説明

四方切換弁

【課題】弁本体内部を流れる高圧冷媒等の圧力損失を小さく抑えることが可能な四方切換弁を提供する。
【解決手段】密閉空間を有する弁本体2と、弁本体の一側部に連結され、密閉空間と連通する第1導管4と、弁本体の他側部に連結され、密閉空間と連通する第2導管6と、第2導管6を挟んで両側に各々隣接して配置され、密閉空間と連通し、第2導管6と同一の内径を有する第3及び第4導管10、11と、弁本体2内に第2乃至第4導管の各々に連通する開口部を有する弁座15と、弁座15に摺動可能に配置された弁体14とを備え、弁体14を一方向又は他方向に摺動させることにより、第1導管と第3導管との間、又は第1導管と第4導管との間の連通状態を選択的に切り換える四方切換弁1において、弁本体2の第1導管4の接続口5の周辺部と、弁体14の外周面14aとの間の最小断面積を、第1導管4第に接続される管の内径断面積と同一又はそれ以上とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機器、空調機器等の可逆冷凍サイクルを利用した機器等に用いられる四方切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクルシステムの冷媒通路に四方切換弁を配置して冷媒通路を切り換え、室内の冷房と暖房とを切り換えることが行なわれている。このような四方切換弁として、特許文献1には、図4に示すような四方切換弁が提案されている。
【0003】
この四方切換弁61は、密閉中空のシリンダ状の弁本体62に、圧縮機63の吐出管80に連結される導管64の接続口65と、圧縮機63の吸入管66に連通する接続口67を設け、この接続口67を挟んで両側に、熱交換機68、69への導管70、71に連通する2つの接続口72、73を配置し、椀状の弁体74を弁座75に摺動自在に設け、この弁体74を摺動させ、中央の接続口67と両側の接続口72、73のいずれか一方との間を選択的に接続する。尚、圧縮機63の吐出管80は、導管64の段付部64aで位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−151251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の四方切換弁61は、図5に示すように、導管64の接続口65の周辺部と、弁体74の外周面74aとの隙間aが狭隘であるため、同図の矢印方向に高圧冷媒が流れる際の圧力損失が大きく、冷媒流量の低下を招き、冷凍ユニット等の効率の低下に繋がるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の四方切換弁における問題点に鑑みてなされたものであって、弁本体の内部を流れる高圧冷媒等の圧力損失を小さく抑えることが可能な四方切換弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、密閉空間を有する弁本体と、該弁本体の一側部に連結され、前記密閉空間と連通する第1導管と、前記弁本体の他側部に連結され、前記密閉空間と連通する第2導管と、該第2導管を挟んで両側に各々隣接して配置され、前記密閉空間と連通するとともに、前記第2導管と同一の内径を有する第3及び第4導管と、前記弁本体内において前記第2乃至第4導管の各々に連通する開口部を有する弁座と、該弁座に摺動可能に配置された弁体とを備え、該弁体を一方向又は他方向に摺動させることにより、前記第1導管と前記第3導管との間、又は前記第1導管と前記第4導管との間の連通状態が選択的に切り換えられる四方切換弁において、前記弁本体の前記第1導管の接続口の周辺部と、前記弁体の外周面との間の最小断面積を、前記第1導管に接続される管の内径断面積と同一又はそれ以上としたことを特徴とする。
【0008】
そして、本発明によれば、第1導管の接続口の周辺部と、弁体の外周面との間の最小断面積を、第1導管に接続される管の内径断面積と同一又はそれ以上としたため、第1導管の接続口の周辺部と、弁体の外周面との間を流れる流体の圧力損失を小さくすることができ、この四方切換弁を冷凍ユニット等に用いた場合に、冷媒流量の低下を招くことなく、冷凍ユニット等の効率の低下を回避することができる。
【0009】
上記四方切換弁において、前記第1導管を、前記第2導管と同一の軸線を有するとともに、該第1導管に接続される管の外径よりも大きな内径を有するように構成することができる。これにより、上述のように、第1導管の接続口の周辺部と、弁体の外周面との間の最小断面積を、第1導管に接続される管の内径断面積と同一又はそれ以上とすることが可能となる。
【0010】
また、該四方切換弁を、冷凍サイクルシステムの冷媒通路を切り換えるために用い、前記第1導管に接続される管を、該冷凍サイクルに用いられる圧縮機の吐出管とし、該吐出管を前記第1導管の内部に突設したストッパによって係止することができる。この構成により、圧縮機の吐出管との配管接続構造を簡便なものとしながら、冷凍ユニット等の冷凍サイクルシステムに用いた場合に、冷媒流量の低下を招くことなく、冷凍ユニット等の効率の低下を回避することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、弁本体内部を流れる流体の圧力損失を小さくすることのできる四方切換弁を提供することができ、冷凍サイクルシステムに用いた場合に、冷媒流量の低下を招くことなく、冷凍ユニット等の効率の低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる四方切換弁の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明にかかる四方切換弁と従来の四方切換弁の弁体等の形状の相違について説明するための断面図である。
【図3】四方切換弁のバーリング部の断面積と圧力損失の関係を示すグラフである。
【図4】従来の四方切換弁の一例を示す断面図である。
【図5】従来の四方切換弁の弁本体内部を流れる高圧冷媒の圧力損失を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、本発明にかかる四方切換弁を冷凍サイクルの冷媒通路の切換に用いた場合を例にとって説明する。
【0014】
図1は、本発明にかかる四方切換弁の一実施の形態を示し、この四方切換弁1は、図4に示した四方切換弁61と同様の基本構成を備え、密閉中空のシリンダ状の弁本体2に、圧縮機(不図示)の吐出管20に連結される導管4の接続口5と、圧縮機の吸入管6に連通する接続口7を設け、この接続口7を挟んで両側に、熱交換機(不図示)への導管10、11に連通する2つの接続口12、13を配置し、椀状の弁体14を弁座15に摺動自在に設け、この弁体14を摺動させ、中央の接続口7と両側の接続口12、13のいずれか一方との間を選択的に接続する。
【0015】
この四方切換弁1の、圧縮機の吐出管20に連結される導管4は、図4に示した導管64と異なり、下部4aが上部4bより大径に形成されるとともに、上部4bに吐出管20の位置決めのためのストッパ4cを管内に向かって突設し、下部4aの内径を吐出管20の外径よりも大きく形成したことを特徴の一つとし、これにより、後述するように、導管4の接続口5の周辺部の空間を大きく形成することができ、高圧冷媒の圧力損失を小さくすることを可能としている。
【0016】
次に、本発明にかかる四方切換弁1の弁本体2に穿設された導管4の接続口5の近傍と、弁体14の外周面の形状と、図4に示した従来の四方切換弁61の導管64の接続口65の近傍と、弁体74の外周面の形状の相違点について、図2を参照しながら説明する。尚、同図で示す部分は、図5の点線で楕円状に囲んだ部分に相当する。図2では、上記相違点を判り易くするため、断面のハッチングを施さずに各部品を描いている。また、本発明にかかる弁体14等を実線で、従来の弁体74等を点線で示す。
【0017】
上述のように、導管4の下部4aを上部4bより大径に形成したことで、図2に示すように、導管4の内径は、導管64の内径よりも大きく形成されている。これに伴い、接続口5も、接続口65よりも大きな開口となっている。
【0018】
上記構成により、四方切換弁61における隙間aに比較して四方切換弁1の隙間Aを大きく形成することができ、導管4の接続口5の周辺部と、弁体14の外周面との間の最小断面積(バーリング部断面積)を大きく取ることができる。より具体的には、四方切換弁1は、この最小断面積を吐出管20の内径断面積と同一又はそれ以上としたことを特徴とする。
【0019】
次に、上記弁体14と弁体74を用いた場合の圧力損失の比較例として、図3にバーリング部断面積と圧力損失の関係を示す。尚、高圧管とは、弁体14、74の各々の導管4、64であって、高圧圧損とは、高圧管を高圧冷媒が流れたときの圧力損失をいう。
【0020】
同図に示すように、バーリング部断面積が大きくなるに従い圧力損失が低下し、本発明のようにバーリング部断面積が高圧管の内径断面積と同一になると(低減品と表示)、図4に示した四方切換弁61(従来品)に比較して、圧力損失が略々半減していることが判る。その後バーリング部断面積が大ききくなっても圧力損失は僅かに漸減するが、その際弁本体の寸法も漸増する。従って、弁本体の寸法と圧力損失の低下の両面から見た場合、バーリング部断面積を高圧管の内径断面積(308mm2)に一致させるのが最適である。
【0021】
尚、上記実施の形態においては、本発明にかかる四方切換弁を冷凍サイクルの冷媒通路の切換に用いた場合を例示したが、本発明にかかる四方切換弁をその他の用途にも利用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0022】
1 四方切換弁
2 弁本体
4 導管
4a 下部
4b 上部
4c ストッパ
5 接続口
6 吸入管
7 接続口
10 導管
11 導管
12 接続口
13 接続口
14 弁体
14a 外周面
15 弁座
20 吐出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉空間を有する弁本体と、該弁本体の一側部に連結され、前記密閉空間と連通する第1導管と、前記弁本体の他側部に連結され、前記密閉空間と連通する第2導管と、該第2導管を挟んで両側に各々隣接して配置され、前記密閉空間と連通するとともに、前記第2導管と同一の内径を有する第3及び第4導管と、前記弁本体内において前記第2乃至第4導管の各々に連通する開口部を有する弁座と、該弁座に摺動可能に配置された弁体とを備え、該弁体を一方向又は他方向に摺動させることにより、前記第1導管と前記第3導管との間、又は前記第1導管と前記第4導管との間の連通状態が選択的に切り換えられる四方切換弁において、
前記弁本体の前記第1導管の接続口の周辺部と、前記弁体の外周面との間の最小断面積を、前記第1導管に接続される管の内径断面積と同一又はそれ以上としたことを特徴とする四方切換弁。
【請求項2】
前記第1導管は、前記第2導管と同一の軸線を有するとともに、該第1導管に接続される管の外径よりも大きな内径を有することを特徴とする請求項1に記載の四方切換弁。
【請求項3】
該四方切換弁は、冷凍サイクルシステムの冷媒通路を切り換えるために用いられ、前記第1管路に接続される管は、該冷凍サイクルに用いられる圧縮機の吐出管であって、該吐出管を前記第1導管の内部に突設したストッパによって係止したことを特徴とする請求項1又は2に記載の四方切換弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−196858(P2010−196858A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45075(P2009−45075)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】