説明

噴霧ノズル及び農薬散布機

【課題】ドリフト低減と良好な液滴付着性を得ることができる適当な範囲の液滴粒子径での噴霧が可能な噴霧ノズルを提供できる。
【解決手段】噴霧ノズル1は、加圧液体が流入する単一のオリフィス孔20を有するオリフィス部2と、オリフィス孔20から噴出した液体を噴霧する単一の噴孔30を有する噴孔部3を有し、オリフィス孔20の入口20Aが形成されたオリフィス部2の端面2Aには、オリフィス孔20へ加圧液体を流入させる案内面21が形成され、案内面21は、オリフィス孔20の軸に沿った異なる断面上で軸に対して異なる角度の傾斜を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧ノズル及び噴霧ノズルを備えた農薬散布機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、オリフィス孔を有するオリフィス板と、噴孔を有しオリフィス板の前面側に所定の間隙を介して対向配置された噴板とを備え、オリフィス板の背面側に供給された加圧液体を、オリフィス孔及び噴孔を順次通過させて噴板の前方に噴霧する噴霧ノズルであって、噴孔の有効開口面積がオリフィス孔の有効開口面積以上に設定されるとともに、オリフィス孔が、オリフィス板の背面側に供給された加圧液体を、噴板背面側から噴孔及び噴孔周縁部に吹きつける直線状の液体流として噴出するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−275941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
噴霧ノズルに要求される性能としては、ドリフト(飛散)の低減、液滴付着性、均一噴霧などを挙げることができる。この中で、ドリフトの低減化には噴霧粒子の肥大化が有効であるが、噴霧粒子が肥大化しすぎると液滴付着性が劣る問題がある。特に、農薬散布機においては、農薬のドリフトは周辺環境への影響を考慮して極力低減すべきであるが、噴霧粒子の粒子径を大きくし過ぎて噴霧粒子の農作物への付着性が低下すると所望の薬効を得ることができなくなり、農薬散布による病害虫駆除効果を十分に得ることができない問題が生じる。
【0005】
従来の農薬散布機におけるドリフト低減型散布ノズルは、ノズル内部で噴霧液体を整流化させ、さらに空気混入によって噴霧粒子の肥大化を図っており、一般的な噴霧ノズルの粒子径50〜100μmと比較して大きい200〜400μmの範囲の粒子径になっている。このような大きな粒子径の液滴で噴霧を行うと、前述したようにドリフト低減効果は得られるものの作物への液滴付着性が劣ることになる。適度のドリフト低減効果が得られ、しかも作物等への液滴付着性を得るためには、液滴粒子径を100〜200μm程度の範囲にすることが求められる。
【0006】
前述した特許文献1記載の従来技術は、ドリフト低減を目的として、噴板とオリフィス板の2段階構造を採用している。そして、この従来技術は、オリフィス孔がオリフィス板の背面側に供給された加圧液体を噴板背面側から噴孔及び噴孔周縁部に吹きつける直線状の液体流として噴出するものであることから、噴霧流の勢いを良くすることはできるが、液滴の粒子径は100〜140μmの範囲であって、ドリフト低減と良好な液滴付着性を得ることができる適当な範囲まで粒子径を大きくすることができない問題がある。また、この特許文献1に記載のものは、オリフィス板上流側の構造が複雑であり、構成部品が多くなり、組み立てが煩雑になってコスト高になる問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、ドリフト低減と良好な液滴付着性を得ることができる適当な範囲の液滴粒子径で噴霧が可能な噴霧ノズルを提供できること、簡単な構造で組み立てが簡易であり、コスト低減が可能な噴霧ノズルを得ることができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明による噴霧ノズルは以下の各独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
【0009】
加圧液体を設定された範囲の液滴粒子径で噴霧する噴霧ノズルであって、加圧液体が流入する単一のオリフィス孔を有するオリフィス部と、該オリフィス孔から噴出した液体を噴霧する単一の噴孔を有する噴孔部を有し、前記オリフィス孔の入口が形成された前記オリフィス部の端面には、前記オリフィス孔へ加圧液体を流入させる案内面が形成され、該案内面は、前記オリフィス孔の軸に沿った異なる断面上で前記オリフィス孔の軸に対して異なる角度の傾斜を有することを特徴とする噴霧ノズル。
【0010】
加圧液体を設定された範囲の液滴粒子径で噴霧する噴霧ノズルであって、加圧液体が流入する単一のオリフィス孔を有するオリフィス部と、該オリフィス孔から噴出した液体を噴霧する単一の噴孔を有する噴孔部を有し、前記オリフィス部は流入する加圧液体を乱流状態で噴出する乱流形成手段を有することを特徴とする噴霧ノズル。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を備えた本発明の噴霧ノズルは、ドリフト低減と良好な液滴付着性を得ることができる適当な範囲の液滴粒子径での噴霧が可能になる。また、特殊な部品を組み込むことを必要としないので、簡単な構造で組み立てが簡易であり、コスト低減が可能な噴霧ノズルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る噴霧ノズルの構成を示した説明図(A−A断面図)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る噴霧ノズルの構成を示した説明図(同図(a)は加圧液体の流入側からみた平面図、同図(b)は噴霧側からみた平面図)である。
【図3】本発明の実施形態における案内面の具体的な形態を示した説明図(同図(a)はA−A断面図、同図(b)はA1−A1断面図、同図(c)はA2−A2断面図)である。
【図4】本発明の実施形態におけるオリフィス孔と噴孔との関係を示した説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る噴霧ノズルを備えた農薬散布機(乗用型ブームスプレーヤ)を示した説明図(同図(a)が全体斜視図、同図(b)が噴霧ノズルの装着状態を示した説明図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1及び図2は本発明の一実施形態に係る噴霧ノズルの構成を示した説明図であり、図1は図2におけるA−A断面図、図2(a)は加圧液体の流入側からみた平面図、図2(b)は噴霧側からみた平面図である。
【0014】
本発明の実施形態に係る噴霧ノズル1は、加圧液体を設定された範囲の液滴粒子径で噴霧するための特徴的な構成を備えており、各種の用途に適用可能なものであるが、特には、農薬散布に適用するに際して、ドリフト低減効果高い所定の大きさの液滴粒子径の噴霧が可能であり、しかも、作物への液滴付着性が悪化することがない程度の液滴粒子径を得ることができるものである。
【0015】
このような噴霧ノズル1は、オリフィス部2と噴孔部3を有している。オリフィス部2は加圧液体が流入する単一のオリフィス孔20を有する部位又は部品であり、噴孔部3はオリフィス孔20から一旦噴出した液体を噴霧する単一の噴孔30を有する部位又は部品である。オリフィス部2と噴孔部3は噴霧ノズル1の筐体部4に対して組み込まれる別部品であってもよいし、筐体部4の一部として形成される部位であってもよい。図示の例では、筐体部4は、第1の筐体部品4Aと第2の筐体部品4Bの組み合わせで形成されており、第1の筐体部品4Aが第2の筐体部品4Bの嵌合口4B1に嵌合して一体になっている。図示の例に限らず、筐体部4はオリフィス部2と噴孔部3を含む一体の成形体であっても良い。
【0016】
そして、噴霧ノズル1は、オリフィス孔20の入口20Aが形成されたオリフィス部2の端面2Aにオリフィス孔20へ加圧液体を流入させる案内面21が形成されている。この案内面21は、図示の例では、端面2Aに線状に形成された断面V字状の溝22によって形成されているが、これに限らず、端面2Aに線状に形成された断面U字状などの溝によって形成されていてもよい。また、このような線状の溝22に限らず、その他の形態で案内面21が形成されるものであってもよい。
【0017】
図示の例では、噴霧ノズル1は、噴孔部3の噴出口30Aが形成された端面3Aに線状に形成された断面V字状の溝31が形成されており、この溝31の方向性によって噴霧の形態(噴霧パターン)が溝の方向に沿って拡がる形状(扇形状)になる。本発明の実施形態では噴孔部3の形態は図示の例に限定されるものではない。
【0018】
図3は、本発明の実施形態における案内面の具体的な形態を示した説明図である。同図(a)はオリフィス孔20の軸20Sに沿った図2におけるA−A断面図である。同図(b)はオリフィス孔20の軸20Sに沿った図2におけるA1−A1断面図である。同図(c)はオリフィス孔20の軸20Sに沿った図2におけるA2−A2断面図である。前述したように案内面21は、オリフィス部2の端面2Aに形成され、オリフィス孔20の入口20Aへ加圧流体を流入させるための平面又は曲面である。
【0019】
ここで、案内面21は、オリフィス孔20の軸20Sに沿った異なる断面上でオリフィス孔20の軸20Sに対して異なる角度の傾斜を有している。すなわち、一つの断面である図2(a)におけるA−A断面(図3(a)参照)では、案内面21の軸20Sに対する傾斜角度はθ1であるが、それとは異なる断面である図2(a)におけるA1−A1断面(図3(b)参照)では、案内面21の軸20Sに対する傾斜角度はθ2(θ1≠θ2)になる。更に異なる断面である図2(a)におけるA2−A2断面(図3(c)参照)では、案内面21の軸20Sに対する傾斜角度はθ3(θ1≠θ2≠θ3)になる。ここで、異なる断面とは、オリフィス2の端面2Aの形態が軸対称である場合は軸対称の関係にある別の断面は同じ断面と見なし、軸対称の関係にない別の断面を一つの断面に対しての異なる断面としている。
【0020】
図2(a)に示したオリフィス部2の端面2Aにおいては、線状に形成された断面V字状の溝22によって案内面21が形成されており、溝22の長手方向に直交して軸20Sに沿ったA−A断面では、案内面21の傾斜角度θ1はV字状の溝22のテーパ角度に沿った最も傾いた角度になる。溝22の長手方向で軸20Sに沿ったA2−A2断面では、案内面21の傾斜角度θ3はV字状の溝22の底に沿った角度(略90°)になる。A−A断面とA2−A2断面の中間位置にあるA1−A1断面では、案内面21の傾斜角度θ2は傾斜角度θ1と傾斜角度θ3の中間の大きさの角度になる。このように、この例では、案内面21は、端面2Aの平面図(図2(a))において軸対称の関係にある断面以外の異なる断面では、いずれも異なる角度の傾斜を有している。
【0021】
このような噴霧ノズル1では、加圧液体が案内面21に沿ってオリフィス孔20の入口20Aに流れ込む際に、様々な異なる角度で加圧液体が流れ込むことになるので、それぞれの角度の流れが互いに影響し合ってオリフィス孔20を通過する液流を乱流状態にする。そして、オリフィス部2はオリフィス孔20に流入する加圧液体を乱流状態で噴出する。このようにオリフィス部2は乱流形成手段を有している。前述した案内面21、或いは、端面2Aに線状に形成された断面V字状又はU字状の溝22が乱流形成手段として機能している。ここでいう乱流或いは乱流状態とは、オリフィス孔20を通過する液体の流れが一様(直線的)でなく、様々な方向に乱れている状態をいう。
【0022】
このような噴霧ノズル1によると、加圧液体がオリフィス孔20を通過する際に乱流が形成されることになり、その乱流状態でオリフィス孔20から噴出した加圧液体が噴孔部3で霧化されるので、噴霧される液滴粒子の径を所定の範囲に設定することが可能になる。所望の乱流状態を得るためには案内面21の角度を適宜に設定するか、或いは、オリフィス孔の流路長を調整して必要な状態の乱流が形成されるように設定する。本発明の実施形態に係る噴霧ノズル1は、噴霧される液滴の粒子径を100〜200μm(より好ましくは120〜200μm)の範囲に設定することにより、ドリフト低減を可能にすると共に、良好な液滴付着性能を得ることができる。
【0023】
オリフィス孔20を通過する加圧液体を効果的に乱流状態にするには、端面2Aに案内面21を形成するように、オリフィス孔20の入口20A近傍の形態が重要な要素となる。前述した実施形態では端面2Aに形成されるV字状又はU字状の溝22によって案内面21を形成しているが、このような形態に限らず、オリフィス孔20自体又はオリフィス孔20の入口20A近傍の他の形態によってオリフィス孔20を通過する液流を乱流にすることも可能である。
【0024】
一方、オリフィス孔20の入口20Aの形状も前述した乱流形成に寄与する要素になる。図2(a)及び図3に示した例では、オリフィス孔20の内部形態は、上流側の内面形状がドーム状の先端内面部20nを有している。このようなオリフィス孔20の先端内面部20nに対して図3(a)に示すような溝22を形成してオリフィス孔20の入口20Aを開口すると、入口20Aは平面視で直交する長径と短径を有する平面視形状(楕円又は長円形状)になる。そして、図3(a)に示した断面に沿った入口20Aの径が短径dSになり、同図(c)に示した断面に沿った入口20Aの径が長径dLになる。
【0025】
また、オリフィス孔20を通過する加圧液体を効果的に乱流状態にして所望の液滴粒子径を得るためには、オリフィス部2と噴孔部3との間にオリフィス孔20及び噴孔30より大きい口径の空間部5を形成することが有効である。オリフィス孔20から噴出した加圧液体は空間部5内で壁面や端面に衝突して様々な方向の流れになる。これによって、噴孔30を通過する前に適当な乱流状態が得られることになる。
【0026】
次に、オリフィス孔20の入口20Aの径と噴孔30の噴出口30Aの径の関係について説明する。図4は、オリフィス孔20と噴孔30との関係を示した説明図である。図示の例では、オリフィス孔20と噴孔30とは同軸上に形成されており、オリフィス孔20の径D20と噴孔30の径D30はD20<D30の関係になっている。また、オリフィス孔20の入口20Aと噴孔30の噴出口30Aは共に同軸上に形成されて平面視楕円になっており、入口20Aと噴出口30Aは、楕円の長径方向(X軸方向:溝22の形成方向)が一致していると共に、楕円の短軸方向(Y軸方向)が一致している。そして、入口20Aの短径d20Sと噴出口30Aの短径d30Sとの関係は、d20S<d30Sの関係になっており、入口20Aの長径d20Lと噴出口30Aの長径d30Lとの関係はd20L<d30Lになっている。
【0027】
このようなオリフィス孔20の入口20Aの径と噴孔30の噴出口30Aの径の関係の中で、特に、入口20Aの短径d20S<噴出口30Aの短径d30Sの関係にすることで、詰まりの少ない噴霧を得ることができる。特に農薬散布に適用する場合には、塵などが混ざった溶媒を用いることもあるので噴出口30Aの詰まりを解消することが必要になる。d20S<d30Sに設定することで、詰まりのない農薬噴霧が可能になる。また、入口20Aと噴出口30Aの長径と短径をそれぞれ一致させることも、詰まりのない噴霧を行う上で効果的な構造になる。
【0028】
このような噴霧ノズル1によると、オリフィス孔20を通過する液流を乱流にするための構成として、特別な部品を追加することが無く、オリフィス部2の端面2Aの形態を特定するだけでよい。したがって、部品点数が増えることが無く、また複雑な部品の組み立ても不要になる。
【0029】
[実施例]
前述した本発明の実施形態に噴霧ノズル1において、各寸法諸元をオリフィス孔20の径D20=0.9〜1.2mm、噴孔30の径D30=1.4〜1.7mm、オリフィス孔20の入口20Aの短径d20S=0.55〜0.65mm、噴孔30の噴出口30Aの短径d30S=0.65〜0.80mm、オリフィス孔20の入口20Aの長径d20L=0.8〜1.0mm、噴孔30の噴出口30Aの長径d30L=1.4〜1.7mmとし、圧力0.5〜1.5MPa、目標吐出量0.6〜2.0L/minの条件で噴霧したところ、噴霧角度100°で平均粒子径120〜200μmの液滴粒子径を得た。
【0030】
[適用例]
図5は、前述した噴霧ノズルを備えた農薬散布機(乗用型ブームスプレーヤ)を示した説明図であり、同図(a)が全体斜視図、同図(b)が噴霧ノズルの装着状態を示した説明図である。
【0031】
本発明の実施形態に係る噴霧ノズル1を装備した農薬散布機(乗用型ブームスプレーヤ)100は、圃場内などを走行する車輪110を備えた自走可能な車体111と、噴霧ノズル1によって農薬等の液体を噴霧するための噴霧装置112と、車体111に搭載された液体タンク113と、液体タンク113の中の液体を噴霧装置112に送出する送液ポンプ114と、噴霧装置112に対して着脱自在で送液ポンプ114を噴霧装置112に接続するためのポンプ配管などを備えている。車体111には、操縦席116が設けられ、車輪110が前後左右に四輪取付けられている。車輪110は、車体111に搭載されたエンジン駆動システム115によって駆動される。
【0032】
噴霧装置112は、左右の車輪110,110間の畝の上を左右に横切るように、車体111に固定されたセンターブーム117と、センターブーム117を左右方向へ延長するように、その両側に配置された折畳み式の延長ブーム118,118を有し、センターブーム117及び延長ブーム118,118の下面には、多数の噴霧ノズル(農薬散布ノズル)1,1,1,…が所定の間隔をおいて取付けられている。
【0033】
折畳み式の延長ブーム118は、使用しないときに車体111の左右両側に沿って折り畳まれる折り畳み位置118aと、使用するときにセンターブーム117を左右に延長する位置に展開された展開位置118bとの間を、油圧駆動装置等によって移動可能であり、展開位置118bにあるとき、車体111の左右両側の畝の上を横切って延びるように構成されている。延長ブーム118は、その全体長さが変えられるように伸縮機能を有していてもよいし、センターブーム117に対して延長される箇所を中心に水平方向に対する傾斜角度が変えられるように構成されていてもよい。
【0034】
ポンプ配管は、送液ポンプ114から延びる配管と、この配管から三つに分岐して、それぞれセンターブーム117及び二本の延長ブーム118,118に設けられた継手に脱着可能に接続される配管を有し、センターブーム117と延長ブーム118,118に設けられた継手は、それぞれのブーム117,118,118の各噴霧ノズル1,1,1,…に連通している。噴霧ノズル1は、噴霧を行ったり停止させたりするための開閉コック(図示せず)有していることが好ましい。噴霧ノズル1は、液状の薬剤を高圧で噴霧して霧状にするもので、吐出量0.5〜2リットル/min程度のものが用いられる。
【0035】
車体111は、車輪110,110間の畝を横切るように、車体111に対して左右方向に延びる取付けフレーム119を有しており、センターブーム117は、取付けフレーム119の下面に固定されている。取付けフレーム119の断面は、上下方向が長い矩形であることが好ましい。また、取付けフレーム119は、センターブーム117の地上からの高さが変えられるように、平行四辺リンケージ等を介して、車体111に対して上下方向に移動可能に構成されていることが好ましい。
【0036】
各ブーム117,118には、同図(b)に示すように、噴霧ノズル1が取り付けられている。各ブーム117,118内の配管に連通するように各ブーム117,118には導出管120が接続されており、この導出管120の先端にノズル切替部130が装備されている。ノズル切替部130は、複数のノズル装着部130A,130B,130Cを備えており、ノズル装着部130A,130B,130Cのそれぞれに各種の噴霧ノズル1を装着できるようになっている。そして、ノズル切替部130を回動操作することで、導出管120内の配管と連通する一つの噴霧ノズル1が選択できるようになっている。
【0037】
このような噴霧ノズル1を備えた農薬散布機100によると、薬液を液滴の平均粒子径が100〜200μmの範囲になるように噴霧することができる。これによると、薬液噴霧粒子の平均粒子径が100μm以上になってドリフトの抑止が可能になり、しかも、薬液噴霧粒子の平均粒子径を200μmより小さくすることで液滴付着性が悪化するのを抑止することができる。このような噴霧ノズル1を備えた農薬散布機100を用いることで、周辺環境への影響が少なく、少量で所望の薬効を得ることができる農薬散布を実現することができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。上述の各図で示した実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
1:噴霧ノズル,2:オリフィス部,3:噴孔部,2A,3A:端面,
20:オリフィス孔,20A:入口,20S:軸,21:案内面,
30:噴孔,30A:噴出口,22,31:溝,
4:筐体部,4A:第1の筐体部品,4B:第2の筐体部品,
5:空間部
100:農薬散布機(乗用型ブームスプレーヤ),
110:車輪,111:車体,112:噴霧装置,
113:液体タンク,114:送液ポンプ,115:エンジン駆動システム,
116:操縦席,
117:センターブーム,118:延長ブーム,
118a:折り畳み位置,118b:展開位置,
119:取付けフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧液体を設定された範囲の液滴粒子径で噴霧する噴霧ノズル(1)であって、
加圧液体が流入する単一のオリフィス孔(20)を有するオリフィス部(2)と、該オリフィス孔(20)から噴出した液体を噴霧する単一の噴孔(30)を有する噴孔部(3)を有し、
前記オリフィス孔(20)の入口(20A)が形成された前記オリフィス部(2)の端面(2A)には、前記オリフィス孔(20)へ加圧液体を流入させる案内面(21)が形成され、該案内面(21)は、前記オリフィス孔(20)の軸(20S)に沿った異なる断面上で前記オリフィス孔(20)の軸(20S)に対して異なる角度の傾斜を有することを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項2】
前記案内面(21)は、前記端面(2A)に線状に形成された断面V字状の溝(22)によって形成されることを特徴とする請求項1記載の噴霧ノズル。
【請求項3】
前記案内面(21)は、前記端面(2A)に線状に形成された断面U字状の溝(22)によって形成されることを特徴とする請求項1記載の噴霧ノズル。
【請求項4】
前記オリフィス孔(20)の入口(20A)は平面視で直交する長径(d20L)と短径(d20S)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された噴霧ノズル。
【請求項5】
前記噴孔(30)の径を前記オリフィス孔(20)の径より大きくしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された噴霧ノズル。
【請求項6】
前記噴孔(30)の噴出口(30A)は平面視で直交する長径(d30L)と短径(d30S)を有し、前記オリフィス孔(20)の入口(20A)における長径の方向と前記噴孔(30)の噴出口(30A)における長径の方向が一致しており、前記オリフィス孔(20)の入口(20A)の短径より前記噴孔(30)の噴出口(30A)の短径が大きいことを特徴とする請求項4記載の噴霧ノズル。
【請求項7】
前記オリフィス部(2)と前記噴孔部(3)との間に前記オリフィス孔(20)及び前記噴孔(30)より大きい口径の空間部(5)を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載された噴霧ノズル。
【請求項8】
前記噴孔(30)から噴出される液滴の平均粒子径が100〜200μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載された噴霧ノズル。
【請求項9】
加圧液体を設定された範囲の液滴粒子径で噴霧する噴霧ノズル(1)であって、
加圧液体が流入する単一のオリフィス孔(20)を有するオリフィス部(2)と、該オリフィス孔(20)から噴出した液体を噴霧する単一の噴孔(30)を有する噴孔部(3)を有し、
前記オリフィス部(2)は流入する加圧液体を乱流状態で噴出する乱流形成手段(21,22)を有することを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項10】
前記乱流形成手段は、前記オリフィス孔(20)の入口(20A)が形成された前記オリフィス部(2)の端面(2A)に線状に形成された断面V字状又はU字状の溝(22)によって形成されることを特徴とする請求項9に記載の噴霧ノズル。
【請求項11】
前記オリフィス孔(20)は乱流形成に必要な流路長を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の噴霧ノズル。
【請求項12】
前記噴孔(30)から噴出される液滴の平均粒子径が100〜200μmの範囲であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載された噴霧ノズル。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載された噴霧ノズル(1)を備えた農薬散布機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−177670(P2011−177670A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45728(P2010−45728)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(509264132)株式会社やまびこ (65)
【出願人】(390002118)株式会社いけうち (26)
【Fターム(参考)】