説明

噴射異常検出方法及びコモンレール式燃料噴射制御装置

【課題】簡易な構成で、機械部品の不具合に起因する噴射異常の検出を可能とする。
【解決手段】燃料噴射弁13はピエゾインジェクタを用いてなり、電子制御ユニット40においては、そのピエゾインジェクタへの電圧印加開始時T0から第1の所定時間T1経過した時点におけるピエゾインジェクタの端子電圧V1が、第1の基準電圧Vaを下回っているかが否か判定され(S108)、電圧V1が第1の基準電圧Vaを下回っていると判定された場合には、噴射異常であると判定され(S110)、噴射停止や報知などの処理が実行されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射の異常を検出する方法及びコモンレール式燃料噴射制御装置に係り、特に、燃料噴射制御の信頼性向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーセルエンジンに代表される内燃機関への燃料供給を制御する装置としてはコモンレール式燃料噴射制御装置が広く採用されるに至っているが、近年、より高圧、高精度の燃料噴射制御の実現等の観点から、噴射制御弁としてピエゾ素子を用いたピエゾインジェクタなど種々の構成のものが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
ところで、かかる燃料噴射制御装置においては、燃料噴射弁から余剰燃料を燃料タンクへ戻すための戻り燃料通路が設けられるが、燃料噴射弁の噴射動作を阻害しないようにするため、戻り燃料通路には圧力保持弁が設けられて燃料噴射弁から見た戻り燃料通路側の圧力が所定圧以上に保持されるようになっている(例えば、特許文献2等参照)。
【0003】
このような燃料噴射弁からの戻り燃料通路に圧力保持弁を設けるのは、先に述べたピエゾインジェクタを用いた装置にあっても同様である。特に、ピエゾインジェクタの場合、ピエゾアクチュエータのストロークを増幅するため油圧回路が用いられた構成を採るものが一般的であるが、その構造上、噴射の1ストローク毎に、この油圧回路から若干の燃料が上述の戻り燃料通路へ漏れるようになっているため、次回の噴射のための燃料の充填のためには、ピエゾインジェクタと戻り燃料通路を接続する圧力保持弁によって確実に圧力を保持する必要がある。
【0004】
【特許文献1】特表2007−510849号公報(第3−5頁、図1)
【特許文献2】特表2006−523793号公報(第4−6頁、図1乃至図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の圧力保持弁は機械式のものが一般的であり、外部から何らの電気的な制御が加えられている訳ではないため、故障が生じ所定圧を保持できなくなった場合に、次述するような噴射異常を招くことがあるが、その検出をすることができない。すなわち、例えば、レール圧が比較的低圧状態にあって、圧力保持弁が所定圧を保持できない故障状態となった場合には、燃料噴射が全くできなくなるのではなく、本来の噴射量よりも低い噴射量ではあるが燃料噴射が行われる状態となることがある。この場合、噴射量の違いはあっても、燃料噴射は行われている状態であり、しかも、圧力保持弁自体の故障が検出される訳ではないので、従来、制御装置においては、このような状態を噴射状態が異常であると判定することができなかった。なお、燃料噴射弁として上述のピエゾインジェクタを用いた場合には、圧力保持弁の故障により、上述のように本来の噴射量より低下する場合のみならず、最悪時には、無噴射状態となる可能性もある。
いずれにしても、圧力保持弁の故障に起因して、上述のように本来の噴射量より低下した噴射量での燃料噴射状態や、無噴射状態となるような噴射異常を確実に検出する術がないのが現状である。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、簡易な構成で、圧力保持弁の故障に起因する無噴射状態のみならず、何らかの噴射異常が生じていると判断できる程度に噴射量が本来の量よりも低下した状態をも確実に検出することのできる噴射異常検出方法及びコモンレール式燃料噴射制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る噴射異常検出方法は、
燃料タンクの燃料が高圧ポンプによりコモンレールへ加圧、圧送され、当該コモンレールに接続されたピエゾインジェクタを用いてなる燃料噴射弁を介して内燃機関へ高圧燃料の噴射を可能としてなると共に、前記燃料噴射弁からの戻り燃料通路内に圧力保持弁が設けられてなるコモンレール式燃料噴射制御装置における噴射異常検出方法であって、
前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第1の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧が、第1の基準電圧を下回っている場合に、噴射異常であると判定するよう構成されてなるものである。
かかる構成において、第1の所定時間は、ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時と電圧の印加停止時との間に設定されたものとすると好適である。
また、本発明の目的を達成するため、本発明に係るコモンレール式燃料噴射制御装置は、
燃料タンクの燃料が高圧ポンプによりコモンレールへ加圧、圧送され、当該コモンレールに接続されたピエゾインジェクタを用いてなる燃料噴射弁を介して内燃機関へ高圧燃料の噴射を可能としてなると共に、前記燃料噴射弁からの戻り燃料通路内に圧力保持弁が設けられ、電子制御ユニットにより前記ピエゾインジェクタが駆動制御されるよう構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第1の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧が、第1の基準電圧を下回っているか否かを判定し、前記第1の所定時間経過時における前記ピエゾインジェクタの端子電圧が、前記第1の基準電圧を下回っていると判定された場合に、噴射異常であると判定するよう構成されてなるものである。
かかる構成において、第1の所定時間は、ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時と電圧の印加停止時との間に設定されたものとすると好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ピエゾインジェクタの端子電圧の変化を噴射異常検出に用いるよう構成したので、新たな部品を追加すること無く、機械部品の不具合に起因して、燃料噴射が行われない無噴射状態のみならず、何らかの噴射異常が生じていると判断できる程度に噴射量が本来の量よりも低下した状態のようないずれの噴射異常状態をも確実に検出することができる。
特に、異なる時点におけるピエゾインジェクタの端子電圧の差を噴射異常の判定に用いることにより、個々の部品の特性のばらつきによる判定処理への影響を抑圧することができ、信頼性の高い噴射異常検出が可能となる。
また、従来と異なり、機械部品の不具合に起因する噴射異常を検出してドライバに警報、報知することができるので、、ドライバビリティの向上に寄与することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図8を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における噴射異常検出方法が適用されるコモンレール式燃料噴射制御装置の構成例について、図1を参照しつつ説明する。
この図1に示されたコモンレール式燃料噴射制御装置Sは、燃料を貯蔵する燃料タンク1と、燃料タンク1の燃料を高圧ポンプ装置50へ供給する低圧フィードポンプ2と、高圧燃料の圧送を行う高圧ポンプ装置50と、この高圧ポンプ装置50により圧送された高圧燃料を蓄えるコモンレール10と、このコモンレール10から供給された高圧燃料を図示されないディーゼルエンジンの気筒へ噴射供給する複数の燃料噴射弁13と、燃料噴射制御処理や後述する噴射異常検出処理などが実行される電子制御ユニット(図1においては「ECU」と表記)40を主たる構成要素として構成されたものとなっている。
【0010】
なお、上述のそれぞれの構成要素は、電子制御ユニット40を除いて、燃料通路で接続されており、図1においては、高圧燃料通路37を太線で、低圧燃料通路18a〜18cを細線で、燃料還流路30a〜30cを破線で、それぞれ表している。また、図1において、電気配線を一点鎖線で表している。
【0011】
低圧フィードポンプ2は、燃料タンク1に貯蔵された燃料を、低圧燃料通路18a〜18cを介して高圧ポンプ5の加圧室5aへ供給するようになっている。本発明の実施の形態における低圧フィードポンプ2は、電磁低圧ポンプが用いられており、電子制御ユニット40による通電制御によって所定の流量の低圧燃料を圧送するよう構成されたものとなっている。
【0012】
高圧ポンプ装置50は、高圧ポンプ5と、流量制御弁8と、圧力調整弁14などを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
高圧ポンプ5は、低圧フィードポンプ2によって圧送され、燃料吸入弁6を介して加圧室5aに導入された低圧燃料を、プランジャ7によって加圧し、燃料吐出弁9及び高圧燃料通路37を介してコモンレール10に圧送するようになっているものである。
本発明の実施の形態における高圧ポンプ5は、燃料タンク1から低圧燃料通路18a、18bを介して高圧ポンプ5内へ送られる低圧燃料が、一旦、カム室16内に流入せしめられ、そこからさらに低圧燃料通路18cを介して加圧室5aへ導入されるよう構成されたものとなっている。
【0013】
また、カム室16と加圧室5aとを接続する低圧燃料通路18cの途中には、電磁式の流量制御弁(低圧制御電磁弁)8が設けられており、要求されるレール圧及び要求噴射量に応じて電子制御ユニット40の駆動制御を受けて低圧燃料の流量を調節し、加圧室5aへ送出できるようになっている。
【0014】
一方、流量制御弁8の上流側には、圧力調整弁14が低圧燃料流路18cから分岐して接続されて、流量制御弁8と並列的に配設されており、圧力調整弁14は、さらに、燃料タンク1に通じる燃料還流路30aに接続されたものとなっている。
かかる圧力調整弁14は、その前後の差圧、すなわち、低圧燃料通路18a〜18cやカム室16内の圧力と、圧力調整弁14よりも燃料タンク1側の燃料還流路30a内の圧力との差が、所定値を超えた際に開弁状態となるオーバーフローバルブを用いたものとなっている。
このため、低圧フィードポンプ2によって低圧燃料が圧送されている状態においては、低圧燃料流路18a〜18c及びカム室16内の圧力が、燃料還流路30a内の圧力に対して所定の差圧分だけ大きく維持されることとなる。
【0015】
一方、コモンレール10には、高圧燃料通路39を介して複数の燃料噴射弁13が接続されており、高圧ポンプ5から圧送され蓄積された高圧燃料が各燃料噴射弁13へ供給されるようになっている。
このコモンレール10には、レール圧センサ21及び圧力制御弁(高圧制御電磁弁)12が取り付けられている。
【0016】
圧力制御弁12は、例えば、電磁式比例制御弁が用いられ、コモンレール10に蓄積された高圧燃料の一部を、燃料還流路30bに放出する量を調節できるようになっており、これによってコモンレール10内の圧力を減圧できるようになっている。
【0017】
レール圧センサ21で検出された実レール圧の信号は、電子制御ユニット40へ入力され、実レール圧が目標レール圧となるよう行われる流量制御弁8と圧力制御弁12の駆動制御に供されるものとなっている。
本発明の実施の形態において、燃料噴射弁13は、ピエゾインジェクタを用いてなるもので、電子制御ユニット40によりその駆動制御が行われて、図示されない内燃機関の気筒内へ高圧燃料が噴射されるようになっている。なお、燃料噴射弁13からの戻り燃料は、圧力保持弁15と燃料還流路30c(戻り燃料通路)を介して燃料タンク1へ戻されるようになっている。
【0018】
ここで、圧力保持弁15は、いわゆる機械式のものであり、所定圧で開放状態となるように構成されてなるものである。
この圧力保持弁15が故障した場合、燃料噴射弁13にいわゆるピエゾインジェクタが用いられた構成にあっては、ピエゾインジェクタに必要な背圧が維持できなくなり、燃料噴射の異常、すなわち、具体的には、無噴射状態となる、或いは、噴射量が本来の量よりも低下することとなる。
本発明の実施の形態においては、後述するように電子制御ユニット40において実行される噴射異常検出処理によって、ピエゾインジェクタを用いた燃料噴射弁13の動作特性に着目して、上述のようないずれの噴射異常も検出できるようになっている。
【0019】
電子制御ユニット40は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータ(図示せず)を中心に、RAMやROM等の記憶素子(図示せず)を有すると共に、燃料噴射弁13を駆動するための駆動回路(図示せず)や、流量制御弁8や圧力制御弁12への通電を行うための通電回路(図示せず)を主たる構成要素として構成されたものとなっている。
かかる電子制御ユニット40には、先に述べたようにレール圧センサ21の検出信号が入力される他、エンジン回転数やアクセル開度などの各種の検出信号が、図示されないエンジンの動作制御や燃料噴射制御に供するために入力されるようになっている。
また、電子制御ユニット40は、後述する本発明の実施の形態における噴射異常検出処理の実行のために必要なピエゾインジェクタの端子電圧が読み込まれるようになっている。
【0020】
かかる構成において適用される本発明の実施の形態における噴射異常検出方法は、特に、燃料噴射弁13にピエゾインジェクタを用いた構成に適するものである。
すなわち、本発明の実施の形態における噴射異常検出方法は、本願発明者によるピエゾインジェクタの動作と噴射異常との関連性について鋭意研究を行った成果であり、かかる噴射異常検出方法の概略について図8を参照しつつ説明する。
図8は、ピエゾインジェクタを用いた燃料噴射弁13により噴射が行われた際のピエゾインジェクタの電圧印加端子(図示せず)、より正確には、ピエゾアクチュエータ(図示せず)の電圧印加端子における電圧の時間変化を示す波形図であり、横軸は時間を、縦軸は電圧を、それぞれ示している。
なお、以下の説明においては、「ピエゾインジェクタの電圧印加端子における電圧」を「ピエゾインジェクタの端子電圧」と称すると共に、「ピエゾインジェクタの端子電圧」は、「ピエゾアクチュエータの端子電圧」を意味するものとする。
【0021】
図8において、実線の特性線は、燃料噴射動作が正常な場合のピエゾインジェクタの端子電圧の変化を、また、点線の特性線は、噴射異常が生じている場合のピエゾインジェクタの端子電圧の変化を、それぞれ示すものである。
同図において、時刻T0は、噴射のためピエゾインジェクタへの電圧印加が開始された時点である。正常時におけるピエゾインジェクタの端子電圧の概略の変化は、次述する通りである。すなわち、まず、電圧印加が開始されると、ピエゾ素子(図示せず)が有するコンデンサと等価な電気的特性に起因して、端子電圧は徐々に上昇してゆく。電圧印加が停止される時刻T2において、端子電圧はピークに達し、その後、徐々に低下してゆき時刻T3で一旦、これまでの中で最も低い値となる。そして、その後、ピエゾインジェクタの端子電圧は、上昇に転じ、時刻T2における電圧V2よりも低い電圧で上下動(振れ)を複数回繰り返した後に収束する。ここで、時刻T4は、この電圧の収束後に噴射終了のために放電を行うタイミングであり、この時点から電圧が零に向かって低下を開始するものとなっており(図8の実線の特性線参照)、かかる変化は、従来から知られている通りである。
本願発明者は鋭意研究の結果、このようなピエゾインジェクタの端子電圧の変化において、何カ所かの時点における電圧を比較検討することによって、燃料噴射が正常か否かを判断できるとの結論を得るに至った。
【0022】
すなわち、ピエゾインジェクタへの電圧印加開始時であるT0から第1の所定時間経過した時刻T1の時点において、正常時の標準的な第1の電圧はVa´であるが、個々のインジェクタの特性のばらつき等を勘案すると、第1の基準電圧Va以上あれば正常であると判断することができる。
ところが、例えば、圧力保持弁15が故障し、ピエゾインジェクタの背圧が保持できなくなり、噴射異常状態となると、ピエゾインジェクタ内部のピエゾアクチュエータ(図示せず)が通常より伸びる状態、すなわち、放電状態となるために、時刻T1における電圧が第1の基準電圧Va以下の電圧V1となってしまう(図8の点線の特性線参照)。
【0023】
ここで、時刻T1は、ピエゾインジェクタへの電圧印加が停止される時刻T2より以前であれば特定の時点に限定されるものではないが、電圧印加直後の電圧は、噴射異常か否かを確実に判断するのに適さない虞があることを考慮すれば、電圧印加開始の時刻T0と時刻T2のほぼ中間付近とするのが好適である。
【0024】
また、時刻T0から第2の所定時間経過した時刻T2は、電圧印加が停止される時点であり、通常、この時点の電圧V2がピークとなるが、このV2の大きさは、時刻T0から第4の所定時間経過した時刻T4における電圧V4が、所望の値となるように、以後の電圧の振れを考慮して設定されるものとなっている。
そして、時刻T2を経過すると電圧は徐々に低下してゆき、時刻T0から第3の所定時間経過した時刻T3において、一連の電圧変化の中で最小値Vb´となり、その後、再度上昇に転じてゆく。
【0025】
ここで、時刻T2以後時刻T3までの端子電圧の低下は、時刻T2において電圧印加が停止されても、ピエゾアクチュエータ(図示せず)のストローク(伸長)は続き、それは、ピエゾ素子(図示せず)が放電状態となることに等しく、その放電による電圧低下が生ずることによるものである。
また、時刻T3の後、端子電圧が上昇に転ずるのは、上述のようなピエゾアクチュエータ(図示せず)のストロークが終了した後、ピエゾアクチュエータ(図示せず)が反動で戻されているため、ピエゾ素子(図示せず)に電圧が発生することによるものである。
【0026】
ここで、時刻T3における正常時の電圧Vb´は、個々のピエゾインジェクタの特性のばらつき等を勘案すると、第2の基準電圧Vbより低ければ正常であると判断することができる。
例えば、先に述べたような噴射異常の場合にあっては、時刻T3における電圧は、第2の基準電圧Vbまで落ちきらず、それより高い電圧V3となる(図8の点線の特性線参照)。
そして、時刻T3以後、電圧は上下動を複数回繰り返した後に収束し第4の所定電圧V4に達することとなる。
【0027】
次に、電子制御ユニット40により実行される噴射異常検出処理の手順について、図2乃至図7に示されたフローチャートを参照しつつ説明する。
最初に、図2を参照しつつ本発明の実施の形態における噴射異常検出処理の全体の概略手順について説明する。
この噴射異常検出処理は、電子制御ユニット40において実行される種々の制御処理、例えば、エンジン動作制御や燃料噴射制御などの数々実行される制御処理の1つとしてサブルーチン処理されるものとなっているものである。
処理が開始されると、第1の噴射異常検出処理(図2のステップS100参照)から順に、第5の噴射異常検出処理(図2のステップS500参照)まで実行され、第5の噴射異常検出処理実行後は、一旦、図示されないメインルーチンへ戻り、他の必要な制御処理が実行された後、再び、図2の一連の処理が実行されるようになっている。
【0028】
第1乃至第5の噴射異常検出処理は、先に図8を参照しつつ説明したようにピエゾインジェクタの端子電圧で噴射異常の有無を判断する場合、噴射開始からの経過時間によって判断すべき電圧が異なることを考慮して、それぞれ処理内容を違えたものである。
各処理の具体的な手順は、図3乃至図6にそれぞれ示されており、以下、順に各処理の具体的な内容について説明する。
【0029】
図3には、第1の噴射異常検出処理の具体的な手順がサブルーチンフローチャートとして示されており、以下、同図を参照しつつ第1の噴射異常検出処理について説明する。
処理が開始されると、エンジン(図示せず)の始動から所定時間が経過したか否かが判定される(図3のステップS102参照)。
そして、所定時間が経過していると判定された場合(YESの場合)には、次述するステップS104の処理へ進む一方、まだ所定時間経過していないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS104以下の処理へ進むに適した状態ではないとして一連の処理が終了されることとなる。
【0030】
このように、エンジン始動後から所定時間の経過を判断するのは、エンジン始動直後は、エンジン動作がまだ確実に安定していないため、噴射異常ではないのにも関わらす誤って噴射異常との誤判定が生ずる可能性を回避するためである。
なお、所定時間として、如何なる時間を設定するかは、車両の規模、換言すれば、エンジンの大きさなどの諸条件によってそれぞれ適切な値が異なるため、それらを考慮して、実験やシミュレーション等に基づいて選定するのが好適である。
【0031】
ステップS104においては、レール圧センサ21により検出されたレール圧が所定圧力P1を超えたか否かが判定され、レール圧が所定圧力P1を超えていると判定された場合(YESの場合)には、次述するステップS106の処理へ進む一方、レール圧が所定圧力P1を超えていないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS106以下の処理へ進むに適した状態ではないとして一連の処理が終了されることとなる。
ここで、レール圧が所定圧P1を超えているか否かを判定するのは、本発明の実施の形態における噴射異常検出処理は、ピエゾインジェクタの構造上、レール圧が所定圧P1を超えた状態にあって初めて正常に機能するものだからである。
【0032】
そして、ステップS104において、レール圧が所定圧P1を超えていないと判定された場合(NOの場合)には、以下の処理を実行するに適した状態ではないとして、一連の処理が終了され、一旦、図示されないメインルーチンへ戻ることとなる。
一方、ステップS104において、レール圧が所定圧P1を超えていると判定された場合(YESの場合)には、以下の処理を実行するに適した状態であるとして、ステップS106の処理へ進むこととなる。
【0033】
ステップS106においては、ピエゾインジェクタを用いた燃料噴射弁13の駆動の開始時点T0からの経過時間が第1の所定時間T1に達したか否かが判定されることとなる。
ここで、燃料噴射弁13の駆動開始時点とは、ピエゾインジェクタを駆動するための駆動電圧の印加が開始された時点であり、先の図8において、時刻T0の時点である。
また、所定時間T1は、先の図8で説明した時刻T1であり、ピエゾインジェクタの端子電圧が第1の基準電圧Vaを超えているか否かを判定できる時点である。
【0034】
そして、ステップS106において、未だ所定時間T1に至っていないと判定された場合(NOの場合)には、以下の処理を実行するに適していないとして一連の処理が終了されることとなる。
一方、ステップS106において、駆動開始時T0からの経過時間が所定時間T1に達したと判定された場合(YESの場合)には、所定時間T1におけるピエゾインジェクタの端子電圧V1が第1の基準電圧Vaを下回っているか否かが判定され(図3のステップS108参照)、ピエゾインジェクタの端子電圧V1が第1の基準電圧Vaを下回っていないと判定された場合(NOの場合)には、噴射動作は正常であるとして一連の処理が終了されることとなる。
なお、所定時間T1におけるピエゾインジェクタの端子電圧V1を読み込んだ後に、必ずしも直ちに第1の基準電圧Vaを下回っているか否かの判定を行う必要は無く、読み込まれた電圧値を、電子制御ユニット40の所定の記憶領域に一時的に記憶し、噴射動作が正常か否かの判断が必要となった際に、その記憶された電圧値を読み出し、第1の基準電圧Vaを下回っているか否かの判定を行うようにしても良いことは勿論である。
【0035】
これに対して、ステップS106において、ピエゾインジェクタの端子電圧V1が第1の基準電圧Vaを下回っていると判定された場合(YESの場合)には、噴射異常である(異常確定)とされて、一連の処理が終了されることとなる(図3のステップS110参照)。なお、異常確定とされた場合には、噴射停止命令の出力を行い燃料噴射弁13を動作停止とする、あるいは警報の発生や異常表示等による噴射異常の報知を適宜行うようにすると好適である。
【0036】
次に、第2の噴射異常検出処理(図2のステップS200参照)の具体的な手順について図4のサブルーチンフローチャートを参照しつつ説明する。
図4において、ステップS202、S204の処理は、図3におけるステップS102、S104の処理とそれぞれ同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
この第2の噴射異常検出処理は、所定時間T1におけるピエゾインジェクタの端子電圧の異常を検出するための別の形態を示すものである。
ステップS206においては、ピエゾインジェクタを用いた燃料噴射弁13の駆動の開始時点T0からの経過時間が第2の所定時間T2に達したか否かが判定されることとなる。なお、燃料噴射弁13の駆動開始時点T0とは、先に図3におけるステップS106の処理説明で述べた通りである。
【0037】
また、所定時間T2は、先の図8で説明した時刻T2であり、ピエゾインジェクタの端子電圧のピーク値となる時刻である。
そして、ステップS206において、未だ所定時間T2に至っていないと判定された場合(NOの場合)には、以下の処理を実行するに適していないとして一連の処理が終了されることとなる。
【0038】
一方、ステップS206において、駆動開始時からの経過時間が所定時間T2に達したと判定された場合(YESの場合)には、所定時間T1におけるピエゾインジェクタの端子電圧V1が、V2−V1>V2−Vaを満たしているか否かが判定されることとなる(図4のステップS208参照)。
ここで、V1は、先に述べたように所定時間T1におけるピエゾインジェクタの端子電圧であり、Vaは、先に述べたように所定時間T1におけるピエゾインジェクタの端子電圧に対する判定基準である。さらに、V2は、所定時間T2におけるピエゾインジェクタの端子電圧である。
また、先の図2におけるステップS108の処理の説明で述べたように、所定時間T2におけるピエゾインジェクタの端子電圧V2を読み込んだ際に、必ずしも直ちにV2−V1>V2−Vaを満たしているか否かの判定を行う必要は無く、読み込まれた電圧値を、電子制御ユニット40の所定の記憶領域に一時的に記憶し、噴射動作が正常か否かの判断が必要となった際に、上述の判定を行うようにしても良いことは勿論である。
【0039】
このステップS208における不等式は、次述する観点に基づくものである。
まず、先の所定時間T1において燃料噴射が正常である場合、その時点の電圧V1は、第1の基準電圧Vaを超える一方、噴射異常である場合には、Vaを下回ることは、先に述べた通りである。
一方、所定時間T2における電圧V2は、先に図8の説明で述べたように駆動期間の間でピークとなるように予め選定された値であり、噴射が正常であれば、V2−V1は、V2−Vaより大となることは無いので、ステップS208は、かかる関係に着目して噴射異常の有無を判定するようにしたものである。
【0040】
したがって、ステップS208において、V2−V1>V2−Vaではないと判定された場合(NOの場合)には、噴射異常ではないとして一連の処理が終了されることとなる一方、V2−V1>V2−Vaであると判定された場合(YESの場合)には、噴射異常である(異常確定)とされて、先のS110で述べたと同様、噴射停止命令の出力等、適宜、必要な処理が実行され、一連の処理が終了されることとなる(図4のステップS210参照)。
このように、異なる時刻におけるピエゾインジェクタの端子電圧(V1、V2)を噴射異常の判定に用いる(図4のステップS208参照)ことにより、ピエゾインジェクタの電気的特性のばらつきにより、噴射異常の判定が誤ってなされる可能性を極力回避することができる。
【0041】
次に、第3の噴射異常検出処理(図2のステップS300参照)の具体的な手順について図5のサブルーチンフローチャートを参照しつつ説明する。
図5において、ステップS302、S304の処理は、図3におけるステップS102、S104の処理とそれぞれ同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
ステップS306においては、ピエゾインジェクタを用いた燃料噴射弁13の駆動の開始時点からの経過時間が第3の所定時間T3に達したか否かが判定されることとなる。なお、燃料噴射弁13の駆動開始時点とは、先に図3におけるステップS106の処理の説明で述べた通りである。
【0042】
また、所定時間T3は、先の図8で説明した時刻T3であり、ピエゾインジェクタの端子電圧の変化の中で先のピーク値の後、放電により零に向かって電圧が降下するタイミングであるT4よりも前で、最も電圧が低下する時点である。
そして、ステップS306において、未だ所定時間T3に至っていないと判定された場合(NOの場合)には、以下の処理を実行するに適していないとして一連の処理が終了されることとなる。
一方、ステップS306において、駆動開始時からの経過時間が所定時間T3に達したと判定された場合(YESの場合)には、所定時間T3におけるピエゾインジェクタの端子電圧V3が、V2−V3<V2−Vbを満たしているか否かが判定されることとなる(図5のステップS308参照)。
【0043】
ここで、Vbは、先に図8を参照しつつ説明した第2の基準電圧である。
この所定時間T3においては、噴射が正常であれば、ピエゾインジェクタの端子電圧は、第2の基準電圧Vbより低いある電圧Vb´となるが、仮に、噴射異常の場合、第2の基準電圧Vbより高い電圧V3となる。したがって、V2−V3と、V2−Vbを比較すると、噴射が正常であれば、V2−V3がV2−Vbを下回ることは無く、ステップS308は、かかる点に着目して、V2−V3<V2−Vbが成立しているか否かによって、噴射異常か否かを判定するようにしたものである。
なお、先の図2におけるステップS108の処理の説明で述べたように、所定時間T3におけるピエゾインジェクタの端子電圧V3を読み込んだ際に、必ずしも直ちにV2−V3<V2−Vbを満たしているか否かの判定を行う必要は無く、読み込まれた電圧値を、電子制御ユニット40の所定の記憶領域に一時的に記憶し、噴射動作が正常か否かの判断が必要となった際に、上述の判定を行うようにしても良いことは勿論である。
【0044】
しかして、ステップS308において、V2−V3<V2−Vbではないと判定された場合(NOの場合)には、噴射異常ではないとして一連の処理が終了されることとなる一方、V2−V3<V2−Vbであると判定された場合(YESの場合)には、噴射異常である(異常確定)とされて、先のS110で述べたと同様、噴射停止命令の出力等、適宜、必要な処理が実行され、一連の処理が終了されることとなる(図5のステップS310参照)。
【0045】
次に、第4の噴射異常検出処理(図2のステップS400参照)の具体的な手順について図6のサブルーチンフローチャートを参照しつつ説明する。
図6において、ステップS402、S404の処理は、図3におけるステップS102、S104の処理とそれぞれ同一であり、また、ステップS406の処理は、図5におけるステップS306の処理と同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
この第4の噴射異常検出処理は、所定時間T3における噴射異常検出を行う点で先に図5で説明した第3の噴射異常検出処理と同様のものであるが、噴射異常の有無を判定する手法が異なるものである。
すなわち、ステップS408においては、所定時間T3におけるピエゾインジェクタの端子電圧V3が、V3>Vbを満たしているか否かが判定されることとなる(図6のステップS408参照)。
【0046】
そして、ステップS408において、V3>Vbではないと判定された場合(NOの場合)には、噴射異常ではないとして一連の処理が終了されることとなる一方、V3>Vbであると判定された場合(YESの場合)には、噴射異常である(異常確定)とされて、先のS110(図3参照)で述べたと同様、噴射停止命令の出力等、適宜、必要な処理が実行され、一連の処理が終了されることとなる(図6のステップS410参照)。
なお、所定時間T3におけるピエゾインジェクタの端子電圧V3を読み込んだ際に、必ずしも直ちにV3>Vbを満たしているか否かの判定を行う必要は無く、読み込まれた電圧値を、電子制御ユニット40の所定の記憶領域に一時的に記憶し、噴射動作が正常か否かの判断が必要となった際に、上述の判定を行うようにしても良いことは勿論である。
【0047】
次に、第5の噴射異常検出処理(図2のステップS500参照)の具体的な手順について図7のサブルーチンフローチャートを参照しつつ説明する。
図7において、ステップS502、S504の処理は、図3におけるステップS102、S104の処理とそれぞれ同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
ステップS506においては、ピエゾインジェクタを用いた燃料噴射弁13の駆動の開始時点からの経過時間が第4の所定時間T4に達したか否かが判定されることとなる。
ここで、所定時間T4は、先の図8で説明した時刻T4であり、ピエゾインジェクタの端子電圧が零へ向かって下降し始める時点である。
【0048】
そして、ステップS506において、未だ所定時間T4に至っていないと判定された場合(NOの場合)には、以下の処理を実行するに適していないとして一連の処理が終了されることとなる。
一方、ステップS506において、駆動開始時からの経過時間が所定時間T4に達したと判定された場合(YESの場合)には、所定時間T4におけるピエゾインジェクタの端子電圧V4が、V4−V3<V4−Vbを満たしているか否かが判定されることとなる(図5のステップS508参照)。
【0049】
かかるステップS508の判定は、先に図8で説明したように、噴射異常が生じている場合、ピエゾインジェクタの端子電圧の振れが収束せず、V4−V3がV4−Vbより小さくなることに着目したものである。
しかして、ステップS508において、V4−V3<V4−Vbではないと判定された場合(NOの場合)には、噴射異常ではないとして一連の処理が終了されることとなる一方、V4−V3<V4−Vbであると判定された場合(YESの場合)には、噴射異常である(異常確定)とされて、先のS110で述べたと同様、噴射停止命令の出力等、適宜、必要な処理が実行され、一連の処理が終了されることとなる(図7のステップS510参照)。
なお、先の図2におけるステップS108の処理の説明で述べたように、所定時間T4におけるピエゾインジェクタの端子電圧V4を読み込んだ際に、必ずしも直ちにV4−V3<V4−Vbを満たしているか否かの判定を行う必要は無く、読み込まれた電圧値を、電子制御ユニット40の所定の記憶領域に一時的に記憶し、噴射動作が正常か否かの判断が必要となった際に、上述の判定を行うようにしても良いことは勿論である。
【0050】
なお、上述した本発明の実施の形態における第1乃至第4の所定時刻T1〜T4や、第1及び第2の基準電圧Va,Vbとして如何なる値を設定するかは、車両の規模、換言すれば、エンジンの大きさなどの諸条件によってそれぞれ適切な値が異なるため、それらを考慮して、実験やシミュレーション等に基づいて選定するのが好適である。
【0051】
また、上述の本発明の実施の形態においては、第1乃至第5の噴射異常検出処理(図2参照)を順に実行する例を示したが、これに限定される必要はなく、いずれか1つの噴射異常検出処理を実行するようにしても良く、また、第1乃至第5の噴射異常検出処理の中から任意の複数の処理を行うようにしても良いものである。
【0052】
また、ピエゾインジェクタに電圧印加開始後、実際に噴射が始まるまでにはタイムラグがあるが、上述した本発明に係る噴射異常検出処理は、噴射開始とは関係なく実行可能なものである。すなわち、噴射異常検出を目的として、ピエゾインジェクタの通電時間を敢えて噴射しない様な短い通電時間とすることも可能である。
さらに、上述の本発明の実施の形態においては、噴射異常検出処理を周期的に実行することとして説明したが、このような実行形態に限定される必要はなく、例えば、アイドリング等の特定の運転モードや、あるいは、オーバーラン時(ある車速からアクセルを離して噴射を零とした時)に噴射しない程度にピエゾインジェクタへの通電を行う等して、噴射異常検出処理を実行するよう、予め処理実行のタイミングを指定しておくようにしても良いものである。
またさらに、無駄な電力消費を回避する観点から、レール圧によってピエゾインジェクタへの印加電圧値を可変としても良く、その際には、図8に示されたマップをレール圧毎に設定し、それを電子制御ユニット40の適宜な記憶領域に記憶しておくことで、そのような通電形態に対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態における噴射異常検出方法が適用されるコモンレール式燃料噴射制御装置の構成例を示す構成図である。
【図2】図1に示されたコモンレール式燃料噴射制御装置において実行される噴射異常検出処理の全体の概略手順を示すサブルーチンフローチャートである。
【図3】図1に示されたコモンレール式燃料噴射制御装置において実行される第1の噴射異常検出処理の具体的な手順を示すサブルーチンフローチャートである。
【図4】図1に示されたコモンレール式燃料噴射制御装置において実行される第2の噴射異常検出処理の具体的な手順を示すサブルーチンフローチャートである。
【図5】図1に示されたコモンレール式燃料噴射制御装置において実行される第3の噴射異常検出処理の具体的な手順を示すサブルーチンフローチャートである。
【図6】図1に示されたコモンレール式燃料噴射制御装置において実行される第4の噴射異常検出処理の具体的な手順を示すサブルーチンフローチャートである。
【図7】図1に示されたコモンレール式燃料噴射制御装置において実行される第5の噴射異常検出処理の具体的な手順を示すサブルーチンフローチャートである。
【図8】燃料噴射の際のピエゾインジェクタの端子電圧の変化例を示す波形図である。
【符号の説明】
【0054】
5…高圧ポンプ
8…流量制御弁
10…コモンレール
12…圧力制御弁
13…燃料噴射弁
15…圧力保持弁
40…電子制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの燃料が高圧ポンプによりコモンレールへ加圧、圧送され、当該コモンレールに接続されたピエゾインジェクタを用いてなる燃料噴射弁を介して内燃機関へ高圧燃料の噴射を可能としてなると共に、前記燃料噴射弁からの戻り燃料通路内に圧力保持弁が設けられてなるコモンレール式燃料噴射制御装置における噴射異常検出方法であって、
前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第1の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧が、第1の基準電圧を下回っている場合に、噴射異常であると判定することを特徴とする噴射異常検出方法。
【請求項2】
第1の所定時間は、ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時と電圧の印加停止時との間に設定されたものであることを特徴とする請求項1記載の噴射異常検出方法。
【請求項3】
燃料タンクの燃料が高圧ポンプによりコモンレールへ加圧、圧送され、当該コモンレールに接続されたピエゾインジェクタを用いてなる燃料噴射弁を介して内燃機関へ高圧燃料の噴射を可能としてなると共に、前記燃料噴射弁からの戻り燃料通路内に圧力保持弁が設けられてなるコモンレール式燃料噴射制御装置における噴射異常検出方法であって、
前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第2の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧と、前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第1の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧との差が、前記第2の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧と、第1の基準電圧との差より大である場合に、噴射異常であると判定することを特徴とする噴射異常検出方法。
【請求項4】
第1の所定時間は、ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時と電圧の印加停止時との間に設定されたものであり、
第2の所定時間は、前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加停止時に対応し、
第1の基準電圧は、前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第1の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧が、噴射異常を生じているか否かを判定するための基準電圧であることを特徴とする請求項3記載の噴射異常検出方法。
【請求項5】
燃料タンクの燃料が高圧ポンプによりコモンレールへ加圧、圧送され、当該コモンレールに接続されたピエゾインジェクタを用いてなる燃料噴射弁を介して内燃機関へ高圧燃料の噴射を可能としてなると共に、前記燃料噴射弁からの戻り燃料通路内に圧力保持弁が設けられてなるコモンレール式燃料噴射制御装置における噴射異常検出方法であって、
前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第2の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧と、前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から前記第2の所定時間より後の第3の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧との差が、前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第2の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧と、第2の基準電圧との差よりも小である場合に、噴射異常であると判定することを特徴とする噴射異常検出方法。
【請求項6】
第2の所定時間は、前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加停止時に対応し、
第3の所定時間は、前記第2の所定時間経過後から前記ピエゾインジェクタの端子電圧が零へ向かって下降を始めるまでの間において、当該ピエゾインジェクタの端子電圧が最も低下した時点であり、
第2の基準電圧は、前記第3の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧が、噴射異常を生じているか否かを判定するための基準電圧であることを特徴とする請求項5記載の噴射異常検出方法。
【請求項7】
燃料タンクの燃料が高圧ポンプによりコモンレールへ加圧、圧送され、当該コモンレールに接続されたピエゾインジェクタを用いてなる燃料噴射弁を介して内燃機関へ高圧燃料の噴射を可能としてなると共に、前記燃料噴射弁からの戻り燃料通路内に圧力保持弁が設けられてなるコモンレール式燃料噴射制御装置における噴射異常検出方法であって、
前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第3の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧が、所定電圧を上回っている場合に、噴射異常であると判定することを特徴とする噴射異常検出方法。
【請求項8】
第3の所定時間は、ピエゾインジェクタへの電圧の印加停止時後から前記ピエゾインジェクタの端子電圧が零へ向かって下降を始めるまでの間において、当該ピエゾインジェクタの端子電圧が最も低下した時点であることを特徴とする請求項7記載の噴射異常検出方法。
【請求項9】
燃料タンクの燃料が高圧ポンプによりコモンレールへ加圧、圧送され、当該コモンレールに接続されたピエゾインジェクタを用いてなる燃料噴射弁を介して内燃機関へ高圧燃料の噴射を可能としてなると共に、前記燃料噴射弁からの戻り燃料通路内に圧力保持弁が設けられてなるコモンレール式燃料噴射制御装置における噴射異常検出方法であって、
前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第4の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧と、前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第3の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧との差が、前記第4の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧と、第2の基準電圧との差より小である場合に、噴射異常であると判定することを特徴とする噴射異常検出方法。
【請求項10】
第3の所定時間は、ピエゾインジェクタへの電圧の印加停止時後から前記ピエゾインジェクタの端子電圧が零へ向かって下降を始めるまでの間において、当該ピエゾインジェクタの端子電圧が最も低下した時点であり、
第4の所定時間は、前記ピエゾインジェクタの端子電圧が零へ向かって下降を始める時点であり、
第2の基準電圧は、前記第3の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧が、噴射異常を生じているか否かを判定するための基準電圧であることを特徴とする請求項9記載の噴射異常検出方法。
【請求項11】
燃料タンクの燃料が高圧ポンプによりコモンレールへ加圧、圧送され、当該コモンレールに接続されたピエゾインジェクタを用いてなる燃料噴射弁を介して内燃機関へ高圧燃料の噴射を可能としてなると共に、前記燃料噴射弁からの戻り燃料通路内に圧力保持弁が設けられ、電子制御ユニットにより前記ピエゾインジェクタが駆動制御されるよう構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第1の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧が、第1の基準電圧を下回っているか否かを判定し、前記第1の所定時間経過時における前記ピエゾインジェクタの端子電圧が、前記第1の基準電圧を下回っていると判定された場合に、噴射異常であると判定するよう構成されてなることを特徴とするコモンレール式燃料噴射制御装置。
【請求項12】
第1の所定時間は、ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時と電圧の印加停止時との間に設定されたものであることを特徴とする請求項11記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
【請求項13】
燃料タンクの燃料が高圧ポンプによりコモンレールへ加圧、圧送され、当該コモンレールに接続されたピエゾインジェクタを用いてなる燃料噴射弁を介して内燃機関へ高圧燃料の噴射を可能としてなると共に、前記燃料噴射弁からの戻り燃料通路内に圧力保持弁が設けられ、電子制御ユニットにより前記ピエゾインジェクタが駆動制御されるよう構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第2の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧と、前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第1の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧との差を算出し、第1の演結果とする一方、
前記第2の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧と、第1の基準電圧との差を算出し、第2の演算結果とし、前記第1の演算結果が前記第2の演算結果よりより大であるか否かを判定し、大であると判定された場合に、噴射異常であると判定するよう構成されてなることを特徴とするコモンレール式燃料噴射制御装置。
【請求項14】
第1の所定時間は、ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時と電圧の印加停止時との間に設定されたものであり、
第2の所定時間は、前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加停止時に対応し、
第1の基準電圧は、前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第1の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧が、噴射異常を生じているか否かを判定するための基準電圧であることを特徴とする請求項13記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
【請求項15】
燃料タンクの燃料が高圧ポンプによりコモンレールへ加圧、圧送され、当該コモンレールに接続されたピエゾインジェクタを用いてなる燃料噴射弁を介して内燃機関へ高圧燃料の噴射を可能としてなると共に、前記燃料噴射弁からの戻り燃料通路内に圧力保持弁が設けられ、電子制御ユニットにより前記ピエゾインジェクタが駆動制御されるよう構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第2の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧と、前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から前記第2の所定時間より後の第3の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧との差を算出し、第1の演算結果とする一方、
前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第2の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧と、第2の基準電圧との差を算出し、第2の演算結果とし、前記第1の演算結果が前記第2の演算結果より小であるか否かを判定し、小であると判定された場合に、噴射異常であると判定するよう構成されてなることを特徴とするコモンレール式燃料噴射制御装置。
【請求項16】
第2の所定時間は、前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加停止時に対応し、
第3の所定時間は、前記第2の所定時間経過後から前記ピエゾインジェクタの端子電圧が零へ向かって下降を始めるまでの間において、当該ピエゾインジェクタの端子電圧が最も低下した時点であり、
第2の基準電圧は、前記第3の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧が、噴射異常を生じているか否かを判定するための基準電圧であることを特徴とする請求項15記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
【請求項17】
燃料タンクの燃料が高圧ポンプによりコモンレールへ加圧、圧送され、当該コモンレールに接続されたピエゾインジェクタを用いてなる燃料噴射弁を介して内燃機関へ高圧燃料の噴射を可能としてなると共に、前記燃料噴射弁からの戻り燃料通路内に圧力保持弁が設けられ、電子制御ユニットにより前記ピエゾインジェクタが駆動制御されるよう構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第3の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧が、所定電圧を上回っているか否かを判定し、上回っていると判定された場合に、噴射異常であると判定するよう構成されてなることを特徴とするコモンレール式燃料噴射制御装置。
【請求項18】
第3の所定時間は、ピエゾインジェクタへの電圧の印加停止時後から前記ピエゾインジェクタの端子電圧が零へ向かって下降を始めるまでの間において、当該ピエゾインジェクタの端子電圧が最も低下した時点であることを特徴とする請求項17記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
【請求項19】
燃料タンクの燃料が高圧ポンプによりコモンレールへ加圧、圧送され、当該コモンレールに接続されたピエゾインジェクタを用いてなる燃料噴射弁を介して内燃機関へ高圧燃料の噴射を可能としてなると共に、前記燃料噴射弁からの戻り燃料通路内に圧力保持弁が設けられ、電子制御ユニットにより前記ピエゾインジェクタが駆動制御されるよう構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第4の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧と、前記ピエゾインジェクタへの電圧の印加開始時から第3の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧との差を算出し、第1の演算結果とする一方、
前記第4の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧と、第2の基準電圧との差を算出し、第2の演算結果とし、前記第1の演算結果が前記第2の演算結果より小であるか否かを判定し、小であると判定された場合に、噴射異常であると判定するよう構成されてなることを特徴とするコモンレール式燃料噴射制御装置。
【請求項20】
第3の所定時間は、ピエゾインジェクタへの電圧の印加停止時後から前記ピエゾインジェクタの端子電圧が零へ向かって下降を始めるまでの間において、当該ピエゾインジェクタの端子電圧が最も低下した時点であり、
第4の所定時間は、前記ピエゾインジェクタの端子電圧が零へ向かって下降を始める時点であり、
第2の基準電圧は、前記第3の所定時間経過した時点における前記ピエゾインジェクタの端子電圧が、噴射異常を生じているか否かを判定するための基準電圧であることを特徴とする請求項19記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−24875(P2010−24875A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184665(P2008−184665)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】