説明

噴流可動ノズル

【課題】 同時に二方向に噴出することができる噴流可動ノズルを提供する。
【解決手段】 前方が開口して噴出口20となる合流室2と、この合流室2の後部の二箇所にそれぞれ連通接続される二つの流路3(3a、3b)とを備え、流量比を可変とした前記二つの流路3a、3bからの各噴流を合流室2にて合流させて該合流した噴流の噴出口20からの噴出方向を前記流量比を変化させることでスイングさせる噴流可動ノズル1において、前記噴出口20から噴出される噴流をスイング方向と略直交する方向に分岐して二つの噴流とするための分岐仕切り4を噴出口20に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水流の噴出方向を変化させる噴流可動ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴槽に水流(浴水又は気泡入り浴水)を噴出して浴槽に入浴している人に衝突させてマッサージすることが行われている。このような従来例として例えば特許文献1が知られている。
【0003】
この特許文献1に示された従来例にあっては、浴槽の複数箇所に浴槽に入浴する入浴者に向けて水流を噴出するための複数の噴出口を設け、例えば腰から背中にかけての部位に噴出口から水流を噴出する場合、腰から背中にかけての部位に存在する複数箇所のツボに同時に水流が当たるように腰から背中にかけての広い部位に水流が当たるように噴出させている。ところが、異なる位置にある複数のツボに水流が同時に当たるので、身体の特定の一部の部位(例えばツボのある部位)を局部的に集中して効果的なマッサージができないことになり、マッサージ効果が弱いという問題がある。
【0004】
そこで、本発明者らは、本発明に至る過程で、ポンプと噴出口との循環流路の途中に切替弁を設置して、ポンプからの水を切替弁を介して複数の噴出口に分配し且つ、切替弁によって各噴出口から噴出する水流を変化させることで、異なる部位に順番に集中的に水流を当てて押し擦すようにして異なる部位をそれぞれ順番に効果的にマッサージできるようにする水流噴出装置を開発し、この時、噴出口から噴出する水流の噴出方向を変化させるための噴流可動ノズルを開発しており、これについて説明する。
【0005】
噴流可動ノズルは、図8に示すようにノズル体10に断面略V字状をし且つノズル体10の前面部に開口したV字状溝25を形成することで前面部の開口を噴出口20としてあり、V字状溝25よりなる噴出口20の底部の一方の片側半部の傾斜底面26a及び他方の片側半部の傾斜底面26bにそれぞれ二つの開口27a、27bが設けてある。また、ノズル体10の両側面部の後端部に二つの入口28a、28bを設け、一方の入口28aと噴出口20の底部の一方の開口27aとを二つの流路3のうちの一方の流路3aで連通させると共に他方の入口28bと噴出口20の底部の他方の開口27bとを他方の流路3bで連通させてある。ここで、一方の流路3aと他方の流路3bとは流路3の延長線がV字状溝25内で互いに交差するように逆方向に傾斜した関係となっている。
【0006】
また、前記一方の流路3aと他方の流路3bとに流量比を変えながら供給するための切替弁及びポンプが上流側に設けてある。
【0007】
このように、ポンプを運転して切替弁を介して水を噴出口20に供給するのであるが、一方の流路3aと他方の流路3bへの水の流れる流量比が変化しながら一方の開口27a、他方の開口27bから噴出口20内に供給されて噴出口20内で合流し、合流した水流が噴出口20から外部に噴出されることになる。この場合、噴出口20で合流した水は一方の流路3aの先端の一方の開口27aと他方の流路3bの先端の他方の開口27bから噴出口20内に供給される流量比が変化することでその噴出口20からの噴出する水量の噴出方向を略扇状の角度の範囲内で連続してスイングすることになる。
【0008】
ところでこの噴流可動ノズルは、浴槽の入浴者の例えば足裏に向けて足裏の上下方向にスイングさせたりするのであるが、この従来の噴流可動ノズルでは同時に噴出するのは一方向のみであり、左右両足の足裏に噴流を当てるには二つの噴流可動ノズルが必要であり、コストアップや取り付けスペースを広く要するといった問題があるものであった。
【特許文献1】特開2003−250854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、同時に二方向に噴出することができる噴流可動ノズルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明にあっては、前方が開口して噴出口20となる合流室2と、この合流室2の後部の二箇所にそれぞれ連通接続される二つの流路3(3a、3b)とを備え、流量比を可変とした前記二つの流路3a、3bからの各噴流を合流室2にて合流させて該合流した噴流の噴出口20からの噴出方向を前記流量比を変化させることでスイングさせる噴流可動ノズル1において、前記噴出口20から噴出される噴流をスイング方向と略直交する方向に分岐して二つの噴流とするための分岐仕切り4を噴出口20に設けて成ることを特徴とするものである。
【0011】
このような構成とすることで、一つの噴流可動ノズル1で同時に二方向に噴出することが可能となって、広い取り付けスペースを要しないものである。
【0012】
また請求項2に係る発明にあっては、請求項1に係る発明において、分岐仕切り4の上流側の面を上流側へ行く程近づく二つの傾斜面41で形成して成ることを特徴とするものである。
【0013】
このような構成とすることで、傾斜面41のなす角によって二つの噴出方向の角度を容易に調整できる。
【0014】
また請求項3に係る発明にあっては、請求項1又は2に係る発明において、噴出口20の縁にコアンダ効果により噴流が付着するのを防止する邪魔板9を設けて成ることを特徴とするものである。
【0015】
このような構成とすることで、噴流が付着しようとするのを防止して噴出方向が片寄るのを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にあっては、広い取り付けスペースを要することなく一つの噴流可動ノズルで同時に二方向に水流を噴出させることができて、部品点数を削減してコストダウンすると共に、取り付けスペースの省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態では浴槽に水流を噴出して浴槽に入浴している人に衝突させてマッサージするための噴流可動ノズルとして説明するが、用途については特に限定されないものであり、また噴流は水流に限定されず液体の流れであればよい。
【0018】
この噴流可動ノズルは、浴槽の底面部や側壁部に取り付けられると共に、この噴流可動ノズルに二つの水流を供給するための切替弁を上流側に配設するもので、切替弁と噴流可動ノズルとを配管を介して接続してもよいが、噴流可動ノズルを切替弁に直接接続してもよい。以下、噴流可動ノズルと切替弁について説明する。
【0019】
噴流可動ノズル1は、図1に示すようにノズル体10に前面が開口して噴出口20となる合流室2と、前記合流室2に連通接続される二つの流路3とで主体が構成される。二つの流路3は一方の流路3aと他方の流路3bとからなり、この一方の流路3aと他方の流路3bは、前端部(下流側の端部)がそれぞれ合流室2の後部に連通接続されるものである。本実施形態ではノズル体10は前半体10aと後半体10bとで構成される。前半体10aには、上記合流室2及び噴出口20と、合流室2の後方に開口する後開口(特に図示せず)が形成してある。後半体10bは、内部がそれぞれ一方の流路3aと他方の流路3bとなる二つの筒部11(11a、11b)を略平行となるように並設して、この両筒部11の前端部と略中央部とを連結部12にて連結して略平行な状態を保持している。この後半部の前端部を前半部の後開口13に嵌入固定してノズル体10が形成される。
【0020】
上記のようにノズル体10の後半体10bの二つの筒部11は略平行となっていて一方の流路3aと他方の流路3bの流れ方向は略平行となるが、両筒部11の前端(下流端)近傍を前方へ行く程互いに近づくように傾斜させており、これによって二つの筒部11内の流路3を流れる水流の流れ方向が互いに前方へ行く程近づくように傾斜する。また、噴出口20には分岐仕切り4を設けるが、これについては後述する。
【0021】
次に、上記噴流可動ノズル1に水を供給する切替弁5について説明する。
【0022】
切替弁5は図6に示すように弁本体50と、弁本体50の孔52に回動自在に嵌め込まれた回動弁体51と、回動弁体51を回動するためのモータ6とより構成してある。
【0023】
回動弁体51には一端が軸方向の端部に開口した通水孔55が設けてあり、通水孔55の他端は回動弁体51の側面部に設けた弁口56に連通している。弁本体50の孔52の壁面における弁口56の回動軌跡上の複数箇所にそれぞれ対応する位置に複数の流出口53を設けてある。図6に示す実施形態には二つの流出口53a、53bを隔設して設けた例が示してある。
【0024】
弁本体50には、図6に示すように、回動弁体51の通水孔55の軸方向の一端の開口に常時連通する流入孔54が設けてあり、この流入孔54は図7に示すように循環用水路8の一部を構成する配管8aによりポンプ7と連通接続してある。また、循環用水路8の弁本体50とノズル体10との間の部分は複数の分岐配管8b、8cにより構成してあり、実施形態では一方の流出口53aとノズル体10の一方の流路3aとが分岐配管8bにより連通接続してあり、他方の流出口53bとノズル体10の他方の流路3bとが分岐配管8cにより連通接続してある。ここで、ポンプをオンにした状態で回動弁体51をモータ6で回動することで図6(b)のように一方の流出口53aにのみ水が流れる状態から、一方の流出口53aと他方の流出口53bの両方に流量比を変えながら流れる状態(図6(c)には流量比が等しい段階を示す)を経て、図6(d)のように他方の流出口53bのみに水が流れる状態というように、一方の流出口53aと他方の流出口53bへの水の流れる流量比を変化させながら噴出口20に水を供給することができるようになっている。
【0025】
図7には噴流可動ノズル1と切替弁5とが離れて配置されて長い分岐配管8b、8cによって接続されている例を示してあるが、図3に示すように切替弁5の外殻ケーシング5aに噴流可動ノズル1を直接連結して分岐配管8b、8cを短い連結管としてもよい。
【0026】
このように、ポンプを運転して切替弁5を介して水を噴出口20に供給するのであるが、モータ6を駆動して回動弁体51を回転することで、一方の流出口53aと他方の流出口53bへの水の流れる流量比が変化しながら一方の流路3a、他方の流路3bから噴出口20内に供給されて噴出口20内で合流し、合流した水流が噴出口20から外部に噴出されることになる。この場合、噴出口20で合流した水は一方の流路3aの先端と他方の流路3bの先端から噴出口20内に供給される流量比が変化することでその噴出口20からの噴出する水量の噴出方向を略扇状の角度の範囲内で連続して変化させることになる。つまり、図6(b)のように一方の流出口53aにのみ水が流れる時は噴出口20からの水流の噴出方向は図1(a)の矢印ハ方向となり、回動弁体51が回転していって図6(c)のように一方の流出口53a、他方の流出口53bとの流量比が同じになると図1(a)の矢印ロ方向となり、更に、回動弁体51が回転していって図6(d)のように他方の流出口53bのみに水が流れる時は噴出口20からの水流の噴出方向は図1(a)の矢印イ方向となる。更に回動弁体51が回動すると矢印イ方向から矢印ロ方向を経て再び矢印ハ方向となる。このように噴出口20から矢印イ方向から矢印ハ方向の範囲内で水流の噴出方向を変えながら噴出するようになっており、本実施形態では一方の流路3aと他方の流路3bから供給される水流の流量比を変化させるための前述の切替弁5により噴出口20から浴水又は気泡入り浴水を噴出する際、水流の噴出方向を変化させながら噴出させるための噴出方向可変手段を構成している。
【0027】
この時、噴流可動ノズル1から噴出される水流は、切替弁5より供給されてそれぞれ一方の流路3a、他方の流路3bに流入した水は傾斜面4によってその流れ方向が外方(すなわち互いに離れる方向)に傾斜し、その後その下流側の二つの流路3が互いに近づくように傾斜した部分にて水流の流れ方向が内方(すなわち互いに近づく方向)に傾斜するが、流路3a、3bを略平行に配置したことで、図8に示す従来の噴流可動ノズルのように広い取り付けスペースを要することがないものである。
【0028】
また、前半体10aと後半体10bとの間に合流室2と流路3に連通する空気流入隙間Sが形成してあり、流路3、合流室2を流れる水流に空気を混入させることができる。図3に示すように、切替弁5の外殻ケーシング5aに空気取り入れ口57を形成してあり、外殻ケーシング5a内に収容される合流室2及び流路3の流れのエジェクター効果によって外殻ケーシング5a外の空気が空気取り入れ口57、外殻ケーシング5a内で且つ合流室2及び流路3外の空間58を介して流れに取り込まれるものである。これにより、流れを白濁させて視覚効果が得られると共に空気が混入された水流によってマッサージ効果が高まるものである。
【0029】
次に、分岐仕切り4について説明する。分岐仕切り4は、図1、図2に示すように、噴出口20の中央部にスイング方向に架設する棒状部材で、これによって合流室2で合流して噴出口20から噴出される噴流が分岐仕切り4によってスイング方向と直交する方向の二つの方向に分岐されて二つの噴流となる。本実施形態では、分岐仕切り4の上流側の面(すなわち合流室側の面)を上流側へ行く程近づく二つの傾斜面41で形成してあり、この傾斜面41によって噴流を二つの方向に分岐させて二つの噴流とするものである。二つの傾斜面41のなす角を90°とすれば、噴流を左右に45°傾いた状態とすることができるものであり、傾斜面41のなす角によって二つの噴出方向の角度を容易に調整できる。
【0030】
この噴流可動ノズル1をスイング方向を上下方向とすると共に分岐方向が左右方向となるように浴槽壁に取り付けることによって、左右両方の足裏に向けて同時に噴流を当てた状態で上下方向にスイングさせて例えば土踏まず〜くるぶしの下までの上下50mmに噴流が当たるようにマッサージを行うことができる。
【0031】
これによって、一つの噴流可動ノズル1で同時に二方向に噴出することができることにより部品点数を削減してコストダウンすると共に、取り付けスペースの省スペース化を図ることができる。
【0032】
次に、他の実施形態について図4、図5に基づいて説明する。ただし、上実施形態と大部分において同じであるため同じ部分については同符号を付して説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0033】
本実施形態においては、上実施形態に加えて、噴出口20の縁にコアンダ効果により噴流が付着するのを防止する邪魔板9を設けたものである。邪魔板9を設けていない上実施形態においては、噴出口20から噴出される噴流はコアンダ効果によって壁面に付着しようとし、噴出したい方向から壁面の方へ片寄った方向となる惧れがあるが(図5(a)参照)、邪魔板9を設けることで噴流が付着しようとするのを防止することができて(図5(b)参照)、噴出方向が片寄るのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態を示し、(a)は分岐仕切りに沿って切断した断面図であり、(b)は(a)の切断方向と直交する方向に切断した断面図である。
【図2】同上の斜視図である。
【図3】同上の噴流可動ノズルを切替弁に取り付けた状態の断面図である。
【図4】他の実施形態の斜視図である。
【図5】噴流可動ノズルを切替弁に取り付けた状態を示し、(a)(b)は各実施形態での噴流を説明する断面図である。
【図6】切替弁を示し、(a)は正面図であり、(b)(c)(d)は回動弁体の回動角による連通状態を説明する説明図である。
【図7】全体概略構成図である。
【図8】従来の噴流可動ノズルの断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 噴流可動ノズル
2 合流室
20 噴出口
3 流路
3a 一方の流路
3b 他方の流路
4 分岐仕切り
5 切替弁
6 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方が開口して噴出口となる合流室と、この合流室の後部の二箇所にそれぞれ連通接続される二つの流路とを備え、流量比を可変とした前記二つの流路からの各噴流を合流室にて合流させて該合流した噴流の噴出口からの噴出方向を前記流量比を変化させることでスイングさせる噴流可動ノズルにおいて、前記噴出口から噴出される噴流をスイング方向と略直交する方向に分岐して二つの噴流とするための分岐仕切りを噴出口に設けて成ることを特徴とする噴流可動ノズル。
【請求項2】
分岐仕切りの上流側の面を上流側へ行く程近づく二つの傾斜面で形成して成ることを特徴とする請求項1記載の噴流可動ノズル。
【請求項3】
噴出口の縁にコアンダ効果により噴流が付着するのを防止する邪魔板を設けて成ることを特徴とする請求項1又は2記載の噴流可動ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−160155(P2007−160155A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357000(P2005−357000)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】