説明

噴射ノズル及び該噴射ノズルを用いた槽内異物除去装置

【課題】処理液の循環ポンプの大型化等を抑えた上で噴出量を増加させ、噴射ノズルから噴射される処理液の噴出幅、噴出厚さ及び噴出距離を増大させて、異物を巻き上げることなく良好に除去できる噴射ノズル及び該噴射ノズルを用いた槽内異物処理装置を提供する。
【解決手段】処理槽内に貯留した処理液中で用いられる噴射ノズル1は、ノズル本体2の先端壁4の外面に軸方向視で軸中心側に凸の円弧状に延びるV字溝5を一対に形成し、該各V字溝5の長手方向中間部の底部にはそれぞれ軸方向視三日月形状の噴射口6を形成してなる。ノズル本体2は処理槽の底部に向けて斜めに処理液を噴射するべく傾斜して配置され、かつ前記各噴射口6は上下に並ぶように配置される。この噴射ノズル1を用いて槽内異物除去装置が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理槽内に貯留した処理液中で用いられる噴射ノズル及び該噴射ノズルを用いた槽内異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶接処理が施された自動車の車体には、溶接処理が施される前の各プレス成形品に付着した鉄粉や防錆油等の異物、そして溶接処理時に付着したスパッタ等の鉄粉が付着している。このため、塗装工程では、まず車体に付着した異物を洗浄し、次いで脱脂処理、表面調整処理、化成処理等の前処理工程を経て、当該車体が電着塗装工程、中塗り工程、上塗り工程へと進む。
前記前処理工程には、車体に付着した異物を洗浄除去するために多段の処理槽(ディップ槽)が配設されており、これら各処理槽の底部には車体に付着して持ち込まれた異物、特に鉄粉やスパッタ等の処理液に対して比重の大きい異物が沈降し堆積される。また、電着塗装工程においても、長期の使用により処理槽の底部に沈降性がある電着塗料の顔料成分等が沈降し固化することがあり、このような鉄粉、スパッタ、固化した顔料成分等が、処理液の対流や車体の槽内移動により巻き上げられて再び車体に付着して塗装不良を生じさせることを防止するために、処理槽の底部に配設したホッパに異物を捕集して該異物を処理液と共にポンプで処理槽外に吸引し、これらをフィルタでろ過することで前記異物を捕捉し除去している。
そして、処理槽の底部には、前記異物を除去した後の処理液を処理槽内に戻すべくホッパ側に向けて噴射する噴射ノズルが配設され、該噴射ノズルから噴射される処理液によって処理槽内に沈降し堆積された異物をホッパ内に捕集している。このとき、処理槽の底部に沈降した異物を巻き上げることなく確実にホッパに導く必要がある。
【0003】
特許文献1参照には、噴出口を形成する噴射ノズルに対して同心状にベンチュリー管を臨ませ、噴射口からの流体噴射に伴うエゼクター作用により、ベンチュリー管内にその周囲の流体を吸入し、該吸入流体を噴射口からの噴射流体と共にベンチュリー管の先端開口から噴出することで、噴出流体の広がりを大きくしたエゼクターノズルを備えた電着槽が開示されている。
特許文献2には、液上で用いられる噴射ノズルにおいて、ノズル本体の噴射側の平坦状の頂面に、その直径方向に沿う溝を一対に形成し、該各溝の長さ方向中央部の底部には、それぞれノズル本体内の圧送空間に至る噴射口を形成し、該一対の噴射口より流体を噴射することで、各溝の幅方向の噴射範囲を広げて噴霧の幅(噴霧の厚さ)を大とすると共に、前記各溝の両側壁を頂面に向けて近接させることで、前記幅方向の噴霧を拡散させず噴霧範囲を所定幅に均等化させて噴霧量の均等化を図り、さらに各溝の長さ方向にも噴霧をガイドし、該長さ方向の噴射範囲を均等化すると共に噴霧量の均等化を図る噴射ノズルが開示されている。
【特許文献1】実開平1−6573号公報
【特許文献2】特開2007−237086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の構成においては、処理液の噴出量が多く、かつエゼクターノズルから噴出された処理液の噴出パターンが略円錐形状となるため、噴出された処理液が処理槽の底部に衝突した際に拡散し易く、異物が巻き上げられて車体に付着して塗装不良を生じさせる虞がある。
上記特許文献2の構成においては、当該噴射ノズルを処理液中で用いると直進性が弱く、その噴出距離を増大させるには、ノズルに対する処理液の供給量を増加させると共に所定の圧力で噴出させるための循環ポンプを大型化する必要があり、コスト高になり易い。またこの場合、噴出された処理液が処理槽の底部に衝突した際に拡散し易く、異物が巻き上げられて車体に付着して塗装不良を生じさせる虞がある。
【0005】
そこでこの発明は、処理液の循環ポンプの大型化等を抑えた上で噴出量を増加させ、噴射ノズルから噴射される処理液の噴出幅、噴出厚さ及び噴出距離を増大させて、異物を巻き上げることなく良好に除去できる噴射ノズル及び該噴射ノズルを用いた槽内異物処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、処理槽(例えば実施例の処理槽9)内に貯留した処理液(例えば実施例の処理液10)中で用いられ、筒状のノズル本体(例えば実施例のノズル本体2)内に循環経路(例えば実施例の循環経路22)から処理液が圧送され、該処理液を前記ノズル本体の軸先端部からその前方に向けて噴射する噴射ノズル(例えば実施例の噴射ノズル1)であって、前記ノズル本体の軸先端部を閉じる先端壁(例えば実施例の先端壁4)の外面に、軸方向視で軸中心側に凸の円弧状に延びる断面V字状のV字溝(例えば実施例のV字溝5)を一対に形成し、該各V字溝の長手方向中間部の底部に、それぞれ前記先端壁を貫通して前記ノズル本体内の圧送空間(例えば実施例の圧送空間3)に至る軸方向視三日月形状の噴射口(例えば実施例の噴射口6)を形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記ノズル本体が前記処理槽の底部(例えば実施例の底部14)に向けて斜めに処理液を噴射するべく傾斜して配置され、かつ前記各噴射口が上下に並ぶように配置されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明は、槽内に貯留した処理液(例えば実施例の処理液10)中にワーク(例えば実施例のワークW)を浸漬して所定の処理を行う処理槽(例えば実施例の処理槽9)に用いられ、処理槽の底部(例えば実施例の底部14)に沈降した異物を除去する槽内異物除去装置(例えば実施例の槽内異物除去装置20)であって、前記底部の近傍に配設された請求項2に記載の噴射ノズル(例えば実施例の噴射ノズル1)と、該噴射ノズルからの噴射により移動した前記異物を捕集するべく前記処理槽の底部における前記噴射の下流側に配設される異物捕集部(例えば実施例のホッパ11)と、該異物捕集部を通過した処理液中の異物を除去すると共に該処理液を前記噴射ノズルに圧送する循環経路(例えば実施例の循環経路22)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載した発明は、前記底部には互いに平行に延びる複数の断面半円状のガイド溝(例えば実施例のガイド溝15)が形成され、前記底部の近傍には前記循環経路における前記各ガイド溝の延在方向と交差して延びる分配管(例えば実施例の分配管19)が配設され、該分配管における各ガイド溝の幅方向中央部の上方に位置する部位には、前記噴射ノズルがそれぞれ設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1,2に記載した発明によれば、各噴射口から噴射された処理液は、各V字溝にガイドされつつ各噴射口の軸方向視形状と同様の三日月形状の領域に噴射される。
このとき、各噴射口からの噴射領域における各三日月形状の内周側の領域、及び各噴射口からの噴射領域における各三日月形状の相対する端部間の領域といった、各噴射口からの噴射領域の周囲における軸方向視凹状の領域にある処理液が、各噴射口からの噴射に伴うエゼクター作用(吸引作用)により、各噴射口から噴射した処理液と共に流れて一体の噴射流となる。このため、循環経路(循環ポンプ)の容量を上げなくとも全体の噴出量が増加し、噴射ノズルからの噴射流の噴出幅及び噴出厚さを増大させる。
そして、当該噴射ノズルを処理槽の底部に沈降した異物の除去に使用する場合において、ノズル本体が各噴射口を上下に配した傾斜姿勢に配置されて、処理槽の底部に向けて斜めに処理液を噴射することで、下側(底部に近い側)の噴射口からの噴射流が上側(底部から遠い側)の噴射口からの噴射流よりも先に底部に衝突した際に、該衝突による拡散や巻き上げが上側の噴射口からの噴射流により押さえ込まれ、かつ上側の噴射口からの噴射流の底部への衝突も緩和される。このため、噴射ノズルからの噴射流の直進性が高まって噴出距離を増大させる。
このように、処理液の循環ポンプの大型化等を抑えた上で噴射ノズルの噴出量を増加させ、該噴射ノズルからの処理液の噴出幅及び噴出厚さを増大させ、かつ噴射ノズルからの噴出流の直進性を高めて噴出距離を増大させることで、処理槽の底部に沈降した異物を巻き上げることなく広範囲に渡って良好に除去できると共に、噴射ノズルの個数を削減してコストダウンを図ることができる。
【0011】
請求項3に記載した発明によれば、処理槽の底部の近傍に配設された前記噴射ノズルから、前述の如く処理液の噴出量を増加させつつ噴出幅、噴出厚さ及び噴出距離を増大させた噴射がなされると、処理槽の底部に沈降した異物が異物捕集部に良好に捕集される。異物捕集部を通過した異物及び処理液は循環経路で分離され、異物を除去した後の処理液は循環ポンプを経て噴射ノズルへ圧送され、該噴射ノズルから再度噴射されて前記異物の捕集に供される。このような処理液の循環により処理槽の底部への異物の沈降をなくすことで、当該処理液による所定の処理を良好に行うことができる。
【0012】
請求項4に記載した発明によれば、各噴射ノズルから処理液を噴射すると、該処理液は一旦各ガイド溝の幅方向中央部(底部)に至った後、その断面形状に沿って幅方向両側に広がりながら噴射方向下流側に斜めに流れ、その後に各ガイド溝の幅方向両側に沿って噴射方向下流側に流れる。このとき、隣接するガイド溝同士で噴射方向下流側への流れを強め合い、該流れに乗って移動する異物を噴射方向下流側すなわち異物捕集部に向けて良好に導くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1〜4に示す噴射ノズル1は、図5他に示す処理槽9内に貯留した処理液10中で用いられるもので、循環経路22から圧送された処理液を噴射して処理槽9の底部14(底面)に沈降堆積した異物をホッパ11(異物捕集部)内に導くものである。処理槽9は、例えば溶接処理が施された自動車の車体等のワークWを処理液10に浸漬し搬送しながら、該ワークWの洗浄や脱脂あるいは電着塗装等の処理を施すものである。
【0014】
図1〜4に示すように、噴射ノズル1は、筒状のノズル本体2内に循環経路22から処理液を圧送し、該処理液を前記ノズル本体2の軸先端部からその前方に向けて噴射する。ノズル本体2の軸先端部を閉じる先端壁4の外面には、軸方向視で軸中心側に凸の円弧状に延びる断面V字状のV字溝5が一対に形成され、該各V字溝5の長手方向中間部の底部には、それぞれ前記先端壁4を貫通して前記ノズル本体2内の圧送空間3に至る軸方向視三日月形状の噴射口6が形成される。前記圧送空間3は、ノズル本体2の中心軸線Lに沿う円柱状をなして該ノズル本体2の基端側に開放する。V字溝5を形成する一対の内壁面は、基端側すなわち圧送空間3側ほど相寄る方向に傾斜している。
【0015】
噴射ノズル1は、ノズル本体2の基端側外周にネジ山を刻設してネジ部7とし、該ネジ部7を用いて前記循環経路22の下流側に設けられた分配管19に着脱可能に取り付けられる。このとき、噴射ノズル1は、シムやロックナットを介装する等により、ノズル本体2が処理槽9の底部14に向けて斜めに処理液を噴射するべく側面視で傾斜して配置され(図9参照)、かつ各噴射口6が上下に並ぶように配置される。なお、図中符号8は分配管19への締結用に噴射ノズル1の軸方向中間部に形成されたナット部を示す。
【0016】
噴射ノズル1は、ノズル本体2の中心軸線Lをワーク搬送方向(図中矢印Fで示す)と略平行とし、かつノズル本体2の先端壁4をワーク搬送方向上流側に向け、さらにノズル本体2の中心軸線Lが処理槽9の底部14に対してワーク搬送方向上流側(噴射方向上流側)ほど底部14側となるように前述の如く側面視で傾斜して配置される。
【0017】
そして、図5に示すように、噴射ノズル1を処理液10中に浸漬し、底部14近傍にて前述の如く側面視で傾斜して配置した状態で、該噴射ノズル1の圧送空間3内に処理液を圧送し、該処理液を各噴射口6から噴射することで、その噴射流が底部14に上方かつワーク搬送方向下流側から斜めに噴き付けられ、該底部14上に沈降した異物をワーク搬送方向上流側に押し流す。底部14におけるワーク搬送方向上流側には前記ホッパ11が設けられ、該ホッパ11内に前記押し流された異物が捕集される。
【0018】
再び図1〜4を参照し、ノズル本体2の前記先端壁4の外面(ノズル本体2の先端面、頂面)は、その外周の面取り部4aを除き軸方向と直交する平坦面とされ、この外面における略水平な直径を対称軸として上下一対の前記V字溝5が形成される。V字溝5の長手方向両端は先端壁4外周の面取り部4aの外面に至りその外周側に開放する。
圧送空間3の先端側には半球状の膨出部3aが形成され、該膨出部3aが各V字溝5の長手方向中間部の底部を軸方向視三日月形状に切り欠くことで、先端壁4を貫通する前記各噴射口6が形成される。
【0019】
次に、上記噴射ノズル1の作用について説明する。
噴射ノズル1は、前述の如く各噴射口6を上下に配置し側面視で傾斜した姿勢で、処理槽9内の処理液10中に浸漬されて底部14近傍に配置される。この噴射ノズル1から噴射された処理液は、各V字溝5にガイドされつつ各噴射口6の軸方向視形状と同様の三日月形状の領域に噴射される。
【0020】
このとき、各噴射口6からの噴射領域における各三日月形状の内周側(上側の噴射口6の上方及び下側の噴射口6の下方)の領域、及び各噴射口6からの噴射領域における各三日月形状の左右端部の相対する端部間の領域といった、各噴射口6の噴射領域の周囲(上下左右)における軸方向視凹状の領域にある処理液が、各噴射口6からの噴射に伴うエゼクター作用(吸引作用)により図2中矢印Gの如く吸引され、各噴射口6から噴射した処理液と共に流れて一体の噴射流となる。このため、循環経路22(循環ポンプ21)の容量を上げなくとも全体の噴出量が増加し、噴射ノズル1からの噴射流の噴出幅及び噴出厚さを増大させる。
【0021】
そして、前述の如くノズル本体2が各噴射口6を上下に配した傾斜姿勢に配置されて、処理槽9の底部14に向けて斜めに処理液を噴射することで、下側(底部14に近い側)の噴射口6からの噴射流が上側(底部14から遠い側)の噴射口6からの噴射流よりも先に底部14に衝突した際に、該衝突による拡散や巻き上げが上側の噴射口6からの噴射流により押さえ込まれ、かつ上側の噴射口6からの噴射流の底部14への衝突も緩和される。このため、噴射ノズル1からの噴射流の直進性が高まって噴出距離を増大させる。
【0022】
図9を参照し、噴射ノズル1の底部14に対する傾斜角度(ノズル本体2の中心軸線Lの傾斜角度)αについては、該角度αが10°に満たないと、処理液に対して比重の大きな異物をホッパ11に向けて押し流すことが困難になり、処理槽9の底部14に沈降した異物を捕集困難になる。
一方、前記角度αが60°を超えると、噴射された処理液が底部14に衝突した際に沈降した異物を巻き上げ、該異物がワークWに付着するという不具合を生じさせる。
そこで、前記角度αを10°以上60°未満、好ましくは20°〜30°の範囲に設定することで、異物の巻き上げを抑えつつこれをホッパ11に良好に導くことができる。
【0023】
次に、上記噴射ノズル1を備えた槽内異物除去装置20について図5,6を参照して説明する。
槽内異物除去装置20は、前記処理槽9の底部14の近傍に配設された前記噴射ノズル1と、該噴射ノズル1からの噴射により移動した前記異物を捕集するべく処理槽9の底部14における前記噴射の下流側に配設された前記ホッパ11と、該ホッパ11を通過した処理液中の異物を除去すると共に該処理液を噴射ノズル1に圧送する前記循環経路22とを有してなる。循環経路22には、処理液を循環させると共に噴射ノズル1側に圧送する循環ポンプ21が配設される。なお、図5中符号23は異物と共にホッパ11を通過した処理液をろ過して前記異物を除去するフィルタを示す。
【0024】
処理槽9の底部14には、ワーク搬送方向下流側から順に、ワーク搬送方向下流側ほど上方に位置するように傾斜する傾斜部14a、略水平な水平部14b、及び前記ホッパ11が設けられる。処理槽9の上方には、ワークWを吊り下げた状態で搬送する搬送コンベア13が配設される。
【0025】
図7,8を併せて参照し、処理槽9の傾斜部14a及び水平部14bには、ワーク搬送方向に沿って延びる断面半円状のガイド溝15が複数形成される。各ガイド溝15は、処理槽9におけるワーク搬送方向と直交する幅方向で互いに隣接するもの同士でその側縁15aを共有するように近接して配置される。
処理槽9の底部14は、例えばプレス成形により製作された凹凸形状(複数の樋形状が並設された形状)を有する鋼板部材16をワーク搬送方向で複数並べ、これら鋼板部材16を互いに溶接結合し一体化することで形成される。なお、図中符号17は各鋼板部材16の外郭を裏面側から補強する補強部材を示す。
【0026】
ガイド溝15の断面形状は、前記幅方向に長径を、高さ方向(深さ方向)に短径をそれぞれ配した楕円形状の下部に相当する。なお、前記楕円形状の長径及び短径の比は1:1から8:1までの範囲内であることが望ましい。また、ガイド溝15の高さH(深さ)は前記楕円形状の短径の半分以下である。
【0027】
処理槽9の傾斜部14a及び水平部14bにおける前記幅方向の一側には、前記循環経路22における傾斜供給管18a及び水平供給管18bがそれぞれ配設される。
各供給管18a,18bはそれぞれ傾斜部14a及び水平部14bの近傍でこれらに沿って延び、これら各供給管18a,18bからは、各ガイド溝15の近傍(直ぐ上方)においてこれらに跨るように複数の前記分配管19が前記幅方向に沿って延びる。
各分配管19はワーク搬送方向で略等間隔となるように配設され、かつ各ガイド溝15両側の山状の側縁15aに当接するように配設される。これら各分配管19における各ガイド溝15の幅方向中央部の上方に位置する部位には、前記噴射ノズル1がそれぞれ取り付けられる。
【0028】
次に、上記槽内異物除去装置20の作用について説明する。
まず、処理槽9の底部14の近傍に配設された複数の噴射ノズル1から、前述の如く処理液の噴出量を増加させつつ噴出幅、噴出厚さ及び噴出距離を増大させた噴射がなされると、処理槽9の底部14に沈降した異物がホッパ11に良好に捕集される。ホッパ11を通過した異物及び処理液は循環経路22のフィルタ23で分離され、異物を除去した後の処理液は循環ポンプ21を経て各噴射ノズル1へ圧送され、該各噴射ノズル1から再度噴射されて前記異物の捕集に供される。このような処理液の循環により処理槽9の底部14への異物の沈降をなくすことで、当該処理液による所定の処理を良好に行うことができる。
【0029】
また、図10を併せて参照し、各噴射ノズル1から処理液を噴射すると、該処理液は一旦各ガイド溝15の幅方向中央部(底部)に至った後、その断面形状に沿って幅方向両側に広がりながら噴射方向下流側に斜めに流れ、その後に各ガイド溝15の幅方向両側に沿って噴射方向下流側に流れる。このとき、隣接するガイド溝15同士で噴射方向下流側への流れを強め合い、かつ該流れをワーク搬送方向で略等間隔に並ぶ噴射ノズル1により順次生じさせながら、該流れに乗って移動する異物を噴射方向下流側すなわちホッパ11に向けて良好に導くことができる。
【0030】
以上説明したように、上記実施例における噴射ノズル1は、処理槽9内に貯留した処理液10中で用いられ、筒状のノズル本体2内に循環経路22から処理液が圧送され、該処理液を前記ノズル本体2の軸先端部からその前方に向けて噴射するものであって、前記ノズル本体2の軸先端部を閉じる先端壁4の外面に、軸方向視で軸中心側に凸の円弧状に延びる断面V字状のV字溝5を一対に形成し、該各V字溝5の長手方向中間部の底部に、それぞれ前記先端壁4を貫通して前記ノズル本体2内の圧送空間3に至る軸方向視三日月形状の噴射口6を形成したものであり、かつ前記ノズル本体2が前記処理槽9の底部14に向けて斜めに処理液を噴射するべく傾斜して配置され、かつ前記各噴射口6が上下に並ぶように配置されるものである。
【0031】
この構成によれば、処理液の循環ポンプ21の大型化等を抑えた上で噴射ノズル1の噴出量を増加させ、該噴射ノズル1からの処理液の噴出幅及び噴出厚さを増大させ、かつ噴射ノズル1からの噴出流の直進性を高めて噴出距離を増大させることで、処理槽9の底部14に沈降した異物を巻き上げることなく広範囲に渡って良好に除去できると共に、噴射ノズル1の個数を削減してコストダウンを図ることができる。
【0032】
また、上記槽内異物除去装置20は、槽内に貯留した処理液10中にワークWを浸漬して所定の処理を行う処理槽9に用いられ、処理槽9の底部14に沈降した異物を除去するものであって、前記底部14の近傍に配設された前記噴射ノズル1と、該噴射ノズル1からの噴射により移動した前記異物を捕集するべく前記処理槽9の底部14における前記噴射の下流側に配設されるホッパ11と、該ホッパ11を通過した処理液中の異物を除去すると共に該処理液を前記噴射ノズル1に圧送する循環経路22と、を備えるものである。
【0033】
この構成によれば、前記噴射ノズル1を用いた処理液の噴射及び処理液の循環により処理槽9の底部14への異物の沈降を無くし、当該処理液による所定の処理を良好に行うことができる。
【0034】
また、上記槽内異物除去装置20は、前記底部14には互いに平行に延びる複数の断面半円状のガイド溝15が形成され、前記底部14の近傍には前記循環経路22における前記各ガイド溝15の延在方向と交差して延びる複数の分配管19が配設され、該各分配管19における各ガイド溝15の幅方向中央部の上方に位置する部位には、前記噴射ノズル1がそれぞれ設けられるものである。
【0035】
この構成によれば、隣接するガイド溝15同士で噴射方向下流側への流れを強め合い、かつ該流れをワーク搬送方向で等間隔に並ぶ噴射ノズル1により順次生じさせながら、該流れに乗って移動する異物を噴射方向下流側すなわちホッパ11に向けて良好に導くことができる。
【0036】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、例えば、底部14にガイド溝15(凹凸形状)を有さず平坦にした処理槽9に適用してもよい。この場合、前記分配管19は底部14に当接せず所定量上方に離間することとなる。また、前記水平部14bに代わりホッパ11側ほど低くなる等傾斜した第二の傾斜部を有する処理槽9に適用してもよい。
また、各噴射ノズル1の底部14に対する傾斜角度αを前述の如く10°以上60°未満の範囲外とし、底部14に衝突した処理液を巻き上げるようにすることも可能であり、この場合、当該噴射ノズル1を処理液の拡散を要する電着塗装用の処理槽9等に適用可能となる。すなわち、噴射ノズル1は処理槽9内の異物除去のみに用いられるものではなく、処理液中での該処理液の噴射全般に用いることが可能である。
そして、上記実施例における構成はこの発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で形状、材料、大きさ、数量及び配置等を変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施例における噴射ノズルの側面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図2のC矢視図である。
【図5】上記噴射ノズルを備えた処理槽及び槽内異物除去装置の側面図である。
【図6】上記処理槽の上面図である。
【図7】図6のD−D断面図である。
【図8】図7の部分拡大図である。
【図9】図6のE−E断面図である。
【図10】上記処理槽内の処理液の流れを示す上面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 噴射ノズル
2 ノズル本体
3 圧送空間
4 先端壁
5 V字溝
6 噴射口
9 処理槽
10 処理液
11 ホッパ(異物捕集部)
14 底部
15 ガイド溝
19 分配管
22 循環経路
W ワーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内に貯留した処理液中で用いられ、筒状のノズル本体内に循環経路から処理液が圧送され、該処理液を前記ノズル本体の軸先端部からその前方に向けて噴射する噴射ノズルであって、
前記ノズル本体の軸先端部を閉じる先端壁の外面に、軸方向視で軸中心側に凸の円弧状に延びる断面V字状のV字溝を一対に形成し、該各V字溝の長手方向中間部の底部に、それぞれ前記先端壁を貫通して前記ノズル本体内の圧送空間に至る軸方向視三日月形状の噴射口を形成したことを特徴とする噴射ノズル。
【請求項2】
前記ノズル本体が前記処理槽の底部に向けて斜めに処理液を噴射するべく傾斜して配置され、かつ前記各噴射口が上下に並ぶように配置されることを特徴とする請求項1に記載の噴射ノズル。
【請求項3】
槽内に貯留した処理液中にワークを浸漬して所定の処理を行う処理槽に用いられ、処理槽の底部に沈降した異物を除去する槽内異物除去装置であって、
前記底部の近傍に配設された請求項2に記載の噴射ノズルと、該噴射ノズルからの噴射により移動した前記異物を捕集するべく前記処理槽の底部における前記噴射の下流側に配設される異物捕集部と、該異物捕集部を通過した処理液中の異物を除去すると共に該処理液を前記噴射ノズルに圧送する循環経路と、を備えることを特徴とする槽内異物除去装置。
【請求項4】
前記底部には互いに平行に延びる複数の断面半円状のガイド溝が形成され、前記底部の近傍には前記循環経路における前記各ガイド溝の延在方向と交差して延びる分配管が配設され、該分配管における各ガイド溝の幅方向中央部の上方に位置する部位には、前記噴射ノズルがそれぞれ設けられることを特徴とする請求項3に記載の槽内異物除去装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−297603(P2009−297603A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152159(P2008−152159)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(501141769)株式会社industria (29)
【Fターム(参考)】