説明

噴霧ノズル及び噴霧ノズルを有する燃焼装置

【課題】液体燃料を噴霧させて燃焼させる燃焼装置において、噴霧粒子径を小さくするとともに運動量を低下させることで燃焼反応を促進させ、燃焼効率を向上させるとともに、煤塵や一酸化炭素、窒素酸化物の排出を抑制する。
【解決手段】噴霧ノズルは上下に溝28、29が各々の表面から設けられており、2つの溝は十字状であり、交差部30が連通することで燃料噴出孔となる。案内部材23を上流側の溝28に接し、噴霧ノズルの噴出方向に対し、交差部(燃料噴出孔)30と重なる位置に設ける。噴霧流体(液体燃料)は、噴霧ノズルに接続する燃料流路21から前記案内部材23により分岐し上流側の溝28を通り、交差部30へと流れて噴出する。噴霧流体は上流側の溝28において交差部30に向かう対向する流れを形成し90°以上の鈍角をなして衝突し、交差部30より噴出して薄い扇状の液膜31を形成する。液膜は周囲の気体とのせん断力により分裂し、微細化して噴霧粒子32となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料を微粒化させる噴霧ノズルと、噴霧ノズルを備えた燃焼装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
発電用のボイラのように高出力、高負荷の燃焼装置では、燃料を水平燃焼させる浮遊燃焼方式が多く採用される。燃料として燃料油のように液体燃料を用いる場合には、燃料を噴霧ノズルで微粒化して燃焼装置の火炉内に浮遊させ燃焼させる。また、燃料として石炭に代表される固体燃料を使用する場合には、固体燃料(石炭)を粒子径で平均0.1mm以下に粉砕して微粉炭とし、この微粉炭を空気等の搬送気体で搬送して火炉内で燃焼させる。微粉炭を燃焼させる燃焼装置においても起動や火炎安定化のために液体燃料を使用する燃焼装置が付随することが多い。
【0003】
液体燃料の燃焼では、噴霧粒子径が大きいと燃焼反応が遅れ、燃焼効率の低下をもたらし、煤塵、一酸化炭素が発生することがある。このため、液体燃焼させる場合には燃料(噴霧流体)を通常0.5〜5MPaに加圧し噴霧ノズルから噴霧し、粒子径を300μm以下に微粒化する方法(圧力噴霧方式)や、微粒化用の噴霧媒体として空気や蒸気を供給して微粒化する方法(2流体噴霧方式)が用いられる。圧力噴霧方式は噴霧媒体が不要であり装置を小型化できるため、上記起動用の燃焼装置等の小容量の燃焼装置に使用されることが多い。
【0004】
圧力噴霧方式の噴霧ノズルには、燃料に渦状の旋回流を与えて、噴出孔から遠心力により薄い液膜を形成する方法(旋回式噴霧ノズル)がある。液膜は周囲の気体とのせん断力により分裂して微粒化する。この方法は液滴の運動量が大きく貫通力の大きい噴霧となる。
【0005】
上記の方法に対し、ノズル本体にスリット状の孔を両面から十字に交差させて設け、上十字状の溝からなる流路を形成し、交差部を燃料噴出孔とするクロススリット式噴霧ノズルがある。それを特許文献1から特許文献3に記す。この方式は上流側の溝にて中心の交差部に向かう二つの流れを形成し、対向する流れを衝突させて交差部(噴出孔)から薄い扇状の液膜を形成させる。液膜は周囲の気体とのせん断力により分裂して微粒化する。この方法は前述の旋回式噴霧ノズルに比べて液滴の運動量が小さく、微粒子を噴霧ノズルの近傍に維持し易い。なお、扇状の噴霧形状から本方式のノズルはファンスプレー式噴霧ノズルとも記される。また、特許文献4には同じく噴霧ノズル構造を示すが、流れ板からオリフィスに向かう流体の流れは両者の隙間から噴出するものであり、特に衝突経路は持たない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−303172号公報
【特許文献2】特開平6−299932号公報
【特許文献3】特開2000−345944号公報
【特許文献4】特許2657101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した、クロススリット式噴霧ノズルに関する特許文献は、いずれも主に内燃機関の燃料噴射装置への適用を目的とし、噴霧ノズル本体の上流側に間欠噴霧用の弁を設け、その下流側に空間(流路拡大部)を設けて、さらにその下流に十字状の溝(噴霧ノズル本体)を配置している。
【0008】
噴霧ノズル本体の上流に流路拡大部を設けることで、弁から流入する噴霧流体の流速が低減し、燃料が上側の溝に分布して流れる。上側の溝を流れる噴霧流体は、十字状の溝の交差部に向かい対向する流れとなり、衝突することで薄い扇状の液膜を形成する。この際、微粒化には対向する流れがより鈍角をなして衝突することが望ましい。
【0009】
しかし、上記特許文献では、噴霧流体の一部は弁から流路拡大部を通り直線的に交差部に向かう流れが生じ、この流れは衝突への寄与が小さい。このため、液膜の厚さが増して微粒化し難くなる。また、噴出する液滴の軸方向の運動量は大きくなる。特許文献3では流路拡大部と交差部の形状を工夫することにより運動量を低減する方法が示されるが、この場合も流路拡大部から交差部に直線的に流れる。このため、液膜の厚さが増して微粒化し難くなる。また、噴出する液滴の軸方向の運動量は大きい。
【0010】
本発明の第1の目的は、十字状の溝のうち、上側の溝を分岐し対向して流れる流体を鈍角をなして衝突させ、微粒化を促進することである。さらに、噴出する液滴の軸方向の運動量を低下させる噴霧ノズルを提案することである。
【0011】
また、特許文献1から3には十字状の溝を複数形成し、交差部の数を増やす方法が示されている。狭い断面積を有する噴出孔の数を増やすことで、噴霧粒子の粒径を小さくしたまま噴霧量を増加させることが可能であるが、何れも十字状溝を複数個同一平面に形成するため、各々の噴出孔から形成される噴霧が互いに衝突し易くなり結合して粒子径が大きくなる。本発明の第2の目的は、各々の噴出孔から形成される噴霧が互いに干渉し難い噴霧ノズルを提案することである。
【0012】
また、内燃機関の燃料噴射装置では、噴出量が比較的小さく噴出圧力が5〜12MPaと比較的高い。かつ間欠噴霧のため流路内を流れる流体に乱れが生じ、流路内に固形物が堆積し難くなる。しかし、ボイラ等の燃焼装置では噴出量が多く、エネルギ消費量の低減の観点から噴出圧力の低減が求められる。この場合には、流路内に固形物が堆積すると閉塞や微粒化の悪化の可能性がある。さらに、一定流量を流すことが多いので流れに乱れが生じ難く、流路内の流速や乱れが少ない部分に固形物が堆積し易くなる。この固形物が化学反応等で成長することで流路の閉塞が生じ、噴霧ノズルの微粒化性能が悪化し、大粒子が生じる可能性がある。本発明の第3の目的は、一定流量を流すことが多いボイラ等の燃焼装置を対象に、流路内に固形物が堆積し難い噴霧ノズルを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、液体燃料を噴霧流体として圧力を加え流路の上流から下流へ供給し、先端から噴霧させる噴霧ノズルであって、噴霧ノズルの先端に設けたノズルプレートの両面に各々少なくとも一つの溝を形成し、2つの溝の交差部分を燃料噴出孔とした噴霧ノズルにおいて、ノズルプレートの両面に設けた溝のうち、上流側の溝に接して前記交差部分の上流側の流路を流れる噴霧流体の案内部材を設け、燃料噴出孔に向かって前記流体を反対方向から案内して衝突させることを特徴とする。
【0014】
また、噴霧ノズルにおいて、案内部材によって燃料噴出孔に向かって反対方向から案内され衝突させる流体の流れ方向の角度を鈍角としたことをことを特徴とする。
【0015】
また、噴霧ノズルにおいて、ノズルプレートは噴霧ノズルの軸方向に対し各々異なった傾きを持つ平面を有し、ノズルプレートの両面に形成した溝の少なくとも一方を複数個設け、溝を組み合わせて燃料噴出孔を複数個形成したことを特徴とする。
【0016】
また、噴霧ノズルにおいて、複数個の燃料噴出孔の軸方向は、先端に噴霧ノズルを設置する流路を流れる噴霧流体の流れ方向に対し対称となる方向に傾けて噴出することを特徴とする。
【0017】
また、噴霧ノズルにおいて、溝のうち上流側の溝の流路断面積を、上流側の溝を流れる噴霧流体の流れ方向に変化させて形成したことを特徴とする。
【0018】
また、噴霧ノズルにおいて、上流側の溝の流路断面積を燃料噴出孔に向かって減少させたことを特徴とする。
【0019】
また、噴霧ノズルにおいて、上流側の溝が互いに接続されていることを特徴とする。
【0020】
さらに、化石燃料を燃焼させる燃焼炉と、燃焼炉に燃料と燃料を搬送する搬送気体を供給する燃料供給系統と、燃焼炉に燃焼用気体を供給する燃焼用気体供給系統と、燃焼炉の炉壁に設けられるとともに燃料供給系統と燃焼用気体供給系統が接続され化石燃料を燃焼させるバーナと、燃焼炉で発生した燃焼排ガスから外部に熱交換させる熱交換器とを有し、燃料の少なくとも一部に液体燃料を使用し液体燃料を圧力を加え噴霧させる噴霧ノズルを有する燃焼装置において、噴霧ノズルとして上記した噴霧ノズルを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、液体燃料を噴霧流体として圧力を加え流路の上流から下流へ供給し、先端から噴霧させる噴霧ノズルであって、噴霧ノズルの先端に設けたノズルプレートの両面に各々少なくとも一つの溝を形成し、2つの溝の交差部分を燃料噴出孔とした噴霧ノズルにおいて、ノズルプレートの両面に設けた溝のうち、上流側の溝に接して前記交差部分の上流側の流路を流れる噴霧流体の案内部材を設け、燃料噴出孔に向かって前記流体を反対方向から案内して衝突させることにより、噴霧粒子径を微粒化することができる。従って燃焼反応が早まり燃焼効率が向上し、煤塵や一酸化炭素が発生し難くなる。さらに、噴霧粒子の流速が小さく噴霧ノズル近傍に噴霧粒子が滞留し易いため、着火が早まり火炎の安定性が向上するという実用上優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の燃焼装置の第1の構成例を示した模式図。
【図2A】本発明の実施例1に係る噴霧ノズルを示す断面図。
【図2B】図2AのAA断面図。
【図3A】本発明の実施例1に係る噴霧ノズルの応用例を示す断面図。
【図3B】図3AのBB断面図。
【図4】本発明の燃焼装置の第2の構成例を示した模式図。
【図5A】本発明の実施例2に係る噴霧ノズルを示す断面図。
【図5B】図5AのCC断面図。
【図6】本発明の燃焼装置の第3の構成例を示した模式図。
【図7A】本発明の実施例3に係る噴霧ノズルを示す断面図。
【図7B】図7AのDD断面図。
【図8A】本発明の実施例4に係る噴霧ノズルを示す断面図。
【図8B】図8AのEE断面図。
【図9A】本発明の実施例4に係る噴霧ノズルの応用例を示す断面図。
【図9B】図9AのFF断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を各実施例について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は本発明の燃焼装置の第1の構成例を示す。図1において、ボイラを構成する火炉1の壁面に、燃料と燃焼用空気とを供給する複数個のバーナ2を設置する。バーナ2には燃焼用空気供給系統3と燃料供給系統4が接続する。実施例1では燃焼用空気供給系統はバーナに接続する配管5とその下流側の空気供給口7に接続する配管6に分岐する。各々の配管には流量調節弁(図示せず)が接続する。また、燃料供給系統4は燃料として液体燃料を用いる場合であり、液体燃料の供給系統(図示せず)が接続し、下流端に噴霧ノズル8が設置される。
【0025】
実施例1では燃焼用空気は配管5と6に分岐され、それぞれバーナ2と空気供給口7から火炉1内に噴出する。バーナ2からは燃料を完全燃焼させるために必要な理論空気量よりも少ない空気を供給することで、火炉1内のバーナ近傍には空気不足で燃焼する還元域が形成され、燃焼ガス9がこの還元域を上向きに流れる。この還元域において、燃料中に含まれる窒素分の一部が還元剤として生成し、バーナによる燃焼で発生するNOxを窒素に還元する反応が生じる。このため、火炉1出口でのNOx濃度はバーナ2から全ての燃焼用空気を供給する場合に比べて低減する。なお、空気供給口7から残りの燃焼用空気を供給し、燃料を完全燃焼させることで未燃焼分を低減する。空気供給口7からの燃焼用空気と混合した燃焼ガス10は、火炉1の上部の熱交換器11を介して、煙道12を通り、煙突13から大気に放出される。
【0026】
図2A、2Bに示す実施例1の噴霧ノズルは、上流側が液体燃料の供給系統(図示せず)に接続し、内部に噴霧流体20が流れる燃料流路21の下流端に接続する。噴霧ノズルはノズルプレート22と案内部材23、案内部材の保持部材24、及びノズルプレートを保持するキャップ25で構成される。保持部材24と燃料流路21の隔壁26は固定され、キャップ25はネジ部27にて燃料流路21の隔壁26に固定される。ノズルプレート22と案内部材23は隔壁26及び保持部材24とキャップ25により挟み込まれて固定される。実施例1の場合には、キャップ25のネジ部27を緩めることで、ノズルプレート22と案内部材23を取り外して点検することが可能となる。実施例1では分解を考慮した構成であるが、ノズルプレートと案内部材を直接燃料流路21の隔壁26に溶接等の方法により固定することも可能である。この場合には、噴霧性能には影響しないが、取り外しや点検は実施し難い。
【0027】
ノズルプレート22は上下に矩形状の溝28、29が両面から設けられており、2つの溝は十字状に交差し、交差部が連通して燃料噴出孔30を形成する。実施例1では案内部材23を有し、これをノズルプレート22の上流側の溝28に接し、噴霧ノズルの噴出方向に対し、燃料噴出孔30と重なる位置に設ける。
【0028】
案内部材23を設置することで、噴霧流体(液体燃料)は、噴霧ノズルに接続する燃料流路21から前記案内部材23により分岐され前記上流側の溝28を通り、燃料噴出口30へと流れて噴出する。このとき、燃料流路21から直線的に燃料噴出口30へ向かう流れが案内部材23により妨げられる。このため、噴霧流体は上流側の溝28において燃料噴出口30に向かう対向する二つの流れを形成し、流れの方向がほぼ90°以上の鈍角をなして衝突し燃料噴出口30より噴出する。二つの流れが衝突することで薄い扇状の液膜31を形成し、液膜は周囲の気体とのせん断力により分裂し、微細化して噴霧粒子32となる。また、噴霧流体が鈍角をなして衝突するので、液膜31や噴霧粒子32の軸方向の運動量が低下し、噴霧粒子32の流速は小さくなる。
【0029】
本発明の実施例1の噴霧ノズルを用いた燃焼装置では、噴霧粒子径が小さいので燃焼反応が早まり、燃焼効率が向上し、煤塵や一酸化炭素が発生し難くなる。さらに、噴霧粒子の流速が小さく、噴霧ノズル8近傍に噴霧粒子が滞留し易いため、着火が早まり火炎の安定性が向上する。このため、図1に示す燃焼装置のように燃焼用空気を分岐し、バーナ2と空気供給口7から火炉1内に噴出する場合には、火炉1内のバーナ近傍に空気不足で燃焼する還元域が速やかに形成されて火炉1内に拡大する。還元域が拡大することで、燃焼ガス9が還元域に留まる滞留時間が増える。このため、燃焼で発生するNOxを窒素に還元する反応が促進され、火炉1出口から排出されるNOx量が低減される。
【0030】
また、図3A、3Bに示す応用例のように、ノズルプレート122に複数の溝129を形成し、溝128との燃料噴出孔130を複数形成することも可能である。案内部材123の中央部には流体流入用の孔Pが設けられている。この場合は、単一の交差部を用いる場合に比べて複数の交差部とすることで、同じ断面積でも交差部の外縁長さが長く、交差部から噴出する液膜と周囲の気体との接触面積が増え、せん断力により分裂し易くなる。このため、単一の交差部を用いる場合に比べて、同じ噴霧流体量にて微粒化性能が高くなる。
【0031】
なお、図1に示す燃焼装置では、燃焼用空気を分岐しバーナ2と空気供給口7から火炉1内に噴出する場合を示したが、燃焼用空気をバーナ2から全量投入する場合も、本発明の実施例1の噴霧ノズルを用いることで燃焼反応が早まり燃焼効率が向上し、煤塵、一酸化炭素が発生し難くなる。さらに、噴霧粒子の流速が小さく、噴霧ノズル8近傍に噴霧粒子が滞留し易いため、着火が早まり、火炎の安定性が向上する。火炎安定性が向上することで、火炎内で発生するNOxは窒素に還元する反応が促進され、火炉1出口から排出されるNOx量が低減される。
【0032】
また、実施例1では、燃焼装置として液体燃料を使用する場合を示したが、主燃料として微粉炭等の固体燃料を使用し、補助燃料として液体燃料を使用する場合にも適用可能である。この場合には、噴霧ノズル8から液体燃料を火炉1内に噴霧する場合に上記の効果が得られる。
【実施例2】
【0033】
図4は本発明の燃焼装置の第2の構成例を示す。図4に示す燃焼装置では主燃料として微粉炭やバイオマス等の固体燃料を使用し、起動時や低負荷時に補助燃料として液体燃料を使用する。
【0034】
このため、バーナ2は固体燃料の供給系統(図示せず)と接続する燃料配管41と、液体燃料の供給系統(図示せず)と接続する燃料配管42が接続する。バーナ2は中心に燃料ノズル43を有し、その外周に燃焼用空気供給系統3と接続し、燃焼用空気を火炉内に供給する空気ノズル44を有する。なお、図4に示す実施形態では固体燃料や液体燃料の酸化剤として空気を例に示すが、酸素等の酸化剤を用いることも可能である。
【0035】
液体燃料用の噴霧ノズルはバーナ2に内包される。図4に示す燃焼装置では空気ノズル44の出口近傍に噴霧ノズル8を有し、燃料配管42が接続する。その他は図1に示す燃焼装置と同じである。
【0036】
図5A、5Bに示す実施例2の噴霧ノズルは、基本的に実施例1の噴霧ノズルとほぼ同一の構成である。ノズルプレート222は2つの平面から構成された凸状をなし、これに案内部材が対応する形状で密着している。ノズルプレート222の下流側表面には複数の溝229が設けられており、上流側表面にはこれと直交する溝228が設けられ、燃料噴出孔230が複数設けられる。実施例1との違いは、溝228、229の組みが、燃料配管42を流れる噴霧流体の流れ方向に対し対称となる方向に傾きをもった平面に形成されることを特徴とする。このため、燃料噴出口230から噴出する噴霧流体(液体燃料)は互いに反対方向の角度で噴出し、噴霧粒子が広い範囲(角度)に拡がる。このため、噴霧粒子が互いに衝突し難く大粒子の生成を抑制できる。
【0037】
実施例2の噴霧ノズルの応用例として、ノズルプレートの下流側表面が噴霧ノズルの軸方向に対し反対方向に角度を有する平面で形成される場合の他、ノズルプレートの下流側表面を円錐状とし、その表面に複数の溝を設けることも可能である。
【実施例3】
【0038】
図6は本発明の燃焼装置の第3の構成例を示す。図6に示す燃焼装置では主燃料として微粉炭やバイオマス等の固体燃料を使用し、特に、液体燃料として起動用に使用する系統と低負荷時に使用する系統の2系統を有する場合を示す。このため、バーナ2は固体燃料の供給系統(図示せず)と接続する燃料配管41と、液体燃料の供給系統(図示せず)と接続する燃料配管42、51が接続する。バーナ2は中心に燃料ノズル43を有し、その外周に燃焼用空気供給系統3と接続し、燃焼用空気を火炉内に供給する空気ノズル44を有する。
【0039】
液体燃料用の噴霧ノズルはバーナ2に内包される。図6では空気ノズル44の出口近傍に起動用の噴霧ノズル8を有し、燃料配管42が接続する。また、燃料ノズル43の出口近傍に助燃用の噴霧ノズル52を有する。バーナ2の起動時は噴霧ノズル8から液体燃料を噴霧し、点火させる。その後、助燃用の噴霧ノズル52から液体燃料を噴霧し、低い負荷範囲で運用する。充分に火炉内の温度が上昇したところで固体燃料の供給系統を起動し、固体燃料の燃焼に切り替え、液体燃料を停止させる。このように運転条件により使用する燃料を切り替えることで、広い負荷範囲で安定した燃焼を維持することができる。その他は図4に示す燃焼装置と同じである。
【0040】
図7A、7Bに示す本発明の実施例3の噴霧ノズルは、基本的に本発明の実施例1の噴霧ノズルとほぼ同一の構成である。ノズルプレート322の上下面には溝328、329が設けられており、燃料噴出口330が連通することで燃料噴出孔となる。実施例3では案内部材323を有し、これをノズルプレート322の上流側の溝328に接し、噴霧ノズルの噴出方向に対し、燃料噴出孔330と重なる位置に設けることを特徴とする。実施例1との違いは溝328、329のうち上流側の溝328の流路断面積が流れ方向に変化することを特徴とする。図7Bにおいて、溝328に流入した流体の流路断面積は徐々に減少するように構成される。
【0041】
このため、上流側を流れる噴霧流体が燃料噴出口に向かうに従い、流速が増大する。この際、流速の変化により流路内に乱れが生じ、流路内に固形物が堆積し難くなる。
【0042】
流路内に固形物が堆積すると、これが化学反応等で成長することで流路の閉塞の可能性が出てくる。流路の一部が閉塞することで、噴霧ノズルの微粒化性能が悪化し、大粒子が生じることとなる。大粒子となると、燃焼反応が遅れる。このため噴霧ノズルを用いた燃焼装置では、燃焼効率の低下や煤塵、一酸化炭素が発生する可能性がある。本実施形態のように流路内に固形物が堆積し難くなる構造とすることで燃焼装置を長期間安定に運用することが可能となる。
【実施例4】
【0043】
図8A、8Bに示す噴霧ノズルのように燃料噴出口430を複数設けた場合でも上記の効果が得られる。実施例4では、図8Aに示すように、流れの方向に平行な断面において流路面積が変化するように、案内部材423の形状を変化させている。特に、図8A、8Bのように、ノズルプレート422に設けた溝428と429を交差させて複数の燃料噴出口430を設ける場合には、上流側の溝428を各々結合し、中央部の流体流入用の孔Pから流れる噴霧流体が、複数の燃料噴出口30のいずれからも流れるようにすることが望ましい。このとき、固形物が流れるなどにより流路内に微小な圧力変化が生じた場合には、溝428が直結していることでその内部を流れる噴霧流体の流量配分が変わる。このため、流れに乱れが生じ、固形物の堆積を抑制する効果がある。
【0044】
図9A、9Bは、図8A、8Bの燃料噴出口を3つとした場合を示す応用例をしめす。ノズルプレート522の下流側には3つの溝529が形成され、これに直交するY字形の溝528が上流側に形成され、3つの燃料噴出口530を形成する。
【符号の説明】
【0045】
1:火炉
2:バーナ
3:燃焼用空気供給系統
4:燃料供給系統
8、52:噴霧ノズル
11:熱交換器
20:噴霧流体
21:燃料流路
22、122、222、322、422、522:ノズルプレート
23、123、223、323、423、523:案内部材
28、128、228、328、428、528:溝(上流側)
29、129、229、329、429、529:溝(下流側)
30、130、230、330、430、530:燃料噴出孔
31:液膜
32:噴霧粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を噴霧流体として圧力を加え流路の上流から下流へ供給し、先端から噴霧させる噴霧ノズルであって、該噴霧ノズルの先端に設けたノズルプレートの両面に各々少なくとも一つの溝を形成し、前記2つの溝の交差部分を燃料噴出孔とした噴霧ノズルにおいて、
前記ノズルプレートの両面に設けた前記溝のうち、上流側の溝に接して前記交差部分の上流側の流路を流れる噴霧流体の案内部材を設け、前記燃料噴出孔に向かって前記流体を反対方向から案内して衝突させることを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載された噴霧ノズルにおいて、前記案内部材によって前記燃料噴出孔に向かって反対方向から案内され衝突させる前記流体の流れ方向の角度を鈍角としたことをことを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項3】
請求項1または2に記載された噴霧ノズルにおいて、前記ノズルプレートは噴霧ノズルの軸方向に対し各々異なった傾きを持つ平面を有し、ノズルプレートの両面に形成した溝の少なくとも一方を複数個設け、前記溝を組み合わせて前記燃料噴出孔を複数個形成したことを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項4】
請求項3に記載された噴霧ノズルにおいて、前記複数個の燃料噴出孔の軸方向は、先端に噴霧ノズルを設置する流路を流れる噴霧流体の流れ方向に対し対称となる方向に傾けて噴出することを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された噴霧ノズルにおいて、前記溝のうち上流側の溝の流路断面積を、該上流側の溝を流れる噴霧流体の流れ方向に変化させて形成したことを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項6】
請求項5に記載された噴霧ノズルにおいて、前記上流側の溝の流路断面積を前記燃料噴出孔に向かって減少させたことを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項7】
請求項5または6に記載された噴霧ノズルにおいて、前記上流側の溝が互いに接続されていることを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項8】
化石燃料を燃焼させる燃焼炉と、該燃焼炉に燃料と燃料を搬送する搬送気体を供給する燃料供給系統と、前記燃焼炉に燃焼用気体を供給する燃焼用気体供給系統と、前記燃焼炉の炉壁に設けられるとともに前記燃料供給系統と燃焼用気体供給系統が接続され化石燃料を燃焼させるバーナと、前記燃焼炉で発生した燃焼排ガスから外部に熱交換させる熱交換器とを有し、燃料の少なくとも一部に液体燃料を使用し液体燃料を圧力を加え噴霧させる噴霧ノズルを有する燃焼装置において、
前記噴霧ノズルとして、請求項1乃至7のいずれかに記載された噴霧ノズルを用いたことを特徴とする噴霧ノズルを有する燃焼装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2012−145026(P2012−145026A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3614(P2011−3614)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】