説明

噴霧機構付き加熱調理器

【課題】簡易な構造で加熱調理器内に抗酸化剤をムラなく添加できる噴霧機構付き加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱調理器において、食品を収容するための開口部が形成された加熱室と、加熱室の開口部を閉塞するための蓋部と、蓋部内に配置されて加熱室内に収容された食品に対して抗酸化剤を噴霧する噴霧機構と、蓋部の開閉状態を検出する開閉検知部と、開閉検知部が検出する開閉状態を監視するとともに蓋部が加熱室の開口部を閉塞した後に噴霧機構を制御して食品に対して抗酸化剤を噴霧させる制御部と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化作用を有する機能性液剤(抗酸化剤等)を噴霧する機構を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の研究の進歩により、特に抗酸化作用を食品分野に適用することが徐々に実用化されてきている。各種成人病の多発、各種の疾病や難病患者の発生などの原因の多くは、人体に取り込まれた活性酸素に起因している事が判明しており、かような活性酸素を如何に除去して人体の活力増強、健康増進に繋げるかが注目されている。
【0003】
このうち、白金を微小な粉末に生成した物質(以下、「白金ナノ粒子」と称する)は人体への安全性も備えていると考えられている。例えば下記特許文献1には、抗酸化剤としての金属ナノ粒子等を様々な飲食品に添加することが記載されており、その有用性および安全性が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−156440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したとおり、食品への金属ナノ粒子等の機能性液剤(抗酸化作用その他の人体・環境に有用な機能を有する液剤)の添加は有用性等を示すものであるが、一方で、調理器内に収容された固体食品への添加の態様については未だ考慮されていない状況にある。すなわち、例えば機能性液剤を液体食品に添加する場合には、単純に機能性液剤を混合して攪拌すれば該液体食品内で機能性液剤が分散されるので特に問題はない。
【0006】
しかしながら、特に加熱調理器内においての固形食品への添加においては、機能性液剤を如何にして固形食品に添加させるかが問題となる。
例えば、炊飯器や電気ポット等の加熱調理器内に保存された食品や、加熱調理の途中段階で機能性液剤を添加させたい場合がある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、簡易な構造で金属ナノ粒子等を含有した機能性液剤をムラなく添加できる噴霧機構付き加熱調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の噴霧機構付き加熱調理器は、
食品を収容するための開口部が形成された加熱室と、
前記加熱室の開口部を閉塞するための蓋部と、
前記蓋部内に配置されて、前記加熱室内に収容された前記食品に対して機能性液剤を噴霧する噴霧機構と、
前記蓋部の開閉状態を検出する開閉検知部と、
前記開閉検知部が検出する前記蓋部の開閉状態を監視するとともに、前記蓋部が前記加熱室の開口部を閉塞した後に、前記噴霧機構を制御して前記食品に対して前記機能性液剤を噴霧させる制御部と、を具備したことを特徴とする。
【0009】
(2)本発明の噴霧機構付き加熱調理器は、前記(1)において、
前記噴霧機構は、
前記機能性液剤を霧化する霧化デバイスと、
霧化された前記機能性液剤を前記加熱室内へ供給する供給部と、
を具備することを特徴とする。
【0010】
(3)本発明の噴霧機構付き加熱調理器は、前記(2)において、
前記霧化デバイスは、
本体と、
前記本体内に交換可能に収容されるとともに、前記機能性液剤を貯蔵するカートリッジ部と、
前記本体内に収容され、前記カートリッジ部に貯蔵された前記機能性液剤を霧化する霧化部と、
を備えてなることを特徴とする。
【0011】
(4)本発明の噴霧機構付き加熱調理器は、前記(3)において、
前記霧化部は、
平面状の表面を有する圧電材料からなる基体と、
前記基体の表面に配置された表面弾性波発生部と、
前記表面弾性波発生部と並んで前記基体の表面に配置され、前記カートリッジ部と接続されて当該基体の表面に前記機能性液剤を含む液体を供給する多孔質の保水部材と、
を具備することを特徴とする。
【0012】
(5)本発明の噴霧機構付き加熱調理器は、前記(1)〜(4)のいずれかにおいて、
前記機能性液剤は、白金ナノ粒子を含有した液剤であることを特徴とする。
【0013】
(6)本発明の噴霧機構付き加熱調理器は、前記(1)〜(5)のいずれかにおいて、
前記機能性液剤は、内釜内に収容され炊きあがった米に霧状に噴霧されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加熱調理器において機能性液剤を霧化する噴霧機構を用いることで、簡易にそしてムラなく機能性液剤を食品に噴霧することができる。また、加熱室内の開閉に応じて霧化した機能性液剤を食品に噴霧することができるので、機能性液剤を無駄なく効率的に用いることができて低コスト化にも大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例に係る噴霧機構付き加熱調理器の概略構成図である。
【図2】実施例の噴霧機構付き加熱調理器における制御部の概略構成図である。
【図3】実施例の噴霧機構の概略構成図である。
【図4】霧化デバイスの第1の変形例を示す概略構成図である。
【図5】霧化デバイスの第2の変形例を示す概略構成図である。
【図6】霧化デバイスの第3の変形例を示す概略構成図である。
【図7】霧化デバイスの第4の変形例を示す概略構成図である。
【図8】実施例に係る噴霧機構付き加熱調理器の制御フローを説明する図である。
【図9】(a)は第2の実施例に係る噴霧機構付き加熱調理器を示す概略構成図であり、(b)は蓋体を内釜の側から見た底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施の形態では、少なくとも、食品を収容するための開口部が形成された加熱室と、加熱室の開口部を閉塞するための蓋部と、蓋部の開閉状態を検出する開閉検知部と、開閉検知部が検出する開閉状態を監視する制御部と、を含む加熱調理器内に、さらに機能性液剤を霧化して食品に添加するための噴霧機構が具備されてなる。
そして、制御部は、所定のタイミングによって、この噴霧機構を制御して加熱室内に収容された食品に対して機能性液剤を噴霧させる制御を行う。
【0017】
加熱調理器は、食品を加熱室内に収容して該食品にヒーター等で熱を加えることで調理する機器を総称するものであり、例えば炊飯器、電子レンジ、オーブントースター等が挙げられる。
加熱室内に収容される加熱調理対象物の食品としては、加熱調理器の種類に応じて様々であるが、例えば炊飯器であれば米、オーブントースターであればパンなどが挙げられる。
加熱室は加熱調理器の本体に配置されるとともに、食品を収容するスペースを備えた部材である。この加熱室には開口部が形成されており、該開口部から食品の出し入れが行われる。加熱室の一例としては、例えば炊飯器における内釜であり、この内釜は凹状の金属製鍋となっている。
【0018】
蓋部は上記した加熱室の開口部を閉塞する機能を有しており、例えば手動または自動で駆動して加熱調理器の本体または加熱室と接続することによって上記開口部を閉塞する。この蓋部の内部には、後述する噴霧機構や、保温ヒーターなどが配置され、制御部からの制御の下で、加熱室内に収容された食品への機能性液剤の噴霧や保温等を行うことができる。
開閉検知部は、加熱調理器の蓋部の開閉状態を検知する機能を有しており、例えば蓋部が閉じており加熱室の開口部が閉塞しているかを検知する。この開閉検知部としては、例えば加熱調理器の本体に設けられた公知の各種センサーが例示され、該センサーは加熱調理器の制御部と電気的に接続される。
【0019】
制御部は、例えばRAMやROMを備えたマイコンが例示でき、加熱調理器全体の制御を行う。この制御部は、さらに開閉検知部が検出する開閉状態を監視する機能、噴霧機構を制御する機能などを備えている。また、加熱調理器の動作状態を表示するための操作パネルからの入力信号を受けて、該加熱調理器の動作状態を表示パネルに表示する制御等も行う。
制御部は、所定のタイミングに基づいて噴霧機構を制御して加熱室内に収容された食品に対して機能性液剤を噴霧させる制御を行う。所定のタイミングとしては、例えば蓋部が加熱室の開口部を閉塞した時、蓋部が該開口部を閉塞して所定時間経過した時、炊飯器の場合は炊き上がり時、あるいは後述する保鮮スイッチをユーザが選択した時などが挙げられる。
【0020】
噴霧機構は、機能性液剤を霧化する機能を有した装置である。この噴霧機構は、機能性液剤を霧化する霧化デバイスと、霧化された機能性液剤を加熱室内へ供給する供給部と、を備えてなる。
機能性液剤は、機能性成分を含有する液剤である。機能性成分としては、白金ナノ粒子の他、各種のビタミン、アミノ酸、茶菓抽出物(カテキン、タンニン、サポニン、テアニン、カフェインなど)、ヒアルロン酸、コラーゲン、アロマ精油、コーヒー豆、茶菓、ワサビ、ヒノキチオール、キチン、キトサン、プロポリスなどのような有機系可溶性成分が挙げられ、その他、無機物(無機系可溶性成分)では銀または食塩などが挙げられる。
ここで、「機能性」とは、生活環境を快適にして、人の健康を改善できる性質をいい、消臭性(脱臭、分解など)、抗微生物性(抗菌性、殺菌性、静菌性、抗カビ性、抗ウイルス性など)、リラクゼイション性(アロマテラピー性)、保湿性、抗酸化性、有害小生物忌避性などのうち、少なくとも一種類の性質を有することを意味する。
【0021】
以下の説明では、機能性液剤の一例として、抗酸化剤としての白金ナノ粒子を溶液をした例にして説明する。白金ナノ粒子の溶液は、白金ナノコロイド溶液にアルミナやシリカなどのセラミック粒子を混合し、この混合溶液を焼成することによって得られる。白金ナノ粒子がアルミナやシリカなどのセラミック粒子の表面に付着したトータル的には粒径が大きな粒子となっており、機能性液剤中で白金ナノ粒子同士が凝縮することはない。また、白金ナノ粒子が抗酸化剤として機能するときは、付着しているアルミナやシリカなどのセラミック粒子の表面から少しずつ機能性液剤中に溶け出すようになっている。
なお、本発明では、機能性液剤としては、白金ナノ粒子に限定されずに他の抗酸化剤を含む機能性液剤を用いることもできる。この機能性液剤は、例えば後述するカートリッジ部内に貯蔵されている。
霧化デバイスは、後述する供給部としてのポンプと直接または間接的に接続されて、機能性液剤を霧化させる機能を有する機構である。霧化デバイスとしては種々の機構が適用できるが、例えば、本体と、この本体内に配置される霧化部およびカートリッジ部、霧化部に電力を供給する電源が例示される。
本体は、霧化部およびカートリッジ部を収容する収容容器であり、金属または耐熱性プラスチックで構成されている。
霧化部は、例えば平面状の表面を有する圧電材料からなる基体と、基体の表面に配置された表面弾性波発生部と、表面弾性波発生部と並んで基体の表面に配置され、当該基体の表面に抗酸化剤を含む液体を供給する多孔質の保水部材と、を含んで構成されている。このうち、霧化される「抗酸化剤を含む液体」は、上述した白金ナノ粒子を含んだ溶液が例示できる。
【0022】
基体は、少なくとも一面が平面状となっている圧電材料などからなる部材であり、好適には長方形の表面を備えた平板材が用いられる。また、表面形状は表面弾性波の伝搬方向に交差する二辺が表面弾性波に直交しないように10〜30°程度の角度をつけた平行四辺形とする平板材であってもよい。平行四辺形とすることにより、弾性表面波が基体の単端(エッジ)に到達した際に反射方向を変えるとともに表面弾性波の到達時間差を作ることができ、エネルギーの損失等による発熱を抑えることができる。
なお、圧電材料の材質は特に限定はないが、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO)やタンタル酸リチウム(LiTaO)、BaTiO系セラミックスやピエゾ(PZT)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの種々の公知材料が適用可能である。
また、基体の表面のうち、保水部材から液体が供給される部位には親液処理が行われていることがなお好ましい。これによれば、保水部材により供給した液体を基体の表面でより薄く馴染みやすくさせることができ、より安定した霧化を行うことができる。親液処理としては、テフロン(登録商標)樹脂系コーティングや、ガラス繊維(被膜)系コーティングなど公知の親液コーティングを適用することができる。
表面弾性波発生部は、基体の表面に配置されてこの基体の表面を伝搬する表面弾性波を発生させる部材であり、圧電材料などからなる基体に表面弾性波を発生させる機能を備える。例えば電源とこの電源に接続される櫛歯電極などの電極が例示されるが、後述の保水部材を振動させる機能を備えたものであれば、他の公知のSAW素子(Surface Acoustic Wave素子)の構成を適用してもよい。
【0023】
保水部材は、吸水性および保水性を有する多孔質の材料で構成される部材であり、その素材としては、セラミックス材料、合成樹脂材料、金属材料などの、多孔体又は繊維成型体の1種類または2種類以上を複合化して形成されたものが挙げられる。また、その材質や断面積を変えることで液体の供給量を変えることができ、これにより霧化量をコントロールすることもできる。
【0024】
保水部材は、例えば基体の表面のいずれかの箇所あるいは表面弾性波の進行方向に交差する素子単端(エッジ)に接触させて配置される。また、保水部材は、表面弾性波の進行方向に対して直行しないよう10〜30°程度の角度をつけて配置することも可能である。この場合、霧化のタイミングに時間差を作ることができ、霧化領域あるいは圧電素子エッジおいてエネルギーの損失等による発熱を抑えることができるため好ましい。
多孔体や繊維成型体の保水部材を構成するセラミックス材料としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニアのような単一酸化物、または、ムライト、ゼオライト、ベントナイト、セビオライト、アタパルジャイト、シリマナイト、カオリン、セリサイト、珪藻土、長石、蛙目粘度、珪酸塩化合物(パーライト、バナミキュライト、セリサイトなど)が挙げられ、天然繊維材料としては、パルプ繊維、綿、ウール繊維、麻繊維などが挙げられ、合成樹脂材料としては、ポリエステル、ナイロンやレーヨン、ウレタン(ポリウレタンを含む)、アクリル、ポリプロピレンなどが挙げられ、金属材料としては、ステンレス、銅、チタン、スズ、プラチナ、金、銀などが挙げられる。
多孔体や繊維成型体の形状の他にも、ハニカム構造やコルゲート構造が挙げられ、パイプ状、シート状、プリーツ状なども挙げられる。必要条件は優れた吸水力および保水力を有するということである。
【0025】
なお、保水部材の形状は、その断面が円径あるいは半円径、または四角形、三角形などの多角形が考えられ、とくに制限はされない。好ましくは、その断面が円形である円柱状の部材であるとよい。
また、保水部材は基体の表面において複数個並列して配置させることもできる。例えば保水部材を表面弾性波の伝搬方向に対して2個並べて配置させることで、一方の保水部材から基体の表面に供給された液体のうち霧化できなかった液体を他方の保水部材に取り込み、再度霧化用の液体として利用することができる。
また、保水部材に機能性成分(白金ナノ粒子)を予め含浸させておくとなおよい。すなわち、液体貯蔵部としてのカートリッジ部に予め抗酸化剤としての白金ナノ粒子の溶液を貯蔵させてもよいのであるが、これにより例えば保水部材に付加する機能性成分の量を可変させることにより、噴霧する際に霧化する機能性成分の量をコントロールすることができる。
【0026】
液体貯蔵部としてのカートリッジ部は、霧化させる液体(例えば抗酸化剤である白金ナノ粒子を溶かした液体)を貯蔵するとともに、毛細管現象などを利用して、常時、保水部材に液体を直接又は間接的に供給するカートリッジで構成される。このカートリッジ部は、霧化デバイス内において着脱可能となっている。なお、カートリッジの底部に、液量センサーを付設してもよい。例えば上述した加熱調理器の制御部と電気的に接続することにより、液量センサーはカートリッジ内の液体が無くなると信号を発生して液体の補充(すなわちカートリッジの交換)を促すようにすることができる。
なお、カートリッジ部と保水部材は直接接続されていてもよいし、輸液部材を介して間接的に接続されていてもよい。
輸液部材は、保水部材や液体貯蔵部と同様に毛細管現象による液体の吸水、輸液が可能な材料で構成されている。そして保水部材と同様に、繊維、樹脂、セラミックス等からなる部品で構成してもよく、その材質や断面積を変えることで液の供給量を変えることができる。
【0027】
なお、輸液部材や液体貯蔵部の内部にも上述した液体に溶解することのできる機能性成分を予め含浸させておいてもよい。これにより機能性成分を高濃度に、あるいは比較的長期間にわたって機能性成分を散布することができる。
供給部は、霧化デバイスにて霧化された抗酸化剤を加熱調理器の加熱室内へと供給する機能を備えている。この供給部としては、例えばポンプ、配管および逆止弁が例示されるが、とくにこれに限定されずに他の手法を用いてもよい。例えば、霧化デバイスの本体における外表面の少なくとも一部(加熱室に対向している面)に孔部を形成した上で、この孔部を開閉可能に動作する解放弁を用いて供給部としてもよい。この場合には、制御部は、この解放弁および噴霧機構を制御して、加熱室内に霧化した抗酸化剤を供給する。
ポンプは、霧化デバイスと配管等を介して接続されて該霧化デバイス内に所定の圧力を発生させる。本実施形態では、加熱調理器に内蔵可能な公知の小型ポンプが望ましい。 配管は、ポンプと霧化デバイスとを接続する第一の配管、および、霧化デバイスと加熱室とを接続する第二の配管であり、それぞれゴムやプラスチック等の樹脂や金属などによって構成されている。
逆止弁は、霧化デバイスにより霧化されて加熱室へと供給された抗酸化剤が逆流しないように第二の配管に設けられる部材であり、公知の逆止弁を適用可能である。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明の実施例について、図面を参照して詳述する。
<第1の実施例>
図1は実施例に係る噴霧機構付き加熱調理器の概略構成図であり、図2は実施例に係る噴霧機構付き加熱調理器における制御部の概略構成図であり、図3は実施例に係る噴霧機構の概略構成図である。
また、図4は実施例の噴霧機構に係る第1の変形例を示す概略構成図であり、図5は実施例の噴霧機構に係る第2の変形例を示す概略構成図であり、図6は実施例の噴霧機構に係る第3の変形例を示す概略構成図であり、図7は実施例の噴霧機構に係る第4の変形例を示す概略構成図である。
図8は実施例に係る噴霧機構付き加熱調理器の制御フローを説明する図である。
【0029】
図1に、実施例に係る加熱調理器としての炊飯器11を示す。この炊飯器11は、有底胴状の本体12と、該本体12内に配設され、食品としての米を収容して加熱処理するための加熱室としての内釜13と、ヒンジ軸14周りに回動自在に本体12に軸支された蓋部としての蓋体15と、制御部としての制御基板37と、噴霧機構50と、開閉検知部としてのセンサー60と、を有している。
本体12の内底には、内釜13の底部を加熱する炊飯手段である炊飯ヒーター17が設けられている。また、本体12の内側側面には内釜13の外周面を加熱する保温手段である保温ヒーター18が配設されている。
一方、蓋体15の内面には内釜13の上方開口部を密閉する内蓋16が取り付けられ、この内蓋16には保温手段である保温ヒーター19が配設されている。このように、内釜13のうち蓋体15と対向する面は開口部を形成しており、蓋体15がヒンジ軸14を介して内釜13の開口部を閉塞する機構となっている。
【0030】
本体12の正面には、図2に示すように、ユーザが動作条件を入力し、あるいは炊飯器11の動作状態を表示する操作パネル21が配設されている。この操作パネル21には、中央の液晶パネル22の周囲に、入力手段であるスイッチ24〜31が配設されている。
具体的には、図2に示すとおり、操作パネル21の右側には、炊飯を実行させるための炊飯スイッチ24と、希望時刻にご飯を炊きあげる予約機能を選択するための予約スイッチ25と、時刻や時間を設定するための上スイッチ26及び下スイッチ27とが配設されている。また、操作パネル21の左側には、実行中の動作または条件の選択を停止させるとりけしスイッチ28と、後述する機能性液剤を米に噴霧するための保鮮スイッチ29と、炊飯条件を選択するためのメニュースイッチ30と、保温制御(コース)を選択して実行させる保温選択スイッチ31とが配設されている。
【0031】
保鮮スイッチ29をユーザが選択した場合には、制御基板37からの制御の下で噴霧機構から霧化された機能性液剤が内釜13内に噴霧されることになる。
なお、後述する噴霧フローにおける自動継続モードを選択したい場合には、この保鮮スイッチ29を二回続けて押圧することにより選択可能となるが、これに限られずにメニュースイッチ30から適宜自動継続モードを選択可能としてもよい。
また、操作パネル21の中央には、後述するCPU38が内蔵したドライバによって表示するセグメント表示方式の表示手段である液晶パネル22が配設されている。この液晶パネル22には、現在時刻や動作の残時間等を表示する数値表示33と、省エネ保温経過時間を設定する工程を表す保温表示34と、複数の炊飯メニューのなかの選択状態を示すための印表示35とが設けられている。
【0032】
図1を併せて参照すると、操作パネル21は制御部である制御基板37に接続され、制御基板37に実装されたCPU38は、ROM39に予め記憶された各炊飯メニューや後述する噴霧フローのプログラムに従って炊飯処理を実行した後、続いて保温、保鮮処理に移行するものである。ROM39は、予め設定した保温条件等を記憶する。また、ROM39のデータを読み込み、一時的に記憶するRAM40が設けられている。
センサー60は内釜13の開口部が閉塞されているかを検知しており、具体的に本実施例では蓋体15と本体12との接続状態を検知している。
制御基板37に接続された電源装置41は、炊飯ヒーター17、保温ヒーター18、19、噴霧機構50、およびセンサー60等に電力を供給するようになっている。
【0033】
噴霧機構50は、図1に示すように蓋体15の内部に配置されている。すなわち、蓋体15の内部には、ポンプ51、霧化デバイス52、配管53および逆止弁55が内蔵されており、ポンプ51と霧化デバイス52は第一の配管53を介して接続されている。また、内蓋16のうち内釜13と対向する面には孔部16aが形成されており、この孔部16aと霧化デバイス52とは第二の配管54を介して接続されている。したがって、霧化デバイス52により生成された霧状(ミスト)の機能性液剤は、第二の配管54を通って内蓋16の孔部16aから内釜13内へと噴霧される。
なお、第二の配管54の所定箇所には逆止弁55が形成されており、制御基板37の制御の下で霧状の機能性液剤の逆流(霧化デバイス52へと逆戻りしてしまうこと)を防止している。
上述したように、蓋体15の表面の一部は開閉窓部57およびヒンジ56となっており、この開閉窓部57を開閉可能とすることで霧化デバイス52のうち後述するカートリッジ部526が蓋体15から取り外し可能となっている。なお後述するが、取り外し可能とする部材はカートリッジ部でもよいが、少なくとも機能性液剤を貯蔵する液体貯蔵部を含む霧化デバイス52を交換可能としてもよい。
【0034】
次に、蓋体15内に配置される霧化デバイス52の詳細について説明する。
図3に示すように、霧化デバイス52は、本体521内に霧化部528およびカートリッジ部526が収容されて構成されている。このうち、霧化部528は、基体522と、表面弾性波発生部(櫛歯電極523、電源41)と、保水部材524と、を有して構成されている。
基体522としてはLiNbOで構成される圧電材料が用いられ、この基体522の表面には表面弾性波発生部としての櫛歯電極523が配置されている。櫛歯電極523は電源41に配線されており、制御基板37の制御の下でこの電源41から櫛歯電極523に電流が流れて櫛歯電極間に所定の電圧が生じ、これにより基体522が圧電作用により微小振動する。
なお、基体522の上方にはミスト霧化スペースが形成されており、霧化デバイス52で発生する霧状の抗酸化剤(白金ナノ粒子を含有した溶液)はこのミスト霧化スペース内に滞留するようになっている。
【0035】
なお、ミスト霧化スペースにて滞留した機能性液剤は、上記したポンプ51によって、第二の配管54を通して内釜13内へと供給される。電源41は、炊飯器11の電源(家庭用コンセント電源等)を用いても良い。
また、櫛歯電極523と並んで、保水部材524が基体522の表面と接触するように配置されている。円柱状の保水部材524における一方の端部は輸液部材525と接続され、輸液部材525を介して間接的に液体貯蔵部としてのカートリッジ部526から機能性液剤である白金ナノ粒子を含有した溶液の供給を受けるようになっている。
なお、本実施例において輸液部材525は多孔質セラミックス材料で構成されており、保水部材524は多孔質の繊維で構成されている。カートリッジ部526には、機能性液剤が貯蔵されており、毛細血管現象などにより、常時、保水部材524へ供給されるようになっている。
なお、本実施例において、カートリッジ部526は蓋体15内から着脱可能となっており、カートリッジ部526に貯蔵された機能性液剤が消費された後は、新たなカートリッジ部に取り替えることで継続して機能性液剤の霧化が可能となっている。
【0036】
基体522の表面のうち、保水部材524が接触する領域を中心に所定の範囲で親液領域529が形成されている。本実施例では、親液処理としてテフロン(登録商標)が親液領域529にコーティングされている。このように基体522の表面のうち保水部材524が接触する周辺が親液処理されているため、保水部材524から供給された機能性液剤がより薄く広がる。そのため、より効率的に保水部材524から基体522の表面へ液体を供給することができる。
なお、保水部材524に界面活性剤を含ませるなどして親液性を持たせることでも同様の効果を得ることができる。
【0037】
<第1の変形例>
図4は、霧化デバイス52の第1の変形例を示している。なお、本第1の変形例のうち上述した実施例と同様な構成は、同じ番号を付すとともに適宜その説明を省略する(以下の各変形例についても同様)。
本第1の変形例では保水部材が複数配置されており、図4に示すとおり、保水部品524よりもさらに表面弾性波の進行方向には第二の保水部品540が保水部材524と並んで配置されている。また、第二の保水部材540は、輸液部材525を介して液体貯蔵部としてのカートリッジ部526と接続されている。第二の保水部材540は、基体522の表面に供給される液体(白金ナノ粒子を含有した液剤イド)のうち保水部品524で霧化できなかった液体を吸水する機能を備えている。この第二の保水部材540で吸水された液体は、霧化に用いる液体として再使用することができる。
【0038】
<第2の変形例>
図5に霧化デバイス52の第2の変形例を示す。第2の変形例においては、第二の保水部材540は、保水部材524と交差する方向に沿って配置されている。第1の変形例と同様に、第二の保水部材540は、基体522の表面に供給される液体のうち保水部品524で霧化できなかった液体を吸水する機能を備えている。そしてこの第二の保水部材540により吸水された液体は、霧化に用いる液体として再使用することができる。
【0039】
<第3の変形例>
図6に霧化デバイス52の第3の変形例を示す。第3の変形例においては、保水部材524が表面弾性波の進行方向に対して直行しないよう10〜30°程度の角度をつけて配置されることを特徴としている。この場合、表面弾性波が早く到達した方から霧化し、表面弾性波の到達が遅い部分は遅く霧化するため、霧化のタイミングに時間差を作ることができ、霧化領域あるいは圧電素子エッジおいてエネルギーの損失等による発熱を抑えることができる。
【0040】
<第4の変形例>
図7に霧化デバイス52の第4の四変形例を示す。図7(a)に示すように、基体522の単端(エッジ)が弾性表面波の伝搬方向と直交しないように、基体522を平行四辺形状の板材としていることを特徴とする。この場合、弾性表面波は図7(b)に示す矢印方向に進行するため、弾性表面波が基体522の単端(エッジ)に到達した際に反射方向(角度)が変化し(来た方向に帰らない)、表面弾性波の到達時間差を作ることができ、エネルギーの損失等による発熱を抑えることができる。
【0041】
次に、図8を用いて実施例に係る噴霧機構付き加熱調理器の噴霧フローを説明する。
本噴霧フローに係る制御プログラムは、例えば上述した炊飯器11の制御基板37におけるROM39内に予め記録されている。
まず、制御基板37におけるCPU38は、蓋体15の閉信号、又は保鮮スイッチ29の押圧を検出している(ステップST1)。そしてCPU38は、蓋体15の閉信号と保鮮スイッチ29の押圧のいずれも検出されない場合には、このステップST1を繰り返す。この閉信号は、例えば上述したセンサー60からの信号であり、蓋体15が閉じられたことを示す信号である。
【0042】
そして、蓋体15の閉信号、又は保鮮スイッチ29の押圧を検出した場合、霧化デバイス52を制御して機能性液剤を霧化する制御を行う(ステップST2)。なお、ステップST1とステップST2の間に、すでに炊飯が完了しているか否かの確認ステップをさらに設け、炊飯が完了していることが確認された場合にステップST2以降に進むようにしてもよい。もちろん米の炊きあげ以外の機能(パン、ケーキや蒸し料理など)を炊飯器11が有することもあるので、当該機能に応じて上記確認ステップの有無を切り替えてもよい。
【0043】
ステップST2によって霧化デバイス52内で機能性液剤の霧化を開始した後は、CPU38はポンプ51を駆動するとともに、逆止弁55を開放する制御を行う(ステップST3)。ポンプ51によって霧化デバイス52内に発生した霧状の機能性液剤は、配管54を介して内釜13内へ供給される。そして内釜13内に収容され炊きあがった米に霧状の機能性液剤がムラなく噴霧されることになり、米に対して抗酸化作用を効果的に付与することが可能となる。
【0044】
続いて、CPU38は、図示しない計時カウンタによって第一の所定時間が経過したかを監視しており(ステップST4)、第一の所定期間が未だ経過していない場合にはステップST2に戻って機能性液剤の霧化を再び繰り返す。なお、第一の所定期間について特に限定はないが、例えば数十秒〜30分程度としてもよい。
一方、第一の所定期間が経過した場合には、CPU38は、ポンプ51および霧化デバイス52の駆動をOFFにするとともに、逆止弁55を閉じる制御を行うことにより、機能性液剤の霧化を停止する(ステップST5)。
【0045】
ステップST5を完了した後には、CPU38は、続いて上記計時カウンタを用いて第二の所定期間が経過したかを監視し(ステップST6)、この第二の所定期間が経過していない場合には当該第二の所定期間が経過するまで計時カウンタにより計時を行う。第二の所定期間としては特に制限はないが、例えば30分〜数時間としてもよい。
そして、第二の所定期間が経過した後には、CPU38は自動継続モードが設定されているかを確認し(ステップST7)、自動継続モードが設定されていない場合には噴霧フローを終了させる。
一方、自動継続モードが設定されている場合には、ステップST2に戻って機能性液剤の霧化を再開させる。
【0046】
以上説明したとおり、本実施例によれば、加熱調理器(炊飯器11)内の加熱室内に収容される食品(米等)に対して霧化した機能性液剤(例えば抗酸化剤)を散布させることができ、食品の抗酸化作用を増進させることができる。また、霧化デバイスを用いて自動で抗酸化剤を霧化させているので、人手がかからず、それでいてムラなく効果的に食品に対して抗酸化作用を付与することができる。
さらに、機能性液剤を保存するカートリッジ部を交換可能としたので、機能性液剤を消費し終えた後にも、新たなカートリッジ部に取り替えることで簡易に霧化デバイスの使用を継続させることができる。
【0047】
<第2の実施例>
以下、本発明の第2の実施例を説明する。図9(a)は、本発明の第2の実施例に係る噴霧機構付き加熱調理器を示す概略構成図であり、図9(b)は蓋体15を内釜13の側から見た底面図である。
図9(a)に示すように、霧化デバイス52の本体521の一側面(本体521における外表面の少なくとも一部)が直接内蓋16に面している。すなわち、内蓋16の一部に凹部が形成されており、この凹部に霧化デバイス52が収容された形態となっている。
さらに、内蓋16には、上記一側面を覆う開放弁56が複数の孔部16aを閉鎖するように設けられており、CPU38の制御の下で霧化デバイス52の駆動に応じて開放弁56が開放され、霧化デバイス52のミスト霧化スペースに滞留されているミストを、配管を介することなく内釜13内へ直接噴霧する構成となっている。
開放弁56の形態としては、図9(a)に示すように、板状弁の片側が内蓋16に係止され、他側が開放されるようになっている。
この開放弁56の材質としては、炊飯器11の食品への加熱機能に対して耐熱性を有していれば特に制限はないが、例えば内蓋16と同じ材質(金属)としたり、耐熱性プラスチックとしてもよい。
【0048】
なお、本発明の技術的範囲は上記に示した各実施例及び変形例に制限されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能であることは言うまでもない。
例えば、食品の保温期間中において、CPU38によって一定期間毎に自動で保鮮スイッチ29を起動させて上記噴霧フローを行っても良い。
また、上記実施例では霧化デバイス52によって霧化された機能性液剤をポンプ51、配管53、54および逆止弁55により内釜13内へ供給したが、他の手段によって霧化された機能性液剤を内釜13内へ供給してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の噴霧機構付き加熱調理器は、機能性液剤を霧化する噴霧機構を内蔵しており、簡易にそしてムラなく機能性液剤を食品に噴霧するので、機能性液剤を無駄なく効率的に用いることができて低コスト化にも大きく寄与することができ、産業上の利用可能性が極めて高い。
【符号の説明】
【0050】
11 炊飯器
12 本体
13 内釜
14 ヒンジ軸
15 蓋体
16 内蓋
17 炊飯ヒーター
18,19 保温ヒーター
21 操作パネル
22 液晶パネル
24〜31 スイッチ
29 保鮮スイッチ
33 数値表示
34 保温表示
35 印表示
37 制御基板
38 CPU
39 ROM
40 RAM
41 電源装置
421 本体
50 噴霧機構
51 ポンプ
52 霧化デバイス
521 本体
522 基体
523 櫛歯電極
524 保水部材
525 輸液部材
526 カートリッジ部
529 親液領域
53、54 配管
540 第二の保水部品
55 逆止弁
56 ヒンジ
57 開閉窓部
56 開放弁
60 センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収容するための開口部が形成された加熱室と、
前記加熱室の開口部を閉塞するための蓋部と、
前記蓋部内に配置されて、前記加熱室内に収容された前記食品に対して機能性液剤を噴霧する噴霧機構と、
前記蓋部の開閉状態を検出する開閉検知部と、
前記開閉検知部が検出する前記蓋部の開閉状態を監視するとともに、前記蓋部が前記加熱室の開口部を閉塞した後に、前記噴霧機構を制御して前記食品に対して前記機能性液剤を噴霧させる制御部と、を具備したことを特徴とする噴霧機構付き加熱調理器。
【請求項2】
前記噴霧機構は、
前記機能性液剤を霧化する霧化デバイスと、
霧化された前記機能性液剤を前記加熱室内へ供給する供給部と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の噴霧機構付き加熱調理器。
【請求項3】
前記霧化デバイスは、
本体と、
前記本体内に交換可能に収容されるとともに、前記機能性液剤を貯蔵するカートリッジ部と、
前記本体内に収容され、前記カートリッジ部に貯蔵された前記機能性液剤を霧化する霧化部と、
を備えてなることを特徴とする請求項2に記載の噴霧機構付き加熱調理器。
【請求項4】
前記霧化部は、
平面状の表面を有する圧電材料からなる基体と、
前記基体の表面に配置された表面弾性波発生部と、
前記表面弾性波発生部と並んで前記基体の表面に配置され、前記カートリッジ部と接続されて当該基体の表面に前記機能性液剤を含む液体を供給する多孔質の保水部材と、
を具備することを特徴とする請求項3に記載の噴霧機構付き加熱調理器。
【請求項5】
前記機能性液剤は、白金ナノ粒子を含有した液剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の噴霧機構付き加熱調理器。
【請求項6】
前記機能性液剤は、内釜内に収容され炊きあがった米に霧状に噴霧されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の噴霧機構付き加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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