説明

嚢胞性疾患の治療のためのプリン誘導体

式Iの化合物を投与することによる嚢胞性疾患の治療方法を提供する。特定の実施態様において、提供される方法で使用する化合物は、ロスコビチン又はその類似体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2006年10月19日に出願された米国仮出願第60/852,760号(Bukanovらの「嚢胞疾患の治療のための方法及び組成物」)の優先権を主張するものであり、その仮出願の内容は、その全体において本明細書中に引用により組み込まれる。
【0002】
(分野)
嚢胞性疾患の治療方法を提供する。ある実施態様において、その方法は、サイクリン依存性キナーゼ(cdk)阻害剤である化合物を投与することを含む。ある実施態様において、提供される方法で使用するcdkインヒビターは、ロスコビチン(roscovitine)である。
【背景技術】
【0003】
(背景)
腎嚢胞は、50歳超の人の3分の1において生じる。大部分は単純な嚢胞であるが、腎嚢胞疾患は多様な病因を有している。嚢胞性疾患の広いカテゴリーは、以下のものを含む:
先天性疾患−先天性嚢胞異形成;
遺伝性疾患−常染色体劣性遺伝性多発性嚢胞腎(ARPKD)、常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎(ADPKD)、ネフロン癆−髄質嚢胞腎複合(NMCD:nephronophthisis-medullary cystic kidney disease complex);
後天性疾患−単純な嚢胞、後天性嚢胞疾患;
全身疾患と関連する嚢胞−フォン・ヒッペル・リンドウ(Von Hippel-Lindau)症候群(VHLS)、結節硬化(TS)、及び、
悪性腫瘍−腎細胞ガン(RCC)。
【0004】
最もよくみられる大きい嚢胞は、後天性の嚢胞、単純な嚢胞、及びADPKDを伴う嚢胞である。小さい嚢胞は、ARPKD、NMCD、及び海綿腎(MSK)と関連している。また、成人においては、腎血管筋脂肪腫及びRCCが、嚢胞性の病変を示し得るものである。
【0005】
(多発性嚢胞腎;PKD)
多発性嚢胞腎(PKD)は、腎臓において、体液で満たされた嚢胞が形成している状態を示す。嚢胞は、一般的に、糸球体から尿を運搬する尿細管の弱った部分において発生する。嚢胞は、健全な腎組織に代わって成長する。腎臓は、嚢胞に対応して拡張し、20ポンドの重さとなる。PKDの多くの形態は、遺伝性及び非遺伝性の形態である。
【0006】
常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎(ADPKD)は、最もよくみられる非遺伝性の形態である。ADPKDの症状は、通常30から40歳で発症するが、これより早く、子供であっても、発症する可能性がある。全PKDの事例の約90%は、常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎である。ADPKDは、ポリシスチン−1をコードするPKD1遺伝子(85%の事例)、又はポリシスチン−1をコードするPKD2遺伝子(15%の事例)における突然変異により生ずる。
【0007】
常染色体劣性遺伝性多発性嚢胞腎(ARPKD)は、稀な遺伝性の形態である。常染色体劣性遺伝性多発性嚢胞腎の症状は、生後数ヶ月において、胎内においても発症する。
【0008】
後天性嚢胞腎(ACKD)は、長期の腎臓の問題に関連して、特に、腎機能障害を有する患者及び長期の透析を行っている患者において、発症する。したがって、晩年に生ずる傾向にある。それは、PKDの遺伝性の形態ではない。
【0009】
腎嚢胞性疾患は、限定されないが、後天性腎嚢胞疾患(ARCD)、透析性嚢胞疾患、常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎(ADPKD)、常染色体劣性遺伝性多発性嚢胞腎(ARPKD)、先天性多嚢胞腎(CMK)、多嚢胞異形成腎、末期腎疾患(ESRD)、海綿腎(MSK)、ネフロン癆−髄質嚢胞腎複合症(nephronophthisis-medullary cystic kidney disease complex; NMCD)、ネフロン癆−尿毒症性腎髄質嚢胞症複合症(nephronophthisis- uremic medullary cystic disease complex; RCC)、若年性ネフロン癆、腎髄質嚢胞症、腎細胞ガン(RCC)、結節硬化(TS)、及びフォン・ヒッペル・リンドウ症候群(von Hippel-Lindau syndrome; VHLS)等を含む。
【0010】
PKDは、腎臓を機能させなくし、これは、通常は長年を経て生じ、患者は、透析又は腎移植を必要とする。PKDの主要な型を有する人の約半分は、腎機能障害が進行する。PKDは、肝臓に嚢胞を生じ、かつ心臓及び脳の血管等の他の臓器で問題を引き起こす。これらの合併症は、PKDを、晩年腎臓においてよく発生する、通常は無害の“単純な”嚢胞と区別する。
【0011】
米国において約60万人、そして、全世界の約1250万人の人間がPKDであり、それは、腎機能障害の主な原因となっている。3つの要因が嚢胞の分類を決定づけている:その原因(後天性、遺伝性)、その特徴(複雑である、単純である、複合的、単一)、及びその位置[腎組織の外側(皮質の)又は内側(髄質)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現時点では、PKDは不治である。PKDの治療は、痛みを低減するための医薬及び手術、感染を消散する抗菌性物質、低下した腎機能を置換する透析、及び腎移植を含む。したがって、PKDのより効果的な治療の発展が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(要旨)
ある実施態様において、多嚢胞性疾患を治療、改善又は防止する方法が提供される。嚢胞性疾患は、腎嚢胞性疾患に限定されないが、後天性腎嚢胞疾患(ARCD)、透析性嚢胞疾患、常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎(ADPKD)、常染色体劣性遺伝性多発性嚢胞腎(ARPKD)、先天性多嚢胞腎(CMK)、多嚢胞異形成腎、末期腎疾患(ESRD)、海綿腎(MSK)、ネフロン癆−髄質嚢胞腎複合症(nephronophthisis-medullary cystic kidney disease complex; NMCD)、ネフロン癆−尿毒症性腎髄質嚢胞症複合症(RCC)、若年性ネフロン癆、腎髄質嚢胞症、腎細胞ガン(RCC)、結節硬化(TS)、及びフォン・ヒッペル・リンドウ症候群(VHLS)等を含む。ある実施態様において、多発性嚢胞腎を治療、改善又は防止する方法が提供される。
【0014】
提供される方法は、下記式の化合物又は医薬として許容し得るその誘導体を投与することにより効果をもたらし、その変形物は、嚢胞性疾患の治療に有効である化合物が選択される。
【化1】

特定の実施態様において、その方法は、ロスコビチン又は医薬として許容し得るその誘導体を投与することを含む。特定の実施態様において、その方法は、R−ロスコビチン又は医薬として許容し得るその誘導体を投与することを含む。
【0015】
また、包装材料、式Iの化合物又は医薬として許容し得るその誘導体、及び式Iの化合物又は医薬として許容し得るその誘導体が嚢胞性疾患の治療に使用されることを示すラベルを含む、製品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(詳細な説明)
(A. 定義)
定義のない限り、本明細書中で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、当業者に一般に理解されるものと同様の意味を有する。全ての特許、出願、公開された出願及び他の公報は、その全体において本明細書中に引用により組み込まれる。用語に複数の定義がある場合は、他に記載がなければ、本節のものが優先される。
【0017】
本明細書において用いられる“嚢胞性疾患”とは、後天性腎嚢胞疾患(ARCD)、透析性嚢胞疾患、常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎(ADPKD)、常染色体劣性遺伝性多発性嚢胞腎(ARPKD)、先天性多嚢胞腎(CMK)、多嚢胞異形成腎、末期腎疾患(ESRD)、海綿腎(MSK)、ネフロン癆−髄質嚢胞腎複合症(nephronophthisis-medullary cystic kidney disease complex; NMCD)、ネフロン癆−尿毒症性腎髄質嚢胞症複合症(RCC)、若年性ネフロン癆、腎髄質嚢胞症、腎細胞ガン(RCC)、結節硬化(TS)、及びフォン・ヒッペル・リンドウ症候群(VHLS)から選択される疾患をいう。
【0018】
本明細書において用いられる“多発性嚢胞腎”又は“PKD”とは、腎臓における多数の嚢胞の成長により特徴づけられる病気をいう。嚢胞は、液体で満たされている。PKD嚢胞は、ゆっくりと腎臓の大部分に取って代わり、腎機能を低下させ、腎機能障害へと導く。PKDの兆候及び症状は、限定されないが、背中及び脇腹の下の痛み、頻尿、頭痛、尿路感染、血尿、腎臓及び他の臓器の嚢胞を含む。
【0019】
本明細書において用いられる“ロスコビチン”とは、6−ベンジルアミノ−2−(R)−[(1−エチル−2−ヒドロキシ)エチルアミノ]−9−イソプロピルプリンをいう。ロスコビチンの化学構造は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0020】
本明細書において用いられる“パルス投与”とは、薬剤の投与間隔を早めて薬剤の量を段階的に増加し、その後、薬剤を投与しない期間を持続する薬剤の投与をいう。例えば、パルス投与計画は、4週間の薬剤投与期間後に4週間薬剤を投与しない期間、3週間の薬剤投与期間後に3週間薬剤を投与しない期間、2週間の薬剤投与期間後に2週間薬剤を投与しない期間、1週間の薬剤投与期間後に1週間薬剤を投与しない期間、5日間の薬剤投与期間後に3日間薬剤を投与しない期間を含む。このような型の薬剤送達は、投与回数を減らすことを強い、かつより患者の順守を提供するので、特定の態様において治療に有利である。特定の態様において、パルス投与は、治療濃度域を広くする。
【0021】
本明細書において用いられる“薬剤を投与しない期間”とは、提供される化合物の投与を含まないパルス投与計画における間隔をいう。薬剤を投与しない間隔は、化合物が投与される期間の後に続く。
【0022】
本明細書において用いられる医薬として許容し得る化合物の誘導体は、塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物、又はそのプロドラッグを含む。このような誘導体は、公知の誘導化法等の方法を用いて当業者により容易に調製され得る。生成される化合物は、実質的に毒性作用がなく動物又は人間に投与され、医薬的に活性があるか、又はプロドラッグである。医薬として許容し得る塩は、限定されないが、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、アンモニア、ジエタノールアミン、及び他のヒドロキシアルキルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、1−パラ−クロロベンジル−2−ピロリジン−1'−イルメチルベンゾイミダゾール、ジエチルアミン、及び他のアルキルアミン、ピペラジン、並びに、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等の限定されないアミン塩;リチウム、カリウム及びナトリウム等の限定されないアルカリ金属塩;バリウム、カルシウム、及びマグネシウム等の限定されないアルカリ土類金属塩;亜鉛等の限定されない遷移金属塩;リン酸水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウム等の限定されない無機塩;塩酸塩及び硫酸塩等の限定されない鉱酸;及び、酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、メシル酸塩、及びフマル酸塩等の限定されない有機酸の塩を含む。医薬として許容し得るエステルは、限定されないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、並びに、カルボン酸、リン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、及びボロン酸等の限定されない酸性基のシクロアルキルエステルを含む。医薬として許容し得るエノールエーテルは、限定されないが、式C=C(OR)の誘導体(式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル)を含む。医薬として許容し得るエノールエステルは、限定されないが、式C=C(OC(O)R)の誘導体(式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、又はシクロアルキル)を含む。医薬として許容し得る溶媒和物及び水和物は、1以上の溶媒もしくは水分子、1から約100、1から約10、又は1から約2、3或いは4の溶媒もしくは水分子と化合物の複合体である。
【0023】
本明細書において用いられるEC50(半数影響濃度)とは、特定の試験化合物により誘発される、引き起こされる、又は増強される特定反応の最大発現の50%で用量依存的反応を生ずる、特定の試験化合物の投与量、濃度、又は量をいう。
【0024】
提供される化合物はキラル中心を含み得ることが理解されるべきである。このようなキラル中心は、(R)体又は(S)体であり、もしくは、これらの混合物であり得る。したがって、提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であり、もしくは、立体異性又はジアステレオ異性の混合物であり得る。そのため、当業者により、(R)体の化合物の投与が、in vivoにおけるエピマー化を行う化合物のための(S)体での投与と同等であることが認識される。
【0025】
本明細書において用いられる実質的に純粋とは、純度、又は更なる精製により物質の酵素活性及び生物活性等の物理特性及び化学特性を検出可能な程度において変化させることのない程度に十分に純粋であるかを評価するのに当業者により用いられる薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び質量分析(MS)等の標準的な分析方法により測定される、容易に検出可能な不純物を含まないとされる程度に十分に均一であることを意味する。実質的に純粋な化合物を生成するための化合物の精製方法は、当業者に公知である。しかしながら、実質上化学的に純粋な化合物は、立体異性体の混合物であり得る。そういった場合には、更なる精製により、化合物の比活性を増加させることが可能である。本件の開示は、ラセミ体及び光学的に純粋な型の他、考えられる異性体の全てを含むことを企図している。光学活性(+)及び(-)、(R)及び(S)、又は(D)及び(L)−異性体は、キラルシントン又はキラルな試薬を用いて調製され、もしくは、逆相HPLC等の従来法を用いて分割され得る。化合物がオレフィン二重結合又は幾何学的非対称の他の中心を含む場合、特に断りがなければ、化合物は、E体及びZ体の幾何異性体を含むことを意味する。同様に、互変異性型も前述の幾何異性体を含むことを意味する。
【0026】
本明細書において用いられるアルキル、アルコキシ、カルボニル等の命名法は、当業者によって一般に理解されるものとして用いられる。
【0027】
本明細書において用いられるアルキル、アルケニル、及びアルキニルの炭素鎖は、特定されていなければ、1から20個、又は1から16個の炭素を含み、直鎖又は分岐鎖である。2から20個の炭素のアルケニルの炭素鎖は、特定の実施態様において、1から8個の二重結合を含み、及び、2から16個の炭素のアルケニルの炭素鎖は、特定の実施態様において、1から5個の二重結合を含む。2から20個の炭素のアルキニルの炭素鎖は、特定の実施態様において、1から8個の三重結合を含み、及び、2から16個の炭素のアルキニルの炭素鎖は、特定の実施態様において、1から5個の三重結合を含む。典型的なアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、イソヘキシル、エテン、プロペン、ブテン、ペンテン、アセチレン、及びヘキシンを含む。本明細書において用いられる低級アルキル基、低級アルケニル基、及び低級アルキニル基とは、約1又は約2個から約6個までの炭素を有する炭素鎖をいう。本明細書において用いられる“アルキル(アルケニル、アルキニル)”とは、少なくとも1個の二重結合及び少なくとも1個の三重結合を含むアルキル基をいう。
【0028】
本明細書において用いられる“シクロアルキル”とは、飽和単環又は多環環系をいい、特定の実施態様において3から10個の炭素原子であり、他の実施態様においては3から6個の炭素原子である;シクロアルケニル及びシクロアルキニルとは、少なくとも1個の二重結合及び少なくとも1個の三重結合をそれぞれ含む単環又は多環環系をいう。シクロアルケニル基及びシクロアルキニル基は、特定の実施態様において、シクロアルケニル基に3から10個の炭素原子を含み、更なる実施態様においては、4から7個の炭素原子を含み、更なる実施態様においては、シクロアルキル基は、8から10個の炭素原子を含み得る。シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びシクロアルキニル基の環系は、融合、架橋、又は螺旋状連結様式で互いに結合し得る1、又は2以上の環から構成され得る。“シクロアルキル(シクロアルケニル、シクロアルキニル)”とは、少なくとも1個の二重結合及び少なくとも1個の三重結合を含むシクロアルキル基をいう。
【0029】
本明細書において用いられる“置換アルキル”、“置換アルケニル”、“置換アルキニル”、“置換シクロアルキル”、“置換シクロアルケニル”、及び“置換シクロアルキニル”とは、それぞれ1個以上の置換基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びシクロアルキニル基をいい、特定の実施態様においては、1から3又は4個の置換基で置換されており、該置換基は、本明細書で定義されているように、一般にQから選択される。
【0030】
本明細書において用いられる“アリール”とは、6から19個の炭素原子を含む芳香族単環基又は多環基をいう。アリール基は、限定されないが、フルオレニル、置換フルオレニル、フェニル、置換フェニル、ナフチル、及び置換ナフチル等を含む。
【0031】
本明細書において用いられる“ヘテロアリール”とは、単環又は多環芳香族環系をいい、特定の実施態様において環系の1個以上の、ある実施態様では1から3個の原子がヘテロ原子であり、すなわち、炭素以外の元素、限定されないが、窒素、酸素又は硫黄を含む、約5から約15員である。該ヘテロアリール基は、任意にベンゼン環に結合されてもよい。ヘテロアリール基は、限定されないが、フリル、イミダゾリル、ピロリジニル、ピリミジニル、テトラゾリル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N−メチルピロリル、キノリニル、及びイソキノリニルを含む。
【0032】
本明細書において用いられる“ヘテロアリールイウム(heteroarylium)”基は、1個以上のヘテロ原子において正に帯電したヘテロアリール基である。
【0033】
本明細書において用いられる“ヘテロシクリル”とは、単環又は多環の非芳香族環系をいい、ある実施態様において3から10員であり、他の実施態様においては4から7員であり、更なる実施態様では5から6員であり、1個以上の、ある実施態様において、該環系の1から3個の原子がヘテロ原子であり、すなわち、炭素以外の元素、限定されないが、窒素、酸素又は硫黄を含む。ヘテロ原子が窒素である実施態様においては、窒素は、任意にアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アシル、グアニジノで置換され、或いは、窒素は四級化されて、置換基が上述したものから選択されるアンモニウム基を形成していてもよい。
【0034】
本明細書において用いられる“置換アリール”、“置換へテロアリール”、及び“置換ヘテロシクリル”とは、それぞれ、1個以上の置換基で置換されたアリール基、ヘテロアリール基、及びヘテロシクリル基をいい、特定の実施態様においては、置換基は、1から3又は4個であって、本明細書で定義されているように、一般にQから選択される。
【0035】
本明細書において用いられる“アラルキル”とは、アルキルの水素原子のうちの1個がアリール基に置換されたアルキル基をいう。
【0036】
本明細書において用いられる“ヘテロアラルキル”とは、アルキルの水素原子のうちの1個がヘテロアリール基に置換されたアルキル基をいう。
【0037】
本明細書において用いられる“ハロ”、“ハロゲン”、又は“ハロゲン化物”とは、F、Cl、Br、又はIをいう。
【0038】
本明細書において用いられる擬ハロゲン化基又は擬ハロゲン基は、実質的にハロゲン化物と同様の挙動を示す基である。このような化合物は、ハロゲン化物と同様の方法で用いられ、同様の方法で扱われる。擬ハロゲンは、限定されないが、シアノ、チオシアネート、セレノシアナート、トリフルオロメトキシ、及びアジ化物を含む。
【0039】
本明細書において用いられる“ハロアルキル”とは、1個以上の水素原子がハロゲンに置換されたアルキル基をいう。このようなアルキル基は、限定されないが、クロロメチル、トリフルオロメチル、及び1−クロロ−2−フルオロエチルを含む。
【0040】
本明細書において用いられる“アルキニル”とは、直鎖、分岐鎖、又は環状の、特定の実施態様において直鎖又は分岐鎖の、二価脂肪族炭化水素基をいい、ある実施態様においては1から約20個の炭素原子を有し、他の実施態様では1から12個の炭素を有する。更なる実施態様において、アルキニルは低級アルキニル基を含む。アルキニル基に、任意に1個以上の酸素原子、S(=O)基及びS(=O)2基を含む硫黄原子、もしくは-NR-基及び-N+RR-基を含む置換又は非置換の窒素原子であって、窒素置換基がアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、又はCOR'[式中、R'は、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、-OY、又は-NYY'(式中、Y及びY'は、それぞれ独立して水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクリルである)である]である窒素原子を導入してもよい。アルキニル基は、限定されないが、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-(CH2)3-)、メチレンジオキシ(-O-CH2-O-)、及びエチレンジオキシ(-O-(CH2) 2-O-)を含む。用語“低級アルキニル基”とは、1から6個の炭素を有するアルキニル基をいう。特定の実施態様において、アルキニル基は、1から3個の炭素原子を含むアルキニルを含む低級アルキニル基である。
【0041】
本明細書において用いられる“アルケニレン”とは、直鎖、分岐鎖、又は環状の、ある実施態様において直鎖又は分岐鎖の、二価脂肪族炭化水素基をいい、特定の実施態様においては2から約20個の炭素原子及び少なくとも1個の二重結合を有し、他の実施態様では1から12個の炭素を有する。更なる実施態様において、アルケニレン基は低級アルケニレン基を含む。アルケニレン基に、任意に1個以上の酸素原子、硫黄原子、又は置換又は非置換の窒素原子であって、窒素置換基がアルキルである窒素原子を導入してもよい。アルケニレン基は、限定されないが、-CH=CH-CH=CH-、及び-CH=CH-CH2-を含む。用語“低級アルケニレン基”とは、2から6個の炭素を有するアルケニレン基をいう。特定の実施態様においては、アルケニレン基は、3から4個の炭素原子のアルケニレンを含む低級アルケニレン基である。
【0042】
本明細書において用いられる“アルキニレン”とは、直鎖、分岐鎖、又は環状の、特定の実施態様において直鎖又は分岐鎖の、二価脂肪族炭化水素基をいい、ある実施態様においては2から約20個の炭素原子及び少なくとも1個の三重結合を有し、他の実施態様では1から12個の炭素を有する。更なる実施態様において、アルキニレンは低級アルキニレン基を含む。アルキニレン基に、任意に1個以上の酸素原子、硫黄原子、又は置換又は非置換の窒素原子であって、窒素置換基がアルキルである窒素原子を導入してもよい。アルキニレン基は、限定されないが、-CC-CC-、-CC-、及び-CC-CH2-を含む。用語“低級アルキニレン基”とは、2から6個の炭素を有するアルキニレン基をいう。特定の実施態様において、アルキニレン基は、3から4個の炭素原子のアルキニレンを含む低級アルキニレン基である。
【0043】
本明細書において用いられる“シクロアルキニル”とは、二価の飽和単環又は多環環系をいい、特定の実施態様において3から10個の炭素原子であり、他の実施態様においては3から6個の炭素原子である;シクロアルケニレン及びシクロアルキニレンとは、少なくとも1個の二重結合及び少なくとも1個の三重結合をそれぞれ含む二価の単環又は多環環系をいう。シクロアルケニレン基及びシクロアルキニレン基は、特定の実施態様において、シクロアルケニレン基と3から10個の炭素原子を含み、特定の実施態様においては、4から7個の炭素原子及びシクロアルキニレン基を含み、特定の実施態様においては、8から10個の炭素原子を含み得る。シクロアルキニル基、シクロアルケニレン基、及びシクロアルキニレン基の環系は、結合、架橋、又は螺旋状に連結される方法で互いに結合し得る1以上の環から構成され得る。“シクロアルキレン(シクロアルケニレン、シクロアルキニレン)”とは、少なくとも1個の二重結合及び少なくとも1個の三重結合を含むシクロアルキニル基をいう。
【0044】
本明細書において用いられる“置換アルキニル”、“置換アルケニレン”、“置換アルキニレン”、“置換シクロアルキニル”、“置換シクロアルケニレン”、及び“置換シクロアルキニレン”とは、それぞれ1個以上の置換基で置換されたアルキニル基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキニル基、シクロアルケニレン基、及びシクロアルキニレン基をいい、特定の実施態様においては、置換基は、1から3又は4個であって、本明細書で定義されているように、一般にQから選択される。
【0045】
本明細書において用いられる“アリーレン”とは、単環又は多環の、特定の実施態様においては単環の、二価の芳香族基をいい、ある実施態様において、5から約20個の炭素原子及び少なくとも1個の芳香環を有し、他の実施態様では5から12個の炭素である。更なる実施態様において、アリーレンは低級アリーレン基を含む。アリーレン基は、限定されないが、1,2−、1,3−及び1,4−フェニレンを含む。用語“低級アリーレン”とは、5又は6個の炭素を有するアリーレン基をいう。
【0046】
本明細書において用いられる“ヘテロアリーレン”とは、二価の単環又は多環芳香族環系をいい、ある実施態様において環系の1個以上の、特定の実施態様においては環系の1から3個の原子がヘテロ原子であり、すなわち、炭素以外の元素、限定されないが、窒素、酸素又は硫黄を含む、約5から約15員である。
【0047】
本明細書において用いられる“ヘテロシクリレン”とは、二価の単環又は多環非芳香族環系をいい、環系の原子に1個以上の、1から3個のヘテロ原子を含む(すなわち、炭素以外の元素、限定されないが、窒素、酸素又は硫黄を含む)、特定の実施態様において3から10員であり、ある実施態様においては4から7員、他の実施態様においては5から6員である。
【0048】
本明細書において用いられる“置換アリーレン”、“置換ヘテロアリーレン”、及び“置換ヘテロシクリレン”とは、それぞれ1個以上の置換基で置換されたアリーレン基、ヘテロアリーレン基、及びヘテロシクリレン基をいい、特定の実施態様においては、置換基は、1から3又は4個であって、本明細書で定義されているように、一般にQから選択される。
【0049】
置換基の数は、特に断りがなければ(例えば、“ヒドロキシアルキル”)、1個以上の置換基が存在するとすることができる。例えば、“ヒドロキシアルキル”は、1個以上の水酸基を含み得る。
【0050】
本明細書において用いられる“被験者”は、患者などの人間を含む哺乳類等の動物である。
【0051】
本明細書において用いられる用語“治療する(treat)”、“治療すること(treating)”、及び“治療(treatment)”は、特に断りがなければ、患者が特定の病気又は障害を患っている際に、病気又は障害の程度を軽減する、もしくは病気又は障害の進行を緩和する活動を意図する。また、治療は、PKDの治療への使用等の組成物の医薬としての使用を包含する。
【0052】
本明細書において用いられる、特定の医薬組成物の投与による特定の障害の症状の改善とは、組成物の投与に起因する又は関連する、恒久的な又は一時的な、持続的な又は一過性の症状の低減をいう。
【0053】
本明細書において用いられる用語“防止する(prevent)”、“防止すること(preventing)”、及び“防止(prevention)”は、特に断りがなければ、患者が特定の病気又は障害を患う前に、病気又は障害の程度を抑制する又は軽減する活動を意図する。
【0054】
本明細書において用いられる用語“管理する(manage)”、“管理すること(managing)”、及び“管理(management)”は、特に断りがなければ、特定の病気又は障害を既に患っている患者の特定の病気又は障害の再発を防止すること、及び/又は病気又は障害を患っている患者の寛解期の持続期間を延ばすことを包含する。この用語は、病気又は障害の限界、進行及び/又は持続を制御すること、もしくは患者の病気又は障害への反応の方法を変えることを包含する。
【0055】
本明細書において用いられる用語である化合物の“治療有効量”及び“有効量”は、特に断りがなければ、病気の治療、防止及び/又は管理において治療効果を与える、治療すべき病気又は障害に関連する1以上の症状の進行を遅らす又は症状を最小化するのに十分な量を意味する。用語“治療有効量”及び“有効量”は、治療全体を改善する、症状或いは病気又は障害の発生を軽減又は抑制する、もしくは他の治療剤の治療効果を増加する量を包含する。
【0056】
本明細書において用いられる用語である化合物の“予防有効量”は、特に断りがなければ、病気又は障害、病気又は障害に関連する1以上の症状、もしくは再発を防止するのに十分な量を意味する。用語“予防有効量”は、予防全体を改善する、又は他の予防剤の予防効果を増加する量を包含する。
【0057】
用語“同時投与”及び“と組み合わせて”は、制限時間は特になく、同時に、共に、又は連続して、2つの治療剤を投与することを含む。ある実施態様においては、両方の治療剤は、同時に細胞又は患者の身体において存在する、もしくは同時に生物学的効果又は治療効果を発揮する。ある実施態様においては、2つの治療剤は、同じ組成物又はユニット型の剤形である。他の実施態様においては、2つの治療剤は、別個の組成物又は別個のユニット型の剤形である。
【0058】
(B. 治療方法)
下記式Iのcdk−2インヒビター又は医薬として許容し得るその誘導体を投与することで、嚢胞性疾患を治療、改善、又は防止する方法が提供される:
[式I]
【化2】

(式中、
R2及びR6は、それぞれ独立してハロ、擬ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、R-NH-、R-NH-NH-、NH2-R1-NH-、及びR-NH-R1-NH-から選択され;
R9は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、R-NH-、R-NH-NH-、NH2-R1-NH-、又はR-NH-R1-NH-であり;
Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクリルであり;
R1は、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキニル、ヘテロシクリレン、アリーレン、又はヘテロアリーレンであり;かつ、
R、R1、R2、R6及びR9基は、任意に1個以上の、特定の実施態様において1、2、3又は4個のQ基で置換され、Q基は、-OH、-COOH、ハロ基、擬ハロゲン基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基、及びヘテロアリール基から選択される)。
【0059】
ある実施態様において、化合物は、式I又は医薬として許容し得るその誘導体である:
(式中、
R2及びR6は、それぞれ独立してハロ、擬ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、R-NH-、R-NH-NH-、NH2-R1-NH-、及びR-NH-R1-NH-から選択され;
R9は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、R-NH-、R-NH-NH-、NH2-R1-NH-、又はR-NH-R1-NH-であり;
Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクリルであり;
R1は、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキニル、ヘテロシクリレン、アリーレン、又はヘテロアリーレンであり;かつ、
R、R1、R2、R6及びR9基は、任意に1個以上の、特定の実施態様において1、2、3又は4個のQ基で置換され、Q基は、-OH、-COOH、ハロ基、擬ハロゲン基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基、及びヘテロアリール基から選択される)。式Iの化合物は、cdkインヒビターとして、特定の実施態様においてcdk−2インヒビターとして活性を有している。特定の該化合物は、本明細書中に引用により組み込まれる米国特許第6,316,456号に開示されている。
【0060】
特定の実施態様において、Rは、アルキル、アラルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、シクロアルキル、又はヘテロシクリルである。特定の実施態様において、R1は、置換又は非置換アルキニル、アリーレン、又はシクロアルキニル基である。
【0061】
特定の実施態様において、Qは、-OH、-COOH、ハロ、擬ハロゲン、アミノ、又はアルキルである。
【0062】
特定の実施態様において、Qは、-OH、ハロ、擬ハロゲン、アミノ、又はアルキルである。
【0063】
ある実施態様において、R2はヒドロキシアルキルアミノである。ある実施態様において、R2は(1−エチル−2−ヒドロキシ)エチルアミノである。ある実施態様において、R6はアラルキルアミノである。他の実施態様において、R6はベンジルアミノである。ある実施態様において、R9は低級アルキル基である。他の実施態様において、R9はイソプロピルである。
【0064】
特定の実施態様において、R2、R6及びR9は、下の表1に示すものである:
【表1】

【0065】
特定の実施態様において、提供される方法で使用する化合物は、下記化合物から選択されるものである:
【化3】

(式中、
R3およびR4は、それぞれ独立してH、メチル、エチル、又はイソプロピルであり;R10は、H又はCOOHであり;R8は、H、ハロ、又は擬ハロゲンであり;R5は、H又はOHであり;R7は、H又はNH2であり、かつXがハロである)。
【0066】
特定の実施態様において、提供される方法で使用する化合物は、オロムシン(olomoucine)として公知の2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−メチルプリン、N9−イソプロピルオロムシンとも呼ばれる2−(2'−ヒドロキシエチルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピルプリン、プルバラノールA(purvalanol A)とも呼ばれる(2R)−2−[[6−[(3−クロロフェニル)アミノ]−9−プロパン−2−イルプリン−2−イル]アミノ]−3−メチルブタン−1−オール、及びプルバラノールBとも呼ばれる(2R)−2−[[6−[(3−クロロ−4−カルボキシフェニル)アミノ]−9−(1−メチルエチル)−9H−プリン−2−イル]アミノ]−3−メチル−1−ブタノールから選択される。特定の実施態様において、提供される方法で使用する化合物は、
【化4】

である。
【0067】
特定の実施態様において、提供される方法で使用する化合物は、2−(1−D,L−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピルプリン、非晶質6−ベンジルアミノ−2−[(2R)−2−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−イル]−9−イソプロピル−(9H)−プリン、2−(R)−[6−ベンジルアミノ−9−イソプロピル−(9H)−プリン−2−イル]−アミノ−2−フェニルエタノール、2−(R,S)−[6−ベンジルアミノ−9−イソプロピル−(9H)−プリン−2−イル]−アミノ−ペンタノール、2−(R)−[6−ベンジルアミノ−9−イソプロピル−(9H)−プリン−2−イル]−アミノ−プロパノール、2−(S)−[6−ベンジルアミノ−9−イソプロピル−(9H)−プリン−2−イル]−アミノ−プロパノール、2−(R)−(-)−[6−(3−ヨード)−ベンジルアミノ−9−イソプロピル−(9H)−プリン−2−イル]−N−ピロリジン−メタノール、及び2−(R)−(-)−[6−ベンジルアミノ−9−シクロペンチル−(9H)−プリン−2−イル]−N−ピロリジン−メタノールから選択される。
【0068】
特定の実施態様において、提供される方法で使用する合物は、ロスコビチン(roscovitine)である。他の実施態様において、提供される方法で使用する化合物は、R−ロスコビチンである。
【化5】

【0069】
特定の実施態様において、該嚢胞性疾患は、後天性腎嚢胞疾患(ARCD)、透析性嚢胞疾患、常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎(ADPKD)、常染色体劣性遺伝性多発性嚢胞腎(ARPKD)、先天性多嚢胞腎(CMK)、多嚢胞異形成腎、末期腎疾患(ESRD)、海綿腎(MSK)、ネフロン癆−髄質嚢胞腎複合症、ネフロン癆−尿毒症性腎髄質嚢胞症複合症、若年性ネフロン癆、腎髄質嚢胞症、腎細胞ガン(RCC)、結節硬化(TS)、及びフォン・ヒッペル・リンドウ症候群(VHLS)から選択される
【0070】
ある実施態様において、該嚢胞性疾患は、多発性嚢胞腎(PKD)である。特定の実施態様において、多発性嚢胞腎の兆候及び症状は、限定されないが、背中及び脇腹の下の痛み、頭痛、頻尿、尿路感染、血尿、腎臓及び他の臓器の嚢胞を含む。PKDの診断は、当業者に公知の方法で行われ、限定されないが、腎嚢胞の超音波画像、他の臓器の超音波画像、及び家族の病歴(遺伝子診断)を含む。
【0071】
特定の実施態様において、提供される方法は、パルス投与によるロスコビチンの投与を包含する。パルス投与計画は、実験的に決定される。特定の実施態様において、パルス投与計画は、薬剤を3週間連続で投与し、その後、薬剤を3週間投与しないものである。他の実施態様において、パルス投与計画は、薬剤を2週間連続で投与し、その後、薬剤を2週間投与しない、又は薬剤を1週間投与し、その後、薬剤を1週間投与しないものである。
【0072】
(C. 調製方法)
提供される化合物は、当技術分野において、公知の方法によって調製される(例えば、本明細書中に引用により組み込まれる米国特許第6,316,456号参照)。典型的な6−ベンジルアミノ−2−クロロプリンからのロスコビチンの調製のための反応スキームを下に示す。6−ベンジルアミノ−2−クロロプリンは、Hocartの文献(Phytochemistry 1991, 30, 2477-2486)の記載されているように調製される。
【化6】

【0073】
生成物は、カラムクロマトグラフィー(MeOH/CHCl3)により精製され、酢酸エチルで結晶化される。
【0074】
(D. 医薬組成物及び剤形)
提供される方法で使用する医薬組成物及び剤形は、医薬として許容し得るキャリア、及び嚢胞性疾患を治療、改善又は防止する方法で使用する量において提供される化合物を含む。ある実施態様において、このような方法は、多発性嚢胞腎の治療、防止、又は改善を含む。
【0075】
使用する提供される化合物は、経皮パッチ及びドライパウダー吸入器の他に、経口投与のための、もしくは非経口投与の無菌溶剤又は懸濁剤中にて、液剤、懸濁剤、錠剤、分散性の錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、徐放性製剤又はエリキシル剤等の適切な医薬製剤に製剤化される。ある実施態様において、製剤は、当技術分野において周知の方法及び手順を用いて調製される[例えば、Anselの文献、「医薬剤形の紹介(Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms)」(第7版)参照]。
【0076】
組成物において、有効濃度の提供される化合物は、適切な医薬キャリア又はビヒクルと混合される。組成物における有効濃度の提供される化合物は、投与における、嚢胞性疾患に関連する病気の1以上の症状を治療、防止、又は改善する量の送達に有効である。
【0077】
ある実施態様において、組成物は、単一剤形での投与のために製剤化される。組成物を処方するため、提供される化合物の重量画分は、治療される病気が軽減又は改善される有効濃度での選択されるビヒクルにおいて、溶解、懸濁、分散、又は混合される。提供される化合物の投与に適切な医薬キャリア又はビヒクルは、特定の投与方法において適切である、当業者に公知のキャリアを含む。
【0078】
また、提供される化合物は、組成物において単一の医薬的に活性のある成分として処方されてもよく、他の活性成分と組み合わせてもよい。また、組織標的化リポソーム(tissue-targeted liposomes)を含むリポソーム懸濁液は、医薬として許容し得るキャリアとして適切であり得る。これらは、当業者に公知の方法に従って調製され得る。例えば、リポソーム製剤は、米国第4,522,811号;第5,571,534号に記載のとおりに調製されてもよい。主に、多重層リポソーム(multilamellar vesicles;MLVs)等のリポソームは、卵ホスファチジルコリン及び脳ホスファチジルセリン(7:3のモル比)をフラスコの内側で乾燥させることにより形成され得る。二価のカチオンを欠くリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の提供される化合物の溶液を添加し、脂質の膜が分散するまでフラスコを振盪する。得られたベシクルは、洗浄されてカプセル化されていない化合物が除去され、遠心分離によりペレット化され、次いで、PBS中に再懸濁される。
【0079】
提供される化合物は、医薬として許容し得るキャリアにおいて、患者の治療に所望の効果を発揮するのに十分な量が含まれる。治療有効濃度は、当業者に公知のin vitro及びin vivo系における提供される化合物の試験により実験的に決定されて、人間への投与量が推定され得る。
【0080】
医薬組成物における提供される化合物の濃度は、提供される化合物の吸収率、不活性化率及び排出率、投与計画、投与される量、並びに当業者に公知の他の要因に依存する。
【0081】
提供される組成物、形状、及び剤形の型は、その用途に依存して変化する。例えば、病気の急性治療で使用される剤形は、同じ病気の慢性治療で使用される剤形より多い量の1以上の活性成分を含み得る。同様に、注射剤形は、同じ病気を治療するのに使用される経口剤形よりも少ない量の1以上の活性成分を含み得る。提供される特定の剤形を互いに異なるようにする、これらの方法及び他の方法は、当業者にとって非常に明白である[例えば、文献「レミングトンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」(第20版 Mack Publishing, Easton PA (2000))参照]。
【0082】
活性成分は、一度で投与されてもよいし、又は投与する時間をあけて幾つかの小さい剤形に分けられてもよい。正確な投与量及び治療期間は、治療すべき病気の関数であり、公知の試験プロトコールを用いて、もしくはin vivo又はin vitro試験のデータからの推定により実験的に決定され得ると理解される。また、濃度及び投与量の値は、緩和すべき病気の重大度に伴って変化し得ることに留意すべきである。特定の被験者において、特定の投与計画は、個々の要求及び人間への投与の専門的な判断又は組成物の投与の指導に従って、時間をかけて調整すべきであること、並びに、本明細書中で説明する濃度範囲は、実験的なもののみであり、提供される組成物の範囲又は慣行を限定することを意図するものではないことが、さらに理解されるべきである。
【0083】
したがって、提供される化合物の有効濃度又は量は、医薬組成物を形成する、全身の、局所の又は局部の投与のための適切な医薬キャリア又はビヒクルと混合される。提供される化合物は、嚢胞性疾患の治療、改善、又は防止における有効量が含まれる。
【0084】
組成物は、経口的、非経口的、経直腸的、局所的、及び局部的を含む適切な投与法により投与されることを意図する。提供される化合物は、錠剤、カプセル剤、丸剤、粉末剤、顆粒剤、無菌の点滴製剤又は懸濁剤及び経口液剤又は懸濁剤、並びに、適切な量の活性成分又は多剤形を含む油水エマルジョン等のユニット型の剤形で製剤化され、投与される。本明細書で用いるユニット型の剤形とは、当技術分野において個別に包装された、人間及び動物の被験対象に適した物理的に別個のユニットをいう。各々のユニット型の剤形は、必要とする医薬キャリア、ビヒクル又は希釈剤に関連する、所望の治療効果を発揮するのに十分な治療上活性のある所定量の化合物を含む。ユニット型の剤形の例は、個別に錠剤又はカプセル剤が包装された、アンプル及び注射器を含む。ユニット型の剤形は、その倍数又は分数で投与され得る。多剤形は、分離されたユニット型の剤形で投与される、単一の容器において包装された複数の同一のユニット型の剤形である。多剤形の例は、錠剤又はカプセル剤のバイアル、瓶、もしくはパイント量(pints)又はガロン量(gallons)の瓶を含む。したがって、多剤形は、包装で分離されていない複数のユニット型の剤形である。
【0085】
提供される無乳糖組成物は、当技術分野において周知の、及び、例えば、米国薬局方25-NF20[U.S. Pharmacopeia (USP) 25-NF20 (2002)]に記載された賦形剤を含む。一般に、無乳糖組成物は、医薬的に相溶性があり、かつ医薬として許容し得る量において、活性成分、バインダー/充填剤、及び潤滑剤を含む。特定の無乳糖剤形は、活性成分、微結晶セルロース、α−デンプン、及びステアリン酸マグネシウムを含む。
【0086】
また、水はある化合物の分解を促進するため、活性成分を含む無水の医薬組成物及び剤形が提供される。例えば、水(例えば、5%)の添加は、長期にわたる製剤のシェルフライフ又は安定性等の特性を決定するため、長期間の保存を促進する手段として医薬分野においては広く許容されている[例えば、Jens T. Carstensenの文献、「薬剤の安定性:原理及び実践(Drug Stability: Principles & Practice)」(第2版 Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379-80)参照]。実質的に、水及び熱は、ある化合物の分解を促進する。したがって、製剤に対する水の影響は、水分及び/又は湿度が、製剤の製造、取り扱い、包装、保存、出荷、及び使用時において、よく遭遇するため、非常に重大である。
【0087】
提供される無水の医薬組成物及び剤形は、無水の又は低水分含量の成分、及び低水分又は低湿度の状態により調製される。
【0088】
無水の医薬組成物は、調製され、無水性が維持されるように保存されるべきである。したがって、無水組成物は、適切な処方キット(formulary kits)に包含される水に暴露するのを防止する公知の材料を用いて包装されるのが好ましい。適切な包装の例は、限定されないが、密閉されているホイル、プラスチック、ユニット型の投与容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックを含む。
【0089】
(a. 経口投与のための組成物)
経口の医薬剤形は、固体、ゲル、又は液体である。固体剤形は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、及び原末である。錠剤の型は、圧縮された、チュアブルのトローチ、及び腸溶コーティング、糖コーティング、又は膜コーティングされた錠剤を含む。カプセルは、硬い、又は軟らかいゼラチンカプセルであり、顆粒及び粉末は、当業者に公知の他の成分と組み合わせて非発泡性又は発泡性の形態で提供され得る。このような剤形は、所定量の活性成分を含み、当業者に周知の薬学的な方法で調製され得る[一般に、文献「レミングトンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」(第20版 Mack Publishing, Easton PA (2000))]。
【0090】
特定の実施態様において、製剤は、固体剤形であり、好ましくは、カプセル又は錠剤である。錠剤、丸剤、カプセル、トローチ等は、以下の成分又は同様の性質を有する化合物を含む:バインダー、充填剤、希釈剤;崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、甘味剤、及び香味剤。提供される経口剤形において使用される賦形剤の例は、限定されないが、バインダー、充填剤、崩壊剤、及び潤滑剤を含む。医薬組成物及び剤形に使用するのに適切なバインダーは、限定されないが、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、又は他のデンプン、ゼラチン、アラビアゴム等の天然ゴム又は合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末トラガカントゴム、グアガム、セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、α−デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、Nos. 2208, 2906, 2910)、微結晶セルロース、及びその混合物を含む。
【0091】
微結晶セルロースの適切な形態は、限定されないが、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105[FMC Corporation社、American Viscose Division社、Avicel Sales社、Marcus Hook社(PA)から入手可能]及びその混合物の市販されている材料を含む。特定のバインダーは、微結晶セルロースとAVICEL RC-581として市販されているカルボキシルメチルセルロースナトリウムの混合物である。適切な無水の又は低水分の賦形剤又は添加剤は、AVICEL-PH-103及びStarch 1500 LMを含む。
【0092】
本明細書中で開示される医薬組成物及び剤形に使用するのに適切な充填剤の例は、限定されないが、炭酸カルシウム(例えば、顆粒又は粉末)、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート(dextrate)、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、α−デンプン、及びその混合物を含む。医薬組成物におけるバインダー又は充填剤は、医薬組成物又は剤形の約50から約99重量%存在する。
【0093】
崩壊剤を、提供される組成物において使用し、水性の環境に暴露されている場合、崩壊する錠剤を提供する。多すぎる崩壊剤を含む錠剤は、保存において崩壊し得るが、少な過ぎるものは、所望の速度で、又は所望の条件下で崩壊し得ない。したがって、あまりに多くもなく、或いは活性成分の発散を有害に変えるほど少なくない十分な量の崩壊剤は、提供される固体の経口剤形を形成するために使用すべきである。使用する崩壊剤の量は、製剤の型に基づいて変化し、当業者に容易に認識することができる。ある実施態様において、医薬組成物は、約0.5から約15重量%の崩壊剤を含み、好ましくは約1から約5重量%の崩壊剤を含む。
【0094】
提供される医薬組成物及び剤形において使用される崩壊剤は、限定されないが、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、他のデンプン、α−デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ゴム、及びその混合物を含む。
【0095】
提供される医薬組成物及び剤形において使用される潤滑剤は、限定されないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレインエチル、ラウリル酸エチル、寒天、及びその混合物を含む。例えば、追加的な潤滑剤は、サイロイド(syloid)シリカゲル[W.R. Grace社(Baltimore, MD)により製造されるAEROSIL(登録商標)200]、合成シリカの凝固されたエアロゾル[Degussa社(Piano, TX)により市販される]、CAB-O-SIL[Cabot社(Boston, MA)により販売される発熱性二酸化ケイ素製品]、及びその混合物を含む。潤滑剤が使用される場合、それらが導入される医薬組成物又は剤形の約1重量%未満の量で使用される。
【0096】
経口投与が要求される場合、提供される化合物は、腸溶性錠剤、糖衣錠剤、膜コーティング錠剤、又は複合圧縮錠剤として製剤化される組成物において提供される。腸溶性錠剤は、活性成分を胃の酸性環境から保護する。糖衣錠剤は、医薬として許容し得る物質の様々な層が適用される圧縮錠剤である。膜コーティング錠剤は、ポリマー又は他の適切なコーティングで被覆されている圧縮錠剤である。複合圧縮錠剤は、前述の医薬として許容し得る物質を利用している1以上の圧縮サイクルにより製造される圧縮錠剤である。また、着色剤を上述の剤形で使用してもよい。香味剤及び甘味剤は、圧縮錠剤、糖衣錠剤、複合圧縮錠剤、及びチュアブル錠剤において使用される。香味剤及び甘味剤は、特に、チュアブル錠剤及びトローチの形成に使用される。また、組成物は、制酸剤又は他のそのような成分と組み合わせて処方されてもよい。
【0097】
ユニット型の剤形がカプセルの場合、カプセルは、上述の型の材料に加え、脂肪油等の液体キャリアを含む。ゼラチンカプセルにおいて、例えば、プロピレンカーボネート、植物油、又はトリグリセライド中に提供される化合物を含む液剤又は懸濁剤は、好ましくはカプセルでカプセル化される。このような液剤、並びにその調製及びカプセル化は、米国特許第4,328,245号;第4,409,239号;及び第4,410,545号に開示される。
【0098】
また、活性成分を、所望の作用を損なわない他の活性物質、又は制酸剤、H2ブロッカー及び利尿剤等の所望の作用を補完する物質と混合することができる。約98重量%までのより高い濃度の活性成分が含まれ得る。
【0099】
液体の経口剤形は、水溶液、エマルジョン、懸濁液、非発泡性顆粒から再構成される溶液及び/又は懸濁液、及び発泡性顆粒から再構成される発泡性製剤を含む。例えば、水溶液は、エリキシル剤及びシロップを含む。エリキシル剤は、透明な、甘い、含水アルコール(hydroalcoholic)製剤である。エリキシル剤において使用される医薬として許容し得るキャリアは、溶媒を含む。シロップは、糖(例えば、スクロース)の濃縮水溶液であり、保存剤を含み得る。
【0100】
エマルジョンは、一方の液体が他方の液体の全体にわたって小球体の形態で分散する二相系である。エマルジョンにおいて使用される医薬として許容し得るキャリアは、非水溶液、乳化剤及び保存剤である。懸濁液は、医薬として許容し得る懸濁剤及び保存剤を使用する。液体の経口剤形に再構成されるのに、非発泡性顆粒において使用される医薬として許容し得る物質は、希釈剤、甘味剤及び湿潤剤を含む。液体の経口剤形に再構成されるのに、発泡性顆粒において使用される医薬として許容し得る物質は、有機酸及び二酸化炭素の供与源を含む。着色剤及び香味剤が、上述の剤形の全てにおいて使用される。
【0101】
溶媒は、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール及びシロップを含む。保存剤の例は、グリセリン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム及びアルコールを含む。エマルジョンにおいて利用される非水性液体の例は、鉱油及び綿実油を含む。乳化剤の例は、ゼラチン、アラビアゴム、トラガカントゴム、ベントナイト、及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート等の界面活性剤を含む。懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガカンタゴム、ビーガム、及びアラビアゴムを含む。
【0102】
希釈剤は、ラクトース及びスクロースを含む。甘味剤は、スクロース、シロップ、グリセリン、及びサッカリン等の人工甘味料を含む。湿潤剤は、モノステアリン酸プロピレングリコール、ソルビタンモノオレアート、モノラウリン酸ジエチレングリコール、及びポリオキシエチレンラウリルエーテルを含む。有機酸は、クエン酸及び酒石酸を含む。二酸化炭素の供与源は、重炭酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムを含む。着色剤は、承認・認定された水溶性FD色素及びC色素のいずれか、及びその混合物を含む。香味剤は、果実等の植物から抽出される天然香味剤、及び心地よい味覚を生じる化合物の合成混合物を含む。
【0103】
ミセル形態の活性成分を含む医薬組成物は、米国特許第6,350,458号に記載のとおりに、調製される。このような医薬組成物は、特に、口、鼻、及び口腔内の適用に効果的である。
【0104】
特定の実施態様において、製剤は、限定されないが、提供される化合物を含むもの、1,2−ジメトキシメタン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール−350−ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール−550−ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール−750−ジメチルエーテル(但し、350、550及び770とは、ポリエチレングリコールのおおよその平均分子量をいう)を含む限定されないジアルキル化されたモノアルキニルグリコール又はポリアルキニルグリコール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニゾール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、ケファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、チオジプロピオン酸及びそのエステル等の1以上の抗酸化剤、及びジメチルジチオカルバミン酸塩を含む。
【0105】
他の製剤は、限定されないが、医薬として許容し得るアセタールを含む水性アルコール溶液を含む。これらの製剤において使用されるアルコールは、プロピレングリコール及びエタノールを含む限定されない1以上の水酸基を有する医薬として許容し得る水混和性溶媒である。アセタールは、限定されないが、アセトアルデヒドジエチルアセタール等の低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタールを含む。
【0106】
(b. 徐放性剤形)
提供される活性成分は、当業者に周知である徐放手段により又は送達装置によって投与される。例は、限定されないが、それぞれ本明細書中に引用により組み込まれる、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;及び第4,008,719号、第5,674,533号、第5,059,595号、第5,591,767号、第5,120,548号、第5,073,543号、第5,639,476号、第5,354,556号、及び第5,733,566号に記載のものを含む。このような剤形は、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、ゲル、浸透膜、浸透系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェア、又は様々な割合の所望の放出プロファイルを提供するそれらの組み合わせを用いる、1以上の活性成分の緩和された又は制御された放出を提供するのに用いられる。本明細書中に含まれる当業者に公知の適切な徐放性製剤は、提供される活性成分との使用において容易に選択される。
【0107】
制御放出性医薬品の全ては、対応する非制御のもので達成される薬剤治療の改善と共通の目的を有する。理想的には、治療における最適に設計された制御放出性製剤の使用は、最小時で病気を治療又は制御するのに最小限の薬剤物質により特徴づけられる。制御放出性製剤の利点は、薬剤の活性の拡大、投与頻度の低減、及び患者コンプライアンスの増加を含む。また、制御放出性製剤を用いて、薬剤の血中濃度等の作用の発現時期又は他の特性に影響を与えることができ、かつ副作用(例えば、悪影響)の発生に影響を及ぼすことができる。
【0108】
制御放出性製剤の多くは、所望の治療効果を迅速に発揮する量の薬剤(活性成分)を初期に放出する、及び、長期間にわたる治療効果又は予防効果の薬剤量を持続するための量の薬剤を段階的かつ連続的に放出するように設計される。このような体内での薬剤の一定の量を持続するために、薬剤は、身体から代謝及び排出される薬剤の量を交換する速度で剤形から放出されなければならない。活性成分の制御放出は、pH、温度、酵素、水、もしくは他の生理的条件又は生理学的化合物を含む限定されない様々な条件により促進される。
【0109】
特定の実施態様において、薬剤は、静脈内輸液、移植可能な浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、又は他の投与方法を用いて投与され得る。ある実施態様において、ポンプが使用され得る[Seftonの文献、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng 14:201 (1987);Buchwaldらの文献、Surgery 88:507 (1980);Saudekらの文献、N. Engl. J. Med. 321: 574 (1989)参照]。他の実施態様においては、高分子材料が使用される。また、他の実施態様において、制御放出系を、治療標的の近く、すなわち、全身の一部分にのみを要求することができる[Goodsonの文献、「制御放出の医学的応用(Medical Applications of Controlled Release)」(vol. 2, pp. 115-138 (1984))参照]。
【0110】
好ましくは、制御放出装置は、不適切な免疫性活性化が発生している部位又は腫瘍の部位付近の対象物に導入される。他の制御放出系は、Langerによる総説で議論されている[Science 249:1527-1533 (1990)]。活性成分は、固体内部マトリクス[例えば、外側を高分子膜(例えば、体液において不溶である、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/酢酸エチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルと塩化ビニルの共重合体、塩化ビニリデン、エチレン及びポリエチレン、アイオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコール三量体、及び、エチレン/ビニルオキシエタノール共重合体)で囲まれる、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化又は非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、プリブタジエン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコンカーボネート共重合体、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルのヒドロゲル等の親水性高分子、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、及び、架橋部分的加水分解ポリ酢酸ビニル)]に分散される。活性成分は、その後、放出速度の制御段階において、高分子膜の外側で拡散する。このような非経口の組成物に含まれる活性成分の割合は、対象物への必要性と共に、その特性に非常に依存している。
【0111】
(c. 非経口投与)
また、一般に、皮下注射、筋注又は静注により特徴づけられる非経口投与が、本明細書において意図される。注射物質は、液体溶液又は懸濁液、注射前の液体における溶液又は懸濁液に適した固体形態、もしくはエマルジョンとして、従来の方法で調製される。例えば、適切な賦形剤は、水、塩類溶液、デキストロース、グリセリン、又はエタノールである。また、必要に応じて、投与される医薬組成物は、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解促進剤、及び、例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウラート、トリエタノールアミンオレエート及びシクロデキストリン等の他の薬剤等の微量の非毒性補助物質も含み得る。
【0112】
組成物の非経口投与は、静脈内投与、皮下投与、及び筋肉内投与を含む。非経口投与における調製は、注射できる状態の無菌溶液、使用直前に溶媒と組み合わされる状態の、凍結乾燥粉末等の無菌乾燥可溶性物、皮下投与錠剤(hypodermic tablets)、注射できる状態の無菌懸濁液、使用直前にビヒクルと組み合わされる状態の、無菌乾燥不溶性物、及び無菌エマルジョンを含む。溶媒は、水系又は非水系であり得る。
【0113】
静注で投与される場合、適切なキャリアは、生理食塩液又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、グルコース、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等の増粘剤及び安定化剤を含む溶液、及び、その混合物を含む。
【0114】
非経口製剤において使用される医薬として許容し得るキャリアは、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝液、抗酸化剤、局部麻酔剤、懸濁剤及び分散剤、乳化剤、封鎖剤、キレート剤、及び他の医薬として許容し得る物質を含む。
【0115】
水性ビヒクルの例は、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、等張ブドウ糖注射液、注射用滅菌水、ブドウ糖、及び乳酸リンゲル液を含む。非水性の非経口ビヒクルは、植物由来の不揮発性油、綿実油、トウモロコシ油、胡麻油及び落花生油を含む。静菌濃度又は静真菌濃度の抗菌剤は、フェノール又はクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルp−オキシ安息香酸エステル及びプロピルp−オキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムを含む多数の投与容器に包装される非経口製剤に添加されなければならない。等張剤は、塩化ナトリウム及びデキストロースを含む。緩衝液は、リン酸塩及びクエン酸塩を含む。抗酸化剤は、硫化水素ナトリウムを含む。局部麻酔剤は、プロカイン塩酸塩を含む。懸濁剤及び分散剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンを含む。乳化剤は、ポリソルベート80[TWEEN(登録商標)80]を含む。金属イオンの封鎖剤又はキレート剤は、EDTAを含む。また、医薬キャリアは、エチルアルコール、水混和性ビヒクル及び水酸化ナトリウムのためのポリエチレングリコール及びプロピレングリコール、及び、pH調整のための塩酸、クエン酸、又は乳酸を含む。
【0116】
提供される化合物の濃度は、注射が所望の薬理学的効果を生じる有効量を提供できるように調整される。正確な投与量は、当技術分野において公知である、患者又は動物の年齢、重量及び状態に依存する。
【0117】
ユニット型の非経口投与製剤は、アンプル、バイアル、又は針を有する注射器で包装される。非経口投与における全ての製剤は、当技術分野において公知及び慣例であるとおりに、滅菌しなければならない。
【0118】
実例として、活性成分を含む無菌水溶液の静脈内注入又は動脈内注入は、投与の効果的な方法である。他の例は、所望の薬理学的効果を生じるのに必要である注入される活性物質を含む無菌水溶液又は油性溶液である。
【0119】
注射物質は、局部投与及び全身投与のために設計される。ある実施態様において、治療効果投与量は、治療する組織に対して、提供される化合物の少なくとも約0.1%w/wから約90%w/w以上、好ましくは、1%超の濃度を含むように処方される。活性成分は、一度で投与されてもよいし、又は投与する時間をあけて幾つかの小さい剤形に分けられてもよい。正確な投与量及び治療期間は、治療すべき病気の関数であり、公知の試験プロトコールを用いて、もしくはin vivo又はin vitro試験のデータからの推定により実験的に決定され得ると理解される。また、濃度及び投与量の値は、治療する個体の年齢に伴って変化し得ることに留意すべきである。特定の被験者において、特定の投与計画は、個々の要求及び人間への投与の専門的な判断又は製剤の投与の指導に従って、時間をかけて調整すべきであること、並びに、本明細書中で説明する濃度範囲は、実験的なもののみであり、本特許請求の範囲に係る製剤の範囲又は慣行を限定することを意図するものでないことが、さらに理解されるべきである。
【0120】
提供される化合物は、微粉化された形態又は他の安定な形態で懸濁され、又は、より溶解可能な活性産物を生じる又はプロドラッグを生じるように、誘導化され得る。生じる混合物の形態は、意図される投与方法及び選択されるキャリア又はビヒクルにおいて提供される化合物の溶解性を含む多くの要因に依存する。有効濃度は、病気の症状を改善するのに十分であり、実験的に決定され得る。
【0121】
(d. 凍結乾燥粉末)
また、凍結乾燥粉末も興味深いものであり、溶液、エマルジョン又は他の混合物として、投与のために再構成される。また、それらは、固体又はゲルとして再構成され又は処方されてもよい。
【0122】
無菌凍結乾燥粉末は、活性成分又は医薬として許容し得るその誘導体を適切な溶媒中で溶解することで調製される。溶媒は、粉末又は粉末から調製された再構成された溶液の安定性又は他の薬理学的成分を改善する賦形剤を含み得る。使用され得る賦形剤は、限定されないが、デキストロース、ソルビトール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース、又は他の適切な薬剤を含む。また、溶媒は、クエン酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、又は、中性pHの当業者に公知の他の緩衝液等の緩衝液を含む。その後、当業者に公知の標準条件下における凍結乾燥へ続く溶液の除菌は、所望の剤形を提供する。一般に、得られる溶液は、凍結乾燥のためのバイアルに分配される。各々のバイアルは、提供される化合物の単一剤型(10〜500mg、好ましくは100〜300mg)、又は多剤形を含む。凍結乾燥粉末は、約4℃から室温等の適切な条件下で保存される。
【0123】
注射用水でのこの凍結乾燥粉末の再構成は、非経口投与に使用する製剤を提供する。再構成において、1mLの滅菌水又は他の適切なキャリア当たり、約1〜50mg、好ましくは5〜35mg、より好ましくは約9〜30mgの凍結乾燥粉末が添加される。正確な量は、選択される化合物に依存する。このような量は、実験的に決定される。
【0124】
(e. 局所投与)
局所混合物は、本明細書の局部投与及び全身投与における記載のとおりに調製される。得られる混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョン等であり、クリーム、ゲル、軟膏、エマルジョン、溶液、エリキシル、ローション、懸濁液、チンキ、ペースト、泡、エアロゾル、洗浄液、スプレー、坐薬、包帯、皮膚パッチ、又は他の局所投与に適切な製剤として製剤化され得る。
【0125】
提供される化合物は、ゲル、クリーム又はローションの形態で、皮膚及び粘膜への局所の適用等の局部又は局所の適用のために処方され得る。局所投与は、経皮的送達及び粘膜投与又は吸入療法のために意図される。
【0126】
(f. 他の投与経路のための組成物)
局所投与、経皮パッチ、及び直腸投与等の他の投与方法は、本明細書において意図される。例えば、直腸投与の剤形は、直腸坐薬、及び、全身的作用のためのカプセル及び錠剤である。本明細書中で用いる直腸坐薬は、1以上の薬理学的活性成分又は治療効果を有する成分を放出する体温で溶解又は軟化する、直腸への挿入のための中実体を意味する。直腸坐薬において使用される医薬として許容し得る物質は、塩基又はビヒクル、及び融点を上げる薬剤である。塩基の例は、カカオバター(カカオ脂)、グリセリン−ゼラチン、カーボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、及び、脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの適切な混合物を含む。様々な塩基の組み合わせが使用されてもよい。坐薬の融点を上げる薬剤は、鯨蝋及び蝋を含む。直腸坐薬は、圧縮法又は成形により調製され得る。特定の実施態様において、直腸坐薬の重量は、約2から3gである。
【0127】
直腸投与の錠剤及びカプセルは、経口投与の製剤と同様の医薬として許容し得る物質を用い、経口投与の製剤と同様の方法により製造される。
【0128】
(g. 製品)
提供される化合物は、包装材料、及び化合物が嚢胞性疾患の治療、改善又は防止のために使用されることを示すラベルを含む製品として包装されてもよい。提供される製品は、包装材料を含む。医薬品を包装するのに用いる包装材料は、当業者に周知である(米国特許第5,323,907号、第5,052,558号、及び第5,033,352号参照)。医薬品の包装材料は、限定されないが、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、コンテナ、注射器、瓶、及び、選択される製剤及び意図される投与法及び治療法に適切な包装材料を含む。提供される化合物の製剤の広い配置が本明細書において意図される。
【0129】
(G. 化合物の活性の評価)
標準の生理学的、薬理学的及び生化学的手順は、利用可能であり、提供される方法の化合物の評価を試験する当業者に公知のものである。このような手順は、限定されないが、in vitroでの嚢胞形成解析、及び2つの異なるPKDマウスモデル[jckマウス(緩徐進行性)及びcpkマウス(侵攻性)]を用いたin vivoでの有効性の検討を含む。jckマウスは、生後3日で局所的な嚢胞を発現し、生後26日までに嚢胞性疾患が認められ、そして、生後50日までに腎臓の大部分に嚢胞が形成される。jckマウスの典型的な治療計画は、生後26日から50日又は64日において毎日、提供される化合物を腹腔内(IP)投与することを含む。検討後、マウスは解剖され、以下の評価項目により評価がなされる。
1.腎臓と体重の比
2.組織構造:嚢胞の割合が、嚢胞領域と全断面積の比としてMetamorph(登録商標)で定量的に測定され、嚢胞の体積(体重当たりの%)の算定に用いられる。
3.腎機能:血清血中尿素窒素(BUN)及びクレアチニン
【0130】
これらの評価項目を決定する方法は、当業者に公知である。典型的な方法は、本明細書中に記載されている。
【0131】
PKDの治療における化合物の効果は、腎臓/体重の比の減少、嚢胞の体積の減少及び/又はBUN及びクレアチニンの減少で示される。
【0132】
前述の詳細な説明及び実施例が本明細書において説明されたものだけでなく、そして、本明細書の記載事項の範囲に限定されないことが理解される。開示された実施態様の様々な変更及び改良は、当業者には明らかである。このような変更及び改良は、限定されないが、化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、製剤及び/又は本明細書において提供される使用方法に関する事項を包含し、その精神と範囲から逸脱することはない。本明細書において参照される米国特許及び公報は、本明細書中に引用により組み込まれる。
【実施例】
【0133】
PKD jck及びcpkマウスモデル(C57BL/6J jck/+マウス、及びC57BL/6J cpk/+マウス)は、Jackson Laboratory社(Bar Harbor, ME, USA)から入手し、Biological Research Models社(B.R.M., Worcester, MA, USA)及びGenzyme社(Framingham, MA, USA)で飼育された繁殖コロニーを疾患の定着に用いた。R−ロスコビチン、(6−ベンジルアミノ−2−[R−1−エチル−2−ヒドロキシエチルアミノ]−9−イソプロピルプリン)は、A.G. Scientific社(San Diego, CA)より入手した。嚢胞性のjck/jckマウスは、カスタムジェノタイピング解析により同定され、対照群と処置群に分けられ、特定の濃度のビヒクル又は薬剤を腹腔内注射(IP)された。実施例において、以下、ロスコビチンとはR−ロスコビチンをいう。
【0134】
(実施例1)
生後26日のjck/jckマウスに、3週間又は5週間、ロスコビチン(50又は150mg/kg)或いはビヒクル[緩衡生理食塩水中5%エタノール、5%クレモフォール(Cremophor)、pH 7.2]を与えた。パルス治療は、IP注射を生後26日に開始してから3週間行った後に、2週間治療をしない、又は、1週間治療することと1週間治療をしないことを交互に全5週間行うことにより、150mg/kgで行った。
【0135】
Cpk動物(cpk/+ヘテロ接合種からの多産仔)は、生後7日から2週間毎日ロスコビチン(100mg/kg)或いはビヒクルをIP注射された。
【0136】
マウスは、CO2窒息により安楽死させ、腎臓に、タンパク抽出(スナップフローズン;snap frozen)、及び組織構造検査[4%PFA緩衝液(pH 7.2)で固定]を行った。血液は、心臓穿刺により回収され、血清尿素窒素濃度及びクレアチニン濃度は、VetACE analyzer[Alfa Wasserman社(West Coldwell, NJ)製]を用いて測定された。
【0137】
(嚢胞の形態の解析)
パラフィンに埋没された腎臓は切断されて、縦方向に4マイクロメートルの断面が得られた。断片は、Tissue Tek(登録商標)2000 processor[Sakura-Finetek社(Torrance, CA)製]でヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色された。スライドは、ACIS(登録商標)system[Clarient社(San Juan Capistrano, CA)製]でデジタル化され、MetaMorph Imaging Series(登録商標)software[Molecular Devices Corp社(Downingtown, PA)製]で処理された。MetaMorphで作成されたデータを確認するために、腎臓断片もScion Image software[Scion Corp社(Frederick, MD)製]で評価された。MetaMorph及びScion softwareで作成されたデータは、0.5%未満の変動であった。嚢胞形成の程度は、各々のマウスにおける縦方向及び横方向の断片から定量化された。5倍の平均通常細管径(average normal tubule diameter)を超える径を有する拡張は、嚢胞とされた。嚢胞の割合は、既報のTorresらの文献、「常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎のオーソロガスデルの効果的な治療(Effective treatment of an orthologous model of autosomal dominant polycystic kidney disease)」[Nat. Med. (2004)]に記載のとおりに、嚢胞体積(体重当たりの%)の算定を用い、嚢胞領域と全断面積の比として測定された。
【0138】
表2及び表2a(jckマウスモデル)で表されるデータから、ロスコビチンは、体重減少、死亡又は毒性なしに、かなり受け入れられた。ロスコビチン処置群は、用量依存型の、腎臓−体重比と嚢胞体積の減少を示した。BUN(血中尿素窒素)は、50mg/kgのロスコビチン処置グループにおいて減少し、150mg/kgのロスコビチンで正常化した。また、ロスコビチンは、jck/jck雌のPKDを抑制し、疾患は、雄より深刻ではなかった。
【0139】
150mg/kgのロスコビチンが3週間毎日jck/jck雄に投与された後2週間処置されない、パルス治療の検討においては、長く持続する抗嚢胞効果がBUNの正常化レベルでみられた。薬剤が、全5週間において、1週間毎日投与された後1週間処置されない、異なる計画においては、嚢胞形成の減少がみられた。したがって、特定の実施態様において、ロスコビチンは、薬剤使用の中止後で長く持続する治療効果を示し、間欠投与でも効果があった。
【0140】
表3は、cpkモデルのデータである。該データから、100mg/kgのロスコビチンで7から21日間毎日cpkマウスの処置を行うことにより、PKDが減少した。
【表2】

【表3】

【0141】
(免疫組織化学的及び免疫蛍光検査)
健全な、及びADPKDホルマリン固定パラフィンに埋没された腎臓検体を、Cytomix LLC社(Lexington, MA)より入手した。4マイクロメートルの腎臓断片は、プロテイナーゼKで処理、又は脱マスキング抗原用の圧力釜にてCitra Antigen Retrieval solution[Biogenex社(San Ramon, CA)製]中で沸騰させた。PCNA染色は、M.O.M. kit[Vector Laboratories社(Burlingame, CA)製]の製造業者のプロトコールに記載のとおりに行った。TUNEL染色は、ApopTag Apoptosis Detection Kit[Chemicon社(Temecula, CA)製]の製造業者のプロトコールに従い行った。レクチン[Dolichos Biflorus Agglutinin(DBA)、Vector Laboratories社(Burlingame, CA)製]を、1:50の希釈で用いた。抗カルビンジン抗体[Sigma-Aldrich社(St. Louis, MO)製]、及び抗タム−ホースフォール・グリコプロテイン抗体[US Biological社(Swampscott, MA)製]を、製造業者の推薦により用いた。Cy3又はFITCに結合される二次抗体(Sigma-Aldrich社製)は、1:100の希釈で用いた。染色は、2O倍の対物レンズ[Olympus-America社(Melville, NY)製]を有するOlympus IX70顕微鏡で視覚化された。像は、QED Camera Plug-In imaging system[QED imaging社(Pittsburgh, PA)製]で記録された。
【0142】
人間のADPKD嚢胞裏装上皮における高い増殖率がPCNA免疫染色を用いて確認された。同様に、jck嚢胞において、高いPCNA陽性細胞数が認められた。ロスコビチン処置されたjck腎臓において、PCNA陽性細胞の質的減少が観察された。また、ロスコビチン処置も、TUNEL陽性細胞の数を減少させた。
【0143】
(タンパク質の精製及びウェスタンブロット分析)
腎臓は、CompleteTMプロテアーゼインヒビター混合物[Roche Diagnostic GmbH社(Mannheim, Germany)製]を添加した、RIPA緩衝液(pH 8.0の10mM HEPES、100mM NaCl、1% Triton X-100、0.1% SDS、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1mM DTT、1mM EDTA、1mM NaF、1mM Na3VO4)で均一化にされた。30μgのタンパク質試料は、4〜12% SDS/アクリルアミドゲル[Invitrogen社(Carlsbad, CA)製]で分離された。ゲルは、トランスファーバッファ(192mM グリシン、25mM トリス、10%メタノール、pH 8.3)に浸漬し、Immobilone-P membrane[Millipore Corporation社(Bedford, MA)製]に移した。膜は、メタノールで再水和され、ブロッキングバッファ(PBS中5%粉乳又は3% BSA)で30分間インキュベートされた。膜は、4℃で、RNApolII-p,p35/p25[Abeam社(Cambridge, MA)製];Rb-p,cycDl,cycDl-p,ERK2,ERKl/2-p[Cell Signaling社(Danvers, MA)製];Rb2,RBBP,cycD3,caspase-2,caspase-3,ApaFl,Bcl-2,BcI-XL,BAD[BD Biosciences社(San Jose, CA)製];CDK7,CDK9,PCNA,GAPDH[US Biologicals社(Swampscott, MA)製];cycD2[BioSource International社(Camarillo, CA)製]に対する一次抗体と共に一晩インキュベートされ、TBSTで洗浄され、製造業者に推薦されたHRP標識二次抗体と共にインキュベートされた。免疫反応性タンパク質は、増幅化学発光検出システム[enhanced chemi-luminescence;Amersham Pharmacia Biotech社(Little Chalfont Buckinghamshire, England)製]を用いて検出された。
【0144】
得られたデータは、Rb-p型が嚢胞腎において増加することを示した。ロスコビチンによる治療は、Rb3の脱リン酸化によるものであり、このことから、効果的なGl/S細胞周期阻害が示唆された。また、ロスコビチン治療は、タンパク質Rb2及びRBB2に関連するRb量を正常化した。サイクリンDl量は、嚢胞腎で実質的に増加しなかったが、そのリン酸化(Thr-286)は低下した。ロスコビチンは、サイクリンDlのリン酸化レベルを正常化した。サイクリンD2及びD3の発現レベルは、嚢胞腎で増加し、ロスコビチンにより下方制御された。また、ロスコビチンは、ERK1/2の活性化のレベルを低下することによりサイクリンDlを制御することで知られる、Ras-RafからMEK-ERKsへのシグナル伝達に影響を及ぼした。また、ロスコビチンは、RNAポリメラーゼII(RNA pol II)のC末端ドメインをリン酸化することにより転写を制御するCDK7及びCDK9を抑制した。嚢胞腎で検出されたCDK7及びCDK9量の適度な増加は、RNA pol IIの大幅に増加したリン酸化によるものであった。これに対して、ロスコビチンにより処置された試料は、ほとんどがWT対照と区別され、このことは、RNA pol IIのリン酸化のレベルが低下されたことを示すものであった。したがって、ロスコビチンは、細胞周期停止及び転写阻害により嚢胞形成を減衰した。
【0145】
(実施例2: in vitroにおける嚢胞形成の阻害)
in vitroにおけるMDCK嚢胞形成の標準解析が、既報のとおりに利用された[Bukanov, N. O.らの文献、「機能性ポリシスチン−1発現は、in vitroにおいて上皮形態形成時に発生的に制御される:嚢胞形成時における膜への局在の下方制御及び減少(Functional polycystin-1 expression is developmentally regulated during epithelial morphogenesis in vitro: downregulation and loss of membrane localization during cystogenesis.)」(Hum. Molec. Genetics 11, 923-936 (2002))、及び、Li, U.らの文献、「細胞増殖、Cl分泌、及び腎嚢胞の成長の関係:CFTRインヒビターを用いた検討(The relationship between cell proliferation, Cl- secretion, and renal cyst growth: a study using CFTR inhibitors.)」(Kidney Int 66, 1926-38 (2004))参照]。主に、MDCK腎臓上皮細胞[ATCC (Rockville, Maryland)より入手]は、MEM/10% FBS中で成長させた。MDCK嚢胞は、嚢胞内腔が完全に形成されるまで、4日間、96穴プレートで3DコラーゲンIゲル[BD Biosciences社(Bedford, MA)製]において培養された。R−ロスコビチン、S−ロスコビチン及びN6−メチル−(R)−ロスコビチンの濃度を増加して、これを嚢胞の培地に添加し、96時間培養した。各々の濃度において、4回解析された。嚢胞の像は、2O倍の対物レンズを有するZeiss Axiovert 25倒立顕微鏡で得られた。嚢胞成長の阻害は、Alamar Blue assay[BioSource社(Camarillo、CA)製]を用いて定量化された。蛍光は、マイクロプレートリーダー[Spectra Max Gemini;Molecular Devices社(Sunnyvale, CA)製]で測定された。
【0146】
R−ロスコビチン(R-Rosc)及びS−ロスコビチン(S-Rosc)は、特に、約20μMおよび約30μMでそれぞれ、IC5Oとなって嚢胞成長を抑制したが、N6−メチル−(R)−ロスコビチン(N6-met-R-Rosc)は、十分な阻害を示さなかった(190μMでIC5O)。
【0147】
改良は当業者に明らかであり、本発明は、特許請求の範囲の範囲のみにより限定されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iの化合物又は医薬として許容し得るその誘導体の治療有効量を投与することを含む、嚢胞性疾患の1以上の症状を治療又は改善する方法:
【化1】

(式中、
R2及びR6は、それぞれ独立してハロ、擬ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、R-NH-、R-NH-NH-、NH2-R1-NH-、及びR-NH-R1-NH-から選択され;
R9は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、R-NH-、R-NH-NH-、NH2-R1-NH-、又はR-NH-R1-NH-であり;
Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクリルであり;
R1は、アルキニル、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキニル、ヘテロシクリレン、アリーレン、又はヘテロアリーレンであり;かつ、
R、R1、R2、R6及びR9基は、任意に1、2、3又は4個のQ基で置換され、それぞれ独立して-OH、-COOH、ハロ、擬ハロゲン、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールから選択される)。
【請求項2】
Rが、アルキル、アラルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、シクロアルキル、又はヘテロシクリルである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
R1が、アルキニル、アリーレン、又はシクロアルキニルである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
Qが、-OH、ハロ、擬ハロゲン、アミノ、又はアルキルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
R2がヒドロキシアルキルアミノである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
R2が(1−エチル−2−ヒドロキシ)エチルアミノである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
R6がアラルキルアミノである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
R6がベンジルアミノである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
R9がイソプロピルである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が6−ベンジルアミノ−2−[(1−エチル−2−ヒドロキシ)エチルアミノ]−9−イソプロピルプリンである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が6−ベンジルアミノ−2−(R)−[(1−エチル−2−ヒドロキシ)エチルアミノ]−9−イソプロピルプリンである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物が、下記化合物から選択される、請求項1記載の方法:
【化2】

(式中、
R3およびR4は、それぞれ独立してH、メチル、エチル、又はイソプロピルであり;
R10は、H又はCOOHであり;
R8は、H、ハロ、又は擬ハロゲンであり;
R5は、H又はOHであり;
R7は、H又はNH2であり、かつXがハロである)。
【請求項13】
前記化合物が、2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−メチルプリン、2−(2'−ヒドロキシエチルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピルプリン、(2R)−2−[[6−[(3−クロロフェニル)アミノ]−9−プロパン−2−イルプリン−2−イル]アミノ]−3−メチルブタン−1−オール、及び(2R)−2−[[6−[(3−クロロ−4−カルボキシフェニル)アミノ]−9−(1−メチルエチル)−9H−プリン−2−イル]アミノ]−3−メチル−1−ブタノールから選択される、請求項1又は12記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、下記の化合物である、請求項1又は12記載の方法:
【化3】


【請求項15】
前記化合物が、2−(1−D,L−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピルプリン、非晶質6−ベンジルアミノ−2−[(2R)−2−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−イル]−9−イソプロピル−(9H)−プリン、2−(R)−[6−ベンジルアミノ−9−イソプロピル−(9H)−プリン−2−イル]−アミノ−2−フェニルエタノール、2−(R,S)−[6−ベンジルアミノ−9−イソプロピル−(9H)−プリン−2−イル]−アミノ−ペンタノール、2−(R)−[6−ベンジルアミノ−9−イソプロピル−(9H)−プリン−2−イル]−アミノ−プロパノール、2−(S)−[6−ベンジルアミノ−9−イソプロピル−(9H)−プリン−2−イル]−アミノ−プロパノール、2−(R)−(-)−[6−(3−ヨード)−ベンジルアミノ−9−イソプロピル−(9H)−プリン−2−イル]−N−ピロリジン−メタノール、及び2−(R)−(-)−[6−ベンジルアミノ−9−シクロペンチル−(9H)−プリン−2−イル]−N−ピロリジン−メタノールから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、単一剤形で投与される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が、パルス投与計画において投与される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記パルス投与計画は、前記化合物を3週間連続で被験者に投与し、その後、前記化合物を3週間被験者に投与しないことを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記パルス投与計画は、前記化合物を2週間連続で被験者に投与し、その後、前記化合物を2週間被験者に投与しないことを含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記パルス投与計画は、前記化合物を10日間連続で被験者に投与し、その後、前記化合物を10日間被験者に投与しないことを含む、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記パルス投与計画は、前記化合物を1週間被験者に投与し、その後、前記化合物を1週間被験者に投与しないことを含む、請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記嚢胞性疾患が、後天性腎嚢胞疾患、透析性嚢胞疾患、常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎、常染色体劣性遺伝性多発性嚢胞腎、先天性多嚢胞腎、多嚢胞異形成腎、末期腎疾患、海綿腎(MSK)、ネフロン癆−髄質嚢胞腎複合症、ネフロン癆−尿毒症性腎髄質嚢胞症複合症、若年性ネフロン癆、腎髄質嚢胞症、腎細胞ガン、結節硬化、及びフォン・ヒッペル・リンドウ症候群から選択される、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記嚢胞性疾患が、多発性嚢胞腎である、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物が、経口投与される、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
包装材料及び該包装材料の内部に収容される下記式Iの化合物を含む製品であって、
前記包装材料は、前記化合物が嚢胞性疾患の治療のために使用されることを示すラベルを含み、
該化合物は、下記式Iの化合物又は医薬として許容し得るその誘導体である、
前記製品:
【化4】

(式中、
R2及びR6は、それぞれ独立してハロ、擬ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、R-NH-、R-NH-NH-、NH2-R1-NH-、及びR-NH-R1-NH-から選択され;
R9は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、R-NH-、R-NH-NH-、NH2-R1-NH-、又はR-NH-R1-NH-であり;
Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクリルであり;
R1は、アルキニル、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキニル、ヘテロシクリレン、アリーレン、又はヘテロアリーレンであり;かつ、
R、R1、R2、R6及びR9基は、任意に1、2、3又は4個のQ基で置換され、それぞれ独立して-OH、-COOH、ハロ、擬ハロゲン、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールから選択される)。

【公表番号】特表2010−506938(P2010−506938A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533402(P2009−533402)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/022389
【国際公開番号】WO2008/051502
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(509110611)ゲンズイメ コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】