーンの各列の前方内側歯面は、P≦R<2×Pである内側歯面半径Rで画定され、
前記外側歯面は、前記チェーンの各リンクの前記作動部分とトウ先端との間にあるチャンファから成る非作動部分を備え、前記チェーンの隣接列の前方内側歯面は、前記逆歯チェーンが真直ぐに引張られている場合に、前記突出量λより大きな突出量だけ前記チャンファよりも外側に突出している、逆歯チェーン。
【請求項17】
前記後方外側歯面の作動部分と前記チャンファとはいずれも平坦であり、前記リンクのそれぞれに対して、前記チャンファと前記後方外側歯面とのなす角度としてチャンファ角が定義される、請求項16に記載の逆歯チェーン。
【請求項18】
前記後方外側歯面の前記作動部分は直線形状であり、
各リンクは外側歯面角Ψ≦30.5°を画定し、
前記外側歯面角Ψは、(i)前記後方ピン中心を通り、前記前方ピン中心と後方ピン中心とを結ぶピン中心参照線に対して垂直である、第1の参照線と、(ii)前記後方外側歯面の前記作動部分に一致する、第2の参照線とのなす角度として定義される、請求項16に記載の逆歯チェーン。
【請求項19】
逆歯チェーンと噛合するように適合されたスプロケットであって、
前記スプロケットは複数の歯を備え、
前記複数の歯のそれぞれは係合歯面と離合歯面とを備え、
前記複数の歯のそれぞれの歯の係合歯面は、前記スプロケットに含まれる前記歯の総数を定義する歯数Nに基づいて、
N=19〜25に対して28°≦PA≦29°、
N=26〜50に対して27°≦PA≦28°、
のように大きさが変わる圧力角PAによって画定される、スプロケット
【請求項20】
関連する逆歯チェーンと噛合するように適合されたスプロケットであって、
前記逆歯チェーンは、複数のリンク列を備え、前記複数のリンク列のそれぞれは前方ピン中心を中心として先行リンク列に対して関節連結し、かつ前記複数のリンク列のそのそれぞれは後方ピン中心を中心として後続リンク列に対して関節連結し、前記前方ピン中心と後方ピン中心とは、相互にチェーンピッチPだけ離間し、前記列のそれぞれは前方内側歯面と後方外側歯面とを備え、
各列の前記前方内側歯面は、先行列の後方外側歯面の作動部分よりも相対的に外側に突出していて、内側歯面半径Rをなし、
前記チェーンは、接線沿いに前記スプロケットに近づき、スプロケットの各歯の係合歯面が、最初の噛合接触の瞬間において前記チェーンの噛合列の前方内側歯面上の初期接触位置において前記チェーンと最初の噛合接触を行い、
前記初期噛合接触の瞬間において、前記噛合列に先行する直前のチェーン列が、制御ピン中心となる、ピッチ直径上に位置する前方ピン中心を含み、
前記スプロケットと全体に噛合している前記チェーンの各列に対して、その前方ピン中心と後方ピン中心とは、前記ピッチ直径PD上に位置し、かつ、その後方外側歯面は、前記係合歯面の1つと接触しており、
噛合接触角τは、前記接線TLと、前記制御ピン中心と前記初期接触位置との両方を通る初期接触参照線とのなす角度として定義され、
リンクプレートの入口角βは、前記初期接触参照線と、前記内側歯面半径の弧の中心と前記初期接触位置とを通る内側歯面参照線とのなす角度として定義され、
噛合衝撃角σは、前記接線と、前記内側歯面参照線とがなす角度であって、σ=τ+βであり、σは31°以下であるように定義される、請求項19に記載のスプロケット。
【請求項21】
複数のリンク列を備える逆歯チェーンであって、
前記複数のリンク列のそれぞれは、前方ピン中心を中心として先行リンク列に対して関節連結し、かつ前記複数のリンク列のそれぞれは後方ピン中心を中心として後続リンク列に対して関節連結し、前記前方ピン中心と後方ピン中心とは、相互にチェーンピッチPだけ離間し、前記複数のリンク列のそれぞれは前方内側歯面と後方外側歯面とを備え、
前記各列の前方内側歯面は、前記チェーンが真直ぐに引張られている場合に、前記先行列の後方外側歯面の直線的な作動部分よりも、0.007×P≦λ≦0.017×Pとなるような最大突出量λだけ相対的に外側に突出しており、
各列の前記前方内側歯面は、P≦R<2×Pである内側歯面半径Rで画定され、
前記各列の外側歯面は、前記作動部分とトウ先端との間にあるチャンファからなる非作動部分を備え、前記チェーンの隣接列の前記前方内側歯面は、前記チェーンが真直ぐに引張られている場合に、前記突出量λより大きな突出量だけ前記チャンファよりも外側に突出しており、
前記外側歯面は、外側歯面角Ψ≦30.5°を画定し、前記外側歯面角Ψは、(i)前記後方ピン中心を通り、前記前方ピン中心と後方ピン中心とを結ぶピン中心参照線に対して垂直である、第1の参照線と、(ii)前記後方外側歯面の前記直線作動部分に一致する、第2の参照線とがなす角度として定義される、逆歯チェーン。
【請求項22】
前記外側歯面角Ψは、Ψ≦27°である、請求項21に記載の逆歯チェーン。

【図1】
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【図2A−2B】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図6A】
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【図7】
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【図7A】
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【図8】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図9A】
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【図10】
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【図10A】
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【図11】
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【図11A】
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【公表番号】特表2012−502239(P2012−502239A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526939(P2011−526939)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/056364
【国際公開番号】WO2010/030669
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(505233217)クロイズ ギア アンド プロダクツ インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】